説明

現像方法及び現像装置

【課題】電子写真式画像形成装置におけるトナー搬送性に優れた現像方法及び現像装置を提供する。
【解決手段】ゴムローラ鏡面仕上げ機による表面研磨加工後の現像ローラ表面の研磨状態をレーザ顕微鏡で測定し、面積比S/S0 (凹凸部表面積S÷測定平面面積S0 )を算出する。参考のため十点平均粗さRzも算出する。これらの試作現像ローラを画像形成装置に配設し実験室環境で画像濃度1.7%、2枚間欠で印字テストを行う。印字結果をX−Raite(外国製色差計)でベタ追従性濃度AVEを測定し、目視によるベタ追従性を○△×で評価すると、Rzとは関係なく面積比S/S0 が2.37以上でベタ追従性が良くなることが判明した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真式画像形成装置における現像方法及び現像装置に係わり、更に詳しくはトナー搬送性に優れた現像方法及び現像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電子式画像形成装置において、現像剤のトナーを現像ローラに供給し、規制部材により、上記現像ローラにトナーの薄層を形成すると共にバイアス電圧を印加して、そのトナーの薄層を、静電潜像保持体に形成されている静電潜像に転移させ、静電潜像にトナー像を顕在化させて現像を行う非磁性一成分トナーによる現像法が知られている。
【0003】
このような電子式画像形成装置に用いられる現像ローラにおいては、トナーの搬送量を上げるため、ゴムローラ鏡面仕上げ機などの研磨機を用いて、ローラ表面を加工する技術は従来から知られている。そして、現像ローラは、その表面状態(研磨状態)の差が印刷画像に多大な影響を及ぼしていた。
【0004】
そして、現像ローラの表面粗さを、Rz(十点平均粗さ)で1.0〜15μmとした導電性ゴムローラの表面に10〜60μmの導電性外装皮膜を設けることで、表面粗さを長期に渡って好適な状態で維持でき、かつ外層厚さが薄いにも拘わらず耐用寿命の長い現像ローラが提案されている。(例えば、特許文献1参照。)
【特許文献1】特開平7−084443号公報(「要約」、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、現像ローラに十分なトナー搬送性を付与するためには、現像ローラの表面粗さを増大させればよいと考えられる。そこで、物性の表面粗さを示す基準として上述したようにRzがあるが、上記の特許文献1の技術のように、現像ローラの表面粗さをRzだけで規定して、この現像ローラに非磁性1成分のトナーを搬送させるタイプの電子写真方式においてベタ画像印字で実験してみると、トナーを十二分に搬送させることができないことが判明した。
【0006】
すなわち、実験では、ベタ印刷画像の現像ローラ1周目以降のベタ濃度が低下するという「ベタ追従性不良」という不具合が生じ、画像品質を低下させるという問題が生じた。したがって、現像ローラ表面の適正な粗さを規定するには、物性パラメータがRzだけでは適正に管理できない。
【0007】
本発明の課題は、上記従来の実情に鑑み、電子写真式画像形成装置におけるトナー搬送性に優れた現像方法及び現像装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
以下に、本発明に係わる現像方法及び現像装置の構成を述べる。
先ず、第1の発明の現像方法は、静電潜像を保持する潜像担持体と、非磁性トナーを表面に担持するトナー担持体とを、現像部において接触させて上記静電潜像を顕像化する非磁性一成分トナーによる現像を行う現像方法において、上記トナー担持体を表面に凹凸を持ったゴム状ローラで構成し、該ローラ周面の単位面積当たりの凹凸部表面積が2.37以上であるように構成される。
【0009】
次に、第2の発明の現像装置は、静電潜像を保持する潜像担持体と、非磁性トナーを表面に担持するトナー担持体とを、現像部において接触させて上記静電潜像を顕像化する非磁性一成分トナーによる現像を行う現像装置であって、上記トナー担持体は、表面に凹凸を持ったゴム状ローラから成り、該ローラ周面の単位面積当たりの凹凸部表面積が2.37以上であるように構成される。
【0010】
上記トナー担持体は、例えば、NBR(アクリロニトリル・ブタジエン・ゴム)から成り、また、例えば、その円周面をフイルム研磨装置を用いて加工されたものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、電子写真方式の画像形成装置における非磁性一成分トナーを用いる現像法及び現像装置において、現像ローラを表面に凹凸を持ったゴム状ローラで構成し、研磨機によりローラ周面の単位面積当たりの凹凸部表面積が2.37以上であるように構成するので、物性パラメータのRzの値に係り無く、トナー搬送性の良好な現像方法及び現像装置の提供が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照しながら説明する。
(実施形態1)
図1は、本発明の実施形態1におけるカラー画像形成装置(以下、単にプリンタという)の内部構成を説明する断面図である。同図に示すように、プリンタ1は、画像形成部2、両面印刷用搬送ユニット3、及び給紙部4で構成されている。上記の画像形成部2は、4個の画像形成ユニット5(5−1、5−2、5−3、5−4)を多段式に並設した構成からなる。
【0013】
上記4個の画像形成ユニット5のうち用紙搬送方向上流側の3個の画像形成ユニット5−1、5−2及び5−3は、それぞれ減法混色の三原色であるマゼンタ(M)、シアン(C)、イエロー(Y)の色トナーによるモノカラー画像を形成し、画像形成ユニット5−4は、主として文字等のクロ(K)トナーによるモノクロ画像を形成する。
【0014】
上記の各画像形成ユニット5は、それぞれドラムユニットDUとトナーユニットTUで構成され、現像容器に収納された現像剤(の色)を除き同じ構成である。したがって、以下イエロー(Y)用の画像形成ユニット5−3を例にしてその構成を説明する。
【0015】
ドラムユニットDUには、感光体ドラム6が配設され、この感光体ドラム6の周面近傍を取り巻いて、感光体ドラム6と共にドラムユニットDUを構成しているクリーナ7及び帯電ローラ8が配置されている。また、感光体ドラム6の上部周面に近接して本体装置のフレームに支持された印字ヘッド9が配置され、感光体ドラム6の下部周面に接して搬送ベルト10とこの搬送ベルト10を挟んで転写器11が配置されている。
【0016】
トナーユニットTUは、現像装置であり、現像容器12及び現像ローラ13が配置されている。上記の現像容器12は、内部にトナーを収容し、下部側面の開口部には上記の現像ローラ13を支持している。上記のトナーには、トナーの凝集を防止するために酸化アルミニウムの微粒子が外添剤として添加されている。酸化アルミニウムは、トナーの弱いマイナス性の電位に対して更に弱いマイナス性の電位を持ち、トナーに対しては相対的に正極性の電位となってトナーに付着している。
【0017】
上記の感光体ドラム6は、図の時計回り方向に回転し、クリーナ7により周面を清掃され、帯電ローラ8からの電荷付与により、感光体ドラム6の周面が一様に帯電する。次に、印字ヘッド9からの印字情報に基づく光書き込みにより、感光体ドラム6の周面に静電潜像が形成される。そして、この静電潜像は、現像ローラ13による現像処理によって、現像容器12に収納したイエロー(Y)色のトナーによりトナー像化される。
【0018】
このようにして感光体ドラム6の周面に形成されるトナー像は、感光体ドラム6の回転に伴われて、感光体ドラム6と転写器11とが対向する転写部に到達する。転写部に達したトナー像は、感光体ドラム6の直下を用紙搬送方向上流側から下流側へ移動する用紙上に転写される。
【0019】
上記の用紙は、給紙コロ14の一回転によって給紙カセット15から搬出されて、ガイドローラ対16、案内路17、給送ローラ対18を介し、待機ローラ対19に給送される。あるいは、開成された装着部カバー20に装着されたMPFトレイ21上から給紙コロ22によって給送される。
【0020】
待機ローラ対19は、用紙の印字開始位置が用紙搬送方向最上流の画像形成ユニット5−1の感光体ドラム6のトナー像の先端に一致するタイミングで搬送ベルト10上に給送する。
【0021】
搬送ベルト10は、駆動ローラ23と従動ローラ24に掛け渡されて、駆動ローラ23により駆動され、図の反時計回り方向に循環移動する。用紙は、この循環移動する搬送ベルト10の上面に静電的に吸着されて搬送され、画像形成ユニット5−1の転写部でマゼンタ(M)のトナー像を転写され、画像形成ユニット5−2の転写部でシアン(C)のトナー像を転写され、画像形成ユニット5−3の転写部でイエロー(Y)のトナー像を転写され、そして、画像形成ユニット5−4の転写部でクロ(K)のトナー像を転写される。
【0022】
このように4色のトナー像を重ねて転写された用紙は、定着装置である定着ユニット25に搬入される。定着ユニット25は、熱ローラ26、圧ローラ27、オイル塗布ローラ28等で構成され、用紙を上述の熱ローラ26と圧ローラ27間に挟持して搬送しながら、トナー像を溶融し紙面に圧着して定着する。また、オイル塗布ローラ28は、熱ローラ26周面にトナー離型性オイルを塗布するとともに熱ローラ26上に残留するトナーを除去する機能を備えている。
【0023】
このように、定着ユニット25によってトナー像を定着された用紙は、切換板29が図の実線で示すように上に回動しているときは、搬出ローラ対31によって側面排出口32から画像形成面を上にして機外に排出され、切換板29が図の破線で示すように下に回動しているときは、搬送ローラ対33により上に案内され排紙ローラ34によって画像形成面を下にして排紙部35に排出される。
【0024】
また、両面印刷用搬送ユニット3は、装置本体に対して着脱自在に構成され、本例のプリンタ1によって両面印刷を行う際装着するユニットであり、内部に複数の搬送ローラ36a〜36eが配設されている。
【0025】
両面印刷の場合には、上記切換板29によって一旦上方に用紙が送られ、例えば用紙の後端が搬送ローラ対33に達した時、用紙の搬送を停止し、更に用紙を逆方向に搬送する。この制御によって、用紙は点線で示す位置に設定された切換板29の左側を下方に搬送され、両面印刷用搬送ユニット3の用紙搬送路に搬入され、搬送ローラ36a〜36eによって用紙が送られ、案内路17、及び給送ローラ対18を介して待機ローラ対19に達し、前述と同様トナー像と一致するタイミングで転写部に送られ、トナー像が用紙の裏面に転写される。
【0026】
尚、駆動ローラ23の近傍に設けられている濃度センサ37は、例えば近赤外線正反射型センサから成り、LEDにより形成されている発光部とLED光量を検知する受光素子からなる受光部より構成されている。
【0027】
この濃度センサ37は、レジストパッチとして搬送ベルト10の周面中央部に直接形成されるトナー像のトナー濃度と印字位置とを測定するためと、搬送ベルト10の周面端部に直接形成されるトナー像の白バンドチェック用パッチを測定するために配置されている。
【0028】
図2はプリンタ1の外観斜視図である。同図に示すようにプリンタ1は、装置本体上部38と装置本体下部39によって構成され、装置本体上部38には、上面手前に操作パネル41が配設され、上面中央には図1にも示した印字用紙の排紙部35が形成されている。操作パネル41は、複数のキーが配設されたキー操作部41aと、液晶ディスプレイ等の表示部41bとで構成されている。また排紙部35には、図1にも示した排紙ローラ対34の回転によって、トナー画像を定着された印刷用紙が出力されて順次積載される。
【0029】
また、装置本体下部39には、同図矢印方向cに開閉可能なフロントカバー42が設けられている。上記フロントカバー42は例えばジャム処理時やメンテナンス時に開放される。
【0030】
図3は、上記プリンタ1の制御装置の回路構成を示すブロック図である。同図に示すように、制御装置43は、インターフェイスコントローラ(図では単にI/Fとして図示)44と、このインターフェイスコントローラ44に接続するプリンタコントローラ45(PR_CONT)を備えている。インターフェイスコントローラ44には不図示のホストコンピュータが接続され、このホストコンピュータからはデータ(印字情報)が入力される。
【0031】
また、プリンタコントローラ45にはプリンタ印字部46が接続されている。そして、インターフェイスコントローラ44とプリンタコントローラ45にはCPU(central processing unit)47が接続され、CPU47はROM(read only memory)48に格納されているシステムプログラムに従ってインターフェイスコントローラ44とプリンタコントローラ45を制御する。
【0032】
インターフェイスコントローラ44はホストコンピュータから出力される印字情報に従って、印字用紙の1頁分に対応するパターンデータを作成する。このとき、インターフェイスコントローラローラ44で作成するパターンデータは、例えばイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、クロ(K)の各色に対応するデータであり、これら色毎のパターンデータはインターフェイスコントローラローラ44内に配設されるフレームメモリ49の上記色毎の各記憶領域49M、49C、49Y、49Kに記憶される。また、これらのパターンデータはCPU47の制御によりプリンタコントローラ45に出力され、マゼンタ(M)、シアン(C)、イエロー(Y)、クロ(K)の各色毎にプリンタ印字部46に出力される。
【0033】
尚、CPU47には操作パネル41が接続され、外部からの各種操作信号をCPU47に出力する。また、EEPROM(electrically erasable programable ROM)51は例えば不図示の給紙センサによって検出された用紙サイズ等を記憶する。
【0034】
続いて、上記構成におけるプリンタ1の基本動作を再び図1〜図3を用いて説明する。先ず、本体装置1に電源が投入され、使用する用紙の枚数、印字モード、その他の指定がキー入力あるいは接続するホスト機器からの信号として入力されると印字(印刷)を開始する。
【0035】
すなわち、不図示の駆動機構により図1の給紙コロ14が一回転して、給紙カセット15に載置収容されている用紙を、ガイドローラ対16、案内路17、給送ローラ対18を介して待機ローラ対19へ給送する。
【0036】
待機ローラ対19は、回転を一時停止して、一対のローラで形成される挟持部に用紙先端を当接させた状態で、搬送タイミングを待機する。
続いて、駆動ローラ23が反時計回り方向に回転し、従動ローラ24が従動して、同じく反時計回り方向に回転する。これにより、搬送ベルト10は、上循環部が4個の感光体ドラム6に当接して、全体が反時計回り方向へ循環移動する。
【0037】
これと共に、各ドラムユニットDUとトナーユニットTUが印字タイミングに合わせて順次駆動される。感光体ドラム6は時計回り方向に回転し、帯電ローラ8は、感光体ドラム6周面に一様な高マイナス電荷を付与し、印字ヘッド9は、その感光体ドラム6周面に画像信号に応じて露光を行って、低電位部を形成する。これにより、上記帯電ローラ8による高マイナス電位部と、露光による低マイナス電位部からなる静電潜像が形成される。トナーユニットTUの現像ローラ13は、その静電潜像の低電位部にトナーを転移させて、感光体ドラム6周面上にトナー像を形成(反転現像)する。
【0038】
最上流に位置する感光体ドラム6周面上のトナー像の先端が、搬送ベルト10との対向点に回転搬送されてくるタイミングで、その対向点に用紙の印字開始位置が一致するように、待機ローラ対19が回転を開始して、用紙を用紙搬入部へ給送する。用紙は、搬送ベルト10に吸着され、画像形成ユニット5−1の感光体ドラム6と転写器11により形成されている最初の転写部へ搬送される。
【0039】
転写器11は、転写バイアス電源から出力される転写電流を、搬送ベルト10を介して用紙に印加する。上記転写器11から印加される転写電流により、感光体ドラム6上のM(マゼンタ)のトナー像が用紙に転写される。続いて、上流から2番目の画像形成ユニット5−2の転写部においてC(シアン)のトナー像が転写され、更に上流から3番目の画像形成ユニット5−3の転写部においてY(イエロー)のトナー像が転写される。そして、上流から4番目(すなわち、最下流)の画像形成ユニット5−4の転写部においてK(クロ)のトナー像が順次転写される。
【0040】
このようにして、4色のトナー像を転写された用紙は、搬送ベルト10から分離して定着ユニット25に搬入される。定着ユニット25は、トナー像を熱と圧力で用紙に定着させる。この画像定着後、用紙は、例えば搬送ローラ対33及び排紙ローラ対34によって上部の排紙部35上にトナー像を下にして排出される。
【0041】
図4は、画像形成ユニット5の主要部の構成を詳細に示す側断面図である。同図に示す画像形成ユニット5は、プリンタ1に着脱自在であり、ドラムユニットDUとトナーユニットTUとで構成されていることは図1に示した通りである。
【0042】
トナーユニットTUは、トナーホッパを兼ねる現像容器12を備え、その現像容器12の下部開口に、表面に凹凸を有する導電性ゴム状ローラで構成された現像ローラ13を回転可能に保持している。現像容器12の内部には、トナー52を収容し、このトナー52に埋没するように配設されてトナーを攪拌する攪拌部材53を備えている。
【0043】
また、現像容器12の最下部には、スポンジ体から成る供給ローラ54が現像ローラ113に圧接して配置されている。現像ローラ13には、その斜め右上周面に圧接して金属製の板バネ状のドクターブレード55が配設され、下部周面に当接してスクイシート(導電性規制シート)56が配設されている。このスクイシート56には、スクイシート56にバイアス電圧を給電するスクイシートバイアス電源57が設けられている。また、上記の現像ローラには現像ローラバイアス電源59が接続されている。
【0044】
また、上記ドクターブレード55の両側部には、現像容器12の開口部の内部と外部を隔絶してトナー52の漏出を防止するための封止部材58が配設されている。このドクターブレード55と上記の供給ローラ54には、共通のトナー用バイアス電源61が接続されている。
【0045】
上記のように、現像容器12は、表面に凹凸を持つ導電性ゴム状ローラで構成された現像ローラ13を感光体ドラム6の表面に圧接させる接触現像(ローラ)方式を採用している。そして、上記のような装置構成により非磁性一成分トナー方式による高速且つ高品質の現像が得られている。
【0046】
ところで、上記のように現像ローラ13の表面に凹凸を持たせるためには、研磨機による表面研磨加工が行われる。研磨機には、例えば通常研磨機としては宮本製作所製CG50型円筒研削盤があり、フィルム研磨機としては松田精機製SP100型のフィルム研磨機がある。
【0047】
前述したように、現像ローラに十分なトナー搬送性を付与するためには、現像ローラの表面の粗さの物性パラメータがRzでは不適切であり、他の物性パラメータを設定する必要がある。
【0048】
これには、通常の研磨機では無理があると思われ、ゴムローラ鏡面仕上げ機として用いられるフィルム研磨機によるフィニッシャー工程が必要であると考えられた。尚、フィルム研磨機は、砥粒を塗布したロールフィルムを巻き取りながら研磨する研磨機である。
【0049】
本例においては、現像ローラ13の素材となるゴム材として安価なNBRを用いた。この現像ローラの電気抵抗は2000〜15000kΩ(ローラ両端に4.9N荷重、測定電圧は500V)である。そして、その表面加工としてゴムローラ鏡面仕上げ機を用いて表面研磨を行った。
【0050】
研磨機には、SP100型松田精機社製の研磨機を用い、研磨テープには、三共理化学フイルムの番手が#400、#600、及び#800のものを用いた。そして、研磨テープの番手を変えることにより様々な表面粗さ(凹凸)を有する試作現像ローラ13n(n=1、2、3、・・・)を作成し、これらの評価試験を行って以下の結果を得た。
【0051】
図5は、現像ローラのゴムローラ鏡面仕上げ機による表面研磨加工後のトナー追従性の評価試験結果を示す図表である。
同図に示す試料の欄には、結果として評価が良かった試作現像ローラ13nを実施例1〜8として示し、結果として評価が悪かった試作現像ローラ13nを比較例1〜14として示している。
【0052】
また、S/S0 欄には、上記ゴムローラ鏡面仕上げ機による表面研磨加工後の現像ローラ表面の研磨状態をレーザ顕微鏡で測定した特定の面積比S/S0 を示している。
この現像ローラ表面の測定では、キーエンス社製レーザ顕微鏡VK−8550が用いられた。また、レーザ顕微鏡の対物レンズには50倍のものが用いられた。そして、レーザ顕微鏡の視野は1000倍と設定された。
【0053】
上記の面積比S/S0 における「S0 」は、レーザ顕微鏡による測定領域すなわち測定平面の面積を示しており、本例では測定平面面積S0 は、298.3μm×223.7μmに設定されている。また、上記の面積比S/S0 における「S」はレーザ顕微鏡による測定で得られる凹凸部表面積を示している。
【0054】
図6は、ゴムローラ鏡面仕上げ機による表面研磨加工後の現像ローラ表面のレーザ顕微鏡による測定を模式的に示す図である。同図は試作現像ローラ13n、その測定領域(測定平面面積)S0 、及びレーザ顕微鏡の対物レンズ62を示している。
【0055】
図7は、レーザ顕微鏡による測定で得られる凹凸部表面積を説明する図である。同図は例として分かり易く半球状の測定物63と、その測定領域拡大図63′を示している。レーザ顕微鏡による測定では、平面的に見た面積である図6の測定平面面積S0 に対して、図7の矢印d及び矢印eで示すように、実際に外観的に露出している部分全ての面積が測定される。
【0056】
この実際に外観的に露出している部分全ての面積が、凹凸部表面積Sとしてレーザ顕微鏡に接続されるコンピュータによって算出される。
図5に示す面積比S/S0 は、「凹凸部表面積S÷測定平面面積S0 」である。測定面が全くの平滑面であれば、S/S0 =1であり、凹凸があればその凹凸の程度に応じて、S/S0 =N(N>1)となる。
【0057】
このようにして面積比S/S0 を求めた現像ローラ13nを、上述のプリンタ1を用い、実験室環境で、画像濃度1.7%、2枚間欠でUT(アンダートナー)まで印字テストを行った。印字テストにおいて、サンプル画像としてA3判用紙に全ベタ画像を0枚印字時、1000枚印字時、3000枚印字時、5000印字時、及びUT時に出力した。
【0058】
図5に示すベタ追従性濃度AVE欄には、上記のA3判用紙における全ベタ画像印字において、現像ローラの1周目以降の印字領域の30点をX−Raite(外国製の色差計、販売代理店は日本平板機材(株))で測定し、その平均値をベタ追従性濃度とし、その濃度の1000枚〜UTまでのサンプル画像のベタ追従性濃度の平均をとったものをベタ追従性濃度AVEとして示している。
【0059】
追従性目視の欄には、トナーの搬送性つまりベタ追従性の良し悪しを、濃度ムラの発生具合を目視することによって、その評価を「○」、「△」又は「×」で示している。すなわち評価基準は、濃度ムラの発生がなく問題なしは「○」、濃度ムラが僅かに発生するが製品の品質上としては問題無しは「△」、明らかな濃度ムラが発生するは「×」となっている。
【0060】
また、Rz欄には比較として十点平均粗さであるRz値を示している。十点平均粗さの検出条件として、検出器は、測定倍率1000倍、評価長さL=2.5mm、分解能L/8000、送り長さ0.mm/s、先端半径=2μダイヤモンド、測定力は0.7mNである。
【0061】
また、研磨テープ欄には、研磨テープの番手を示している。
図5の評価表において、追従性目視の欄に示すように、評価が「○」及び「△」であった試作現像ローラ13nは、資料番号を実施例1〜8で示す試作品であり、これらはベタ追従性濃度AVEが1.3以上となる試作現像ローラであった。
【0062】
また、ベタ追従性濃度AVEが1.3未満であると、明かにベタ追従性不良によるベタムラの発生が見られた。
そして、図5の評価表からも分かるように、ベタ追従性濃度AVEが1.3以上となる試作現像ローラ13nの面積比S/S0 は、2.37以上となっている。すなわち、面積比S/S0 =2.37以上であれば、ベタ追従性に問題はないと考えられる。
【0063】
図8は、ベタ追従性濃度AVEと面積比S/S0 との関係を示す特性図である。同図の特性図は、横軸にベタ追従性濃度AVEをとり、縦軸に面積比S/S0 をとって、図5の評価表から得られるベタ追従性濃度AVEと縦軸面積比S/S0 の対応プロットから求められる近似曲線である。
【0064】
この特性図からも判明するように、面積比S/S0 が小さくなるほどベタ追従性は悪くなり、面積比S/S0 が大きくなるほどベタ追従性が向上する。そして、面積比S/S0 が2.37で、目視評価が「△」以上となるベタ追従性濃度AVEは1.3以上となっている。
【0065】
図9は、図5の評価表から得られる面積比S/S0 と十点平均粗さRzとの関係を示す図である。同図は横軸に十点平均粗さRzを示し、縦軸に面積比S/S0 を示している。また、黒丸のプロットは評価の良かった現像ローラの実施例1〜8を示し、白三角のプロットは評価の悪かった現像ローラの比較例1〜14を示している。
【0066】
図9から判明するように、十点平均粗さRz=4.25〜5.55の範囲には、評価の良かった現像ローラの実施例だけでなく、評価の悪かった現像ローラの比較例も散在している。すなわち、十点平均粗さRzの値からでは、ベタ追従性の良否を判断できないことが分かる。
【0067】
図10は、評価試験結果の図表のデータを面積比S/S0 の大きなものから順に並べ替えた図表である。尚、同図の試料番号は、上から下に昇順に示しただけのものであり、図5の試料欄の実施例又は比較例の番号とは無関係である。
【0068】
図10の試料番号1〜8に示すように、ベタ追従性濃度AVEは面積比S/S0 の大きさに対して試料番号5を除いて略順当に比例している。これに対して、十点平均粗さRzの値は面積比S/S0 の大きさとは無関係にバラツキを見せている。すなわち図10に示す図表からも、十点平均粗さRzの値からでは、ベタ追従性の良否を判断できないことが分かる。
【0069】
このように、ベタ追従性濃度AVEは面積比S/S0 の値に略比例し、同じRzの表面状態をもった現像ローラでも、Rz値には関係なくS/S0 値が大きくなればトナー搬送力も大きくなり、トナー追従性濃度に影響を与えている。
【0070】
これらのことから、Rz値には関係なく現像ローラの凹凸部表面積が2.37以上であると、現像ローラ上に保持されるトナー量が適切化され、現像ローラのトナー搬送量が適切に設定されることが判明する。
【0071】
なお、現像ローラのゴム材としてNBRを用いるように説明しているが、これに限ることなく、ウレタン等の現像ローラに使用可能なすべてのゴム材に適用できることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】本発明の実施形態1におけるカラー画像形成装置(プリンタ)の内部構成を説明する断面図である。
【図2】実施形態1における画像形成装置(プリンタ)の外観斜視図である。
【図3】実施形態1における画像形成装置(プリンタ)の回路ブロック図である。
【図4】実施形態1における画像形成ユニットの主要部の構成を詳細に示す側断面図である。
【図5】実施形態1における現像ローラのゴムローラ鏡面仕上げ機による表面研磨加工後のトナー追従性の評価試験結果を示す図表である。
【図6】実施形態1におけるゴムローラ鏡面仕上げ機による表面研磨加工後の現像ローラ表面のレーザ顕微鏡による測定を模式的に示す図である。
【図7】レーザ顕微鏡による測定で得られる凹凸部表面積を説明する図である。
【図8】ベタ追従性濃度AVEと面積比S/S0 との関係示す特性図である。
【図9】評価表から得られる面積比S/S0 と十点平均粗さRzとの関係を示す図である。
【図10】評価試験結果の図表のデータを面積比S/S0 の大きなものから順に並べ替えた図表である。
【符号の説明】
【0073】
1 プリンタ
2 画像形成部
3 両面印刷用搬送ユニット
4 給紙部
5(5−1、5−2、5−3、5−4) 画像形成ユニット
DU ドラムユニット
TU トナーユニット
6 感光体ドラム
7 クリーナ
8 帯電ローラ
9 印字ヘッド
10 搬送ベルト
11 転写器
12 現像容器
13 現像ローラ
13n(n=1、2、3、・・・) 試作現像ローラ
14 給紙コロ
15 給紙カセット
16 ガイドローラ対
17 案内路
18 給送ローラ対
19 待機ローラ対
20 装着部カバー
21 MPFトレイ
22 給紙コロ
23 駆動ローラ
24 従動ローラ
25 定着ユニット
26 熱ローラ
27 圧ローラ
28 オイル塗布ローラ
29 切換板
31 搬出ローラ対
32 側面排出口
33 搬送ローラ対
34 排紙ローラ対
35 排紙部
36a〜36e 搬送ローラ
37 濃度センサ
38 装置本体上部
39 装置本体下部
41 操作パネル
41a キー操作部
41b 表示部
42 フロントカバー
43 制御装置
44 インターフェイスコントローラ(I/F)
45 プリンタコントローラ(PR_CONT)
46 プリンタ印字部
47 CPU
48 ROM
49 フレームメモリ
49M、49C、49Y、49K 記憶領域
51 EEPROM
52 トナー
53 攪拌部材
54 供給ローラ
55 ドクターブレード
56 スクイシート
57 スクイシートバイアス電源
58 封止部材
59 現像ローラバイアス電源
61 トナー用バイアス電源
62 レーザ顕微鏡の対物レンズ
S0 測定領域(測定平面面積)
S 測定凹凸部表面積
63 測定物
63′ 測定領域拡大図

【特許請求の範囲】
【請求項1】
静電潜像を保持する潜像担持体と、非磁性トナーを表面に担持するトナー担持体とを、現像部において接触させて前記静電潜像を顕像化する非磁性一成分トナーによる現像を行う現像方法において、
前記トナー担持体を表面に凹凸を持ったゴム状ローラで構成し、該ローラ周面の単位面積当たりの凹凸部表面積が2.37以上である、ことを特徴とする現像方法。
【請求項2】
静電潜像を保持する潜像担持体と、非磁性トナーを表面に担持するトナー担持体とを、現像部において接触させて前記静電潜像を顕像化する非磁性一成分トナーによる現像を行う現像装置であって、
前記トナー担持体は、表面に凹凸を持ったゴム状ローラから成り、該ローラ周面の単位面積当たりの凹凸部表面積が2.37以上である、ことを特徴とする現像装置。
【請求項3】
前記トナー担持体は、NBR(アクリロニトリル・ブタジエン・ゴム)から成ることを特徴とする請求項2記載の現像装置。
【請求項4】
前記トナー担持体は、円周面をフイルム研磨装置を用いて加工されたものであることを特徴とする請求項2記載の現像装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−276563(P2006−276563A)
【公開日】平成18年10月12日(2006.10.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−96888(P2005−96888)
【出願日】平成17年3月30日(2005.3.30)
【出願人】(000104124)カシオ電子工業株式会社 (601)
【出願人】(000001443)カシオ計算機株式会社 (8,748)
【Fターム(参考)】