説明

現像ユニット

【課題】 本発明は、シール部材の端部剥がれをできるだけ抑えた現像ユニットを提供することを目的とする。
【解決手段】 現像ローラ52に摺接する第2シール部材62は、現像ローラ52の回転方向に関して、第1シール部材60の上流側端部およびケーシング55の取付面の上流側端部に対して外に延在する延在部64を有する。この延在部64のみが、折り曲げられてケーシング55の取付面65以外の面に固定される。第2シール部材は第1シール部材より低弾性であり、かつ、延在部のみが折り曲げられて固定されるため、第1シール部材の折り曲げから生じる復帰力の剥離作用を抑えられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、長手方向に延びかつ自軸まわりに回転する現像ローラと、該現像ローラを支持するとともに現像ローラの周面に沿う取付面を前記長手方向両端において有するケーシングと、前記ケーシングの長手方向両端の取付面に固着されるシール部材と、を含む現像ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
既存の現像ユニット100の要部断面を図5に示す。この現像ユニット100は、電子写真方式の画像形成装置において利用され、記録媒体へのトナー画像の形成プロセスを担う。現像ユニット100は非磁性一成分トナー(以下トナー)を貯留するケーシング101を有し、ケーシング101はその一壁面に矩形開口を有する。ケーシング101には、現像ローラ102が回転自在に配設され、前記矩形開口から現像ローラ102の一部が露出している。この現像ローラ102の露出部でトナーが感光体ドラム103に受け渡される。そして、ケーシング101の矩形開口と現像ローラ102との間からトナーが漏れるのを防止するために、現像ローラ102の長手方向の両端部にシール部材104が配置されている。
【0003】
シール部材104は、高い弾発性を有する第1シール部材105と、第1シール部材105上に貼り合わされた高い摺動性を有する第2シール部材106との2層構造を持つ。第1シール部材105がケーシング101の取付面107に固着され、第2シール部材106が第1シール部材105の弾発性によって現像ローラ102に周面に密着している。そして、シール部材104の一部が、ケーシング101の矩形開口から外部に延在され、当該延在部分が折り返されてケーシング101の裏面に固着されている。このような現像ユニット100と類似の構成が、例えば特許文献1および2に開示されている。
【0004】
【特許文献1】特開平11−316500号公報
【特許文献2】特開2007−65531号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
図5に示す現像ユニット100の構成では、弾発性を有する第1シール部材105を折り曲げてケーシング101の底面に貼り付けているから、第1シール部材105の復元力が、第1シール部材105の端部がケーシング101の底面から剥がれる方向に作用する。また、非磁性一成分トナーを用いる場合、現像ローラ102には導電性ウレタンゴムなどの比較的摩擦抵抗の大きな材料が用いられるが、現像ローラ102が矢印方向に回転すると、第2シール部材106にケーシング101内に引き込む方向に力が働き、その結果、第2シール部材106に張り合わされている第1シール部材105にも同方向に引き込む力が作用していた。つまり、図5に示す現像ユニット100はシール部材104が現像ローラ102周面に密着するからトナー漏れ対策が充分であるものの、シール部材104の端部剥がれに対する対策は充分になされているとは言えなかった。そこで、本発明は、シール部材の端部剥がれをできるだけ抑えた現像ユニットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願の請求項1では、以下の構成が提供される。即ち、現像ユニットは、長手方向に延びかつ自軸まわりに回転する現像ローラと、該現像ローラを支持するとともに現像ローラの周面に沿う取付面を前記長手方向両端において有するケーシングと、前記ケーシングの長手方向両端の取付面に固着されるシール部材と、を含む。前記シール部材は、弾性を有し前記取付面に固着される第1シール部材と、該第1シール部材に貼り合わされ、前記現像ローラの周面に摺接され、前記第1シール部材よりも低弾性かつ低摩擦特性を持つ第2シール部材とからなる。前記第2シール部材は、前記現像ローラの回転方向に関して、前記第1シール部材の上流側端部および前記ケーシングの取付面の上流側端部に対して外に延在する延在部を有し、該延在部のみが、折り曲げられて前記ケーシングの前記取付面以外の面に固定される。
【0007】
これによれば、現像ローラの回転方向に関して上流側にケーシングの取付面の上流側端部があり、現像ローラはケーシングの取付面の上流側からケーシング内側に向かってシール部材を摺動しながら回転する(図2の矢示54を参照)。
【0008】
第2シール部材は、現像ローラの回転方向に関して、第1シール部材の上流側端部およびケーシングの取付面の上流側端部に対して外に延在する延在部を有し、この第2シール部材の延在部のみが折り曲げられてケーシングの取付面以外の面に固定されている。つまり、少なくとも第2シール部材より高い弾発性を有する第1シール部材が折り曲げられていないから、第1シール部材が曲げ状態から復帰する復帰力が第2シール部材に作用せず、第2シール部材の延在部がケーシングの貼り付け面から剥がれることが極力抑えられる。
【0009】
本願の請求項2では、以下の構成が提供される。即ち、延在部が、反転されて取付面の裏面に固定されている。
【0010】
これによれば、延在部がケーシングの取付面の裏面に反転されて固定されているから、当該固定部が現像ローラから受ける引き込み力に対して強く抗うことができ、シール部材の剥離をより抑制できる。
【0011】
本願の請求項3および4では、以下の構成が提供される。即ち、現像ローラは、ウレタンゴムのような合成樹脂により構成されている。
【0012】
これによれば、現像ローラがウレタンゴムのような摩擦抵抗の高い合成樹脂であっても、本発明によりシール部材の剥離を抑制できる。
【0013】
本願の請求項5では、以下の構成が提供される。即ち、第1シール部材は、前記ケーシングの取付面の上流測端部から外に延在していない。
【0014】
これによれば、第1シール部材がケーシングの取付面の上流側端部より外に延在していないため、折れ曲がることがない。従って、折れ曲がり起因する復帰力がシール部材に作用しないため、シール部材の剥離がさらに抑制される。
【0015】
本願の請求項6では、以下の構成が提供される。即ち、第2シール部材は、前記現像ローラの周面に沿って配置されている。
【0016】
これによれば、第2シール部材が現像ローラの周面に沿って密着しているのでトナー漏れが効果的に防止できる。
【0017】
本願の請求項7では、以下の構成が提供される。即ち、現像ユニットにおいて非磁性1成分トナーが収容されている。
【0018】
これによれば、非磁性1成分のトナーを採用した場合には摩擦抵抗の高い現像ローラを使用することが余儀なくされるが、この場合であっても、本発明によりシール部材の剥離を抑制できる。
【0019】
本願の請求項8では、以下の構成が提供される。即ち、前記第2シール部材がポリテトラフルオロエチレンのフェルトである。
【0020】
これによれば、第2シール部材がポリテトラフルオロエチレンのフェルトであるため、現像ローラと第2シール部材との摩擦が極力抑えられる。そのため、現像ローラの回転に伴うシール部材への剥離作用も極力抑制できる。
【0021】
本発明の請求項9では、以下の構成が提供される。即ち、前記第1シール部材がウレタンフォームである。
【0022】
これによれば、第1シール部材がウレタンフォームであり、高い弾性を有し、第2シール部材を現像ローラに強く接触させる。そのため、現像ローラの長手方向端部において、トナーの漏出する空間をできるだけ小さくでき、トナーの漏出を抑制できる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、現像ローラの長手方向両端部において、ケーシングに取り付けられているシール部材の剥離を効果的に抑制できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明に係る実施形態について詳しく説明する。なお、以下に説明する実施形態は、本発明を実施するにあたって好ましい具体例であるから、技術的に種々の限定がなされているが、本発明は、以下の説明において特に本発明を限定する旨明記されていない限り、これらの形態に限定されるものではない。
【0025】
図1は、本実施形態の現像ユニット50を備えた画像形成装置1の正面断面図である。画像形成装置1は、スキャナ、プリンタ、複写機、ファックシミリの機能を複合して持つ複合機である。画像形成装置1は、画像読取部3と画像形成部2と給紙部11とを含む。
【0026】
給紙部11の給紙カセット10に蓄積された用紙などの記録媒体がピックアップローラ15により画像形成部2の搬送経路12に1枚ずつ繰出され、繰出された記録媒体は搬送ローラ装置17および20により搬送経路12を下流側に送り出される。
【0027】
画像形成部2には、現像ユニット50、感光ドラムユニット22、定着ユニット30および排出ユニット41が搬送経路12に沿ってこの順番で配置され、現像ユニット50および感光ドラムユニット22が着脱可能とされる。感光ドラムユニット22は感光体ドラム23を有し、感光体ドラム23は帯電ローラ25によりその周面が一様に帯電される。周面を帯電された感光体ドラム23は露光器27によって露光され、こうして感光ドラム23の周面に静電潜像が形成される。
【0028】
現像ユニット50は、ケーシング55の内部に貯留された非磁性一成分トナー(以下、単にトナー)を供給ローラ51および現像ローラ52によって感光体ドラムの表面に搬出し、静電潜像がトナー像として可視像化される。記録媒体が感光体ドラム23と転写ローラ29とのニップ位置に到達したときに、転写ローラ29に対しトナーの帯電極性と逆極性の電圧が印加されて、トナー像が記録媒体上に転写される。
【0029】
トナー像が転写された記録媒体は搬送経路12をさらに下流側に送り出され、定着ユニット30の加圧ローラ35および加熱ローラ36が記録媒体を加熱・加圧し、記録媒体上にトナー像が定着される。そして、記録媒体は排出ユニット41の排出ローラ42・43により排紙トレイ上に排出される。
【0030】
次に、現像ユニット50について図2を参照して説明する。図2は、現像ユニット50の要部を示す断面図である。現像ユニット50は、供給ローラ51、現像ローラ52、シール部材59、ブレード70およびケーシング55を有する。
【0031】
現像ローラ52および供給ローラ51は、長手方向に延びるローラであって、自軸まわりに回転可能にケーシング55に支持される。所定電圧が印加された供給ローラ51と現像ローラ52とが互いに接触しながら同じ方向(矢示54)に回転することにより、トナーが摩擦帯電される。帯電されたトナーは現像ローラ52上に担持され、現像ローラ52上のトナー層厚がブレード70によって2層以下に規制される。現像ローラ52は、導電性のウレタンゴムなどの合成樹脂製であって、その表面に薄層状態のトナーを担持した状態で感光体ドラム23に摺接しながら回転し、トナーを感光体ドラム23の表面に付着させる。
【0032】
本発明の要部であるシール部材59の構造について、図2〜4を参照して説明する。図3はシール部材59の表側を示す斜視図であり、第2シール部材62が上側に、第1シール部材60が下側に配置されている。図4はシール部材59の裏側を示す斜視図である。なお、図4における斜線領域は、両面テープ63の配設領域や接着剤の塗布領域などの接着領域を示す。
【0033】
シール部材59は、第1シール部材60と第2シール部材62とを有し、第1シール部材60はケーシング55に固着され、第1シール部材60の上側に第2シール部材62が貼り合わされている。この第2シール部材62は、第1シール部材より低摩擦かつ低弾性であって、第1シール部材60の弾性により現像ローラ52を圧接しており、この第2シール部材62を摺動しながら現像ローラ52は回転する。現像ローラ52は取付面65の上流側端(現像ローラの52の回転方向に関して)からケーシング55の内側に向かって(図2の矢示54方向)回転するため、第2シール部材62および第1シール部材60の上流側が、ケーシング55内部に引き込まれるような摩擦力を受ける。この現像ローラ52の回転方向において、第2シール部材62は、第1シール部材60および取付面65の上流側端部(図2において紙面の左側端)より延在する延在部64を有し、該延在部64は、ケーシング55の第1シール部材の取付面65以外の面に固定される。詳しくは、シール部材59を構成する第1シール部材60および第2シール部材62のうち、第2シール部材62のみが、反転されて取付面65裏面に固定されている。つまり、高い弾発性を持つ第1シール部材60は折り曲げられないから、第1シール部材60が曲げ状態から復帰する復帰力がシール部材59に作用せず、第2シール部材の延在部64がケーシング55の裏面から剥がれることが極力抑えられる。
【0034】
第2シール部材62の上流側端部をケーシング55内に引き込む力が作用したとしても、低弾性の第2シール部材62のみがケーシング55に固定されているから、該延在部64には曲げ状態から復帰しようとする復帰力が殆ど作用せず、ケーシング55にしっかりと固定されて剥がれにくい。このように、第2シール部材62のみがケーシング55の裏面にしっかり固定されることにより、シール部材59の剥離を抑制できる。
【0035】
また、延在部64が反転されて取付面65の裏面に固定されるので、該延在部64が現像ローラから受ける引き込み力に対して強く抗うことができ、シール部材59の剥離をより抑制できる。
【0036】
さらに、現像ローラ52の回転方向に関し、第1シール部材60の上流側端部(図2において第1シール部材60の左端)とケーシング55の取付面65の上流側端部(図2において取付面65の左端)とが同一面上に位置される。つまり、第1シール部材60がケーシングの取付面64の上流側端部より外に延在していないため、折れ曲がることがない。従って、折れ曲がりに起因する復帰力がシール部材59に作用しないため、シール部材の剥離がさらに抑制される。ただし、第1シール部材60とケーシング55とが上流側端部において同一面上に位置することには限定されない。第1シール部材60が折り曲げられないことが好ましい。
【0037】
また、好ましくは、第2シール部材62が現像ローラ52の周面に沿う形状で設けられているとよい。これにより、現像ローラ52と第2シール部材62とが均一に密着しているため、トナー漏れを効果的に抑制できる。
【0038】
さらに、第1シール部材60がウレタンフォーム等の高い弾性を持つ素材であることが好ましい。高い弾性を持つ第1シール部材60を用いることにより、第2シール部材62が介して現像ローラ52に強く密着される。そのため、現像ローラ52の長手方向両端部において、トナー漏れを抑制できる。また、第2シール部材62がポリテトラフルオロエチレンのフェルト等の低摩擦かつ低弾性の素材で構成されると、現像ローラ52との摺動が滑らかに行われるので摩擦力が殆ど作用せず、かつ折り曲げに起因する復帰力も弱いため、シール部材59への剥離がより抑えられる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明の一実施形態の現像ユニットを備えた画像形成装置の正面図である。
【図2】本発明の一実施形態の現像ユニットの正面断面図である。
【図3】シール部材の表側を示す斜視図である。
【図4】シール部材の裏側を示す斜視図である。
【図5】従来技術の現像ユニットの正面断面図である。
【符号の説明】
【0040】
50 現像ユニット
52 現像ローラ
55 ケーシング
60 第1シール部材
62 第2シール部材
64 延在部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
長手方向に延びかつ自軸まわりに回転する現像ローラと、該現像ローラを支持するとともに現像ローラの周面に沿う取付面を前記長手方向両端において有するケーシングと、前記ケーシングの長手方向両端の取付面に固着されるシール部材と、を含み、
前記シール部材は、弾性を有し前記取付面に固着される第1シール部材と、該第1シール部材に貼り合わされ、前記現像ローラの周面に摺接され、前記第1シール部材よりも低弾性かつ低摩擦特性を持つ第2シール部材とからなり、
前記第2シール部材は、前記現像ローラの回転方向に関して、前記第1シール部材の上流側端部および前記ケーシングの取付面の上流側端部に対して外に延在する延在部を有し、該延在部のみが、折り曲げられて前記ケーシングの前記取付面以外の面に固定されることを特徴とする現像ユニット。
【請求項2】
前記延在部が、反転されて取付面の裏面に固定されていることを特徴とする請求項1に記載の現像ユニット。
【請求項3】
前記現像ローラは、合成樹脂により構成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の現像ユニット。
【請求項4】
前記現像ローラは、ウレタンゴムにより構成されていることを特徴とする請求項3に記載の現像ユニット。
【請求項5】
前記第1シール部材は、前記ケーシングの取付面の上流側端部から外に延在していないことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の現像ユニット。
【請求項6】
前記第2シール部材は、前記現像ローラの周面に沿って配置されていることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の現像ユニット。
【請求項7】
前記ケーシング内に、非磁性1成分トナーが収容されていることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の現像ユニット。
【請求項8】
前記第2シール部材がポリテトラフルオロエチレンのフェルトであることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の現像ユニット。
【請求項9】
前記第1シール部材がウレタンフォームであることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の現像ユニット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−282183(P2009−282183A)
【公開日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−132748(P2008−132748)
【出願日】平成20年5月21日(2008.5.21)
【出願人】(000006297)村田機械株式会社 (4,916)
【Fターム(参考)】