現像剤担持体、現像装置、画像形成装置
【課題】 スリーブゴースト及び耐久濃度安定性・かぶり・転写残トナーを抑制する。
【解決手段】 1成分現像装置において、現像スリーブをナノイン加工による微細構造を表面に形成する事により、非接触現像及び接触現像装置において、現像スリーブ上のトリボを上げ、シャープにする事が出来る。
【解決手段】 1成分現像装置において、現像スリーブをナノイン加工による微細構造を表面に形成する事により、非接触現像及び接触現像装置において、現像スリーブ上のトリボを上げ、シャープにする事が出来る。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真感光体、静電記録誘電体の像保持体上に形成された静電潜像を一成分現像剤により現像するための現像剤担持体、又は当該現像剤担持体を備える現像装置、又は画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一成分現像剤(以下、「トナー」と記す)を現像剤担持体上に薄層に塗布し、現像剤担持体に現像バイアスを印加して、電子写真方式等を利用して像担持体上に形成された静電潜像を一成分現像剤で現像して、可視化する現像装置が種々知られている。
【0003】
一成分現像剤には、磁性粒子を含んだ磁性一成分現像剤(以下、「磁性トナー」と記す)及び磁性粒子を含まない非磁性一成分現像剤(以下、「非磁性トナー」と記す)がある。但し、一成分現像剤は、トナー粒子のみを含有するものに限らず、トナーの他に現像剤の流動性を向上させたり、トナーの帯電量を制御したり、像担持体表面のクリーニングをしたりする1種または複数種の補助剤が外添されているものも含まれる。
【0004】
この非磁性トナーを用いた現像法は、特に鮮明なカラー複写が得られ、また画像の定着性も向上することから、様々な提案がなされている。
例えば、非磁性トナーを用いた従来の現像装置の一般的な構成を示す。非磁性トナーが現像剤容器内に収容されており、この非磁性トナーが回転する現像剤担持体(以下、「現像スリーブ」と記す)と弾性ブレードとによって、現像剤スリーブ上に均一に薄層に塗布される。像担持体と現像スリーブとは、現像領域で、0.02〜0.3mmの間隔になっており、この現像領域において像担持体上に形成された静電潜像が非磁性トナーで可視化される。
【0005】
このとき現像スリーブには、パルスバイアス、交流バイアス等が現像バイアス電源によって印加される。非磁性トナーを用いた現像装置では、磁性粒子をトナー中に含有していないために、一成分磁性現像剤に比べてトナーの絶縁性が高い。特に頻繁な現像の繰返しに伴うトナーの比電荷量の増大(チャージアップ)や現像スリーブの汚染、現像スリーブ上のトナー融着が頻繁となってくる。
【0006】
また磁性トナーを用いた現像装置では、現像スリーブの内部に軸方向に長い現像マグネットを有している。このために磁性トナーは、現像スリーブ上を回転、接触し、摺擦することから、現像スリーブから現像に十分な電荷を均一に得ることができる。しかし、非磁性一成分トナーでは、この回転、接触、摺擦による電荷の授受の機会が少ないために、十分な電荷を均一に得ることが難しい。このために現像濃度の不均一が問題となっていた。
【0007】
また、別の問題としてスリーブゴーストという現象がある。スリーブゴーストとは、画像履歴に起因する画像濃度ムラである。非印字部(白地)が続いた後に、プリントが行われた場合には濃度の薄い現像しか行われる。これに対し印字部(黒字)が続いた後にプリントが行われると濃度の濃い現像が行なわれる。そのため、前回の画像が白字部が続いた場合と、黒字部が続いた場合とで濃度ムラが発生してしまう。
【0008】
このゴースト形成のメカニズムは、本発明者等の実験および考察によると、現像スリーブ上のトナーの最下層に形成される微粉(粒径5〜6ミクロン以下)の層に深く関わっていると考えられる。印字部(トナー消費部分)と非印字部(トナー未消費部分)との間で、現像スリーブ上のトナーの最下層のトナーの粒度分布において、明らかな差が生じる。トナー未消費部分では、トナーが消費されないためトナー最下層に微粉層が形成されやすい。微粉は体積あたりの表面積が大きいために粒径の大きなものに比べると質量あたりに有する摩擦帯電電荷量(比電荷量)が大きくなり、鏡映力によりスリーブに対し静電的に強く拘束される。このため微粉の層が形成された部分の上にあるトナーは、現像スリーブと十分な摩擦帯電ができないために現像能力が低下し、画像上にゴーストとして現われてしまうのである。
【0009】
更に、現像性能の不均一化は、個々のトナーの比電荷量が不均一である事による現像性能の不均一性や現像濃度の不均一性にも大きく影響を及ぼしている。
【0010】
また非磁性トナーは、チャージアップし易い。そのため、特に非接触のジャンピング現像あるいは他の非接触現像ないしは像担持体と現像剤との距離が微小な現像方法においては、現像効率の低下を引き起こし、繰返し現像による濃度低下も引き起こす結果となっていた。
【0011】
特にプリントスピードの速い画像形成装置で使用する現像装置の場合、現像剤中の荷電制御剤あるいは樹脂が現像スリーブを汚染する割合は、磁性トナーに比べて非磁性トナーの方が高く、繰返し現像による濃度低下をより一層引き起こす結果となっていた。
【0012】
このために現像スリーブ表面に弾性ローラを圧接、摺擦させ、該弾性ローラとトナーを摺擦させることにより、現像に寄与するトナーの比電荷量を均一にすることが提案されている。しかしながら、これらの方法は結果的に現像装置の大型化・高トルク化を引き起こし、小型の画像形成装置にはコスト、電力、スペースの点から採用することが難しかった。
【0013】
また、従来、現像スリーブには、サンドブラスト処理や、ローレット加工処理を施すことにより搬送性を向上する事は行なわれている。
【0014】
例えば、特開平7−13410公報(第4頁、図5)で提案されている現像装置は、現像剤担持体上に溝をスパイラル状の凹凸を形成した現像剤担持体を有することにより、現像濃度安定性を良くしていた。
【0015】
特開2003−208012公報(第5頁、図4)で提案されている画像形成装置は、表面粗さRz1.5μm〜10μmのサンドブラスト処理を施した現像ローラを用いる。または、アヤメ状ローレット溝が切られた該溝深さは5μm以上30μm以下であることを特徴とした現像ローラを用いることで、高品質の画像を得ていた。
【0016】
特開2007−127809公報(第4頁、図1、第6頁、図8)で提案されている画像形成装置は、アヤメ状の溝を有する現像剤担持体の開示がある。具体的には、回転スラスト方向に鋭角に傾斜した方向に延びる複数の溝と、スラスト方向に対しては反対側に鋭角に傾斜した方向に延びる複数の溝とが交差する様な溝が形成されている。
【0017】
特開平11−73006公報(第3頁、図1)で提案されている半導電性ロールおよびこれを用いた現像装置においては、周方向に101〜109Ωcmの半導電性の溝を有する現像ロールとすることで、高品位の画像を得られる現像装置を提供していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0018】
【特許文献1】特開平7−13410公報
【特許文献2】特開2003−208012公報
【特許文献3】特開2007−127809公報
【特許文献4】特開平11−073006公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
しかしながら、前述したような現像ローラの表面処理では、トナー電荷量(トナートリボ)のシャープ化が十分に出来ない。
【0020】
そのため近年、求められるようになった画像品位を満たすことができなかった。
【0021】
本出願の目的は、トナーのトリボ分布をシャープにすることで、現像濃度安定性の向上や、スリーブゴーストの低減をすることである。
【課題を解決するための手段】
【0022】
上記目的を達成するため、本出願に係る第1の発明は、像担持体上に形成された潜像を現像する一成分現像剤を担持する現像剤担持体において、前記現像剤担持体表面は抵抗値が102〜108Ω・cmであり、前記現像剤担持体は表面に複数の凹部を備え、前記凹部は、単位面積当たりに2050個/mm2以上9926個/mm2以下存在しており、前記凹部の開口の長径は8〜20μmで、前記凹部の深さは、2〜5μmで、前記長径の寸法公差が0.5μm以内で、前記深さの寸法公差が0.5μm以内であることを特徴とする現像剤担持体である。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、トナーのトリボ分布をシャープにすることで、現像濃度安定性の向上や、スリーブゴーストの低減をすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の実施例に係る画像形成装置を説明する図である。
【図2】本発明を適用可能な第1の実施例に係る第1の実施態様を説明する図である。
【図3】本発明を適用可能な第1の実施例に係るトナー粒度分布を説明する図である。
【図4】本発明を適用可能な第1の実施例に係るスリーブゴーストテストパターンの説明図である。
【図5】本発明を適用可能な第1の実施例に係る第2〜第5の実施態様を説明する図である。
【図6】本発明を適用可能な第1の実施例に係る第6以降の実施態様を説明する図である。
【図7】本発明を適用可能な第2の実施例に係る第1の実施態様を説明する図である。
【図8】本発明を適用可能な第2の実施例に係る第1の実施態様を説明する図である。
【図9】本発明を適用可能な第2の実施例に係るその他の実施態様を説明する図である。
【図10】本発明を適用可能な第3の実施例に係る第1の実施態様を説明する図である。
【図11】本発明を適用可能な第3の実施例に係る実施態様を説明する図である。
【図12】本発明を適用可能な第4の実施例に係る実施態様を説明する図である。
【図13】本発明を適用可能な第4の実施例に係る実施態様を説明する図である。
【図14】本発明を適用可能な第5の実施例に係る実施態様を説明する図である。
【図15】本発明を適用可能な第5の実施例に係る実施態様を説明する図である。
【図16】本発明を摘要可能な第6の実施例を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
(実施例1)
図1(a)は、本発明の画像形成装置の1実施態様を示す、クリーナレスモノクロ画像形成装置の概略構成図である。1は像担持体、2は帯電装置、3は露光装置、4は1成分現像剤、5は転写装置、6は現像剤担持体、10は現像装置、201は現像剤規制部材である。像担持体としては、感光体を用いている。本実施態様では、像担持体上のトナー等をクリーニングするための専用のクリーニング装置をもたないいわゆるクリーナレスの画像形成装置である。図1(b)は、本発明の画像形成装置の別の実施態様であるインライン型のクリーナレスフルカラー画像形成装置である。50は二次転写装置、60は定着装置である。イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の各色の画像形成部分をインラインに配置している。感光体に形成されたトナー像(現像剤像)は、中間転写体である中間転写体ベルト7上で4色の色重ねをされた後に、2次転写装置50にて、給送されてきた紙(被転写体)へ一括転写される。その後に、トナーは、定着装置60によって紙へ溶融固着され、フルカラー印字画像を得る。なお、図1(b)において、画像形成部分における像担持体等の構成要素は、像担持体1Yのように、数字の後にY,M,C,Kの符号をつけて説明をしている。
【0026】
図2(a)は、本発明の特徴を最もよく表す図であり、同図は、本発明の現像剤担持体の拡大断面図である。16は現像剤担持体であるところの現像スリーブ16である。
ず、本実施例に使用した現像剤担持体の詳細について説明する。
【0027】
図2(a)に示すように、現像スリーブ16は、基体161と表層部162とに分けることが出来る。本実施例の一態様では、基体161は、厚さ0.8mm、真直度約20μmのアルミニウム製の円筒体とし、表層部162は、体積抵抗値が102Ωmである導電性樹脂層を用いている。現像スリーブ16の表面は、図2(a)に示すように表面に凹部を備える形状に加工した。なお、図2(b)は、図2(a)を上面(矢印Dの方向)からみた時の図、図2(c)は、図2(a)の凹部の拡大図である。図2(b)は、凹部の配置の説明のため、仮想軸n、及び仮想軸nに直交する仮想軸mを図に記載している。
【0028】
現像スリーブ16の回転方向をAとしている。一つの凹部の構造は、上面から見たときに円形をしており(図2(b)参照)、また、凹部の断面はなだらかな半円形状をしている(図2(c)参照)。また、配列は本実施態様においては、図2(b)に示す様に六方充填状態となっている。隣接する凹部の中心を結ぶ線は60度間隔となるようにしている。ここで、各凹部の構造の間隔を定義する方法として、図2(b)に示す様に、凹部と隣接する凹部の間隔をBとする。そして、現像スリーブ16の長手方向(図1(b)のn軸方向)からの角度0度、120度、240度・・に対しての間隔Bを、それぞれB0、B120、B240・・で定義する。本実施態様においては、B0=B60=B120=B180=B240=B300を1μmとし、凹部直径Dを8μmとした。
【0029】
本実施例の一態様の配列は、図2(b)に示す様な、m,n軸をとると、各々の隣接する凹部の中心間隔は、凹部の半径×2+凹部の間隔で表される。なお、本実施態様では、凹部は単位面積あたりに9926個/mm2存在している。
【0030】
本実施態様の現像スリーブ16を作成するには、図2(a)、図2(b)及び図2(c)のような凹部が形成されるような凸金型を用いて作成する。以下、具体的な方法を説明する。
【0031】
基体161上に以下の処方1からなる体積抵抗値102〜108Ω・cmの導電性樹脂を調合し、基体161上に一旦形成する。
【0032】
(処方1)
樹脂・・・・・ フェノール樹脂 50重量部
カーボン・・・ カーボン ブラック 45重量部
溶媒・・・・・ メチルアルコール
及びメチルセルソルブ 200重量部
尚、ここで使用したカーボンブラックは、コロンビアカーボン社のRAVEN1035であり、1次粒子の大きさがサブミクロン以下となっているものを使用している。
体積抵抗値は、四端子法の抵抗率測定器(例えば三菱油化製 LORESTA AP INTERIGENT)で測定することにより得られ、体積抵抗率は、約102Ωcmであった。
【0033】
処方1は、本実施例の一態様であり、必ずしもこの樹脂、導電性微粒子によらずに実施可能である事はいうまでもない。但し、本実施例の凹部を備える三次元形状を形成する為には、当該三次元形状が安定して形成可能なように、カーボンやグラファイト等の導電粒子の大きさが凹部の大きさに比べて、十分に小さいことが望ましいことは言うまでもない。具体的には形成される凹部の径よりも小さい粒径のカーボンを使うということが望ましい。
【0034】
本実施例では、寸法公差を±0.5μmで形成させているので、カーボンブラックの1次粒径は、0.5μm以下である事が必要であり、処方1に示したコロンビアカーボン社のRAVEN1035を使用した。
【0035】
凹部の形成方法は次のように行った。最初に、スプレー方やディッピング方により、表層部162の層厚T(図2(a)参照)を約10μm厚さで形成する。本実施態様の形状にする為の凸金型を加熱して現像スリーブ16全面に加圧させ、形状が転写されるに十分な条件にて保持する。本実施態様では、150℃、30分の条件で金型を保持し、図2(a)、図2(b)の微細構造をもつ現像スリーブ16を製作した。ここで、図1(c)に示す凹部深さdは、4μmとなるように形成した。
【0036】
こうしたナノイン加工により、この微細構造の精度は、±0.5μm以内(径及び深さの公差)に形成されている。
【0037】
使用する一成分現像剤は、非磁性トナー4であり、トナーの体積平均粒径は、5μmの粒度で、円形度(後述)が略0.96のトナーを使用した。図3に本実施例に使用したトナーの体積粒度分布を示す。
【0038】
また、本実施例の一態様では、所謂、非磁性一成分ジャンピング現像を用いて検討を行った。
【0039】
本実施態様に使用した現像バイアスは、高圧電源9によりA4サイズの現像スリーブ16に供給される。現像バイアスは、直流バイアスに交流バイアスを重畳しており、交流バイアスはピーク間電圧Vppが1600V、周波数1800Hzである。本発明の現像スリーブ16と像担持体1との間隔は、略300μmである。また、プロセススピードは、約94mm/secである。なお、トナーは負極性トナーを用い、像担持体の受容電位は、−700V、明電位が−100V、現像バイアスは、−500Vからなる反転現像方式を用いた。
【0040】
本実施例の比較例として、現像スリーブ16を、アランダム#400にてサンドブラストした現像スリーブを用意した。この時の加工条件は、(株)不二製作所製の三度ブラスト装置を用いて、サンドブラスト圧力は略3.5kg/cm2、砥粒の加工時間は、略30秒である。本実施例と同様の非磁性トナー4と現像バイアスにて画像出力したところ、本実施例は、比較例に比べてスリーブゴーストが改善されており、且つ、濃度均一性が高まっていることを確認した。この結果を、表1に示す。尚、比較例として示したアランダム#400で処理した現像スリーブ16の表面は、JISB0601で規定される平均線中心粗さRaが約0.4μmとなっており、凹部深さに相当する値10点平均粗さRz(JISB0601で規定)は、略5μm程度であった。
【0041】
【表1】
【0042】
表1に、スリーブゴーストと、耐久濃度、ページ内濃度の均一性について比較実験を行った結果を示す。スリーブゴーストは、使用初期の現像装置と、耐久試験(画像出力を行う試験)で、連続耐久1万枚(10Kと表記)・連続耐久2.5万枚(25Kと表記)の画像出力を行った後の現像装置と、をそれぞれ比較した。また、耐久濃度は、ベタ画像を出力し、その濃度をマクベス反射濃度計(RD918:マクベス社製)を用いて、原稿濃度が0.00の白地部分の画像に対する相対濃度を測定して評価を行った。均一性は、上記反射濃度の同一ページ内の4角と中央の5点における平均値と各点の濃度差の最大値で評価を行った。
【0043】
スリーブゴーストは、図4に示した様なテストパターンを用いて画像出力をして評価した。テストパターンは、先端の45mmの部分にべた白部とべた黒部が隣り合った画像を形成し、それに続いて1dot/1space横線のハーフトーンパターン画像を形成したものである。テストパターンを、A4サイズの用紙に対して画像形成し、得られたハーフトーン画像上に現れた濃淡差を目視で観察し、◎、○、△、×で評価した。尚、評価の基準は下記の通りである。
◎:濃淡差が見られない
○:軽微な濃淡差が見られる
△:濃淡差がやや見られるが実用可
×:目立つ濃淡差が許容外
本実施例の一態様においては、スリーブゴーストが耐久試験10Kまで発生は認められず、25Kにおいても実用上問題の無い程度であった。これに対し、比較例では、初期から発生しており、しかも、耐久を続けるに従って、濃度が低下し、ページ内濃度もかなりの不均一性を示した。特に、このページ内不均一性は、スリーブの一周分が薄くなる現象が発生していた。
【0044】
本実施例の一態様にてスリーブゴーストが解消されていたのは次のような理由と考えられる。一つは、図2(a)〜(c)に示すような微細な凹部を備える構造により、現像スリーブ16上のトナーの比電荷量が均一になっていることである。もう一つは、このトナーの微細な領域における均一な循環が速やかに行われる事にあると考えられる。言い換えると、現像スリーブ16上のトナーコーティング状態が均一であることを示している。
【0045】
この現象を調べる為に、ホソカワミクロン製 E−SPARTアナライザにより、現像スリーブ16上のトナーの比電荷量分布(Charge/Diameter(fc/10μm)を測定し、その結果を図5に示した。(図5において、横軸は電荷量で、縦軸は頻度である。)
図5を見ても明らかな様に、比較例においては、比電荷量分布がブロードであり、反転トナー成分(正極性に帯電したトナー)が多く、中心値もあまり高くない状態にある。これは、アランダム#400にてサンドブラストしたスリーブは、面形状が不均一である為に、トナーと現像スリーブ表面との接触確率が不均一になり、結果として、比電荷量分布をシャープにする事が不可能である事による。一方、実施例の一態様においては、反転トナー成分が殆ど認められず(本実施例の一態様では、10%未満と見て取れる)、比電荷量分布がシャープであり、中心値も従来例よりも比較的高い状態に改善されている事がわかる。
【0046】
以上、本発明により、トナーの比電荷量がシャープになり、かつ、絶対値が高めにシフトすること、および、均一なコーティング状態を形成することができることで、スリーブゴーストが改善され、濃度の不均一性が初期のみならず、耐久を通して改善している。
【0047】
(その他の実施態様)
本実施例の他の実施態様として、図2(a)および図2(c)の凹部深さdをパラメータとして、検討した結果を表2に示す。その他の条件については、実施態様1と同じにした。
【0048】
【表2】
【0049】
表2に示すように、凹部深さdを1μm〜6μmと変化させて評価を行った。本実施例の態様3に示す様に、凹部深さdを1μmとすると、現像スリーブ16上のトナーコーティング状態がさざなみ上のいわゆる当業者では明らかな、ブロッチ現象が発生した。これは、スリーブ上の凹凸がかなり小さくなった際に起こる現象である。
【0050】
また、凹部深さdが6μm以上の状態では、スリーブゴーストの改善効果は認められるものの、先端濃度が高く、スリーブ一周分以降の濃度の低くなる、所謂、ネガゴースト現象が発生した。
【0051】
すなわち、2〜5μm程度が好ましいスリーブの凹部深さであると考えられる。
【0052】
また、図6に、凹部直径Dと凹部深さdをパラメータとした実施態様に関して検討した結果を示す。その他の条件は実施態様1と同じにした。同図において、白抜き○はスリーブゴーストが改善されており、かつ耐久濃度安定性および均一性が実用上問題の無い範囲にあるものを示す。黒丸●は、ある程度のスリーブゴーストの改善効果はあるものの、ブロッチの発生や、前述のネガゴースト現象の発生傾向がある範囲を示す。
【0053】
これらは、凹部直径Dが大きくなるに従い、平均的トナー粒子が凹部の中での揺らぎや運動が大きくなることにより、比帯電性は高まる傾向にあるが、トナーの拘束性が小さくなるためであると考えられる。すなわち、スティックスリップ現象によるブロッチが発生する傾向にあると言えるためであると推測出来る。また、凹部直径が小さくなると、トナーが凹部に入り込めなくなり、接触面積が小さくなる為に、帯電性付与が少なくなり、濃度安定性向上が低下傾向にあると考えられる。
【0054】
すなわち、凹部深さdが2μm乃至5μm及び凹部直径Dが8μm乃至20μmとすることで、スリーブゴーストの改善及び耐久濃度安定性及び均一性を得ることが出来る。
【0055】
トナーが凹部と接触する事により、トナーは現像スリーブより電荷を得ることが出来るが、トナーの平均粒径が略5μm程度である場合、トナーの粒度分布から判断して、凹部直径は8μm以上〜20μm以下が好ましい。
【0056】
本実施例のように凹部を六方充填した場合の、単位面積当たりの個数について検討してみる。凹部の直径が8μmで、凹部の間隔が1μmである場合、凹部を細密充填することを考えると、直径9μmの円を単位面積あたりにどのくらい敷き詰められるかに置き換えることができる。凹部が直径8μmの場合、細密充填の係数が0.7796〔=√18×(COS−11/3−π/3)〕であるので、1mm2あたりの個数は、(0.7796/(4.5×10−3)2×π=)約12254個/mm2となる。
【0057】
また、凹部直径が20μmの場合は、凹部の間隔が1μmである場合、直径21μmの円を単位面積あたりにどのくらい敷き詰められるかに置き換えることができる。凹部が直径20μmの場合、細密充填の係数が0.7796〔=√18×(COS−11/3−π/3)〕であるので、1mm2あたりの個数は、(0.7796/(10.5×10−3)2×π=)約2250個/mm2となる。
【0058】
なお、上記の計算は、好ましい凹部直径の範囲において、凹部間隔=1μmとして細密充填した場合に、単位面積あたり凹部の個数がいくつになるかを求めている。凹部間隔の値によっては、細密充填をした場合の単位面積あたりの個数は変化すると思われる。しかし、少なくとも上記2250個/mm2〜12254個/mm2の範囲では、本願発明の効果が得られることを確認していることから、凹部間隔がいくつであっても上記範囲内にあれば発明の効果は得られると考えられる。
【0059】
現像スリーブの体積測定は、実施例中に記載した通り、四端子法の抵抗率測定器(例えば三菱油化製 LORESTA AP INTERIGENT)で測定することにより得られ、体積抵抗率は、約102Ωcmであった。尚、この時の印加電圧は5Vである。
【0060】
凹部直径、凹部深さ、凹部の数、公差は、非接触の三次元形状測定器(例えば、キーエンス製マイクロスコープVHX−S15シリーズ)にて、測定する。
【0061】
本発明の微細構造の形成の為に、本実施例の説明では、微細加工された型を加熱して現像剤担持体に加圧することを行った。これ以外にも、UV照射による効果反応を用いた材料を現像スリーブ16の表層に加えて、微細加工された型を透光性の材料を用いて、該型の外部から光を照射することで、より精度よく加工を行う事も可能である。
【0062】
本実施例の特徴部分としては、現像スリーブ16に対してほぼ形状の等しい凹部を単位面積あたりにある程度の個数設けることにある。凹部の形状としては、用いられるトナーの粒径に近い形状にすることにより、凹部にトナーを保持させ、現像スリーブからトナーへ適切な電荷付与を行えるようにしている。形状のほぼ等しい凹部が設けられていることにより、トナーへの電荷付与の状態が等しくなるので、トナーの比電荷量の分布をシャープにすることが可能となる。例えば、従来例で示したようなサンドブラスト処理の場合は、形状として凹部が設けられたとしても、凹部の大きさがまちまちであるため、トナーの比電荷量の分布がブロードとなりやすい。また、背景技術の欄で説明したような、ローレット状の溝を設けた現像ローラであってもやはりトナーの比電荷量はブロードになりやすい。
【0063】
形状のほぼ等しい凹部を設けるという意味から本願発明では、凹部の深さ、長径の寸法公差が0.5μm以内となるようにしている。また、凹部の長径、深さ、単位面積あたりの存在数に関しては、一般的に用いられる平均粒径4〜6μmのトナーを用いてトナーの比電荷量を測定し、比電荷量の分布をシャープにすることがでる範囲に基づいて決定をしている。少なくとも、凹部の開口の長径はトナーの平均粒径よりも大きいことが必要である。
【0064】
(実施例2)
図7(a)は、本発明の第2の実施例の特徴を良く表す図である。図7は、本実施例の現像スリーブ16の拡大断面図である。本現像装置の構成において、第1の実施例或いは従来例の現像装置と同じ作用をする部材は、煩雑を避けるために、同じ部材には同じ符号を付して、必要のない限りその説明を省略する。
【0065】
本実施例の特徴は、現像剤担持体表面形状は、三次元的に角が無い事を特徴としている。図7(a)において、現像スリーブ16の一つの凹部の断面における左側プロファイルをSpr1、右側プロファイルSpr2とした際に、各々のプロファイルの変曲点1、変曲点2が存在する。左側プロファイルSpr1及び右側プロファイルSpr2は、該プロファイルにて連続的に繋がっており、凹部を形成しているが、急峻な角を持つことは無い様に形成されているのが特徴である。ここで、急峻な角とは、Spr1,2のプロファイルの1次微分の符号があるポイントで異なっていることを指す。現像スリーブ16の表面形状において、該急峻な角がないことを特徴としているのが、本実施例の特徴である。上記説明は、わかりやすく説明するために、2次元平面にて説明したが、実際には3次元形状になっており、急峻な点に加えて、線も存在していないことが特徴である。
【0066】
本実施例の一つの実施態様に使用した現像スリーブ16は、実施例1と同様の処方1におり形成した。また、表面形状は上述の三次元形状にすべく、角が無い形状の凸型を作成し、実施例1と同様の加工方法にて作成した。
【0067】
なお、本実施例における各凹部形状の凹部変曲点間隔Dhと隔壁変曲点深さdhは、図7(c)に示すように、各々の該プロファイルSpr1とSpr2の変曲点間隔により定義した。また、隔壁変曲点深さ間隔を定義する方法として、図7(b)に示すように、実施例1に準じて、現像スリーブ16の長手方向からの角度0、120度、240度に対しての間隔として、例えば、Bh0、Bh120、Bh240と定義した。
【0068】
また、隔壁最大高さdhmaxを定義し、隔壁間深さΔdh(=dhmax−dh)と定義した。
【0069】
本実施例の実施態様の評価結果を表3に示す。ここで、凹部変曲点間隔Dhは8μmであり、隔壁変曲点深さdhは4μm、Bh0=Bh60=Bh120=Bh=180=Bh240=Bh300=1μm、隔壁間深さΔdhは0.5μmとした。
【0070】
【表3】
【0071】
本実施例2の構成では、実施例1−1の構成よりもさらに耐久濃度の変化が少なく良好な結果が得られた。上記の結果は、スリーブゴーストの改善に加えて、耐久濃度が耐久を通じて維持されており、かつ、ページ内の均一性が高くなっている事を示している。これは、本実施例の角が無い現像スリーブ16の微細構造により、トナーへのダメージが少なくなり、耐久性が高まった事とともに、比電荷量が均一的に高まっている事を示唆していると考えられる。
【0072】
そこで、実施例1と同様な条件において、現像スリーブ16上のトナーの比電荷量分布(Charge/Diameter(fc/10μm))を測定した。測定は、使用初期のトナーと10K及び25Kの耐久試験後のトナーとをそれぞれサンプリング測定し、その結果を図8に示した。図8において、初期のトナーは一点鎖線で示している。
【0073】
図8に示すように、初期、10K,25Kのそれぞれで、電荷量のピーク位置の変動は少なく、電荷量の分布の変動も少ない。本実施例では、現像スリーブ16に角が無い三次元微細構造とすることで、トナーの耐久劣化を防ぎつつ、かつ比電荷量の分布をシャープにすることが可能である。
【0074】
本実施例おけるその他の実施態様として、凹部変曲点間隔Dhを5〜25μm、隔壁変曲点深さdhを1〜8μm,と変化させて、本実施例の効果を検討した。なお、本実施例の実施態様では、隔壁間深さΔdh(=dhmax−dh)を0.5μm、1.0μmと変化させた。
【0075】
スリーブゴースト及び耐久濃度変化をグラフにプロットしたものを、上記と同様に評価した結果を、図9(a)、図9(b)に示す。
【0076】
図9(a)は、隔壁間深さΔdh=0.5μmの結果を示し、図9(b)は、隔壁間深さΔdh=1.0μmの結果を示す。隔壁間深さΔdhを振ったのは、隔壁間深さΔdhによってトナーと現像スリーブ表面の接触状態が異なると考えた為である。
【0077】
上述の実施態様から、凹部変曲点間隔Dhを5〜25μm、隔壁変曲点深さdhを1〜8μm、隔壁間深さΔdhを0.5μm、1.0μmに変化させて、スリーブゴーストの改善、現像濃度安定性、耐久濃度安定性及び均一性の検討を行った。その結果、図9(a)及び図9(b)に示す通り、凹部変曲点間隔Dhでは、8〜20μm、隔壁変曲点深さdhは2〜5μmにおいて、上記項目において向上を得ることが出来る。なお、実施例2における、変曲点間隔Dh、隔壁変曲点深さdhが、実施例1の凹部直径D、凹部深さdに対応する。
【0078】
(実施例3)
図10(a)は、本発明の第3の実施例の特徴を良く表す図であり、同図は、本実施例の現像スリーブ16の拡大断面図である。本現像装置の構成において、第1の実施例或いは従来例の現像装置と同じ作用をする部材は、煩雑を避けるために、同じ部材には同じ符号を付して、必要のない限りその説明を省略する。
【0079】
本実施例の特徴は、現像剤担持体の凹部の内部には、凸状の微細構造を有することである。
【0080】
図10(a)において、微細構造はPで示しているものであり、形状は凸形状となっている。本実施例では、第1及び第2の実施例の凹構造の内部に、凸形状を有しているものである。本実施例における凸状の微細構造の横方向の長さdPは0.8μmであり、高さhdPは0.4μmであり、凹形状の内部に凸形状が9個形成されている。
【0081】
本実施例の効果を検討する為に、第1の実施例と同様な現像装置を用い、現像バイアスのDC成分を変化させつつ、濃度を測定していった結果を図11に示す。図11は、横軸を現像バイアスDC値から明電位(Vl)を引いた値で、縦軸に全べた濃度示している。
【0082】
図11に示すように、本実施例の現像剤担持体を用いる事により、比較例に比べて約100V程低い現像バイアス値にて、同じ濃度を得ることが出来ている。
【0083】
これは、現像剤担持体からのトナーの離型性が向上していると考えられ、本発明の凹状の構造の中の凸微細構造による効果であると推測することが出来る。
微細構造Pの長さdPを0.2μm〜1.0μm、高さhdPを0.1μm〜0.6μmまで変化させて検討を行ったが、図11と同様な現像濃度の上昇を得た。また、実施例1,2と同様にスリーブゴーストに対しても効果が見られた。
【0084】
(実施例4)
図12(a)は、本発明の第4の実施例の特徴を良く表す図であり、同図は、本実施例の現像スリーブ16の拡大断面図である。本現像装置の構成において、第1の実施例或いは従来例の現像装置と同じ作用をする部材は、煩雑を避けるために、同じ部材には同じ符号を付して、必要の無い限りその説明を省略する。
【0085】
本実施例では、硬度がSRIS0101硬度(アスカーC硬度)5以上、JIS・K−6301で測定した硬度30以下の導電性弾性層262からなる事が特徴である。凹部形状は、実施例1、実施例2の両方の形状に適用出来るが、本実施例では、実施例1の形状を用いて検討を行った結果を以下に示す。
【0086】
本実施例の1態様として、導電性弾性層の硬度は、SRIS0101硬度(アスカーC硬度)で、20〜25度であり、導電性弾性層の体積抵抗値は104Ωcmのスリーブを用いた。なお、実施例1乃至3のスリーブの硬度は、JIS・K−5400において、鉛筆硬度がH以上である。実施例1乃至3のスリーブの硬度の測定には、実施例4のようにアスカーC硬度を用いずJIS・K−5400を用いている。その理由は、実施例1乃至3のスリーブは、実施例4のスリーブと比較して硬度が高くなっている。そのため、アスカーC硬度等では測定できないためである。
【0087】
現像スリーブ16は、金属製(本実施例の1態様においては、SUS304)からなる基体161に、ウレタンゴムに導電性カーボン(実施例1と同様)を添加したものを混錬し、導電性弾性層262を形成し、1次加工する。その後、図12(a)の形状になる様な型に入れて、加硫することにより形成する。
【0088】
本実施例の1態様においては、実施例1と同様の測定方法において導電性弾性層262の体積抵抗値を測定した。体積抵抗値は104Ωcm程度であった。
【0089】
本実施例では、現像スリーブ16の最表層が導電性弾性層262で有る。その為に、図12(c)に示すように、トナー4が凹部構造からずれた場合においても、導電性弾性層の表層が微視的に変形を生じ、トナー4へのダメージが少なくなる。
【0090】
同様に、トナー4が現像スリーブ16と接している全ての点において、上記現象が発生しており、トナーへのダメージが少なくなる。また、本実施例の硬度では、現像剤担持体がトナーを包み込む事になる為、結果、接触面積が大きくなることにより、トナー4の比電荷量が高くなる傾向にあると考えられる。
【0091】
本実施例の第1の実施態様(実施例4−1)では、現像装置10における現像剤規制部材201をウレタン製とした。
【0092】
また、第2の実施態様(実施例4−2)では、現像装置10における現像剤規制部材201を金属製(りん青銅)とした。比較として実施例1−1で示した現像スリーブを用いた。
【0093】
これらの、本発明の実施態様と比較例の現像スリーブ16上のトナーの比電荷量分布を、前述のホソカワミクロン製 E−SPARTアナライザにより測定した。その結果を図13に示す。また、スリーブゴースト及び耐久濃度評価結果を、表4に示す。
【0094】
【表4】
【0095】
表4から見て取れる様に、本実施例の実施例4−1及び実施例4−2は、スリーブゴーストの初期〜耐久25Kにおいて良好であり、耐久濃度安定性に関しても、同様に良好である。実施例1−1と比較しても耐久濃度の安定性、均一性に関してもよい結果が得られた。実施例4−2においては、スリーブゴースト及び耐久濃度安定性・均一性は、非常に良い結果となっている。
【0096】
ゴム硬度に関しては、本実施例の1態様のみならず、JIS・K−6301の硬度30度の範囲まで、本実施例の効果が認められた。
【0097】
また、本実施例では、硬度がSRIS0101硬度(アスカーC硬度)5よりも下回った場合、耐久性劣化という理由で効果が悪くなる。
【0098】
したがって、硬度がSRIS0101硬度(アスカーC硬度)5以上、JIS・K−6301で測定した硬度30以下の導電性弾性層を備える構成により、さらにトナーの比電荷分布を良好にすることができる。
【0099】
なお、導電性弾性層の硬度の下限値は、JIS硬度で測定することが困難であった。そこで、本実施例では、硬度の下限値はアスカーC硬度で測定し、硬度の上限値は、JIS・K−6301で測定している。
【0100】
また、本実施例の説明では、非接触現像装置を用いて実験を行ったが、接触現像装置に適用しても、同様な効果を得た。
【0101】
(実施例5)
本実施例は、今までの実施例に対して、シスメックス株式会社製FPIA3000で測定した円形度Cが1.00〜0.970で有り且つ低軟化点物質を5〜30重量%含有しているトナーを用いることを特徴としている。なお、実施例1乃至4においては、円形度が0.96のトナーを用いている。円形度Cは、図14に示した様に求められ、具体的には、下記の通りである。
【0102】
<円形度の求め方>
フロー式粒子像分析装置「FPIA−3000」(シスメックス社製)の測定原理は、流れている粒子を静止画像として撮像し、画像解析を行うというものである。試料チャンバーへ加えられた試料は、試料吸引シリンジによって、フラットシースフローセルに送り込まれる。フラットシースフローに送り込まれた試料は、シース液に挟まれて扁平な流れを形成する。フラットシースフローセル内を通過する試料に対しては、1/60秒間隔でストロボ光が照射されており、流れている粒子を静止画像として撮影することが可能である。また、扁平な流れであるため、焦点の合った状態で撮像される。粒子像はCCDカメラで撮像され、撮像された画像は512×512の画像処理解像度(一画素あたり0.37×0.37μm)で画像処理され、各粒子像の輪郭抽出を行い、粒子像の投影面積Sや周囲長L等が計測される。
【0103】
次に、上記面積Sと周囲長Lを用いて円相当径と円形度を求める。円相当径とは、粒子像の投影面積と同じ面積を持つ円の直径のことであり、円形度Cは、円相当径から求めた円の周囲長を粒子投影像の周囲長で割った値として定義され、次式で算出される。
円形度C=2×(π×S)1/2/L
粒子像が円形の時に円形度は1になり、粒子像の外周の凹凸の程度が大きくなればなるほど円形度は小さい値になる。各粒子の円形度を算出後、円形度0.200〜1.000の範囲を800分割し、得られた円形度の相加平均値を算出し、その値を平均円形度とする。
【0104】
<粒子径の求め方>
トナーの重量平均粒径(D4)および個数平均粒径(D1)は、以下のようにして算出する。測定装置としては、100μmのアパーチャーチューブを備えた細孔電気抵抗法による精密粒度分布測定装置「コールター・カウンター Multisizer 3」(登録商標、ベックマン・コールター社製)を用いる。測定条件の設定及び測定データの解析は、付属の専用ソフト「ベックマン・コールター Multisizer 3 Version3.51」(ベックマン・コールター社製)を用いる。尚、測定は実効測定チャンネル数2万5千チャンネルで行なう。
【0105】
測定に使用する電解水溶液は、特級塩化ナトリウムをイオン交換水に溶解して濃度が約1質量%となるようにしたもの、例えば、「ISOTON II」(ベックマン・コールター社製)が使用できる。
【0106】
尚、測定、解析を行なう前に、以下のように前記専用ソフトの設定を行なった。
【0107】
前記専用ソフトの「標準測定方法(SOM)を変更」画面において、コントロールモードの総カウント数を50000粒子に設定し、測定回数を1回、Kd値は「標準粒子10.0μm」(ベックマン・コールター社製)を用いて得られた値を設定する。「閾値/ノイズレベルの測定ボタン」を押すことで、閾値とノイズレベルを自動設定する。また、カレントを1600μAに、ゲインを2に、電解液をISOTON IIに設定し、「測定後のアパーチャーチューブのフラッシュ」にチェックを入れる。
【0108】
前記専用ソフトの「パルスから粒径への変換設定」画面において、ビン間隔を対数粒径に、粒径ビンを256粒径ビンに、粒径範囲を2μmから60μmまでに設定する。
【0109】
具体的な測定法は以下の通りである。
(1)Multisizer 3専用のガラス製250ml丸底ビーカーに前記電解水溶液約200mlを入れ、サンプルスタンドにセットし、スターラーロッドの撹拌を反時計回りで24回転/秒にて行なう。そして、専用ソフトの「アパーチャーのフラッシュ」機能により、アパーチャーチューブ内の汚れと気泡を除去しておく。
(2)ガラス製の100ml平底ビーカーに前記電解水溶液約30mlを入れる。この中に分散剤として「コンタミノンN」(非イオン界面活性剤、陰イオン界面活性剤、有機ビルダーからなるpH7の精密測定器洗浄用中性洗剤の10質量%水溶液、和光純薬工業社製)をイオン交換水で約3質量倍に希釈した希釈液を約0.3ml加える。
(3)発振周波数50kHzの発振器2個を位相を180度ずらした状態で内蔵し、電気的出力120Wの超音波分散器「Ultrasonic Dispension System Tetora150」(日科機バイオス社製)を準備する。超音波分散器の水槽内に約3.3lのイオン交換水を入れ、この水槽中にコンタミノンNを約2ml添加する。
(4)前記(2)のビーカーを前記超音波分散器のビーカー固定穴にセットし、超音波分散器を作動させる。そして、ビーカー内の電解水溶液の液面の共振状態が最大となるようにビーカーの高さ位置を調整する。
(5)前記(4)のビーカー内の電解水溶液に超音波を照射した状態で、トナー約10mgを少量ずつ前記電解水溶液に添加し、分散させる。そして、さらに60秒間超音波分散処理を継続する。尚、超音波分散にあたっては、水槽の水温が10℃以上40℃以下となる様に適宜調節する。
(6)サンプルスタンド内に設置した前記(1)の丸底ビーカーに、ピペットを用いてトナーを分散した前記(5)の電解質水溶液を滴下し、測定濃度が約5%となるように調整する。そして、測定粒子数が50000個になるまで測定を行なう。
(7)測定データを装置付属の前記専用ソフトにて解析を行ない、重量平均粒径(D4)および個数平均粒径(D1)を算出する。尚、前記専用ソフトでグラフ/体積%と設定したときの、「分析/体積統計値(算術平均)」画面の「平均径」が重量平均粒径(D4)である。また、前記専用ソフトでグラフ/個数%と設定したときの、「分析/個数統計値(算術平均)」画面の「平均径」が個数平均粒径(D1)である。本発明でのトナー粒子径は、上記重量平均径(D4)を用いた。
【0110】
本実施例の説明では、現像スリーブ16は、実施例4の実施態様2を用いて説明する。
【0111】
図15は、本実施例の効果を示す図であり、円形度0.970のものを用いている。
【0112】
円形度が、0.970以上では、現像コントラスト値(V−Vl)が100Vと低コントラストにおいても、濃度がほぼフラット領域であり、現像効率の著しい向上が認められた。
【0113】
実施例1乃至4と同様にスリーブゴースト、耐久濃度の評価を行なうともに、現像後のかぶり及び転写残トナーの濃度測定を行った。結果を表5に示す。かぶり濃度及び転写残濃度ともに、前述のマクベス反射濃度計(RD918:マクベス社製を用いて評価を行った。
【0114】
【表5】
【0115】
上記結果から、トナーの球形度が0.97である方が、転写残トナーが少なくなる。
【0116】
また、本実施例では、非接触現像装置に適用した例を示したが、接触現像装置においても同様に、かぶりの低減及び転写残トナーの低減効果を得た。
【0117】
(実施例6)
本実施例は、露光手段が複数個の発光部を一方向に沿って配列した長尺状のプリントヘッドを備えている。さらに、本実施例では、像担持体の専用のクリーニング手段を持たず、現像装置で現像と同時に残留したトナーを回収するいわゆるクリーナレスの画像形成装置である。
【0118】
本実施例では、ネガ帯電性のトナーを用い、像担持体1には、帯電装置2が具備されており、露光装置3は、波長780nmの波長を持つ600dpiの空間密度からなる発光部を一方向に沿って配列したLEDプリントヘッド3を用いている。現像装置10には、今までの実施例で説明した弾性材からなる現像スリーブ16を有し、現像剤規制部材201は、りん青銅からなる金属製ブレードを用いている。
【0119】
クリーナレスの装置においては、転写残トナーが残った際には、像担持体の回転にしたがって、帯電装置2をすり抜け、露光装置3まで転写残トナーが到達する。そして、転写残トナーは、現像装置10まで到達し、電界により現像剤担持体に回収される。
【0120】
上記のクリーナーレスプロセスにおいて、像担持体上の転写残トナーが飛散し露光装置3へ付着する、露光装置3へのトナー付着が問題となっている。特に、露光装置3としてLEDを用いた場合には露光光量が小さいため、露光装置と像担持体とを近接配置する必要がある。この場合は、特に露光装置へのトナー付着が発生しやすい。露光装置としてLEDを用いた場合、像担持体とLEDの最近接距離が10〜5000μm程度になる。
【0121】
そこで、本発明者らは、トナー比電荷量の分布をシャープにし、逆極性に帯電したトナー(ポジ化トナー)或いはネガに帯電しているが電化量の小さいトナー(弱帯電トナー)の発生を防止することを考えた。このような、ポジ化トナーや弱帯電トナーが、転写装置において転写できずに転写残トナーとなりやすいからである。
【0122】
さらに、高転写率とする事で、転写部における転写残トナーの減少をすることが可能となる。高転写率にする方法として、像担持体1に対するトナーの離形成をよくする方法がある。該離型性の指標として像担持体の純水に対する接触角を用いた。
【0123】
転写残トナーが少なくなれば、像担持体上の転写残トナー飛散も少なくなり、露光装置へのトナー付着も抑制することができる。
【0124】
図16に、像担持体1の純水に対する接触角と、像担持体上に現像を行なった後の現像剤の比電荷量と、転写残のトナーの濃度との関係を示す。
【0125】
像担持体上に現像を行なった後の現像剤の比電荷量は、温度27℃で、相対湿度70%RHの環境下における像担持体上の比電荷量の絶対値をファラデーケージにて測定している。
【0126】
クリーナーレスにおいては、転写残トナー濃度が0.02以下であれば、クリーナーレスシステムにおいて、実用上問題の無いレベルに達していることを別途確認しており、
転写残トナー濃度を0.02以下を許容限界と定めて、同図に見るような結果を導出した。
【0127】
すなわち、現像剤担持体上のトナー比電荷量が絶対値で50μC/g〜90μC/gであり、且つ、像担持体1の水に対しての接触角が90°〜150°であれば、許容限界をクリア出来ることが出来る。
【0128】
なお、トナー比電荷量の絶対値が90μC/gよりも大きいと、転写率が下がる傾向にあるため、比電荷量は90μC/g以下が好ましい。
【0129】
トナーの比電荷量を適当な値に制御することで、転写残トナーの発生を抑制するような場合において、本実施例のように、凹部をもうけた現像スリーブ16を用いると、トナーの比電荷量の分布がシャープにすることが可能である。そのため、比電荷量が好ましくないようなトナーを減少させることができ、転写残トナーの発生を抑制する効果を効率よく達成することができる。
【0130】
上記実施例で説明した以外の変形例の一部を説明する。
【0131】
露光装置3の光学系と静電潜像保持体との距離を0.01mm以上、1mm以下に設定することも可能である。露光装置3と像担持体1との距離が小さい時は、光量が弱い露光装置においても露光が可能となる。一方、露光装置へのトナー付着が問題となるが、本発明の現像剤担持体及び現像装置を用いれば、実施例6で説明したように、光学汚れの発生を軽減することが可能である。特に、露光装置3が、像担持体1に対して下方に配置されているような場合は、像担持体から飛翔したトナーが重力により露光装置3に落下し、露光装置3にトナーが付着しやすい。しかし、上記実施例で説明したような現像スリーブ16を用いてトナーの比電荷量分布をシャープにしておくことにより、転写残トナーを少なくする。転写残トナーが少なくなれば、トナー飛散をしてしまうようなトナーも少なくなるので露光装置3にトナーが付着するのを抑制することが可能となる。
【0132】
これらのトナーを用いる事により、飛散トナー自体の量が少なくなるとともに、露光装置3へのトナー汚れが発生しない。
【0133】
露光装置の光学系にマイクロレンズを用いる事も可能である。また、露光装置に、面発光レーザ(VCSEL)を用いることも可能である。面発光レーザーを用いることにより、よりWDの許容度の高い露光装置3を作ることが可能である。
【符号の説明】
【0134】
1 像担持体
3 露光装置
4 1成分現像剤
6 現像剤スリーブ
9 現像バイアス電源
10 現像装置
20 弾性ブレード
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真感光体、静電記録誘電体の像保持体上に形成された静電潜像を一成分現像剤により現像するための現像剤担持体、又は当該現像剤担持体を備える現像装置、又は画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一成分現像剤(以下、「トナー」と記す)を現像剤担持体上に薄層に塗布し、現像剤担持体に現像バイアスを印加して、電子写真方式等を利用して像担持体上に形成された静電潜像を一成分現像剤で現像して、可視化する現像装置が種々知られている。
【0003】
一成分現像剤には、磁性粒子を含んだ磁性一成分現像剤(以下、「磁性トナー」と記す)及び磁性粒子を含まない非磁性一成分現像剤(以下、「非磁性トナー」と記す)がある。但し、一成分現像剤は、トナー粒子のみを含有するものに限らず、トナーの他に現像剤の流動性を向上させたり、トナーの帯電量を制御したり、像担持体表面のクリーニングをしたりする1種または複数種の補助剤が外添されているものも含まれる。
【0004】
この非磁性トナーを用いた現像法は、特に鮮明なカラー複写が得られ、また画像の定着性も向上することから、様々な提案がなされている。
例えば、非磁性トナーを用いた従来の現像装置の一般的な構成を示す。非磁性トナーが現像剤容器内に収容されており、この非磁性トナーが回転する現像剤担持体(以下、「現像スリーブ」と記す)と弾性ブレードとによって、現像剤スリーブ上に均一に薄層に塗布される。像担持体と現像スリーブとは、現像領域で、0.02〜0.3mmの間隔になっており、この現像領域において像担持体上に形成された静電潜像が非磁性トナーで可視化される。
【0005】
このとき現像スリーブには、パルスバイアス、交流バイアス等が現像バイアス電源によって印加される。非磁性トナーを用いた現像装置では、磁性粒子をトナー中に含有していないために、一成分磁性現像剤に比べてトナーの絶縁性が高い。特に頻繁な現像の繰返しに伴うトナーの比電荷量の増大(チャージアップ)や現像スリーブの汚染、現像スリーブ上のトナー融着が頻繁となってくる。
【0006】
また磁性トナーを用いた現像装置では、現像スリーブの内部に軸方向に長い現像マグネットを有している。このために磁性トナーは、現像スリーブ上を回転、接触し、摺擦することから、現像スリーブから現像に十分な電荷を均一に得ることができる。しかし、非磁性一成分トナーでは、この回転、接触、摺擦による電荷の授受の機会が少ないために、十分な電荷を均一に得ることが難しい。このために現像濃度の不均一が問題となっていた。
【0007】
また、別の問題としてスリーブゴーストという現象がある。スリーブゴーストとは、画像履歴に起因する画像濃度ムラである。非印字部(白地)が続いた後に、プリントが行われた場合には濃度の薄い現像しか行われる。これに対し印字部(黒字)が続いた後にプリントが行われると濃度の濃い現像が行なわれる。そのため、前回の画像が白字部が続いた場合と、黒字部が続いた場合とで濃度ムラが発生してしまう。
【0008】
このゴースト形成のメカニズムは、本発明者等の実験および考察によると、現像スリーブ上のトナーの最下層に形成される微粉(粒径5〜6ミクロン以下)の層に深く関わっていると考えられる。印字部(トナー消費部分)と非印字部(トナー未消費部分)との間で、現像スリーブ上のトナーの最下層のトナーの粒度分布において、明らかな差が生じる。トナー未消費部分では、トナーが消費されないためトナー最下層に微粉層が形成されやすい。微粉は体積あたりの表面積が大きいために粒径の大きなものに比べると質量あたりに有する摩擦帯電電荷量(比電荷量)が大きくなり、鏡映力によりスリーブに対し静電的に強く拘束される。このため微粉の層が形成された部分の上にあるトナーは、現像スリーブと十分な摩擦帯電ができないために現像能力が低下し、画像上にゴーストとして現われてしまうのである。
【0009】
更に、現像性能の不均一化は、個々のトナーの比電荷量が不均一である事による現像性能の不均一性や現像濃度の不均一性にも大きく影響を及ぼしている。
【0010】
また非磁性トナーは、チャージアップし易い。そのため、特に非接触のジャンピング現像あるいは他の非接触現像ないしは像担持体と現像剤との距離が微小な現像方法においては、現像効率の低下を引き起こし、繰返し現像による濃度低下も引き起こす結果となっていた。
【0011】
特にプリントスピードの速い画像形成装置で使用する現像装置の場合、現像剤中の荷電制御剤あるいは樹脂が現像スリーブを汚染する割合は、磁性トナーに比べて非磁性トナーの方が高く、繰返し現像による濃度低下をより一層引き起こす結果となっていた。
【0012】
このために現像スリーブ表面に弾性ローラを圧接、摺擦させ、該弾性ローラとトナーを摺擦させることにより、現像に寄与するトナーの比電荷量を均一にすることが提案されている。しかしながら、これらの方法は結果的に現像装置の大型化・高トルク化を引き起こし、小型の画像形成装置にはコスト、電力、スペースの点から採用することが難しかった。
【0013】
また、従来、現像スリーブには、サンドブラスト処理や、ローレット加工処理を施すことにより搬送性を向上する事は行なわれている。
【0014】
例えば、特開平7−13410公報(第4頁、図5)で提案されている現像装置は、現像剤担持体上に溝をスパイラル状の凹凸を形成した現像剤担持体を有することにより、現像濃度安定性を良くしていた。
【0015】
特開2003−208012公報(第5頁、図4)で提案されている画像形成装置は、表面粗さRz1.5μm〜10μmのサンドブラスト処理を施した現像ローラを用いる。または、アヤメ状ローレット溝が切られた該溝深さは5μm以上30μm以下であることを特徴とした現像ローラを用いることで、高品質の画像を得ていた。
【0016】
特開2007−127809公報(第4頁、図1、第6頁、図8)で提案されている画像形成装置は、アヤメ状の溝を有する現像剤担持体の開示がある。具体的には、回転スラスト方向に鋭角に傾斜した方向に延びる複数の溝と、スラスト方向に対しては反対側に鋭角に傾斜した方向に延びる複数の溝とが交差する様な溝が形成されている。
【0017】
特開平11−73006公報(第3頁、図1)で提案されている半導電性ロールおよびこれを用いた現像装置においては、周方向に101〜109Ωcmの半導電性の溝を有する現像ロールとすることで、高品位の画像を得られる現像装置を提供していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0018】
【特許文献1】特開平7−13410公報
【特許文献2】特開2003−208012公報
【特許文献3】特開2007−127809公報
【特許文献4】特開平11−073006公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
しかしながら、前述したような現像ローラの表面処理では、トナー電荷量(トナートリボ)のシャープ化が十分に出来ない。
【0020】
そのため近年、求められるようになった画像品位を満たすことができなかった。
【0021】
本出願の目的は、トナーのトリボ分布をシャープにすることで、現像濃度安定性の向上や、スリーブゴーストの低減をすることである。
【課題を解決するための手段】
【0022】
上記目的を達成するため、本出願に係る第1の発明は、像担持体上に形成された潜像を現像する一成分現像剤を担持する現像剤担持体において、前記現像剤担持体表面は抵抗値が102〜108Ω・cmであり、前記現像剤担持体は表面に複数の凹部を備え、前記凹部は、単位面積当たりに2050個/mm2以上9926個/mm2以下存在しており、前記凹部の開口の長径は8〜20μmで、前記凹部の深さは、2〜5μmで、前記長径の寸法公差が0.5μm以内で、前記深さの寸法公差が0.5μm以内であることを特徴とする現像剤担持体である。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、トナーのトリボ分布をシャープにすることで、現像濃度安定性の向上や、スリーブゴーストの低減をすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の実施例に係る画像形成装置を説明する図である。
【図2】本発明を適用可能な第1の実施例に係る第1の実施態様を説明する図である。
【図3】本発明を適用可能な第1の実施例に係るトナー粒度分布を説明する図である。
【図4】本発明を適用可能な第1の実施例に係るスリーブゴーストテストパターンの説明図である。
【図5】本発明を適用可能な第1の実施例に係る第2〜第5の実施態様を説明する図である。
【図6】本発明を適用可能な第1の実施例に係る第6以降の実施態様を説明する図である。
【図7】本発明を適用可能な第2の実施例に係る第1の実施態様を説明する図である。
【図8】本発明を適用可能な第2の実施例に係る第1の実施態様を説明する図である。
【図9】本発明を適用可能な第2の実施例に係るその他の実施態様を説明する図である。
【図10】本発明を適用可能な第3の実施例に係る第1の実施態様を説明する図である。
【図11】本発明を適用可能な第3の実施例に係る実施態様を説明する図である。
【図12】本発明を適用可能な第4の実施例に係る実施態様を説明する図である。
【図13】本発明を適用可能な第4の実施例に係る実施態様を説明する図である。
【図14】本発明を適用可能な第5の実施例に係る実施態様を説明する図である。
【図15】本発明を適用可能な第5の実施例に係る実施態様を説明する図である。
【図16】本発明を摘要可能な第6の実施例を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
(実施例1)
図1(a)は、本発明の画像形成装置の1実施態様を示す、クリーナレスモノクロ画像形成装置の概略構成図である。1は像担持体、2は帯電装置、3は露光装置、4は1成分現像剤、5は転写装置、6は現像剤担持体、10は現像装置、201は現像剤規制部材である。像担持体としては、感光体を用いている。本実施態様では、像担持体上のトナー等をクリーニングするための専用のクリーニング装置をもたないいわゆるクリーナレスの画像形成装置である。図1(b)は、本発明の画像形成装置の別の実施態様であるインライン型のクリーナレスフルカラー画像形成装置である。50は二次転写装置、60は定着装置である。イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の各色の画像形成部分をインラインに配置している。感光体に形成されたトナー像(現像剤像)は、中間転写体である中間転写体ベルト7上で4色の色重ねをされた後に、2次転写装置50にて、給送されてきた紙(被転写体)へ一括転写される。その後に、トナーは、定着装置60によって紙へ溶融固着され、フルカラー印字画像を得る。なお、図1(b)において、画像形成部分における像担持体等の構成要素は、像担持体1Yのように、数字の後にY,M,C,Kの符号をつけて説明をしている。
【0026】
図2(a)は、本発明の特徴を最もよく表す図であり、同図は、本発明の現像剤担持体の拡大断面図である。16は現像剤担持体であるところの現像スリーブ16である。
ず、本実施例に使用した現像剤担持体の詳細について説明する。
【0027】
図2(a)に示すように、現像スリーブ16は、基体161と表層部162とに分けることが出来る。本実施例の一態様では、基体161は、厚さ0.8mm、真直度約20μmのアルミニウム製の円筒体とし、表層部162は、体積抵抗値が102Ωmである導電性樹脂層を用いている。現像スリーブ16の表面は、図2(a)に示すように表面に凹部を備える形状に加工した。なお、図2(b)は、図2(a)を上面(矢印Dの方向)からみた時の図、図2(c)は、図2(a)の凹部の拡大図である。図2(b)は、凹部の配置の説明のため、仮想軸n、及び仮想軸nに直交する仮想軸mを図に記載している。
【0028】
現像スリーブ16の回転方向をAとしている。一つの凹部の構造は、上面から見たときに円形をしており(図2(b)参照)、また、凹部の断面はなだらかな半円形状をしている(図2(c)参照)。また、配列は本実施態様においては、図2(b)に示す様に六方充填状態となっている。隣接する凹部の中心を結ぶ線は60度間隔となるようにしている。ここで、各凹部の構造の間隔を定義する方法として、図2(b)に示す様に、凹部と隣接する凹部の間隔をBとする。そして、現像スリーブ16の長手方向(図1(b)のn軸方向)からの角度0度、120度、240度・・に対しての間隔Bを、それぞれB0、B120、B240・・で定義する。本実施態様においては、B0=B60=B120=B180=B240=B300を1μmとし、凹部直径Dを8μmとした。
【0029】
本実施例の一態様の配列は、図2(b)に示す様な、m,n軸をとると、各々の隣接する凹部の中心間隔は、凹部の半径×2+凹部の間隔で表される。なお、本実施態様では、凹部は単位面積あたりに9926個/mm2存在している。
【0030】
本実施態様の現像スリーブ16を作成するには、図2(a)、図2(b)及び図2(c)のような凹部が形成されるような凸金型を用いて作成する。以下、具体的な方法を説明する。
【0031】
基体161上に以下の処方1からなる体積抵抗値102〜108Ω・cmの導電性樹脂を調合し、基体161上に一旦形成する。
【0032】
(処方1)
樹脂・・・・・ フェノール樹脂 50重量部
カーボン・・・ カーボン ブラック 45重量部
溶媒・・・・・ メチルアルコール
及びメチルセルソルブ 200重量部
尚、ここで使用したカーボンブラックは、コロンビアカーボン社のRAVEN1035であり、1次粒子の大きさがサブミクロン以下となっているものを使用している。
体積抵抗値は、四端子法の抵抗率測定器(例えば三菱油化製 LORESTA AP INTERIGENT)で測定することにより得られ、体積抵抗率は、約102Ωcmであった。
【0033】
処方1は、本実施例の一態様であり、必ずしもこの樹脂、導電性微粒子によらずに実施可能である事はいうまでもない。但し、本実施例の凹部を備える三次元形状を形成する為には、当該三次元形状が安定して形成可能なように、カーボンやグラファイト等の導電粒子の大きさが凹部の大きさに比べて、十分に小さいことが望ましいことは言うまでもない。具体的には形成される凹部の径よりも小さい粒径のカーボンを使うということが望ましい。
【0034】
本実施例では、寸法公差を±0.5μmで形成させているので、カーボンブラックの1次粒径は、0.5μm以下である事が必要であり、処方1に示したコロンビアカーボン社のRAVEN1035を使用した。
【0035】
凹部の形成方法は次のように行った。最初に、スプレー方やディッピング方により、表層部162の層厚T(図2(a)参照)を約10μm厚さで形成する。本実施態様の形状にする為の凸金型を加熱して現像スリーブ16全面に加圧させ、形状が転写されるに十分な条件にて保持する。本実施態様では、150℃、30分の条件で金型を保持し、図2(a)、図2(b)の微細構造をもつ現像スリーブ16を製作した。ここで、図1(c)に示す凹部深さdは、4μmとなるように形成した。
【0036】
こうしたナノイン加工により、この微細構造の精度は、±0.5μm以内(径及び深さの公差)に形成されている。
【0037】
使用する一成分現像剤は、非磁性トナー4であり、トナーの体積平均粒径は、5μmの粒度で、円形度(後述)が略0.96のトナーを使用した。図3に本実施例に使用したトナーの体積粒度分布を示す。
【0038】
また、本実施例の一態様では、所謂、非磁性一成分ジャンピング現像を用いて検討を行った。
【0039】
本実施態様に使用した現像バイアスは、高圧電源9によりA4サイズの現像スリーブ16に供給される。現像バイアスは、直流バイアスに交流バイアスを重畳しており、交流バイアスはピーク間電圧Vppが1600V、周波数1800Hzである。本発明の現像スリーブ16と像担持体1との間隔は、略300μmである。また、プロセススピードは、約94mm/secである。なお、トナーは負極性トナーを用い、像担持体の受容電位は、−700V、明電位が−100V、現像バイアスは、−500Vからなる反転現像方式を用いた。
【0040】
本実施例の比較例として、現像スリーブ16を、アランダム#400にてサンドブラストした現像スリーブを用意した。この時の加工条件は、(株)不二製作所製の三度ブラスト装置を用いて、サンドブラスト圧力は略3.5kg/cm2、砥粒の加工時間は、略30秒である。本実施例と同様の非磁性トナー4と現像バイアスにて画像出力したところ、本実施例は、比較例に比べてスリーブゴーストが改善されており、且つ、濃度均一性が高まっていることを確認した。この結果を、表1に示す。尚、比較例として示したアランダム#400で処理した現像スリーブ16の表面は、JISB0601で規定される平均線中心粗さRaが約0.4μmとなっており、凹部深さに相当する値10点平均粗さRz(JISB0601で規定)は、略5μm程度であった。
【0041】
【表1】
【0042】
表1に、スリーブゴーストと、耐久濃度、ページ内濃度の均一性について比較実験を行った結果を示す。スリーブゴーストは、使用初期の現像装置と、耐久試験(画像出力を行う試験)で、連続耐久1万枚(10Kと表記)・連続耐久2.5万枚(25Kと表記)の画像出力を行った後の現像装置と、をそれぞれ比較した。また、耐久濃度は、ベタ画像を出力し、その濃度をマクベス反射濃度計(RD918:マクベス社製)を用いて、原稿濃度が0.00の白地部分の画像に対する相対濃度を測定して評価を行った。均一性は、上記反射濃度の同一ページ内の4角と中央の5点における平均値と各点の濃度差の最大値で評価を行った。
【0043】
スリーブゴーストは、図4に示した様なテストパターンを用いて画像出力をして評価した。テストパターンは、先端の45mmの部分にべた白部とべた黒部が隣り合った画像を形成し、それに続いて1dot/1space横線のハーフトーンパターン画像を形成したものである。テストパターンを、A4サイズの用紙に対して画像形成し、得られたハーフトーン画像上に現れた濃淡差を目視で観察し、◎、○、△、×で評価した。尚、評価の基準は下記の通りである。
◎:濃淡差が見られない
○:軽微な濃淡差が見られる
△:濃淡差がやや見られるが実用可
×:目立つ濃淡差が許容外
本実施例の一態様においては、スリーブゴーストが耐久試験10Kまで発生は認められず、25Kにおいても実用上問題の無い程度であった。これに対し、比較例では、初期から発生しており、しかも、耐久を続けるに従って、濃度が低下し、ページ内濃度もかなりの不均一性を示した。特に、このページ内不均一性は、スリーブの一周分が薄くなる現象が発生していた。
【0044】
本実施例の一態様にてスリーブゴーストが解消されていたのは次のような理由と考えられる。一つは、図2(a)〜(c)に示すような微細な凹部を備える構造により、現像スリーブ16上のトナーの比電荷量が均一になっていることである。もう一つは、このトナーの微細な領域における均一な循環が速やかに行われる事にあると考えられる。言い換えると、現像スリーブ16上のトナーコーティング状態が均一であることを示している。
【0045】
この現象を調べる為に、ホソカワミクロン製 E−SPARTアナライザにより、現像スリーブ16上のトナーの比電荷量分布(Charge/Diameter(fc/10μm)を測定し、その結果を図5に示した。(図5において、横軸は電荷量で、縦軸は頻度である。)
図5を見ても明らかな様に、比較例においては、比電荷量分布がブロードであり、反転トナー成分(正極性に帯電したトナー)が多く、中心値もあまり高くない状態にある。これは、アランダム#400にてサンドブラストしたスリーブは、面形状が不均一である為に、トナーと現像スリーブ表面との接触確率が不均一になり、結果として、比電荷量分布をシャープにする事が不可能である事による。一方、実施例の一態様においては、反転トナー成分が殆ど認められず(本実施例の一態様では、10%未満と見て取れる)、比電荷量分布がシャープであり、中心値も従来例よりも比較的高い状態に改善されている事がわかる。
【0046】
以上、本発明により、トナーの比電荷量がシャープになり、かつ、絶対値が高めにシフトすること、および、均一なコーティング状態を形成することができることで、スリーブゴーストが改善され、濃度の不均一性が初期のみならず、耐久を通して改善している。
【0047】
(その他の実施態様)
本実施例の他の実施態様として、図2(a)および図2(c)の凹部深さdをパラメータとして、検討した結果を表2に示す。その他の条件については、実施態様1と同じにした。
【0048】
【表2】
【0049】
表2に示すように、凹部深さdを1μm〜6μmと変化させて評価を行った。本実施例の態様3に示す様に、凹部深さdを1μmとすると、現像スリーブ16上のトナーコーティング状態がさざなみ上のいわゆる当業者では明らかな、ブロッチ現象が発生した。これは、スリーブ上の凹凸がかなり小さくなった際に起こる現象である。
【0050】
また、凹部深さdが6μm以上の状態では、スリーブゴーストの改善効果は認められるものの、先端濃度が高く、スリーブ一周分以降の濃度の低くなる、所謂、ネガゴースト現象が発生した。
【0051】
すなわち、2〜5μm程度が好ましいスリーブの凹部深さであると考えられる。
【0052】
また、図6に、凹部直径Dと凹部深さdをパラメータとした実施態様に関して検討した結果を示す。その他の条件は実施態様1と同じにした。同図において、白抜き○はスリーブゴーストが改善されており、かつ耐久濃度安定性および均一性が実用上問題の無い範囲にあるものを示す。黒丸●は、ある程度のスリーブゴーストの改善効果はあるものの、ブロッチの発生や、前述のネガゴースト現象の発生傾向がある範囲を示す。
【0053】
これらは、凹部直径Dが大きくなるに従い、平均的トナー粒子が凹部の中での揺らぎや運動が大きくなることにより、比帯電性は高まる傾向にあるが、トナーの拘束性が小さくなるためであると考えられる。すなわち、スティックスリップ現象によるブロッチが発生する傾向にあると言えるためであると推測出来る。また、凹部直径が小さくなると、トナーが凹部に入り込めなくなり、接触面積が小さくなる為に、帯電性付与が少なくなり、濃度安定性向上が低下傾向にあると考えられる。
【0054】
すなわち、凹部深さdが2μm乃至5μm及び凹部直径Dが8μm乃至20μmとすることで、スリーブゴーストの改善及び耐久濃度安定性及び均一性を得ることが出来る。
【0055】
トナーが凹部と接触する事により、トナーは現像スリーブより電荷を得ることが出来るが、トナーの平均粒径が略5μm程度である場合、トナーの粒度分布から判断して、凹部直径は8μm以上〜20μm以下が好ましい。
【0056】
本実施例のように凹部を六方充填した場合の、単位面積当たりの個数について検討してみる。凹部の直径が8μmで、凹部の間隔が1μmである場合、凹部を細密充填することを考えると、直径9μmの円を単位面積あたりにどのくらい敷き詰められるかに置き換えることができる。凹部が直径8μmの場合、細密充填の係数が0.7796〔=√18×(COS−11/3−π/3)〕であるので、1mm2あたりの個数は、(0.7796/(4.5×10−3)2×π=)約12254個/mm2となる。
【0057】
また、凹部直径が20μmの場合は、凹部の間隔が1μmである場合、直径21μmの円を単位面積あたりにどのくらい敷き詰められるかに置き換えることができる。凹部が直径20μmの場合、細密充填の係数が0.7796〔=√18×(COS−11/3−π/3)〕であるので、1mm2あたりの個数は、(0.7796/(10.5×10−3)2×π=)約2250個/mm2となる。
【0058】
なお、上記の計算は、好ましい凹部直径の範囲において、凹部間隔=1μmとして細密充填した場合に、単位面積あたり凹部の個数がいくつになるかを求めている。凹部間隔の値によっては、細密充填をした場合の単位面積あたりの個数は変化すると思われる。しかし、少なくとも上記2250個/mm2〜12254個/mm2の範囲では、本願発明の効果が得られることを確認していることから、凹部間隔がいくつであっても上記範囲内にあれば発明の効果は得られると考えられる。
【0059】
現像スリーブの体積測定は、実施例中に記載した通り、四端子法の抵抗率測定器(例えば三菱油化製 LORESTA AP INTERIGENT)で測定することにより得られ、体積抵抗率は、約102Ωcmであった。尚、この時の印加電圧は5Vである。
【0060】
凹部直径、凹部深さ、凹部の数、公差は、非接触の三次元形状測定器(例えば、キーエンス製マイクロスコープVHX−S15シリーズ)にて、測定する。
【0061】
本発明の微細構造の形成の為に、本実施例の説明では、微細加工された型を加熱して現像剤担持体に加圧することを行った。これ以外にも、UV照射による効果反応を用いた材料を現像スリーブ16の表層に加えて、微細加工された型を透光性の材料を用いて、該型の外部から光を照射することで、より精度よく加工を行う事も可能である。
【0062】
本実施例の特徴部分としては、現像スリーブ16に対してほぼ形状の等しい凹部を単位面積あたりにある程度の個数設けることにある。凹部の形状としては、用いられるトナーの粒径に近い形状にすることにより、凹部にトナーを保持させ、現像スリーブからトナーへ適切な電荷付与を行えるようにしている。形状のほぼ等しい凹部が設けられていることにより、トナーへの電荷付与の状態が等しくなるので、トナーの比電荷量の分布をシャープにすることが可能となる。例えば、従来例で示したようなサンドブラスト処理の場合は、形状として凹部が設けられたとしても、凹部の大きさがまちまちであるため、トナーの比電荷量の分布がブロードとなりやすい。また、背景技術の欄で説明したような、ローレット状の溝を設けた現像ローラであってもやはりトナーの比電荷量はブロードになりやすい。
【0063】
形状のほぼ等しい凹部を設けるという意味から本願発明では、凹部の深さ、長径の寸法公差が0.5μm以内となるようにしている。また、凹部の長径、深さ、単位面積あたりの存在数に関しては、一般的に用いられる平均粒径4〜6μmのトナーを用いてトナーの比電荷量を測定し、比電荷量の分布をシャープにすることがでる範囲に基づいて決定をしている。少なくとも、凹部の開口の長径はトナーの平均粒径よりも大きいことが必要である。
【0064】
(実施例2)
図7(a)は、本発明の第2の実施例の特徴を良く表す図である。図7は、本実施例の現像スリーブ16の拡大断面図である。本現像装置の構成において、第1の実施例或いは従来例の現像装置と同じ作用をする部材は、煩雑を避けるために、同じ部材には同じ符号を付して、必要のない限りその説明を省略する。
【0065】
本実施例の特徴は、現像剤担持体表面形状は、三次元的に角が無い事を特徴としている。図7(a)において、現像スリーブ16の一つの凹部の断面における左側プロファイルをSpr1、右側プロファイルSpr2とした際に、各々のプロファイルの変曲点1、変曲点2が存在する。左側プロファイルSpr1及び右側プロファイルSpr2は、該プロファイルにて連続的に繋がっており、凹部を形成しているが、急峻な角を持つことは無い様に形成されているのが特徴である。ここで、急峻な角とは、Spr1,2のプロファイルの1次微分の符号があるポイントで異なっていることを指す。現像スリーブ16の表面形状において、該急峻な角がないことを特徴としているのが、本実施例の特徴である。上記説明は、わかりやすく説明するために、2次元平面にて説明したが、実際には3次元形状になっており、急峻な点に加えて、線も存在していないことが特徴である。
【0066】
本実施例の一つの実施態様に使用した現像スリーブ16は、実施例1と同様の処方1におり形成した。また、表面形状は上述の三次元形状にすべく、角が無い形状の凸型を作成し、実施例1と同様の加工方法にて作成した。
【0067】
なお、本実施例における各凹部形状の凹部変曲点間隔Dhと隔壁変曲点深さdhは、図7(c)に示すように、各々の該プロファイルSpr1とSpr2の変曲点間隔により定義した。また、隔壁変曲点深さ間隔を定義する方法として、図7(b)に示すように、実施例1に準じて、現像スリーブ16の長手方向からの角度0、120度、240度に対しての間隔として、例えば、Bh0、Bh120、Bh240と定義した。
【0068】
また、隔壁最大高さdhmaxを定義し、隔壁間深さΔdh(=dhmax−dh)と定義した。
【0069】
本実施例の実施態様の評価結果を表3に示す。ここで、凹部変曲点間隔Dhは8μmであり、隔壁変曲点深さdhは4μm、Bh0=Bh60=Bh120=Bh=180=Bh240=Bh300=1μm、隔壁間深さΔdhは0.5μmとした。
【0070】
【表3】
【0071】
本実施例2の構成では、実施例1−1の構成よりもさらに耐久濃度の変化が少なく良好な結果が得られた。上記の結果は、スリーブゴーストの改善に加えて、耐久濃度が耐久を通じて維持されており、かつ、ページ内の均一性が高くなっている事を示している。これは、本実施例の角が無い現像スリーブ16の微細構造により、トナーへのダメージが少なくなり、耐久性が高まった事とともに、比電荷量が均一的に高まっている事を示唆していると考えられる。
【0072】
そこで、実施例1と同様な条件において、現像スリーブ16上のトナーの比電荷量分布(Charge/Diameter(fc/10μm))を測定した。測定は、使用初期のトナーと10K及び25Kの耐久試験後のトナーとをそれぞれサンプリング測定し、その結果を図8に示した。図8において、初期のトナーは一点鎖線で示している。
【0073】
図8に示すように、初期、10K,25Kのそれぞれで、電荷量のピーク位置の変動は少なく、電荷量の分布の変動も少ない。本実施例では、現像スリーブ16に角が無い三次元微細構造とすることで、トナーの耐久劣化を防ぎつつ、かつ比電荷量の分布をシャープにすることが可能である。
【0074】
本実施例おけるその他の実施態様として、凹部変曲点間隔Dhを5〜25μm、隔壁変曲点深さdhを1〜8μm,と変化させて、本実施例の効果を検討した。なお、本実施例の実施態様では、隔壁間深さΔdh(=dhmax−dh)を0.5μm、1.0μmと変化させた。
【0075】
スリーブゴースト及び耐久濃度変化をグラフにプロットしたものを、上記と同様に評価した結果を、図9(a)、図9(b)に示す。
【0076】
図9(a)は、隔壁間深さΔdh=0.5μmの結果を示し、図9(b)は、隔壁間深さΔdh=1.0μmの結果を示す。隔壁間深さΔdhを振ったのは、隔壁間深さΔdhによってトナーと現像スリーブ表面の接触状態が異なると考えた為である。
【0077】
上述の実施態様から、凹部変曲点間隔Dhを5〜25μm、隔壁変曲点深さdhを1〜8μm、隔壁間深さΔdhを0.5μm、1.0μmに変化させて、スリーブゴーストの改善、現像濃度安定性、耐久濃度安定性及び均一性の検討を行った。その結果、図9(a)及び図9(b)に示す通り、凹部変曲点間隔Dhでは、8〜20μm、隔壁変曲点深さdhは2〜5μmにおいて、上記項目において向上を得ることが出来る。なお、実施例2における、変曲点間隔Dh、隔壁変曲点深さdhが、実施例1の凹部直径D、凹部深さdに対応する。
【0078】
(実施例3)
図10(a)は、本発明の第3の実施例の特徴を良く表す図であり、同図は、本実施例の現像スリーブ16の拡大断面図である。本現像装置の構成において、第1の実施例或いは従来例の現像装置と同じ作用をする部材は、煩雑を避けるために、同じ部材には同じ符号を付して、必要のない限りその説明を省略する。
【0079】
本実施例の特徴は、現像剤担持体の凹部の内部には、凸状の微細構造を有することである。
【0080】
図10(a)において、微細構造はPで示しているものであり、形状は凸形状となっている。本実施例では、第1及び第2の実施例の凹構造の内部に、凸形状を有しているものである。本実施例における凸状の微細構造の横方向の長さdPは0.8μmであり、高さhdPは0.4μmであり、凹形状の内部に凸形状が9個形成されている。
【0081】
本実施例の効果を検討する為に、第1の実施例と同様な現像装置を用い、現像バイアスのDC成分を変化させつつ、濃度を測定していった結果を図11に示す。図11は、横軸を現像バイアスDC値から明電位(Vl)を引いた値で、縦軸に全べた濃度示している。
【0082】
図11に示すように、本実施例の現像剤担持体を用いる事により、比較例に比べて約100V程低い現像バイアス値にて、同じ濃度を得ることが出来ている。
【0083】
これは、現像剤担持体からのトナーの離型性が向上していると考えられ、本発明の凹状の構造の中の凸微細構造による効果であると推測することが出来る。
微細構造Pの長さdPを0.2μm〜1.0μm、高さhdPを0.1μm〜0.6μmまで変化させて検討を行ったが、図11と同様な現像濃度の上昇を得た。また、実施例1,2と同様にスリーブゴーストに対しても効果が見られた。
【0084】
(実施例4)
図12(a)は、本発明の第4の実施例の特徴を良く表す図であり、同図は、本実施例の現像スリーブ16の拡大断面図である。本現像装置の構成において、第1の実施例或いは従来例の現像装置と同じ作用をする部材は、煩雑を避けるために、同じ部材には同じ符号を付して、必要の無い限りその説明を省略する。
【0085】
本実施例では、硬度がSRIS0101硬度(アスカーC硬度)5以上、JIS・K−6301で測定した硬度30以下の導電性弾性層262からなる事が特徴である。凹部形状は、実施例1、実施例2の両方の形状に適用出来るが、本実施例では、実施例1の形状を用いて検討を行った結果を以下に示す。
【0086】
本実施例の1態様として、導電性弾性層の硬度は、SRIS0101硬度(アスカーC硬度)で、20〜25度であり、導電性弾性層の体積抵抗値は104Ωcmのスリーブを用いた。なお、実施例1乃至3のスリーブの硬度は、JIS・K−5400において、鉛筆硬度がH以上である。実施例1乃至3のスリーブの硬度の測定には、実施例4のようにアスカーC硬度を用いずJIS・K−5400を用いている。その理由は、実施例1乃至3のスリーブは、実施例4のスリーブと比較して硬度が高くなっている。そのため、アスカーC硬度等では測定できないためである。
【0087】
現像スリーブ16は、金属製(本実施例の1態様においては、SUS304)からなる基体161に、ウレタンゴムに導電性カーボン(実施例1と同様)を添加したものを混錬し、導電性弾性層262を形成し、1次加工する。その後、図12(a)の形状になる様な型に入れて、加硫することにより形成する。
【0088】
本実施例の1態様においては、実施例1と同様の測定方法において導電性弾性層262の体積抵抗値を測定した。体積抵抗値は104Ωcm程度であった。
【0089】
本実施例では、現像スリーブ16の最表層が導電性弾性層262で有る。その為に、図12(c)に示すように、トナー4が凹部構造からずれた場合においても、導電性弾性層の表層が微視的に変形を生じ、トナー4へのダメージが少なくなる。
【0090】
同様に、トナー4が現像スリーブ16と接している全ての点において、上記現象が発生しており、トナーへのダメージが少なくなる。また、本実施例の硬度では、現像剤担持体がトナーを包み込む事になる為、結果、接触面積が大きくなることにより、トナー4の比電荷量が高くなる傾向にあると考えられる。
【0091】
本実施例の第1の実施態様(実施例4−1)では、現像装置10における現像剤規制部材201をウレタン製とした。
【0092】
また、第2の実施態様(実施例4−2)では、現像装置10における現像剤規制部材201を金属製(りん青銅)とした。比較として実施例1−1で示した現像スリーブを用いた。
【0093】
これらの、本発明の実施態様と比較例の現像スリーブ16上のトナーの比電荷量分布を、前述のホソカワミクロン製 E−SPARTアナライザにより測定した。その結果を図13に示す。また、スリーブゴースト及び耐久濃度評価結果を、表4に示す。
【0094】
【表4】
【0095】
表4から見て取れる様に、本実施例の実施例4−1及び実施例4−2は、スリーブゴーストの初期〜耐久25Kにおいて良好であり、耐久濃度安定性に関しても、同様に良好である。実施例1−1と比較しても耐久濃度の安定性、均一性に関してもよい結果が得られた。実施例4−2においては、スリーブゴースト及び耐久濃度安定性・均一性は、非常に良い結果となっている。
【0096】
ゴム硬度に関しては、本実施例の1態様のみならず、JIS・K−6301の硬度30度の範囲まで、本実施例の効果が認められた。
【0097】
また、本実施例では、硬度がSRIS0101硬度(アスカーC硬度)5よりも下回った場合、耐久性劣化という理由で効果が悪くなる。
【0098】
したがって、硬度がSRIS0101硬度(アスカーC硬度)5以上、JIS・K−6301で測定した硬度30以下の導電性弾性層を備える構成により、さらにトナーの比電荷分布を良好にすることができる。
【0099】
なお、導電性弾性層の硬度の下限値は、JIS硬度で測定することが困難であった。そこで、本実施例では、硬度の下限値はアスカーC硬度で測定し、硬度の上限値は、JIS・K−6301で測定している。
【0100】
また、本実施例の説明では、非接触現像装置を用いて実験を行ったが、接触現像装置に適用しても、同様な効果を得た。
【0101】
(実施例5)
本実施例は、今までの実施例に対して、シスメックス株式会社製FPIA3000で測定した円形度Cが1.00〜0.970で有り且つ低軟化点物質を5〜30重量%含有しているトナーを用いることを特徴としている。なお、実施例1乃至4においては、円形度が0.96のトナーを用いている。円形度Cは、図14に示した様に求められ、具体的には、下記の通りである。
【0102】
<円形度の求め方>
フロー式粒子像分析装置「FPIA−3000」(シスメックス社製)の測定原理は、流れている粒子を静止画像として撮像し、画像解析を行うというものである。試料チャンバーへ加えられた試料は、試料吸引シリンジによって、フラットシースフローセルに送り込まれる。フラットシースフローに送り込まれた試料は、シース液に挟まれて扁平な流れを形成する。フラットシースフローセル内を通過する試料に対しては、1/60秒間隔でストロボ光が照射されており、流れている粒子を静止画像として撮影することが可能である。また、扁平な流れであるため、焦点の合った状態で撮像される。粒子像はCCDカメラで撮像され、撮像された画像は512×512の画像処理解像度(一画素あたり0.37×0.37μm)で画像処理され、各粒子像の輪郭抽出を行い、粒子像の投影面積Sや周囲長L等が計測される。
【0103】
次に、上記面積Sと周囲長Lを用いて円相当径と円形度を求める。円相当径とは、粒子像の投影面積と同じ面積を持つ円の直径のことであり、円形度Cは、円相当径から求めた円の周囲長を粒子投影像の周囲長で割った値として定義され、次式で算出される。
円形度C=2×(π×S)1/2/L
粒子像が円形の時に円形度は1になり、粒子像の外周の凹凸の程度が大きくなればなるほど円形度は小さい値になる。各粒子の円形度を算出後、円形度0.200〜1.000の範囲を800分割し、得られた円形度の相加平均値を算出し、その値を平均円形度とする。
【0104】
<粒子径の求め方>
トナーの重量平均粒径(D4)および個数平均粒径(D1)は、以下のようにして算出する。測定装置としては、100μmのアパーチャーチューブを備えた細孔電気抵抗法による精密粒度分布測定装置「コールター・カウンター Multisizer 3」(登録商標、ベックマン・コールター社製)を用いる。測定条件の設定及び測定データの解析は、付属の専用ソフト「ベックマン・コールター Multisizer 3 Version3.51」(ベックマン・コールター社製)を用いる。尚、測定は実効測定チャンネル数2万5千チャンネルで行なう。
【0105】
測定に使用する電解水溶液は、特級塩化ナトリウムをイオン交換水に溶解して濃度が約1質量%となるようにしたもの、例えば、「ISOTON II」(ベックマン・コールター社製)が使用できる。
【0106】
尚、測定、解析を行なう前に、以下のように前記専用ソフトの設定を行なった。
【0107】
前記専用ソフトの「標準測定方法(SOM)を変更」画面において、コントロールモードの総カウント数を50000粒子に設定し、測定回数を1回、Kd値は「標準粒子10.0μm」(ベックマン・コールター社製)を用いて得られた値を設定する。「閾値/ノイズレベルの測定ボタン」を押すことで、閾値とノイズレベルを自動設定する。また、カレントを1600μAに、ゲインを2に、電解液をISOTON IIに設定し、「測定後のアパーチャーチューブのフラッシュ」にチェックを入れる。
【0108】
前記専用ソフトの「パルスから粒径への変換設定」画面において、ビン間隔を対数粒径に、粒径ビンを256粒径ビンに、粒径範囲を2μmから60μmまでに設定する。
【0109】
具体的な測定法は以下の通りである。
(1)Multisizer 3専用のガラス製250ml丸底ビーカーに前記電解水溶液約200mlを入れ、サンプルスタンドにセットし、スターラーロッドの撹拌を反時計回りで24回転/秒にて行なう。そして、専用ソフトの「アパーチャーのフラッシュ」機能により、アパーチャーチューブ内の汚れと気泡を除去しておく。
(2)ガラス製の100ml平底ビーカーに前記電解水溶液約30mlを入れる。この中に分散剤として「コンタミノンN」(非イオン界面活性剤、陰イオン界面活性剤、有機ビルダーからなるpH7の精密測定器洗浄用中性洗剤の10質量%水溶液、和光純薬工業社製)をイオン交換水で約3質量倍に希釈した希釈液を約0.3ml加える。
(3)発振周波数50kHzの発振器2個を位相を180度ずらした状態で内蔵し、電気的出力120Wの超音波分散器「Ultrasonic Dispension System Tetora150」(日科機バイオス社製)を準備する。超音波分散器の水槽内に約3.3lのイオン交換水を入れ、この水槽中にコンタミノンNを約2ml添加する。
(4)前記(2)のビーカーを前記超音波分散器のビーカー固定穴にセットし、超音波分散器を作動させる。そして、ビーカー内の電解水溶液の液面の共振状態が最大となるようにビーカーの高さ位置を調整する。
(5)前記(4)のビーカー内の電解水溶液に超音波を照射した状態で、トナー約10mgを少量ずつ前記電解水溶液に添加し、分散させる。そして、さらに60秒間超音波分散処理を継続する。尚、超音波分散にあたっては、水槽の水温が10℃以上40℃以下となる様に適宜調節する。
(6)サンプルスタンド内に設置した前記(1)の丸底ビーカーに、ピペットを用いてトナーを分散した前記(5)の電解質水溶液を滴下し、測定濃度が約5%となるように調整する。そして、測定粒子数が50000個になるまで測定を行なう。
(7)測定データを装置付属の前記専用ソフトにて解析を行ない、重量平均粒径(D4)および個数平均粒径(D1)を算出する。尚、前記専用ソフトでグラフ/体積%と設定したときの、「分析/体積統計値(算術平均)」画面の「平均径」が重量平均粒径(D4)である。また、前記専用ソフトでグラフ/個数%と設定したときの、「分析/個数統計値(算術平均)」画面の「平均径」が個数平均粒径(D1)である。本発明でのトナー粒子径は、上記重量平均径(D4)を用いた。
【0110】
本実施例の説明では、現像スリーブ16は、実施例4の実施態様2を用いて説明する。
【0111】
図15は、本実施例の効果を示す図であり、円形度0.970のものを用いている。
【0112】
円形度が、0.970以上では、現像コントラスト値(V−Vl)が100Vと低コントラストにおいても、濃度がほぼフラット領域であり、現像効率の著しい向上が認められた。
【0113】
実施例1乃至4と同様にスリーブゴースト、耐久濃度の評価を行なうともに、現像後のかぶり及び転写残トナーの濃度測定を行った。結果を表5に示す。かぶり濃度及び転写残濃度ともに、前述のマクベス反射濃度計(RD918:マクベス社製を用いて評価を行った。
【0114】
【表5】
【0115】
上記結果から、トナーの球形度が0.97である方が、転写残トナーが少なくなる。
【0116】
また、本実施例では、非接触現像装置に適用した例を示したが、接触現像装置においても同様に、かぶりの低減及び転写残トナーの低減効果を得た。
【0117】
(実施例6)
本実施例は、露光手段が複数個の発光部を一方向に沿って配列した長尺状のプリントヘッドを備えている。さらに、本実施例では、像担持体の専用のクリーニング手段を持たず、現像装置で現像と同時に残留したトナーを回収するいわゆるクリーナレスの画像形成装置である。
【0118】
本実施例では、ネガ帯電性のトナーを用い、像担持体1には、帯電装置2が具備されており、露光装置3は、波長780nmの波長を持つ600dpiの空間密度からなる発光部を一方向に沿って配列したLEDプリントヘッド3を用いている。現像装置10には、今までの実施例で説明した弾性材からなる現像スリーブ16を有し、現像剤規制部材201は、りん青銅からなる金属製ブレードを用いている。
【0119】
クリーナレスの装置においては、転写残トナーが残った際には、像担持体の回転にしたがって、帯電装置2をすり抜け、露光装置3まで転写残トナーが到達する。そして、転写残トナーは、現像装置10まで到達し、電界により現像剤担持体に回収される。
【0120】
上記のクリーナーレスプロセスにおいて、像担持体上の転写残トナーが飛散し露光装置3へ付着する、露光装置3へのトナー付着が問題となっている。特に、露光装置3としてLEDを用いた場合には露光光量が小さいため、露光装置と像担持体とを近接配置する必要がある。この場合は、特に露光装置へのトナー付着が発生しやすい。露光装置としてLEDを用いた場合、像担持体とLEDの最近接距離が10〜5000μm程度になる。
【0121】
そこで、本発明者らは、トナー比電荷量の分布をシャープにし、逆極性に帯電したトナー(ポジ化トナー)或いはネガに帯電しているが電化量の小さいトナー(弱帯電トナー)の発生を防止することを考えた。このような、ポジ化トナーや弱帯電トナーが、転写装置において転写できずに転写残トナーとなりやすいからである。
【0122】
さらに、高転写率とする事で、転写部における転写残トナーの減少をすることが可能となる。高転写率にする方法として、像担持体1に対するトナーの離形成をよくする方法がある。該離型性の指標として像担持体の純水に対する接触角を用いた。
【0123】
転写残トナーが少なくなれば、像担持体上の転写残トナー飛散も少なくなり、露光装置へのトナー付着も抑制することができる。
【0124】
図16に、像担持体1の純水に対する接触角と、像担持体上に現像を行なった後の現像剤の比電荷量と、転写残のトナーの濃度との関係を示す。
【0125】
像担持体上に現像を行なった後の現像剤の比電荷量は、温度27℃で、相対湿度70%RHの環境下における像担持体上の比電荷量の絶対値をファラデーケージにて測定している。
【0126】
クリーナーレスにおいては、転写残トナー濃度が0.02以下であれば、クリーナーレスシステムにおいて、実用上問題の無いレベルに達していることを別途確認しており、
転写残トナー濃度を0.02以下を許容限界と定めて、同図に見るような結果を導出した。
【0127】
すなわち、現像剤担持体上のトナー比電荷量が絶対値で50μC/g〜90μC/gであり、且つ、像担持体1の水に対しての接触角が90°〜150°であれば、許容限界をクリア出来ることが出来る。
【0128】
なお、トナー比電荷量の絶対値が90μC/gよりも大きいと、転写率が下がる傾向にあるため、比電荷量は90μC/g以下が好ましい。
【0129】
トナーの比電荷量を適当な値に制御することで、転写残トナーの発生を抑制するような場合において、本実施例のように、凹部をもうけた現像スリーブ16を用いると、トナーの比電荷量の分布がシャープにすることが可能である。そのため、比電荷量が好ましくないようなトナーを減少させることができ、転写残トナーの発生を抑制する効果を効率よく達成することができる。
【0130】
上記実施例で説明した以外の変形例の一部を説明する。
【0131】
露光装置3の光学系と静電潜像保持体との距離を0.01mm以上、1mm以下に設定することも可能である。露光装置3と像担持体1との距離が小さい時は、光量が弱い露光装置においても露光が可能となる。一方、露光装置へのトナー付着が問題となるが、本発明の現像剤担持体及び現像装置を用いれば、実施例6で説明したように、光学汚れの発生を軽減することが可能である。特に、露光装置3が、像担持体1に対して下方に配置されているような場合は、像担持体から飛翔したトナーが重力により露光装置3に落下し、露光装置3にトナーが付着しやすい。しかし、上記実施例で説明したような現像スリーブ16を用いてトナーの比電荷量分布をシャープにしておくことにより、転写残トナーを少なくする。転写残トナーが少なくなれば、トナー飛散をしてしまうようなトナーも少なくなるので露光装置3にトナーが付着するのを抑制することが可能となる。
【0132】
これらのトナーを用いる事により、飛散トナー自体の量が少なくなるとともに、露光装置3へのトナー汚れが発生しない。
【0133】
露光装置の光学系にマイクロレンズを用いる事も可能である。また、露光装置に、面発光レーザ(VCSEL)を用いることも可能である。面発光レーザーを用いることにより、よりWDの許容度の高い露光装置3を作ることが可能である。
【符号の説明】
【0134】
1 像担持体
3 露光装置
4 1成分現像剤
6 現像剤スリーブ
9 現像バイアス電源
10 現像装置
20 弾性ブレード
【特許請求の範囲】
【請求項1】
像担持体上に形成された潜像を現像する一成分現像剤を担持する現像剤担持体において、前記現像剤担持体の表面は抵抗値が102〜108Ω・cmであり、前記現像剤担持体は表面に複数の凹部を備え、前記凹部は、単位面積当たりに2250個/mm2〜12254個/mm2、存在しており、
前記凹部の開口の長径は8〜20μmで、前記凹部の深さは、2〜5μmで、前記長径の寸法公差が0.5μm以内で、前記深さの寸法公差が0.5μm以内であることを特徴とする現像剤担持体。
【請求項2】
前記凹部は三次元的に角が無いことを特徴とする請求項1に記載の現像剤担持体
【請求項3】
前記凹部の内部には、凸状の微細構造を有することを特徴とする請求項1または2に記載の現像剤担持体。
【請求項4】
前記現像剤担持体の硬度がSRIS0101硬度(アスカーC硬度)5以上、JIS・K−6301で測定した硬度30以下であることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の現像剤担持体。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかに記載の現像剤担持体と、前記現像剤担持体の上の現像剤の量を規制する現像剤規制部材とを備えることを特徴とする現像装置。
【請求項6】
平均粒径が4〜6μmのトナーを用いることを特徴とする請求項5に記載の現像装置。
【請求項7】
円形度が1.00〜0.970のトナーを用いることを特徴とする請求項4又は5に記載の現像装置。
【請求項8】
帯電された後に露光されることで潜像を形成される感光体と、前記感光体を露光する露光装置と、前記感光体の潜像を現像剤で現像する現像装置を備える画像形成装置であって、前記露光装置と静電潜像保持体との最近接距離が10〜5000μmであり、前記現像装置が請求項4乃至7のいずれか1項に記載の現像装置であることを特徴とする画像形成装置。
【請求項9】
帯電された後に露光されることで潜像を形成される感光体と、複数の発光部を前記感光体の長手方向に沿って配列し感光体を露光する露光装置と、前記感光体の潜像を現像剤で現像すると同時に前記感光体の上に残留した現像剤を回収する現像装置と、現像された現像剤像を被転写体に転写する転写装置と、を備える画像形成装置において、
温度27℃、湿度70%RHの環境下での該感光体に現像剤像が形成された後の現像剤の電荷量の絶対値は50μC/g〜90μC/gであり、前記感光体の純水に対する接触角が90°〜150°であり、前記現像装置は請求項4乃至8のいずれか1項に記載の現像装置であることを特徴とする画像形成装置。
【請求項1】
像担持体上に形成された潜像を現像する一成分現像剤を担持する現像剤担持体において、前記現像剤担持体の表面は抵抗値が102〜108Ω・cmであり、前記現像剤担持体は表面に複数の凹部を備え、前記凹部は、単位面積当たりに2250個/mm2〜12254個/mm2、存在しており、
前記凹部の開口の長径は8〜20μmで、前記凹部の深さは、2〜5μmで、前記長径の寸法公差が0.5μm以内で、前記深さの寸法公差が0.5μm以内であることを特徴とする現像剤担持体。
【請求項2】
前記凹部は三次元的に角が無いことを特徴とする請求項1に記載の現像剤担持体
【請求項3】
前記凹部の内部には、凸状の微細構造を有することを特徴とする請求項1または2に記載の現像剤担持体。
【請求項4】
前記現像剤担持体の硬度がSRIS0101硬度(アスカーC硬度)5以上、JIS・K−6301で測定した硬度30以下であることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の現像剤担持体。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかに記載の現像剤担持体と、前記現像剤担持体の上の現像剤の量を規制する現像剤規制部材とを備えることを特徴とする現像装置。
【請求項6】
平均粒径が4〜6μmのトナーを用いることを特徴とする請求項5に記載の現像装置。
【請求項7】
円形度が1.00〜0.970のトナーを用いることを特徴とする請求項4又は5に記載の現像装置。
【請求項8】
帯電された後に露光されることで潜像を形成される感光体と、前記感光体を露光する露光装置と、前記感光体の潜像を現像剤で現像する現像装置を備える画像形成装置であって、前記露光装置と静電潜像保持体との最近接距離が10〜5000μmであり、前記現像装置が請求項4乃至7のいずれか1項に記載の現像装置であることを特徴とする画像形成装置。
【請求項9】
帯電された後に露光されることで潜像を形成される感光体と、複数の発光部を前記感光体の長手方向に沿って配列し感光体を露光する露光装置と、前記感光体の潜像を現像剤で現像すると同時に前記感光体の上に残留した現像剤を回収する現像装置と、現像された現像剤像を被転写体に転写する転写装置と、を備える画像形成装置において、
温度27℃、湿度70%RHの環境下での該感光体に現像剤像が形成された後の現像剤の電荷量の絶対値は50μC/g〜90μC/gであり、前記感光体の純水に対する接触角が90°〜150°であり、前記現像装置は請求項4乃至8のいずれか1項に記載の現像装置であることを特徴とする画像形成装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2011−118240(P2011−118240A)
【公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−276832(P2009−276832)
【出願日】平成21年12月4日(2009.12.4)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年12月4日(2009.12.4)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
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