説明

現像ローラ、及び、画像形成方法

【課題】粒子を含有する樹脂層がシャフト表面から剥離しない耐久性を有し、トナーの搬送と帯電付与を安定して行うことが可能な現像ローラを提供する。
【解決手段】導電性シャフトに隣接する樹脂層中に平均粒径が1μm以上30μm以下の粒子を含有し、導電性シャフトと樹脂層とで形成される界面長をXa、界面長Xaの範囲内にあり、界面より1μmの位置に存在する粒子の断面長の総和をXbとしたとき、5≦100×(Xb/Xa)(%)≦50となる現像ローラ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複写機、プリンタ、ファクシミリ受信機等の電子写真方式の画像形成装置に使用される現像ローラ、及び、当該現像ローラを用いた画像形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式の画像形成方法は、通常、以下の手順を経て用紙等の転写シート上にトナー画像を形成する。先ず、電子写真感光体に代表される像担持体上に形成された静電潜像に電荷の付与されたトナーを供給して静電潜像を現像する。次に、現像により像担持体上に形成されたトナー画像を転写シート上に転写させる。さらに、転写シート上のトナー画像を定着により固定し、転写シート上にトナー画像を形成する。
【0003】
像担持体上にトナー画像を形成する現像方法には、キャリアとトナーより構成される2成分現像剤を用いる2成分現像方式と、トナーのみからなる1成分現像剤を用いる1成分現像方式がある。このうち、1成分現像方式の1つに非磁性1成分トナーを用いた現像方式は、現像ローラ近傍に配置した帯電部材や現像ローラ自身により摩擦帯電したトナーの層を現像ローラ表面に形成し、層形成されたトナーを飛翔させて像担持体にトナー供給を行っている。非磁性1成分トナーを用いた画像形成は、キャリアを用いることなく簡素な現像装置を用いて像担持体上にトナー画像を形成することが可能なので、特に、フルカラーのプリンタを市場に普及させる上で有効な手段となる。
【0004】
非磁性1成分トナーを用いる画像形成技術では、像担持体へのトナー供給性能を向上させるために現像ローラの検討が行われている。たとえば、固体粒子の添加等により現像ローラ表面に凹凸を付与し、現像ローラ表面でのトナー搬送性の向上をねらった技術がある(たとえば、特許文献1参照)。また、現像ローラ表面の粗さを均一化するために、10点平均粗さでばらつきを規定して凹凸の間隔を制御できる様に粒子を添加する技術も登場している(たとえば、特許文献2参照)。
【特許文献1】特開平7−64387号公報
【特許文献2】特開2003−207967号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、家庭用のプリンタの登場に代表される様に、最近では画像形成装置の普及に拍車がかかり、それに伴って装置のコンパクト化の検討がますます進められる様になってきた。この様な背景から、本発明者は現像装置の構成部品である現像ローラのコンパクト化を試み、現像ローラよりゴム層をなくしてシャフト上に樹脂層を直接設けた構造の現像ローラの開発を検討した。そして、トナー搬送性の向上をねらって樹脂層中に固体粒子を添加する試みを行った。その結果、樹脂層中に固体粒子を添加すると、トナー搬送性の向上に加え現像ローラ表面で十分なトナー帯電を安定して行えることが見出れた。
【0006】
しかしながら、シャフト表面に樹脂層を直接設けた構造の現像ローラでは、樹脂層に粒子を添加すると、樹脂層がシャフト表面から剥離し易くなり、ローラの耐久性が低下するという新たな問題を発生させていた。この問題を解消するために、固体粒子の添加量制御等の対応が採られたが、耐久性の向上は実現されず、しかも、添加量が抑制されるとトナー帯電性にも影響を与える様になった。
【0007】
本発明は、固体粒子を含有した樹脂層をシャフト表面に直接設けた現像ローラの耐久性を向上させ、しかも、良好なトナー帯電を安定して行うことが可能な現像ローラの提供を目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題は、下記に記載される構成により解消されるものであることを見出された。
【0009】
請求項1に記載の発明は、
『導電性シャフトに隣接する樹脂層中に粒子を含有する現像ローラであって、
前記粒子の平均粒径が1μm以上30μm以下であり、
前記導電性シャフトと前記樹脂層とで形成される界面の長さをXa、
前記界面の長さXaの範囲内にあり、前記界面より1μmの位置に存在する前記粒子の断面長の総和をXbとしたとき、
5≦100×(Xb/Xa)(%)≦50
であることを特徴とする現像ローラ。』というものである。
【0010】
請求項2に記載の発明は、
『導電性シャフトの周囲に樹脂層を設けた現像ローラ上にトナーのみからなる現像剤層を形成し、前記現像剤層を形成するトナーを静電潜像担持体上に供給して静電潜像を現像する工程を有する画像形成方法において、
前記導電性シャフトに隣接する樹脂層中に平均粒径が1μm以上30μm以下の粒子を含有し、
前記導電性シャフトと前記樹脂層とで形成される界面の長さをXa、前記界面の長さXaの範囲内にあり、前記界面より1μmの位置に存在する前記粒子の断面長の総和をXbとしたときに、5≦100×(Xb/Xa)(%)≦50となる現像ローラを用いて画像形成を行うことを特徴とする画像形成方法。』というものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明では、粒子を含有した樹脂層を導電性シャフト表面に直接設けた構造の現像ローラに対し、平均粒径が特定範囲となる粒子を用い、かつ、樹脂層中の特定個所での粒子分散状態を特定することにより、本発明の効果が発現されることが見出された。すなわち、樹脂層が導電性シャフト表面より剥離せずに強固な接着を発現させることができる様になり現像ローラの耐久性を向上させることができる様になった。また、現像ローラ表面に適度な凹凸が付与され、現像ローラ表面においてトナーの搬送と帯電付与が安定して行える様になった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明に係る現像ローラは、導電性シャフト上に樹脂層を直接設けた構造を有するものである。固体粒子を添加して現像ローラ表面に粗さを付与する方法はトナー搬送性の向上を実現する有効な手段の1つである。また、凹凸を付与するために粒子を使用すると、樹脂の絶縁性により、ローラ表面に形成された電荷が導電性シャフトに向かって移動しにくくなることから、粒子が電荷のリークを抑制する作用を有している。
【0013】
この様に、現像ローラを構成する樹脂層中に粒子を含有させることにより、現像ローラ表面におけるトナー搬送性や帯電付与性能を向上させるメリットがある。一方、粒子が導電性シャフト近くに存在していると、粒子が樹脂層とシャフトとの接触を邪魔することになり樹脂層の接着性を大幅に低下させてしまう。
【0014】
本発明者は、現像ローラ表面で粒子の存在により良好なトナー搬送性と帯電付与性能が発現され、一方、導電性シャフト近傍に粒子を近づけない様にして現像ローラの耐久性を向上させるという、2つの性能を両立させるための検討を行った。その結果、樹脂層と導電性シャフトで形成される界面長と樹脂層中の特定位置における粒子の総断面長の比率で特定することで、前述の2つの性能を両立することが可能な現像ローラが得られることを見出したのである。
【0015】
すなわち、現像ローラを、
(1)平均粒径が1μm以上30μm以下の粒子を導電性シャフトに隣接する樹脂層中に添加し、
(2)導電性シャフトと樹脂層とで形成される界面の長さをXa、界面の長さXaの範囲内にあり、界面より1μmの位置に存在する粒子の断面長の総和をXbとしたときに、5≦100×(Xb/Xa)(%)≦50の関係を満足する、
ものとすることにより、樹脂層が導電性シャフトに強固に接着して耐久性が確保され、しかも、現像ローラ表面でトナーの搬送と帯電付与を良好かつ安定して行えることを見出したのである。
【0016】
導電性シャフトと樹脂層の界面より1μmの位置に存在する粒子の断面長の総和が上記関係を満足させる様に粒子が分散される要因は、おそらく、現像ローラ作製時に使用する樹脂層形成用塗布液と粒子の比重差がバランスよく作用するためと推測される。本発明に係る現像ローラは、導電性シャフト表面に直接樹脂層用塗布液を塗布し、乾燥する工程を経て樹脂層が形成されるものであるが、これらの作製工程で粒子が沈降せず、塗布液中における粒子の分散状態が維持されるものと推測される。
【0017】
つまり、粒子の比重が塗布液の比重よりも大きすぎると、現像ローラ作製中に粒子が沈降して導電性シャフト近傍に集まり接着性の確保が困難になることが予想される。一方、粒子の比重が塗布液の比重よりも小さすぎると、塗布液中で粒子が浮き気味の傾向になり分散状態に偏りが発生することが予想される等、塗布液の性能維持や作業効率への影響が懸念される様になる。事実、後述する実施例の結果でも、粒子の比重が塗布液の比重よりも0.2よりも大きいケースで上記関係式が成立し易く、本発明の効果を発現し易い結果が得られている。
【0018】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0019】
本発明に係る現像ローラは、導電性シャフト(以下、簡単にシャフトともいう)表面に樹脂層が直接形成された構造を有する。また、シャフト表面と隣接する樹脂層、すなわち、シャフト表面と界面を形成する樹脂層に平均粒径が1μm以上30μm以下となる粒子を含有する。図1に本発明に係る現像ローラの代表的な断面構成を示す。
【0020】
図1(a)と(b)は、本発明に係る現像ローラの層構造の例を示すもので、導電性シャフト11の表面に樹脂層12を直接形成した構造であること示している。すなわち、図1(a)はシャフトの周りに1層の樹脂層を設けたものであり、図1(b)は2層の樹脂層よりなるものである。そして、図1(a)、(b)に示すいずれの現像ローラ10も導電性シャフト11と隣接する樹脂層12中に現像ローラ表面に凹凸を付与する粗さ付与粒子13と呼ばれる粒子を含有している。なお、本発明に係る現像ローラの樹脂層は、図1(a)、(b)に示すものに限定されるものではなく、3層以上の複数層からなるものも含まれる。
【0021】
導電性シャフト11は、導電性の部材で構成され、画像形成により現像ローラ10の表面に蓄積する電荷を適度にリークさせる作用が求められている。導電性シャフトの具体的な材質としては、たとえば、SUS304等のステンレス鋼、鉄、アルミニウム、ニッケル、アルミニウム合金、ニッケル合金等の金属材料が好ましい。また、前述した金属の粉体物やカーボンブラック等の導電性材料を樹脂中に充填させた導電性樹脂も使用可能である。シャフト11は比抵抗が1×104Ω・cm以下のものが好ましい。また、外径は5mm〜30mmが好ましく、10mm〜20mmがより好ましい。
【0022】
樹脂層12は、3μm乃至100μmの厚みを有し、その表面でトナー層を形成し、形成されたトナー層に対して摩擦帯電を行うことにより、トナーを帯電させている。そして、樹脂層12表面で帯電したトナーは、像担持体に向かって飛翔して潜像を現像する。なお、樹脂層12を構成する樹脂の具体例については後述する。
【0023】
樹脂層12中に添加される粒子13は、平均粒径が1μm以上30μm以下で、の大きさを有するものである。また、粗さ付与粒子13の含有率は10質量%以上50質量%以下とすることが好ましい。樹脂層12中に粒子13を添加することにより、現像ローラ表面には凹凸が付与され、粗面化した現像ローラ表面ではトナーの搬送性が向上する様になる。
【0024】
樹脂層12に含有される粒子13は、平均粒径が1μm以上30μm以下であり、樹脂層12中の含有量が10質量%以上50質量%以下とすることが好ましい。粒子13は現像ローラ表面に粗さを付与することにより、ローラ表面におけるトナーの搬送性を向上させることが可能である。また。粒子13は、現像ローラとして使用した時に受ける衝撃に対して適度な耐久性を有し、樹脂層12中で適度な絶縁性を発現するものが好ましい。
【0025】
粒子13の平均粒径は、個数平均1次粒径を意味するものである。具体的には、倍率が50,000倍の透過型電子顕微鏡装置(TEM)を用い、100個の粒子をランダムに1次粒子として観察し、画像解析により水平方向フェレ径を算出して、その平均値を個数平均1次粒径とするものである。
【0026】
具体的には、現像ローラ10より厚さ80乃至〜200nmの測定用切片試料を作製し、これを透過型電子顕微鏡装置(TEM)で観察して、得られた顕微鏡写真を解析することにより粒子13の平均粒径を算出する。透過型電子顕微鏡装置(TEM)の具体例としては、「H−9000NAR」(日立製作所社製)、「JEM−200FX」(日本電子社製)等を挙げることができる。
【0027】
透過型電子顕微鏡による観察方法は、現像ローラ断面測定を行う際に行われる通常の方法で行われる。たとえば、以下の様な手順で行うことが可能である。先ず、観察用試料を作製する。常温硬化性のエポキシ樹脂中に現像ローラを包埋、硬化させてブロックを作製する。作製したブロックをダイヤモンド歯を備えたミクロトームを用い、厚さ80〜200nmの薄片状に切り出して測定用試料を作製する。
【0028】
次に、透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて現像ローラの断面構造を写真撮影をする。当該写真より現像ローラの断面構造を目視で確認することができる。また、「ルーゼックスF(ニレコ社製)」等の画像処理装置を透過型電子顕微鏡装置に接続し、得られた画像情報を演算処理することで、粒子13の平均粒径が算出される。また、測定用試料は場合によっては四酸化ルテニウム、または四三酸化オスミウム等で染色してもよい。
【0029】
本発明では、粒子13の平均粒径を1μm以上30μm以下とすることで、現像ローラ表面にトナー搬送に最適な凹凸が付与される。また、格子中の粒子13の個数と格子の割合を後述の様に特定することで、ローラ表面の凹凸の分布状態が最適化されてローラ表面での均一なトナー搬送と帯電付与が行える。
【0030】
一方、粒子13が5μm未満ではローラ表面に適度な凹凸を設けることが難しくなり、トナー搬送性に影響を与えることになり、また、粒子が30μmを超えるとローラ表面の凹凸が深くなりすぎて、像担持体へのトナー供給が困難になる。
【0031】
粒子13の材質は、上記の条件を満足するものであれば特に限定されるものではなく、公知のビニル系重合体あるいは縮合系重合体の樹脂粒子が挙げられる。ビニル系重合体の樹脂としては、たとえば、ポリスチレン、スチレンアクリル共重合体、ポリアクリル樹脂(ポリメチルメタクリレート等)等が挙げられる。また、縮合系重合体の樹脂としては、ポリエステル(ポリエチレンテレフタレート等)、ポリカーボネート、ポリアミド(ナイロン等)、ポリウレタン等が挙げられる。
【0032】
また、本発明では、樹脂層12中で粒子13が上記関係式を満足する様に分散させることを実現させるために、樹脂層12を形成する際に使用する樹脂を溶解した塗布液の比重よりも若干大きな比重を有する粒子を選択することが好ましい。本発明で使用可能な主な樹脂の比重は、たとえば、ポリスチレンは1.04〜1.09、ポリアクリル樹脂は1.17〜1.20、ポリエステル樹脂は1.22〜1.28、ポリカーボネート樹脂が1.20、ポリアミド(ナイロン)樹脂が1.13〜1.14である。なお、粒子13の比重は、粒子13が樹脂製のものであれば、たとえば、JIS K 7112−1980に規定する方法で測定することが可能である。
【0033】
また、粒子13が適度な絶縁性を有することにより、現像ローラ表面における帯電付与性能が向上して安定したトナー帯電が行える様になる。これは、樹脂層12中に粒子13を含有させると、現像ローラ表面で形成された電荷は絶縁性の粒子により導電性シャフト11に向けての移動が行いにくくなる結果、現像ローラ表面で適度に滞留してトナーを帯電するためと推測される。この様に、粒子13は現像ローラ表面で形成された電荷のリークを抑制するいわゆる導電性調整剤としての機能も有するものである。
【0034】
また、現像ローラ10は、樹脂層12と導電性シャフト11とで形成される界面の長さをXa、当該界面より1μmの位置に存在する粒子13の断面長の総和をXbとしたときに、5≦100×(Xb/Xa)(%)≦50の関係を満足するものである。
【0035】
上記関係を図2を用いて説明する。図2は上記関係式を説明するための現像ローラ断面を示す模式図である。図2で現像ローラ10を構成する「樹脂層12と導電性シャフト11で形成される界面」は、図中の「界面→」と記された個所に実線で示されているものでこの長さをXaとする。次に、樹脂層12の「界面より1μmの位置」は、図中の破線で示した個所である。
【0036】
また、「界面より1μmの位置における粒子の断面長」は、樹脂層12中に存在する個々の粒子13を、界面より1μmの位置で切断した時に形成される円の直径に相当するもので、図2でxb1、xb2、xb3、xb4で表されるものである。そして、「断面長の総和Xb」は、これら粒子の各断面長を足し合わせて得られる値である。すなわち、図2における粒子の総和Xbは以下の様に表される。
【0037】
Xb=xb1+xb2+xb3+xb4
つまり、界面より1μmの位置における樹脂層中の粒子の断面長の総和Xbは、1μmの位置で切断される粒子がn個存在する場合、各粒子の断面長をxb1、xb2、xb3、xb4、・・・、xbnとすると以下の様に表される。
【0038】
Xb=Σxi=xb1+xb2+xb3+xb4+・・・+xbn
この様に、粒子の断面長の総和Xbは表される。
【0039】
本発明では、導電性シャフトと界面を形成する樹脂層中に平均粒径1μm乃至30μmの粒子を含有させた現像ローラが、界面の長さXaと粒子の総和Xbとの間に上記関係を有するときに、本発明の効果が発現するものであることを見出している。すなわち、導電性シャフト近傍では粒子の影響をなくすことで樹脂層と導電性シャフトとの接着性が強化されて耐久性の向上を実現するとともに、樹脂層中の粒子の存在により現像ローラ表面では電荷が適度に保持されて良好なトナー帯電が行える様になる。
【0040】
上述した界面の長さXa、界面より1μmの位置特定、あるいは、界面より1μmの位置での粒子13の断面長xbiやその総和Xbは、現像ローラの断面測定により算出され、具体的には、前述した透過型電子顕微鏡装置(TEM)観察により得られる。すなわち、粒子13の平均粒径測定の時と同様の手順で透過型電子顕微鏡(TEM)により写真撮影された現像ローラの断面構造を目視で確認することができる。また、「ルーゼックスF(ニレコ社製)」等の画像処理装置を用い、電子顕微鏡写真の画像情報を演算処理することで、界面の長さXaや当該界面より1μmの位置に存在する各粒子の断面長xbiやその総和Xbを算出する。
【0041】
本発明では、粒子13の平均粒径と、樹脂層12と導電性シャフト11の界面の長さXa及び樹脂層12中の特定個所における粒子13の断面長の総和Xbの比を、前述した様に特定することで、樹脂層12とシャフト11間に強固な接着性が発現される様になる。具体的には、4.0N以上の剥離強度を有するもので、現像ローラの耐久性が向上しているものである。
【0042】
樹脂層12の剥離強度は、たとえば、図3に示す層間接着力の測定により得られるもので、これは以下の手順により行われるものである。
【0043】
図3(a)に示す様に、現像ローラ10の樹脂層12に切り込みを入れる。すなわち、ローラ中央部の樹脂層12に対し、その外周に沿って、破線Xで示される幅2.5cmの切り込みを入れる。さらに、上記樹脂層12に対して軸体方向に切り込み(破線Y)を入れて、そこから樹脂層12を少し剥離させておく。
【0044】
次に、図3(b)に示す様に、剥離された樹脂層12の端部をオートグラフAGS(島津製作所株式会社製)で垂直に引き上げる(矢印Z方向)。そして、どの程度の力で引き上げたら樹脂層12が導電性シャフト11表面より剥離され始めるかを測定し、その時の層間接着力を剥離強度として評価するものである。
【0045】
なお、樹脂層12の引き上げ速度は100mm/minとし、負荷容量20Nまであげる過程で負荷が増加しなくても樹脂層を引き上げていくことが可能な負荷値を求めた。
【0046】
次に、樹脂層12を構成する樹脂について説明する。樹脂層12は、その表面にトナー層を形成し、さらに、摩擦帯電によりトナーを帯電するとともに、樹脂層表面でトナー搬送も行っている。樹脂層12表面でのトナーの帯電や搬送を安定して行える様にするためには、樹脂層12とシャフト11の間で強固な接着を実現させることが求められる。
【0047】
これらの性能を発現させる樹脂としては、たとえば、ポリオールとイソシアネートとを反応させて得られるポリウレタン系樹脂がその代表例として挙げられる。
【0048】
前記ポリオールの具体例としては、ポリテトラメチレンエーテルグリコール、ポリ−ε−カプロラクトンジオール、ポリカーボネートポリオール、ポリプロピレングリコール等のポリウレタン用ポリオール化合物が挙げられる。これらの中でも、高温高湿環境下での画像形成時にトナーの帯電量低下の発生を防止するポリウレタン樹脂を形成するポリカーボネートポリオールが好ましい。具体的には、ポリヘキサメチレンカーボネートジオール等の脂肪族または脂環式のポリカーボネートポリオールがより好ましい。
【0049】
また、前記イソシアネートの具体例としては、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、シクロヘキサンジイソシアネート、水添MDI、イソホロンジイソシアネート、1,3−キシリレンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート等が挙げられる。
【0050】
また、上記イソシアネートやポリオール、さらにはポリアミンとを用い、分子末端にイソシアネート基を有する様に反応させて得られるウレタンプレポリマーを用いることも可能である。
【0051】
また、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、エチレンジアミン、トリメチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、イソホロンジアミン(IPDA)、ヒドラジン等の化合物を併用することにより分子鎖の伸長を行うことも可能である。
【0052】
ポリウレタン樹脂の代表的な製造方法としては一段法と二段法が挙げられる。一段法はポリオールとジイソシアネート化合物、及び、必要に応じて鎖伸長剤や重合停止剤を適当な溶媒中で一度に反応させることによりポリウレタン樹脂を作製する方法である。また、二段法はポリオールとジイソシアネート化合物をイソシアネート基が過剰な環境下で反応させることにより、ポリオール鎖の末端にイソシアネート基を有するプレポリマーを調製し、次いで、これを適当な溶媒中で鎖伸長剤や重合停止剤を存在させた環境下で反応を行うものである。このうち、二段法は均一なポリマー溶液を得られ易いメリットを有する。
【0053】
また、樹脂−シリカハイブリッド体と呼ばれる樹脂成分とシリカ成分とを分子結合で一体化した分子構造を有する化合物を樹脂層12に含有させることにより、樹脂層12とシャフト11の間での接着性を向上させることも可能である。樹脂−シリカハイブリッド体は、ケイ素原子と酸素原子の交互結合による網目状のシリカ構造(本発明ではシリカ骨格ともいう)を有する領域と、ポリウレタン樹脂やビニル重合体樹脂からなる有機高分子の領域とから構成されるものである。
【0054】
樹脂−シリカハイブリッド体は、エポキシ基と反応性を有する官能基を有する樹脂とエポキシ基含有アルコキシシラン部分縮合物との反応によりアルコキシ基含有シラン変性樹脂を形成し、アルコキシ基含有シラン変性樹脂を縮合反応により硬化させてシリカ構造を形成するものである。
【0055】
次に、本発明に係る現像ローラの製造方法について説明する。本発明に係る現像ローラは、導電性を有するシャフトの周りに、粒子を含有する樹脂からなる塗布液を塗布し、塗布後、加熱処理を行って塗布液を乾燥させる工程を経て作製することが可能である。また、上記樹脂層の上にさらに塗布液を塗布し、同様の加熱処理を行って、図1(b)に示す多層構造の現像ローラを作製することも可能である。本発明に係る現像ローラの作製手順についてさらに説明する。
【0056】
先ず、導電性を有するシャフトの周りに形成する樹脂層を形成する材料を有機溶剤に混合、溶解させて樹脂層形成用塗布液を作製する。すなわち、粒子を含有する塗布液を調製する。なお、必要に応じて、樹脂層形成用塗布液中にはカーボンブラック等の材料を含有させることも可能である。
【0057】
塗布液を作製する際には、塗布液中の成分が均一になることが好ましく、たとえば、カーボンブラック等を樹脂とともに添加して塗布液を調製する場合には、カーボンブラック等が均一分散する様に調製することが好ましい。塗布液を調製する手段としては、たとえば、「ダイノーミルTILAB(シンマルエンタープライセス社製)」に代表されるサンドグラインダ型の分散装置等が挙げられる。サンドグラインダ型の分散装置では、たとえば、直径0.5mmガラスビーズ等を使用して分散処理が行われる。
【0058】
この様にカーボンブラックを均一分散させた液中に、粒子を添加して粒子が変形、破損しない様に分散処理を行って、平均粒径が1μm以上30μm以下の粒子を含有する樹脂層形成用の塗布液を調製する。
【0059】
次に、導電性シャフト上に前述の樹脂層形成用塗布溶液を塗布する。塗布方法は、樹脂層形成用塗布溶液の粘度等に応じて種々の方法を選択することが可能である。具体的な塗布方法としては、具体的にはディッピング法、スプレー法、ロールコート法または刷毛塗り法等の方法が挙げられ、本発明ではこれらの塗布方法を限定するものではない。
【0060】
本発明に係る現像ローラを作製する際、樹脂層12用の塗布液として使用可能な溶剤は特に限定されるものではないが、たとえば、以下の様なケトン系溶剤、アルコール系溶剤、エステル系溶剤等が使用可能である。
【0061】
先ず、ケトン系溶剤としては、たとえば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等が挙げられる。また、アルコール系溶剤としては、たとえば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−ブタノール、ジアセトンアルコール等が挙げられる。
【0062】
また、エステル系溶剤としては、たとえば、酢酸エチル、酢酸ブチル等が挙げられ、エーテル系溶剤としては、たとえば、エチレングリコールジメチルエーテル、テトラヒドロフラン等が挙げられる。さらに、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族系溶剤やジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等が挙げられる。これらの有機溶剤を単独または混合して使用することが可能である。
【0063】
次に、本発明に係る画像形成方法について説明する。本発明に係る現像ローラは、キャリアを用いずに画像形成を行う非磁性一成分系現像剤を用いる画像形成装置に好ましく使用される。
【0064】
本発明に係る現像ローラは、静電潜像を形成する像担持体上にトナーを供給する現像装置に装填されるものである。現像装置は、本発明に係る現像ローラの他に、トナー層規制部材とトナー補給補助部材とを有し、これらの部材がそれぞれ当接する様に配置されている。現像装置ではトナー層規制部材とトナー補給補助部材により現像ローラ上にトナーの薄層を形成し、これを像担持体上に供給して像担持体上に形成された潜像を可視画像化する。
【0065】
トナー層規制部材は、押圧状態の下で現像ローラ上にトナーを均一な薄層状態にして供給するとともに、供給したトナーを摩擦帯電する。トナー層規制部材は、ウレタンゴムや金属板等の様に、ある程度の弾性を有する部材が用いられ、現像ローラを押圧することにより現像ローラ上にトナーの薄層を形成するものである。現像ローラ上に形成されたトナーの薄層は、トナー粒子が最大で10個分、好ましくは5個分以下の厚さを有するものである。
【0066】
トナー層規制部材の現像ローラへの押圧力は、100mN/cm〜5N/cmが好ましく、200mN/cm〜4N/cmが特に好ましい。押圧力を上記範囲内にすることで、搬送ムラを起こさずにトナー搬送が行え、白スジ等の画像不良の発生が回避される。また、押圧力を上記範囲とすることで、トナーを変形、破砕させる負荷を与えずに現像ローラに供給する。現像ローラへの押圧力は、トナー層規制部材を構成する材質や、画像形成時における部材の長さや厚さを調整することにより、上記範囲内にある所望の大きさに設定することが可能である。
【0067】
トナー補給補助部材は、現像ローラにトナーを安定に供給するためのものである。トナー補給補助部材には、例えば、撹拌羽根をつけた水車状のローラやスポンジ状のローラが使用されている。トナー補給補助部材の大きさ(直径)は、現像ローラの直径の0.2〜1.5倍が好ましく、この範囲のときに、現像ローラにトナーが過不足なく供給されて、画像不良のない良好な画像形成を可能にする。
【0068】
また、本発明に係る画像形成方法に使用される像担持体としては、無機感光体、アモルファスシリコン感光体、有機感光体等が挙げられ、この中でも、有機感光体が特に好ましく、さらに、電荷輸送層と電荷発生層とを積層構造としたものが好ましい。
【0069】
以下、本発明に係る画像形成方法に使用可能な現像器(現像装置)について具体的に説明する。
【0070】
図3は、本発明に係る現像ローラが搭載可能な現像装置20の断面図である。
【0071】
図3に示す現像装置20は、非磁性1成分系トナー(非磁性1成分現像剤)を用いて現像を行うことが可能である。現像装置20は、本発明に係る現像ローラ10と、現像ローラ10の左側に設けられたバッファ室22と、バッファ室22に隣接するホッパ23とを有する。現像ローラ10は、図示しないモータにより図中反時計回り方向に回転駆動され、図示しない画像形成装置に組み込まれた状態にある像担持体と接触または近接する。
【0072】
バッファ室22にはトナー規制部材であるブレード24が現像ローラ10に圧接させた状態で配置されている。ブレード24は、現像ローラ10上のトナーの帯電量及び付着量を規制するものである。また、現像ローラ10の回転方向に対してブレード24の下流側に、現像ローラ10上のトナー帯電量・付着量の規制を補助するための補助ブレード25をさらに設けることも可能である。
【0073】
現像ローラ10には供給ローラ26が押圧されている。供給ローラ26は、図示しないモータにより現像ローラ10と同一方向(図中反時計回り方向)に回転駆動する。供給ローラ26は、導電性の円柱基体と基体の外周にウレタンフォームなどで形成された発泡層を有する。
【0074】
ホッパ23には一成分現像剤であるトナーTが収容されている。また、ホッパ23にはトナーTを攪拌する回転体27が設けられている。回転体27には、フィルム状の搬送羽根が取付けられており、回転体27の矢印方向への回転によりトナーTを搬送する。搬送羽根により搬送されたトナーTは、ホッパ23とバッファ室22を隔てる隔壁に設けられた通路28を介してバッファ室22に供給される。なお、搬送羽根の形状は、回転体27の回転に伴い羽根の回転方向前方でトナーTを搬送しながら撓むとともに、通路28の左側端部に到達すると真っ直ぐの状態に戻るようになっている。このように羽根はその形状を湾曲状態を経て真っ直ぐに戻るようにすることでトナーTを通路28に供給している。
【0075】
また、通路28には通路28を閉鎖する弁281が設けられている。この弁はフィルム状の部材で、一端が隔壁の通路28右側面上側に固定され、トナーTがホッパ23から通路28に供給されると、トナーTからの押圧力により右側に押されて通路28を開けるようになっている。その結果、バッファ室22内にトナーTが供給される。
【0076】
また、弁281の他端には規制部材282が取り付けられている。規制部材282と供給ローラ26は、弁281が通路28を閉鎖した状態でも僅かな隙間を形成する様に配置される。規制部材282は、バッファ室22の底部に溜まるトナー量が過度にならないように調整するもので、現像ローラ10から供給ローラ26に回収されたトナーTがバッファ室22の底部に多量に落下しないように調整される。
【0077】
現像装置20では、画像形成時に現像ローラ10が矢印方向に回転駆動するとともに供給ローラ26の回転によりバッファ室22のトナーが現像ローラ10上に供給される。現像ローラ10上に供給されたトナーTは、ブレード24、補助ブレード25により帯電、薄層化された後、像担持体との対向領域に搬送され、像担持体上の静電潜像の現像に供される。現像に使用されなかったトナーは、現像ローラ10の回転に伴ってバッファ室22に戻り、供給ローラ26により現像ローラ10から掻き取られ回収される。
【0078】
また、現像装置20に設けられる現像バイアス電源装置29は、現像バイアス電圧Vbの設定値(例えば500V程度)を出力する直流電圧電源と交番電界(例えばVppが2.0kV,周波数2kHz)を形成する交流電源装置より構成される。なお、「Vpp」とは、交番電圧波形の振幅の山と谷の差であるピーク・トゥー・ピーク電圧を示す。
【0079】
画像形成時、静電潜像担持体11が、帯電装置(図示せず)により例えば800V程度の電位に一様に帯電され、その後、所定部分がレーザ等の光学ヘッドにより露光されると、例えば100V程度の電位に減衰されて静電潜像が形成される。
【0080】
現像領域では、現像バイアス電源装置29から印加される現像バイアス電圧Vbと交番電圧により形成される電界の作用により、現像ローラ10上で薄層形成していたトナーが現像ローラ10周面から飛翔してパウダクラウド化する。そして、静電潜像が形成されている静電潜像担持体上にトナー供給が行われ、静電潜像が現像されてトナー像が形成される。
【0081】
現像ローラ10上に形成されるトナー層の厚さは、たとえば、以下の様な条件設定を行うことにより制御される。すなわち、静電潜像担持体11の周速を100mm/sec、現像ローラ10の周速を200mm/sec、トナー規制部材24が現像ローラ10を押圧する押圧力を、前述の様に100mN/cm〜5N/cm、好ましくは200mN/cm〜4N/cmに設定する。その結果、10層(トナー粒子10個分)以下、好ましくは、5層(トナー粒子5個分)以下の厚みを有するトナー層を形成することができる。
【0082】
なお、本発明に係る現像ローラが搭載可能な現像装置の構成は、図3に示すものに限定されるものではない。
【0083】
次に、図3に示す現像装置20を搭載可能なフルカラー画像形成装置の一例を図4に示す。なお、図3に示す現像装置20が搭載可能な画像形成装置は図4に示すものに限定されるものではない。図4の画像形成装置は、回転駆動される感光体ドラム15の周囲に、感光体ドラム15表面を所定電位に均一帯電させる帯電ブラシ16、感光体ドラム11上の残留トナーを除去するクリーナ17が設けられている。
【0084】
レーザ走査光学系18は、帯電ブラシ16により均一帯電された感光体ドラム15上を走査露光し、感光体ドラム15上に静電潜像を形成する。レーザ走査光学系18は、レーザダイオード、ポリゴンミラー、fθ光学素子を内蔵し、その制御部にはイエロー、マゼンタ、シアン、ブラック毎の印字データがホストコンピュータから転送される。そして、上記各色の印字データに基づいて、レーザビームが順次出力され、感光体ドラム15上を走査露光して、各色毎の静電潜像を形成する。
【0085】
本発明に係る現像装置20を収納した現像装置ユニット30は、静電潜像が形成された感光体ドラム15に各色トナーを供給して現像を行う。現像装置ユニット30には、支軸33の周囲にイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの各非磁性1成分トナーをそれぞれ収納した4つの現像装置20Y、20M、20C、20Bkが装着され、支軸33を中心に回転して、各現像装置20が感光体ドラム15と対向する位置に導かれる。
【0086】
現像装置ユニット30は、レーザ走査光学系18により感光体ドラム15上に各色の静電潜像が形成される毎に、支軸33を中心に回転し、対応する色のトナーを収容した現像装置20を感光体ドラム15に対向する位置に導く。そして、各現像装置20Y、20M、20C、20Bkより感光体ドラム15上に、帯電された各色トナーを順次供給して現像を行う。
【0087】
図4の画像形成装置は、現像装置ユニット30より感光体ドラム15の回転方向下流側に無端状の中間転写ベルト40が設けられ、感光体ドラム15と同期して回転駆動する。中間転写ベルト40は、1次転写ローラ41により押圧された部位で感光体ドラム15と接触し、感光体ドラム15上に形成されたトナー画像を転写する。また、中間転写ベルト40を支持する支持ローラ42と対向して、2次転写ローラ43が回転可能に設けられ、支持ローラ42と2次転写ローラ43との対向する部位で、中間転写ベルト40上のトナー画像が記録紙等の記録材S上に押圧転写される。
【0088】
なお、現像装置ユニット30と中間転写ベルト40との間には、中間転写ベルト40上の残留トナーを除去するクリーナ50が中間転写ベルト40に対して接離可能に設けられている。
【0089】
記録材Sを中間転写ベルト40に導く給紙手段60は、記録材Sを収容する給紙トレイ61と、給紙トレイ61に収容した記録材Sを1枚ずつ給紙する給紙ローラ62、給紙した記録材Sを2次転写部位に送るタイミングローラ63より構成される。
【0090】
トナー画像が押圧転写された記録材Sは、エアーサクションベルト等で構成された搬送手段66により定着装置70に搬送され、定着装置70で転写されたトナー画像が記録材S上に定着される。定着後、記録材Sは垂直搬送路80を搬送され、装置本体100の上面に排出される。
【実施例】
【0091】
以下、実施例を挙げて本発明の実施態様を具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
1.現像ローラ1〜10の作製
以下に示す塗布液を用いてシャフト表面に少なくとも1層の樹脂層を有する現像ローラを作製した。
1−1.樹脂層用塗布液の調製
(1)樹脂層用塗布液1の調製
ファーネスブラック 30質量部
メチルエチルケトン(MEK) 600質量部
を、上記の順にメディアタイプの分散機「ダイノーミルTILAB(シンマルエンタープライセス社製)」に投入し、さらに、直径0.5mmのガラスビーズ100質量部を投入して、1000rpmで2時間の分散処理を行って1次分散液を調製した。
【0092】
次に、上記1次分散液中に、
ウレタン樹脂「ニッポラン5120(日本ポリウレタン社製)」 100質量部
を投入し、1000rpmで分散処理を行うことにより2次分散液とした。なお、2次分散液の比重を測定したところ、0.93であった。
【0093】
さらに、上記2次分散液中に比重が1.19の架橋アクリル樹脂粒子(平均粒径10μm)20質量部を投入し、今度は架橋アクリル樹脂粒子が破砕しない程度の条件下で分散処理を行い、「樹脂層用塗布液1」を調製した。
(2)樹脂層用塗布液2の調製
ファーネスブラック 20質量部
メチルエチルケトン(MEK) 600質量部
を、上記順番にメディアタイプの分散機「ダイノーミルTILAB(シンマルエンタープライセス社製)」に投入し、さらに、直径0.5mmのガラスビーズ100質量部を投入して、1000rpmで2時間の分散処理を行って1次分散液を調製した。
【0094】
次に、上記1次分散液中に、
ウレタン樹脂「ニッポラン5120(日本ポリウレタン社製)」 100質量部
を投入し、1000rpmで分散処理を行って、比重が0.93の「樹脂層用塗布液2」を調製した。
(3)樹脂層用塗布液3の調製
前記「樹脂層用塗布液1」の調製で、2次分散液中に投入する粒子を、比重1.09、平均粒径20μmの架橋ポリスチレン樹脂粒子30質量部に変更した他は同様の手順により、「樹脂層用塗布液3」を調製した。
(4)樹脂層用塗布液4の調製
前記「樹脂層用塗布液1」の調製で、2次分散液中に投入する粒子を、比重1.14、平均粒径30μmのナイロン6,6樹脂粒子20質量部に変更した他は同様の手順により、「樹脂層用塗布液4」を調製した。
(5)樹脂層用塗布液5の調製
前記「樹脂層用塗布液1」の調製で、2次分散液中に投入する粒子を、比重1.24、平均粒径5μmのポリエチレンテレフタレート樹脂粒子35質量部に変更した他は同様の手順により、「樹脂層用塗布液5」を調製した。
(6)樹脂層用塗布液6の調製
前記「樹脂層用塗布液1」の調製で、2次分散液中に投入する粒子を、比重1.20、平均粒径1μmのポリカーボネート樹脂粒子35質量部に変更した他は同様の手順により、「樹脂層用塗布液6」を調製した。
(7)樹脂層用塗布液7の調製
前記「樹脂層用塗布液1」の調製で、2次分散液中に投入する粒子を、比重1.24、平均粒径0.5μmのポリエチレンテレフタレート樹脂粒子35質量部に変更した他は同様の手順により、「樹脂層用塗布液7」を調製した。
(8)樹脂層用塗布液8の調製
前記「樹脂層用塗布液1」の調製で、2次分散液中に投入する粒子を、比重1.06、平均粒径40μmのスチレンアクリル共重合体粒子20質量部に変更した他は同様の手順により、「樹脂層用塗布液8」を調製した。
1−2.現像ローラ1〜10の作製
(1)現像ローラ1の作製
直径16mmのSUS303製シャフトの周面に、「樹脂層用塗布液1」を乾燥時の厚さが15μmになる様に塗布し、100℃の加熱処理を1時間行って、図1(a)に示す構造を有する「現像ローラ1」を作製した。
(2)現像ローラ2の作製
前記「現像ローラ1」の作製において、「樹脂層用塗布液1」を乾燥時の厚さが10μmになる様に塗布して、100℃の加熱処理を1時間行った。さらに、「樹脂層用塗布液2」を乾燥時の厚さが10μmになるように塗布し、100℃の加熱処理を1時間行うことにより、図1(b)に示す構造を有する「現像ローラ2」を作製した。
(3)現像ローラ3〜6の作製
前記「現像ローラ1」の作製で用いた「樹脂層用塗布液1」に代えて、「樹脂層用塗布液3」乃至「樹脂層用塗布液6」を用い、直径16mmの各SUS製シャフト周面に乾燥時の厚さが15μmとなる様に塗布を行い、100℃の加熱処理を1時間行った。この様にして、図1(a)に示す構造を有する「現像ローラ3〜6」を作製した。
(4)「現像ローラ7」の作製
前記「現像ローラ2」の作製において、「樹脂層用塗布液1」に代えて「樹脂層用塗布液4」を用いた他は同様の手順により、図1(b)に示す構造を有する「現像ローラ7」を作製した。
(5)現像ローラ8〜10の作製
前記「現像ローラ1」の作製で用いた「樹脂層用塗布液1」に代えて、「樹脂層用塗布液7」及び「樹脂層用塗布液8」を用い、直径16mmの各SUS製シャフト周面に乾燥時の厚さが15μmとなる様に塗布を行い、100℃の加熱処理を1時間行った。この様にして、図1(a)に示す構造を有する「現像ローラ8、9」を作製した。また、「樹脂層用塗布液1」に代えて「樹脂層用塗布液2」を、直径16mmのSUS製シャフト周面に乾燥時の膜厚が15μmとなる様に塗布を行い、100℃の加熱処理を行うことで、粒子を含有しない「現像ローラ10」を作製した。
【0095】
以上の様に作製した「現像ローラ1〜10」に含有される粒子の平均粒径、及び、「(Xb/Xa)×100」の値、及び、図3の測定装置による剥離強度を表1に示す。なお、剥離強度の測定手順は以下のとおりである。
【0096】
〈剥離強度(接着力)評価〉
図3に示す測定装置を用いて現像ローラの樹脂層と導電性シャフト間の接着力を評価した。図3(a)に示す様に、ローラ中央部の樹脂層に対し、その外周に沿って、破線Xで示される幅2.5cmの切り込みを入れ、さらに、上記樹脂層に対して軸体方向に切り込み(破線Y)を入れて、そこから樹脂層を少し剥がしておく。次に、図3(b)に示す様に、剥がした樹脂層の端部をオートグラフAGS(島津製作所社製)で垂直に引き上げて(矢印Z方向)、どの程度の力で引き上げたら樹脂層が引き剥がされ始めるかを測定することで評価を行った。なお、樹脂層の引き上げ速度を100mm/minとした。引き剥がされ始める時の負荷が4.0N以上となるものを合格とした。
【0097】
【表1】

【0098】
2.トナーの作製
(1)「樹脂粒子分散液1」の作製
撹拌装置を取り付けたフラスコに下記化合物を投入、溶解させて混合液を作製し、さらに80℃に加温した。
【0099】
ペンタエリスリトールテトラステアリン酸エステル 72.0質量部
スチレン 115.1質量部
n−ブチルアクリレート 42.0質量部
メタクリル酸 10.9質量部
一方、撹拌装置、温度センサ、冷却管、窒素導入装置を取り付けたセパラブルフラスコに、アニオン系界面活性剤(ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム:SDS)7.08質量部をイオン交換水2760質量部に溶解させた界面活性剤溶液を投入し、窒素気流下で撹拌速度230rpmで撹拌しながら80℃に昇温させた。次いで、循環経路を有する機械式分散機「クレアミックス(エム・テクニック(株)製)」により、前記界面活性剤溶液(80℃)中に前記混合液(80℃)を混合分散させ、均一な分散粒子径を有する乳化粒子(油滴)が分散された乳化液を調製した。
【0100】
この分散液に、重合開始剤(過硫酸カリウム:KPS)0.84質量部をイオン交換水200質量部に溶解させた開始剤溶液を添加し、この系を80℃にて3時間にわたり加熱・撹拌して重合反応を行った。得られた反応溶液に、重合開始剤(KPS)7.73質量部をイオン交換水240質量部に溶解させた溶液を添加し、15分後に温度を80℃とした後、下記化合物よりなる混合液を100分間かけて滴下した。
【0101】
スチレン 383.6質量部
n−ブチルアクリレート 140.0質量部
メタクリル酸 36.4質量部
n−オクチルメルカプタン 12質量部
この系を80℃で60分間にわたり加熱・撹拌させた後、40℃まで冷却することにより、ワックスを含有する樹脂粒子分散液(以下、「ラテックス(1)」という。)を作製した。
(2)「着色剤分散液K」の作製
一方、n−ドデシル硫酸ナトリウム9.2質量部をイオン交換水160質量部に撹拌溶解した。この溶液を撹拌しながら、着色剤としてカーボンブラック「モーガルL」(キャボット社製)20質量部を徐々に添加し、次いで、機械式分散機「クレアミックス」(エム・テクニック(株)製)を用いて分散処理することにより、「着色剤分散液K」を調製した。「着色剤分散液K」における着色剤粒子の粒子径を電気泳動光散乱光度計「ELS−800」(大塚電子社製)で測定したところ、重量平均粒子径で120nmであった。
(3)「着色粒子K」の作製
温度センサ、冷却管、撹拌装置(撹拌翼を2枚有し、交差角が20°)、形状モニタリング装置を取り付けた反応容器に、
「ラテックス(1)」 1250質量部(固形分換算)
イオン交換水 2000質量部
「着色剤分散液K」 全量
を投入し、内温を25℃に調整後、この分散液混合溶液に5mol/リットルの水酸化ナトリウム水溶液を添加してpHを10.0に調整した。
【0102】
次いで、塩化マグネシウム・6水和物52.6質量部をイオン交換水72質量部に溶解した水溶液を、撹拌下25℃にて10分間かけて添加した。その後、直ちに昇温を開始し、この系を5分間かけて95℃まで昇温(昇温速度14℃/分)させた。
【0103】
この状態で「マルチサイザー3(ベックマン・コールター社製)」にて凝集粒子の粒径を測定し、体積基準メディアン径(D50)が6.5μmになった時点で、塩化ナトリウム115質量部をイオン交換水700質量部に溶解させた水溶液を添加して粒子成長を停止させた。さらに、液温度90℃にて8時間にわたり加熱撹拌(撹拌回転数120rpm)を行って融着を継続させて熟成処理した後、この系を10℃/分の条件で30℃まで冷却し、塩酸を添加してpHを3.0に調整し、撹拌を停止した。
【0104】
生成した粒子を濾過し、イオン交換水で繰り返し洗浄して遠心分離装置によって液中分級処理し、その後、フラッシュジェットドライヤを用いて乾燥処理して含水率1.0質量%の「着色粒子K」を生成した。
(4)「トナーK」の作製
上記「着色粒子K」に、数平均一次粒子径が12nm、疎水化度が65の疎水性シリカを0.8質量部、数平均一次粒子径が30nm、疎水化度が55の疎水性チタニアを0.5質量部添加し、ヘンシェルミキサーにて混合して、「トナーK」を作製した。
3.評価実験
市販のカラーレーザプリンタ「Magicolor 5440DL(コニカミノルタビジネステクノロジーズ(株)製)」に、現像ローラ1〜10と上記トナーを収納した現像装置を搭載して各々評価を行った。現像条件におけるVbを420V、Vppを1100V、交番電界の周波数を2.0kHzに設定した。表1に示す様に、現像ローラ(現像装置)1〜10を実施例1〜7、及び、比較例1〜3とした。
【0105】
評価は帯電性と現像ローラへのトナー付着性について、低温低湿環境(10℃、15%RH)下での初期状態、及び、常温常湿環境(20℃、50%RH)下での初期状態と2000枚の連続プリント実施後に得られた画像を目視により行った。なお、目視評価に使用したプリント画像作成に使用したオリジナル画像は、画素率が6%のオリジナル画像(細線画像、人物顔写真、ベタ白画像、ベタ画像がそれぞれ1/4等分にあるA4サイズのオリジナル画像)を用いた。
【0106】
〈帯電性〉
作成されたプリント画像上の白地画像とフルカラー画像を目視評価し、カブリの発生状況を評価した。評価内容は
○:カブリの発生が見られず問題なし
△:カブリの発生がわずかに見られたが、画像上では認められなかった
×:カブリの発生が見られ、画像上でも認められた
とし、○と△を合格とした。
【0107】
〈トナー付着〉
現像ローラへのトナー付着状況を目視で評価した。なお、初期状態におけるトナー付着状態は、30枚の連続プリントを実施直後のトナー付着状態を評価した。評価内容は
○:現像ローラへのトナー付着が認められず問題なし
△:現像ローラへのトナーが若干付着していたが、トナー付着に起因する画像汚れは見られなかった
×:現像ローラへのトナー付着が認められ、トナー付着に起因すると見られる画像汚れも確認された
とし、○と△を合格とした。
【0108】
結果を表2に示す。
【0109】
【表2】

【0110】
先ず、表1の剥離強度の評価結果から確認される様に、本発明に該当する現像ローラ1〜7は、いずれも剥離強度が4.0N以上のもので、現像ローラ8〜10の剥離強度よりもはるかに強度を有することが確認された。また、表2の結果から、本発明に該当する実施例1〜7はいずれもカブリの発生が見られず安定したトナー帯電性能が付与されたこと、また、トナー付着による影響が見られないものであることが確認された。一方、比較例1〜3はカブリが頻繁に発生する結果となり、トナーへの帯電付与を安定して行えないことが確認された。
【図面の簡単な説明】
【0111】
【図1】本発明に係る現像ローラの断面構成を示す模式図である。
【図2】樹脂層と導電性シャフトとで形成される界面長Xa、樹脂層中の粒子の断面長の総和Xbを説明するための現像ローラ断面を示す模式図である。
【図3】現像ローラの樹脂層の剥離強度を測定するための測定装置の模式図である。
【図4】本発明に係る現像ローラが搭載可能な現像装置の断面図である。
【図5】本発明に係る現像ローラが使用可能なフルカラー画像形成装置の断面図である。
【符号の説明】
【0112】
10 現像ローラ
11 導電性シャフト
12 樹脂層
13 粒子
20 現像装置
T トナー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性シャフトに隣接する樹脂層中に粒子を含有する現像ローラであって、
前記粒子の平均粒径が1μm以上30μm以下であり、
前記導電性シャフトと前記樹脂層とで形成される界面の長さをXa、
前記界面の長さXaの範囲内にあり、前記界面より1μmの位置に存在する前記粒子の断面長の総和をXbとしたとき、
5≦100×(Xb/Xa)(%)≦50
であることを特徴とする現像ローラ。
【請求項2】
導電性シャフトの周囲に樹脂層を設けた現像ローラ上にトナーのみからなる現像剤層を形成し、前記現像剤層を形成するトナーを静電潜像担持体上に供給して静電潜像を現像する工程を有する画像形成方法において、
前記導電性シャフトに隣接する樹脂層中に平均粒径が1μm以上30μm以下の粒子を含有し、
前記導電性シャフトと前記樹脂層とで形成される界面の長さをXa、前記界面の長さXaの範囲内にあり、前記界面より1μmの位置に存在する前記粒子の断面長の総和をXbとしたときに、5≦100×(Xb/Xa)(%)≦50となる
現像ローラを用いて画像形成を行うことを特徴とする画像形成方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2009−20330(P2009−20330A)
【公開日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−183122(P2007−183122)
【出願日】平成19年7月12日(2007.7.12)
【出願人】(303000372)コニカミノルタビジネステクノロジーズ株式会社 (12,802)
【Fターム(参考)】