説明

燃料電池材料の欠陥検出方法及び燃料電池材料の分別方法

【課題】本発明は、燃料電池用に用いられるセルおよび/またはハーフセルにおいて重大な欠陥を選定し、かつ各種の測定装置のうち製造工程に合致したものを選定することで、燃料電池材料製造工程において、欠陥検出を一連の工程の下に簡便かつ容易に検出することができることで、製造工程をコンパクト化、スピードアップ化を図ることにある。
【解決手段】本発明は、CCDカメラ、レーザー式反射検出機および/または接触式変位検出機により、燃料電池用のセルおよび/またはハーフセルの欠陥を検出することを特徴とする燃料電池材料の欠陥検出方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池用のセルおよび/またはハーフセル等の燃料電池材料の欠陥検出方法及び欠陥検出後における燃料電池材料分別方法である。
【背景技術】
【0002】
燃料電池材料、特に電解質の一方の面に燃料極、他方の面に空気極が形成されたセル、電解質の一方の面にのみ燃料極もしくは空気極が形成されたハーフセルを製造する際に欠陥が生じており、製品中に多量の欠陥を有する燃料電池材料が混入することがあり、かかる混入を防止するに際して目視により分別することが一般的に行われていた。しかし、目視による場合には個人差が大きく十分に欠陥の検出が困難なことが多く見られた。また、単一欠陥の検出装置を用いることについて、多くの技術が提示されているが、欠陥の種類、大きさ、範囲がバラバラで一度に多数種の欠陥を効率的に検出することは困難であった。また全ての欠陥を検出することは事実上無理がありかつ無駄でもある。
【0003】
一方、欠陥は用途により支障となるものとならないものがあるために一義的に欠陥と検定することにも無理がある。これらの欠陥を特定しかつ連続的に効率よく検出する技術は提案されていなかったのが現状である。
【0004】
なお、ジルコニア電解質シート表面の個々の表面欠陥検出について、特許文献1にCCDカメラによる異物・キズの検査方法や、特許文献2にレーザー光による凹凸、突起、ウネリ、バリの検査方法という技術の提案はあるが、セル表面は多孔質電極で構成されているため、さらに、電極構成材料は通常、その色が黒色、黒灰色や緑色であるため、透過光、正反射光によるセルおよび/またはハーフセルの効率的欠陥検出方法についての技術はいまだ提案されていない。
【0005】
【特許文献1】再公表特許 WO1999/55639号公報
【特許文献2】特開2004−198374号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、燃料電池材料の欠陥を検出する方法、特に燃料電池用のセルおよび/またはハーフセルの欠陥を検出する方法を効率的に行うことができる技術を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願発明者らは、鋭意検討した結果、上記課題は下記の手段を見出すことにより上記課題を解決することができ、発明を完成した。本発明は、CCD(チャージ・カップルド・デバイス)カメラ及びレーザー式反射検出機により、燃料電池材料の欠陥を検出することを特徴とする燃料電池材料欠陥検出方法である。また、当該燃料電池材料欠陥検出方法を用いた当該燃料電池材料の分別方法である。
【発明の効果】
【0008】
本発明を用いることで各種燃料電池材料の欠陥を一連の工程により検出することができ、欠陥を有する燃料電池材料を分別除去することができるものである。欠陥は数多く存在するが、特に燃料電池用に用いられるセルおよび/またはハーフセルにおいて重大な欠陥を選定し、かつ各種の測定装置のうち製造工程に合致したものを選定することで、燃料電池材料製造工程において、欠陥検出を一連の工程の下に簡便かつ容易に検出することができることで、製造工程をコンパクト化、スピードアップ化を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明にかかる第一の発明は、CCDカメラ及びレーザー式反射検出機により、燃料電池材料の欠陥を検出することを特徴とする燃料電池材料欠陥検出方法である。
【0010】
当該燃料電池とは、複数のセル、集電部、インターコネクター、電極基板、セパレータなどを含むものを指し、本発明にかかるセルまたはハーフセルは、当該燃料電池に用いられる燃料電池材料の一つである。当該セルは基本的に燃料極、電解質および空気極から構成され、当該セルの種類は、電解質を支持主体としたセルである電解質支持型セル、燃料極を支持主体としたセルである燃料極支持型セル、および空気極を支持主体としたセルである空気極支持型セルがある。なお、電解質と電極と間に中間層を有すること、電極と他の部分を接合するコンタクト層を有すること、集電するための集電層を有することもできる。
【0011】
当該ハーフセルは燃料極または空気極の一方電極のみを指し、個々の極のみであっても良いが、電極の強度を考慮すると電解質と燃料極、電解質と空気極で構成される。当該ハーフセルの種類は、電解質を支持主体としたハーフセルである電解質支持型ハーフセル、燃料極を支持主体としたハーフセルである燃料極支持型ハーフセルや空気極を支持主体としたハーフセルである空気極支持型ハーフセルがある。
【0012】
なお、当該セルや当該ハーフセルは下記で述べる材料を焼成して得られるものであるが、当該焼成前の前駆体(仕掛品)セルや前駆体ハーフセルも本発明の欠陥検出方法の対象とすることもできる。
【0013】
当該セルまたは当該ハーフセルはシート状のものであれば何れのものであってもよく、形状は平面の面積が1〜1000cm、好ましくは30〜800cm、更に好ましくは50〜600cmである。当該シートの厚さは10〜1500μm、好ましくは100〜12000μm更に好ましくは200〜1000μmである。
【0014】
当該燃料電池材料の材質はセラミックス製のものが好ましく、電解質材料としては、安定化剤としてMgO,CaO,SrO,BaOなどのアルカリ土類金属の酸化物、Y23,La23,CeO2,Pr23,Nd23,Sm23,Eu,Gd,Tb,Dy,Ho,Er,Ybなどの希土類元素の酸化物、Sc,Bi,In等から選ばれる1種もしくは2種以上の酸化物を固溶させたジルコニア系酸化物;これらに分散強化剤としてAl23、TiO2、Ta25、Nb25などが添加された分散強化型ジルコニア系酸化物;イットリア、サマリア、ガドリア等でドープされたセリア系酸化物;ランタンガレート、およびランタンガレートのランタンまたはガリウムの一部が、ストロンチウム、カルシウム、バリウム、マグネシウム、アルミニウム、インジウム、コバルト、鉄、ニッケル、銅などで置換されたランタンガレート型ペロブスカイト構造酸化物;などを使用することができる。上に例示したもの中でも、より高度の熱的、機械的、化学的特性を有する電解質シートとして、3〜12モル%の酸化スカンジウム、2〜10モル%の酸化イットリウムもしくは3〜15モル%の酸化イッテルビウムで安定化された正方晶及び/又は立方晶構造のジルコニアが特に好ましい。
【0015】
また、燃料極としては、Ni、Co、Ru等と上記のジルコニア系やセリア系固体電解質のサーメットが好適に使用される。特に好ましくは、Niと9〜12モル%Sc安定化ジルコニアからなるサーメットである。
【0016】
また、空気極としては、ランタンマンガナイト、ランタンコバルタイトやランタンフェライトのランタンの一部が、セリウム、サマリウム、プラセオジウムなどの他の希土類元素やストロンチウム、カルシウム、バリウム、マグネシウムなどのアルカリ土類元素などで置換された、および/またはマンガン、コバルト、鉄の一部が銅、ニッケルなどで置換されたペロブスカイト構造酸化物;などを使用することができる。特に、好適には、La1−xSrMnO(0.2≦x≦0.6)、Pr1−xSrMnO(0.2≦x≦0.6)、La1−xSrCo1−yFe(0.2≦x≦0.6、0.6≦y≦0.9)、La1−xSrCoO(0.1≦x≦0.6)が使用される。さらには、これらペロブスカイト型酸化物に、Gd、YおよびSmから選択される少なくとも1種の酸化物を10〜35モル%含むセリア系酸化物、または、8〜10モル%のYを含むイットリア安定化ジルコニアもしくは9〜12モル%のScを含むスカンジア安定化ジルコニア加えた混合も好適に使用される。
【0017】
さらには、固体電解質と空気極との間に、これらの固相反応防止のために、Gd、YおよびSmから選択される少なくとも1種の酸化物を10〜35モル%含むセリア系酸化物がそれらの中間層として存在していてもよい。
【0018】
また、燃料極とセパレータとの間に生じる隙間を埋めて両者間の密着度を向上させ、これにより接触抵抗を減じ、集電効率を向上させるなどの目的で、Ni粉体、Ni合金粉体、Pt粉体、Pt合金粉体、Ag粉体、Ag合金粉体、Au粉体、Au合金粉体などからなる燃料極コンタクト層や、同じく空気極とセパレータとの間に生じる隙間を埋めて両者間の密着度を向上させ、これにより接触抵抗を減じ、集電効率を向上させるなどの目的で、Ag粉体もしくはAg合金粉体および/または上記ぺロブスカイト型酸化物などからなる空気極コンタクト層や形成されていてもよい。
【0019】
上記材料を通常の手段により成型し、加圧または焼成して、セル、ハーフセルとすることができる。単に成型したものは前駆体であり、前駆体を加圧、焼成してセル、ハーフセルとすることができる。
【0020】
本発明に用いるCCDカメラは、物体から反射される光の強弱を電気信号に変換する半導体素子で構成させるカメラであり、当該燃料電池材料の異物、カケ印刷抜けを検出でき、欠陥は14μm以上であれば測定することができる。カケとは燃料電池材料における固体電解質、燃料極、空気極部分での欠落部分をいい、製造時の他のものとの衝突、焼成時の熱収縮による剥がれ等により生じるものと考えられる。異物(燃料電池材料の材質とは異なる材質)の場合には相当直径が200μm以下、好ましくは170μm以下であり、カケの場合には無い場合と比較して平面面積が0.025〜2.25mm、好ましくは0.0625〜1.0mmである。大きなカケは燃料電池材料の強度を低下させるとともに、電池性能にも悪影響を及ぼし、また新たな欠陥を生じさせる原因となる。また、印刷抜けとは、電極ペーストあるいは電解質ペーストを用いてスクリーン印刷によってセルまたはハーフセルを作製するとき、印刷不良によって一部が印刷されず、下地の電解質や電極が剥き出しになっている箇所を言い、その平面面積が0.025〜2.25mm、好ましくは0.0625〜1.0mmである箇所を検出する。また、クラックは燃料電池材料の下側から可視光を照射して、クラックを通してCCDカメラ側にもれて来る光をCCD受光部で検出してクラックの有無を判定するものである。レーザー透過光でもクラックの有無を判定できるが、透過光では、セル表面が多孔質電極で構成されており、電極構成材料は通常、その色が黒色、黒灰色や緑色などであるため検出が困難な場合があり、CCDカメラのほうが検出精度が高く好ましい。
【0021】
また、本発明に用いるレーザー式反射検出機は、レーザー投光部、受光部、受光信号を画像処理するコントロールユニット、およびコントロールユニットからの画像信号を欠陥ビューとして処理する画像処理コンピューターから構成される。その測定原理は、投光部(赤色発光ダイオード)から出力されたレーザー光は検査対象物表面を正反射し受光部に入光するが、欠陥部ではレーザー光の散乱や反射率の変化が生じるために受光部への入光量が通常時と比べ変化するので、この変化量を欠陥として検出するものであり、当該燃料電池材料のウネリ、反り、変形、印刷むらを検出することができる。ウネリは燃料電池材料製造時の焼成段階での熱膨張の差や、温度ムラや収縮ムラ等により燃料電池材料の外周辺にある波状の変形をいい、特に燃料電池用のセルやハーフセルにおいてウネリは100mmの長さに対して11μm以上、より合否判定精度を良くするためには30μm以上、更に合否判定精度を良くするために40μm以上のものに対して有効に検出できる。変形とは燃料電池材料周縁部以外の箇所で多く発生する富士山状の突起であり、相当直径が15μm以上、好ましくは30μm以上、更に好ましくは40μm以上、最も好ましくは50μm以上であり、その高さは11μm以上、好ましくは30μm以上、更に好ましくは40μm以上、最も好ましくは50μm以上の欠陥を有効に検出できる。また、印刷ムラとは一方のセルやハーフセル端面から他方のセルやハーフセル端面までほぼ直線状につらなる山脈のような盛り上がりや一部盛り上がりあるいは、一部へこみを言い、100mmの長さに対して11μm以上、好ましくは30μm以上、更に好ましくは40μm以上のものに対して有効に検出できる。これら、ウネリ、反り、変形はセルやハーフセルの強度を低下させるために好ましくはないからである。また、印刷ムラはセパレータとの接触が不十分になり集電や通電に支障を来たし、電池発電性能が低下する問題となる。
【0022】
また、本発明ではレーザー式反射検出機の代わりに接触式変位検出機を用いて、ウネリ、反りおよび変形を検出することも可能である。接触式変位検出器は、20μmピッチの目盛りを持つメインスケール、インデックススケールを挟んで光源(LED)と受光素子が向かい合って構成されている。その測定原理はスケールが検出部に対して移動するとインデックススケールの窓を通過する光は明暗を繰り返し、同じ周期で90°の位相差を持つ2つの正弦波信号が出力され、この信号を増幅して電気的に分割(内挿)し、特定波長のパルスで出力され、接触式で、超低測定力でZ軸方向(セル厚さ方向)の高低差を変位として検出するものである。Z軸方向に対して1μm以上の変位を計測でき精度はレーザー反射式検出機より優れているが、検出作業性は若干劣るので、レーザー式反射検出機と適宜使い分けることが好ましい。
【0023】
検出方法の手順は上記検出工程を適宜組み合わせて行うことができ、当該欠陥が燃料電池材料の平面上に生じることは表面、裏面を測定することが必要となる。また欠陥の検出は燃料電池材料の一端から始め他端まで行うことを要し、燃料電池材料を固定し検出装置を移動することも、検出装置を固定し燃料電池材料を移動することによっても行うことができる。通常、一軸方向の測定で足りるが、燃料電池材料の形状によっては二軸(X軸、Y軸)、三軸(X軸、Y軸、Z軸)の測定も必要となる。上記移動を伴って測定する場合には、30〜300mm/分、好ましくは50〜200mm/分である。
【0024】
本発明にかかる第一の発明は、上記欠陥の検出方法を行った後、当該燃料電池材料を分別する方法である。上記の各欠陥の大きさを超える欠陥が発見されたときは当該燃料電池材料を、それら以外の燃料電池材料と分別するものである。欠陥の生じた燃料電池材料は再度燃料電池材料の原料として再利用することも可能である。
【実施例】
【0025】
以下に実施例により本発明を、図面を用いて詳細に説明するが本発明の趣旨に反しない限り当該実施例に限定されるものではない。
【0026】
(実施例1)
図1の燃料電池材料欠陥検出システムの模式図に示すように、まず、披検査体である燃料電池材料がローラーコンベア上を進みCCDカメラ検出機内に導入される。投光部は燃料電池材料上側に位置し、投光部から斜め下方向に燃料電池材料に照射された光は反射して同じく燃料電池材料上側に位置する受光部に入りCCDでシートの茶斑点状の異物・欠けを検出する。また、投光部と反対側には、燃料電池材料を下から可視光を照射して、その光が受光部に検出することによってクラックの有無を検出した。なお、燃料電池材料は、一般的な製法で作製した8モル%イットリア安定化ジルコニアシート(厚さ約300μm)を電解質とし、一方の面に、NiO/10Sc1Ce安定化ジルコニア(質量比:5/5)からなる厚さ約50μm燃料極と、他方の面に、La0.6Sr0.4MnOからなる厚さ約40μmの空気極からなる3層膜セルを使用した。
【0027】
CCDカメラ検出機内を出た3層膜セルはベルトコンベア上に移り、そのまま移動して、レーザー反射式検出機に導入される。投光部はシート上側に位置し、赤色発光ダイオードを光源とする投光部から斜め下方向に3層膜セルに照射された光(700nm)は反射して同じくシート上側に位置する受光部でその入光量が検出され、ウネリを検出する。なお、ベルトはゴム製で幅は250mmであり、セル移動速度は同じく85mm/秒である。
【0028】
上記欠陥が検出された3層膜セルはベルトコンベアでセル分別部に移動し、自動的に合格品と不合格品に分別される。
【産業上の利用可能性】
【0029】
本発明は燃料電池材料、特に燃料電池用セルの欠陥の検出に用いることができる。更に当該方法を用い燃料電池材料欠陥の有無を分別することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の燃料電池材料欠陥検出システム基本構成の模式図
【符号の説明】
【0031】
A.シート
B.CCDカメラ検出機
C.レーザー反射式検出機
1.ローラーコンベア
2.ベルトコンベア
3.シート分別部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
CCDカメラ、レーザー式反射検出機および/または接触式変位検出機により、燃料電池用のセルおよび/またはハーフセルの欠陥を検出することを特徴とする燃料電池材料の欠陥検出方法。
【請求項2】
当該セルおよび/または当該ハーフセルが厚さ10〜1500μmかつ平面面積1〜1000cmであることを特徴とする請求項1記載の欠陥検出方法。
【請求項3】
当該燃料電池材料が固体酸化物形燃料電池に用いられることを特徴とする請求項2記載の欠陥検出方法。
【請求項4】
当該CCDカメラにより異物、カケ、キズ、クラック、印刷抜けを検出することを特徴とする請求項1記載の欠陥検出方法。
【請求項5】
当該レーザー式反射検出機および/または当該接触式変位検出機によりウネリ、反り、変形、印刷ムラを検出することを特徴とする請求項1記載の欠陥検出方法。
【請求項6】
当該検出が30〜300mm/分でなされることを特徴とする請求項1記載の欠陥検出方法。
【請求項7】
請求項1〜5記載の欠陥検出後に、当該セルおよび/またはハーフセルを分別することを特徴とする燃料電池材料分別方法。

【図1】
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【公開番号】特開2009−236578(P2009−236578A)
【公開日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−80899(P2008−80899)
【出願日】平成20年3月26日(2008.3.26)
【出願人】(000004628)株式会社日本触媒 (2,292)
【Fターム(参考)】