説明

物品処理装置

【解決手段】 充填装置1はそれぞれスターホイール等の回転体を備えた供給コンベヤ2、インフィードスクリュー3、リンサ用供給スターホイール4、リンサ5、リンサ用排出スターホイール6、中間スターホイール7、フィラ用供給スターホイール8、フィラ9、フィラ・キャッパ用受け渡しスターホイール10、キャッパ11、キャッパ用排出スターホイール12、排出コンベヤ13から構成されている。
例えばフィラ9に異常が発生すると、制御手段14は第3ブレーキB3を作動させて上記フィラ9のスターホイールを強制的に停止させ、同時に、第1、第2、第4、第5サーボモータM1,M2,M4,M5を制御して、異常の発生していない設備のスターホイール等を上記フィラのスターホイールの停止時間で停止させる。
【効果】 所要の設備で異常が発生しても、各設備をほぼ同時に停止させて各設備の損傷等を防止することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は物品処理装置に関し、詳しくはそれぞれサーボモータによって駆動する回転体を備えた複数の設備が同期する物品処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、それぞれモータによって駆動する回転体を備えた複数の設備と、各設備のモータを制御して各設備を同期させる制御手段とを備えた物品処理装置が知られている。
このような物品処理装置は複数のモータを備えているため、一つのモータに複雑な駆動機構を設けて複数の回転体を同期させる必要がない代わりに、上記各設備のモータの回転を制御して複数の回転体を同期させなければならない。
そこで、各設備のモータの運転速度と位相とを検出するとともに、各設備の作動タイミングのずれを検出して、このずれを無くすように上記モータを制御するようにした物品処理装置が知られている(特許文献1)。
【特許文献1】特公昭63−6411号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記特許文献1のような物品処理装置の場合、いずれかの設備でモータや運転速度等を検出するセンサに異常が発生すると、当該異常の発生した設備のモータを制御することができず、異常の発生していない設備の回転体を同期して回転させることができなくなる。
その結果、特許文献1のように複数の設備間で物品の受け渡しを正常に行うことができず、物品が噛みこまれて設備が破損したりその後の復旧作業が煩雑になるといった問題が生じてしまう。
このような問題に鑑み、本発明は所要の設備で異常が発生しても、各設備をほぼ同時に停止させて各設備の損傷等を防止することの可能な物品処理装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
すなわち、本発明にかかる物品処理装置は、それぞれサーボモータによって駆動される回転体を備えた複数の設備と、各設備のサーボモータを制御して各設備を同期させる制御手段とを備えた物品処理装置において、
各設備はそれぞれ回転体を停止させるブレーキを備えるとともに、上記制御手段は上記各設備の回転体がブレーキによって停止する停止時間を記憶しており、
上記制御手段は、所要の設備に異常が発生すると、該異常の発生した設備の回転体をブレーキにより停止させ、同時に異常の発生していない他の設備のサーボモータを制御して、各設備の回転体を異常の発生した設備の停止時間で停止させることを特徴としている。
【発明の効果】
【0005】
上記発明によれば、仮に所要の設備に異常が発生した場合であっても、その異常の発生した設備の回転体をブレーキによって強制的に停止させることができる。
一方、異常の発生していない他の設備については、制御手段が上記異常の発生した設備の停止時間で停止させることから、物品処理装置を構成する全ての設備が同時に停止することとなり、設備の破損を防止することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
以下図示実施例について説明すると、図1は物品としての容器に飲料を充填する物品処理装置としての充填装置1を示している。
この充填装置1は複数の回転体を備える設備から構成されており、その上流側から順に、供給コンベヤ2、インフィードスクリュー3、リンサ用供給スターホイール4、リンサ5、リンサ用排出スターホイール6、中間スターホイール7、フィラ用供給スターホイール8、フィラ9、フィラ・キャッパ用受け渡しスターホイール10、キャッパ11、キャッパ用排出スターホイール12、排出コンベヤ13を備え、これらは制御手段14によって制御される。
ここで、上記供給コンベヤ2および排出コンベヤ13は回転体として図示しないスプロケットを備え、リンサ5、フィラ9、キャッパ11はそれぞれ回転体としてスターホイールを備えている。
また上記リンサ5は容器に洗浄液を噴射する図示しない洗浄ノズル等を備え、上記フィラ9は容器に飲料を充填するための図示しない充填ノズル等を備え、上記キャッパ11は容器にキャップを巻き締めるための図示しないキャッピングヘッド等を備えている。
さらに、リンサ用供給スターホイール4からキャッパ用排出スターホイール12には、それぞれ物品保持手段としての図示しないグリッパが設けられ、隣接するスターホイールの接近した位置で上流側のスターホイールのグリッパから下流側のスターホイールのグリッパへと容器が受け渡されるようになっている。
なお、上記リンサ5、フィラ9、キャッパ11の構成や、上記グリッパについては、従来公知であるため、詳細な説明は省略する。
【0007】
上記充填装置1は第1〜第5サーボモータM1〜M5によって駆動され、これら第1〜第5サーボモータM1〜M5はそれぞれ第1〜第5サーボアンプA1〜A5を介して制御手段14により制御されるようになっている。
上記第1サーボモータM1は伝達機構を介して供給コンベヤ2、インフィードスクリュー3、リンサ用供給スターホイール4、リンサ5、リンサ用排出スターホイール6を駆動し、各設備のスプロケットやスターホイールを同期させて回転させる。
上記第2サーボモータM2は伝達機構を介して中間スターホイール7およびフィラ用供給スターホイール8を同期して回転させる。
上記第3サーボモータM3は伝達機構を介してフィラ9のスターホイールを回転させる。
上記第4サーボモータM4は伝達機構を介してフィラ・キャッパ用受け渡しスターホイール10、キャッパ11、キャッパ用排出スターホイール12を駆動し、各設備のスターホイールを同期させて回転させる。
上記第5サーボモータM5は伝達機構を介して排出コンベヤ13を駆動し、これにより排出コンベヤ13のスプロケットが回転する。
【0008】
このように、例えば第1サーボモータM1によって、供給コンベヤ2、インフィードスクリュー3、リンサ用供給スターホイール4、リンサ5、リンサ用排出スターホイール6のスプロケットや各スターホイールが同期して回転するようになっている。
一方、リンサ用排出スターホイール6と中間スターホイール7とは、これを駆動するサーボモータが異なるため、制御手段14が第1、第2サーボモータM1,M2を制御して、これらを同期して回転させる必要がある。
そこで制御手段14は、第1〜第5サーボアンプA1〜A5に対して所要の制御パルスを出力し、第1〜第5サーボアンプA1〜A5はその制御パルスに基づいて第1〜第5サーボモータM1〜M5を回転させるようになっている。
これら第1〜第5サーボモータM1〜M5はそれぞれ図示しないエンコーダを備えており、このエンコーダは第1〜第5サーボモータM1〜M5の駆動軸の回転に基づいてフィードバックパルスを出力する。
このフィードバックパルスは上記第1〜第5サーボアンプA1〜A5に入力され、第1〜第5サーボアンプA1〜A5は、このフィードバックパルスに基づいて第1〜第5サーボモータM1〜M5の回転速度を調整するようになっている。
これにより、上記各設備のスプロケットやスターホイールが同期して回転し、これらの間で容器が適切に受け渡されることとなる。
ここで、上記制御パルスは、例えば第1サーボモータM1のエンコーダから出力されたフィードバックパルスに基づいて出力したり、また制御手段14に予め登録されたパターンのパルスを出力しても良い。
【0009】
次に、上記第1〜第5サーボモータM1〜M5の各駆動軸には、それぞれ制御手段14によって制御される第1〜第5ブレーキB1〜B5が設けられており、この第1〜第5ブレーキB1〜B5により各設備のスターホイール等を強制的に停止させることが可能となっている。
上記第1〜第5ブレーキB1〜B5は、それぞれ上記第1〜第5サーボモータM1〜M5の各駆動軸に設けられて該駆動軸とともに回転するブレーキディスクと、このブレーキディスクを両側から挟持して制動力を発生させるブレーキパッドとを備えており、このようなブレーキは従来公知となっている。
そして、例えば第1ブレーキB1を作動させる場合、上記制御手段14はまず第1サーボモータM1への電力を遮断し、第1サーボモータM1の駆動軸がフリーランとなるようにしてから第1ブレーキB1を作動させ、供給コンベヤ2、インフィードスクリュー3、リンサ用供給スターホイール4、リンサ5、リンサ用排出スターホイール6が同時に停止する。
制御手段14は、図2に示すような容器の処理速度の変化と、上記ブレーキによるスターホイール等の停止時間の変化との関係を記憶しており、同じ処理速度の場合、各設備は上記ブレーキによって同じ停止時間で停止するようになっている。
例えば、充填装置1で容器を600bpmで処理する場合、第1〜第5ブレーキB1〜B5は第1〜第5サーボモータM1〜M5が駆動する各設備のスターホイール等を約1秒で停止させ、その半分の300bpmで処理する場合は約0.5秒で停止させることができるようになっている。
なお、サーボモータの駆動軸がフリーランになると、該駆動軸にはそれまで回転していたスターホイール等から慣性力を受けるが、この慣性力は各設備のスターホイールの径や重量によって異なるものとなる。
このため、上記第1〜第5ブレーキB1〜B5には、上記処理速度の変化と停止時間の変化との関係が成立するよう、それぞれ異なる制動力が設定されている。
【0010】
以下、上記構成を有する充填装置1の制御方法について説明する。
まず、充填装置1が正常に運転される際の状態について説明すると、制御手段14は第1〜第5サーボアンプA1〜A5を介して第1〜第5サーボモータM1〜M5を制御する。
これにより、制御装置1を構成する各設備が同期して作動し、例えばリンサ用排出スターホイール6と中間スターホイール7とが同期して回転して、これらの間で容器の受け渡しが行われるようになる。
そして、上記供給コンベヤ2に供給された容器は、その後順次インフィードスクリュー3、リンサ用供給スターホイール4、リンサ5、リンサ用排出スターホイール6、中間スターホイール7、フィラ用供給スターホイール8、フィラ9、フィラ・キャッパ用受け渡しスターホイール10、キャッパ11、キャッパ用排出スターホイール12の順に搬送され、その間に容器の洗浄、飲料の充填、キャップの装着が行われる。そしてキャップの装着された容器は排出コンベヤ13によって図示しない後工程へと排出される。
【0011】
次に、所定の設備で異常が発生した場合の制御方法について説明する。ここでは仮にフィラ9で異常が発生した場合について説明する。
ここで、フィラ9で発生する異常とは、第3サーボモータM3を制御できなくなった場合をいい、第3サーボモータM3のエンコーダが故障してフィードバックパルスが得られない場合や、第3サーボアンプが故障して、制御手段14の制御パルス通りに第3サーボモータM3に電力が供給されない場合が考えられる。
このように制御手段14によって第3サーボモータM3を制御できなくなると、制御手段14は直ちに第3サーボモータM3への電力の供給を遮断する。
これにより第3サーボモータM3の駆動軸はフリーランするようになり、第3サーボモータM3によって駆動されるフィラ9のスターホイールは慣性によって回転を継続しようとする。
続いて、制御手段14は第3サーボモータM3の駆動軸に設けられた上記第3ブレーキB3を作動させ、フィラ9のスターホイールを強制的に停止させる。
ここで、第3ブレーキB3によるフィラ9のスターホイールの停止時間は、図2に示す関係に基づいており、例えば異常発生時の処理速度が600bpmである場合、フィラ9のスターホイールは第3ブレーキB3によって約1秒で停止する。
【0012】
一方、制御手段14は第3ブレーキB3によるフィラ9のスターホイールの停止時間を図2に示す関係に基づいて求め、さらに異常の発生していない他の設備を駆動する第1、第2、第4、第5サーボモータM1,M2.M4,M5を、上記停止時間で停止させるよう指令する。
具体的には、上記制御手段14が第3ブレーキB3を作動させるのと同時に、上記第1、第2、第4、第5サーボアンプA1,A2,A4,A5に停止させるための制御パルスを出力し、第1、第2、第4、第5サーボモータM1,M2.M4,M5を約1秒で停止させる。
これにより、異常の発生したフィラ9と、異常の発生していない他の設備がほぼ同時に停止するため、フィラ9のスターホイールの回転にほぼ同期して、これに隣接するフィラ用供給スターホイール8と、フィラ・キャッパ用受け渡しスターホイール10とが停止することとなる。
その結果、異常の発生していないフィラ用供給スターホイール8と異常の発生したフィラ9のスターホイールとの間と、異常の発生したフィラ9のスターホイールと異常の発生していないフィラ・キャッパ用受け渡しスターホイール10との間とで、受け渡し位置での容器の噛み込みが防止され、グリッパの損傷を防止することができる。
また、充填装置1を構成する各設備がほぼ同期して停止するので、その後充填装置1を再起動させる場合も、その作業が煩雑にならなくて済むようになっている。
【0013】
なお、上記実施例では、上記第1〜第5ブレーキの制動力を異ならせて、同じ処理速度の場合には各設備が同じ停止時間で停止するようにされているが、第1〜第5ブレーキの制動力を一定とすることも可能である。
この場合、上述した各設備のスターホイール等に作用する慣性力の違いから、同じ処理速度の場合、各設備は上記ブレーキによって異なる停止時間で停止することとなる。
そこで、制御手段14は各設備毎に、容器の処理速度の変化と、上記ブレーキによるスターホイール等の停止時間の変化との関係を記憶するようになっている。
そして例えばフィラ9に異常が発生してこれを第3ブレーキによって停止させる場合、制御手段14は充填装置1の処理速度からフィラ9の停止時間を求め、異常の発生していない他の設備を該フィラ9の停止時間で停止させる。
また、上記実施例では充填装置1について説明したが、その他サーボモータによって駆動される回転体を備えた複数の設備から構成され、これらの設備を同期させて作動させる物品処理装置にも適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本実施例にかかる充填装置に関する構成図。
【図2】制御手段に記憶された、各設備における容器の処理速度の変化と、そのときのブレーキによる回転体の停止時間の変化との関係を示すグラフ。
【符号の説明】
【0015】
1 充填装置 2 供給コンベヤ
3 インフィードスクリュー 4 リンサ用供給スターホイール
5 リンサ 6 リンサ用排出スターホイール
7 中間スターホイール 8 フィラ用供給スターホイール
9 フィラ
10 フィラ・キャッパ用受け渡しスターホイール
11 キャッパ 12 キャッパ用排出スターホイール
13 排出コンベヤ 14 制御手段
A1〜A5 第1〜第5サーボアンプ
B1〜B5 第1〜第5ブレーキ
M1〜M5 第1〜第5サーボモータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれサーボモータによって駆動される回転体を備えた複数の設備と、各設備のサーボモータを制御して各設備を同期させる制御手段とを備えた物品処理装置において、
各設備はそれぞれ回転体を停止させるブレーキを備えるとともに、上記制御手段は上記各設備の回転体がブレーキによって停止する停止時間を記憶しており、
上記制御手段は、所要の設備に異常が発生すると、該異常の発生した設備の回転体をブレーキにより停止させ、同時に異常の発生していない他の設備のサーボモータを制御して、各設備の回転体を異常の発生した設備の停止時間で停止させることを特徴とする物品処理装置。
【請求項2】
制御手段は各設備における物品の処理速度の変化と、そのときの回転体の回転速度に応じたブレーキによる回転体の停止時間の変化との関係を記憶しており、所要の設備に異常が発生すると、制御手段はそのときの当該設備の処理速度に対応する停止時間で設備を停止させることを特徴とする請求項1に記載の物品処理装置。
【請求項3】
各設備は、上記サーボモータによって駆動される回転体としてのスターホイールと、スターホイールに設けられて物品を把持する物品保持手段とを備え、
各設備のスターホイールが隣接した位置で、一方のスターホイールの物品保持手段から他方のスターホイールの物品保持手段へと物品の受け渡しを行い、
異常の発生した設備の回転体がブレーキにより停止する際、制御手段は異常の発生していない設備のサーボモータを制御して、該設備のスターホイールを異常の発生した設備のスターホイールに同期するように回転させながら停止させ、その間上記物品保持手段による物品の受け渡しが行われるようにすることを特徴とする請求項1または請求項2のいずれかに記載の物品処理装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−173407(P2009−173407A)
【公開日】平成21年8月6日(2009.8.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−14509(P2008−14509)
【出願日】平成20年1月25日(2008.1.25)
【出願人】(000253019)澁谷工業株式会社 (503)
【Fターム(参考)】