燃料電池システム
【課題】燃料電池スタックの乾湿状態を十分にコントロールすることができる燃料電池システムを提供する。
【解決手段】燃料電池スタック1に要求される負荷に応じた状態で作動する負荷対応作動部2と、燃料電池スタック1の乾湿状態を検出する乾湿検出部(ステップS2,S4)と、負荷が小さくなる下げ過渡の場合であって、燃料電池スタック1が過湿潤又は過乾燥の状態であるときは、その過湿潤又は過乾燥の状態を解消するように、負荷対応作動部2の状態変化速度を制御する変化速度制御部(ステップS3,S5)と、を備える。
【解決手段】燃料電池スタック1に要求される負荷に応じた状態で作動する負荷対応作動部2と、燃料電池スタック1の乾湿状態を検出する乾湿検出部(ステップS2,S4)と、負荷が小さくなる下げ過渡の場合であって、燃料電池スタック1が過湿潤又は過乾燥の状態であるときは、その過湿潤又は過乾燥の状態を解消するように、負荷対応作動部2の状態変化速度を制御する変化速度制御部(ステップS3,S5)と、を備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、燃料電池システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1では、燃料電池スタックの状態推定結果に基づいて、燃料電池スタックの湿潤状態を制御していた。特に特許文献1では燃料電池を乾燥状態で運転させることで水分量の調整に係る操作を不要にするものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−135066号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前述した従来の手法では電解質膜の水分量が低減された状態となるため、たとえば要求出力が大きい場合などに発電量が不十分となるおそれがあった。
【0005】
本発明は、このような従来の問題点に着目してなされたものであり、燃料電池スタックの乾湿状態を十分にコントロールすることができる燃料電池システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は以下のような解決手段によって前記課題を解決する。
【0007】
本発明の燃料電池システムは、燃料電池スタックに要求される負荷に応じた状態で作動する負荷対応作動部と、前記燃料電池スタックの乾湿状態を検出する乾湿検出部と、を備える。そして負荷が小さくなる下げ過渡の場合であって、燃料電池スタックが過湿潤又は過乾燥の状態であるときは、その過湿潤又は過乾燥の状態を解消するように、負荷対応作動部の状態変化速度を制御する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、負荷が小さくなる下げ過渡の場合に負荷対応作動部の状態変化速度を制御することで、燃料電池スタックの乾湿状態をコントロールして過湿潤又は過乾燥の状態を早期に解消できるようになったのである。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明による燃料電池システムの第1実施形態を示す図である。
【図2】燃料電池スタックにおける電解質膜の反応を説明する模式図である。
【図3】本発明による燃料電池システムのコントローラーが実行する制御フローチャートを示す図である。
【図4】MEAの乾湿状態とインピーダンスとの相関を示す図である。
【図5】空気供給コンプレッサーの速度と電力との相関を示す図である。
【図6】第1実施形態による効果を説明する図である。
【図7】第1実施形態によって過乾燥状態を解消する手法を説明する図である。
【図8】本発明による燃料電池システムの第2実施形態を示す図である。
【図9】本発明による燃料電池システムの第3実施形態を示す図である。
【図10】本発明による燃料電池システムの第4実施形態を示す図である。
【図11】本発明による燃料電池システムの第5実施形態を示す図である。
【図12】本発明による燃料電池システムの第6実施形態の作用効果を説明する図である。
【図13】燃料電池システムのコントローラーが実行する制御フローチャートの変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下では図面等を参照して本発明を実施するための形態について、さらに詳しく説明する。
(第1実施形態)
図1は、本発明による燃料電池システムの第1実施形態を示す図である。
【0011】
はじめに図1を参照して、本発明による燃料電池システムの一例について説明する。
【0012】
燃料電池システムは、燃料電池スタック1と、空気供給コンプレッサー2と、水素タンク3と、冷媒ポンプ5と、ラジエーター6と、温度センサー7と、コントローラー9と、を備える。
【0013】
燃料電池スタック1は、カソードガス及びアノードガスが供給されて電力を発生する。
【0014】
空気供給コンプレッサー2は、カソードライン21に設けられる。空気供給コンプレッサー2は、燃料電池スタック1に対して要求される負荷に応じてカソードガス(空気)を供給する。要求される負荷が大きければ空気供給コンプレッサー2は多量のカソードガスを燃料電池スタック1に供給する。要求される負荷が小さければ空気供給コンプレッサー2は少量のカソードガスを燃料電池スタック1に供給する。
【0015】
水素タンク3は、アノードライン31に設けられる。水素タンク3は、アノードガス(水素)を収容する密閉容器である。水素タンク3は、収容しているアノードガス(水素)を燃料電池スタック1に供給する。水素タンク3の流量は、流量調整バルブ4によって調整される。
【0016】
冷媒ポンプ5は、燃料電池スタック1に供給する冷媒(冷却水)を循環する。冷媒ポンプ5は、冷媒ライン51に設けられる。
【0017】
ラジエーター6は、冷媒ポンプ5によって循環される冷媒の熱を放熱し、冷媒の過熱を防止する。
【0018】
温度センサー7は、冷媒ライン51に設けられる。温度センサー7は、冷媒温を検出する。
【0019】
コントローラー9は、燃料電池スタック1の出力負荷を設定し燃料電池スタック1の運転を制御する。
【0020】
図2は、燃料電池スタックにおける電解質膜の反応を説明する模式図である。
【0021】
上述のように、燃料電池スタック1は、反応ガス(カソードガスO2、アノードガスH2)が供給されて発電する。燃料電池スタック1は、電解質膜の両面にカソード電極触媒層及びアノード電極触媒層が形成された膜電極接合体(Membrane Electrode Assembly;MEA)が数百枚積層されて構成される。各膜電極接合体(MEA)は、カソード電極触媒層及びアノード電極触媒層において以下の反応が、負荷に応じて進行して発電する。なお図2(A)はMEA1枚を示している。ここではMEAにカソードガスが供給され(カソードイン)対角側から排出されながら(カソードアウト)、アノードガスが供給され(アノードイン)対角側から排出される(アノードアウト)例を示している。
【0022】
【化1】
【0023】
図2(B)に示すように、反応ガス(カソードガスO2)がカソード流路を流れるにつれて上式(1)の反応が進行し、水蒸気が生成される。そしてカソード流路の下流側では相対湿度が高くなり、カソード側とアノード側の相対湿度差をドライビングフォースとして、水が逆拡散しアノード上流側を加湿する。この水分がさらにMEAからアノード流路に蒸発してアノード流路を流れる反応ガス(アノードガスH2)を加湿する。そしてアノード下流側に運ばれてアノード下流(カソード上流)のMEAを加湿する。
【0024】
上記反応によって効率よく発電するには、電解質膜が適度な湿潤状態であることが必要である。負荷が大きいときには、負荷に応じて多量の反応ガス(カソードガスO2、アノードガスH2)を供給する。これによって大きな発電反応が生じる。そして上式(1)の反応によって多量の水分が生成される。この水分は、アノード流路に蒸発してアノードガスH2によって運ばれてアノード下流(カソード上流)のMEAを加湿することとなる。負荷が小さくなると、反応ガス(カソードガスO2、アノードガスH2)の供給量も負荷に応じて少なくする。これによって発電反応も小さくなり、上式(1)の反応によって生成される水分も少なくなる。このように負荷に応じて反応ガス(カソードガスO2、アノードガスH2)の供給量を適度に調整することで、適度な水分が生成され、電解質膜が負荷に応じた適度な湿潤状態に保たれる。
【0025】
しかしながら、負荷に応じた量の反応ガス(カソードガスO2、アノードガスH2)を供給している限りは、一旦水分の需給バランスが崩れて、たとえば電解質膜が過湿潤状態になった場合に、需給バランスを回復できない。たとえば冷間始動時には、生成水が蒸発しにくいので、過湿潤状態になる可能性があるが、そのような場合に早期に過湿潤状態が解消されることが望まれる。
【0026】
そこで本件発明者らは、鋭意研究を重ねて、運転状態の変化など何らかの要因で一旦需給バランスが崩れて電解質膜が過湿潤/過乾燥の状態を早期に解消する手法を知見した。具体的な手法を以下に説明する。
【0027】
図3は、本発明による燃料電池システムのコントローラーが実行する制御フローチャートを示す図である。
【0028】
ステップS1においてコントローラーは、負荷が小さくなる下げ過渡であるか否かを判定する。なお下げ過渡の具体的なシーンとしては、ドライバーがアクセルペダルを戻した場合などがある。コントローラーは、下げ過渡であればステップS2へ処理を移行し、下げ過渡でなければ一旦処理を抜ける。
【0029】
ステップS2においてコントローラーは、MEAが適度な状態よりも湿潤度が高い過湿潤状態であるか否かを判定する。コントローラーは、過湿潤状態であればステップS3へ処理を移行し、過湿潤状態でなければステップS4へ処理を移行する。なおMEAの湿潤度、すなわち乾湿状態はMEAのインピーダンスによって正確に検出できる。本実施形態の燃料電池システムは、従来品に比べてMEAの湿潤度が低い。
【0030】
MEAの乾湿状態とインピーダンスとの相関は、図4に示す通りであり、MEAの乾湿状態がドライ状態であるほど、MEAの乾湿状態が変化したときのインピーダンスの変化量が大きくなる。
【0031】
ステップS3においてコントローラーは、負荷に応じて作動する負荷対応作動部の状態変化速度を制御して、過湿潤状態を早期に解消する。具体的には、本実施形態では、過湿潤状態でも過乾燥状態でもない場合に比較して、空気供給コンプレッサー2の状態をゆっくりと変化させる。すなわち、空気供給コンプレッサー2は、要求される負荷が大きければ大量のカソードガスを供給するように運転し、要求される負荷が小さければ小量のカソードガスを供給するように運転する。負荷が小さくなる下げ負荷では、カソードガスを大量に供給する状態から、小量だけ供給する状態に移行する。このとき、このステップS3では、過湿潤状態でも過乾燥状態でもない場合に比較して、コンプレッサー2の回転速度を低下させる速度を小さくして移行させるのである。
【0032】
なお空気供給コンプレッサー2の速度は、図5に示すように、空気供給コンプレッサー2に供給される電力で調整できる。大きな電力を供給するほど、コンプレッサー2の回転速度を低下させる速度を小さくして移行させることができる。また空気供給コンプレッサー2の発電電力を回収して大きく回生させるほど、コンプレッサー2の回転速度を低下させる速度を大きくして移行こととなる。空気供給コンプレッサー2に電力を供給せず、かつ空気供給コンプレッサー2の発電電力の回収もしなければ、フリーラン状態になる。
【0033】
ステップS4においてコントローラーは、MEAが適度な状態よりも湿潤度が低い過乾燥状態であるか否かを判定する。コントローラーは、過乾燥状態であればステップS5へ処理を移行し、過乾燥状態でなければ一旦処理を抜ける。
【0034】
ステップS5においてコントローラーは、負荷に応じて作動する負荷対応作動部の状態変化速度を制御して、過乾燥状態を早期に解消する。具体的には、本実施形態では、過湿潤状態でも過乾燥状態でもない場合に比較して、空気供給コンプレッサー2の状態をコンプレッサー2の回転速度を低下させる速度を大きくして変化させる。すなわち、空気供給コンプレッサー2は、要求される負荷が大きければ大量のカソードガスを供給するように運転し、要求される負荷が小さければ小量のカソードガスを供給するように運転する。
【0035】
負荷が小さくなる下げ負荷では、カソードガスを大量に供給する状態から、小量だけ供給する状態に移行する。このとき、このステップS5では、過湿潤状態でも過乾燥状態でもない場合に比較して、コンプレッサー2の回転速度を低下させる速度を大きくして移行させるのである。
【0036】
図6は、第1実施形態による効果を説明する図である。そして図6(A)は、MEAの乾湿状態が過不足なく適度である場合に、負荷が150Aから15Aに低下する下げ過渡のときを示す。
【0037】
このとき、空気供給コンプレッサー2は、負荷に応じたカソードガス(空気)を供給している。たとえば本実施形態では、負荷が150Aのときには、それに対応して120m3(nor)/hr.(120m3/hr.(ntp))の空気を供給する。そして負荷が1/10の15Aに低下したら、それに対応して空気量も1/10にして120m3(nor)/hr.(120m3/hr.(ntp))の空気を供給する。負荷が低下している間も、負荷に応じた流量の空気を供給する。このようにすれば、電解質膜の湿潤状態が適度な湿潤状態に保たれる。
【0038】
しかしながら、このような手法では、何らかの要因で電解質膜が過湿潤又は過乾燥の状態になった場合に、適度な湿潤状態に回復することができない。たとえば冷間始動時には、生成水が蒸発しにくいので、過湿潤状態になる可能性があるが、そのような過湿潤状態を解消できない。
【0039】
図6(B)は、比較形態によって過湿潤状態を解消する手法を説明する図である。
【0040】
これに対して、上述の特許文献1では、たとえば電解質膜が過湿潤状態であったら、空気供給量を増量する。図6(B)では、時刻t1まで、負荷が150Aのときには、図6(A)の場合に比べて増量した180m3(nor)/hr.(180m3/hr.(ntp))の空気を供給する。そして時刻t2で負荷が1/10の15Aに低下したら、それに対応して空気量も1/10にして180m3(nor)/hr.(180m3/hr.(ntp))の空気を供給する。負荷が低下している時刻t1から時刻t2までの間も、一定割合で増量した空気を供給する。このように空気を増量すれば、反応に本来必要な量よりも過剰な空気が供給されるので、カソード側で生成される水分が、その余剰空気によってMEA部分から除去される。そのため、電解質膜が徐々に乾燥していき、適度な湿潤状態に回復する。しかしながら、このような手法では空気供給量が不十分なので回復するまでの時間を要する。
【0041】
図6(C)は、本実施形態によって過湿潤状態を解消する手法を説明する図である。
【0042】
これらに対して、本実施形態では、特に負荷が小さくなる下げ過渡に注目し、図3に示すフローチャートに沿って空気供給コンプレッサー2を制御するようにしたのである。
【0043】
時刻t1で下げ過渡運転であることが判定され(ステップS1でYes)、MEAが過加湿状態であるときは(ステップS2でYes)、負荷対応作動部の状態変化速度を制御する(ステップS3)。具体的には、本実施形態では、過湿潤状態でも過乾燥状態でもない場合に比較して、空気供給コンプレッサー2の状態をコンプレッサー2の回転速度を低下させる速度を小さくして変化させる。このようにすれば、負荷が15Aに低下した時刻t2においても、90m3(nor)/hr.(90m3/hr.(ntp))程度の空気が供給される。すると、下げ過渡時に、負荷に応じて本来必要なカソードガスよりも余剰な空気が供給されることとなるので、その余剰空気によって、カソード側で生成される水分がMEA部分から除去されて、電解質膜が迅速に乾燥していき、時刻t3で湿潤限界を上回ることとなる。このように本実施形態によれば、図6(B)の比較形態に比べて、過湿潤状態を早期に解消できるのである。
【0044】
図7は、第1実施形態によって過乾燥状態を解消する手法を説明する図である。
【0045】
MEAが過乾燥状態のときは、以下のように制御する。すなわち時刻t1で下げ過渡運転であることが判定され(ステップS1でYes)、MEAが過乾燥状態であるときは(ステップS4でYes)、負荷対応作動部の状態変化速度を制御する(ステップS5)。具体的には、本実施形態では、過湿潤状態でも過乾燥状態でもない場合に比較して、空気供給コンプレッサー2の状態を迅速に変化させる。このようにすれば、負荷が15Aに低下した時刻t2よりも前の時刻t4から120m3(nor)/hr.(120m3/hr.(ntp))の空気が供給されることとなる。すると、下げ過渡時に、負荷に応じて本来必要なカソードガスよりも少ない空気しか供給されないので、カソード側で生成される水分のMEA部分から除去される量が減少するため、電解質膜が湿潤度が上がって、時刻t5で乾燥限界を下回ることとなる。
【0046】
このように本実施形態では、下げ過渡時に空気供給コンプレッサー2の状態を変化させることに着目した。そしてMEAか過湿潤状態のときには、過湿潤状態でも過乾燥状態でもない場合に比較して、空気供給コンプレッサー2の状態をゆっくりと変化させる。またMEAか過乾燥状態のときには、過湿潤状態でも過乾燥状態でもない場合に比較して、空気供給コンプレッサー2の状態を迅速に変化させる。このようにすることで、過湿潤状態/過乾燥状態を早期に解消できるのである。
【0047】
なお 燃料電池スタックが過乾燥状態であるときには、発電要求カソードガス流量、希釈要求カソードガス流量及び調圧カソードガス流量のなかで最も大きい流量を下回らないように、カソードガス流量を迅速に減少することが望ましい。カソードガス流量を減少させるのが迅速すぎるとスタック発電要求最低流量(ストイキ1)を下回って発電不能になるおそれがある。また、調圧に必要な最低流量を下回ると調圧できなくなるおそれがある。さらに、カソード排出ガスに排水素を混ぜて排気しているシステムでは、排水素濃度が過大になるおそれがある。しかしながら、燃料電池スタックが過乾燥状態であるときには、発電要求カソードガス流量、希釈要求カソードガス流量及び調圧カソードガス流量のなかで最も大きい流量を下回らないようにすることで、それらを防止できるのである。
【0048】
(第2実施形態)
図8は、本発明による燃料電池システムの第2実施形態を示す図である。
【0049】
本実施形態の燃料電池システムは、カソードライン21から一旦分岐して燃料電池スタックをバイパスした後、再びカソードライン21に合流するバイパスライン22が設けられている。そしてカソードライン21の燃料電池スタック1よりも下流であってバイパスライン22に合流する部分よりも上流に流量調整バルブ210が設けられる。またバイパスライン22に流量調整バルブ220が設けられる。このような流量調整バルブ210及び流量調整バルブ220の開度を調整することでも、カソードライン21を流れるカソードガスの流量及びバイパスライン22を流れるカソードガスの流量を調整することができる。
【0050】
したがって流量調整バルブ210及び流量調整バルブ220によっても、燃料電池スタック1に供給されるカソードガスの流量を調整することができ、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0051】
(第3実施形態)
図9は、本発明による燃料電池システムの第3実施形態を示す図である。
【0052】
本実施形態の燃料電池システムは、カソードライン21の燃料電池スタック1よりも上流に圧力センサー212が設けられている。またカソードライン21の燃料電池スタック1よりも下流に圧力調整バルブ211が設けられている。この圧力調整バルブ211は、負荷に応じて、燃料電池スタックに供給するカソードガスの圧力を変化させるように作動する。
【0053】
そして、圧力調整バルブ211は、負荷が小さくなる下げ過渡の場合であって、燃料電池スタックが過湿潤状態であるときはカソードガス圧力を、過湿潤状態でも過乾燥状態でもない場合に比較して、迅速に減少させる(過湿潤状態でも過乾燥状態でもない場合に比較して圧力調整バルブ211を閉じる速度を速くする)。このようにすることで、燃料電池スタックを通過するカソードガスの流量が大きくなっている時間が、過湿潤状態でも過乾燥状態でもない場合に比較して長くなり、早期に過湿潤状態が解消される。
【0054】
また圧力調整バルブ210は、負荷が小さくなる下げ過渡の場合であって、燃料電池スタックが過乾燥状態であるときはカソードガス圧力を、過湿潤状態でも過乾燥状態でもない場合に比較して、ゆっくりと減少させる(過湿潤状態でも過乾燥状態でもない場合に比較して圧力調整バルブ211を閉じる速度を遅くする)。このようにすることで、燃料電池スタックを通過するカソードガスの流量が小さくなっている時間が、過湿潤状態でも過乾燥状態でもない場合に比較して長くなり、早期に過乾燥状態が解消される。
【0055】
(第4実施形態)
図10は、本発明による燃料電池システムの第4実施形態を示す図である。
【0056】
本実施形態の燃料電池システムは、カソードライン21の燃料電池スタック1よりも上流には加湿器213が設けられている。なおこの加湿器213としては、水タンクに貯留された水を噴射する装置や、燃料電池スタックから排出されて湿潤度が高いカソードガスと水交換する加湿器などがある。この加湿器213は、負荷に応じて、燃料電池スタックに供給するカソードガスの加湿量を変化させるように作動する。
【0057】
そして、加湿器213は、負荷が小さくなる下げ過渡の場合であって、燃料電池スタックが過湿潤状態であるときは、カソードガス加湿量を、過湿潤状態でも過乾燥状態でもない場合に比較して、迅速に減少させる(過湿潤状態でも過乾燥状態でもない場合に比較して加湿器213による加湿量を小さくする)。このようにすることで、燃料電池スタックを通過するカソードガスの湿潤度が小さくなるので、早期に過湿潤状態が解消される。
【0058】
また加湿器213は、負荷が小さくなる下げ過渡の場合であって、燃料電池スタックが過乾燥状態であるときは、カソードガス加湿量を、過湿潤状態でも過乾燥状態でもない場合に比較して、ゆっくりと減少させる(過湿潤状態でも過乾燥状態でもない場合に比較して加湿器213による加湿量を大きくする)。このようにすることで、燃料電池スタックを通過するカソードガスの湿潤度が大きくなるので、早期に過乾燥状態が解消される。
【0059】
(第5実施形態)
図11は、本発明による燃料電池システムの第5実施形態を示す図である。
【0060】
ラジエーターバイパスライン52は、冷媒ライン51のラジエーター6よりも上流の部分から分岐し、ラジエーター6の下流に設けられた冷媒調整バルブ50で再び冷媒ライン51に合流する。冷媒調整バルブ50は、負荷に応じて、ラジエーター6に流れる冷媒(冷却水)の量を調整する。冷媒調整バルブ50は、負荷が小さくなる下げ過渡の場合であって、燃料電池スタック1が過湿潤状態であるときは、冷媒温度が、過湿潤状態でも過乾燥状態でもない場合に比較してゆっくりと低下するように開度を調整する(過湿潤状態でも過乾燥状態でもない場合に比較して冷媒調整バルブ50の開度を小さくする速度を遅くする)。また冷媒調整バルブ50は、燃料電池スタック1が過乾燥状態であるときは、冷媒温度が、過湿潤状態でも過乾燥状態でもない場合に比較して迅速に低下するように開度を調整する(過湿潤状態でも過乾燥状態でもない場合に比較して冷媒調整バルブ50の開度を小さくする速度を速くする)。
【0061】
冷媒がラジエーター6に流れるほど、冷媒の温度が低下する。冷媒の温度が低いほど、燃料電池スタックの温度も低くなる。燃料電池スタックの温度が低いほど、カソード流路で生成された水が蒸発しにくくなり、外部への持ち出され量が少なくなる。したがって、燃料電池スタック1が過湿潤状態であるときは、ゆっくりと温度を低下させることで(すなわち温度の高い状態を少しでも長く保つことで)、外部への水分の持ち出され量が多くなって、過湿潤状態が解消されやすくなる。また燃料電池スタック1が過乾燥状態であるときは、迅速に温度を低下させることで(すなわち少しでも速く温度を下げることで)、
外部への持ち出され量が少なくなって、過乾燥状態が解消されやすくなる。
【0062】
(第6実施形態)
図12は、本発明による燃料電池システムの第6実施形態の作用効果を説明する図である。
【0063】
流量調整バルブ4は、上述のように、水素タンク3の流量を調整する。流量調整バルブ4は、負荷に応じて、燃料電池スタック1に供給するアノードガスの流量を調整する。
【0064】
そして、流量調整バルブ4は、負荷が小さくなる下げ過渡の場合であって、燃料電池スタック1が過湿潤状態であるときは、アノードガス流量が、過湿潤状態でも過乾燥状態でもないときに比べて迅速に低下させる(過湿潤状態でも過乾燥状態でもないときに比べて流量調整バルブ4の閉じる速度を速くする)。また流量調整バルブ4は、燃料電池スタック1が過乾燥状態であるときは、アノードガス流量が、過湿潤状態でも過乾燥状態でもないときに比べてゆっくりと低下させる(過湿潤状態でも過乾燥状態でもないときに比べて流量調整バルブ4の閉じる速度を遅くする)。
【0065】
図2を参照して上述したように、カソード流路で生成されてアノード流路に蒸発した水分は、アノードガスH2によって運ばれてアノード下流(カソード上流)のMEAを加湿することとなる。アノードガス流量が小さいほど、アノード下流への到達距離が短くなり、MEAは乾燥しやすくなる。そこで本実施形態では、負荷が小さくなる下げ過渡の場合であって、燃料電池スタック1が過湿潤状態であるときは、アノードガス流量が、過湿潤状態でないときに比べて迅速に低下するように調整するのである。このようにすれば、過湿潤状態が早期に解消される。
【0066】
またアノードガス流量が大きいほど、アノード下流への到達距離が長くなり、MEAは湿潤しやすくなる。そこで本実施形態では、燃料電池スタック1が過乾燥状態であるときは、アノードガス流量が、過乾燥状態でないときに比べてゆっくりと低下するように調整するのである。このようにすれば、過乾燥状態が早期に解消される。
【0067】
以上説明した実施形態に限定されることなく、その技術的思想の範囲内において種々の変形や変更が可能であり、それらも本発明の技術的範囲に含まれることが明白である。
【0068】
たとえば、上記実施形態においては、MEAの湿潤度、すなわち乾湿状態は、MEAのインピーダンスによって検出するとしたが、各セルの電圧を検出して、セル電圧に基づいて検出してもよい。また燃料電池スタックの総電圧に基づいて検出してもよい。さらにカソードガスの出口に設けられた露点計で検出されたガス出口露点に基づいて検出してもよい。さらにまたガス出口の液水排出速度や液水排出量などに基づいて検出してもよい。
【0069】
また上記実施形態においては、電解質膜の片面に流れるカソードガスと反対面に流れるアノードガスとは、逆方向に流れる場合を例示して説明したが、同方向に流れてもよい。そのようなものを第1〜5実施形態に適用しても、上述の効果が得られる。
【0070】
さらに第5実施形態では、負荷に応じて冷媒調整バルブ50の開度を調整することで、ラジエーター6に流れる冷媒(冷却水)の量を調整したが、冷媒の温度自体を直接調整してもよい。
【0071】
さらにまた図3のフローチャートでは、下げ過渡を判定した後に、MEAの乾湿状態を判定したが、図13のフローチャートように、MEAの乾湿状態を判定した後に、下げ過渡を判定してもよい。
【符号の説明】
【0072】
1 燃料電池スタック
2 空気供給コンプレッサー(負荷対応作動部)
3 水素タンク
4 流量調整バルブ(負荷対応作動部)
5 冷媒ポンプ
6 ラジエーター
7 温度センサー
9 コントローラー
210 流量調整バルブ(負荷対応作動部)
220 流量調整バルブ(負荷対応作動部)
211 圧力調整バルブ(負荷対応作動部)
213 加湿器(負荷対応作動部)
50 冷媒調整バルブ(負荷対応作動部)
ステップS2,S4 乾湿検出部
ステップS3,S5 変化速度制御部
【技術分野】
【0001】
この発明は、燃料電池システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1では、燃料電池スタックの状態推定結果に基づいて、燃料電池スタックの湿潤状態を制御していた。特に特許文献1では燃料電池を乾燥状態で運転させることで水分量の調整に係る操作を不要にするものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−135066号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前述した従来の手法では電解質膜の水分量が低減された状態となるため、たとえば要求出力が大きい場合などに発電量が不十分となるおそれがあった。
【0005】
本発明は、このような従来の問題点に着目してなされたものであり、燃料電池スタックの乾湿状態を十分にコントロールすることができる燃料電池システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は以下のような解決手段によって前記課題を解決する。
【0007】
本発明の燃料電池システムは、燃料電池スタックに要求される負荷に応じた状態で作動する負荷対応作動部と、前記燃料電池スタックの乾湿状態を検出する乾湿検出部と、を備える。そして負荷が小さくなる下げ過渡の場合であって、燃料電池スタックが過湿潤又は過乾燥の状態であるときは、その過湿潤又は過乾燥の状態を解消するように、負荷対応作動部の状態変化速度を制御する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、負荷が小さくなる下げ過渡の場合に負荷対応作動部の状態変化速度を制御することで、燃料電池スタックの乾湿状態をコントロールして過湿潤又は過乾燥の状態を早期に解消できるようになったのである。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明による燃料電池システムの第1実施形態を示す図である。
【図2】燃料電池スタックにおける電解質膜の反応を説明する模式図である。
【図3】本発明による燃料電池システムのコントローラーが実行する制御フローチャートを示す図である。
【図4】MEAの乾湿状態とインピーダンスとの相関を示す図である。
【図5】空気供給コンプレッサーの速度と電力との相関を示す図である。
【図6】第1実施形態による効果を説明する図である。
【図7】第1実施形態によって過乾燥状態を解消する手法を説明する図である。
【図8】本発明による燃料電池システムの第2実施形態を示す図である。
【図9】本発明による燃料電池システムの第3実施形態を示す図である。
【図10】本発明による燃料電池システムの第4実施形態を示す図である。
【図11】本発明による燃料電池システムの第5実施形態を示す図である。
【図12】本発明による燃料電池システムの第6実施形態の作用効果を説明する図である。
【図13】燃料電池システムのコントローラーが実行する制御フローチャートの変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下では図面等を参照して本発明を実施するための形態について、さらに詳しく説明する。
(第1実施形態)
図1は、本発明による燃料電池システムの第1実施形態を示す図である。
【0011】
はじめに図1を参照して、本発明による燃料電池システムの一例について説明する。
【0012】
燃料電池システムは、燃料電池スタック1と、空気供給コンプレッサー2と、水素タンク3と、冷媒ポンプ5と、ラジエーター6と、温度センサー7と、コントローラー9と、を備える。
【0013】
燃料電池スタック1は、カソードガス及びアノードガスが供給されて電力を発生する。
【0014】
空気供給コンプレッサー2は、カソードライン21に設けられる。空気供給コンプレッサー2は、燃料電池スタック1に対して要求される負荷に応じてカソードガス(空気)を供給する。要求される負荷が大きければ空気供給コンプレッサー2は多量のカソードガスを燃料電池スタック1に供給する。要求される負荷が小さければ空気供給コンプレッサー2は少量のカソードガスを燃料電池スタック1に供給する。
【0015】
水素タンク3は、アノードライン31に設けられる。水素タンク3は、アノードガス(水素)を収容する密閉容器である。水素タンク3は、収容しているアノードガス(水素)を燃料電池スタック1に供給する。水素タンク3の流量は、流量調整バルブ4によって調整される。
【0016】
冷媒ポンプ5は、燃料電池スタック1に供給する冷媒(冷却水)を循環する。冷媒ポンプ5は、冷媒ライン51に設けられる。
【0017】
ラジエーター6は、冷媒ポンプ5によって循環される冷媒の熱を放熱し、冷媒の過熱を防止する。
【0018】
温度センサー7は、冷媒ライン51に設けられる。温度センサー7は、冷媒温を検出する。
【0019】
コントローラー9は、燃料電池スタック1の出力負荷を設定し燃料電池スタック1の運転を制御する。
【0020】
図2は、燃料電池スタックにおける電解質膜の反応を説明する模式図である。
【0021】
上述のように、燃料電池スタック1は、反応ガス(カソードガスO2、アノードガスH2)が供給されて発電する。燃料電池スタック1は、電解質膜の両面にカソード電極触媒層及びアノード電極触媒層が形成された膜電極接合体(Membrane Electrode Assembly;MEA)が数百枚積層されて構成される。各膜電極接合体(MEA)は、カソード電極触媒層及びアノード電極触媒層において以下の反応が、負荷に応じて進行して発電する。なお図2(A)はMEA1枚を示している。ここではMEAにカソードガスが供給され(カソードイン)対角側から排出されながら(カソードアウト)、アノードガスが供給され(アノードイン)対角側から排出される(アノードアウト)例を示している。
【0022】
【化1】
【0023】
図2(B)に示すように、反応ガス(カソードガスO2)がカソード流路を流れるにつれて上式(1)の反応が進行し、水蒸気が生成される。そしてカソード流路の下流側では相対湿度が高くなり、カソード側とアノード側の相対湿度差をドライビングフォースとして、水が逆拡散しアノード上流側を加湿する。この水分がさらにMEAからアノード流路に蒸発してアノード流路を流れる反応ガス(アノードガスH2)を加湿する。そしてアノード下流側に運ばれてアノード下流(カソード上流)のMEAを加湿する。
【0024】
上記反応によって効率よく発電するには、電解質膜が適度な湿潤状態であることが必要である。負荷が大きいときには、負荷に応じて多量の反応ガス(カソードガスO2、アノードガスH2)を供給する。これによって大きな発電反応が生じる。そして上式(1)の反応によって多量の水分が生成される。この水分は、アノード流路に蒸発してアノードガスH2によって運ばれてアノード下流(カソード上流)のMEAを加湿することとなる。負荷が小さくなると、反応ガス(カソードガスO2、アノードガスH2)の供給量も負荷に応じて少なくする。これによって発電反応も小さくなり、上式(1)の反応によって生成される水分も少なくなる。このように負荷に応じて反応ガス(カソードガスO2、アノードガスH2)の供給量を適度に調整することで、適度な水分が生成され、電解質膜が負荷に応じた適度な湿潤状態に保たれる。
【0025】
しかしながら、負荷に応じた量の反応ガス(カソードガスO2、アノードガスH2)を供給している限りは、一旦水分の需給バランスが崩れて、たとえば電解質膜が過湿潤状態になった場合に、需給バランスを回復できない。たとえば冷間始動時には、生成水が蒸発しにくいので、過湿潤状態になる可能性があるが、そのような場合に早期に過湿潤状態が解消されることが望まれる。
【0026】
そこで本件発明者らは、鋭意研究を重ねて、運転状態の変化など何らかの要因で一旦需給バランスが崩れて電解質膜が過湿潤/過乾燥の状態を早期に解消する手法を知見した。具体的な手法を以下に説明する。
【0027】
図3は、本発明による燃料電池システムのコントローラーが実行する制御フローチャートを示す図である。
【0028】
ステップS1においてコントローラーは、負荷が小さくなる下げ過渡であるか否かを判定する。なお下げ過渡の具体的なシーンとしては、ドライバーがアクセルペダルを戻した場合などがある。コントローラーは、下げ過渡であればステップS2へ処理を移行し、下げ過渡でなければ一旦処理を抜ける。
【0029】
ステップS2においてコントローラーは、MEAが適度な状態よりも湿潤度が高い過湿潤状態であるか否かを判定する。コントローラーは、過湿潤状態であればステップS3へ処理を移行し、過湿潤状態でなければステップS4へ処理を移行する。なおMEAの湿潤度、すなわち乾湿状態はMEAのインピーダンスによって正確に検出できる。本実施形態の燃料電池システムは、従来品に比べてMEAの湿潤度が低い。
【0030】
MEAの乾湿状態とインピーダンスとの相関は、図4に示す通りであり、MEAの乾湿状態がドライ状態であるほど、MEAの乾湿状態が変化したときのインピーダンスの変化量が大きくなる。
【0031】
ステップS3においてコントローラーは、負荷に応じて作動する負荷対応作動部の状態変化速度を制御して、過湿潤状態を早期に解消する。具体的には、本実施形態では、過湿潤状態でも過乾燥状態でもない場合に比較して、空気供給コンプレッサー2の状態をゆっくりと変化させる。すなわち、空気供給コンプレッサー2は、要求される負荷が大きければ大量のカソードガスを供給するように運転し、要求される負荷が小さければ小量のカソードガスを供給するように運転する。負荷が小さくなる下げ負荷では、カソードガスを大量に供給する状態から、小量だけ供給する状態に移行する。このとき、このステップS3では、過湿潤状態でも過乾燥状態でもない場合に比較して、コンプレッサー2の回転速度を低下させる速度を小さくして移行させるのである。
【0032】
なお空気供給コンプレッサー2の速度は、図5に示すように、空気供給コンプレッサー2に供給される電力で調整できる。大きな電力を供給するほど、コンプレッサー2の回転速度を低下させる速度を小さくして移行させることができる。また空気供給コンプレッサー2の発電電力を回収して大きく回生させるほど、コンプレッサー2の回転速度を低下させる速度を大きくして移行こととなる。空気供給コンプレッサー2に電力を供給せず、かつ空気供給コンプレッサー2の発電電力の回収もしなければ、フリーラン状態になる。
【0033】
ステップS4においてコントローラーは、MEAが適度な状態よりも湿潤度が低い過乾燥状態であるか否かを判定する。コントローラーは、過乾燥状態であればステップS5へ処理を移行し、過乾燥状態でなければ一旦処理を抜ける。
【0034】
ステップS5においてコントローラーは、負荷に応じて作動する負荷対応作動部の状態変化速度を制御して、過乾燥状態を早期に解消する。具体的には、本実施形態では、過湿潤状態でも過乾燥状態でもない場合に比較して、空気供給コンプレッサー2の状態をコンプレッサー2の回転速度を低下させる速度を大きくして変化させる。すなわち、空気供給コンプレッサー2は、要求される負荷が大きければ大量のカソードガスを供給するように運転し、要求される負荷が小さければ小量のカソードガスを供給するように運転する。
【0035】
負荷が小さくなる下げ負荷では、カソードガスを大量に供給する状態から、小量だけ供給する状態に移行する。このとき、このステップS5では、過湿潤状態でも過乾燥状態でもない場合に比較して、コンプレッサー2の回転速度を低下させる速度を大きくして移行させるのである。
【0036】
図6は、第1実施形態による効果を説明する図である。そして図6(A)は、MEAの乾湿状態が過不足なく適度である場合に、負荷が150Aから15Aに低下する下げ過渡のときを示す。
【0037】
このとき、空気供給コンプレッサー2は、負荷に応じたカソードガス(空気)を供給している。たとえば本実施形態では、負荷が150Aのときには、それに対応して120m3(nor)/hr.(120m3/hr.(ntp))の空気を供給する。そして負荷が1/10の15Aに低下したら、それに対応して空気量も1/10にして120m3(nor)/hr.(120m3/hr.(ntp))の空気を供給する。負荷が低下している間も、負荷に応じた流量の空気を供給する。このようにすれば、電解質膜の湿潤状態が適度な湿潤状態に保たれる。
【0038】
しかしながら、このような手法では、何らかの要因で電解質膜が過湿潤又は過乾燥の状態になった場合に、適度な湿潤状態に回復することができない。たとえば冷間始動時には、生成水が蒸発しにくいので、過湿潤状態になる可能性があるが、そのような過湿潤状態を解消できない。
【0039】
図6(B)は、比較形態によって過湿潤状態を解消する手法を説明する図である。
【0040】
これに対して、上述の特許文献1では、たとえば電解質膜が過湿潤状態であったら、空気供給量を増量する。図6(B)では、時刻t1まで、負荷が150Aのときには、図6(A)の場合に比べて増量した180m3(nor)/hr.(180m3/hr.(ntp))の空気を供給する。そして時刻t2で負荷が1/10の15Aに低下したら、それに対応して空気量も1/10にして180m3(nor)/hr.(180m3/hr.(ntp))の空気を供給する。負荷が低下している時刻t1から時刻t2までの間も、一定割合で増量した空気を供給する。このように空気を増量すれば、反応に本来必要な量よりも過剰な空気が供給されるので、カソード側で生成される水分が、その余剰空気によってMEA部分から除去される。そのため、電解質膜が徐々に乾燥していき、適度な湿潤状態に回復する。しかしながら、このような手法では空気供給量が不十分なので回復するまでの時間を要する。
【0041】
図6(C)は、本実施形態によって過湿潤状態を解消する手法を説明する図である。
【0042】
これらに対して、本実施形態では、特に負荷が小さくなる下げ過渡に注目し、図3に示すフローチャートに沿って空気供給コンプレッサー2を制御するようにしたのである。
【0043】
時刻t1で下げ過渡運転であることが判定され(ステップS1でYes)、MEAが過加湿状態であるときは(ステップS2でYes)、負荷対応作動部の状態変化速度を制御する(ステップS3)。具体的には、本実施形態では、過湿潤状態でも過乾燥状態でもない場合に比較して、空気供給コンプレッサー2の状態をコンプレッサー2の回転速度を低下させる速度を小さくして変化させる。このようにすれば、負荷が15Aに低下した時刻t2においても、90m3(nor)/hr.(90m3/hr.(ntp))程度の空気が供給される。すると、下げ過渡時に、負荷に応じて本来必要なカソードガスよりも余剰な空気が供給されることとなるので、その余剰空気によって、カソード側で生成される水分がMEA部分から除去されて、電解質膜が迅速に乾燥していき、時刻t3で湿潤限界を上回ることとなる。このように本実施形態によれば、図6(B)の比較形態に比べて、過湿潤状態を早期に解消できるのである。
【0044】
図7は、第1実施形態によって過乾燥状態を解消する手法を説明する図である。
【0045】
MEAが過乾燥状態のときは、以下のように制御する。すなわち時刻t1で下げ過渡運転であることが判定され(ステップS1でYes)、MEAが過乾燥状態であるときは(ステップS4でYes)、負荷対応作動部の状態変化速度を制御する(ステップS5)。具体的には、本実施形態では、過湿潤状態でも過乾燥状態でもない場合に比較して、空気供給コンプレッサー2の状態を迅速に変化させる。このようにすれば、負荷が15Aに低下した時刻t2よりも前の時刻t4から120m3(nor)/hr.(120m3/hr.(ntp))の空気が供給されることとなる。すると、下げ過渡時に、負荷に応じて本来必要なカソードガスよりも少ない空気しか供給されないので、カソード側で生成される水分のMEA部分から除去される量が減少するため、電解質膜が湿潤度が上がって、時刻t5で乾燥限界を下回ることとなる。
【0046】
このように本実施形態では、下げ過渡時に空気供給コンプレッサー2の状態を変化させることに着目した。そしてMEAか過湿潤状態のときには、過湿潤状態でも過乾燥状態でもない場合に比較して、空気供給コンプレッサー2の状態をゆっくりと変化させる。またMEAか過乾燥状態のときには、過湿潤状態でも過乾燥状態でもない場合に比較して、空気供給コンプレッサー2の状態を迅速に変化させる。このようにすることで、過湿潤状態/過乾燥状態を早期に解消できるのである。
【0047】
なお 燃料電池スタックが過乾燥状態であるときには、発電要求カソードガス流量、希釈要求カソードガス流量及び調圧カソードガス流量のなかで最も大きい流量を下回らないように、カソードガス流量を迅速に減少することが望ましい。カソードガス流量を減少させるのが迅速すぎるとスタック発電要求最低流量(ストイキ1)を下回って発電不能になるおそれがある。また、調圧に必要な最低流量を下回ると調圧できなくなるおそれがある。さらに、カソード排出ガスに排水素を混ぜて排気しているシステムでは、排水素濃度が過大になるおそれがある。しかしながら、燃料電池スタックが過乾燥状態であるときには、発電要求カソードガス流量、希釈要求カソードガス流量及び調圧カソードガス流量のなかで最も大きい流量を下回らないようにすることで、それらを防止できるのである。
【0048】
(第2実施形態)
図8は、本発明による燃料電池システムの第2実施形態を示す図である。
【0049】
本実施形態の燃料電池システムは、カソードライン21から一旦分岐して燃料電池スタックをバイパスした後、再びカソードライン21に合流するバイパスライン22が設けられている。そしてカソードライン21の燃料電池スタック1よりも下流であってバイパスライン22に合流する部分よりも上流に流量調整バルブ210が設けられる。またバイパスライン22に流量調整バルブ220が設けられる。このような流量調整バルブ210及び流量調整バルブ220の開度を調整することでも、カソードライン21を流れるカソードガスの流量及びバイパスライン22を流れるカソードガスの流量を調整することができる。
【0050】
したがって流量調整バルブ210及び流量調整バルブ220によっても、燃料電池スタック1に供給されるカソードガスの流量を調整することができ、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0051】
(第3実施形態)
図9は、本発明による燃料電池システムの第3実施形態を示す図である。
【0052】
本実施形態の燃料電池システムは、カソードライン21の燃料電池スタック1よりも上流に圧力センサー212が設けられている。またカソードライン21の燃料電池スタック1よりも下流に圧力調整バルブ211が設けられている。この圧力調整バルブ211は、負荷に応じて、燃料電池スタックに供給するカソードガスの圧力を変化させるように作動する。
【0053】
そして、圧力調整バルブ211は、負荷が小さくなる下げ過渡の場合であって、燃料電池スタックが過湿潤状態であるときはカソードガス圧力を、過湿潤状態でも過乾燥状態でもない場合に比較して、迅速に減少させる(過湿潤状態でも過乾燥状態でもない場合に比較して圧力調整バルブ211を閉じる速度を速くする)。このようにすることで、燃料電池スタックを通過するカソードガスの流量が大きくなっている時間が、過湿潤状態でも過乾燥状態でもない場合に比較して長くなり、早期に過湿潤状態が解消される。
【0054】
また圧力調整バルブ210は、負荷が小さくなる下げ過渡の場合であって、燃料電池スタックが過乾燥状態であるときはカソードガス圧力を、過湿潤状態でも過乾燥状態でもない場合に比較して、ゆっくりと減少させる(過湿潤状態でも過乾燥状態でもない場合に比較して圧力調整バルブ211を閉じる速度を遅くする)。このようにすることで、燃料電池スタックを通過するカソードガスの流量が小さくなっている時間が、過湿潤状態でも過乾燥状態でもない場合に比較して長くなり、早期に過乾燥状態が解消される。
【0055】
(第4実施形態)
図10は、本発明による燃料電池システムの第4実施形態を示す図である。
【0056】
本実施形態の燃料電池システムは、カソードライン21の燃料電池スタック1よりも上流には加湿器213が設けられている。なおこの加湿器213としては、水タンクに貯留された水を噴射する装置や、燃料電池スタックから排出されて湿潤度が高いカソードガスと水交換する加湿器などがある。この加湿器213は、負荷に応じて、燃料電池スタックに供給するカソードガスの加湿量を変化させるように作動する。
【0057】
そして、加湿器213は、負荷が小さくなる下げ過渡の場合であって、燃料電池スタックが過湿潤状態であるときは、カソードガス加湿量を、過湿潤状態でも過乾燥状態でもない場合に比較して、迅速に減少させる(過湿潤状態でも過乾燥状態でもない場合に比較して加湿器213による加湿量を小さくする)。このようにすることで、燃料電池スタックを通過するカソードガスの湿潤度が小さくなるので、早期に過湿潤状態が解消される。
【0058】
また加湿器213は、負荷が小さくなる下げ過渡の場合であって、燃料電池スタックが過乾燥状態であるときは、カソードガス加湿量を、過湿潤状態でも過乾燥状態でもない場合に比較して、ゆっくりと減少させる(過湿潤状態でも過乾燥状態でもない場合に比較して加湿器213による加湿量を大きくする)。このようにすることで、燃料電池スタックを通過するカソードガスの湿潤度が大きくなるので、早期に過乾燥状態が解消される。
【0059】
(第5実施形態)
図11は、本発明による燃料電池システムの第5実施形態を示す図である。
【0060】
ラジエーターバイパスライン52は、冷媒ライン51のラジエーター6よりも上流の部分から分岐し、ラジエーター6の下流に設けられた冷媒調整バルブ50で再び冷媒ライン51に合流する。冷媒調整バルブ50は、負荷に応じて、ラジエーター6に流れる冷媒(冷却水)の量を調整する。冷媒調整バルブ50は、負荷が小さくなる下げ過渡の場合であって、燃料電池スタック1が過湿潤状態であるときは、冷媒温度が、過湿潤状態でも過乾燥状態でもない場合に比較してゆっくりと低下するように開度を調整する(過湿潤状態でも過乾燥状態でもない場合に比較して冷媒調整バルブ50の開度を小さくする速度を遅くする)。また冷媒調整バルブ50は、燃料電池スタック1が過乾燥状態であるときは、冷媒温度が、過湿潤状態でも過乾燥状態でもない場合に比較して迅速に低下するように開度を調整する(過湿潤状態でも過乾燥状態でもない場合に比較して冷媒調整バルブ50の開度を小さくする速度を速くする)。
【0061】
冷媒がラジエーター6に流れるほど、冷媒の温度が低下する。冷媒の温度が低いほど、燃料電池スタックの温度も低くなる。燃料電池スタックの温度が低いほど、カソード流路で生成された水が蒸発しにくくなり、外部への持ち出され量が少なくなる。したがって、燃料電池スタック1が過湿潤状態であるときは、ゆっくりと温度を低下させることで(すなわち温度の高い状態を少しでも長く保つことで)、外部への水分の持ち出され量が多くなって、過湿潤状態が解消されやすくなる。また燃料電池スタック1が過乾燥状態であるときは、迅速に温度を低下させることで(すなわち少しでも速く温度を下げることで)、
外部への持ち出され量が少なくなって、過乾燥状態が解消されやすくなる。
【0062】
(第6実施形態)
図12は、本発明による燃料電池システムの第6実施形態の作用効果を説明する図である。
【0063】
流量調整バルブ4は、上述のように、水素タンク3の流量を調整する。流量調整バルブ4は、負荷に応じて、燃料電池スタック1に供給するアノードガスの流量を調整する。
【0064】
そして、流量調整バルブ4は、負荷が小さくなる下げ過渡の場合であって、燃料電池スタック1が過湿潤状態であるときは、アノードガス流量が、過湿潤状態でも過乾燥状態でもないときに比べて迅速に低下させる(過湿潤状態でも過乾燥状態でもないときに比べて流量調整バルブ4の閉じる速度を速くする)。また流量調整バルブ4は、燃料電池スタック1が過乾燥状態であるときは、アノードガス流量が、過湿潤状態でも過乾燥状態でもないときに比べてゆっくりと低下させる(過湿潤状態でも過乾燥状態でもないときに比べて流量調整バルブ4の閉じる速度を遅くする)。
【0065】
図2を参照して上述したように、カソード流路で生成されてアノード流路に蒸発した水分は、アノードガスH2によって運ばれてアノード下流(カソード上流)のMEAを加湿することとなる。アノードガス流量が小さいほど、アノード下流への到達距離が短くなり、MEAは乾燥しやすくなる。そこで本実施形態では、負荷が小さくなる下げ過渡の場合であって、燃料電池スタック1が過湿潤状態であるときは、アノードガス流量が、過湿潤状態でないときに比べて迅速に低下するように調整するのである。このようにすれば、過湿潤状態が早期に解消される。
【0066】
またアノードガス流量が大きいほど、アノード下流への到達距離が長くなり、MEAは湿潤しやすくなる。そこで本実施形態では、燃料電池スタック1が過乾燥状態であるときは、アノードガス流量が、過乾燥状態でないときに比べてゆっくりと低下するように調整するのである。このようにすれば、過乾燥状態が早期に解消される。
【0067】
以上説明した実施形態に限定されることなく、その技術的思想の範囲内において種々の変形や変更が可能であり、それらも本発明の技術的範囲に含まれることが明白である。
【0068】
たとえば、上記実施形態においては、MEAの湿潤度、すなわち乾湿状態は、MEAのインピーダンスによって検出するとしたが、各セルの電圧を検出して、セル電圧に基づいて検出してもよい。また燃料電池スタックの総電圧に基づいて検出してもよい。さらにカソードガスの出口に設けられた露点計で検出されたガス出口露点に基づいて検出してもよい。さらにまたガス出口の液水排出速度や液水排出量などに基づいて検出してもよい。
【0069】
また上記実施形態においては、電解質膜の片面に流れるカソードガスと反対面に流れるアノードガスとは、逆方向に流れる場合を例示して説明したが、同方向に流れてもよい。そのようなものを第1〜5実施形態に適用しても、上述の効果が得られる。
【0070】
さらに第5実施形態では、負荷に応じて冷媒調整バルブ50の開度を調整することで、ラジエーター6に流れる冷媒(冷却水)の量を調整したが、冷媒の温度自体を直接調整してもよい。
【0071】
さらにまた図3のフローチャートでは、下げ過渡を判定した後に、MEAの乾湿状態を判定したが、図13のフローチャートように、MEAの乾湿状態を判定した後に、下げ過渡を判定してもよい。
【符号の説明】
【0072】
1 燃料電池スタック
2 空気供給コンプレッサー(負荷対応作動部)
3 水素タンク
4 流量調整バルブ(負荷対応作動部)
5 冷媒ポンプ
6 ラジエーター
7 温度センサー
9 コントローラー
210 流量調整バルブ(負荷対応作動部)
220 流量調整バルブ(負荷対応作動部)
211 圧力調整バルブ(負荷対応作動部)
213 加湿器(負荷対応作動部)
50 冷媒調整バルブ(負荷対応作動部)
ステップS2,S4 乾湿検出部
ステップS3,S5 変化速度制御部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料電池スタックに要求される負荷に応じた状態で作動する負荷対応作動部と、
前記燃料電池スタックの乾湿状態を検出する乾湿検出部と、
前記負荷が小さくなる下げ過渡の場合であって、前記燃料電池スタックが過湿潤又は過乾燥の状態であるときは、その過湿潤又は過乾燥の状態を解消するように、前記負荷対応作動部の状態変化速度を制御する変化速度制御部と、
を備える燃料電池システム。
【請求項2】
請求項1に記載の燃料電池システムにおいて、
前記負荷対応作動部は、前記負荷に応じて、前記燃料電池スタックに供給するカソードガスの流量を変化させるように作動し、
前記変化速度制御部は、負荷が小さくなる下げ過渡の場合であって、燃料電池スタックが過湿潤状態であるときは、燃料電池スタックに供給されるカソードガス流量を、過湿潤状態でないときに比べてゆっくりと減少し、燃料電池スタックが過乾燥状態であるときは、燃料電池スタックに供給されるカソードガス流量を、過乾燥状態でないときに比べて迅速に減少する、
ことを特徴とする燃料電池システム。
【請求項3】
請求項2に記載の燃料電池システムにおいて、
前記負荷対応作動部は、前記燃料電池スタックにカソードガスを供給するコンプレッサーである、
ことを特徴とする燃料電池システム。
【請求項4】
請求項2に記載の燃料電池システムにおいて、
前記燃料電池スタックに供給されるカソードガスが流れるカソードラインから一旦分岐して燃料電池スタックをバイパスした後、再びカソードラインに合流するバイパスラインをさらに備え、
前記負荷対応作動部は、前記燃料電池スタックに供給されるカソードガス及び前記バイパスラインを流れるカソードガスの流量を調整する少なくともひとつのバルブである、
ことを特徴とする燃料電池システム。
【請求項5】
請求項2から請求項4までのいずれか1項に記載の燃料電池システムにおいて、
燃料電池スタックが過乾燥状態であるときに、発電要求カソードガス流量、希釈要求カソードガス流量及び調圧カソードガス流量のなかで最も大きい流量を下回らないように、カソードガス流量の減少速度を速くする、
ことを特徴とする燃料電池システム。
【請求項6】
請求項1に記載の燃料電池システムにおいて、
前記負荷対応作動部は、前記負荷に応じて、前記燃料電池スタックに供給するカソードガスの圧力を変化させるように作動する圧力調整バルブであり、
前記変化速度制御部は、負荷が小さくなる下げ過渡の場合であって、燃料電池スタックが過湿潤状態であるときは、燃料電池スタックに供給されるカソードガス圧力を、過湿潤状態でないときに比べて迅速に減少し、燃料電池スタックが過乾燥状態であるときは、燃料電池スタックに供給されるカソードガス圧力を、過乾燥状態でないときに比べてゆっくりと減少する、
ことを特徴とする燃料電池システム。
【請求項7】
請求項1に記載の燃料電池システムにおいて、
前記負荷対応作動部は、前記負荷に応じて、前記燃料電池スタックに供給する冷媒の温度を変化させるように作動し、
前記変化速度制御部は、負荷が小さくなる下げ過渡の場合であって、燃料電池スタックが過湿潤状態であるときは、冷媒温度が、過湿潤状態でないときに比べてゆっくりと低下するようにし、燃料電池スタックが過乾燥状態であるときは、冷媒温度が、過乾燥状態でないときに比べて迅速に低下するようにする、
ことを特徴とする燃料電池システム。
【請求項8】
請求項7に記載の燃料電池システムにおいて、
前記燃料電池スタックに供給する冷媒が流れる冷媒ラインと、
前記冷媒ラインに設けられ、前記冷媒の熱を放熱するラジエーターと、
をさらに備え、
前記負荷対応作動部は、前記冷媒ラインに設けられ、前記負荷に応じて、前記ラジエーターに流れる冷媒の量を調整する冷媒調整バルブであり、
前記変化速度制御部は、負荷が小さくなる下げ過渡の場合であって、燃料電池スタックが過湿潤状態であるときは、冷媒温度が、過湿潤状態でないときに比べてゆっくりと低下するように前記冷媒調整バルブを調整し、燃料電池スタックが過乾燥状態であるときは、冷媒温度が、過乾燥状態でないときに比べて迅速に低下するように前記冷媒調整バルブを調整する、
ことを特徴とする燃料電池システム。
【請求項9】
請求項1に記載の燃料電池システムにおいて、
前記負荷対応作動部は、前記負荷に応じて、前記燃料電池スタックに供給するカソードガスの加湿量を変化させるように作動する加湿器であり、
前記変化速度制御部は、負荷が小さくなる下げ過渡の場合であって、燃料電池スタックが過湿潤状態であるときは、カソードガス加湿量が、過湿潤状態でないときに比べて迅速に低下するように前記加湿器を調整し、燃料電池スタックが過乾燥状態であるときは、カソードガス加湿量が、過乾燥状態でないときに比べてゆっくりと低下するように前記加湿器を調整する、
ことを特徴とする燃料電池システム。
【請求項10】
請求項1に記載の燃料電池システムにおいて、
前記負荷対応作動部は、前記負荷に応じて、前記燃料電池スタックに供給するアノードガスの流量を変化させるように作動する流量調整バルブであり、
前記変化速度制御部は、負荷が小さくなる下げ過渡の場合であって、燃料電池スタックが過湿潤状態であるときは、アノードガス流量が、過湿潤状態でないときに比べて迅速に低下するように前記流量調整バルブを調整し、燃料電池スタックが過乾燥状態であるときは、アノードガス流量が、過乾燥状態でないときに比べてゆっくりと低下するように前記流量調整バルブを調整する、
ことを特徴とする燃料電池システム。
【請求項11】
請求項1から請求項10までのいずれか1項に記載の燃料電池システムにおいて、
前記乾湿検出部は、インピーダンス、セル電圧、総電圧、カソードガス出口露点、カソードガス出口の液水排出速度及びカソードガス出口の液水排出量のうちの少なくともひとつに基づいて、前記燃料電池スタックの乾湿状態を検出する、
ことを特徴とする燃料電池システム。
【請求項1】
燃料電池スタックに要求される負荷に応じた状態で作動する負荷対応作動部と、
前記燃料電池スタックの乾湿状態を検出する乾湿検出部と、
前記負荷が小さくなる下げ過渡の場合であって、前記燃料電池スタックが過湿潤又は過乾燥の状態であるときは、その過湿潤又は過乾燥の状態を解消するように、前記負荷対応作動部の状態変化速度を制御する変化速度制御部と、
を備える燃料電池システム。
【請求項2】
請求項1に記載の燃料電池システムにおいて、
前記負荷対応作動部は、前記負荷に応じて、前記燃料電池スタックに供給するカソードガスの流量を変化させるように作動し、
前記変化速度制御部は、負荷が小さくなる下げ過渡の場合であって、燃料電池スタックが過湿潤状態であるときは、燃料電池スタックに供給されるカソードガス流量を、過湿潤状態でないときに比べてゆっくりと減少し、燃料電池スタックが過乾燥状態であるときは、燃料電池スタックに供給されるカソードガス流量を、過乾燥状態でないときに比べて迅速に減少する、
ことを特徴とする燃料電池システム。
【請求項3】
請求項2に記載の燃料電池システムにおいて、
前記負荷対応作動部は、前記燃料電池スタックにカソードガスを供給するコンプレッサーである、
ことを特徴とする燃料電池システム。
【請求項4】
請求項2に記載の燃料電池システムにおいて、
前記燃料電池スタックに供給されるカソードガスが流れるカソードラインから一旦分岐して燃料電池スタックをバイパスした後、再びカソードラインに合流するバイパスラインをさらに備え、
前記負荷対応作動部は、前記燃料電池スタックに供給されるカソードガス及び前記バイパスラインを流れるカソードガスの流量を調整する少なくともひとつのバルブである、
ことを特徴とする燃料電池システム。
【請求項5】
請求項2から請求項4までのいずれか1項に記載の燃料電池システムにおいて、
燃料電池スタックが過乾燥状態であるときに、発電要求カソードガス流量、希釈要求カソードガス流量及び調圧カソードガス流量のなかで最も大きい流量を下回らないように、カソードガス流量の減少速度を速くする、
ことを特徴とする燃料電池システム。
【請求項6】
請求項1に記載の燃料電池システムにおいて、
前記負荷対応作動部は、前記負荷に応じて、前記燃料電池スタックに供給するカソードガスの圧力を変化させるように作動する圧力調整バルブであり、
前記変化速度制御部は、負荷が小さくなる下げ過渡の場合であって、燃料電池スタックが過湿潤状態であるときは、燃料電池スタックに供給されるカソードガス圧力を、過湿潤状態でないときに比べて迅速に減少し、燃料電池スタックが過乾燥状態であるときは、燃料電池スタックに供給されるカソードガス圧力を、過乾燥状態でないときに比べてゆっくりと減少する、
ことを特徴とする燃料電池システム。
【請求項7】
請求項1に記載の燃料電池システムにおいて、
前記負荷対応作動部は、前記負荷に応じて、前記燃料電池スタックに供給する冷媒の温度を変化させるように作動し、
前記変化速度制御部は、負荷が小さくなる下げ過渡の場合であって、燃料電池スタックが過湿潤状態であるときは、冷媒温度が、過湿潤状態でないときに比べてゆっくりと低下するようにし、燃料電池スタックが過乾燥状態であるときは、冷媒温度が、過乾燥状態でないときに比べて迅速に低下するようにする、
ことを特徴とする燃料電池システム。
【請求項8】
請求項7に記載の燃料電池システムにおいて、
前記燃料電池スタックに供給する冷媒が流れる冷媒ラインと、
前記冷媒ラインに設けられ、前記冷媒の熱を放熱するラジエーターと、
をさらに備え、
前記負荷対応作動部は、前記冷媒ラインに設けられ、前記負荷に応じて、前記ラジエーターに流れる冷媒の量を調整する冷媒調整バルブであり、
前記変化速度制御部は、負荷が小さくなる下げ過渡の場合であって、燃料電池スタックが過湿潤状態であるときは、冷媒温度が、過湿潤状態でないときに比べてゆっくりと低下するように前記冷媒調整バルブを調整し、燃料電池スタックが過乾燥状態であるときは、冷媒温度が、過乾燥状態でないときに比べて迅速に低下するように前記冷媒調整バルブを調整する、
ことを特徴とする燃料電池システム。
【請求項9】
請求項1に記載の燃料電池システムにおいて、
前記負荷対応作動部は、前記負荷に応じて、前記燃料電池スタックに供給するカソードガスの加湿量を変化させるように作動する加湿器であり、
前記変化速度制御部は、負荷が小さくなる下げ過渡の場合であって、燃料電池スタックが過湿潤状態であるときは、カソードガス加湿量が、過湿潤状態でないときに比べて迅速に低下するように前記加湿器を調整し、燃料電池スタックが過乾燥状態であるときは、カソードガス加湿量が、過乾燥状態でないときに比べてゆっくりと低下するように前記加湿器を調整する、
ことを特徴とする燃料電池システム。
【請求項10】
請求項1に記載の燃料電池システムにおいて、
前記負荷対応作動部は、前記負荷に応じて、前記燃料電池スタックに供給するアノードガスの流量を変化させるように作動する流量調整バルブであり、
前記変化速度制御部は、負荷が小さくなる下げ過渡の場合であって、燃料電池スタックが過湿潤状態であるときは、アノードガス流量が、過湿潤状態でないときに比べて迅速に低下するように前記流量調整バルブを調整し、燃料電池スタックが過乾燥状態であるときは、アノードガス流量が、過乾燥状態でないときに比べてゆっくりと低下するように前記流量調整バルブを調整する、
ことを特徴とする燃料電池システム。
【請求項11】
請求項1から請求項10までのいずれか1項に記載の燃料電池システムにおいて、
前記乾湿検出部は、インピーダンス、セル電圧、総電圧、カソードガス出口露点、カソードガス出口の液水排出速度及びカソードガス出口の液水排出量のうちの少なくともひとつに基づいて、前記燃料電池スタックの乾湿状態を検出する、
ことを特徴とする燃料電池システム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2012−109182(P2012−109182A)
【公開日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−258875(P2010−258875)
【出願日】平成22年11月19日(2010.11.19)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年11月19日(2010.11.19)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】
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