説明

燃料供給装置

【課題】燃料ポンプの消費電力を低減することの可能な燃料供給装置を提供する。
【解決手段】燃料ポンプ2と燃料噴射弁11とを接続する燃料通路9にレギュレータ3が設けられる。レギュレータ3は、下流側燃料通路13の燃料圧力が制御圧P3より低いとき燃料通路9を開放し、下流側燃料通路13の燃料圧力が制御圧P3より高いとき燃料通路9を閉塞する。ECU5は、圧力検出器4の検出した燃料圧力が第1設定圧P1より大きくなると燃料ポンプ2の駆動を停止し、第2設定圧P2より小さくなると燃料ポンプ2を駆動する。第1設定圧P1、第2設定圧P2、制御圧P3は、P1>P2≧P3の関係にある。これにより、燃料ポンプ2から燃料通路9に圧送された燃料は、燃料タンク8に戻されることなく、燃料噴射弁11に供給されるので、燃料ポンプ2の停止時間を長くすることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関に燃料を供給する燃料供給装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、内燃機関に燃料を供給する燃料供給装置は、燃料タンク内の燃料を燃料ポンプによって汲み上げ、燃料通路を経由し、燃料噴射弁に供給している。
特許文献1の燃料供給装置は、燃料通路にレギュレータを設け、燃料噴射弁に供給される燃料圧力を燃料噴射に適切な制御圧に制御している。レギュレータには、内燃機関の吸気管に接続する背圧配管、及び燃料タンクに接続するリターン通路が接続されている。レギュレータは、燃料通路の燃料圧力と吸気管の気圧との差圧がレギュレータに設定された所定の圧力より大きくなると、燃料通路の燃料をリターン通路から燃料タンクに戻すことで、燃料通路の燃料圧力を目標とする制御圧に調節している。
燃料ポンプは、ECUにより駆動を制御されている。ECUは、燃料通路の燃料圧力が所定の第1設定圧より大きくなると燃料ポンプの駆動を停止する。一方。ECUは、燃料通路の燃料圧力が第1設定圧より小さい値に設定された第2設定圧より小さくなると燃料ポンプを駆動する。ECUは、第1設定圧、第2設定圧及び制御圧の関係を「第1設定圧>制御圧>第2設定圧」として燃料ポンプの駆動を制御している。これにより、燃料通路の燃料圧力が調節される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3786262号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の燃料供給装置は、燃料通路の燃料圧力が制御圧より大きくなると、燃料通路の燃料がレギュレータによって燃料タンクに戻されるので、燃料供給効率が悪化する。このため、燃料ポンプの駆動及び停止の時間間隔が短くなり、燃料ポンプの消費電力が増大することが懸念される。
また、燃料噴射弁に供給される燃料圧力が第1設定圧と第2設定圧との間で変動するので、燃料噴射弁の噴霧特性が変化する。これにより、特に内燃機関始動時などの低温時に燃料が気化され難くなり、排ガスのHCが増大するおそれがある。
さらに、内燃機関の吸気管とレギュレータとを接続する背圧配管、及びレギュレータと燃料タンクとを接続するリターン通路を設けることで、エバポエミッションが多くなると共に、加工コストが高くなることが懸念される。
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、燃料ポンプの消費電力を低減することの可能な燃料供給装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1に係る発明によると、燃料タンク内の燃料を圧送する燃料ポンプと、その燃料を噴射する燃料噴射弁とを接続する燃料通路に圧力調整手段が設けられる。この圧力調整手段は、圧力調整手段より下流側の燃料圧力がその制御目標とする制御圧より低いとき燃料通路を開放し、圧力調整手段より下流側の燃料圧力が制御圧より高いとき燃料通路を閉塞する。圧力調整手段より上流側の燃料圧力を圧力検出手段は検出する。制御手段は、圧力検出手段の検出する燃料圧力が制御圧以上となるように燃料ポンプの駆動を制御する。
【0006】
これにより、燃料ポンプから燃料通路に圧送された燃料は、燃料タンクに戻されることなく、燃料噴射弁に供給される。このため、燃料噴射弁の燃料噴射量と燃料ポンプの燃料圧送量とが対応したものとなるので、燃料供給装置の燃料供給効率が向上する。したがって、燃料ポンプの消費電力を低減することが可能になる。この結果、内燃機関の燃費を低減することができる。
【0007】
また、圧力調整手段より上流側の燃料圧力は、制御圧以上に維持される。このため、圧力調整手段が燃料通路を開放するとき、上流側の燃料通路から下流側の燃料通路に燃料が安定して供給される。したがって、燃料噴射弁に供給される燃料圧力が制御圧に維持されるので、燃料噴射弁の噴霧状態を良好にすることができる。この結果、内燃機関の燃焼効率が向上し、排ガス中のHCを低減することができる。
【0008】
さらに、制御圧以上となった燃料を燃料タンクに戻すためのリターン通路、及び内燃機関の吸気管とレギュレータとを接続する背圧配管を廃止することが可能になる。このため、各燃料通路から生じるエバポエミッションを低減することができる。また、燃料通路の加工コストを低減することができる。
【0009】
請求項2に係る発明によると、制御手段は、圧力検出手段の検出した燃料圧力が第1設定圧より大きくなると燃料ポンプの駆動を停止し、圧力検出手段の検出した燃料圧力が第2設定圧より小さくなると燃料ポンプを駆動する。第1設定圧をP1、第2設定圧をP2、制御圧をP3とすると、P1>P2≧P3の関係である。
これにより、圧力制御手段より上流側の燃料圧力が第1設定圧P1から第2設定圧P2に低下する時間は、燃料ポンプの駆動が停止される。燃料通路の燃料は燃料タンクに戻されることがないので、圧力制御手段より上流側の燃料圧力が第1設定圧P1から第2設定圧P2に低下する時間が長い。このため、燃料ポンプの駆動を停止する時間を長くすることが可能となる。したがって、燃料ポンプの消費電力を低減することができる。
【0010】
請求項3に係る発明によると、燃料供給装置は、燃料ポンプが駆動すると燃料を蓄圧し、燃料ポンプが駆動を停止すると、燃料噴射弁の燃料噴射に伴い、燃料を排出する蓄圧器を備える。
これにより、燃料ポンプが駆動及び停止する時間間隔を長くすることが可能になる。したがって、燃料ポンプの消費電力を低減することができる。
また、燃料ポンプから燃料通路に圧送された燃料が燃料タンクに戻されることがないので、蓄圧器に蓄圧される燃料を有効に使用することが可能になる。したがって、蓄圧器を小型化することができる。
【0011】
請求項4に係る発明によると、蓄圧器は、圧力調整手段より上流側の燃料圧力に応じて変位するピストンを有する。圧力検出手段は、ピストンの変位により燃料通路の燃料圧力を検出する。
これにより、蓄圧器と圧力検出手段とを一体に構成することが可能になる。したがって、燃料通路に蓄圧器と別体で圧力検出器等を設けることなく、燃料供給装置の構成を簡素にすることができる。
【0012】
請求項5に係る発明によると、燃料供給装置は、圧力調整手段と燃料噴射弁との間の燃料通路を流れる燃料を加圧し、燃料噴射弁に圧送する高圧ポンプを備える。
これにより、高圧ポンプに安定した燃料圧力で燃料を供給することができる。このため、高圧ポンプのポンプ効率を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の第1実施形態による燃料供給装置の構成図である。
【図2】本発明の第1実施形態による燃料供給装置のレギュレータの断面図である。
【図3】本発明の第1実施形態による燃料供給装置のECUの処理を示すフローチャートである。
【図4】本発明の第1実施形態による燃料供給装置の特性図である。
【図5】比較例の燃料供給装置の構成図である。
【図6】比較例の燃料供給装置の特性図である。
【図7】本発明の第2実施形態による燃料供給装置の構成図である。
【図8】本発明の第2実施形態による燃料供給装置のECUの処理を示すフローチャートである。
【図9】本発明の第3実施形態による燃料供給装置の構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の複数の実施形態を図面に基づいて説明する。
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態による燃料供給装置を図1〜図4に示す。本実施形態の燃料供給装置1は、燃料ポンプ2、圧力調整手段としてのレギュレータ3、圧力検出手段としての圧力検出器4、制御手段としての電子制御装置(ECU5)などを備えている。
燃料ポンプ2は、ECU5からリレー6に伝送される信号に基づきバッテリ7から供給される電力により駆動する。燃料ポンプ2は、燃料タンク8の燃料を汲み上げ、燃料通路9へ圧送する。この燃料は、燃料通路9を通りフューエルレール10に蓄圧される。フューエルレール10には燃料噴射弁11が接続している。燃料噴射弁11は、ECU5の制御信号にしたがって開閉弁し、図示しない内燃機関の各気筒に向けて燃料を噴射する。
レギュレータ3は、燃料ポンプ2と燃料噴射弁11と接続する燃料通路9に設けられている。本明細書において、燃料ポンプ2とレギュレータ3との間の燃料通路9を上流側燃料通路12と称し、レギュレータ3と燃料噴射弁11との間の燃料通路9を下流側燃料通路13と称する。
【0015】
レギュレータ3の構成を図2を参照して説明する。
レギュレータ3は、ボディ31、弁座部材32、ポペット弁33、圧力調整スプリング34及びダイヤフラム35などを備えている。
ボディ31は、上流側燃料通路12が接続される一次側通路36と、下流側燃料通路13が接続される二次側通路37を有している。一次側通路36と二次側通路37とは、ポペット流路38及び圧力室39を経由して連通している。ポペット流路38と圧力室39との間に弁座部材32が設けられている。弁座部材32は、ポペット流路38と圧力室39とを連通する流路41、及びこの流路41の内壁に弁座42を有する。
ポペット流路38には、ポペット弁33が設けられている。ポペット弁33は、ポペットスプリング43により付勢され、弁座部材32に形成された弁座42に着座及び離座可能である。ポペット弁33は、軸方向の一端が弁座部材32の流路41を通り、圧力室39に延びている。
圧力室39はダイヤフラム35によって仕切られている。このダイヤフラム35の圧力室39側の面と、ポペット弁33の軸方向の一端とが当接している。ダイヤフラム35は、圧力調整スプリング34により、キャップリング43を介して圧力室39側に付勢されている。圧力調整スプリング34の付勢力は、ステム44のねじ込み量によって設定される。このステム44をカバー45が覆っている。
本実施形態では、下流側燃料通路13の燃料圧力が燃料噴射弁11の燃料噴射に適切な燃料圧力となるように、圧力調整スプリング34の付勢力は設定されている。本実施形態において、レギュレータ3に設定される「制御圧P3」は、燃料噴射弁11の燃料噴射に適切な燃料圧力である。
【0016】
下流側燃料通路13の燃料圧力は圧力室39に供給される。圧力室39の燃料圧力がダイヤフラム35に作用する力とポペットスプリング43の付勢力との和が、圧力調整スプリング34の付勢力より大きいとき、ポペット弁33はポペットスプリング43の付勢力によって弁座42に着座する。このため、流路38、41が閉塞し、上流側燃料通路12と下流側燃料通路13との間の燃料の流通が規制される。
一方、圧力室39の燃料圧力がダイヤフラム35に作用する力とポペットスプリング43の付勢力との和が、圧力調整スプリング34の付勢力より小さくなると、ポペット弁33の一端がダイヤフラム35に押圧されることで、ポペット弁33は弁座42から離座する。このため、流路38、41が開放され、上流側燃料通路12と下流側燃料通路13との間を燃料が流通する。
【0017】
図1に示すように、圧力検出器4は、上流側燃料通路12の燃料圧力を検出する。圧力検出器4は、燃料通路内の圧力損失の影響を軽減可能な程度に、レギュレータ3の近傍に設けられることが望ましい。圧力検出器4の検出した燃料圧力は、ECU5に伝送される。
蓄圧器14は、ケース内に形成された蓄圧室15にピストン16を備えている。ピストン16の上流側燃料通路12と反対側には図示しないエアダンパ又はスプリングなどの付勢部材が設けられている。ピストン16は、付勢部材によって上流側燃料通路12側へ付勢され、上流側燃料通路12から蓄圧室15に供給される燃料圧力によって変位可能である。燃料ポンプ2の駆動により上流側燃料通路12が昇圧され上流側燃料通路12に燃料が満たされると、蓄圧器14は、蓄圧を開始する。また、蓄圧器14は、燃料ポンプ2が駆動を停止し、燃料噴射弁11の燃料噴射により上流側燃料通路12の燃料圧力が低下すると、上流側燃料通路12へ燃料を排出する。
【0018】
燃料ポンプ2の吐出口側に設けられた逆止弁17は、上流側燃料通路12から燃料ポンプ2に燃料が逆流することを防ぐ。また、上流側燃料通路12と燃料タンク8とを接続するリリーフ通路18に設けられたリリーフ弁19は、上流側燃料通路12の燃料圧力が所定の制限圧を超えた時に開弁し、上流側燃料通路12の燃料を燃料タンク8に排出する。
【0019】
次に、ECU5の処理を図3に基づいて説明する。
ECU5は、内燃機関の始動と共に処理を開始する(S1)。ECU5は、内燃機関が始動されると、リレー6をオンする(S2)。これにより、バッテリ7から燃料ポンプ2に電力が供給され、燃料ポンプ2が駆動する(S3)。
ECU5は、圧力検出器4から伝送される上流側燃料通路12の燃料圧力をモニターする(S4、S5)。ECU5は、圧力検出器4から伝送される燃料圧力と、ECU5のメモリに予め記憶された第1設定圧P1及び第2設定圧P2とを比較する。ここで、第1設定圧P1、第2設定圧P2及びレギュレータ3に設定された制御圧P3は、P1>P2≧P3の関係を満たしている。
【0020】
ECU5は、圧力検出器4から伝送される燃料圧力が第1設定圧P1より大きくなるまでリレー6を継続してオンする。ECU5は、圧力検出器4から伝送される燃料圧力が第1設定圧P1より大きくなると、リレー6をオフする(S6)。これにより、バッテリ7から燃料ポンプ2への電力供給が停止し、燃料ポンプ2は駆動を停止する(S7)。
燃料噴射弁11の燃料噴射によりレギュレータ3の流路38、41を通り、上流側燃料通路12から下流側燃料通路13へ燃料が流れると、上流側燃料通路12の燃料圧力が低下する。ECU5は、圧力検出器4から伝送される燃料圧力が第2設定圧P2より小さくなるまで、リレー6を継続してオフする。ECU5は、圧力検出器4から伝送される燃料圧力が第2設定圧より小さくなると、ECU5はリレー6をオンし、燃料ポンプ2を駆動する(S2、S3)。ECU5は、圧力検出器4から伝送される燃料圧力が第1設定圧P1より大きくなるまでリレー6を継続してオンする。このように、ECU5は、圧力検出器4から伝送される燃料圧力をモニターし、その燃料圧力が第1設定圧P1と第2設定圧P2の間になるように、燃料ポンプ2の駆動を制御する。
【0021】
本実施形態による上流側燃料通路12の燃料圧力、及び下流側燃料通路13の燃料圧力の変化を図4に示す。図4では、ECU5からリレー6に伝送する信号を「ポンプ駆動信号」として示す。また、上流側燃料通路12の燃料圧力を実線Aに示し、下流側燃料通路13の燃料圧力を実線Bに示す。
内燃機関の始動と共にECU5がリレー6をオンし、燃料ポンプ2が駆動されることで、時刻0〜T1の間に上流側燃料通路12の燃料圧力と、下流側燃料通路13の燃料圧力とが上昇する。下流側燃料通路13の燃料圧力が制御圧P3より小さいとき、レギュレータ3が開弁しているので、上流側燃料通路12と下流側燃料通路13の燃料圧力は略同様に上昇する。その後、下流側燃料通路13の燃料圧力が制御圧P3になると、下流側燃料通路13の燃料圧力は、レギュレータ3の動作により、制御圧P3に維持される。一方、上流側燃料通路12の燃料圧力は、制御圧P3以上に上昇する。
【0022】
時刻T1で上流側燃料通路12の燃料圧力が第1設定圧P1より大きくなると、ECU5がリレー6をオフし、燃料ポンプ2の駆動が停止する。すると、燃料噴射弁11からの燃料噴射により、上流側燃料通路12から下流側燃料通路13に燃料が流れるので、上流側燃料通路12の燃料圧力は徐々に低下する。燃料ポンプ2の駆動停止、及び燃料噴射弁11からの燃料噴射により、蓄圧器14から上流側燃料通路12に燃料が排出される。レギュレータ3から燃料タンク8に燃料がリターンされることなく、さらに、蓄圧器14から上流側燃料通路12へ燃料が排出されることで、上流側燃料通路12の燃料圧力が低下する時間が長くなる。
一方、レギュレータ3の動作により、上流側燃料通路12から下流側燃料通路13へ燃料が流れるので、下流側燃料通路13の燃料圧力は、制御圧P3に維持される。
【0023】
時刻T2において、上流側燃料通路12の燃料圧力が第2設定圧P2より小さくなると、ECU5がリレー6をオンし、燃料ポンプ2が駆動される。このため、時刻T2以降、上流側燃料通路12の燃料圧力が上昇する。これと共に、蓄圧器14に燃料が蓄圧される。
時刻T3で上流側燃料通路12の燃料圧力が第1設定圧P1より大きくなると、ECU5がリレー6をオフし、燃料ポンプ2の駆動が停止する。
内燃機関の運転中、上述の動作が繰り返される。第1設定圧P1と第2設定圧P2は、制御圧P3以上に設定されているので、レギュレータ3が開弁するとき、上流側燃料通路12から下流側燃料通路13へ燃料が安定して供給される。このため、下流側燃料通路13の燃料圧力は常に制御圧P3に維持される。
また、上流側燃料通路12の燃料圧力の減圧は、燃料噴射弁11からの燃料噴射量のみに起因するものであるので、燃料ポンプ2を駆動及び停止するポンプ駆動信号のインターバルが長い。
【0024】
次に比較例による燃料供給装置の構成を図5に示す。
図5において、上述した第1実施形態の構成と対応する構成には、符号の末尾に0を付けて説明を省略する。
比較例では、レギュレータ30より上流側の燃料通路と下流側の燃料通路とが常に連通している。レギュレータ30と燃料タンク80との間にリターン通路49が設けられている。レギュレータ30は、燃料通路90の燃料圧力が制御目標とする制御圧Q3より大きくなると開弁し、燃料通路90の燃料をリターン通路49から燃料タンク80に戻す。ECU50は、燃料通路90の燃料圧力が第1設定圧Q1より大きくなると燃料ポンプ20を駆動し、燃料通路90の燃料圧力が第2設定圧Q2より小さくなると燃料ポンプ20の駆動を停止する。第1設定圧Q1、第2設定圧Q2及び制御圧Q3は、Q1>Q3>Q2の関係にある。
【0025】
比較例による燃料供給装置の燃料通路90の燃料圧力の変化を図6に示す。
内燃機関の始動と共にECU50がリレー60をオンし、燃料ポンプ20が駆動されると、時刻0〜V1の間に燃料通路90の燃料圧力が上昇する。
時刻V1で燃料通路90の燃料圧力が第1設定圧Q1より大きくなると、ECU50がリレー60をオフし、燃料ポンプ20の駆動が停止する。すると、燃料通路90の燃料圧力が制御圧Q3となるまで、レギュレータ30のリターン通路49からの燃料排出、及び燃料噴射弁110からの燃料噴射によって燃料通路90の燃料圧力は急速に低下する。その後、燃料通路90の燃料圧力が制御圧Q3より小さくなると、燃料噴射弁110からの燃料噴射によって燃料通路90の燃料圧力は低下する。
【0026】
時刻V2において、燃料通路90の燃料圧力が第2設定圧Q2より小さくなると、ECU50がリレー60をオンし、燃料ポンプ20が駆動される。このため、時刻V2以降、燃料通路90の燃料圧力が上昇する。
時刻V3で燃料通路90の燃料圧力が第1設定圧Q1より大きくなると、ECU50がリレー60をオフし、燃料ポンプ20の駆動が停止する。
内燃機関の運転中、上述の動作が繰り返される。第1設定圧Q1と第2設定圧Q2は、制御圧Q3の上下に設定されているので、燃料通路90の燃料圧力は、第1設定圧Q1と第2設定圧Q2との間で変動を繰り返す。
また、燃料通路90の燃料圧力の減圧は、レギュレータ30のリターン通路49からの燃料排出、及び燃料噴射弁110からの燃料噴射に起因するものである。このため、第1実施形態と比較して、燃料ポンプ20を駆動及び停止するポンプ駆動信号のインターバルが短い。
【0027】
第1実施形態では、以下の作用効果を奏する。
(1)本実施形態では、レギュレータ3は、下流側燃料通路13の燃料圧力に応じて流路38、41を開放及び閉塞することで、下流側燃料通路13の燃料圧力を制御圧P3に調節する。ECU5は、上流側燃料通路12の燃料圧力が第1設定圧P1より大きくなると燃料ポンプ2の駆動を停止し、第2設定圧P2より小さくなると燃料ポンプ2を駆動する。第1設定圧P1及び第2設定圧P2は、制御圧P3以上の値に設定されている。
これにより、燃料ポンプ2から燃料通路9に圧送された燃料は、燃料タンク8に戻されることなく、燃料噴射弁11に供給される。つまり、レギュレータ3から無駄な燃料排出がなくなり、上流側燃料通路12の燃料圧力の低下が燃料噴射のみに起因するものとなる。このため、上流側燃料通路12の燃料圧力が第1設定圧P1から第2設定圧P2に低下する時間が長くなる。したがって、燃料供給装置1の燃料供給効率が向上し、燃料ポンプの駆動を停止する時間が長くなる。この結果、燃料ポンプ2の消費電力を低減することが可能となり、内燃機関の燃費を低減することができる。
【0028】
(2)本実施形態では、上流側燃料通路12の燃料圧力は、ECU5によって制御圧P3以上に維持される。このため、レギュレータ3が流路38、41を開放するとき、上流側燃料通路12から下流側燃料通路13に燃料が安定して供給される。したがって、燃料噴射弁11に供給される燃料圧力が制御圧P3に維持されるので、燃料噴射弁11から噴射される燃料の噴霧状態を良好にすることができる。よって、内燃機関の燃焼効率が向上し、排ガス中のHCを低減することができる。
【0029】
(3)本実施形態では、制御圧P3以上となった燃料を燃料タンク8に戻すためのリターン通路49を廃止することが可能になる。これにより、燃料通路の接続箇所等から生じるエバポエミッションを低減することができる。また、燃料配管の加工コストを低減することができる。
【0030】
(4)本実施形態では、蓄圧器14からの燃料吐出により、燃料ポンプ2の駆動及び停止のインターバルを長くすることが可能になる。したがって、燃料ポンプ2の消費電力を低減することができる。
また、リターン通路49などからの燃料排出がないので、蓄圧器14に蓄圧される燃料を有効に使用することが可能になる。したがって、蓄圧器14を小型化することができる。
【0031】
(第2実施形態)
本発明の第2実施形態による燃料供給装置を図7及び図8に示す。以下複数の実施形態において上述した第1実施形態と実質的に同一の構成には同一の符号を付して説明を省略する。
本実施形態では、図7に示すように、圧力検出手段としての変位検出器21が蓄圧器14と一体に構成されている。蓄圧器14の備えるピストン16は、上流側燃料通路12の燃料圧力が第1設定圧P1のとき第1設定変位D1に位置し、第2設定圧P2のとき第2設定変位D2に位置し、制御圧P3のとき第3設定変位D3に位置する。このため、変位検出器21は、ピストン16の変位により、上流側燃料通路12の燃料圧力を検出することが可能である。変位検出器21の検出したピストン変位は、ECU5に伝送される。
【0032】
ECU5の処理を図8に基づいて説明する。
内燃機関が始動されると、ECU5は、リレー6をオンし、燃料ポンプ2が駆動する(S1〜S3)。
ECU5は、変位検出器21から伝送されるピストン変位をモニターする(S8、S9)。ECU5は、変位検出器21から伝送されるピストン変位と、ECU5のメモリに予め記憶された第1設定変位D1及び第2設定変位D2とを比較する。第1設定変位D1、第2設定変位D2及び第3設定変位D3は、D1>D2≧D3の関係を満たしている。
【0033】
ECU5は、変位検出器21から伝送されるピストン変位が第1設定変位D1より大きくなると、リレー6をオフする(S6)。これにより、燃料ポンプ2は駆動を停止する(S7)。
その後、ECU5は、変位検出器21から伝送されるピストン変位が第1設定変位D1から第2設定変位D2より小さくなるまで、リレー6を継続してオフする。そして、変位検出器21から伝送されるピストン変位が第2設定変位D2より小さくなると、リレー6をオンする(S2)。
続いて、ECU5は、変位検出器21から伝送されるピストン変位が第2設定変位D2から第1設定変位D1より大きくなるまでリレー6を継続してオンする。このように、ECU5は、変位検出器21から伝送されるピストン変位をモニターし、燃料ポンプ2の駆動を制御する。
【0034】
本実施形態では、上述した第1実施形態と同様の作用効果を奏することができる。
さらに、本実施形態では、蓄圧器14と変位検出器21とを一体に構成することで、上流側燃料通路12に蓄圧器14と別体で圧力検出器4を設けることなく、燃料供給装置の構成を簡素にすることができる。
第1設定変位D1及び第2設定変位D2は、第3設定変位D3以上に設定されているので、上流側燃料通路12の燃料圧力を制御圧P3以上に維持することが可能となる。このため、レギュレータ3が燃料通路を開放するとき、上流側燃料通路12から下流側燃料通路13に燃料が安定して供給される。したがって、下流側燃料通路13の燃料圧力を制御圧P3に維持することができる。
【0035】
(第3実施形態)
本発明の第3実施形態による燃料供給装置を図8に示す。本実施形態の燃料供給装置は、インジェクタから内燃機関の各気筒に燃料を直接噴射する直噴システムに適用される。本実施形態では、レギュレータ3とフューエルレール10との間の下流側燃料通路13に高圧ポンプ22が設けられている。高圧ポンプ22は、ECU5の制御信号に基づき、電子駆動装置(EDU23)から電力を供給されて駆動する。高圧ポンプ22は、下流側燃料通路13を流れる燃料を加圧し、フューエルレール10に圧送する。
【0036】
レギュレータ3は、下流側燃料通路13の燃料圧力に応じて流路38、41を開放及び閉塞することで、下流側燃料通路13の燃料圧力を制御圧P3に調節する。本実施形態において、「制御圧P3」は、高圧ポンプの作動に適切な燃料圧力である。
ECU5は、上流側燃料通路12の燃料圧力が第1設定圧P1より大きくなると燃料ポンプ2の駆動を停止し、第2設定圧P2より小さくなると燃料ポンプ2を駆動する。第1設定圧P1、第2設定圧P2及び制御圧P3は、P1>P2≧P3の関係を満たしている。
【0037】
本実施形態では、燃料ポンプ2から燃料通路9に圧送された燃料は、燃料タンク8に戻されることなく、高圧ポンプ22に供給される。このため、無駄な燃料排出がなくなり、燃料ポンプ2の駆動を停止する時間が長くなるので、燃料ポンプ2の消費電力を低減することができる。
さらに、本実施形態では、高圧ポンプ22に安定した燃料圧力で燃料を供給することが可能となるので、高圧ポンプ22のポンプ効率を高めることが可能になる。
【0038】
(他の実施形態)
上述した複数の実施形態では、ECU5は、圧力検出器4の検出した燃料圧力が第1設定圧P1より大きくなるとリレー6をオフし、圧力検出器4の検出した燃料圧力が第2設定圧P2より小さくなるとリレー6をオンした。これに対し、本発明では、ECUは、圧力検出手段の検出する燃料圧力が制御圧以上となるように、燃料ポンプに供給する電力を調節することで、燃料ポンプの燃料吐出量を制御してもよい。
本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲において、種々の形態で実施することができる。
【符号の説明】
【0039】
1 ・・・燃料供給装置
2 ・・・燃料ポンプ
3 ・・・レギュレータ(圧力調整手段)
4 ・・・圧力検出器(圧力検出手段)
5 ・・・ECU(制御手段)
8 ・・・燃料タンク
9 ・・・燃料通路
11・・・燃料噴射弁
12・・・上流側燃料通路(燃料通路)
13・・・下流側燃料通路(燃料通路)
14・・・蓄圧器
16・・・ピストン
21・・・変位検出器(圧力検出手段)
22・・・高圧ポンプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料タンク内の燃料を圧送する燃料ポンプと、
前記燃料ポンプから圧送された燃料を噴射する燃料噴射弁と、
前記燃料ポンプと前記燃料噴射弁とを接続する燃料通路に設けられる圧力調整手段であって、前記圧力調整手段より下流側の燃料圧力が制御目標とする制御圧より低いとき燃料通路を開放し、前記圧力調整手段より下流側の燃料圧力が前記制御圧より高いとき燃料通路を閉塞する圧力調整手段と、
前記圧力調整手段より上流側の燃料圧力を検出する圧力検出手段と、
前記圧力検出手段の検出する燃料圧力が前記制御圧以上となるように前記燃料ポンプの駆動を制御する制御手段と、を備えることを特徴とする燃料供給装置。
【請求項2】
前記制御手段は、前記圧力検出手段の検出した燃料圧力が第1設定圧より大きくなると前記燃料ポンプの駆動を停止し、前記圧力検出手段の検出した燃料圧力が第2設定圧より小さくなると前記燃料ポンプを駆動し、
前記第1設定圧をP1、前記第2設定圧をP2、前記制御圧をP3とすると、
P1>P2≧P3の関係にあることを特徴とする請求項1に記載の燃料供給装置。
【請求項3】
前記燃料ポンプが駆動すると燃料を蓄圧し、前記燃料ポンプが駆動を停止すると、前記燃料噴射弁の燃料噴射に伴い、燃料を排出する蓄圧器を備えることを特徴とする請求項2に記載の燃料供給装置。
【請求項4】
前記蓄圧器は、前記圧力調整手段より上流側の燃料圧力に応じて変位するピストンを有し、
前記圧力検出手段は、前記ピストンの変位により前記圧力調整手段より上流側の燃料圧力を検出することを特徴とする請求項3に記載の燃料供給装置。
【請求項5】
前記圧力調整手段と前記燃料噴射弁との間の燃料通路を流れる燃料を加圧し、前記燃料噴射弁に圧送する高圧ポンプを備えることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の燃料供給装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2012−122420(P2012−122420A)
【公開日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−274422(P2010−274422)
【出願日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【出願人】(000004695)株式会社日本自動車部品総合研究所 (1,981)
【Fターム(参考)】