説明

物体検出装置

【課題】 レーダを用いた物体検出において、物体を精確に検出する物体検出装置10を提供する。
【解決手段】 本発明に係る物体検出装置10の物体検出部4は、レーダ検出部により得られた複数の検出点データから、一つの物体に対応する複数の検出点データをグルーピングするグルーピング手段22と、上下方向に異なる高さに設定された複数のレイヤの夫々について、グルーピング手段によりグルーピングされた検出点データのうち、当該レイヤ内にある検出点データの個数を算出するレイヤ包含点数算出手段24と、レイヤ包含点数算出手段により算出された検出点データの個数が最大となるレイヤを判定し、当該レイヤに属する検出点データを抽出する検出点抽出手段26と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーダによる検出点を利用して物体を検出する物体検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両等の衝突防止システムにおいて、先行車両や対向車両等の他車両との衝突を回避するために、車両の進行方向に存在する他車両等の障害物を検出する物体検出装置が用いられている。この物体検出装置は、車両の進行方向の領域にレーダを走査し、車両の進行方向に存在する障害物を検知するものである。
【0003】
特許文献1には、上下方向に領域を異ならせた複数の探知領域を設け、車両の加速・減速等に起因する車両のピッチ角の変動に応じて、車両前方の障害物を包含しうる探知領域を選択し、当該領域にて得られるレーダの反射波に基づいて障害物の有無を判断する障害物検知装置が記載されている。
【特許文献1】特開平11−14746号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した障害物探知装置では、前方に存在する物体の有無は判断できるものの、選択された領域にて得られる反射波の夫々が、当該物体のどの部分に対応するかについては考慮されていない。そのため、物体を精確に検出することが困難であるという問題があった。
【0005】
本発明は、このような問題を鑑みてなされたものであり、レーダを用いた物体検出において、物体を精確に検出する物体検出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するため、本発明に係る物体検出装置は、上下方向及び左右方向に異なる複数方向に電磁波を照射し、当該方向に存在する物体にて反射された当該電磁波を受信することにより、当該電磁波が照射された方向の夫々について、当該物体までの距離データを含む検出点データを得るレーダ検出部と、レーダ検出部で得られた複数の検出点データに基づいて所定の検出対象物体を検出する物体検出部と、を備え、物体検出部は、レーダ検出部により得られた複数の検出点データから、一つの物体に対応する複数の検出点データをグルーピングするグルーピング手段と、上下方向に異なる高さに設定された複数のレイヤの夫々について、グルーピング手段によりグルーピングされた検出点データのうち、当該レイヤ内にある検出点データの個数を算出するレイヤ包含点数算出手段と、レイヤ包含点数算出手段により算出された検出点データの個数が最大となるレイヤを判定し、当該レイヤに属する検出点データを抽出する検出点抽出手段と、を有することを特徴とする。
【0007】
本発明に係る物体検出装置によれば、レーダ検出部が上下方向及び左右方向の複数の異なる方向についての検出点データを取得し、物体検出部が検出点データを処理して所定の検出対象物体を検出する。この物体検出部の処理においては、先ず、レーダ検出部により得られた複数の検出点データから、一つの物体に対応する複数の検出点データをグルーピングする処理が行われる。次に、上下方向に異なる高さに設定された複数のレイヤの夫々について、グルーピングされた検出点データのうち、当該レイヤ内にある検出点データの個数を算出する処理が行われる。次に、算出された検出点データの個数が最大となるレイヤに属する検出点データを抽出する処理が行われる。レーダ検出部から電磁波を照射して検出対象物体を検出した場合には、検出対象物体のうちレーダ検出部に対向する対向面が存在する方向において、検出対象物体で反射した電磁波がレーダ検出部に戻ってくる確率が高くなるため、検出対象物体の対向面が存在する方向において多くの検出点データが得られる。よって、上述した一連の処理により、検出対象物体の対向面に対応する検出点データを抽出することができ、したがって検出対象物体を精確に検出することができる。
【0008】
本発明に係る物体検出装置の物体検出部は、検出点抽出手段により抽出された複数の検出点データに基づいて、前記検出対象物体の位置及び向きを推定する状態推定手段を、更に有することが好ましい。この構成によれば、検出点抽出手段によって抽出された検出対象物体の対向面に対応する検出点データに基づいて、当該物体の位置及び向きを推定できるため、当該物体の状態を精確に検出することができる。
【0009】
本発明に係る物体検出装置において、検出対象物体は車両であり、検出対象物体の対向面は車両のバンパであることが好ましい。車両のバンパは車両において横幅が最大となる部位である。よって、複数のレイヤが上下方向に異なる高さに設定された場合には、車両のバンパに対応する高さのレイヤにおいて検出点データが多く得られるため、車両のバンパは車両を精確に検出するのに特に適している。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る物体検出装置によれば、レーダを用いた物体検出において物体を精確に検出することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳述する。図1は、本発明の好適な実施形態に係る衝突防止装置1を示すブロック構成図である。本実施形態の衝突防止装置1は、自車両に搭載されて道路上にある障害物との衝突を防止する装置であり、物体検出装置10と、制動部30とを備えて構成される。物体検出装置10は、所定の検出対象物体(他車両や落下物などの障害物)を検出する装置であり、レーザレーダ12と、物体検出ECU20とを備える。
【0012】
レーザレーダ12は、自車両の前部に取り付けられた、自車両の前方の物体を検出するレーダ検出部である。レーザレーダ12は、自車両の前方の上下方向及び左右方向の異なる複数方向にレーザ光を走査して、当該方向に存在する物体にて反射された反射光を受信することにより、レーザ光が照射された方向のデータ及び当該方向に存在する物体までの距離のデータを含む検出点データを取得する。すなわち、レーザレーダ12は、上下方向及び左右方向に異なる複数方向にレーザ光を照射して、当該レーザ光が照射された方向の夫々について、検出点データを取得する。レーザレーダ12は、所定時間ごとに検出点データを取得し、取得した検出点データを物体検出ECU20へ逐次出力する。なお、本実施形態ではレーダ検出部としてレーザレーダ12を用いているが、レーダ検出部は他の波長の電磁波を照射するものでもよく、例えばレーダ検出部としてミリ波レーダを用いてもよい。
【0013】
図2は、レーザレーダ12が検出点データを取得する状況を上方から見た図であり、図3は、同じ状況を側方から見た図である。レーザレーダ12は、自車両50の前方の領域にレーザ光Aを走査することにより、自車両50の前方に存在する物体を検出する。図2に示す一例のように、他車両51が自車両50に対向して走行する状況では、レーザレーダ12により取得される検出点データには他車両51に対応する複数の検出点データが含まれる。なお、図2及び図3では、自車両と他車両との間に、自車両の進行方向に垂直な仮想平面Dが描かれている。本明細書の以後の説明において、検出点データの処理を理解容易にするために、この仮想平面Dを用いる。
【0014】
再び図1に戻り、物体検出ECU20は、自車両に搭載された、複数の検出点データに基づいて所定の検出対象物体を検出する物体検出部である。物体検出ECU20は、レーザレーダ12に接続されており、レーザレーダ12から出力される検出点データを取得する。物体検出ECU20は、検出点データを処理することにより、自車両の前方に存在する検出対象物体を検出する。本実施形態では特に、物体検出ECU20は、レーザレーダ12から取得した複数の検出点データから他車両に対応する検出点データを抽出し、抽出した検出点データに基づいて他車両の位置及び向きを検出する処理を行う。なお、物体検出ECU20は、例えば、CPU、ROM、RAMを含むコンピュータを主体として構成される。
【0015】
なお、図1に示すように、物体検出ECU20は、グルーピング手段22、レイヤ包含点数算出手段24、検出点抽出手段26、及び状態推定手段28を備えている。これらの手段の夫々は、物体検出ECU20の処理の一部を、物体検出ECU20の構成として示したものである。これらの手段については、後述する物体検出ECU20の動作説明において詳述する。
【0016】
制動部30は、ブレーキ(図示せず)を制御して、自車両に制動力を与える制動制御を行うものである。例えば、制動部30は、他車両の位置及び向きに基づき、自車両が検出対象物体と衝突するか否かを判断する。そして、制動部30は、自車両が検出対象物体と衝突すると判断すると、ブレーキに制動力を与えて自車両を減速させる。
【0017】
次に、物体検出ECU20の動作について説明する。図4は、物体検出ECU20による処理を示すフローチャートである。なお、以下の処理は、物体検出ECU20により実施され、エンジンが始動されてからエンジンが停止されるまでの間、繰り返し実行される。
【0018】
まず、ステップS1において、物体検出ECU20は、レーザレーダ12の走査範囲内に存在する物体に対応した、複数の検出点データを取得する。例えば、図2に示すように他車両が自車両の斜め前方を走行する状況では、物体検出ECU20は、他車両に対応した複数の検出点データを取得する。なお、以下の説明では、複数の検出点データを「点列」とも呼ぶ。
【0019】
次に、ステップS2において、物体検出ECU20は、ステップS1で取得した点列を、各物体ごとにグルーピングする。図5は、グルーピングされた点列を示す図である。図5では、グルーピングされた点列Pは、自車両前方の仮想平面D(図2、図3を参照)上に投影した状態で示されている。図5に示すように、グルーピングされた点列Pは、他車両51からの反射波を受信して得られる複数の検出点データであり、他車両51の存在する方向範囲内で上下方向及び左右方向に異なる複数の方向について得られる検出点データである。なお、ステップS2は、グルーピング手段22に相当する。
【0020】
自車両前方の仮想平面D上には、複数のレイヤが設定されている。図6に示す例では、複数のレイヤL1,L2,L3,L4,L5が他車両に対応する点列Pと重畳した状態で示されている。複数のレイヤL1〜L5の夫々は、検出点データをカウントするための領域であり、上下方向に互いに異なる位置(高さ)に設けられている。複数のレイヤL1〜L5の夫々は、上下方向の所定位置において横方向に延びている。よって、検出点データの夫々は、いずれかの高さのレイヤL1〜L5の範囲内にある。
【0021】
次に、ステップS3において、物体検出ECU20は、ステップS2でグルーピングした点列Pのうち、上下方向に高さが異なる複数のレイヤL1〜L5ごとに、各レイヤL1〜L5の範囲内にある点列の個数を算出する。図6に示す例では、物体検出ECU20は、レイヤL1では0個,レイヤL2では6個,レイヤL3では2個,レイヤL4では2個,レイヤL5では1個と、各レイヤL1〜L5内にある検出点データの個数を算出する。なお、ステップS3は、レイヤ包含点数算出手段24に相当する。
【0022】
次に、ステップS4では、物体検出ECU20は、ステップS3で算出した各レイヤL1〜L5内にある検出点データの個数が最大となるレイヤ(以下、「最多レイヤ」という)を判定し、当該レイヤに属する点列を、自車両に最も良く対向している他車両の面(対向面)に対応する点列として抽出する。例えば図6の例では、物体検出ECU20は、レイヤL2を最多レイヤと判定し、レイヤL2に属する点列p2を抽出する。なお、ステップS4は、検出点抽出手段26に相当する。
【0023】
ここで、各レイヤL1〜L5内にある検出点データの個数と他車両51の車両部分との対応関係を説明する。図7は、レーザレーダ12から照射されたレーザ光Aが他車両51の各車両部分51a,51b,51cにおいて反射する様子を示す模式図である。他車両51の車両部分51a〜51cのうちバンパ51bは、レーザレーダ12がレーザ光Aを照射する方向に対して最も垂直に近い面を有しており、他車両51の対向面である。よって、レーザレーダ12から他車両51にレーザ光Aを照射すると、バンパ51bの反射波a1はレーザレーダ12に向けて反射する。一方、他車両51のボンネット51cやバンパ下部51dなどは、レーザレーダ12がレーザ光Aを照射する方向に対して傾斜しており、ボンネット51cやバンパ下部51dなどの反射波a2,a3はレーザレーダ12に向けて反射し難い。よって、バンパ51b付近に位置するレイヤL2は、バンパ51bに対応して左右に並ぶ多数の点列を包含することとなり、その結果、最多レイヤと判定される。従って、ステップS4で物体検出ECU20が抽出した点列は、他車両51のバンパ51bに対応する点列であると見做すことができる。
【0024】
ステップS4によれば、レーザレーダ12によって検出された点列のうち、検出対象物体の対向面に対応する点列を抽出することができる。特に検出対象物体が他車両である場合には、他車両51のバンパ51bに対応する点列p2を抽出することができる。従来は、グルーピングされた点列の夫々が、他車両51のどの部分に対応するかについては考慮されていなかったが、本実施形態によれば、他車両51の対向面であるバンパ51bに対応する点列p2を精度良く抽出できる。
【0025】
次に、ステップS5において、物体検出ECU20は、ステップS4で抽出した点列に基づいて、検出対象物体の位置及び向きなどを推定する。図8に示す例では、物体検出ECU20は、ステップS4で抽出した他車両51のバンパ51bに対応する点列p2に対して、一般的な車両の形状に対応した矩形のテンプレートを当てはめ、当てはめた矩形Xの位置及び向きを、他車両51の位置及び向きとして算出する。なお、ステップS5は、状態推定手段28に相当する。
【0026】
図8に示す例では、他車両51のバンパ51bに対応する点列p2に基づいて他車両51の位置及び向きを推定するため、他車両51の状態を精確に検出することができる。また、位置及び向きだけでなく、他車両51の幅を検出ことも可能である。
【0027】
その後、制動部30は、物体検出装置10により算出された検出対象物体の位置及び向きなどから、検出対象物体との衝突可能性を判定する。その結果、検出対象物体との衝突可能性があると判定すると、ブレーキを制御することにより、自車両に制動力を与え、検出対象物体との接触を回避する。
【0028】
以上、本発明の好適な実施形態について詳述したが、本発明の物体検出装置10は、上記の実施形態に限定されるものではない。上記の実施形態では、他車両の前側のバンパを検出する一例を示したが、他車両の後側のバンパを検出してもよいし、他車両の側面を検出してもよい。また、上記の実施形態では、他車両を検出する一例を示したが、他車両以外の検出対象物体を検出してもよい。
【0029】
なお、本実施形態では、物体検出ECU20は、最も多くの点列を含むレイヤを判定し、このレイヤに属する点列を抽出した。但し、最も多くの点列を含むレイヤだけでなく、このレイヤに上方又は下方に隣接するレイヤにも多くの点列が含まれている場合には、物体検出ECU20は、上下方向に隣接する複数のレイヤに属する点列を抽出してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の好適な実施形態に係る物体検出装置を示すブロック構成図である。
【図2】レーザレーダが検出点データを取得する状況を上方から見た図である。
【図3】レーザレーダが検出点データを取得する状況を側方から見た図である。
【図4】物体検出ECUによる処理を示すフローチャートである。
【図5】グルーピングされた点列を示す図である。
【図6】点列及びレイヤを重畳して示す図である。
【図7】他車両でのレーザ光の反射を示した模式図である。
【図8】他車両の状態推定を示す図である。
【符号の説明】
【0031】
1・・・衝突防止装置、10・・・物体検出装置、12・・・レーザレーダ(レーダ検出部)、20・・・物体検出ECU(物体検出部)、22・・・グルーピング手段、24・・・レイヤ包含点数算出手段、26・・・検出点抽出手段、28・・・状態推定手段、30・・・制動部。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
上下方向及び左右方向に異なる複数方向に電磁波を照射し、各方向に存在する物体にて反射された電磁波を受信することにより、電磁波が照射された方向の夫々について、物体までの距離データを含む検出点データを得るレーダ検出部と、
前記レーダ検出部で得られた複数の検出点データに基づいて所定の検出対象物体を検出する物体検出部と、
を備え、
前記物体検出部は、
前記レーダ検出部により得られた複数の検出点データから、一つの物体に対応する複数の検出点データをグルーピングするグルーピング手段と、
上下方向に異なる高さに設定された複数のレイヤの夫々について、前記グルーピング手段によりグルーピングされた検出点データのうち、当該レイヤ内にある検出点データの個数を算出するレイヤ包含点数算出手段と、
前記レイヤ包含点数算出手段により算出された検出点データの個数が最大となるレイヤを判定し、当該レイヤに属する検出点データを抽出する検出点抽出手段と、
を有することを特徴とする物体検出装置。
【請求項2】
前記物体検出部は、
前記検出点抽出手段により抽出された複数の検出点データに基づいて、前記検出対象物体の位置及び向きを推定する状態推定手段を、更に有することを特徴とする請求項1に記載の物体検出装置。
【請求項3】
前記検出対象物体は車両であり、前記検出対象物体の対向面は車両のバンパであることを特徴とする請求項1又は2に記載の物体検出装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2010−32430(P2010−32430A)
【公開日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−196638(P2008−196638)
【出願日】平成20年7月30日(2008.7.30)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】