説明

現像剤担持体の製造方法

【課題】現像剤に対して均一な帯電を付与できる現像剤担持体を低コストで製造するための方法を提供する。
【解決手段】基体10の表面に樹脂被覆層を有している現像剤担持体の製造方法であって、導電性粒子と樹脂とを含む粉体塗料3を基体の周面に静電塗工する工程と、該表面を加熱して該基体に塗工した該粉体塗料を溶融させて該樹脂被覆層を該表面に形成する工程とを有し、該粉体塗料は、体積平均粒径が3〜15μmであり、体積平均粒径分布における20μm以上の粒子の存在割合が1.0%以下であり、変動係数が35.0%以下であり、かつ、体積抵抗値が1×10Ω・cm以下であり、さらに該粉体塗料は、温度150℃における溶融粘度が0.1〜10.0Pa・sの範囲にある樹脂を該粉体塗料の全樹脂に対し90wt%以上含有しており、該工程は、該樹脂被覆層の表面に該導電性粒子が露出されるように該粉体塗料を溶融させる工程を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は現像剤担持体の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、被覆層表面の仕事関数測定曲線の傾きγが10cps/eV以上とする現像担持部材が開示されている。この仕事関数測定曲線の傾きγは、表面のグラファイト粒子の露出程度に対応しており、研磨処理方法を変えることにより制御できることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平05−066680号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、本発明者らが特許文献1に係る発明を検討したところ、製造面(工程の増加)或いは性能面(耐久性)において未だ改善の余地があった。従って本発明の目的は、トナーを迅速に摩擦帯電させることのできる現像剤担持体を低コストで製造することのできる方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る現像剤担持体の製造方法は、基体の表面に樹脂被覆層を有している現像剤担持体の製造方法であって、(1)導電性粒子と樹脂とを含む粉体塗料を基体に静電塗工する工程と、(2)該表面を加熱して該基体に塗工した該粉体塗料を溶融させて該樹脂被覆層を該表面に形成する工程とを有し、
該粉体塗料は、体積平均粒径が3〜15μmであり、体積平均粒径分布における20μm以上の粒子の存在割合が1.0%以下であり、変動係数が35.0%以下であり、かつ、体積抵抗値が1×10Ω・cm以下であり、さらに該粉体塗料は、温度150℃における溶融粘度が0.1〜10.0Pa・sの範囲にある樹脂を該粉体塗料の全樹脂に対し90wt%以上含有しており、該工程(2)は、該樹脂被覆層の表面に該導電性粒子が露出されるように該粉体塗料を溶融させる工程を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、高品位な電子写真画像を形成することのできる現像剤担持体を低コストで製造できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明に係る粉体塗料を構成する樹脂粒子の断面を示す概念図である。
【図2】本実施形態に係わる静電塗工装置の概略構成図である。
【図3】本発明に係る現像剤担持体の製造方法の説明図である。
【図4】Rsk値が正、負の場合における表面形状の模式図である。
【図5】本発明に係る現像装置の説明図である。
【図6】本発明に係る現像装置の他の態様の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、好ましい実施の形態を挙げて本発明について記述する。
【0009】
<粉体塗料>
本発明に係る粉体塗料は樹脂と導電性粒子とを含む。図1に本発明に係る粉体塗料の概念図を示す。図1において1は導電性粒子であり、2が樹脂である。図1(a)は微粒径の導電性粒子が樹脂粒子の表面に露出した状態、及び樹脂粒子内部に均一に分散している構成を有する。図1(b)は図1(a)と比較してやや大きめの導電性粒子が樹脂粒子中で海島構造を有している。図1(c)は樹脂粒子表面に導電性粒子が物理的或いは化学的に固着した構成を示す。本発明に係る粉体塗料は、その体積平均粒径が3〜15μmであり、体積平均粒径分布における20μm以上の粒子の存在割合が1.0%以下であり、かつ、変動係数が35.0%以下である。かかる粉体塗料は、粉体塗料としての粒度分布が揃っているため、現像剤担持体の基体に静電塗工を行った際、塗料粒子が均一な付着状態を形成できる。具体的には、体積平均粒径を3μm以上とすることにより、粉体塗料中の粒子間における静電的な凝集が生じ難くなる。そのため、静電塗工ガンからの粉体塗料が一次粒子の状態で供給され、表面形状の均一な樹脂被覆層を形成できる。また、体積平均粒径を15μm以下に抑えることにより、表面形状を細密化でき、その不均一性を抑制することが可能となる。また、塗工時の表面粗さの過上昇や樹脂被覆層の膜厚の均一性が増す、といった効果も得られる。
【0010】
次に、粉体塗料の体積平均粒径分布における20μm以上の粒子の存在割合を1.0%以下であるということは、粉体塗料中に粗粒が少ないことを意味する。これにより、静電塗工後の樹脂被覆層表面に不規則な突起が形成されることを抑制できる。その結果、不規則な突起に起因する画像不良やそこを起点としたトナー融着等の発生を抑えられる。また、粉体塗料の体積平均粒径分布において変動係数を35.0%以下とすることで、粉体塗料の粒度分布が揃い、静電塗工時のバイアス印加による粉体塗料粒子の荷電分布の均一性が更に増す。その結果、塗膜表面における塗料粒子の付着状態を細密化させることができ、基体表面に均一な樹脂被覆層の形成が可能となる。本発明では、少なくとも150℃における溶融粘度が0.1〜10.0Pa・s、特には1.0〜10.0Pa・sである樹脂を粉体塗料が含む全樹脂に対して90wt%以上含有する。このような樹脂を含有した粉体塗料を基体に静電塗工した後、基体上に付着した粉体塗料粒子を加熱処理することで、粒子が基体上で溶融状態になった場合でも樹脂の溶融粘度が高いため、樹脂被覆層表面への樹脂成分の流失を抑制できる。これにより、元々樹脂粒子表面に露出して存在する導電性粒子が樹脂成分によって覆われにくくなり、導電性粒子の初期露出性の損失を抑えることができる。また、樹脂の溶融粘度が高いために粉体塗料粒子形状が保持され、それによって樹脂被覆層表面に凹凸が形成される。特に、粉体塗料の粒度分布を上述のようにすることで、樹脂被覆層表面の凹凸形状を適切に制御することができる。
【0011】
樹脂としては熱可塑性樹脂および熱硬化性樹脂のいずれでも用いることができる。具体的な樹脂として、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、アクリル樹脂及びフェノール樹脂などが挙げられる。また、これらの混合物や共重合体を使用してもよい。また、加熱により溶融、流動する樹脂に硬化剤を配合したものを粉体塗料の基材としてもよい。この場合、溶融、流動する樹脂の軟化温度は70〜130℃が好ましい。更に、導電性粒子の樹脂中での分散性を向上させるために分散剤を添加してもよい。エポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノール類のグリシジルエーテル型固形エポキシ樹脂と、硬化剤としてイミダゾール類、ジシアンジアミド類または酸無水とが混合されたものを挙げられる。中でも、保存安定性と反応性とのバランスから、イミダゾール類が好適である。エポキシ樹脂成分およびポリエステル樹脂成分が組合わされた例としては、ビスフェノール類のグリシジルエーテル型固形エポキシ樹脂と、硬化剤としてカルボキシル基を含有するポリエステル樹脂とが混合されたものを挙げられる。ウレタン樹脂としては、水酸基を含有するポリエステル樹脂と、硬化剤としてイソシアネート類とが混合されたものを挙げられる。ポリエステル樹脂としては、カルボキシル基を含有するポリエステル樹脂と、硬化剤としてグリシジルイソシアネート類とが混合されたものを挙げられる。ポリエステル樹脂成分およびエポキシ樹脂成分が組合わされた例としては、カルボキシル基を含有するポリエステル樹脂と、硬化剤としてイソシアネート類とが混合されたものを挙げられる。ポリエステル樹脂およびアクリル樹脂が組合わされた例として、水酸基およびカルボキシル基を含有するポリエステル樹脂と、硬化剤としてグリシジル基を含有するアクリル樹脂とが混合されたものを挙げられる。アクリル樹脂としては、グリシジル基を含有するアクリル樹脂と、硬化剤として2塩基酸とが混合されたものを挙げられる。これら硬化剤の添加量としては、0.1〜5.0部の範囲であることが好ましく、この範囲とすることにより、樹脂被覆層表面への樹脂成分の過度の流失を抑制することができ、樹脂成分による黒鉛粒子の被覆を抑制することが可能となる。
【0012】
<静電塗工装置>
本発明に用いられる静電塗工装置について説明する。図1は本実施形態に係わる静電塗工装置の概略構成図である。4は摩擦帯電部材用粉体塗料3を収容するホッパーである。ホッパー4内の摩擦帯電部材用粉体塗料3は、コンプレッサ5aから供給される塗料インジェクションエア、及びコンプレッサ5bから供給される吐出(搬送)エアによって、配管6を通って静電塗工ガン7へ搬送される。このうち塗料インジェクションエアは、ホッパー4内からの摩擦帯電部材用粉体塗料3の送り出しに供している。また、吐出(搬送)エアによって、配管6内での摩擦帯電部材用粉体塗料3の滞留防止及び静電塗工ガン7からの吐出時の摩擦帯電部材用粉体塗料3の解砕を行なう。なお、上記塗料インジェクションエア量及び吐出(搬送)エア量によって静電塗工ガン7へ搬送される粉体塗料3の量を規定することができる。装置全体に供給される全エア量(コンプレッサ5a及びコンプレッサ5bから供給されるエア量の総和)は20m/hour〜80m/hourが好ましい。塗工するサンプルの表面積、塗工膜厚、或いは塗工スピードにもよるが、塗料インジェクションエア量は全エア量の1%〜50%、吐出(搬送)エア量は、99%〜50%の範囲であれば、ほぼ均一に塗工を実施することができる。また、ホッパー4はアルミニウム製又はポリプロピレン等の樹脂製のものが使用できるが、内面は粉体塗料3が付着し難いように、テフロンコート或いは鏡面加工等の処理を施してあるものが好ましい。静電塗工ガン7へ搬送された粉体塗料3は、電源ユニット8より直流バイアスが印加された放電電極を具備した先端ノズル9よりスリーブ基体10表面に向かって吐出されることによって塗工が行なわれる。
【0013】
スリーブ基体10は、両端にマスキング冶具11(スリーブ基体表面との導通を確保するため、アルミニウム等の金属製であることが好ましい)を施す。次いで、スリーブ基体10を、両端を回転可能なように支えながら回転台に直立させる。そして、円筒管を一定速度で回転させた状態でスリーブ基体10と静電塗工ガン7の先端ノズル9との距離を一定に保ち、静電塗工ガン7を一定速度で上下に移動させつつ粉体塗料3を噴射させて塗工する。この時の放電電極への印加バイアスは、電圧が絶対値で1kV〜100kV、電流が10μA〜60μAの範囲で設定すれば良い。印加される電圧値、電流値を上記の範囲内とすることにより、粉体塗料3のスリーブ基体10への付着効率が良好となる。また、先端ノズル9とスリーブ基体10の間でバイアスのリークが生じ難い為、塗工不良の発生を抑えられる。また、スリーブ基体10の回転速度および塗工速度は特に限定されないが、目安としては、各々100〜1000rpm、1〜100mm/sである。以上説明したような静電塗工を実施した後、スリーブ基体10を装置より取り外し、乾燥機等の高温環境下にてスリーブ基体10表面に塗工された摩擦帯電部材用粉体塗料3を溶融/硬化させる。その後冷却工程を経ることで、摩擦帯電部材用粉体塗料3からなる樹脂被覆層を基体表面に有した現像剤担持体を得られる。ここで、成膜化の際の乾燥機内の温度は130℃〜170℃の条件下で行なうことが好ましい。130℃以上とすることで、樹脂被覆層の硬化及び樹脂の溶融による成膜化が十分に進行し、得られた樹脂被覆層は十分な強度を得ることができる。また170℃以下とすることで、樹脂の粘度の過度な低下による樹脂の被覆層表面への流出を抑制でき、黒鉛粒子の露出性を損なうことなく成膜化することができる。また、粉体塗料の粒子による凹凸が保持され、それによる凹凸表面を有する樹脂被覆層を得られる。
【0014】
成膜化の際に高温乾燥下での保持時間は10分〜30分の条件下で行なうことが好ましい。10分以上とすることで、樹脂の溶融による成膜化が進行し基体との十分な密着性を得ることができる。また、30分以下とすることにより、樹脂の溶融状態による表面平滑化を抑え、粒子形状による凹凸形状を保持することが可能となる。本発明に係る現像剤担持体は、粉体の形状自体で所望の表面粗さを発現する。すなわち、図3(a)のように粒度分布の揃った細かい粒子を基体表面に付着させ、その後加熱溶融し成膜することで、図3(b)のようにその表面が粉体の形状履歴に応じた凹凸が均一に構成される。その時のスリーブ表面形状は、凹凸の平均間隔Sm値が小さく、表面粗さの相対性を示すスキューネスRsk値は0近辺を示すことが特徴である。スキューネスRskとは、平均線に対しての振幅分布曲線の相対性を示す値で、以下の式で表すことができる。
【0015】
【数1】

【0016】
図4(a)はRskが正の場合の表面形状模式図であり、上方向への凸形状となる。一方、Rskが負の場合には、図4(b)に示すように、下方向に凹な形状となり、表面には平らな部分も見られる。
【0017】
本発明の塗工方法では、塗料粒子の現像剤担持体基体への付着状態をより細密化させることで、Sm値が細かくなり、その粒径が揃っていることでイレギュラーな凹凸部分が無く、凹凸形状が均一に形成されるのが特徴である。具体的には、凹凸の平均間隔Sm値及びスキューネスRsk値は、本願で規定しているような、10μm≦Sm≦150μm、−0.5≦Rsk≦0.5の範囲にあることが好ましい。この範囲を外れた場合は、表面形状・表面組成が不均一な状態であることを示し、その結果トナー帯電性の不均一化を招きやすくなりブロッチ・スジ等画質が悪化する場合がある。
【0018】
また、本発明の製造方法により得られる現像剤担持体表面の樹脂被覆層のJIS算術平均粗さ(Ra)は、0.5μm〜1.5μmの範囲にあることが好ましい。0.5μm未満の場合には、現像剤の十分な搬送性が得られず、現像剤不足による画像濃度薄や、現像剤の過剰な帯電による飛び散りやブロッチなどが発生する場合がある。また、1.5μmより大きい場合には、現像剤への摩擦帯電付与が不均一となり、スジむらや、反転カブリ、帯電不足による画像濃度薄などが発生することがある。
【0019】
<導電性粒子>
粉体塗料中の導電性微粒子の具体例を以下に挙げる。金属(アルミニウム、銅、ニッケル、銀等)の微粉末、導電性金属酸化物微(酸化アンチモン、酸化インジウム、酸化スズ、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化モリブデン、チタン酸カリウム等)の粒子、各種カーボンファイバー、導電性カーボンブラック(ファーネスブラック、ランプブラック、サーマルブラック、アセチレンブラック、チャネルブラック)、黒鉛粒子、金属繊維等。また、これらの混合物でも良い。特に、導電性カーボンブラックおよび黒鉛粒子は、電気伝導性に優れ、高分子材料に充填され導電性を付与し、その添加量をコントロールすることのみにより摩擦帯電部材用粉体塗料の体積抵抗値を制御することができるため好ましい。ここで黒鉛粒子とは、有機物やカーボンブラック、スス、木炭、ピッチコークス、石油コークス等の無定形炭素を、無酸素下にて高温で焼成させて得られた粒子のことを指す。本発明で使用できる黒鉛粒子として、結晶性グラファイトが挙げられる。結晶性グラファイトは、導電性に優れることに加え、導電性被覆層に添加することにより表面潤滑性が増し、導電性被覆層の耐久性が向上するので好ましい。とりわけ、本発明においては、導電性物質として黒鉛化度p(002)が0.20〜0.95である黒鉛化粒子を使用することで、導電性樹脂被覆層の被膜強度アップや導電性樹脂被覆層表面の潤滑性アップを図れることから好ましい。この黒鉛化粒子は、特開2003−323041公報に記載されている。
【0020】
本発明において、導電性粒子の体積平均粒径は0.5〜5.0μmであることが好ましい。体積平均粒径がこの数値範囲内にあることにより、樹脂被覆層を形成した際に表面に均一な粗さを付与できると共に、帯電性能を高められる。粉体塗料作成時に樹脂粒子と黒鉛粒子との密着性が良好となり、樹脂被覆層を形成した場合に黒鉛粒子の樹脂被覆層からの脱離を抑えられる。また、樹脂被覆層からの黒鉛粒子の脱落をより確実に抑制するためには、黒鉛粒子の体積平均粒径を樹脂粒子の体積平均粒径よりも小さくすることが好ましい。
【0021】
このような導電性粒子は、樹脂被覆層表面の露出度が高い程トナーへの帯電付与を適切に行なうことが可能となり、その結果、スリーブゴーストやドット再現性等の現像特性が向上する。本発明のような静電塗工法によって粉体塗料が塗工されたスリーブ基体は、導電性粒子が表面に存在したままで樹脂が溶解するため、成膜後の樹脂被覆層表面には導電性粒子が露出した状態を維持されやすい。特に、前述したような値の溶融粘度を持つ樹脂を、粉体塗料粒子中の樹脂成分として使用することで、樹脂被覆層表面への樹脂成分の流失を抑制でき、樹脂成分により導電性粒子が覆われにくくなり、導電性粒子の初期露出性の損失を防ぐことが可能となる。
【0022】
このような粉体塗料中に占める導電性粒子の含有率は、10〜40wt%であることが好ましい。これにより、トナーがチャージアップし難く、スリーブゴーストの発生を抑制できる。また、導電性粒子の脱落や樹脂被覆層の剥れや摩耗等を抑制できる。本発明では、上述した材料を添加することで現像剤担持体の被覆層の体積抵抗を調整するが、その適切な値としては、1×10Ω・cm以下である。体積抵抗値をこの範囲内とすることで、チャージアップが発生し難く、トナーに適切な電荷を与えることができる。そのため、ブロッチ・ゴーストの悪化や濃度低下を抑えられる。その他、成膜後の樹脂被覆層の帯電付与能をコントロールするために、摩擦帯電部材用粉体塗料中に荷電制御剤を添加しても良い。負荷電性に制御するものとしては、例えば有機金属錯体、キレート化合物が有効であり、モノアゾ金属錯体、アセチルアセトン金属錯体、芳香族ハイドロキシカルボン酸、芳香族ダイカルボン酸系の金属錯体がある。他には、芳香族ハイドロキシカルボン酸、芳香族モノおよびポリカルボン酸およびその金属塩、無水物、エステル類、ビスフェノール等のフェノール誘導体類などがある。正帯電させるための物質としては、ニグロシンおよび脂肪酸金属塩等による変性物、トリブチルベンジルアンモニウム−1−ヒドロキシ−4−ナフトスルフォン酸塩、テトラブチルアンモニウムテトラフルオロボレート等の四級アンモニウム塩、およびこれらの類似体であるホスホニウム塩等のオニウム塩およびこれらのレーキ顔料(レーキ化剤としては、燐タングステン酸、燐モリブデン酸、燐タングステンモリブデン酸、タンニン酸、ラウリン酸、没食子酸、フェリシアン化物、フェロシアン化物など);高級脂肪酸の金属塩;ジブチルスズオキサイド、ジオクチルスズオキサイド、ジシクロヘキシルスズオキサイド等のジオルガノスズオキサイド;ジブチルスズボレート、ジオクチルスズボレート、ジシクロヘキシルスズボレート等のジオルガノスズボレート類;グアニジン化合物;イミダゾール化合物などである。上記の荷電制御剤は、粉体塗料製造時に微粒子の形で添加することが好ましい。
【0023】
<固体潤滑剤>
本発明に係る粉体塗料には、成膜後の樹脂被覆層表面へのトナーの付着をより軽減化するため、固体潤滑剤を混合させてもよい。固体潤滑剤の例を以下に挙げる。二硫化モリブデン、窒化硼素、フッ化グラファイト、銀−セレンニオブ、塩化カルシウム−グラファイト、滑石等。該固体潤滑剤は、粉体塗料の製造時に微粒子の形で添加することが好ましい。
【0024】
<粉体塗料の製造>
粉体塗料は、結着樹脂、黒鉛粒子及びその他の構成材料を混合機により十分混合した後、熱混練機を用いて良く混練し、冷却固化後、粉砕、分級、必要に応じて表面形状調整等の表面処理を行なうことにより製造できる。このときに用い得る装置の例を以下に挙げる。混合機としては、ヘンシェルミキサー(三井鉱山社製);スーパーミキサー(カワタ社製);リボコーン(大川原製作所社製)等。混練機としては、KRCニーダー(栗本鉄工所社製);ブス・コ・ニーダー(Buss社製)等。粉砕機としては、カウンタージェットミル、(ホソカワミクロン社製)等。分級機としては、クラッシール、マイクロンクラッシファイアー、スペディッククラシファイアー(セイシン企業社製);エルボージェット(日鉄鉱業社製)等。中でもエルボージェット等の多分割分級機を用いることがより好ましい。
【0025】
粗粒などをふるい分けるために用いられる篩い装置としては、ウルトラソニック(晃栄産業社製)等。これらの方法で得られた粉体塗料を構成する樹脂粒子は、前記図1の(a)や(b)の構成をとることが多い。
【0026】
また、粉体塗料の製造法として、前記の方法で製造された粉体塗料(樹脂粒子)と黒鉛粒子を乾式混合することで、粉体塗料(樹脂粒子)の表面近傍に黒鉛粒子を付着させる方法を用いてもよい。この方法は、前記図1の(c)で示したように、樹脂粒子の表面に効率的に黒鉛粒子を存在させられるため好ましい。このときに使用できる乾式混合機としては、先述したヘンシェルミキサー等の混合機のほか、メカノフージョンシステム(ホソカワミクロン社製)やハイブリダイゼーションシステム(奈良機械製作所製)等を用い得る。後者の乾式混合機は、高速回転する羽根により塗料を構成する樹脂粒子と黒鉛粒子をケーシングの内側に遠心力により押しつけ、圧縮力や摩擦力により塗料粒子に機械的衝撃力を加える装置である。
【0027】
(「ヘンシェルミキサー」「クラッシール」「ハイブリダイゼーションシステム」は登録商標)
<現像装置>
本発明に係る現像装置について説明する。磁性一成分系現像剤(トナー)を用いた現像装置の断面を示した図5(a)において、公知のプロセスにより形成された静電潜像を担持する静電潜像担持体、例えば、感光ドラム501は、矢印B方向に回転する。現像スリーブ508は、現像容器503に供給された磁性トナー粒子を有する磁性一成分現像剤を担持して、矢印A方向に回転することによって、現像スリーブ508と感光ドラム501とが対向している現像領域Dに現像剤を搬送する。現像剤担持体510においては、磁性一成分現像剤を現像スリーブ508上に磁気的に吸引かつ保持するため、現像スリーブ508内に磁石(マグネットローラー)509が配置されている。なお、現像スリーブ508は、基体である金属円筒管506上に樹脂被覆層507が被覆形成されている。現像容器503内へ、現像剤補給容器(不図示)から現像剤供給部材(スクリューなど)512を経由して磁性一成分現像剤が送り込まれてくる。現像容器503は、第一室514と第二室515に分割されており、第一室514に送り込まれた磁性一成分現像剤は攪拌搬送部材505により現像容器503および仕切り部材504により形成される隙間を通過して第二室515に送られる。磁性一成分現像剤はマグネットローラー509による磁力の作用により現像スリーブ508上に担持される。第二室515中には現像剤が滞留するのを防止するための攪拌部材511が設けられている。磁性一成分現像剤は、磁性トナー粒子相互間および現像スリーブ508上の樹脂被覆層507との摩擦により,感光ドラム501上の静電潜像を現像することが可能な摩擦帯電電荷を得る。現像領域Dに搬送される現像剤の層厚を規制するための強磁性金属製の磁性規制ブレード(ドクターブレード)502が、現像スリーブ508の表面から約50μm〜500μmの間隙を有して現像スリーブ508に対向するように現像容器503に装着されている。マグネットローラー509の磁極N1からの磁力線が磁性規制ブレード502に集中することにより、現像スリーブ508上に磁性一成分現像剤の薄層が形成される。なお、この磁性規制ブレード502に替えて非磁性の規制ブレードを使用することもできる。
【0028】
現像スリーブ508上に形成される磁性一成分現像剤の薄層の厚みは、現像領域Dにおける現像スリーブ508と感光ドラム501との間の最小間隙よりも更に薄いものであることが好ましい。本発明に係る現像剤担持体は、以上の様な磁性一成分現像剤の薄層により静電潜像を現像する方式の現像装置、すなわち非接触型現像装置に組み込むのが特に有効である。また、現像領域Dにおいて、磁性現像剤層の厚みが現像スリーブ508と感光ドラム501との間の最小間隙以上の厚みである現像装置、いわゆる接触型現像装置にも使用することができる。なお、以下の説明では非接触型現像装置を例にとって行なう。
【0029】
現像スリーブ508に担持された磁性トナーを有する磁性一成分現像剤を飛翔させるため、現像スリーブ508にはバイアス手段としての現像バイアス電源513により現像バイアス電圧が印加される。この現像バイアス電圧として直流電圧を使用するときは、静電潜像の画像部(現像剤が付着して可視化される領域)の電位と背景部の電位との間の値の電圧を現像スリーブ508に印加するのが好ましい。現像された画像の濃度を高め、かつ階調性を向上させるためには、現像スリーブ508に交番バイアス電圧を印加し、現像領域Dに向きが交互に反転する振動電界を形成してもよい。この場合には、上記した現像画像部の電位と背景部の電位との中間の値を有する直流電圧成分を重畳した交番バイアス電圧を現像スリーブ508に印加するのが好ましい。図5(a)においては、現像スリーブ508上の磁性一成分現像剤の層厚を規制する現像剤層厚規制部材として、現像スリーブから離間されて配置された磁性ブレードの例を示した。この他、図5(b)に示すように、ゴム弾性又は金属弾性を有する弾性板からなる弾性規制ブレードを使用し、この弾性規制ブレード516を現像スリーブ508に対して、磁性一成分現像剤を介して接触あるいは圧接させてもよい。特にこの形態を有する系でも、耐摩耗性および帯電付与能の面で格段の効果を得ることができる。なお、現像スリーブ508に対する弾性規制ブレード516の当接圧力は、線圧5〜50g/cmであることが、磁性一成分現像剤の規制を安定化させ、磁性現像剤層の厚みを好適にさせることができる点で好ましい。非磁性一成分系現像剤を用いた現像装置の断面を示した図6において、公知のプロセスにより形成された静電潜像を担持する静電潜像担持体、例えば感光ドラム501は、矢印B方向に回転される。現像剤担持体510は、金属製円筒管(基体)(金属製円筒管)506とその表面に形成される導電性樹脂被覆層507から構成されている。非磁性一成分現像剤を用いているので基体金属製円筒管506の内部には磁石は内設されていない。基体506として金属製円筒管の替わりに円柱状部材を用いることもできる。現像容器503内には非磁性一成分現像剤517を撹拌搬送するための撹拌搬送部材511が設けられている。現像剤担持体510に現像剤517を供給し、かつ現像後の現像剤担持体510の表面に残存する現像剤517を剥ぎ取るための現像剤供給部材512が現像剤担持体510に当接している。現像剤供給部材512としては、樹脂、ゴム、スポンジのような弾性ローラ部材が好ましく、弾性ローラに代えてベルト部材またはブラシ部材を用いることもできる。現像剤供給部材として弾性ローラを用いる場合には、その回転方向は現像スリーブに対して適宜同方向若しくはカウンター方向を選択することができる。通常が、カウンター方向に回転することが、剥ぎ取り性及び供給性の点でより好ましい。
【0030】
<現像剤>
次に、本願実施例の現像装置で用いられる現像剤(トナー)について説明する。現像剤(トナー)は、重量平均粒径が4μm〜11μmであることが好ましい。このようなものを使用すれば、トナーの帯電量或いは画質及び画像濃度等がバランスのとれたものとなる。ここで、トナー粒子の粒径測定装置としては、コールターカウンターTA−II型、或いはコールターマルチサイザーII又はコールターマルチサイザーIII(いずれもべックマン・コールター社製)が挙げられる。電解液として1級塩化ナトリウムを用いて、約1%NaCl水溶液を調製するか、或いはISOTON−II(べックマン・コールター社製)を用いる。(「ISOTON」は登録商標)
測定方法としては、前記電解水溶液100ml〜150ml中に分散剤として、界面活性剤、好ましくはアルキルベンゼンスルホン酸塩を、0.1ml〜5ml加え、さらに測定試料を2mg〜20mg加える。試料を懸濁した電解液は、超音波分散器で約1分〜3分間分散処理を行い、前記測定装置により、アパーチャーとして100μmアパーチャーを用いて、測定試料の体積、個数を測定して体積分布と個数分布とを算出する。この結果より、体積分布から求めた重量基準の重量平均粒径(D4)(各チャンネルの中央値をチャンネル毎の代表値とする)を求める。チャンネルは、2.00μm〜2.52μm未満;2.52μm〜3.17μm未満;3.17μm〜4.00μm未満;4.00μm〜5.04μm未満;5.04μm〜6.35μm未満;6.35μm〜8.00μm未満;8.00μm〜10.08μm未満;10.08μm〜12.70μm未満;12.70μm〜16.00μm未満;16.00μm〜20.20μm未満;20.20μm〜25.40μm未満;25.40μm〜32.00μm未満;32.00μm〜40.30μm未満の計13チャンネルとする。
【0031】
現像剤(トナー)の結着樹脂としては、一般に公知の樹脂が使用可能であり、例えばビニル系樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂等が挙げられるが、この中でも特にビニル系樹脂、ポリエステル樹脂が好ましい。現像剤(トナー)には帯電特性を向上させる目的で、荷電制御剤をトナー粒子に配合(内添)、またはトナー粒子と混合(外添)して用いることができる。これは、荷電制御剤によって、現像システムに応じた最適の荷電量コントロールが可能となるためである。正の荷電制御剤の例を以下に挙げる。ニグロシン、トリアミノトリフェニルメタン系染料及び脂肪酸金属塩等による変性物;トリブチルベンジルアンモニウム−1−ヒドロキシ−4−ナフトスルフォン酸塩、テトラブチルアンモニウムテトラフルオロボレートなどの四級アンモニウム塩等。
【0032】
また負の荷電制御剤としては有機金属化合物、キレート化合物を用い得る。具体例としてはアルミニウムアセチルアセトナート、鉄(II)アセチルアセトナート、3,5−ジターシャリーブチルサリチル酸クロム等が挙げられる。特にアセチルアセトン金属錯体、モノアゾ金属錯体、ナフトエ酸あるいはサリチル酸系の金属錯体または塩が挙げられる。現像剤(トナー)が、磁性現像剤(トナー)の場合に用い得る磁性材料の例を以下に挙げる。マグネタイト、マグヘマイト、フェライト等の酸化鉄、及び他の金属酸化物を含む酸化鉄;Fe、Co、Niのような金属、これらの金属とAl、Co、Cu、Pb、Mg、Ni、Sn、Zn、Sb、Be、Bi、Cd、Ca、Mn、Se、Ti、WまたはVとの合金等。このような磁性材料に、着色剤としての役目を兼用させて使用してもよい。着色剤としては、任意の適当な顔料または染料が挙げられる。現像剤(トナー)には離型剤を使用することが好ましい。離型剤の例としては、低分子量ポリエチレン、低分子量ポリプロピレン、マイクロクリスタリンワックス、脂肪族炭化水素系ワックス、脂肪酸エステルを主成分とするワックス類等が挙げられる。現像剤(トナー)には、環境安定性、帯電安定性、現像性、流動性、保存性向上及びクリーニング性向上のために、シリカ微粉体、酸化チタン、アルミナ等の無機微粉体を外添すること、即ち現像剤表面近傍に存在していることが好ましい。特にこの中でも、シリカ微粉体が好ましい。更に、上記無機微粉体以外の外添剤を更に加えて用いても良い。例えば、ポリフッ化エチレン、ステアリン酸亜鉛、ポリフッ化ビニリデンの如き滑剤、中でもポリフッ化ビニリデン、或いは酸化セリウム、チタン酸ストロンチウム、ケイ酸ストロンチウム等の研磨剤がある。
【0033】
現像剤は以下の工程を経て製造される。結着樹脂、着色剤、磁性体、離型剤等を混合機で混合し、その後、熱混練機を用いて溶融して樹脂類を互いに相溶せしめる。その中に離型剤等を分散、又は溶解させ、冷却固化後、粉砕及び分級を行なってトナー粒子を得る。さらに、必要に応じて所望の添加剤をヘンシェルミキサー等の混合機により充分に混合し、現像剤(トナー)を得ることができる。このようなトナーは、球形化処理、表面平滑化処理を施して用いると転写性がより良好となるため好ましい。球形化、表面平滑化の方法としては、攪拌羽根又はブレード、及びライナー又はケーシングを有する装置を用いて、トナーを撹拌羽根等とライナー等との間の微小間隙を通過させ、その際の機械的な力によりトナーを球形化、平滑化する方法がある。他には、温水中にトナーを懸濁させ球形化する方法、熱気流中にトナーを曝し、球形化する方法等もある。また、球状のトナーを直接作る方法としては、水中にトナー結着樹脂となる単量体を主成分とする混合物を懸濁させ、重合してトナー化する方法がある。
【0034】
(実施例)
実施例を用いて本発明を更に詳しく説明する。以下の記載において、配合における部数は、特にことわらない限りすべて質量部である。まず、本発明に関わる諸物性値の測定方法について説明する。
【0035】
(1)摩擦帯電部材用粉体塗料及び黒鉛粒子の粒径
レーザー回折型粒度分布計のコールターLS−130型或いはLS−230型粒度分布計(ベックマン・コールター社製)を用いて測定した。測定方法としては、水系モジュールを用い、測定溶媒としてはイオン交換水を使用した。イオン交換水にて粒度分布計の測定系内を約5分間洗浄し、消泡剤として測定系内に亜硫酸ナトリウムを10mg〜25mg加えて、バックグラウンドファンクションを実行した。次にイオン交換水50ml中に界面活性剤3滴〜4滴を加え、更に測定試料を5mg〜25mg加えた。試料を懸濁した懸濁液は超音波分散器で1分間〜3分間分散処理を行なって試料液とする。前記測定装置の測定系内に試料液を徐々に加えて、装置の画面上のPIDSが45%〜55%になるように測定系内の試料濃度を調整して測定を行い、体積分布から算出した体積平均粒径を求めた。
【0036】
(2)摩擦帯電部材用粉体塗料の体積抵抗値
粉体測定システムMCP−PD41((株)ダイアインスツルメンツ製)を用いて、10MPa加圧下で実施した。なお、抵抗値の測定は、ロレスターGP又はハイレスターUP(共に三菱化学(株)製)を使用し、四探針法にて行なった。測定環境は、常温常湿度環境(23℃、50%RH;N/N)で行った。(「LORESTA\ロレスタ」「ハイレスター」は登録商標)
(3)現像剤担持体表面の樹脂被覆層の表面粗さパラメータ
樹脂被覆層表面の算術平均粗さRa、凹凸の平均山間隔平均Sm、スキューネスRskの測定は、JIS−B0601(2001)に基づき測定する。粗さ測定装置は、小坂研究所社製の「サーフコーダーSE−3500」(商品名)を用いた。測定条件はカットオフ値0.8mm、評価長さ4mm、送り速度0.5mm/sとした。測定は、周方向の回転角度が0度、120度及び240度の部分について、軸方向の中心および両端から50cmの計9箇所で行い、それらの算術平均値をRa、SmおよびRskの値とした。
【0037】
(4)樹脂の溶融粘度の測定
トナー粒子の溶融粘度測定は、高架式フローテスター(島津フローテスターCFT−500形:(株)島津製作所製)を用いて行なう。先ず加圧成形器を用いて成形した約1.5gの粉体塗料からなる試料を一定温度下でプランジャーにより98.0Nの荷重をかけ直径1mm、長さ1mmのノズルより押し出すようにし、これによりフローテスターのプランジャー降下量(流出速度)を測定する。この流出速度を各温度(100℃〜180℃の温度範囲を5℃間隔)で測定し、この値より見掛粘度η’を次式(I)により求め、この値を本発明の溶融粘度と定義する。
η’=TW’/DW’=πPR4/8LQ(Pa・s) (I)
式(I)中、TW’=PR/2L(N/m2)、DW’=4Q/πR3(sec−1)であり、
η’:見掛けの粘度(Pa・s)、
TW’:管壁の見掛けのずり応力(N/m2)、
DW’:管壁の見掛けのずり速度(sec−1)、
Q:流出速度(m/sec)、
P:押出圧力(N/m)、
R:ノズルの半径(m)、
L:ノズルの長さ(m)である。
【0038】
<粉体塗料M−1の製造例>
コールタールピッチから溶剤分別によりβ−レジンを抽出し、これを水素添加、重質化処理を行なった。次いでトルエンにより溶剤可溶分を除去してメソフェーズピッチを得た。得られたバルクメソフェーズピッチを微粉砕し、空気中において約800℃で酸化処理した後、窒素雰囲気下中にて2800℃で焼成し黒鉛化させ、更に分級して体積平均粒径2.6μmの黒鉛粒子(B−1)を得た。次に、下記表1−1の材料を、ヘンシェルミキサー(三井三池化工機(株)製)を用いて攪拌混合させた後、PCM混練機(池貝鉄工所社製)を用いて、温度100℃で混練した。
【0039】
【表1−1】

【0040】
得られた混練物を粗砕し、ターボミル(ターボ工業社製)にて微粉砕を実施後、エルボージェット(日鉄鉱業社製)により分級を行って体積平均粒径が8.4μmの樹脂粒子を得た。上記の樹脂粒子100部と黒鉛粒子(B−1)20部とをヘンシェルミキサーにて混合させることにより粉体塗料M−1を得た。
【0041】
<粉体塗料M−2の製造例>
粉体塗料M−1の製造例において、エルボージェット分級機による分級条件を変えて粉体塗料M−2を得た。
【0042】
<粉体塗料M−3の製造例>
粉体塗料M−1の製造例において、エルボージェット分級機による分級条件を変えて粉体塗料M−3を得た。
【0043】
<粉体塗料M−4の製造例>
粉体塗料M−1の製造例において、エルボージェット分級機による分級条件を変えて粉体塗料M−4を得た。
【0044】
<粉体塗料M−5の製造例>
粉体塗料M−1の製造例において、2部のカーボンブラック(BLACK PEARLS 2000:Cabot Corporation製)を内添粒子として更に加えた以外は粉体塗料M−1の製造例と同様にして粉体塗料M−5を得た。(「BLACK PEARLS」は登録商標)
<粉体塗料M−6の製造例>
粉体塗料M−1の製造例において、内添粒子としての黒鉛粒子B−1の添加量を33部とし、外添粒子としての黒鉛粒子の量も33部とした以外は粉体塗料M−1の製造例と同様にして粉体塗料M−6を得た。
【0045】
<粉体塗料M−7の製造例>
粉体塗料M−1の製造例において、内添粒子としての黒鉛粒子B−1の添加量を15部とし、黒鉛粒子を外添しなかった以外は粉体塗料M−1の製造例と同様にして粉体塗料M−7を得た。
【0046】
<粉体塗料M−8の製造例>
粉体塗料M−1の製造例においてフェノールノボラック型エポキシ樹脂Aを、150℃での溶融粘度が0.1Pa・sであるフェノールノボラック型エポキシ樹脂B(商品名:EPICLON HP7200、大日本インキ(株)製)に変えた。それ以外は粉体塗料M−1の製造例と同様にして粉体塗料M−8を得た。(「EPICLON」は登録商標)
<粉体塗料M−9の製造例>
粉体塗料の製造例1においポリエステル樹脂Aを、150℃での溶融粘度が9.8Pa・sであるポリエステル樹脂B(商品名:ユピカコートGV−820;日本ユピカ(株)製)に変えた。それ以外は粉体塗料M−1の製造例と同様にして粉体塗料M−9を得た。
【0047】
<粉体塗料M−10の製造例>
樹脂粒子の材料として下記表1−2の材料を用いた以外は粉体塗料M−1の製造例と同様にして粉体塗料M−10を得た。
【0048】
【表1−2】

【0049】
<粉体塗料M−11の製造例>
樹脂粒子の材料として下記表1−3の材料を用いた以外は粉体塗料M−1の製造例と同様にして粉体塗料M−10を得た。
【0050】
【表1−3】

【0051】
<粉体塗料M−12の製造例>
粉体塗料M−1の製造例においてエルボージェット分級機による分級条件を変えて粉体塗料M−12を得た。
【0052】
<粉体塗料M−13の製造例>
粉体塗料M−1の製造例において、黒鉛粒子B−1の製造時における粉砕及び分級条件を変更して、体積平均粒径が6.8μmの黒鉛粒子B−2を作製した。粉体塗料M−1の製造例において、内添した黒鉛粒子B−1および外添した黒鉛粒子B−1の各々を上記黒鉛粒子B−2に変え、更に、エルボージェット分級機による分級条件を変えて粉体塗料M−13を得た。
【0053】
<粉体塗料M−14の製造例>
粉体塗料M−1の製造例において、イミダゾール化合物の添加量を5部とした以外は粉体塗料M−1の製造例と同様にして粉体塗料M−14を得た。
【0054】
<粉体塗料M−15の製造例>
粉体塗料M−1の製造例において、黒鉛粒子B−1の製造時における粉砕及び分級条件を変更して体積平均粒径が1.7μmの黒鉛粒子B−3を作製した。粉体塗料M−1の製造例において、内添した黒鉛粒子B−1及び外添した黒鉛粒子B−1の各々を上記黒鉛粒子B−3に変え、イミダゾール化合物の量を0.5部に変えた。それら以外は粉体塗料M−1の製造例と同様にして粉体塗料M−15を得た。
【0055】
<粉体塗料M−16の製造例>
粉体塗料M−1の製造例において、黒鉛粒子B−1の製造時の粉砕及び分級条件を変更して体積平均粒径が11.0μmの黒鉛粒子B−4を作製した。粉体塗料M−15の製造例における内添した黒鉛粒子B−1および外添した黒鉛粒子B−1の各々を黒鉛粒子B−4に変え、エルボージェット分級機による分級条件を変えた以外は粉体塗料M−1の製造例と同様にして粉体塗料M−16を得た。
【0056】
<粉体塗料M−17の製造例>
粉体塗料M−1の製造例において、黒鉛粒子B−1の製造時の粉砕及び分級条件を変更して体積平均粒径が4.8μmの黒鉛粒子B−5を作製した。粉体塗料M−15の製造例における内添した黒鉛粒子B−1及び外添した黒鉛粒子B−1の各々を黒鉛粒子B−5に変え、また、エルボージェット分級機による分級条件を変えた以外は粉体塗料M−1の製造例と同様にいして粉体塗料M−17を得た。
【0057】
<粉体塗料M−18の製造例>
粉体塗料M−15の製造例においてイミダゾール化合物の添加量を0.2部とした以外は粉体塗料M−15の製造例と同様にして粉体塗料M−18を得た。
【0058】
<粉体塗料M−19の製造例>
粉体塗料M−1の製造例にて、黒鉛粒子B−1の製造時の粉砕及び分級条件を変更して体積平均粒径が0.3μmの黒鉛粒子B−6を作製した。粉体塗料M−1の製造例において、内添した黒鉛粒子B−1および外添した黒鉛粒子B−1の各々を黒鉛粒子B−6に変え、またエルボージェット分級機による分級条件を変えた以外は粉体塗料M−1の製造例と同様にして粉体塗料M−19を得た。
【0059】
<粉体塗料M−20の製造例>
粉体塗料M−15の製造例においてエルボージェット分級機による分級条件を変えた以外は粉体塗料M−15の製造例と同様にして粉体塗料M−20を得た。
【0060】
<粉体塗料N−1の製造例>
粉体塗料M−1の製造にて、黒鉛粒子B−1の製造時における粉砕及び分級条件を変更して、体積平均粒径が0.5μmの黒鉛粒子B−7を作製した。粉体塗料M−1の製造例において、内添した黒鉛粒子B−1および外添した黒鉛粒子B−1の各々を黒鉛粒子B−7に変えた以外は、粉体塗料M−1の製造例と同様にして粉体塗料N−1を得た。
【0061】
<粉体塗料N−2の製造例>
粉体塗料M−1の製造例にて黒鉛粒子B−1の製造時の粉砕及び分級条件を変更して体積平均粒径が11.0μmの黒鉛粒子B−8を作製した。粉体塗料M−1の製造例において、内添した黒鉛粒子B−1及び外添した黒鉛粒子B−1の各々を黒鉛粒子B−8に変えた以外は粉体塗料M−1の製造例と同様にして粉体塗料N−2を得た。
【0062】
<粉体塗料N−3の製造例>
粉体塗料M−1の製造例において黒鉛粒子B−1の添加量を7部とした以外は粉体塗料M−1の製造例と同様にして粉体塗料N−3を得た。
【0063】
<粉体塗料N−4の製造例>
粉体塗料M−1の製造例において、樹脂粒子の材料を下記表1−4に示したものに変えた以外は、粉体塗料M−1の製造例と同様にして粉体塗料N−4を得た。
【0064】
【表1−4】

【0065】
<粉体塗料N−5製造例>
粉体塗料M−1の製造例において、樹脂粒子の材料を下記表1−5に示したものに変えた以外は、粉体塗料M−1の製造例と同様にして粉体塗料N−5を得た。
【0066】
【表1−5】

【0067】
<粉体塗料N−6の製造例>
粉体塗料M−1の製造においてエルボージェット分級機による分級条件を変えた以外は粉体塗料M−1の製造例と同様にして粉体塗料N−6を得た。
【0068】
<粉体塗料N−7の製造例>
粉体塗料M−1の製造例においてエルボージェット分級機による分級条件を変えた以外は粉体塗料M−1の製造例と同様にして粉体塗料N−7を得た。
【0069】
<粉体塗料N−8の製造例>
粉体塗料M−1の製造例において、樹脂粒子の材料を下記表1−6に示したものに変えた以外は、粉体塗料M−1の製造例と同様にして粉体塗料N−8を得た。
【0070】
【表1−6】

【0071】
<粉体塗料N−9の製造例>
粉体塗料M−1の製造例において、樹脂粒子の材料を下記表1−7に示したものに変えた以外は、粉体塗料M−1の製造例と同様にして粉体塗料N−9を得た。
【0072】
【表1−7】

【0073】
<粉体塗料N−10の製造例>
粉体塗料M−15の製造例において内添した黒鉛粒子B−3の添加量を5部に変更した。それ以外は粉体塗料M−15の製造例と同様にしてN−10を得た。
【0074】
下記表2に、粉体塗料M−1〜M−20、及びN−1〜N―10に内添および外添された黒鉛粒子の種類と量、並びに内添された他の粒子の種類及び量をまとめた。更に、下記表3に粉体塗料M−1〜M−20、及びN−1〜N―10の体積平均粒径、体積平均分布における20μm以上の粒子の割合、変動係数および体積抵抗値をまとめた。
【0075】
【表2】

【0076】
【表3】

【0077】
<現像剤(トナー)の製造例>
下記表4−1に示した材料の混合物をポリビニルアルコール部分ケン化物0.8部を溶解した水180部を加え、激しく攪拌させて懸濁分散液とした。
【0078】
【表4−1】

【0079】
この懸濁分散液を、水40部を入れ窒素置換した反応器に入れ、反応温度85℃にて10時間懸濁重合した。反応終了後、ろ過、水洗し、脱水、乾燥工程を経てビニル系樹脂を得た。このビニル系樹脂100部に対して下記表4−2の材料を混合し、130℃に加熱した2軸混練押し出し機にて混練した。
【0080】
【表4−2】

【0081】
得られた混練物を冷却した後、ハンマーミルで粗粉砕し、さらに、ジェット気流を用いた微粉砕機を用いて微粉砕した後、熱球形化処理を行なった。熱球形化処理を行なった微粉砕粉を、コアンダ効果を利用した多分割分級装置で、超微粉および粗粉を同時に分級除去して、重量平均粒径(D4)が6.4μmであるトナー粒子を得た。このトナー粒子100部に対し、ヘキサメチルジシラザン処理を施した負帯電性疎水性シリカ微粉末(BET300m/g)1部とチタン酸ストロンチウム3部を加え、ヘンシェルミキサーにて混合し、負帯電性磁性一成分現像剤を得た。
【0082】
<実施例1>
図2に挙げた静電塗工装置を用いて、スリーブ基体表面に樹脂被覆層を有する現像剤担持体の製造を行なった。スリーブ基体10として外径12mm、表面の中心線平均粗さRaを0.3μmに研削加工したアルミニウム製の円筒管を用意した。図2のホッパー4中に前記の摩擦帯電部材用粉体塗料M−1を入れた。装置全体のエア供給量を45m/hourとし、コンプレッサ5aより5m/hourの塗料インジェクションエアと40m/hourの吐出(搬送)エアを供給し、静電塗工ガン7に粉体塗料M−1を搬送した。電源ユニット8より静電塗工ガン7にある先端ノズル9部の放電電極に対して直流バイアス(電圧:−40kV、電流:20μA)を印加し、スリーブ基体10の表面に粉体塗料M−1を塗工した。この時、先端ノズル9とスリーブ基体10表面の距離は80mm、塗工速度(静電塗工ガン7の移動速度)は20mm/s、スリーブ基体10の回転速度は600rpmで行なった。塗工終了後、スリーブサンプルを150℃に設定した恒温槽中に15分間放置させることで粉体塗料中の樹脂成分を溶融、硬化させ、その後、空冷して現像スリーブS−1を得た。
【0083】
<実施例2〜7、10、11、13、及び比較例1〜7>
粉体塗料M−2〜7、10、11、13、及びN−1〜7を塗工終了後、実施例1と同様にスリーブサンプルを150℃に設定した恒温槽中に15分間放置、現像剤担持体(現像スリーブ)S−2〜7、10、11、13、及びT−1〜7の製造した。
【0084】
<実施例8>
粉体塗料M−8を塗工終了後、スリーブサンプルを170℃に設定した恒温槽中に30分間放置させること以外は、現像剤担持体の製造例1と同様にして現像剤担持体(現像スリーブ)S−8の製造した。
【0085】
<実施例9、12、14>
粉体塗料M−9、12、14を塗工終了後、スリーブサンプルを130℃に設定した恒温槽中に10分間放置させること以外は、現像剤担持体の製造例1と同様にして、現像剤担持体(現像スリーブ)S−9、12、14を製造した。
【0086】
<比較例8>
粉体塗料M−2を塗工終了後、スリーブサンプルを180℃に設定した恒温槽中に50分間放置させること以外は、現像剤担持体の製造例1と同様にして、現像剤担持体(現像スリーブ)T−8を製造した。
【0087】
<評価項目>
現像スリーブの表面粗さを測定した。その結果を表5に示す。また、上記現像剤担持体について下記(A1)〜(A6)の評価試験に供した。評価環境は、温度15℃、湿度10%RH(以降「L/L」と略)の環境下、温度23℃、湿度50%RH(以降「N/N」と略)の環境下、及び温度30℃、湿度85%RH(以降「H/H」と略)環境の各々について行った。現像剤担持体の評価に際して、市販のレーザプリンタ(商品名:レーザージェット3030、ヒューレット・パッカード社製)用のカートリッジを用いた。現像剤担持体を上記のカートリッジに装着し、上記で調製した負帯電性一成分現像剤を充填した。このカートリッジを上記のレーザプリンタに装着して下記の評価を行った。評価結果を表6に示す。
【0088】
(A1)画像濃度
画出し試験において初期と耐久評価終了時にベタ画像を出力し、その濃度を測定することにより評価した。画像濃度は「マクベス反射濃度計 RD918」(マクベス社製)を用いて、原稿濃度が0.00の白地部分の画像に対する相対濃度を測定した。
【0089】
(A2)ゴースト
プリンターの出力画像(複写機の場合には画像チャート)において、画像先端のスリーブ1周分に相当する領域を白地にベタ黒の正方形および円形を等間隔で配置し、それ以外の部分をハーフトーンとしたものを用いた。そして、ハーフトーン上に象形画像のゴーストがどのように出現するかを下記の基準に基づいてランク付けした。尚、ポジゴーストとは、ハーフトーンより画像濃度が高いゴーストを示す。また、ネガゴーストはハーフトーンよりも画像濃度の低いゴーストを示す。
【0090】
A:濃淡差が全く見られない。
【0091】
B:見る角度によってわずかな濃淡差が確認できる程度。
【0092】
C:ゴーストが目視で明確に確認される。
【0093】
D:ゴーストがはっきり濃淡として現れる。反射濃度計で濃度差が測定可能。NGレベル。
【0094】
(A3) ブロッチ
ベタ黒画像及びハーフトーン画像を出力し、それぞれの画像においてトナーの過剰帯電により発生しやすいブロッチ(斑点状、さざ波状もしくは絨毯状)画像を目視により観察し、評価結果を下記の指標で示した。
【0095】
A:画像上、スリーブ上(トナーがコーティングされている状態を観察)ともにブロッチが全くみられない
B:スリーブ上には、僅かにブロッチが確認されるが、画像上には影響が出ないレベル。
【0096】
C:ハーフトーン画像上の一部に僅かにブロッチ画像が現れるレベル。実用レベル下限。
【0097】
D:ハーフトーン画像上もしくはベタ黒画像上の一部に明確なブロッチが現れる。実用レベル不可。
【0098】
(A4)画質
耐久評価の初期及び耐久最後の出力画像をルーペまたは目視により観察し、下記基準により評価した。
【0099】
A:倍率が10倍のルーペで見ても飛び散りのない鮮明な画像である。
【0100】
B:目視する限り鮮明な画像である。
【0101】
C:若干飛び散りが見られるものの実用上問題ない。
【0102】
D:飛び散り以外に文字のカスレが目立つ。NGレベル。
【0103】
(A5)画像欠陥及びブレード傷
温度23℃、湿度50%RHの常温/常湿環境(N/N)下にて、初期のベタ黒画像及びハーフトーン画像を出力した。各々の画像においてスリーブ上の不規則な突起やそれによるブレード傷により発生しやすいスジ状画像欠陥、スリーブ周期での斑点状画像欠陥を目視により観察し、以下の基準で評価した。
【0104】
A:画像欠陥無し
B:ハーフトーン画像にてスリーブ周期での斑点状画像欠陥が極僅か見える。ベタ黒画像では認識できない。
【0105】
C:ベタ黒画像にてスリーブ周期での斑点状画像欠陥が見られる。
【0106】
D:画像上にスジ画像として現れ、ブレードを観察したところスジ発生部位に対応して傷が発生している。
【0107】
(A6)濃度一様性
温度23℃、湿度50%RHの常温/常湿環境(N/N)下で、現像剤担持体の長手方向の濃度一様性を、初期のハーフトーン画像(2ドット3スペースの横線繰り返し)の反射濃度を反射濃度計(商品名:RD918、 マクベス社製)により測定した。最高値と最低値の差を表4−2に示した。尚、ピッチムラ部分は評価の対象から外した。
【0108】
【表5】

【0109】
【表6−1】

【0110】
【表6−2】

【0111】
表6−1〜6−2に示したように、各実施例については現像剤担持体表面の凹凸が均一に構成され、トナーに対して均一な帯電付与が可能となった。すなわち、各環境において十分な画像濃度の電子写真画像を安定して得る事ができ、ブロッチ、ゴースト、画質についても評価基準に照らしてレベルC以上を達成でき、また、画像欠陥のレベルはB以上で濃度一様性も良好、といった顕著な向上効果が認められた。これに対して、比較例1は塗料粒子の粒径が細かい為、静電塗工時に粒子同士が静電凝集を起こしやすくなり、静電塗工ガンからの塗料粒子が一次粒子の状態で供給する事が難しく、均一な樹脂被覆層を形成できなかった。よって、濃度一様性が劣る、斑点状欠陥画像が発生する、という結果となった。また、塗料粒子の粒径が細かいことによって、樹脂層形成後の表面粗さが低いためにH/Hでの画像濃度・ゴーストが劣る結果となった。比較例2においては、塗料粒子の粒径が大きく20μm以上の粒子の存在割合が多いことにより、樹脂被覆層の均一性が不十分となり、濃度一様性が劣る、スジ状の欠陥画像が発生する、という結果となった。比較例3は、塗料粒子の抵抗が高くチャージアップ現象が発生しやすくなり、L/L、N/N評価において画像特性が劣る結果となった。比較例4は、樹脂の溶融粘度が低いために、静電塗工後の加熱処理時に粒子形状が保持されにくくなり、所望の凹凸形状が形成できず表面粗さが低下した。よって、トナーの搬送力が低下することから、画像濃度が劣る結果となった。比較例5は、樹脂の溶融粘度が高過ぎて、加熱時に塗料粒子の軟化・溶融が不十分で一部に高い凸部分が残存したために、スジ状の欠陥画像が発生する、という結果となった。比較例6は、塗料粒子の粒度分布がおける変動係数が高いために、静電塗工時の粉体粒子の荷電分布均一性が低下した。それにより、塗料粒子の基体表面への付着状態にムラができ、均一な樹脂被覆層を形成できず、濃度一様性が劣る、スジ状の欠陥画像が発生する、という結果となった。比較例7は、20μm以上の粒子の存在割合が多いことにより、樹脂被覆層の均一性が不十分となり、濃度一様性が劣る、スジ状の欠陥画像が発生する、という結果となった。比較例8は、高温で長時間加熱処理したことから粒子形状が保持されにくくなり、所望の凹凸形状が形成できず表面粗さが低下した。よって、トナーの搬送力が低下することから、画像濃度が劣る結果となった。
【0112】
<実施例15>
現像剤担持体基体として、外径12.0mmφ、算術平均粗さRa0.2μmの研削加工したアルミニウム製円筒管を準備した。実施例1と同様の方法にて図2に示した静電塗工装置を用いて粉体塗料M−15を塗工した。この時、先端ノズル9とスリーブ基体10表面の距離は80mm、塗工速度(静電塗工ガン7の移動速度)は15mm/s、スリーブ基体10の回転速度は600rpmとした。塗工終了後、150℃に設定した恒温槽中で20分間静置して粉体塗料中の樹脂成分を溶融、硬化させ、その後、空冷して現像スリーブS−15を作製した。
【0113】
<実施例16、17、19、比較例8〜10>
粉体塗料M−16、17、19及びN−8〜10を塗工終了後、実施例15と同様にスリーブサンプルを150℃に設定した恒温槽中に15分間放置して現像スリーブS−16、17、19及びT−8〜10を製造した。
【0114】
<実施例18>
粉体塗料M−18を塗工終了後、スリーブサンプルを130℃に設定した恒温槽中に10分間放置させること以外は、現像剤担持体の製造例15と同様にして現像スリーブS−18を製造した。
【0115】
<実施例20>
粉体塗料M−20を塗工終了後、スリーブサンプルを170℃に設定した恒温槽中に30分間放置させること以外は、現像剤担持体の製造例15と同様にして現像スリーブS−20の製造した。
【0116】
<比較例11>
粉体塗料M−18を塗工終了後、スリーブサンプルを120℃に設定した恒温槽中に5分間放置させること以外は、現像剤担持体の製造例15と同様にして現像スリーブT−11の製造した。
【0117】
<評価項目>
上記現像スリーブS−15〜S−20、T‐8〜T−11について表面粗さを測定した結果を表7に示す。
また、上記各現像スリーブは、市販のレーザプリンタ(キヤノン(株)製 LBP5000)の純正シアンカートリッジにそれぞれ組み込みんだ。この現像装置を上記のレーザプリンタに装着し、1枚/10秒の間欠モードで2000枚の画出し(耐久)を行った。なお、この現像装置は、概略、図5(c)に挙げたようなものである。評価結果を表8に示す。
【0118】
(B1)画像濃度
通常の複写機用普通紙(75g/m)の転写材を用いて、画出し試験において初期と耐久評価終了時にベタ画像を出力し、その濃度を測定することにより評価した。尚、画像濃度は「マクベス反射濃度計 RD918」(マクベス社製)を用いて、原稿濃度が0.00の白地部分の画像に対する相対濃度を測定した。
【0119】
(B2) カブリ
「REFLECTMETER MODEL TC−6DS」(東京電色社製)により測定したプリントアウト画像の白地部分の白色度と転写紙の白色度の差から、カブリ濃度(%)を算出し、耐久評価終了時の画像カブリを評価した。フィルターは、シアンの場合はアンバーライトフィルターを用いた。
【0120】
(B3)画質
耐久評価の初期及び耐久最後の出力画像をルーペまたは目視により観察し、下記基準により評価した。
【0121】
A:倍率が10倍のルーペで見ても飛び散りのない鮮明な画像である。
【0122】
B:目視する限り鮮明な画像である。
【0123】
C:若干飛び散りが見られるものの実用上問題ない。
【0124】
D:飛び散り以外に文字のカスレが目立つ。NGレベル。
【0125】
(B4)画像欠陥及びブレード傷
(N/N)環境下にて、ベタ黒画像及びハーフトーン画像を出力し、それぞれの画像においてスリーブ上の不規則な突起やそれによるブレード傷により発生しやすい、スジ状画像欠陥・スリーブ周期での斑点状画像欠陥を目視により観察した。下記の基準に基づき評価した。
【0126】
A:画像欠陥無し
B:ハーフトーン画像にてスリーブ周期での斑点状画像欠陥が極僅か見える。ベタ黒画像では認識できない。
【0127】
C:ベタ黒画像にてスリーブ周期での斑点状画像欠陥が見られる。
【0128】
D:画像上にスジ画像として現れ、ブレードを観察したところスジ発生部位に対応して傷が発生している。
【0129】
(B5)濃度一様性
(N/N)環境下にて、現像剤担持体長手方向の濃度一様性について、ハーフトーン画像(2ドット3スペースの横線繰り返し)を出した時の反射濃度の「最高値―最低値」を反射濃度計RD918(マクベス製)により測定し評価した。ピッチムラ部分は評価の対象から外した。
【0130】
【表7】

【0131】
【表8】

【0132】
表8の結果からも明らかなように、各実施例については、現像剤担持体表面の凹凸が均一に構成され、トナーに対して均一な帯電付与が可能となった。その結果、各環境において、十分な画像濃度の電子写真画像を安定して得る事ができ、カブリ評価、濃度一様性も良好な結果であり、画質についてもレベルC以上を、画像欠陥のレベルはB以上、といった顕著な向上効果が認められた。これに対して、比較例8は塗料粒子の粒径が細かい為、静電塗工時に粒子同士が静電凝集を起こしやすくなり、静電塗工ガンからの塗料粒子が一次粒子の状態で供給する事が難しく、均一な樹脂被覆層を形成できなかった。よって、濃度一様性が劣る、斑点状欠陥画像が発生する、という結果となった。また、塗料粒子の粒径が細かいことによって、樹脂層形成後の表面粗さが低いためにH/Hでの画像濃度が劣る結果となった。比較例9は、樹脂の溶融粘度が高過ぎて、加熱時に塗料粒子の軟化・溶融が不十分で一部に高い凸部分が残存したために、スジ状の欠陥画像が発生する、という結果となった。比較例10は、塗料粒子の抵抗が高くチャージアップ現象が発生しやすくなり、L/L、N/N評価において画像特性が劣る結果となった。比較例11は、低温で短時間の加熱処理であるため、塗料粒子の軟化・溶融が不十分であり一部に高い凸部分が残存したために、スジ状の欠陥画像が発生する、という結果となった。
【符号の説明】
【0133】
1 黒鉛粒子
2 樹脂成分
3 粉体塗料
4 ホッパー
5 コンプレッサ
6 配管
7 静電塗工ガン
8 電源ユニット
9 先端ノズル
10 スリーブ基体
11 マスキング冶具

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基体の表面に樹脂被覆層を有している現像剤担持体の製造方法であって、
(1)導電性粒子と樹脂とを含む粉体塗料を基体に静電塗工する工程と、
(2)該表面を加熱して該基体に塗工した該粉体塗料を溶融させて該樹脂被覆層を該表面に形成する工程とを有し、
該粉体塗料は、体積平均粒径が3〜15μmであり、体積平均粒径分布における20μm以上の粒子の存在割合が1.0%以下であり、変動係数が35.0%以下であり、かつ、体積抵抗値が1×10Ω・cm以下であり、
さらに該粉体塗料は、温度150℃における溶融粘度が0.1〜10.0Pa・sの範囲にある樹脂を該粉体塗料の全樹脂に対し90wt%以上含有しており、
該工程(2)は、該樹脂被覆層の表面に該導電性粒子が露出されるように該粉体塗料を溶融させる工程を含むことを特徴とする現像剤担持体の製造方法。
【請求項2】
前記導電性粒子が黒鉛粒子である請求項1に記載の現像剤担持体の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−118280(P2011−118280A)
【公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−277563(P2009−277563)
【出願日】平成21年12月7日(2009.12.7)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】