説明

現像装置、及び画像形成装置

【課題】トナー回収用現像剤担持体を設けたハイブリッド現像方式を用いて、トナー回収能力を持続させ、現像履歴(ゴースト)の発生しない高品質の画像を長期に渡って得ることのできる現像装置、及び画像形成装置を提供する。
【解決手段】トナー回収用現像剤担持体表面に導電性ブラシを形成し、現像剤内の電界を抑制することで、トナー回収用現像剤担持体表面へのトナー蓄積を防止し、トナー回収領域でのトナー回収能力低下を抑制する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、キャリヤとトナーとを含む現像剤を用い、トナー担持体にトナーを供給するためのトナー供給用現像剤担持体と、供給されたトナーで潜像を現像するためのトナー担持体と、トナー担持体から現像残トナーを回収するためのトナー回収用現像剤担持体と、を設けたハイブリッド現像装置、及びそれを用いる画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電子写真方式を用いた画像形成装置における現像方式としては、現像剤としてトナーのみを用いる一成分現像方式及びトナーとキャリヤを用いる二成分現像方式が知られている。
【0003】
一成分現像方式では、装置の簡略化、小型化、低コスト化の面で有利である一方、トナーを帯電させる規制部の強いストレスによりトナーの劣化が促進され易く、トナーの電荷受容性が低下しやすい。さらに、トナー規制部材やトナー担持体表面がトナーや外添剤により汚染されることでトナーへの電荷付与性も低下して、結果として現像装置の寿命が短くなってしまう。
【0004】
二成分現像方式ではトナーを、キャリヤとの混合による摩擦帯電で帯電するため、ストレスが小さく、トナーの劣化に対して有利である。さらにキャリヤ表面積が大きいため、トナーや外添剤による汚染に対しても相対的に強く、長寿命化に有利である。
【0005】
しかしながら、二成分現像法では像担持体上の静電潜像を現像する際に、現像剤の磁気ブラシによって像担持体表面を摺擦するため、磁気ブラシ痕が発生することがある。さらに、像担持体にキャリヤが付着しやすく、画像欠陥となる問題がある。
【0006】
二成分現像方式の長寿命の特長を有しながら、画像欠陥の問題を解決する現像方式として、現像剤担持体上に二成分現像剤を担持し二成分現像剤からトナーのみをトナー担持体に供給して現像に用いる、所謂ハイブリッド現像方式が開示されている(特許文献1参照)。
【0007】
しかしながら、ハイブリッド現像方式においては、トナー担持体上の現像に使用されなかった現像残トナーが、次の現像工程において現像履歴(ゴースト)として画像上に現れるという問題を有している。これは、現像剤担持体にバイアスを印加して現像に必要なトナーをトナー担持体に供給することを優先するため、現像剤担持体による現像残トナーの回収能力が不足してしまうことに起因している。
【0008】
近年、この問題を解決するため、ハイブリッド現像方式において、トナー回収用現像剤担持体を加え、トナー担持体上の現像残トナーを回収する電圧を印加する方式が提案されている(特許文献2参照)。特許文献2に記載の技術によれば、トナー回収用現像剤担持体によってトナー担持体上の現像残トナーを確実に回収できるため、初期的には現像履歴(ゴースト)の問題が発生しない。
【0009】
しかしながら、この方式では、トナー回収用現像剤担持体方向にトナーを引き付ける電圧が常に印加されているため、現像剤中のトナーがキャリヤから分離され、トナー回収用現像剤担持体表面へトナーが移動し、トナーの偏在が生じる。
【0010】
このようにトナーがトナー回収用現像剤担持体表面に偏在した状態では、トナー回収用現像剤担持体から現像剤を除去する際に、偏在したトナーがそのままトナー回収用現像剤担持体表面に残留する。その結果、繰り返し使用によってトナー回収用現像剤担持体上にトナーの蓄積が生じる。
【0011】
帯電したトナーの蓄積は、トナー回収領域での回収電界を阻害し、トナー回収能力を低下させてしまう。このため、初期的には十分であった回収能力は長期間持続せず、画像形成の繰り返しとともにやはりゴースト発生が問題となってくる。
【特許文献1】特開平5−150636号公報
【特許文献2】特開平10−319708号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
上述したように、ハイブリッド現像方式でのゴースト発生に対処するため技術改善が行われてきたが、十分に要求を満たす技術は提示されていない。
【0013】
従って、本発明の目的は、上記の課題を解決し、トナー回収用現像剤担持体を設けたハイブリッド現像方式を用いて、トナー回収能力を持続させ、現像履歴(ゴースト)の発生しない高品質の画像を長期に渡って得ることのできる現像装置、及び画像形成装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記の課題を解決するため、本発明は以下のような特徴を有するものである。
【0015】
1. トナーとキャリヤとを含む現像剤を収容する現像剤槽と、前記現像剤槽から前記現像剤の供給を受けて担持搬送するトナー供給用現像剤担持体と、前記トナー供給用現像剤担持体から前記トナーの供給を受けて担持搬送し、像担持体上の潜像を現像するトナー担持体と、前記トナー担持体から現像残トナーを回収するトナー回収用現像剤担持体と、を備えた現像装置であって、前記トナー回収用現像剤担持体は、その表面に導電性ブラシが形成されていることを特徴とする現像装置。
【0016】
2. 前記トナー回収用現像剤担持体は、固定配置された磁石体と、該磁石体を内包する回転自在なスリーブローラとから構成され、前記導電性ブラシは、樹脂に導電性フィラーを分散させたブラシ糸を前記スリーブローラに電気的に導通するよう接着して形成されていることを特徴とする1に記載の現像装置。
【0017】
3. 前記トナー回収用現像剤担持体に、前記トナー担持体との間で、前記トナーを前記トナー回収用現像剤担持体側に移動させる方向のバイアス電圧を印加するための電源を備えることを特徴とする1または2に記載の現像装置。
【0018】
4. 前記トナー回収用現像剤担持体に、前記トナー担持体との間で、前記トナーを前記トナー担持体側に移動させる方向のバイアス電圧を印加するための電源と、前記トナー供給用現像剤担持体に、前記トナー担持体との間で、前記トナーを前記トナー担持体側に移動させる方向のバイアス電圧を印加するための電源を備え、前記トナー回収用現像剤担持体へ印加するバイアス電圧の平均値は、前記トナー供給用現像剤担持体へ印加するバイアス電圧の平均値と、絶対値が同じか、あるいは小さいことを特徴とする1または2に記載の現像装置。
【0019】
5. 1乃至4の何れか1項に記載された現像装置を備えることを特徴とする画像形成装置。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、トナー回収用現像剤担持体によってトナー担持体上の現像残トナーの回収を確実に行い、またトナー回収用現像剤担持体へのトナーの蓄積を回避できるため、常にトナー担持体上に安定したトナー層が供給される。
【0021】
これにより、トナー回収能力が持続し、ゴーストの問題が発生しない高画質の画像を長期に渡って得ることができる現像装置及び画像形成装置が提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
本発明の実施の形態について、以下に図面を用いて説明する。
【0023】
(画像形成装置の構成と動作)
図1に、本発明の一実施形態による画像形成装置の主要部の構成例を示す。図1を用いて画像形成装置の概略構成と動作を説明する。
【0024】
本画像形成装置は、電子写真方式により像担持体(感光体)1に形成されたトナー像を用紙等の転写媒体Pに転写して画像形成を行うプリンタである。
【0025】
本画像形成装置は、画像を担持するための像担持体1を有しており、像担持体1の周囲には、像担持体1を帯電するための帯電部材3、像担持体1上の静電潜像を現像する現像装置2、像担持体1上のトナー像を転写するための転写ローラ4、及び像担持体1上の残留トナー除去用のクリーニングブレード5が、像担持体1の回転方向Aに沿って順に配置されている。
【0026】
像担持体1は、帯電部材3で帯電された後に、図中のE点の位置でレーザ発光器などを備えた露光装置30により露光されて、その表面上に静電潜像が形成される。現像装置2は、この静電潜像を現像し、トナー像を形成する。転写ローラ4は、この像担持体1上のトナー像を転写媒体Pに転写した後、図中の矢印C方向に排出する。クリーニングブレード5は、転写後の像担持体1上の残留トナーを機械的な力で除去する。
【0027】
画像形成装置に用いられる像担持体1、帯電部材3、露光装置30、転写ローラ4、クリーニングブレード5等は、周知の電子写真方式の技術を任意に使用してよい。例えば、帯電部材3として図中、帯電ローラが示されているが、像担持体1と非接触の帯電装置であってもよい。また例えば、クリーニングブレードはなくてもよい。
【0028】
次に、本実施形態に係るハイブリッド現像方式の現像装置2の構成例を説明する。
【0029】
現像装置2は、以下の構成要素を備える。すなわち、トナーとキャリヤを含む現像剤24を収容する現像剤槽16、現像剤槽16から供給された現像剤24を表面に担持して搬送するトナー供給用現像剤担持体11、トナー供給用現像剤担持体11からトナー供給領域7においてトナーの供給を受け、前記像担持体1上に形成された静電潜像を現像するトナー担持体25、現像領域6を通過した後にトナー担持体25上に残留する現像残トナーをトナー回収領域8において回収するトナー回収用現像剤担持体26を備える。
【0030】
また現像装置2は、トナー担持体25に電圧を供給するトナー担持体用バイアス電源31、トナー供給用現像剤担持体11に電圧を供給するトナー供給用現像剤担持体用バイアス電源32、トナー回収用現像剤担持体26に電圧を供給するトナー回収用現像剤担持体用バイアス電源33、及びそれらの電源を制御する制御装置34を備える。
【0031】
現像装置2の詳細な構成と動作については、後述する。
【0032】
(現像剤の構成)
本実施形態に係る現像装置において使用する現像剤の構成について説明する。
【0033】
本実施形態において使用する現像剤24はトナーと該トナーを帯電するためのキャリヤを含んでなるものである。
【0034】
<トナー>
トナーとしては、特に限定されず、一般に使用されている公知のトナーを使用することができ、バインダー樹脂中に着色剤や、必要に応じて荷電制御剤や離型剤等を含有させ、外添剤を処理させたものを使用できる。トナー粒径としてはこれに限定されるものではないが、3〜15μm程度が好ましい。
【0035】
このようなトナーを製造するにあたっては、一般に使用されている公知の方法で製造することができる。例えば、粉砕法、乳化重合法、懸濁重合法等を用いて製造することができる。
【0036】
トナーに使用するバインダー樹脂としては、これに限定されるものではないが、例えば、スチレン系樹脂(スチレンまたはスチレン置換体を含む単重合体または共重合体)やポリエステル樹脂、エポキシ系樹脂、塩化ビニル樹脂、フェノール樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリウレタン樹脂、シリコーン樹脂などが挙げられる。これらの樹脂単体もしくは複合体により、軟化温度が80〜160℃の範囲のものを、またガラス転移点が50〜75℃の範囲のものを用いることが好ましい。
【0037】
また、着色剤としては、一般に使用されている公知のものを用いることができ、例えば、カーボンブラック、アニリンブラック、活性炭、マグネタイト、ベンジンイエロー、パーマネントイエロー、ナフトールイエロー、フタロシアニンブルー、ファーストスカイブルー、ウルトラマリンブルー、ローズベンガル、レーキーレッド等を用いることができ、一般に上記のバインダー樹脂に対して2〜20質量%の割合で用いることが好ましい。
【0038】
また、上記の荷電制御剤としても、公知のものを用いることができ、正帯電性トナー用の荷電制御剤としては、例えばニグロシン系染料、4級アンモニウム塩系化合物、トリフェニルメタン系化合物、イミダゾール系化合物、ポリアミン樹脂などがある。負帯電性トナー用荷電制御剤としては、Cr、Co、Al、Fe等の金属含有アゾ系染料、サリチル酸金属化合物、アルキルサリチル酸金属化合物、カーリックスアレーン化合物などがある。荷電制御剤は一般に上記のバインダー樹脂に対して0.1〜10質量%の割合で用いることが好ましい。
【0039】
また、上記の離型剤としても、一般に使用されている公知のものを用いることができ、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、カルナバワックス、サゾールワックス等を単独あるいは2種類以上組み合わせて使用することができ、一般に上記のバインダー樹脂に対して0.1〜10質量%の割合で用いることが好ましい。
【0040】
また、上記の外添剤としても、一般に使用されている公知のものを用いることができ、流動性改善例えば、シリカ、酸化チタン、酸化アルミニウム等の無機微粒子や、アクリル樹脂、スチレン樹脂、シリコーン樹脂、フッ素樹脂等の樹脂微粒子を使用することができ、特にシランカップリング剤やチタンカップリング剤やシリコーンオイル等で疎水化したものを用いるのが好ましい。そして、このような流動化剤を上記のトナーに対して0.1〜5質量%の割合で添加させて用いるようにする。外添剤の個数平均一次粒径は10〜100nmであることが好ましい。
【0041】
さらに上記外添剤として、トナーと逆極性の荷電性を有する逆極性粒子を使用してもよい。好適に使用される逆極性粒子はトナーの帯電極性によって適宜選択される。
【0042】
トナーとして負帯電性トナーを用いる場合、逆極性粒子としては、正帯電性を有する微粒子が用いられ、例えば、チタン酸ストロンチウム、チタン酸バリウム、アルミナ等の無機微粒子やアクリル樹脂、ベンゾグァナミン樹脂、ナイロン(登録商標)樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂等の熱可塑性樹脂あるいは熱硬化性樹脂で構成された微粒子を使用することができる。また樹脂中に正帯電性を付与する正荷電制御剤を含有させたり、含窒素モノマーの共重合体を構成するようにしてもよい。
【0043】
上記の正荷電制御剤としては、例えば、ニグロシン染料、4級アンモニウム塩等を使用することができ、また上記の含窒素モノマーとしては、アクリル酸2−ジメチルアミノエチル、アクリル酸2−ジエチルアミノエチル、メタクリル酸2−ジメチルアミノエチル、メタクリル酸2−ジエチルアミノエチル、ビニルピリジン、N−ビニルカルバゾール、ビニルイミダゾール等を使用することができる。
【0044】
一方、正帯電性トナーを用いる場合、逆極性粒子としては、負帯電性を有する微粒子が用いられ、例えば、シリカ、酸化チタン等の無機微粒子に加え、フッ素樹脂、ポリオレフィン樹脂、シリコーン樹脂、ポリエステル樹脂等の熱可塑性樹脂あるいは熱硬化性樹脂で構成された微粒子を使用することができる。また樹脂中に負帯電性を付与する負荷電制御剤を含有させたり、含フッ素アクリル系モノマーや含フッ素メタクリル系モノマーの共重合体を構成するようにしてもよい。上記の負荷電制御剤としては、例えば、サリチル酸系、ナフトール系のクロム錯体、アルミニウム錯体、鉄錯体、亜鉛錯体等を使用することができる。
【0045】
また、逆極性粒子の帯電性及び疎水性を制御するために、無機微粒子の表面をシランカップリング剤、チタンカップリング剤、シリコーンオイル等で表面処理するようにしてもよく、特に、無機微粒子に正帯電性を付与する場合には、アミノ基含有カップリング剤で表面処理することが好ましく、また負帯電性を付与する場合には、フッ素基含有カップリング剤で表面処理することが好ましい。
【0046】
逆極性粒子の個数平均粒径は、100〜1000nmであることが好ましい。トナーに対して0.1〜10質量%の割合で添加させて用いるようにする。
【0047】
<キャリヤ>
キャリヤとしては、特に限定されず、一般に使用されている公知のキャリヤを使用することができ、バインダー型キャリヤやコート型キャリヤなどが使用できる。キャリヤ粒径としてはこれに限定されるものではないが、15〜100μmが好ましい。
【0048】
バインダー型キャリヤは、磁性体微粒子をバインダー樹脂中に分散させたものであり、キャリヤ表面に正または負帯電性の帯電性微粒子を固着させたり、表面コーティング層を設けることもできる。バインダー型キャリヤの極性等の帯電特性は、バインダー樹脂の材質、帯電性微粒子、表面コーティング層の種類によって制御することができる。
【0049】
バインダー型キャリヤに用いられるバインダー樹脂としては、ポリスチレン系樹脂に代表されるビニル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ナイロン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂などの熱可塑性樹脂、フェノール樹脂等の硬化性樹脂が例示される。
【0050】
バインダー型キャリヤの磁性体微粒子としては、マグネタイト、ガンマ酸化鉄等のスピネルフェライト、鉄以外の金属(Mn、Ni、Mg、Cu等)を一種または二種以上含有するスピネルフェライト、バリウムフェライト等のマグネトプランバイト型フェライト、表面に酸化層を有する鉄や合金の粒子を用いることができる。その形状は粒状、球状、針状の何れであってもよい。特に高磁化を要する場合には、鉄系の強磁性微粒子を用いることが好ましい。また、化学的な安定性を考慮すると、マグネタイト、ガンマ酸化鉄を含むスピネルフェライトやバリウムフェライト等のマグネトプランバイト型フェライトの強磁性微粒子を用いることが好ましい。強磁性微粒子の種類及び含有量を適宜選択することにより、所望の磁化を有する磁性樹脂キャリヤを得ることができる。磁性体微粒子は磁性樹脂キャリヤ中に50〜90質量%の量で添加することが適当である。
【0051】
バインダー型キャリヤの表面コート材としては、シリコーン樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、フッ素系樹脂等が用いられ、これらの樹脂を表面にコートし硬化させてコート層を形成することにより、帯電付与能力を向上させることができる。
【0052】
バインダー型キャリヤの表面への帯電性微粒子あるいは導電性微粒子の固着は、例えば、磁性樹脂キャリヤと微粒子とを均一混合し、磁性樹脂キャリヤの表面にこれら微粒子を付着させた後、機械的・熱的な衝撃力を与え、微粒子を磁性樹脂キャリヤ中に打ち込むようにして固定することにより行われる。この場合、微粒子は、磁性樹脂キャリヤ中に完全に埋設されるのではなく、その一部を磁性樹脂キャリヤ表面から突き出すようにして固定される。
【0053】
帯電性微粒子としては、有機、無機の絶縁性材料が用いられる。具体的には、有機系としては、ポリスチレン、スチレン系共重合物、アクリル樹脂、各種アクリル共重合物、ナイロン、ポリエチレン、ポリプロピレン、フッ素樹脂及びこれらの架橋物などの有機絶縁性微粒子を用いることができ、帯電レベル及び極性については、素材、重合触媒、表面処理等により、希望するレベルの帯電及び極性を得ることができる。また、無機系としては、シリカ、二酸化チタン等の負帯電性の無機微粒子や、チタン酸ストロンチウム、アルミナ等の正帯電性の無機微粒子などが用いられる。
【0054】
一方、コート型キャリヤは磁性体からなるキャリヤコア粒子に樹脂コートがなされてなるキャリヤであり、コート型キャリヤにおいてもバインダー型キャリヤ同様、キャリヤ表面に正または負帯電性の帯電性微粒子を固着させたりできる。コート型キャリヤの極性等の帯電特性は、表面コーティング層の種類や帯電性微粒子により制御することができ、バインダー型キャリヤと同様の材料を用いることができる。特にコート樹脂はバインダー型キャリヤのバインダー樹脂と同様の樹脂が使用可能である。
【0055】
トナーとキャリヤの混合比は所望のトナー帯電量が得られるよう調整されれば良く、トナー混合比はトナーとキャリヤとの合計量に対して3〜50質量%、好ましくは6〜30質量%が適している。
【0056】
(現像装置の構成と動作)
図1を参照して本実施形態に係る現像装置2の詳細な構成例と動作例を説明する。
【0057】
<装置構成>
現像装置2において使用する現像剤24は、既述したようにトナーとキャリヤからなり、現像剤槽16に収容される。
【0058】
現像剤槽16は、ケーシング19により形成されており、通常は内部に混合撹拌部材17、18を収納している。混合撹拌部材17、18は、現像剤24を混合・撹拌し、トナー供給用現像剤担持体11へ現像剤24を供給する。ケーシング19の混合撹拌部材18に対向する位置には、好ましくは、トナー濃度検出用のATDC(Automatic Toner Density Control)センサ20が配設されている。
【0059】
現像装置2は通常、現像領域6で消費される分のトナーを現像剤槽16内に補給するための補給部10を有している。補給部10において、補給トナー23を収納した図示しないホッパから送られた補給トナー23が現像剤槽16内へ補給される。
【0060】
現像装置2はまた、トナー供給用現像剤担持体11に対向して配置された、現像剤担持体上を搬送される現像剤量を規制するための、現像剤薄層化用の規制部材(規制ブレード)15を有している。
【0061】
トナー供給用現像剤担持体11は、固定配置された磁石体13と、これを内包する回転自在なスリーブローラ12とから構成され、画像形成時には、トナー担持体25へとトナーを供給するためのトナー供給バイアスが、トナー供給用現像剤担持体用バイアス電源32により印加される。
【0062】
磁石体13は、スリーブローラ12の回転方向に沿ってN1、S1、N2、N3、S2の5つの磁極を有する。これらの磁極のうち、主磁極N1は、トナー担持体25と対向するトナー供給領域7の位置に配されている。
【0063】
トナー回収用現像剤担持体26も同様に、固定配置された磁石体28と、これを内包する回転自在なスリーブローラ27とから構成され、トナー担持体25上の現像残トナーを回収するためのトナー回収バイアスが、トナー回収用現像剤担持体用バイアス電源33により印加される。
【0064】
磁石体28は、スリーブローラ27の回転方向に沿ってS3、N5、S4、N6、N4の5つの磁極を有する。これらの磁極のうち、主磁極S3は、トナー担持体25と対向するトナー回収領域8の位置に配されている。
【0065】
さらに、現像装置2においては、トナー担持体25にトナー供給した後のトナー供給用現像剤担持体11上の現像剤24をトナー回収用現像剤担持体26へと受け渡すために、それぞれのS1極とN4極がトナー供給用現像剤担持体11とトナー回収用現像剤担持体26の対向部に配されている。トナー供給用現像剤担持体11のS1磁極側からトナー回収用現像剤担持体26のN4磁極側へ、現像剤24は受け渡され、搬送されていく。
【0066】
なお、スリーブローラ27は金属からなり、表面には、図2に示すように、導電性のブラシ36が形成されている。このトナー回収用現像剤担持体26に設けた上記導電性ブラシ36の材質構成や機能については、後述する。
【0067】
トナー担持体25はトナー供給用現像剤担持体11、トナー回収用現像剤担持体26及び像担持体1のそれぞれに対向するように配され、像担持体1上の静電潜像を現像するための現像バイアスがトナー担持体用バイアス電源31により印加されている。
【0068】
トナー担持体25は上記電圧を印加可能な限りいかなる材料からなっていてもよく、例えば、アルマイト等の表面処理を施したアルミローラが挙げられる。その他アルミ等の導電性基体上に、例えば、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポルスルホン樹脂、ポリエーテルケトン樹脂、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂、シリコーン樹脂、フッ素樹脂等の樹脂コートやシリコーンゴム、ウレタンゴム、ニトリルゴム、天然ゴム、イソプレンゴム等のゴムコーティングを施したものを用いてもよい。コーティング材料としては、これに限定されるものではない。
【0069】
さらに上記コーティングのバルクもしくは表面に導電剤が添加されていてもよい。導電剤としては、電子導電剤もしくはイオン導電剤が挙げられる。電子導電剤として、ケッチンブラック、アセチレンブラック、ファーネスブラック等のカーボンブラックや、金属粉、金属酸化物の微粒子等が挙げられるが、これに制約されない。イオン導電剤として、四級アンモニウム塩等のカチオン性化合物や、両性化合物、その他イオン性高分子材料が挙げられるが、これにこだわらない。さらに、アルミ等の金属材料からなる導電性ローラであっても構わない。
【0070】
<装置の動作>
図1を参照して現像装置2の動作例について詳しく説明する。
【0071】
現像剤槽16内の現像剤24は、混合撹拌部材17、18の回転により混合撹拌され、摩擦帯電すると同時に現像剤槽16内で循環搬送され、トナー供給用現像剤担持体11表面のスリーブローラ12へと供給される。
【0072】
この現像剤24は、トナー供給用現像剤担持体11内部の磁石体13の磁力によってスリーブローラ12の表面側に保持され、スリーブローラ12とともに回転移動して、トナー供給用現像剤担持体11に対向して設けられた規制部材15で通過量を規制される。
【0073】
規制部材15により通過量を規制されたトナー供給用現像剤担持体11上の現像剤24は、さらにスリーブローラ12とともに回転移動して、トナー担持体25と対向するトナー供給領域7まで搬送される。
【0074】
トナー供給領域7では磁石体13の主磁極N1の磁力によって現像剤穂立ちが形成され、トナー担持体25に印加された現像バイアスとトナー供給用現像剤担持体11に印加されたトナー供給バイアスにより形成された供給電界がトナーに与える力により、現像剤24中のトナーがトナー担持体25側へ供給される。
【0075】
トナー担持体25に供給されたトナー層は、トナー担持体25の回転に伴って現像領域6へと搬送され、現像バイアスと像担持体1上の潜像電位とによって形成される現像電界により潜像が顕像へと現像される。現像方式は反転現像方式であってもよいし、または正規現像方式であってもよい。
【0076】
現像領域6でトナーを消費したトナー層(現像残トナー)は、さらにトナー回収用現像剤担持体26と対向するトナー回収領域8へと搬送される。
【0077】
一方、トナー供給領域7においてトナー担持体25へとトナーを供給した残りの現像剤24は、トナー回収用現像剤担持体26との対向部まで搬送され、トナー供給用現像剤担持体11の磁極S1とトナー回収用現像剤担持体26の磁極N4により形成される磁界によって、トナー回収用現像剤担持体26へと受け渡される。
【0078】
トナー回収用現像剤担持体26へと受け渡された現像剤24はトナー回収用現像剤担持体26のスリーブローラ27とともに回転移動して、トナー担持体25と対向するトナー回収領域8まで搬送される。
【0079】
トナー回収領域8では、トナー担持体25に印加された現像バイアスとトナー回収用現像剤担持体26に印加されたトナー回収バイアスにより形成された回収電界がトナーに与える力と、現像剤24の穂立ちによる機械的摺擦力とにより、トナー担持体25からトナー回収用現像剤担持体へと現像残トナーが移動し、回収される。
【0080】
トナー回収用現像剤担持体26上に回収されたトナーを含む現像剤24は、スリーブ27の回転とともに現像剤槽16に向けて搬送され、磁石体28のN6極とN4極の間で、トナー回収用現像剤担持体26上から剥離され、現像剤槽16内へと回収される。
【0081】
図示しない補給制御部が、ATDCセンサ20の出力値から、現像剤24中のトナー濃度が画像濃度確保のための最低トナー濃度以下になったことを検出すると、図示しないトナー補給手段によってホッパ内に貯蔵された補給トナー23がトナー補給部10を介して現像剤槽16内へ供給される。
【0082】
次に現像装置2の各現像剤担持体へのバイアス電圧印加による、トナー担持体との間のトナー供給、回収の制御方法について説明する。以下の各バイアス電圧印加は、制御装置34が、トナー担持体用バイアス電源31、トナー供給用現像剤担持体用バイアス電源32、トナー回収用現像剤担持体用バイアス電源33を制御して行われる(図1参照)。
【0083】
画像形成時においては、トナー供給領域7には、トナーがトナー供給用現像剤担持体11からトナー担持体25へと力を受ける向きの供給電界が形成されるよう、トナー担持体25及びトナー供給用現像剤担持体11にバイアス電圧が印加される。
【0084】
例えばトナー極性をマイナスとして説明すると、トナー供給用現像剤担持体11にはトナー担持体25よりも低い電圧を印加すればよい。
【0085】
またトナー回収領域8には、トナーがトナー担持体25からトナー回収用現像剤担持体26へと力を受ける向きの回収電界が形成されるよう、トナー担持体25及びトナー回収用現像剤担持体26にバイアス電圧が印加される。
【0086】
同様にトナー極性をマイナスとして説明すると、トナー回収用現像剤担持体26にはトナー担持体25よりも高い電圧を印加すればよい。
【0087】
またトナー回収領域8には、逆にトナーがトナー回収用現像剤担持体26からトナー担持体25へと力を受ける向きの電界、すなわちトナーを供給する方向の電界が形成されるよう、バイアス電圧を印加することも可能である。
【0088】
これは、後述するトナー回収用現像剤担持体26表面へのトナー蓄積を抑制する効果がある。しかしながら、トナー回収能力を保持するためには、少なくともトナー回収用現像剤担持体26へ印加するバイアス電圧の平均値が、同極性であるトナー供給用現像剤担持体11へ印加するバイアス電圧の平均値と比べて、絶対値が同じか、あるいは小さいことが必要である。
【0089】
またトナー担持体25、トナー供給用現像剤担持体11、トナー回収用現像剤担持体26に印加するバイアス電圧は、何れか一つまたは複数について、直流成分に加えて交流バイアスを重畳することもできる。
【0090】
この際用いる交流波形としては正弦波、矩形波、三角波など各種交流波形が利用できる。交流のバイアス電圧を利用した場合には、平均値が上記の大小関係を満たすようにバイアス電圧を設定すればよい。
【0091】
<現像剤の流れについて>
なお、上記現像装置2の構成と動作例では、現像剤の流れは次のようであった。
【0092】
すなわち、トナー供給用現像剤担持体11とトナー回収用現像剤担持体26が対向して配置し、現像剤槽16からトナー供給用現像剤担持体11上に供給された現像剤24をトナー供給用現像剤担持体11上で規制し、トナー供給用現像剤担持体11からトナー回収用現像剤担持体26へ受け渡し、トナー回収用現像剤担持体26から分離して現像剤槽16へと戻すようにしている。
【0093】
しかしながら、現像剤24の流れは上記の流れに限定されるものではない。
【0094】
例えば、トナー回収用現像剤担持体26から再度トナー供給用現像剤担持体11に現像剤24を受け渡した後に、トナー供給用現像剤担持体11から現像剤槽16へと戻すようにしてもよい。
【0095】
また、トナー供給用現像剤担持体11及びトナー回収用現像剤担持体26のそれぞれに現像剤24を供給し、搬送量を規制した後にトナー供給領域7及びトナー回収領域8に搬送し、それぞれの現像剤担持体上から現像剤24を分離して現像剤槽16へと戻す(トナー供給用現像剤担持体11とトナー回収用現像剤担持体26との現像剤の流れを別にする)ようにしてもよい。
【0096】
つまり、トナー供給領域7に搬送される現像剤24が現像剤槽16でトナー濃度が調整された現像剤でありさえすればよい。
【0097】
(導電性ブラシによるトナー蓄積防止について)
トナー回収領域でのトナー偏在によるトナー蓄積と、それを防止するためにトナー回収用現像剤担持体に設けた導電性ブラシの機能の詳細について説明する。
【0098】
<トナーの蓄積について>
トナー回収領域8では、従来、トナー担持体25に現像バイアスが加えられ、またトナー回収用現像剤担持体26にはトナー回収用のバイアスが加えられ、トナー回収電界が形成されていた。この回収電界によりトナー担持体25からトナー回収用現像剤担持体26へと現像残トナーが移動し、回収される。
【0099】
しかし、トナー回収用現像剤担持体26表面に、後述する導電性ブラシが形成されていないような場合には、この回収電界が強いとトナー回収領域8で現像剤(穂立ち)中のトナーがキャリヤから分離され、トナー回収用現像剤担持体26表面へトナーが移動し、表面でのトナーの偏在が生じてくる。
【0100】
このようにトナーがトナー回収用現像剤担持体26表面に偏在した状態では、トナー回収用現像剤担持体26から現像剤24を一旦除去する際に、偏在したトナーがそのままトナー回収用現像剤担持体26表面に残留する。その結果、繰り返し使用によってトナー回収用現像剤担持体26上にトナーの蓄積が生じる。
【0101】
帯電したトナーの蓄積は、トナー層電位を生じることでトナー回収領域8での回収電界を阻害し、トナー回収能力を低下させてしまう。このため、現像残トナーの回収能力が長期間持続せず、画像形成の繰り返しとともにゴースト発生が問題となってくる。
【0102】
<導電性ブラシの機能について>
本実施形態では、トナー回収領域8での回収電界によるトナー回収用現像剤担持体26表面へのトナーの偏在が生じるのを防止するため、導電性のブラシをトナー回収用現像剤担持体26表面に形成した。
【0103】
図2は、導電性ブラシ36が設けられたトナー回収用現像剤担持体26がトナー担持体25と対向しているトナー回収領域8を示す断面図である。
【0104】
トナー回収用現像剤担持体26の表面は、金属のスリーブローラ27からなり、表面には図に示すように、導電性を有するブラシ糸36が多数形成されている。導電性ブラシ36のブラシ糸間に現像剤24が入り込んだ状態を示している。
【0105】
ブラシ糸材は樹脂に導電性フィラーを分散させたものであって、スリーブローラ27とは電気的に導通されるように接着されている。ブラシ糸36の長さは約0.5mm、繊度は10デニールであって、ブラシ糸の密度は10kf/cm、原糸抵抗は、10〜10Ωcmのものを使用した。なお、kf/cm(キロフィラメント/平方センチメートル)は、単位面積あたりのブラシの本数(千本単位)を表す。
【0106】
なお、ここに記載した、ブラシ糸36の寸法および物性は一例であり、ブラシ糸が非絶縁性で、かつ現像剤がブラシ糸間を自由に行き来できる密度であり、またトナー担持体25表面のトナーを掻き取る際にトナーにかかる負荷が許容できる程度の太さあるいは材質であれば、特にこれにこだわるものではない。
【0107】
この導電性ブラシ36の形成は、以下の理由による。
【0108】
トナー回収用現像剤担持体26に回収されたトナーがキャリヤに付着した状態であれば、現像剤としてキャリヤとともに現像剤槽16に戻り、トナー回収用現像剤担持体26の表面に蓄積することもない。回収したトナーがトナー回収用現像剤担持体26の表面に偏在したままであるということは、キャリヤへの再付着も起こっていないということになる。
【0109】
この主な原因は、回収用現像剤担持体26上の現像剤24層内の電界の作用によるものである。この作用により、回収されたトナーは、キャリヤとの摩擦帯電によってキャリヤと再付着することなく、現像剤24層内の電界の作用で層内を移動し、トナー回収用現像剤担持体26の基体表面に到達し蓄積されていく。
【0110】
そこで、トナー回収用現像剤担持体26の基体表面に導電性のブラシ糸を形成させ、トナーの移動を次のように阻止している。
【0111】
トナー担持体25表面からトナーを回収するためには、トナー回収用現像剤担持体26へトナーを移動させるための電界は強いほどよいが、一旦トナー回収用現像剤担持体26の表面の現像剤24層内にトナーが回収されると、トナー回収用現像剤担持体26表面への移動を抑制するために電界は強すぎない方がよい。
【0112】
すなわち、トナー回収用現像剤担持体26と同電位となる導電性のブラシ糸36を、現像剤24中に介在させることで、現像剤24層内のトナー回収用現像剤担持体26表面方向にかかる電界を抑制し、現像剤24中に回収したトナーのトナー回収用現像剤担持体26表面への移動を抑制する。
【0113】
さらには、ブラシ糸36を形成することで、見かけ上、基体の表面積が確保されることになり、現像剤24層内のキャリヤは、ブラシ糸36と接触することでトナー回収用現像剤担持体との電気的導通が確保されやすくなる。
【0114】
従って、例えトナー回収用現像剤担持体26表面へのトナー蓄積が生じたとしても、そのトナー層電位のために回収領域8においてトナー担持体25表面からトナーを回収するための回収電界が低下することを防ぐことができる。
【0115】
このような対策を施すことで、トナー回収領域8では、トナー回収用現像剤担持体26上の現像剤24層へトナーを回収する十分な回収電界を維持することができ、安定した動作が可能になる。またそれとともに、現像剤24層内の抑制された電界により、回収されたトナーが現像剤24層を通過してトナー回収用現像剤担持体26表面にたどり着くことが抑制される。
【0116】
ブラシ糸36は、導電性であればこれらの効果が発揮される。また十分な量の現像剤24がブラシ糸を介在した状態でトナー回収用現像剤担持体26表面に保持できるように、ブラシ糸36は適切な間隙を設けて形成させればよい。
【0117】
また、ブラシ糸36は対向するトナー担持体25と軽接触させてもよい。この場合、ブラシ糸36による掻き取り効果が期待できるため、トナー担持体25からトナーを電気的手段のみで回収するよりも回収能力が向上する。
【0118】
すなわち、このように導電性のブラシをトナー回収用現像剤担持体表面に設けることにより、現像剤層にかかる電界を抑制し、回収トナーのトナー回収用現像剤担持体表面への移動を抑制することで、トナー回収用現像剤担持体表面へのトナー蓄積を防止し、トナー回収領域でのトナー回収能力低下を抑制する。
【0119】
従って、トナー回収用現像剤担持体によってトナー担持体上の現像残トナーの回収を確実に行い、またトナー回収用現像剤担持体へのトナーの蓄積を回避できるため、常にトナー担持体上に安定したトナー層が供給される。これにより、トナー回収能力が持続し、ゴーストの問題が発生しない高画質の画像を長期に渡って得ることができる現像装置及び画像形成装置が提供できる。
【実施例】
【0120】
上述した実施形態に係る現像装置を用いて、効果を確認するために画像形成を実施した結果について述べる。
【0121】
<設定条件>
用いた現像装置は、上記図1に示された本発明の実施形態に係る現像装置2に相当する構成の現像装置を用意した。但し、トナー回収用現像剤担持体については、本発明に係る導電性ブラシを形成したもの(実施例で使用)と、比較のため従来のブラシを形成していないもの(比較例で使用)とを用意した。
【0122】
画像形成装置は、コニカミノルタビジネステクノロジーズ(株)製のMFPであるbizhubC350を改造し、図1に示した構成の現像装置2を装着して用いた。現像剤については後述するが、負帯電トナーを使用した。
【0123】
各現像装置において、像担持体とトナー担持体との現像ギャップは0.15mmとした。トナー担持体とトナー回収用現像剤担持体とのトナー回収ギャップは0.5mmとした。
【0124】
トナー担持体には、表面にアルマイト処理を施したアルミローラを用い、印加する現像バイアス電圧は、振幅がpeak to peakで1.4kV、DC成分が−300V、周波数が4kHz、Duty比が50%の矩形波電圧とした。
【0125】
トナー供給用現像剤担持体に印加する供給バイアス電圧は、DC−500V、トナー回収用現像剤担持体に印加する回収バイアス電圧は、以下の実施例及び比較例で指定する電圧とした。
【0126】
トナー担持体の像担持体に対する周速度比θは1.5とした。また、トナー担持体に対する回収用現像剤担持体および供給用現像剤担持体の周速度比θは1.2とした。像担持体上に形成された静電潜像の背景部電位は−550V、画像部電位は−60Vであった。
【0127】
(実施例1)
図1に示す現像装置2(トナー回収用現像剤担持体ブラシあり)を用い、トナー回収用現像剤担持体には−200Vの直流電圧を印加し、トナー担持体に対して+100Vの電位差を与えた。
【0128】
(実施例2)
図1に示す現像装置2(トナー回収用現像剤担持体ブラシあり)を用い、トナー回収用現像剤担持体には−300Vの直流電圧を印加し、トナー担持体に対して同電位とした。
【0129】
(実施例3)
図1に示す現像装置2(トナー回収用現像剤担持体ブラシあり)を用い、トナー回収用現像剤担持体には−500Vの直流電圧を印加し、トナー担持体に対して−200Vの電位差を与えた。
【0130】
(比較例1)
図1に示す現像装置2(トナー回収用現像剤担持体ブラシなし)を用い、トナー回収用現像剤担持体に−200Vの直流電圧を印加し、トナー担持体に対して+100Vの電位差を与えた。
【0131】
(比較例2)
図1に示す現像装置2(トナー回収用現像剤担持体ブラシなし)を用い、トナー回収用現像剤担持体に−300Vの直流電圧を印加し、トナー担持体に対して同電位とした。
【0132】
(比較例3)
図1に示す現像装置2(トナー回収用現像剤担持体ブラシなし)を用い、トナー回収用現像剤担持体に−500Vの直流電圧を印加し、トナー担持体に対して−200Vの電位差を与えた。
【0133】
<現像剤>
トナー及び現像剤は、以下のように準備したものを用いた。
【0134】
湿式造粒法により作製された粒径約6.5μmのトナー母材に対し、流動化剤として、第1の疎水性シリカ0.2質量%と第2の疎水性シリカ0.5質量%と疎水性酸化チタン0.5質量%を、ヘンシェルミキサ(三井金属鉱山社製)を用いて40m/sの速度で3分間表面処理を行って第1回目の外添処理とした。
【0135】
ここで用いた第1の疎水性シリカは、平均一次粒径16nmのシリカ(#130:日本アエロジル社製)を疎水化剤であるヘキサメチルジシラザン(HMDS)により表面処理を施したものである。また、第2の疎水性シリカは、平均一次粒径20nmのシリカ(#90G:日本アエロジル社製)をHMDSにより表面処理したものである。疎水性酸化チタンは、平均一次粒径30nmのアナターゼ型酸化チタンを水系湿式中で疎水化剤であるイソブチルトリメトキシシランにより表面処理をしたものである。
【0136】
続いて第2回目の外添処理として、平均一次粒径350nmのチタン酸ストロンチウムをトナー母材粒子に対して2質量%加え、同じくヘンシェルミキサを用いて40m/sの速度で3分間処理し、トナーを得た。
【0137】
現像剤としては上記bizhub C350用のキャリヤ(粒径約33μm)と上記トナーを用いた。現像剤中のトナー濃度は8%とした。トナー濃度は現像剤全質量に対するトナー、後処理剤の合計質量の割合である。
【0138】
<評価方法>
各実施例及び比較例においては、上記の画像形成装置を用いて、図3に示したチャートを100枚連続印刷し、1枚目と100枚目の現像履歴(ゴースト)の発生状態を比較した。
【0139】
図3のチャートにおいて、51は白部、52は黒ベタ部、53はハーフ画像部である。白部51と黒ベタ部52とでは、トナー担持体の該当する領域で生じる現像残トナー量が大きく異なる。従って、現像残トナーが回収されず、残っていると、トナー担持体1周期後の現像時にその影響が、特にハーフ画像部で現れてくる(ゴーストである)。
【0140】
図3のチャートに54で示したのはチャートでは存在しないゴーストが生じた例である。黒ベタ部の1周期後の位置にハーフ画像部より薄い(トナー量の少ない)領域が発生している。
【0141】
現像履歴(ゴースト)の評価は、濃度計(X−Rite社製X−Rite310)により、印刷されたハーフ画像部の黒ベタ部、白部に対応する領域(55a及び55b)の濃度を測定し、濃度差が0.05未満の場合を○(特に良好)、0.05以上で0.1未満の場合を△(良好)、それ以外を×(発生)とした。
【0142】
また、100枚目終了後の現像器を取り出して、トナー回収用現像剤担持体表面へのトナーの偏在が発生しているかを確認するため、キャリヤとともに分離されずにN3からN4極の間で表面に付着しているトナーを目視で確認した。1枚目と同レベルのトナー蓄積状態であれば、○(良好)、明らかにそれ以上であれば×(トナー蓄積)とした。
【0143】
(評価結果)
実施例1〜3及び比較例1〜3の評価結果を表1に示す。
【0144】
【表1】

【0145】
表中、「ブラシ」は、図1に示す現像装置2において本発明に係る導電性ブラシを形成したトナー回収用現像剤担持体(ブラシあり)を使用しているか、従来のブラシ形成していないトナー回収用現像剤担持体(ブラシなし)を使用しているかを表す。
【0146】
「回収ΔVave」は、トナー回収用現像剤担持体に印加した電圧の平均値(設定は個別に異なる)からトナー担持体に印加した電圧の平均値(−300V)を引いた値を表している。
【0147】
「1枚目」は、1枚目のゴースト発生状況を前記の濃度差で判断した評価、「100枚目」は、100枚目のゴースト発生状況を前記の濃度差で判断した評価である。
【0148】
「トナー蓄積」は、100枚目終了後のトナー回収用現像剤担持体表面における、N3からN4極の間のトナー蓄積状態を既述したように目視で評価した結果である。
【0149】
表1において、実施例1と比較例1の評価結果を比較する。
【0150】
実施例1では、1枚目から100枚目までゴーストの発生がなく、100枚終了後もトナー回収用現像剤担持体表面へのトナーの偏在が生じていない。
【0151】
一方、比較例1では、1枚目ではゴーストの発生はないが、連続印刷により回収能力が不足していき、100枚目ではゴーストが発生している。また100枚終了後、トナー回収用現像剤担持体の表面目視確認では、トナーの偏在が生じていることが分かる。
【0152】
両者ともに、トナー回収用現像剤担持体に、トナーをトナー回収用現像剤担持体側に移動させる方向のバイアス電圧を印加している(回収ΔVaveが正)。しかしながら、導電性ブラシによる現像剤層内の電界の違い、すなわちトナー回収用現像剤担持体に導電性ブラシが形成されているかどうかで、ゴースト発生の差が現れている。
【0153】
次に、実施例2と比較例2の評価結果を比較する。
【0154】
実施例2でも、1枚目から100枚目までゴーストの発生がなく、100枚終了後もトナー回収用現像剤担持体表面へのトナーの偏在が生じていない。
【0155】
一方、比較例2では、これも1枚目ではゴーストの発生はないが、連続印刷により回収能力が不足していき、100枚目ではゴーストが発生している。また100枚終了後、トナー回収用現像剤担持体の表面目視確認では、トナーの偏在が生じていることが分かる。
【0156】
この場合、両者ともに、トナー回収用現像剤担持体に、トナーをトナー担持体側に移動させる方向のバイアス電圧を印加していない(回収ΔVaveが0)。しかしながら、回収電界にかかわらず、現像装置の違い、すなわちトナー回収用現像剤担持体に導電性ブラシが形成されているかどうかで、ゴースト発生の差が現れている。
【0157】
このように電界を生じないような回収バイアスであってもトナー回収用現像剤担持体へのトナー回収能力を保持することができるのは、トナー回収用現像剤担持体に印加する回収バイアス電圧の平均値が、トナー供給用現像剤担持体に印加する供給バイアス電圧の平均値と同極性で、より小さいことによる。
【0158】
同様のことが、次の実施例3と比較例3にもいえる。
【0159】
実施例3でも、1枚目から100枚目までゴーストの発生がなく、100枚終了後もトナー回収用現像剤担持体表面へのトナーの偏在が生じていない。
【0160】
一方、比較例3では、1枚目でも100枚目でもゴーストが発生している。しかし100枚終了後、トナー回収用現像剤担持体の表面目視確認では、トナーの偏在が生じていない。
【0161】
この場合は逆方向の電界を生じる回収バイアスであるが、トナー回収用現像剤担持体へのトナー回収能力を何とか保持することができているのは、やはりトナー回収用現像剤担持体に印加する回収バイアス電圧の平均値が、トナー供給用現像剤担持体に印加する供給バイアス電圧の平均値と同極性で、同じ(ほぼ限界)であることによる。但し、比較例3では、逆電界によりトナー蓄積は生じていないものの、回収能力が既に初期から低下してしまっている。
【0162】
上述のように、本実施形態に係る現像装置及び画像形成装置によれば、導電性のブラシを形成したトナー回収用現像剤担持体を用いることにより、現像剤層内の電界を抑制することで、トナー回収用現像剤担持体表面へのトナー蓄積を防止し、トナー回収領域でのトナー回収能力低下を抑制する。
【0163】
従って、トナー回収用現像剤担持体によってトナー担持体上の現像残トナーの回収を確実に行い、またトナー回収用現像剤担持体へのトナーの蓄積を回避できるため、常にトナー担持体上に安定したトナー層が供給される。これにより、トナー回収能力が持続し、ゴーストの問題が発生しない高画質の画像を長期に渡って得ることができる。
【0164】
なお、上述の実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではない。本発明の範囲は上記した説明ではなく特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【図面の簡単な説明】
【0165】
【図1】本発明の一実施形態による現像装置2及びそれを備えた画像形成装置の主要部の構成例を示す断面図である。
【図2】導電性ブラシが設けられたトナー回収用現像剤担持体がトナー担持体と対向しているトナー回収領域を示す断面図である。
【図3】現像履歴評価用のチャートを示す図である。合わせて印刷時のゴースト発生状態の例を示す。
【符号の説明】
【0166】
1 像担持体
2 現像装置
3 帯電部材
4 転写ローラ
5 クリーニングブレード
6 現像領域
7 トナー供給領域
8 トナー回収領域
11 トナー供給用現像剤担持体
12 スリーブローラ
13 磁石体
15 規制部材
16 現像剤槽
24 現像剤
25 トナー担持体
26 トナー回収用現像剤担持体
27 スリーブローラ
28 磁石体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トナーとキャリヤとを含む現像剤を収容する現像剤槽と、
前記現像剤槽から前記現像剤の供給を受けて担持搬送するトナー供給用現像剤担持体と、
前記トナー供給用現像剤担持体から前記トナーの供給を受けて担持搬送し、像担持体上の潜像を現像するトナー担持体と、
前記トナー担持体から現像残トナーを回収するトナー回収用現像剤担持体と、を備えた現像装置であって、
前記トナー回収用現像剤担持体は、その表面に導電性ブラシが形成されている
ことを特徴とする現像装置。
【請求項2】
前記トナー回収用現像剤担持体は、固定配置された磁石体と、該磁石体を内包する回転自在なスリーブローラとから構成され、
前記導電性ブラシは、樹脂に導電性フィラーを分散させたブラシ糸を前記スリーブローラに電気的に導通するよう接着して形成されている
ことを特徴とする請求項1に記載の現像装置。
【請求項3】
前記トナー回収用現像剤担持体に、前記トナー担持体との間で、前記トナーを前記トナー回収用現像剤担持体側に移動させる方向のバイアス電圧を印加するための電源を備える
ことを特徴とする請求項1または2に記載の現像装置。
【請求項4】
前記トナー回収用現像剤担持体に、前記トナー担持体との間で、前記トナーを前記トナー担持体側に移動させる方向のバイアス電圧を印加するための電源と、
前記トナー供給用現像剤担持体に、前記トナー担持体との間で、前記トナーを前記トナー担持体側に移動させる方向のバイアス電圧を印加するための電源を備え、
前記トナー回収用現像剤担持体へ印加するバイアス電圧の平均値は、前記トナー供給用現像剤担持体へ印加するバイアス電圧の平均値と、絶対値が同じか、あるいは小さい
ことを特徴とする請求項1または2に記載の現像装置。
【請求項5】
請求項1乃至4の何れか1項に記載された現像装置を備える
ことを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−265475(P2009−265475A)
【公開日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−116893(P2008−116893)
【出願日】平成20年4月28日(2008.4.28)
【出願人】(303000372)コニカミノルタビジネステクノロジーズ株式会社 (12,802)
【Fターム(参考)】