説明

物体検出装置

【課題】画像に含まれる動体の物体の画像部を検出する物体検出装置で、閾値を適切に設定する。
【解決手段】画像のフレームに複数の領域を設定し、設定された複数の領域のそれぞれ毎に、画像に関する時間的な変化の度合いを表す値を検出し、検出された値が例えば設定された閾値以上である場合に動体の物体の画像部を検出する。また、動体の物体の移動方向を複数の領域において決定し、決定された動体の物体の移動方向に基づいて、動体の物体が存在する位置に対して、動体の物体の移動方向の側とは反対の側の領域における閾値を高めるように制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、映像(画像)に映る動体の物体を検出する物体検出装置に関し、特に、映像に映る動体の物体を検出するために用いられる閾値を適切に設定する物体検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ネットワーク型監視画像配信装置(本明細書で、WEBエンコーダとも言う)による画像監視技術の付加機能の一つとして、前後の映像データ(例えば、時間的に前後するフレームのデータ)の変化を読み取って映像に変動があることを検知する動体検知機能がある。映像データの比較方法の例として、画像データの輝度成分の積算値を比較対象として使用する手法などがある。
【0003】
また、動体検知機能では、映像データの比較を行って動体を検知する領域(動体検知領域)と、動体検知の検出頻度を調整する閾値(動体検知閾値)の指定を行う。動体検知機能が動作する際には、予め設定を行った動体検知領域内で、現在の映像のデータと直前の映像のデータとを比較し、動体検知評価値を算出する。そして、動体検知評価値が予め設定してある動体検知閾値より高い場合には映像に変化があると判断して動体検知が通知され、動体検知評価値が動体検知閾値を下回った場合には映像に変化が無いと判断して動体検知が通知されない。
【0004】
ここで、動体検知評価値は映像の変化の度合いとして算出されるため、例えば、動体検知領域内で映像が変化する領域が広いほど、また、輝度等の評価に用いるパラメータの差が大きいほど、動体検知評価値は高くなり、動体検知通知がされやすくなる。また、動体検知評価値が同程度であっても、動体検知閾値が低ければ動体検知されやすく、動体検知閾値が高ければ動体検知されにくくなる。
【0005】
このため、動体検知閾値を低く設定すると、動体検知対象の検出に失敗する可能性は低減するが、動体検知対象以外の物体の僅かな変化も検知してしまう。一方、動体検知閾値を高く設定すれば、動体検知対象外の検知を抑制することができるが、本来検出すべき動体の検知に失敗する可能性も高くなる。
【0006】
そこで、動体検知対象のみを検知しそれ以外の映像変化は検知しないような適切な動体検知閾値の設定が必要となる。一方、動体検知評価値は撮影する対象によっても変動するため、一度適切に設定した動体検知閾値であっても、撮影環境に合わせてその都度調整を行わなければならない。従来、この調整作業は、映像と検知頻度を比較して手動で行われてきた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2004−222200号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ここで、従来では、動体検知閾値の変更は手動で行っていた。
複数の動体検知領域を設定することが可能である場合には、一般に動体検知閾値は動体検知領域毎に個別に設定されるため、動体検知領域の数が多い装置であるほど、動体検知閾値の設定にかかる手間が多くなってしまう。また、画角の変更や映像感度の変更を行うたびに調整が必要となるため、簡易に一括して動体検知閾値を設定する手法が要求されていた。
【0009】
また、動体検知機能に使用される輝度情報等は、照度や画角といった被写体などによる外的要因以外にも、自動ゲイン調整機能や蓄積動作といった画像調整機能などの装置の内的要因によっても変動する。このため、最終的な映像データに関する数値を正確に算出することは大変であり、このような映像データにおいて、動体の発生によって生じる映像変化時の動体検知評価値を予測し、適切な動体検知閾値を算出することは非常に難しかった。
【0010】
以上の理由から、動体検知閾値を自動で算出して設定する手法の開発が要求されていた。後述する実施例では、このような要求に対して、動体検知閾値を自動で算出して設定(調整)する構成が検討されている。
また、例えば、検知対象となる動体の移動方向が定められている場合に、動体検知閾値を適切に設定(調整)することが望まれる。
本発明は、このような従来の事情に鑑み為されたもので、映像(画像)に映る動体の物体を検出するために用いられる閾値(例えば、動体検知閾値)を適切に設定することができる物体検出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するため、本発明では、画像に含まれる動体の物体の画像部を検出する物体検出装置において、次のような構成とした。
すなわち、領域設定手段が、前記画像のフレームに複数の領域(例えば、動体検知領域)を設定する。物体検出手段が、前記領域設定手段により設定された複数の領域のそれぞれ毎に、画像に関する時間的な変化の度合いを表す値(例えば、動体検知評価値)を検出し、当該検出された値が設定された閾値(例えば、動体検知閾値)以上である場合(又は、設定された閾値を超える場合)に動体の物体の画像部を検出する(つまり、動体の物体の画像部があるとして検出する)。
また、移動方向決定手段が、前記動体の物体の移動方向を前記複数の領域において決定する。閾値制御手段が、前記移動方向決定手段により決定された前記動体の物体の移動方向に基づいて、前記物体検出手段により用いられる前記閾値について、前記動体の物体が存在する位置(前記動体の物体の画像部が存在する領域)に対して、前記動体の物体の移動方向の側(移動方向を進む側)とは反対の側(移動方向を戻る側)の領域における閾値を高めるように制御する。
【0012】
従って、映像(画像)に映る動体の物体を検出するために用いられる閾値(例えば、動体検知閾値)を適切に設定することができる。具体的には、検知対象となる動体の物体の移動方向が定められている場合に、その移動方向に適合したものを良好に検出できるように、閾値を適切に設定(調整)することができる。
【0013】
ここで、画像のフレームに複数の領域を設定する態様としては、種々な態様が用いられてもよい。
また、複数の領域としては、例えば、人による操作で設定されてもよく、或いは、装置に予め設定されてもよく、或いは、予め設定された規則等に従って装置により自動的に設定されてもよい。
また、画像に関する時間的な変化の度合いを表す値としては、種々なものが用いられてもよく、例えば、ある画像フレームの該当する領域における画像信号レベルの平均等(或いは、他の所定のレベル)と、時間的に次の画像フレームの該当する領域における画像信号レベルの平均等(或いは、他の所定のレベル)との差を表す値を用いることができる。
【0014】
また、動体の物体の移動方向を決定する態様としては、例えば、人による操作で決定されてもよく、或いは、装置に予め設定されて、それに基づいて決定されてもよく、或いは、予め設定された規則等に従って装置により自動的に決定されてもよい。
また、動体の物体の移動方向の情報としては、例えば、動体の物体が通過する領域についてその通過順序(必ずしも一意でなくてもよい)の情報を用いることができる。
また、ある領域の閾値を高めるように制御する態様としては、種々な態様が用いられてもよく、例えば、現在の閾値と比べて所定分だけ増加させた値を閾値として設定する態様や、或いは、予め定められた比較的高い値(現在の閾値より高くなる値)を閾値として設定する態様などを用いることができる。
【0015】
また、閾値制御手段は、動体の物体の移動方向の側とは反対の側の領域(例えば、1つの領域)における閾値を高める場合に、例えば、更に、他の領域における閾値を高めることを行ってもよく、一例として、移動方向の側の領域(例えば、1つの領域)以外の全ての領域における閾値を高めることができ、他の一例として、(移動方向の側の領域(例えば、1つの領域)を含む所定の2以上の領域)以外の全ての領域における閾値を高めることができ、また、他の種々な態様が用いられてもよい。
【発明の効果】
【0016】
以上説明したように、本発明に係る物体検出装置によると、映像(画像)に映る動体の物体を検出するために用いられる閾値を適切に設定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の一実施例に係る監視システムの構成例を示す図である。
【図2】動体検知回数による動体検知閾値の調整方法の手順の一例を示すフローチャートの図である。
【図3】動体検知評価値のサンプリングによる動体検知閾値の調整方法の手順の一例を示すフローチャートの図である。
【図4】動体検知評価値のサンプリング結果の一例を示す図である。
【図5】(a)〜(d)は動体検知閾値の選択的な変更処理の一例を説明するための図である。
【図6】検知番号指定方法の一つである動線入力方式について説明するための図である。
【図7】検知番号指定方法の一つである数値入力方式について説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明に係る実施例を図面を参照して説明する。
図1には、本発明の一実施例に係る監視システムの構成例を示してある。
本例の監視システムでは、監視装置側の機器として、WEBカメラ1、2や、カメラ3及びWEBエンコーダ4の組が、備えられており、また、クライアント側の機器として、クライアント機器11、12が備えられており、また、監視装置側のWEBカメラ1、2やWEBエンコーダ4及びクライアント側のクライアント機器11、12がネットワーク21に接続されている。
【0019】
ここで、各WEBカメラ1、2は、カメラの機能とWEBエンコーダの機能が一体化したものである。
また、各WEBカメラ1、2のカメラ機能やカメラ3は、監視対象となる画像(監視画像)を撮影する。
また、各クライアント機器11、12は、クライアントとなるパーソナルコンピュータ(PC)などを用いて構成されている。
本例では、WEBカメラ1、2やWEBエンコーダ4から、監視画像や音声(例えば、当該監視画像に伴う音声)などの監視データやWEBページがネットワーク21を介して配信される。
一方、ネットワーク21上にはクライアント機器11、12があり、ネットワーク21を介して監視データなどを受信してディスプレイやNTSC(National Television System Committee)モニタ等に表示する。
【0020】
ここで、本例のネットワーク対応の監視システムでは、監視装置は、例えば、遠隔地、多地点における侵入物体の監視や定点観測などにおけるカメラ1、2、3からの画像データ及び音声データ等の監視データを配信し、クライアントは、当該監視データを受信して、表示や保存する。なお、監視装置からの監視データを受信して保存(記録)する記録装置をネットワーク21に接続して設け、記録装置が監視装置からの監視データを保存してクライアント側からの要求などに応じてクライアント側へ送信するような構成を用いることもできる。
【0021】
本例では、各WEBカメラ1、2や、カメラ3とWEBエンコーダ4の組(例えば、そのうちのWEBエンコーダ4)に、撮影された監視画像を処理する機能が設けられており、特に、本例では、監視画像に映る動体の物体を検出(検知)する動体検知機能(物体検出装置の機能)が設けられている。
また、各クライアント機器11、12に、受信した監視画像を処理する機能を設けて、特に、本例では、監視画像に映る動体の物体を検出(検知)する動体検知機能(物体検出装置の機能)を設けることも可能である。
【0022】
本例の動体検知機能では、映像データの比較を行って動体を検知する領域(動体検知領域)と、動体検知の検出頻度を調整する閾値(動体検知閾値)が設定され、動体検知機能が動作する際には、予め設定を行った動体検知領域内で、現在の映像のデータと直前の映像のデータとを比較して、動体検知評価値(映像の時間的な変化の度合いを表す例えば予め定められたもの)を算出し、そして、動体検知評価値が予め設定してある動体検知閾値より高い場合には映像に変化があると判断して動体検知が通知され、動体検知評価値が動体検知閾値を下回った場合には映像に変化が無いと判断して動体検知が通知されない。
なお、動体検知の通知先としては、例えば、映像の監視を行うクライアント機器11、12など、種々なものが用いられてもよい。
【0023】
ここで、動体検知領域や動体検知閾値は、例えば、人による操作で設定することや、或いは、装置(機器)に予め設定することや、或いは、装置(機器)に予め設定された処理手順で設定や変更(調整)することが可能である。本例の動体検知機能では、動体検知閾値を(機器により自動的に)調整する機能を有している。
また、映像(画像)に映る動体は、画像上ではその画像に含まれるその動体の画像部として発生し、画像処理においては、その動体の検出等としては、(実際のものの検出等ではなく)その動体の画像部の検出等が行われる。
【実施例1】
【0024】
第1実施例を説明する。
図2には、動体検知回数による動体検知閾値の調整方法の手順の一例を示してある。この調整処理は、動体検知機能により自動的に行われる。
本例では、画像の枠(フレーム)に対して複数の動体検知領域が設定され、動体検知閾値が動体検知領域毎に個別に設定され、そして、各動体検知領域毎に本処理が行われる。
【0025】
動体検知閾値の調整処理が開始されると(ステップS1)、まず、検知対象とする動体が発生していない状態(オフセット状態)での映像取得を一定時間行う(ステップS2)。
このオフセット状態での映像取得時間としては、任意の値を設定することができるようにしてあり、本例では、この映像取得時間をT(Tは0より大きい値)秒として説明する。
この映像取得時間(本例では、T秒間)に取得した画像のうち、各動体検知領域で動体を検知した回数を記録する(ステップS2)。
【0026】
本例では、動体検知閾値の上限値ThMaと下限値ThMiを変数として用意する。これらの上限値ThMaと下限値ThMiの初期値には、それぞれ、動体検知閾値の最大値と最小値を代入する。なお、動体検知閾値thの初期値としては、例えば、任意に設定されてもよい。
そして、上記した映像取得時間(本例では、T秒間)に取得した画像について、各動体検知領域において動体を検知した回数が一定回(本例では、0以上の整数回であるK回)以下であるか否かを判定する(ステップS3)。
【0027】
この結果、動体検知回数がK回以下であると判定された場合には、動体検知閾値の上限値ThMaに(現在の)動体検知閾値thを代入し(ステップS4)、この動体検知閾値thと動体検知閾値の下限値ThMiとの平均値{(ThMi+th)/2}を次の動体検知閾値thとして用いる(ステップS5)。
一方、動体検知回数がK回より多いと判定された場合には、動体検知閾値の下限値ThMiに(現在の)動体検知閾値thを代入し(ステップS6)、この動体検知閾値thと動体検知閾値の上限値ThMaとの平均値{(ThMa+th)/2}を次の動体検知閾値thとして用いる(ステップS7)。
【0028】
上記したオフセット状態での映像取得からここまでの処理(ステップS2〜ステップS7の処理)を1セットとし、これを複数セット実行する。具体的には、映像取得回数が規定の回数(1以上の整数回数)となったか否かを判定し(ステップS8)、映像取得回数が規定の回数未満である場合にはステップS2の処理へ戻り、映像取得回数が規定の回数となった場合にはステップS9の処理へ移行する。
【0029】
全セット(規定の回数の映像取得)が終了した時点で、動体検知閾値の上限値ThMaを正式な動体検知閾値thとして再設定し(ステップS9)、動体検知閾値の調整処理を終了する(ステップS10)。これにより、セット回数を重ねるごとに動体検知閾値の精度を上げることができる。
【0030】
なお、本手法は、映像を受信するクライアント機器11、12においても実行可能であるため、ネットワーク監視機器(監視装置側の機器1〜4)に処理の負荷をかけずに行うことも可能である。
【実施例2】
【0031】
第2実施例を説明する。
図3には、動体検知評価値のサンプリングによる動体検知閾値の調整方法の手順の一例を示してある。この調整処理は、動体検知機能により自動的に行われる。
本例では、画像の枠(フレーム)に対して複数の動体検知領域が設定され、動体検知閾値が動体検知領域毎に個別に設定され、そして、各動体検知領域毎に本処理が行われる。
【0032】
動体検知閾値の調整処理が開始されると(ステップS21)、まず、検知対象とする動体が発生していない状態(オフセット状態)での映像取得を一定時間行う(ステップS22)。
このオフセット状態での映像取得時間としては、任意の値を設定することができるようにしてあり、本例では、この映像取得時間をT(Tは0より大きい値)秒として説明する。
また、オフセット状態で映像を取得した際に、各動体検知領域で動体検知評価値をサンプリングして取得する(ステップS22)。
【0033】
図4には、動体検知評価値のサンプリング結果の一例を示してある。
図4に示されるサンプリング結果のグラフでは、横軸に動体検知評価値を表しており、縦軸に各動体検知評価値の取得回数を表している。
本例では、サンプリング結果の内、規定の割合(例えば、0以上100未満であるq%)の動体検知評価値を上回る動体検知閾値(本例では、図4に示されるように、この規定の割合(q%)の境界となる値P)を、次の動体検知閾値thとして設定し(ステップS23)、動体検知閾値の調整処理を終了する(ステップS24)。ここで、qの値は任意の値とすることができる。
【0034】
なお、本手法では、調整時間が短く済み、精度も高いが、例えば、サンプリングデータをネットワーク監視機器(監視装置側の機器1〜4)などの内で保持して処理するため、ネットワーク監視機器などのメモリや処理能力に依存する。
【実施例3】
【0035】
第3実施例を説明する。
図5(a)〜(d)を参照して、動体検知閾値の選択的な変更処理の一例を説明する。
まず、動体検知を行う対象が移動する方向を指定する。移動方向の指定の方法の例として、2つの方法を挙げる。
【0036】
図6を参照して、動体の移動方向を設定する第1の方法として、検知番号指定方法の一つである動線入力方式について説明する。
図6には、画像の1フレームに設けられた複数の動体検知領域Z1が示されている。本例では、1フレームの縦方向と横方向にそれぞれ所定の数(本例では、縦と横のいずれについても8個)ずつの領域に区切られて、複数の四角い領域が形成されている。
【0037】
本例では、人によるマウスなどの操作で、映像上でマウスなどの指定点をドラッグすることで線を引き、その線の下にある動体検知領域を順に指定する。具体的には、線の始点がある動体検知領域を検知番号0番のエリア(領域)とし、それ以降で、この線が通過する動体検知領域を直線の終点まで順に、検知番号1番のエリア、検知番号2番のエリア、・・・、検知番号N番のエリアと指定していく(本例では、Nは1以上の整数)。本例では、N番を検知番号の最後の番号として扱う。
なお、本手法で引く線としては、必ずしも直線である必要はなく、1つの動体検知領域を複数回通過しなければ、複雑な曲線が使用されても構わない。
【0038】
図7を参照して、動体の移動方向を設定する第2の方法として、検知番号指定方法の他の一つである数値入力方式について説明する。
図7には、画像の1フレームに設けられた複数の動体検知領域Z2が示されている。本例では、1フレームの縦方向と横方向にそれぞれ所定の数(本例では、縦と横のいずれについても8個)ずつの領域に区切られて、複数の四角い領域が形成されている。
【0039】
本例では、人によるキーやマウスなどの操作で、動体検知領域に直接的に検知番号を指定する。これにより、検知番号0番のエリアから検知番号N(本例では、Nは1以上の整数)番のエリアが指定される。本例では、N番を検知番号の最後の番号として扱う。
【0040】
ここで、上記したいずれの方法においても、動体検知領域に検知番号を設定するに当たり、検知の順を問わない領域内では複数の動体検知領域に同一の検知番号が振られても構わない。
本例では、複数の動体検知領域に検知番号が指定されると、検知番号が増加する順番で動体検知が発生した場合のみを有効な動体検知とみなす。
なお、図6や図7では、人による操作で動体の移動方向を指定して設定する方法を示したが、他の構成例として、機器に初期的に動体の移動方向(動体検知領域に対する検知番号)が設定されてもよい。
【0041】
次に、図5(a)〜(d)を用いて説明する。
図5(a)に示されるように、検知番号n(nは1以上でN未満の整数)番エリアで動体を検知し、検知番号(n−1)番エリアで動体を検知していなかった場合には、図5(b)に示されるように、検知番号(n−1)番エリアの動体検知閾値を高く設定する(本例では、この動体検知閾値を上げる)。
【0042】
次の映像データ処理では、検知番号(n−1)番エリアの動体検知閾値が高くなっているため、検知番号(n−1)番エリアでは動体検知が抑制される。一方、検知番号n番エリアと検知番号(n+1)番エリアでは、動体検知閾値に変更がないため、図5(c)に示されるように、通常通りに動体が検知される。
【0043】
これにより、検知番号n番エリアの次に検知番号(n−1)番エリアで検知される動きを行う動体の検知頻度を抑制することができる。他の検知番号が設定されたエリアに対しても同様な処理を行うことで、検知番号の順番に沿わない動きの検知を抑制し、図5(d)に示されるように、検知番号の順番に沿った動体のみを選択的に検知することができる。
図5(d)の例では、検知番号(n+1)番エリアで動体が検知され、検知番号(n−1)番エリアの動体検知閾値を元の値に戻し、検知番号n番エリアの動体検知閾値を上げている。
【0044】
また、本例では、全エリアの検知頻度低下を抑えるため、検知番号0番のエリアと検知番号N番のエリアについては、常に、動体検知閾値を変更しないものとする。
また、不連続な2箇所以上のエリアで同時に動体検知が発生し、それぞれの検知番号がnと(n+2)という関係であった場合には、検知番号(n+1)番エリアについては、検知番号(n+2)番エリアの1つ前の動体検知領域であるが、検知番号n番エリアの進行方向側の動体検知エリアであるため、動体検知閾値を上げる処理は行わないようにする。これにより、検知番号n番エリアで発生した動体検知に係る動体が検知番号(n+1)番エリアへ侵入した際にも、動体検知頻度が下がることがない。
本例の方法により、移動体(動体)の移動方向に合わせて選択的に動体検知発生頻度を変えることが可能となる。
【0045】
ここで、図5(b)に示されるように特定の動体検知領域の動体検知閾値を上げる処理としては、種々な処理が用いられてもよく、例えば、予め設定された態様で、動体検知閾値を高くなる方向で(現在の値と比べて)所定の値だけ変化させることが行われる。また、動体検知閾値を高くなる方向で変化させるという条件において、例えば、図2に示されるような処理や、或いは、図3に示されるような処理を利用することも可能である。
【0046】
なお、本例では、複数の動体検知領域のそれぞれに異なる動体検知閾値が設定されてもよいが、一例として、複数の動体検知領域のそれぞれに同一の値Aの動体検知閾値を設定しておき、検知番号n番エリアで動体を検知したことに応じて、検知番号(n−1)番エリアの動体検知閾値を予め設定された比較的高い値B(B>A)に設定し、他のエリアには値Aの動体検知閾値を設定するようなことができる。他の一例として、複数の動体検知領域のそれぞれに同一の値Aの動体検知閾値を設定しておき、検知番号n番エリアで動体を検知したことに応じて、検知番号(n+1)番エリアには値Aの動体検知閾値を設定し、それ以外のエリアの動体検知閾値を予め設定された比較的高い値B(B>A)に設定するようなことができる。更に他の一例として、複数の動体検知領域のそれぞれに同一の値Aの動体検知閾値を設定しておき、検知番号n番エリアで動体を検知したことに応じて、{検知番号n番エリアと検知番号(n+1)番エリア}には値Aの動体検知閾値を設定し、それ以外のエリアの動体検知閾値を予め設定された比較的高い値B(B>A)に設定するようなことができる。また、これらの例において、「検知番号n番エリアで動体を検知したことに応じて」という条件の代わりに、「検知番号n番エリアで動体を検知し且つ検知番号(n−1)番エリアで動体を検知しなかったことに応じて」という条件や、「検知番号n番エリアで動体を検知し且つ{検知番号(n−2)番エリア及び検知番号(n−1)番エリア}で動体を検知しなかったことに応じて」という条件などのように、他の条件を用いることもできる。また、このような動体検知閾値の調整は、必ずしもフレームに設けられた複数の動体検知領域の全てについて行われなくてもよく、例えば、検知番号が振られた動体検知領域のみについて行われてもよい。
なお、本例では、動体の移動方向について、例えば、自動で設定でき、また、一括して簡易に設定できる。
【0047】
(実施例のまとめ)
(構成例1) ネットワーク21を用いて監視画像や音声等の監視データを配信するネットワーク型監視画像配信装置などにより、映像の変化を検知して通知する動体検知機能において、動体が発生していない状態(オフセット状態)での動体検知回数を記録して、動体を検知する頻度を調整する動体検知閾値を自動で適切な値に調整する。
【0048】
(構成例2) ネットワーク21を用いて監視画像や音声等の監視データを配信するネットワーク型監視画像配信装置などにより、映像の変化を検知して通知する動体検知機能において、動体が発生していない状態(オフセット状態)での動体検知評価値をサンプリングして評価することで、動体を検知する頻度を調整する動体検知閾値を自動で適切な値に調整する。
【0049】
(構成例3) 動体を検知する頻度を調整する動体検知閾値を自動で変更し、特定の方向へ移動する動体を選択的に検知するようにする。なお、上記した(構成例1)或いは上記した(構成例2)が利用されてもよい。
(構成例4) 上記した(構成例1)〜上記した(構成例3)のいずれかを利用したネットワーク型監視画像配信装置或いはネットワーク型監視画像表示ソフトウエアなどを実施することができる。
【0050】
以上のように、本例では、動体検知の対象がいない状態(オフセット状態)での動体検知に関する情報(例えば、動体検知発生の回数や、動体検知評価値)のサンプリングを行い、その際に動体検知閾値を自動で変動させることで、例えば、動体検知対象がいない際には動体検知が発生しない(又は、動体検知の発生頻度が小さい)ような適切な動体検知閾値を自動的に算出することができる。
また、このような動体検知閾値の自動変更機能を利用して、動体検知閾値を動的に変更することで、動体検知の発生を部分的に抑制することができる。
【0051】
従って、本例では、動体検知閾値の設定を、ネットワーク監視機器(監視装置側の機器1〜4)側などで自動で行うことができるため、機器の設置や増設における調整作業の時間的・労力的な削減を見込むことができる。また、冶具や計測器、専門的な知識がなくとも、動体検知閾値の調整を行うことができるため、使用の際の簡易性、利便性が増す。
【0052】
また、本例では、動体検知閾値の動的変動を部分的(一部の動体検知領域)に行うことで、映像の一部分のみ動体検知閾値を上げ、動体検知の頻度を抑制するといった利用法も可能となる。この手法を利用して、一方向に移動する動体について、動体検知が発生した動体検知領域の一方の側(移動方向とは反対(逆)の側)の動体検知閾値を上昇させることで、当該動体に対する動体検知頻度を抑制することができる。
【0053】
一構成例として、カメラで撮影(撮像)した監視画像から侵入者等の動体を検出するための動体検知評価値(例えば、画像信号レベルの変化量)の閾値を、動体の進行方向に応じて自動的に設定や調整し、具体的には、動体の進行方向以外の動体検知領域の閾値を上げる。
【0054】
なお、図5〜図7を参照して説明した処理を実行する機器(物体検出装置の一例)では、複数の領域(本例では、動体検知領域)を設定する領域設定手段の機能や、各領域毎に所定の評価値(本例では、動体検知評価値)と閾値(本例では、動体検知閾値)を比較して動体の物体を検出する物体検出手段の機能や、例えば図6や図7に示されるように動体の物体の移動方向を決定する移動方向決定手段の機能や、例えば図5(a)〜(d)に示されるように動体の物体が現在存在する領域やその移動方向に基づいて特定の領域の閾値を選択的に調整する閾値制御手段の機能を有している。
【0055】
ここで、本発明に係るシステムや装置などの構成としては、必ずしも以上に示したものに限られず、種々な構成が用いられてもよい。また、本発明は、例えば、本発明に係る処理を実行する方法或いは方式や、このような方法や方式を実現するためのプログラムや当該プログラムを記録する記録媒体などとして提供することも可能であり、また、種々なシステムや装置として提供することも可能である。
また、本発明の適用分野としては、必ずしも以上に示したものに限られず、本発明は、種々な分野に適用することが可能なものである。
また、本発明に係るシステムや装置などにおいて行われる各種の処理としては、例えばプロセッサやメモリ等を備えたハードウエア資源においてプロセッサがROM(Read Only Memory)に格納された制御プログラムを実行することにより制御される構成が用いられてもよく、また、例えば当該処理を実行するための各機能手段が独立したハードウエア回路として構成されてもよい。
また、本発明は上記の制御プログラムを格納したフロッピー(登録商標)ディスクやCD(Compact Disc)−ROM等のコンピュータにより読み取り可能な記録媒体や当該プログラム(自体)として把握することもでき、当該制御プログラムを当該記録媒体からコンピュータに入力してプロセッサに実行させることにより、本発明に係る処理を遂行させることができる。
【符号の説明】
【0056】
1、2・・WEBカメラ、 3・・カメラ、 4・・WEBエンコーダ、 11、12・・クライアント機器、 21・・ネットワーク、 Z1、Z2・・動体検知領域、

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像に含まれる動体の物体の画像部を検出する物体検出装置において、
前記画像のフレームに複数の領域を設定する領域設定手段と、
前記領域設定手段により設定された複数の領域のそれぞれ毎に、画像に関する時間的な変化の度合いを表す値を検出し、当該検出された値が設定された閾値以上である場合又は設定された閾値を超える場合に動体の物体の画像部を検出する物体検出手段と、
前記動体の物体の移動方向を前記複数の領域において決定する移動方向決定手段と、
前記移動方向決定手段により決定された前記動体の物体の移動方向に基づいて、前記物体検出手段により用いられる前記閾値について、前記動体の物体が存在する位置に対して、前記動体の物体の移動方向の側とは反対の側の領域における閾値を高めるように制御する閾値制御手段と、
を備えたことを特徴とする物体検出装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2012−5043(P2012−5043A)
【公開日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−140634(P2010−140634)
【出願日】平成22年6月21日(2010.6.21)
【出願人】(000001122)株式会社日立国際電気 (5,007)
【Fターム(参考)】