説明

現像装置、及び画像形成装置

【課題】トナー層規制ブレード22に印加するための直流電圧を専用に出力する直流電源を設けることなく、トナー担持ローラ2の表面上におけるトナー層の厚みを一定に規制する。
【解決手段】トナーをホッピングさせるための第1周期パルス電圧として、平均電位がトナーの正規帯電極性と同極のマイナス極性になるものを出力させるように第1パルス出力部120を構成するとともに、第1周期パルス電圧を平滑化させる平滑回路130を設け、平滑回路130による平滑化後の直流電圧を、トナー層厚規制ブレード22に印加するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トナー担持体の表面上でホッピングさせたトナーを潜像担持体の潜像に付着させて現像を行うホッピング現像方式の画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の画像形成装置としては、特許文献1に記載のものが知られている。この画像形成装置の現像装置は、回転可能な筒状の基体と、これの周面に沿って所定のピッチで並ぶように配設された複数の電極とを具備するトナー担持ローラを有している。それら複数の電極のうち、互いに隣り合った電極には、互いに位相ずれした周期パルス電圧が印加される。この印加によって電極間に交番電界が形成されると、トナー担持ローラの表面上のトナーが電極間をホッピングして往復する。トナーはこのようにしてホッピングしながら、トナー担持ローラの回転に伴って、感光体に対向する現像領域まで搬送される。現像領域では、トナー担持ローラの表面上でホッピングしたトナーが、感光体の静電潜像に引き寄せられて付着する。この付着により、静電潜像が現像されてトナー像になる。
【0003】
このように、ホッピングさせているトナーによって潜像を現像するホッピング現像方式では、感光体における潜像とその周囲の地肌部との電位差が非常に小さい低電位現像を実現することができる。現像ローラ表面に付着しているトナーを現像に用いる一成分現像方式や、現像ローラ表面上に担持されているキャリア粒子に付着しているトナーを現像に用いる二成分現像方式では実現できなかった数十[μm]程度の小さな電位差にすることも可能である。このように電位差を小さくすることで、感光体表面の電位差による負荷を軽減して感光体の長寿命化を図ることができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明者らは、ホッピング現像方式において、現像領域へのトナー搬送量の安定化を図るために、現像領域に進入する前のトナー担持ローラ表面に接触しながらローラ表面上のトナー層の厚みを規制する規制ブレードを設けた現像装置を試作した。そして、その試作機を用いて、様々な実験を行ったところ、規制ブレードに対してトナーの帯電極性と同極性の直流電圧を印加することで、トナー層の厚みを一定に規制し得ることがわかった。
【0005】
ところが、従来のホッピング現像方式の画像形成装置においては、現像装置内の各種部材に印加するバイアスを発生させる電源として、上述した周期パルス電圧を発生させるものしか設けていなかった。この電源に加えて、規制ブレードに印加するための直流電圧を専用に出力する直流電源を設けると、コストアップを引き起こしてしまう。
【0006】
本発明は、以上の背景に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、次のようなホッピング現像方式の画像形成装置を提供することである。即ち、規制ブレードなどのトナー層規制部材に印加するための直流電圧を専用に出力する直流電源を設けることなく、トナー層の厚みを一定に規制することができる画像形成装置である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、請求項1の発明は、表面に潜像を担持する潜像担持体を備えるとともに、無端状の表面にトナーを担持する基体、及び、前記基体の表面方向に沿って並ぶように配設された複数の電極、を具備するトナー担持体の無端移動する表面に対してトナー供給手段によって供給したトナーを、前記複数の電極のうち、周期的に発生する第1周期パルス電圧が印加される電極と、前記第1周期パルス電圧とは位相の異なる第2周期パルス電圧が印加される電極との間でホッピングさせながら、前記トナー担持体の表面移動によって前記潜像担持体に対向する現像領域まで搬送し、前記現像領域でホッピングさせたトナーを前記潜像担持体上の潜像に付着させて前記潜像を現像する現像装置と、前記第1周期パルス電圧を出力する第1パルス出力部、及び前記第2周期パルス電圧を出力する第2パルス出力部を具備するパルス電源装置とを備える画像形成装置において、前記第1周期パルス電圧として、平均電位がトナーの正規帯電極性と同極性になるものを出力させるように前記第1パルス出力部を構成するとともに、前記トナー担持体の表面における無端移動方向の全域のうち、前記トナー供給手段によるトナー供給位置を通過した後、前記現像領域に進入する前の領域に対向して、前記領域上のトナー層の厚みを規制するトナー層厚規制部材と、前記第1周期パルス電圧を平滑化させる平滑回路とを設け、前記平滑回路による平滑化後の直流電圧を、前記トナー層厚規制部材に印加するようにしたことを特徴とするものである。
また、請求項2の発明は、請求項1の画像形成装置において、制御手段からの制御信号に応じて前記第1周期パルス電圧のデューティ比を変化させる処理を実施するように、前記第1パルス出力部を構成したことを特徴とするものである。
また、請求項3の発明は、請求項2の画像形成装置において、環境を検知する環境検知手段を設けるとともに、前記環境検知手段による検知結果に応じて前記制御信号を変化させる処理を実施するように、前記制御手段を構成したことを特徴とするものである。
また、請求項4の発明は、請求項1乃至3の何れかの画像形成装置において、前記現像装置の現像能力を計測する現像能力計測手段を設けるとともに、前記現像能力計測手段による計測結果に応じて、前記第1周期パルス電圧のピーク間中心電位と、前記第2周期パルス電圧のピーク間中心電位とをそれぞれ変化させる処理を実施するように、制御部を構成したことを特徴とするものである。
また、請求項5の発明は、請求項4の画像形成装置であって、周期パルス電圧の低電位側ピーク値と同じ値の直流電圧をベース電圧として出力するベース電圧電源と、周期パルス電圧のピークツウピーク電圧と同じ値の直流電圧を前記ベース電圧に重畳するための重畳用電圧として出力する重畳電圧電源とを前記パルス電源装置に設けるとともに、前記重畳電圧電源からの前記重畳用電圧の出力の前記ベース電圧に対する重畳を入切することで周期パルスを生起せしめる処理を実施するように前記第1パルス出力部及び第2パルス出力部を構成したことを特徴とするものである。
また、請求項6の発明は、請求項5の画像形成装置において、前記現像能力計測手段による計測結果に応じて前記ベース電圧を変化させることで、前記ピーク間中心電位を変化させるようにしたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0008】
これらの発明においては、トナーの帯電極性と同極性の平均電位になる第1周期パルス電圧を平滑回路によって平滑化させることで、トナーの帯電極性と同極性の直流電圧を得る。そして、その直流電圧をトナー層厚規制部材に印加することで、トナー層厚規制部材に印加するための直流電圧を専用に出力する直流電源を設けることなく、トナー層の厚みを一定に規制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】実施形態に係る複写機を示す概略構成図。
【図2】同複写機における感光体と現像装置とを示す概略構成図。
【図3】同現像装置のトナー担持ローラを示す分解縦断面図。
【図4】同トナー担持ローラを示す縦断面図。
【図5】同トナー担持ローラの筒状の基体を部分的に示す部分横断面図。
【図6】同基体と、これの内部に嵌め込まれた芯金とを部分的に示す部分横断面図。
【図7】同トナー担持ローラを示す斜視図。
【図8】同トナー担持ローラを示す正面図。
【図9】同現像装置の第2パルス電極に印加される第2周期パルス電圧の波形と、芯金に印加される第1周期パルス電圧の波形とを示す波形図。
【図10】同トナー担持ローラを部分的に示す部分拡大横断面図。
【図11】マイナス極性の直流電圧からなるブレードバイアスと、現像領域へのトナー搬送量との関係を示すグラフ。
【図12】実施形態に係る複写機における電気回路の一部を示すブロック図。
【図13】第1周期パルス電圧の波形の第1例と、第2周期パルス電圧の第1例とを示す波形図。
【図14】第1周期パルス電圧の波形の第2例を、同第2周期パルス電圧の波形とともに示す波形図。
【図15】温湿度と、デューティ比設定値とブレードバイアスとの関係を示すグラフ。
【図16】第1実施例に係る複写機のプリンタ部を示す概略構成図。
【図17】第2変形例に係る複写機のトナー担持ローラにおける筒状の基体を示す縦断面図。
【図18】第2変形例に係る複写機のトナー担持ローラを示す縦断面図。
【図19】同トナー担持ローラのフランジや第2フランジを示す斜視図。
【図20】同トナー担持ローラの基体を示す正面図。
【図21】同基体を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、ホッピング現像方式を採用した画像形成装置である複写機に本発明を適用した一実施形態について説明する。
図1は、本実施形態に係る複写機を示す概略構成図である。
潜像担持体としてのドラム状の感光体49は、図中時計回り方向に回転駆動される。操作者がコンタクトガラス90に図示しない原稿を装置し、図示しないプリントスタートスイッチを押すと、原稿照明光源91及びミラー92を具備する第1走査光学系93と、ミラー94,95を具備する第2走査光学系96とが移動して、原稿画像の読み取りが行われる。走査された原稿画像がレンズ97の後方に配設された画像読み取り素子98で画像信号として読み込まれ、読み込まれた画像信号はデジタル化された後に画像処理される。そして、画像処理後の信号でレーザーダイオード(LD)が駆動され、このレーザーダイオードからのレーザー光がポリゴンミラー99で反射した後、ミラー80を介して感光体49を走査する。この走査に先立って、感光体49は帯電装置50によって一様に帯電され、レーザー光による走査により感光体49の表面に静電潜像が形成される。
【0011】
感光体49の表面に形成された静電潜像には現像装置1の現像処理によってトナーが付着し、これによりトナー像が形成される。このトナー像は、感光体49の回転に伴って、転写チャージャー60との対向位置である転写位置に搬送される。この転写位置に対しては、感光体49上のトナー像と同期するように、第1給紙コロ70aを具備する第1給紙部70、又は第2給紙コロ71aを具備する第2給紙部71から記録紙Pが送り込まれる。そして、感光体49上のトナー像は、転写チャージャー60のコロナ放電によって記録紙P上に転写される。
【0012】
このようにしてトナー像が転写された記録紙Pは、分離チャージャー61のコロナ放電によって感光体49表面から分離され、その後、搬送ベルト75によって定着装置76に向けて搬送される。そして、定着装置76内において、図示しないハロゲンランプ等の発熱源を内包する定着ローラ76aと、これに向けて押圧される加圧ローラ76bとの当接による定着ニップに挟み込まれる。その後、定着ニップ内での加圧や加熱によってトナー像が表面に定着せしめられた後、機外の排紙トレイ77に向けて排紙される。
【0013】
上述の転写位置を通過した感光体49表面に付着している転写残トナーは、クリーニング装置45によって感光体49表面から除去される。このようにしてクリーニング処理が施された感光体49表面は、除電ランプ44によって除電されて次の潜像形成に備えられる。
【0014】
図2は、実施形態に係る複写機における感光体49と現像装置1とを示す概略構成図である。同図において、ドラム状の感光体49は、図示しない駆動手段によって図中反時計回り方向に回転駆動される。この感光体49の図中左側方には、トナー担持ローラ2を有する現像装置1が配設されている。
【0015】
現像装置1は、トナー担持ローラ2の他、トナー供給ローラ18、撹拌パドル19、トナー層厚規制ブレード22などを有している。トナー供給ローラ18は、図示しない駆動手段によって図中時計回り方向に回転駆動されながら、現像装置1のトナー収容部内に収容されているトナーをスポンジ製のローラ表面に担持する。同図では、トナー供給ローラ18の回転方向として、トナー担持ローラ2との当接部で表面をトナー担持ローラ2とは逆のカウンター方向に設定した例を示した。これとは逆に、前記当接部で表面をトナー担持ローラ2と同じ方向に移動させる順方向を採用してもよい。
【0016】
トナー供給ローラ18の表面に担持されたトナーは、トナー供給ローラ18とトナー担持ローラ2との当接部において、トナー供給ローラ18からトナー担持ローラ2に供給される。このときの供給量は、トナー供給ローラ18の芯金に印加される供給バイアスの大きさによって調整される。なお、供給バイアスは、直流電圧であっても、交流電圧であっても、直流電圧に交流電圧を重畳したバイアスであってもよい。本複写機では、交流電圧たる周期パルス電圧を採用している。
【0017】
トナー担持ローラ2の表面上に供給されたトナーは、トナー担持ローラ2の表面上でホッピングしながら、トナー担持ローラ2の図中時計回り方向の回転に伴って周回移動する。なお、トナー担持ローラ2の表面上でトナーをホッピングさせる原理については、後に詳述する。
【0018】
トナー担持ローラ2の表面において、トナー供給ローラ18との当接部を通過した後、感光体49に対向する現像領域に進入する前の箇所には、片持ち支持されるトナー層厚規制ブレード22の自由端側が接触している。トナー担持ローラ2の表面上でホッピングしながら、ローラの回転に伴って全体的に図中反時計回り方向に移動するトナーによって形成されるトナー層は、トナー担持ローラ2とトナー層厚規制ブレード22との間に進入する際に層厚が規制される。その後、ローラの回転に伴ってローラとブレードとの当接部を抜けると、再びローラ表面上でホッピングしながら、現像領域へと搬送される。
【0019】
トナー担持ローラ2は、現像装置1のケーシング11に設けられた開口から外周面の一部を露出させている。この露出箇所は、感光体49に対して数十〜数百[μm]の間隙を介して対向している。このようにトナー担持ローラ2と感光体49とが対向している位置が、本複写機における現像領域となっている。トナー担持ローラ2の表面上でホッピングしながら現像領域まで搬送されたトナーは、感光体49上の静電潜像に引き寄せられて付着する。これにより、感光体表面上の静電潜像が現像されてトナー像になる。トナー担持ローラ2上でホッピングしながら現像領域を通過する際に、現像に寄与しなかったトナーは、トナー担持ローラ2の回転に伴って再び現像領域に戻ってくる。
【0020】
次に、本複写機におけるトナー担持ローラ2の具体的構成について説明する。
図3は、トナー担持ローラ2を示す分解縦断面図である。また、図4は、トナー担持ローラ2を示す縦断面図である。これらの図に示すように、トナー担持ローラ2は、円筒状の基体7と、基体7の長手方向の一端部に係合せしめられたフランジ9と、基体7に対して長手方向の他端部から挿入された芯金8とを有している。円筒状の基体7は、プラスチックなどの絶縁性材料からなる。また、フランジ9は、金属材料からなり、トナー担持ローラ2における長手方向の一端側で図示しない軸受けに回転自在に受けられる回転軸部9aを具備している。また、芯金8は、トナー担持ローラ3における長手方向の他端側で図示しない軸受けに回転自在に受けられる回転軸部8aを具備している。
【0021】
図5は、トナー担持ローラ(2)の筒状の基体7を部分的に示す部分横断面図である。基体7は、絶縁性材料からなる筒状の基層3と、これの表面上において、筒長手方向に延在する姿勢で周方向に所定のピッチで並ぶ複数の第2パルス電極5と、それら第2パルス電極5及び基層3を覆うように積層された絶縁性材料からなる表面層4とを具備している。ポリカーボネートやアルキッドメラミン等の絶縁性材料からなる基層3の厚みは、3[μm]〜50[μm]程度である。
【0022】
基層3の表面上に形成された複数の第2パルス電極5は、アルミニウム、銅、銀などの金属からなる。このような第2パルス電極5を形成する方法としては、種々の方法が考えられる。例えば、基層3の上にメッキや蒸着によって金属膜を形成し、フォトレジスト・エッチングによって複数の第2パルス電極5を形成する方法が挙げられる。また、インクジェット方式やスクリーン印刷によって導電ペーストを基層3の上に付着させて複数の矩形状の第2パルス電極5を形成する方法でもよい。
【0023】
基層3及び複数の第2パルス電極5を覆う表面層4を構成する絶縁性材料としては、シリコーン、ナイロン(登録商標)、ウレタン、アルキッドメラミン、ポリカーボネート等を例示することができる。表面層4は、スプレー法やディッピング法等によって形成することができる。
【0024】
図6は、筒状の基体7と、これの内部に嵌め込まれた芯金8とを部分的に示す部分横断面図である。芯金8は、ステンレスやアルミニウム等の金属材料を円筒状に成型したものである。ポリアセタール(POM)やポリカーボネート(PC)等からなる筒状体の表面にアルミニウムや銅などの金属層等からなる導電層を被覆したものを芯金8の代わりに用いてもよい。芯金8は、基体7に嵌め込まれた状態では、その外周面を筒状の基体7の内周面に密着させている。この状態では、円周方向において、複数の第2パルス電極5の間に、芯金8の表面が位置している。
【0025】
図7は、トナー担持ローラ2を示す斜視図である。また、図8は、トナー担持ローラ2を示す正面図である。なお、これらの図において、基体7の第2パルス電極5の上には、表面層が被覆されているので、実際には第2パルス電極5は見えないが、説明の都合上、表面層の図示を省略して第2パルス電極5を示している。
【0026】
複数の第2パルス電極5の一端部は、金属製のフランジ9に接触している。そして、このフランジ9には、第2パルス出力部120が接続されている。これにより、第2パルス出力部110から出力される第2周期パルス電圧としての第2周期パルス電圧が、フランジ9を介して複数の第2パルス電極5にそれぞれ印加される。
【0027】
一方、芯金8の回転軸部8bには、第1パルス出力部110が接続されている。これにより、第1パルス出力部110から出力される第1周期パルス電圧が、芯金8に印加される。
【0028】
図9は、第2パルス電極5に印加される第2周期パルス電圧の波形と、芯金8に印加される第1周期パルス電圧の波形とを示す波形図である。図示のように、2周期パルス電圧は、矩形状のパルスを周期的に生起せしめたものである。この第2周期パルス電圧において、高電位側のピーク値、低電位側のピーク値はそれぞれ、トナーの帯電極性と同じ極性になっている。よって、両ピーク値の中心値もトナーの帯電極性と同じ極性である。その中心値は、感光体表面における静電潜像の電位と、地肌部電位(帯電装置による一様帯電電位)との間の値になっている。一方、第1周期パルス電圧は、パルスの出現パターンが第2周期パルス電圧とは逆位相になっている。この第1周期パルス電圧における高電位側のピーク値、低電位側のピーク値はそれぞれ、第2周期パルス電圧と同じである。それら周期パルス電圧の周波数fは、0.1〜10[kHz]程度である。
【0029】
このような周期パルス電圧の印加により、図10に示すように、トナー担持ローラ2の表面上に担持されるトナーは、周方向において、第2パルス電極5と芯金8との間をホッピングで往復移動する。このような往復移動でトナー担持ローラ2の表面上に形成されるトナー浮遊層を、以下、「フレア」という。
【0030】
次に、実施形態に係る複写機の特徴的な構成について説明する。
先に示した図2において、環境変動などによって現像装置1内のトナーの帯電量が変動すると、トナー供給ローラ18からトナー担持ローラ2への単位時間あたりにおけるトナー供給量が変動する。この変動により、現像領域に搬送されるトナー量が変動してしまうと、現像濃度ムラを引き起こしてしまう。そこで、実施形態に係る複写機においては、トナー担持ローラ2の表面における周方向の全域のうち、トナー供給手段たるトナー供給ローラ18によるトナー供給位置(トナー供給ローラ18との接触位置)を通過した後、前記現像領域に進入する前の領域に接触して、その領域上のトナー浮遊層の厚みを規制するトナー層厚規制ブレード22を設けている。トナー層規制ブレード22は、金属板の表面及び裏面にそれぞれ絶縁層を被覆したものである。
【0031】
本発明者らは、図2に示した現像装置1を試作して、トナー層厚をトナー層規制ブレード22によって規制する実験を行った。初めに、金属板を電気的にフロートにした状態のトナー層厚規制ブレード22によってトナー層を規制する実験を行ったところ、規制後のトナー層の厚みを均一にすることが困難であることがわかった。次に、トナー層厚規制ブレード22の金属板に、交流電圧からなるブレード電圧を印加しながらトナー層厚を規制した。すると、規制後のトナー層厚をある程度安定化させることができたが、感光体49の地肌部にトナーを付着させる地汚れと呼ばれる現象を顕著に発生させてしまった。この地汚れを発生させた原因を調べたところ、トナー担持ローラ2の第2パルス電極と、トナー層厚規制ブレード22の金属板との間で放電を発生させ、その放電によってトナーを逆帯電させたためであることがわかった。図10に示したように、トナー担持ローラ2の第2パルス電極5の上には絶縁性の表面層4を被覆しており、且つトナー層厚規制ブレード22にも表面に絶縁層を被覆しているので、第2パルス電極5と、ブレードの金属板との間には2層の絶縁層を介在させている。にもかかわらず、それら絶縁層を介して放電を発生させてしまうのである。これは、第2パルス電極5と、ブレードの金属板との間の電位差が一時的に非常に大きくなってしまうからである。具体的には、第2パルス電極5には、トナーをホッピングさせるための第2周期パルス電圧を印加している。また、トナー層厚規制ブレード22の金属板には、交流電圧からなるブレードバイアスを印加している。それら電圧の周期は互いに異なっている。すると、第2周期パルス電圧の高電位側ピークと、ブレード電圧の低電位側ピークとを同期させるタイミングで、第2パルス電極5と金属板との電位差が非常に大きくなって、2層の絶縁層を介して放電が発生してしまうのである。
【0032】
次に、本発明者らは、トナー層厚規制ブレード22の金属板に、トナーの帯電極性と同じマイナス極性の直流電圧からなるブレード電圧を印加しながらトナー層厚を規制した。すると、地汚れを発生させることなく、規制後のトナー層厚を均一にすることができた。図11は、マイナス極性の直流電圧からなるブレードバイアスと、現像領域へのトナー搬送量との関係を示すグラフである。図示のように、ブレードバイアスをトナーと同じマイナス極性側に大きくするにつれて、現像領域へのトナー搬送量を増加させることができた。なお、ブレードバイアスについては、トナー担持ローラ2の電極に印加する第2周期パルス電圧と第1周期パルス電圧との平均電位と同じ値、あるいはそれよりもトナーの帯電極性と同じマイナス側に大きくする必要がある。
【0033】
このように、トナー層厚規制ブレード22に対してマイナス極性の直流電圧からなるブレードバイアスを印加することで、トナー搬送量を安定化させることができた。しかしながら、かかるブレードバイアスを出力するための専用の電源を設けると、コストアップを引き起こしてしまう。そこで、実施形態に係る複写機においては、直流電圧からなるブレード電圧を印加するための専用の電源を設けることなく、トナー層厚規制ブレード22に対してマイナス極性の直流電圧からなるブレードバイアスを印加するようになっている。
【0034】
図12は、実施形態に係る複写機における電気回路の一部を示すブロック図である。複写機は、パルス電源装置100、制御部150、画像濃度センサ151、温湿度センサ152などを備えている。複写機内の各種機器の制御を司る制御部150は、演算手段たるCPU(Central Processing Unit)、データ記憶手段であるRAM(Random Access Memory)及びROM(Read Only Memory)等からなり、各種の演算処理や、制御プログラムの実行を行うことができる。この制御部150には、画像濃度センサ151、温湿度センサ152、パルス電源装置100などが接続されている。
【0035】
画像濃度センサ151は、感光体上に形成されたパッチ状の基準トナー像の画像濃度を検知して、その結果を制御部150に出力することができる。また、環境検知手段としての温湿度センサ152は、複写機内の温度を検知してその結果を温度信号として制御部150に出力したり、湿度を検知してその結果を湿度信号として制御部150に出力したりすることができる。
【0036】
パルス電源装置100は、ベース電圧電源102、重畳電圧電源103、基準クロックパルス発生回路104、第2パルス出力部110、第1パルス出力部120、平滑回路130などを有している。ベース電圧電源102は、上述した第1周期パルス電圧や第2周期パルス電圧の低電位側ピーク値と同じ値の直流電圧からなるベース電圧を出力するものである。また、重畳電圧電源103は、第1周期パルス電圧や第2周期パルス電圧のピークツウピーク電圧(図9のVpp)と同じ値の直流電圧をベース電圧に重畳するための重畳用電圧として出力するものである。この重畳電圧電源103には、基準クロックパルス発生回路104、第2パルス出力部110、第1パルス出力部120がそれぞれ並列に接続されている。
【0037】
基準クロックパルス発生回路104は、基準クロックパルス信号を所定の周期で正確に第1パルス出力部120に出力する。第1パルス出力部120は、その基準クロックパルス信号に基づいて、出力側に対してベース電圧をそのまま送ったり、ベース電圧に重畳用電圧を重畳して送ったりする。これにより、ベース電圧を低電位側のピーク値とし、且つベース電圧に重畳用電圧を重畳した値を高電位側のピーク値とする第1周期パルス電圧を出力する。また、第1パルス出力部120は、自らが出力する第1周期パルス電圧のパルスを立ち上げる毎に、タイミング信号を第2パルス発生回路110に出力する。
【0038】
第2パルス出力部110も、出力側に対してベース電圧をそのまま送ったり、ベース電圧に重畳用電圧を重畳して送ったりする。これにより、ベース電圧を低電位側のピーク値とし、且つベース電圧に重畳用電圧を重畳した値を高電位側のピーク値とする第2周期パルス電圧を出力する。第2周期パルス電圧を第1周期パルス電圧とは逆位相のものにするために、第1パルス出力部120から送られてくるタイミング信号に基づいて、重畳用電圧の重畳を入切するタイミングを決定している。第2パルス出力部110から出力された第2周期パルス電圧は、トナー担持ローラ2の複数の第2パルス電極5それぞれに印加される。
【0039】
第1パルス出力部120の出力側には、トナー担持ローラ2の芯金8と、トナー供給ローラ18の芯金と、平滑回路130とがそれぞれ接続されている。そして、第1パルス出力部120から出力される第1周期パルス電圧が、トナー担持ローラ2の芯金8や、トナー供給ローラ18の芯金にそのまま印加される。また、第1周期パルス電圧は、抵抗131、コンデンサ133などを具備する平滑回路130で平滑化されて直流電圧に変換された後、ブレード電圧としてトナー層厚規制ブレード22に印加される。
【0040】
かかる構成では、トナーの帯電極性と同極性のマイナス極性の平均電位になる第1周期パルス電圧を平滑回路130によって平滑化させることで、マイナス極性の直流電圧を得る。そして、その直流電圧をトナー層厚規制ブレード22に印加することで、トナー層厚規制ブレード22に印加するための直流電圧を専用に出力する直流電源を設けることなく、トナー層の厚みを一定に規制することができる。
【0041】
図13は、第1周期パルス電圧の波形の第1例と、第2周期パルス電圧の第1例とを示す波形図である。実施形態に係る複写機においては、感光体(49)を約−800[V]に一様帯電せしめて地肌部とし、その地肌部に対してレーザー光を照射してレーザー露光箇所のマイナス電位を減衰せしめることで、約−50[V]の静電潜像を形成する。同図において、第1周期パルス電圧、及び第2周期パルス電圧はともに、そのデューティ比が50[%]になっている。デューティ比は、周期Tに対する低電位側パルス(図示の例では立ち上がりパルス)の持続時間の割合を示したものである。このデューティ比が小さくなるほど、周期パルス電圧の平均電位が高電位側にシフトする。両周期パルス電圧の低電位側のピーク値はそれぞれ−150[V]であり、高電位側のピーク値はそれぞれ−650[V]である。それらピーク値、及びデューディー比=50[%]の条件では、それぞれの周期パルス電圧の平均電位は何れも−400[V]になる。よって、トナー担持ローラ2の表面上の平均電位も−400[V]になる。この−400[V]という値は、感光体(49)の地肌部電位(−800V)よりも低電位であり、且つ静電潜像よりも高電位である。このような条件では、地肌部電位や潜像電位と同じマイナス極性のトナーが、トナー担持ローラ2上から感光体の静電潜像に転移する。これにより、静電潜像が現像される。
【0042】
図示の第1周期パルス電圧が、図12に示した平滑回路130を通ると、平滑化後の直流電圧は、第1周期パルス電圧の平均電位と概ね同じ値になる。つまり、図13に示した第1周期パルス電圧の条件では、約−400[V]のブレードバイアスがトナー層厚規制ブレード22に印加される。これにより、ブレード通過後のトナー層の厚みを均一にすることが可能である。但し、周期パルス電圧の平均電位=−400[V]というのは、あくまでもデフォルトでの条件である。本複写機の制御部150は、現像性能の計測した結果に基づいて必要に応じて低電位側のピーク値と高電位側のピーク値とをそれぞれ同じ量だけシフトさせることで、現像ポテンシャルを変化させ、それによって現像性能を調整する現像性能調整処理を定期的に実施するようになっている。
【0043】
この現像性能調整処理では、まず、感光体(49)の表面上に画像濃度検知用のパッチ状の基準トナー像を形成し、その画像濃度(単位面積当たりのトナー付着量)を画像濃度センサ151で検知する。そして、検知結果が目標濃度よりも濃かったり薄かったりした場合には、各ピーク値を変化させる。これにより、周期パルス電圧の平均電位と、静電潜像との電位差である現像ポテンシャルを変化させることで、目標の画像濃度が得られるようにする。
【0044】
周期パルス電圧の各ピーク値については、次のようにして変化させる。即ち、ベース電圧電源102は、制御部150から送られてくるベース電圧調整信号に応じて、ベース電圧の出力値を変化させることができる。制御部150は、基準トナー像の画像濃度が目標の画像濃度よりも薄かった場合には、ベース電圧調整信号の変更により、ベース電圧の出力値をよりマイナス側にシフトさせる。これにより、第1周期パルス電圧や第2周期パルス電圧のピーク電位とピーク電位との間の中心値(ピーク間中心電位)をそれぞれマイナス側にシフトさせて、現像ポテンシャルをより高めることで、画像濃度を低下させて目標に近づける。また、基準トナー像の画像濃度が目標の画像濃度よりも濃かった場合には、ベース電圧調整信号の変更により、ベース電圧の出力値をよりプラス側にシフトさせる。これにより、第1周期パルス電圧や第2周期パルス電圧の各ピーク値をそれぞれプラス側にシフトさせて、現像ポテンシャルをより低くすることで、画像濃度を増加させて目標に近づける。
【0045】
このような現像性能調整処理を定期的に実施することで、画像濃度の安定化を図ることができるが、連続プリント動作の実施などにより、機内に急激な環境変動(温湿度変動)が起こると、現像装置内のトナーの帯電量(Q/M)の変動に起因して画像濃度が変動してしまうことがある。具体的には、トナーの帯電量が変化すると、トナー層厚規制ブレード22通過後のトナーの層厚が変化する。これにより、現像領域に対する単位時間あたりのトナー搬送量が変化することで、現像濃度が変化してしまうのである。
【0046】
そこで、制御部150は、温湿度センサ152による温湿度の検知結果に応じて、トナー層厚規制ブレード22に印加するブレードバイアスを変化させることで、トナー層厚規制ブレード22による層厚規制能力を変化させる。これにより、トナーの帯電量の変化に起因するトナー層厚の変動分を、トナー層厚規制ブレード22による層厚規制能力の変動分で相殺して、トナー層厚を安定化させる。
【0047】
ブレードバイアスを変化させる方法は次の通りである。即ち、第1パルス出力部120は、制御部150から出力されるデューティ比調整信号に応じて、第1周期パルス電圧のデューティ比を変化させることができる。制御部150は、温湿度センサ152による温湿度の検知結果に応じて、デューティ比調整信号の変更によって第1周期パルス電圧のデューティ比を変化させる。これにより、第1周期パルス電圧の平均電位を変化させることで、その平均電位と同じ値になるブレードバイアスも変化させる。例えば、温度25[℃]、湿度50[%]の条件では、図13に示したように、第1周期パルス電圧のデューティ比を50[%]にすることで、第1周期パルス電圧の平均電位(=ブレードバイアス)をピークツウピークの中心値(図示の例では−400V)と同じ値にする。これに対し、温度32[℃]、湿度80[%]の条件では、図14に示すように、第1周期パルス電圧のデューティ比を25[%]にすることで、第1周期パルス電圧の平均電位をピークツウピークの中心値よりもマイナス側にシフトさせる(図示の例で−525V)。これにより、環境の高温高湿化に伴うトナー帯電量の低下によるトナー層厚の低下を、ブレードバイアスの増加によるトナー層厚の増加で相殺して、トナー層厚を安定化させる。参考までに、温湿度と、デューティ比設定値とブレードバイアスとの関係を図15に示す。
【0048】
図16は、第1実施例に係る複写機のプリンタ部を示す概略構成図である。このプリンタ部は、マゼンタ,シアン,イエロー,ブラック(以下、M,C,Y,Kという)のトナー像を重ね合わせてフルカラー画像を形成することができる。そして、ベルトユニット202、4色にそれぞれ個別に対応する4つのプロセスユニット、4つの光書込ユニット200M,C,Y,K、レジストローラ対208、転写ローラ207、定着装置76、給紙カセット201などを備えている。
【0049】
ベルトユニット202は、潜像担持体たる無端ベルト状の感光体49を、水平方向よりも鉛直方向にスペースをとる縦長の姿勢で張架しながら図中反時計回り方向に無端移動せしめる。より詳しくは、無端ベルト状の感光体49を、駆動ローラ204、テンションローラ206、転写バックアップローラ205、及び4つの現像対向ローラ203M,C,Y,Kによって裏面側から支えながら張架している。そして、図示しない駆動手段によって図中反時計回り方向に回転駆動せしめられる駆動ローラ204の回転によって感光体49を無端移動せしめる。この感光体49における図中左側の張架面(以下、左側張架面という)は、ほぼ鉛直方向に延在する姿勢になっている。
【0050】
感光体49の左側張架面の図中左側方には、M,C,Y,K用のプロセスユニットが鉛直方向に並ぶように配設されており、それぞれ感光体49の左側張架面に対向している。これら4つのプロセスユニットは、それぞれ、現像装置(1M,C,Y,K)と、感光体49を一様帯電せしめる帯電装置(50M,C,Y,K)とを1つのユニットとして図示しない共通の保持体に保持している。そして、プリンタ筺体に対して現像装置及び帯電装置が一体的に着脱されるようになっている。
【0051】
4つの現像装置1M,C,Y,Kのうち、鉛直方向の最も下側に位置するK用の現像装置1Kの上方には、K用の帯電装置50Kが感光体49の左側張架面に対向するように配設されている。また、K用の現像装置1Kの真上に配設されたY用の現像装置1Yの上方には、Y用の帯電装置50Yが感光体の左側張架面に対向するように配設されている。また、Y用の現像装置1Yの真上に配設されたC用の現像装置1Cの上方には、C用の帯電装置50Cが感光体49の左側張架面に対向するように配設されている。更に、Y用の現像装置1Yの真上に配設されたM用の現像装置1Mの上方には、M用の帯電装置50Mが感光体49の左側張架面に対向するように配設されている。
【0052】
鉛直方向に並ぶ4つの現像装置1M,C,Y,Kの図中左側方には、4つの光書込ユニット200M,C,Y,Kが鉛直方向に並ぶように配設されている。これら光書込ユニット200M,C,Y,Kは、外部の図示しないパーソナルコンピュータやスキャナから送られてくる画像情報に基づいて、図示しない4つの半導体レーザーを駆動してM,C,Y,K用の書込光Lm,Lc,Ly,Lkを出射する。そして、これらを図示しないポリゴンミラーによって偏向せしめながら、図示しない反射ミラーで反射させたり光学レンズに通したりすることで感光体49に対する光走査を行う。かかる構成のものに代えて、LEDアレイによって光走査を行うものを用いてもよい。なお、光走査は暗中にて行われる。
【0053】
感光体49は、自らを張架している複数の張架ローラのうち、最も下方に位置する駆動ローラ104と、最も上方に位置するテンションローラ206との間では、鉛直方向上方から下方に向けてほぼ真っ直ぐに移動する。この過程において、まず、M用の帯電装置50Mとの対向位置を通過する際に、例えば負極性に一様帯電せしめられる。そして、M用の書込光Lmによる光走査によってM用の静電潜像を担持した後、M用の現像装置1Mとの対向位置を通過する。この際、感光体49に書き込まれたM用の静電潜像がM用の現像装置1Mによって現像されてMトナー像になる。
【0054】
Mトナー像が形成された感光体49は、鉛直方向上方から下方に向けての移動に伴って、C用の帯電装置50Cによって再び一様帯電せしめられた後、C用の書込光Lcによる光走査によってC用の静電潜像を担持する。このC用の静電潜像は、C用の現像装置1Cによって現像されてCトナー像となる。このとき、Cトナー像の全領域又は一部領域は、既に感光体49上に形成されているMトナー像に重ね合わせて現像される。そして、その重ね合わせ箇所は、M及びCによる2次色部となる。
【0055】
Cトナー像が形成された感光体49は、鉛直方向上方から下方に向けての移動に伴って、Y用の帯電装置50Yによって再び一様帯電せしめられた後、Y用の書込光Lyによる光走査によってY用の静電潜像を担持する。このY用の静電潜像は、Y用の現像装置1Yによって現像されてYトナー像となる。このとき、Yトナー像の全領域又は一部領域は、既に感光体49上に形成されているMトナー像、Cトナー像、あるいはMC2次色部の上に重ね合わせた状態で現像される。そして、その重ね合わせ箇所は、MY2次色部、CY2次色部、あるいはMCY3次色部となる。
【0056】
Yトナー像が形成された感光体49は、鉛直方向上方から下方に向けての移動に伴って、K用の帯電装置50Kによって再び一様帯電せしめられた後、K用の書込光Lkによる光走査によってK用の静電潜像を担持する。このK用の静電潜像は、K用の現像装置1Kによって現像されてKトナー像となる。
【0057】
以上のようなM,C,Y,Kトナー像の重ね合わせ現像により、感光体49のおもて面(ループ外面)には、4色重ね合わせトナー像が形成される。なお、M,C,Y,K用の帯電装置50M,C,Y,Kとしては、それぞれコロナ放電によって感光体49を一様帯電せしめるものが用いられている。
【0058】
K用の現像装置1Kとの対向位置であるK用の現像領域を通過した感光体49は、駆動ローラ204に対する掛け回し箇所を通過すると、今度は相対的に鉛直方向下方から上方に向けて移動するようになる。そして、転写バックアップローラ205に対する掛け回し箇所に進入する。この掛け回し箇所の一部に対しては、転写ローラ207がおもて面側から当接して転写ニップを形成している。転写バックアップローラ205は接地されているのに対し、導電性の転写ローラ207には図示しないバイアス印加手段によって転写バイアスが印加されている。これにより、転写ニップを間に挟んでいる転写バックアップローラ205と転写ローラ107との間には、感光体49上のトナー像を転写バックアップローラ205側から転写ローラ207側に静電移動させる転写電界が形成されている。
【0059】
一方、給紙カセット201は、所定のタイミングで給紙ローラ201aを回転駆動させることで、カセット内に収容している記録紙Pを給紙路に向けて送り出す。送り出された記録紙Pは、転写ニップの図中下方に配設されたレジストローラ対208のローラ間に挟み込まれる。レジストローラ対208は、記録紙Pの先端部を挟み込むとすぐに回転駆動を一時停止する。そして、記録紙Pを感光体49の4色重ね合わせトナー像と同期させ得るタイミングで回転駆動を再開して、記録紙Pを転写ニップに送り出す。
【0060】
転写ニップで記録紙Pに密着せしめられた4色重ね合わせトナー像は、ニップ圧や転写電界の作用によってベルトから記録紙Pに一括転写され、記録紙Pの白色と相まってフルカラー画像となる。このようにしてフルカラー画像が形成された記録紙Pは、転写ニップから定着装置76に送り込まれた後、機外へと排出される。
【0061】
図17は、第2変形例に係る複写機のトナー担持ローラにおける筒状の基体7を示す縦断面図である。基体7は、絶縁性のアクリル樹脂からなり、その軸線方向の両端部にはそれぞれ、ローラ中心を通りつつ軸線方向に延在する軸穴が設けられている。
【0062】
図18は、第2変形例に係る複写機のトナー担持ローラ2を示す縦断面図である。ローラ部の軸線方向の一端側に設けられた軸穴には、フランジ9が圧入されている。また、ローラ部の他端側に設けられた軸穴には、第2フランジ10が圧入されている。
【0063】
図19は、フランジ9や第2フランジ10を示す斜視図である。フランジ9は、ステンレスなどの金属材料からなり、棒状の軸部における軸線方向の所定位置に、円盤状のフランジ部を具備している。このフランジ部の直径は、基体(7)の直径と同じである。基体(7)の軸穴に圧入された状態のフランジ9、10は、そのフランジ部を基体7の軸線方向の端面に圧接させている。この圧接により、フランジ部と、後述する複数の第1パルス電極にそれぞれ導通している。
【0064】
トナー担持ローラ2の基体7は、図20に示すように、軸線方向に延在する複数の第2パルス電極5や、軸線方向に延在する複数の第1パルス電極6を有している。第2パルス電極5と第1パルス電極6とは、ローラ周方向に所定の間隔をおいて交互に配設されている。これら第2パルス電極5、第1パルス電極6は、図21に示すように、何れも基体7における絶縁性の基層3の表面上に形成されたものであり、それらの上に絶縁性の表面層4が被覆されている。
【0065】
第2パルス電極5には、第2パルス出力部110から出力される第2周期パルス電圧がフランジ9を介して印加される。また、第1パルス電極6には、第1パルス出力部120から出力される第1周期パルス電圧が第2フランジ10を介して印加される。これにより、トナー担持ローラ上(基体7上)のトナーは、第1パルス電極6と第2パルス電極との間をホッピングによって往復移動する。
【0066】
これまで、第1周期パルス電圧が印加される電極と、第2周期パルス電圧が印加される電極との2種類の電極をトナー担持ローラ2に設けた例について説明したが、3種類以上の周期パルス電圧がそれぞれ専用に印加される3種類以上の電極を設けてもよい。
【0067】
以上、実施形態に係る複写機においては、制御手段たる制御部150からの制御信号たるデューティ比調整信号に応じて第1周期パルス電圧のデューティ比を変化させる処理を実施するように、第1パルス出力部120を構成している。かかる構成では、第1周期パルス電圧のデューティ比を変化させることで、トナー層厚規制ブレード22に印加するための、トナーと同極性の直流電圧からなるブレードバイアスを変化させることができる。
【0068】
また、実施形態に係る複写機においては、環境を検知する環境検知手段たる温湿度センサ152を設けるとともに、温湿度センサ152による検知結果に応じてデューティ比調整信号を変化させる処理を実施するように、制御部150を構成している。かかる構成では、既に説明したように、環境変動に伴うトナーの帯電量の変化に起因するトナー層厚の変動分を、トナー層厚規制ブレード22による層厚規制能力の変動分で相殺して、トナー層厚を安定化させることができる。
【0069】
また、実施形態に係る複写機においては、制御部150、感光体49、現像装置1などを、現像装置1の現像能力を現像性能調整処理によって計測する現像能力計測手段として機能させている。そして、現像能力の計測結果(基準トナー像の画像濃度の検知結果)に応じて、第1周期パルス電圧のピーク間中心電位と、第2周期パルス電圧のピーク間中心電位とをそれぞれ変化させる処理を実施するように、制御部150を構成している。かかる構成では、ピーク間中心電位の変化により、現像ポテンシャルを調整して、目標の画像濃度を得ることができる。
【0070】
また、実施形態に係る複写機においては、周期パルス電圧の低電位側ピーク値と同じ値の直流電圧をベース電圧として出力するベース電圧電源102と、周期パルス電圧のピークツウピーク電圧と同じ値の直流電圧をベース電圧に重畳するための重畳用電圧として出力する重畳電圧電源103とをパルス電源装置100に設けている。そして、重畳電圧電源103からの重畳用電圧の出力のベース電圧に対する重畳を入切することで周期パルスを生起せしめる処理を実施するように第1パルス出力部120及び第2パルス出力部110を構成している。かかる構成では、ベース電圧電源102及び重畳電圧電源103を、第1パルス出力部120と第2パルス出力部110とで共用して低コスト化を図ることができる。
【0071】
また、実施形態に係る複写機においては、現像能力の計測結果(基準トナー像の画像濃度の検知結果)に応じてベース電圧を変化させることで、前記ピーク間中心電位を変化させるようにしている。かかる構成では、ベース電圧を変化させることで、2つの周期パルス電圧の平均電位をそれぞれ同時に変化させることができる。
【符号の説明】
【0072】
2:トナー担持ローラ(トナー担持体)
3:基層
4:表面層
5:第2パルス電極
7:基体
6:第1パルス電極
8:芯金(電極)
18:トナー供給ローラ(トナー供給手段)
22:トナー層厚規制ブレード(トナー層厚規制部材)
49:感光体(潜像担持体)
100:パルス電源装置
110:第2パルス出力部
120:第1パルス出力部
150:制御部(制御手段、現像能力計測手段の一部)
151:画像濃度センサ(現像能力計測手段の一部)
152:温湿度センサ(環境検知手段)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0073】
【特許文献1】特開2008−8929号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に潜像を担持する潜像担持体を備えるとともに、
無端状の表面にトナーを担持する基体、及び、前記基体の表面方向に沿って並ぶように配設された複数の電極、を具備するトナー担持体の無端移動する表面に対してトナー供給手段によって供給したトナーを、前記複数の電極のうち、周期的に発生する第1周期パルス電圧が印加される電極と、前記第1周期パルス電圧とは位相の異なる第2周期パルス電圧が印加される電極との間でホッピングさせながら、前記トナー担持体の表面移動によって前記潜像担持体に対向する現像領域まで搬送し、前記現像領域でホッピングさせたトナーを前記潜像担持体上の潜像に付着させて前記潜像を現像する現像装置と、
前記第1周期パルス電圧を出力する第1パルス出力部、及び前記第2周期パルス電圧を出力する第2パルス出力部を具備するパルス電源装置とを備える画像形成装置において、
前記第1周期パルス電圧として、平均電位がトナーの正規帯電極性と同極性になるものを出力させるように前記第1パルス出力部を構成するとともに、
前記トナー担持体の表面における無端移動方向の全域のうち、前記トナー供給手段によるトナー供給位置を通過した後、前記現像領域に進入する前の領域に対向して、前記領域上のトナー層の厚みを規制するトナー層厚規制部材と、
前記第1周期パルス電圧を平滑化させる平滑回路とを設け、前記平滑回路による平滑化後の直流電圧を、前記トナー層厚規制部材に印加するようにしたことを特徴とする現像装置。
【請求項2】
請求項1の画像形成装置において、
制御手段からの制御信号に応じて前記第1周期パルス電圧のデューティ比を変化させる処理を実施するように、前記第1パルス出力部を構成したことを特徴とする画像形成装置。
【請求項3】
請求項2の画像形成装置において、
環境を検知する環境検知手段を設けるとともに、
前記環境検知手段による検知結果に応じて前記制御信号を変化させる処理を実施するように、前記制御手段を構成したことを特徴とする画像形成装置。
【請求項4】
請求項1乃至3の何れかの画像形成装置において、
前記現像装置の現像能力を計測する現像能力計測手段を設けるとともに、
前記現像能力計測手段による計測結果に応じて、前記第1周期パルス電圧のピーク間中心電位と、前記第2周期パルス電圧のピーク間中心電位とをそれぞれ変化させる処理を実施するように、制御部を構成したことを特徴とする画像形成装置。
【請求項5】
請求項4の画像形成装置であって、
周期パルス電圧の低電位側ピーク値と同じ値の直流電圧をベース電圧として出力するベース電圧電源と、周期パルス電圧のピークツウピーク電圧と同じ値の直流電圧を前記ベース電圧に重畳するための重畳用電圧として出力する重畳電圧電源とを前記パルス電源装置に設けるとともに、
前記重畳電圧電源からの前記重畳用電圧の出力の前記ベース電圧に対する重畳を入切することで周期パルスを生起せしめる処理を実施するように前記第1パルス出力部及び第2パルス出力部を構成したことを特徴とする画像形成装置。
【請求項6】
請求項5の画像形成装置において、
前記現像能力計測手段による計測結果に応じて前記ベース電圧を変化させることで、前記ピーク間中心電位を変化させるようにしたことを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【公開番号】特開2012−58570(P2012−58570A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−202865(P2010−202865)
【出願日】平成22年9月10日(2010.9.10)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】