説明

現像装置および画像形成装置

【課題】
現像ローラを回転させない状態で所定時間以上放置した後に印刷を行ったとしても、放置横帯の発生を防止することが可能な現像装置および画像形成装置を提供する。
【解決手段】
アクリル樹脂の重量割合をA[%]、表面層に対して所定の間隔で配置されたコロナ放電器に6[kV]の電圧を印加してコロナ放電を発生させてから0.1秒後の表面層の表面電位を残留電位B[V]、現像剤層厚規制部材の表面層に対する当接位置から回転方向下流側にかけての表面層上の現像剤重量に対する現像剤電荷量の割合をG[−μq/g]としたとき、15<A≦50の場合、B≦15、30≦G≦−0.8×B+44、またはA≦15の場合、B≦15、30≦B≦50の何れかの条件を満たす表面層を有する現像剤担持体を備えた現像装置および画像形成装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、現像装置および画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般的に、電子写真方式の画像形成装置が備える現像装置は、主に像担持体としての感光体ドラム、感光体ドラムの表面を一様均一に帯電させる帯電装置としての帯電ローラ、感光体ドラム表面に形成された静電潜像に現像剤としてのトナーを付着させて現像する現像剤担持体としての現像ローラ、現像ローラにトナーを供給する現像剤供給部材としての供給ローラ、現像ローラ表面上のトナー層厚を規制する現像剤層厚規制部材としての現像ブレード等で構成されている。
【0003】
上記現像装置において、感光体ドラム表面に形成された静電潜像にトナーを付着させて現像する現像ローラの表面層は、アクリル樹脂およびウレタン樹脂の混合物から形成されるのが一般的である。そして、良好な画像品質を得るために、上記構成を有する現像装置においては、アクリル樹脂およびウレタン樹脂の合計重量に対するアクリル樹脂の重量割合、表面層の厚さ、又は現像ローラにトナーを供給する供給ローラのアスカーF硬度等の調節が行われている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−175372号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記構成を有する現像装置を備えた画像形成装置では、特定のトナーを使用し、現像ローラを回転させない状態で所定時間以上放置した後で、印刷を開始すると、印刷画像上に現像ローラの回転周期毎の濃度むらが発生する場合がある(以下、該濃度むらを放置横帯と称する)。
【0006】
本発明はこのような実情に鑑みてなされたものであり、本発明の課題は、現像ローラを回転させない状態で所定時間以上放置した後に印刷を行ったとしても、放置横帯の発生を防止することが可能な現像装置および画像形成装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明にかかる現像装置は、弾性層及び該弾性層を覆う表面層を有する現像剤担持体と、前記表面層に対して所定の圧接力をもって当接し、前記表面層上の現像剤の層厚を規制する現像剤層厚規制部材とを備え、前記表面層は、少なくともアクリル樹脂およびポリエーテル系ウレタン樹脂を有する混合物から形成され、前記アクリル樹脂および前記ポリエーテル系ウレタン樹脂の合計重量に対する前記アクリル樹脂の重量割合をA[%]、前記表面層に対して所定の間隔で配置されたコロナ放電器に6[kV]の電圧を印加してコロナ放電を発生させてから0.1秒後の前記表面層の表面電位を残留電位B[V]、前記現像剤層厚規制部材の前記表面層に対する当接位置から回転方向下流側にかけての前記表面層上の現像剤重量に対する現像剤電荷量の割合をG[−μq/g]としたとき、15<A≦50の場合、B≦15、30≦G≦−0.8×B+44、またはA≦15の場合、B≦15、30≦B≦50の何れかの条件を満たすことを特徴とする。
【0008】
また、本発明にかかる画像形成装置は、上記記載の現像装置と、前記現像剤担持体と接触し、前記現像剤担持体から供給された前記現像剤により現像剤画像を形成する像担持体とを備えることを特徴とする。
【0009】
さらに、本発明にかかる画像形成装置は、弾性層及び該弾性層を覆う表面層を有する現像剤担持体と、前記表面層に対して所定の圧接力をもって当接し、前記表面層上の現像剤の層厚を規制する現像剤層厚規制部材と、前記現像剤担持体と接触し、前記現像剤担持体から供給された前記現像剤により現像剤画像を形成する像担持体と、放置環境の湿度を計測する湿度センサと、前記像担持体の回転数を計測する回転数計測部と、放置環境の湿度及び放置前における前記像担持体の回転数から空回転数を設定する空回転数設定部と、放置後24時間後のタイミングにおいて前記空回転数設定部が算出した前記空回転数に基づき前記像担持体を回転させる制御部とを備え、前記表面層は、少なくともアクリル樹脂およびポリエーテル系ウレタン樹脂を有する混合物から形成され、前記表面層に対して1[mm]の間隔で配置されたコロナ放電器に6[kV]の電圧を印加してコロナ放電を発生させてから0.1秒後の前記表面層の表面電位を残留電位B[V]、前記現像剤層厚規制部材の前記表面層に対する当接位置から回転方向下流側にかけての前記表面層上の現像剤重量に対する現像剤電荷量の割合をG[−μq/g]としたとき、B≦15、30≦B≦50の条件を満たすことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、現像ローラを回転させない状態で所定時間以上放置した後に印刷を行ったとしても、放置横帯の発生を防止することが可能な現像装置および画像形成装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】プリンタの概略断面図である。
【図2】プリンタの主な機能構成を説明するためのブロック図である。
【図3】現像ローラの概略断面図である。
【図4】供給ローラの概略断面図である。
【図5】供給ローラの形状を説明する図である。
【図6】現像ブレードの現像ローラに対する当接状態を示す図である。
【図7】現像ローラと供給ローラとの重なりから形成されるNIP部を説明するための部分拡大図である。
【図8】5%デューティーパターンを説明する図である。
【図9】100%デューティーパターンを説明する図である。
【図10】放置横帯を説明する図である。
【図11】現像装置を説明する図である。
【図12】誘電緩和測定装置を説明する図である。
【図13】誘電緩和測定装置を説明する図である。
【図14】印刷濃度測定箇所を説明する図である。
【図15】判定結果をまとめたグラフである。
【図16】電圧印加空回転による放置横帯の改善傾向を説明するグラフである。
【図17】放置横帯の放置時間依存性を説明するグラフである。
【図18】放置横帯の放置前ドラムカウント依存性を説明するグラフである。
【図19】放置横帯の放置環境依存性を説明する図である。
【図20】プリンタの主な機能構成を説明するためのブロック図である。
【図21】空回転動作を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。なお、本発明は以下の記述に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において適宜変更可能である。
【0013】
[第1の実施形態]
第1の実施形態の説明においては、まず、本発明にかかる現像装置を適用した画像形成装置としてのプリンタについて説明する。
【0014】
図1は、プリンタ100の概略断面図である。プリンタ100は、前述したように、電子写真方式により用紙P上に画像を形成することが可能な画像形成装置である。このような機能を実現するプリンタ100には、用紙搬送ローラ22aを始点とし、用紙搬送ローラ22bを介して用紙搬送ローラ22cを終点とする略S字状に形成された用紙搬送経路23(23a、23b、23c、23d)に沿って現像装置10、転写ローラ24、定着装置25等が設けられている。
【0015】
現像装置10は、用紙搬送経路23bに沿って着脱自在に装着されており、露光装置21から照射された照射光によって感光体ドラム11の表面に形成された静電潜像に現像剤としてのトナー18を付着させて現像し、トナー像を形成する。現像装置10については後ほど詳細に説明する。
【0016】
露光装置21は、例えば、LED(Light Emitting Diode)素子から構成されるLEDヘッドとレンズアレイとを有し、画像データに基づいてLED素子から照射される照射光が感光体ドラム11の表面に結像する位置となるように配設される。
【0017】
転写ローラ24は、導電性ゴム等で形成され、感光体ドラム11に対向して圧接するように配設される。転写ローラ23は、後述する転写ローラ用電源35から印加されたバイアス電圧により、感光体ドラム11の表面で現像されたトナー像を用紙Pに転写させる。
【0018】
定着装置25は、現像装置10以降の用紙搬送経路23下流側に配設されており、ヒートローラと、バックアップローラと、サーミスタとを備える。ヒートローラは、例えば、アルミニウム等からなる中空円筒状の芯金にシリコーンゴムの耐熱弾性層を被覆し、その上にPFA(テトラフルオロエチレンーパーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体)チューブを被覆することによって形成されている。そして、その芯金内には、例えば、ハロゲンランプ等の加熱ヒータが設けられている。バックアップローラは、例えば、アルミニウム等からなる芯金にシリコーンゴムの耐熱弾性層を被覆し、その上にPFAチューブを被覆した構成であり、ヒートローラとの間にNIP部が形成されるように配設されている。サーミスタは、ヒートローラの表面温度検出手段であり、ヒートローラの近傍に非接触で配設される。サーミスタが検出したヒートローラの表面温度の検出結果に基づき、加熱ヒータを制御することで、ヒートローラの表面温度は所定の温度に維持される。トナー像が転写された用紙Pが所定の温度に維持されたヒートローラとバックアップローラとから形成されるNIP部を通過することで、熱及び圧力が付与され、用紙P上のトナーが溶融し、トナー像は定着される。
【0019】
なお、図1には示されていないが、プリンタ100を構成する他の部材として、プリンタ100は、図2で説明する制御部30として機能するCPU(Central Processing Unit)、プリンタ100の動作を制御する制御プログラム等を記憶するROM(Read Only Memory)、CPUのワーキングエリアとして使用されるRAM(Random Access Memory)、画像データや制御コマンド等を受信する各種インタフェース部、インタフェース部を介して入力された印刷データを受け取ると共に、該印刷データを編集処理することによって形成された画像データを記憶する画像データ編集メモリ、プリンタ100の動作状態を表示するための、例えば、LCD(Liquid Crystal Display)等の表示手段を備える表示部、ユーザからの指示を受付けるための、例えば、タッチパネル等の入力手段を備える操作部、プリンタ100の動作状態を監視するための、例えば、用紙位置検出センサ、濃度センサ等の各種センサ、画像データ編集メモリに記憶された画像データを露光装置21に出力し、露光装置21が備えるLEDヘッドの駆動を制御するヘッド駆動制御部、定着装置25の温度を制御する温度制御部、用紙Pを用紙搬送経路23に沿って搬送する用紙搬送ローラ22a、22b、22cを回転させるための駆動モータを制御する用紙搬送モータ制御部、感光体ドラム11等の各種ローラを回転させるための駆動モータを制御する駆動制御部等を備える。
【0020】
さらに、プリンタ100の機能構成について説明する。図2は、プリンタ100の主な機能構成を説明するためのブロック図である。
【0021】
プリンタ100は、制御部30と、帯電ローラ用電源32と、現像ローラ用電源33と、供給ローラ用電源34と、転写ローラ用電源35とを備える。
【0022】
制御部30は、プリンタ100全体の動作を統括的に制御する。また、制御部30は、感光体ドラム11の回転数を計測する回転数計測部としてのドラムカウンタ31を備える。
【0023】
帯電ローラ用電源32は、制御部30の指示に基づき、帯電ローラ14に所定の電圧を印加し、感光体ドラム11の表面を一様均一に帯電させる。
【0024】
現像ローラ用電源33は、静電潜像にトナー18を付着させるために現像剤担持体としての現像ローラ12に所定の電圧を印加する。
【0025】
供給ローラ用電源34は、現像ローラ12にトナー18を供給するために現像剤供給部材としての供給ローラ13に所定の電圧を印加する。
【0026】
転写ローラ用電源35は、感光体ドラム11の表面に形成されたトナー像を用紙Pに転写するために転写ローラ24に所定の電圧を印加する。
【0027】
次に、現像装置10について説明する。図1に示すように、現像装置10は、図中矢印方向に回転可能に支持された像担持体としての感光体ドラム11と、感光体ドラム11に対向して配設され、回転可能に支持された現像剤担持体としての現像ローラ12と、現像ローラ12に対向して配設され、回転可能に支持された現像剤供給部材としての供給ローラ13と、感光体ドラム11の回転方向上流側に圧接するように配設された帯電ローラ14と、感光体ドラム11の表面の所定位置に当接するように配設されたクリーニングブレード15と、クリーニングブレード15により掻き落とされた廃トナーが落下する位置に設けられたスペース16と、供給ローラ13の上方に形成され所定量のトナー18を収容するトナーカートリッジ17と、現像装置10の筐体内壁に支持され現像ローラ12の所定位置にそのエッジ部分が当接するように配設された現像剤層厚規制部材としての現像ブレード19と、現像ローラ12からのトナー18の漏洩を防止するためのシール部材20とを備える。
【0028】
感光体ドラム11は導電性支持体と光導電層によって構成され、導電性支持体としてのアルミニウムの金属パイプに光導電層としての電荷発生層及び電荷輸送層を順次積層した構成の有機感光体であり、露光装置20から照射された照射光によって画像データに基づく静電潜像を形成する。
【0029】
現像ローラ12は、図3の概略断面図に示すように、例えば、芯金であるSUS等の導電性シャフト12a上に弾性層12bが周設され、さらに弾性層12b上にトナー18を帯電させるための表面層12cが周設されている。弾性層12bは、例えば、ポリエーテル系ウレタン樹脂で形成され、抵抗値調整や強度確保のために、電子導電剤であるカーボンブラック(例えば、アセチレンブラック、ケッチェンブラック等)および炭酸カルシウム、シリカといった絶縁性無機微粒子が添加されている。なお、本実施形態にかかる弾性層12bのアスカーC硬度は78[°]である。この弾性層12bの硬度を示すアスカーC硬度は、例えば、アスカーC硬度計(高分子計器(株) 製)を用い、ローラ外周の頂点に硬度計の圧子を接触させることで測定可能である。
【0030】
表面層12cは、アクリル樹脂とウレタン樹脂とを含む混合物で構成されている。表面層12cを構成するアクリル樹脂としては、種々のアクリル酸またはメタクリル酸の誘導体を重合して得られる高分子を主鎖としたものを使用することができ、例えば、メタクリル酸−メタクリル酸メチル重合体を主鎖とするものを用いることができる。また、ウレタン樹脂としては、熱可塑性のポリエーテル系ウレタン樹脂やポリエステル系ウレタン樹脂等を使用することができる。このような表面層12cは、例えば、所定の溶媒にアクリル樹脂とウレタン樹脂とを溶解させた溶液を弾性層12b上に所望の方法で塗布し、加熱乾燥することで上記溶媒を揮発させ、弾性層12b上に表面層12cを周設することができる。そして、表面層12cには、半導電性の性質となるように、カーボンブラック等の電子導電剤を添加してもよく、その添加量は、樹脂成分100重量部に対して0.1〜10重量部の範囲で添加するのが好ましい。
【0031】
本実施形態にかかる表面層12cの層厚は2.0[μm]とした。このような導電性シャフト12a、弾性層12b、および表面層12cからなる現像ローラ12の形状はストレート形状であり、そのローラゴム部の外径φsは19.6[mm]、導電性シャフト12aの外径φsは12.0[mm]、ローラゴム部の全長は348[mm]とした。なお、表面層12cの10点平均表面粗さRz(JIS B0601−1994)は、5〜9[μm]とすることが好ましい。この10点平均表面粗さRzは、サーフコーダSEF3500((株)小坂研究所 製)によって計測することができる。
【0032】
供給ローラ13は、図4の概略断面図に示すように、芯金である導電性シャフト13a上に弾性層13bが周設されている。導電性シャフト13aは外径φs6.0[mm]のSUM材に無電解ニッケルメッキ処理を施したものを使用した。また、弾性層13bは導電性シリコーンゴム発泡体で形成され、外形は、図5に示すように、長手方向端部の外径が中央部の外径よりも小さいクラウン形状である。中央部の外径φsは14.8[mm]、であり、中央部の外径に対する長手方向端部の外径φsの比率は0.975とした(図5中 外径y/外径x≒外径z/外径x=0.975)。また、ローラゴム部の全長は336[mm]である。ところで、上記発泡体の密度は発泡倍率、平均セル径により異なり、特に限定はされないが、例えば、平均セル径は、200〜500[μm]とすることが好ましい。平均セル径は、重炭酸ナトリウム等の無機発泡剤、アゾジカルボンアミド(ADCA)等の有機発泡剤等の発泡剤の量や種類、加硫時間や加硫温度をコントロールすることで所望の値を得ることができる。例えば、平均セル径を大きくする場合、発泡剤の量を増やす、加硫時間を長くする、または加硫温度を高くするといった方法により行うことができる。
【0033】
また、弾性層13bには、カーボンブラック等の電子導電剤が添加され、半導電性が付与されている。そして、弾性層13bのアスカーF硬度は46〜62[°]である。ここで、アスカーF硬度が63[°]以上である場合、本構成においては、現像ローラ12と供給ローラ13との間でのトナー18における摩擦帯電が大きくなり、汚れの発生の要因となりうる。また、アスカーF硬度が45[°]以下である場合、供給ローラ13から現像ローラ12に対して十分な量のトナー18を供給することができず、カスレの発生の要因となりうる。
【0034】
このような構成を有する供給ローラ13は以下の製造方法により製造することができる。まず、有機溶剤等で洗浄し油分を除去した導電性シャフト13aと弾性層13bとしての導電性シリコーンゴム発泡体とを押し出し成型機にて一体化し、次いで、赤外線オーブン等にて発泡、硬化させる。その後、約180〜225[℃]の温度で5〜10時間程度、2次加硫処理を行い、粗研磨、フィニッシャー研磨等を経て所望の外径を有する供給ローラ13を得ることができる。
【0035】
帯電ローラ14は、感光体ドラム11の表面に接して設けられ、金属シャフトと半導電性エピクロロヒドリンゴムによって構成されている。帯電ローラ14は、帯電ローラ用電源32から印加された所定の電圧により感光体ドラム11表面を一様均一に帯電させる。
【0036】
クリーニングブレード15は、感光体ドラム11の表面の所定位置に接して設けられ、感光体ドラム11の表面に残留した転写残トナーを感光体ドラム11の回転に伴い掻き落とす。
【0037】
スペース16はトナーを搬送する搬送部材が収容される空間であり、クリーニングブレード15により掻き落とされた転写残トナーは、廃トナーとして該搬送部材により図示せぬ回収容器に搬送される。
【0038】
トナーカートリッジ17は、画像形成に用いられるトナー18を収容する箱型部材である。なお、本実施形態において用いることができるトナー18は、特に限定はされないが、例えば、粒径4〜8[μm]の非磁性一成分の負帯電重合トナーを用いることができる。
【0039】
現像ブレード19は、現像ローラ12の表面の所定位置において、カウンタ方向に所定の圧接力で当接するように配設されたステンレス製の現像剤層厚規制部材であり、現像ローラ12の表面上のトナー18の層厚を規制する。図6は、本実施形態にかかる現像ブレード19の現像ローラ12に対する当接状態を示す図である。図6に示すように、現像ブレード19は、エッジ部分において現像ローラ12の表面と当接している。ここで、当接部分の曲率半径をR[mm]とすると、本実施形態においては、曲率半径Rを0.15〜0.35[mm]と設定した。
【0040】
シール部材20は、例えば、発泡ウレタンを現像ローラ12の形状に合わせて、厚み約3mmの円弧状に形成し、かつ、現像ローラ12と周擦する部分に厚み約0.08mmのフィルム状のポリテトラフルオロエチレン(PTFE)を設けたものである。なお、PTFEはフィルム形状の他に繊維状に成型したものを織り合わせたフェルト形状のものを用いることもできる。
【0041】
図7は、上記構成を有する現像ローラ12と供給ローラ13との重なりから形成されるNIP部を説明するための部分拡大図である。基本的に現像ローラ12と供給ローラ13とは逆方向に回転し、両ローラの周速比に応じて現像ローラ12と供給ローラ13との間の摩擦力が支配される構造である。本実施形態においては、現像ローラ12と供給ローラ13との芯金中心間距離L1を16.25[mm]に設定している。そして、現像ローラ12の直径をφd[mm]、供給ローラ13の直径をφs[mm]とし、両ローラの重なり量N[mm]は、
N=(φd+φs)/2−L1
の式で求めることができ、本実施形態では、重なり量Nは1.10[mm]とした。
【0042】
次に、このような構成を備えたプリンタ100の印刷動作について説明する。
【0043】
まず、例えば、パーソナルコンピュータ等の上位装置から図示せぬインターフェースを介して印刷実行命令が入力されると、制御部30は、図示せぬ駆動制御部を制御して、感光体ドラム11を図1中矢印方向へ所定の周速度をもって回転させる。
【0044】
同時に、制御部3は、所定の電圧を帯電ローラ14に印加するよう帯電ローラ用電源32に指示を与える。指示を受けた帯電ローラ用電源32は帯電ローラ14に所定の電圧を印加し、感光ドラム11の表面を一様均一に帯電させる。なお、本実施形態においては、帯電ローラ7に−1050Vの電圧を印加した。
【0045】
次に、制御部30は、入力された画像データに基づくイメージデータを図示せぬヘッド駆動制御部に出力する。ヘッド駆動制御部は、入力されたイメージデータに基づく光を照射するよう露光装置20が備えるLEDヘッドを制御し、感光ドラム11上に静電潜像を形成させる。
【0046】
ここで、トナーカートリッジ17に収容されたトナー18は、供給ローラ用電源34によって電圧が印加された供給ローラ13により現像ローラ12に供給される。なお、本実施形態においては、供給ローラ13に−300Vの電圧を印加した。
【0047】
現像ローラ12の表面の所定位置に配設された現像ブレード19は、供給ローラ13から供給されたトナー18を均一な層厚に形成する。そして、現像ローラ12と感光ドラム11との間において、感光ドラム11上に形成された静電潜像に対応する電気力線により、トナー18が静電潜像部分に付着することでトナー画像が現像される。なお、本実施形態においては、現像ローラ12に−200Vの直流電圧を印加した。
【0048】
上記トナー画像の形成動作に合わせて、制御部30は、用紙搬送ローラ21a、21b、21cを回転させるよう図示せぬ用紙搬送モータ制御部に対して指示を与える。用紙搬送ローラ21a、21bの回転に伴い、用紙Pは用紙搬送経路22a、22bを経て現像装置10に搬送される。
【0049】
そして、転写ローラ用電源35により所定の電圧が印加された転写ローラ23により、用紙P上にトナー画像が転写される。
【0050】
その後、用紙Pは、定着装置24に搬送される。そして、ヒートローラから付与される熱によりトナーが溶融され、さらに、ヒートローラとバックアップローラとから形成されるNIP部において圧接されることにより、トナー画像が用紙P上に定着する。トナー画像が定着された用紙Pは、用紙搬送ローラ21cの回転により用紙搬送経路22c、22dを経てプリンタ100外部に排出され、一連の印刷動作が終了する。
【0051】
なお、トナー剤画像が転写された後の感光ドラム11上には、若干のトナー18が残留する場合があるが、この残留トナー18は、クリーニングブレード15によって除去され、クリーニングされた感光ドラム11は繰り返して使用される。
【0052】
さて、前述したように、現像ローラを回転させない状態で所定時間以上放置した後で、印刷を開始すると印刷画像上に放置横帯が発生する。以下の説明においては、初めに放置横帯発生の再現性について説明するとともに、放置横帯の発生を防止する上で検討した各種パラメータについて説明する。
【0053】
[放置横帯発生の再現性]
まず、従来の現像ローラを有する現像装置を適用したプリンタを用い、温度22[℃]、湿度50[%]の環境下で、図8に示すような5%デューティーパターン(図9に示すベタ印刷画像を100%デューティーパターンとする)をドラムカウント数450回印刷した。なお、印刷時の現像ローラには−200[V]、供給ローラには−300[V]、帯電ローラには−1050[V]、及び現像ブレードには−300[V]の電圧を印加した。また、使用したプリンタの印刷速度は、一般的な普通紙(坪量68〜75[g/cm])で片面印刷31[ppm]である。
【0054】
印刷終了後、プリンタおよび現像装置をともに、温度22[℃]、湿度50[%]の環境下で、48時間放置した。そして、48時間後、現像ローラ、供給ローラ、帯電ローラ、及び現像ブレードに対して上記と同電圧をそれぞれ印加し、図9に示す100%デューティーパターンを印刷すると、図10に示されるように、現像ローラの回転周期毎に印刷濃度が濃い部分が横帯状となって現れた。
【0055】
これは、図11に示すように、現像装置10’内の現像ローラ12’上において、現像ブレード19’に接している位置から供給ローラ13’を通ってシール部材20’に接している位置までの範囲を現像室部40、反対に現像ブレード19’に接している位置から感光体ドラム11’を通ってシール部材20’に接している位置までの範囲を露出部41と称すると、上記放置横帯は、現像室部40と露出部41とにおける帯電性が異なるために発生したものである。
【0056】
したがって、現像ローラ12が示す各種パラーメータ特性に基づき、放置横帯およびドラムかぶりを判定することで、放置横帯の発生を防止することが可能な現像装置および画像形成装置を得ることができる。以下に、各種パラメータ特性の測定方法、放置横帯およびドラムかぶりの判定方法について説明する。
【0057】
[パラメータ特性測定方法]
1.現像ローラの表面電位(残留電位B[V])の測定
図12は、現像ローラ上の残留電位を測定するために用いた誘電緩和測定装置50を説明する図である。誘電緩和測定装置50として、Quality Engineering Associates社製のDRA−2000Lを用いた。本測定装置によれば、現像ローラ12表面にコロナ電圧を印加後、電位衰退後の現像ローラ12表面に介在する電荷から残留電位を算出することができる。このとき、残留電位の値が大きいほど、残留電荷が大きく誘電的性質が強いといえる。
【0058】
誘電緩和測定装置50は現像ローラ12の表面にコロナ電圧を印加するコロナ電圧印加部(コロナ放電器)52と現像ローラ12の表面の電荷を収得するプローブ(表面電位計)53とが図12に示す配設位置で設けられたキャリア51を有する。キャリア51は、現像ローラ12の長手方向に対して移動自在となるように設けられている。なお、本実施形態においては、プローブ53と現像ローラ12の表面との距離は1[mm]に固定されており、プローブ53はコロナ電圧印加部52による6[kV]のコロナ電圧印加後、0.1秒後の現像ローラ12の残留電位を測定する。そして、キャリア51が現像ローラ12の両端部を往復する毎に現像ローラ12は任意の回転角度だけ回転し、最終的に360度回転するまで該回転動作を繰り返す。
【0059】
図13は、誘電緩和測定装置50の閉鎖型等価回路図である。現像ローラ12の表面においてコロナ放電により発生した電流は、電流センサによって検知される。キャパシタンス部分は、発生した電流、電圧が経時で減衰することを示しており、両者はコロナ電圧印加後の時間の関数となる。
【0060】
そして、放置横帯が発生した現像装置10内の現像ローラ12について残留電位の測定を行ったところ、現像室部40は7[V]、露出部41は10[V]であった。なお、残留電位測定の際には、現像装置10から現像ローラ12を取り外し、取り外した現像ローラ12を感光体ドラムと接触させ、回転させながら所定の電圧を印加することで、電気的にトナー18を除去している。図10に示される印刷画像の濃度が濃くなっている箇所は、残留電位が露出部41よりも低い現像室部40に相当する印刷箇所であることが確認された。したがって、放置横帯の発生改善の為には、現像室部40の残留電位と露出部41の残留電位とのギャップが小さいことが望ましく、放置後の現像室部40の残留電位Va[V]、露出部41の残留電位Vb[V]で表される下記式の比率Svの値が1に近づくほど、放置横帯の発生改善を図ることができる。
Sv=Va/Vb
【0061】
2.トナー層厚規制後の現像ローラ上のトナーの質量Mに対する電荷量Qの割合G
本実施形態においては、現像ブレード19の現像ローラ12に対する当接位置から該現像ローラ12の回転方向下流側の表面上、すなわち、現像ブレード19によるトナー層厚規制後の現像ローラ12の表面上に介在するトナー18の質量Mに対する電荷量Qの割合G(Q/M[−μq/g])と称し、現像ローラ12の帯電性のパラメータとする。測定方法としては、1枚の白紙を印刷後にプリンタ100から現像装置10を取り出し、現像ローラ12の表面上に介在するトナー18を採取後、採取したトナー18の電荷量と質量を測定し下記式からGを算出する。ここで、トナー18は負帯電性であるため、算出値の符号はマイナスである。
G=Q/M[−μq/g]
【0062】
なお、このときの印刷環境は温度22[℃]、湿度50[%]であり、印刷時の現像ローラ12には−200[V]、供給ローラ13には−300[V]、帯電ローラ14には−1050[V]、及び現像ブレード19には−300[V]の電圧を印加した。トナー18の電荷測定にはQ/Mメーター(トレックジャパン社製 Model210HS)、重量測定には電子分析天秤(ザルトリウス(日本シイベルヘグナー)社製 BP210−D)をそれぞれ使用した。
【0063】
[放置横帯判定方法]
次に、放置横帯判定方法について説明する。本実施形態においては、下記式で表される放置横帯の判定基準として印刷画像上での横帯部分の濃度値Daと非横帯部分の濃度値Dbの比率である濃度段差率σを用いた。濃度測定には、キャノンアイテック株式会社製のX−Rite500分光濃度計を用いた。
σ=Da/Db
【0064】
濃度段差率σを基準として、放置横帯が視覚的に確認できない判定○をσ<1.052、濃度段差が大きく放置横帯が非常に目立つ判定×をσ≧1.052とした。測定箇所は、図14に示した箇所であり、濃度値Daは濃度値Da1〜濃度値Da5の平均値、濃度値Dbは濃度値Db1〜濃度値Db5の平均値から算出した。
【0065】
[ドラムかぶり判定方法]
ドラムかぶりは、正常に帯電したトナー18に対して、低い帯電性のトナー18や逆極性に帯電したトナー18によって印刷画像の背景部分、すなわち、非印刷部分にトナー18が付着することで発生する。ドラムかぶり判定方法としては、白紙画像の現像中に現像装置10を停止し、現像後転写前の感光体ドラム11の表面上のトナー18を粘着テープ(住友スリーエム社製 スコッチテープ)に付着させた。そして、該粘着テープを白色の記録用紙に貼り付け、リファレンスとして粘着テープのみを記録用紙に貼り付けた場合との色差△Eを分光測色計(コニカミノルタ社製 CM−2600d)を用いて測定した。ここで、色差△Eが小さいときには、ドラムかぶりにかかるトナー18が少ないことを示している。本実施形態においては、△E<1.5を○、△E≧1.5を×とした。
【0066】
前述したように、放置横帯の発生条件として、現像室部40の残留電位が露出部41の残留電位に比べて低いことが挙げられる。過去の研究結果から、現像ローラ12が組み込まれた現像装置10を用いて印刷を行った後、数日間放置すると、使用開始時等の初期に比べて現像ローラ12の表面の残留電位が高くなることが明らかとなっている。しかしながら、露出部41の残留電位変動に比べて現像室内40の残留電位変動は小さいことから、現像室部40の残留電位と露出部41の残留電位とのギャップが生じると考えられる。また、現像ローラ12の表面層12cに含まれるアクリル樹脂の感応基とトナー18とが反応することも残留電位変動の要因の一つと考えられている。そこで、本実施形態では、アクリル樹脂の含有量(アクリル樹脂およびポリエーテル系ウレタン樹脂の合計重量に対するアクリル樹脂の重量割合)を調製することで、放置による残留電位変動を抑えることを検討した。また、その際の初期残留電位、初期帯電性(トナー層厚規制後の現像ローラ上のトナーの質量Mに対する電荷量Qの割合)を現像ローラ12の特性パラメータとして併せて検討した。
【0067】
表1は、現像ローラ12のアクリル樹脂およびポリエーテル系ウレタン樹脂の合計重量に対するアクリル樹脂の重量割合A[%]、初期残留電位B[V]、初期帯電性G[−μq/g]の検討条件をまとめた表である。なお、初期残留電位は、カーボンブラック等の導電剤の添加量を変更することで調節可能である。具体的には、導電剤の添加量を増やすことにより誘電性は低下し、残留電位は減少する傾向がある。これに対して、導電剤の添加量を減らすことにより誘電性は向上し、残留電位は増加する傾向がある。また、初期帯電性は、現像ローラ12の表面層12cの形成時にフッ素を添加することで調製可能であり、フッ素の添加量を多くすることで初期帯電性を増加させることができる。
【0068】
【表1】

【0069】
次に、表1に示した検討条件に基づいて調整した現像ローラ12を用いての判定方法について説明する。まず、それぞれの検討条件に基づいて調整した現像ローラ12を有する現像装置10を適用したプリンタ100を用い、温度22[℃]、湿度50[%]の環境下で、5%デューティーパターンをドラムカウント数450回印刷した。なお、印刷時の現像ローラ12には−200[V]、供給ローラ13には−300[V]、帯電ローラ14には−1050[V]、及び現像ブレード19には−300[V]の電圧を印加した。また、使用したプリンタ100の印刷速度は、一般的な普通紙(坪量68〜75[g/cm])で片面印刷31[ppm]である。
【0070】
印刷終了後、プリンタ100および現像装置10をともに、温度22[℃]、湿度50[%]の環境下で、48時間放置した。そして、48時間後、現像ローラ12、供給ローラ13、帯電ローラ14、及び現像ブレード19に対して上記と同電圧をそれぞれ印加し、100%デューティーパターンを印刷した。その後、現像装置10から現像ローラ12を取り外し、取り外した現像ローラ12を感光体ドラムと接触させ、回転させながら所定の電圧を印加することで電気的にトナー18を除去した。
【0071】
次に、誘電緩和測定装置50を用い、トナー18を除去した現像ローラ12の表面の残留電位の測定を行い、現像室部40の残留電位と露出部41の残留電位との比較を行った。同時に、印刷した100%デューティーパターンの印刷濃度測定を図14に示した箇所において行い、放置横帯判定を行った。また、低帯電性の副作用としてドラムかぶりが悪化することが考えられるため、白紙画像の印刷を行い、ドラムカブリ判定を行った。
【0072】
上記判定結果を表2−1、表2−2および図15に示す。表2−1、表2−2および図15においては、放置横帯判定、ドラムかぶり判定の両判定結果が良好である場合は○と判定し、放置横帯判定、ドラムかぶり判定の何れか一方が不良である場合は×と判定した。
【0073】
【表2−1】

【0074】
【表2−2】

【0075】
表2−1、表2−2および図15に示すように、アクリル樹脂の重量割合Aが60[%]以上である場合、放置横帯、ドラムかぶりの判定結果が良好な範囲は存在しないことが明らかとなった。したがって、アクリル樹脂の重合割合Aの良好範囲は、A≦50[%]と判断した。
【0076】
初期帯電性Gの数値が大きすぎると、感光体ドラム11への現像効率が低下することにより印刷濃度の低下が発生する。本実施形態においては、100%デューティーパターンにおいて、X−Rite500分光濃度計を用いて測定した印刷濃度値が1.35以上となる初期帯電性Gの良好範囲は、50[−μq/g]以下となるため、アクリル樹脂の重合割合Aにかかわらず、G≦50となる。また、ドラムかぶり判定結果においては、アクリル樹脂の重合割合Aにかかわらず、G≧30となる。したがって、初期帯電性Gの良好範囲は、30≦G≦50と判断した。
【0077】
また、放置横帯判定、ドラムかぶり判定において、良好な判定結果が得られる現像ローラ12の初期残留電位Bは15[V]以下である。したがって、アクリル樹脂の重合割合Aにかかわらず、初期残留電位Bの良好範囲は、B≦15と判断した。
【0078】
図15に示すように、アクリル樹脂の重合割合Aが15[%]以下では、初期残留電位Bの値にかかわらず、初期帯電性Gは30≦G≦50の範囲を満たす。しかしながら、アクリル樹脂の重合割合Aが15<A≦50の範囲においては、該アクリル樹脂の重合割合Aの値により初期帯電性Gの良好範囲が推移する。このとき、アクリル樹脂の重合割合Aにかかわらず、放置横帯判定、ドラムかぶり判定の両判定結果が良好となる初期帯電性Gは30≦G≦−0.8×B+44を満たす範囲となる。
【0079】
これらのことより、アクリル樹脂の重量割合A[%]、初期残留電位B[V]、初期帯電性G[−μq/g]からなる以下の式の何れかを満たすことで、放置横帯、ドラムかぶりの発生を回避することができる。
(15<A≦50) B≦15、30≦G≦−0.8×B+44
(A≦15) B≦15、30≦G≦50
【0080】
以上のように、第1の実施形態によれば、アクリル樹脂の重量割合A[%]、初期残留電位B[V]、初期帯電性G[−μq/g]からなる
(15<A≦50) B≦15、30≦G≦−0.8×B+44
(A≦15) B≦15、30≦G≦50
の何れかの式を満たすことで、現像ローラを回転させない状態で所定時間以上放置した後に印刷を行ったとしても、放置横帯の発生を防止することが可能な現像装置および画像形成装置を提供することができる。
【0081】
[第2の実施形態]
第2の実施形態では、第1の実施形態で説明した効果に加え、放置前の感光体ドラムのドラムカウント数、放置時間、放置環境等の諸条件を考慮し、現像ローラを回転させない状態で放置したとしても、所定時間経過後に感光体ドラムの空回転を行うことで、より効果的に放置横帯の発生・悪化を防止することが可能な形態について説明する。なお、第2の実施形態の説明においては、第1の実施形態と同一な箇所についてはその説明を省略し、異なる箇所について説明する。
【0082】
まず、本実施形態において検討を行った放置横帯に対する感光体ドラムの空回転の効果、並びに放置横帯の発生・悪化要因について説明する。
【0083】
[電圧印加空回転による放置横帯の改善傾向]
放置横帯が発生した現像装置10について、そのまま印刷を継続すると、最終的には発生した放置横帯が消失する傾向が見受けられる。図16は、第1の実施形態において、[放置横帯発生の再現性]を検討した際に使用した現像装置を用い、[放置横帯発生の再現性]の検討にかかる印刷動作後、そのまま白紙を印刷して何枚目で放置横帯が消失するのかを評価したグラフである。なお、印刷時の現像ローラには−200[V]、供給ローラには−300[V]、帯電ローラには−1050[V]、及び現像ブレードには−300[V]の電圧を印加した。また、使用したプリンタの印刷速度は、一般的な普通紙(坪量68〜75[g/cm])で片面印刷31[ppm]である。また、印刷した白紙枚数は、感光体ドラムの回転数であるドラムカウント値で表記している。
【0084】
図16に示されるように、放置横帯が発生した時点からドラムカウント100〜150程度で、濃度段差率は、放置横帯判定の良好閾値であるσ=1.052を下回ることが明らかとなった。
【0085】
[放置横帯の放置時間依存性]
次に、放置横帯の放置時間依存性について検討を行った。図17に示すように、プリンタの放置時間が長くなるにつれ、放置横帯は悪化する傾向があり、放置時間24時間以上で濃度段差率の良好閾値であるσ=1.052を上回る結果となった。なお、放置前のドラムカウント数を450回、湿度を50[%]とした。したがって、上記条件においては、24時間以上放置したときに、感光体ドラムの空回転を実施することで放置横帯の悪化は回避されると考えられる。
【0086】
[放置横帯の放置前ドラムカウント依存性]
次に、放置横帯の放置前ドラムカウント依存性について検討を行った。図18に示すように、感光体ドラムの放置前ドラムカウントが多いほど放置横帯は悪化する傾向があり、約2400回以上のドラムカウントで濃度段差率は飽和することが明らかとなった。したがって、同じ24時間、プリンタを放置した場合でも、放置前のドラムカウントに応じて所定時間経過後に実施する必要空回転数が変動することになる。ここで、必要空回転数は、放置横帯が発生した現像装置10の濃度段差率と放置横帯判定の良好閾値であるσ=1.052との差分を図16で示した直線の傾きである0.0004で除した値となる。本実施形態においては、図18に示されるように、放置前のドラムカウントを5つの範囲に分け、それぞれの条件で放置後の必要空回転数を設定する形態とした。ここで、ドラムカウントが450回以下では放置横帯判定結果は良好であるため、必要空回転数は、最低限の回数20回に設定する。なお、回数0回と設定しないのは、空回転が行われずに放置され続けることによる放置横帯の発生・悪化を防止するためである。また、ドラムカウントが2400回以上では、濃度段差率が飽和する傾向となるため、同じ必要空回転数に設定した。
【0087】
[放置横帯の放置環境依存性]
一般的に放置横帯は放置環境の湿度が高いほど、改善されることが知られている。図19に示すグラフは、第1の実施形態において、[放置横帯発生の再現性]を検討した際に放置環境の湿度を変更して検討した結果である。ただし、放置前のドラムカウント数を450回、放置時間を24時間とした。図19に示すように、放置環境の湿度が高いほど放置横帯は改善される傾向にあり、湿度50[%]以上では、放置横帯判定は良好となっている。
【0088】
これらのことより、放置時間24時間後のタイミングで放置前のドラムカウントと放置環境の湿度とに応じた必要空回転数をもって感光体ドラムを空回転させることにより、放置横帯の発生・悪化を回避することが可能になると考えられる。
【0089】
上記検討結果に基づき、ある程度の回数の印刷動作を行ったプリンタを湿度80[%]以下の環境で24時間以上放置する場合に、5つの範囲に分けたドラムカウントに応じて必要空回転数を設定するプリンタについて説明する。
【0090】
図20は、本実施形態にかかるプリンタの主な機能構成を説明するためのブロック図である。
【0091】
本実施形態にかかるプリンタは、第1の実施形態にかかるプリンタ100の構成に加え、タイムカウンタ36と、温湿度センサ37と、駆動制御部38と、空回転数設定部としての空回転制御部39とを備える。
【0092】
タイムカウンタ36は、所謂タイマであり、印刷動作が終了した時点からの放置経過時間を計測し、空回転制御部39に出力する。
【0093】
温湿度センサ37は放置環境の温度、湿度を計測し、該計測結果を空回転制御部39に出力する。
【0094】
駆動制御部38は、空回転制御部39が出力した必要空回転数に基づき帯電ローラ用電源32、現像ローラ用電源33、供給ローラ用電源34、転写ローラ用電源35以外の各部材を統括的に制御する。
【0095】
空回転制御部39は、タイムカウンタ36から入力された放置経過時間と、温湿度センサ37から入力された計測結果に基づき、放置後24時間経過後の必要空回転数を設定する。そして、空回転数制御部39は設定した必要空回転数を駆動制御部38、帯電ローラ用電源32、現像ローラ用電源33、供給ローラ用電源34、転写ローラ用電源35に出力する。
【0096】
なお、空回転制御部39から出力された必要空回転数に基づき帯電ローラ用電源32、現像ローラ用電源33、供給ローラ用電源34、転写ローラ用電源35はそれぞれのローラ部材に所定の電圧を印加する。
【0097】
次に、本実施形態にかかる空回転動作について図21のフローチャートを用いて説明する。
【0098】
まず、印刷動作が終了すると、ステップS1において、タイマカウンタ36は、印刷動作が終了した時点からの放置経過時間を計測し、空回転制御部39に出力する。
【0099】
最終印字からの経過時間が24時間経過すると(ステップS2 Yes)、空回転制御部39は、温湿度センサ37から入力された湿度およびドラムカウンタ31から入力されたドラムカウンタに基づき、必要空回転数を設定する(ステップS3)。
【0100】
次に、空回転数制御部39は、設定した必要空回転数を駆動制御部38、帯電ローラ用電源32、現像ローラ用電源33、供給ローラ用電源34、転写ローラ用電源35に出力し、感光体ドラム11の空回転を実行させる(ステップS4)。
【0101】
感光体ドラム11の空回転が終了すると(ステップS5)、ドラムカウンタ31は、ドラムカウントを再開し、タイマカウンタ36は空回転が終了した時点からの放置経過時間の計測を開始する(ステップS6)。
【0102】
空回転が終了した時点から24時間を経過すると(ステップS7)、空回転数制御部39は、図中Aの領域で示したステップS3以降の処理を繰り返す。
【0103】
一方、ステップS2において、最終印字からの経過時間が24時間経過しておらず(ステップS2 No)、印刷動作が開始され(ステップS8)、該印刷動作が終了すると(ステップS9)、ドラムカウンタ31は、ドラムカウントを再開し、タイマカウンタ36は空回転が終了した時点からの放置経過時間の計測を開始する(ステップS6)。
【0104】
次に、第1の実施形態において、表1で示した現像ローラ12のアクリル樹脂およびポリエーテル系ウレタン樹脂の合計重量に対するアクリル樹脂の重量割合A[%]、初期残留電位B[V]、初期帯電性G[−μq/g]がそれぞれ異なる現像ローラ12を用い、第1の実施形態と同様に、放置横帯判定、ドラムかぶり判定を行った。なお、本判定では、印刷終了後48時間放置するため、2回の空回転動作が実行されている。
【0105】
表3は、初期残留電位BがB≦15、初期帯電性Gが30≦G≦50の範囲における放置横帯判定、ドラムかぶり判定の判定結果をまとめあたものである。表3に示されるように、B≦15、30≦G≦50の範囲において、アクリル樹脂の重合割合Aにかかわらず、放置横帯の発生・悪化を回避できる。
【0106】
【表3】

【0107】
以上のように、第2の実施形態によれば、表面層の初期残留電位B、初期帯電性GがそれぞれB≦15、30≦G≦50の範囲を満たす現像ローラを備え、放置時間24時間後のタイミングで放置前のドラムカウントと放置環境の湿度とに応じた必要空回転数をもって感光体ドラムを空回転させることにより、より効果的に放置横帯の発生・悪化を防止することができる。
【0108】
本発明は上記記述に限定されず、例えば、中間転写方式の画像形成装置にも適用可能である。また、プリンタのみならず、MFP、ファックス、または複写機等にも適用することができる。
【符号の説明】
【0109】
10 現像装置
11 感光体ドラム
12 現像ローラ
12a 導電性シャフト
12b 弾性層
12c 表面層
13 供給ローラ
13a 導電性シャフト
13b 弾性層
14 帯電ローラ
15 クリーニングブレード
16 スペース
17 トナーカートリッジ
18 トナー
19 現像ブレード
20 シール部材
21 露光装置
22 用紙搬送ローラ
23 用紙搬送経路
24 転写ローラ
25 定着装置
30 制御部
31 ドラムカウンタ
32 帯電ローラ用電源
33 現像ローラ用電源
34 供給ローラ用電源
35 転写ローラ用電源
36 タイムカウンタ
37 温湿度センサ
38 駆動制御部
39 空回転制御部
40 現像室部
41 露出部
50 誘電緩和測定装置
51 キャリア
52 電圧印加部
53 プローブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
弾性層及び該弾性層を覆う表面層を有する現像剤担持体と、
前記表面層に対して所定の圧接力をもって当接し、前記表面層上の現像剤の層厚を規制する現像剤層厚規制部材とを備え、
前記表面層は、
少なくともアクリル樹脂およびポリエーテル系ウレタン樹脂を有する混合物から形成され、前記アクリル樹脂および前記ポリエーテル系ウレタン樹脂の合計重量に対する前記アクリル樹脂の重量割合をA[%]、前記表面層に対して所定の間隔で配置されたコロナ放電器に6[kV]の電圧を印加してコロナ放電を発生させてから0.1秒後の前記表面層の表面電位を残留電位B[V]、前記現像剤層厚規制部材の前記表面層に対する当接位置から回転方向下流側にかけての前記表面層上の現像剤重量に対する現像剤電荷量の割合をG[−μq/g]としたとき、
15<A≦50の場合、B≦15、30≦G≦−0.8×B+44、または
A≦15の場合、B≦15、30≦B≦50
の何れかの条件を満たすこと
を特徴とする現像装置。
【請求項2】
前記表面層の10点平均表面粗さRzは5μm以上9μm以下であると共に、前記弾性層のアスカーC硬度は78°であること
を特徴とする請求項1記載の現像装置。
【請求項3】
前記現像剤担持体に対して前記現像剤を供給する現像剤供給部材を備え、
該現像剤供給部材は、
アスカーF硬度が47°以上62°以下の硬度を示す弾性層を有すること
を特徴とする請求項1又は請求項2記載の現像装置。
【請求項4】
請求項1乃至3の何れか1項記載の現像装置と、
前記現像剤担持体と接触し、前記現像剤担持体から供給された前記現像剤により現像剤画像を形成する像担持体とを備えること
を特徴とする画像形成装置。
【請求項5】
弾性層及び該弾性層を覆う表面層を有する現像剤担持体と、
前記表面層に対して所定の圧接力をもって当接し、前記表面層上の現像剤の層厚を規制する現像剤層厚規制部材と、
前記現像剤担持体と接触し、前記現像剤担持体から供給された前記現像剤により現像剤画像を形成する像担持体と、
放置環境の湿度を計測する湿度センサと、
前記像担持体の回転数を計測する回転数計測部と、
放置環境の湿度及び放置前における前記像担持体の回転数から空回転数を設定する空回転数設定部と、
放置後24時間後のタイミングにおいて前記空回転数設定部が設定した前記空回転数に基づき前記像担持体を回転させる制御部とを備え、
前記表面層は、
少なくともアクリル樹脂およびポリエーテル系ウレタン樹脂を有する混合物から形成され、前記表面層に対して所定の間隔で配置されたコロナ放電器に6[kV]の電圧を印加してコロナ放電を発生させてから0.1秒後の前記表面層の表面電位を残留電位B[V]、前記現像剤層厚規制部材の前記表面層に対する当接位置から回転方向下流側にかけての前記表面層上の現像剤重量に対する現像剤電荷量の割合をG[−μq/g]としたとき、
B≦15、30≦B≦50
の条件を満たすこと
を特徴とする画像形成装置。
【請求項6】
前記表面層の10点平均表面粗さRzは5μm以上9μm以下であると共に、前記弾性層のアスカーC硬度は78°であること
を特徴とする請求項5記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記現像剤担持体に対して前記現像剤を供給する現像剤供給部材を備え、
該現像剤供給部材は、
アスカーF硬度が47°以上62°以下の硬度を示す弾性層を有すること
を特徴とする請求項5又は請求項6記載の画像形成装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate

【図20】
image rotate

【図21】
image rotate


【公開番号】特開2012−14089(P2012−14089A)
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−152657(P2010−152657)
【出願日】平成22年7月5日(2010.7.5)
【出願人】(591044164)株式会社沖データ (2,444)
【Fターム(参考)】