説明

現像スリーブ、現像剤担持体、現像装置および画像形成装置

【課題】回転方向の方向性を有する現像スリーブは、逆付けして現像剤担持体を組み立てた場合、画像形成装置に画質不良等の不具合が発生するという問題があった。
【解決手段】トナーとキャリアからなる現像剤を搬送するための表面処理が施された表面処理部と、該表面処理部の両側に設けられ、前記表面処理が施されていない非表面処理部とを備え、回転方向の方向性を有する現像スリーブにおいて、一方の前記非表面処理部に、周方向に連続した凹溝を形成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザープリンタやデジタル複写機等の画像形成装置、並びに該画像形成装置に用いられる現像装置、現像剤担持体および現像スリーブに関する。
【背景技術】
【0002】
プリンタや、複写機などの画像形成装置に用いられる現像装置としては、例えば、感光体と対向配置され回転駆動する現像剤担持体上に、現像剤撹拌部材によって所定のトナー濃度に撹拌調整されたトナーおよび磁性キャリアからなる2成分現像剤(以下、「現像剤」と称す。)を保持(吸着)して、感光体と対向する現像領域に搬送し、トナーの転移によって感光体の表面に形成された静電潜像を現像するものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
この現像剤担持体は、複数の磁極を有した永久磁石をシャフトの周方向に配設することにより所定の磁場波形が形成されたマグネットロールと、当該マグネットロールのシャフトの両端部に設けられた軸受けを介して回転可能に支持された非磁性円筒体の現像スリーブとを主な構成部品としたものである。
【0004】
現像スリーブは、内部にあるマグネットロールの磁気吸引力により、表面に吸着した現像剤を搬送する機能を有するものである。そして、現像剤の搬送力を向上させるため、表面に溝を形成した溝形成部を有する現像スリーブや、表面にブラスト処理等の表面処理を施した表面処理部を有する現像スリーブが提案されている(例えば、特許文献2〜6参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−077494号公報
【特許文献2】特開2000−321864号公報
【特許文献3】特開平08−227219号公報(図9等)
【特許文献4】特開昭60−186458号公報(図3、図4等)
【特許文献5】特公昭36−014871号公報(図3等)
【特許文献6】特開2004−021122号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前記した従来の現像スリーブにおいて、現像スリーブの仕様によっては、誤って現像剤担持体を組み立てた場合に、画像形成装置に画質不良等の不具合が発生するという問題があった。以下に、この問題点について説明する。
【0007】
例えば、特許文献2〜5に記載された現像スリーブのように、回転方向の方向性がある場合は、現像スリーブを逆付け(本来の回転方向とは逆に回転するように取り付けて現像剤担持体を組立)すると、現像剤の搬送量が設計値とは異なり、画像形成装置に画質不良が発生するという問題がある。
【0008】
また、例えば、特許文献6のように、前記した溝形成部や表面処理部の両側に、溝が形成されていない非溝形成部や、表面処理がされていない非表面処理部を備えた現像スリーブにおいて、一方の非溝形成部が他方の非溝形成部よりも長い、または一方の非表面処理部が他方の非表面処理部よりも長い場合は、現像スリーブを逆付けすると、現像剤を搬送する位置が設計値とは異なり、画像形成装置に画質不良が発生するという問題がある。
【0009】
これらの問題を解決するために、現像スリーブの非溝形成部または非表面処理部に油性インク等でマークを付して方向を視認できるようにし、逆付けを防止する手段を採用することができる。
【0010】
しかし、この場合は、現像スリーブにマークを付するための工程を別に設ける必要があり、現像スリーブの製造工程、製造タクトの増加をもたらし、ひいては現像剤担持体、現像装置および画像形成装置のコストがアップするという問題がある。また、マーク等の付け方によっては、当該マーク等に現像剤が付着または当該マーク等が現像剤を搬送し、画像形成装置の画質不良を誘発する可能性がある。
【0011】
本発明は、前記した問題を解決するためになされたものであって、現像スリーブの非溝形成部または非表面処理部に、周方向に連続した凹溝を設けるという簡単な構成により、安価で逆付けを防止でき、かつ、凹溝を設けても画像形成装置の画質不良(画質不具合)を誘発しない現像スリーブ、現像剤担持体、現像装置および画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
(第1発明)
第1発明は、トナーとキャリアからなる現像剤を搬送するための表面処理が施された表面処理部と、この表面処理部の両側に設けられ、表面処理が施されていない非表面処理部とを備え、回転方向の方向性を有する現像スリーブにおいて、一方の非表面処理部に、周方向に連続した凹溝が形成されたことを特徴とする。
【0013】
かかる構成により、現像スリーブを用いて現像剤担持体を組み立てる際、凹溝により容易に方向性を視認できるので、現像スリーブの逆付けを防止できる。また、凹溝は周方向に連続して形成されているので、仮に、凹溝に現像剤が入り込んだとしても現像剤が凹溝に残留することが無いので、非表面処理部が現像剤を回転方向および/または軸方向(長手方向)に搬送することが無い。このため、非表面処理部が現像剤を搬送することによる画像形成装置の画質不良等を防止できる。
【0014】
(第2発明)
第2発明の現像スリーブは、第1発明において、凹溝の幅をキャリアの直径よりも大きくしたものである。かかる構成により、凹溝に入り込んだキャリアが凹溝に詰まり難くなるので、仮に、凹溝に現像剤が入り込んだとしても、現像剤が残留することが無いので、非表面処理部が現像剤を回転方向および/または軸方向(長手方向)に搬送することが無い。このため、非表面処理部が現像剤を搬送することによる画像形成装置の画質不良等を防止できる。
【0015】
(第3発明)
第3発明は、第1発明または第2発明の現像スリーブと、この現像スリーブの内部に挿入されたマグネットロールとを備えた現像剤担持体に関する。
第3発明に係る現像剤担持体は、前記した効果を奏する現像スリーブを用いているので、現像スリーブの逆付け等に基づく画像形成装置の画質不具合の発生を防止した現像剤担持体を提供できる。
【0016】
(第4発明)
第4発明は、第3発明の現像剤担持体と、この現像剤担持体と対向して設けられた層厚規制部材(ブレード)と、現像剤を撹拌する現像剤撹拌部材とをハウジング内に備えた現像装置に関する。
第4発明に係る現像装置は、前記した効果を奏する現像剤担持体を用いているので、現像スリーブの逆付け等に基づく画像形成装置の画質不具合の発生を防止した現像装置を提供できる。
【0017】
(第5発明)
第5発明は、第4発明の現像装置と、この現像装置の現像剤担持体と対向した感光体とを備えた画像形成装置に関する。
第5発明に係る画像形成装置は、前記した効果を奏する現像装置を用いているので、現像スリーブの逆付け等に基づく画質不具合の発生を防止した画像形成装置を提供できる。
【発明の効果】
【0018】
本発明は、安価で逆付けを防止でき、かつ、凹溝を設けても画質不良を誘発しない現像スリーブ、現像剤担持体、現像装置および画像形成装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】マグネットロールの概略構造図(実施例1)
【図2】図1のマグネットロールの側面図(実施例1)
【図3】現像剤担持体の正面図(実施例1)
【図4】現像剤担持体の断面図(実施例1)
【図5】現像スリーブの溝近傍の部分拡大図(実施例1)
【図6】現像装置の断面図(実施例1)
【図7】図6における現像装置の部分拡大図(実施例1)
【図8】マグネットピース成形金型の断面図(実施例1)
【図9】現像剤担持体の正面図(実施例2)
【図10】画像形成装置の構成を説明するための図(実施例3)
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に、図面を用いて本発明を詳細に説明する。尚、本発明は、図3および図4に示す現像剤担持体や、図6および図7に示す現像装置に限定して解釈する趣旨ではない。
【実施例1】
【0021】
(現像装置)
図6に示すように、本発明に係る現像装置61は、感光体としての感光体ロール71の表面に形成された静電潜像を、現像剤担持体31の現像スリーブ34の表面に保持(吸着)された現像剤を用いて現像するタイプのものである。この現像装置61は、感光体ロール71に近接かつ対向して設けられた現像剤担持体31と、当該現像剤担持体31に対してトナーと磁性キャリアとからなる現像剤を撹拌しながら供給する現像剤攪拌部材63および64と、現像スリーブ34の表面に保持された現像剤の層厚を規制する層厚規制部材67をハウジング62の内部に備えたものである。
【0022】
また、図6に示すように、現像剤攪拌部材63および64は、その軸方向(長手方向)が現像剤担持体31の軸方向(長手方向)と略平行になるように設けられており、互いに逆方向に回転駆動することにより現像剤を搬送する。そして、第1の攪拌室65は、第2の攪拌室66と現像剤担持体31の軸方向の両端部で連通しているために、現像剤はハウジング62内を循環しながら撹拌される。
【0023】
さらに現像剤がハウジング62内を循環しながら攪拌されることにより、トナーに十分な電荷が付与され、かかる電荷は、トナー濃度センサー(図示せず)により測定される。トナー濃度が低下した場合、トナーホッパー(図示せず)からトナーを供給することにより、低トナー濃度現像剤が所定のトナー濃度に調整される(適正トナー濃度現像剤になる)。
【0024】
(現像プロセス)
以下に、所定のトナー濃度に調整された適正トナー濃度現像剤が現像剤担持体31の表面に吸着された後の一連の現像プロセスについて説明する。
図7は、図6で示した現像装置61における現像剤担持体31付近の拡大図に現像剤の動きを表したものである。尚、図7において現像剤を丸で表したが、現像プロセスを模式的に説明するものであるため、現像剤を構成するトナーと磁性キャリアの区別を行っていない。また、現像剤を表した丸は、2種類(「○」と「●」)あるが、適正トナー濃度現像剤68は黒丸(「●」)とし、低トナー濃度現像剤69は白丸(「○」)とした。また、図7における現像スリーブ34の表面には、現像剤が1粒の1層状態又は2粒積層による2層状態に吸着された状態を図示したが、これも説明を簡単にするためであり、1層または2層状態のみであることを示したものではない。
【0025】
図7に示すように、適正トナー濃度現像剤68は、マグネットロール51における汲み上げ極ピース57が発生する磁界(磁場)の磁気吸引力により、現像スリーブ34の表面に吸着される。汲み上げられた適正トナー濃度現像剤68は、マグネットロール51が発生する磁界により現像スリーブ34上で磁気ブラシを形成する。この磁気ブラシは現像スリーブ34の回転(回転方向は図7の矢印A)により搬送される。
【0026】
汲み上げ極ピース57の磁気吸引力によって形成された磁気ブラシは、層規制極ピース58に対向して配設された現像剤規制部材67によって適正トナー濃度現像剤68の量が規制された後、第2搬送極ピース53によって現像極ピース54付近の現像領域へ送られる。現像領域ではトナーが感光体ロール71に転移し、感光体ロール71の現像が行われる。
【0027】
感光体ロール71の現像で使用され、トナー濃度の低下した低トナー濃度現像剤69は、現像スリーブ34の回転に伴って、現像極ピース54の下流側に存在する第1搬送極ピース55により現像スリーブ34の表面に吸着され、現像装置61内に回収される。この第1搬送極ピース55は、低トナー濃度現像剤69を回収する機能と、搬送する機能とを備えたものである。
【0028】
低トナー濃度現像剤69が剥離する領域は、搬送極ピース55の極上ではなく、搬送極ピース55と汲み上げ極ピース58の間に存在している介在極(ダミー極)ピース56の付近であり、ここで一連の現像プロセスを終了する。
【0029】
(現像剤担持体)
図3および図4に示すように、本発明に係る現像剤担持体31は、所定の磁極を有した複数のマグネットピース(永久磁石)をシャフト52の周方向に配設(固定)することにより所定の磁場波形が形成されたマグネットロール51と、当該マグネットロール51のシャフト52の両端部に、軸受け(ベアリング)33およびフランジ32を介して図6の矢印Aの向きに回転可能に支持された非磁性円筒体の現像スリーブ34とを備えたものである。
【0030】
さらに詳述すると、現像スリーブ34の両端にフランジ32が固定されている。そして、このフランジ32の中空部(貫通孔)にはシャフト52が挿入され、このシャフト52の両端部はフランジ32に固定された軸受け33により相対的に回転可能に支持されている。一方、現像スリーブ34内におけるマグネットロール51は、シャフト52の周面に、複数のマグネットピース53〜58(図では省略)が固定されている。
【0031】
(現像スリーブ)
現像スリーブ34は、図3〜図5に示すように、アルミニウムまたはステンレス製の中空円筒形状の部品であり、長手方向(シャフト52の軸方向)に延びた溝80が周方向に略等間隔に形成された表面処理部としての溝形成部77と、この溝形成部77の両側に設けられ、溝80が形成されていない非表面処理部としての非溝形成部78とを備えたものである。
【0032】
そして、非溝形成部78の外径(図5における2×P)は、溝形成部77における複数の溝80の底70を繋げてできる円86の直径(図5における2×R)よりも小さく、現像スリーブ34は、図5に示すように、回転方向の方向性を有する。つまり、現像スリーブ34は、溝80の形状を紙面左右方向で非対称とし(図5の溝80における紙面左側の傾きを紙面右側の傾きよりも大きくし)、矢印Aの向きに回転させることにより、現像剤の搬送量が大きくなるように構成されている。
【0033】
このような現像スリーブ34においては、図4に示すように、内部にマグネットロール51を入れて現像剤担持体31を組み立てる際に、現像スリーブ34の向きを逆にすると、溝80による現像剤の搬送量が大きく異なる(減少する)ことになる。
【0034】
そこで、本発明に係る現像スリーブ34は、図3および図4に示すように、一方の非溝形成部78に、周方向に連続した凹溝79を形成されている。かかる構成により、作業者が現像スリーブ34の方向性を簡単に視認することができ、現像剤担持体31を組み立てる際に、現像スリーブ34の逆付けを防止できる。
【0035】
また、凹溝79は、非溝形成部78において周方向に連続して形成されているので、仮に凹溝79に現像剤が入り込んでも、当該現像剤は現像スリーブ34の回転により簡単に落下する。このため、現像剤が凹溝79に残留することがなく、非溝形成部78が現像剤の搬送機能を有することが無い。尚、凹溝79の幅は、現像剤のキャリアの直径よりも大きくすることが望ましい。さらに、前記した構成により、非磁性円筒体からなる現像スリーブ34の表面に溝80の加工等を工具により施す際に、当該工具により非溝形成部78の周方向に連続した凹溝79を形成できる。このため、凹溝79を現像スリーブ34の表面に付するに際し、独立した工程を別に設ける必要が無い。
【0036】
本実施例1においては、長手方向の長さが330mmのアルミ合金(A3003)製の管材を用いた。そして、溝形成部77(仕上げ寸法)は、軸方向(図3および図4の紙面左右方向)の長さを320mm、外径(外側の直径)を18.2mmとした。また、2つの非溝形成部78は、ぞれぞれ軸方向(図3および図4の紙面左右方向)の長さを5mm、外径(外側の直径)を17.9mmとした。また、凹溝79は、幅を0.5mm、深さを0.05mmとした。凹溝79は、視認のし易さ、凹溝79への現像剤の詰まり難さの点から、キャリアの直径(一般には、35ミクロン〜60ミクロン)よりも大きいことが望ましい。また、溝80は、深さを0.1mmとした。このため、非溝形成部78の外径(17.9mm)は、溝形成部77における複数の溝80の底70を繋げてできる円86の直径(18.0mm)よりも小さい。
【0037】
(現像スリーブの製造方法)
次に、本発明に係る現像スリーブの製造方法について、以下に詳細に説明する
(1)母材としての非磁性材料からなる円筒形状の管材の一端を加工装置で把持し、管材をその長手方向に搬送しつつ回転させ、切削ローレット工具を長手方向とは垂直な方向から管材に押し当てることにより、管材の溝形成部77の外周面に溝80を形成する。(2)次に、切削ローレット工具の近傍に設けた切削バイト工具を、長手方向とは垂直な方向から管材に押し当てることにより、溝形成部77および2つの非溝形成部78の表面仕上げを行う。(3)次に、一方の非溝形成部に切削バイトを押し当て、周方向に連続した凹溝79を形成する。(4)そして、最後に、管材の把持部近傍に切削バイトを押し当てて、製品(現像スリーブ34)を切り落とす。
【0038】
前記した加工装置は、管材を周方向に回転させながら長手方向に搬送し、かつ、管材の長手方向とは垂直な方向から切削ローレット工具および切削バイト工具を管材に押し当てる機能を有する旋盤であれば良い。特に、所謂スイス式旋盤と呼ばれる旋盤が適しており、本実施例1においてはスイス式旋盤を用いた。
【0039】
また、本実施例1においては、切削ローレット工具16として、スワロフスキーオプティック社製の切削式ローレット(Quickナーリングツール)シングルホイールタイプ(A2タイプ)のストレートパターンを使用した。かかる切削ローレット工具は、回転自在で刃先が尖った1個のカッタを用いて管材の外周面を切削しながら直線状の溝80を形成するものであり、機械や管材への負荷を最小限に抑えて管材の外周面にローレット加工を施すものである。その詳細は大河出版の雑誌(ツールエンジニア)の2003年9月号および2004年10月号に記載されている。
【0040】
(マグネットロール)
次に前記した現像スリーブ34の内部に入れるマグネットロールについて説明する。以下に説明するマグネットロールは、永久磁石として磁性樹脂材料を使用したマグネットピースを貼り合せしたタイプの所謂貼り合わせマグネットロールである。マグネットピースは、公知の射出成形法や押し出し成形法で成形できる。磁性樹脂材料は、焼結磁石でも良い。さらに、後述する磁場配向手段として、コイルを使用した例を挙げたが、希土類系永久磁石を使用した公知のものでも良い。
【0041】
図1はマグネットロール51の概略構造図(斜視図)、図2は図1に示したマグネットロール51の側面図(矢視B)である。マグネットロール51は、シャフト52の外周面に、短手方向の断面(横断面)の形状が略扇形状であるマグネットピース53〜58を、接着剤を用いて放射状に貼り合せたものである。
【0042】
図2に示すように、マグネットロール51は、シャフト52の周方向に、現像極ピース54、第1搬送極ピース55、介在極ピース56、汲み上げ極ピース57、層規制極ピース58、第2搬送極ピース53の順に貼り合せたものである。
【0043】
現像極ピース54は、現像スリーブ34に吸着された適正トナー濃度現像剤68により感光体ロール71の表面を現像する機能を有するものである。第1搬送極ピース55は、少なくとも現像スリーブ34の表面に吸着された低トナー濃度現像剤69を搬送する機能を有するものであり、さらに低トナー濃度現像剤69を回収する機能を有していても良い。
【0044】
本実施例1の第1搬送極ピース55は、低トナー濃度現像剤69を回収する機能および搬送する機能の両者を兼ね備えたものである。介在極ピース56は、第1搬送極ピース55に隣接して設けられ、低トナー濃度現像剤69を現像スリーブ34の表面から剥離する機能を有するものである。汲み上げ極ピース57は、介在極ピース56に隣接して設けられ、適正トナー濃度現像剤68を現像スリーブ34の表面に吸着する機能を有するものである。
【0045】
第2搬送極ピース53は、現像スリーブ34の表面に吸着された適正トナー濃度現像剤68を現像極ピース54付近の現像領域へ送る機能を有するものである。各マグネットピース53〜58は、その外周表面にS極もしくはN極の磁極を有しているので、この磁極によってマグネットロール51は、マグネットロールの外周部に磁界を発生させている。尚、図2におけるSはS極、NはN極を表している。
【0046】
(マグネットロールに磁界を発生させる方法)
マグネットロール51に磁界を発生させる方法は、公知の技術を用いることができる。以下にその一例を述べる。
図8は、配向用コイル85によって発生した配向磁場が配向ヨーク83によって収束される様子を磁力線によって模式的に表したものである。マグネットロール51に磁界を発生させるためには、各マグネットピース53〜58の外周面に磁極を発生させるのであるが、これらのマグネットピース53〜58は、磁石材料粉、樹脂バインダー、添加剤等の混合物からなる磁性樹脂材料を用いて磁場中で成形することによって製造したものである。ここで、マグネットピースの外周面とは、マグネットロールの外周面の一部を構成し、現像スリーブの内周面の一部と対向する面をいう。
【0047】
磁石材料粉としては、例えば、フェライト粉や、Nd等の希土類金属粉とFe、Co、Ni等の鉄族金属粉との混合物を使用することができる。また、樹脂バインダーは、例えば、ポリアミド、ポリエチレン、ポリプロピレン、エポキシ樹脂、エチレンエチルアクリレート(EEA)等を使用することができる。
【0048】
個々のマグネットピース53〜58は、図8に示すように、磁性鋼である配向ヨーク83を備えた固定型81と、当該固定型に対して移動可能な可動型82とからなる金型装置を使用して製造される。具体的には、固定型81と可動型82を型締めすることにより形成されるキャビティ84の内部に、キャビティ84の長手方向の一端と連通するランナー(図示せず)から溶融した磁性樹脂材料を射出してキャビティ84を溶融した磁性樹脂材料で満たす。その際に、配向用コイル85に通電することで配向磁場を発生させ、この配向磁場によって磁性樹脂材料中の磁石材料粉を配向させつつ、キャビティ84を満たした磁性樹脂材料を冷却固化することによりマグネットピースを製造することができる。ここで、キャビティとは、金型内部の空間(射出成形品の形状を有する空間)のことをいい、連通とは、二つの空間を連続状態にすることをいう。
【0049】
この冷却固化された成形品(マグネットピース)は、一旦冷却固化されれば、磁石材料粉の配向状態が再度磁性樹脂材料を溶融させるまで変化しないので、後工程において脱磁または着磁しても、磁場波形をほぼ再現させることができる。図8に示す収束された配向磁場が、キャビティ84と配向ヨーク83が対向する付近(図8のB付近)におけるマグネットピースの外周面に、高い磁束密度の磁極が形成される。配向ヨーク83が無い場合においても、配向用コイル85に通電して配向磁場を発生させれば、マグネットピースの外周面に磁極を形成することができる。ただし、図8の様に、配向ヨーク83によって配向磁場が収束されないので、図8のケースより低い磁束密度を有した磁極がマグネットピースの外周面に形成される。
【0050】
図8は一つのマグネットピースを取りあげて説明したが、他のマグネットピースも同様にして製造される。ただし、所望の波形を得るために、配向ヨーク83の位置や形状を変化させることが一般的である。また、配向用コイル85に通電しなければ、磁石材料粉は配向されないため、図8に示す金型装置を用いて成形を行っても、マグネットピースの外周面に磁極が形成されない場合がある。この場合は、後述する着磁によってマグネットロールの外周面に磁極を発生させる。ただし磁石材料粉が配向されていないために、前記した配向ヨーク83が無い場合のマグネットピースより、さらに磁束密度が低下した磁極が形成される。
【0051】
以上がマグネットピース53〜58の外周面に磁極を発生(形成)させる方法である。得られたマグネットピース53〜58は、配向用コイル85に通電されている場合は各マグネットピースの外周面に磁極が発生しているので、成形直後にはマグネットピースの磁極による磁界が発生している。
【0052】
マグネットロール51における磁場波形をさらに微調整する場合や、配向用コイル85に通電しないでマグネットピースを成形した場合は、マグネットピースを一旦脱磁し、シャフト52の周りに接着剤を塗布してマグネットピース53〜58を貼り付けてマグネットロールを構成した後、着磁を行う。脱磁を行うタイミングは、金型から取り出す前に、配向用コイル85に着磁の際に流した方向と逆の方向に電流を流す事で脱磁を行っても良いし(型内脱磁)、金型から取り出した後に脱磁しても良い。
【0053】
図9は、着磁装置の概略構成図である。着磁装置91は、ヨーク固定金型92に着磁ヨーク93をマグネットロール51の外周面に発生させたい磁極付近に配置する構成となっている。図9においては、マグネットロール51の構成磁極が6極(介在極Dm含む)であるために、6本の着磁ヨーク93が配置されている。着磁ヨーク93とヨーク固定金型92はねじ等(図示せず)の公知の方法で固定されている。
【0054】
着磁ヨーク93は、着磁鉄心94の周りに着磁用コイル95が巻きつけられたものであり、着磁鉄心94と着磁用コイル95は固定用樹脂96によって位置関係がずれないように固定されている。図9では着磁ヨーク93は1本1本別個で(独立して)ヨーク固定金型92に固定されているが、着磁ヨーク93同士が密接しており、別個の着磁ヨークに分ける事が困難な場合は、複数の着磁鉄心94と複数の着磁用コイル95とを固定用樹脂96を用いてあたかも1本の着磁ヨークのように固定および形成してもよい。以上の様な着磁金型91を用いて、着磁用コイル95に通電する事で着磁磁場が発生し、マグネットロール51が着磁され、マグネットロール51が磁界を発生する。
【実施例2】
【0055】
本発明の他の実施例について、図9を用いて説明する。
尚、説明を分かりやすくするため、実施例1との相違点のみを詳細に説明し、実施例と同一の部分については、同一の符号を付して説明を省略する。
【0056】
本実施例2の実施例1との相違点は、表面処理部としてのブラスト部87をブラスト処理した点と、当該ブラスト処理がなされていない2つの非表面処理部としての非ブラスト部89の長さが異なる点である。例えば、図9において、非ブラスト部89の軸方向の長さが6mm、非ブラスト部88の軸方向の長さが4mm等の場合である。
【0057】
このような現像スリーブ60であっても、2つの非ブラスト部の長さが異なるので、回転方向の方向性を有することとなる。つまり、現像剤担持体89に、誤って現像スリーブ60を逆付けすると、本来現像剤を搬送すべき部分に現像剤が搬送されず、本来現像剤を搬送されない部分に現像剤が搬送されるので、かかる現像剤担持体を用いた画像形成装置に、画質不良が発生することになる。
【0058】
しかし、図9に示すように、一方の非ブラスト部89に、実施例1で説明した凹溝79が形成されているので、前記した実施例1と同様の効果を得ることができる。
【実施例3】
【0059】
本発明に係る第3実施例を、図10を用いて説明する。
説明を簡単にするため、前記した実施例1または実施例2と同一の部分については同一の符号を付して説明を省略する。
【0060】
(画像形成装置)
図10に示すように、本発明に係る画像形成装置は、所謂タンデム型のデジタルカラープリンタ131であり、各色の画像データに対応して画像形成を行う画像形成プロセス部110、画像形成プロセス部110を制御する制御部130、パーソナルコンピュータ102や画像読取装置103から受信された画像データに対して所定の画像処理を施す画像処理部140を備えている。
【0061】
画像形成プロセス部110は、一定の間隔をおいて並列配置される4つの画像形成ユニット111Y、111M、111C、111Kを備えている。
【0062】
そして、これらの画像形成ユニット111Y、111M、111C、111Kのそれぞれは、静電潜像を形成してトナー像を担持する感光体(像担持体)としての感光体ロール71と、この感光体ロール71の表面を所定電位で一様に帯電する帯電装置113と、帯電装置113によって表面が帯電された感光体ロール71を露光する露光装置としてのLEDプリントヘッド1と、LEDプリントヘッド1によって得られた静電潜像を現像する現像装置61と、転写後の感光体ロール71の表面を清掃するクリーナー(ブレード)116とを備えている。
【0063】
さらに、現像装置61の下流側近傍には、感光体ロール71に対向して、感光体ロール71上に形成されたテスト用パッチ(濃度見本)のトナー像濃度を検出する濃度検出回路117が備えられている。この濃度検出回路117は制御部130に接続され、トナー像濃度検出値を出力する。
【0064】
ここで、各画像形成ユニット111Y、111M、111C、111Kは、現像装置115に収納されたトナーを除いて、略同様に構成されている。そして、画像形成ユニット111Y、111M、111C、111Kは、それぞれがイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、黒(K)のトナー像を形成する。
【0065】
また、画像形成プロセス部110は、各画像形成ユニット111Y、111M、111C、111Kの感光体ロール71にて形成された各色のトナー像が多重転写される中間転写ベルト121と、各画像形成ユニット111Y、111M、111C、111Kの各色のトナー像を中間転写ベルト121に順次転写(一次転写)させる一次転写帯電装置としての一次転写ロール122と、中間転写ベルト121上に転写された重畳トナー像を記録材(記録紙)である用紙Pに一括転写(二次転写)させる二次転写帯電装置としての二次転写ロール123と、二次転写された画像を用紙P上に定着させる定着装置125とを備えている。
【0066】
画像形成プロセス部110は、制御部130から供給された同期信号等の制御信号に基づいて画像形成動作を行う。その際に、パーソナルコンピュータ102や画像読取装置103から入力された画像データは、画像処理部140によって画像処理が施され、インタフェースを介して各画像形成ユニット111Y、111M、111C、111Kに供給される。
【0067】
そして、例えばイエローの画像形成ユニット111Yでは、帯電装置113により所定電位で一様に帯電された感光体ロール71の表面が、画像処理部140から得られた画像データに基づいて発光するLEDプリントヘッド1により露光されて、感光体ロール71上に静電潜像が形成される。
【0068】
この静電潜像は、現像装置61により現像され、感光体ロール71上にはイエローのトナー像が形成される。同様に、画像形成ユニット111M、111C、111Kのそれぞれの感光体ロール71においても、マゼンタ、シアン、黒の各色トナー像が形成される。
【0069】
各画像形成ユニット111Y、111M、111C、111Kのそれぞれの感光体ロール71に形成された各色トナー像は、図10の矢印A方向に回動する中間転写ベルト121上に、一次転写ロール122により順次静電吸引され、中間転写ベルト121上に重畳されたトナー像が形成される。
【0070】
この重畳トナー像は、中間転写ベルト121の回動に伴って二次転写ロール123が配設された領域(二次転写部)に搬送される。そして、重畳トナー像が二次転写部に搬送されると、トナー像が二次転写部に搬送されるタイミングに合わせて用紙Pが二次転写部に供給される。
【0071】
そして、二次転写部にて二次転写ロール123により形成される転写電界により、重畳トナー像は搬送されてきた用紙P上に一括して静電転写される。その後、重畳トナー像が静電転写された用紙Pは、中間転写ベルト121から剥離され、搬送ベルト124により定着装置125まで搬送される。
【0072】
定着装置125に搬送された用紙P上の未定着トナー像は、定着装置125によって熱および圧力による定着処理を受けることで用紙P上に定着される。そして定着画像が形成された用紙Pは、デジタルカラープリンタ131の排出部に設けられた図示しない排紙載置部に搬送される。
【0073】
つまり、本実施例に係る画像形成装置は、本発明に係る現像装置61を備えているので、現像スリーブからの低トナー濃度現像剤69の剥離不良に起因する濃度低下といわれる画質不具合(画質不良)の発生を極めて少なくすることができる。
【0074】
前記した実施例は説明のために例示したものであって、本発明はこれらに限定されるものではなく、特許請求の範囲、明細書および図面の記載から当事者が認識することができる本発明の技術的思想に反しない限り、変更、削除および付加が可能である。
【0075】
前記した実施例1においては、表面処理部(溝形成部)に溝加工が施され、その両側に軸方向の長さが同一の非表面処理部(非溝形成部)が施された現像スリーブ等を例示したが、非表面処理部(非溝形成部)の軸方向の長さが同一で無くても良い。
【0076】
また、前記した実施例2においては、表面処理部にブラスト加工が施された現像スリーブ等を例示したが、表面処理部には、他の表面処理、例えば化学的な表面処理が施されていても良い。
【0077】
また、以下のように発明を把握することもできる。
〔1〕長手方向に延びた溝が周方向に略等間隔に形成された溝形成部と、
該溝形成部の両側に設けられ、前記溝が形成されていない非溝形成部とを備え、
該非溝形成部の外径が前記溝形成部における前記複数の溝の底を繋げてできる円の直径よりも小さく、
回転方向の方向性を有する現像スリーブにおいて、
一方の前記非溝形成部に、周方向に連続した凹溝が形成されたことを特徴とする現像スリーブ
【0078】
かかる構成により、非磁性円筒体からなる現像スリーブの表面に溝加工等を工具により施す際に、当該工具により非溝形成部に周方向に連続した凹溝を形成できる。このため、方向性を視認する手段としての凹溝を現像スリーブに付するに際し、独立した工程を別に設ける必要が無く、大きなコストアップにはならない。また、当該凹溝は周方向に連続して形成されているので、仮に、当該凹溝に現像剤が入り込んだとしても現像剤が残留することがないので、現像剤を回転方向および/または軸方向(長手方向)に搬送することも無い。
【0079】
〔2〕トナーとキャリアからなる現像剤を搬送するための表面処理が施された表面処理部と、
該表面処理部の両側に設けられ、前記表面処理が施されていない非表面処理部とを備え、
一方の前記非表面処理部が、他方の前記非表面処理部よりも長い現像スリーブにおいて、
一方または他方の前記非表面処理部に、周方向に連続した凹溝が形成されたことを特徴とする現像スリーブ
【産業上の利用可能性】
【0080】
本発明は、複写機、プリンタ等に使用される画像形成装置、現像装置、現像剤担持体および現像スリーブに適用される。
【符号の説明】
【0081】
31 現像剤担持体
34 現像スリーブ
51 マグネットロール
52 シャフト
53 現像極ピース
54 回収極ピース
55 搬送極ピース
56 介在極ピース
57 汲み上げ極ピース
58 層規制極ピース
61 現像装置
62 ハウジング
63 現像剤攪拌部材
64 現像剤攪拌部材
67 現像剤規制部材(層厚規制部材)
68 適正トナー濃度現像剤
69 低トナー濃度現像剤
71 感光体ロール(感光体)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トナーとキャリアからなる現像剤を搬送するための表面処理が施された表面処理部と、
該表面処理部の両側に設けられ、前記表面処理が施されていない非表面処理部とを備え、
回転方向の方向性を有する現像スリーブにおいて、
一方の前記非表面処理部に、周方向に連続した凹溝が形成されたことを特徴とする現像スリーブ
【請求項2】
前記凹溝の幅は、前記キャリアの直径よりも大きい請求項1に記載の現像スリーブ
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の現像スリーブと、
該現像スリーブの内部に挿入されたマグネットロールとを備えた現像剤担持体
【請求項4】
請求項3に記載の現像剤担持体と、
該現像剤担持体と対向して設けられた層厚規制部材と、
現像剤を撹拌する現像剤撹拌部材とをハウジング内に備えた現像装置
【請求項5】
請求項4に記載の現像装置と、
該現像装置の前記現像剤担持体と対向した感光体とを備えた画像形成装置

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2011−102850(P2011−102850A)
【公開日】平成23年5月26日(2011.5.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−257179(P2009−257179)
【出願日】平成21年11月10日(2009.11.10)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】