物体検出装置
【課題】レーダ装置が検出した物体について、衝突判断の対象物とする必要があるか否かの判断を適切に行うことのできる物体検出装置を提供する。
【解決手段】物体検出装置は、車両の周辺の物体を検出する検出手段と、検出手段が検出した物体について、当該物体の進行方向、当該進行方向から算出される物体の存在位置、および進行方向を示す直線と車両の中心軸とがなす角である進入角度を示す車両情報を算出する処理手段と、車両から車幅方向に沿った物体までの側方距離および進行方向を示す直線と車両の中心軸とがなす角の角度に基づいて予め設定された判定範囲を示す判定情報を記憶する記憶手段と、処理手段が算出した車両情報を用いて、存在位置および進入角度が判定範囲内であるか否かに基づいて物体を車両と衝突の危険性判断の判断対象である衝突判定対象物とするか否かを判定する判定手段とを備える。
【解決手段】物体検出装置は、車両の周辺の物体を検出する検出手段と、検出手段が検出した物体について、当該物体の進行方向、当該進行方向から算出される物体の存在位置、および進行方向を示す直線と車両の中心軸とがなす角である進入角度を示す車両情報を算出する処理手段と、車両から車幅方向に沿った物体までの側方距離および進行方向を示す直線と車両の中心軸とがなす角の角度に基づいて予め設定された判定範囲を示す判定情報を記憶する記憶手段と、処理手段が算出した車両情報を用いて、存在位置および進入角度が判定範囲内であるか否かに基づいて物体を車両と衝突の危険性判断の判断対象である衝突判定対象物とするか否かを判定する判定手段とを備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物体検出装置に関し、より特定的には、車両に搭載され、当該車両の周辺から接近してくる物体との衝突の危険性を適切に判断することができる物体検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自車両の前方や後方から接近してくる物体を検出するために、当該自車両に搭載される車載用物体検出装置が知られている。具体的には、上記車載用物体検出装置は、ミリ波レーダ装置にて上記自車両に接近してくる物体を検出する。そして、上記車載用物体検出装置は、当該検出結果に基づいて、自車両と物体とが衝突する危険性を判断する。さらに、上記車載用物体検出装置は、自車両と物体との衝突の危険性があると判断した場合など、上記自車両に備わっている各種装置を制御するものである。このような装置の一例として、特許文献1に開示された装置がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−330997号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に開示されている装置(以下、従来技術と称す)は、レーダ装置により自車両前方の物体を検出し、当該検出された物体と自車両との位置関係に基づき、自車両が上記物体を回避可能か否かを判断する。そして、従来技術は、回避不可能であると判断した場合、制動(例えばブレーキ駆動)を開始する。なお、このとき、従来技術は、自車両の走行状態を予測し、上記制動を終了する終了時点を設定する。つまり、従来技術は、制動を終了させるタイミングを調整するものである。これによって、例えば、自車両と他車両とが衝突したとき、その衝突が軽衝突であった場合には、自車両のドライバーは引き続き自車両を走らせることができるようになる。すなわち、従来技術は、制動を終了させるタイミングを調整することで自車両のドライバーの運転行動を妨げるのを防ぐものである。
【0005】
ところで、車載用物体検出装置は、自車両の前方や後方から接近してくる物体を全て点として捉えているため、一般的には、当該物体の大きさ、例えば、他車両の車幅までは正確に判別することができないことが多い。そのため、例えば、右折待ちのため停車している自車両の左側を安全にすれ違うことができる進行方向で他車両が接近してきても、場合によっては、当該他車両を衝突判断の対象物としてしまい、他車両と自車両とは回避不可能と判断され、不要な制御を行ってしまうといった問題点があった。つまり、衝突判断の対象物とする必要のない物体まで衝突判断の対象物としてしまう問題点があった。
【0006】
また、上記従来技術は、レーダ装置が検出した物体について回避不可能と判断された後に制御のタイミング(具体的には自動制動を終了時のタイミング)を調整するものであり、レーダ装置で検出した物体について、当該物体を衝突判定の対象物とする必要か否かを判断するものではなかった。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、レーダ装置が検出した物体について、衝突判断の対象物とする必要があるか否かの判断を適切に行うことのできる物体検出装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記のような目的を達成するために、本発明は以下の構成を採用した。すなわち、第1の発明は、車両に搭載され、当該車両周辺の物体を検出する物体検出装置である。上記物体検出装置は、上記車両の周辺の物体を検出する検出手段と、上記検出手段が検出した物体について、当該物体の進行方向、当該進行方向から算出される上記物体の存在位置、および上記進行方向を示す直線と上記車両の中心軸とがなす角である進入角度を示す車両情報を算出する処理手段と、上記車両から車幅方向に沿った上記物体までの側方距離および上記進行方向を示す直線と上記車両の中心軸とがなす角の角度に基づいて予め設定された判定範囲を示す判定情報を記憶する記憶手段と、上記処理手段が算出した上記車両情報を用いて、上記存在位置および上記進入角度が上記判定範囲内であるか否かに基づいて上記物体を上記車両と衝突の危険性判断の判断対象である衝突判定対象物とするか否かを判定する判定手段とを備える。
【0009】
第2の発明は、上記第1の発明において、上記記憶手段に記憶されている上記判定範囲は、上記角度の値によって異なる。
【0010】
第3の発明は、上記第2の発明において、上記記憶手段に記憶されている上記判定範囲は、上記角度の値の絶対値が大きくなるに従い狭く設定されている。
【0011】
第4の発明は、上記第2の発明において、上記記憶手段に記憶されている上記判定範囲は、上記角度の値が0近辺で一定である。
【0012】
第5の発明は、上記第2の発明において、上記処理手段は、上記車両の走行速度が大きくなるに従い、上記記憶手段に記憶されている上記判定範囲を広く変更する。
【0013】
第6の発明は、上記第5の発明において、上記処理手段は、上記車両の走行速度が予め定められた値を超えた場合に、上記記憶手段に記憶されている上記判定範囲の値を上記角度の値にかかわらず一定に変更する。
【0014】
第7の発明は、上記第1の発明において、上記判定手段によって上記物体は上記衝突判定対象物と判定にされた場合に、当該物体と上記車両とが衝突する危険性を判断する衝突判断手段を、さらに備える。
【発明の効果】
【0015】
上記第1の発明によれば、例えば、レーダ装置が検出した物体が自車両に対して衝突の可能性のあるコースに入っているか否かを予め判断することができるようになる。そして、例えば右折待ちで停車時の車両の左側を安全にすれ違うことができる可能性が高い物体(例えば、他車両)を衝突判定対象物とはしないとすることができる。したがって、衝突判断の衝突判定対象物とする必要があるか否かの判断を適切に行うことができる。
【0016】
上記第2の発明によれば、上記判定範囲は、上記角度の値によって異なるので、物体の進入角度に応じて衝突判断の対象物とする必要があるか否かの判断を行うことができる。
【0017】
上記第3の発明によれば、上記判定範囲は、上記角度の値の絶対値が大きくなるに従い狭く設定される。つまり、衝突判断の対象物か否かの判断基準を変化させることができるので、衝突判断の対象物とする必要があるか否かの判断をより適切に行うことができる。
【0018】
上記第4の発明によれば、上記判定範囲は、上記角度の値が0近辺で一定であるので、例えば、自車両の真後ろから真っ直ぐ直進してくる他車両について、衝突判断の対象物とする必要があるか否かの判断をより適切に行うことができる。
【0019】
上記第5の発明によれば、車両の走行速度に応じて衝突判断の対象物か否かの判断基準を変化させることができるので、例えば、停車中の車両と走行中の車両とで衝突判断の対象物か否かの判断基準を変化させることができる。
【0020】
上記第6の発明によれば、車両の走行速度が予め定められた値を超えた場合には記憶手段に記憶されている判定範囲の値を角度の値にかかわらず一定にするので、例えば、右折待ち停車中の自車両の左側を安全にすれ違うことができる可能性が高い物体か否かの判断の必要のない、通常の走行時などにおいて用いることができる。
【0021】
上記第7の発明によれば、衝突判断の対象物とする必要があると判断された物体について当該物体と車両との衝突する危険性を判断するので、例えば、右折待ち停車時の車両の左側を安全にすれ違うことができる可能性が高いターゲットであっても衝突判定対象物と判断してしまうことによる不要な安全措置(警報等)を防ぐことができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】ドライバーサポートシステムの構成を示すブロック図
【図2】レーダ装置1の搭載位置の一例を示す図
【図3】レーダECU2の各部において行われる前半の処理の一例を示したフローチャート
【図4】レーダECU2の各部において行われる後半の処理の一例を示したフローチャート
【図5】他車両VOについての検出状況の一例を示した図
【図6】自車両VMと他車両VOについての捕捉点との位置関係を示した図
【図7】右折待ちのため停車している自車両VMの左側を他車両VOが安全にすれ違う場面を想定した図
【図8】信号待ち等で停車中の自車両VMと衝突してしまうような場面を想定した図
【図9】判定マップの一例を示した図
【図10】自車両VMの車速を考慮した判定マップの一例を示した図
【図11】車速と衝突評価エリアとの関係を示す図
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面を参照しつつ、本発明の一実施形態に係る物体検出装置について説明する。なお、本実施形態では、当該物体検出装置を含むドライバーサポートシステム(DSS(Driver Support System))が、車両(以下、自車両VMと称す)に搭載される場合を想定して説明する。
【0024】
図1は、ドライバーサポートシステムの構成を示すブロック図である。図1に示すように、ドライバーサポートシステムは、レーダ装置1、レーダECU(Electrical Control Unit)2、車両制御ECU3、および安全装置4を備える。
【0025】
レーダ装置1は、自車両VMの後部の所定の位置(例えば、自車両VMの後部中央や、自車両VMの後部両側のテールライトや方向指示器などの搭載位置の周辺)に設置され、自車両VMの外側に向けて電磁波を照射し、自車両VM後方の周囲を監視している。例えば、図2に示すように、レーダ装置1は、自車両VMの後方に向けて電磁波を照射し、当該レーダ装置1の検出範囲内(図2のAR)に存在するターゲット(例えば、他車両)を検出する。なお、レーダ装置1は、請求項に記載の検出手段の一例に相当する。
【0026】
図1の説明に戻って、レーダECU2は、ターゲット処理部21、ターゲット予測部22、ターゲット判定部23、情報記憶部24等を備える情報処理装置である。
【0027】
ターゲット処理部21は、レーダ装置1から取得した信号を用いて、自車両VMに対するターゲットの相対位置、相対速度、相対距離等のターゲット情報を算出する。例えば、レーダECU2は、レーダ装置1が照射した照射波と受信した反射波との和および差や送受信タイミング等を用いて、自車両VMに対するターゲットの相対距離、相対速度、および相対位置等を算出する。なお、レーダ装置1が検出範囲内ARに入った同一のターゲットを検出し、ある時間に当該ターゲットについて複数の捕捉点を取得した場合、それぞれの捕捉点についてターゲット情報を算出する。そして、ターゲット処理部21は、当該レーダ装置1に対するターゲットの相対距離、相対速度、および相対位置等を含む情報をターゲット情報iとして、ターゲット予測部22に出力する。
【0028】
ターゲット予測部22は、詳細は後述するが、ターゲット処理部21から出力されるターゲット情報iに基づいて、ターゲットの進行方向を算出する。そして、ターゲット予測部22は、ターゲットの中心を通り、当該ターゲットの進行方向に沿った直線と自車両VMの中心軸とがなす角(以下、進入角度θと称す)の値を算出する。さらに、ターゲット予測部22は、自車両VMの中心軸から車幅方向に延ばした直線(具体的には、自車両VMのレーダ装置1が搭載されている位置から、当該自車両VMの車幅方向に伸ばした直線)が、前述のターゲットの進行方向に沿った直線と交わるまでの距離(以下、距離X0と称す)を算出する。そして、上記進入角度θおよび上記距離X0をターゲット判定部23に出力する。なお、ターゲット処理部21およびターゲット予測部22は、請求項に記載の処理手段の一例に相当する。
【0029】
ターゲット判定部23は、上記ターゲット予測部22から出力された上記進入角度θおよび上記距離X0に基づいて、レーダ装置1によって検出されたターゲットが、衝突判定対象物とするか否かの判断を行う。そして、後述の車両制御ECU3は、衝突判定対象物とされたターゲットについて、当該ターゲットと自車両VMとの衝突の危険性等を判断する。なお、ターゲット判定部23は、請求項に記載の判定手段の一例に相当する。
【0030】
情報記憶部24は、ターゲット処理部21が生成したターゲット情報iを一時的に記憶する記憶媒体である。また、情報記憶部24には、レーダ装置1によって検出されたターゲットを衝突判定対象物とするか否かの判断をする際に用いられる判定マップが予め記憶されている。なお、判定マップの詳細については後述する。
【0031】
車両制御ECU3は、レーダECU2から出力されるターゲット情報iに基づいて、自車両VMと、上記ターゲット判定部23によって衝突判定対象物とされたターゲットとが衝突するまでの時間、つまり衝突予測時間(TTC(Time to collision))を算出する。そして、算出したTTCが予め定められた時間より短かった場合、車両制御ECU3は、安全装置4に指示し、後述する安全措置を講じる。つまり、本実施形態に係る物体検出装置を含むドライバーサポートシステムでは、まず、上記判定マップを用いて、レーダ装置1が検出したターゲットを衝突判定対象物とするか否かを判断する。そして、衝突判定対象物と判断された場合に、車両制御ECU3は自車両VMとターゲットとが衝突する可能性があるか否かを判断する。なお、TTCは、例えば相対距離を相対速度で除算(TTC=相対距離/相対速度)することによって求めることができる。
【0032】
安全装置4は、車両制御ECU3からの指示に従って、ターゲットとの衝突の危険性が高い場合には自車両VMのドライバーに対して注意喚起を行う。また、安全装置4は、ターゲットとの衝突が避けられない場合に、自車両VMの乗員の被害を低減する、乗員保護や衝突条件の緩和を行うための各種装置も含む。以下、安全装置4が行う動作、すなわち、衝突危険回避動作または衝突被害低減動作を総称して安全措置と称する。
【0033】
ここで、安全装置4を構成する装置の一例を挙げる。図1に示すように、例えば、安全装置4は、警告灯等の表示装置41や警報ブザー等の警報装置42を含む。そして、安全装置4には、自車両VMのドライバーが、ターゲットとの衝突の危険を回避するために行うブレーキ操作をアシストする危険回避装置43やシートベルトを巻き取ったり、シートを駆動させたりすることにより、自車両VMの乗員の拘束性を高め、衝突被害を低減する衝突被害低減装置44も含まれる。なお、安全装置4に含まれる装置は一例であり、これらの装置に限られるものではない。
【0034】
次に、本実施形態に係るレーダECU2の各部が行う動作の一例を説明する。なお、以下の説明においては、右折するために停車している自車両VMの後方から他車両が直進してくる場合を想定して、本実施形態に係るレーダECU2の各部が行う動作の一例を説明する。
【0035】
図3は、本実施形態に係る物体検出装置のレーダECU2の各部において行われる前半の処理の一例を示したフローチャートであり、図4は、後半の処理の一例を示したフローチャートである。なお、図3および図4に示したフローチャートの処理は、レーダECU2内に備わった所定のプログラムを当該レーダECU2が実行することによって行われる。さらに、図3および図4に示した処理を実行するためのプログラムは、例えばレーダECU2の記憶領域に予め格納されている。また、レーダECU2の電源がONになったとき(例えば、自車両VMのイグニッションスイッチがONされた場合等)当該レーダECU2によって図3および図4に示したフローチャートの処理が実行される。
【0036】
まず、図3のステップS11において、ターゲット処理部21は、レーダ装置1からターゲットを検出した信号を取得し、次のステップS12に処理を進める。なお、レーダ装置1がターゲットを検出しなかった場合(具体的には、自車両VM後方にターゲットが存在しなかった場合)、当該レーダ装置1は、ターゲットは0(ターゲットは無し)であることを示す信号をターゲット処理部21に出力する。
【0037】
ステップS12において、ターゲット処理部21は、レーダ装置1が検出したターゲットはあるか否かを判断する。具体的には、ターゲット処理部21は、上記ステップS11でレーダ装置1から取得した信号に基づいて、レーダ装置1は、ターゲットを検出したか否かを判断する。そして、ターゲット処理部21によって、判断が肯定された場合(YES)、次のステップS13に処理を進め、判断が否定された場合(NO)、ステップS11に戻って再び信号を取得する。つまり、ターゲット処理部21は、レーダ装置1が実際にターゲットを検出しなければ、ステップS13に進めることができず、レーダ装置1がターゲットを検出していない場合、ステップS11に処理を戻すことになる。
【0038】
ステップS13において、ターゲット処理部21は、レーダ装置1から取得した信号を用いて、ターゲットのターゲット情報iを生成する。具体的には、ターゲット処理部21は、上述したように、レーダ装置1からの信号を用いて、当該レーダ装置1に対するターゲットの相対距離、相対速度、および相対位置等を含む情報をターゲット情報iとして生成する。そして、ターゲット処理部21は、次のステップS14に処理を進める。
【0039】
ステップS14において、ターゲット処理部21は、上記ステップS14で生成したターゲットのターゲット情報iを時系列順に情報記憶部24に一時的に記憶させる。そして、ターゲット処理部21は、次のステップ15に処理を進める。
【0040】
なお、後述より明らかとなるが、ターゲット予測部22は、ターゲットの進行方向を予測するために、現時点における最新のターゲット情報iを含む、当該ターゲットのターゲット情報iを複数個必要とする。そのため、ターゲット処理部21は、ターゲットのターゲット情報iを少なくとも予め定められた個数(以下、M個と称する)だけ、時系列順にターゲット情報記憶部24に一時的に記憶させなければならない。
【0041】
図3のステップS15において、ターゲット処理部21は、情報記憶部24にM個のターゲット情報は記憶されているか否かを判断する。言い換えると、ターゲット処理部21は、同一のターゲットのターゲット情報iに関して、現時点における最新のターゲット情報iから、時系列順に少なくともM個のターゲット情報iを取得できているか否かを判断する。
【0042】
そして、ターゲット処理部21は、判断を肯定した場合(YES)、次のステップS16に処理を進める。一方、ターゲット処理部21は、判断を否定した場合(NO)、ステップS11に処理を戻す。つまり、ターゲット処理部21は、情報記憶部24に少なくともM個のターゲット情報iが記憶されるまで、レーダ装置1から信号を取得し、ターゲット情報iを生成する処理を繰り返す。
【0043】
このように、ターゲット処理部21は、ステップS11〜ステップS15の処理を繰り返すことによって、時系列順に少なくともM個のターゲット情報iの履歴を取得することができる。そして、ターゲット処理部21は、ターゲット情報iを時系列順に情報記憶部24に記憶させる。
【0044】
ステップS16において、ターゲット予測部22は、レーダ装置1が検出したターゲットの進行方向を算出する。そして、ステップS17において、ターゲット予測部22は、進入角度θおよび距離X0を算出する。ここで、ステップS16およびステップS17でターゲット予測部22が行う具体的な処理について図5および図6を用いて説明する。
【0045】
図5は、例えば、自車両VMが右折待ち停車時において、当該自車両VMに搭載されているレーダ装置1が、所定時間に他車両VOを検出した場合の、当該他車両VOについての検出結果の一例を示した図である。なお、説明を簡単にするために、一例として、ターゲット予測部22がターゲットの進行方向を予測するために必要なターゲット情報iの個数(ステップS15の説明におけるM個に相当)を4として説明する。
【0046】
図5に示すように、例えば、自車両VMが右折待ち停車時において、レーダ装置1が当該レーダ装置1の検出範囲AR内に入った他車両VOを検出してから、ある時間に当該他車両VOについて捕捉点を取得したとする。なお、図5において、自車両VMに最も近い捕捉点から順に捕捉点に参照符号をTr1、Tr2、Tr3、Tr4と付けた。また、レーダ装置1が図5に示したように検出する代表的な例として、自車両VMが右折待ち停車時において、当該自車両VMの後方から他車両VOが直進してきている状況でレーダ装置1が当該他車両VOを検出した場合(時間が経過するに従って、他車両VOについての捕捉点Tr4、Tr3、Tr2、Tr1が自車両VMに近づいてくる場合)が考えられる。
【0047】
ターゲット予測部22は、情報記憶部24に記憶されているターゲット情報i(本実施形態の説明では、他車両VOについての捕捉点Tr4、Tr3、Tr2、Tr1についてのそれぞれのターゲット情報i)を用いて、当該ターゲットの予測進行方向を算出する。なお、以下の説明において、ターゲットは、他車両VOであると想定して、ターゲットの予測進行方向を他車両予測進行方向VOdと称す。
【0048】
具体的には、図6に示すように、例えば、ターゲット予測部22は、情報記憶部24に記憶されているターゲット情報iを用いて、レーダ装置1によって検出されたターゲットの捕捉点の位置を、自車両VMのレーダ装置1が搭載されている位置を原点とする座標系(x、y)にプロットする演算をする。なお、図6の横軸は、原点から自車両VMの後方の距離Lを示し、縦軸は原点から自車両VMの車幅方向の距離Xを示している。また、図6には、図5で説明した参照符号Tr1、Tr2、Tr3、Tr4で示される捕捉点をプロットしてある。
【0049】
そして、ターゲット予測部22は、図6に示した各点(捕捉点Tr1、Tr2、Tr3、Tr4)について、例えば、最小二乗法等の手法を用いて最新の捕捉点(本実施形態の説明では、図6の捕捉点Tr1)を通る近似直線を求める演算をする。このようにして求めた直線は、自車両VM後方の他車両VOの予測進行方向、つまり、ベクトルの向きを他車両VOが進む向きで設定することにより、他車両予測進行方向VOdとして表すことができる。
【0050】
図3の説明に戻って、他車両予測進行方向VOdを算出するステップS16の次のステップS17において、ターゲット予測部22は、上記他車両予測進行方向VOdに基づいて、進入角度θおよび距離X0を算出する。以下、上述した図6を用いてステップS17における処理について説明する。
【0051】
ターゲット予測部22は、図6に示すように、他車両予測進行方向VOdとして求めた直線が、自車両VMのレーダ装置1が搭載されている位置を原点とする座標系の縦軸と交わる点を求める(図6に示す例では参照符号Tr0で示される点)。そして、ターゲット予測部22は、自車両VMのレーダ装置1が搭載されている位置を原点とする座標系における直線の切片の値(つまり、図6の参照符号Tr0で示される点の座標)を距離X0として算出する。
【0052】
また、ターゲット予測部22は、図6に示すように、参照符号Tr0の点を通り、自車両中心軸VMPと平行な直線と、他車両予測進行方向VOdとして求めた直線とがなす角を進入角度θとして算出する。
【0053】
このように、ターゲット予測部22は、上記ステップS17において、距離X0と進入角度θを算出し、図4のフローチャートに示す次のステップS18に処理を進める。
【0054】
ステップS18において、ターゲット判定部23は、レーダ装置1が検出したターゲット(例えば他車両VO)を衝突判定対象物とするか否かを、情報記憶部24に予め記憶されている判定マップを用いて判断する。
【0055】
ここで、ステップS18において、ターゲット判定部23が、レーダ装置1によって検出された他車両VOを衝突判定対象物とするか否かの判断のために用いる判定マップについて説明する。
【0056】
図7および図8は、停車している自車両VMの後方から他車両VOが直進してくる場面を想定した図である。具体的には、図7は、停車している自車両VMの後方から他車両VOが直進してくる場面において、右折待ちのため停車している自車両VMの左側を他車両VOがすれ違う場面の一例を示す図である。一方、図8は、信号待ち等で停車している自車両VMの後方から他車両VOが直進してくる場面において、自車両VMの後方から他車両VOが接近し、例えば信号待ち等で停車中の自車両VMと衝突してしまうような場面の一例を示す図である。
【0057】
ここで、例えば、自車両VMの左側を安全に通過することのできる他車両VO(図7参照)についての距離X0と進入角度θとの情報をレーダECU2に予め記憶しておけば、右折待ちで停車中の自車両VMの左側を安全に通過できる可能性の高いターゲットについては、衝突判断対象物としなくて済む。
【0058】
同様に、例えば、左折待ちで停車中の自車両VMの右側を安全に通過できる他車両VO(図示せず)についての距離X0と進入角度θとの情報をレーダECU2に予め記憶しておけば、左折待ちで停車中の自車両VMの右側を安全に通過できる可能性の高いターゲットについては、衝突判断対象物としなくて済む。そして、結果として不要な安全措置を防ぐことができる。
【0059】
また、一方で、自車両VMの後方から接近し、例えば信号待ち等で停車中の自車両VMと衝突してしまうような他車両VO(図8参照)についての距離X0と進入角度θとの情報をレーダECU2に予め記憶しておけば、衝突判定対象物とする判断をより確実に行うことができる。
【0060】
そこで、本出願人は、停車している自車両VMの後方から直進してくる他車両VOについて距離X0と進入角度θとの関係を詳細に調査し、図9に示すように、横軸を進入角度θとし、縦軸を距離X0とした判定マップを作成した。そして、自車両VMの左側を安全に通過することのできた他車両VOについての距離X0と進入角度θとに基づいて設定されたエリアを「右折待ち評価エリア」とし、自車両VMの右側を安全に通過することのできた他車両VOについての距離X0と進入角度θとに基づいて設定されるエリアを「左折待ち評価エリア」とした。また、例えば、信号待ち等で停車中の自車両VMと衝突してしまうような他車両VOについての距離X0と進入角度θとに基づいて設定されるエリアを「衝突評価エリア」とした。
【0061】
このようにすれば、例えば、停車中の自車両VMの後方から他車両VOが直進してきたとき、レーダ装置1によって他車両VOを検出する(上記ステップS11)。そして、当該他車両VOについて、距離X0と進入角度θとを算出する(上記ステップS13〜ステップS17)。その結果、得られた距離X0と進入角度θとが、図9に示した判定マップのどのエリアに入るかで、当該他車両VOは、自車両VMと安全にすれ違うことができるか、または衝突の危険があるか否かを予め判断することができるようになる。
【0062】
なお、図9に示す「右折待ち評価エリア」および「左折待ち評価エリア」の設定にあたっては、例えば、実際の公道で自車両VMを走行させ、右折待ち(左折待ち)で停車中の自車両VMの左側(右側)を安全に通過することのできた他車両VOについての距離X0と進入角度θとを調査する。そして、当該調査結果を、横軸を進入角度θとし、縦軸を距離X0としたグラフにプロットしたエリアを「右折待ち評価エリア」(「左折待ち評価エリア」)とした。なお、図9では、図6で説明した進入角度θについて、右回りを正の値としてプロットした。
【0063】
一方、図9に示す「衝突評価エリア」の設定にあたっては、例えば、実際の公道を想定した環境において、自車両VMの真後ろから他車両VOを真っ直ぐ自車両VMに接近させたときの当該他車両VOについての距離X0と進入角度θとを調査する。そして、当該調査結果を、横軸を進入角度θとし、縦軸を距離X0としたグラフにプロットしたエリアを「衝突評価エリア」とした。なお、自車両VMの真後ろから他車両VOを真っ直ぐ自車両VMに接近させたときの当該他車両VOについての距離X0と進入角度θとは厳密には0になると考えられる。しかし、一般的にレーダ装置1は、同一のターゲット(具体的には、他車両VO)について、当該ターゲットの同じ箇所を捕捉点として検出することはなく、またターゲット自体も走行することで左右に振れ、同一直線上を走行することは希であるため、距離X0と進入角度θとは少なからず大きさを有することになる。
【0064】
図4の説明に戻って、ステップS18において、ターゲット判定部23は、レーダ装置1が検出したターゲット(例えば他車両VO)を衝突判定対象物とするか否かを、情報記憶部24に予め記憶されている判定マップを用いて判断する。以下、ステップS18においてターゲット判定部23が行う処理について具体的に説明すると、衝突判定対象物とするか否かは、上記ステップS17において算出された進入角度θと距離X0とが図9に示した判定マップのどのエリアであるか否かで判断される。
【0065】
例えば、右折するために停車している自車両VMの後方から直進してくる他車両VOをレーダ装置1が検出し、当該レーダ装置1が検出したターゲットについてレーダECU2の各部が進入角度θおよび距離X0が算出した結果、その値が、進入角度θ=−10deg、距離X0=2mであったと仮に想定する。この場合、図9の判定マップでは、「右折待ち評価エリア」に入ることになる。したがって、レーダ装置1が検出した他車両VOは、右折待ちで停車している自車両VMの左側を安全にすれ違うことができるターゲットである可能性が高く、当該ターゲットについては、衝突するか否かの判断の必要性は少なく、衝突判断は行わないものとする(ステップS18での判断が否定(NO)され、ステップS20に処理が進む)。
【0066】
一方、例えば、右折するために停車している自車両VMの後方から直進してく他車両VOをレーダ装置1が検出し、当該レーダ装置1が検出した他車両VOについてレーダECU2の各部が進入角度θおよび距離X0が算出した結果、その値が、進入角度θ=−3deg、距離X0=1mであったとする。この場合、図9の判定マップでは、「衝突評価エリア」に入ることになる。したがって、レーダ装置1が検出した他車両VOは、右折待ちで停車している自車両VMの左側を安全にすれ違うことができるターゲットである可能性は低い、つまり、他車両VOが自車両VMに向かって直進してきた場合、場合によっては自車両VMと他車両VOとが衝突する可能性があると考えられる。したがって、ターゲット判定部23は、ステップS18での処理を肯定し(YES)、次のステップS19に処理を進める。
【0067】
ステップS19において、ターゲット判定部23は、レーダ装置1が検出した、自車両VMと衝突する可能性があるとされたターゲットのターゲット情報iを車両制御ECU3に出力する。そして、出力されたターゲット情報iに基づき、車両制御ECU3は、自車両VMとターゲットとが衝突する可能性がある、或いは衝突は避けられないと判断した場合、当該車両制御ECU3は、安全装置4に指示し、上述したような安全措置を講じる。
【0068】
例えば、車両制御ECU3は、レーダ装置1が検出したターゲット(他車両VO)につき自車両VMに最も近い捕捉点のターゲット情報iをレーダECU2から取得して、当該ターゲット情報iに基づいて、ターゲットと自車両VMが衝突する可能性があるか否かを判断してもよい。また、車両制御ECU3は、レーダ装置1が検出したターゲット(他車両VO)につき、すべての捕捉点のターゲット情報i(図4に示す例では、捕捉点Tr1、Tr2、Tr3、Tr4についてのそれぞれのターゲット情報i)をレーダECU2から取得して、当該ターゲット情報iに基づいて、ターゲットと自車両VMが衝突する可能性があるか否かを総合的に判断してもよい。
【0069】
図4のステップS20において、ターゲット判定部23は、情報記憶部24に記憶されているターゲット情報iを消去し、次のステップS21に処理を進める。なおこのとき、ターゲット判定部23は、情報記憶部24に記憶されている全てのターゲット情報iを消去してもよい(この場合、情報記憶部24には、少なくともM個のターゲット情報iを上記ステップS14で1から得ることになる)。一方、ターゲット判定部23は、情報記憶部24に記憶されているターゲット情報iを、当該ターゲット情報記憶部24に記憶されているうちの最も過去のターゲット情報iから順次消去してもよい。
【0070】
ステップS21において、ターゲット判定部23は、処理を終了するか否かを判断する。例えば、ターゲット判定部23は、レーダECU2の電源がOFFになったとき(自車両VMのイグニッションスイッチがOFFされた場合等)処理を終了する。一方、ターゲット判定部23は、処理を継続すると判断した場合、上記ステップS11に戻って処理を繰り返す。
【0071】
以上説明したように、本実施形態によれば、レーダ装置1が検出したターゲットが自車両VMに対して衝突の可能性のあるコースに入っているか否かを予め判断することができるようになる。そして、例えば右折待ちで停車時の自車両VMの左側を安全にすれ違うことができる可能性が高いターゲット(例えば、他車両VO)を衝突判定対象物とはしない
とすることができる。したがって、例えば、右折待ち停車時の自車両VMの左側を安全にすれ違うことができる可能性が高いターゲットであっても衝突判定対象物と判断してしまうことによる不要な安全措置を防ぐことができるようになる。
【0072】
なお、上述した例では、自車両VMが右折待ちで停車している場合を想定し、レーダ装置1によって検出したターゲットについて上記判定マップを用い衝突判定対象物とするか否かを判断した。つまり、上述した例では自車両VMが右折待ちで停車している場合を想定し、当該自車両VMの左側を安全にすれ違うことができる他車両であったとしても、衝突判定対象物と判断され、不要な安全措置を講じてしまうことを防ぐため、自車両VMの左側を安全に通過していく可能性が高いターゲット(例えば、他車両VO)については衝突判定対象物としない態様を説明した。
【0073】
しかしながら、例えば、自車両VMが急ブレーキや急減速した後、右折待ちのため停車した場合を考えると、自車両VMの後方のターゲット(例えば、他車両VO)について上記判定マップを用いて、自車両VMの左側を安全に通過する可能性が高いターゲットであるか否かの判断が難しくなることがある。すなわち、上記判定マップは、すでに停車している自車両VMを想定し、当該自車両VMの側方を安全にすれ違うことのできる(または、衝突の危険性のある)ターゲットをサンプルとして上記判定マップが作成されていた。これに対して、他の一実施形態では、自車両VMの車速を考慮して上記判定マップを変形させることにより、自車両VMが走行している場合(自車両VMが速度を有する場合)でもレーダ装置1によって検出したターゲットについて衝突判定対象物であるか否かの判断を適切に行うことが判定マップを作成することが可能となる。
【0074】
以下、自車両VMの車速を考慮した上記判定マップについて説明する。図10は、自車両VMの車速を考慮した判定マップの一例を示した図である。なお、図10の説明では、一例として、自車両VMの車速(走行速度)Vが、
パターン1(図10の(a)に相当):0≦V≦Vlのとき(低速走行時)
パターン2(図10の(b)に相当):Vl<V<Vhのとき(中速走行時)
パターン3(図10の(c)に相当):V≧Vlのとき(高速走行時)
のときに用いられる判定マップについて説明する。
【0075】
具体的には、ターゲット判定部23は、自車両VMの現在の走行速度Vを取得し、自車両VMの車速Vが0≦V≦Vlであった場合、図10の(a)の判定マップを用い、自車両VMの車速VがVl<V<Vhであった場合、図10の(b)の判定マップを用い、自車両VMの車速VがV≧Vlであった場合、図10の(c)の判定マップを用いターゲットを衝突判定対象物とするか否かを判断することになる。
【0076】
ここで、例えば、レーダ装置1が自車両VM後方のターゲット(例えば他車両VO)を検出し、当該ターゲットについて、ターゲット予測部22が進入角度θおよび距離X0を算出した結果、当該進入角度θの値が角度Θであった場合を仮に想定して考える。なお、このときの自車両VMの車速Vが0≦V≦Vlであったとする。この場合、ターゲット判定部23は、角度Θで距離X0を図10の(a)の判定マップにプロットしたとき、どのエリアに入るか否かで、ターゲットを衝突判定対象物とするか否かを判断することになる。
【0077】
同様に、自車両VMの車速VがVl<V<Vhであったとすると、ターゲット判定部23は、角度Θで距離X0を図10の(b)の判定マップにプロットしたとき、どのエリアに入るか否かで、ターゲットを衝突判定対象物とするか否かを判断することになる。
【0078】
さらに、自車両VMの車速VがV≧Vlであったとすると、ターゲット判定部23は、角度Θで距離X0を図10の(c)の判定マップにプロットしたとき、どのエリアに入るか否かで、ターゲットを衝突判定対象物とするか否かを判断することになる。
【0079】
つまり、自車両VMの走行速度Vに応じて判定マップが異なることになる。言い換えると、自車両VMの車速Vが異なると、「衝突評価エリア」と判断される基準(「衝突評価エリア」との判断のされやすさ)が異なることになる。すなわち、図10の各判定マップにおいて、角度Θが同じ値であった場合の「衝突評価エリア」とするか否か基準となる距離X0の値の上限は、Ml_P(Θ)<Mm_P(Θ)<Mh_P(Θ)となっており、下限はMl_(Θ)>Mm_M(Θ)>Mh_M(Θ)となっている。
【0080】
このことを、図10の(a)と図10の(c)とを比較しながら、より具体的に説明する。上述したように、図10の(a)は、自車両VMが停車または低速走行している場合に用いることを想定した判定マップである。一方、図10の(c)は、自車両VMが高速走行(自車両VMが走行路面を法定速度で直線走行を想定)をしている場合に用いることを想定した判定マップである。そして、レーダ装置1が自車両VM後方のターゲット(例えば他車両VO)を検出し、当該ターゲットについて、ターゲット予測部22が進入角度θおよび距離X0を算出する。このとき、自車両VMの車速Vは異なるが、進入角度θおよび距離X0は車速Vが異なっても同じ値であったと仮に想定する。この場合、図10の(a)の判定マップより、図10の(c)の判定マップの方がより「衝突評価エリア」に入りやすくなることになる。
【0081】
一般的に、自車両VMの車速が大きい場合には、自車両VMとターゲットとが衝突したときの被害が大きくなると予想される。そのため、自車両VMが停車している場合と比べて、レーダ装置1が検出したターゲット(例えば、他車両VO)について、衝突判定対象物とする判断をより確実に行う必要がある。そのため、例えば、右折待ちで等で停車中(停車時または低速走行時)に自車両VMのレーダ装置1によって検出したターゲットに比べ、高速走行時に自車両VMのレーダ装置1によって検出したターゲットの方が、より「衝突評価エリア」であると判断されやすくなると、自車両VMとターゲットとの衝突判断を確実に行うことができるようになる。
【0082】
なお、図10の(b)は、上記パターン2のとき、つまり自車両VMが中速走行している場合に用いることを想定した判定マップである。つまり、レーダ装置1が検出したターゲットについて、衝突判定対象物とするか否かの判断は、図10の(a)の判定マップを用いるより、図10の(b)の判定マップを用いると厳しくなる(より「衝突評価エリア」に入りやすくなる)。一方で、図10の(c)の判定マップを用いるよりも緩やかである。
【0083】
つまり、図10の(b)の判定マップは、自車両VMの車速Vに応じて車速Vl〜車速Vhとの間で「衝突評価エリア」とするか否か基準となる距離X0の値の上限および下限を変更した判定マップである。(図11参照)。なお、Mm_P(Θ)およびMm_M(Θ)それぞれの値は、自車速VMに応じて、例えば以下の数1および数2で求めることができる。
【0084】
【数1】
【0085】
【数2】
【0086】
以上説明したように、図10の(a)に示した判定マップを用いれば、例えば、右折待ちで停車中の自車両VMの左側を安全に通過できる可能性の高いターゲットについては、衝突判断対象物とされなくなる。そして、結果として不要な安全措置を防ぐことができる。一方、図10の(c)に示した判定マップは、進入角度θにかかわらず、図10の(a)に示した判定マップに比べて「衝突評価エリア」と判断される距離X0の値の上限および下限が大きくなっている。したがって、図10の(c)に示した判定マップを用いれば、レーダ装置1が検出したターゲット(例えば、他車両VO)について、図10の(a)に示した判定マップに比べて、衝突判定対象物の判断される可能性が高くなることが考えられる。そして、結果として、レーダ装置1が検出したターゲットについて確実に衝突判断を行うことができるようになる。
【0087】
なお、上述した例では、自車両VMの車速に応じて「衝突評価エリア」と判断される距離X0の値を速度Vに応じて変化させた。しかしながら、自車両VMの車速にかかわらず、例えば、右折待ちで等で停車中の場合であっても、衝突判定対象物とする判断をより確実に行いたい場合は、図10の(c)を用いて判定してもよい。
【0088】
以上、本発明を詳細に説明してきたが、上述の説明はあらゆる点において本発明の一例にすぎず、その範囲を限定しようとするものではない。本発明の範囲を逸脱することなく種々の改良や変形を行うことができることは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0089】
本発明に係る物体検出装置は、レーダ装置が検出した物体について、衝突判断の対象物とする必要があるか否かの判断を適切に行うことのできる、車両に搭載される物体検出装置等に有用である。
【符号の説明】
【0090】
1…レーダ装置
2…レーダECU
21…ターゲット処理部
22…ターゲット予測部
23…ターゲット判定部
24…情報記憶部
3…車両制御ECU
4…安全装置
41…表示装置
42…警報装置
43…危険回避装置
44…衝突被害低減装置
【技術分野】
【0001】
本発明は、物体検出装置に関し、より特定的には、車両に搭載され、当該車両の周辺から接近してくる物体との衝突の危険性を適切に判断することができる物体検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自車両の前方や後方から接近してくる物体を検出するために、当該自車両に搭載される車載用物体検出装置が知られている。具体的には、上記車載用物体検出装置は、ミリ波レーダ装置にて上記自車両に接近してくる物体を検出する。そして、上記車載用物体検出装置は、当該検出結果に基づいて、自車両と物体とが衝突する危険性を判断する。さらに、上記車載用物体検出装置は、自車両と物体との衝突の危険性があると判断した場合など、上記自車両に備わっている各種装置を制御するものである。このような装置の一例として、特許文献1に開示された装置がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−330997号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に開示されている装置(以下、従来技術と称す)は、レーダ装置により自車両前方の物体を検出し、当該検出された物体と自車両との位置関係に基づき、自車両が上記物体を回避可能か否かを判断する。そして、従来技術は、回避不可能であると判断した場合、制動(例えばブレーキ駆動)を開始する。なお、このとき、従来技術は、自車両の走行状態を予測し、上記制動を終了する終了時点を設定する。つまり、従来技術は、制動を終了させるタイミングを調整するものである。これによって、例えば、自車両と他車両とが衝突したとき、その衝突が軽衝突であった場合には、自車両のドライバーは引き続き自車両を走らせることができるようになる。すなわち、従来技術は、制動を終了させるタイミングを調整することで自車両のドライバーの運転行動を妨げるのを防ぐものである。
【0005】
ところで、車載用物体検出装置は、自車両の前方や後方から接近してくる物体を全て点として捉えているため、一般的には、当該物体の大きさ、例えば、他車両の車幅までは正確に判別することができないことが多い。そのため、例えば、右折待ちのため停車している自車両の左側を安全にすれ違うことができる進行方向で他車両が接近してきても、場合によっては、当該他車両を衝突判断の対象物としてしまい、他車両と自車両とは回避不可能と判断され、不要な制御を行ってしまうといった問題点があった。つまり、衝突判断の対象物とする必要のない物体まで衝突判断の対象物としてしまう問題点があった。
【0006】
また、上記従来技術は、レーダ装置が検出した物体について回避不可能と判断された後に制御のタイミング(具体的には自動制動を終了時のタイミング)を調整するものであり、レーダ装置で検出した物体について、当該物体を衝突判定の対象物とする必要か否かを判断するものではなかった。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、レーダ装置が検出した物体について、衝突判断の対象物とする必要があるか否かの判断を適切に行うことのできる物体検出装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記のような目的を達成するために、本発明は以下の構成を採用した。すなわち、第1の発明は、車両に搭載され、当該車両周辺の物体を検出する物体検出装置である。上記物体検出装置は、上記車両の周辺の物体を検出する検出手段と、上記検出手段が検出した物体について、当該物体の進行方向、当該進行方向から算出される上記物体の存在位置、および上記進行方向を示す直線と上記車両の中心軸とがなす角である進入角度を示す車両情報を算出する処理手段と、上記車両から車幅方向に沿った上記物体までの側方距離および上記進行方向を示す直線と上記車両の中心軸とがなす角の角度に基づいて予め設定された判定範囲を示す判定情報を記憶する記憶手段と、上記処理手段が算出した上記車両情報を用いて、上記存在位置および上記進入角度が上記判定範囲内であるか否かに基づいて上記物体を上記車両と衝突の危険性判断の判断対象である衝突判定対象物とするか否かを判定する判定手段とを備える。
【0009】
第2の発明は、上記第1の発明において、上記記憶手段に記憶されている上記判定範囲は、上記角度の値によって異なる。
【0010】
第3の発明は、上記第2の発明において、上記記憶手段に記憶されている上記判定範囲は、上記角度の値の絶対値が大きくなるに従い狭く設定されている。
【0011】
第4の発明は、上記第2の発明において、上記記憶手段に記憶されている上記判定範囲は、上記角度の値が0近辺で一定である。
【0012】
第5の発明は、上記第2の発明において、上記処理手段は、上記車両の走行速度が大きくなるに従い、上記記憶手段に記憶されている上記判定範囲を広く変更する。
【0013】
第6の発明は、上記第5の発明において、上記処理手段は、上記車両の走行速度が予め定められた値を超えた場合に、上記記憶手段に記憶されている上記判定範囲の値を上記角度の値にかかわらず一定に変更する。
【0014】
第7の発明は、上記第1の発明において、上記判定手段によって上記物体は上記衝突判定対象物と判定にされた場合に、当該物体と上記車両とが衝突する危険性を判断する衝突判断手段を、さらに備える。
【発明の効果】
【0015】
上記第1の発明によれば、例えば、レーダ装置が検出した物体が自車両に対して衝突の可能性のあるコースに入っているか否かを予め判断することができるようになる。そして、例えば右折待ちで停車時の車両の左側を安全にすれ違うことができる可能性が高い物体(例えば、他車両)を衝突判定対象物とはしないとすることができる。したがって、衝突判断の衝突判定対象物とする必要があるか否かの判断を適切に行うことができる。
【0016】
上記第2の発明によれば、上記判定範囲は、上記角度の値によって異なるので、物体の進入角度に応じて衝突判断の対象物とする必要があるか否かの判断を行うことができる。
【0017】
上記第3の発明によれば、上記判定範囲は、上記角度の値の絶対値が大きくなるに従い狭く設定される。つまり、衝突判断の対象物か否かの判断基準を変化させることができるので、衝突判断の対象物とする必要があるか否かの判断をより適切に行うことができる。
【0018】
上記第4の発明によれば、上記判定範囲は、上記角度の値が0近辺で一定であるので、例えば、自車両の真後ろから真っ直ぐ直進してくる他車両について、衝突判断の対象物とする必要があるか否かの判断をより適切に行うことができる。
【0019】
上記第5の発明によれば、車両の走行速度に応じて衝突判断の対象物か否かの判断基準を変化させることができるので、例えば、停車中の車両と走行中の車両とで衝突判断の対象物か否かの判断基準を変化させることができる。
【0020】
上記第6の発明によれば、車両の走行速度が予め定められた値を超えた場合には記憶手段に記憶されている判定範囲の値を角度の値にかかわらず一定にするので、例えば、右折待ち停車中の自車両の左側を安全にすれ違うことができる可能性が高い物体か否かの判断の必要のない、通常の走行時などにおいて用いることができる。
【0021】
上記第7の発明によれば、衝突判断の対象物とする必要があると判断された物体について当該物体と車両との衝突する危険性を判断するので、例えば、右折待ち停車時の車両の左側を安全にすれ違うことができる可能性が高いターゲットであっても衝突判定対象物と判断してしまうことによる不要な安全措置(警報等)を防ぐことができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】ドライバーサポートシステムの構成を示すブロック図
【図2】レーダ装置1の搭載位置の一例を示す図
【図3】レーダECU2の各部において行われる前半の処理の一例を示したフローチャート
【図4】レーダECU2の各部において行われる後半の処理の一例を示したフローチャート
【図5】他車両VOについての検出状況の一例を示した図
【図6】自車両VMと他車両VOについての捕捉点との位置関係を示した図
【図7】右折待ちのため停車している自車両VMの左側を他車両VOが安全にすれ違う場面を想定した図
【図8】信号待ち等で停車中の自車両VMと衝突してしまうような場面を想定した図
【図9】判定マップの一例を示した図
【図10】自車両VMの車速を考慮した判定マップの一例を示した図
【図11】車速と衝突評価エリアとの関係を示す図
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面を参照しつつ、本発明の一実施形態に係る物体検出装置について説明する。なお、本実施形態では、当該物体検出装置を含むドライバーサポートシステム(DSS(Driver Support System))が、車両(以下、自車両VMと称す)に搭載される場合を想定して説明する。
【0024】
図1は、ドライバーサポートシステムの構成を示すブロック図である。図1に示すように、ドライバーサポートシステムは、レーダ装置1、レーダECU(Electrical Control Unit)2、車両制御ECU3、および安全装置4を備える。
【0025】
レーダ装置1は、自車両VMの後部の所定の位置(例えば、自車両VMの後部中央や、自車両VMの後部両側のテールライトや方向指示器などの搭載位置の周辺)に設置され、自車両VMの外側に向けて電磁波を照射し、自車両VM後方の周囲を監視している。例えば、図2に示すように、レーダ装置1は、自車両VMの後方に向けて電磁波を照射し、当該レーダ装置1の検出範囲内(図2のAR)に存在するターゲット(例えば、他車両)を検出する。なお、レーダ装置1は、請求項に記載の検出手段の一例に相当する。
【0026】
図1の説明に戻って、レーダECU2は、ターゲット処理部21、ターゲット予測部22、ターゲット判定部23、情報記憶部24等を備える情報処理装置である。
【0027】
ターゲット処理部21は、レーダ装置1から取得した信号を用いて、自車両VMに対するターゲットの相対位置、相対速度、相対距離等のターゲット情報を算出する。例えば、レーダECU2は、レーダ装置1が照射した照射波と受信した反射波との和および差や送受信タイミング等を用いて、自車両VMに対するターゲットの相対距離、相対速度、および相対位置等を算出する。なお、レーダ装置1が検出範囲内ARに入った同一のターゲットを検出し、ある時間に当該ターゲットについて複数の捕捉点を取得した場合、それぞれの捕捉点についてターゲット情報を算出する。そして、ターゲット処理部21は、当該レーダ装置1に対するターゲットの相対距離、相対速度、および相対位置等を含む情報をターゲット情報iとして、ターゲット予測部22に出力する。
【0028】
ターゲット予測部22は、詳細は後述するが、ターゲット処理部21から出力されるターゲット情報iに基づいて、ターゲットの進行方向を算出する。そして、ターゲット予測部22は、ターゲットの中心を通り、当該ターゲットの進行方向に沿った直線と自車両VMの中心軸とがなす角(以下、進入角度θと称す)の値を算出する。さらに、ターゲット予測部22は、自車両VMの中心軸から車幅方向に延ばした直線(具体的には、自車両VMのレーダ装置1が搭載されている位置から、当該自車両VMの車幅方向に伸ばした直線)が、前述のターゲットの進行方向に沿った直線と交わるまでの距離(以下、距離X0と称す)を算出する。そして、上記進入角度θおよび上記距離X0をターゲット判定部23に出力する。なお、ターゲット処理部21およびターゲット予測部22は、請求項に記載の処理手段の一例に相当する。
【0029】
ターゲット判定部23は、上記ターゲット予測部22から出力された上記進入角度θおよび上記距離X0に基づいて、レーダ装置1によって検出されたターゲットが、衝突判定対象物とするか否かの判断を行う。そして、後述の車両制御ECU3は、衝突判定対象物とされたターゲットについて、当該ターゲットと自車両VMとの衝突の危険性等を判断する。なお、ターゲット判定部23は、請求項に記載の判定手段の一例に相当する。
【0030】
情報記憶部24は、ターゲット処理部21が生成したターゲット情報iを一時的に記憶する記憶媒体である。また、情報記憶部24には、レーダ装置1によって検出されたターゲットを衝突判定対象物とするか否かの判断をする際に用いられる判定マップが予め記憶されている。なお、判定マップの詳細については後述する。
【0031】
車両制御ECU3は、レーダECU2から出力されるターゲット情報iに基づいて、自車両VMと、上記ターゲット判定部23によって衝突判定対象物とされたターゲットとが衝突するまでの時間、つまり衝突予測時間(TTC(Time to collision))を算出する。そして、算出したTTCが予め定められた時間より短かった場合、車両制御ECU3は、安全装置4に指示し、後述する安全措置を講じる。つまり、本実施形態に係る物体検出装置を含むドライバーサポートシステムでは、まず、上記判定マップを用いて、レーダ装置1が検出したターゲットを衝突判定対象物とするか否かを判断する。そして、衝突判定対象物と判断された場合に、車両制御ECU3は自車両VMとターゲットとが衝突する可能性があるか否かを判断する。なお、TTCは、例えば相対距離を相対速度で除算(TTC=相対距離/相対速度)することによって求めることができる。
【0032】
安全装置4は、車両制御ECU3からの指示に従って、ターゲットとの衝突の危険性が高い場合には自車両VMのドライバーに対して注意喚起を行う。また、安全装置4は、ターゲットとの衝突が避けられない場合に、自車両VMの乗員の被害を低減する、乗員保護や衝突条件の緩和を行うための各種装置も含む。以下、安全装置4が行う動作、すなわち、衝突危険回避動作または衝突被害低減動作を総称して安全措置と称する。
【0033】
ここで、安全装置4を構成する装置の一例を挙げる。図1に示すように、例えば、安全装置4は、警告灯等の表示装置41や警報ブザー等の警報装置42を含む。そして、安全装置4には、自車両VMのドライバーが、ターゲットとの衝突の危険を回避するために行うブレーキ操作をアシストする危険回避装置43やシートベルトを巻き取ったり、シートを駆動させたりすることにより、自車両VMの乗員の拘束性を高め、衝突被害を低減する衝突被害低減装置44も含まれる。なお、安全装置4に含まれる装置は一例であり、これらの装置に限られるものではない。
【0034】
次に、本実施形態に係るレーダECU2の各部が行う動作の一例を説明する。なお、以下の説明においては、右折するために停車している自車両VMの後方から他車両が直進してくる場合を想定して、本実施形態に係るレーダECU2の各部が行う動作の一例を説明する。
【0035】
図3は、本実施形態に係る物体検出装置のレーダECU2の各部において行われる前半の処理の一例を示したフローチャートであり、図4は、後半の処理の一例を示したフローチャートである。なお、図3および図4に示したフローチャートの処理は、レーダECU2内に備わった所定のプログラムを当該レーダECU2が実行することによって行われる。さらに、図3および図4に示した処理を実行するためのプログラムは、例えばレーダECU2の記憶領域に予め格納されている。また、レーダECU2の電源がONになったとき(例えば、自車両VMのイグニッションスイッチがONされた場合等)当該レーダECU2によって図3および図4に示したフローチャートの処理が実行される。
【0036】
まず、図3のステップS11において、ターゲット処理部21は、レーダ装置1からターゲットを検出した信号を取得し、次のステップS12に処理を進める。なお、レーダ装置1がターゲットを検出しなかった場合(具体的には、自車両VM後方にターゲットが存在しなかった場合)、当該レーダ装置1は、ターゲットは0(ターゲットは無し)であることを示す信号をターゲット処理部21に出力する。
【0037】
ステップS12において、ターゲット処理部21は、レーダ装置1が検出したターゲットはあるか否かを判断する。具体的には、ターゲット処理部21は、上記ステップS11でレーダ装置1から取得した信号に基づいて、レーダ装置1は、ターゲットを検出したか否かを判断する。そして、ターゲット処理部21によって、判断が肯定された場合(YES)、次のステップS13に処理を進め、判断が否定された場合(NO)、ステップS11に戻って再び信号を取得する。つまり、ターゲット処理部21は、レーダ装置1が実際にターゲットを検出しなければ、ステップS13に進めることができず、レーダ装置1がターゲットを検出していない場合、ステップS11に処理を戻すことになる。
【0038】
ステップS13において、ターゲット処理部21は、レーダ装置1から取得した信号を用いて、ターゲットのターゲット情報iを生成する。具体的には、ターゲット処理部21は、上述したように、レーダ装置1からの信号を用いて、当該レーダ装置1に対するターゲットの相対距離、相対速度、および相対位置等を含む情報をターゲット情報iとして生成する。そして、ターゲット処理部21は、次のステップS14に処理を進める。
【0039】
ステップS14において、ターゲット処理部21は、上記ステップS14で生成したターゲットのターゲット情報iを時系列順に情報記憶部24に一時的に記憶させる。そして、ターゲット処理部21は、次のステップ15に処理を進める。
【0040】
なお、後述より明らかとなるが、ターゲット予測部22は、ターゲットの進行方向を予測するために、現時点における最新のターゲット情報iを含む、当該ターゲットのターゲット情報iを複数個必要とする。そのため、ターゲット処理部21は、ターゲットのターゲット情報iを少なくとも予め定められた個数(以下、M個と称する)だけ、時系列順にターゲット情報記憶部24に一時的に記憶させなければならない。
【0041】
図3のステップS15において、ターゲット処理部21は、情報記憶部24にM個のターゲット情報は記憶されているか否かを判断する。言い換えると、ターゲット処理部21は、同一のターゲットのターゲット情報iに関して、現時点における最新のターゲット情報iから、時系列順に少なくともM個のターゲット情報iを取得できているか否かを判断する。
【0042】
そして、ターゲット処理部21は、判断を肯定した場合(YES)、次のステップS16に処理を進める。一方、ターゲット処理部21は、判断を否定した場合(NO)、ステップS11に処理を戻す。つまり、ターゲット処理部21は、情報記憶部24に少なくともM個のターゲット情報iが記憶されるまで、レーダ装置1から信号を取得し、ターゲット情報iを生成する処理を繰り返す。
【0043】
このように、ターゲット処理部21は、ステップS11〜ステップS15の処理を繰り返すことによって、時系列順に少なくともM個のターゲット情報iの履歴を取得することができる。そして、ターゲット処理部21は、ターゲット情報iを時系列順に情報記憶部24に記憶させる。
【0044】
ステップS16において、ターゲット予測部22は、レーダ装置1が検出したターゲットの進行方向を算出する。そして、ステップS17において、ターゲット予測部22は、進入角度θおよび距離X0を算出する。ここで、ステップS16およびステップS17でターゲット予測部22が行う具体的な処理について図5および図6を用いて説明する。
【0045】
図5は、例えば、自車両VMが右折待ち停車時において、当該自車両VMに搭載されているレーダ装置1が、所定時間に他車両VOを検出した場合の、当該他車両VOについての検出結果の一例を示した図である。なお、説明を簡単にするために、一例として、ターゲット予測部22がターゲットの進行方向を予測するために必要なターゲット情報iの個数(ステップS15の説明におけるM個に相当)を4として説明する。
【0046】
図5に示すように、例えば、自車両VMが右折待ち停車時において、レーダ装置1が当該レーダ装置1の検出範囲AR内に入った他車両VOを検出してから、ある時間に当該他車両VOについて捕捉点を取得したとする。なお、図5において、自車両VMに最も近い捕捉点から順に捕捉点に参照符号をTr1、Tr2、Tr3、Tr4と付けた。また、レーダ装置1が図5に示したように検出する代表的な例として、自車両VMが右折待ち停車時において、当該自車両VMの後方から他車両VOが直進してきている状況でレーダ装置1が当該他車両VOを検出した場合(時間が経過するに従って、他車両VOについての捕捉点Tr4、Tr3、Tr2、Tr1が自車両VMに近づいてくる場合)が考えられる。
【0047】
ターゲット予測部22は、情報記憶部24に記憶されているターゲット情報i(本実施形態の説明では、他車両VOについての捕捉点Tr4、Tr3、Tr2、Tr1についてのそれぞれのターゲット情報i)を用いて、当該ターゲットの予測進行方向を算出する。なお、以下の説明において、ターゲットは、他車両VOであると想定して、ターゲットの予測進行方向を他車両予測進行方向VOdと称す。
【0048】
具体的には、図6に示すように、例えば、ターゲット予測部22は、情報記憶部24に記憶されているターゲット情報iを用いて、レーダ装置1によって検出されたターゲットの捕捉点の位置を、自車両VMのレーダ装置1が搭載されている位置を原点とする座標系(x、y)にプロットする演算をする。なお、図6の横軸は、原点から自車両VMの後方の距離Lを示し、縦軸は原点から自車両VMの車幅方向の距離Xを示している。また、図6には、図5で説明した参照符号Tr1、Tr2、Tr3、Tr4で示される捕捉点をプロットしてある。
【0049】
そして、ターゲット予測部22は、図6に示した各点(捕捉点Tr1、Tr2、Tr3、Tr4)について、例えば、最小二乗法等の手法を用いて最新の捕捉点(本実施形態の説明では、図6の捕捉点Tr1)を通る近似直線を求める演算をする。このようにして求めた直線は、自車両VM後方の他車両VOの予測進行方向、つまり、ベクトルの向きを他車両VOが進む向きで設定することにより、他車両予測進行方向VOdとして表すことができる。
【0050】
図3の説明に戻って、他車両予測進行方向VOdを算出するステップS16の次のステップS17において、ターゲット予測部22は、上記他車両予測進行方向VOdに基づいて、進入角度θおよび距離X0を算出する。以下、上述した図6を用いてステップS17における処理について説明する。
【0051】
ターゲット予測部22は、図6に示すように、他車両予測進行方向VOdとして求めた直線が、自車両VMのレーダ装置1が搭載されている位置を原点とする座標系の縦軸と交わる点を求める(図6に示す例では参照符号Tr0で示される点)。そして、ターゲット予測部22は、自車両VMのレーダ装置1が搭載されている位置を原点とする座標系における直線の切片の値(つまり、図6の参照符号Tr0で示される点の座標)を距離X0として算出する。
【0052】
また、ターゲット予測部22は、図6に示すように、参照符号Tr0の点を通り、自車両中心軸VMPと平行な直線と、他車両予測進行方向VOdとして求めた直線とがなす角を進入角度θとして算出する。
【0053】
このように、ターゲット予測部22は、上記ステップS17において、距離X0と進入角度θを算出し、図4のフローチャートに示す次のステップS18に処理を進める。
【0054】
ステップS18において、ターゲット判定部23は、レーダ装置1が検出したターゲット(例えば他車両VO)を衝突判定対象物とするか否かを、情報記憶部24に予め記憶されている判定マップを用いて判断する。
【0055】
ここで、ステップS18において、ターゲット判定部23が、レーダ装置1によって検出された他車両VOを衝突判定対象物とするか否かの判断のために用いる判定マップについて説明する。
【0056】
図7および図8は、停車している自車両VMの後方から他車両VOが直進してくる場面を想定した図である。具体的には、図7は、停車している自車両VMの後方から他車両VOが直進してくる場面において、右折待ちのため停車している自車両VMの左側を他車両VOがすれ違う場面の一例を示す図である。一方、図8は、信号待ち等で停車している自車両VMの後方から他車両VOが直進してくる場面において、自車両VMの後方から他車両VOが接近し、例えば信号待ち等で停車中の自車両VMと衝突してしまうような場面の一例を示す図である。
【0057】
ここで、例えば、自車両VMの左側を安全に通過することのできる他車両VO(図7参照)についての距離X0と進入角度θとの情報をレーダECU2に予め記憶しておけば、右折待ちで停車中の自車両VMの左側を安全に通過できる可能性の高いターゲットについては、衝突判断対象物としなくて済む。
【0058】
同様に、例えば、左折待ちで停車中の自車両VMの右側を安全に通過できる他車両VO(図示せず)についての距離X0と進入角度θとの情報をレーダECU2に予め記憶しておけば、左折待ちで停車中の自車両VMの右側を安全に通過できる可能性の高いターゲットについては、衝突判断対象物としなくて済む。そして、結果として不要な安全措置を防ぐことができる。
【0059】
また、一方で、自車両VMの後方から接近し、例えば信号待ち等で停車中の自車両VMと衝突してしまうような他車両VO(図8参照)についての距離X0と進入角度θとの情報をレーダECU2に予め記憶しておけば、衝突判定対象物とする判断をより確実に行うことができる。
【0060】
そこで、本出願人は、停車している自車両VMの後方から直進してくる他車両VOについて距離X0と進入角度θとの関係を詳細に調査し、図9に示すように、横軸を進入角度θとし、縦軸を距離X0とした判定マップを作成した。そして、自車両VMの左側を安全に通過することのできた他車両VOについての距離X0と進入角度θとに基づいて設定されたエリアを「右折待ち評価エリア」とし、自車両VMの右側を安全に通過することのできた他車両VOについての距離X0と進入角度θとに基づいて設定されるエリアを「左折待ち評価エリア」とした。また、例えば、信号待ち等で停車中の自車両VMと衝突してしまうような他車両VOについての距離X0と進入角度θとに基づいて設定されるエリアを「衝突評価エリア」とした。
【0061】
このようにすれば、例えば、停車中の自車両VMの後方から他車両VOが直進してきたとき、レーダ装置1によって他車両VOを検出する(上記ステップS11)。そして、当該他車両VOについて、距離X0と進入角度θとを算出する(上記ステップS13〜ステップS17)。その結果、得られた距離X0と進入角度θとが、図9に示した判定マップのどのエリアに入るかで、当該他車両VOは、自車両VMと安全にすれ違うことができるか、または衝突の危険があるか否かを予め判断することができるようになる。
【0062】
なお、図9に示す「右折待ち評価エリア」および「左折待ち評価エリア」の設定にあたっては、例えば、実際の公道で自車両VMを走行させ、右折待ち(左折待ち)で停車中の自車両VMの左側(右側)を安全に通過することのできた他車両VOについての距離X0と進入角度θとを調査する。そして、当該調査結果を、横軸を進入角度θとし、縦軸を距離X0としたグラフにプロットしたエリアを「右折待ち評価エリア」(「左折待ち評価エリア」)とした。なお、図9では、図6で説明した進入角度θについて、右回りを正の値としてプロットした。
【0063】
一方、図9に示す「衝突評価エリア」の設定にあたっては、例えば、実際の公道を想定した環境において、自車両VMの真後ろから他車両VOを真っ直ぐ自車両VMに接近させたときの当該他車両VOについての距離X0と進入角度θとを調査する。そして、当該調査結果を、横軸を進入角度θとし、縦軸を距離X0としたグラフにプロットしたエリアを「衝突評価エリア」とした。なお、自車両VMの真後ろから他車両VOを真っ直ぐ自車両VMに接近させたときの当該他車両VOについての距離X0と進入角度θとは厳密には0になると考えられる。しかし、一般的にレーダ装置1は、同一のターゲット(具体的には、他車両VO)について、当該ターゲットの同じ箇所を捕捉点として検出することはなく、またターゲット自体も走行することで左右に振れ、同一直線上を走行することは希であるため、距離X0と進入角度θとは少なからず大きさを有することになる。
【0064】
図4の説明に戻って、ステップS18において、ターゲット判定部23は、レーダ装置1が検出したターゲット(例えば他車両VO)を衝突判定対象物とするか否かを、情報記憶部24に予め記憶されている判定マップを用いて判断する。以下、ステップS18においてターゲット判定部23が行う処理について具体的に説明すると、衝突判定対象物とするか否かは、上記ステップS17において算出された進入角度θと距離X0とが図9に示した判定マップのどのエリアであるか否かで判断される。
【0065】
例えば、右折するために停車している自車両VMの後方から直進してくる他車両VOをレーダ装置1が検出し、当該レーダ装置1が検出したターゲットについてレーダECU2の各部が進入角度θおよび距離X0が算出した結果、その値が、進入角度θ=−10deg、距離X0=2mであったと仮に想定する。この場合、図9の判定マップでは、「右折待ち評価エリア」に入ることになる。したがって、レーダ装置1が検出した他車両VOは、右折待ちで停車している自車両VMの左側を安全にすれ違うことができるターゲットである可能性が高く、当該ターゲットについては、衝突するか否かの判断の必要性は少なく、衝突判断は行わないものとする(ステップS18での判断が否定(NO)され、ステップS20に処理が進む)。
【0066】
一方、例えば、右折するために停車している自車両VMの後方から直進してく他車両VOをレーダ装置1が検出し、当該レーダ装置1が検出した他車両VOについてレーダECU2の各部が進入角度θおよび距離X0が算出した結果、その値が、進入角度θ=−3deg、距離X0=1mであったとする。この場合、図9の判定マップでは、「衝突評価エリア」に入ることになる。したがって、レーダ装置1が検出した他車両VOは、右折待ちで停車している自車両VMの左側を安全にすれ違うことができるターゲットである可能性は低い、つまり、他車両VOが自車両VMに向かって直進してきた場合、場合によっては自車両VMと他車両VOとが衝突する可能性があると考えられる。したがって、ターゲット判定部23は、ステップS18での処理を肯定し(YES)、次のステップS19に処理を進める。
【0067】
ステップS19において、ターゲット判定部23は、レーダ装置1が検出した、自車両VMと衝突する可能性があるとされたターゲットのターゲット情報iを車両制御ECU3に出力する。そして、出力されたターゲット情報iに基づき、車両制御ECU3は、自車両VMとターゲットとが衝突する可能性がある、或いは衝突は避けられないと判断した場合、当該車両制御ECU3は、安全装置4に指示し、上述したような安全措置を講じる。
【0068】
例えば、車両制御ECU3は、レーダ装置1が検出したターゲット(他車両VO)につき自車両VMに最も近い捕捉点のターゲット情報iをレーダECU2から取得して、当該ターゲット情報iに基づいて、ターゲットと自車両VMが衝突する可能性があるか否かを判断してもよい。また、車両制御ECU3は、レーダ装置1が検出したターゲット(他車両VO)につき、すべての捕捉点のターゲット情報i(図4に示す例では、捕捉点Tr1、Tr2、Tr3、Tr4についてのそれぞれのターゲット情報i)をレーダECU2から取得して、当該ターゲット情報iに基づいて、ターゲットと自車両VMが衝突する可能性があるか否かを総合的に判断してもよい。
【0069】
図4のステップS20において、ターゲット判定部23は、情報記憶部24に記憶されているターゲット情報iを消去し、次のステップS21に処理を進める。なおこのとき、ターゲット判定部23は、情報記憶部24に記憶されている全てのターゲット情報iを消去してもよい(この場合、情報記憶部24には、少なくともM個のターゲット情報iを上記ステップS14で1から得ることになる)。一方、ターゲット判定部23は、情報記憶部24に記憶されているターゲット情報iを、当該ターゲット情報記憶部24に記憶されているうちの最も過去のターゲット情報iから順次消去してもよい。
【0070】
ステップS21において、ターゲット判定部23は、処理を終了するか否かを判断する。例えば、ターゲット判定部23は、レーダECU2の電源がOFFになったとき(自車両VMのイグニッションスイッチがOFFされた場合等)処理を終了する。一方、ターゲット判定部23は、処理を継続すると判断した場合、上記ステップS11に戻って処理を繰り返す。
【0071】
以上説明したように、本実施形態によれば、レーダ装置1が検出したターゲットが自車両VMに対して衝突の可能性のあるコースに入っているか否かを予め判断することができるようになる。そして、例えば右折待ちで停車時の自車両VMの左側を安全にすれ違うことができる可能性が高いターゲット(例えば、他車両VO)を衝突判定対象物とはしない
とすることができる。したがって、例えば、右折待ち停車時の自車両VMの左側を安全にすれ違うことができる可能性が高いターゲットであっても衝突判定対象物と判断してしまうことによる不要な安全措置を防ぐことができるようになる。
【0072】
なお、上述した例では、自車両VMが右折待ちで停車している場合を想定し、レーダ装置1によって検出したターゲットについて上記判定マップを用い衝突判定対象物とするか否かを判断した。つまり、上述した例では自車両VMが右折待ちで停車している場合を想定し、当該自車両VMの左側を安全にすれ違うことができる他車両であったとしても、衝突判定対象物と判断され、不要な安全措置を講じてしまうことを防ぐため、自車両VMの左側を安全に通過していく可能性が高いターゲット(例えば、他車両VO)については衝突判定対象物としない態様を説明した。
【0073】
しかしながら、例えば、自車両VMが急ブレーキや急減速した後、右折待ちのため停車した場合を考えると、自車両VMの後方のターゲット(例えば、他車両VO)について上記判定マップを用いて、自車両VMの左側を安全に通過する可能性が高いターゲットであるか否かの判断が難しくなることがある。すなわち、上記判定マップは、すでに停車している自車両VMを想定し、当該自車両VMの側方を安全にすれ違うことのできる(または、衝突の危険性のある)ターゲットをサンプルとして上記判定マップが作成されていた。これに対して、他の一実施形態では、自車両VMの車速を考慮して上記判定マップを変形させることにより、自車両VMが走行している場合(自車両VMが速度を有する場合)でもレーダ装置1によって検出したターゲットについて衝突判定対象物であるか否かの判断を適切に行うことが判定マップを作成することが可能となる。
【0074】
以下、自車両VMの車速を考慮した上記判定マップについて説明する。図10は、自車両VMの車速を考慮した判定マップの一例を示した図である。なお、図10の説明では、一例として、自車両VMの車速(走行速度)Vが、
パターン1(図10の(a)に相当):0≦V≦Vlのとき(低速走行時)
パターン2(図10の(b)に相当):Vl<V<Vhのとき(中速走行時)
パターン3(図10の(c)に相当):V≧Vlのとき(高速走行時)
のときに用いられる判定マップについて説明する。
【0075】
具体的には、ターゲット判定部23は、自車両VMの現在の走行速度Vを取得し、自車両VMの車速Vが0≦V≦Vlであった場合、図10の(a)の判定マップを用い、自車両VMの車速VがVl<V<Vhであった場合、図10の(b)の判定マップを用い、自車両VMの車速VがV≧Vlであった場合、図10の(c)の判定マップを用いターゲットを衝突判定対象物とするか否かを判断することになる。
【0076】
ここで、例えば、レーダ装置1が自車両VM後方のターゲット(例えば他車両VO)を検出し、当該ターゲットについて、ターゲット予測部22が進入角度θおよび距離X0を算出した結果、当該進入角度θの値が角度Θであった場合を仮に想定して考える。なお、このときの自車両VMの車速Vが0≦V≦Vlであったとする。この場合、ターゲット判定部23は、角度Θで距離X0を図10の(a)の判定マップにプロットしたとき、どのエリアに入るか否かで、ターゲットを衝突判定対象物とするか否かを判断することになる。
【0077】
同様に、自車両VMの車速VがVl<V<Vhであったとすると、ターゲット判定部23は、角度Θで距離X0を図10の(b)の判定マップにプロットしたとき、どのエリアに入るか否かで、ターゲットを衝突判定対象物とするか否かを判断することになる。
【0078】
さらに、自車両VMの車速VがV≧Vlであったとすると、ターゲット判定部23は、角度Θで距離X0を図10の(c)の判定マップにプロットしたとき、どのエリアに入るか否かで、ターゲットを衝突判定対象物とするか否かを判断することになる。
【0079】
つまり、自車両VMの走行速度Vに応じて判定マップが異なることになる。言い換えると、自車両VMの車速Vが異なると、「衝突評価エリア」と判断される基準(「衝突評価エリア」との判断のされやすさ)が異なることになる。すなわち、図10の各判定マップにおいて、角度Θが同じ値であった場合の「衝突評価エリア」とするか否か基準となる距離X0の値の上限は、Ml_P(Θ)<Mm_P(Θ)<Mh_P(Θ)となっており、下限はMl_(Θ)>Mm_M(Θ)>Mh_M(Θ)となっている。
【0080】
このことを、図10の(a)と図10の(c)とを比較しながら、より具体的に説明する。上述したように、図10の(a)は、自車両VMが停車または低速走行している場合に用いることを想定した判定マップである。一方、図10の(c)は、自車両VMが高速走行(自車両VMが走行路面を法定速度で直線走行を想定)をしている場合に用いることを想定した判定マップである。そして、レーダ装置1が自車両VM後方のターゲット(例えば他車両VO)を検出し、当該ターゲットについて、ターゲット予測部22が進入角度θおよび距離X0を算出する。このとき、自車両VMの車速Vは異なるが、進入角度θおよび距離X0は車速Vが異なっても同じ値であったと仮に想定する。この場合、図10の(a)の判定マップより、図10の(c)の判定マップの方がより「衝突評価エリア」に入りやすくなることになる。
【0081】
一般的に、自車両VMの車速が大きい場合には、自車両VMとターゲットとが衝突したときの被害が大きくなると予想される。そのため、自車両VMが停車している場合と比べて、レーダ装置1が検出したターゲット(例えば、他車両VO)について、衝突判定対象物とする判断をより確実に行う必要がある。そのため、例えば、右折待ちで等で停車中(停車時または低速走行時)に自車両VMのレーダ装置1によって検出したターゲットに比べ、高速走行時に自車両VMのレーダ装置1によって検出したターゲットの方が、より「衝突評価エリア」であると判断されやすくなると、自車両VMとターゲットとの衝突判断を確実に行うことができるようになる。
【0082】
なお、図10の(b)は、上記パターン2のとき、つまり自車両VMが中速走行している場合に用いることを想定した判定マップである。つまり、レーダ装置1が検出したターゲットについて、衝突判定対象物とするか否かの判断は、図10の(a)の判定マップを用いるより、図10の(b)の判定マップを用いると厳しくなる(より「衝突評価エリア」に入りやすくなる)。一方で、図10の(c)の判定マップを用いるよりも緩やかである。
【0083】
つまり、図10の(b)の判定マップは、自車両VMの車速Vに応じて車速Vl〜車速Vhとの間で「衝突評価エリア」とするか否か基準となる距離X0の値の上限および下限を変更した判定マップである。(図11参照)。なお、Mm_P(Θ)およびMm_M(Θ)それぞれの値は、自車速VMに応じて、例えば以下の数1および数2で求めることができる。
【0084】
【数1】
【0085】
【数2】
【0086】
以上説明したように、図10の(a)に示した判定マップを用いれば、例えば、右折待ちで停車中の自車両VMの左側を安全に通過できる可能性の高いターゲットについては、衝突判断対象物とされなくなる。そして、結果として不要な安全措置を防ぐことができる。一方、図10の(c)に示した判定マップは、進入角度θにかかわらず、図10の(a)に示した判定マップに比べて「衝突評価エリア」と判断される距離X0の値の上限および下限が大きくなっている。したがって、図10の(c)に示した判定マップを用いれば、レーダ装置1が検出したターゲット(例えば、他車両VO)について、図10の(a)に示した判定マップに比べて、衝突判定対象物の判断される可能性が高くなることが考えられる。そして、結果として、レーダ装置1が検出したターゲットについて確実に衝突判断を行うことができるようになる。
【0087】
なお、上述した例では、自車両VMの車速に応じて「衝突評価エリア」と判断される距離X0の値を速度Vに応じて変化させた。しかしながら、自車両VMの車速にかかわらず、例えば、右折待ちで等で停車中の場合であっても、衝突判定対象物とする判断をより確実に行いたい場合は、図10の(c)を用いて判定してもよい。
【0088】
以上、本発明を詳細に説明してきたが、上述の説明はあらゆる点において本発明の一例にすぎず、その範囲を限定しようとするものではない。本発明の範囲を逸脱することなく種々の改良や変形を行うことができることは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0089】
本発明に係る物体検出装置は、レーダ装置が検出した物体について、衝突判断の対象物とする必要があるか否かの判断を適切に行うことのできる、車両に搭載される物体検出装置等に有用である。
【符号の説明】
【0090】
1…レーダ装置
2…レーダECU
21…ターゲット処理部
22…ターゲット予測部
23…ターゲット判定部
24…情報記憶部
3…車両制御ECU
4…安全装置
41…表示装置
42…警報装置
43…危険回避装置
44…衝突被害低減装置
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載され、当該車両の周辺の物体を検出する物体検出装置であって、
前記車両の周辺の物体を検出する検出手段と、
前記検出手段が検出した物体について、当該物体の進行方向、当該進行方向から算出される前記物体の存在位置、および前記進行方向を示す直線と前記車両の中心軸とがなす角である進入角度を示す車両情報を算出する処理手段と、
前記車両から車幅方向に沿った前記物体までの側方距離および前記進行方向を示す直線と前記車両の中心軸とがなす角の角度に基づいて予め設定された判定範囲を示す判定情報を記憶する記憶手段と、
前記処理手段が算出した前記車両情報を用いて、前記存在位置および前記進入角度が前記判定範囲内であるか否かに基づいて前記物体を前記車両と衝突の危険性判断の判断対象である衝突判定対象物とするか否かを判定する判定手段とを備える、物体検出装置。
【請求項2】
前記記憶手段に記憶されている前記判定範囲は、前記角度の値によって異なる、請求項1に記載の物体検出装置。
【請求項3】
前記記憶手段に記憶されている前記判定範囲は、前記角度の値の絶対値が大きくなるに従い狭く設定されている、請求項2に記載の物体検出装置。
【請求項4】
前記記憶手段に記憶されている前記判定範囲は、前記角度の値が0近辺で一定である、請求項2に記載の物体検出装置。
【請求項5】
前記処理手段は、前記車両の走行速度が大きくなるに従い、前記記憶手段に記憶されている前記判定範囲を広く変更する、請求項2に記載の物体検出装置。
【請求項6】
前記処理手段は、前記車両の走行速度が予め定められた値を超えた場合に、前記記憶手段に記憶されている前記判定範囲の値を前記角度の値にかかわらず一定に変更する、請求項5に記載の物体検出装置。
【請求項7】
前記判定手段によって前記物体は前記衝突判定対象物と判定にされた場合に、当該物体と前記車両とが衝突する危険性を判断する衝突判断手段を、さらに備える、請求項1に記載の物体検出装置。
【請求項1】
車両に搭載され、当該車両の周辺の物体を検出する物体検出装置であって、
前記車両の周辺の物体を検出する検出手段と、
前記検出手段が検出した物体について、当該物体の進行方向、当該進行方向から算出される前記物体の存在位置、および前記進行方向を示す直線と前記車両の中心軸とがなす角である進入角度を示す車両情報を算出する処理手段と、
前記車両から車幅方向に沿った前記物体までの側方距離および前記進行方向を示す直線と前記車両の中心軸とがなす角の角度に基づいて予め設定された判定範囲を示す判定情報を記憶する記憶手段と、
前記処理手段が算出した前記車両情報を用いて、前記存在位置および前記進入角度が前記判定範囲内であるか否かに基づいて前記物体を前記車両と衝突の危険性判断の判断対象である衝突判定対象物とするか否かを判定する判定手段とを備える、物体検出装置。
【請求項2】
前記記憶手段に記憶されている前記判定範囲は、前記角度の値によって異なる、請求項1に記載の物体検出装置。
【請求項3】
前記記憶手段に記憶されている前記判定範囲は、前記角度の値の絶対値が大きくなるに従い狭く設定されている、請求項2に記載の物体検出装置。
【請求項4】
前記記憶手段に記憶されている前記判定範囲は、前記角度の値が0近辺で一定である、請求項2に記載の物体検出装置。
【請求項5】
前記処理手段は、前記車両の走行速度が大きくなるに従い、前記記憶手段に記憶されている前記判定範囲を広く変更する、請求項2に記載の物体検出装置。
【請求項6】
前記処理手段は、前記車両の走行速度が予め定められた値を超えた場合に、前記記憶手段に記憶されている前記判定範囲の値を前記角度の値にかかわらず一定に変更する、請求項5に記載の物体検出装置。
【請求項7】
前記判定手段によって前記物体は前記衝突判定対象物と判定にされた場合に、当該物体と前記車両とが衝突する危険性を判断する衝突判断手段を、さらに備える、請求項1に記載の物体検出装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2011−34138(P2011−34138A)
【公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−176911(P2009−176911)
【出願日】平成21年7月29日(2009.7.29)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年7月29日(2009.7.29)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】
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