説明

現像ローラ及びその製造方法

【課題】 フランジの軸ズレが抑制された現像ローラ及びその製造方法を提供する。
【解決手段】 本発明に係る現像ローラ10においては、フランジ16A,16Bが、スリーブ12の端部開口12a,12bに圧入されている。このフランジ16A,16Bの圧入に際しては、まず、スリーブ12の端部開口12a,12bに小径部40を収めて、小径部40、縮径部42及び大径部44の順にスリーブ12内に収容していく。このとき、フランジ16A,16Bとスリーブ12との間に軸ズレが生じている場合には、縮径部42において、フランジ16A,16Bの外径とスリーブ12の端部の内径とが一致したときに、フランジ16A,16Bとスリーブ12との軸合わせがおこなわれて軸ズレが解消される。そして、軸合わせがおこなわれた状態で、スリーブ12の端部開口12a,12b内に大径部44を円滑に収容し、フランジ16A,16Bの圧入が完了する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複写機やファクシミリ、プリンタ等の電子写真方式の現像装置に利用される現像ローラ及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、複写機、ファクシミリ、プリンタ等の電子写真方式の現像装置などに用いられる現像ローラとして、複数の磁極がその表面に形成されたマグネットロールと、このマグネットロールが収容される円筒状のスリーブと、マグネットロールを収容したスリーブの両端部に結合される一対のフランジとで構成された現像ローラが、下記特許文献1等に開示されている。
【0003】
このような現像ローラにおいては、マグネットロールの軸を固定した状態で外周のスリーブのみを回転させることで、スリーブの表面に吸着させた現像剤が現像領域まで搬送される。そして、現像領域まで搬送された現像剤は、感光ドラムに供給されて、感光ドラム表面に形成されている静電潜像を可視像化する。なお、感光ドラムに供給されずにスリーブ側に残留した現像剤は、スリーブの回転により現像剤剥離領域まで到達したところでスリーブから剥離される。
【特許文献1】実開平5−90518号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
以上のようなスリーブの回転の精度は、フランジのスリーブへの結合の精度に大きく依存している。すなわち、フランジの中心軸線がスリーブの中心軸線からズレた状態でフランジとスリーブとが結合されると、スリーブの中心軸線とスリーブの中心軸線とが一致しなくなり、その結果、現像ローラによる現像の精度が劣化してしまう。そこで、発明者らは、鋭気研究の末に、フランジの軸ズレを有意に抑制することができる技術を新たに見出した。なお、軸ズレした状態とは、フランジの中心軸線とスリーブの中心軸線とが相対的に傾斜している状態、若しくは、フランジの中心軸線とスリーブの中心軸線とが平行にズレている状態である。
【0005】
一方、前述した従来の現像ローラには、次のような課題が存在している。すなわち、上記特許文献1の図1等に明確に示されているように、スリーブの内径(図中のDf)は、フランジの外径(図中のdf)よりも大きくなっており、そのクリアランスにより、フランジをスリーブに嵌着してもフランジとスリーブとが軸ズレしやすい。たとえ、フランジを接着剤を用いてスリーブに固定する場合であっても、固定の際に、フランジの中心軸線とスリーブの中心軸線とがきちんと一致した状態にすることは困難であるため、軸ズレが生じている可能性が高いと考えられる。このような軸ズレが大きいと、現像ローラによる現像の精度が劣化してしまう。
【0006】
つまり、本発明は、フランジの軸ズレが抑制された現像ローラ及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る現像ローラは、マグネットロールを収容する円筒状スリーブと、スリーブの端部開口に、先端側から圧入されたフランジとを備え、フランジが、スリーブの端部の内径と略同一、若しくはその内径以上の外径を有する大径部と、大径部よりもフランジの先端側に位置し、スリーブの端部の内径よりも小さく且つ大径部の外径よりも小さい外径を有する小径部と、大径部と小径部との間に介在し、大径部から小径部に向かって外径が漸次縮径している縮径部とを有することを特徴とする。
【0008】
この現像ローラにおいては、大径部、小径部及び縮径部を有するフランジが、スリーブの端部開口に圧入されている。このフランジの圧入に際しては、まず、スリーブの端部開口にフランジ先端側の小径部を収めて、小径部、縮径部及び大径部の順にスリーブ内に収容していく。このとき、フランジとスリーブとの間に軸ズレが生じている場合には、縮径部において、フランジの外径とスリーブの端部の内径とが一致したときに、フランジとスリーブとの軸合わせがおこなわれて軸ズレが解消される。そして、軸合わせがおこなわれた状態でさらにフランジを押圧してスリーブに収容していくと、開口縁部に接する縮径部の外径が次第に大径部の外径に近づいて、スリーブの端部開口内に大径部が円滑に収容され、フランジの圧入が完了する。すなわち、軸合わせがおこなわれた後は、フランジとスリーブとは、フランジのスリーブへの圧入が完了するまでその状態が保持されるので、フランジは実質的に軸ズレすることなくスリーブ内に圧入される。
【0009】
また、縮径部の外周面が、フランジの軸線に対して30゜以下の傾斜角で傾斜していることが好ましい。
【0010】
また、小径部の外径と大径部の外径との差が、20μm以上100μm以下の範囲であることが好ましく、フランジの軸線方向に関する大径部の長さが、1.0mm以上であることが好ましく、さらに、フランジの軸線方向に関する小径部の長さが0.2mm以上であることが好ましい。
【0011】
本発明に係る現像ローラの製造方法は、マグネットロールを収容する円筒状スリーブと、スリーブの端部開口に、先端側から圧入されたフランジとを備える現像ローラであって、フランジが、スリーブの端部の内径と略同一、若しくはその内径以上の外径を有する大径部と、大径部よりもフランジの先端側に位置し、スリーブの端部の内径よりも小さく且つ大径部の外径よりも小さい外径を有する小径部と、大径部と小径部との間に介在し、大径部から小径部に向かって外径が漸次縮径している縮径部とを有する現像ローラの作製に用いられ、スリーブの端部開口にフランジの小径部を収めて、フランジのスリーブに対する軸合わせをおこなうステップと、スリーブの延在方向に沿うようにフランジを押圧して、フランジの大径部がスリーブの端部開口に収まるように圧入するステップとを含むことを特徴とする。
【0012】
この現像ローラの製造方法においては、フランジのスリーブへの圧入に際しては、まず、スリーブの端部開口にフランジ先端側の小径部を収めて、小径部、縮径部及び大径部の順にスリーブ内に収容していく。このとき、フランジとスリーブとの間に軸ズレが生じている場合には、縮径部において、フランジの外径とスリーブの端部の内径とが一致したときに、フランジとスリーブとの軸合わせがおこなわれて軸ズレが解消される。そして、軸合わせがおこなわれた状態でさらにフランジを押圧してスリーブに収容していくと、開口縁部に接する縮径部の外径が次第に大径部の外径に近づいて、スリーブの端部開口内に大径部が円滑に収容され、フランジの圧入が完了する。すなわち、軸合わせがおこなわれた後は、フランジとスリーブとは、フランジのスリーブへの圧入が完了するまでその状態が保持されるので、フランジは実質的に軸ズレすることなくスリーブ内に圧入される。
【0013】
また、フランジの軸合わせをおこなうステップと、フランジの圧入をおこなうステップとを、連続する一つの動作でおこなうことが好ましい。この場合、フランジをスリーブへ圧入する作業の工程が簡略化されると共に、作業時間が短縮される。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、フランジの軸ズレが抑制された現像ローラ及びその製造方法が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、添付図面を参照して本発明に係る現像ローラ及びその製造方法の実施の形態について詳細に説明する。なお、同一又は同等の要素については同一の符号を付し、説明が重複する場合にはその説明を省略する。また、本発明は下記実施形態のみに限定されるものではなく、あくまでも一実施形態である。
【0016】
図1は、本発明の実施形態に係る現像ローラ10の概略斜視図であり、図2及び図3はそれぞれ、図1に示した現像ローラ10のII−II線断面図及びIII−III線断面図である。
【0017】
図1〜図3に示すように、長尺円筒状の金属製スリーブ12と、このスリーブ12の内部に配置されたマグネットロール14と、スリーブ12の端部開口12a,12bそれぞれに嵌着固定された一対のフランジ16A,16Bとで、現像ローラ10は構成されている。
【0018】
さらに、マグネットロール14は、略丸棒状のシャフト18と、このシャフト18の外周面18aに固定された5つの長尺状のマグネットブロック20(20A〜20E)とによって構成されている。
【0019】
シャフト18は、金属などの高強度材料により構成されており、その長さはマグネットブロック20よりも長くなっている。このシャフト18の両端18b,18cは、マグネットブロック20が固定されておらず、露出されている。
【0020】
各マグネットブロック20は、磁性粉体(フェライト系やNd−Fe−B系等)と樹脂(ゴム系やプラスチック系等)とで構成されたプラスチックマグネット、若しくはゴムマグネットである。また、各マグネットブロック20の断面形状は、図3に示すように、シャフト18の外周面18aの曲率と略同じ曲率を有する第1の弧Aと、第1の弧Aと同一の曲率中心及び開き角を有し第1の弧Aよりも曲率半径が大きい第2の弧Aと、第1の弧A及び第2の弧Aの対応する端点同士を真っ直ぐに結ぶ2本の線分L,Lとによって形成された形状となっている。そして、第1の弧Aがマグネットブロック20の長手方向に延びた曲面がマグネットブロック20の内周曲面20aとなっており、同じく第2の弧Aがマグネットブロック20の長手方向に延びた曲面がマグネットブロック20の外周曲面20bとなっており、また、2本の線分L,Lがマグネットブロック20の長手方向に延びた一対の平面がマグネットブロック20の両側平面20c,20dとなっている。
【0021】
そして、各マグネットブロック20は、その内周曲面20aにおいてシャフト18の外周面18aに図示しない接着剤によって固定されている。各マグネットブロックは、少なくとも両側平面20c,20dの一方の平面で隣り合うマグネットブロック20と接しているため、各マグネットブロック20はシャフト18に強固に取り付けられている。なお、シャフト18は、マグネットブロック20によってその全周を完全には囲まれておらず、シャフト18の周りにはマグネットブロック20の存在しないブロック欠落部22が形成されており、このブロック欠落部22においてはシャフト18の外周面18aが露出している。
【0022】
また、各マグネットブロック20A〜20Eの外周曲面20bにおける極性は、図3において符号Nと符号Sとで示しているように、N極とS極とが交互になるように配置されている。そして、マグネットブロック20の外周曲面20bによって形成されたマグネットロール14の外周面14aと、スリーブ12の内周面12cとの間には、所定間隔dの空隙が形成されている。
【0023】
以上で説明したマグネットロール14は、スリーブ12の延在方向と同一方向に延在するようにスリーブ12内に配置され、スリーブ12の両端に位置する1対のフランジ16A,16Bによって回転自在に支持されている。ここで、フランジ16A及びフランジ16Bは、その外形形状が略厚肉円板状となっており、その中心軸線Iに沿ってそれぞれ孔24A,24Bが形成されている。そして、この孔24A,24Bのそれぞれの内側には、シャフト18を回転支持するベアリング26A,26B(例えば、焼結含油軸受)が取り付けられている。
【0024】
なお、フランジ16Aには、その外側表面からシャフト18の軸線Iと同軸状に突出する円筒状の軸部30Aが形成されており、フランジ16A側のシャフト18の一端部18bは、フランジ16Aの孔24A及び軸部30Aを貫通し、スリーブ12と一対のフランジ16A,16Bとで構成されるケース28の外側まで突出している。一方、通常、フランジ16B側のシャフト18の他端部18cは、フランジ16Bの有底の孔24B内に位置している。このフランジ16Bには、その外側表面からシャフト18の軸線Iと同軸状に突出する丸棒状の軸部30Bが形成されている。
【0025】
つまり、シャフト18と、ケース28(つまり、スリーブ12と一対のフランジ16A,16B)とは、シャフト18の軸線Iに関して同軸的に配置されていると共に、シャフト18の軸線Iを回転中心としてベアリング26A,26Bを介して相対的に回転自在となっている。
【0026】
そして、現像ローラ10を現像装置に設置する際には、図2に示すように、現像ローラ10の一端部であるケース28から突出するシャフト18の端部18bは、現像装置の一方の側壁32Aに固定される。また、現像ローラ10の他端部であるフランジ16Bの軸部30Bは、現像装置の他方の側壁32Bにベアリング34を介して回転自在に軸支される。
【0027】
つまり、現像ローラ10を現像装置に設置すると、マグネットロール14は回転しないように保持され、マグネットロール14を覆うケース28だけがシャフト18周りに回転自在に保持される。この状態で、フランジ16Bの軸部30Bにギア等を取り付けて、モータ等により軸部30Bを回転駆動させることで、現像ローラ10のケース28の回転制御がおこなわれる。
【0028】
現像装置に設置された現像ローラ10のケース28が回転すると、ケース28の外周面28a(すなわち、スリーブの外周面12d)に担持された現像剤が感光体ドラム(図示せず)に対向する位置まで搬送されると共に、現像剤に含まれるトナーが感光体ドラムの静電潜像に付着して、静電潜像が可視像化される。現像ローラ10に用いる現像剤としては、トナーのみの一成分系現像剤及びトナーとキャリアとが混合された二成分系現像剤のどちらも用いることができる。
【0029】
なお、上述した現像装置への現像ローラ10の設置態様とは異なる以下のような設置態様であってもよい。すなわち、フランジ16Bの軸部30Bを現像装置の側壁32Bに回転しないように固定し、ケース28から突出するシャフト18の端部18bを現像装置の側壁32Aに回転自在に軸支して、ケース28が回転せずにマグネットロール14だけがケース28内部でシャフト18周りに回転するように、現像ローラ10を現像装置に設置してもよい。また、マグネットロール14及びケース28の両方を回転自在に現像装置の側壁32A,32Bに軸支させて、互いに独立して回転するように現像ローラ10を設置してもよい。
【0030】
次に、スリーブ12とフランジ16Bとの嵌着状態について、図4を参照しつつ詳しく説明する。
【0031】
図4に示すように、フランジ16Bには、先端側から順に、小径部40、縮径部42、大径部44及びキャップ部48が形成されている。
【0032】
小径部40は、フランジ16Bの最先端に位置しており、フランジ16Bの軸線I方向(図4のX方向)に関する長さは0.2mm以上(例えば、0.5mm)となっている。また、小径部40の外径D(例えば、18.97mm)は、スリーブ12の内径D(19.00mm)より小さくなっている。小径部40の先端側の縁部は、フランジ16Bをスリーブ12に収容しやすいように面取りされている。
【0033】
大径部44のフランジ16Bの軸線I方向に関する長さは1.0mm以上(例えば、2.0mm)であり、1.5mm〜10mmの範囲内であることがより好ましい。ここで、フランジ16Bの長さが1.0mm未満では、大径部44の外周面44aとスリーブ12の内周面12cとの接触面積が十分に確保できずに圧入した際の固着強度が不十分となり、一方、所定長さのマグネットブロック20をスリーブ12内に収める点で、フランジ16Bの長さが10mmを超えた場合にはスリーブ12の伸長化が必至となり、現像ローラ10の小型化が困難となってしまう。
【0034】
大径部44の外径D(例えば、19.02mm)は、スリーブ12の内径Dよりも大きくなっている。ここで、フランジ16Bがスリーブ12の端部開口12bに圧入可能であれば、大径部44の外径Dは、スリーブの内径Dと略同一、若しくはその内径D以上の所望の大きさを適宜選択できる。なお、大径部44の外径Dは、スリーブ12の端部開口12bの内径Dに比べて、100μm以下の範囲で大きいことが好ましい。なぜならば、大径部44の外径Dが、スリーブ12の端部開口12bの内径Dに比べて小さい場合には、強度の高い圧入が難しく、一方、スリーブ12の端部開口12bの内径Dより100μmを超えて大きい場合には、圧入時に求められる圧力が高くなりスリーブ12やフランジ16Bの変形を招いてしまう。
【0035】
つまり、小径部40の外径Dは、この大径部44の外径Dより0.05mmだけ小さく、この差は20μm以上100μm以下であることが好ましい。ここで、小径部40の外径Dと大径部44の外径Dとの差が20μm未満だと、小径部40のスリーブ12への挿入しやすさが損なわれることがあり、挿入作業に時間と手間がかかってしまう。うまく挿入できないと、場合により、圧入の際にフランジ16Bが曲がってしまい製品不良が生じる。小径部40の外径Dと大径部44の外径Dとの差が100μm以下では、軸ズレの修正を容易におこなうことができる。
【0036】
なお、上述したように、大径部44の外径Dは、スリーブの内径Dよりも大きくなっているため、現像ローラ10においては、フランジ16Bの大径部44の外周面44aは、スリーブ12の内周面12cに接着剤を介すことなく直接接している。すなわち、大径部44の外周面44aとスリーブ12の内周面12cとの間に実質的に空隙がない状態であるため、フランジ16Bをスリーブ12に圧入した後においてもフランジ16Bとスリーブ12との軸ズレが抑止される。なお、適宜、接着剤を用いた圧入をおこなってもよく、この場合には接着剤がフランジ16Bとスリーブ12との固着強度を補強する。この場合には、小径部40及び縮径部42において、フランジ16Bを、スリーブ12の内周面12cに接着剤で固定するようにしてもよい。
【0037】
縮径部42は、小径部40と大径部44との間に介在しており、その外径は、大径部44から小径部40に向かって傾斜角θで漸次縮径している。この傾斜角θは、0°<θ≦30゜の範囲であることが好ましく、0゜<θ≦15゜の範囲であることがより好ましい。ここで、傾斜角θが30゜を越えると、圧入時に高い圧力が必要となり、後述する実施例に示したとおり、スリーブ12の端部開口12bの縁部12e(図5参照)が縮径部42に食い込み、軸ズレの要因となりやすくなる。
【0038】
キャップ部48は、フランジ16Bの圧入深さを規定すると共に、フランジ16Bによってスリーブ12を確実に密閉するために設けられており、その外径は、スリーブ12の外径D(例えば、20.00mm)と同一以下となっている。
【0039】
続いて、スリーブ12にフランジ16Bを嵌着する手順について、図5を参照しつつ説明する。
【0040】
まず始めに、図5(a)に示すように、スリーブ12の端部開口12bにフランジ16Bを先端側から近づけて、小径部40を端部開口12bに入れる。このとき、小径部40は、図4に示したとおり、その外径Dがスリーブ12の内径Dよりも小さくなっているため、端部開口12bに容易に収めることができる。特に、端部開口12bの縁部12eに小径部40を当てた状態で、フランジ16Bをスリーブ12側にスライドさせると、フランジ16Bを簡単にスリーブ12に挿し入れることができる。加えて、小径部40の先端側の縁部は、面取りされているので、フランジ16Bをスリーブ12内により挿入しやすくなっている。
【0041】
このとき、小径部40の長さが0.2mm以上であれば、小径部40を端部開口12bの縁部12eに当てやすく、且つスライドさせやすくなる。なお、この小径部40の長さは、0.3mm〜10mmの範囲であることが好ましく、0.3mm〜5mmの範囲であることがより好ましい。ここで、小径部40の長さが0.2mm未満だと、上述したような挿入しやすさが損なわれることがあり、挿入作業に時間と手間がかかってしまう。うまく挿入できないと、場合により、圧入の際にフランジ16Bが曲がってしまい製品不良が生じる。一方、小径部40の長さが0.2mm以上だと、スリーブ12にフランジ16Bを容易に挿入することができる。ただし、小径部40の長さが10mmを超えると、無駄に長くなり、所定長さのマグネットブロック20をスリーブ12内に収める点で、小径部40の長さを長くし過ぎた場合にはスリーブ12の伸長化が必至となり、現像ローラ10の小型化が困難となってしまう。
【0042】
そして、スリーブの端部開口12bに小径部40全体を収めた後、縮径部42及び大径部44が順次にスリーブ12内に収容されるようにフランジ16Bをスリーブ12の延在方向(すなわち、軸線方向)に押圧する。この押圧の際、ある時点では、図5(b)に示したように、スリーブ12の端部の内径と縮径部42の外径とが一致する。すなわち、縮径部42には、端部開口12bの縁部の径(すなわち、スリーブ内周面12cの径D)と適合する部分があり、その部分において縮径部42が端部開口12bにぴたりと嵌る。このとき、縮径部42は、その外径全周にわたって、スリーブ12の内周面12cと均等な圧力で接し、共に真円形断面を呈しているフランジ16Bとスリーブ12との軸線I,I同士が高い精度で一致する軸合わせが実現される。そして、軸線I,Iが一致するように軸合わせをおこなった後、連続した一連の動作としてさらにフランジ16Bを押圧して、図5(c)に示すように大径部44が端部開口12bに収まるように圧入する。
【0043】
このフランジ16Bの圧入の際には、縮径部42において端部開口12bの縁部12eに接していたフランジ16Bは、大径部44において端部開口12bの縁部12eに接する状態に遷移する。ここで、縮径部42の外径は大径部44の外径Dに近づくように傾斜しているため、縮径部42が端部開口12bの縁部12eに接している状態から、大径部44が端部開口12b内に収まる状態になるまで滑らかに遷移する。すなわち、このフランジ16Bをスリーブ12に圧入したときには、端部開口12b内に大径部44まで円滑に収まる。このような円滑な圧入がおこなわれるため、スリーブ12とフランジ16Bとの軸合わせは阻害されにくくなっており、大径部44が圧入される際も軸合わせされた状態が保持される。その結果、フランジ16Bは実質的に軸ズレすることなくスリーブ12内に圧入される。
【0044】
また、以上で説明したように、フランジ16Bとスリーブ12との軸合わせをおこなうステップと、フランジ16Bの圧入をおこなうステップとを、連続する一つの動作でおこなうことで、これらのステップを別々におこなう場合に比べて、フランジ16Bをスリーブ12へ圧入する作業の工程が簡略化されると共に、作業時間が短縮される。
【0045】
以上では、現像ローラ10の一対のフランジ16A,16Bのうち、一方のフランジ(駆動側フランジ)16Bについてのみ説明したが、もう一方のフランジ(従動側フランジ)16Aの先端にも、フランジ16Bと同様の小径部40、縮径部42、大径部44及びキャップ部48が形成されている。そのため、フランジ16Aについても実質的に軸ズレすることのない圧入が可能となっている。なお、現像ローラ10の一対のフランジ16A,16Bのうち、どちらか一方のみが上述した小径部40、縮径部42、大径部44と同様又は同等の小径部、縮径部、大径部を有する場合であってもよく、そのフランジにおいては実質的に軸ズレすることのない圧入が可能となる。
【0046】
それにより、軸ブレ精度が向上した現像ローラ10を得ることができる。またこの現像ローラ10を用いた複写機等の応用製品では画質ムラの発生が抑制されることが期待できる。また、上述した現像ローラ10の製造方法によれば、フランジ16A,16Bのスリーブ12に対する軸ズレが抑制された現像ローラ10を歩留まり良く製造することが可能となる。
【0047】
本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、様々な変形が可能である。例えば、フランジには、必ずしもキャップ部を設ける必要はない。また、先端側から順に小径部、縮径部及び大径部が形成されたフランジについてのみ説明したが、大径部の後に適宜、縮径部や小径部を形成したフランジであってもよい。さらに、2段構成のフランジについてのみ説明したが、適宜、3段以上の多段構成のフランジに変更可能である。
【実施例1】
【0048】
以下、フランジの縮径部の傾斜角の好適な範囲を明らかなものとするため、実施例及び比較例を用いて説明する。
【0049】
まず、上述したフランジ16Bと同様のフランジであって、縮径部の傾斜角のみが異なる複数種のフランジを準備した。すなわち、傾斜角が5゜のサンプルA、傾斜角が14゜のサンプルB、傾斜角が45゜のサンプルCをそれぞれ100個ずつ準備した。なお、これらのサンプルにおいて、フランジをスリーブへ圧入する際は、まずフランジの小径部を手作業によってスリーブ内に収容し、その後、縦型のフランジ圧入機を用いて0.5MPaの圧力でフランジをスリーブに圧入した。そして、各サンプルを、上述したスリーブ12と同様のスリーブに圧入して、軸ズレの大きさを測定した。なお、本実施例に用いたスリーブの長さは310mm、外径は20mmである。
【0050】
具体的な測定方法は、以下に示すとおりである。つまり、図2に示すように、フランジ16Aの軸部30Aの所定の支持点及びフランジ16Bの軸部30Bの所定の支持点において、現像ローラの両側を支持点間距離320mmで支持してスリーブを回転させ、スリーブ中央位置、スリーブの両端位置(端面から20mmの位置)の振れ量を計測した。なお、計測には、レーザー振れ測定機を用いた。そして、各サンプルにおいて、上記3つの位置のいずれかが15μmを超えたサンプルを軸ズレが大きいものとし、その割合(すなわち、製品不良割合)を調べた。
【0051】
その結果、サンプルAにおいては製品不良割合0%、サンプルBにおいては製品不良割合2%、サンプルCにおいては製品不良割合11%であった。この結果から明らかなように、縮径部の傾斜角が30゜以下であるサンプルA及びサンプルBにおいては、ほとんど軸ズレが確認されず、一方、縮径部の傾斜角が30゜より大きなサンプルCにおいては、多くのサンプルにおいて軸ズレが確認された。すなわち、フランジの縮径部の傾斜角θを30゜以下にすることで、軸ズレの発生が有意に抑制されることが本実施例によって確認された。なお、縮径部の傾斜角θが30゜以下であるフランジにおいて、以上のように軸ズレの発生が抑制される要因は、縮径部の傾斜をなだらかにすることで、スリーブの開口縁部がフランジの縮径部に食い込む事態が抑制されるためであると考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明の実施形態に係る現像ローラの概略斜視図である。
【図2】図1に示した現像ローラのII−II線断面図である。
【図3】図1に示した現像ローラのIII−III線断面図である。
【図4】図2に示した断面図の要部拡大図である。
【図5】スリーブにフランジを嵌着する手順を示した図である。
【符号の説明】
【0053】
10…現像ローラ、14,14A…マグネットロール、16A,16B…フランジ、18…シャフト、20,20A〜20I…マグネットブロック、20a…内周曲面、20b…外周曲面、20c,20d…両側平面、40…小径部、42…縮径部、44…大径部、D,D,D,D…径。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
マグネットロールを収容する円筒状スリーブと、
前記スリーブの端部開口に、先端側から圧入されたフランジとを備え、
前記フランジが、
前記スリーブの端部の内径と略同一、若しくはその内径以上の外径を有する大径部と、
前記大径部よりも前記フランジの先端側に位置し、前記スリーブの端部の内径よりも小さく且つ前記大径部の外径よりも小さい外径を有する小径部と、
前記大径部と前記小径部との間に介在し、前記大径部から前記小径部に向かって外径が漸次縮径している縮径部とを有する、現像ローラ。
【請求項2】
前記縮径部の外周面が、前記フランジの軸線に対して30゜以下の傾斜角で傾斜している、請求項1に記載の現像ローラ。
【請求項3】
前記小径部の外径と前記大径部の外径との差が、20μm以上100μm以下の範囲である、請求項1又は2に記載の現像ローラ。
【請求項4】
前記フランジの軸線方向に関する前記大径部の長さが、1.0mm以上である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の現像ローラ。
【請求項5】
前記フランジの軸線方向に関する前記小径部の長さが0.2mm以上である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の現像ローラ。
【請求項6】
マグネットロールを収容する円筒状スリーブと、前記スリーブの端部開口に、先端側から圧入されたフランジとを備える現像ローラであって、
前記フランジが、前記スリーブの端部の内径と略同一、若しくはその内径以上の外径を有する大径部と、前記大径部よりも前記フランジの先端側に位置し、前記スリーブの端部の内径よりも小さく且つ前記大径部の外径よりも小さい外径を有する小径部と、前記大径部と前記小径部との間に介在し、前記大径部から前記小径部に向かって外径が漸次縮径している縮径部とを有する現像ローラの作製に用いられ、
前記スリーブの端部開口に前記フランジの前記小径部を収めて、前記フランジの前記スリーブに対する軸合わせをおこなうステップと、
前記スリーブの延在方向に沿うように前記フランジを押圧して、前記フランジの前記大径部が前記スリーブの端部開口に収まるように圧入するステップとを含む、現像ローラの製造方法。
【請求項7】
前記フランジの軸合わせをおこなうステップと、前記フランジの圧入をおこなうステップとを、連続する一つの動作でおこなう、請求項6に記載の現像ローラの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−267462(P2006−267462A)
【公開日】平成18年10月5日(2006.10.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−84632(P2005−84632)
【出願日】平成17年3月23日(2005.3.23)
【出願人】(000003067)TDK株式会社 (7,238)
【Fターム(参考)】