説明

物体検知装置

【課題】 FM・CW型の物体検知装置でのターゲットのミスペアリングを防止し、正しいペアリングのデータを遅滞なく出力して制御の応答性を高める。
【解決手段】 ピーク周波数候補算出手段S44が、任意のペアリング候補に対応する今回相対関係に基づいて前回処理サイクルにおける上昇側ピーク周波数あるいは下降側ピーク周波数をピーク周波数候補として算出すると、今回ペアリング候補確定手段S48が、ピーク周波数候補算出手段S44により算出されたピーク周波数候補と記憶手段に記憶されている前回処理サイクルのピーク周波数との差が所定値未満の場合に、今回相対関係の算出に用いられたペアリング候補を正しいペアリングの組み合わせとして確定する。このように、今回相対関係の正誤を前回相対関係に遡って検証するので、正しい今回相対関係を速やかに確定させて制御の応答性を高めることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、FM・CW波を用いて物体の検知を行なう物体検知装置に関する。
【背景技術】
【0002】
周波数を時間とともに三角波状に増減させたFM・CW波を送信するとともに物体からの反射波を受信し、送信信号および受信信号を混合して得られるビート信号を周波数分析することにより得た上昇側および下降側の反射ピークの周波数から物体までの距離および相対速を得るように構成された物体検知装置が、下記特許文献1により公知である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3305624号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、FM・CW型のレーダー装置で物体の距離および相対速を算出するには、同じ物体からの反射波の相互に対応するアップビート信号の反射ピークとダウンビート信号の反射ピークとを組み合わせることが必要である(これをペアリングという)。
【0005】
従来はペアリングにより確定したターゲットの自車に対する今回の位置および相対速を算出し、今回の位置および相対速から次回の位置および相対速を推定し、この推定した次回の位置および相対速と、所定時間の経過後の今回におけるペアリングで実際に算出された位置および相対速とを比較し、その誤差が所定値以内であれば、前回検知されたターゲットと今回検知されたターゲットが同一物であるとして引き継ぎが行われる。
【0006】
前記引き継ぎが行われなかった場合、つまりターゲットをロストした場合、そのロストしたターゲットが依然として検知されていると見なすことで該ターゲットのデータを所定回数継続して出力し、所定回数が経過しても引き継ぎができない場合に、初めてターゲットをロストしたと判断して該ターゲットのデータの出力を中止する。また新たなターゲットが検知された場合には、それがノイズである可能性を考慮し、そのターゲットが次回に引き継がれた場合に、新たなターゲットとしてデータを出力するようになっている。
【0007】
発明の詳細な説明において、図5〜図7に基づいて後から詳述するように、継続して検知されていた2台の先行車が一旦ミスペアリングされた後に再び正しくペアリングされた場合、前回ミスペアリングされた先行車のデータはロストしたものと見なされて外挿処理され、所定サイクルが経過して外挿処理が終了するまで出力され続けるため、暫くの間は間違ったターゲットデータによる制御が行われる。また新たに正しくペアリングされた先行車のデータが前回ミスペアリングされた先行車のデータに対して引き継ぎされないため、新たに正しくペアリングされた先行車が新規ターゲットとなって直ちにデータが出力されず、そのために制御の応答性が低下してスムーズな追従走行制御が妨げられる可能性がある。
【0008】
本発明は前述の事情に鑑みてなされたもので、FM・CW型の物体検知装置でのターゲットのミスペアリングを防止し、正しいペアリングのデータを遅滞なく出力して制御の応答性を高めることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、請求項1に記載された発明によれば、複数の検知エリアに対してFM・CW波を送信するとともに送信したFM・CW波の物体からの反射波を受信する送受信手段と、前記送受信手段の送信波および受信波からビート信号を生成するとともに該ビート信号を周波数分析する周波数分析手段と、前記周波数分析手段による周波数分析の結果に基づいて上昇側ピーク周波数および下降側ピーク周波数を求めるピーク周波数検出手段と、前記ピーク周波数検出手段で得られた上昇側ピーク周波数および下降側ピーク周波数に基づいて物体との距離および相対速よりなる相対関係を所定時間毎に算出し、今回算出された相対関係および前回算出された相対関係に基づいて同一の物体が所定回数以上継続して検知されていると判断された場合には前記相対関係を物体情報として出力する物体情報出力手段とを備える物体検知装置において、前記ピーク周波数検出手段で得られたピーク周波数を記憶する記憶手段と、複数の物体からの反射波により複数の上昇側ピーク周波数および複数の下降側ピーク周波数が前記ピーク周波数検出手段により得られた場合には、上昇側ピーク周波数および下降側ピーク周波数の全ての組み合わせについて相対関係を算出するとともに、前記ピーク周波数の組み合わせ情報および該組み合わせにより算出された相対関係をペアリング候補情報として記憶するペアリング手段と、任意のペアリング候補に対応する今回相対関係に基づいて前回処理サイクルにおける上昇側ピーク周波数あるいは下降側ピーク周波数をピーク周波数候補として算出するピーク周波数候補算出手段と、前記ピーク周波数候補算出手段により算出されたピーク周波数候補と前記記憶手段に記憶されているピーク周波数との差が所定値未満の場合に、今回相対関係の算出に用いられたペアリング候補を正しいペアリングの組み合わせとして確定する今回ペアリング候補確定手段とを備えることを特徴とする物体検知装置が提案される。
【0010】
また請求項2に記載された発明によれば、請求項1の構成に加えて、前記今回ペアリング候補確定手段は、前記ピーク周波数候補算出手段により算出されたピーク周波数候補と前記記憶手段に記憶されているピーク周波数との差が所定値未満となるペアリング候補が複数ある場合には、周波数差が最も小さい値となるペアリング候補を正しいペアリング組み合わせとして確定することを特徴とする物体検知装置が提案される。
【0011】
また請求項3に記載された発明によれば、請求項1または請求項2の構成に加えて、前記今回ペアリング候補確定手段は、前記ピーク周波数候補算出手段により算出された上昇側ピーク周波数候補と前記記憶手段に記憶されている上昇側ピーク周波数との差が所定値未満の場合、あるいは前記ピーク周波数候補算出手段により算出された下降側ピーク周波数候補と前記記憶手段に記憶されている下降側ピーク周波数との差が所定値未満の場合には、今回相対関係の算出に用いられたペアリング候補を正しいペアリング組み合わせとして確定することを特徴とする物体検知装置が提案される。
【0012】
尚、実施の形態の前回アップグループメモリM7Aおよび前回ダウングループメモリM7Bは本発明の記憶手段に対応し、実施の形態の今回出力メモリM14は本発明の物体情報出力手段に対応し、実施の形態のステップS7の処理を実現する手段は本発明のペアリング手段に対応し、実施の形態のステップS44の処理を実現する手段は本発明のピーク周波数候補算出手段に対応し、実施の形態のステップS48の処理を実現する手段は本発明の今回ペアリング候補確定手段に対応する。
【発明の効果】
【0013】
請求項1の構成によれば、ピーク周波数検出手段により複数の上昇側ピーク周波数および複数の下降側ピーク周波数が得られると、そのピーク周波数は記憶手段に記憶され、ペアリング手段が、上昇側ピーク周波数および下降側ピーク周波数の全ての組み合わせについて相対関係を算出するとともに、前記ピーク周波数の組み合わせ情報および該組み合わせにより算出された相対関係をペアリング候補情報として記憶する。ピーク周波数候補算出手段が、任意のペアリング候補に対応する今回相対関係に基づいて前回処理サイクルにおける上昇側ピーク周波数あるいは下降側ピーク周波数をピーク周波数候補として算出すると、今回ペアリング候補確定手段が、ピーク周波数候補算出手段により算出されたピーク周波数候補と記憶手段に記憶されているピーク周波数との差が所定値未満の場合に、今回相対関係の算出に用いられたペアリング候補を正しいペアリングの組み合わせとして確定する。このように、今回相対関係の正誤を前回相対関係に遡って検証するので、正しい今回相対関係を速やかに確定させて制御の応答性を高めることができる。
【0014】
また請求項2の構成によれば、今回ペアリング候補確定手段は、ピーク周波数候補算出手段により算出されたピーク周波数候補と記憶手段に記憶されているピーク周波数との差が所定値未満となるペアリング候補が複数ある場合には、周波数差が最も小さい値となるペアリング候補を正しいペアリング組み合わせとして確定するので、正しい今回相対関係を精度良く確定させることができる。
【0015】
また請求項3の構成によれば、今回ペアリング候補確定手段が、ピーク周波数候補算出手段により算出された上昇側ピーク周波数候補と記憶手段に記憶されている上昇側ピーク周波数との差が所定値未満の場合、あるいはピーク周波数候補算出手段により算出された下降側ピーク周波数候補と記憶手段に記憶されている下降側ピーク周波数との差が所定値未満の場合には、今回相対関係の算出に用いられたペアリング候補を正しいペアリング組み合わせとして確定するので、正しい今回相対関係を精度良く確定させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】FM・CW型レーダー装置を用いた車両制御装置のブロック図。
【図2】レーダー装置の送受信手段および周波数分析手段の構成を示す図。
【図3】物体が接近しているときの送受信波の波形およびピーク周波数を示す図。
【図4】ピーク周波数検出手段で検出されたピーク周波数を示す図。
【図5】Time1における作用説明図。
【図6】Time2における作用説明図。
【図7】Time3における作用説明図。
【図8】メインフローのフローチャート。
【図9】メインフローのステップS7のサブフローのフローチャート。
【図10】メインフローのステップS8のサブフローのフローチャート。
【図11】図10のステップS48のサブフローのフローチャート。
【図12】メインフローのステップS9のサブフローのフローチャート。
【図13】メインフローのステップS10のサブフローのフローチャート。
【図14】メインフローのステップS11のサブフローのフローチャート。
【図15】メインフローのステップS12のサブフローのフローチャート。
【図16】ペアリング候補算出の作用説明図。
【図17】今回ペアリング決定の作用説明図(その1)。
【図18】今回ペアリング決定の作用説明図(その2)。
【図19】今回ペアリング決定の作用説明図(その3)。
【図20】本発明の効果の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
【0018】
図1〜図20は本発明の実施の形態を示すものであり、図1はFM・CW型レーダー装置を用いた車両制御装置のブロック図、図2はレーダー装置の送受信手段および周波数分析手段の構成を示す図、図3は物体が接近しているときの送受信波の波形およびピーク周波数を示す図、図4はピーク周波数検出手段で検出されたピーク周波数を示す図、図5はTime1における作用説明図、図6はTime2における作用説明図、図7はTime3における作用説明図、図8はメインフローのフローチャート、図9はメインフローのステップS7のサブフローのフローチャート、図10はメインフローのステップS8のサブフローのフローチャート、図11は図10のステップS48のサブフローのフローチャート、図12はメインフローのステップS9のサブフローのフローチャート、図13はメインフローのステップS10のサブフローのフローチャート、図14はメインフローのステップS11のサブフローのフローチャート、図15はメインフローのステップS12のサブフローのフローチャート、図16はペアリング候補算出の作用説明図、図17は今回ペアリング決定の作用説明図(その1)、図18は今回ペアリング決定の作用説明図(その2)、図19は今回ペアリング決定の作用説明図(その3)、図20は本発明の効果の説明図である。
【0019】
図1および図2に示すように、FM・CW型レーダー装置Rは、送受信手段M1と、周波数分析手段M3と、今回アップビートメモリM4Aと、今回ダウンビートメモリM4Bと、アップグルーピング手段M5Aと、ダウングルーピング手段M5Bと、今回アップグループメモリM6Aと、今回ダウングループメモリM6Bと、前回アップグループメモリM7Aと、前回ダウングループメモリM7Bと、今回ペアリング確定手段M8と、今回検知メモリM9と、グループピーク算出手段M10と、今回出力判定手段M13と、今回出力メモリM14とを備える。周波数分析手段M3には車速センサやヨーレートセンサよりなる車両状態判定手段M2が接続され、今回出力メモリM14には自動制動装置等の車両制御手段M15が接続される。
【0020】
今回アップビートメモリM4A、今回ダウンビートメモリM4B、アップグルーピング手段M5A、ダウングルーピング手段M5B、今回アップグループメモリM6A、今回ダウングループメモリM6B、前回アップグループメモリM7Aおよび前回ダウングループメモリM7Bは、本発明のピーク周波数検出手段M16を構成し、今回出力メモリM14は本発明の物体情報出力手段を構成する。
【0021】
次に、図2〜図4に基づいて、FM・CW型レーダー装置Rの送受信手段M1および周波数分析手段M3について説明する。
【0022】
図2に示すように、送受信手段M1は、タイミング信号生成回路1、FM変調制御回路2、発振器3、アンプ4、サーキュレータ5および送受信アンテナ6で構成される。タイミング信号生成回路1から入力されるタイミング信号に基づいて、FM変調制御回路2により発振器3の発振作動が変調制御され、図3(A)に実線で示すように周波数が三角波状に変調され、発振器3からの変調された送波信号がアンプ4およびサーキュレータ5を介して送受信アンテナ6に入力され、送受信アンテナ6からFM・CW波が送信される。送受信アンテナ6の前方に先行車等の物体が存在すると、該物体で反射された反射波が送受信アンテナ6で受信される。この反射波は、例えば、前方の物体が接近してくる場合には、図3(A)に破線で示すように出現するものであり、送信波が直線的に増加する上昇側では送信波よりも低い周波数で送信波から遅れて出現し、また送信波が直線的に減少する下降側では送信波よりも高い周波数で送信波から遅れて出現する。
【0023】
周波数分析手段M3は、ミキサ7、アンプ8、アンプ9およびA/Dコンバータ10で構成される。送受信アンテナ6で受信した受信波はサーキュレータ5を介してミキサ7に入力され、またミキサ7にはサーキュレータ5からの受信波の他に発振器3から出力される送波信号から分配された送波信号がアンプ8を介して入力される。ミキサ7では送信波および受信波が混合されることにより、図3(B)に示すように、送信波が直線的に増加する上昇側でピーク周波数fupが生成され、また送信波が直線的に減少する下降側でピーク周波数fdnを有するビート信号が生成される。前記ミキサ7で得られたビート信号はアンプ9で必要なレベルの振幅に増幅された後に、A/Dコンバータ10でA/D変換される。
【0024】
一般的に、送受信手段M1が送信する複数のビームに対応して複数の上昇側ピーク周波数fupおよび複数の下降側ピーク周波数fdnが生成されるため、それらの上昇側ピーク周波数fupのうち、周波数および角度が相互に近いデータ同士をアップグルーピング手段M5Aでまとめたものを、新たに上昇側ピーク周波数fupとしてピーク周波数検出手段M16の今回アップグループメモリM6Aに記憶し(図4(A)参照)、それらの下降側ピーク周波数fdnのうち、周波数および角度が相互に近いデータ同士をダウングルーピング手段M5Bまとめたものを、新たに下降側ピーク周波数fdnとしてピーク周波数検出手段MM16の今回ダウングループメモリM6Bに記憶する(図4(B)参照)。
【0025】
次に、図5〜図7に基づいて、従来の技術の問題点と、それを解決する本願発明の概略とを説明する。
【0026】
図5に示すTime1において、時速80km/hで走行する自車の前方40mの位置を先行車Aが時速80km/hで走行し、自車の前方88mの位置を先行車Bが時速40km/hで走行している状況を想定する。このとき、自車および先行車Aの相対速は0km/hであって自車に対する先行車Aの位置は変化せず、自車および先行車Bの相対速は−40km/hであって自車は先行車Bに接近しつつある。
【0027】
従来のロジックでは、自車および先行車Aは相対速が無いため、今回アップグループメモリM6Aに記憶された先行車Aの上昇側ピーク周波数fup=Aupと、今回ダウングループメモリM6Bに記憶された先行車Aの下降側ピーク周波数fdn=Adnとは一致する。一方、自車および先行車Bは−40km/hの相対速を有するため、今回アップグループメモリM6Aに記憶された先行車Bの上昇側ピーク周波数fup=Bupと、今回ダウングループメモリM6Bに記憶された先行車Bの下降側ピーク周波数fdn=Bdnとは一致しない。そしてTime1では、先行車Aについては上昇側ピーク周波数Aupと下降側ピーク周波数Adnとが継続ペアリング(1) として正しくペアリングされており、先行車Bについては上昇側ピーク周波数Bupと下降側ピーク周波数Bdnとが継続ペアリング(2) として正しくペアリングされている。
【0028】
このTime1では、本発明のロジックは、上記従来のロジックと同じである。
【0029】
図6に示すTime2は、Time1から1サイクルの時間が経過した状態に対応するものである。相対速が無い自車および先行車Aの位置関係は変化していないが、−40km/hの相対速を有する先行車Bは自車に接近するため、先行車Bの上昇側ピーク周波数Bupおよび下降側ピーク周波数Bdnは共に低い側にシフトし、先行車Bの上昇側ピーク周波数Bupは、先行車Aの上昇側ピーク周波数Aupよりも僅かに低くなる。
【0030】
このように、先行車Bの上昇側ピーク周波数Bupと先行車Aの上昇側ピーク周波数Aupとの大小関係が逆転しても、その差は小さいため、継続ペアリング(1) として上昇側ピーク周波数Bupと下降側ピーク周波数Adnとがミスペアリングされ、継続ペアリング(2) として上昇側ピーク周波数Aupと下降側ピーク周波数Bdnとがミスペアリングされる。しかしながら、ミスペアリングによる相対速および距離の誤差は小さいため、この時点ではミスペアリングが発生したことは分からない。
【0031】
このTime2では、本発明のロジックと上記従来のロジックとには差が発生する。
【0032】
即ち、本願発明のロジックでは、前回アップグループメモリM7Aおよび前回ダウングループメモリM7Bのデータと、今回アップグループメモリM6Aおよび今回ダウングループメモリM6Bのデータとを比較検証することにより、先行車Aについては上昇側ピーク周波数Aupと下降側ピーク周波数Adnとが継続ペアリング(1) として正しくペアリングされ、かつ先行車Bについては上昇側ピーク周波数Bupと下降側ピーク周波数Bdnとが継続ペアリング(2) として正しくペアリングされる。
【0033】
図7に示すTime3は、Time2から更に1サイクルの時間が経過した状態に対応するものである。相対速が無い自車および先行車Aの位置関係は変化していないが、−40km/hの相対速を有する先行車Bは更に自車に接近するため、先行車Bの上昇側ピーク周波数Bupおよび下降側ピーク周波数Bdnは共に更に低い側にシフトし、先行車Bの上昇側ピーク周波数Bupは、先行車Aの上昇側ピーク周波数Aupよりもかなり低くなる。
【0034】
この場合には、上昇側ピーク周波数Bupと下降側ピーク周波数Adnとのミスペアリングおよび上昇側ピーク周波数Aupと下降側ピーク周波数Bdnとのミスペアリングは発生せず、上昇側ピーク周波数Aupと下降側ピーク周波数Adnとの正しいペアリングおよび上昇側ピーク周波数Bupと下降側ピーク周波数Bdnとの正しいペアリングが行われる。しかしながら、Time2の上昇側ピーク周波数Aupと下降側ピーク周波数BdnとのペアリングからTime3の上昇側ピーク周波数Bupと下降側ピーク周波数Bdnとのペアリングへの引き継ぎができないため、Time2の上昇側ピーク周波数Aupと下降側ピーク周波数Bdnとのペアリングは外挿処理となって依然として出力されてしまい、所定サイクルが経過して外挿処理が終了するまで間違ったターゲットデータによる制御が行われる。更に、上昇側ピーク周波数Bupと下降側ピーク周波数Bdnとの正しいペアリングが新規のターゲットと見なされるため、次回に引き継がれてノイズでないことが確認されるまでターゲットデータとして出力されない。
【0035】
このように、本来ならば、車速が低い先行車Bに対する車間距離を適正に保つべく、直ちに自車の減速制御を開始すべきところ、従来のロジックでは先行車Bが自車に更に接近してから自車の減速制御が開始されることになり、ギクシャクした減速が行われる可能性がある。
【0036】
それに対して本発明のロジックでは、上昇側ピーク周波数Aupと下降側ピーク周波数Adnとの正しいペアリングおよび上昇側ピーク周波数Bupと下降側ピーク周波数Bdnとの正しいペアリングが引き継がれるため、車速の低い先行車Bに対する車間距離を適正に保つための自車の減速制御が速やかに開始され、スムーズな減速が行われる。
【0037】
以下、本発明のロジックを、図8〜図15のフローチャートおよび図16〜図19の説明図に基づいて詳細に説明する。
【0038】
図8のメインフローのフローチャートのステップS1で車両状態判定手段M2により車速およびヨーレートを検知してレーダー装置Rの周波数分析手段M3に送信し、ステップS2で今回アップビートメモリM4A、今回ダウンビートメモリM4B、今回アップグループメモリM6A、今回ダウングループメモリM6B、今回検知メモリM9、今回出力メモリM14を初期化する。ステップS3で送受信手段M1から送信したアップビート信号が物体で反射したアップビート反射をFFT(高速フーリエ変換)処理し、その検知角度、ピーク周波数および反射レベルをピーク周波数号検出手段M16の今回アップビートメモリM4Aに記憶する。続くステップS4でアップグルーピング手段M5Aにより今回アップビートメモリM4Aのピーク周波数と角度が近いデータ同士をまとめるグルーピングを行い、そのグルーピングの結果を今回アップグループメモリM6Aに記憶する。
【0039】
同様に、ステップS5で送受信手段M1から送信したダウンビート信号が物体で反射したダウンビート反射をFFT(高速フーリエ変換)処理し、その検知角度、ピーク周波数および反射レベルをピーク周波数号検出手段M16の今回ダウンビートメモリM4Bに記憶する。続くステップS6でダウングルーピング手段M5Bにより今回ダウンビートメモリM4Bのピーク周波数と角度が近いデータ同士をまとめるグルーピングを行い、そのグルーピングの結果を今回ダウングループメモリM6Bに記憶する。
【0040】
続くステップS7でペアリングサブフローを実行し、ステップS8で今回継続ペアリング確定サブフローを実行し、ステップS9で今回新規ペアリング確定サブフローを実行し、ステップS10で外挿処理サブフローを実行し、ステップS11で出力判定サブフローを実行し、ステップS12で次回処理準備サブフローを実行する。ステップS7〜S12のサブフローの内容は、後から詳細に説明する。
【0041】
そしてステップS13で今回出力メモリM14のデータを車両制御手段M15に出力し、車間距離制御や衝突被害軽減制御のための自動制動等を実行する。
【0042】
次に、図9に基づいて前記ステップS7の「ペアリングサブフロー」の具体的内容を説明する。
【0043】
先ずステップS21で今回アップグループメモリM6Aからアップビートピーク信号のピーク周波数および反射レベルを読み出し、ステップS22で今回ダウングループメモリM6Bから、前記アップビートピーク信号との角度差が±1.0°以内のダウンビートピーク信号のピーク周波数および反射レベルを読み出す。続くステップS23でアップビートピーク信号の反射レベルおよびダウンビートピーク信号の反射レベルの差が5dB以下であれば、それらが同一物体から反射波である可能性が高いと判断し、ステップS24で前記アップビートピーク信号および前記ダウンビートピーク信号をペアリングの対象とし、そのペアから距離候補および相対速候補を算出する。
【0044】
続くステップS25で前記距離候補が2m以上で150m以下であり、かつステップS26で前記相対速候補が−55m/sec以上で55m/sec以下であれば、ステップS27で前記ペアリングの対象のグループピーク名と、算出した距離候補および相対速候補の両方のデータとを、今回アップグループメモリM6Aおよび今回ダウングループメモリM6Bにそれぞれ記憶する。
【0045】
アップビートピーク信号の反射レベルおよびダウンビートピーク信号の反射レベルの差が5dB以下のものを選択するのは、反射レベルの差が5dBを超える場合には、それらが別物体から反射波である可能性が高いからである。距離候補が2m以上で150m以下のものを選択するのは、自車が物体に2m未満の距離に接近することはなく、また物体の距離がレーダー装置Rの検知可能距離(約100m)よりも大きい150mを超えることはないからである。相対速候補が−55m/sec以上で55m/sec以下のものを選択するのは、自車および物体の相対速の絶対値が55m/sec(約200km/h)を超えることはないからである。
【0046】
そしてステップS28で角度差が±1.0°以内の全てのダウンビートピーク信号を呼び出すまで、前記ステップS22〜ステップS27を繰り返し、ステップS29で全てのアップビートピーク信号を呼び出すまで、前記ステップS21〜ステップS28を繰り返す。
【0047】
図16は、ステップS7を実行した後の、Time2における今回アップグループメモリM6Aおよび今回ダウングループメモリM6Bの状態を示すもので、今回アップグループメモリM6Aおよび今回ダウングループメモリM6Bのそれぞれには、ペアリング候補Aup−Adnのデータ(相対速=0km/h、距離=40m、確定フラグ=OFF)と、ペアリング候補Bup−Bdn(相対速=−40km/h、距離=73m、確定フラグ=OFF)と、ペアリング候補Aup−Bdnのデータ(相対速=−37km/h、距離=76m、確定フラグ=OFF)と、ペアリング候補Bup−Adn(相対速=−3km/h、距離=37m、確定フラグ=OFF)とが記憶されている。
【0048】
次に、図10に基づいて前記ステップS8の「今回継続ペアリング確定サブフロー」の具体的内容を説明する。
【0049】
先ずステップS41で今回アップグループメモリM6Aからピーク周波数を読み出し、ステップS42でペアリング候補が有れば、ステップS43で距離候補および相対速候補から前回の距離および相対速を算出する。1サイクルの間に自車に対する先行車Aあるいは先行車Bの相対速は殆ど変化しないと見なせるので、前回の相対速は今回の相対速候補の相対速と同じ値になり、また前回の距離は今回の距離と1サイクルの間の距離変化(相対速×1サイクルの時間)との差により算出される。
【0050】
続くステップS44で、前記ステップS43で算出した前回の距離および相対速から前回アップグループピーク候補および前回ダウングループピーク候補を算出する。アップビートピーク信号およびダウンビートピーク信号から距離および相対速を算出可能であることから、その逆の演算を行うことで前回アップグループピーク候補および前回ダウングループピーク候補を算出することができきる。
【0051】
続くステップS45で前回アップグループピーク候補および前回ダウングループピーク候補に、周波数が近い前回アップグループピークおよび前回ダウングループピークが有れば、ステップS46で今回アップグループメモリM6Aおよび今回ダウングループメモリM6Bのピークデータに「前回引継候補ピーク名」と、「前回アップグループピーク候補および前回アップグループピークの周波数差」と、「前回ダウングループピーク候補および前回ダウングループピークの周波数差」とをそれぞれ記憶する(図17参照)。そしてステップS47で全てのペアリング候補を読み出すまで、前記ステップS43〜ステップS46を繰り返す。
【0052】
そしてステップS48で継続ペアリング決定サブフローを実行した後、ステップS49で全てのピーク周波数を読み出すまで、前記ステップS41〜ステップS48を繰り返す 次に、図11に基づいて前記ステップS48の「継続ペアリング決定サブフロー」の具体的内容を説明する。
【0053】
先ずステップS201で前回引継ぎ候補を持つペアリング候補が有り、ステップS202で前記ペアリング候補が複数であれば、ステップS203で「前回アップグループピーク候補および前回アップグループピークの周波数差」と、「前回ダウングループピーク候補および前回ダウングループピークの周波数差」とを合計し、その合計値が最も小さいペアリング候補を今回ペアリングとして確定する。一方、前記ステップS202で前記ペアリング候補が一つだけであれば、ステップS204で前記一つのペアリング候補を今回ペアリングとして確定する。
【0054】
続くステップS205で今回ペアリングとして確定したペアリング組み合せの、前回アップグループメモリM7Aおよび前回ダウングループメモリM7Bのピークデータの引継ぎカウンタ値を1インクリメントし、今回アップグループメモリM6Aおよび今回ダウングループメモリM6Bのピークデータに記憶する。続くステップS206で今回ペアリングとして確定した、検知角度、距離候補値および相対速候補値、反射レベル、引継ぎカウンタ値を今回検知メモリM9に記憶する。
【0055】
続くステップS207で今回ペアリングとして確定した、今回アップグループメモリM6Aおよび今回ダウングループメモリM6Bのピークデータの確定フラグをONし、ステップS208で今回ペアリングとして確定したペアリング組合せの、前回アップグループメモリM7Aおよび前回ダウングループメモリM7Bのピークデータの確定フラグをONする。
【0056】
次に、前記ステップS8(今回ペアリング確定サブフロー)の作用を、図17〜図19に基づいて具体的に説明する。
【0057】
図17は前記Time2における、前記ステップS8のサブフローのステップS41〜ステップS47に対応するものである。ここでは、今回アップグループメモリM6Aおよび今回ダウングループメモリM6Bに記憶されたペアリング候補Aup−Adn、ペアリング候補Aup−Bdn、ペアリング候補Bup−Bdnおよびペアリング候補Bup−Adnのうち、グループピークAのペアリング候補Aup−Adnおよびペアリング候補Aup−Bdnに前回引継ぎ候補があれば、前回引継ぎ候補のピーク周波数と前回検知データのピーク周波数との周波数差を算出して今回アップグループメモリM6Aおよび今回ダウングループメモリM6Bに記憶する。
【0058】
即ち、今回アップグループメモリM6Aのペアリング候補Aup−Adnから推定した前回引継ぎ候補a,bのピーク周波数UPA,DNAと、前回検知データAup′−Adn′のピーク周波数UPA,DNAとは完全に一致し、アップ側の周波数差UPは0、ダウン側の周波数差DNは0となる。よって今回ペアリング候補Aup−Adnの前回引継ぎ候補はAup′−Adn′となる。
【0059】
一方、今回アップグループメモリM6Aのペアリング候補Aup−Bdnから推定した前回引継ぎ候補c,dのピーク周波数UPA,DNAと、前回検知データAup′−Bup′のピーク周波数UPA,DNAとは一致しない。アップピークの前回引継ぎ候補cのピーク周波数に最も近いピーク周波数は、先行車Aの前回検知データAup′のピーク周波数ではなく、先行車Bの前回検知データBup′のピーク周波数であるため、アップピークの引継ぎ相手は、先行車Bの前回検知データBup′のピーク周波数となる。ダウンピークの前回引継ぎ候補dのピーク周波数に近いピーク周波数は、先行車Bの前回検知データBdn′のピーク周波数しか無いため、ダウンピークの引継ぎ相手は、先行車Bの前回検知データBdn′のピーク周波数となる。よって今回ペアリング候補Aup−Bdnの前回引継ぎ候補はBup′−Bdn′となる。そしてアップ側の周波数差UPは+3、ダウン側の周波数差DNは+8となる。
【0060】
図18において、図11のフローチャートのステップS201およびステップS202でグループピークAに二つのペアリング候補Aup−Adn,Aup−Bdnが存在するので、ステップS203に移行する。ステップS203で前回引継ぎ候補Aup′−Adn′のアップ側およびダウン側の周波数差の和は0+0=0であり、前回引継ぎ候補Bup′−Bdn′のアップ側およびダウン側の周波数差の和は3+8=11であるため、ペアリング候補Aup−Adnを今回ペアリングとして確定した後、ステップS205〜ステップS208でメモリ内のデータを更新する。
【0061】
図19において、図10のフローチャートのステップS49でグループピークBが残っているのでステップS41に移行し、ステップS41〜ステップS48でグループピークBに対してグループピークAと同じ処理を行う。
【0062】
即ち、今回ダウングループメモリM6Bのペアリング候補Bup−Bdnから推定した前回引継ぎ候補e,fのピーク周波数UPA,DNAと、前回検知データBup′−Bdn′のピーク周波数UPA,DNAとは完全に一致し、アップ側の周波数差UPは0、ダウン側の周波数差DNは0となる。よって今回ペアリング候補Bup−Bdnの前回引継ぎ候補はBup′−Bdn′となる。
【0063】
一方、今回ダウングループメモリM6Bのペアリング候補Bup−Adnから推定した前回引継ぎ候補g,hのピーク周波数UPA,DNAと、前回検知データBup′−Aup′のピーク周波数UPA,DNAとは一致しない。アップピークの前回引継ぎ候補gのピーク周波数に最も近いピーク周波数は、先行車Bの前回検知データBup′のピーク周波数ではなく、先行車Aの前回検知データAup′のピーク周波数であるため、アップピークの引継ぎ相手は、先行車Aの前回検知データAup′のピーク周波数となる。ダウンピークの前回引継ぎ候補hのピーク周波数に近いピーク周波数は、先行車Aの前回検知データAdn′のピーク周波数しか無いため、ダウンピークの引継ぎ相手は、先行車Aの前回検知データAdn′のピーク周波数となる。よって今回ペアリング候補Bup−Adnの前回引継ぎ候補はAup′−Adn′となる。そしてアップ側の周波数差UPは+2、ダウン側の周波数差DNは+1となる。
【0064】
図11のフローチャートのステップS201およびステップS202でグループピークAに二つのペアリング候補Bup−Bdn,Aup−Adnが存在するので、ステップS203に移行する。ステップS203で前回引継ぎ候補Bup′−Bdn′のアップ側およびダウン側の周波数差の和は0+0=0であり、前回引継ぎ候補Aup′−Adn′のアップ側およびダウン側の周波数差の和は2+1=3であるため、ペアリング候補Bup−Bdnを今回ペアリングとして確定した後、ステップS205〜ステップS208でメモリ内のデータを更新する。
【0065】
次に、図12に基づいて前記ステップS9の「今回新規ペアリング確定サブフロー」の具体的内容を説明する。
【0066】
先ずステップS61で今回アップグループメモリM6Aの確定フラグ=OFFのピークデータを読み出し、ステップS62でペアリング対象となる確定フラグ=OFFの今回ダウングループメモリM6Bのピークデータが有る場合には、ステップS63で反射レベル差が一番少ない今回ダウングループメモリM6Bのピークデータを、今回ペアリング確定手段M8が今回ペアリングとして確定し、距離候補および相対速候補を算出する。続くステップS64で今回ペアリングとして確定した検知角度、距離候補および相対速候補、反射レベルを今回検知メモリM9に記憶し、ステップS65で今回ペアリングとして確定した今回アップグループメモリM6Aおよび今回ダウングループメモリM6Bのピークデータの確定フラグをONする。
【0067】
そしてステップS66で全ての今回アップグループメモリM6Aの確定フラグ=OFFのピークデータを読み出すまで、前記ステップS61〜ステップS65を繰り返す。
【0068】
次に、図13に基づいて前記ステップS10の「外挿処理サブフロー」の具体的内容を説明する。
【0069】
先ずステップS81で前回アップグループメモリM7Aの確定フラグ=OFFのピークデータを読み出し、ステップS82でペアリング対象となる確定フラグ=OFFの前回ダウングループピークデータが有れば、ステップS83で反射レベル差が一番少ない前回ダウングループピークデータを前回ペアリングとして確定し、距離候補および相対速候補を算出し、ステップS84で距離候補および相対速候補から今回の距離および相対速を算出し、ステップS85で外挿カウンタを1インクリメントする。前記ステップS84の距離候補および相対速候補の算出は、1サイクルの間に相対速は変化しないと見なし、距離は相対速×1サイクルの時間だけ変化するとして算出する。
【0070】
続くステップS86で検知角、算出した今回の距離および相対速、反射レベル、引継カウンタ値、外挿カウンタ値を今回検知メモリM9に記憶する。このとき、引継カウンタ値は前回アップピークの値をそのまま記憶する。これらのデータは、外挿カウンタが1インクリメントされるので、外挿データとなる。続くステップS87で前回外挿ペアリングとして確定した、前回アップグループメモリM7Aおよび前回ダウングループメモリM7Bのピークデータの確定フラグをONする。そしてステップS88で全ての前回アップグループメモリの確定フラグ=OFFのデータを読み出すまで、前記ステップS81〜ステップS87を繰り返す。
【0071】
次に、図14に基づいて前記ステップS11の「出力判定サブフロー」の具体的内容を説明する。
【0072】
先ずステップS101で今回検知メモリM9のターゲット情報を読み出し、ステップS102で引き継ぎフラグ≧1であって今回初めて検知された新規ターゲットでなければ、ステップS103で今回出力判定手段M13がターゲット情報を今回出力メモリM14に記憶する。そしてステップS104で全ての今回検知メモリM9のターゲット情報を読み出すまで、前記ステップS101〜ステップS103を繰り返す。
【0073】
次に、図15に基づいて前記ステップS12の「次回処理準備サブフロー」の具体的内容を説明する。
【0074】
先ずステップS121で今回検知メモリM9のターゲット情報を読み出し、ステップS122で外挿カウンタ値が1以上で5以下であれば、ステップS123で距離データおよび相対速データからアップグループピーク周波数候補およびダウングループピーク周波数候補を算出する。続くステップS124で今回アップグループメモリM6Aにアップグループピーク候補、検知角、ピーク周波数、反射レベル、引継ぎカウンタ値、外挿カウンタ値を記憶し、ステップS125で今回ダウングループメモリM6Bにダウングループピーク候補、検知角、ピーク周波数、反射レベル、引継ぎカウンタ値、外挿カウンタ値を記憶する。そしてステップS126で全ての今回検知メモリM9のターゲット情報を読み出すまで、前記ステップS122〜ステップS125を繰り返す。
【0075】
続くステップS127で今回アップグループメモリM6Aの全てのデータを前回アップグループメモリM7Aに移動して確定フラグを全てOFFにし、ステップS128で今回ダウングループメモリM6Bの全てのデータを前回ダウングループメモリM7Bに移動して確定フラグを全てOFFにする。
【0076】
このようにステップS8〜ステップS12のサブフローが実行されると、図8のメインフローのフローチャートに戻り、ステップS13で今回出力メモリM14のターゲットデータが車両制御手段M15の制御ECUに出力される。
【0077】
以上のように、従来は、図6に示すTime2でミスペアリングが発生した後、図7に示すTime3でミスペアリングが解消し、上昇側ピーク周波数Aupと下降側ピーク周波数Adnとの正しいペアリングおよび上昇側ピーク周波数Bupと下降側ピーク周波数Bdnとの正しいペアリングが行われても、Time2の上昇側ピーク周波数Aupと下降側ピーク周波数BdnとのペアリングからTime3の上昇側ピーク周波数Bupと下降側ピーク周波数Bdnとのペアリングへの引き継ぎができないため、Time2の上昇側ピーク周波数Aupと下降側ピーク周波数Bdnとのペアリングは外挿処理となって出力され、所定サイクルが経過して外挿処理が終了するまで間違ったターゲットデータによる制御が行われ、また上昇側ピーク周波数Bupと下降側ピーク周波数Bdnとの正しいペアリングが新規のターゲットと見なされるため、次回に引き継がれてノイズでないことが確認されるまでターゲットデータとして出力されない問題があった。
【0078】
それに対し、本実施の形態では、ステップS8の「今回継続ペアリング確定サブフロー」により今回のペアリング組合せの正しさを前回に遡って検証するため、図6〜図8に示すような状況でも、上昇側ピーク周波数Aupと下降側ピーク周波数Bdnとのミスペアリングが外挿処理となって出力されることが防止され、かつ上昇側ピーク周波数Bupと下降側ピーク周波数Bdnとの正しいペアリングが新規ターゲットになって保留されることなく即座に出力されるため、従来に比べて制御の応答性が向上する。よって、自車に接近する先行車に対する減速制御を遅滞なく開始することが可能となり、図20に示すようにぎくしゃくした減速が回避されて快適性が向上する。
【0079】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、本発明はその要旨を逸脱しない範囲で種々の設計変更を行うことが可能である。
【0080】
例えば、実施の形態では「前回アップグループピーク候補および前回アップグループピークの周波数差」と、「前回ダウングループピーク候補および前回ダウングループピークの周波数差」との両方に基づいて今回ペアリングの正しさを検証しているが、上記二つのうちの一つだけを用いて今回ペアリングの正しさを検証することもできる。
【符号の説明】
【0081】
M1 送受信手段
M3 周波数分析手段
M7A 前回アップグループメモリ(記憶手段)
M7B 前回ダウングループメモリ(記憶手段)
M14 今回出力メモリ(物体情報出力手段)
M16 ピーク周波数検出手段
S7 (ペアリング手段)
S44 (ピーク周波数候補算出手段)
S48 (今回ペアリング候補確定手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の検知エリアに対してFM・CW波を送信するとともに送信したFM・CW波の物体からの反射波を受信する送受信手段(M1)と、
前記送受信手段(M1)の送信波および受信波からビート信号を生成するとともに該ビート信号を周波数分析する周波数分析手段(M3)と、
前記周波数分析手段(M3)による周波数分析の結果に基づいて上昇側ピーク周波数および下降側ピーク周波数を求めるピーク周波数検出手段(M16)と、
前記ピーク周波数検出手段(M16)で得られた上昇側ピーク周波数および下降側ピーク周波数に基づいて物体との距離および相対速よりなる相対関係を所定時間毎に算出し、今回算出された相対関係および前回算出された相対関係に基づいて同一の物体が所定回数以上継続して検知されていると判断された場合には前記相対関係を物体情報として出力する物体情報出力手段(M14)と、
を備える物体検知装置において、
前記ピーク周波数検出手段(M16)で得られたピーク周波数を記憶する記憶手段(M7A,M7B)と、
複数の物体からの反射波により複数の上昇側ピーク周波数および複数の下降側ピーク周波数が前記ピーク周波数検出手段(M16)により得られた場合には、上昇側ピーク周波数および下降側ピーク周波数の全ての組み合わせについて相対関係を算出するとともに、前記ピーク周波数の組み合わせ情報および該組み合わせにより算出された相対関係をペアリング候補情報として記憶するペアリング手段(S7)と、
任意のペアリング候補に対応する今回相対関係に基づいて前回処理サイクルにおける上昇側ピーク周波数あるいは下降側ピーク周波数をピーク周波数候補として算出するピーク周波数候補算出手段(S44)と、
前記ピーク周波数候補算出手段(S44)により算出されたピーク周波数候補と前記記憶手段(M7A,M7B)に記憶されているピーク周波数との差が所定値未満の場合に、今回相対関係の算出に用いられたペアリング候補を正しいペアリングの組み合わせとして確定する今回ペアリング候補確定手段(S48)と、
を備えることを特徴とする物体検知装置。
【請求項2】
前記今回ペアリング候補確定手段(S48)は、前記ピーク周波数候補算出手段(S44)により算出されたピーク周波数候補と前記記憶手段(M7A,M7B)に記憶されているピーク周波数との差が所定値未満となるペアリング候補が複数ある場合には、周波数差が最も小さい値となるペアリング候補を正しいペアリング組み合わせとして確定することを特徴とする、請求項1に記載の物体検知装置。
【請求項3】
前記今回ペアリング候補確定手段(S48)は、前記ピーク周波数候補算出手段(S44)により算出された上昇側ピーク周波数候補と前記記憶手段(M7A,M7B)に記憶されている上昇側ピーク周波数との差が所定値未満の場合、あるいは前記ピーク周波数候補算出手段(S44)により算出された下降側ピーク周波数候補と前記記憶手段(M7A,M7B)に記憶されている下降側ピーク周波数との差が所定値未満の場合には、今回相対関係の算出に用いられたペアリング候補を正しいペアリング組み合わせとして確定することを特徴とする、請求項1または請求項2に記載の物体検知装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2010−175256(P2010−175256A)
【公開日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−14980(P2009−14980)
【出願日】平成21年1月27日(2009.1.27)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】