説明

燃焼装置およびボイラ

【課題】 灯油やA重油等の液体燃料を用いて、高ターンダウン化と有害物質の低減化とを実現可能な燃焼装置を提供することを課題とする。
【解決手段】 本発明は、複数の燃料供給手段4と、前記燃料供給手段4から供給される燃料に対する空気供給手段とを備えた燃焼装置1であって、燃料供給状態にある前記燃料供給手段4に対して、選択的に前記空気供給手段から空気の供給が行われることを特徴としている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃焼装置およびボイラに関するものである。詳しくは、灯油やA重油等の液体燃料を用いて、高ターンダウン化と有害物質の低減化とを実現可能な燃焼装置、およびこの燃焼装置を用いて構成されたボイラに関するものである。
【背景技術】
【0002】
ガス燃料を用いた燃焼装置を備えたボイラについては、燃焼性向上技術および有害物質(NOx、CO、煤等)の低減化技術に関して多くの提案がなされており(例えば、特許文献1参照)、その中には実際に効果を得て実用化されているものも少なくない。
【0003】
しかしながら、灯油やA重油等の液体燃料を用いた燃焼装置を備えたボイラについては、種々の提案がなされてはいるものの、ガス燃料を用いた燃焼装置ほど、燃焼性向上技術および有害物質(NOx、CO、煤等)の低減化技術は進んでいない。
【0004】
特に、高いターンダウンを実施しようとすれば、最小燃焼状態(最小燃料を供給したときの燃焼状態)あるいは最大燃焼状態(最大燃料を供給したときの燃焼状態)のいずれかにおいて燃焼状態が不安定になりやすく、この不安定な燃焼状態に起因して、有害物質の低減化も達成されにくい。
【0005】
例えば、最小燃焼状態と最大燃焼状態とのターンダウン比を大きく設定し、最大燃焼状態のときに適切な空気量を供給可能な構成とすると、燃料(および空気量)を絞って最小燃焼状態としても、燃焼が不安定となって、有害物質の低減化が達成されない場合が多い。
【0006】
【特許文献1】特開平8−61614号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、本発明は、上記従来技術の問題を解決するためになされたものであって、灯油やA重油等の液体燃料を用いて、高ターンダウン化と有害物質の低減化とを実現可能な燃焼装置を提供することを課題とする。また、本発明は、このような高ターンダウン化と有害物質の低減化とを実現可能な燃焼装置を用いて構成されたボイラを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであって、複数の燃料供給手段と、前記燃料供給手段から供給される燃料に対して空気を供給する空気供給経路とを備えた燃焼装置であって、燃料供給状態にある前記燃料供給手段に対して、前記空気供給経路を介して、選択的に空気の供給が行われることを特徴としている。つまり、燃料供給状態にある前記燃料供給手段に対しては空気の供給が行われ、燃料供給状態にない前記燃料供給手段に対しては空気の供給が行われないことを特徴としている。
【0009】
このような構成によれば、燃料供給状態にない前記燃料供給手段に対して空気の供給が行われないため、前記燃料供給手段から供給される燃料に対応した量の空気が無駄なくその燃焼に寄与して、安定した燃焼状態を形成可能な燃焼装置を得ることができる。例えば、最小燃焼状態と最大燃焼状態とのターンダウン比を大きく設定し、最大燃焼状態のときに適切な空気量を供給可能な構成とし、燃料(および空気量)を絞って最小燃焼状態としても、燃料を絞った部分の燃料供給手段に対しては空気が供給されない。したがって、空気流速が低下せず、液体燃料と空気とのミキシングが良好に行われることとなるため、安定した燃焼状態を得ることができ、有害物質の低減化を図ることもできる。
【0010】
また、本発明にかかる燃焼装置においては、前記複数の燃料供給手段に対応した複数の空気供給経路が設けられ、前記空気供給経路がそれぞれ開閉可能であって、選択的に空気の供給を行うために、燃料供給状態にある前記燃料供給手段に対応する前記空気供給経路を開放状態とし、燃料供給状態にない前記燃料供給手段に対応する前記空気供給経路を閉塞状態とする構成が好ましい。
【0011】
この好ましい構成によれば、前記複数の燃料供給手段に対応した複数の空気供給経路が設けられているため、選択的な空気供給を容易に行うことができる。
【0012】
また、本発明にかかる燃焼装置においては、前記空気供給経路に経路開閉手段が設けられていることが好ましい。
【0013】
この好ましい構成によれば、前記空気供給経路に経路開閉手段が設けられているため、前期空気供給経路の開閉を容易に行うことができる。
【0014】
また、本発明にかかる燃焼装置においては、前記複数の燃料供給手段が、異なる燃料供給性能を有する燃料供給手段を組み合わせて構成されていることが好ましい。
【0015】
この好ましい構成によれば、上述した燃焼状態の安定化と有害物質の低減化という効果に加え、幅広いターンダウンに対応可能な燃焼装置を得ることができる。
【0016】
また、本発明にかかる燃焼装置においては、前記複数の燃料供給手段が、低燃焼時に燃料供給状態となる第一燃料供給手段群と、高燃焼時に前記第一燃料供給手段群と共に燃料供給状態となる第二燃料供給手段群とを用いて構成されており、前記第一燃料供給手段群を構成する各燃料供給手段と、前記第二燃料供給手段群を構成する各燃料供給手段とが、異なる燃料供給性能を有する構成が好ましい。
【0017】
この好ましい構成によれば、上述した燃焼状態の安定化と有害物質の低減化という効果に加え、幅広いターンダウンに対応可能な燃焼装置を得ることができる。また、低燃焼時においても高燃焼時においても、それぞれの燃料供給手段の配置に応じて、効果的なバランスのよい分割火炎や濃淡燃焼を構成可能であるため、低NOx化を図ることもできる。
【0018】
さらに、本発明にかかるボイラは、上記課題を解決するためになされたものであって、上述したいずれかの構成を有する燃焼装置を用いて構成されたことを特徴としている。
【0019】
このような構成によれば、高ターンダウン化と有害物質の低減化とを実現可能なボイラを得ることができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、灯油やA重油等の液体燃料を用いて、高ターンダウン化と有害物質の低減化とを実現可能な燃焼装置を得ることができる。また、本発明によれば、高ターンダウン化と有害物質の低減化とを実現可能なボイラを得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、図面に基づき、本発明の実施形態にかかる油バーナ(本発明の「燃焼装置」に相当)について説明する。
【0022】
<第一実施形態>
図1は、本発明の第一実施形態にかかる油バーナ(本発明の「燃焼装置」に相当)の概略縦断面図を示したものである。また、図2は、図1に示した油バーナの概略横断面図および下面図を示したものであって、図2(a)は図1のI−I概略横断面図、図2(b)は図1の油バーナの下面図を示している。
【0023】
図1に示すように、本実施形態にかかる油バーナ1は、ボイラ(詳細は省略)に設けられた空気供給手段を構成するウインドボックス(風箱)2の隔壁2aに設置されている。具体的には、油バーナ1に設けられた載置板1aを隔壁2aに上方から載置して、ボルト等の締結手段(図示省略)にて載置板1aを隔壁2aに締結することによって、油バーナ1をウインドボックス2内の隔壁2aに設置している。なお、本実施形態においては、ボイラの全体構成およびウインドボックス2内に空気を供給する送風機の構成は、周知の技術であるため省略している。
【0024】
本実施形態にかかる油バーナ1は、図1および図2に示すように、燃料供給ホルダ3、この燃料供給ホルダ3の先端部であるホルダヘッド3Aに取り付けられた複数(6つ)のノズルチップ4(本発明の「複数の燃料供給手段」に相当)、空気供給経路として機能する第一空気供給部5,第二空気供給部6、および電磁弁7(本発明の「経路開閉手段」に相当)等を用いて構成されている。
【0025】
燃料供給ホルダ3は、その内部に複数の燃料供給パイプ部3a,3bを有し、この燃料供給パイプ部3a,3bの一方は、液体燃料の燃料貯留部(図示省略)に連通している。また、本実施形態においては、燃料供給ホルダ3中に6つの燃料供給パイプ部3a,3bが設けられており、それぞれの燃料供給パイプ部3a,3bの他方は、ホルダヘッド3Aに取り付けられた6つのノズルチップ4A,4Bにそれぞれ連通している。本実施形態において、各ノズルチップ4は、ホルダヘッド3Aの軸心Xに対して所定の角度θを有すべく設けられている。この所定の角度θは、例えば、20°〜40°程度に設定することが好ましく、本実施形態においては、30°に設定されている。
【0026】
ホルダヘッド3Aに取り付けられたノズルチップ4は、低燃焼時(および高燃焼時)に燃料供給状態となる3つの低高燃用ノズルチップ4A(本発明の「第一燃料供給手段群」に相当)と、高燃焼時に低高燃用ノズルチップ4Aと共に燃料供給状態となる3つの高燃用ノズルチップ4B(本発明の「第二燃焼供給手段群」に相当)とに分けられ、ボイラの燃焼負荷に応じて、それぞれのノズルチップ4における燃料供給状態が適宜切り換えられる。つまり、それぞれのノズルチップ4は、必要に応じてオンオフ制御される。また、本実施形態においては、低高燃用ノズルチップ4Aとして、1時間当たり3ガロンの燃料を供給可能なノズルチップが用いられ、高燃用ノズルチップ4Bとして、1時間当たり5ガロンの燃料を供給可能なノズルチップが用いられている。
【0027】
空気供給手段は、送風機およびウインドボックス2を用いて構成されており、この空気供給手段からの空気が、第一空気供給部5を形成する第一筒部材8、および第二空気供給部6(本発明の「空気供給経路」に相当)を形成する第二筒部材9を介して、ノズルチップ4に対して供給されるべく構成されている。
【0028】
第一空気供給部5は、燃料供給ホルダ3と第一筒部材8との間に形成された領域であって、この領域にウインドボックス2を介して空気が供給される。
【0029】
第二空気供給部6は、第一筒部材8と第二筒部材9との間に形成された領域であって、この領域にウインドボックス2を介して空気が供給される。第二筒部材9には、その上方部にノズルチップ4の数に対応した第一空気供給孔10が穿孔された上部空気供給板11が設けられ、その下方部にノズルチップ4の数に対応した第二空気供給孔12が穿孔された下部空気供給板13が設けられている。本発明の「空気供給経路」には、この第一空気供給孔10および第二空気供給孔12も含まれる。
【0030】
本実施形態においては、低高燃用ノズルチップ4Aに対応した位置に存在する低高燃用第一空気供給孔10Aと低高燃用第二空気供給孔12Aとを用いて、低高燃用ノズルチップ4Aに対応した低高燃用空気供給経路が構成され、高燃用ノズルチップ4Bに対応した位置に存在する高燃用第一空気供給孔10Bと高燃用第二空気供給孔12Bとを用いて、高燃用ノズルチップ4Bに対応した高燃用空気供給経路が構成されている。
【0031】
また、本実施形態にかかる油バーナ1においては、高燃用ノズルチップ4Bに対応した位置に存在する高燃用第一空気供給孔10Bの上方に、電磁弁7が設けられている。電磁弁7は、第一空気供給孔10Bの上方位置の第一筒部材8に設けられた電磁弁取付板14に設けられており、ソレノイド部7a、シャフト部7b、スプリング部7c、およびバルブ部7dを用いて構成されている。本実施形態においては、上部空気供給板11に3つの高燃用第一空気供給孔10Bが穿孔されているため、それらに対応して3つの電磁弁7が設けられている。
【0032】
電磁弁7を構成するスプリング部7cは、シャフト部7bに挿通された状態で、バルブ部7dと電磁弁取付板14との間に設けられている。したがって、この電磁弁7は、ソレノイド部7aが非通電状態にあるときには、スプリング部7cの付勢力によってバルブ部7dが高燃用第一空気供給孔10Bを塞ぐ(閉塞する)ように機能する。そして、ソレノイド部7bが通電状態にあるときには、シャフト部7bがソレノイド部7a側に引き上げられ、このシャフト部7bの動きに伴ってバルブ部7dも引き上げられ、高燃用第一空気供給孔10Bが開放される。
【0033】
本実施形態にかかる油バーナ1は、以上のように構成されており、その構成に基づき、次のような作用効果を有する。以下、図1および図2に加え、図3および図4を用いて、その作用効果を具体的に説明する。
【0034】
図3は、本実施形態にかかる油バーナが低燃焼状態にある場合の概略図を示したものであって、図3(a)は概略縦断面図を示し、図3(b)は図3(a)の下面図を示している。図4は、本実施形態にかかる油バーナが高燃焼状態にある場合の概略図を示したものであって、図4(a)は概略縦断面図を示し、図4(b)は図4(a)の下面図を示している。なお、図3(a)および図4(a)のいずれにおいても、図面の複雑化を避けるため、図示されているノズルチップ以外から供給されている燃料の記載は省略している。
【0035】
本実施形態にかかる油バーナ1を低燃焼状態で作動させる場合には、図3(a)に示すように、電磁弁7のソレノイド部7aを非通電状態とし、スプリング部7cの付勢力によりバルブ部7dを下方に押し下げることによって、高燃用第一空気供給孔10Bを閉塞させる。
【0036】
次いで、送風機(図示省略)を駆動させ、ウインドボックス2を介して第一空気供給部5および第二空気供給部6に空気が供給される。この際、上部空気供給板11に穿孔された各高燃用第一空気供給孔10Bは、それぞれに対応した電磁弁7のバルブ部7dによって閉塞されている。したがって、高燃用第一空気供給孔10Bには、ウインドボックス2を介して空気は供給されず、これに伴い、下部空気供給板13に穿孔された高燃用第二空気供給孔12Bにも空気は供給されない。
【0037】
次いで、3つの低高燃用ノズルチップ4Aから低高燃用液体燃料LOが所定の角度θを有する中空円錐状に噴霧され(図3参照)、低高燃用第二空気供給孔12Aから供給される燃焼用空気とのミキシングが行われる。この所定の角度θは、例えば、30°〜60°程度が好ましく、本実施形態においては、所定の角度θが45°の低高燃用ノズルチップ4Aを用いた。
【0038】
この際、本実施形態においては、上述した通り、高燃用第一空気供給孔10Bがバルブ部7dによって閉塞されているため、燃料供給状態にある低高燃用ノズルチップ4A(から噴霧される低高燃用液体燃料LO)に対して、送風機からの空気は選択的に供給される。つまり、燃料供給状態にある低高燃用ノズルチップ4Aに対しては、低高燃用第二空気供給孔12Aを介して空気の供給が行われ、燃料供給状態にない高燃用ノズルチップ4Bに対しては、空気の供給が行われないこととなる。
【0039】
次いで、低高燃用ノズルチップ4Aの近傍に設けられた、電気火花を形成する着火装置(図示省略)を用いて、空気とミキシングされた低高燃用液体燃料LOに対して着火が行われる。この着火によって、3つの低高燃用ノズルチップ4Aから噴霧される低高燃用液体燃料LOの全てが燃焼状態となって、低高燃用ノズルチップ4Aから低高燃用液体燃料LOが供給されている間、油バーナ1の低燃焼状態が維持される。
【0040】
本実施形態にかかる油バーナ1を高燃焼状態で作動させる場合には、図4(a)に示すように、電磁弁7のソレノイド部7aを通電状態とし、シャフト部7bと共にバルブ部7dを上方に持ち上げることによって、高燃用第一空気供給孔10Bを開放させる。
【0041】
次いで、上記低燃焼の場合と同様に、送風機(図示省略)を駆動させ、ウインドボックス2を介して第一空気供給部5および第二空気供給部6に空気が供給される。この際、電磁弁7のバルブ部7dは持ち上げられているため、上部空気供給板11に穿孔された各高燃用第一空気供給孔10Bは開放され、その結果、低高燃用第二空気供給孔12Aおよび高燃用第二空気供給孔12Bのいずれにも空気が供給される。
【0042】
次いで、3つの低高燃用ノズルチップ4Aおよび3つの高燃用ノズルチップ4Bから低高燃用液体燃料LOおよび高燃用液体燃料HOが噴霧され(図4参照)、低高燃用第二空気供給孔12Aおよび高燃用第二空気供給孔12Bから供給される燃焼用空気とのミキシングが行われる。なお、ここでは、低高燃用液体燃料LOが所定の角度θを有する中空円錐状に噴霧され、高燃用液体燃料HOが所定の角度θを有する中空円錐状に噴霧される。この所定の角度θは、例えば、30°〜60°程度が好ましく、本実施形態においては、所定の角度θが45°の高燃用ノズルチップ4Bを用いた。
【0043】
次いで、低高燃用ノズルチップ4Aの近傍に設けられた、電気火花を形成する着火装置(図示省略)を用いて、空気とミキシングされた低高燃用液体燃料LOに対して着火が行われる。この着火によって、6つのノズルチップ4から噴霧される液体燃料LO,HOの全てが燃焼状態となって、ノズルチップ4から液体燃料LO,HOが供給されている間、油バーナ1の高燃焼状態が維持される。
【0044】
また、本実施形態にかかる油バーナ1は、燃焼状態継続時において、低燃焼から高燃焼、あるいは高燃焼から低燃焼への切り換えが可能である。
【0045】
低燃焼から高燃焼への切り換えが行われる場合には、図3の状態(低燃焼状態)から、電磁弁7への通電(シャフト部7bの移動に伴うバルブ部7dの引き上げ)および高燃用ノズルチップ4Bからの高燃用液体燃料HOの噴霧が略同時に行われ、図4の状態(高燃焼状態)に移行する。高燃焼から低燃焼への切り換えが行われる場合には、図4の状態(高燃焼状態)から、電磁弁7への通電解除(スプリング部7cの付勢力によるバルブ部7dの押し下げ)および高燃用ノズルチップ4Bからの高燃用液体燃料HOの噴霧停止が略同時に行われ、図3の状態(低燃焼状態)に移行する。
【0046】
さて、バーナに対する空気の供給量は、一般にウインドボックス2と送風機との間のダクト内に設けられたダンパや、送風機の回転数を制御するインバータ等を用いて調整される。そして、この空気は、液体燃料の供給量に対応して供給される。例えば、同様の燃料供給性能を有する2つのノズルチップを用いて構成されたバーナにおいて、どちらか一方のノズルチップから液体燃料を噴霧させる際(低燃焼時)に供給される空気量を「1」とすれば、両方のノズルチップから液体燃料を噴霧させる際(高燃焼時)に供給される空気量を「2」とする。このような空気量の調整をダンパやインバータを用いて行っている。
【0047】
しかしながら、従来技術においては、このように液体燃料の供給量に対応して供給された空気が、液体燃料と適切にミキシングされないという問題があった。つまり、液体燃料を適切に燃焼させるために必要な量の空気は供給しているが、その空気が液体燃料と効果的にミキシングしておらず、燃焼状態を悪化させているという問題があった。先に例示した2つのノズルチップの場合で説明すれば、バーナから噴出される空気流速の最適値を高燃焼時の方に合わせると、低燃焼時には空気流速が低下して液体燃料と空気とを燃焼に適した状態にミキシングすることが困難であった。また、ターンダウン比を大きくすればするほど、低燃焼時の空気流速が小さくなって、液体燃料と空気とのミキシングが不十分となって、燃焼性が悪化するという問題があった。
【0048】
以上のような問題点に鑑み、本実施形態においては、油バーナ1にて高燃焼状態を維持する場合には、全ての第一空気供給孔10を開放状態として(図4等参照)、ノズルチップ4から噴霧される液体燃料に対して空気を噴出させ、低燃焼状態を維持する場合には、高燃用第一空気供給孔10Bを閉塞状態として(図3等参照)、低高燃用ノズルチップ4Aから噴霧される液体燃料に対してのみ空気を噴出させるべく構成されている。つまり、高燃時も低燃時も、液体燃料を噴霧しているノズルチップ4にのみ選択的に空気を噴出させて、液体燃料と空気とのミキシングが適切に行われるように構成されている。
【0049】
このような構成によれば、ダンパ等によって単に全体の空気流量の制御を行うだけであっても、電磁弁7によって空気の供給が選択的に行われるため、ノズルチップ4近傍における空気流速の低下を防止し、液体燃料と空気とのミキシングを効果的に行うことができる。具体的には、低燃焼時においても、油バーナ1先端における燃焼用空気の流速が小さくなりすぎず、所定の空気流速を維持できるため、低O域まで、低スモークで安定した燃焼状態を実現することが可能となる。したがって、本実施形態によれば、バーナから噴出される空気流速の最適値を高燃焼時の方に合わせても、低燃焼時に空気流速が低下することがないため、いずれの燃焼状態も良好となって、必要に応じて高いターンダウンを実現することができる。
【0050】
また、本実施形態によれば、低燃焼時も複数のノズルチップ4Aから噴霧された液体燃料によって分割火炎が形成されることとなるため、低NOx化も図ることができる。これは、分割火炎によって、火炎温度を低下させることができることに起因する。分割火炎を形成すれば、火炎の表面積を増加させ放射冷却を促進させることでできるため、同一の燃焼量で単一の火炎を形成する場合に比較して火炎温度を低下させ得る。NOxの発生量を左右する要因の一つとして火炎温度があり、NOx発生量はこの火炎温度が上昇するのに伴い増加する。したがって、本実施形態によれば、分割火炎を形成することにより、同一の燃焼量で単一の火炎を形成する場合に比較して、低NOx化を図ることができる。なお、本実施形態にかかる分割火炎間には、第一空気供給部5からの空気が噴出されているため、この空気が各火炎間の仕切りの役割を果たすことにもなり、分割火炎の構成が適切に維持される。
【0051】
また、本実施形態においては、低高燃用ノズルチップ4Aと高燃用ノズルチップ4Bとが交互に配置されている。したがって、本実施形態によれば、3つの低高燃用ノズルチップ4Aを用いた低燃焼時において、低高燃用ノズルチップ4Aから噴射された低高燃用液体燃料LOの重なりを低減でき、燃焼性を向上させることが可能となる。この低高燃用ノズルチップ4Aと高燃用ノズルチップ4Bとの交互配置は、低高燃用ノズルチップ4Aと高燃用ノズルチップ4Bとがそれぞれ2つ以上の場合に好適である。
【0052】
さらに、本実施形態においては、上述した低燃焼時における安定した燃焼状態と有害物質低減化(スモーク低下等)の実現に加え、高燃焼時においても有害物質の低減化を図ることができる。
【0053】
高燃焼時の燃焼状態の安定性に関しては、低燃焼時と同様に、油バーナ1先端における燃焼用空気を所定の空気流速に維持できることに起因する。つまり、高燃焼時の場合も、低燃焼時と同様に、低O域まで、低スモークで安定した燃焼状態を実現することが可能となる。ところが、高燃焼時の有害物質の低減化はこれだけに留まるものではない。
【0054】
図4等に示される通り、本実施形態にかかる油バーナ1においては、略同心円状に6つのノズルチップ4が配設されており、ここでは低高燃用ノズルチップ4Aと高燃用ノズルチップ4Bとが交互に配されている。したがって、本実施形態にかかる高燃焼時の場合においても、低燃焼時の場合と同様に、分割火炎が形成されることとなって、NOxの低減を図ることができる。
【0055】
また、本実施形態においては、低高燃用ノズルチップ4Aが1時間当たり3ガロンの液体燃料供給性能を有し、高燃用ノズルチップ4Bが1時間当たり5ガロンの液体燃料供給性能を有しているため、隣接するノズルチップ4から供給される液体燃料間に濃淡が生ずる。そして、図4(b)からも明らかなように、隣接するノズルチップ4から噴出される液体燃料は重なり合っている部分が存在するため、ここでも濃淡が生ずる。つまり、本実施形態における高燃焼時には、液体燃料濃度に濃い部分と淡い部分とが形成される。NOxの発生量は、燃料と空気との割合が当量比0.8〜1.0程度で最大となり、この割合よりも燃料濃度が濃い場合でも淡い場合でもNOxの発生量が低減することは既知である。したがって、本実施形態の高燃焼時においては、意図的に濃淡燃焼を形成することによって、NOxの低減を図ることができる。
【0056】
すなわち、本実施形態の高燃焼時においては、分割火炎と濃淡燃焼との相乗効果によってNOxの低減を図ることが可能となる。
【0057】
以上説明したように、本実施形態にかかる油バーナ1は、燃料供給状態にあるノズルチップ4に対しては選択的に空気の供給が行われ、燃料供給状態にないノズルチップ4に対しては空気の供給が行われないように構成されている。したがって、最小燃焼状態と最大燃焼状態とのターンダウン比を大きく設定し、最大燃焼状態のときに適切な空気量を供給可能な構成とし、燃料(および空気量)を絞って最小燃焼状態としても、空気流速が低下せず、液体燃料と空気とのミキシングが良好に行われることとなるため、安定した燃焼状態を得ることができ、有害物質の低減化を図ることもできる。本実施形態の場合は、低燃・高燃共に安定した燃焼状態を維持しつつ、有害物質の低減化を図って、低燃焼時(3ガロン/時間×3、吐出圧力1.4MPa、燃焼量48.1リットル/時間)と高燃焼時(3ガロン/時間×3+5ガロン/時間×3、吐出圧力1.4MPa、燃焼量128.3リットル/時間)とのターンダウン比(TDR)を1:2.7にすることができた。
【0058】
なお、本発明は、上記第一実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨に適合し得る範囲で必要に応じて種々の変更を加えて実施することも可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に含まれる。
【0059】
例えば、上記第一実施形態においては、空気供給経路を構成する第一空気供給孔10を開閉する場合について説明したが、本発明はこの構成に限定されない。したがって、例えば、必要に応じて第二空気供給孔12を開閉するように構成しても、また、第一空気供給孔10および第二空気供給孔12の両方を開閉するように構成してもよい。さらに、第一空気供給孔10と第二空気供給孔12との間の空気供給経路を開閉するように構成してもよい。
【0060】
また、上記第一実施形態においては、3ガロン/時間の燃料供給性能を有するノズルチップと、5ガロン/時間の燃料供給性能を有するノズルチップとを用いる場合について説明したが、本発明はこの構成に限定されず、必要とされるターンダウン比に応じて、使用するノズルチップの燃料供給性能を変更してもよい。
【0061】
また、上記第一実施形態においては、6つのノズルチップを用いる場合について説明したが、本発明はこの構成に限定されず、必要に応じて、5つ以下、あるいは7つ以上のノズルチップを用いて構成してもよい。
【0062】
また、上記第一実施形態においては、6つのノズルチップの内、3つが高燃用ノズルチップである場合について説明したが、本発明はこの構成に限定されず、必要に応じて、2つ以下、あるいは4つ以上のノズルチップを高燃用ノズルチップとして使用してもよい。つまり、必要とされるターンダウン比に応じて、高燃用ノズルチップの数(換言すれば、低高燃用ノズルチップの数)を適宜定めることも可能である。ただし、この場合にも、当然のことながら、本発明の趣旨に基づき、燃料供給状態にあるノズルチップに対応した空気供給経路は開放状態とし、燃料供給状態にない(燃料非供給状態にある)ノズルチップに対応した空気供給経路は閉塞状態とする。
【0063】
また、上記第一実施形態においては、ノズルチップ4がホルダヘッド3Aの軸心Xに対して所定の角度θ(30°)を有して設けられ、低高燃用ノズルチップ4Aの噴霧角度がθ(45°)であって、高燃用ノズルチップ4Bの噴霧角度がθ(45°)である場合について説明したが、本発明はこの構成に限定されるものではない。上記第一実施形態においては、良好な燃焼範囲が最も広くとれるノズルチップ4の噴霧角度として上記のものを採用したが、これは、ホルダヘッド3Aの軸心Xに対するノズルチップ4の設置角度θとの関係において、変更することも可能である。つまり、設置角度θの変更に伴い、適切な噴霧角度を適宜選択することもできる。
【0064】
<第二実施形態>
次に、本発明の第二実施形態について説明する。
【0065】
図5は、本発明の第二実施形態にかかる油バーナ(本発明の「燃焼装置」に相当)の概略縦断面図を示したものであって、図5(a)は低燃焼状態を示し、図5(b)は高燃焼状態を示している。
【0066】
なお、この第二実施形態にかかる油バーナ50は、基本的に第一実施形態にて説明した油バーナ1と同様の構成を有しており、その構成要素として、空気供給手段(送風機等)からの空気を選択的に供給するための機構(第一実施形態の場合は電磁弁7)のみが異なる。そこで、以下においては、第一実施形態と同様の構成要素については同様の符号を付してその説明を割愛し、主に第二実施形態の特徴部分について説明する。
【0067】
図5に示すように、本実施形態にかかる油バーナ50は、高燃用ノズルチップ4Bに対応した第二空気供給部6中に、空気経路開閉板51および空気経路開閉スプリング部52(これらが本発明の「経路開閉手段」に相当)が設けられている。より具体的には、この空気経路開閉板51と空気経路開閉スプリング部52とは、高燃用第一空気供給孔10Bと高燃用第二空気供給孔12Bとの間に形成された高燃用空気供給経路中に設けられている。
【0068】
本実施形態においては、空気供給手段(送風機等)からの空気を選択的に供給するための機構(経路開閉手段)として、この空気経路開閉板51と空気経路開閉スプリング部52とが設けられている。空気経路開閉板51の一方は、上部空気供給板11近傍にヒンジ結合されており、その他方は、空気経路開閉スプリング部52に固着されている。また、空気経路開閉スプリング部52の一方は、空気経路開閉板51に固着されており、その他方は、下部空気供給板13近傍の第二筒部材9内壁に固着されている。
【0069】
空気経路開閉スプリング部52の付勢力は、送風機から供給される空気の圧力とのバランスに基づき伸縮すべく設定されている。具体的には、低燃焼時の空気供給圧力に対しては、空気経路開閉スプリング部52の付勢力が上回って伸長状態となり、空気経路開閉板51が高燃用空気供給経路を閉塞状態とする(図5(a)参照)。そして、高燃焼時の空気供給圧力に対しては、空気経路開閉スプリング部52の付勢力が下回って縮短状態となり、空気経路開閉板51が高燃用空気供給経路を開放状態とする(図5(b)参照)。
【0070】
本実施形態にかかる油バーナ50は、以上のように構成されており、その構成に基づき、次のような作用効果を有する。
【0071】
図5(a)は、本実施形態にかかる油バーナ50が低燃焼状態にある場合の概略縦断面図を示したものである。本実施形態にかかる油バーナ50を低燃焼状態で作動させる場合には、送風機を駆動させ、ウインドボックス2を介して第一空気供給部5および第二空気供給部6に低燃焼に必要な空気が供給される。
【0072】
低燃焼に必要な空気が供給された場合には、上述したように、その空気供給圧力よりも空気経路開閉スプリング部52の付勢力が上回るため、空気経路開閉スプリング部52が伸長状態となって、空気経路開閉板51により高燃用空気供給経路が閉塞される。したがって、下部空気供給板13に穿孔された高燃用第二空気供給孔12Bには空気が供給されないこととなる。
【0073】
次いで、3つの低高燃用ノズルチップ4Aから低高燃用液体燃料LOが所定の角度θを有する中空円錐状に噴霧され(図3(a),(b)参照)、低高燃用第二空気供給孔12Aから供給される燃焼用空気とのミキシングが行われる。
【0074】
この際、本実施形態においては、上述した通り、高燃用空気供給経路が空気経路開閉板51によって閉塞されているため、燃料供給状態にある低高燃用ノズルチップ4A(から噴霧される低高燃用液体燃料LO)に対して、送風機からの空気は選択的に供給される。つまり、燃料供給状態にある低高燃用ノズルチップ4Aに対しては、低高燃用空気供給経路(第二空気供給孔12A)を介して空気の供給が行われ、燃料供給状態にない高燃用ノズルチップ4Bに対しては、空気の供給が行われないこととなる。
【0075】
次いで、低高燃用ノズルチップ4Aの近傍に設けられた、電気火花を形成する着火装置(図示省略)を用いて、空気とミキシングされた低高燃用液体燃料LOに対して着火が行われる。この着火によって、3つの低高燃用ノズルチップ4Aから噴霧される低高燃用液体燃料LOの全てが燃焼状態となって、低高燃用ノズルチップ4Aから低高燃用液体燃料LOが供給されている間、油バーナ50の低燃焼状態が維持される。
【0076】
図5(b)は、本実施形態にかかる油バーナ50が高燃焼状態にある場合の概略縦断面図を示したものである。本実施形態にかかる油バーナ50を高燃焼状態で作動させる場合には、送風機を駆動させ、ウインドボックス2を介して第一空気供給部5および第二空気供給部6に高燃焼に必要な空気が供給される。
【0077】
高燃焼に必要な空気が供給された場合には、上述したように、その空気供給圧力よりも空気経路開閉スプリング部52の付勢力が下回るため、空気経路開閉スプリング部52が縮短状態となって、高燃用空気供給経路が開放される。したがって、下部空気供給板13に穿孔された高燃用第二空気供給孔12Bにも空気が供給されることとなる。
【0078】
次いで、3つの低高燃用ノズルチップ4Aおよび3つの高燃用ノズルチップ4Bから低高燃用液体燃料LOおよび高燃用液体燃料HOが噴霧され(図4(b)参照)、低高燃用空気供給経路(低高燃用第二空気供給孔12A)および高燃用空気供給経路(高燃用第二空気供給孔12B)から供給される燃焼用空気とのミキシングが行われる。
【0079】
次いで、低高燃用ノズルチップ4Aの近傍に設けられた、電気火花を形成する着火装置(図示省略)を用いて、空気とミキシングされた低高燃用液体燃料LOに対して着火が行われる。この着火によって、6つのノズルチップ4から噴霧される液体燃料LO,HOの全てが燃焼状態となって、ノズルチップ4から液体燃料LO,HOが供給されている間、油バーナ50の高燃焼状態が維持される。
【0080】
また、本実施形態にかかる油バーナ50も第一実施形態にかかる油バーナ1と同様に、燃焼状態継続時において、低燃焼から高燃焼、あるいは高燃焼から低燃焼への切り換えが可能である。
【0081】
低燃焼から高燃焼への切り換えが行われる場合には、当然のことながら、空気供給圧力が増加するため、その空気供給圧力の上昇に伴って空気経路開閉スプリング部52が縮短して高燃用空気供給経路が開放され、その開放と共に高燃用ノズルチップ4Bから高燃用液体燃料HOの噴霧が行われる。高燃焼から低燃焼への切り換えが行われる場合には、空気供給圧力が減少するため、その空気供給圧力の減少に伴って空気経路開閉スプリング部52が伸長して高燃用空気供給経路が閉塞され、その閉塞と共に高燃用ノズルチップ4Bからの高燃用液体燃料HOの噴霧が停止される。
【0082】
以上のように、本実施形態にかかる油バーナ50は、第一実施形態の場合と同様に、ダンパ等によって単に全体の空気流量の制御を行うだけであっても、空気経路開閉板51および空気経路開閉スプリング部52によって空気の供給が選択的に行われるため、低燃時におけるノズルチップ4近傍における空気流速の低下を防止し、液体燃料と空気とのミキシングを効果的に行うことができる。また、低燃焼時における分割火炎や、高燃焼時における分割火炎、濃淡燃焼等も、第一実施形態と同様である。
【0083】
つまり、本実施形態は、空気を選択的に供給するための機構(経路開閉手段)が第一実施形態と異なるだけで、技術的思想は同様である。したがって、本実施形態によれば、先に説明した第一実施形態にて得られる効果(高いターンダウンの実現、有害物質の低減)を全て得ることができる。
【0084】
また、本実施形態にかかる油バーナ50の経路開閉手段は、上述したように空気経路開閉板51および空気経路開閉スプリング部52のみを用いた構成であるため、電磁弁等の電気的要素を有することなく、比較的簡単に構成することが可能となる。
【0085】
<第三実施形態>
次に、本発明の第三実施形態について説明する。
【0086】
図6は、本発明の第三実施形態にかかる油バーナ(本発明の「燃焼装置」に相当)の概略図を示したものであって、図6(a)は本実施形態にかかる油バーナの概略縦断面図(低燃焼時)を示し、図6(b)は低燃焼時における図6(a)のVI−VI断面図を示し、図6(c)は高燃焼時における図6(a)のVI−VI断面図を示している。
【0087】
なお、この第三実施形態にかかる油バーナ60は、基本的に第一実施形態にて説明した油バーナ1と同様の構成を有しており、その構成要素として、空気供給手段(送風機等)からの空気を選択的に供給するための機構(第一実施形態の場合は電磁弁7)のみが異なる。そこで、以下においては、第一実施形態と同様の構成要素については同様の符号を付してその説明を割愛し、主に第三実施形態の特徴部分について説明する。
【0088】
図6(a)に示すように、本実施形態にかかる油バーナ60は、上部空気供給板11の上方に空気供給孔開閉板61(本発明の「経路開閉手段」に相当)が設けられている。この空気供給孔開閉板61は、図6(b)および図6(c)に示すように、3つの開閉部62を有しており、これらの開閉部62が、空気供給孔開閉板61の回動に伴って、高燃用第一空気供給孔10Bの開閉を行う。空気供給孔開閉板61は、駆動部(図示省略)によって回動可能に構成されている。
【0089】
本実施形態にかかる油バーナ60は、以上のように構成されており、油バーナ60を低燃焼状態で作動させる場合には、図6(b)に示すように、空気供給孔開閉板61の開閉部62を高燃用第一空気供給孔10B上に移動させ、高燃用第一空気供給孔10Bを閉塞状態とする。また、油バーナ60を高燃焼状態で作動させる場合には、図6(c)に示すように、空気供給孔開閉板61の開閉部62を高燃用第一空気供給孔10B上から移動させ、高燃用第一空気供給孔10Bを開放状態とする。
【0090】
また、本実施形態にかかる油バーナ60も第一実施形態にかかる油バーナ1と同様に、燃焼状態継続時において、低燃焼から高燃焼、あるいは高燃焼から低燃焼への切り換えが可能である。
【0091】
低燃焼から高燃焼への切り換えが行われる場合には、図6(b)の状態(低燃焼状態)から、空気供給孔開閉板61の回動(高燃用第一空気供給孔10Bを開放させる方向への回動)および高燃用ノズルチップ4Bからの高燃用液体燃料HOの噴霧が略同時に行われ、図6(c)の状態(高燃焼状態)に移行する。高燃焼から低燃焼への切り換えが行われる場合には、図6(c)の状態(高燃焼状態)から、空気供給孔開閉板61の回動(高燃用第一空気供給孔10Bを閉塞させる方向への回動)および高燃用ノズルチップ4Bからの高燃用液体燃料HOの噴霧停止が略同時に行われ、図6(b)の状態(低燃焼状態)に移行する。
【0092】
以上のように、本実施形態にかかる油バーナ60は、空気を選択的に供給するための機構(経路開閉手段)が第一実施形態と異なるだけで(第一実施形態は電磁弁7であって、第三実施形態は空気供給孔開閉板61)、その他の構成および技術的思想は第一実施形態と同様である。したがって、本実施形態によれば、先に説明した第一実施形態にて得られる効果(高いターンダウンの実現、有害物質の低減)を全て得ることができる。
【0093】
なお、上記第三実施形態は、空気供給孔開閉板61によって上部空気供給板12に穿孔された高燃用第一空気供給孔10Bを開閉する場合について説明したが、本発明はこの構成に限定されない。したがって、例えば、下部空気供給板13の上方あるいは下方に図6に示したものと同様の空気供給孔開閉板を設け、これによって下部空気供給板13に穿孔された高燃用第二空気供給孔12Bの開閉を行うように構成してもよい。
【0094】
<第四実施形態>
次に、本発明の第四実施形態について説明する。
【0095】
図7は、本発明の第四実施形態にかかる油バーナ(本発明の「燃焼装置」に相当)の概略縦断面図を示したものである。また、図8は、図7に示した油バーナの概略横断面図および下面図を示したものであって、図8(a)は図7のVII−VII概略横断面図、図8(b)は図7の油バーナの下面図を示している。
【0096】
なお、この第四実施形態にかかる油バーナ70は、基本的に第一実施形態にて説明した油バーナ1と同様の構成を有しており、その構成要素として水噴霧手段を有する点のみが第一実施形態と異なる。そこで、以下においては、第一実施形態と同様の構成要素については同様の符号を付してその説明を割愛し、主に第四実施形態の特徴部分について説明する。
【0097】
図7および図8に示すように、本実施形態においては、燃料供給ホルダ3先端部のホルダヘッド3Aの中心部(軸心X上)に、水噴霧手段として水噴霧用ノズルチップ71が設けられている。この水噴霧用ノズルチップ71は、燃料供給ホルダ3内部に設けられた水供給パイプ部3cの一方と連通しており、水供給パイプ部3cの他方は水貯留部(図示省略)に連通している。そして、必要に応じて、所定量の水が水供給パイプ部3cを介して水噴霧用ノズルチップ71に供給されるべく構成されている。
【0098】
また、本実施形態において、各ノズルチップ4は、ホルダヘッド3Aの軸心Xに対して所定の角度θを有すべく設けられている。この所定の角度θは、例えば、20°〜40°程度に設定することが好ましく、本実施形態においては、30°に設定されている。
【0099】
本実施形態にかかる油バーナ70は、以上のように構成されており、その構成に基づき、次のような作用効果を有する。以下、図7および図8に加え、図9および図10を用いて、その作用効果を具体的に説明する。
【0100】
図9は、本実施形態にかかる油バーナが低燃焼状態にある場合の概略図を示したものであって、図9(a)は概略縦断面図を示し、図9(b)は図9(a)の下面図を示している。図10は、本実施形態にかかる油バーナが高燃焼状態にある場合の概略図を示したものであって、図10(a)は概略縦断面図を示し、図10(b)は図10(a)の下面図を示している。なお、図9(a)および図10(a)のいずれにおいても、図面の複雑化を避けるため、図示されているノズルチップ以外から供給されている燃料の記載は省略している。
【0101】
本実施形態にかかる油バーナ70を低燃焼状態で作動させる場合には、図9(a)に示すように、電磁弁7のソレノイド部7aを非通電状態とし、スプリング部7cの付勢力によりバルブ部7dを下方に押し下げることによって、高燃用第一空気供給孔10Bを閉塞させる。
【0102】
次いで、送風機(図示省略)を駆動させ、ウインドボックス2を介して第一空気供給部5および第二空気供給部6に空気が供給される。この際、上部空気供給板11に穿孔された各高燃用第一空気供給孔10Bは、それぞれに対応した電磁弁7のバルブ部7dによって閉塞されている。したがって、高燃用第一空気供給孔10Bには、ウインドボックス2を介して空気は供給されず、これに伴い、下部空気供給板13に穿孔された高燃用第二空気供給孔12Bにも空気は供給されない。
【0103】
次いで、3つの低高燃用ノズルチップ4Aから低高燃用液体燃料LOが所定の角度θ5を有する中空円錐状に噴霧され(図9参照)、低高燃用第二空気供給孔12Aから供給される燃焼用空気とのミキシングが行われる。この所定の角度θは、例えば、30°〜60°程度が好ましく、本実施形態においては、所定の角度θが45°の低高燃用ノズルチップ4Aを用いた。
【0104】
この際、本実施形態においては、上述した通り、高燃用第一空気供給孔10Bがバルブ部7dによって閉塞されているため、燃料供給状態にある低高燃用ノズルチップ4A(から噴霧される低高燃用液体燃料LO)に対して、送風機からの空気は選択的に供給される。つまり、燃料供給状態にある低高燃用ノズルチップ4Aに対しては、低高燃用第二空気供給孔12Aを介して空気の供給が行われ、燃料供給状態にない高燃用ノズルチップ4Bに対しては、空気の供給が行われないこととなる。
【0105】
次いで、低高燃用ノズルチップ4Aの近傍に設けられた、電気火花を形成する着火装置(図示省略)を用いて、空気とミキシングされた低高燃用液体燃料LOに対して着火が行われる。この着火によって、3つの低高燃用ノズルチップ4Aから噴霧される低高燃用液体燃料LOの全てが燃焼状態となって、低高燃用ノズルチップ4Aから低高燃用液体燃料LOが供給されている間、油バーナ70の低燃焼状態が維持される。
【0106】
そして、本実施形態においては、低高燃用ノズルチップ4Aから供給される低高燃用液体燃料LOへの着火と略同時に、水噴霧用ノズルチップ71から水W(火炎冷却用の水)が所定の角度θを有する中空円錐状に噴霧される(図9参照)。この所定の角度θは、例えば、45°〜75°程度が好ましく、本実施形態においては、所定の角度θが60°の水噴霧用ノズルチップ71を用いた。
【0107】
つまり、本実施形態においては、図9に示すように、低高燃用ノズルチップ4Aから低高燃用液体燃料LOが供給されて、油バーナ70の低燃焼状態が維持される間、水噴霧用ノズルチップ71から水Wが噴霧されて、火炎の冷却が行われることとなる。
【0108】
本実施形態にかかる油バーナ70を高燃焼状態で作動させる場合には、図10(a)に示すように、電磁弁7のソレノイド部7aを通電状態とし、シャフト部7bと共にバルブ部7dを上方に持ち上げることによって、高燃用第一空気供給孔10Bを開放させる。
【0109】
次いで、上記低燃焼の場合と同様に、送風機(図示省略)を駆動させ、ウインドボックス2を介して第一空気供給部5および第二空気供給部6に空気が供給される。この際、電磁弁7のバルブ部7dは持ち上げられているため、上部空気供給板11に穿孔された各高燃用第一空気供給孔10Bは開放され、その結果、低高燃用第二空気供給孔12Aおよび高燃用第二空気供給孔12Bのいずれにも空気が供給される。
【0110】
次いで、3つの低高燃用ノズルチップ4Aおよび3つの高燃用ノズルチップ4Bから低高燃用液体燃料LOおよび高燃用液体燃料HOが噴霧され(図10参照)、低高燃用第二空気供給孔12Aおよび高燃用第二空気供給孔12Bから供給される燃焼用空気とのミキシングが行われる。なお、ここでは、低高燃用液体燃料LOが所定の角度θを有する中空円錐状に噴霧され、高燃用液体燃料HOが所定の角度θを有する中空円錐状に噴霧される。この所定の角度θは、例えば、30°〜60°程度が好ましく、本実施形態においては、所定の角度θが45°の高燃用ノズルチップ4Bを用いた。
【0111】
次いで、低高燃用ノズルチップ4Aの近傍に設けられた、電気火花を形成する着火装置(図示省略)を用いて、空気とミキシングされた低高燃用液体燃料LOに対して着火が行われる。この着火によって、6つのノズルチップ4から噴霧される液体燃料LO,HOの全てが燃焼状態となって、ノズルチップ4から液体燃料LO,HOが供給されている間、油バーナ70の高燃焼状態が維持される。
【0112】
そして、本実施形態においては、低燃焼の場合と同様に、低高燃用ノズルチップ4Aから供給される低高燃用液体燃料LOへの着火と略同時に、水噴霧用ノズルチップ71から水W(火炎冷却用の水)が所定の角度θを有する中空円錐状に噴霧される(図10参照)。
【0113】
つまり、本実施形態においては、高燃焼の場合も低燃焼の場合と同様に、図10に示すように、ノズルチップ4から液体燃料LO,HOが供給されて、油バーナ70の高燃焼状態が維持される間、水噴霧用ノズルチップ71から水Wが噴霧されて、火炎の冷却が行われることとなる。
【0114】
本実施形態にかかる油バーナ70は、以上のように構成されているため、第一実施形態にて得られた種々の効果(高いターンダウンの実現、有害物質の低減)を全て得ることができる。また、これらの効果に加えて、以下の効果も得ることができる。
【0115】
本実施形態にかかる油バーナ70は、図7〜図10に示すように、ホルダヘッド3Aに略同心円状に配設されたノズルチップ4の中心部に、水噴霧用ノズルチップ71が設けられている。そして、低燃焼時および高燃焼時のいずれの場合にも、火炎の内側から中空円錐状に水Wが噴霧され、この噴霧された水Wがそれぞれの火炎に接触するように構成されている。
【0116】
先にも説明した通り、火炎温度の低下はNOx低減につながるため、水噴霧による火炎冷却は、油バーナ70の低NOx化に大きく寄与する。ただし、この火炎に対する水の噴霧があまりに多量になると、火炎の温度が下がりすぎて燃焼状態が不安定になるという問題がある。
【0117】
しかしながら、本実施形態においては、火炎の内側から均等に水Wを噴霧させて火炎の冷却を行うことが可能となるため、安定した燃焼状態を維持しつつ、NOxの低減を図ることができる。
【0118】
また、本実施形態においては、水噴霧用ノズルチップ71の噴霧角度を調整することによって、火炎と水との接触位置を容易に変更可能である。つまり、火炎と水との適切な接触位置を選択することができるため、水噴霧による燃焼状態の阻害を最小限に抑えることが可能となる。具体的には、本実施形態によれば、ノズルチップ4に近接した位置ではなく、ノズルチップ4からある程度離れた接触位置Pにて、噴霧された水Wを火炎に散布しているため、火炎の燃焼状態の安定化と効果的な火炎冷却とを両立することができる。
【0119】
すなわち、本実施形態によれば、火炎内側からの均等な水噴霧と、安定した火炎(ノズルチップ4から離れた位置の火炎)に対する水噴霧とを実施可能であるため、比較的多量の水を噴霧しても、火炎の安定した燃焼状態を妨げることなく火炎冷却を実現して低NOx化を図ることができる。
【0120】
なお、上記第四実施形態においては、ノズルチップ4がホルダヘッド3Aの軸心Xに対して所定の角度θ(30°)を有して設けられ、低高燃用ノズルチップ4Aの噴霧角度がθ(45°)であって、高燃用ノズルチップ4Bの噴霧角度がθ(45°)であって、水噴霧用ノズルチップ71の噴霧角度がθ(60°)である場合について説明したが、本発明はこの構成に限定されるものではない。これらの角度は、燃焼量や燃焼状態、必要とするNOx値等を考慮して、適宜選択することが可能である。
【0121】
<第五実施形態>
次に、本発明の第五実施形態について説明する。
【0122】
図11は、本発明の第五実施形態にかかる油バーナの概略縦断面図を示したものであって、図11(a)は低燃焼状態を示し、図11(b)は高燃焼状態を示している。
【0123】
なお、この第五実施形態にかかる油バーナ80は、基本的に第二実施形態にて説明した油バーナ50と同様の構成を有しており、その構成要素として水噴霧手段を有する点のみが第二実施形態と異なる。そこで、以下においては、第二実施形態と同様の構成要素については同様の符号を付してその説明を割愛し、主に第五実施形態の特徴部分について説明する。また、第四実施形態と同様の構成も有するため、適宜第四実施形態も参照する。
【0124】
図11に示すように、本実施形態においては、燃料供給ホルダ3先端部のホルダヘッド3Aの中心部に、水噴霧手段として水噴霧用ノズルチップ71が設けられている。この水噴霧用ノズルチップ71は、燃料供給ホルダ3内部に設けられた水供給パイプ部3cの一方と連通しており、水供給パイプ部3cの他方は水貯留部(図示省略)に連通している。そして、必要に応じて、所定量の水が水供給パイプ部3cを介して水噴霧用ノズルチップ71に供給されるべく構成されている。
【0125】
また、本実施形態において、ホルダヘッド3Aに設けられたノズルチップ4の設置角度、各ノズルチップ4の噴霧角度、および水噴霧用ノズルチップ71の水噴霧角度は、先に説明した第四実施形態と同様に設定されている。
【0126】
本実施形態にかかる油バーナ80は、以上のように構成されており、その構成に基づき、次のような作用効果を有する。
【0127】
図11(a)は、本実施形態にかかる油バーナ80が低燃焼状態にある場合の概略縦断面図を示したものである。本実施形態にかかる油バーナ80を低燃焼状態で作動させる場合には、送風機を駆動させ、ウインドボックス2を介して第一空気供給部5および第二空気供給部6に低燃焼に必要な空気が供給される。
【0128】
低燃焼に必要な空気が供給された場合には、その空気供給圧力よりも空気経路開閉スプリング部52の付勢力が上回るため、空気経路開閉スプリング部52が伸長状態となって、空気経路開閉板51により高燃用空気供給経路が閉塞される。したがって、下部空気供給板13に穿孔された高燃用第二空気供給孔12Bには空気が供給されないこととなる。
【0129】
次いで、3つの低高燃用ノズルチップ4Aから低高燃用液体燃料LOが所定の角度θを有する中空円錐状に噴霧され(図9等参照)、低高燃用第二空気供給孔12Aから供給される燃焼用空気とのミキシングが行われる。
【0130】
この際、本実施形態においては、高燃用空気供給経路が空気経路開閉板51によって閉塞されているため、燃料供給状態にある低高燃用ノズルチップ4A(から噴霧される低高燃用液体燃料LO)に対して、送風機からの空気は選択的に供給される。つまり、燃料供給状態にある低高燃用ノズルチップ4Aに対しては、低高燃用空気供給経路(第二空気供給孔12A)を介して空気の供給が行われ、燃料供給状態にない高燃用ノズルチップ4Bに対しては、空気の供給が行われないこととなる。
【0131】
次いで、低高燃用ノズルチップ4Aの近傍に設けられた、電気火花を形成する着火装置(図示省略)を用いて、空気とミキシングされた低高燃用液体燃料LOに対して着火が行われる。この着火によって、3つの低高燃用ノズルチップ4Aから噴霧される低高燃用液体燃料LOの全てが燃焼状態となって、低高燃用ノズルチップ4Aから低高燃用液体燃料LOが供給されている間、油バーナ80の低燃焼状態が維持される。
【0132】
そして、本実施形態においては、低高燃用ノズルチップ4Aから供給される低高燃用液体燃料LOへの着火と略同時に、水噴霧用ノズルチップ71から水W(火炎冷却用の水)が所定の角度θを有する中空円錐状に噴霧される(図9参照)。
【0133】
つまり、本実施形態においては、低高燃用ノズルチップ4Aから低高燃用液体燃料LOが供給されて、油バーナ80の低燃焼状態が維持される間、水噴霧用ノズルチップ71から水が噴霧されて、火炎の冷却が行われることとなる。
【0134】
図11(b)は、本実施形態にかかる油バーナ80が高燃焼状態にある場合の概略縦断面図を示したものである。本実施形態にかかる油バーナ80を高燃焼状態で作動させる場合には、送風機を駆動させ、ウインドボックス2を介して第一空気供給部5および第二空気供給部6に高燃焼に必要な空気が供給される。
【0135】
高燃焼に必要な空気が供給された場合には、その空気供給圧力よりも空気経路開閉スプリング部52の付勢力が下回るため、空気経路開閉スプリング部52が縮短状態となって、高燃用空気供給経路が開放される。したがって、下部空気供給板13に穿孔された高燃用第二空気供給孔12Bにも空気が供給されることとなる。
【0136】
次いで、3つの低高燃用ノズルチップ4Aおよび3つの高燃用ノズルチップ4Bから低高燃用液体燃料LOおよび高燃用液体燃料HOが噴霧され(図10参照)、低高燃用空気供給経路(低高燃用第二空気供給孔12A)および高燃用空気供給経路(高燃用第二空気供給孔12B)から供給される燃焼用空気とのミキシングが行われる。
【0137】
次いで、低高燃用ノズルチップ4Aの近傍に設けられた、電気火花を形成する着火装置(図示省略)を用いて、空気とミキシングされた低高燃用液体燃料LOに対して着火が行われる。この着火によって、6つのノズルチップ4から噴霧される液体燃料LO,HOの全てが燃焼状態となって、ノズルチップ4から液体燃料LO,HOが供給されている間、油バーナ80の高燃焼状態が維持される。
【0138】
そして、本実施形態においては、低燃焼の場合と同様に、低高燃用ノズルチップ4Aから供給される低高燃用液体燃料LOへの着火と略同時に、水噴霧用ノズルチップ71から水W(火炎冷却用の水)が所定の角度θを有する中空円錐状に噴霧される(図10(a)参照)。
【0139】
つまり、本実施形態においては、高燃焼の場合も低燃焼の場合と同様に、ノズルチップ4から液体燃料LO,HOが供給されて、油バーナ80の高燃焼状態が維持される間、水噴霧用ノズルチップ71から水が噴霧されて、火炎の冷却が行われることとなる。
【0140】
本実施形態にかかる油バーナ80は、以上のように構成されているため、第二実施形態にて得られた種々の効果(高いターンダウンの実現、有害物質の低減)を全て得ることができる。また、これらの効果に加えて、以下の効果も得ることができる。
【0141】
本実施形態にかかる油バーナ80は、ホルダヘッド3Aに略同心円状に配設されたノズルチップ4の中心部に、水噴霧用ノズルチップ71が設けられている。そして、低燃焼時および高燃焼時のいずれの場合にも、火炎の内側から中空円錐状に水Wが噴霧され、この噴霧された水Wがそれぞれの火炎に接触するように構成されている。
【0142】
つまり、その燃焼状態は、先に説明した第四実施形態と略同様である。したがって、本実施形態によれば、第四実施形態と同様に、火炎内側からの均等な水噴霧と、安定した火炎(ノズルチップ4から離れた位置の火炎)に対する水噴霧とを実施可能であるため、比較的多量の水を噴霧しても、火炎の安定した燃焼状態を妨げることなく火炎冷却を実現して低NOx化を図ることができる。
【0143】
<第六実施形態>
次に、本発明の第六実施形態について説明する。
【0144】
図12は、本発明の第六実施形態にかかる油バーナ(本発明の「燃焼装置」に相当)の概略図を示したものであって、図12(a)は本実施形態にかかる油バーナの概略縦断面図(低燃焼時)を示し、図12(b)は低燃焼時における図12(a)のXII−XII断面図を示し、図12(c)は高燃焼時における図12(a)のXII−XII断面図を示している。
【0145】
なお、この第六実施形態にかかる油バーナ90は、基本的に第三実施形態にて説明した油バーナ60と同様の構成を有しており、その構成要素として水噴霧手段を有する点のみが第三実施形態と異なる。そこで、以下においては、第三実施形態と同様の構成要素については同様の符号を付してその説明を割愛し、主に第六実施形態の特徴部分について説明する。また、第四実施形態と同様の構成も有するため、適宜第四実施形態も参照する。
【0146】
図12(a)に示すように、本実施形態においては、燃料供給ホルダ3先端部のホルダヘッド3Aの中心部に、水噴霧手段として水噴霧用ノズルチップ71が設けられている。この水噴霧用ノズルチップ71は、燃料供給ホルダ3内部に設けられた水供給パイプ部3cの一方と連通しており、水供給パイプ部3cの他方は水貯留部(図示省略)に連通している。そして、必要に応じて、所定量の水が水供給パイプ部3cを介して水噴霧用ノズルチップ71に供給されるべく構成されている。
【0147】
また、本実施形態において、ホルダヘッド3Aに設けられたノズルチップ4の設置角度、各ノズルチップ4の噴霧角度、および水噴霧用ノズルチップ71の水噴霧角度は、先に説明した第四実施形態と同様に設定されている。
【0148】
本実施形態にかかる油バーナ90は、以上のように構成されており、油バーナ90を低燃焼状態で作動させる場合には、図12(b)に示すように、空気供給孔開閉板61の開閉部62を高燃用第一空気供給孔10B上に移動させ、高燃用第一空気供給孔10Bを閉塞状態とする。また、油バーナ90を高燃焼状態で作動させる場合には、図12(c)に示すように、空気供給孔開閉板61の開閉部62を高燃用第一空気供給孔10B上から移動させ、高燃用第一空気供給孔10Bを開放状態とする。
【0149】
以上のように、本実施形態にかかる油バーナ90は、空気を選択的に供給するための機構(経路開閉手段として機能する空気供給孔開閉板61)を有するため、先に説明した第三実施形態にて得られる効果(高いターンダウンの実現、有害物質の低減)を全て得ることができる。
【0150】
また、本実施形態にかかる油バーナ90は、ホルダヘッド3Aに略同心円状に配設されたノズルチップ4の中心部に、水噴霧用ノズルチップ71が設けられている。そして、低燃焼時および高燃焼時のいずれの場合にも、火炎の内側から中空円錐状に水Wが噴霧され、この噴霧された水Wがそれぞれの火炎に接触するように構成されている。
【0151】
つまり、その燃焼状態は、先に説明した第四実施形態と略同様である。したがって、本実施形態によれば、第四実施形態と同様に、火炎内側からの均等な水噴霧と、安定した火炎(ノズルチップ4から離れた位置の火炎)に対する水噴霧とを実施可能であるため、比較的多量の水を噴霧しても、火炎の安定した燃焼状態を妨げることなく火炎冷却を実現して低NOx化を図ることができる。
【0152】
なお、本発明は、上記各実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨に適合し得る範囲で必要に応じて種々の変更を加えて実施することも可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に含まれる。
【0153】
上記各実施形態においては、液体燃料の種類については特に説明しなかったが、本発明は何等かの液体燃料に限定されず、灯油、A重油、B重油、C重油等の液体燃料について適用可能である。
【0154】
また、上記各実施形態においては、3ガロン/時間の燃料供給性能を有するノズルチップと、5ガロン/時間の燃料供給性能を有するノズルチップとを用いる場合について説明したが、本発明はこの構成に限定されず、必要とされるターンダウン比に応じて、使用するノズルチップの燃料供給性能を変更してもよい。
【0155】
また、上記各実施形態においては、6つのノズルチップを用いる場合について説明したが、本発明はこの構成に限定されず、必要に応じて、5つ以下、あるいは7つ以上のノズルチップを用いて構成してもよい。
【0156】
また、上記各実施形態においては、6つのノズルチップの内、3つが高燃用ノズルチップである場合について説明したが、本発明はこの構成に限定されず、必要に応じて、2つ以下、あるいは4つ以上のノズルチップを高燃用ノズルチップとして使用してもよい。つまり、必要とされるターンダウン比に応じて、高燃用ノズルチップの数(換言すれば、低高燃用ノズルチップの数)を適宜定めることも可能である。ただし、この場合にも、当然のことながら、本発明の趣旨に基づき、燃料供給状態にあるノズルチップに対応した空気供給経路は開放状態とし、燃料供給状態にない(燃料非供給状態にある)ノズルチップに対応した空気供給経路は閉塞状態とする。
【0157】
また、上記第四実施形態〜第六実施形態においては、燃料供給ホルダ3先端部のホルダヘッド3A中心部に水噴霧手段として水噴霧用ノズルチップ71を設けた構成について説明したが、本発明はこの構成に限定されず、水以外の低NOx化を促進可能な液体あるいは気体等を噴霧(射出)するような構成としてもよい。したがって、例えば、同様の位置に、蒸気噴霧手段を設けてもよい。水の代わりに蒸気を噴霧した場合であっても、その温度や噴霧量等に応じて、低NOx化を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0158】
【図1】本発明の第一実施形態にかかる油バーナの概略縦断面図を示したものである。
【図2】図1に示した油バーナの概略横断面図および下面図を示したものであって、図2(a)は図1のI−I概略横断面図、図2(b)は図1の油バーナの下面図を示している。
【図3】本発明の第一実施形態にかかる油バーナが低燃焼状態にある場合の概略図を示したものであって、図3(a)は概略縦断面図を示し、図3(b)は図3(a)の下面図を示している。
【図4】本発明の第一実施形態にかかる油バーナが高燃焼状態にある場合の概略図を示したものであって、図4(a)は概略縦断面図を示し、図4(b)は図4(a)の下面図を示している。
【図5】本発明の第二実施形態にかかる油バーナの概略縦断面図を示したものであって、図5(a)は低燃焼状態を示し、図5(b)は高燃焼状態を示している。
【図6】本発明の第三実施形態にかかる油バーナの概略図を示したものであって、図6(a)は本実施形態にかかる油バーナの概略縦断面図(低燃焼時)を示し、図6(b)は低燃焼時における図6(a)のVI−VI断面図を示し、図6(c)は高燃焼時における図6(a)のVI−VI断面図を示している。
【図7】本発明の第四実施形態にかかる油バーナの概略縦断面図を示したものである。
【図8】図7に示した油バーナの概略横断面図および下面図を示したものであって、図8(a)は図7のVII−VII概略横断面図、図8(b)は図7の油バーナの下面図を示している。
【図9】本発明の第四実施形態にかかる油バーナが低燃焼状態にある場合の概略図を示したものであって、図9(a)は概略縦断面図を示し、図9(b)は図9(a)の下面図を示している。
【図10】本発明の第四実施形態にかかる油バーナが高燃焼状態にある場合の概略図を示したものであって、図10(a)は概略縦断面図を示し、図10(b)は図10(a)の下面図を示している。
【図11】本発明の第五実施形態にかかる油バーナの概略縦断面図を示したものであって、図11(a)は低燃焼状態を示し、図11(b)は高燃焼状態を示している。
【図12】本発明の第六実施形態にかかる油バーナの概略図を示したものであって、図12(a)は本実施形態にかかる油バーナの概略縦断面図(低燃焼時)を示し、図12(b)は低燃焼時における図12(a)のXII−XII断面図を示し、図12(c)は高燃焼時における図12(a)のXII−XII断面図を示している。
【符号の説明】
【0159】
1,50,60,70,80,90…油バーナ
2…ウインドボックス
3…燃料供給ホルダ
4…ノズルチップ
5…第一空気供給部
6…第二空気供給部
7…電磁弁
8…第一筒部材
9…第二筒部材
10…第一空気供給孔
11…上部空気供給板
12…第二空気供給孔
13…下部空気供給板
14…電磁弁取付板
51…空気経路開閉板
52…空気経路開閉スプリング部
61…空気供給孔開閉板
62…開閉部
71…水噴霧用ノズルチップ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の燃料供給手段と、前記燃料供給手段から供給される燃料に対して空気を供給する空気供給経路とを備えた燃焼装置であって、
燃料供給状態にある前記燃料供給手段に対して、前記空気供給経路を介して、選択的に空気の供給が行われる
ことを特徴とする燃焼装置。
【請求項2】
前記複数の燃料供給手段に対応した複数の空気供給経路が設けられ、前記空気供給経路がそれぞれ開閉可能であって、
選択的に空気の供給を行うために、燃料供給状態にある前記燃料供給手段に対応する前記空気供給経路を開放状態とし、燃料供給状態にない前記燃料供給手段に対応する前記空気供給経路を閉塞状態とする
請求項1に記載の燃焼装置。
【請求項3】
前記空気供給経路に経路開閉手段が設けられている
請求項2に記載の燃焼装置。
【請求項4】
前記複数の燃料供給手段が、異なる燃料供給性能を有する燃料供給手段を組み合わせて構成されている
請求項1から3のいずれか1項に記載の燃焼装置。
【請求項5】
前記複数の燃料供給手段が、低燃焼時に燃料供給状態となる第一燃料供給手段群と、高燃焼時に前記第一燃料供給手段群と共に燃料供給状態となる第二燃料供給手段群とを用いて構成されており、
前記第一燃料供給手段群を構成する各燃料供給手段と、前記第二燃料供給手段群を構成する各燃料供給手段とが、異なる燃料供給性能を有する
請求項1から4のいずれか1項に記載の燃焼装置。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1項に記載の燃焼装置を用いて構成された
ことを特徴とするボイラ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2006−138549(P2006−138549A)
【公開日】平成18年6月1日(2006.6.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−328853(P2004−328853)
【出願日】平成16年11月12日(2004.11.12)
【出願人】(000175272)三浦工業株式会社 (1,055)
【出願人】(504143522)株式会社三浦プロテック (488)
【Fターム(参考)】