説明

物体検出装置および物体検出方法

【課題】オプティカルフローの算出精度を高めることによって物体検出精度を向上させること。
【解決手段】画像分割部が、フレーム画像を、オプティカルフローの出現点を含む第1の領域と第1の領域以外の領域である第2の領域とに分割し、フレーム間隔決定部が、第1の領域におけるオプティカルフローを生成するために用いる1組のフレーム画像の間隔を示す第1のフレーム間隔と、第2の領域におけるオプティカルフローを生成するために用いる1組のフレーム画像の間隔を示す第2のフレーム間隔とを個別に決定するように物体検出装置を構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、移動体において所定の時間間隔で撮像された複数のフレーム画像における同一特徴点を結ぶことによって生成されるオプティカルフローに基づいてフレーム画像に含まれる物体を検出する物体検出装置および物体検出方法に関し、特に、オプティカルフローの算出精度を高めることによって物体検出精度を向上させることができる物体検出装置および物体検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、車両や船舶といった移動体の衝突事故を防止する技術が種々開発されている。たとえば、車両の衝突事故を防止する技術としては、車両の前方に搭載されたカメラで車外の様子を撮像し、撮像した画像に基づいて移動体を検出するものが提案されている。
【0003】
かかる移動体検出技術では、所定の時間間隔で連続して撮像された画像(以下、「フレーム画像」と記載する)を用い、時系列に並んだフレーム画像間の同一特徴点(たとえば、建物の角や、他車両のヘッドライトなど)を結んだオプティカルフローを生成する。そして、生成されたオプティカルフローに基づいて移動体を検出する(たとえば、特許文献1および特許文献2参照)。
【0004】
そして、検出したオプティカルフローを用いることで、自車両と衝突する可能性がある移動体(他車両や歩行者など)の存在をドライバーへ報知することができる。また、静止物体の位置を検出し、自車両と衝突する可能性がある静止物体(走路上の障害物など)の存在をドライバーへ報知することもできる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−97126号公報
【特許文献2】特開2004−220059号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1や特許文献2といった従来技術には、生成されるオプティカルフローの精度が低いために、オプティカルフローに基づいて検出される物体の検出精度も低くなってしまうという問題があった。
【0007】
具体的には、オプティカルフローは、移動する車両上で撮像された画像において、物体が出現してくるように見える「出現点」から、放射状に広がるように生成される。そして、各オプティカルフローの長さは、自車両の走行速度や、画面内の位置によって異なるものとなる。
【0008】
このため、オプティカルフローの長さが短すぎる場合、オプティカルフローに基づいて検出される物体の検出精度は低くなる。また、車両の移動速度が速すぎる場合には、同一特徴点が、片方のフレーム画像に含まれず、オプティカルフロー自体の生成に失敗する事態も起こりうる。
【0009】
これらのことから、オプティカルフローの算出精度を高めることによって物体検出精度を向上させることができる物体検出装置あるいは物体検出方法をいかにして実現するかが大きな課題となっている。
【0010】
本発明は、上述した従来技術による問題点を解消するためになされたものであって、オプティカルフローの算出精度を高めることによって物体検出精度を向上させることができる物体検出装置および物体検出方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明は、移動体において所定の時間間隔で撮像された複数のフレーム画像における同一特徴点を結ぶことによって生成されるオプティカルフローに基づいて前記フレーム画像に含まれる物体を検出する物体検出装置であって、前記フレーム画像を、前記オプティカルフローの出現点を含む第1の領域と前記第1の領域以外の領域である第2の領域とに分割する分割手段と、前記第1の領域における前記オプティカルフローを生成するために用いる1組の前記フレーム画像の間隔を示す第1のフレーム間隔と、前記第2の領域における前記オプティカルフローを生成するために用いる1組の前記フレーム画像の間隔を示す第2のフレーム間隔とを個別に決定する決定手段とを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、フレーム画像を、オプティカルフローの出現点を含む第1の領域と第1の領域以外の領域である第2の領域とに分割し、第1の領域におけるオプティカルフローを生成するために用いる1組のフレーム画像の間隔を示す第1のフレーム間隔と、第2の領域におけるオプティカルフローを生成するために用いる1組のフレーム画像の間隔を示す第2のフレーム間隔とを個別に決定することとしたので、オプティカルフローの長さを適度に調整することによってオプティカルフローの算出精度を高め、これにより、物体検出精度を向上させることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1は、本発明に係る物体検出手法の概要を示す図である。
【図2】図2は、本実施例に係る物体検出装置の構成を示すブロック図である。
【図3】図3は、フレーム画像の分割例を示す図である。
【図4】図4は、フレーム間隔情報を示す図である。
【図5】図5は、各エリアにおけるオプティカルフロー算出処理の概要を示す図である。
【図6】図6は、物体検出装置が実行する処理手順を示すフローチャートである。
【図7】図7は、フレーム間隔情報に追加される追加情報の例を示す図である。
【図8】図8は、フレーム間隔を動的に調整する場合の処理手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に添付図面を参照して、本発明に係る物体検出装置および物体検出方法の実施例を詳細に説明する。なお、以下の説明では、本発明に係る物体検出手法の概要について図1を説明した後に、本発明に係る物体検出手法を適用した物体検出装置の実施例について説明することとする。
【0015】
まず、本発明に係る物体検出手法の概要について図1を用いて説明する。図1は、本発明に係る物体検出手法の概要を示す図である。なお、同図の(A)には、従来技術に係る物体検出手法について、同図の(B)には、本発明に係る物体検出手法について、それぞれ示している。
【0016】
図1の(A)に示したように、オプティカルフローを算出する場合には、所定時間間隔で連続して撮像されたフレーム画像が用いられる。なお、同図には、所定の時間(t)において撮像されたフレーム画像(以下、「フレーム画像(t)」と記載する)と、所定の時間(t)の直前に撮像されたフレーム画像(以下、「フレーム画像(t−1)」と記載する)とを示している。
【0017】
この場合、各フレーム画像には、物体が出現してくるように見える点である出現点101が含まれている。たとえば、車載カメラが車両の前方を撮像するように設置されており、車両が直進している場合には、かかる出現点101のフレーム画像100内における位置はほぼ同一となる。
【0018】
そして、フレーム画像(t)と、フレーム画像(t−1)とを合成し、各画像における同一の特徴点を結ぶと、同図に示したオプティカルフロー102や、オプティカルフロー103が得られる。
【0019】
しかしながら、出現点101の近傍のオプティカルフロー102は、フロー長が短くなる傾向にあり、一方、出現点101から遠いオプティカルフロー103は、フロー長が長くなる傾向にある。これは、移動する自車両から見た場合、出現点101の近傍、すなわち、自車両から遠い位置における物体の移動量は小さくなるからである。また、出現点101から遠方、すなわち、自車両に近い位置における物体の移動量は大きくなるからである。
【0020】
このため、従来は、出現点101の近傍におけるオプティカルフロー102のフロー長が、精度良い物体検出を行うには短すぎるという問題があった。また、出現点101から遠方におけるオプティカルフローを算出しようとした場合、片方のフレーム画像から特徴点がはみ出してしまい、オプティカルフローの算出自体に失敗してしまうという問題があった。
【0021】
そこで、本発明に係る物体検出手法では、フレーム画像100を、出現点101近傍のエリアと、その他のエリアとに分割し、各エリアで個別にフレーム間隔を決定することとした。具体的には、図1の(B)に示したように、フレーム画像を出現点近傍エリアと、出現点近傍エリア以外のエリアである他エリアとに分割する(同図の(B−1)参照)。
【0022】
そして、本発明に係る物体検出手法では、エリアごとにフレーム間隔を決定する(同図の(B―2)参照)。たとえば、出現点近傍エリアのフレーム間隔が「3」と決定された場合には、フレーム画像(t)と、フレーム画像(t−3)とを用いてオプティカルフローが算出されることになる。また、他エリアのフレーム間隔が「1」と決定された場合には、フレーム画像(t)と、フレーム画像(t−1)とを用いてオプティカルフローが算出されることになる。
【0023】
つづいて、本発明に係る物体検出手法では、各エリアにおいてオプティカルフローが算出されたならば(同図の(B−3参照)、各エリアを合成する(同図の(B―4)参照)。そして、合成されたエリアに基づいて物体検出が行われることになる。なお、各エリアにおいて物体検出を行うこととしてもよい。
【0024】
このように、本発明に係る物体検出手法では、出現点近傍エリアと他エリアとで、個別にフレーム間隔を決定することとしたので、各エリアにおけるオプティカルフローのフロー長を適切に調整することができる。したがって、オプティカルフローに基づく物体検出を高精度に行うことが可能となる。
【0025】
以下では、かかる物体検出手法を適用した物体検出装置についての実施例を詳細に説明する。なお、以下に示す物体検出装置は、車両に搭載されるものとするが、船舶や列車といった移動体に搭載することとしてもよい。
【実施例】
【0026】
図2は、本実施例に係る物体検出装置10の構成を示すブロック図である。同図に示すように、物体検出装置10は、カメラ11と、車両運動取得部12と、制御部13と、記憶部14とを備えている。また、制御部13は、画像格納部13aと、画像分割部13bと、自車速抽出部13cと、フレーム間隔決定部13dと、オプティカルフロー算出部13eと、移動物体検出部13fと、3次元復元部13gとをさらに備えている。そして、記憶部14は、時系列画像情報14aと、画像分割情報14bと、フレーム間隔情報14cとを記憶する。
【0027】
カメラ11は、CCD(Charge Coupled Devices)カメラなどのカメラであり、車両の前方を撮像する位置に設置される。また、カメラ11は、所定の時間間隔で撮像した時系列の各フレーム画像を制御部13に対して通知する。なお、本実施例では、カメラ11を、車両の前方を撮像する位置に設けた場合について説明するが、車両の後方や側方を撮像する位置に設けることとしてもよい。
【0028】
車両運動取得部12は、車速センサや、加速度センサ、角速度センサといった各種センサで構成されるデバイスであり、取得した各センサ値を制御部13に対して通知する。
【0029】
制御部13は、カメラ11によって撮像された時系列のフレーム画像を記憶部14へ記憶するとともに、フレーム画像を出現点近傍エリアと他エリアとに分割し、エリアごとのフレーム間隔を決定したうえで、エリアごとにオプティカルフローを算出する処理を行う処理部である。また、制御部13は、各エリアでそれぞれ算出されたオプティカルフローを合成し、合成後のオプティカルフローを用いて物体検出処理を行う処理部でもある。
【0030】
画像格納部13aは、カメラ11から受け取った時系列のフレーム画像を記憶部14の時系列画像情報14aへ格納する処理を行う処理部である。なお、時系列画像情報14aは、最新のフレーム画像を含め所定個数のフレーム画像を有しているものとする。たとえば、最新のフレーム画像が画像格納部13aによって格納された場合には、時系列にみて最も古いフレーム画像が削除される。
【0031】
画像分割部13bは、記憶部14の画像分割情報14bに基づき、各フレーム画像を出現点近傍エリアと他エリアとに分割する処理を行う処理部である。たとえば、この画像分割部13bは、出現点を含んだ出現点近傍エリアの面積とフレーム画像の面積との比が、所定値になるように両エリアを分割する。
【0032】
ここで、フレーム画像の分割例にについて図3を用いて説明しておく。図3は、フレーム画像の分割例を示す図である。なお、同図の(A)には、フレーム画像の分割例を、同図の(B−1)および(B−2)には、分割後の各エリアを、それぞれ示している。
【0033】
図3の(A)に示すように、フレーム画像100には、出現点101が含まれている。なお、同図では、出現点101から伸びる線31aおよび線31bを例示している。これらの線31aおよび線31bは、たとえば、道路脇の段差などをあらわす。
【0034】
ここで、フレーム画像100の幅をW、高さをHとし、出現点近傍エリア(同図の破線矩形を参照)の幅をα、高さをβとする。この場合、画像分割情報14bには、Wに対するαの比率およびHに対するβの比率があらかじめ定義されている。
【0035】
そして、画像分割部13bは、画像分割情報14bに定義された比率を用い、出現点101が中心となるように出現点近傍エリア200(図3の(B−1)参照)を決定する。また、画像分割部13bは、フレーム画像100における出現点近傍エリア200以外の領域を他エリア300(図3の(B−2)参照)として決定する。
【0036】
なお、同図では、出現点101が出現点近傍エリア200の中央とする場合について示したが、出現点101の位置を出現点近傍エリア200内の他の位置、たとえば、縦方向を1:2に内分する位置などにすることとしてもよい。
【0037】
また、フレーム画像100の縦横比(H:W)と、出現点近傍エリア200の縦横比(β:α)とを同一にする場合には、画像分割情報14bに、Hとβとの比、または、Wとαとの比を定義しておくこととすればよい。
【0038】
さらに、本実施例では、出現点近傍エリア200の形状を矩形とする場合について示したが、かかる形状を、円や楕円としたり、多角形としたりすることとしてもよい。また、本実施例では、フレーム画像100を2つのエリアに分割する場合について示したが、フレーム画像100を出現点101の距離に応じて3つ以上のエリアに分割することとしてもよい。
【0039】
また、図3では、静的な画像分割情報14bに基づいて出現点近傍エリア200を一律に決定する場合について示したが、オプティカルフローの生成状況などに応じて出現点近傍エリア200を動的に変更することとしてもよい。
【0040】
図2の説明に戻り、制御部13についての説明をつづける。自車速抽出部13cは、車両運動取得部12が出力する各種センサ値の中から自車両の速度に係るセンサ値を抽出する処理を行う処理部である。具体的には、自車速抽出部13cは、抽出したセンサ値から自車両の速度(以下、「自車速」と記載する)を算出したうえで、算出した自車速をフレーム間決定部13dへ通知する処理を行う処理部である。
【0041】
フレーム間隔決定部13dは、自車速抽出部13cから受け取った自車速で、記憶部14のフレーム間隔情報14cを検索することによって、出現点近傍エリア200におけるフレーム間隔および他エリア300におけるフレーム間隔をそれぞれ決定する処理を行う処理部である。
【0042】
オプティカルフロー算出部13eは、フレーム間隔決定部13によって決定された各フレーム間隔に基づいて出現点近傍エリア200のオプティカルフローの算出と、他エリア300のオプティカルフローの算出とを行う処理部である。
【0043】
ここで、フレーム間隔情報14cの例について図4を、オプティカルフロー算出部13eによって行われるオプティカルフロー算出の概要について図5を、それぞれ用いて説明しておく。
【0044】
図4は、フレーム間隔情報14cを示す図である。同図に示すように、フレーム間隔情報14cは、自車速の区間ごとに、出現点近傍エリア200におけるフレーム間隔(X)と、他エリア300におけるフレーム間隔(Y)とを定義した情報である。
【0045】
たとえば、同図に示した場合では、自車速が10km/hであれば、出現点近傍エリア200におけるフレーム間隔(X)は「5」であり、他エリア300におけるフレーム間隔(Y)は「3」である。また、自車速が50km/hであれば、出現点近傍エリア200におけるフレーム間隔(X)は「3」であり、他エリア300におけるフレーム間隔(Y)は「1」である。
【0046】
このように、フレーム間隔情報14cは、自車速の区間ごとに、各エリアのフレーム間隔をあらかじめ定めた情報である。しかし、後述するように、フレーム間隔情報14cに定義されたフレーム間隔を初期値として用いてオプティカルフローを生成し、生成したオプティカルフローの状況に基づいて各エリアのフレーム間隔を動的に調整することとしてもよい。
【0047】
図5は、各エリアにおけるオプティカルフロー算出処理の概要を示す図である。ここで、同図の(A)には、時系列画像情報14aの例を、同図の(B)には、各エリアにおけるオプティカルフロー算出処理の例を、それぞれ示している。なお、図5の(A)には、図4において、自車速が41km/h〜60km/hの区間に該当し、出現点近傍エリア200のフレーム間隔(X)が「3」と、他エリア300のフレーム間隔(Y)が「1」と、それぞれ決定された場合を例示している。
【0048】
図5の(A)に示したように、フレーム間隔(X)が3で、フレーム間隔(Y)が1の場合には、出現点近傍エリア200では、フレーム画像(t)と、フレーム画像(t−3)とを用いてオプティカルフローが算出される。また、他エリア300では、フレーム画像(t)と、フレーム画像(t−1)とを用いてオプティカルフローが算出される。
【0049】
また、図5の(B)に示したように、使用されるフレーム画像を上記したXおよびYを用いて一般化すると、出現点近傍エリア200では、フレーム画像(t)と、フレーム画像(t−X)とを用いてオプティカルフローが算出されることになる(同図の(B−1)参照)。また、他エリア300では、フレーム画像(t)と、フレーム画像(t−Y)とを用いてオプティカルフローが算出されることになる(同図の(B−2)参照)。
【0050】
図2の説明に戻り、制御部13についての説明をつづける。移動物体検出部13fは、オプティカルフロー算出部13eによって各エリア(出現点近傍エリア200および他エリア300)ごとに算出されたオプティカルフローに基づいて移動物体を検出する処理を行う処理部である。
【0051】
具体的には、移動物体検出部13fによって、オプティカルフローのうち自車速に基づくオプティカルフローとベクトルが一致しないオプティカルフローが移動物体として検出されることになる。なお、静止物体については位置のみが、移動物体については位置および動き方向が検出される。また、移動物体検出部13fは、検出した移動物体のオプティカルフローと、検出した静止物体のオプティカルフローとを、3次元復元部13gへ通知する処理を併せて行う。
【0052】
3次元復元部13gは、移動物体検出部13fから通知された静止物体のオプティカルフローから3次元復元計算を行い、静止物体および移動物体を3次元空間上に配置することで、自車両周辺の物体位置を復元する処理を行う処理部である。なお、3次元復元部13gによって復元された物体位置は、自車両に対する衝突の危険性算出処理や、走路上における障害物の有無検出処理に用いられることになる。
【0053】
記憶部14は、ハードディスクドライブや不揮発性メモリといった記憶デバイスで構成された記憶部であり、時系列画像情報14aと、画像分割情報14bと、フレーム間隔情報14cとを記憶する。
【0054】
時系列画像情報14aは、たとえば、図5の(A)に示したように、所定間隔で撮像されたフレーム画像を、時系列に並べた情報である。また、画像分割情報14bは、図3を用いて既に説明したように、出現点近傍エリア200と、他エリア300との境界線を指定する情報である。なお、フレーム間隔情報14cについては、図4を用いて既に説明したので、ここでの説明を省略する。
【0055】
次に、物体検出装置10が実行する処理手順について図6を用いて説明する。図6は、物体検出装置10が実行する処理手順を示すフローチャートである。なお、同図では、上述したフレーム画像を単に「画像」と記載している。
【0056】
同図に示すように、物体検出装置10は、画像(T=t)を入力し(ステップS101)、特徴点を算出するとともに(ステップS102)、出現点を算出する(ステップS103)。つづいて、自車速を取得したうえで(ステップS104)、対象とするエリアが出現点近傍エリア200であるか否かを判定する(ステップS105)。
【0057】
そして、エリアが出現点近傍エリア200である場合には(ステップS105,Yes)、ステップS104で取得した自車速で画像分割情報14bを検索することによってフレーム間隔(X)を取得し(ステップS106)、画像(T=t−X)を入力する(ステップS107)。つづいて、画像(T=t)および画像(T=t−X)を用いてオプティカルフローを生成する(ステップS108)。
【0058】
また、ステップS108で生成したオプティカルフローから移動物体を検出する(ステップS109)。つづいて、ステップS109で検出された移動物体と、検出された移動物体以外の物体、すなわち、静止物体とを用いて物体の3次元復元を行う(ステップS110)。
【0059】
一方、ステップS105の判定条件を満たさなかった場合には(ステップS105,No)、ステップS104で取得した自車速で画像分割情報14bを検索することによってフレーム間隔(Y)を取得し(ステップS111)、画像(T=t−Y)を入力する(ステップS112)。つづいて、画像(T=t)および画像(T=t−Y)を用いてオプティカルフローを生成する(ステップS113)。
【0060】
また、ステップS113で生成したオプティカルフローから移動物体を検出する(ステップS114)。つづいて、ステップS114で検出された移動物体と、検出された移動物体以外の物体、すなわち、静止物体とを用いて物体の3次元復元を行う(ステップS115)。
【0061】
そして、出現点近傍エリア200における3次元復元(ステップS110)および他エリア300における3次元復元(ステップS115)が完了したならば両者を合成し(ステップS116)、処理を終了する。
【0062】
ところで、図6では、ステップS106およびステップS111において画像分割情報14bから静的なフレーム間隔(XあるいはY)を取得する場合について示した。しかしながら、これに限らず、所定のフレーム間隔を用いて生成したオプティカルフローの生成状況をフィードバックすることで、フレーム間隔を動的に調整することとしてもよい。
【0063】
そこで、以下では、各エリアにおけるフレーム間隔を動的に調整する場合について説明することとする。
【0064】
図7は、フレーム間隔情報14bに追加される追加情報の例を示す図である。図7の(A)に示したのは、各エリアにおけるオプティカルフローの総数に基づいてフレーム間隔を調整する場合に用いられる閾値(th_fc)である。
【0065】
具体的には、閾値th_fcは、各エリアにおける総フロー数と比較され、総フロー数がth_fcよりも小さい場合には、フレーム間隔を小さくする調整が行われる。このように、フレーム間隔を小さくするのは、フレーム間隔が長すぎて対応点が片方のフレーム画像からはみ出したと考えられるからである。
【0066】
一方、フロー数がth_fc以上である場合には、フレーム間隔を長くする調整が行われる。このように、フレーム間隔を長くするのは、フレーム間隔が短すぎてフロー長が短い多数のオプティカルフローを検出してしまったと考えられるからである。
【0067】
なお、図7の(A)に示した場合では、出現点近傍エリア200のth_fcは「10」に、他エリア300のth_fcは「40」に、それぞれ設定されている。この場合、たとえば、出現点近傍エリア200の総フロー数が5であれば、th_fcよりも小さいので、フレーム間隔を小さくする調整が行われることになる。
【0068】
図7の(B)に示したのは、所定の長さ以上のオプティカルフロー(以下、「長大フロー」と記載する)の数に基づいてフレーム間隔を調整する場合に用いられる閾値(th_Lおよびth_Lc)である。
【0069】
具体的には、閾値th_Lは、各オプティカルフローの長さ(フロー長)と比較され、フロー長が長大フロー長(th_L)以上である場合には、長大フローとみなされて長大フロー数がカウントアップされる。
【0070】
ここで、図7の(B)に示した場合では、出現点近傍エリア200および他エリア300の双方ともth_Lは10ピクセルに設定されている。この場合、たとえば、出現点近傍エリア200に15ピクセルの長さのオプティカルフローがあれば、フロー長はth_Lよりも大きいので、かかるオプティカルフローは長大フローとしてカウントされることになる。なお、同図では、2つのエリアに共通のピクセル値を設定しているが、エリアごとに異なるピクセル値を設定することとしてもよい。
【0071】
また、閾値th_Lcは、各エリアにおける長大フロー数と比較され、長大フロー数がth_Lcよりも小さい場合には、フレーム間隔を長くする調整が行われる。このように、フレーム間隔を長くするのは、フレーム間隔が短すぎて物体検出に有用な長大フローがすくなくなってしまったと考えられるためである。なお、長大フロー数がth_Lc以上である場合には、オプティカルフローの生成状況が十分と考えられることから、フレーム間隔の調整は行われない。
【0072】
なお、図7に示した各閾値は、フレーム間隔情報14cに含まれる旨の説明を行ったが、図7の各閾値を、フレーム間隔情報14cと区別して記憶部14に格納しておくこととしてもよい。
【0073】
次に、図7に示した各閾値を用いてフレーム間隔を動的に調整する場合の処理手順について図8を用いて説明する。図8は、フレーム間隔を動的に調整する場合の処理手順を示すフローチャートである。ここで、図8に示したフローチャートは、図6に示したフローチャートにおけるステップS106の代わりに用いられる。なお、図8に示したフローチャートにおける「X」を「Y」へ変更すれば、図6のステップS111へ適用することもできる。
【0074】
図8に示すように、フレーム間隔Xを入力し(ステップS201)、画像(T=t−X)を入力する(ステップS202)。つづいて、画像(T=t)と画像(T=t−X)とを用いてオプティカルフローを生成し(ステップS203)、フロー総数(fc)をカウントする(ステップS204)。また、長大フロー長用の閾値(th_L)以上のフロー数(Lc)についてもカウントする(ステップS205)。
【0075】
つづいて、フロー総数(fc)が閾値(th_fc)よりも小さいか否かを判定し(ステップS206)、fcがth_fcよりも小さい場合には(ステップS206,Yes)、フレーム間隔(X)を1つ減らすことでフレーム間隔を短縮する(ステップS207)。
【0076】
そして、あらたなフレーム間隔(X)が所定の下限閾値(th1_X)と上限閾値(th2_X)の間の適正値であるか否かを判定し(ステップS208)、適正値である場合には(ステップS208,Yes)、ステップS202以降の処理を繰り返す。
【0077】
一方、ステップS208の判定条件を満たさなかった場合には(ステップS208,No)、フレーム間隔(X)をステップS207の減算処理を行う前の値に戻したうえで(ステップS209)、Xを出力し(ステップS214)、処理を終了する。
【0078】
ところで、ステップS206の判定条件を満たさなかった場合には(ステップS206,No)、つづいて、長大フロー数(Lc)が閾値(th_Lc)よりも小さいか否かを判定する(ステップS210)。そして、Lcがth_Lcよりも小さい場合には(ステップS210,Yes)、フレーム間隔(X)を1つ増加させることでフレーム間隔を延長する(ステップS211)。
【0079】
そして、あらたなフレーム間隔(X)が所定の下限閾値(th1_X)と上限閾値(th2_X)の間の適正値であるか否かを判定し(ステップS212)、適正値である場合には(ステップS212,Yes)、ステップS202以降の処理を繰り返す。
【0080】
一方、ステップS212の判定条件を満たさなかった場合には(ステップS212,No)、フレーム間隔(X)をステップS211の加算処理を行う前の値に戻したうえで(ステップS213)、Xを出力し(ステップS214)、処理を終了する。なお、ステップS210の判定条件を満たさなかった場合には(ステップS210,No)、ステップS211〜ステップS213の処理を行うことなく、Xを出力し(ステップS214)、処理を終了する。
【0081】
上述してきたように、本実施例では、画像分割部が、フレーム画像を、オプティカルフローの出現点を含む第1の領域と第1の領域以外の領域である第2の領域とに分割し、フレーム間隔決定部が、第1の領域におけるオプティカルフローを生成するために用いる1組のフレーム画像の間隔を示す第1のフレーム間隔と、第2の領域におけるオプティカルフローを生成するために用いる1組のフレーム画像の間隔を示す第2のフレーム間隔とを個別に決定するように物体検出装置を構成した。したがって、エリアごとにオプティカルフローの長さを適度に調整することによってオプティカルフローの算出精度を高め、これにより、物体検出精度を向上させることができる。
【産業上の利用可能性】
【0082】
以上のように、本発明に係る物体検出装置および物体検出方法は、オプティカルフローを用いた物体検出の検出精度を向上させたい場合に有用であり、特に、車両などの移動体における衝突防止機能への適用に適している。
【符号の説明】
【0083】
10 物体検出装置
11 カメラ
12 車両運動取得部
13 制御部
13a 画像格納部
13b 画像分割部
13c 自車速抽出部
13d フレーム間隔決定部
13e オプティカルフロー算出部
13f 移動物体検出部
13g 3次元復元部
14 記憶部
14a 時系列画像情報
14b 画像分割情報
14c フレーム間隔情報
100 フレーム画像
101 出現点
102、103 オプティカルフロー
200 出現点近傍エリア
300 他エリア

【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動体において所定の時間間隔で撮像された複数のフレーム画像における同一特徴点を結ぶことによって生成されるオプティカルフローに基づいて前記フレーム画像に含まれる物体を検出する物体検出装置であって、
前記フレーム画像を、前記オプティカルフローの出現点を含む第1の領域と前記第1の領域以外の領域である第2の領域とに分割する分割手段と、
前記第1の領域における前記オプティカルフローを生成するために用いる1組の前記フレーム画像の間隔を示す第1のフレーム間隔と、前記第2の領域における前記オプティカルフローを生成するために用いる1組の前記フレーム画像の間隔を示す第2のフレーム間隔とを個別に決定する決定手段と
を備えたことを特徴とする物体検出装置。
【請求項2】
前記決定手段は、
前記第1の領域に対応する前記第1のフレーム間隔が、前記第2の領域に対応する前記第2のフレーム間隔よりも長くなるように決定することを特徴とする請求項1に記載の物体検出装置。
【請求項3】
前記決定手段は、
前記移動体の移動速度に基づいて前記第1のフレーム間隔および前記第2のフレーム間隔を決定することを特徴とする請求項1または2に記載の物体検出装置。
【請求項4】
前記決定手段は、
前記第1の領域において生成した前記オプティカルフローの総数であるフロー総数が所定の下限閾値以下である場合には、該フロー総数が該下限閾値を上回るまで前記第1のフレーム間隔を減少させ、前記第2の領域に対応する前記フロー総数が所定の下限閾値以下である場合には、該フロー総数が該下限閾値を上回るまで前記第2のフレーム間隔を減少させることを特徴とする請求項1、2または3に記載の物体検出装置。
【請求項5】
前記決定手段は、
前記第1の領域において生成した前記オプティカルフローのうち所定の長さ以上の前記オプティカルフローの数である長大フロー数が所定の下限閾値以下である場合には、該長大フロー数が該下限閾値を上回るまで前記第1のフレーム間隔を増加させ、前記第2の領域に対応する前記長大フロー数が所定の下限閾値以下である場合には、該長大フロー数が該下限閾値を上回るまで前記第2のフレーム間隔を増加させることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一つに記載の物体検出装置。
【請求項6】
前記分割手段は、
前記第1の領域に含まれる前記オプティカルフローの数および該第1の領域の面積との比に基づいて該第1の領域と前記第2の領域との境界線を変更することを特徴とする請求項1〜5のいずれか一つに記載の物体検出装置。
【請求項7】
前記決定手段によって決定された前記第1のフレーム間隔および前記第2のフレーム間隔に基づいて生成された前記オプティカルフローから移動物体を検出することによって前記物体を検出する物体検出手段
をさらに備えたことを特徴とする請求項1〜6のいずれか一つに記載の物体検出装置。
【請求項8】
移動体において所定の時間間隔で撮像された複数のフレーム画像における同一特徴点を結ぶことによって生成されるオプティカルフローに基づいて前記フレーム画像に含まれる物体を検出する物体検出方法であって、
前記フレーム画像を、前記オプティカルフローの出現点を含む第1の領域と前記第1の領域以外の領域である第2の領域とに分割する分割工程と、
前記第1の領域における前記オプティカルフローを生成するために用いる1組の前記フレーム画像の間隔を示す第1のフレーム間隔と、前記第2の領域における前記オプティカルフローを生成するために用いる1組の前記フレーム画像の間隔を示す第2のフレーム間隔とを個別に決定する決定工程と
を含んだことを特徴とする物体検出方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−286985(P2010−286985A)
【公開日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−139297(P2009−139297)
【出願日】平成21年6月10日(2009.6.10)
【出願人】(000237592)富士通テン株式会社 (3,383)
【Fターム(参考)】