物体監視システム及び方法
【課題】複数の認識領域間に渡って物体を認識しながら物体の動きを監視することができるシステムを提供する。
【解決手段】複数に分割された認識領域毎に設置された、レーザセンサの照射により対象とする認識領域の測距データを得る測距手段と、測距手段によって取得された測距データと物体特定データDBに格納された情報を照合することにより、物体のサイズを基に支障物を判定する第1判定手段と、第1判定手段による判定の結果、支障物と判定された物体について、認識データDBに格納された物体のデータと照合することにより、複数の認識領域に渡って移動する物体であって、以前に検知された物体と同一の物体である場合には、認識データDBの該物体に関する測距データを追加し、未検知の物体である場合には、物体に関する測距データを認識データDBに新たに登録し、同一の物体及び新規の物体に関する移動に関する情報について軌跡データDBを更新する。
【解決手段】複数に分割された認識領域毎に設置された、レーザセンサの照射により対象とする認識領域の測距データを得る測距手段と、測距手段によって取得された測距データと物体特定データDBに格納された情報を照合することにより、物体のサイズを基に支障物を判定する第1判定手段と、第1判定手段による判定の結果、支障物と判定された物体について、認識データDBに格納された物体のデータと照合することにより、複数の認識領域に渡って移動する物体であって、以前に検知された物体と同一の物体である場合には、認識データDBの該物体に関する測距データを追加し、未検知の物体である場合には、物体に関する測距データを認識データDBに新たに登録し、同一の物体及び新規の物体に関する移動に関する情報について軌跡データDBを更新する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物体監視システム及び方法に係り、特に、線路上などの広範囲に設定される監視領域に存在する物体の存在位置を監視する場合、監視領域を複数の認識領域に分割し、これらの認識領域において物体を検知し、検知された物体の情報を処理する物体監視システム及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
レーザセンサを用いて、監視領域内に出入りする物体の存在を測定する技術が知られている。例えば、特許文献1には、監視領域内においてレーザレーダにより検知された物体が障害物であるか否かを短時間で判断する検知装置が開示されている。この検知装置は、所定の監視領域を走査するレーザレーダと、これにより検知される距離情報とその走査方向の情報とから3次元レーダ情報を求めるレーダ情報作成手段と、3次元レーダ情報から存在する物体を検知する物体検知手段と、物体の進行方向に対して複数に分割された領域として認識する領域認識手段と、分割領域の1つに所定時間継続して物体が滞留したときに障害物が滞留していると判断する障害物判断手段を備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−214718号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載された、レーザセンサにて物体検知する技術は、踏切における線路の延長方向両側に隣接する周辺領域を1つのレーザセンサで測距している。車両等の物体の進行方向に対して複数に分割された領域として物体の位置を検知するが、監視領域内の複数領域を跨ぐ測距における物体の検知について開示されておらず、技術的に考慮されていない。
【0005】
本発明の目的は、対象となる監視領域を複数の認識領域に分割し、各認識領域に設置されたレーザセンサにより各認識領域内の物体を経時的に監視し、認識領域間に渡って物体を認識しながら物体の動きを監視することができる物体監視システム及び方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る物体監視システムは、好ましくは、対象とする監視領域を複数の認識領域に分割し、各認識領域にレーザセンサを設置して、該認識領域内に存在する物体を経時的に監視する物体監視システムあって、
各レーザセンサの照射により対象とする該認識領域の測距データを得る測距手段と、該認識領域において検知される物体及びそのサイズに関する情報を予め格納する物体特定データDBと、物体のサイズが認識された物体について、物体毎に固有のIDを付与して該物体の測距データを格納する認識データDBと、認識された物体の移動に関する情報を格納する軌跡データDBと、該測距手段によって取得された測距データと、該物体特定データDBに格納された情報を照合することにより、物体のサイズを基に支障物を判定する第1判定手段と、
該第1判定手段による判定の結果、支障物と判定された物体について、該認識データDBに格納された物体のデータと照合することにより、複数の認識領域に渡って移動する物体であって、以前に検知された物体と同一かを判定する第2判定手段と、
該第2判定手段による判定の結果、既に検知された物体と同一の物体である場合には、該認識データDBの当該物体に関する測距データを追加し、未検知の物体である場合には、該物体に関する測距データを該認識データDBに新たに登録する手段と、
該第2判定手段によって判定された、同一の物体及び新規の物体の移動に関する情報について軌跡データDBを更新する手段と、を有することを特徴とする物体監視システムとして構成される。
好ましい例では、前記物体監視システムにおいて、該軌跡データDBから読み出された移動に関する情報を基に該物体の軌跡を算出して、表示する表示手段を更に有する。
【0007】
また、本発明に係る物体監視方法は、好ましくは、対象とする監視領域を複数の認識領域に分割し、各認識領域にレーザセンサを設置して、該認識領域内に存在する物体を経時的に監視する物体監視方法であって、
各レーザセンサの照射により対象とする該認識領域の測距データを得る測距ステップと、該認識領域において検知される物体及びそのサイズに関する情報を物体特定データDBに予め格納するステップと、物体のサイズが認識された物体について、物体毎に固有のIDを付与して該物体の測距データを認識データDBに格納するステップと、認識された物体の移動に関する情報を軌跡データDBに格納するステップと、
該測距ステップによって取得された測距データと、該物体特定データDBに格納された情報を照合することにより、物体のサイズを基に支障物を判定する第1判定ステップと、
該第1判定ステップによる判定の結果、支障物と判定された物体について、該認識データDBに格納された物体のデータと照合することにより、複数の認識領域に渡って移動する物体であって、以前に検知された物体と同一かを判定する第2判定ステップと、
該第2判定ステップによる判定の結果、既に検知された物体と同一の物体である場合には、該認識データDBの当該物体に関する測距データを追加し、未検知の物体である場合には、該物体に関する測距データを該認識データDBに新たに登録するステップと、
該第2判定ステップによって判定された、同一の物体及び新規の物体の移動に関する情報について軌跡データDBを更新するステップと、を有することを特徴とする物体監視方法として構成される。
好ましい例では、前記物体監視方法において、該軌跡データDBから読み出された移動に関する情報を基に該物体の軌跡を算出して表示手段に表示するステップを更に有する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、線路上などを対象とした監視領域を複数の認識領域に分割して、各認識領域に設置されたレーザセンサにより認識領域内の物体を経時的に監視し、何れかのレーザセンサの測距データに基づいて最初に物体を検知した場合、その物体を特定して、物体検知の当初から支障物か否かを認識することができる。これにより、複数の認識領域に渡って移動する支障物に関する情報を認識領域間で共有しながら各認識領域における物体の動きを監視することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の一実施例における物体監視システムの構成を示す図。
【図2】一実施例における物体の監視領域の例を示す図。
【図3】一実施例における背景データDBの記録フォーマットを示す図。
【図4】一実施例における測距データDBの記録フォーマットを示す図。
【図5】一実施例におけるクラスタデータDBの記録フォーマットを示す図。
【図6】一実施例における物体特定データDBの記録フォーマットを示す図。
【図7】一実施例における認識データDBの記録フォーマットを示す図。
【図8】一実施例における軌跡データDBの記録フォーマットを示す図。
【図9】一実施例における物体の監視処理を示すフローチャート図。
【図10】一実施例における物体の軌跡表示の処理を示すフローチャート図。
【図11】一実施例におけるポイントデータDBの記録フォーマットを示す図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の好適な実施の形態を、図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施例における物体監視システムの構成を示す。
この物体監視システムにより監視される領域(監視領域)1は、複数nに分割され、それぞれの領域(認識領域)101〜10n(総じて10と示す)に、レーザセンサ111〜11n(総じて11と示す)が設置される。物体監視システムは、各レーザセンサ11の照射により物体を検知する物体測距部121〜12n(総じて12と示す)と、レーザセンサ制御及びレーザセンサからの測距データを処理するパーソナルコンピュータ(PC)2を有して構成される。
【0011】
各レーザセンサ11は、各認識領域の前方180°の範囲を0.5°刻みで角度を変えながら物体までの距離を経時的に測距して、その測距データをPC2に順次送る。PC2は、取得した測距データを用いて物体の存在位置を計算する処理装置(CPU)21と、測距データ及び物体の位置に関係する種々のデータを記憶するデータベース(DB)22、情報を表示する表示装置23、情報を入力する入力装置24を有する。後で詳述するが、PC2のCPU21はプログラムの実行により、物体測距部12から分解能0.5°の毎に得られた測距データを用いて、検知された物体について、DB22に予め格納された物体情報と照合することで物体を特定することができる。
【0012】
図2は、監視領域として線路上に沿って複数の認識領域が設定された例を示す。
線路に沿って設定された監視領域1は、複数の認識領域10に分割して設定される。まず、監視領域の設定は、PC2の入力装置24から、横L1:4500cm、縦L2:2100cmのように入力する。さらに、この監視領域を例えば3つに分割して認識領域を規定し、認識領域1(L11:1500cm、L2=2100cm)、認識領域2(L12:1500cm、L2=2100cm)、認識領域3(L13:1500cm、L2=2100cm)、のように入力することで、各認識領域の設定が行われる。
【0013】
これらの認識領域10において線路上を走行する列車202や線路上に存在する支障物203を経時的に監視する。認識領域101〜10nにおいてレーザセンサ111,112,11nがその照射方向を変えて千鳥(チドリ)状に設置される。各レーザセンサ11のレーザ照射により物体測距部12に測距データが経時的に得られる。各物体測距部12で得られた測距データはPC2へ送信される。
【0014】
認識領域10は、例えば、監視領域1で見たときに列車の運行に際して障害発生と判断される要因(人体、小動物、石、障害物などの支障物の検知)を経時的に監視しながら最小単位で検知して識別する。複数の認識領域10で識別される物体の情報は認識データDBに格納され、共有される。
最小単位で検知される支障物203のデータの取得は、支障物203の存在位置の特定がし易いため、経時的に線路上の監視領域1の監視を実行しながらも、保守などの特別な条件下では、認識領域10の単位で検知物体を障害発生の要因外とすることも可能である。
【0015】
複数の連続した認識領域を経時的に監視することで複数の認識領域で同じ障害物を検知することができる。1つの支障物が複数の認識領域10間を移動する場合や、複数の支障物が複数の認識領域10で検知される場合も考えられる。また、架線やケーブルなどの断線による垂れ下がりなども推定されるが、各認識領域10の背景データを予め取得しておき、経時的な測距データとの差分から障害発生を容易に抽出することが可能である。また、線路上を通過する列車は進行方向に対して、認識領域101に対する物体測距部1(121)、認識領域102に対する物体測距部2(122)、認識領域10nに対する物体測距部n(12n)の順に検知されることになる。なお、図2中、(3112,251)のように示してあるのは、物体の座標を示す。
【0016】
DB22には、検知された物体を特定するため及び物体情報を処理するために、幾つかのDB30〜80が用意される。即ち、各認識領域における物体の存在しない背景となる背景データ(角度、背景データ)を登録する背景データDB30(図3)、各レーザセンサからの測距データ(角度、測距データ、背景データ)を登録する測距データDB40(図4)、検知された物体毎に付与される固有のID(クラスタID)毎にポイント座標から求めた物体の中心座標を示すクラスタデータを登録するクラスタデータDB50(図5)、何れかの監視領域において検知された物体のサイズ(縦×横/cm)を示す物体特定データを登録する物体特定データDB60(図6)、経時的な物体認識により特定された物体の測距データを登録する認識データDB70(図7)、測距データから物体の形状を連続する点の集まりの座標値をポイントデータとしたポイントデータDB110(図11)、及び物体の移動に関する軌跡データ(日時、位置座標、移動ベクトル)を登録する軌跡データDB80(図8)を有する。なお、物体特定データDB60は、検知が予想される複数の物体のサイズ(縦×横/cm)を予め登録しておくのが好ましい。ポイントデータDB110は、レーザセンサで検知された物体データ(背景データを差分を取ったもの)をポイントデータとして連続的に記憶したものである。
【0017】
各レーザセンサにより検知された測距データは測距データDB40に一時的に保管される。そして、CPU21の処理により、背景データDB30に登録されたデータと、測距データDB40に保管された測距データの差分が取られて物体が検知される。その後、検知された物体毎に固有IDを付与し、その近接した周辺のポイント座標を計算し、かつ中心座標を求める処理をし、その結果をクラスタデータDB50に記憶する。さらに、物体特定データDB60を用いて対象の物体をサイズから特定し、その後、物体の存在位置の計算を処理による認識データDB70を用いて支障物203を判断する。
その後又は必要時に、管理者はPC2の入力装置24を操作して物体の固有IDを指定すると、CPU21は軌跡データDB80に格納された物体情報から、指定された固有IDに対応する物体の軌跡データを読み出して、その物体の軌跡を計算して表示装置23に表示する。
【0018】
図9は、一実施例における物体監視の処理を示すフローチャートである。
線路上に設定された監視領域1における物体監視は、線路上の物体を検知して支障物203を的確に判断して、その大きさや存在位置を表示装置23に表示することができる。物体の監視及び特定の処理は、CPU21でプログラムが実行されることで行われる。
まず、監視領域1における物体が無い状態の背景データ、及び複数のセンサによる測距データのマッチングをするためのキャリブレーションデータを取得し、背景データDB30に登録する(S91)。
【0019】
次に、監視領域1の分割による複数の認識領域101〜10nを設定する(S92)。これは、PC2の入力装置24から、複数に分割された各認識領域の縦及び横の長さを入力することで行われる。
次に、各認識領域における各レーザセンサ11で測距データが逐次取得され、その測距データは測距データDB40に格納される。また、それらの測距データは背景データDB30のデータと測距データDB40との差分を取り統合処理され、それにより検出された近接した周辺のポイントデータを生成してポイントデータDB110に格納される。
統合処理では、監視領域1で物体を検知するため、各レーザセンサ11からの測距データを重ね合わせて各レーザセンサを原点とした1つ(x,yで示される)極座標系データへ変換する。詳しくは、フレーム時間毎に任意の座標を原点とし、その原点からの各レーザセンサ11の座標、及びセンサの傾き(ピッチ角、ロール角、ヨー角)を考慮した座標を計測ポイントデータに変換することで、複数のレーザセンサで計測している空間を1つの座標系に統合するものである。これにより、(複数の認識領域10にて構成される)監視領域1においてレーザセンサ11での測距データのズレや不一致をキャリブレーション(補正)した測距データ得ることができる。(S931)。
そして、物体を検知するために、近接した周辺のポイントをクラスタと呼ぶ纏まりで区別して、それに固有ID(クラスタID)を付与して中心座標を求めて、クラスタデータDB50に格納する(S932)。
【0020】
次に、支障物(人(物体番号91)や小動物(物体番号92))の判定処理が行われる(S94)。この処理は、物体特定データDB60から物体データを読み出して、測距データと比較して、物体の大きさの点から物体を特定する。比較の結果、例えば列車202以外の線路上の支障物203の場合には、同一物体の判定(即ち他の認識領域で検知されたか又は同じ認識領域で過去に検知された物体かの判定)が行われる(S95)。一方、支障物でない場合には、同一性の判定をせずに、軌跡表示処理(S96)に移る。
【0021】
支障物の判定の結果、支障物として判定された場合、認識データDB70を参照して認識データDB70内に記憶された支障物(物体番号、固有ID、物体の距離データ等)を検索する(S951)。そして、認識データDB70に記憶されている物体データの中に、これまで認識され記憶された同一物体が有るかの判定をする(S952)。認識データDB70は、先のステップS94で物体特定データDB60を参照して物体のサイズを以て判定した際に物体番号を記録しており、これが同一物体の大きさを判断する要素になる。例えば、人の場合、物体番号91で、60cm×60cmのサイズとしてその大きさを判定する。
【0022】
同一物体と判定された場合には、当該物体番号の物体について、最近取得したデータ(角度、距離データ、背景データ等)が認識データDB70に追加されて更新される。また、同一物体と判定されない(即ち別物体)場合、当該物体の物体番号に新たな固有IDの付いた物体のデータ(角度、距離データ、背景データ等)が認識データDB70に追加される。このようにして、認識データDB70内の物体の位置データが追加、更新される。
【0023】
物体の移動に伴う軌跡に関して、物体の移動と共に、その物体の時間データとその位置座標及び移動ベクトルが更新されて、軌跡データDB80に登録される(S961)。即ち、同一と判定された物体については、当該物体の新たに取得された位置データが追加されて軌跡データDB80に登録され、また、新規の物体については、その位置データが新たに登録される。
その後、物体の移動軌跡の表示処理については、軌跡データDB80に記憶されたデータを順次読み出しながら表示装置23に表示する(S962)。この軌跡の表示については、図10を参照して後述する。最後に、物体監視の終了を判断して終了する(S97)。
【0024】
測距データの統合処理S931について説明する。各レーザセンサにて測距を担当する認識領域の物理的な配置を把握するために、全体の空間に対応した座標系を持っている。各レーザセンサ固有の認識領域に対して定めている空間座標系は、その監視領域内にて有効な領域であり、複数のレーザセンサが独自の監視領域を対象としている場合は、単なる座標変換にて監視領域1における物体監視の実現が可能である。
【0025】
しかし、監視領域内にて複数のレーザセンサが同一物体を検知する可能性が有る場合、各レーザセンサにより検知された物体を同一物体として判断する必要がある。その場合、座標変換のみでは対応することが出来ない。これは、各レーザセンサの性能により発生する測距誤差、レーザセンサを配置した空間に対して発生するレーザセンサの傾き誤差など、又測距データを統合する際は、測距データにおける誤差を最小範囲にするため、時刻同期により測距データの同時性を確保することが必要となる。
【0026】
そこで、本実施例において、統合処理S931は、1つの測距データとしての同時性を確保するため、時刻同期した測距データについて、実空間における一定範囲の差違を整合させことにする。具体的には、統合の処理において、グリッドと呼ぶ許容範囲を指定し、この範囲内に測距にて検出された近接した周辺のポイントをクラスタデータと呼ぶ纏まりで区別して、その差違を整合(同一物体として扱う)させる。
このように、測距データの統合処理することで、統合結果を監視領域の全領域(若しくは設定可能な当該領域)を対象に、1つの測距データとして取り扱うことができ、機能的にはクラスタに固有IDを付与して処理されることで、そこに固有IDを持った物体の存在を表示することができる。
【0027】
図10は、物体の軌跡表示の処理を示す。
物体の軌跡の表示処理は、軌跡データDBから物体の軌跡データを順次抽出して、表示装置に表示する処理である。表示処理は、認識データDB70を参照することにより支障物203が認識された場合、管理者が画面上で詳細に確認するために、その物体の固有IDを指定してその支障物の軌跡を表示することで行なわれる。
【0028】
まず、管理者は、PC2の入力装置24を操作して表示装置23に物体の軌跡表示のためのモードを指示する。表示対象とする物体については、個別の物体の軌跡を表示するのか、或いは全ての物体の軌跡を表示するのかを決める。もし、個別の物体の軌跡を表示する場合には当該物体の固有IDをPC2の入力装置24から入力し、一方、全ての物体の軌跡を一括して表示する場合には物体毎の個別IDを入力する必要はない。
【0029】
CPU21は、物体の固有IDを指定する入力であるかを確認する(S101)。確認の結果、固有IDの指定が有りの場合は(S102)、当該固有IDについて、軌跡データDB80を検索して、固有IDに対応する物体の軌跡データを抽出する(S103)。一方、固有IDの指定が無しの場合は、軌跡データDB80に格納されている、固有IDが付与された全ての物体の動作を表示するため、対象となる全物体の軌跡データを抽出する(S103)。監視領域の状況は時々刻々と変化するので、全ての物体としては、所定時間内例えば30分以内に新規に登録又は更新された物体を表示対象として抽出する。
【0030】
軌跡データDB80から抽出された物体の軌跡データは、CPU21の処理により、時刻毎に位置座標と移動ベクトルが計算されて、表示装置23に表示される(S104)。その後、軌跡の表示処理の終了が判断され(S105)。継続の場合は、物体の固有IDの指定確認のステップS101)へ遷移し、終了の場合は軌跡表示を終了する(S105)。
【符号の説明】
【0031】
1:監視領域 101,102,10n:認識領域
11,111,112,11n:レーザセンサ、12,121,122,12n:物体測距部
2:PC 21:CPU 22:DB 23:表示装置 24:入力装置、
202:列車、 203:支障物。
【技術分野】
【0001】
本発明は、物体監視システム及び方法に係り、特に、線路上などの広範囲に設定される監視領域に存在する物体の存在位置を監視する場合、監視領域を複数の認識領域に分割し、これらの認識領域において物体を検知し、検知された物体の情報を処理する物体監視システム及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
レーザセンサを用いて、監視領域内に出入りする物体の存在を測定する技術が知られている。例えば、特許文献1には、監視領域内においてレーザレーダにより検知された物体が障害物であるか否かを短時間で判断する検知装置が開示されている。この検知装置は、所定の監視領域を走査するレーザレーダと、これにより検知される距離情報とその走査方向の情報とから3次元レーダ情報を求めるレーダ情報作成手段と、3次元レーダ情報から存在する物体を検知する物体検知手段と、物体の進行方向に対して複数に分割された領域として認識する領域認識手段と、分割領域の1つに所定時間継続して物体が滞留したときに障害物が滞留していると判断する障害物判断手段を備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−214718号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載された、レーザセンサにて物体検知する技術は、踏切における線路の延長方向両側に隣接する周辺領域を1つのレーザセンサで測距している。車両等の物体の進行方向に対して複数に分割された領域として物体の位置を検知するが、監視領域内の複数領域を跨ぐ測距における物体の検知について開示されておらず、技術的に考慮されていない。
【0005】
本発明の目的は、対象となる監視領域を複数の認識領域に分割し、各認識領域に設置されたレーザセンサにより各認識領域内の物体を経時的に監視し、認識領域間に渡って物体を認識しながら物体の動きを監視することができる物体監視システム及び方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る物体監視システムは、好ましくは、対象とする監視領域を複数の認識領域に分割し、各認識領域にレーザセンサを設置して、該認識領域内に存在する物体を経時的に監視する物体監視システムあって、
各レーザセンサの照射により対象とする該認識領域の測距データを得る測距手段と、該認識領域において検知される物体及びそのサイズに関する情報を予め格納する物体特定データDBと、物体のサイズが認識された物体について、物体毎に固有のIDを付与して該物体の測距データを格納する認識データDBと、認識された物体の移動に関する情報を格納する軌跡データDBと、該測距手段によって取得された測距データと、該物体特定データDBに格納された情報を照合することにより、物体のサイズを基に支障物を判定する第1判定手段と、
該第1判定手段による判定の結果、支障物と判定された物体について、該認識データDBに格納された物体のデータと照合することにより、複数の認識領域に渡って移動する物体であって、以前に検知された物体と同一かを判定する第2判定手段と、
該第2判定手段による判定の結果、既に検知された物体と同一の物体である場合には、該認識データDBの当該物体に関する測距データを追加し、未検知の物体である場合には、該物体に関する測距データを該認識データDBに新たに登録する手段と、
該第2判定手段によって判定された、同一の物体及び新規の物体の移動に関する情報について軌跡データDBを更新する手段と、を有することを特徴とする物体監視システムとして構成される。
好ましい例では、前記物体監視システムにおいて、該軌跡データDBから読み出された移動に関する情報を基に該物体の軌跡を算出して、表示する表示手段を更に有する。
【0007】
また、本発明に係る物体監視方法は、好ましくは、対象とする監視領域を複数の認識領域に分割し、各認識領域にレーザセンサを設置して、該認識領域内に存在する物体を経時的に監視する物体監視方法であって、
各レーザセンサの照射により対象とする該認識領域の測距データを得る測距ステップと、該認識領域において検知される物体及びそのサイズに関する情報を物体特定データDBに予め格納するステップと、物体のサイズが認識された物体について、物体毎に固有のIDを付与して該物体の測距データを認識データDBに格納するステップと、認識された物体の移動に関する情報を軌跡データDBに格納するステップと、
該測距ステップによって取得された測距データと、該物体特定データDBに格納された情報を照合することにより、物体のサイズを基に支障物を判定する第1判定ステップと、
該第1判定ステップによる判定の結果、支障物と判定された物体について、該認識データDBに格納された物体のデータと照合することにより、複数の認識領域に渡って移動する物体であって、以前に検知された物体と同一かを判定する第2判定ステップと、
該第2判定ステップによる判定の結果、既に検知された物体と同一の物体である場合には、該認識データDBの当該物体に関する測距データを追加し、未検知の物体である場合には、該物体に関する測距データを該認識データDBに新たに登録するステップと、
該第2判定ステップによって判定された、同一の物体及び新規の物体の移動に関する情報について軌跡データDBを更新するステップと、を有することを特徴とする物体監視方法として構成される。
好ましい例では、前記物体監視方法において、該軌跡データDBから読み出された移動に関する情報を基に該物体の軌跡を算出して表示手段に表示するステップを更に有する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、線路上などを対象とした監視領域を複数の認識領域に分割して、各認識領域に設置されたレーザセンサにより認識領域内の物体を経時的に監視し、何れかのレーザセンサの測距データに基づいて最初に物体を検知した場合、その物体を特定して、物体検知の当初から支障物か否かを認識することができる。これにより、複数の認識領域に渡って移動する支障物に関する情報を認識領域間で共有しながら各認識領域における物体の動きを監視することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の一実施例における物体監視システムの構成を示す図。
【図2】一実施例における物体の監視領域の例を示す図。
【図3】一実施例における背景データDBの記録フォーマットを示す図。
【図4】一実施例における測距データDBの記録フォーマットを示す図。
【図5】一実施例におけるクラスタデータDBの記録フォーマットを示す図。
【図6】一実施例における物体特定データDBの記録フォーマットを示す図。
【図7】一実施例における認識データDBの記録フォーマットを示す図。
【図8】一実施例における軌跡データDBの記録フォーマットを示す図。
【図9】一実施例における物体の監視処理を示すフローチャート図。
【図10】一実施例における物体の軌跡表示の処理を示すフローチャート図。
【図11】一実施例におけるポイントデータDBの記録フォーマットを示す図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の好適な実施の形態を、図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施例における物体監視システムの構成を示す。
この物体監視システムにより監視される領域(監視領域)1は、複数nに分割され、それぞれの領域(認識領域)101〜10n(総じて10と示す)に、レーザセンサ111〜11n(総じて11と示す)が設置される。物体監視システムは、各レーザセンサ11の照射により物体を検知する物体測距部121〜12n(総じて12と示す)と、レーザセンサ制御及びレーザセンサからの測距データを処理するパーソナルコンピュータ(PC)2を有して構成される。
【0011】
各レーザセンサ11は、各認識領域の前方180°の範囲を0.5°刻みで角度を変えながら物体までの距離を経時的に測距して、その測距データをPC2に順次送る。PC2は、取得した測距データを用いて物体の存在位置を計算する処理装置(CPU)21と、測距データ及び物体の位置に関係する種々のデータを記憶するデータベース(DB)22、情報を表示する表示装置23、情報を入力する入力装置24を有する。後で詳述するが、PC2のCPU21はプログラムの実行により、物体測距部12から分解能0.5°の毎に得られた測距データを用いて、検知された物体について、DB22に予め格納された物体情報と照合することで物体を特定することができる。
【0012】
図2は、監視領域として線路上に沿って複数の認識領域が設定された例を示す。
線路に沿って設定された監視領域1は、複数の認識領域10に分割して設定される。まず、監視領域の設定は、PC2の入力装置24から、横L1:4500cm、縦L2:2100cmのように入力する。さらに、この監視領域を例えば3つに分割して認識領域を規定し、認識領域1(L11:1500cm、L2=2100cm)、認識領域2(L12:1500cm、L2=2100cm)、認識領域3(L13:1500cm、L2=2100cm)、のように入力することで、各認識領域の設定が行われる。
【0013】
これらの認識領域10において線路上を走行する列車202や線路上に存在する支障物203を経時的に監視する。認識領域101〜10nにおいてレーザセンサ111,112,11nがその照射方向を変えて千鳥(チドリ)状に設置される。各レーザセンサ11のレーザ照射により物体測距部12に測距データが経時的に得られる。各物体測距部12で得られた測距データはPC2へ送信される。
【0014】
認識領域10は、例えば、監視領域1で見たときに列車の運行に際して障害発生と判断される要因(人体、小動物、石、障害物などの支障物の検知)を経時的に監視しながら最小単位で検知して識別する。複数の認識領域10で識別される物体の情報は認識データDBに格納され、共有される。
最小単位で検知される支障物203のデータの取得は、支障物203の存在位置の特定がし易いため、経時的に線路上の監視領域1の監視を実行しながらも、保守などの特別な条件下では、認識領域10の単位で検知物体を障害発生の要因外とすることも可能である。
【0015】
複数の連続した認識領域を経時的に監視することで複数の認識領域で同じ障害物を検知することができる。1つの支障物が複数の認識領域10間を移動する場合や、複数の支障物が複数の認識領域10で検知される場合も考えられる。また、架線やケーブルなどの断線による垂れ下がりなども推定されるが、各認識領域10の背景データを予め取得しておき、経時的な測距データとの差分から障害発生を容易に抽出することが可能である。また、線路上を通過する列車は進行方向に対して、認識領域101に対する物体測距部1(121)、認識領域102に対する物体測距部2(122)、認識領域10nに対する物体測距部n(12n)の順に検知されることになる。なお、図2中、(3112,251)のように示してあるのは、物体の座標を示す。
【0016】
DB22には、検知された物体を特定するため及び物体情報を処理するために、幾つかのDB30〜80が用意される。即ち、各認識領域における物体の存在しない背景となる背景データ(角度、背景データ)を登録する背景データDB30(図3)、各レーザセンサからの測距データ(角度、測距データ、背景データ)を登録する測距データDB40(図4)、検知された物体毎に付与される固有のID(クラスタID)毎にポイント座標から求めた物体の中心座標を示すクラスタデータを登録するクラスタデータDB50(図5)、何れかの監視領域において検知された物体のサイズ(縦×横/cm)を示す物体特定データを登録する物体特定データDB60(図6)、経時的な物体認識により特定された物体の測距データを登録する認識データDB70(図7)、測距データから物体の形状を連続する点の集まりの座標値をポイントデータとしたポイントデータDB110(図11)、及び物体の移動に関する軌跡データ(日時、位置座標、移動ベクトル)を登録する軌跡データDB80(図8)を有する。なお、物体特定データDB60は、検知が予想される複数の物体のサイズ(縦×横/cm)を予め登録しておくのが好ましい。ポイントデータDB110は、レーザセンサで検知された物体データ(背景データを差分を取ったもの)をポイントデータとして連続的に記憶したものである。
【0017】
各レーザセンサにより検知された測距データは測距データDB40に一時的に保管される。そして、CPU21の処理により、背景データDB30に登録されたデータと、測距データDB40に保管された測距データの差分が取られて物体が検知される。その後、検知された物体毎に固有IDを付与し、その近接した周辺のポイント座標を計算し、かつ中心座標を求める処理をし、その結果をクラスタデータDB50に記憶する。さらに、物体特定データDB60を用いて対象の物体をサイズから特定し、その後、物体の存在位置の計算を処理による認識データDB70を用いて支障物203を判断する。
その後又は必要時に、管理者はPC2の入力装置24を操作して物体の固有IDを指定すると、CPU21は軌跡データDB80に格納された物体情報から、指定された固有IDに対応する物体の軌跡データを読み出して、その物体の軌跡を計算して表示装置23に表示する。
【0018】
図9は、一実施例における物体監視の処理を示すフローチャートである。
線路上に設定された監視領域1における物体監視は、線路上の物体を検知して支障物203を的確に判断して、その大きさや存在位置を表示装置23に表示することができる。物体の監視及び特定の処理は、CPU21でプログラムが実行されることで行われる。
まず、監視領域1における物体が無い状態の背景データ、及び複数のセンサによる測距データのマッチングをするためのキャリブレーションデータを取得し、背景データDB30に登録する(S91)。
【0019】
次に、監視領域1の分割による複数の認識領域101〜10nを設定する(S92)。これは、PC2の入力装置24から、複数に分割された各認識領域の縦及び横の長さを入力することで行われる。
次に、各認識領域における各レーザセンサ11で測距データが逐次取得され、その測距データは測距データDB40に格納される。また、それらの測距データは背景データDB30のデータと測距データDB40との差分を取り統合処理され、それにより検出された近接した周辺のポイントデータを生成してポイントデータDB110に格納される。
統合処理では、監視領域1で物体を検知するため、各レーザセンサ11からの測距データを重ね合わせて各レーザセンサを原点とした1つ(x,yで示される)極座標系データへ変換する。詳しくは、フレーム時間毎に任意の座標を原点とし、その原点からの各レーザセンサ11の座標、及びセンサの傾き(ピッチ角、ロール角、ヨー角)を考慮した座標を計測ポイントデータに変換することで、複数のレーザセンサで計測している空間を1つの座標系に統合するものである。これにより、(複数の認識領域10にて構成される)監視領域1においてレーザセンサ11での測距データのズレや不一致をキャリブレーション(補正)した測距データ得ることができる。(S931)。
そして、物体を検知するために、近接した周辺のポイントをクラスタと呼ぶ纏まりで区別して、それに固有ID(クラスタID)を付与して中心座標を求めて、クラスタデータDB50に格納する(S932)。
【0020】
次に、支障物(人(物体番号91)や小動物(物体番号92))の判定処理が行われる(S94)。この処理は、物体特定データDB60から物体データを読み出して、測距データと比較して、物体の大きさの点から物体を特定する。比較の結果、例えば列車202以外の線路上の支障物203の場合には、同一物体の判定(即ち他の認識領域で検知されたか又は同じ認識領域で過去に検知された物体かの判定)が行われる(S95)。一方、支障物でない場合には、同一性の判定をせずに、軌跡表示処理(S96)に移る。
【0021】
支障物の判定の結果、支障物として判定された場合、認識データDB70を参照して認識データDB70内に記憶された支障物(物体番号、固有ID、物体の距離データ等)を検索する(S951)。そして、認識データDB70に記憶されている物体データの中に、これまで認識され記憶された同一物体が有るかの判定をする(S952)。認識データDB70は、先のステップS94で物体特定データDB60を参照して物体のサイズを以て判定した際に物体番号を記録しており、これが同一物体の大きさを判断する要素になる。例えば、人の場合、物体番号91で、60cm×60cmのサイズとしてその大きさを判定する。
【0022】
同一物体と判定された場合には、当該物体番号の物体について、最近取得したデータ(角度、距離データ、背景データ等)が認識データDB70に追加されて更新される。また、同一物体と判定されない(即ち別物体)場合、当該物体の物体番号に新たな固有IDの付いた物体のデータ(角度、距離データ、背景データ等)が認識データDB70に追加される。このようにして、認識データDB70内の物体の位置データが追加、更新される。
【0023】
物体の移動に伴う軌跡に関して、物体の移動と共に、その物体の時間データとその位置座標及び移動ベクトルが更新されて、軌跡データDB80に登録される(S961)。即ち、同一と判定された物体については、当該物体の新たに取得された位置データが追加されて軌跡データDB80に登録され、また、新規の物体については、その位置データが新たに登録される。
その後、物体の移動軌跡の表示処理については、軌跡データDB80に記憶されたデータを順次読み出しながら表示装置23に表示する(S962)。この軌跡の表示については、図10を参照して後述する。最後に、物体監視の終了を判断して終了する(S97)。
【0024】
測距データの統合処理S931について説明する。各レーザセンサにて測距を担当する認識領域の物理的な配置を把握するために、全体の空間に対応した座標系を持っている。各レーザセンサ固有の認識領域に対して定めている空間座標系は、その監視領域内にて有効な領域であり、複数のレーザセンサが独自の監視領域を対象としている場合は、単なる座標変換にて監視領域1における物体監視の実現が可能である。
【0025】
しかし、監視領域内にて複数のレーザセンサが同一物体を検知する可能性が有る場合、各レーザセンサにより検知された物体を同一物体として判断する必要がある。その場合、座標変換のみでは対応することが出来ない。これは、各レーザセンサの性能により発生する測距誤差、レーザセンサを配置した空間に対して発生するレーザセンサの傾き誤差など、又測距データを統合する際は、測距データにおける誤差を最小範囲にするため、時刻同期により測距データの同時性を確保することが必要となる。
【0026】
そこで、本実施例において、統合処理S931は、1つの測距データとしての同時性を確保するため、時刻同期した測距データについて、実空間における一定範囲の差違を整合させことにする。具体的には、統合の処理において、グリッドと呼ぶ許容範囲を指定し、この範囲内に測距にて検出された近接した周辺のポイントをクラスタデータと呼ぶ纏まりで区別して、その差違を整合(同一物体として扱う)させる。
このように、測距データの統合処理することで、統合結果を監視領域の全領域(若しくは設定可能な当該領域)を対象に、1つの測距データとして取り扱うことができ、機能的にはクラスタに固有IDを付与して処理されることで、そこに固有IDを持った物体の存在を表示することができる。
【0027】
図10は、物体の軌跡表示の処理を示す。
物体の軌跡の表示処理は、軌跡データDBから物体の軌跡データを順次抽出して、表示装置に表示する処理である。表示処理は、認識データDB70を参照することにより支障物203が認識された場合、管理者が画面上で詳細に確認するために、その物体の固有IDを指定してその支障物の軌跡を表示することで行なわれる。
【0028】
まず、管理者は、PC2の入力装置24を操作して表示装置23に物体の軌跡表示のためのモードを指示する。表示対象とする物体については、個別の物体の軌跡を表示するのか、或いは全ての物体の軌跡を表示するのかを決める。もし、個別の物体の軌跡を表示する場合には当該物体の固有IDをPC2の入力装置24から入力し、一方、全ての物体の軌跡を一括して表示する場合には物体毎の個別IDを入力する必要はない。
【0029】
CPU21は、物体の固有IDを指定する入力であるかを確認する(S101)。確認の結果、固有IDの指定が有りの場合は(S102)、当該固有IDについて、軌跡データDB80を検索して、固有IDに対応する物体の軌跡データを抽出する(S103)。一方、固有IDの指定が無しの場合は、軌跡データDB80に格納されている、固有IDが付与された全ての物体の動作を表示するため、対象となる全物体の軌跡データを抽出する(S103)。監視領域の状況は時々刻々と変化するので、全ての物体としては、所定時間内例えば30分以内に新規に登録又は更新された物体を表示対象として抽出する。
【0030】
軌跡データDB80から抽出された物体の軌跡データは、CPU21の処理により、時刻毎に位置座標と移動ベクトルが計算されて、表示装置23に表示される(S104)。その後、軌跡の表示処理の終了が判断され(S105)。継続の場合は、物体の固有IDの指定確認のステップS101)へ遷移し、終了の場合は軌跡表示を終了する(S105)。
【符号の説明】
【0031】
1:監視領域 101,102,10n:認識領域
11,111,112,11n:レーザセンサ、12,121,122,12n:物体測距部
2:PC 21:CPU 22:DB 23:表示装置 24:入力装置、
202:列車、 203:支障物。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象とする監視領域を複数の認識領域に分割し、各認識領域にレーザセンサを設置して、該認識領域内に存在する物体を経時的に監視する物体監視システムあって、
各レーザセンサの照射により対象とする該認識領域の測距データを得る測距手段と、
該認識領域において検知される物体及びそのサイズに関する情報を予め格納する物体特定データDBと、
物体のサイズが認識された物体について、物体毎に固有のIDを付与して該物体の測距データを格納する認識データDBと、
認識された物体の移動に関する情報を格納する軌跡データDBと、
該測距手段によって取得された測距データと、該物体特定データDBに格納された情報を照合することにより、物体のサイズを基に支障物を判定する第1判定手段と、
該第1判定手段による判定の結果、支障物と判定された物体について、該認識データDBに格納された物体のデータと照合することにより、複数の認識領域に渡って移動する物体であって、以前に検知された物体と同一かを判定する第2判定手段と、
該第2判定手段による判定の結果、既に検知された物体と同一の物体である場合には、該認識データDBの当該物体に関する測距データを追加し、未検知の物体である場合には、該物体に関する測距データを該認識データDBに新たに登録する手段と、
該第2判定手段によって判定された、同一の物体及び新規の物体の移動に関する情報について軌跡データDBを更新する手段と、を有することを特徴とする物体監視システム。
【請求項2】
請求項1に記載の物体監視システムにおいて、
該軌跡データDBから読み出された移動の情報を基に該物体の軌跡を算出して、表示する表示手段を更に有することを特徴とする請求項1の物体監視システム。
【請求項3】
対象とする監視領域を複数の認識領域に分割し、各認識領域にレーザセンサを設置して、該認識領域内に存在する物体を経時的に監視する物体監視方法であって、
各レーザセンサの照射により対象とする該認識領域の測距データを得る測距ステップと、
該認識領域において検知される物体及びそのサイズに関する情報を物体特定データDBに予め格納するステップと、
物体のサイズが認識された物体について、物体毎に固有のIDを付与して該物体の測距データを認識データDBに格納するステップと、
認識された物体の移動に関する情報を軌跡データDBに格納するステップと、
該測距ステップによって取得された測距データと、該物体特定データDBに格納された情報を照合することにより、物体のサイズを基に支障物を判定する第1判定ステップと、
該第1判定ステップによる判定の結果、支障物と判定された物体について、該認識データDBに格納された物体のデータと照合することにより、複数の認識領域に渡って移動する物体であって、以前に検知された物体と同一かを判定する第2判定ステップと、
該第2判定ステップによる判定の結果、既に検知された物体と同一の物体である場合には、該認識データDBの当該物体に関する測距データを追加し、未検知の物体である場合には、該物体に関する測距データを該認識データDBに新たに登録するステップと、
該第2判定ステップによって判定された、同一の物体及び新規の物体の移動に関する情報について軌跡データDBを更新するステップと、を有することを特徴とする物体監視方法。
【請求項4】
請求項3に記載の物体監視方法において、
該軌跡データDBから読み出された移動の情報を基に該物体の軌跡を算出して、表示手段に表示するステップを更に有することを特徴とする物体監視方法。
【請求項1】
対象とする監視領域を複数の認識領域に分割し、各認識領域にレーザセンサを設置して、該認識領域内に存在する物体を経時的に監視する物体監視システムあって、
各レーザセンサの照射により対象とする該認識領域の測距データを得る測距手段と、
該認識領域において検知される物体及びそのサイズに関する情報を予め格納する物体特定データDBと、
物体のサイズが認識された物体について、物体毎に固有のIDを付与して該物体の測距データを格納する認識データDBと、
認識された物体の移動に関する情報を格納する軌跡データDBと、
該測距手段によって取得された測距データと、該物体特定データDBに格納された情報を照合することにより、物体のサイズを基に支障物を判定する第1判定手段と、
該第1判定手段による判定の結果、支障物と判定された物体について、該認識データDBに格納された物体のデータと照合することにより、複数の認識領域に渡って移動する物体であって、以前に検知された物体と同一かを判定する第2判定手段と、
該第2判定手段による判定の結果、既に検知された物体と同一の物体である場合には、該認識データDBの当該物体に関する測距データを追加し、未検知の物体である場合には、該物体に関する測距データを該認識データDBに新たに登録する手段と、
該第2判定手段によって判定された、同一の物体及び新規の物体の移動に関する情報について軌跡データDBを更新する手段と、を有することを特徴とする物体監視システム。
【請求項2】
請求項1に記載の物体監視システムにおいて、
該軌跡データDBから読み出された移動の情報を基に該物体の軌跡を算出して、表示する表示手段を更に有することを特徴とする請求項1の物体監視システム。
【請求項3】
対象とする監視領域を複数の認識領域に分割し、各認識領域にレーザセンサを設置して、該認識領域内に存在する物体を経時的に監視する物体監視方法であって、
各レーザセンサの照射により対象とする該認識領域の測距データを得る測距ステップと、
該認識領域において検知される物体及びそのサイズに関する情報を物体特定データDBに予め格納するステップと、
物体のサイズが認識された物体について、物体毎に固有のIDを付与して該物体の測距データを認識データDBに格納するステップと、
認識された物体の移動に関する情報を軌跡データDBに格納するステップと、
該測距ステップによって取得された測距データと、該物体特定データDBに格納された情報を照合することにより、物体のサイズを基に支障物を判定する第1判定ステップと、
該第1判定ステップによる判定の結果、支障物と判定された物体について、該認識データDBに格納された物体のデータと照合することにより、複数の認識領域に渡って移動する物体であって、以前に検知された物体と同一かを判定する第2判定ステップと、
該第2判定ステップによる判定の結果、既に検知された物体と同一の物体である場合には、該認識データDBの当該物体に関する測距データを追加し、未検知の物体である場合には、該物体に関する測距データを該認識データDBに新たに登録するステップと、
該第2判定ステップによって判定された、同一の物体及び新規の物体の移動に関する情報について軌跡データDBを更新するステップと、を有することを特徴とする物体監視方法。
【請求項4】
請求項3に記載の物体監視方法において、
該軌跡データDBから読み出された移動の情報を基に該物体の軌跡を算出して、表示手段に表示するステップを更に有することを特徴とする物体監視方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2012−47576(P2012−47576A)
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−189569(P2010−189569)
【出願日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【出願人】(390021577)東海旅客鉄道株式会社 (413)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【出願人】(000233295)日立情報通信エンジニアリング株式会社 (195)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【出願人】(390021577)東海旅客鉄道株式会社 (413)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【出願人】(000233295)日立情報通信エンジニアリング株式会社 (195)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]