説明

物理量センサ装置

【課題】 パッケージに角速度検出を行うセンサ素子を取り付けてなる角速度センサ装置において、外部加速度の変化に応じて、外部加速度のセンサ素子に対する減衰量を適切に制御する。
【解決手段】 パッケージ100と、パッケージ100に取り付けられた角速度検出を行うセンサ素子200とを備える角速度センサ装置S1において、センサ素子200は、粘性を制御することの可能なER流体やMR流体などの粘性制御液体300に支持された状態でパッケージ100に取り付けられ、センサ素子200に印加される加速度を検出し、この検出された加速度に基づいて制御電極110に加える電圧を制御するようになっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パッケージに物理量検出を行うセンサ素子を取り付けてなる物理量センサ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、この種の物理量センサ装置は、角速度や加速度などの物理量を検出するセンサ素子を、パッケージに取り付けてなるもので、角速度センサ装置や加速度センサ装置などとして適用される。
【0003】
このような物理量センサ装置においては、外部から衝撃すなわち外部加速度が加わるとセンサ特性に問題が生じる。
【0004】
たとえば、角速度センサ装置においては、検出方向へ発生するコリオリ力に基づいて角速度を検出するが、外部から検出方向への加速度がパッケージを介してセンサ素子に伝達されると、角速度が印加されていないにもかかわらず、あたかも角速度が生じたかのように出力がなされる。
【0005】
ここで、従来より、角速度センサ装置において、パッケージ(ハウジング)に防振部材としての防振ゴムを設け、この防振ゴムによって角速度センサ素子を支持することにより、外部加速度による不要振動を吸収するようにしたものが提案されている(特許文献1参照)。
【0006】
このような構成によれば、外部加速度がパッケージを介してセンサ素子に伝達される経路において、外部加速度は、防振ゴムにより減衰されて、センサ素子へ伝達される。そのため、センサ素子に対する不要振動が減少するとされている。
【特許文献1】特開2000−55667号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記の特許文献1に記載されているような防振部材によりセンサ素子を支持するようにした構成においては、外部加速度がセンサ素子へ伝わるときの減衰量を大きくするために、防振部材を軟らかくしすぎると、センサ装置本体の強度が保証できなくなってしまう。
【0008】
また、センサ装置の強度を確保しようとすれば、逆に、防振部材が硬くなりすぎて減衰量が小さくなり、外部加速度がセンサ素子に伝わりやすくなってしまうというデメリットが生じる。
【0009】
つまり、パッケージにセンサ素子を取り付けてなる物理量センサ装置においては、変化する外部加速度の大きさに応じて、外部加速度のセンサ素子に対する減衰量を適切なものにする必要があるが、従来では、そのような試みはなされていなかった。
【0010】
本発明は、上記したような問題に鑑みてなされたものであり、パッケージに物理量検出を行うセンサ素子を取り付けてなる物理量センサ装置において、外部加速度の変化に応じて、外部加速度のセンサ素子に対する減衰量を適切に制御できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明では、パッケージ(100)と、パッケージ(100)に取り付けられた物理量検出を行うセンサ素子(200)とを備える物理量センサ装置において、センサ素子(200)は、粘性を制御することの可能な粘性制御液体(300)に支持された状態でパッケージ(100)に取り付けられていることを特徴としている。
【0012】
それによれば、センサ素子(200)は粘性制御液体(300)を介してパッケージ(100)に支持されており、外部加速度の変化に応じて粘性制御液体(300)の粘性を変化させるように制御することができる。
【0013】
そのため、本発明によれば、パッケージ(100)に物理量検出を行うセンサ素子(200)を取り付けてなる物理量センサ装置において、外部加速度の変化に応じて、外部加速度のセンサ素子(200)に対する減衰量を適切に制御することができる。
【0014】
また、請求項2に記載の発明では、請求項1に記載の物理量センサ装置において、粘性制御液体(300)は、印加される電界により粘性が変化するER流体であり、粘性制御流体(300)に電界を印加するための制御電極(110)が設けられていることを特徴としている。
【0015】
また、請求項3に記載の発明では、請求項1に記載の物理量センサ装置において、粘性制御液体(300)は、印加される磁界により粘性が変化するMR流体であり、粘性制御流体(300)に印加する磁界を発生するための制御電極(110)が設けられていることを特徴としている。
【0016】
ここで、ER(Electrorheological)流体は外部から電場を与えることによってその粘性が大きく変化するものであり、MR(Magnetorheological)流体は外部から磁場を与えることによってその粘性が大きく変化するものであり、それぞれ一般に知られているものである。
【0017】
請求項2や請求項3に記載の発明のように、粘性制御液体(300)として、これらER流体やMR流体を用い、これら流体に電界や磁界を与えて制御するための制御電極(110)を設けたものにすることにより、外部加速度の変化に応じて粘性制御液体(300)の粘性を適切に変化させることができる。
【0018】
また、請求項4に記載の発明のように、請求項2または請求項3に記載の物理量センサ装置においては、制御電極(110)は、パッケージ(100)に設けられているものにできる。
【0019】
また、請求項5に記載の発明のように、請求項1〜請求項4に記載の物理量センサ装置においては、センサ素子(200)は、パッケージ(100)内に充填された粘性制御液体(300)に封止された状態で支持されているものにできる。
【0020】
また、請求項6に記載の発明のように、請求項1〜請求項4に記載の物理量センサ装置においては、センサ素子(200)は、保持体(500)を介してパッケージ(100)に固定されており、粘性制御液体(300)は、保持体(500)に含浸されているものにできる。
【0021】
また、請求項7に記載の発明のように、請求項2または請求項3に記載の物理量センサ装置において、センサ素子(200)が回路基板(600)に固定されており、回路基板(600)が保持体(500)を介してパッケージ(100)に支持されており、粘性制御液体(300)が保持体(500)に含浸されている場合、制御電極(110)は、パッケージ(100)に設けられているものにできる。
【0022】
また、請求項8に記載の発明のように、請求項2または請求項3に記載の物理量センサ装置において、パッケージ(100)に回路基板(600)が固定されており、センサ素子(200)が保持体(500)を介して回路基板(600)に支持されており、粘性制御液体(300)が保持体(500)に含浸されている場合、制御電極(110)は、回路基板(600)に設けられているものにできる。
【0023】
ここにおいて、請求項9に記載の発明のように、請求項6〜請求項8に記載の物理量センサ装置においては、保持体(500)としては、高分子からなるものを採用することができる。
【0024】
また、請求項10に記載の発明のように、請求項1〜請求項9に記載の物理量センサ装置においては、センサ素子(200)に印加される加速度を検出するための加速度検出部(410)が備えられており、加速度検出部(410)にて検出された加速度に基づいて制御電極(110)に加える電圧を制御するようになっていることが好ましい。
【0025】
なお、上記各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示す一例である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、本発明の実施形態について図に基づいて説明する。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、説明の簡略化を図るべく、図中、同一符号を付してある。
【0027】
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態に係る物理量センサ装置としての角速度センサ装置S1の概略断面構成を示す図である。
【0028】
[構成等]
図1に示されるように、この角速度センサ装置S1は、大きくは、パッケージ100と、パッケージ100に取り付けられた物理量としての角速度の検出を行うセンサ素子200と、パッケージ100とセンサ素子200との間に介在してセンサ素子200を支持する粘性制御液体300とを備えて構成されている。
【0029】
パッケージ100は、センサ素子200と粘性制御液体300とを収納するものであって、角速度センサ装置S1の本体を区画形成する基部となるとともに、角速度センサ装置S1を被測定体の適所に取り付けるためのものである。
【0030】
このパッケージ100は、特に限定するものではないが、セラミックや樹脂などからなるものにできる。
【0031】
具体的には、パッケージ100は、図示しないが、たとえばアルミナなどのセラミック層が複数積層された積層基板として構成されており、各セラミック層の表面や各セラミック層に形成されたスルーホールの内部に配線が形成されたものにできる。そして、この配線を介して角速度センサ装置S1と外部とが電気的に接続可能となっている。
【0032】
また、パッケージ100には、その内部に収納される粘性制御液体300を制御するための制御電極110が設けられている。この制御電極110はAlやCuなどをパッケージ100に貼り付けてなるものにできる。
【0033】
この制御電極110は一対のもので、これら一対の制御電極110間に電圧を印加できるようになっており、この電圧の印加により粘性制御液体300の粘性を変化させ制御することが可能になっている。
【0034】
また、パッケージ100の開口部には蓋(リッド)120が溶接やロウ付けなどにより取り付けられている。この蓋120は樹脂、セラミックなど何でもよく、そして、この蓋120によってパッケージ100の内部が封止されている。
【0035】
次に、センサ素子200は、角速度検出を行う振動体20を備えるセンサチップ10を有するものである。このセンサチップ10について、て図2を参照して説明する。図2は、センサチップ200の概略平面構成を示す図である。
【0036】
このセンサチップ10は、半導体基板などの基板から構成され、この基板に対して周知のマイクロマシン加工を施すことにより形成される。
【0037】
たとえば、当該基板としては、第1の半導体層としての第1シリコン層上に絶縁層としての酸化膜を介して第2の半導体層としての第2シリコン層を貼り合わせてなる矩形状のSOI(シリコン−オン−インシュレータ)基板を採用することができる。
【0038】
そして、この基板の表層、たとえばSOI基板における第2シリコン層に対して、トレンチエッチングおよびリリースエッチングなどを施すことにより、図2に示されるように、溝で区画された梁構造体20〜60が形成されている。
【0039】
この梁構造体20〜60は、大きくは、振動体20と各梁部23、40と各電極50、60とから構成されている。
【0040】
振動体20は、センサチップ10を構成する基板と水平な面内すなわち図2中の紙面内にて振動可能なように当該の中央部に形成されている。本例では、振動体20は、中央部に位置する略矩形状の第1の振動部21と、この第1の振動部21の外周に位置する矩形枠状の第2の振動部22と、これら第1および第2の振動部21、22を連結する駆動梁部23とから構成されている。
【0041】
この振動体20は、上記基板の周辺部に設けられたアンカー部30に対して検出梁部40を介して連結されている。ここで、アンカー部40は、上記基板のうち当該梁構造体20が形成されている表層の下部すなわち支持基板部に固定され支持されているものであり、振動体20は、当該支持基板部から浮遊している。
【0042】
ここで、図2に示されるように、駆動梁部23は、たとえばy方向に延びる形状をなすものとすることで実質的にx方向のみに弾性変形可能なものであり、検出梁部40は、たとえばx方向に延びる形状をなすものとすることで実質的にy方向のみに弾性変形可能なものである。
【0043】
そして、駆動梁23によって振動体20のうち第1の振動部21が、上記基板と水平面内においてx方向(駆動振動方向)へ振動可能となっている。一方、検出梁部40によって振動体20全体が、上記基板と水平面内においてy方向(検出振動方向)へ振動可能となっている。
【0044】
また、第1の振動部21と第2の振動部22との間には、第1の振動部21をx方向に駆動振動させるための駆動電極50が設けられている。この駆動電極50は、アンカー部30と同様に上記支持基板部に固定されている。そして、駆動電極50は、第1の振動部21から突出する櫛歯部(駆動用櫛歯部)21aに対し、互いの櫛歯が噛み合うように対向して配置されている。
【0045】
また、第2の振動部22の外周には、検出電極60が設けられている。この検出電極60は、振動体20の振動に基づいて上記基板と垂直なz軸回りの角速度を検出するためのもので、アンカー部30と同様に上記支持基板部に固定されている。そして、検出電極60は、第2の振動部22から突出する櫛歯部(検出用櫛歯部)22aに対し、互いの櫛歯が噛み合うように対向して配置されている。
【0046】
また、図2では示さないが、本センサチップ10においては、上記基板の適所に、上記振動体20、駆動電極50および検出電極60などに電圧を印加したり、信号を取り出したりするためのパッドが、複数個設けられている。
【0047】
本実施形態では、図1に示されるように、このセンサチップ10のパッドには、Au(金)やAl(アルミニウム)などからなるボンディングワイヤ70が接続されるようになっている。
【0048】
そして、センサチップ10とパッケージ100の図示しない配線とがボンディングワイヤ70を介して電気的に接続されている。このようにして、本センサチップ10は構成されている。
【0049】
また、図1に示されるように、センサ素子200は、粘性制御液体300に支持された状態でパッケージ100に取り付けられている。本実施形態の角速度センサ装置S1では、センサ素子200は、パッケージ内に充填された粘性制御液体300に封止された状態で支持されている。
【0050】
ここで、センサ素子200は上記センサチップ10単独で構成されていてもよいし、センサチップ10をケースに収納したものとして構成されていてもよい。そして、このセンサチップ10あるいは上記ケースが、図1に示されるように、粘性制御液体300に封止されている。
【0051】
この粘性制御液体300は、外部から粘性が制御可能な機能性流体であればよい。本実施形態では、制御電極110間に印加する電圧を制御することで、粘性制御液体300の粘性を制御するようにしている。
【0052】
このような粘性制御液体300としては、印加される電界により粘性が変化するER(Electrorheological)流体を用いることができ、この場合、制御電極110は粘性制御流体300に電界を印加するためのものとなる。
【0053】
あるいは、粘性制御液体300としては、印加される磁界により粘性が変化するMR(Magnetorheological)流体を用いることができ、この場合、制御電極110は粘性制御流体300に磁界を印加するためのものとなる。そして、この場合における制御電極110としては、たとえばコイル状をなし、通電により磁界を発生するものにできる。
【0054】
ここで、ER流体は外部から電場を与えることによってその粘性が大きく変化するものであり、MR流体は外部から磁場を与えることによってその粘性が大きく変化するものであり、それぞれ一般に知られているものである。
【0055】
簡単に述べると、これらER流体、MR流体は、オイルやゲルなどの絶縁性の液体中に、直径数μm程度の誘電体の固体微粒子が分散した流体である。そして、外部場を与えない場合には粒子が液体中に均一に分散しているが、外部場を与えると粒子が電場や磁場の方向に鎖状につながって極板間を拘束する。
【0056】
このときの状態はまるで固体のようであり、せん断を与えて極板を移動しようとすると、この粒子の鎖が抵抗となって外部場が無いときに比べて粘性が大きく変化する。この粘性変化は可逆的であり、また、外部場を与えてから粘性が変化するまでに要する時間は数ミリ秒程度である。
【0057】
そのため、このようなER流体やMR流体では、制御電極110によって加えられる電界や磁界の大きさを変えることにより、流体自体の粘性を変化させることができるようになっている。
【0058】
また、本実施形態の角速度センサ装置S1においては、粘性制御液体300は、パッケージ100に充填された状態でセンサ素子200を封止して支持している。このとき、粘性制御液体300の外部場を与えない状態における粘性すなわち初期粘性は、粘性制御液体300の液体成分の粘度を調整することにより、センサ素子200を必要な強度で支持できるようになっている。
【0059】
また、本実施形態の角速度センサ装置S1は、図3に示されるような角速度の検出機構および粘性制御液体300の粘性制御機構を有している。
【0060】
図3において、物理量検出部400は、上記図2に示されるようなセンサ素子200におけるセンサチップ10の部分すなわち角速度検出部である。また、加速度検出部410は、センサ素子200に印加される加速度すなわち外部加速度を検出するためのものである。
【0061】
この加速度検出部410は、たとえば、半導体基板に櫛歯状の可動電極および固定電極を形成してなる静電容量式の加速度センサなどとして構成することができる。そして、本角速度センサ装置S1においては、加速度検出部410は、センサ素子200に設けられたものであってもよいし、パッケージ100における適所に設けられたものであってもよい。
【0062】
たとえば、センサ素子200がセンサチップ10を収納するケースを有するものである場合には、加速度検出部410は当該ケースに収納された別チップとすることができる。また、加速度検出部410は、センサチップ10と同一の半導体基板に対して角速度検出部とは別部位に形成することもできる。
【0063】
また、図3において、センサ信号処理回路420は、物理量検出部400すなわち角速度検出部へ信号を送ったり、当該部からの出力信号を変換したり、増幅したりするための回路部である。また、制御電極制御回路430は、加速度検出部410から入力される外部加速度の信号に基づいて制御電極110に電圧を与えるものである。
【0064】
このセンサ信号処理回路420および制御電極制御回路430は、たとえば半導体基板等に対してMOSトランジスタやバイポーラトランジスタ等が、周知の半導体プロセスを用いて形成されているICチップなどとして構成されたものにできる。
【0065】
そして、これら回路420、430は、センサ素子200に設けられたものであってもよいし、パッケージ100における適所に設けられたものであってもよし、あるいは、パッケージ100の外部すなわち角速度センサ装置S1の外部回路として設けられたものであってもよい。
【0066】
たとえば、センサ素子200がセンサチップ10を収納するケースを有するものである場合には、各回路420、430は当該ケースに収納された別体の回路チップとすることができる。
【0067】
また、各回路420、430は、センサチップ10と同一の半導体基板に対して角速度検出部とは別部位に形成することもできる。つまり、センサチップ10は、回路部を一体化した集積化センサチップとして構成することもできる。
【0068】
また、上述したように、本実施形態においては、センサ素子200は、センサチップ10単独であってもよいが、センサチップ10や加速度センサチップや回路チップなどがケースに一体化されてなるモジュールユニットとして構成することもできる。
【0069】
なお、これら物理量検出部400、加速度検出部410、センサ信号処理回路420、制御電極制御回路430および制御電極110の間の電気的な接続は、これら各部が同一チップ上にある場合にはチップ内の配線を介して行うことができ、別体のチップや別体の基板にある場合にはボンディングワイヤ70やパッケージ100の配線などを介して行うことができる。
【0070】
[作動等]
かかる角速度センサ装置S1の角速度の検出動作について、主として上記図2および図3を参照して述べる。
【0071】
センサ信号処理回路420からセンサチップ10の駆動電極50に駆動信号(正弦波電圧等)を印加して、上記第1の振動部21の櫛歯部21aと駆動電極50との間に静電気力を発生させる。それにより、駆動梁部23の弾性力によって第1の振動部21がx方向へ駆動振動する。
【0072】
この第1の振動部21の駆動振動のもと、図2中のz軸回りに角速度Ωが印加されると、第1の振動部21にはy方向にコリオリ力が印加され、振動体20全体が、検出梁40の弾性力によってy方向へ検出振動する。
【0073】
すると、この検出振動によって、検出電極60と検出用櫛歯部22aの櫛歯間の容量が変化するため、この容量変化をセンサ信号処理回路420により検出することによって、角速度Ωの大きさを求めることができる。
【0074】
具体的には、図2において、振動体20がy軸方向に沿って一方向へ変位したとき、図2における左右の検出電極60において、左側の検出電極60と右側の検出電極60とでは、容量変化は互いに逆になるようになっている。
【0075】
そのため、左右の検出電極60におけるそれぞれの容量変化を、センサ信号処理回路420にて電圧に変換し、これら両電圧値を差動・増幅して出力することにより、角速度が求められる。以上が角速度の検出動作である。
【0076】
また、角速度センサ装置S1における粘性制御液体300の粘性制御の動作は、次の通りである。
【0077】
上記の角速度検出動作において、パッケージ100に加わる外部加速度を加速度検出部410により検出しておく。そして、検出された外部加速度に応じた電圧を、制御電極制御回路430から制御電極110に与える。
【0078】
ここで、検出される外部加速度が大きくなったり小さくなったりというように変化したとき、加速度検出部410にて検出される外部加速度の変化に応じて、制御電極制御回路430から制御電極110に与えられる電圧を制御し、粘性制御液体300の粘性を変化させる。
【0079】
粘性制御液体300を介した外部加速度の減衰量については、あらかじめ試験などを行うことにより、粘性制御液体300における印加電圧と減衰量との関係を求めておく。そして、この関係に基づいて、所望の遠減衰量となるように、制御電極制御回路430によって、制御電極110に与える電圧を制御する。
【0080】
以上のようにして、角速度センサ装置S1における粘性制御液体300の粘性制御が行われる。
【0081】
[効果等]
ところで、本実施形態によれば、パッケージ100と、パッケージ100に取り付けられた物理量検出を行うセンサ素子200とを備える物理量センサ装置において、センサ素子200は、粘性を制御することの可能な粘性制御液体300に支持された状態でパッケージ100に取り付けられていることを特徴とする物理量センサ装置S1を提供することができる。
【0082】
それによれば、上述したように、センサ素子200は粘性制御液体300を介してパッケージ100に支持されており、外部加速度の変化に応じて粘性制御液体300の粘性を変化させるように制御することができる。
【0083】
そのため、本実施形態によれば、パッケージ100に物理量検出を行うセンサ素子200を取り付けてなる物理量センサ装置S1において、外部加速度の変化に応じて、外部加速度のセンサ素子200に対する減衰量を適切に制御することができる。
【0084】
また、本実施形態では、粘性制御液体300が、印加される電界により粘性が変化するER流体であり、粘性制御流体300に電界を印加するための制御電極110が設けられていることも特徴のひとつである。
【0085】
また、本実施形態では、粘性制御液体300が、印加される磁界により粘性が変化するMR流体であり、粘性制御流体300に印加する磁界を発生するための制御電極110が設けられていることも特徴のひとつである。
【0086】
粘性制御液体300として、これらER流体やMR流体を用い、これら流体に電界や磁界を与えて制御するための制御電極110を設けたものにすることにより、外部加速度の変化に応じて粘性制御液体110の粘性を適切に変化させることができる。
【0087】
また、本実施形態では、制御電極110は、前記パッケージ100に設けられていることも特徴のひとつである。
【0088】
さらに、本実施形態の角速度センサ装置S1では、センサ素子200は、パッケージ100内に充填された粘性制御液体300に封止された状態で支持されていることも特徴のひとつである。
【0089】
また、本実施形態の角速度センサ装置S1では、センサ素子200に印加される加速度を検出するための加速度検出部410が備えられており、加速度検出部410にて検出された加速度に基づいて制御電極110に加える電圧を制御するようになっていることも特徴のひとつである。
【0090】
それにより、外部加速度の変化を加速度検出部410にて適切に検出し、この外部加速度の変化に応じて、外部加速度のセンサ素子200に対する減衰量を適切に制御することができるため、好ましい。
【0091】
(第2実施形態)
図4は、本発明の第2実施形態に係る物理量センサ装置としての角速度センサ装置S2の概略断面構成を示す図である。以下、上記実施形態との相違点を中心に説明することとする。
【0092】
図4に示されるように、本実施形態によっても、上記実施形態と同様に、パッケージ100と、パッケージ100に取り付けられたセンサ素子200とを備える物理量センサ装置において、センサ素子200は、粘性を制御することの可能な粘性制御液体300に支持された状態でパッケージ100に取り付けられていることを特徴とする物理量センサ装置S2が提供される。
【0093】
ここで、上記実施形態では、センサ素子200は、パッケージ100内に充填された粘性制御液体300に封止された状態で支持されていた。
【0094】
それに対して、本実施形態の角速度センサ装置S2では、センサ素子200を、高分子からなる高分子保持体500を介してパッケージ110に固定しており、ER流体やMR流体などからなる粘性制御液体300を、高分子保持体500に含浸したものとしたことが、上記実施形態と相違するところである。
【0095】
この高分子保持体500は、粘性制御液体300を吸収できるものであり、粘性制御液体300を吸収することによりゲル状もしくは半固形状となるものである。さらには、高分子保持体500は接着機能を有するものであってもよい。たとえば、高分子保持体500としてはスポンジなどの樹脂からなるものを採用できる。
【0096】
そして、図4に示されるように、パッケージ100の底面に制御電極110が設けられており、粘性制御液体300が含浸された高分子保持体500は、この制御電極110の上に搭載されている。そして、この高分子保持体500の上には、センサ素子200が搭載されている。
【0097】
このような本実施形態の角速度センサ装置S2においても、上記図3に示されるような角速度の検出機構および粘性制御液体300の粘性制御機構を有しており、それによれば、外部加速度の変化に応じて、高分子保持体500内の粘性制御液体300の粘性を変化させるように制御することができる。
【0098】
そのため、本実施形態によっても、パッケージ100に物理量検出を行うセンサ素子200を取り付けてなる物理量センサ装置S2において、外部加速度の変化に応じて、外部加速度のセンサ素子200に対する減衰量を適切に制御することができる。
【0099】
(第3実施形態)
図5は、本発明の第3実施形態に係る物理量センサ装置としての角速度センサ装置S3の概略断面構成を示す図である。本実施形態は上記第2実施形態を一部変形したものであり、以下、上記実施形態との相違点を中心に説明することとする。
【0100】
図5に示されるように、本実施形態によっても、上記実施形態と同様に、パッケージ100と、パッケージ100に取り付けられたセンサ素子200とを備える物理量センサ装置において、センサ素子200は、粘性を制御することの可能な粘性制御液体300に支持された状態でパッケージ100に取り付けられていることを特徴とする物理量センサ装置S3が提供される。
【0101】
また、本実施形態においても、上記第2実施形態と同様に、センサ素子200を、高分子保持体500を介してパッケージ110に固定しており、ER流体やMR流体などからなる粘性制御液体300を、高分子保持体500に含浸したものとしている。
【0102】
しかし、本実施形態の角速度センサ装置S3では、図5に示されるように、センサ素子200は回路基板600に接着剤610を介して固定されており、それによって、センサ素子200は、回路基板600および高分子保持体300を介してパッケージ100に取り付けられている。
【0103】
ここにおけるセンサ素子200としては、少なくとも上記センサチップ10を備え、さらに上記加速度検出部410は備えていてもよいが、上記センサ信号処理回路420および制御電極制御回路430は有しないものである。
【0104】
本実施形態の角速度センサ装置S3では、これらセンサ信号処理回路420および制御電極制御回路430は、回路基板600に設けられている。また、図示しないが、センサ素子200と回路基板600とは、ボンディングワイヤなどを介して電気的に接続されている。そして、回路基板600とパッケージ100とはボンディングワイヤ70を介して電気的に接続されている。
【0105】
このように、本実施形態の角速度センサ装置S3においては、上記特徴点に加えて、センサ素子200は回路基板600に固定されており、回路基板600は、高分子保持体500を介してパッケージ100に支持されており、粘性制御液体300は高分子保持体500に含浸されており、制御電極110は、パッケージ100に設けられていることを特徴としている。
【0106】
このような本実施形態の角速度センサ装置S3においても、上記図3に示されるような角速度の検出機構および粘性制御液体300の粘性制御機構を有しており、それによれば、外部加速度の変化に応じて、高分子保持体500内の粘性制御液体300の粘性を変化させるように制御することができる。
【0107】
そのため、本実施形態によっても、パッケージ100に物理量検出を行うセンサ素子200を取り付けてなる物理量センサ装置S3において、外部加速度の変化に応じて、外部加速度のセンサ素子200に対する減衰量を適切に制御することができる。
【0108】
(第4実施形態)
図6は、本発明の第4実施形態に係る物理量センサ装置としての角速度センサ装置S4の概略断面構成を示す図である。本実施形態は上記第3実施形態を一部変形したものであり、以下、上記実施形態との相違点を中心に説明することとする。
【0109】
図6に示されるように、本実施形態によっても、上記実施形態と同様に、パッケージ100と、パッケージ100に取り付けられたセンサ素子200とを備える物理量センサ装置において、センサ素子200は、粘性を制御することの可能な粘性制御液体300に支持された状態でパッケージ100に取り付けられていることを特徴とする物理量センサ装置S4が提供される。
【0110】
また、本実施形態においても、センサ素子200を、高分子保持体500を介してパッケージ110に固定しており、ER流体やMR流体などからなる粘性制御液体300を、高分子保持体500に含浸したものとしている。
【0111】
しかし、本実施形態の角速度センサ装置S4では、図6に示されるように、パッケージ100には回路基板600が接着剤620を介して固定されており、センサ素子200は高分子保持体500を介して回路基板600に支持されている。それによって、センサ素子200は、回路基板600および高分子保持体300を介してパッケージ100に取り付けられている。
【0112】
ここにおいて、本実施形態では、粘性制御液体300が含浸された高分子保持体500が、センサ素子200と回路基板600との間に介在されているため、制御電極110は、粘性制御液体300を制御できるように回路基板600に設けられている。
【0113】
この制御電極110は回路基板600に対して半導体製造技術を駆使するなどにより、容易に形成することができる。
【0114】
このように、本実施形態の角速度センサ装置S4においては、上記特徴点に加えて、パッケージ100には回路基板600が固定されており、センサ素子200は高分子保持体500を介して回路基板600に支持されており、粘性制御液体300は高分子保持体500に含浸されており、制御電極110は回路基板600に設けられていることを特徴としている。
【0115】
このような本実施形態の角速度センサ装置S4においても、上記図3に示されるような角速度の検出機構および粘性制御液体300の粘性制御機構を有しており、それによれば、外部加速度の変化に応じて、高分子保持体500内の粘性制御液体300の粘性を変化させるように制御することができる。
【0116】
そのため、本実施形態によっても、パッケージ100に物理量検出を行うセンサ素子200を取り付けてなる物理量センサ装置S4において、外部加速度の変化に応じて、外部加速度のセンサ素子200に対する減衰量を適切に制御することができる。
【0117】
(他の実施形態)
なお、上記図2に示されるセンサチップ10の構成は、本発明の物理量センサ装置としての角速度センサ装置における角速度検出部の一具体例を示すものであり、当該センサチップの構成は、この図示例に限定されるものではない。
【0118】
また、保持体500としては、高分子からなる高分子保持体に限定されるものではなく、粘性制御液体300を吸収できるものであり、粘性制御液体300を吸収することによりゲル状もしくは半固形状となるものであるならば、高分子以外の素材からなるものであってもよい。
【0119】
また、上記実施形態では角速度センサ装置を例にとって説明したが、本発明は、角速度センサ装置に限定されるものではなく、パッケージに物理量検出を行うセンサ素子を取り付けてなる物理量センサ装置であるならば、たとえば加速度センサ装置などに適用することもできる。
【0120】
たとえば、加速度センサ素子をパッケージに取り付けてなる場合にも、センサ感度の確保やセンサ装置の強度を確保するためには、外部加速度の変化に応じて、外部加速度のセンサ素子に対する減衰量を適切に変化させ、所望の減衰量となるように制御することが必要である。
【0121】
なお、この加速度センサ装置の場合、上記センサ素子のセンサチップは、加速度検出を行うためのたとえば可動電極および固定電極を有するセンサチップとなる。そして、たとえば上記図3において物理量検出部400は加速度検出部となり、ここから外部加速度の信号がセンサ信号処理回路420および制御電極制御回路430へ送られる。
【0122】
そのため、この場合には、図3における加速度検出部410は無いものであってもよいが、別体の加速度検出部410を設けて、そこからの信号により制御電極制御回路430を制御するようにしてもよい。
【0123】
要するに、本発明は、パッケージと、パッケージに取り付けられた物理量検出を行うセンサ素子とを備える物理量センサ装置において、センサ素子を、粘性を制御することの可能な粘性制御液体に支持された状態でパッケージに取り付けたことを要部とするものであり、その他の部分については適宜設計変更が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0124】
【図1】本発明の第1実施形態に係る物理量センサ装置としての角速度センサ装置の概略断面図である。
【図2】図1に示される角速度センサ装置におけるセンサ素子に備えられたセンサチップの概略平面図である。
【図3】上記第1実施形態に係る角速度センサ装置における角速度検出機構および粘性制御液体の粘性制御機構を模式的に示す図である。
【図4】本発明の第2実施形態に係る物理量センサ装置としての角速度センサ装置の概略断面図である。
【図5】本発明の第3実施形態に係る物理量センサ装置としての角速度センサ装置の概略断面図である。
【図6】本発明の第4実施形態に係る物理量センサ装置としての角速度センサ装置の概略断面図である。
【符号の説明】
【0125】
100…パッケージ、110…制御電極、200…センサ素子、
300…粘性制御液体、410…加速度検出部、500…高分子保持体、
600…回路基板。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
パッケージ(100)と、
前記パッケージ(100)に取り付けられた物理量検出を行うセンサ素子(200)とを備える物理量センサ装置において、
前記センサ素子(200)は、粘性を制御することの可能な粘性制御液体(300)に支持された状態で前記パッケージ(100)に取り付けられていることを特徴とする物理量センサ装置。
【請求項2】
前記粘性制御液体(300)は、印加される電界により粘性が変化するER流体であり、
前記粘性制御流体(300)に電界を印加するための制御電極(110)が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の物理量センサ装置。
【請求項3】
前記粘性制御液体(300)は、印加される磁界により粘性が変化するMR流体であり、
前記粘性制御流体(300)に印加する磁界を発生するための制御電極(110)が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の物理量センサ装置。
【請求項4】
前記制御電極(110)は、前記パッケージ(100)に設けられていることを特徴とする請求項2または3に記載の物理量センサ装置。
【請求項5】
前記センサ素子(200)は、前記パッケージ(100)内に充填された前記粘性制御液体(300)に封止された状態で支持されていることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1つに記載の物理量センサ装置。
【請求項6】
前記センサ素子(200)は、保持体(500)を介して前記パッケージ(100)に固定されており、
前記粘性制御液体(300)は、前記保持体(500)に含浸されていることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1つに記載の物理量センサ装置。
【請求項7】
前記センサ素子(200)は回路基板(600)に固定されており、
前記回路基板(600)は、保持体(500)を介して前記パッケージ(100)に支持されており、
前記粘性制御液体(300)は、前記保持体(500)に含浸されており、
前記制御電極(110)は、前記パッケージ(100)に設けられていることを特徴とする請求項2または3に記載の物理量センサ装置。
【請求項8】
前記パッケージ(100)には、回路基板(600)が固定されており、
前記センサ素子(200)は、保持体(500)を介して前記回路基板(600)に支持されており、
前記粘性制御液体(300)は、前記保持体(500)に含浸されており、
前記制御電極(110)は、前記回路基板(600)に設けられていることを特徴とする請求項2または3に記載の物理量センサ装置。
【請求項9】
前記保持体(500)は、高分子からなるものであることを特徴とする請求項6ないし8のいずれか1つに記載の物理量センサ装置。
【請求項10】
前記センサ素子(200)に印加される加速度を検出するための加速度検出部(410)が備えられており、
前記加速度検出部(410)にて検出された加速度に基づいて前記制御電極(110)に加える電圧を制御するようになっていることを特徴とする請求項1ないし9のいずれか1つに記載の物理量センサ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−153800(P2006−153800A)
【公開日】平成18年6月15日(2006.6.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−348554(P2004−348554)
【出願日】平成16年12月1日(2004.12.1)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】