説明

物の取り扱い

物の段差部分に材料の傾斜を形成する方法であって、液体状の材料を傾斜部分の近くでその物に塗布する工程であって、その液体には毛細管力により段差部分に移動するような性質を有するものを使用する、工程と、その材料を固化しあるいは固化させる工程であって、段差部分に傾斜を形成する、工程とを備える。毛細管流れを用いることで、材料が極めて高精度に置かれることを要しない。置かれた位置のばらつきは、段差部分への流れにより調整される。置く位置の精度の許容値が大きければ大きいほど、プロセスを速く進めることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物の取り扱いに関し、物の段差部分に材料の傾斜を形成する方法に関する。物の段差部分とは、特に直角あるいはその他、急角度(凹角でもよい)を有する、角度のついた形態を意味する。このことが生ずる状況の例としては、基板の平面部分に配置された構成部品があり、たとえば、プリント基板の形式の基板上のマイクロチップのような電子部品のように、構成部品が基板から突出するものである。
【背景技術】
【0002】
本発明は、形態をゆるやかにし、当初は急角度の、垂直のあるいはアンダーカットされた面を有する形状に傾斜や面取りした端を提供するために、表面に物質を追加することを含む。たとえば、プリント基板に配置された表面搭載電子部品は、数100μmの、あるいはそれ以上のファセット高さを有し、また、そのようなファセットは基板面に実質的に90度の垂直壁として現れるのが普通である。基板上方から液体を堆積させてコーティングを塗布する多くの技法があり、これら技法には液体ディスペンシング、スプレイコーティングあるいはインクジェット印刷を含む。そのような状況では、これらの技法では、基板と構成部品全体にわたって連続的なコーティングを施すために、構成部品の垂直壁を確実にコーティングするのが大いに困難であった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
出願人による係属中の国際特許出願PCT/GB2004/004595号(WO2005/044451)は、シリコンチップの周囲に接着性物質を堆積させ、垂直エッジを乗り越え、基板からシリコンチップの上面に配置された導体パッドに至るまで連続的に第2の材料をインクジェットでプリントできるようにすることを開示している。WO2005/044451では、高速接着剤塗布機を用いる例を示し、材料の傾斜を構築するために、シリコンチップの側面のそれぞれに、接着剤の液滴を注ぎ込む。これは十分な解決策であるが、ある程度の制御と精度が要求され、連続生産プロセスでは相対的に時間の掛かる工程となる。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明によれば、物の段差部分の付近でその物に液体状の材料を塗布する工程であって、その液体にはその段差部分に毛細管引力により移動するような性質を有するものを使用する、工程と、その材料を固化しあるいは固化させる工程であって、その段差部分に傾斜を形成する、工程とを備える、物の段差部分に材料の傾斜を形成する方法が提供される。
【0005】
その材料は、滴下、スプレイ、印刷等を含む、いかなる使い易い技法により塗布されてもよい。全自動あるいは半自動の機器、たとえば、機械式シリンジ、連続式あるいはドロップオンディマンド式のインクジェットプリンタ、自動マイクロピペットなどを含む、機械式あるいは空気式の液体ディスペンサシステムが都合よく使用される。
【0006】
その材料は、適切に調節された条件で、乾燥あるいは養生硬化(熱的に、化学的に、たとえば紫外線、赤外線等の放射線にさらされる)により固化する。材料は、たとえば接着性材料である。
【0007】
毛細管流を用いることにより、その材料が極めて高精度に所定の位置に置かれることを要しない。置かれた位置のばらつきは、段差部分への流れにより調整される。位置合わせの精度に大きな許容値があるということは、プロセスがより速く行われるということであり、電子回路のような、物の自動大量生産において非常に大きな利点を有する。
【0008】
本方法は都合のよいことには、複数工程の生産プロセスにおいて、一つの工程を構成する。
【0009】
本発明は、たとえばWO2005/044451に開示されたように、マイクロチップのような構成部品とプリント回路基板のような基板との間に電子的導電接続を形成する前の準備工程のような、電子部品の生産における特定の用途に用いられる。
【0010】
毛細管流が可能となるように、液体は低粘度を有していることが好ましく、すなわち、100cps以下、好ましくは50cps以下、さらに好ましくは20cps以下である(全てのケースは25℃における)。
【0011】
液体は、段差を構成するベース(たとえば基板)と段差を構成する側面(たとえば構成部品)の材料の表面特性を考慮して、選定するのがよい。液体は段差を構成するベースの材料に対し高い濡れ性を有するのがよく、すなわち45°、好ましくは30°より小さな接触角を形成する。液体は段差を構成する側面材料に対し、少なくとも適度の濡れ性を有し、すなわち、90°以下の接触角を形成する。
【0012】
材料は、好ましくは固化において低い収縮率を有する。許容されうる収縮量は、材料の弾性により異なる。典型的には、収縮率は20%より少ないことが好ましい。
【0013】
材料は、使用中の構造安定性のために柔軟性があり、脆性ではないことが好ましく、しかし、いくつかの適用では、また、ある基板(たとえば、ガラスのような壊れ易い基板)に対しては、このような考慮はあまり関連しない。
【0014】
液体は、好ましくは1種または複数種のモノマーおよび/あるいはオリゴマーを含有し、モノマーおよび/あるいはオリゴマーは、使用ではポリマー化あるいは架橋され、それにより固体を形成する。当業者には、好適な材料はよく知られている。たとえば、UV硬化材料は、アクリレートやメタクリレートを含む。
【0015】
傾斜は、段差を部分的に上方向へ伸び、面取りを形成し、あるいは、段差の頂部まで伸びる(そして、頂部を超えて伸びることもある)。
【0016】
傾斜表面は、一般的に平面、凹面あるいは凸面であり、凸面の傾斜が好ましい。
【0017】
段差のベース(たとえば、基板)と段差の側面(たとえば、構成部品)は同じ材料であっても、異なる材料であってもよい。
【0018】
このように、本発明は、毛細管現象の、濡れ、および不濡れの自然の物理力を活用する材料を使用し、WO2005/044451のようにチップの位置に対し高精度に材料を堆積する必要性なしに、そのような段差を自己組み立てさせる。
【0019】
このことは、生産プロセスにおいて、チップと材料との双方を比較的低精度で配置することができ、組み立てプロセスをより速くより安価にするという、非常に大きな利点を有する。
【0020】
本発明は、かかる部分のより信頼性の高いコーティングを可能とすることに加え、製造プロセスに他の高度化をも、もたらす。WO2005/044451はシリコンチップへの導電接触を与える例を示す。多くの場合、これらのデバイスは、大きなウエハからカットされたダイレベルのチップであろう。そのようなデバイスを製造する過程で、導電性材料および半導体材料の多くの層がウエハ上に積層される。続いてそのウエハが個々のダイにカットされるときに、それらの層はダイが割られた端部で露出されることになる。導電性材料を直接ダイの端部に塗布することは、それらの層間での短絡を生じ、デバイスを使用できなくすることがある。多くの場合、そのような層のデバイスへの塗布は、チップ上面に置かれた接着パッドへ接続できるように意図される。本発明は、絶縁接着層あるいは充填層が接着パッドを覆うのを防ぎ、また電気的接触を防ぐものでもある。
【0021】
本発明は、加工品の製造に際して好適に用いられ、顕著な形態を示す物に最適化された印刷やコーティングをすることを可能にする。具体的には、本発明は、印刷やコーティングプロセスで問題を生じうるせん断縁や急角度を除去する表面の準備を可能にする。ある実施の形態では、本発明は傾斜を提供するのに適用され、基板からその基板上に配置されたシリコンチップ上まで材料の連続表面での印刷を可能とする。このことは、その材料の表面がそのチップと他の構成部品あるいはシステムとの電気的導電接続を形成するものである場合には、特に重要である。本発明は、特に大量生産環境下でそれらの操作を行うのに適用される。
【0022】
本発明はまた、その権利範囲内に本発明の方法で傾斜がその上に形成された物をも含む。傾斜はベースとして普通に使用され、その上にその後さらに材料が堆積される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
本発明を、以下の実施例と添付の図面を参照して、さらに説明する。
【0024】
図1a、1bおよび1cは、ポリエステル基板1を、その上に搭載されたマイクロチップ2と共に示す。
【0025】
斜面は、斜面の端部近くに接着性材料あるいは充填材料を塗布することにより、チップ2の実質的に垂直な側面壁にまで形成される。形成される斜面の輪郭は、材料の粘度、基板とチップに対する表面エネルギ(濡れ性)(接触角で表される)および材料を堅くしあるいは養生硬化するまでに要する時間にも依存する。高粘度の材料、急速に養生硬化する材料(材料が自然に流れるのに掛かる時間に関して)あるいは基板を容易に濡らさない材料は、図1aに示すように、基板に対し90度より大きな接触角を有する斜面3を形成する。
【0026】
堅くなる前に流れ、基板とチップに対し高い濡れ性をも有する低粘度の材料は、基板および/またはチップに対し90度より小さな接触角を形成するであろう。図1bは、チップと基板の双方に対し高い濡れ性を有する材料で形成された、凹形の斜面4を示す。この場合には、表面張力が斜面の輪郭を支配して形成し、斜面の輪郭は基板とチップの双方に対し浅い角度を有する。図1cは、基板のに対し高い濡れ性を有するが、チップに対しては中程度の濡れ性を有する材料で形成された、凸形の斜面5を示し、チップとの接触角がいくらか大きくなっている。図1bと図1cに示された形状の斜面は、本発明では共に許容され、図1cに示される形状の凸形の斜面が好ましい。
【0027】
斜面を作るために、材料をチップの回りに注意深く塗布することを要する場合がある。通常、このことは高度な精度を要求する時間が掛かるプロセスとなるであろう。代替の方法は、高い濡れ性のために適切な表面エネルギを有する低粘度の材料を用いて、チップの近くにこの材料を過剰に塗布することであり、したがって小さな液溜まりを形成し、チップの端部に作用する。高い濡れ性と低粘度のために、材料は、チップの周囲に回り込み、チップの端部と基板とを濡らすであろう。十分な量の材料が置かれるならば、単にチップの1つの端部の近くに接着性材料の1つの液溜まりを堆積するだけで、チップは完全に取り囲まれる。
【0028】
材料は、皮下注射器と針あるいはピペットを用いて手で塗布することができ、あるいは、自動または半自動機器を用いてより管理された方法で塗布することもできる。かかる機器には、機械式あるいは空気式の液体ディスペンサシステム(たとえば、EFD社あるいはI&Jフィスナ・インク社:I&J Fisner inc.によるもの)、連続式あるいはドロップオンディマンド式のインクジェットプリンタ、自動マイクロピペットあるいは表面実装技術(Surface Mount Technology)の接着剤ディスペンサなどを含むが、これらには限られない。
【0029】
高度な精密性のためにプロセスのスピードが落ちるような生産環境では、試料配置システムや液体ディスペンサシステムは、堆積システムに関するチップの相対的位置はかなり粗い範囲内にあることだけが要求されるように構成される。たとえば、あるシステムは、材料が堆積ノズルから10μmより近くはなく、2mmより遠くはないチップの端部に堆積されるように構成される。この種の範囲は、米国ニュージャージのI&Jフィスナ・インク社(I&J Fisner inc.)で製造される自動液体堆積システムのような最新の製造機器にとっては、とても簡単な許容範囲である。この技術はまた、液体ディスペンサシステムについてのチップの角度方向に関してもほとんど影響なくなる。
【実施例1】
【0030】
長方形のチップ
図2を参照すると、200μmの厚さのシリコンチップが熱硬化エポキシ樹脂を用いてポリエステル基板に貼り付けられ、熱硬化エポキシ樹脂はチップと基板との間に1μm程度の接合部を形成し、チップの面を超えてはいなかった。チップまで段差を形成するために、低粘度(<20cps、25℃において)で、ポリエステルに高い濡れ性があり、シリコンに許容範囲の濡れ性を有する、UV硬化接着剤(下記の流体1)を、I&Jフィスナ・インク社製の液体ディスペンサシステムを用いて、チップから約1.5mm離して、堆積した。十分な量の材料が、液溜まりの液体がチップの端部に作用するように堆積され、したがって、液体の回り込みが生じ、チップの端部の周囲に液体を引き込み、図1bに示すような形状の傾斜が形成された。その後、接着剤を、フュージョンシステムズ・ライトハンマー社(Fusion Systems Light Hammer)6マイクロウェーブUVランプからのUV光線にさらして、養生硬化した。
【表1】

【0031】
イルガキュア1700とイルガキュア819とは、英国マクレスフィールド(Macclesfield)のチバ・スペシャルティ・ケミカルズ社(Ciba Speciality Chemicals)から販売のUV光開始剤で、イルガキュア(Irgacure)は登録商標である。PVP K30は、英国タッドワース(Tadworth)のISP社から販売のポリビニル・ピロリジノンの一品質である。ジペンタエリトリトール・ヘキサアクリレート(DPHA)は、ベルギー、ドラジェンボス(Dragenbos)のUCB社から販売のUV硬化六官能価モノマーである。アクチレン505は、英国マンチェスターのアクゾ・ノーベルUVレジン社(Akzo Nobel UV Resins)から販売のUV硬化反応四官能価ポリエステル・アクリレート・オリゴマーである。ジプロピレン・グリコール・ジアクリレート(DPGDA)は、ベルギー、ドラジェンボスのUCB社から販売のUV硬化反応希釈モノマーである。モノマーとオリゴマーとは液体状である。
【0032】
PVPは、水溶性の化学官能性を構成する。モノマーとオリゴマー、すなわちアクチレン505、DPHAおよびDPGDAは、反応して、水溶性の化学官能性を構成するポリマーを形成する。
【0033】
この構成物はよく機能したが、その後のプロセスにおいて、多くの場合に接着剤とチップとの接合が機能しなくなった。この失敗は、この材料が有する比較的低い柔軟性と養生硬化時の高い収縮性とにあった。
【0034】
低い収縮性と高い柔軟性とを有する改良型の構成物が生成された(下記の流体2)。これにより、流体1では見られたチップ端部の接着はがれのない、向上した結果が得られた。
【表2】

【0035】
イルガキュアは、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社が製造のフリーラジカルの光開始剤で、二量体(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチル・ペンチルホスフィンオキシドと2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オンとの混合物である。BYK−333は、BYKケミエ社(BYK Chemie GmbH)からの、ポリエーテルで修飾されたポリ・ジメチル・ポリシロキサンである。CN982A75は、サートマー社(Sartomer)からの、25%トリプロピレン・グリコール・ジアクリレートと混合された脂肪族ポリエステル/ポリエーテル基ウレタン・ジアクリレート・オリゴマーである。SR285は、サートマー社からのテトラヒドロフルフリル・アクリレートである。流体2の粘度は、25℃で16.4cpsであった。
【0036】
流体1、流体2共にポリエステル基板に対し高い濡れ性を有し、45°より小さな接触角を形成し、チップの側面にも適当な濡れ角を有し、90°以下の接触角を形成する。
【実施例2】
【0037】
アンダーカットされたチップ
本技術は、端部がアンダーカットされたチップの場合に、すなわち、チップの底面が上面より小さくてチップの端部が基板に覆いかぶさる場合に、大いに利用できることが分かった。実施例1と同様の手順が、エイリアン・テクノロジー社(Alien Technologies)で製造されたナノブロック(Nanoblock)・チップ(ナノブロックは登録商標)に斜面を形成するのに用いられた。そのナノブロック・チップはその端部をアンダーカットするように変形されている。このプロセスは、接着剤として流体2を用い、またUVライトを用いて養生硬化した。この場合、毛細管力により流体がチップの端部の下に回り込み、その材料は、アンダーカットよりむしろ傾斜を形成することができる。その傾斜は、このプロセスを数回繰り返すことで、さらに増強できることが分かった。
【実施例3】
【0038】
アンダーカットされた接着接合
粘度のあるエポキシ樹脂を用いてチップを基板に接合する事例では、接着剤の液滴がチップの下から追い出されることがある。ある場合には、この液滴が基板の上方に張り出しを生ぜしめることもある。図2は、チップ(不図示)が接着剤9により所定の位置に固定された基板8を示す。このような張り出し上に薄いコーティングをインクジェット印刷する試みは、張り出しにより生じた段差を橋渡ししてコーティングを印刷できないために不連続部を生ずる結果となることが多い。ある場合には、多層を印刷し、インクで段差を生めることができるであろうが、このことにより、張り出しの周囲にインクを回りこませることが多く、導電層を印刷する場合には短絡を生ずることになるであろう。
【0039】
実施例2で示された方法は、接着剤接合を張り出させる場合にも拡張適用された。流体2を、I&Jフィスナ社からの空気式液体ディスペンサシステムを用いて堆積した。流体2は、既存の接着剤接合部の端から約2mm離れて堆積され、接着剤接合に作用する液溜まりを形成することができた。毛細管力が接着剤接合の下部の接着剤を引き付け、チップ全体の周囲を囲んだ。その後、実施例1で説明したように、流体を養生硬化した。図2は接着剤接合部9と形成された接着剤の斜面10の断面図を示す。断面を示すためにこの試料からはチップが取り除かれている。
【実施例4】
【0040】
接着パッドから液をはじくこと
シリコンチップの濡れ性が高く、大きな傾斜部が要求される場合には、しばしば生ずる問題は、接着剤がチップの上面に作用し、その面を横断して濡らすことである。このことは、チップの上面に導体パッドがあり電気的接続が必要な場合に、もっとも問題がある。接着剤がこのようなパッドをコーティングすると、後で電気的接続をすることが妨害される。このことに対する解決策は、接着パッドの表面エネルギを改変することで、塗布される接着剤がパッドから自然とはじかれることである。この処置が適用された場合には、接着パッドを覆うことなく接着剤を直接チップ上に堆積することができるので、接着剤の堆積に要する精度はさらに低くてよい。表面エネルギを改変するのに、プラズマエッチング、コロナ処理、自己集合単分子膜の適用など、多くの技術が知られている。これらの技術は、たとえばインクジェット印刷、シャドーマスクを透過した堆積、ミクロ接触印刷によるなどの選択的方法で材料を堆積することにより適用され、あるいは、その状況の界面化学を活用して、処置が選択的に生ずるようにしてもよい。
【0041】
図3を参照すると、シリコンチップ12が金導体パッド13と共に熱硬化エポキシ樹脂を用いてポリエステル基板11に接合された。チップ12は200μmの厚さで、基板に対して実質的に垂直な側面壁を示した。チップの表面を、チップをドデカンチオールの液体で覆い、ホットプレート上で5分間50℃で加熱することにより、ドデカンチオールで処理した。その後余剰分はピペットで取り除かれ、チップをエタノールで洗浄し、乾燥させた。多くの他のアルキルチオールあるいは全く別の硫黄含有有機化合物をドデカンチオールの代わりに使用してもよい。チオール基と金で隆起した導体パッドとの相互作用により、ドデカンチオールは金のパッドの上にだけ自己集合単分子膜を形成する。このことにより導体パッドは高度に疎水性となり、接着流体2に対し、低い濡れ性を示す。
【0042】
ある実施例では、過剰な接着剤がチップの近くに堆積され、チップの上面を流れた。接着剤が導体パッドの周囲のチップを濡らすことは観察されたが、導体パッドはきれいなままであった。その後接着剤を実施例1で説明したように養生硬化した。それからWO2005/044451で用いられたプロセスが使われ、導体パッドまで触媒層が印刷された。この触媒層はまた、パッドからはじかれがちであったが、基板から導体パッドのごく際まで連続的な触媒層を形成した。その後、デバイス全体がWO2005/044451にしたがって無電解めっき溶液に浸され、触媒と導体パッドとに銅金属を成長させた。触媒層は導体パッドと十分に接触し、銅層が基板から導体パッドに至り、さらに、導体パッドを横断する連続的な導電路を形成した。
【0043】
二番目の実施例では、接着流体2がドデカンチオール処理されたシリコンチップの上部に十分な量で直接堆積され、チップを覆い、チップの端部に流れ、図3に示すように構造全体の周囲に均一な傾斜14を形成した。この堆積は、I&Jフィスナ社の流体ディスペンサを用いて手動でなされた。接着剤は金導体パッドを濡らすことができず、チップの残りの部分の全部を包み込んだが、金導体パッドはコーティングされないままであった。ここでも、WO2005/044451で用いられたプロセスが使われ、基板から導体パッドまで連続的な導電路を生成した。
【0044】
三番目の実施例では、同様に処理されたチップを、ザール(Xaar)XJ128−200プリンタヘッドを用いて流体の10mm幅の帯を1000dpiの移動方向(ダウンウェブ)解像度でインクジェット印刷することにより、接着流体2で上塗りした。ここでも、試料はフュージョンシステムズ・ライトハンマー社6マイクロウェーブUVランプ下を通過させて、養生硬化した。このプロセスを、材料が金導体パッド上を濡らし始める前に、数回繰り返して、より厚い層を作り上げることができることがわかった。
【0045】
ここでも、WO2005/044451で説明したプロセスを用いて、基板から導体パッドまで連続的な導電銅路が形成された。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】図1a、1bおよび1cは、基板に搭載されたシリコンチップの接合点にあるいはその近くに堆積された材料を模式的に図示する。
【図2】図2は、ポリエステル基板とその上に接着されたマイクロチップとの間に、本発明の方法により形成された斜面の断面写真である(断面形成のためにマイクロチップが取り外された)。
【図3】図3は、ポリエステル基板上に搭載されたこぶのような金の導体パッドを有するシリコンチップの、本発明の方法によりその上に斜面が形成された、模式図である。
【図1a】

【図1b】

【図1c】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
物の段差部分に材料の傾斜を形成する方法であって:
液体状の材料を前記傾斜部分の近くで前記物に塗布する工程であって、前記液体には毛細管力により段差部分に移動するような性質を有するものを使用する、工程と;
前記材料を固化しあるいは固化させる工程であって、前記段差部分に傾斜を形成する、工程とを備える;
方法。
【請求項2】
前記材料が、滴下、スプレー噴射あるいは印刷により塗布される;
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記材料が、乾燥または養生硬化により固化する;
請求項1または請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記液体は、100cpsより小さな、好ましくは50cpsより小さな、さらに好ましくは20cpsより小さな粘度を有する;
請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記液体は、前記段差の基板材料に対して、45°より小さな、好ましくは30°より小さな接触角を形成する;
請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記液体は、前記段差の側面材料に対して、90°以下の接触角を形成する;
請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記材料は、固化時に低収縮率を示す;
請求項1ないし請求項6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
複数の生産工程のプロセスにおいて、1つの工程を構成する;
請求項1ないし請求項7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
請求項1ないし請求項8のいずれか1項に記載の方法で形成された傾斜を有する;
物。
【請求項10】
傾斜が、該物の上に堆積された材料を有する;
請求項9に記載の物。

【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2008−534252(P2008−534252A)
【公表日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−502462(P2008−502462)
【出願日】平成18年3月21日(2006.3.21)
【国際出願番号】PCT/GB2006/001008
【国際公開番号】WO2006/100460
【国際公開日】平成18年9月28日(2006.9.28)
【出願人】(506150320)コンダクティブ・インクジェット・テクノロジー・リミテッド (7)
【Fターム(参考)】