説明

現像装置および画像形成装置およびプロセスカートリッジ

【課題】磁石を用いた現像剤剥離において磁気干渉による振動や異常画像の発生を防止して現像材の剥離を確実に行うことでゴーストの発生を防止して画像再現性を向上させることが可能な構成を備えた現像装置を提供する。
【解決手段】現像剤担持体81の内部には、現像剤を穂立ちさせて搬送させる磁極を備えた回転可能な磁界発生手段82が配置され、前記磁界発生手段82は、前記現像剤担持体81の断面中心Pに対して前記像担持体1に対して接近する向きに自らの断面中心P’を偏心させて配置され、該偏心により前記磁界発生手段82における前記像担持体1から最も離れた位置付近には、複数の磁極を備え、前記像担持体に供給されずに前記現像剤担持体表面に残った現像剤を剥離する磁極配列を持つ剥離磁石90Bおよび剥離される現像剤の搬送部材90Aを備えた現像剤剥離手段90を備えていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、現像装置および画像形成装置およびプロセスカートリッジに関し、特に、トナーとキャリアとを含む二成分系現像剤を使用対象とした現像機構に関する。
【背景技術】
【0002】
複写機やプリンタあるいはファクシミリ装置や印刷機などの画像形成装置においては、潜像担持体である感光体上に形成された静電潜像を現像装置により可視像処理し、可視像をシートなどに転写することにより記録出力を得ることができる。
【0003】
現像に用いられる現像剤には、磁性あるいは非磁性トナーのみの一成分系現像剤の他にトナーとキャリアとを混合した二成分系現像剤がある。
【0004】
二成分系現像剤は、トナーとこれを担持するキャリアとで構成され、攪拌混合時に生起される摩擦帯電作用によりトナーを帯電させて感光体上の静電潜像に対して静電吸着できる状態とされる。
【0005】
現像装置には、磁力により周面に現像剤を穂立ちさせて感光体上の静電潜像に向け現像剤を供給する現像剤担持体としての現像スリーブと、現像スリーブに対して撹拌混合した現像剤を供給するスクリューオーガ等の撹拌部材とを備えた構成が知られている。現像スリーブに担持された現像剤は、ドクターブレードなどの規制部材により担持量(層厚)を規定された上で感光体上の静電潜像に供給される。
【0006】
ところで、現像に供される現像剤の量や現像領域を通過して残留する現像剤の存在が現像品質に影響することが知られている(例えば、特許文献1)。
【0007】
このため、従来では、上記特許文献1に開示されているように、現像領域を通過して現像剤を現像剤担持体から剥離し、新たな現像剤を供給して現像履歴を解消することが提案されている。具体的には、周面に磁気記録層を形成され、像担持体と対向して現像剤をその対向領域に搬送する現像ロールと、現像領域の下流側で現像ロールに近接対向して現像ロール周面にて多層化された現像剤層を現像ロールから剥離する剥離ローラとを備え、剥離ローラとして、非磁性スリーブとこの内部において周回可能に設けられた磁石とを備えた構成が提案されている(例えば、特許文献1)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述した現像剤の剥離は、次の理由による。
つまり、先行の現像サイクルで同一画像の現像を連続して行った場合、現像剤担持体である現像ロールにおいて、先行の現像サイクル時に担持されていた現像剤が掻き取られないままの状態が継続されて次の現像サイクルのための新たな現像剤を担持して現像が行われると、先行の現像サイクル時での現像パターンが履歴として残ってしまう。
【0009】
このような現像履歴が解消されていないままであると、その現像パターンに相応した現像剤のトナー濃度や帯電量さらには粒径等が現像履歴のない領域とで異なってしまい、現像パターンが次の現像時に画像(特に、ハーフトーン画像)が存在するような現象、いわゆる、本来の画像形成部位には存在しないはずのゴーストが発生し、これが画像再現性を悪化させて画像欠陥となる虞がある。
【0010】
そこで、特許文献1に開示されているような構成を用いて現像履歴を解消すべく、現像担持体から現像剤を剥離することが必要となる。
【0011】
しかし、上述した構成においては、剥離ローラの構成として非磁性スリーブ内に位置して周回可能な磁石が設けられた構成であるので、磁石が非磁性スリーブに近接しているために磁石の回転により、現像ロール側の磁石と剥離ローラ側の磁石との間で磁気干渉が発生しやすくなる。このため、磁気干渉により部材間で振動が発生したり、現像ロール上に現像剤が残ると横帯状の異常画像が発生してしまう虞がある。
【0012】
本発明の目的は、上記従来の現像装置、特に現像剤の剥離における問題に鑑み、磁石を用いた現像剤剥離において磁気干渉による振動や異常画像の発生を防止して現像材の剥離を確実に行うことでゴーストの発生を防止して画像再現性を向上させることが可能な構成を備えた現像装置および画像形成装置およびプロセスカートリッジを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
この目的を達成するため、本発明は次の構成よりなる。
(1)像担持体に形成されている静電潜像に対してトナーとキャリアとを含む二成分系現像剤を供給する現像剤担持体を備えた現像装置であって、
前記現像剤担持体の内部には、現像剤を穂立ちさせて搬送させる磁極を備えた回転可能な磁界発生手段が配置され、
前記磁界発生手段は、前記現像剤担持体の断面中心に対して前記像担持体に対して接近する向きに自らの断面中心を偏心させて配置され、
該偏心により前記磁界発生手段における前記像担持体から最も離れた位置付近には前記現像剤担持体表面に近接もしくは非接触な現像剤剥離手段が配置され、
前記現像剤担持体の内部に備えられている磁界発生手段を第1の磁界発生手段とした場合、前記現像剤剥離手段には、複数の磁極を備え、前記像担持体に供給されずに前記現像剤担持体表面に残った現像剤を剥離する磁極配列を持つ第2の磁界発生手段が備えられていることを特徴とする現像装置。
(2)前記現像剤剥離手段は、固定配置された複数の磁極を有する磁界発生部と、該磁界発生部の外周囲で回転可能に設けられている現像剤搬送手段とで構成されていることを特徴とする(1)に記載の現像装置。
(3)前記現像剤剥離手段に備えられている磁界発生部は、複数の磁極を有し、前記現像剤担持体から前記磁界発生部により吸引された現像剤を反撥磁界により除去する磁極配列を備えていることを特徴とする(2)に記載の現像装置。
(4)前記第2の磁界発生手段に備えられた磁界発生部の磁極の一つは、前記現像剤担持体内に設けられている第1の磁界発生手段の偏心により該現像剤担持体の周面から最も離れた位置付近の磁極を対象として該現像剤担持体の周面を挟んで対向して配置されていることを特徴とする(1)乃至(3)のいずれか一つに記載の現像装置。
(5)前記現像剤担持体と前記現像剤剥離手段との対向位置には、該現像剤担持体から該現像剤剥離手段に向けてトナーを移行させるバイアス制御が用いられることを特徴とする(1)乃至(4)のいずれか一つに記載の現像装置。
(6)前記バイアス制御は、前記現像剤担持体から現像剤剥離手段に向けてトナーを移動させることができる電位差を設定することを特徴とする請求項5記載の現像装置。
(7)前記現像剤剥離手段に設けられている現像剤搬送手段は、前記現像剤担持体との対向位置でその移動方向を、該現像剤担持体の移動方向と反対方向に設定されていることを特徴とする請求項2記載の現像装置。
(8)請求項1乃至7のいずれか一つに記載の現像装置を備えたことを特徴とする画像形成装置。
(9)少なくとも請求項1乃至7のいずれか一つに記載の現像装置と像担持体とを纏めて収容して備えていることを特徴とするプロセスカートリッジ。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、現像剤担持体内に装備されている磁界発生手段が像担持体に対して接近する向きに偏心させて配置され、像担持体から最も離れた位置付近で最も磁力の影響が小さくなる位置に現像剤剥離手段を配置しているので、現像領域通過後にトナーを消費されて現像剤担持体に付着しているキャリアおよび現像に供されずに静電付着したままのトナーのいずれをも、磁力発生手段からの磁力の影響が小さくされた状態で剥離することができる。
【0015】
特に、互いに反対極性に帯電しているトナーとキャリアとのうちで、トナーの消費によりトナーとは逆極性(カウンターチャージ)のままで残っているキャリアは、重力や現像剤担持体が回転する際の遠心力のみでは剥離が困難な場合には、ゴーストの発生が顕著となるが、磁界発生手段からの磁力の影響が小さくされている位置で剥離手段による剥離が行われることにより、現像領域を通過した後のキャリアおよびトナーが確実に現像剤担持体から除去されることになる。これによりゴーストの発生を防止することが可能となる。
【0016】
また、剥離手段に装備されている第2の磁界発生手段は現像担持体内に装備されている第1の磁界発生手段との間が第1の磁界発生手段の偏心によって磁気的干渉を受けにくい位置関係とされているので、磁界発生手段相互の位置関係により発生しやすい振動や横帯状の画像の発生を防止することも可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施例による現像装置を相にしたプロセスカートリッジが用いられる画像形成装置の構成を示す断面図である。
【図2】図1に示した画像形成装置に用いられるプロセスカートリッジの構成及び作用を説明するための模式図である。
【図3】図2に示したプロセスカートリッジに装備されている現像装置の構成を説明するための模式図である。
【図4】図3に示した現像装置の要部変形例を説明するための模式図である。
【図5】図2に示した構成に対する作用の比較を説明するに用いる現像装置の構成を示す模式図である。
【図6】図3に示した現像装置での磁石ローラと現像剤との対向回数を実験するための条件および結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面により本発明を実施するための形態を実施例により説明する。
【0019】
図1は、本発明による現像装置を用いる画像形成装置を示しており、同図に示す画像形成装置は、タンデム方式によるフルカラープリンタであるが、本発明は、これに限らず、複写機やファクシミリ装置などにも適用することができる。
【0020】
図1は、本実施形態に係るフルカラープリンタ(以下、便宜上、複写機という)500の概略構成図である。
【0021】
複写機500は、プリンタ部100,これを搭載する給紙装置200,プリンタ部100の上に固定されるスキャナ300などを備えている。また、スキャナ300の上には原稿自動給送装置400が固定されている。
【0022】
プリンタ部100は、イエロー(Y)、マゼンダ(M)、シアン(C)、黒(K)の各色の画像を形成するための4組のプロセスカートリッジ18Y,M,C,Kからなる画像形成ユニット20を備えている。
【0023】
各符号の数字の後に付されたY,M,C,Kは、イエロー、シアン、マゼンダ、ブラック用の部材であることを示している(以下同様)。プロセスカートリッジ18Y,M,C,Kの他には、光書込ユニット21、中間転写ユニット17、二次転写装置22、レジストローラ対49、ベルト定着方式の定着装置25などが配設されている。
【0024】
光書込ユニット21は、図示しない光源、ポリゴンミラー、f−θレンズ、反射ミラーなどを有し、画像データに基づいて後述の感光体の表面にレーザ光を照射する。
【0025】
プロセスカートリッジ18Y,M,C,Kは、ドラム状の感光体1、帯電器、現像装置4、ドラムクリーニング装置、除電器などを有している。
【0026】
以下、イエロー用のプロセスカートリッジ18について説明する。
帯電手段たる帯電器によって、感光体1Yの表面は一様帯電される。帯電処理が施された感光体1Yの表面には、光書込ユニット21によって変調及び偏向されたレーザ光が照射される。これにより、照射部(露光部)の感光体1Yの表面の電位が減衰する。この表面の電位の減衰により、感光体1Y表面にY用の静電潜像が形成される。形成されたY用の静電潜像は現像手段たる現像装置4Yによって現像されてYトナー像となる。
【0027】
Y用の感光体1Y上に形成されたYトナー像は、後述の中間転写ベルト110に一次転写される。一次転写後の感光体1Yの表面は、ドラムクリーニング装置によって転写残トナーがクリーニングされる。
【0028】
Y用のプロセスカートリッジ18Yにおいて、ドラムクリーニング装置によってクリーニングされた感光体1Yは、除電器によって除電される。そして、帯電器によって一様帯電せしめられて、初期状態に戻る。以上のような一連のプロセスは、他のプロセスカートリッジ18M,C,Kについても同様である。
【0029】
次に、中間転写ユニット17について説明する。
中間転写ユニット17は、中間転写ベルト110やベルトクリーニング装置90などを有している。また、張架ローラ14、駆動ローラ15、二次転写バックアップローラ16、4つの一次転写バイアスローラ62Y,M,C,Kなども有している。
【0030】
中間転写ベルト110は、張架ローラ14を含む複数のローラによってテンション張架されている。そして、図示しないベルト駆動モータによって駆動される駆動ローラ15の回転によって図中時計回りに無端移動せしめられる。
【0031】
4つの一次転写バイアスローラ62Y,M,C,Kは、それぞれ中間転写ベルト110の内周面側に接触するように配設され、図示しない電源から一次転写バイアスの印加を受ける。また、中間転写ベルト110をその内周面側から感光体1Y,M,C,Kに向けて押圧してそれぞれ一次転写ニップを形成する。各一次転写ニップには、一次転写バイアスの影響により、感光体1と一次転写バイアスローラ62との間に一次転写電界が形成される。
【0032】
Y用の感光体1Y上に形成された上述のYトナー像は、この一次転写電界やニップ圧の影響によって中間転写ベルト110上に一次転写される。このYトナー像の上には、M,C,K用の感光体1M,C,K上に形成されたM,C,Kトナー像が順次重ね合わせて一次転写される。この重ね合わせの一次転写により、中間転写ベルト110上には多重トナー像たる4色重ね合わせトナー像(以下、4色トナー像という)が形成される。
【0033】
中間転写ベルト110上に重ね合わせ転写された4色トナー像は、後述の二次転写ニップで図示しない記録体たる転写紙に二次転写される。二次転写ニップ通過後の中間転写ベルト110の表面に残留する転写残トナーは、図中左側の駆動ローラ15との間にベルトを挟み込むベルトクリーニング装置90によってクリーニングされる。
【0034】
次に、二次転写装置22について説明する。
中間転写ユニット17の図中下方には、2本の張架ローラ23によって紙搬送ベルト24を張架している二次転写装置22が配設されている。紙搬送ベルト24は、少なくとも何れか一方の張架ローラ23の回転駆動に伴って、図中反時計回りに無端移動せしめられる。2本の張架ローラ23のうち、図中右側に配設された一方のローラは、中間転写ユニット17の二次転写バックアップローラ16との間に、中間転写ベルト110及び紙搬送ベルト24を挟み込んでいる。この挟み込みにより、中間転写ユニット17の中間転写ベルト110と、二次転写装置22の紙搬送ベルト24とが接触する二次転写ニップが形成されている。そして、この一方の張架ローラ23には、トナーと逆極性の二次転写バイアスが図示しない電源によって印加される。
【0035】
この二次転写バイアスの印加により、二次転写ニップには中間転写ユニット17の中間転写ベルト110上の4色トナー像をベルト側からこの一方の張架ローラ23側に向けて静電移動させる二次転写電界が形成される。後述のレジストローラ対49によって中間転写ベルト110上の4色トナー像に同期するように二次転写ニップに送り込まれた転写紙には、この二次転写電界やニップ圧の影響を受けた4色トナー像が二次転写せしめられる。なお、このように一方の張架ローラ23に二次転写バイアスを印加する二次転写方式に代えて、転写紙を非接触でチャージさせるチャージャを設けてもよい。
【0036】
複写機500本体の下部に設けられた給紙装置200には、内部に複数の転写紙を紙束の状態で複数枚重ねて収容可能な給紙カセット44が、鉛直方向に複数重なるように配設されている。それぞれの給紙カセット44は、紙束の一番上の転写紙に給紙ローラ42を押し当てている。そして、給紙ローラ42を回転させることにより、一番上の転写紙を給紙路46に向けて送り出される。
【0037】
給紙カセット44から送り出された転写紙を受け入れる給紙路46は、複数の搬送ローラ対47と、給紙路46内の末端付近に設けられたレジストローラ対49とを有している。そして、転写紙をレジストローラ対49に向けて搬送する。レジストローラ対49に向けて搬送された転写紙は、レジストローラ対49のローラ間に挟まれる。一方、中間転写ユニット17において、中間転写ベルト110上に形成された4色トナー像は、ベルトの無端移動に伴って二次転写ニップに進入する。レジストローラ対49は、ローラ間に挟み込んだ転写紙を二次転写ニップにて4色トナー像に密着させ得るタイミングで送り出す。
【0038】
これにより、二次転写ニップでは、中間転写ベルト110上の4色トナー像が転写紙に密着する。そして、転写紙上に二次転写されて、白色の転写紙上でフルカラー画像となる。このようにしてフルカラー画像が形成された転写紙は、紙搬送ベルト24の無端移動に伴って二次転写ニップを出た後、紙搬送ベルト24上から定着装置25に送られる。
【0039】
定着装置25は、定着ベルト26を2本のローラによって張架しながら無端移動せしめるベルトユニットと、このベルトユニットの一方のローラに向けて押圧される加圧ローラ27とを備えている。これら定着ベルト26と加圧ローラ27とは互いに当接して定着ニップを形成しており、紙搬送ベルト24から受け取った転写紙をここに挟み込む。ベルトユニットにおける2本のローラのうち、加圧ローラ27から押圧される方のローラは、内部に図示しない熱源を有しており、これの発熱によって定着ベルト26を加熱する。加熱された定着ベルト26は、定着ニップに挟み込まれた転写紙を加熱する。この加熱やニップ圧の影響により、フルカラー画像が転写紙に定着される。
【0040】
定着装置25内で定着処理が施された転写紙は、プリンタ筐体の図中左側板の外側に設けたスタック部57上にスタックされるか、もう一方の面にもトナー像を形成するために上述の二次転写ニップに戻されるかの何れかの搬送形態が選択される。
【0041】
図示しない原稿のコピーがとられる際には、例えばシート原稿の束が原稿自動搬送装置400の原稿台30上セットされる。但し、その原稿が本状に閉じられている片綴じ原稿である場合には、コンタクトガラス32上にセットされる。このセットに先立ち、複写機本体に対して原稿自動搬送装置400が開かれ、スキャナ300のコンタクトガラス32が露出される。この後、閉じられた原稿自動搬送装置400によって片綴じ原稿が押さえられる。
【0042】
このようにして原稿がセットされた後、図示しないコピースタートスイッチが押下されると、スキャナ300による原稿読取動作がスタートする。但し、原稿自動搬送装置400にシート原稿がセットされた場合には、この原稿読取動作に先立って、原稿自動搬送装置400がシート原稿をコンタクトガラス32まで自動移動させる。原稿読取動作では、まず、第1走行体33と第2走行体34とがともに走行を開始し、第1走行体33に設けられた光源から光が発射される。そして、原稿面からの反射光が第2走行体34内に設けられたミラーによって反射せしめられ、結像レンズ35を通過した後、読取センサ36に入射される。読取センサ36は、入射光に基づいて画像情報を構築する。
【0043】
このような原稿読取動作と並行して、各プロセスカートリッジ18Y,M,C,K内の各機器や、中間転写ユニット17、二次転写装置22、定着装置25がそれぞれ駆動を開始する。そして、読取センサ36によって構築された画像情報に基づいて、光書込ユニット21が駆動制御されて、各感光体1Y,M,C,K上に、Y,M,C,Kトナー像が形成される。これらトナー像は、中間転写ベルト110上に重ね合わせ転写された4色トナー像となる。
【0044】
また、原稿読取動作の開始とほぼ同時に、給紙装置200内では給紙動作が開始される。この給紙動作では、給紙ローラ42の1つが選択回転せしめられ、ペーパーバンク43内に多段に収容される給紙カセット44の1つから転写紙が送り出される。送り出された転写紙は、分離ローラ45で1枚ずつ分離されて反転給紙路46に進入した後、搬送ローラ対47によって二次転写ニップに向けて搬送される。このような給紙カセット44からの給紙に代えて、手差しトレイ51からの給紙が行われる場合もある。この場合、手差し給紙ローラ50が選択回転せしめられて手差しトレイ51上の転写紙を送り出した後、分離ローラ52が転写紙を1枚ずつ分離してプリンタ部100の手差し給紙路53に給紙する。
【0045】
複写機500は、2色以上のトナーからなる多色画像を形成する場合には、中間転写ベルト110をその上部張架面がほぼ水平になる姿勢で張架して、上部張架面に全ての感光体1Y,M,C,Kを接触させる。これに対し、Kトナーのみからなるモノクロ画像を形成する場合には、図示しない機構により、中間転写ベルト110を図中左下に傾けるような姿勢にして、その上部張架面をY,M,C用の感光体1Y,M,Cから離間させる。そして、4つの感光体1Y,M,C,Kのうち、K用の感光体1Kだけを図中反時計回りに回転させて、Kトナー像だけを作像する。この際、Y,M,Cについては、感光体1だけでなく、現像装置4も駆動を停止させて、感光体1や現像装置4の各部材及び現像装置4内の現像剤の不要な消耗を防止する。
【0046】
複写機500は、複写機500内の各機器の制御を司るCPU等から構成される図示しない制御部と、液晶ディスプレイや各種キーボタン等などから構成される図示しない操作表示部とを備えている。操作者は、この操作表示部に対するキー入力操作により、制御部に対して命令を送ることで、転写紙の片面だけに画像を形成するモードである片面プリントモードについて、3つのモードの中から1つを選択することができる。この3つの片面プリントモードとは、ダイレクト排出モードと、反転排出モードと、反転デカール排出モードとからなる。
【0047】
図2は、4つプロセスカートリッジ18Y,M,C,Kにそれぞれ装備されている現像装置4及び感光体1を示す拡大構成図である。
【0048】
4つのプロセスカートリッジ18Y,M,C,Kは、それぞれ扱うトナーの色が異なる点以外はほぼ同様の構成になっているので、同図では「4」に付すY,M,C,Kという添字を省略している。
【0049】
図2に示すように感光体1は図中矢印G方向に回転しながら、その表面を不図示の帯電装置により帯電される。帯電された感光体1の表面は不図示の露光装置より照射されたレーザ光により静電潜像を形成された潜像に現像装置4からトナーを供給され、トナー像を形成する。
現像装置4は、図中矢印I方向に現像剤を搬送しながら感光体1の表面の潜像にトナーを供給し、現像する現像剤担持体としての現像ローラ5を有している。
【0050】
現像ローラ5は回転可能な現像スリーブ81を備え、複数の磁極からなり図中矢印J方向に回転可能な磁気発生手段としての磁石ローラ82を内包している。現像ローラ5およびこれの現像領域通過後に残存するキャリアやトナーを剥離する剥離手段に関しては、後で詳しく説明する。
【0051】
また、現像ローラ5に現像剤を供給しながら現像ローラ5の軸線方向に沿って図2を示す紙面の手前側(以下、便宜上、図中手前側あるいは図2中手前側と称する場合もある)に向けて現像剤を搬送する供給搬送部材としての供給スクリュー8を有している。
【0052】
現像ローラ5の供給スクリュー8との対向部から現像剤搬送方向下流側には、現像ローラ5に供給された現像剤を現像に適した厚さに規制する現像剤規制手段としてのドクターブレード12を備えている。
【0053】
現像ローラ5の感光体1との対向部である現像領域よりも現像剤搬送方向下流側では、現像領域を通過し、現像ローラ5の表面から離脱した現像済みの現像剤を回収する回収搬送路7が現像ローラ5と対向する。
【0054】
回収搬送路7は、回収した回収現像剤を現像ローラ5の軸線方向に沿って供給スクリュー8と同方向に搬送する回収搬送部材として、軸線方向に平行に配置された螺旋状の回収スクリュー6を備えている。供給スクリュー8を備えた供給搬送路9は現像ローラ5の横方向に、そして回収スクリュー6を備えた回収搬送路7は現像ローラ5の下方に並設されている。
【0055】
現像装置4は、供給搬送路9の下方で回収搬送路7に並列して攪拌搬送路10を設けている。
攪拌搬送路10は、現像ローラ5の軸線方向に沿って現像剤を攪拌しながら供給スクリュー8とは逆方向である、図2を示す紙面の奥側(以下、便宜上、図中奥側と称する場合もある)に向けて搬送する攪拌搬送部材として、軸線方向に平行に配置された、螺旋状の攪拌スクリュー11を備えている。
【0056】
供給搬送路9と攪拌搬送路10とは仕切り壁としての第一仕切り壁133によって仕切られている。第一仕切り壁133の供給搬送路9と攪拌搬送路10とは、図中手前側と奥側との両端が開口部となっており、供給搬送路9と攪拌搬送路10とが連通している。
【0057】
なお、供給搬送路9と回収搬送路7との間も第一仕切り壁133によって仕切られているが、第一仕切り壁133における供給搬送路9と回収搬送路7とを仕切る箇所には開口部が設けられていない。
【0058】
また、攪拌搬送路10と回収搬送路7との2つの現像剤搬送路は仕切り部材としての第二仕切り壁134によって仕切られている。第二仕切り壁134は、図中手前側が開口部となっており、攪拌搬送路10と回収搬送路7とが連通している。
【0059】
現像剤搬送部材である供給スクリュー8、回収スクリュー6及び攪拌スクリュー11は、樹脂もしくは金属のスクリューからなっており各スクリュー径は全てφ22(mm)でスクリューピッチは供給スクリューが50(mm)の2条巻き、回収スクリュー6及び攪拌スクリュー11が25(mm)の1条巻き、回転数は全て約600(rpm)に設定されている。
【0060】
現像ローラ5上に担持された現像剤は、ステンレスからなるドクターブレード12によって薄層化されたうえで感光体1との対向部である現像領域まで搬送されて現像が行われる。
【0061】
次に、上述した構成を対象として本実施例に用いられる現像ローラ5の要部構成を図3において説明する。
【0062】
現像ローラ5は、現像剤を担持する円筒状の現像スリーブ81と現像スリーブ81に内包され磁気力により現像剤を吸着する磁界発生手段としての磁石ローラ82からなる。
【0063】
現像スリーブ81はアルミ、オーステナイト系ステンレス、マグネシウム等の非磁性かつ導電材料からなる。
【0064】
表面は平滑でも構わないが高速機では現像剤のスリップを抑制するために下記の粗し処理・加工を施しても良い。
【0065】
(A)V溝またはU溝等の溝押し出し加工・各種凹形状の機械加工またはレーザ加工またはエッジング加工
(B)ブラスト処理
(C)金属またはセラミック等の溶射処理
磁石ローラ82は現像剤の搬送方向Pとは反対の矢印J方向に回転可能に設けられており、偶数個の磁石83を等間隔に配置し(図3に示す実施例は10個の磁石を配置)、その極性は隣り合う磁石間で引き合うように互いに反対向きとする。
【0066】
本実施例では、磁石ローラ82と現像スリーブ81との駆動関係として、同方向および相対方向の何れかの回転方向が選択できるようになっており、その回転関係は、現像スリーブ81の表面に担持される現像剤と磁石ローラ82側の磁石83との対向回数が多くなることを条件として設定されるようになっている。
【0067】
上述した駆動関係の設定により得られる、磁石ローラ82の磁石に対する現像剤の対向回数の増加によって、現像剤が磁極と対向したときに穂立ちが形成され、磁極から離れた際に穂立ちが崩されるという現象を繰り返す回数が増加し、これによるトナーとキャリアと摩擦接触機会の増加によりトナーの帯電特性を向上させることができる。
【0068】
この場合の対向回数の増加は、上述したように、磁石ローラ82と現像スリーブ81との回転方向の設定や速度差の設定などによって得られる。つまり、両者が同じ方向に回転する場合には、両者間に速度差を設定することで磁石83に対する現像剤の対向回数を増加させることができ、また、速度差を設定しないで相反する方向とした場合も同様に磁石83に対する現像剤の対向回数を増加させることができる。
このような回転方向あるいは速度差による対向回数に関する実験結果については、図6を用いて後で説明する。
【0069】
上述した磁石83に関しては、従来の廉価なフェライト磁石が使用可能であるが、小型化や高速化のためにはより強力なサマリウムコバルト磁石やネオジウム磁石等の希土類磁石の使用も可能である。磁石83は磁石ホルダ84に接着により支持し、その外周を図示しない熱収縮チューブ等で保護しても良い。
【0070】
磁石ホルダ84は磁性材料とすると磁石83の磁気力を若干向上可能である。但しコスト高であり一般に鉄を主成分とする磁性材料は高比重のため高速回転時は慣性モーメントが増大し駆動部の耐久性に問題が生じる場合がある。そのため磁石83の磁気力は若干低くなるが、非磁性かつ軽比重のアルミニウムやマグネシウムを材料としても良い。
【0071】
図3において、本実施例における磁石ローラ82の回転中心P’は現像スリーブ81の回転中心Pより距離(T)だけ離れた位置に偏心させて位置決めされている。
【0072】
偏心の方向は、現像ローラ5の表面に担持された現像剤が感光体1に移行する付近で現像ローラ81の内面に最も接近することができる向きに設定され、上記符号Tで示した距離に相当する偏心量は、現像領域においてキャリアが感光体1に移行するのを磁極からの磁力によって抑制することができる量とされている。これにより、感光体1に移行する現像剤は、感光体との接触に際して穂立ちを確保された状態で接触できると共に、接近した磁極からの磁力によりキャリアの移行が阻止されてトナーのみを感光体の潜像に供給するように移動することになる。
【0073】
一方、磁石ローラ82の偏心方向において感光体1に対応する側と反対側では、現像スリーブ81の周面から磁石ローラ82が最も大きく離れることで現像スリーブ81に対向する側よりも大きな隙間空間Uが存在することにより、現像スリーブ81の表面に及ぶ磁気力を低く抑えることができる。このため、現像ローラ5表面に担持されている現像剤の剥離を容易にすることができる。
【0074】
このような偏心させた構造を設けるだけで、現像剤の剥離が外部からの機械的な外力を用いることなく容易に行えることになる。
【0075】
このような構成、つまり、磁石ローラ82を感光体1側に向け偏心させる構成は、本出願人の先願である特願2009−136052号の明細書にて明らかにされている。
【0076】
図6は、以上のような構成の現像装置4を用いて、連続プリント枚数が60〜70(枚/分)の高速複写機により、現像剤の磁極対向回数について実験した結果を示す図である。なお、図6において(A)に示す結果は、図9に示したように、現像スリーブ81と磁石ローラ82とが相反する方向に回転する場合が対象となっている。なお、この回転方向に関しては、両者が同一方向であってもよく、この場合には、両者間で速度差を設けることにより現像剤と磁極との対向回数を増やすようにすることが望ましい。後者の場合の実験結果は、図6(B)に示されている。図6(B)において、実施例4は、相反する方向に回転する場合を示し、実施例5は、同じ回転方向とした場合(速度差が設定されている)を示している。
また、比較例(図12において従来例と表示)として、磁石ローラが固定されている場合を対象とした。
【0077】
図6(A)において、従来の現像装置においては固定配置された磁石ローラは5極の磁極を有しており、上述した連続プリント枚数である、60〜70(枚/分)に設定した場合を対象として、その複写速度を得るためには現像スリーブを400rpmで回転させる必要があった。この際、供給搬送路から回収搬送路へ至る経路での磁極の通過回数は5回しかなく、現像剤交換後や高湿環境放置後はトナー飛散の不具合があった。
【0078】
一方で、実施例1の現像装置においては、磁極数を10極として磁石ローラを600rpmで回転させた際、現像スリーブは300rpmで従来例と同等の画像濃度が得られ、供給搬送路から回収搬送路へ至る経路での磁極の通過回数は15回程度得られ、現像剤交換後や高湿環境放置後でもトナー飛散の不具合がなかった。
【0079】
実施例2の現像装置においては、磁極数は同じ10極として磁石ローラを1200rpmで回転させた際、現像スリーブは180rpmで従来例と同等の画像濃度が得られ、供給搬送路から回収搬送路へ至る経路での磁極の通過回数は30回程度得られ、現像剤交換後や長期間の高湿環境放置後でもトナー飛散の不具合がなかった。
【0080】
実施例3の現像装置においては、磁極数は同じ10極として磁石ローラを2000rpmで回転させた際、現像スリーブは固定でも従来例と同等の画像濃度が得られ、供給搬送路から回収搬送路へ至る経路での磁極の通過回数は50回程度得られ、現像剤交換後や更に長期間の高湿環境放置後でもトナー飛散の不具合がなかったが、磁石ローラの高速回転の騒音が発生した。
【0081】
一方、図6(B)においては、相反する方向に回転させた場合、同じ回転数であっても、図6(A)における従来例よりも対向回数が多く得られ、また、同一方向の回転においても、速度差に応じて対向回数を増加させることができることが判る。
【0082】
以上の説明から、適切な回転数条件は複数存在し、適宜設定すれば良いことがわかる。また、複写速度が異なる場合や現像スリーブ径が異なる場合等においても好適な条件は随時設定可能である。さらに、回転方向に関しても同様である。
【0083】
一方、現像スリーブ81の周方向において、磁石ローラ82の偏心方向と反対側、換言すれば、現像スリーブ81と感光体1と対向する側と反対側の位置には、現像剤剥離手段90が配置されている。
【0084】
現像剤剥離手段90は、感光体1に対する現像領域を通過した現像スリーブ81の周面から残存するキャリアやトナーを剥離する手段であり、上述したように、磁石ローラ82の偏心方向と反対方向の周面に対して近接若しくは非近接状態で設けられて、剥離される現像剤の搬送手段に相当する剥離ローラ90Aと、剥離ローラ90Aの内部で複数の磁極を周方向に配列された剥離磁石ローラ90Bとを備えている。
【0085】
剥離ローラ90Aは、現像スリーブ81と同様な材質および表面処理が施されたローラであり、現像スリーブ81との対向位置で現像スリーブ81の移動方向)図3中、符号Iで示す方向)と反対方向(図3中、矢印で示す方向)への移動方向を設定された回転可能なローラで構成されている。
【0086】
剥離磁石ローラ90Bは、現像スリーブ81に残存するキャリアやトナーを剥離する磁極配列を設定されている。本実施例では、磁極90Bの磁極配列として、N,S,Nの配列とされ、そのうちのN極が現像スリーブ81に対向して位置決めされている。
【0087】
現像剤を磁力により動かす磁石を備えた部材として、現像スリーブ81内の磁石ローラ82と剥離ローラ90A内の磁極とがあり、本実施例では、磁石ローラ82を第1の磁界発生手段とし、磁極90Bを第2の磁界発生手段としている。
【0088】
剥離ローラ90A内の磁極は、ポリアミド樹脂(ナイロン)に磁性粉末を分散させて成形、配向、着磁を行ったボンド磁石が用いられており、小径化を図っているが、この構成に限ることではない。
【0089】
上述した第1の磁界発生手段である磁石ローラ82の磁極と第2の磁界発生手段である剥離磁石ローラ90Bとの磁石配列により、現像スリーブ81の周方向で磁石ローラ82からの磁力の影響が最も弱くなる位置、換言すれば、磁石ローラ82側の磁極と最も離れた位置付近、つまり、符号Tで示す偏心量を持つ偏心方向線上あるいはこれの近傍で現像スリーブ81の周壁を挟んで対向する剥離磁石ローラ90Bの磁極Nは、現像スリーブ81側から容易に現像剤を吸引して剥離することができる。
【0090】
現像剤剥離手段90は、剥離磁石ローラ90Bの磁極からの磁力によって現像スリーブ81に残存する現像剤に含まれるキャリアが磁気吸着されて剥離されることになる。特に、残存するキャリアはトナーが消費されると、トナーとの間で保たれていた静電関係が偏向(カウンターチャージ)して残ることになる。そこで、このようなキャリアを現像スリーブ81の回転による遠心力や自重による重力を利用した剥離が困難となるのを、現像剤剥離手段90により強制的に剥離することが可能となる。
【0091】
一方、現像スリーブ81において残存するトナーは、感光体の表面電位や現像バイアスによる電界の影響を受けて現像スリーブ81側に向けて反発して付着して残る場合がある。このようなトナーはキャリアと同様に現像スリーブ81の遠心力や自重によって剥離できないことがある。
【0092】
本実施例では、このような帯電特性により現像スリーブ81に付着したままで残るトナーを剥離するために、上述した現像剤剥離手段90に加えて、現像スリーブ81から現像剤剥離手段90に向けてトナーを移行させるバイアス制御が用いられている。
【0093】
本実施例におけるバイアス制御は、負帯電トナーを用いた反転現像方式とした場合、図示されない高圧電源によって現像スリーブ81側にはマイナス極性の現像バイアス(例えば、−500V)を印加し、現像剤剥離手段90側の剥離ローラ90A側には相対的にプラス極性を持つ高圧電源(図示されず)から剥離バイアス(例えば、−300V)を印加している。両者間での電位差は200Vとなっている。
【0094】
本実施例は以上のような構成であるから、現像剤の移送について説明する。
【0095】
図3において、供給スクリュー8により現像ローラ5に供給された現像剤は磁石ローラ82の磁気力により現像スリーブ81上に吸着され磁力線に沿って配列される。つまり磁石83上では、符号B1で示すように磁気穂が発生し、磁石83間では、符号B2で示すように磁気穂は転倒する。
【0096】
磁石ローラ82の回転方向を符号Jで示すように、現像スリーブ81の回転方向(I)に対して相反する方向とした場合、磁石ローラ82が回転する間、磁気穂は、所謂フリップフラップ状に自転し、磁石ローラ82の回転方向である矢印Jで示す方向と反対の矢印F方向に進行する。この際、現像スリーブ81は補助的に矢印I方向に比較的低速で回転させても良い。
【0097】
現像剤はドクタ12により磁気穂高さを一定に規制され、余剰の現像剤は矢印Mの流れで供給スクリュー8に戻され軸方向に搬送されながら再び現像ローラ5へと供給される。
【0098】
現像ドクタ12を通過した現像剤は引き続き自転進行するに従い磁石ローラ82の偏心により次第に現像剤スリーブ81への吸着力を増大しキャリアが感光体ドラムに移行するのを抑制する。磁石ローラ82が高回転なほど感光体ドラム1の対向部において現像剤は活発に撹拌されるため潜像に応じて効率良くトナーを転移できる。
【0099】
現像剤は引き続き自転進行するに従い磁石ローラ82の偏心により次第に現像剤スリーブ81への吸着力を減少させ供給搬送路7にて自重により現像スリーブ81より離脱するが、僅かに残留する吸着力により現像スリーブ81に残留する現像剤もある。
【0100】
残留した現像剤は、現像剤剥離手段90に装備されている剥離ローラ90Aと対向すると、その内方に位置する剥離磁石ローラ90Bの磁極によって剥離ローラ90A側に移行し、剥離ローラ90Aの表面に担持された状態でN極同士隣接する位置で磁極間の反発磁界によって落下する(矢印Pで示す状態)。現像剤を剥離された現像スリーブ81は、次の現像剤搬送の準備を完了する。なお、符号P’は、磁石ローラ82の偏心により磁力の影響が弱くなった周面から自重などにより剥落するトナーやキャリアの移動状態を示している。
【0101】
現像スリーブ81から剥離される対象の一つであるキャリアは、剥離磁石ローラ90B側の磁極からの磁気的吸引によって完全に剥離が行われるが、現像スリーブ81に残存するトナー、本実施例では反転現像方式であるので負帯電トナーは、以下の作用により剥離される。
【0102】
剥離ローラ90Bの周面において剥離磁石ローラ90Bの磁極Nが現像スリーブ81に対向しているので、その部分で磁気ブラシが起毛することになる。そして、現像スリーブ81と剥離ローラ90Bとは、対向位置で互いに反対方向に移動しているので、起毛した磁気ブラシが現像スリーブ81を活発に摺擦することになる。このため、現像スリーブ81に残っているトナーは、剥離ローラ90A側の磁気ブラシとの間で摩擦帯電しやすくなるので、キャリアに付着し、結果として、現像スリーブ81から剥離されると共に、剥離ローラ90Aの周面には付着しないようにできる。
【0103】
また、現像スリーブ81と剥離ローラ90Bとの間には、バイアス制御による電位差により現像スリーブ81側に静電的に付着しているトナーは、静電的に剥離ローラ90A側に移行することになるので、現像スリーブ81に残っている帯電トナーも剥離ローラ90Aに向けて剥離される。
【0104】
本発明者は、図3に示した構成において、次に挙げる現像ローラ5および現像剤剥離手段90を構成する部材(90A、90B)の機械的条件を基にして、現像スリーブ81および剥離ローラ90Aに対するトナーおよびキャリアの静電付着によるゴーストが発生しないことを確認した。
(現像ローラ5)
現像スリーブ81の径 φ25mm
磁石ローラ83の径 φ17.6mm
磁石材質 希土類ボンド磁石
磁石ローラ81磁束密度(偏心側) 150mT
磁石ローラ81磁束密度(反偏心側) 3mT
(剥離ローラ90A)
剥離スリーブ90Aの径 φ10mm
剥離磁石ローラ90Bの径 φ8mm
磁石材質 フェライトライトボンド磁石
剥離磁石ローラ90Bの磁束密度(対向極) 100mT
剥離スリーブ90Aの線速 現像スリーブ81の1〜2倍
現像ローラ5との間隙 0.2mm〜2mm
次に図3に示した構成の一部変形例について図4を用いて説明する。
【0105】
図4に示す構成は、現像剤剥離手段91は、回転体ではなく、固定配置された磁石91Aとケース91Bとを備えている。
【0106】
この構成においては、回転機構が省略されているので、その分、低コストによって現像剤の剥離機構が得られる。
【0107】
以上のような現像剤剥離手段を用いた構成においては、現像スリーブ81内の磁石ローラ82を偏心させることにより、感光体と対向する側と反対側の周面での磁力の影響を小さくすることで残存するキャリアやトナーの自重落下あるいは遠心力による飛散が可能となる。さらに加えて、この磁力の影響が小さい部分に、図5に示すように、磁気遮蔽板85などを設けることで剥離性を向上させることが可能となる。
【0108】
本実施例におけるバイアス制御は、負帯電トナーを用いた反転現像方式とした場合、図示されない高圧電源によって現像スリーブ81側にはマイナス極性の現像バイアス(例えば、−500V)を印加し、現像剤剥離手段90側の剥離ローラ90A側には相対的にプラス極性を持つ高圧電源(図示されず)から剥離バイアス(例えば、−300V)を印加している。両者間での電位差は200Vとなっている。
【0109】
本実施例に挙げた構成では、低コストでこのようなトナーおよびキャリアを対象として強制的に剥離することができるので、剥離できないトナーやキャリアによって発生するゴーストを確実に解消することが可能となる。
【符号の説明】
【0110】
1 感光体ドラム
4 現像装置
18 プロセスカートリッジ
81 現像スリーブ
82 磁石ローラ
90 現像剤剥離手段
90A 剥離ローラ
90B 剥離磁石ローラ
T 偏心量
U 現像スリーブと磁石ローラとの間の隙間空間
【先行技術文献】
【特許文献】
【0111】
【特許文献1】特開平11−258909号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
像担持体に形成されている静電潜像に対してトナーとキャリアとを含む二成分系現像剤を供給する現像剤担持体を備えた現像装置であって、
前記現像剤担持体の内部には、現像剤を穂立ちさせて搬送させる磁極を備えた回転可能な磁界発生手段が配置され、
前記磁界発生手段は、前記現像剤担持体の断面中心に対して前記像担持体に対して接近する向きに自らの断面中心を偏心させて配置され、
該偏心により前記磁界発生手段における前記像担持体から最も離れた位置付近には前記現像剤担持体表面に近接もしくは非接触な現像剤剥離手段が配置され、
前記現像剤担持体の内部に備えられている磁界発生手段を第1の磁界発生手段とした場合、前記現像剤剥離手段には、複数の磁極を備え、前記像担持体に供給されずに前記現像剤担持体表面に残った現像剤を剥離する磁極配列を持つ第2の磁界発生手段が備えられていることを特徴とする現像装置。
【請求項2】
前記現像剤剥離手段は、固定配置された複数の磁極を有する磁界発生部と、該磁界発生部の外周囲で回転可能に設けられている現像剤搬送手段とで構成されていることを特徴とする請求項1記載の現像装置。
【請求項3】
前記現像剤剥離手段に備えられている磁界発生部は、複数の磁極を有し、前記現像剤担持体から前記磁界発生部により吸引された現像剤を反撥磁界により除去する磁極配列を備えていることを特徴とする請求項2記載の現像装置。
【請求項4】
前記第2の磁界発生手段に備えられた磁界発生部の磁極の一つは、前記現像剤担持体内に設けられている第1の磁界発生手段の偏心により該現像剤担持体の周面から最も離れた位置付近の磁極を対象として該現像剤担持体の周面を挟んで対向して配置されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一つに記載の現像装置。
【請求項5】
前記現像剤担持体と前記現像剤剥離手段との対向位置には、該現像剤担持体から該現像剤剥離手段に向けてトナーを移行させるバイアス制御が用いられることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一つに記載の現像装置。
【請求項6】
前記バイアス制御は、前記現像剤担持体から現像剤剥離手段に向けてトナーを移動させることができる電位差を設定することを特徴とする請求項5記載の現像装置。
【請求項7】
前記現像剤剥離手段に設けられている現像剤搬送手段は、前記現像剤担持体との対向位置でその移動方向を、該現像剤担持体の移動方向と反対方向に設定されていることを特徴とする請求項2記載の現像装置。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれか一つに記載の現像装置を備えたことを特徴とする画像形成装置。
【請求項9】
少なくとも請求項1乃至7のいずれか一つに記載の現像装置と像担持体とを纏めて収容して備えていることを特徴とするプロセスカートリッジ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−112775(P2011−112775A)
【公開日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−267603(P2009−267603)
【出願日】平成21年11月25日(2009.11.25)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】