説明

現像ローラ、現像装置および画像形成装置

【課題】表面層に含有される粒子の凝集や離脱が抑制され、環境変動に対する帯電安定性や環境応答性に優れた現像ローラ、該現像ローラを有する現像装置、および該現像装置を有する画像形成装置を提供すること。
【解決手段】SP値7.5〜9.0の結着樹脂中に、該樹脂のSP値との差の絶対値が2以下のSP値を有する樹脂からなる粗さ付与粒子4が分散されてなる表面層3を備えた現像ローラを用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、現像ローラ、現像装置および画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電子写真プリンタにおいては、帯電ローラによって感光体ドラムの表面を一様にかつ均一に帯電させる。次いで、露光装置によって感光体ドラムの表面に静電潜像を形成し、現像装置によって該静電潜像にトナーを付着させ、静電潜像を可視像化してトナー像にする。そして、該トナー像は、転写ローラによって媒体に転写され、定着装置によって定着される。
【0003】
現像装置においては、装置の小型化の観点から、トナーだけを含む一成分現像剤が好ましく使用されている。この種の現像装置においては、トナーを現像領域に搬送する現像ローラが感光体ドラムに接触させて、又は近接させて回転自在に配設される。またトナーを現像ローラに供給する供給ローラが前記現像ローラに接触させて回転自在に配設される。さらに現像ローラ上のトナーを規制するブレードが、先端を前記現像ローラの表面に当接させて配設される。そのような現像装置においてトナーカートリッジに収容されたトナーは供給ローラによって現像ローラに供給され、供給されたトナーは、現像ローラの回転に伴い、ブレードによって薄層化され、かつ、所定の極性に帯電させられてトナー層を形成する。該トナー層のトナーは、現像ローラと感光体ドラムとの間の現像部に送られ、感光体ドラム上の静電潜像に静電気的に付着させられ、静電潜像を可視像化してトナー像を形成する。
【0004】
現像ローラとしては、表面に樹脂層を有するものが一般に用いられており、該樹脂層にはトナーの搬送性の観点から、有機または無機微粒子が分散される。
【0005】
例えば、表面に被覆層を有し、該被覆層に導電性無機微粒子を含有させ、表面に微小な凹凸を有する現像スリーブが報告されている(特許文献1)。しかしながら、そのような現像スリーブを長期間用いると、導電性無機微粒子によって形成された表面の凸部が摩耗したとき、当該粒子が表面から比較的容易に離脱する問題が生じた。当該粒子が離脱すると、十分なトナー帯電性および搬送性が得られない。また環境変動に対する帯電安定性が低下した。環境変動に対する帯電安定性が低下すると、周囲環境の変動によってトナー帯電量の変化が顕著に大きくなるため、現像性が低下し、十分な画像濃度が得られず、かすれやムラを生じる。したがって周囲の環境(温度や湿度)を計測し、現像性を安定化させるシステム等の仕組みが必要となり、部品点数の増大による、装置の大型化やコストの上昇といった不具合が生じる。
【0006】
また例えば、表面に被覆層を有し、該被覆層に不定形の凹凸付与粒子を含有させた現像剤担持体が報告されている。しかしながら、そのような現像剤担持体の表面において当該粒子の凝集が起こる問題が生じた。粒子が凝集すると、表面に凹凸ムラが生じ、画像濃度が不均一になる。また環境変動に対する帯電安定性の問題がやはり生じた。
【特許文献1】特開平8−160738号公報
【特許文献2】特開平10−90994号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、表面層に含有される粒子の凝集や離脱が抑制され、環境変動に対する帯電安定性に優れた現像ローラ、該現像ローラを有する現像装置、および該現像装置を有する画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、SP値7.5〜9.0の結着樹脂中に、該樹脂のSP値との差の絶対値が2以下のSP値を有する樹脂からなる粗さ付与粒子が分散されてなる表面層を備えたことを特徴とする現像ローラ、該現像ローラを有する現像装置、および該現像装置を有する画像形成装置に関する。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る現像ローラ、現像装置および画像形成装置は、現像ローラの表面層における粗さ付与粒子の凝集および離脱を抑制する。よって、均一な画像濃度が達成され、かつトナーに対する十分な帯電性および搬送性が安定して達成される。また周囲の環境変動に対する帯電安定性が向上される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の現像ローラは最表面に特定の表面層を備えたものである。現像ローラの構成は最表面に特定の表面層を有する限り特に制限されず、例えば、図1(A)および(B)に示すように、基体1上に弾性層2および表面層3が順次、積層された現像ローラ5aの構造を有していてもよいし、または図2(A)および(B)に示すように、基体1上に直接的に表面層3が積層された現像ローラ5bの構造を有していてもよい。現像ローラ5a,5bにおいて表面層3の直下には表面層の接着性を向上させるためにプライマー層(図示せず)が形成されていてもよい。図1および図2において(A)は現像ローラの軸方向に垂直な断面の一例の模式図であり、(B)は(A)の表面近傍の拡大図である。
【0011】
基体1は、その上に形成される層を支持可能で、良好な導電性を示すものであれば、特に制限されることはない。通常は、アルミニウム、非磁性ステンレスなどの金属からなる円筒状の芯金である。表面をメッキすることもある。
【0012】
弾性層2は、一般に公知のゴム材からなり、所望により導電剤を含有してもよい。ゴム材として、例えば、シリコーンゴム、アクリロニトリルブタジエンゴム、エチレンプロピレンゴム、ポリウレタンゴム等が挙げられる。弾性層の圧縮永久歪みを小さく設計できる点で好ましくはシリコーンゴムである。ゴム材は単独もしくは2種類以上組み合わせて使用してもよい。
【0013】
導電剤としては、例えば、電子導電剤とイオン導電剤が挙げられる。
電子導電剤の具体例としては、例えば、ケッチェンブラック、アセチレンブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、サーマルブラック、チャンネルブラック等の導電性カーボン;SAF、ISAF、HAF、FEF、GPF、SRF、FT、MT等のゴム用カーボン;酸化処理を施したインク用カーボン;熱分解カーボン、グラファイト;酸化錫、酸化チタン、酸化亜鉛等の導電性金属酸化物;ニッケル、銅等の金属を例示できる。導電剤は、単独でもまたは2種類以上組み合わせて用いることもできる。
【0014】
イオン導電剤の具体例としては、例えば、テトラエチルアンモニウム、テトラブチルアンモニウム、ラウリルトリメチルアンモニウム(ドデシルトリメチルアンモニウム)、ステアリルトリメチルアンモニウム(オクタデシルトリメチルアンモニウム)、ヘキサデシルトリメチルアンモニウム、ベンジルトリメチルアンモニウム、変性脂肪酸ジメチルエチルアンモニウム等のプラスイオンと、過塩素酸塩、塩素酸塩、塩酸塩、臭素酸塩、ヨウ素酸塩、ホウフッ化水素酸塩、硫酸塩、エチル硫酸塩、カルボン酸塩、スルホン酸塩等のマイナスイオンとからなるアンモニウム塩;リチウム、ナトリウム、カルシウム、マグネシウム等のアルカリ金属あるいはアルカリ土類金属の過塩素酸塩、塩素酸塩、塩酸塩、臭素酸塩、ヨウ素酸塩、ホウフッ化水素酸塩、トリフルオロメチル硫酸塩、スルホン酸塩等を例示できる。
【0015】
導電剤の配合量は特に制限されるものではなく、例えば、イオン導電剤の場合はゴム材100重量部に対して0.01〜5重量部、特に0.05〜2重量部とすることが好ましい。また例えば、電子導電剤の場合は、ゴム材100重量部に対して1〜50重量部、特に5〜40重量部とすることが好ましい。
【0016】
弾性層の体積抵抗率は10〜1010Ω・cm、特に10〜10Ω・cmであることが好ましい。
本明細書中、体積抵抗率はJIS規格(K6911)に準拠して測定された値を用いている。導電性ゴムおよびプラスチックの体積抵抗測定用の電圧降下式デジタルオーム計(川口電機製作所製)を用い、測定環境20〜25℃、50〜60RH%で測定した。
【0017】
弾性層には、導電剤以外にも必要に応じ、充填剤、架橋剤、その他ゴム用添加剤など種々の添加剤を適宜配合することができる。
【0018】
弾性層は、押出し成形法、射出成形法、注型法などの方法によって基材の導電性芯金上に成形可能である。成形後、加熱によって硬化させて弾性を付与する。弾性層を成形した後は、寸法精度(外径、フレ)や、表面の均一化(表面粗さ)の向上の為に、各種研磨加工法によって表面を研磨することが好ましい。
【0019】
弾性層の平均厚みは特に制限されるものではなく、例えば、0.3〜3.0mm、特に0.5〜2.0mmが好ましい。
【0020】
表面層3は、特定の結着樹脂中に、特定の粗さ付与粒子4が含有・分散されてなるものである。
【0021】
表面層を形成する結着樹脂はSP値が7.5〜9.0、好ましくは7.6〜8.9のものである。そのような結着樹脂を使用することによって、周囲環境の変動時において帯電量の変化を抑制できる。結着樹脂のSP値が9.0より大きいと、低湿環境におけるトナーの帯電量レベルが上昇し、環境変動に対する帯電安定性が低下する。結着樹脂のSP値が7.5より小さいと、高湿環境におけるトナーの帯電量レベルが低下し、環境変動に対する帯電安定性が低下する。
【0022】
結着樹脂としては、SP値が上記範囲内である限り特に制限されものではない。具体例として、例えば、シリコーン系アルキド樹脂、アクリロニトリル−ブタジエンゴム、ポリエチレン、イソプレンゴムポリプロピレン、スチレン−ブタジエンゴム、ブタジエンゴム、天然ゴム等が挙げられる。特に、シリコーン系アルキド樹脂が好ましい。2種類以上の結着樹脂を使用する場合は、いずれの結着樹脂もSP値が上記範囲内のものを使用するようにする。SP値は樹脂種によって異なるため、複数の樹脂をグラフト結合、共重合させる等の複合化を行うことにより、SP値を調整できる。
【0023】
SP値とは溶解度パラメータ値であって、物質の凝集エネルギーの大きさを表す数値である。
溶解度パラメータ値σは、Fedorsによって提案された方法「Polym.Eng.Sci.,vol14,p147(1974)」に従って、原子または原子団の蒸発エネルギー及びモル体積をそれぞれΔei、Δviとすると、下記式(1)により算出される。
【0024】
式(1)
σ=(ΣΔei/ΣΔvi)1/2
【0025】
本明細書中、結着樹脂の溶解度パラメータ値は、各成分の溶解度パラメータ値とモル比の積より算出されるものである。例えば、結着樹脂をX、Yの2種類の単量体より構成されるものと仮定した時、各単量体の質量組成比をx、y(質量%)、分子量をMx、My、溶解度パラメータ値をSPx、SPyとすると、各単量体比はx/Mx、y/Myとなる。ここで、共重合体樹脂のモル比をCとすると、C=x/Mx+y/Myと表され、この結着樹脂の溶解度パラメータ値SPは下記式(2)のようになる。
【0026】
式(2)
SP={(x×SPx/Mx)+(y×SPy/My)}×1/C
【0027】
尚、各単量体の溶解度パラメータSPx、SPyは、前述の式(1)により算出されるもので、具体的な値としてはポリマーハンドブック(ワイリー社刊)第4版等の文献に記載されているものを利用すると良い。
【0028】
結着樹脂の分子量は表面層が熱的な安定性および膜強度等を有する限り特に制限されない。
【0029】
粗さ付与粒子は、結着樹脂のSP値との差の絶対値が2以下、好ましくは1以下のSP値を有する樹脂からなるものである。そのような粗さ付与粒子は、結着樹脂との相溶性が良いため、結着樹脂への分散が容易であり、粗さ付与粒子の凝集を抑制できる。さらに、粗さ付与粒子と結着樹脂との密着性・接着性が向上するため、現像ローラを耐久駆動させた時の粗さ付与粒子の離脱を抑制できる。たとえ、表面層の磨耗が生じて粗さ付与粒子が露出しても、当該粒子の離脱を抑制できる。その結果、画像濃度の均一化を達成できるとともに、トナーに対する十分な帯電性および搬送性を安定して達成できる。粗さ付与粒子を形成する樹脂と結着樹脂とのSP値の差の絶対値が2を越えると、表面層形成時において粗さ付与粒子が凝集するため、表面に凹凸のムラを生じ、画像濃度が不均一になる。また現像ローラを耐久駆動させた時に粗さ付与粒子の離脱が発生し、十分なトナー帯電性および搬送性が得られない。
【0030】
粗さ付与粒子を形成する樹脂(以下、粒子用樹脂ということがある)は、SP値が結着樹脂と上記関係を満たすものであれば特に制限されず、通常はSP値が7〜11、特に7.5〜10のものを用いる。粒子用樹脂の具体例として、例えば、フッ素ゴム、シリコーンゴム、ポリエチレン、ブタジエン−スチレンゴム、ポリスチレン、アクリルニトリル−ブタジエンゴム、酢酸ビニル樹脂、エポキシ樹脂、PMMA樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂等が挙げられる。
【0031】
本明細書中、粒子用樹脂のSP値(溶解度パラメータ値)は、結着樹脂のSP値と同様の方法によって算出されるものである。結着樹脂のSP値の説明において「結着樹脂」を「粒子用樹脂」と読み替えて、粒子用樹脂のSP値の説明として適用することができる。
【0032】
表面層を形成する結着樹脂と粒子用樹脂との好ましい組み合わせは以下の通りである;
(1)結着樹脂;シリコーン系アルキド樹脂/粒子用樹脂;フッ素ゴム、
(2)結着樹脂;シリコーン系アルキド樹脂/粒子用樹脂;PMMA樹脂、
(3)結着樹脂;アクリロニトリル−ブタジエンゴム/粒子用樹脂;フッ素ゴム、
(4)結着樹脂;アクリロニトリル−ブタジエンゴム/粒子用樹脂;PMMA樹脂;
(5)結着樹脂;アクリロニトリル−ブタジエンゴム/粒子用樹脂;エポキシ樹脂。
【0033】
粗さ付与粒子の平均粒径は、トナーの搬送量とそのムラの観点から、10〜50μm、好ましくは20〜30μmが好ましい。
【0034】
粗さ付与粒子は球形を有することが好ましく、平均円形度は0.94以上、特に0.97以上が好ましい。平均円形度が0.94未満であると、粒子が凝集し易くなり、表面層表面に凹凸ムラが生じ、画像濃度が不均一になる。
【0035】
本明細書中、平均円形度は次式で表される円形度を複数個の粒子について測定し、測定した全粒子の円形度の総和を、総個数で割った値である。
円形度=(粒子像と同じ投影面積を持つ円の周囲長/粒子投影像の周囲長)
【0036】
平均粒径および平均円形度は、粗さ付与粒子を分散液に入れ、超音波分散器で分散させた後、フロー式粒子分析装置FPIA−2100(シスメックス株式会社製)に導入し、約3000個の粒子の平均値として求めた値を用いている。
【0037】
粗さ付与粒子の添加量は結着樹脂100重量部に対して5〜70重量部、好ましくは8〜50重量部である。
【0038】
表面層の表面粗さ(Ra)は、0.8〜3.0、好ましくは1.0〜2.5μmである。本発明では粗さ付与粒子の離脱を抑制するので、そのような表面粗さを長期にわたって維持できる。Raが小さすぎると、トナー搬送量が低下してしまい、十分な画像濃度が得られない。Raが大きすぎると、搬送量が多くなり過ぎて帯電量が低下する。
【0039】
表面層には、通常は導電剤が含有・分散され、導電性が付与される。
表面層に含有される導電剤は弾性層に含有される導電剤と同様のものが使用可能である。
表面層における導電剤の含有量は特に制限されず、通常は表面層の体積抵抗率が10Ω・cm以下、好ましくは10Ω・cm以下となるような量である。
【0040】
表面層には導電剤等の添加剤が含有されるが、結着樹脂と粗さ付与粒子とのSP値の関係に対する導電剤の影響は極めて小さい。導電剤の分散粒径は粗さ付与粒子の粒径より非常に小さいためである。
【0041】
表面層は、結着樹脂および粗さ付与粒子、ならびに所望により導電剤を有機溶剤に溶解・分散して得られた塗液を、塗布し、乾燥・硬化させることで形成可能である。
分散方法としては、一般的に公知の分散装置、例えばペイントシェーカーミル、サンドミル、アトランター、ダイノミル等を用いる方法が好ましく用いられる。
塗布方法としては、スプレー法、ディッピング法、ロールコータ、刷毛等の公知の方法が使用可能である。
乾燥は通常、熱風乾燥炉による加熱によって達成される。
【0042】
表面層の厚みは10〜200μm、好ましくは15〜50μmである。
弾性層と表面層の間に、いくつかの中間層を設けても良い。
中間層は、ベースと表面層の接着性の向上や、抵抗ムラの低減等の目的で形成される。
【0043】
本発明に係る現像装置は上記現像ローラを有するものであり、例えば、図3に示す現像装置が挙げられる。図3は、本発明に係る現像装置の一実施形態を示す。全体を符号10で表す現像装置は、図示しないモータにより図中反時計回り方向に回転駆動され、かつ画像形成装置に組み込んだ状態で図示しない像担持体に接触または近接する本発明の現像ローラ5と、現像ローラ5の左側に設けたバッファ室6と、該バッファ室の左側に設けたホッパ8とを備えている。
【0044】
詳しくは、バッファ室6ではトナー規制部材としてブレード14が現像ローラ5に圧接されている。ブレード14は、現像ローラ5上のトナーの帯電量および付着量を規制するためのものである。現像ローラ5の回転方向に関してブレード14の下流側に、現像ローラ5上のトナー帯電量・付着量の規制を補助するためのブレード15をさらに設けてもよい。
【0045】
現像ローラ5には供給ローラ16が押圧されている。供給ローラ16は、図示しないモータにより現像ローラ5と同一の方向(図中反時計回り方向)に回転駆動される。供給ローラ16は、導電性の円柱基体18と、該基体の外周に設けたウレタンフォームなどの発泡層19を有する。
【0046】
ホッパ8には一成分現像剤であるトナー22が収容されている。ホッパ8にはまた、トナー22を攪拌するための回転体24が設けてある。回転体24には、回転体24の矢印方向の回転によりトナー22を搬送し、ホッパ8とバッファ室6を隔てる隔壁26に設けた通路28を介してバッファ室6にトナー22を供給するためのフィルム状の搬送羽根30が取付けてある。搬送羽根30は、回転体24の回転に伴って羽根30の回転方向前方でトナー22を搬送しながら撓み、通路28の左側端部に到達した時点で真っ直ぐの状態に戻るようになっている。この湾曲状態からの戻り力で、羽根30上のトナー22が通路28に供給されることになる。通路28の右側端部には、通路28を閉鎖するように弁32が設けてある。弁32は、フィルム状の部材で、一端が隔壁26の通路28右側面上側に固定されており、トナー22がホッパ8から通路28に供給されると、トナー22からの押圧力により右側に押され通路28を開くようになっている。この結果、バッファ室6にトナー22が供給され収容されることになる。弁32の他端には規制部材34が取り付けてある。規制部材34と供給ローラ16との間には、弁32が通路28を閉鎖した状態で僅かに隙間が設けてある。規制部材34は、バッファ室6の底部に溜まるトナー量が過度に多いとトナーの凝集が起きる可能性があるため、現像ローラ5から供給ローラ16に回収されたトナーが、バッファ室6の底部に多量に落下しないようにするためのものである。
【0047】
かかる現像装置10において、画像形成時、現像ローラ5が矢印の向きに回転駆動されるとともに、供給ローラ16の回転によりバッファ室6のトナーが現像ローラ5上に供給される。トナーは続いて、ブレード14、15によって帯電され薄層化された後、像担持体との対向領域に搬送され、像担持体上の静電潜像の現像に供される。現像に用いられなかったトナーは、現像ローラ5の回転に伴ってバッファ室6に戻り、供給ローラ16により現像ローラ5から掻き取られ回収される。
【0048】
本発明に係る画像形成装置は、前記現像ローラを有する現像装置を有するものであり、通常は、少なくとも像担持体(感光体)、該像担持体の表面を一様に帯電する帯電装置、像担持体の表面に静電潜像を形成する露光装置、前記現像ローラによってトナーを搬送して静電潜像を現像する現像装置、および現像されたトナー像を媒体に転写する転写装置を有している。
【実施例】
【0049】
以下、本発明を実施例によりさらに詳しく説明する。「部」は「重量部」を意味するものとする。
【0050】
<表面層の結着樹脂>
表面層の結着樹脂として表1に記載の結着樹脂を用いた。そのSP値を合わせて表1に示した。
【0051】
【表1】

【0052】
A−1;シリコーン樹脂は信越化学社製のものを用いた。
A−2;シリコーン系アルキド樹脂は東レダウコーニング社製のものを用いた。
A−3;NBRは日本ゼオン社製のものを用いた。
A−4;ウレタンゴムは坂井化学社製のものを用いた。
【0053】
<表面層の粗さ付与粒子>
表面層の粗さ付与粒子として表2に記載の粗さ付与粒子を用いた。そのSP値、平均粒径および平均円形度を合わせて表2に示した。
【0054】
【表2】

【0055】
B−1;フッ素ゴム粒子はJSR社製のものを用いた。
B−2;PMMA樹脂粒子はMR−20G(綜研化学社製)を用いた。
B−3;エポキシ樹脂粒子はポリマポール20E(三洋化成社製)を用いた。
B−4;フェノール樹脂粒子はマリリン(群栄化学社製)を用いた。
B−5;PMMA樹脂粒子はMR−30G(綜研化学社製)を用いた。
B−6;エポキシ樹脂粒子はポリマポール20E(三洋化成社製)を用いた。
粗さ付与粒子B−3およびB−6としてポリマポール20Eを用いるにあたっては、製造上の円形度のばらつきを利用し、B−3については平均円形度0.96のものを、B−6については平均円形度0.94のものを選択した。
【0056】
<現像ローラの製造>
(実施例1)
軸体となる芯金(直径15mm、SUS304製)をセットした金型内に、弾性層形成材料として導電性シリコーンゴム(信越化学工業社製、X34−264A/B)を充填した後、所定の条件(190℃×15分)で加熱架橋を行った。その後、脱型して、軸体の外周面に沿って弾性層が形成されたベースロールを作製した。ついで、上記弾性層の外周面に、表面層形成用塗液を塗布した後、170℃×1時間の条件でオーブン加熱加硫を行い、表面層を形成した。このようにして、軸体の外周面に弾性層が形成され、その外周面に表面層が形成された2層構造の現像ローラを作製した。
なお、弾性層の厚みは0.5mm、表面層の厚みは15μmであった。
【0057】
表面層形成用塗液は、以下の材料を、サンドミルで攪拌することにより、調製した。
結着樹脂A−2(シリコーン系アルキド樹脂;SP値7.6) 100部
粗さ付与粒子B−1(フッ素ゴム粒子;粒径20μm) 20部
導電性カーボンブラック 10部
トルエン 400部
【0058】
詳しくはシリコーン系アルキド樹脂溶液をトルエンの一部で希釈し、そこへ、導電性カーボンブラックとフッ素ゴム粒子を添加し、直径1mmのガラスビーズをメディヤとしてサンドミルで分散を行った。ここに残りのシリコーンアルキド樹脂溶液とトルエンを加え塗液とした。
【0059】
(実施例2〜11および比較例1〜5)
表3に記載の結着樹脂および粗さ付与粒子を使用したこと、粗さ付与粒子の添加量を表3に記載の量に変更したこと以外、実施例1と同様の方法により現像ローラを製造した。なお、表中の粒子添加量は、結着樹脂100部に対する粗さ付与粒子の添加量である。
【0060】
<評価>
現像ローラを現像装置に組み込み、評価を行った。評価にはコニカミノルタ製カラープリンタMagicolor2430DLを用いた。
【0061】
(分散性)
耐久前の現像ローラ(初期)の表面をレーザー顕微鏡(VK−9500:島津製作所製)にて400倍で観察し、粗さ付与粒子の「凝集」について評価した。
○;凝集は認められなかった;
×;凝集が認められた。
【0062】
(耐離脱性)
23℃/65%RHのNN環境下で白紙でのプリント4000枚の耐久駆動を行った。
耐久後の現像ローラ(耐久後)の表面をレーザー顕微鏡(VK−9500:島津製作所製)にて400倍で観察し、粗さ付与粒子の「離脱」について評価した。
○;離脱は認められなかった;
×;離脱が認められた。
【0063】
(表面粗さ)
耐久前後の現像ローラの表面粗さ(Ra)を表面粗さ測定器SURFCOM480A(アクレーテク製)を用いて測定した。軸方向3箇所、周方向3点の合計6点を測定し、その平均値を求めた。測定条件としては、送りスピード0.3mm/s、測定長さ2.5mm、粗さカットオフ0.8mmにて測定した。
【0064】
(環境変動に対する帯電安定性)
10℃/15%RHの低温低湿(LL)環境下、および35℃/85%RHの高温高湿(HH)環境下において、所定の現像バイアスを印加して画出しを行った。各環境になじませるため、少なくとも24時間以上各環境下で暴露したのち画出しを行った。画出しの途中で動作を停止し、現像ローラ上のトナーの帯電量(Q)と搬送量(M)を測定し、Q/M(μC/g)を算出した。LL環境での帯電量(Q/M(LL))は、30μC/g以下が実用上問題のない範囲内である。30μC/gを超えると、現像できるトナー量が低下し、画像濃度が不足する。一方、HH環境での帯電量(Q/M(HH))は、15μC/g以上が実用上問題のない範囲内である。15μC/g未満では現像ローラとの付着力が低下し、地肌かぶり等の画像ノイズやトナー飛散の増加による機内の汚染等を引き起こす。LL環境とHH環境での帯電量差は少ないほうが好ましい。帯電量差は12μC/g未満が実用上問題のない範囲内であり、好ましくは11μC/g未満である。
【0065】
帯電量は以下の方法により測定した。
LL環境(15℃/10%RH)、HH(35℃/80%RH)の環境下に一日馴染ませた現像装置を、白紙モードで一枚印字し、現像ローラ上トナーの吸引法による帯電量測定を行なった。
【0066】
搬送量は以下の方法により測定した。
現像ローラ上のトナー吸引法による搬送量測定を行った。吸引されたトナーの量を、吸引した面積で割った。
【0067】
【表3】

【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】(A)は本発明の現像ローラにおける軸方向に垂直な断面の一例の模式図であり、(B)は(A)の表面近傍の拡大図である。
【図2】(A)は本発明の現像ローラにおける軸方向に垂直な断面の一例の模式図であり、(B)は(A)の表面近傍の拡大図である。
【図3】本発明の現像装置の一例の模式図である。
【符号の説明】
【0069】
1:基体、2:弾性層、3:表面層、4:粗さ付与粒子、5:5a:5b:現像ローラ


【特許請求の範囲】
【請求項1】
SP値7.5〜9.0の結着樹脂中に、該樹脂のSP値との差の絶対値が2以下のSP値を有する樹脂からなる粗さ付与粒子が分散されてなる表面層を備えたことを特徴とする現像ローラ。
【請求項2】
粗さ付与粒子の平均円形度が0.94以上である請求項1に記載の現像ローラ。
【請求項3】
請求項1または2に記載の現像ローラを有する現像装置。
【請求項4】
請求項3に記載の現像装置を有する画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−224918(P2008−224918A)
【公開日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−61273(P2007−61273)
【出願日】平成19年3月12日(2007.3.12)
【出願人】(303000372)コニカミノルタビジネステクノロジーズ株式会社 (12,802)
【Fターム(参考)】