説明

燃料供給制御装置およびそれを用いた燃料供給システム

【課題】リリーフ弁の異常を判定する燃料供給制御装置およびそれを用いた燃料供給システムを提供する。
【解決手段】燃料供給制御装置は、フィードポンプの回転数Npが所定回転数Np0よりも高く(S400:Yes)、フィードポンプと燃料フィルタとの間に設置された圧力センサによるフィード圧の検出値Psoutがフィード圧の推定値Fpに公差Ptを加算した値(Fp+Pt)よりも高い場合(S402:Yes)、フィード圧を減圧するリリーフ弁は閉弁固着していると判定する(S404)。また、フィードポンプ32の回転数Npが所定回転数Np0以下であり(S400:No)、Psout<Fp−Ptであれば(S406:Yes)、燃料供給制御装置は、リリーフ弁は開弁固着していると判定する(S408)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関の気筒に燃料噴射弁が噴射する燃料をフィードポンプから供給し、フィードポンプの下流側に燃料フィルタを設置し、フィードポンプのフィード圧が所定圧を超えるとリリーフ弁が開弁してフィード圧を減圧する燃料供給システムに用いられる燃料供給制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、燃料供給システムにおいて、フィードポンプから供給される燃料中の異物が、例えば下流側の高圧ポンプまたは燃料噴射弁の摺動部、あるいは燃料噴射弁の弁部等に噛み込むことを防止するために、フィードポンプの下流側に設置された燃料フィルタにより燃料中の異物を除去することが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
このような燃料供給システムにおいては、フィードポンプのフィード圧が所定圧を超えるとリリーフ弁が開弁してフィードポンプのフィード圧を減圧することにより、燃料フィルタに過大な燃料圧力が加わって燃料フィルタが破損することを防止している。
【特許文献1】特開2006−207499号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、リリーフ弁の摺動部または弁部に異物が噛み込むと、リリーフ弁が常時開弁する開弁固着、あるいはリリーフ弁が常時閉弁する閉弁固着が発生するおそれがある。
リリーフ弁が開弁固着すると、フィードポンプのフィード圧が十分に上昇しないので、エンジン回転数が低いときにエンジン運転状態が不安定になるか、あるいはエンジンの始動不良が生じるおそれがある。
【0005】
また、リリーフ弁が閉弁固着すると、フィード圧が所定圧を超えても減圧できないので、燃料フィルタに過度の燃料圧力が加わり燃料フィルタが破損することがある。燃料フィルタが破損すると、燃料中の異物が除去されずに下流側に流出する。その結果、燃料フィルタの下流側に設置されている装置として、例えば高圧ポンプまたは燃料噴射弁の摺動部、あるいは燃料噴射弁の弁部等に異物が噛み込むおそれがある。
【0006】
本発明は、上記問題を解決するためになされたものであり、リリーフ弁の異常を判定する燃料供給制御装置およびそれを用いた燃料供給システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1から6に記載の発明によると、フィードポンプと、フィードポンプの下流側の燃料フィルタとの間に設置される圧力センサの検出信号に基づいてフィードポンプのフィード圧をフィード圧検出手段が検出し、フィードポンプの運転状態に基づいてフィード圧推定手段がフィード圧を推定し、異常判定手段は、フィード圧検出手段が検出するフィード圧の検出値と、フィード圧推定手段が推定するフィード圧の推定値とに基づいてフィードポンプのリリーフ弁の異常を判定する。
【0008】
リリーフ弁は、フィードポンプのフィード圧が所定圧を超えると開弁してフィード圧を減圧するので、フィード圧に応じて正しく開弁または閉弁しないと、圧力センサの検出信号に基づいて検出されるフィード圧の検出値と、フィードポンプの運転状態に基づいて推定されるフィード圧の推定値との間にずれが生じる。したがって、フィード圧の検出値と推定値との間にずれが生じている場合には、フィード圧の検出値と推定値とに基づいてリリーフ弁が異常であると判定できる。
【0009】
請求項2に記載の発明によると、フィード圧推定手段はフィードポンプの回転数に基づいてフィード圧を推定し、異常判定手段は、回転数が所定値よりも高い領域において、フィード圧の検出値が推定値よりも所定範囲を超えて高い場合、リリーフ弁が閉弁固着していると判定する。
【0010】
フィードポンプのフィード圧はフィードポンプの回転数に応じて変化するので、フィードポンプの回転数に基づいてフィードポンプのフィード圧を高精度に推定できる。
また、フィードポンプの回転数が所定値よりも高い領域においてはフィード圧がリリーフ弁の開弁圧を超えるので、リリーフ弁が正常であればリリーフ弁が開弁し、フィード圧は減圧する。しかし、リリーフ弁が開弁せず閉弁固着していると、フィードポンプの回転数が所定値よりも高い領域においては、フィード圧の検出値は推定値よりも所定範囲を超えて高くなる。言い換えれば、フィードポンプの回転数が所定値よりも高い領域において、フィード圧の検出値が推定値よりも所定範囲を超えて高くなると、リリーフ弁が閉弁固着していると判定できる。
【0011】
請求項3に記載の発明によると、フィード圧推定手段はフィードポンプの回転数に基づいてフィード圧を推定し、異常判定手段は、回転数が所定値よりも低い領域において、検出値が推定値よりも所定範囲を超えて低い場合、リリーフ弁が開弁固着していると判定する。
【0012】
請求項2に記載の発明と同様に、フィードポンプのフィード圧はフィードポンプの回転数に応じて変化するので、フィードポンプの回転数に基づいてフィードポンプのフィード圧を高精度に推定できる。
【0013】
また、フィードポンプの回転数が所定値よりも低い領域においては、フィード圧がリリーフ弁の開弁圧よりも低くなるので、リリーフ弁が正常であればリリーフ弁は閉弁する。しかし、リリーフ弁が閉弁せず開弁固着していると、フィードポンプの回転数が所定値よりも低い領域においては、フィード圧の検出値は推定値よりも所定範囲を超えて低くなる。言い換えれば、フィードポンプの回転数が所定値よりも低い領域において、フィード圧の検出値が推定値よりも所定範囲を超えて低くなると、リリーフ弁が開弁固着していると判定できる。
【0014】
請求項4に記載の発明によると、異常判定手段は、内燃機関の運転が停止したときに、フィード圧の検出値の変化とフィード圧の推定値の変化とに基づいてリリーフ弁の異常を判定する。
【0015】
内燃機関の運転が停止するとフィードポンプの運転も停止するので、燃料が徐々に低圧側にリークすることにより、フィードポンプと燃料フィルタとの間において圧力センサが検出する残圧は低下する。そして、リリーフ弁が正常であれば、エンジンが停止したときに、フィード圧の検出値はフィード圧の推定値とほぼ同じ割合で低下する。一方、リリーフ弁が異常であれば、エンジンが停止したときに、フィード圧の検出値の変化はフィード圧の推定値の変化とは異なる筈である
したがって、内燃機関が停止したときにフィード圧の検出値の変化とフィード圧の推定値の変化とに基づいて、リリーフ弁の異常を判定できる。
【0016】
請求項5に記載の発明によると、異常判定手段は、内燃機関の運転が停止したときに、フィード圧の検出値がフィード圧の推定値に対して所定時間よりも早期に低下する場合、リリーフ弁が開弁固着していると判定する。
【0017】
リリーフ弁が開弁固着していると、内燃機関の運転が停止しフィードポンプの運転が停止すると、リリーフ弁が正常に閉弁しているときのフィード圧の推定値よりもフィード圧の検出値は早く低下する。したがって、例えばフィード圧の検出値が推定値よりも早期に大気圧まで低下する場合、リリーフ弁が開弁固着していると判定できる。
【0018】
尚、本発明に備わる複数の手段の各機能は、構成自体で機能が特定されるハードウェア資源、プログラムにより機能が特定されるハードウェア資源、またはそれらの組み合わせにより実現される。また、これら複数の手段の各機能は、各々が物理的に互いに独立したハードウェア資源で実現されるものに限定されない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態を図に基づいて説明する。
本発明の一実施形態による燃料供給システムを図1に示す。
(燃料供給システム10)
本実施形態の蓄圧式の燃料供給システム10は、例えば図示しない4気筒のディーゼルエンジンの気筒内に燃料を噴射する燃料噴射弁80に燃料供給ポンプ30が加圧した燃料を供給する。
【0020】
燃料供給ポンプ30は、フィードポンプ32、調量弁40および高圧ポンプ50等で構成されており、フィードポンプ32が燃料タンク12から吸い上げた燃料を高圧ポンプ50で加圧する。
【0021】
フィルタ14、34は、フィードポンプ32が燃料タンク12から燃料を吸い上げる燃料通路200に設置されており、フィードポンプ32内に燃料が吸入される前に燃料中の異物を除去する。図1において、フィルタ14、34および後述するフィルタ38は、金属メッシュ等の比較的目の粗いフィルタである。
【0022】
プライミングポンプ16は、車両の組立時などにおいて、バイパス通路202を介してフィードポンプ32をバイパスしてフィードポンプ32の下流側に燃料を供給する。バイパス通路202に設置された逆止弁18は、燃料フィルタ20からバイパス通路202への燃料の逆流を防止する。
【0023】
燃料フィルタ20はフィードポンプ32の下流側に設置されている。このため、燃料フィルタ20にはフィードポンプ32のフィード圧が加わる。これにより、フィードポンプ32の燃料吸入側でありフィードポンプ32の上流側に設置されるフィルタ14、34に比べ、燃料フィルタ20は目詰まりを起こしにくい。その結果、燃料フィルタ20にはフィルタ14、34よりも目が細かいフィルタエレメントを使用できるので、燃料フィルタ20の濾過性能はフィルタ14、34よりも高い。
【0024】
フィードポンプ32と燃料フィルタ20との間には、圧力センサ22が設置されている。圧力センサ22は、フィードポンプ32と燃料フィルタ20との間の燃料圧力、つまりフィードポンプ32のフィード圧に対応する検出信号を出力する。
【0025】
リリーフ弁24は、燃料フィルタ20に加わる燃料圧力が所定圧を超えると開弁し、逃がし通路204から余剰燃料を燃料タンク12に排出する。
フィードポンプ32は、公知のトロコイドポンプまたはベーンポンプである。フィードポンプ32は、高圧ポンプ50と同様にカムシャフト52により回転駆動される。カムシャフト52はエンジンのクランクシャフトにより回転駆動される。図2の(A)、(B)の実線300に示すように、フィードポンプ32のフィード圧Fpは、フィードポンプの回転数Npが上昇すると上昇する。ただし、フィードポンプの回転数NpがNp0を超えて上昇し、フィード圧がリリーフ弁36の開弁圧である所定圧を超えるとリリーフ弁36が開弁するので、フィードポンプの回転数NpがNp0を超えるとフィード圧の上昇率は低下する。
【0026】
リリーフ弁36は、フィードポンプ32のフィード圧がリリーフ弁36の開弁圧である所定圧を超えると開弁する。これにより、フィードポンプ32の下流側の燃料がリリーフ弁36からフィードポンプ32の上流側に戻されるので、フィードポンプ32のフィード圧は減圧される。リリーフ弁36は、特許請求の範囲に記載したリリーフ弁に相当する。
【0027】
燃料フィルタ20で異物を除去された燃料は、燃料通路210を通り調量弁40に供給される。フィルタ38は調量弁40の上流側に設置されており、調量弁40に供給される燃料中の異物を除去する。
【0028】
調量弁40は、エンジン運転状態に基づいて開度が制御される電磁弁である。調量弁40の開度が制御されると、高圧ポンプ50に吸入される燃料吸入量が調整され、高圧ポンプ50が吐出する燃料吐出量が調整される。
【0029】
燃料通路212は、調量弁40の閉弁時に調量弁40から漏れる燃料をフィードポンプ32の上流側に戻す。また、燃料通路214は、フィードポンプ32から供給される燃料の一部を、高圧ポンプ50のカム室に潤滑油として供給する。
【0030】
高圧ポンプ50のプランジャ56は、カムシャフト52とともにカム54が回転することにより往復運動し、加圧室に吸入した燃料を加圧する。プランジャ56は、カムシャフト52を挟んで径方向反対側に2個設置されている。
【0031】
吸入弁60は、調量弁40から加圧室に燃料が吸入されるときに開弁し、加圧室から燃料が吐出されるときに閉弁する。一方、吐出弁62は、調量弁40から加圧室に燃料が吸入されるときに閉弁し、加圧室から燃料が吐出されるときに開弁する。
【0032】
高圧ポンプ50から吐出された燃料は、燃料通路216を通りコモンレール70に供給される。コモンレール70は、高圧ポンプ50から供給された燃料を蓄圧する。プレッシャリミッタ72はコモンレール70内の燃料圧力(以下、コモンレール圧とも言う。)が所定圧を超えると開弁し、コモンレール圧を減圧する。プレッシャリミッタ72が開弁すると、コモンレール70内の燃料が燃料通路220から燃料タンク12に排出される。燃料通路220には、高圧ポンプ50および燃料噴射弁80から漏れ出た燃料も排出される。
【0033】
コモンレール70で蓄圧された燃料は、燃料噴射弁80からディーゼルエンジンの気筒内に噴射される。
燃料供給制御装置としての電子制御装置(ECU:Electronic Control Unit)90は、CPU、ROM、RAM、フラッシュメモリ等を中心とするマイクロコンピュータにて構成されている。そして、ECU90は、圧力センサ22、アクセル開度センサ、エンジン回転数センサを含む各種センサから検出信号を取り込み、エンジン運転状態を制御する。
【0034】
例えば、ECU90は、調量弁40への通電量を制御して高圧ポンプ50の燃料吸入量を調整することにより高圧ポンプ50の燃料吐出量を調量する。また、ECU90は、燃料噴射弁80の燃料噴射量、燃料噴射時期、およびメイン噴射の前後にパイロット噴射、ポスト噴射等を実施する多段噴射のパターンを制御する。
【0035】
ECU90は、ROMまたはフラッシュメモリに記憶された制御プログラムにより、以下の各手段として機能する。
(フィード圧検出手段)
ECU90は、フィードポンプ32と燃料フィルタ20との間に設置された圧力センサ22の検出信号に基づき、フィードポンプ32のフィード圧を検出する。
【0036】
(フィード圧推定手段)
フィードポンプ32のフィード圧はフィードポンプ32の吐出量により決定され、フィードポンプ32の吐出量はフィードポンプ32の回転数により決定される。前述したように、フィードポンプ32はカムシャフト52により回転駆動されるので、フィードポンプ32の回転数は、エンジン回転数(Ne)により決定される。ECU90は、フィードポンプ32の回転数Npとフィード圧Fpとの関係を、図2の(A)の実線300に示す特性としてマップ等に記憶している。これにより、ECU90は、フィードポンプ32の回転数に基づいてフィード圧を高精度に推定できる。
【0037】
(異常判定手段)
ECU90は、フィード圧検出手段が圧力センサ22の検出信号に基づいて検出したフィードポンプ32のフィード圧の検出値と、フィード圧推定手段がフィードポンプ32の回転数Npに基づいて推定したフィード圧の推定値との差に基づいて、リリーフ弁36が異常であるか否かを判定する。以下に、リリーフ弁36の異常判定について説明する。
【0038】
(1)閉弁固着
異物の噛み込み等によりリリーフ弁36が閉弁固着していると、フィードポンプ32の回転数がNp0を超え、フィード圧がリリーフ弁36の開弁圧を超えてもリリーフ弁36は開弁せず閉弁したままである。その結果、フィードポンプ32の回転数がNp0よりも高い領域において、フィード圧は、図2の(A)に示す正常時の実線300に対して点線302に示すように所定範囲を超えて高くなる。したがって、ECU90は、フィードポンプ32の回転数がNp0よりも高い領域において、フィード圧検出手段が検出するフィード圧の検出値が、フィード圧推定手段が推定するフィード圧の推定値よりも所定範囲を超えて高い場合、リリーフ弁36が閉弁固着していると判定する。
【0039】
(2)開弁固着
異物の噛み込み等によりリリーフ弁36が開弁固着していると、正常であれば開弁しない回転数NpがNp0よりも小さい場合にもリリーフ弁36は開弁している。その結果、フィードポンプ32の回転数がNp0より低い領域において、フィード圧は、図2の(B)に示す正常時の実線300に対して点線304が示すように所定範囲を超えて低下する。したがって、ECU90は、フィードポンプ32の回転数がNp0よりも低い領域において、フィード圧検出手段が検出するフィード圧の検出値が、フィード圧推定手段が推定するフィード圧の推定値よりも所定範囲を超えて低い場合、リリーフ弁36が開弁固着していると判定する。
【0040】
また、エンジンが停止すると、フィードポンプ32と燃料フィルタ20との間において圧力センサ22が検出する残圧の検出値は、図2の(C)において実線310が示すように緩やかに低下する。
【0041】
しかし、リリーフ弁36が開弁固着していると、図2の点線312が示すように、フィードポンプ32と燃料フィルタ20との間の残圧は、リリーフ弁36が正常時に大気圧まで低下するときに要する所定時間よりも早期に大気圧まで低下する。ECU90は、エンジンが停止したときに、フィードポンプ32と燃料フィルタ20との間の残圧の検出値、つまり圧力センサ22の検出信号に基づいて検出するフィード圧の検出値がフィード圧の推定値に対して所定時間よりも早期に大気圧に低下すると、リリーフ弁36が開弁固着していると判定する。
【0042】
(異常判定)
次に、リリーフ弁36の異常を判定する異常判定ルーチンについて、図3および図4に示すフローチャートに基づいて説明する。図3はエンジン運転中の異常判定ルーチンであり、図4はエンジン停止時の異常判定ルーチンである。図3および図4のルーチンは常時実行される。図3および図4において「S」はステップを表している。
【0043】
(エンジン運転中の異常判定ルーチン)
図3のS400においてECU90は、フィードポンプ32の回転数Npが所定回転数Np0よりも高いかを判定する。
【0044】
フィードポンプ32の回転数Npが所定回転数Np0よりも高い場合(S400:Yes)、S402においてECU90は、フィード圧の検出値Psoutがフィード圧の推定値Fpに公差Ptを加算した値(Fp+Pt)よりも高いかを判定する。Psout>Fp+Ptであれば(S402:Yes)、ECU90は、リリーフ弁36は閉弁固着していると判定する(S404)。リリーフ弁36が閉弁固着している場合、ECU90は、警告灯等によりリリーフ弁36の異常を運転者に報知することが望ましい。これにより、リリーフ弁36を交換する等の適切な処置を速やかに実施できる。
【0045】
リリーフ弁36が閉弁固着していると、フィード圧が所定圧を超えてもフィード圧を減圧できないので、フィード圧が過度に上昇し、燃料フィルタ20が破損するおそれがある。燃料フィルタ20が破損すると、燃料フィルタ20の下流側の高圧ポンプ50または燃料噴射弁80の摺動部、あるいは燃料噴射弁80の弁部に異物が噛み込むことがある。
【0046】
そこで、リリーフ弁36が閉弁固着している異常を報知し、リリーフ弁36を交換することにより、燃料フィルタ20の破損を防止して燃料フィルタ20の下流側への異物の流入を防止できる。
【0047】
Psout≦Fp+Ptであれば(S402:No)、ECU90は、リリーフ弁36は開弁固着していないと判定し、本ルーチンを終了する。
フィードポンプ32の回転数Npが所定回転数Np0以下の場合(S400:No)、S406においてECU90は、フィード圧の検出値Psoutがフィード圧の推定値Fpから公差Ptを減算した値(Fp−Pt)よりも低いかを判定する。Psout<Fp−Ptであれば(S406:Yes)、ECU90は、リリーフ弁36は開弁固着していると判定する(S408)。リリーフ弁36が開弁固着している場合、ECU90は、警告灯等によりリリーフ弁36の異常を運転者に報知することが望ましい。これにより、リリーフ弁36を交換する等の適切な処置を速やかに実施できる。
【0048】
リリーフ弁36が開弁固着していると、エンジン回転数が低い場合にもリリーフ弁36が開弁しフィードポンプ32のフィード圧が低下するので、高圧ポンプ50の吐出量が不足しコモンレール圧を目標圧に蓄圧できない。その結果、エンジン回転数が低いときのエンジン運転状態が不安定になり、エンジンが停止するおそれがある。また、フィードポンプ32のフィード圧が低いために、エンジンを始動できないこともある。
【0049】
そこで、リリーフ弁36が開弁固着している異常を報知し、リリーフ弁36を交換することにより、エンジン回転数が低い場合にもエンジン運転状態が安定するとともに、エンジンの始動不良を防止できる。
【0050】
Psout≧Fp−Ptであれば(S406:No)、ECU90は、リリーフ弁36は開弁固着していないと判定し、本ルーチンを終了する。
(エンジン停止時の異常判定ルーチン)
図4のS410においてECU90は、エンジンが停止し、フィードポンプ32の回転数Npが0になったかを判定する。Np=0でなければ(S410:No)、エンジンは停止していないと判断し、ECU90は本ルーチンを終了する。
【0051】
Np=0であれば(S410:Yes)、ECU90は、エンジンは停止したと判断し、エンジン停止後の経過時間をカウントする(S412)。所定時間経過すると(S414:Yes)、S416においてECU90は、フィードポンプ32と燃料フィルタ20との間の残圧の検出値が大気圧に相当する0になる検出経過時間Tが、リリーフ弁36の正常時にフィードポンプ32と燃料フィルタ20との間の残圧の0になると推定される推定経過時間tよりも短いか、つまりフィード圧の検出値がフィード圧の推定値に対して所定時間よりも早期に低下するかを判定する。
【0052】
検出経過時間Tが推定経過時間tよりも短い場合(S416:Yes)、ECU90は、リリーフ弁36は開弁固着していると判定する。リリーフ弁36が開弁固着している場合、前述したように、ECU90は、警告灯等によりリリーフ弁36の異常を運転者に報知することが望ましい。これにより、リリーフ弁36を交換する等の適切な処置を速やかに実施できる。その結果、エンジン回転数が低い場合にもエンジン運転状態が安定するとともに、次回のエンジンの始動不良を防止できる。
【0053】
検出経過時間Tが推定経過時間t以上の場合(S416:No)、ECU90は、リリーフ弁36は開弁固着していないと判定し、本ルーチンを終了する。
以上説明した上記実施形態では、フィードポンプの下流側に燃料フィルタを設置し、フィードポンプのフィード圧が所定圧を超えるとリリーフ弁が開弁してフィード圧を減圧する燃料供給システムにおいて、圧力センサ22が検出するフィード圧の検出値と、フィードポンプ32の回転数等の運転状態から推定するフィード圧の推定値とに基づいて、リリーフ弁36が開弁固着しているか、または閉弁固着しているかの異常であるかを判定した。これにより、リリーフ弁36が開弁固着または閉弁固着している場合には、リリーフ弁36を交換する等の適切な処置を速やかに実施できる。
【0054】
[他の実施形態]
上記実施形態では、フィードポンプ32と燃料フィルタ20との間、つまり燃料フィルタ20の上流側に圧力センサ22を設置し、圧力センサ22の検出信号に基づいてフィードポンプ32のフィード圧を検出した。これに対し、燃料フィルタ20の上流側に加え、燃料フィルタ20の下流側に圧力センサを設置し、両方の圧力センサの検出圧から燃料フィルタ20の上流と下流との差圧を検出してもよい。燃料フィルタ20の上流と下流との差圧を検出することにより、燃料フィルタ20の目詰まりの程度を検出できる。燃料フィルタ20の上流と下流とにそれぞれ圧力センサを設置せず、差圧センサを設置すれば燃料フィルタ20の目詰まりの程度を検出することはできる。しかしながら、差圧センサではフィードポンプ32のフィード圧を検出できないので、本発明には不適である。
【0055】
また、上記実施形態では、フィードポンプ32が供給する燃料を高圧ポンプ50で加圧し、コモンレール70で蓄圧するコモンレール式のディーゼルエンジンの燃料供給システムに本発明を適用した例について説明した。これに対し、フィードポンプの下流側に燃料フィルタが設置されており、フィードポンプのフィード圧が所定圧を超えるとリリーフ弁が開弁してフィード圧を減圧するのであれば、コモンレール式またはディーゼルエンジンに限らず、どのような内燃機関用の燃料供給システムに本発明を適用してもよい。
【0056】
上記実施形態では、フィード圧検出手段、フィード圧推定手段および異常判定手段の機能を制御プログラムにより機能が特定されるECU90により実現している。これに対し、上記手段の機能の少なくとも一部を、回路構成自体で機能が特定されるハードウェアで実現してもよい。
【0057】
このように、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の実施形態に適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本実施形態による燃料供給システムを示すブロック図。
【図2】(A)、(B)はフィードポンプの回転数と燃料圧力との関係を示す特性図、(C)はエンジン停止後の時間経過と残圧との関係を示す特性図。
【図3】エンジン運転中のリリーフ弁の異常判定を示すフローチャート。
【図4】エンジン停止時のリリーフ弁の異常判定を示すフローチャート。
【符号の説明】
【0059】
10:燃料供給システム、20:燃料フィルタ、22:圧力センサ、30:燃料供給ポンプ、32:フィードポンプ、36:リリーフ弁、50高圧ポンプ、70:コモンレール、80:燃料噴射弁、90:ECU(燃料供給制御装置、フィード圧検出手段、フィード圧推定手段、異常判定手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料噴射弁が内燃機関の気筒に噴射する燃料を供給するフィードポンプと、
前記フィードポンプの下流側に設置され前記フィードポンプから供給される燃料中の異物を除去する燃料フィルタと、
前記フィードポンプのフィード圧が所定圧を超えると開弁して前記フィード圧を減圧するリリーフ弁と、
を備える燃料供給システムに用いられる燃料供給制御装置において、
前記フィードポンプと前記燃料フィルタとの間に設置される圧力センサと、
前記圧力センサの検出信号に基づいて前記フィードポンプのフィード圧を検出するフィード圧検出手段と、
前記フィードポンプの運転状態に基づいて前記フィード圧を推定するフィード圧推定手段と、
前記フィード圧検出手段が検出する前記フィード圧の検出値と、前記フィード圧推定手段が推定する前記フィード圧の推定値とに基づいて前記リリーフ弁の異常を判定する異常判定手段と、
を備えることを特徴とする燃料供給制御装置。
【請求項2】
前記フィード圧推定手段は前記フィードポンプの回転数に基づいて前記フィード圧を推定し、
前記異常判定手段は、前記回転数が所定値よりも高い領域において、前記検出値が前記推定値よりも所定範囲を超えて高い場合、前記リリーフ弁が閉弁固着していると判定する、
ことを特徴とする請求項1に記載の燃料供給制御装置。
【請求項3】
前記フィード圧推定手段は前記フィードポンプの回転数に基づいて前記フィード圧を推定し、
前記異常判定手段は、前記回転数が所定値よりも低い領域において、前記検出値が前記推定値よりも所定範囲を超えて低い場合、前記リリーフ弁が開弁固着していると判定する、
ことを特徴とする請求項1または2に記載の燃料供給制御装置。
【請求項4】
前記異常判定手段は、前記内燃機関の運転が停止したときに、前記検出値の変化と前記推定値の変化とに基づいて前記リリーフ弁の異常を判定することを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の燃料供給制御装置。
【請求項5】
前記異常判定手段は、前記内燃機関の運転が停止したときに、前記検出値が前記推定値に対して所定時間よりも早期に低下する場合、前記リリーフ弁が開弁固着していると判定することを特徴とする請求項4に記載の燃料供給制御装置。
【請求項6】
内燃機関の気筒内に燃料を噴射する燃料噴射弁に蓄圧した燃料を供給するコモンレールと、
加圧した燃料を前記コモンレールに供給する高圧ポンプと、
燃料タンクから吸い上げた燃料を前記高圧ポンプに供給するフィードポンプと、
前記フィードポンプのフィード圧が所定圧を超えると開弁して前記フィード圧を減圧するリリーフ弁と、
請求項1から5のいずれか一項に記載の燃料供給制御装置と、
を備えることを特徴とする燃料供給システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−281184(P2009−281184A)
【公開日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−132016(P2008−132016)
【出願日】平成20年5月20日(2008.5.20)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】