説明

現像装置、及び、当該現像装置を用いる画像形成装置

【課題】想定された寿命到達時まで、白地カブリの発生を抑制する現像装置を提供する。
【解決手段】静電潜像を担持する像担持体と、像担持体に担持された静電潜像を現像剤によって現像する現像部材と、現像部材に当接して、現像剤を現像部材に供給する供給部材18と、現像部材の軸方向の一端側に設けられた第1のギヤと、供給部材の軸方向の一端側に設けられた第2のギヤ74とを備え、第2のギヤは、第1のギヤ側からの駆動力が伝達され、供給部材は、現像部材と当接する当接部位(スポンジ層18B)の、第2のギヤが設けられていない他端側の初期時外径18aに対する、第2のギヤが設けられた一端側の初期時外径18eが、所定の範囲内に設定されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内蔵された像担持体に現像剤像を形成する現像装置、及び、画像形成プロセスユニットとして当該現像装置を用いる画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真プロセスによって記録転写材に画像を形成する画像形成装置は、画像形成プロセスユニットとして現像装置を用いている。現像装置は、内蔵された感光体ドラムの表面に形成された静電潜像を現像剤によって現像剤像として顕像化させるユニットである。画像形成装置は、転写手段と定着手段とを有している。画像形成装置は、転写手段によって、現像装置が形成した現像剤像を記録転写材としての記録用紙に転写する。そして、画像形成装置は、定着手段によって、その記録用紙を加熱及び加圧する。これによって、画像形成装置は、現像剤像を溶融させて、現像剤像を記録用紙に定着させる。
【0003】
ところで、現像装置は、静電潜像を担持する像担持体としての感光体ドラムと、感光体ドラムに担持された静電潜像を現像剤によって現像する現像部材としての現像ローラと、現像ローラに当接して、現像剤を現像ローラに供給する供給部材としての供給ローラとを有している(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
現像ローラは、円柱状のシャフトの表面に、円筒状のゴム弾性層が設けられた構成となっている。供給ローラは、円柱状のシャフトの表面に、円筒状のスポンジ層が設けられた構成となっている。現像ローラと供給ローラとは、現像ローラのゴム弾性層と供給ローラのスポンジ層とが当接部位となり、互いを押し込むように、現像装置の筐体に回転自在に取り付けられている。供給ローラは、当接部位で、現像剤を現像ローラに供給するとともに、現像ローラから、静電潜像の顕像化で使用されなかった、現像ローラの表面に付着している現像剤を掻き落とす。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−108089号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来の現像装置は、想定された寿命よりも早い時点で、白地カブリが発生する場合がある、という問題があった。なお、「白地カブリ」とは、記録転写材である記録用紙の白地部に現れる汚れを意味している。
【0007】
「白地カブリ」は、例えば、供給部材(供給ローラ)と現像部材(現像ローラ)との間の当接部位の圧力バランスが、不均一な状態になり、これによって、供給部材の、現像部材から現像剤を掻き取る能力が劣化することにより、発生する。
【0008】
以下、「白地カブリ」が発生する原理について、詳述する。
現像装置の供給部材は、使用を重ねるに従って、現像部材との当接部位が徐々に磨耗する。このとき、供給部材の当接部位が全面に亘って均一に磨耗すれば、当接部位の圧力バランスは、不均一な状態にならない。
【0009】
しかしながら、供給部材は、軸方向の一方の端部にギヤが設けられており、このギヤを介して、外部からの駆動力がシャフトに伝達される。したがって、供給部材の当接部位は、ギヤが設けられた一端側とギヤが設けられていない他端側との間で、他端側よりも大きな負荷が、一端側にかかる。そのため、供給部材の当接部位は、一端側が他端側よりも大きく磨耗する。その結果、供給部材の当接部位は、想定された現像装置の寿命よりも早い時点で、一端側のみが、予め想定された磨耗許容量を超えて磨耗する場合がある。
【0010】
供給部材は、一端側の当接部位のみが磨耗許容量を超えて磨耗すると、現像部材との圧力バランスが不均一な状態になる。供給部材は、現像部材との圧力バランスが不均一な状態になると、現像部材から現像剤を掻き取る能力が劣化する。その結果、現像装置は、想定された寿命よりも早い時点で、白地カブリが発生する場合があった。
【0011】
本発明は、前記した課題を解決するためになされたものであり、想定された寿命到達時まで、白地カブリの発生を抑制する現像装置、及び、当該現像装置を用いる画像形成装置を提供することを主な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記目的を達成するため、第1発明は、現像剤を用いる現像装置であって、静電潜像を担持する像担持体と、前記像担持体に担持された前記静電潜像を前記現像剤によって現像する現像部材と、前記現像部材に当接して、前記現像剤を前記現像部材に供給する供給部材と、前記現像部材の軸方向の一端側に設けられた第1のギヤと、前記供給部材の軸方向の一端側に設けられた第2のギヤとを備え、前記第2のギヤは、前記第1のギヤ側からの駆動力が伝達され、前記供給部材は、前記現像部材と当接する当接部位の、前記第2のギヤが設けられていない他端側の初期時外径に対する、前記第2のギヤが設けられた一端側の初期時外径が、所定の範囲内に設定されている構成とする。なお、所定の範囲内は、好ましくは、白地カブリが発生しない範囲内であるとよい。また、供給部材は、好ましくは、一端側の初期時外径が、白地カブリが発生しない範囲内で、他端側の初期時外径よりも大きく設定されているとよい。さらに、白地カブリが発生しない範囲は、好ましくは、少なくとも、当接部位の他端側の初期時外径に対する一端側の初期時外径の比が0.6%以上でかつ1.2%以下の範囲を含む範囲であるとよい。
【0013】
現像装置の供給部材は、ギヤが設けられていない他端側よりも大きな負荷が、ギヤが設けられた一端側にかかる。一方、この現像装置の供給部材は、現像部材との当接部位の他端側の初期時外径に対する一端側の初期時外径が、所定の範囲内に設定されている。したがって、供給部材の当接部位は、一端側の磨耗許容量が他端側の磨耗許容量よりも大きくなるように、一端側の初期時外径を他端側の初期時外径よりも大きく設定することができる。そのため、供給部材の当接部位は、使用を重ねるに従って、一端側が他端側よりも大きく磨耗していっても、長期間に亘って、白地カブリが発生しない状態で、現像部材と当接することができる。その結果、この現像装置は、想定された寿命到達時まで、白地カブリの発生を抑制することができる。
【0014】
また、第2発明は、電子写真プロセスによって記録転写材に画像を形成する画像形成装置であって、画像を形成する画像形成ユニットとして、第1発明に係る現像装置を用いることを特徴とする。
この画像形成装置は、第1発明に係る現像装置を用いるため、想定された現像装置の寿命到達時まで、白地カブリの発生を抑制することができる。
【発明の効果】
【0015】
第1発明によれば、想定された寿命到達時まで、白地カブリの発生を抑制する現像装置を提供することができる。
また、第2発明によれば、第1発明に係る現像装置を用いる画像形成装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】実施形態1に係る画像形成装置の構成を示す図である。
【図2】実施形態1に係る現像装置の構成を示す図である。
【図3】実施形態1に係る現像装置の駆動機構の構成を示す図である。
【図4】実施形態1に係る供給ローラの構成を示す図である。
【図5A】実施形態1に係る供給ローラを用いた実験データを示す図(1)である。
【図5B】実施形態1に係る供給ローラを用いた実験データを示す図(2)である。
【図5C】実施形態1に係る供給ローラを用いた実験データを示す図(3)である。
【図5D】実施形態1に係る供給ローラを用いた実験データを示す図(4)である。
【図5E】実施形態1に係る供給ローラを用いた実験データを示す図(5)である。
【図5F】実施形態1に係る供給ローラを用いた実験データを示す図(6)である。
【図5G】実施形態1に係る供給ローラを用いた実験データを示す図(7)である。
【図6A】実施形態1に係る供給ローラを用いた実験データを示す図(1)である。
【図6B】実施形態1に係る供給ローラを用いた実験データを示す図(2)である。
【図6C】実施形態1に係る供給ローラを用いた実験データを示す図(3)である。
【図6D】実施形態1に係る供給ローラを用いた実験データを示す図(4)である。
【図6E】実施形態1に係る供給ローラを用いた実験データを示す図(5)である。
【図6F】実施形態1に係る供給ローラを用いた実験データを示す図(6)である。
【図7】供給ローラの劣化状態を示す模式図である。
【図8】実施形態2に係る供給ローラの形状を示す模式図である。
【図9A】実施形態2に係る供給ローラを用いた実験データを示す図(1)である。
【図9B】実施形態2に係る供給ローラを用いた実験データを示す図(2)である。
【図9C】実施形態2に係る供給ローラを用いた実験データを示す図(3)である。
【図9D】実施形態2に係る供給ローラを用いた実験データを示す図(4)である。
【図9E】実施形態2に係る供給ローラを用いた実験データを示す図(5)である。
【図9F】実施形態2に係る供給ローラを用いた実験データを示す図(6)である。
【図9G】実施形態2に係る供給ローラを用いた実験データを示す図(7)である。
【図10A】実施形態2に係る供給ローラを用いた実験データを示す図(1)である。
【図10B】実施形態2に係る供給ローラを用いた実験データを示す図(2)である。
【図10C】実施形態2に係る供給ローラを用いた実験データを示す図(3)である。
【図10D】実施形態2に係る供給ローラを用いた実験データを示す図(4)である。
【図10E】実施形態2に係る供給ローラを用いた実験データを示す図(5)である。
【図10F】実施形態2に係る供給ローラを用いた実験データを示す図(6)である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態(以下、「本実施形態」と称する)につき詳細に説明する。なお、各図は、本発明を十分に理解できる程度に、概略的に示してあるに過ぎない。よって、本発明は、図示例のみに限定されるものではない。また、各図において、共通する構成要素や同様な構成要素については、同一の符号を付し、それらの重複する説明を省略する。
【0018】
[実施形態1]
<画像形成装置の構成>
以下、図1を参照して、本実施形態1に係る画像形成装置の構成につき説明する。なお、図1は、実施形態1に係る画像形成装置の構成を示す図である。図1は、本実施形態1に係る画像形成装置1の断面構成を示している。
【0019】
画像形成装置1は、電子写真プロセスによって記録転写材に画像を形成する装置である。ここでは、画像形成装置1として、単色型の直接印刷方式の電子写真プリンタを想定して説明する。以下、画像形成装置1による「画像形成」動作を「印刷」動作と称する場合がある。
【0020】
図1に示すように、画像形成装置1は、トレイ2、スタッカ3、搬送路4、ホッピングローラ5、レジストローラ6、搬送ローラ7、排出ローラ8、現像装置10、露光装置20、転写ローラ30、定着装置40、及び、制御部50を有する構成となっている。
【0021】
トレイ2は、記録転写材としての記録用紙Pを格納する収容部である。記録用紙Pは、現像装置10によって形成された現像剤像が転写される。図1に示す例では、トレイ2は、画像形成装置1の内部の、現像装置10の下方に設けられている。
スタッカ3は、印刷後の記録用紙Pが集積される集積部である。図1に示す例では、スタッカ3は、画像形成装置1の外部の、現像装置10の上方に設けられている。
搬送路4は、記録用紙Pが搬送される通路であり、トレイ2からスタッカ3まで形成されている。
【0022】
ホッピングローラ5は、記録用紙Pをトレイ2から搬送路4に1枚ずつ繰り出す部材である。
レジストローラ6は、記録用紙Pを一時的に停止させて、記録用紙Pの先端を位置決めする部材である。レジストローラ6は、記録用紙Pを一時的に停止させた後、記録用紙Pを現像装置10に向けて搬送する。
搬送ローラ7及び排出ローラ8は、記録用紙Pをスタッカ3に向けて搬送する部材である。
【0023】
現像装置10は、内蔵された感光体ドラム12(図2参照)の表面に形成された静電潜像を現像剤によって現像剤像として顕像化させる装置である。現像装置10は、画像形成プロセスユニットとして、画像形成装置1に対して、装着及び取り外しが自在な構成となっている。現像装置10の詳細については、「現像装置の構成」の章で説明する。
【0024】
露光装置20は、現像装置10の感光体ドラム12の表面を露光して、感光体ドラム12の表面に静電潜像を形成する装置である。ここでは、露光装置20として、LED素子が複数配置されたLEDヘッドを想定して説明する。しかしながら、露光装置20は、レーザ露光装置やその他の発光手段を用いてもよい。
【0025】
転写ローラ30は、現像装置10の感光体ドラム12の表面に形成された現像剤像を記録用紙Pに転写する部材である。転写ローラ30は、図示せぬ電源から現像剤像とは逆極性の電位が与えられることによって、感光体ドラム12の表面に形成された現像剤像を引き寄せる。その際に、転写ローラ30は、現像剤像をレジストローラ6によって搬送される記録用紙Pに転写する。
【0026】
定着装置40は、記録用紙Pに転写された現像剤像を記録用紙Pに定着させる装置である。定着装置40は、搬送路4を介して対向するように配置された、2つのローラを有している。2つのローラは、一方が加熱ローラとなっており、他方が加圧ローラとなっている。加熱ローラは、発熱体が内部又は周囲に設けられており、ニップ部(ローラ部材と他の部材との間の接触部分)で、発熱体によって生じた熱を記録用紙Pに伝達する。加圧ローラは、加熱ローラに対して密着して配置されており、ニップ部で記録用紙Pを加圧する。定着装置40は、加熱ローラと加圧ローラとの間に形成されたニップ部で記録用紙Pを挟み込み、記録用紙Pを加熱及び加圧することによって、記録用紙Pの表面に転写された現像剤像を溶融させて、現像剤像を記録用紙Pに定着させる。
制御部50は、画像形成装置1の動作を制御する制御手段である。
【0027】
<現像装置の構成>
以下、図2を参照して、本実施形態1に係る現像装置10の構成につき説明する。なお、図2は、実施形態1に係る現像装置の構成を示す図である。図2は、本実施形態1に係る現像装置10の断面構成を示している。
【0028】
図2に示すように、現像装置10は、トナーカートリッジ11、感光体ドラム12、帯電ローラ13、現像ローラ14、クリーニングブレード15、貯留室16、トナーセンサ17、供給ローラ18、層形成ブレード19、フィルム61、帯電クリーニング部材62、スパイラル63、及び、廃トナー収容部64を有する構成となっている。
【0029】
トナーカートリッジ11は、現像剤Tを収容する収容部である。現像剤Tは、一般に「トナー」と称され、着色剤や外添剤等の成分を含有する。トナーカートリッジ11は、貯留室16の上方に設けられており、現像剤Tを貯留室16に供給する。
【0030】
感光体ドラム12は、表面に静電潜像及び現像剤像を担持する像担持体である。感光体ドラム12の周囲には、回転方向に沿って、帯電ローラ13、露光装置20(図1参照)、現像ローラ14、クリーニングブレード15が配置されている。
【0031】
帯電ローラ13は、感光体ドラム12の表面を一様に帯電する帯電部材である。帯電ローラ13は、クリーニングブレード15と露光装置20(図1参照)との間で、感光体ドラム12と平行に対向するように、感光体ドラム12の軸方向に沿って、配置されている。感光体ドラム12は、帯電ローラ13によって表面が一様に帯電され、その後に、露光装置20によって表面が部分的に露光される。これによって、感光体ドラム12は、表面に、静電潜像が形成される。なお、露光装置20は、帯電ローラ13と現像ローラ14との間で、感光体ドラム12と平行に対向するように、感光体ドラム12の軸方向に沿って、配置されている。
【0032】
現像ローラ14は、感光体ドラム12の表面に形成された静電潜像を、現像剤Tによって現像剤像として顕像化する現像部材である。現像ローラ14は、露光装置20(図1参照)と転写ローラ30(図1参照)との間で、感光体ドラム12と平行に対向するように、感光体ドラム12の軸方向に沿って、配置されている。また、現像ローラ14の周囲には、供給ローラ18が配置されている。現像ローラ14によって形成された現像剤像は、転写ローラ30(図1参照)によって、記録用紙Pに転写される。
【0033】
クリーニングブレード15は、記録用紙Pに転写されずに、感光体ドラム12の表面に残った現像剤T(以下、「転写残の現像剤T」と称する)を感光体ドラム12の表面から掻き落とすクリーニング部材である。クリーニングブレード15は、転写ローラ30(図1参照)と帯電ローラ13との間で、感光体ドラム12と平行に対向するように、感光体ドラム12の軸方向に沿って、配置されている。
【0034】
貯留室16は、現像剤Tを一時的に貯留する空間である。貯留室16は、供給ローラ18の上方に設けられており、現像剤Tを供給ローラ18に供給する。
トナーセンサ17は、貯留室16の内部の現像剤Tの残量を検出するセンサである。
【0035】
供給ローラ18は、貯留室16に貯留された現像剤Tを現像ローラ14に供給する供給部材である。供給ローラ18は、現像ローラ14と平行に対向するように、現像ローラ14の軸方向に沿って、配置されている。供給ローラ18は、現像ローラ14に対して押し込むように、現像装置10の筐体70(図3参照)に取り付けられている。供給ローラ18は、現像ローラ14との当接部位81(図3参照)で、現像剤Tを現像ローラ14に供給するとともに、現像ローラ14から、静電潜像の顕像化で使用されなかった、現像ローラ14の表面に付着している現像剤Tを掻き落とす。
【0036】
層形成ブレード19は、現像ローラ14の表面に当接して、現像ローラ14の表面に付着した現像剤Tを薄層化する部材である。層形成ブレード19は、現像ローラ14と平行に対向するように、現像ローラ14の軸方向に沿って、配置されている。
【0037】
フィルム61は、現像装置10からの現像剤Tの漏洩を防止する部材である。フィルム61は、現像ローラ14と平行に対向するように、現像ローラ14の軸方向に沿って、配置されている。
【0038】
帯電クリーニング部材62は、帯電ローラ13の表面に付着した現像剤T(ただし、ほとんどは、現像剤Tに含有された外添剤である)を帯電ローラ13の表面から掻き落とすクリーニング部材である。帯電クリーニング部材62は、帯電ローラ13と平行に対向するように、帯電ローラ13の軸方向に沿って、配置されている。
スパイラル63は、掻き落とされた現像剤Tを廃トナー収容部64に搬送する部材である。
廃トナー収容部64は、掻き落とされた現像剤Tを収容する収容部である。
【0039】
感光体ドラム12、現像ローラ14、及び、供給ローラ18は、図3に示すように、それぞれ、軸方向の一方の端部にギヤが設けられている。なお、図3は、実施形態1に係る現像装置の駆動機構の構成を示す図である。図3は、感光体ドラム12、現像ローラ14、及び、供給ローラ18を回転させるための、現像装置10の駆動機構の構成を示している。以下、図3を参照して、現像装置10の駆動機構の構成につき説明する。
【0040】
感光体ドラム12は、回転軸として機能する円柱状の図示せぬシャフトを有しており、そのシャフトの表面に、有機光半導体から成る円筒状の感光体層が設けられた構成となっている。
【0041】
感光体ドラム12は、図示せぬシャフトの両端が現像装置10の筐体70によって回転自在に支持されている。また、感光体ドラム12は、ギヤ(以下、「感光体ドラムギヤ」と称する)71が図示せぬシャフトの一方の端部に設けられている。感光体ドラムギヤ71は、感光体ドラム12の周囲に設けられた、駆動機構の駆動源となる駆動モータ79の主軸に設けられたギヤと噛み合わされている。
【0042】
現像ローラ14は、回転軸として機能する円柱状のシャフト14Aの表面に、円筒状のゴム弾性層14Bが設けられた構成となっている。現像ローラ14は、例えば、シャフト14Aがステンレススチール(SUS)材によって構成されており、また、ゴム弾性層14Bがポリエーテル系ウレタンゴムによって構成されている。
【0043】
現像ローラ14のゴム弾性層14Bは、抵抗値調整及びゴムの引き裂き強度強化のために、カーボンブラック(例えば、アセチレンブラック、ケッチェンブラック等)が添加されている。また、ゴム弾性層14Bの表面は、現像剤Tに帯電性を付与するために、コーティング(例えば、イソシアネート処理、ポリエーテル系ウレタンコート処理等)が施されている。また、ゴム弾性層14Bは、所定の外径になるように、粗研磨やフィニッシャー研磨等の研磨処理が表面に施されている。
【0044】
現像ローラ14は、シャフト14Aの両端が現像装置10の筐体70によって回転自在に支持されている。また、現像ローラ14は、ギヤ(以下、「現像ローラギヤ」と称する)72がシャフト14Aの一方の端部に設けられている。現像ローラギヤ72は、大径ギヤと小径ギヤの2つのギヤで構成されている。「現像ローラギヤ72」は、特許請求の範囲に記載された「第1のギヤ」に相当する。
【0045】
供給ローラ18は、回転軸として機能する円柱状のシャフト18Aの表面に、円筒状のスポンジ層18Bが設けられた構成となっている。供給ローラ18は、例えば、シャフト18AがSUS材によって構成されており、また、スポンジ層18Bが半導電性発泡シリコンゴムによって構成されている。
【0046】
供給ローラ18のスポンジ層18Bを構成する半導電性発泡シリコンゴムは、補強性シリカ充填剤や、加硫硬化に必要な加硫剤、発泡剤等がジメチルシリコン生ゴムやメチルフェニルシリコン生ゴム等の各種生ゴムに添加されたコンパウンドとなっている。なお、発泡剤には、重炭酸ナトリウム等の無機発泡剤や、アゾジカルボンアミド(ADCA)等の有機発泡剤が用いられる。
【0047】
供給ローラ18のスポンジ層18Bは、スポンジ層18Bを構成する各セルが完全に独立した単独気泡型の層となっている。スポンジ層18Bのセル径は、表面近くで、300〜500μmとなっている。なお、スポンジ層18Bのセル径は、例えば、スポンジの断面をCCDで観察することによって、測定される。
【0048】
供給ローラ18は、シャフト18Aの両端が現像装置10の筐体70によって回転自在に支持されている。また、供給ローラ18は、ギヤ(以下、「供給ローラギヤ」と称する)74がシャフト18Aの一方の端部に設けられている。「供給ローラギヤ74」は、特許請求の範囲に記載された「第2のギヤ」に相当する。なお、現像ローラギヤ72と供給ローラギヤ74との間には、アイドルギヤ73が設けられている。
【0049】
係る構成において、感光体ドラムギヤ71は、駆動モータ79のギヤ及び現像ローラギヤ72の大径ギヤと噛み合わされている。また、現像ローラギヤ72は、大径ギヤが感光体ドラムギヤ71と噛み合わされ、小径ギヤがアイドルギヤ73と噛み合わされている。さらに、アイドルギヤ73は、供給ローラギヤ74と噛み合わされている。
【0050】
現像装置10は、画像形成時に、駆動モータ79を回転させる。駆動モータ79の回転駆動力は、感光体ドラムギヤ71、現像ローラギヤ72、アイドルギヤ73、及び、供給ローラギヤ74に伝達される。これによって、感光体ドラム12、現像ローラ14、及び、供給ローラ18が、回転する。また、このとき、感光体ドラム12が、回転することにより、帯電ローラ13(図2参照)を連れ回して回転させる。なお、図2に示す例では、画像形成時に、感光体ドラム12が、反時計周りに回転し、帯電ローラ13、現像ローラ14、及び、供給ローラ18が、時計回りに回転する。
【0051】
<画像形成装置及び現像装置の動作>
以下、図1を参照して、画像形成装置1及び現像装置10の動作につき説明する。
画像形成装置1は、図示せぬ上位装置から印刷データを受信すると、これに応答して、印刷を開始する。
【0052】
画像形成装置1は、印刷を開始するにあたり、図示せぬモータによってホッピングローラ5を駆動して、トレイ2から記録用紙Pを1枚ずつ搬送路4に繰り出し、記録用紙Pをレジストローラ6まで搬送する。そして、画像形成装置1は、記録用紙Pをレジストローラ6に当接させて、記録用紙Pの斜行を補正するとともに、記録用紙Pの先端を位置決めする。
【0053】
この後、画像形成装置1は、記録用紙Pをレジストローラ6の下流側に設けられた現像装置10に向けて搬送する。このとき、画像形成装置1は、現像装置10及び露光装置20を駆動して、現像装置10の感光体ドラム12(図2参照)の表面に現像剤像を形成する。なお、このときの動作の詳細については、「現像剤像の形成時の動作」の章で説明する。
【0054】
そして、画像形成装置1は、記録用紙Pが感光体ドラム12の下に到達すると、転写ローラ30によって感光体ドラム12の表面に形成された現像剤像を記録用紙Pの表面に転写する。このとき、画像形成装置1は、例えば、+2400Vの転写電圧を転写ローラ30に印加し、この転写電圧によって現像剤像を感光体ドラム12側から転写ローラ30側に引き寄せる。その際に、画像形成装置1は、記録用紙Pを、感光体ドラム12と転写ローラ30との間を通過させる。これによって、画像形成装置1は、現像剤像を記録用紙Pの表面に転写する。
【0055】
この後、画像形成装置1は、記録用紙Pを現像装置10の下流側に設けられた定着装置40に向けて搬送する。定着装置40は、内蔵された2つのローラで記録用紙Pを挟み込み、記録用紙Pを加熱及び加圧することによって、記録用紙Pの表面に転写された現像剤像を溶融させて、現像剤像を記録用紙Pに定着させる。
【0056】
画像形成装置1は、現像剤像を記録用紙Pに定着させると、搬送ローラ7及び排出ローラ8によって、記録用紙Pを定着装置40の下流側に設けられたスタッカ3に搬送し、記録用紙Pをスタッカ3の上に集積する。
【0057】
<現像剤像の形成時の動作>
以下、図2を参照して、現像装置10及び露光装置20による現像剤像の形成時の動作につき説明する。
【0058】
画像形成装置1は、現像装置10及び露光装置20を駆動して、現像装置10の感光体ドラム12の表面に現像剤像を形成する。
【0059】
このとき、画像形成装置1は、現像装置10の感光体ドラム12に接続された駆動モータ79(図3参照)、及び、転写ローラ30に接続された図示せぬモータを回転させる。そして、現像装置10は、駆動モータ79の回転駆動力を、感光体ドラムギヤ71、現像ローラギヤ72、アイドルギヤ73、及び、供給ローラギヤ74に伝達させることによって、感光体ドラム12、現像ローラ14、供給ローラ18を回転させる。
【0060】
同時に、現像装置10は、例えば、−1150Vの電圧を帯電ローラ13に印加するとともに、−250Vの電圧を現像ローラ14に印加し、さらに、−350Vの電圧を供給ローラ18及び層形成ブレード19に印加する。ただし、これらの電圧値は、求められる画像濃度に応じて適宜変更される。
【0061】
感光体ドラム12は、回転することにより、帯電ローラ13を連れ回して回転させる。その際に、帯電ローラ13は、感光体ドラム12の表面を一様に帯電する。そして、露光装置20が、印字データに基づいて、帯電された感光体ドラム12の表面を部分的に露光する。その結果、静電潜像が、感光体ドラム12の表面に形成される。
【0062】
同時に、現像ローラ14及び供給ローラ18が、感光体ドラム12の回転に合わせて回転する。その際に、供給ローラ18が、現像剤Tを現像ローラ14に供給する。これによって、現像剤Tが、現像ローラ14の表面に付着する。
【0063】
現像ローラ14の表面に付着した現像剤Tは、現像ローラ14が回転することにより、層形成ブレード19と接触して、層厚が一定に調整される。そして、現像剤Tは、現像ローラ14がさらに回転することにより、感光体ドラム12と接触し、現像ローラ14と感光体ドラム12との間の電位差によって、現像ローラ14から感光体ドラム12に移動する。これによって、現像装置10は、感光体ドラム12の表面に形成された静電潜像を、現像剤像として顕像化する。この後、現像剤像は、転写ローラ30によって感光体ドラム12から記録用紙Pに転写される。
【0064】
現像剤像が記録用紙Pに転写されると、クリーニングブレード15が、転写残の現像剤Tを感光体ドラム12の表面から掻き落とし、スパイラル63が、掻き落とされた現像剤Tを貯留室16に搬送する。また、供給ローラ18が、現像ローラ14から、静電潜像の顕像化で使用されなかった、現像ローラ14の表面に付着している現像剤Tを貯留室16内に掻き落とす。これによって、現像装置10は、使用されなかった現像剤Tを回収して、再利用する。
【0065】
<白地カブリの発生を抑制するための構成>
ところで、供給ローラ18は、供給ローラギヤ74が設けられていない他端側(以下、「反ギヤ側」と称する)よりも大きな負荷が、供給ローラギヤ74が設けられた一端側(以下、「ギヤ側」と称する)にかかる。そのため、供給ローラ18のスポンジ層18Bは、ギヤ側が反ギヤ側よりも大きく磨耗する。供給ローラ18は、ギヤ側のスポンジ層18Bのみが予め想定された磨耗許容量を超えて磨耗すると、現像ローラ14との圧力バランスが不均一な状態になるため、現像ローラ14から現像剤Tを掻き取る能力が劣化し、これによって、白地カブリ(白地部の汚れ)が発生する。
【0066】
そこで、本実施形態1に係る現像装置10は、白地カブリの発生を抑制するために、供給ローラ18が以下のように構成されている。すなわち、供給ローラ18のスポンジ層18Bは、白地カブリが発生しない範囲内で、ギヤ側の外径18e(図4参照)が、反ギヤ側の外径18a(図4参照)よりも大きく設定されている。したがって、供給ローラ18のスポンジ層18Bは、ギヤ側の磨耗許容量が、反ギヤ側の磨耗許容量よりも大きく設定されている。
【0067】
なお、図4は、実施形態1に係る供給ローラの構成を示す図である。図4は、供給ローラ18のスポンジ層18Bの外径の測定位置を示している。図4に示す例では、測定位置として、測定位置Pa,Pb,Pc,Pd,Peが示されており、その測定位置Pa,Pb,Pc,Pd,Peで測定された外径として、外径18a,18b,18c,18d,18eが示されている。図4に示す例では、測定位置Pa,Pb,Pc,Pd,Peは、それぞれ、スポンジ層18Bの反ギヤ側から、10mm、60mm、110mm、160mm、210mmの位置となっている。
【0068】
なお、「スポンジ層18B」は、現像ローラ14のゴム弾性層14Bと当接する当接部位81(図3参照)となる。この「当接部位81」は、印刷が行われる印刷領域でもある。また、「ギヤ側」は、特許請求の範囲に記載された「一端側」に相当し、「反ギヤ側」は、特許請求の範囲に記載された「他端側」に相当する。
【0069】
供給ローラ18のスポンジ層18Bは、前記した通り、ギヤ側の磨耗許容量が、反ギヤ側の磨耗許容量よりも大きく設定されている。そのため、供給ローラ18のスポンジ層18Bは、使用を重ねるに従って、ギヤ側が反ギヤ側よりも大きく磨耗していっても、長期間に亘って、白地カブリが発生しない状態で、現像ローラ14と当接することができる。その結果、この現像装置10は、想定された寿命到達時まで、白地カブリの発生を抑制することができ、もって、白地カブリの無い良好な画像を形成し続けることができる。
【0070】
<実証実験>
ここで、白地カブリの発生の抑制を確認するために、以下の実験を行った。その実験データを図5A〜図5G及び図6A〜図6Fに示す。なお、図5A〜図5G及び図6A〜図6Fは、それぞれ、実施形態1に係る供給ローラを用いた実験データを示す図である。各図の詳細については、後記する。
【0071】
(実験内容)
実験では、6本の供給ローラ18を、サンプルとして用意した。各サンプルは、測定位置Pa,Pb,Pc,Pd,Pe(図4参照)におけるスポンジ層18Bの外径18a,18b,18c,18d,18e(図4参照)が変更された構成となっていた。そして、実験では、各サンプルを現像装置10に装着し、その現像装置10を画像形成装置1に搭載して、3万ページ分の印刷を行い、サンプル毎に、1ページ目の印刷画像の白地カブリの発生の有無及び3万ページ目の印刷画像の白地カブリの発生の有無を検証した。
【0072】
(印刷内容)
実験では、記録用紙Pを1度に3ページずつ(18秒毎に3ページずつ)、縦方向(4辺のうち、短い2辺が前端及び後端になる方向)に搬送して、ISO/IEC19752で指定されたパターンを、3万ページ分印刷した。なお、印刷環境は、いずれも、温度が25±2℃、相対湿度が50±5%RHであった。
【0073】
(記録用紙)
実験では、記録用紙Pとして、レターサイズの標準紙(具体的には、Xerox4200紙(20lb))を用いた。なお、「20lb」は、Xerox社のカタログ値である。「20lb」の「lb」は、「ポンド」を意味しており、また、「20lb」は、欧米仕様の紙の面積あたりの重量を意味している。「20lb」は、いわゆる「普通紙」の仕様となっている。
【0074】
なお、現像装置10は、感光体ドラム12が、線速度として227.5mm/secの回転速度で回転する。これによって、画像形成装置1は、記録用紙Pとしてのレターサイズの標準紙を、40ppmに相当する搬送速度で縦方向に搬送する。なお、「40ppm」という搬送速度は、以下を根拠とする。すなわち、線速度227.5mm/secは、レターサイズの標準紙の縦の長さが279.4mmであるため、「(227.5×60/279.4)≒49ppm」に相当する。しかしながら、画像形成装置1は、感光体ドラム12が記録用紙Pとの隙間によって空転するため、「40ppm」で記録用紙Pを搬送することになる。
【0075】
なお、現像装置10は、現像ローラ14が、感光体ドラム12の回転に対して、1.26の周速比で、連れ回り方向(図2に示す例では、時計回り方向)に回転する。また、現像装置10は、供給ローラ18が、現像ローラ14の回転に対して、0.68倍の周速比で、カウンタ方向(図2に示す例では、時計回り方向)に回転する。
【0076】
(現像剤)
実験では、以下の仕様の現像剤Tを用いた。
現像剤Tは、粉砕法により作成された、平均粒径6.5〜7.5μmの負帯電性のブラックの現像剤を用いた。なお、新品の現像装置10において、白紙印刷中に現像ローラ14に付着した現像剤Tの帯電量は、22〜28μC/gであった。この現像剤Tの帯電量は、TREK社製の吸引式帯電量測定機Model210HSによって測定された値である。なお、実験では、このような仕様の現像剤Tを用いたが、実際の運用では、異なる仕様の現像剤Tを用いることもできる。
【0077】
(現像ローラ)
実験では、以下の仕様の現像ローラ14を用いた。
現像ローラ14は、シャフト14Aがステンレススチール(SUS)材によって構成されており、また、ゴム弾性層14Bがポリエーテル系ウレタンゴムによって構成されていた。
【0078】
現像ローラ14のゴム弾性層14Bは、長さが239mmとなっており、そのうち、略中央部分の220mmが供給ローラ18と当接する当接部位81(図3参照)となっていた。また、ゴム弾性層14Bは、所定の外径になるように、研磨処理が表面に施されていた。実験では、ゴム弾性層14Bは、でき上がり外径が、左右とも端部から5mmの位置でφ15.9mmの値となり、中央位置でφ15.92mmの値となっていた。なお、ゴム弾性層14Bの外径の測定には、ミツトヨ社製のLSM−6100レーザスキャンマイクロメータを用い、現像ローラ14の回転速度を35rpmとする状態で、現像ローラ14が2回転する間に32回測定し、その平均を取った。
【0079】
ゴム弾性層14Bの硬度は、JIS_K6252による加重9.8Nで、77度となっていた。また、ゴム弾性層14Bの表面粗さは、JIS_B0601−1994法による接触式10点平均粗さで、Rz=2〜6μmとなっていた。
【0080】
現像ローラ14の抵抗値Rは、幅2.0mm、直径6.0mmのSUS材のボールベアリングを20gfの力で現像ローラ14のゴム弾性層14Bの表面に接触させ、100Vの電圧をボールベアリングと現像ローラ14のシャフト14Aとの間に印加して、電圧Vと電流Iの比(V/I)によって測定した場合に、1〜100MΩとなっていた。
【0081】
(供給ローラ)
実験では、以下の仕様の6本の供給ローラ18を用いた。
供給ローラ18は、シャフト18AがSUS材によって構成されており、また、スポンジ層18Bが半導電性発泡シリコンゴムによって構成されていた。
【0082】
供給ローラ18のスポンジ層18Bは、長さが220mm(図4参照)となっており、その全域が現像ローラ14と当接する当接部位81(図3参照)となっていた。また、スポンジ層18Bは、所定の外径になるように、表面に研磨処理が施されていた。実験では、スポンジ層18Bは、でき上がり外径が、図5Aに示す値となっていた。なお、スポンジ層18Bの外径の測定方法は、現像ローラ14のゴム弾性層14Bの外径の測定方法と同様である。
【0083】
スポンジ層18Bの硬度は、アスカ_Fで50〜65度となっていた。スポンジ層18Bは、現像装置10の内部で、現像ローラ14のゴム弾性層14Bに対して静止状態で図5Cに示されるような値で押し込まれていた。
【0084】
供給ローラ18の抵抗値Rは、幅2.0mm、直径6.0mmのSUS材のボールベアリングを20gfの力で供給ローラ18のスポンジ層18Bの表面に接触させ、300Vの電圧をボールベアリングと供給ローラ18のシャフト18Aとの間に印加して、電圧Vと電流Iの比(V/I)によって測定した場合に、1〜100MΩとなっていた。
【0085】
以下、図5A〜図5G及び図6A〜図6Fを参照して、サンプルとして用いた6本の供給ローラ18の仕様とその実験結果とを詳細に説明する。なお、ここでは、「初期時」及び「寿命時」とは、それぞれ、ISO/IEC19752で指定されたパターンを3万ページ分印刷した場合の、「1ページ目の印刷時」及び「3万ページ目の印刷時」を意味している。
【0086】
図5Aは、各サンプルの、測定位置Pa,Pb,Pc,Pd,Pe(図4参照)における初期時の外径(以下、「初期時外径」と称する)の数値データを示している。また、図6Aは、その図5Aの数値データをグラフ化して示している。なお、測定位置Pa,Pb,Pc,Pd,Peは、前記した通り、それぞれ、スポンジ層18Bの反ギヤ側から、10mm、60mm、110mm、160mm、210mmの位置となっていた(図4参照)。
【0087】
図5Bは、各サンプルの、スポンジ層18Bの反ギヤ側の端部である測定位置Paに対する、各測定位置Pa,Pb,Pc,Pd,Peの初期時の外径の比(以下、「初期時外径比」と称する)の数値データを示している。また、図6Bは、その図5Bの数値データをグラフ化して示している。
【0088】
図5Cは、各サンプルの、測定位置Pa,Pb,Pc,Pd,Peにおける初期時のニップ深さ(以下、「初期時ニップ深さ」と称する)の数値データを示している。また、図6Cは、その図5Cの数値データをグラフ化して示している。なお、「ニップ深さ」とは、現像ローラ14との押し込みによって変形した、サンプルである供給ローラ18の変形量を意味している。
【0089】
図5Dは、各サンプルの、測定位置Pa,Pb,Pc,Pd,Peにおける寿命時の外径(以下、「寿命時外径」と称する)の数値データを示している。また、図6Dは、その図5Dの数値データをグラフ化して示している。
【0090】
図5Eは、各サンプルの、測定位置Pa,Pb,Pc,Pd,Peにおける初期時外径に対する寿命時外径の減少量(以下、「外径減少量」と称する)の数値データを示している。また、図6Eは、その図5Eの数値データをグラフ化して示している。なお、「外径減少量」は、「外径減少量=(寿命時外径−初期時外径)」を演算することによって算出される。
【0091】
図5Fは、各サンプルの、測定位置Pa,Pb,Pc,Pd,Peにおける初期時外径に対する寿命時外径の減少率(以下、「外径減少率」と称する)の数値データを示している。また、図6Fは、その図5Fの数値データをグラフ化して示している。なお、「外径減少率」は、「外径減少率=(外径減少量/初期時外径)」を演算することによって算出される。
【0092】
図5Gは、各サンプルの、初期時及び寿命時の白地カブリの評価結果を示している。初期時の白地カブリの評価結果は、実験例1〜実験例5が「○(OK)」となり、実験例6が「×(NG)」となった。また、寿命時の白地カブリの評価結果は、実験例1〜実験例3が「×(NG)」となり、実験例4及び実験例5が「○(OK)」となった。なお、実験例6については、初期時の白地カブリの評価結果で「×(NG)」であったため、その後の実験を行わなかった。
【0093】
(初期時の白地カブリの評価結果)
以下、初期時の白地カブリの評価で、実験例1〜実験例5が「○(OK)」となり、実験例6が「×(NG)」となった理由につき、説明する。なお、ここでは、反ギヤ側の測定位置Pa、中央の測定位置Pc、及び、ギヤ側の測定位置Peの3箇所で得られたデータを用いて、説明する(図4参照)。
【0094】
実験例1のサンプルは、反ギヤ側の初期時外径18a、中央の初期時外径18c、及びギヤ側の初期時外径18eが、それぞれ、約φ15.51mm、約φ15.51mm、及び約φ15.51mmとなっていた(図5A参照)。したがって、実験例1のサンプルは、スポンジ層18Bがほぼ円筒状に形成されていた。
【0095】
実験例2のサンプルは、反ギヤ側の初期時外径18a、中央の初期時外径18c、及びギヤ側の初期時外径18eが、それぞれ、約φ15.72mm、約φ15.72mm、及び約φ15.72mmとなっていた(図5A参照)。したがって、実験例2のサンプルは、スポンジ層18Bがほぼ円筒状に形成されていた。ただし、実験例2のサンプルは、実験例1のサンプルに対して、全体的に径が大きくなっていた。
【0096】
実験例3のサンプルは、反ギヤ側の初期時外径18a、中央の初期時外径18c、及びギヤ側の初期時外径18eが、それぞれ、約φ15.62mm、約φ15.50mm、及び約φ15.61mmとなっていた(図5A参照)。したがって、実験例3のサンプルは、スポンジ層18Bが中央で細くなる形状(以下、「スリム型」と称する)に形成されていた。すなわち、実験例3のサンプルは、スポンジ層18Bの両端の径が中央の径よりも大きく設定されていた。
【0097】
実験例4のサンプルは、反ギヤ側の初期時外径18a、中央の初期時外径18c、及びギヤ側の初期時外径18eが、それぞれ、約φ15.50mm、約φ15.59mm、及び約φ15.69mmとなっていた(図5A参照)。したがって、実験例4のサンプルは、スポンジ層18Bが反ギヤ側からギヤ側に向けて直線状に大きくなる形状(以下、「ストレートテーパ型」と称する)に形成されていた。なお、実験例4のサンプルは、反ギヤ側の初期時外径18aに対するギヤ側の初期時外径18eの比(以下、「反ギヤ側に対するギヤ側の初期時外径比」と称する)が「101.2%」となっていた(図5B参照)。
【0098】
実験例5のサンプルは、反ギヤ側の初期時外径18a、中央の初期時外径18c、及びギヤ側の初期時外径18eが、それぞれ、約φ15.50mm、約φ15.55mm、及び約φ15.60mmとなっていた(図5A参照)。したがって、実験例5のサンプルは、実験例4と同様に、スポンジ層18Bが「ストレートテーパ型」に形成されていた。ただし、実験例5のサンプルは、反ギヤ側に対するギヤ側の初期時外径比が「100.6%」となっており(図5B参照)、初期時外径比の増加の割合が実験例4のサンプルよりも小さく設定されていた。
【0099】
実験例6のサンプルは、反ギヤ側の初期時外径18a、中央の初期時外径18c、及びギヤ側の初期時外径18eが、それぞれ、約φ15.48mm、約φ15.62mm、及び約φ15.75mmとなっていた(図5A参照)。したがって、実験例6のサンプルは、実験例4及び実験例5と同様に、スポンジ層18Bが「ストレートテーパ型」に形成されていた。ただし、実験例6のサンプルは、反ギヤ側に対するギヤ側の初期時外径比が「101.7%」となっており(図5B参照)、初期時外径比の増加の割合が実験例4のサンプルよりも大きく設定されていた。
【0100】
実験では、1ページ目の印刷画像に対して、白地カブリの有無を検出することによって、初期時の白地カブリを評価した。
【0101】
具体的には、検査者が、1ページ目の印刷画像の白地部を目視によって確認し、白地カブリを見つけなかった場合に、白地カブリの評価を「○(OK)」と判定し、逆に、白地カブリを見つけた場合に、白地カブリの評価を「×(NG)」と判定することによって、初期時の白地カブリの評価を行った。
【0102】
その結果、初期時の白地カブリの評価結果は、図5Gの「初期時」欄に示す通りとなった。すなわち、実験例1〜実験例5は、画像不良が無いため、「○(OK)」となった。一方、実験例6は、ハーフトーンに横筋(いわゆる、ジッタ)が発生したため、「×(NG)」となった。
【0103】
ただし、白地カブリの評価は、例えば、分光測色計によって、定性的に行うこともできる。すなわち、白地カブリの評価は、分光測色計(例えば、コニカミノルタ社製の分光測色計CM2600d)を用い、「C光源、2°視野、正反射光除去SCE、測定径φ8mm」の条件で、印刷前の記録用紙Pの白地部と印刷後の記録用紙Pの白地部との色差ΔEを測定することによって、行うことができる。
【0104】
なお、色差ΔEは、値が小さいほど、白地カブリが少ないことを示している。この色差ΔEは、CIE_1976_L色空間で表される色差である。なお、「L」は、明度指数を意味しており、また、「a」及び「b」は、それぞれ、色座標を意味している。
【0105】
色差ΔEは、2つの測色値を(L,a,b)と(L,a,b)とする場合に、以下の式(1)で表すことができる。
ΔE={(ΔL+(Δa+(Δb1/2 …(1)
ただし、「ΔL」、「Δa」、及び、「Δb」は、それぞれ、以下の通りである。
ΔL=(L−L
Δa=(a−a
Δb=(b−b
【0106】
色差ΔEの評価基準は、NBS単位(米国標準局)で以下のように設定されている。
ΔE 0.0〜 0.5 trance(かすかに感じられる)。
ΔE 0.5〜 1.5 slight(わずかに感じられる)。
ΔE 1.5〜 3.0 noticeable(かなり感じられる)。
ΔE 3.0〜 6.0 appreceable(目立って感じられる)。
ΔE 6.0〜12.0 much(大きく感じられる)。
ΔE 12.0〜 very much(非常に大きく感じられる)。
【0107】
つまり、NBS単位に準拠すると、色差ΔEの値が「0.5」以下であれば、白地カブリの濃度が薄いため、ほとんどユーザが白地カブリを感じないことになり、逆に、色差ΔEの値が「0.5」を超えていれば、白地カブリの濃度が濃いため、ほとんどユーザが白地カブリを感じることになる。
【0108】
したがって、白地カブリの評価は、色差ΔEの値が「0.5」以下である場合に「○(OK)」と判定し、逆に、色差ΔEの値が「0.5」を超えている場合に「×(NG)」と判定することによって、行うことができる。
【0109】
ここで、実験例1〜実験例6の初期時の白地カブリの評価結果について考察すると、以下のことが推定される。
【0110】
(実験例1及び実験例2についての考察)
実験例1及び実験例2の各サンプルは、スポンジ層18Bがほぼ円筒状に形成されており、現像ローラ14に対する供給ローラ18の圧力バランスが均一になっている。そのため、実験例1及び実験例2は、画像不良が発生しなかった、と考えられる。
【0111】
(実験例3〜実験例5についての考察)
実験例3〜実験例5の各サンプルは、スポンジ層18Bが「スリム型」又は「ストレートテーパ型」に形成されており、現像ローラ14に対する供給ローラ18の圧力バランスが不均一になっている。それでも、実験例3〜実験例5で画像不良が発生しなかった理由は、供給ローラ18のスポンジ層18Bの初期時外径18a,18b,18c,18d,18eが白地カブリの発生しない範囲内で設定されていたため、と考えられる。
【0112】
なお、実験例3〜実験例5で画像不良が発生しなかった理由は、以下に説明するように、現像剤T及び供給ローラ18が新品の状態であったことも影響している、と考えられる。
【0113】
例えば、現像剤Tは、使用を重ねるに従って、外添剤が離脱する。そのため、現像剤Tは、使用を重ねるに従って、画像不良が発生し易くなる。しかしながら、新品の状態(初期時の状態)では、外添剤が離脱していないため、現像剤Tは、画像不良が発生し難くなっている。
【0114】
また、供給ローラ18は、使用を重ねるに従って、劣化した状態になる。この点について、図7を参照して、説明する。図7は、供給ローラの劣化状態を示す模式図である。図7(a)は、供給ローラ18の初期時の状態(新品の状態)を示しており、図7(b)は、供給ローラ18の寿命時の状態(劣化した状態)を示している。
【0115】
供給ローラ18は、初期時の状態(新品の状態)では、図7(a)に示すように、スポンジ層18Bの表面が理想的な状態になっている。しかしながら、供給ローラ18は、使用を重ねるに従って、現像ローラ14との摩擦によって応力F(図7(b)参照)を繰り返し受けるため、寿命時の状態では、図7(b)に示すように、スポンジ層18Bの表面が劣化した状態になる。例えば、供給ローラ18は、倒れ部分91がスポンジ層18Bの表面壁に発生したり、破泡部分92がスポンジ層18Bのセルに発生したりする。そのため、供給ローラ18は、現像ローラ14から現像剤Tを掻き落とす能力が低下したり、現像剤Tに対する帯電能力が低下したりする。その結果、供給ローラ18は、使用を重ねるに従って、画像不良が発生し易くなる、と考えられる。しかしながら、新品の状態(初期時の状態)では、このような劣化がないため、供給ローラ18は、画像不良が発生し難くなっている。
【0116】
したがって、実験例3〜実験例5は、現像剤T及び供給ローラ18が新品の状態であったことによっても、画像不良が発生しなかった、と考えられる。
【0117】
(実験例6についての考察)
実験例6は、ハーフトーンにジッタが発生したため、「×(NG)」となった。実験例6でジッタが発生した理由は、スポンジ層18Bの初期時外径18a,18b,18c,18d,18eが適切な範囲を超えて設定されていたため、と考えられる。つまり、実験例6のサンプルは、スポンジ層18Bの初期時外径が、特にギヤ側で適切な範囲を超えて設定されていたため、現像ローラ14に対する供給ローラ18の圧力が大きくなり過ぎ、その結果、現像ローラ14と供給ローラ18との摩擦によって、ジッタが発生した、と考えられる。
【0118】
(寿命時の白地カブリの評価結果)
以下、寿命時の白地カブリの評価で、実験例1〜実験例3が「×(NG)」となり、実験例4及び実験例5が「○(OK)」となった理由につき、説明する。なお、実験例6については、前記した通り、初期時の白地カブリの評価結果で「×(NG)」であったため、その後の実験を行わなかった。
【0119】
各サンプルは、印刷が行われると、現像剤Tの移動、及び、現像ローラ14との摩擦によって、表面が削られ、外径が徐々に小さくなる。その結果、各サンプルの外径は、寿命時に、図5D〜図5Fに示す形状になっていた。
【0120】
すなわち、実験例1のサンプルは、反ギヤ側の寿命時外径18a、中央の寿命時外径18c、及びギヤ側の寿命時外径18eが、それぞれ、約φ15.35mm、約φ15.32mm、及び約φ15.21mmとなっていた(図5D参照)。
【0121】
実験例2のサンプルは、反ギヤ側の寿命時外径18a、中央の寿命時外径18c、及びギヤ側の寿命時外径18eが、それぞれ、約φ15.48mm、約φ15.45mm、及び約φ15.34mmとなっていた(図5D参照)。
【0122】
実験例3のサンプルは、反ギヤ側の寿命時外径18a、中央の寿命時外径18c、及びギヤ側の寿命時外径18eが、それぞれ、約φ15.42mm、約φ15.38mm、及び約φ15.22mmとなっていた(図5D参照)。
【0123】
実験例4のサンプルは、反ギヤ側の寿命時外径18a、中央の寿命時外径18c、及びギヤ側の寿命時外径18eが、それぞれ、約φ15.33mm、約φ15.32mm、及び約φ15.32mmとなっていた(図5D参照)。
【0124】
実験例5のサンプルは、反ギヤ側の寿命時外径18a、中央の寿命時外径18c、及びギヤ側の寿命時外径18eが、それぞれ、約φ15.30mm、約φ15.31mm、及び約φ15.30mmとなっていた(図5D参照)。
【0125】
実験では、3万ページ目の印刷画像に対して、白地カブリの有無を検出することによって、寿命時の白地カブリを評価した。
【0126】
具体的には、検査者が、初期時の白地カブリの評価と同様に、3万ページ目の印刷画像の白地部を目視によって確認し、白地カブリを見つけなかった場合に、白地カブリの評価を「○(OK)」と判定し、逆に、白地カブリを見つけた場合に、白地カブリの評価を「×(NG)」と判定することによって、寿命時の白地カブリの評価を行った。ただし、白地カブリの評価は、前記した通り、例えば、分光測色計によって、定性的に行うこともできる。
【0127】
その結果、寿命時の白地カブリの評価結果は、図5Gの「寿命時」欄に示す通りとなった。すなわち、実験例1〜実験例3は、白地カブリが見つかったため、「×(NG)」となった。一方、実験例4及び実験例5は、画像不良が無いため、「○(OK)」となった。
【0128】
ここで、実験例1〜実験例5の寿命時の白地カブリの評価結果について考察すると、以下のことが推定される。
【0129】
(実験例1及び実験例3についての考察)
実験例1及び実験例3の各サンプルは、スポンジ層18Bの外径(特に、ギヤ側の外径18e)が小さくなることによって、現像ローラ14に対する供給ローラ18の圧力が低下する。そのため、供給ローラ18は、ギヤ側で、現像ローラ14から現像剤Tを掻き落とす能力が低下したり、現像剤Tに対する帯電能力が低下したりする。その結果、実験例1及び実験例3は、白地カブリが発生した、と考えられる。
【0130】
(実験例2についての考察)
実験例2のサンプルは、寿命時外径18a,18b,18c,18d,18eが実験例4の寿命時外径18a,18b,18c,18d,18e以上となっている。しかしながら、実験例2のサンプルは、反ギヤ側の外径18aがギヤ側の外径18eよりも大きいため、現像剤Tの劣化が反ギヤ側で進行し、これによって、現像されない劣化現像剤Tが発生する。その結果、実験例2は、白地カブリが発生した、と考えられる。
【0131】
(実験例4及び実験例5についての考察)
実験例4及び実験例5で画像不良が発生しなかった理由は、スポンジ層18Bが、初期時外径18a,18b,18c,18d,18eから寿命時外径18a,18b,18c,18d,18eまでの変化に亘って、白地カブリの発生しない範囲内で変化しているため、と考えられる。
【0132】
なお、実験例4のサンプルは、初期時外径比の増加の割合が実験例5のサンプルよりも大きく設定されているが、寿命時に、実験例5と同様に、バランスの取れた形状となっている。その理由は、スポンジ層18Bの外径が大きいほど、現像ローラ14との当たりが強くなり、その結果、スポンジ層18Bの磨耗量が大きくなるためである、と考えられる。
【0133】
(実証実験全体についての考察)
このように、実験では、現像装置10は、初期時外径比として0.6%以上でかつ1.2%以下の範囲(以下、「0.6〜1.2%の範囲」と称する)で、供給ローラ18のスポンジ層18Bのギヤ側の外径18eを反ギヤ側の外径18aよりも大きく設定しておくことによって、想定された寿命到達時まで、白地カブリの無い良好な画像を形成し続けることができることが確認できた。ただし、「0.6〜1.2%の範囲」とする初期時外径比の値は、実験によって確認された値に過ぎず、条件を変えて、さらに実験を行えば、広がる可能性がある。
【0134】
以上の通り、本実施形態1に係る現像装置10によれば、供給ローラ18のスポンジ層18Bの反ギヤ側の初期時外径18aに対するギヤ側の初期時外径18eが所定の範囲内に設定されているため、例えば、ギヤ側の初期時外径18eを反ギヤ側の初期時外径18aよりも大きく設定しておくことができ、これによって、想定された寿命到達時まで、白地カブリの発生を抑制することができ、もって、白地カブリの無い良好な画像を形成し続けることができる。
【0135】
[実施形態2]
以下、図8を参照して、本実施形態2に係る供給ローラ118につき説明する。なお、図8は、実施形態2に係る供給ローラの形状を示す模式図である。図8(a)は、実施形態1(実験例4及び実験例5)に係る供給ローラ18の形状を示しており、また、図8(b)は、本実施形態2に係る供給ローラ118の形状を示している。
【0136】
実施形態1(実験例4及び実験例5)に係る供給ローラ18は、図8(a)に示すように、スポンジ層18Bが反ギヤ側からギヤ側に向けて直線状に大きくなる、ストレートテーパ型に形成されている。
【0137】
これに対して、本実施形態2に係る供給ローラ118は、図8(b)に示すように、スポンジ層18Bが反ギヤ側からギヤ側に向けて徐々に大きくなる形状(以下、「ラッパ型」と称する)に形成されている。すなわち、本実施形態2に係る供給ローラ118は、スポンジ層18Bが湾曲した形状に形成されている。
【0138】
ただし、図8は、供給ローラ18,118の形状の違いが一見して分かるように、双方のスポンジ層18Bの外径をデフォルメして示している。
【0139】
ここで、実験例7(図9A〜図9G及び図10A〜図10F参照)として、供給ローラ118をサンプルとして用いて、白地カブリの発生の抑制を確認するための実証実験を行った。なお、図9A〜図9G及び図10A〜図10Fは、それぞれ、実施形態2に係る供給ローラを用いた実験データを示す図である。図9A〜図9Gは、それぞれ、図5A〜図5Gに対し、実験例7の実験データを付加した内容となっている。また、図10A〜図10Fは、それぞれ、図6A〜図6Fに対し、実験例1及び実験例4の実験データのみを残して、他の実験例の実験データを削除するとともに、実験例7の実験データを付加した内容となっている。
【0140】
なお、実験例7は、用いるサンプルが異なる以外は、実験例1〜実験例5と同様の内容の実験例である。したがって、本実施形態2では、画像形成装置1及び現像装置10の動作は、実施形態1と同じである。また、白地カブリの評価方法は、実施形態1と同じである。
【0141】
実験例7のサンプルは、反ギヤ側の初期時外径18a、中央の初期時外径18c、及びギヤ側の初期時外径18eが、それぞれ、約φ15.48mm、約φ15.50mm、及び約φ15.65mmとなっていた(図9A参照)。したがって、実験例7のサンプルは、スポンジ層18Bが「ラッパ型」に形成されており、反ギヤ側に対するギヤ側の初期時外径比が「100.6%」となっていた(図9B参照)。
【0142】
実験では、1ページ目の印刷画像に対して、白地カブリの有無を検出することによって、初期時の白地カブリを評価し、さらに、3万ページ目の印刷画像に対して、白地カブリの有無を検出することによって、寿命時の白地カブリを評価した。
【0143】
その結果、実験例7は、図5Gに示すように、初期時の白地カブリの評価結果及び寿命時の白地カブリの評価結果が、ともに、画像不良が無いため、「○(OK)」となった。
【0144】
ここで、実験例7の初期時の白地カブリの評価結果及び寿命時の白地カブリの評価結果について考察すると、以下のことが推定される。
【0145】
(実験例7についての考察)
実験例7で画像不良が発生しなかった理由は、実験例4及び実験例5の各サンプルと同様に、供給ローラ118のスポンジ層18Bが、初期時外径18a,18b,18c,18d,18eから寿命時外径18a,18b,18c,18d,18eまでの変化に亘って、白地カブリの発生しない範囲内で変化しているため、と考えられる。
【0146】
なお、実験例7のサンプルは、実験例5のサンプルと比較すると、現像ローラ14に対する供給ローラ118の接触圧の平均が、初期時から寿命時の直前まで、小さくなるため、駆動トルクが小さくなる、という利点がある。
【0147】
以上の通り、本実施形態2によれば、スポンジ層18Bが「ラッパ型」になるように、スポンジ層18Bのギヤ側の端部の初期時外径18eのみが大きく設定された供給ローラ118を用いることにより、現像装置10の想定された寿命到達時まで、白地カブリの発生を抑制することができ、もって、白地カブリの無い良好な画像を形成し続けることができる。
しかも、本実施形態2によれば、実施形態1よりも駆動トルクを小さくすることもできる。
【0148】
本発明は、前記した実施形態に限定されることなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更や変形を行うことができる。
【0149】
例えば、実施形態1及び実施形態2は、ともに、画像形成装置1として、単色型の直接印刷方式の電子写真プリンタを想定して説明した。しかしながら、本発明は、いわゆる中間転写方式の画像形成装置や、複数の現像装置を備えたカラーの画像形成装置にも適用することができる。
【0150】
また、例えば、本発明は、プリンタに限らず、ファクシミリ装置、複写機、MFP等の画像形成装置に用いることができる。なお、「MFP」とは、Multi Function Peripheral(又はProduct)の略称で、プリンタにファクシミリ機能やスキャナ機能、コピー機能等を付加した装置である。
【符号の説明】
【0151】
1 画像形成装置
2 トレイ
3 スタッカ
4 搬送路
5 ホッピングローラ
6 レジストローラ
7 搬送ローラ
8 排出ローラ
10 現像装置
11 トナーカートリッジ
12 感光体ドラム
13 帯電ローラ
14 現像ローラ
14A,18A シャフト
14B ゴム弾性層
15 クリーニング部材
16 貯留室
17 トナーセンサ
18 供給ローラ
18B スポンジ層
18a,18b,18c,18d,18e 外径
19 層形成ブレード
20 露光装置
30 転写ローラ
40 定着装置
50 制御部
61 フィルム
62 帯電クリーニング部材
63 スパイラル
64 廃トナー収容部
70 筐体
71 感光体ドラムギヤ
72 現像ローラギヤ
73 アイドルギヤ
74 供給ローラギヤ
79 駆動モータ
81 当接部位(印刷領域)
P 記録用紙
Pa,Pb,Pc,Pd,Pe 測定位置
T 現像剤(トナー)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
現像剤を用いる現像装置において、
静電潜像を担持する像担持体と、
前記像担持体に担持された前記静電潜像を前記現像剤によって現像する現像部材と、
前記現像部材に当接して、前記現像剤を前記現像部材に供給する供給部材と、
前記現像部材の軸方向の一端側に設けられた第1のギヤと、
前記供給部材の軸方向の一端側に設けられた第2のギヤとを備え、
前記第2のギヤは、前記第1のギヤ側からの駆動力が伝達され、
前記供給部材は、前記現像部材と当接する当接部位の、前記第2のギヤが設けられていない他端側の初期時外径に対する、前記第2のギヤが設けられた一端側の初期時外径が、所定の範囲内に設定されている
ことを特徴とする現像装置。
【請求項2】
請求項1に記載の現像装置において、
前記所定の範囲内は、白地カブリが発生しない範囲内である
ことを特徴とする現像装置。
【請求項3】
請求項2に記載の現像装置において、
前記白地カブリが発生しない範囲は、少なくとも、前記当接部位の前記他端側の初期時外径に対する前記一端側の初期時外径の比が0.6%以上でかつ1.2%以下の範囲を含む範囲である
ことを特徴とする現像装置。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の現像装置において、
前記供給部材は、前記当接部位の形状が前記他端側から前記一端側に向けて直線状に大きくなる、ストレートテーパ型に形成されている
ことを特徴とする現像装置。
【請求項5】
請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の現像装置において、
前記供給部材は、前記当接部位の形状が前記他端側から前記一端側に向けて徐々に大きくなる、ラッパ型に形成されている
ことを特徴とする現像装置。
【請求項6】
請求項1乃至請求項5のいずれか一項に記載の現像装置において、
前記供給部材は、前記当接部位がシリコンゴムによってスポンジ状に形成されている
ことを特徴とする現像装置。
【請求項7】
請求項1乃至請求項6のいずれか一項に記載の現像装置において、
前記現像部材は、前記供給部材に当接する当接部位がウレタンゴムによって層状に形成されている
ことを特徴とする現像装置。
【請求項8】
請求項1乃至請求項7のいずれか一項に記載の現像装置において、
前記現像剤は、粉砕法によって製造されている
ことを特徴とする現像装置。
【請求項9】
請求項1乃至請求項8のいずれか一項に記載の現像装置において、
前記第2のギヤは、アイドルギヤを介して、前記第1のギヤ側からの駆動力が伝達される
ことを特徴とする現像装置。
【請求項10】
電子写真プロセスによって記録転写材に画像を形成する画像形成装置において、
画像を形成する画像形成ユニットとして、請求項1乃至請求項9のいずれか一項に記載の現像装置を用いる
ことを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図5C】
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【図5D】
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【図5E】
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【図5F】
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【図5G】
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【図6A】
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【図6B】
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【図6C】
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【図6D】
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【図6E】
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【図6F】
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【図7】
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【図8】
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【図9A】
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【図9B】
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【図9C】
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【図9D】
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【図9E】
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【図9F】
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【図9G】
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【図10A】
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【図10B】
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【図10C】
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【図10D】
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【図10E】
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【図10F】
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【公開番号】特開2012−98642(P2012−98642A)
【公開日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−248151(P2010−248151)
【出願日】平成22年11月5日(2010.11.5)
【出願人】(591044164)株式会社沖データ (2,444)
【Fターム(参考)】