説明

現像装置及びそれを備えた画像形成装置

【課題】傾斜しても、簡単な構成にて、現像剤の排出量のバラツキを小さく抑える現像装置及びそれを備えた画像形成装置を提供する。
【解決手段】現像装置2は、第2連通部22fの近傍にて第2搬送路22dの下流側端部に延設される現像剤排出口22hと、現像容器22の上壁部22kに配設され上壁部22kを介して第2連通部22fに対向する位置に、現像容器22の長手方向の傾斜に応じて移動可能である磁石部材71と、を備える。現像剤排出口22hへ排出される現像剤量が減少する方向に現像容器22が傾斜しているとき、磁石部材71が第2連通部22fに対向する位置に移動するように構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複写機、プリンター、ファクシミリ、それらの複合機等の画像形成装置に用いる現像装置及びそれを備えた画像形成装置に関し、特に、トナーとキャリアとからなる2成分現像剤の補給を行うとともに余剰現像剤を排出する現像装置及びそれを備えた画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
画像形成装置においては、感光体等からなる像担持体上に形成した潜像を、現像装置により現像しトナー像として可視化することを行っている。このような現像装置の一つとして、2成分現像剤を用いる2成分現像方式が採用されている。この種の現像装置は現像容器内にトナーとキャリアとからなる現像剤を収容し、像担持体に現像剤を供給する現像ローラーが配設されるとともに、現像容器内の現像剤を撹拌、搬送しながら現像ローラーへと供給する撹拌部材が配設されている。
【0003】
この現像装置では、潜像の現像によってトナーは消費されていく一方、キャリアは消費されずに現像容器内に残る。従って、現像容器内でトナーとともに撹拌されるキャリアは撹拌頻度が多くなるにつれて劣化し、その結果トナーに対するキャリアの帯電付与性能が徐々に低下してしまう。
【0004】
そこで、現像容器内にキャリアを含む現像剤を補給するとともに、余剰となった現像剤を排出することで、帯電性能の低下を抑制するようにした現像装置が提案されている。
【0005】
例えば、特許文献1では、現像容器内で現像剤を撹拌、搬送する撹拌部材が設けられ、また、搬送方向の下流側に現像剤排出口が設けられ、さらに、撹拌部材と現像剤排出口との間には、撹拌部材の螺旋羽根とは逆向きで螺旋状に形成される規制部材が設けられている。この構成において、現像剤が現像容器内に補給されると、撹拌部材の回転により現像剤が撹拌されながら搬送方向の下流側まで搬送される。規制部材が撹拌部材と同方向に回転すると、規制部材によって、撹拌部材による現像剤搬送方向に対して逆方向の搬送力が現像剤に付与される。この逆方向の搬送力によって、搬送方向下流側では現像剤が塞き止められて嵩高となることから、余剰の現像剤が規制部材を乗り越えて現像剤排出口に移動し現像容器から排出される。
【0006】
特許文献1のように余剰現像剤を排出する現像装置では、現像剤排出口が常時開放されたものとなっているため、画像形成装置の輸送や搬入、搬出等の移動時において画像形成装置が傾き、或いは画像形成装置に衝撃が加わると、現像剤が現像容器から現像剤排出口に不必要に排出されるという問題があった。
【0007】
そこで、特許文献2では、現像剤排出口の排出開口部の周縁部に電磁石が設けられている。電磁石は、現像ローラーの回転停止時に作動する一方、現像ローラーの回転時に作動を停止するように制御されている。現像ローラー回転時には、電磁石が作動していないので、現像容器内の余剰の現像剤が現像剤排出開口部から排出される。一方、画像形成装置の輸送や搬入、搬出等の移動時、現像ローラーが回転停止した状態にあり、電磁石が作動している。このために、画像形成装置に傾斜や衝撃が作用しても、磁性キャリアを含む現像剤が排出開口部の周縁部の電磁石に吸着され、現像剤排出口に不必要に排出されるのを防いでいる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2001−265098号公報(段落[0021]、[0023]、[0024]、[0028]、第4図)
【特許文献2】特開平6−242683号公報(段落[0017]、[0018]、[0023]、第1図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上述した特許文献2では、画像形成装置の輸送等の移動時において画像形成装置に傾斜や衝撃が作用しても、現像剤が現像容器から現像剤排出口に不必要に排出されることはない。しかし、画像形成装置を設置するときに装置本体が傾いて設置されると、現像容器内で現像剤面の高さが偏る。現像剤排出口に対して現像剤面が高く偏るように装置本体が傾いて設置されると、不必要に現像剤が排出される一方、現像剤排出口に対して現像剤面が低く偏るように装置本体が傾いて設置されると、現像容器内の現像剤が過多となる。また設置後、画像形成装置に衝撃が作用すると、その衝撃によって現像剤排出口への排出量が変動する。このように、現像容器内で現像剤が所定量に対して増減すると、撹拌ムラや、現像ローラーへの現像剤の供給不良となり、画像のかぶりやハーフトーン画像の濃度ムラ等の画像劣化が発生するという問題があった。また、特許文献2では、排出開口部の周縁部に電磁石を設け、その電磁石を制御する構成になっており、構造が複雑になり、また、コストがかかるという問題があった。
【0010】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、傾斜しても、簡単な構成にて、現像剤の排出量のバラツキを小さく抑える現像装置及びそれを備えた画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために第1の発明は、磁性キャリアを含む現像剤を収容する現像容器と、回転軸の周りに軸方向に沿って延びる螺旋羽根を有し、現像剤を撹拌、搬送する撹拌部材と、現像剤を前記現像容器に補給する現像剤補給口と、前記現像容器内の余剰の現像剤を排出する現像剤排出口と、を備え、前記現像容器は、第1搬送路と、該第1搬送路と逆方向に現像剤が搬送される第2搬送路と、前記第1及び第2搬送路の両端部を連通する第1連通部及び第2連通部と、を有し、前記現像剤排出口は前記第2連通部の近傍にて前記第2搬送路の下流側端部に延設される現像装置であって、前記現像容器の外壁部に配設され前記外壁部を介して前記第2連通部に対向する位置に、前記現像容器の長手方向の傾斜に応じて移動可能である磁石部材を備え、前記現像剤排出口へ排出される現像剤量が減少する方向に前記現像容器が傾斜しているとき、前記磁石部材が前記第2連通部に対向する第1の位置に移動し、前記現像容器が水平状態であるとき、或いは前記現像剤排出口へ排出される現像剤量が増加する方向に前記現像容器が傾斜しているとき、前記第1の位置から退避するように構成されることを特徴としている。
【0012】
また、第2の発明では、上記の現像装置において、前記第2連通部は、前記第1及び第2搬送路を仕切る仕切り部と、前記現像容器の長手方向の端部側に設けられる側壁部とによって形成され、前記磁石部材は、前記第2連通部に対向する第1の位置と、前記側壁部に対向する第2の位置とに移動可能であり、前記現像容器が水平状態にあるとき、或いは前記現像剤排出口へ排出される現像剤量が増加する方向に前記現像容器が傾斜しているとき、前記第2の位置に移動するように構成されることを特徴としている。
【0013】
また、第3の発明では、上記の現像装置において、前記現像剤排出口は、前記第2搬送路に対向する排出開口部と、前記排出開口部に排出された現像剤を搬送する排出搬送路とを有し、前記磁石部材は、前記第2連通部に対向する第1の位置と、前記排出搬送路に対向する第3の位置とに移動可能であり、前記現像剤排出口へ排出される現像剤量が増加する方向に前記現像容器が傾斜しているとき、前記第3の位置に移動するように構成されることを特徴としている。
【0014】
また、第4の発明では、上記の現像装置において、前記磁石部材は、前記第1の位置と第3の位置との間に位置し前記第2連通部及び前記排出搬送路のいずれにも対向しない中間位置に移動可能であり、前記現像容器が水平状態にあるとき、前記中間位置に移動するように構成されることを特徴としている。
【0015】
また、第5の発明では、上記の現像装置において、前記外壁部には前記磁石部材を移動可能に案内するガイド部が形成され、前記磁石部材は、前記現像容器の傾斜に応じて前記ガイド部を自重によって転動するように円形状をなすことを特徴としている。
【0016】
また、第6の発明では、上記の現像装置において、前記磁石部材は、前記現像容器に揺動可能に支持され前記現像容器の傾斜に応じて自重によって移動可能であることを特徴としている。
【0017】
また、第7の発明では、上記の構成の現像装置を備えた画像形成装置である。
【発明の効果】
【0018】
第1の発明によれば、現像剤排出口へ排出される現像剤量が減少する方向に現像容器が傾斜しているときには、磁石部材は第2連通部に対向する位置に移動することで、第2連通部の磁性キャリアを含有する現像剤は、磁石部材によって引き付けられ、現像剤が第2連通部を通過し難くなる。撹拌部材は、第2搬送路の下流側では現像剤を第2連通部と現像剤排出口とに分離して搬送するが、第2連通部において現像剤が通過し難くなり滞留すると、現像剤排出口側へ搬送される現像剤量が増加し、現像剤排出口へ排出される現像剤量も増加することになる。従って、磁石部材を現像容器の外壁部に配設するという簡単な構成で、現像容器が傾斜していても、現像剤の排出量のバラツキを小さく抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の実施形態に係る現像装置を備えた画像形成装置を概略的に示す図
【図2】実施形態に係る現像装置を概略的に示す断面図
【図3】実施形態に係る現像装置の撹拌部を示す平面断面図
【図4】第1実施形態に係る磁石部材の取り付け構成を示す一部段面した平面図
【図5】第1実施形態に係る磁石部材の取り付け部を示す側面断面図
【図6】第2実施形態に係る磁石部材の取り付け構成を示す平面図
【図7】第2実施形態に係る磁石部材の取り付け部を示す側面断面図
【図8】第3実施形態に係る磁石部材を示す平面図
【図9】本発明の実施例1に係る現像容器の傾斜に対する現像剤量の変化を示す図
【図10】本発明の実施例2に係る現像容器の傾斜に対する現像剤量の変化を示す図
【図11】比較例1に係る現像容器の傾斜に対する現像剤量の変化を示す図
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に本発明の実施形態について図面を参照して説明するが、本発明は、この実施形態に限定されない。また発明の用途やここで示す用語等はこれに限定されるものではない。
【0021】
(第1実施形態)
図1は、本発明の実施形態に係る現像装置を備えた画像形成装置の構成を示す図である。画像形成装置1はタンデム型のカラープリンターであり、回転自在である感光体11a〜11dは、感光層を形成する感光材料として、有機感光体(OPC感光体)が用いられ、ブラック、イエロー、シアン、及びマゼンタの各色に対応させて配設される。各感光体11a〜11dの周囲に、現像装置2a〜2d、露光ユニット12、帯電器13a〜13d及びクリーニング装置14a〜14dが配設される。
【0022】
現像装置2a〜2dは、感光体11a〜11dの右方に夫々対向して配置され、感光体11a〜11dにトナーを供給する。帯電器13a〜13dは、感光体回転方向に対し現像装置2a〜2dの上流側であって感光体11a〜11dの表面に対向して配置され、感光体11a〜11dの表面を一様に帯電させる。
【0023】
露光ユニット12は、パーソナルコンピューター等から画像入力部(図略)に入力された文字や絵柄などの画像データに基づいて、各感光体11a〜11dを走査露光するためのものであり、現像装置2a〜2dの下方に設けられる。露光ユニット12には、レーザー光源、ポリゴンミラーが設けられ、各感光体11a〜11dに対応して反射ミラー及びレンズが設けられる。レーザー光源から出射されたレーザー光が、ポリゴンミラー、反射ミラー及びレンズを介して、帯電器13a〜13dの感光体回転方向下流側から、各感光体11a〜11dの表面に照射される。照射されたレーザー光により、各感光体11a〜11dの表面には静電潜像が形成され、この静電潜像が各現像装置2a〜2dによりトナー像に現像される。
【0024】
無端状の中間転写ベルト17は、テンションローラー6、駆動ローラー25及び従動ローラー27に張架されている。駆動ローラー25は図示しないモーターによって回転駆動され、中間転写ベルト17は駆動ローラー25の回転によって循環駆動させられる。
【0025】
この中間転写ベルト17に接触するように各感光体11a〜11dが中間転写ベルト17の下方で回転方向(図1の矢印方向)に沿って隣り合うように配列されている。1次転写ローラー26a〜26dは、中間転写ベルト17を挟んで感光体11a〜11dと対向し、中間転写ベルト17に圧接して1次転写部を形成する。この1次転写部において、中間転写ベルト17の回転とともに所定のタイミングで各感光体11a〜11dのトナー像が中間転写ベルト17に順次転写される。これにより、中間転写ベルト17表面にはマゼンタ、シアン、イエロー、ブラックの4色のトナー像が重ね合わされたトナー像が形成される。
【0026】
2次転写ローラー34は、中間転写ベルト17を挟んで駆動ローラー25と対向し、中間転写ベルト17に圧接して2次転写部を形成する。この2次転写部において、中間転写ベルト17表面のトナー像が用紙Pに転写される。転写後に、ベルトクリーニング装置31が中間転写ベルト17に残存するトナーを清掃する。
【0027】
画像形成装置1内の下方には、用紙Pを収納する給紙カセット32が配設され、給紙カセット32の右方には、手差しの用紙を供給するスタックトレイ35が配設される。給紙カセット32の左方には、給紙カセット32から繰り出された用紙Pを中間転写ベルト17の2次転写部に搬送する第1用紙搬送路33が配設される。また、スタックトレイ35の左方には、スタックトレイ35から繰り出された用紙を2次転写部に搬送する第2用紙搬送路36が配設される。更に、画像形成装置1の左上方には、画像が形成された用紙Pに対して定着処理を行う定着部18と、定着処理の行われた用紙を用紙排出部37に搬送する第3用紙搬送路39とが配設される。
【0028】
給紙カセット32は、装置の外部(図1の紙面表側)に引き出すことにより用紙の補充を可能にしたもので、収納されている用紙Pがピックアップローラー33b及び捌きローラー33aにより1枚ずつ第1用紙搬送路33側に繰り出される。
【0029】
第1用紙搬送路33と第2用紙搬送路36とはレジストローラー33cの手前で合流しており、レジストローラー33cにより、中間転写ベルト17における画像形成動作と給紙動作とのタイミングを取って、用紙Pが2次転写部に搬送される。2次転写部に搬送された用紙Pは、バイアス電位が印加された2次転写ローラー34によって、中間転写ベルト17上のトナー像を2次転写され、定着部18に搬送される。
【0030】
定着部18は、ヒーターにより加熱される定着ベルトと、定着ベルトに内接する定着ローラーと、定着ベルトを挟んで定着ローラーに圧接して配設された加圧ローラー等とを備え、トナー像が転写された用紙Pを加熱及び加圧することにより定着処理を行う。用紙Pは、トナー像が定着部18で定着された後、必要に応じて第4用紙搬送路40で反転されて用紙の裏面にも2次転写ローラー34でトナー像が2次転写され、定着部18で定着される。トナー像が定着された用紙は第3用紙搬送路39を通って、排出ローラー19aにより用紙排出部37に排出される。
【0031】
図2は、上述の画像形成装置1に用いられる現像装置の構成を示す断面図である。なお、以下の説明では、図1に示す感光体11aに対応する現像装置2aの構成及び動作について説明するが、現像装置2b〜2dの構成及び動作については現像装置2aと同様であり、説明を省略し、また各色の現像装置及び感光体を示すa〜dの符号を省略する。
【0032】
現像装置2は、現像ローラー20と、磁気ローラー21と、規制ブレード24と、撹拌部材42、及び現像容器22等により構成されている。
【0033】
現像容器22は、樹脂によって現像装置2の外郭を構成し、その下部で仕切り部22bによって第1搬送路22cと第2搬送路22dに仕切られている。第1搬送路22c及び第2搬送路22dには、磁性キャリアとトナーからなる現像剤が収容される。また、現像容器22は、撹拌部材42と磁気ローラー21及び現像ローラー20を回転可能に保持している。さらに現像容器22には、現像ローラー20を感光体11に向けて露出させる開口22aが形成されている。
【0034】
現像ローラー20は、感光体11に対向し、一定の間隔を設けて感光体11の右方に配設される。また、現像ローラー20は、感光体11に接近した対向位置において、感光体11にトナーを供給する現像領域Dを形成している。磁気ローラー21は、一定の間隔を設けて現像ローラー20に対向し、現像ローラー20の右斜め下方に配設される。また、磁気ローラー21は、現像ローラー20に接近した対向位置において、現像ローラー20にトナーを供給する。規制ブレード24は磁気ローラー21の左斜め下方にて現像容器22に固定保持されている。撹拌部材42は磁気ローラー21の略下方に配設される。
【0035】
撹拌部材42は、第1撹拌部材43と第2撹拌部材44との2本で構成される。第2撹拌部材44が磁気ローラー21の下方で、第2搬送路22d内に設けられ、第1撹拌部材43が第2撹拌部材44の右方に隣接して、第1搬送路22c内に設けられる。
【0036】
第1及び第2の撹拌部材43、44は現像剤を撹拌して現像剤中のトナーを所定のレベルに帯電させる。これによりトナーは磁性キャリアに保持される。また、第1搬送路22cと第2搬送路22dを仕切る仕切り部22bの長手方向(図2の紙面表裏方向)の両端部側には、連通部(図略)が設けられており、第1撹拌部材43が回転すると、帯電した現像剤は、仕切り部22bに設けた一方の連通部から第2搬送路22d内に搬送され、第1搬送路22c内と第2搬送路22d内とを循環する。そして、第2撹拌部材44から磁気ローラー21に現像剤が供給される。
【0037】
磁気ローラー21は、ローラー軸21aと磁極部材M及び非磁性材からなる回転スリーブ21bを備え、第2撹拌部材44により供給された現像剤を担持し、担持した現像剤からトナーのみを現像ローラー20に供給するものである。磁極部材Mは、断面扇形に形成された外周部の極性の異なる複数の磁石からなり、ローラー軸21aに接着等により固着される。ローラー軸21aは、回転スリーブ21b内で、磁極部材Mと回転スリーブ21bの間に所定の間隔を設けて、現像容器22に回転不能に支持される。回転スリーブ21bは、図示しないモーターと歯車からなる駆動機構により、現像ローラー20と同方向(図2の時計回り方向)に回転し、また直流電圧56aに交流電圧56bを重畳したバイアス56を印加される。回転スリーブ21b表面において、帯電した現像剤は磁極部材Mの磁力によって磁気ブラシを形成して担持され、磁気ブラシは規制ブレード24によって所定の高さに調節される。
【0038】
回転スリーブ21bの回転にともなって、磁気ブラシは、回転スリーブ21bの表面に担持されて搬送され、現像ローラー20に設けた磁極部材20bにて磁気ブラシが立ち上がり現像ローラー20に接触すると、磁気ブラシのトナーのみが、回転スリーブ21bに印加されたバイアス56に応じて、現像ローラー20に供給される。
【0039】
現像ローラー20は、固定軸20aと、磁極部材20bと、非磁性の金属材料で円筒状に形成される現像スリーブ20c等を備えて構成されている。
【0040】
固定軸20aは現像容器22に回転不能に支持される。この固定軸20aには、現像スリーブ20cが回転自在に保持され、さらに、磁石よりなる磁極部材20bが磁気ローラー21と対向する位置に現像スリーブ20cと所定の間隔を設けて、接着等により固着される。現像スリーブ20cは、図示しないモーターと歯車からなる駆動機構により、図2の矢印方向(時計回り方向)に回転させられる。また、現像スリーブ20cには、直流電圧57aに交流電圧57bを重畳した現像バイアス57が印加される。
【0041】
現像バイアス57が現像スリーブ20cに印加されると、現像バイアス電位と感光体11の露光部位の電位との電位差により、現像スリーブ20cの表面に担持されたトナーが現像領域Dにおいて感光体11に向けて飛翔する。飛翔したトナーは矢印A方向(反時計回り方向)に回転する感光体11上の露光部位に順次付着し、感光体11上の静電潜像が現像される。
【0042】
次に、図3を用いて撹拌部について詳しく説明する。図3は撹拌部を上側から見た平面断面図である。
【0043】
現像容器22には、前述のように、第1搬送路22cと、第2搬送路22dと、仕切り部22bと、第1連通部22e、及び第2連通部22fが形成され、その他に、現像剤補給口22gと、現像剤排出口22hと、第1側壁部22i、及び第2側壁部22jが形成されている。
【0044】
仕切り部22bは、現像容器22の長手方向に延びて第1搬送路22cと第2搬送路22dを並列させるように仕切っている。仕切り部22bの長手方向の両端部分には、第1連通部22eと第2連通部22fが設けられており、現像剤は、第1搬送路22cと、第1連通部22eと、第2搬送路22d、及び第2連通部22f内を循環することが可能である。
【0045】
現像剤補給口22gは、現像容器22の上部に設けられた現像剤補給容器(図略)から新たなトナー及び磁性キャリアを現像容器22内に補給するための開口であり、第1搬送路22cの上流側(図2の左側)に配置される。
【0046】
現像剤排出口22hは、現像剤の補給によって、第1及び第2搬送路22c、22d内で余剰となった現像剤を排出するためのものであり、第2搬送路22dの下流側で第2搬送路22dの長手方向に連続して設けられる。
【0047】
第1搬送路22c内には第1撹拌部材43が配設され、第2搬送路22d内には第2撹拌部材44が配設されている。
【0048】
第1撹拌部材43は、回転軸43bと、回転軸43bに一体に設けられ、回転軸43bの軸方向に一定のピッチで螺旋状に形成される第1螺旋羽根43aとを有する。また、第1螺旋羽根43aは、第1搬送路22cの長手方向の両端部側まで延び、第1及び第2連通部22e、22fにも対向して設けられている。回転軸43bは現像容器22の第1側壁部22iと第2側壁部22jに回転可能に軸支されている。
【0049】
第2撹拌部材44は、回転軸44bと、回転軸44bに一体に設けられ、回転軸44bの軸方向に第1螺旋羽根43aと同じピッチで第1螺旋羽根43aとは逆方向の羽根で螺旋状に形成される第2螺旋羽根44aとを有する。また、第2螺旋羽根44aは、磁気ローラー21の軸方向長さ以上の長さを有し、第1及び第2連通部22e、22fに対向して設けられている。回転軸44bは、回転軸43bと平行に配置され、現像容器22の第1側壁部22iと第2側壁部22jに回転可能に軸支されている。
【0050】
また、回転軸44bには、第2螺旋羽根44aとともに、規制部材である逆螺旋羽根52及び排出羽根53が一体に配設されている。
【0051】
逆螺旋羽根52は、現像剤排出口22hに対向し、現像剤排出口22hと第2螺旋羽根44aとの間に配置されるとともに、逆螺旋羽根52の外縁は、第2側壁部22jにおける第2搬送路22dの内周面と間隔を有して配設される。また、逆螺旋羽根52は、第2螺旋羽根44aと逆方向を向く(逆位相の)羽根で螺旋状に形成され、且つ、第2螺旋羽根44aよりピッチが小さい2〜3巻きの羽根で形成されている。従って、逆螺旋羽根52が回転すると、逆螺旋羽根52によって、第2螺旋羽根44aによる現像剤搬送方向とは逆方向の搬送力が現像剤に付与され、現像剤が塞き止められる。塞き止められた現像剤は、第2連通部22fに搬送されるとともに、余剰の現像剤として逆螺旋羽根52の外縁を乗り越えて現像剤排出口22hに排出されることになる。
【0052】
回転軸44bは現像剤排出口22h内まで延びている。現像剤排出口22h内の回転軸44bには排出羽根53が設けられている。排出羽根53は、第2螺旋羽根44aと同じ方向の螺旋状の羽根からなるが、第2螺旋羽根44aよりピッチが小さく、また羽根の外径が小さくなっている。従って、回転軸44bが回転すると、排出羽根53も回転し、逆螺旋羽根52を乗り越えて現像剤排出口22h内に搬送された余剰現像剤は、図3の左側に送られて、現像容器22外に排出されるようになっている。
【0053】
第1側壁部22i及び第2側壁部22jの外面には、歯車61〜64が配設されている。歯車61、62は回転軸43bに固着され、歯車64は回転軸44bに固着され、歯車63は、第1側壁部22iに回転可能に保持されて、歯車62、64に噛合している。
【0054】
従って、図示しないモーターの回転駆動によって、歯車61が回転すると、回転軸43bとともに第1螺旋羽根43aが回転し、第1螺旋羽根43aは第1搬送路22c内の現像剤を矢印P方向に搬送する。さらに、歯車62〜64の歯車列によって、回転軸44bとともに第2螺旋羽根44aが回転すると、第2螺旋羽根44aは第2搬送路22d内の現像剤を矢印Q方向に搬送し、現像剤は、第1搬送路22cから、第1連通部22e、第2搬送路22d、及び第2連通部22fと循環しながら撹拌される。そして、撹拌された現像剤が磁気ローラー21に供給される。
【0055】
次に、現像剤補給口22gから現像剤が補給される場合について説明する。現像によってトナーが消費されると、所定のタイミングで、現像剤補給口22gから第1搬送路22c内に磁性キャリア、または磁性キャリアを含む現像剤が補給される。
【0056】
補給された現像剤は、現像時と同様に、第1搬送路22cから、第1連通部22e、第2搬送路22d、及び第2連通部22fと循環しながら撹拌されるが、補給にともない余剰となった現像剤は、逆螺旋羽根52を乗り越えて現像剤排出口22hに排出される。
【0057】
現像容器22の外壁部には、図4、図5に示すように、磁石部材71を取り付ける磁石取り付け部22mが形成されている。図4は、現像容器22の内部構成が分かるように一部断面するとともに磁石取り付け部22mを形成した現像容器22を上側から見た平面図である。図5は磁石取り付け部22mを示す側面断面図であり、図5(a)は、現像容器22が水平状態にある場合を示し、図5(b)は、現像容器22が現像剤排出口22hへ排出される現像剤量が減少する方向に傾斜した場合を示す。
【0058】
図4に示すように、磁石部材71は、球状の永久磁石からなり、上壁部22kに形成した磁石取り付け部22mに移動可能に取り付けられる。即ち、磁石部材71は、上壁部22kを介して第2連通部22fに対向する第1の位置(実線位置)と、第2側壁部22jに対向する第2の位置(一点鎖線位置)とを磁石取り付け部22m内で移動することができる。
【0059】
磁石取り付け部22mは、上側が開放された長方形の箱状のガイド部22nを有する。ガイド部22nは、第2連通部22fと第2側壁部22jとに夫々対応して延びて形成され、磁石部材71を移動方向に案内する側面22s、22tと、磁石部材71が第1の位置に対応して当接する当接面22pと、磁石部材71が第2の位置に対応して当接する当接面22qと、磁石部材71を滑らかに転がり移動させる転動面22r(図5参照)と、を有して構成される。
【0060】
図5(a)に示すように、現像容器22が水平状態にあるとき、磁石部材71が当接面22qに当接するように、磁石取り付け部22mが構成される。従って、現像容器22が左側を下にして傾斜(現像剤排出口22hへ排出される現像剤量が増加する方向に傾斜、図4参照)するときにも、図5(a)に示すように、磁石部材71が当接面22qに当接する。一方、現像容器22が図3の右側を下にして所定角度(例えば2°)だけ傾斜(現像剤排出口22hへ排出される現像剤量が減少する方向に傾斜、図4参照)すると、図5(b)に示すように、磁石部材71が当接面22pに当接する。
【0061】
つまり、図5(a)に示すように、現像容器22が水平状態にあるとき、或いは、現像剤排出口22hへ排出される現像剤量が増加する方向に現像容器22が傾斜しているとき、磁石部材71は第2側壁部22jに対向する第2の位置(図4の一点鎖線位置)に移動することになる。一方、図5(b)に示すように、現像剤排出口22hへ排出される現像剤量が減少する方向に現像容器22が傾斜しているとき、磁石部材71は第2連通部22fに対向する第1の位置(図4の実線位置)に移動することなる。
【0062】
図4に戻り、磁石部材71が第2の位置(一点鎖線位置)に移動したとき、磁石部材71の磁力が搬送される現像剤に作用することなく、現像剤は、第2搬送路22d内で第2螺旋羽根44aによって撹拌されながら、第2連通部22fを通過して第1搬送路22cに搬送されるとともに、余剰となった現像剤は、逆螺旋羽根52を乗り越えて適量だけ現像剤排出口22hに排出される。
【0063】
一方、磁石部材71が第1の位置(実線位置)に移動したとき、磁性キャリアにより磁性を帯びている現像剤は、磁石部材71によって引きつけられ、第2連通部22fの上側に盛り上がる。これにより、現像剤が第2連通部22fを通過し難くなるために、第2連通部22fに現像剤が滞留する。第2連通部22fでの現像剤の滞留によって、逆螺旋羽根52へ搬送される現像剤量が増加し、現像剤排出口22hへ排出される現像剤量も増加することになる。
【0064】
従って、上記構成によって、現像剤排出口22hへ排出される現像剤量が減少する方向に現像容器22が傾斜すると、現像剤排出口22hへ排出される現像剤量が増加するために、現像容器22が水平状態にある場合に対して、現像剤の排出量の変動を小さく抑えることができる。
【0065】
また、現像容器22が水平状態にあるとき、現像容器22に衝撃が作用すると、例えば、図4の右側から長手方向に衝撃が作用すると、その衝撃力によって、現像剤が現像剤排出口22hに排出され難くなり、現像剤排出口22hへ排出される現像剤量が減少する。しかし、現像容器22への衝撃力に対する慣性によって、磁石部材71が第2の位置から第1の位置に移動する。磁石部材71が第1の位置に移動したときには、前述のように、逆螺旋羽根52へ搬送される現像剤量が増加し、現像剤排出口22hへ排出される現像剤量も増加し、現像容器22に衝撃が作用しても、現像容器22が水平状態にある場合に対して、現像剤の排出量の変動を小さく抑えることができる。
【0066】
また、磁石部材71が、現像容器22の傾斜や衝撃に応じてガイド部22nを自重により転動するという簡単な構成によって、現像剤の排出量のバラツキを小さく抑えることができる。
【0067】
(第2実施形態)
図6、図7は、第2実施形態に係る磁石部材の取り付け構成を示す図であり、図6は磁石取り付け部22mを上側から見た平面図である。尚、図6は、撹拌部材、逆螺旋羽根等の現像容器22内の構成部材を省き、図を見やすくしている。図7は磁石取り付け部22mの側面断面図である。図7(a)は、現像剤排出口22hへ排出される現像剤量が増加する方向に傾斜した場合を示し、図7(b)は、現像容器22が水平状態にある場合を示し、図7(c)は、現像容器22が現像剤排出口22hへ排出される現像剤量が減少する方向に傾斜した場合を示す。第2実施形態では、磁石取り付け部22mが第2連通部22fから現像剤排出口22hまで延びて構成される点が第1実施形態と異なり、以降、第1実施形態と異なる点について主に説明し、第1実施形態と同じ部分の説明を省略する。
【0068】
図6に示すように、現像剤排出口22hは、第2搬送路22dの下流側で第2搬送路22dの長手方向に連続して設けられ、排出開口部22h1と排出搬送路22h2とを有する。排出開口部22h1は、第2搬送路22dに対向し余剰現像剤が第2搬送路22dから排出される。排出搬送路22h2は、排出開口部22h1に排出された現像剤を現像容器22外に向けて搬送する。排出搬送路22h2内には排出羽根53(図3参照)が配設されている。
【0069】
現像容器22の上壁部22k(外壁部)には、磁石部材71を取り付ける磁石取り付け部22mが形成されている。
【0070】
磁石部材71は、円板状の永久磁石からなり、磁石取り付け部22mに移動可能に取り付けられる。即ち、磁石部材71は、上壁部22kを介して第2連通部22fに対向する第1の位置(実線位置)と、上壁部22kを介して排出搬送路22h2に対向する第3の位置(一点鎖線位置)と、第1の位置と第3の位置との間に位置する中間位置(二点鎖線位置)とに移動することができる。尚、磁石部材71は球状であってもよい。
【0071】
磁石取り付け部22mは、上側が開放された長方形の箱状のガイド部22nを有する。ガイド部22nは、第2連通部22fと排出搬送路22h2とに夫々対応して延びて形成され、磁石部材71を移動方向に案内する側面22s、22tと、磁石部材71を滑らかに転がり移動させる転動面22r(図7参照)と、磁石部材71が第1の位置に対応して当接する当接面22pと、磁石部材71が第3の位置に対応して当接する当接面22qと、転動面22r上に中間位置に対応して形成される凹部22u(図7参照)と、を有して構成される。
【0072】
図7(b)に示すように、現像容器22が水平状態にあるとき、磁石部材71が半円状の凹部22uに係合するように、磁石取り付け部22mが構成される。現像容器22が所定角度(例えば2°)傾くと、磁石部材71が凹部22uから外れ転動面22r上を右側または左側に転がることが可能となる。一方、現像容器22が左側を下にして所定角度だけ傾斜(現像剤排出口22hへ排出される現像剤量が増加する方向に傾斜、図6参照)するとき、図7(a)に示すように、磁石部材71が凹部22uから外れ当接面22qに当接する。また、現像容器22が右側を下にして所定角度だけ傾斜(現像剤排出口22hへ排出される現像剤量が減少する方向に傾斜、図6参照)すると、図7(c)に示すように、磁石部材71が凹部22uから外れ当接面22pに当接する。
【0073】
つまり、図7(b)に示すように、現像容器22が水平状態にあるとき、磁石部材71は中間位置(図6の二点鎖線位置)に移動することになる。一方、現像剤排出口22hへ排出される現像剤量が増加する方向に現像容器22が傾斜しているとき、磁石部材71は排出搬送路22h2に対向する第3の位置(図6の一点鎖線位置)に移動することになる。また、図7(c)に示すように、現像剤排出口22hへ排出される現像剤量が減少する方向に現像容器22が傾斜しているとき、磁石部材71は第2連通部22fに対向する第1の位置(図6の実線位置)に移動することなる。
【0074】
図6に戻り、磁石部材71が中間位置(二点鎖線位置)に移動したとき、磁石部材71の磁力が搬送される現像剤に作用することなく、現像剤は、第2搬送路22d内で第2螺旋羽根44aによって撹拌されながら、第2連通部22fを通過して第1搬送路22cに搬送されるとともに、余剰となった現像剤は、逆螺旋羽根52を乗り越えて適量だけ現像剤排出口22hに排出される。
【0075】
一方、磁石部材71が第1の位置(実線位置)に移動したとき、磁性キャリアにより磁性を帯びている現像剤は、磁石部材71によって引きつけられ、第2連通部22fの上側に盛り上がる。これにより、現像剤が第2連通部22fを通過し難くなるために、第2連通部22fに現像剤が滞留する。第2連通部22fでの現像剤の滞留によって、逆螺旋羽根52へ搬送される現像剤量が増加し、現像剤排出口22hへ排出される現像剤量も増加することになる。
【0076】
従って、現像剤排出口22hへ排出される現像剤量が減少する方向に現像容器22が傾斜すると、現像剤排出口22hへ排出される現像剤量が増加するために、現像容器22が水平状態にあるときに対して、現像剤の排出量の変動を小さく抑えることができる。
【0077】
また、磁石部材71が第3の位置(一点鎖線位置)に移動したとき、磁石部材71の磁力は、第2連通部22fを通過する現像剤に作用することがないが、排出搬送路22h2の現像剤に作用する。このことによって、第2連通部22fでの現像剤の滞留が解消され、磁石部材71が中間位置(二点鎖線位置)ある場合と同様に、現像剤は、第2連通部22fを通過して第1搬送路22cに搬送され易くなる。一方、排出搬送路22h2内の現像剤が磁石部材71によって引き付けられ上側に盛り上がるために、排出搬送路22h2内で現像剤が滞留する。排出搬送路22h2内での現像剤の滞留によって、第2搬送路22d内の余剰となった現像剤は、排出開口部22h1に排出され難くなる。
【0078】
従って、現像剤排出口22hへ排出される現像剤量が増加する方向に現像容器22が傾斜すると、現像剤排出口22hへ排出される現像剤量が減少するために、現像容器22が水平状態にあるときに対して、現像剤の排出量の変動を小さく抑えることができる。
【0079】
また、現像容器22が水平状態にあるとき、現像容器22に衝撃が作用すると、例えば、図6の右側から長手方向に衝撃が作用すると、その衝撃力によって、現像剤が現像剤排出口22hに排出され難くなり、現像剤排出口22hへ排出される現像剤量が減少する。しかし、上記実施形態において、転動面22rに凹部22uを有しない構成にしておくと、現像容器22への衝撃力に対する慣性によって、磁石部材71が第3の位置から第1の位置に移動する。磁石部材71が第1の位置に移動したときには、前述のように、逆螺旋羽根52へ搬送される現像剤量が増加し、現像剤排出口22hへ排出される現像剤量も増加し、現像容器22に衝撃が作用しても、現像容器22が水平状態にある場合に対して、現像剤の排出量の変動を小さく抑えることができる。
【0080】
また、磁石部材71が、現像容器22の傾斜や衝撃に応じてガイド部22nを自重により転動するという簡単な構成によって、現像剤の排出量のバラツキを小さく抑えることができる。
【0081】
また、磁石部材71が凹部22uに係合する構成であることによって、現像容器22が水平状態から所定角度だけ傾斜するまで、磁石部材71が凹部22uに係合状態にある。従って、現像容器22が僅かに傾斜する程度であって、現像剤の排出量の補正を施す必要がない場合には、現像剤の排出量が安定する。
【0082】
(第3実施形態)
図8は、第3実施形態に係る磁石部材を示す平面図である。第3実施形態では、磁石部材71が振り子型に支持される点が第1及び第2実施形態と異なる。
【0083】
磁石部材71は、短冊状に形成され、その一端側が現像容器22に設けた支軸66に揺動可能に支持される一方、その他端側が現像容器22の上壁部22kに対向している。現像容器22が水平状態にあるとき、磁石部材71は図8に示す位置、即ち、第2側壁部22j(図3参照)に対向する位置にある。
【0084】
従って、磁石部材71の磁力が第2連通部22fに作用することがなく、第2搬送路22d内の現像剤は、第2連通部22fを通過して第1搬送路22cに搬送されるとともに、余剰となった現像剤は、逆螺旋羽根52を乗り越えて適量だけ現像剤排出口22hに排出される(図3参照)。
【0085】
一方、現像剤排出口22hへ排出される現像剤量が減少する方向に現像容器22が傾斜する(上壁部22kが右側を下にして傾斜する)とき、磁石部材71は、その自重によって支軸66の周りに回転し、第2連通部22f(図3参照)に対向する位置に移動する。
【0086】
従って、磁石部材71の磁力が第2連通部22fに作用し、磁性キャリアにより磁性を帯びている現像剤は、磁石部材71によって引きつけられ、第2連通部22fの上側に盛り上がる。これにより、現像剤が第2連通部22fを通過し難くなるために、第2連通部22fに現像剤が滞留する。第2連通部22fでの現像剤の滞留によって、逆螺旋羽根52へ搬送される現像剤量が増加し、現像剤排出口22hへ排出される現像剤量も増加することになる(図3参照)。現像容器22が水平状態にあるときに対して、現像剤の排出量の変動を小さく抑えることができる。
【0087】
尚、上記実施形態では、規制部材は、回転軸44bに一体に設けた逆螺旋羽根52にて構成を示したが、本発明はこれに限らず、規制部材は、回転軸44bに一体に設ける規制円板にて構成にしてもよい。また、規制円板は1枚でも複数枚であってもよい。さらに、規制部材を設けることなく、現像剤排出口22hの排出開口部22h1を所定の高さに形成することによって、現像容器22が水平状態にあるときに、適量の現像剤が排出される構成に適用してもよい。
【0088】
また、上記実施形態では、現像容器22の傾斜に応じて、磁石部材71がその自重によってガイド部22nを転動する構成を示したが、本発明はこれに限らず、現像容器22に加速度センサー等からなる傾き検知センサーと、磁石部材71に接続されるソレノイド、またはモーター等の駆動部材とを設ける構成にしてもよい。この構成によると、傾き検知センサーによって検知した傾斜に応じて駆動部材を制御し、現像容器22の傾斜に応じて、磁石部材71が駆動部材によって作動することになり、この場合も上記実施形態と同様の効果を奏する。
【実施例】
【0089】
以下、本発明の実施形態をさらに具体化した実施例1、2と、比較例1を説明する。尚、本発明は以下の実施例のみに限定されるものではない。
【0090】
実施例1、2及び比較例1に用いる現像ローラー20は、外径が16mm、回転数が878rpmであり、磁気ローラー21は、外径が20mm、回転数が700rpmである。第1撹拌部材43は、第1螺旋羽根43aの外径が18mmであり、羽根ピッチが30mm(2条巻き)であり、また、回転軸43bの軸径が7mmである。一方、第2撹拌部材44は、第2螺旋羽根44aの外径が18mmであり、羽根ピッチが30mm(2条巻き)であり、また、回転軸44bの軸径が7mmである。さらに、逆螺旋羽根52は、外径が20mm、羽根の枚数が2.5枚である。第2連通部22fの開口幅が30mmである。
【0091】
現像容器22内のトナーは平均粒径6.8μmであり、キャリアは平均粒径35μmで、キャリアに対するトナーの重量比率は9%である。現像剤は現像容器22内に400g収容される。現像容器22内に補給した新現像剤のトナーに対するキャリアの重量比率は10%とした。磁石部材71は、外径が25mm、幅4mm、磁力59mTのフェライト磁石を用いた。
【0092】
以上の構成において、実施例1、2及び比較例1では、現像排出口22h側を上側に向けて現像容器22を2°だけ傾斜させ、また、現像排出口22h側を下側に向けて2°だけ現像容器22を傾斜させた。実施例1は、現像容器22の傾斜に応じて、磁石部材71が第1の位置(第2連通部22fに対向する位置)と第2の位置(第2側壁22jに対向する位置)とに移動する構成とし、実施例2は、現像容器22の傾斜に応じて、磁石部材71が第1の位置と第3の位置(排出搬送路22h2に対向する位置)とに移動する構成とした。尚、比較例1は、磁石部材71を設けていない構成である。上記の各構成において撹拌部材42を回転させる。撹拌部材42の回転に伴い現像剤が排出され、現像容器22内に残存する現像剤量の変化を評価した。
【0093】
実施例1、2、及び比較例1において、現像容器22の所定量の傾斜と撹拌部材42の回転数の変化とに対する現像容器22に残存する現像剤量の変化の評価結果を図9〜11に示す。各グラフの横軸に撹拌部材42の回転数(単位;rpm)、縦軸に現像容器22に残存する現像剤量(単位;g)をとった。「排出側UP」は、現像排出口22h側を上側に向けて現像容器22を2°だけ傾斜したものであり、また、「反対側UP」は、現像排出口22h側を下側に向けて2°だけ現像容器22を傾斜させたものである。図9は実施例1、図10は実施例2、及び図11は比較例1を示す。
【0094】
図11(比較例1)に示すように、磁石部材71を設けていない構成では、現像排出口22h側を上側、或いは下側に傾斜させたとき、現像容器22内に残存する現像剤量の差分が大きい。一方、図9に示すように、実施例1は、現像排出口22h側を上側、或いは下側に傾斜させたとき、現像容器22内に残存する現像剤量の差分が比較例1に対して小さくなっていた。また、図10に示すように、実施例2は、現像排出口22h側を上側、或いは下側に傾斜させたとき、現像容器22内に残存する現像剤量の差分が比較例1に対してさらに小さくなっていた。これは、現像排出口22h側を下側に傾斜したとき、磁石部材71が排出搬送路22h2に対向する位置(第3の位置)に配置されることによるものである。このように、実施例1、2は、比較例1に対して、現像容器22の傾斜に対して、現像容器22内の現像剤量の変化が小さく、現像剤の排出量のバラツキを小さく抑えることができた。
【産業上の利用可能性】
【0095】
本発明は、複写機、プリンター、ファクシミリ、それらの複合機等の画像形成装置に用いる現像装置及びそれを備えた画像形成装置に利用することができ、特に、トナーとキャリアとからなる2成分現像剤の補給を行うとともに余剰現像剤を排出する現像装置及びそれを備えた画像形成装置に利用することができる。
【符号の説明】
【0096】
1 画像形成装置
2a〜2d、2 現像装置
20 現像ローラー
22 現像容器
22b 仕切り部
22c 第1搬送路
22d 第2搬送路
22e 第1連通部
22f 第2連通部
22j 第2側壁部(側壁部)
22g 現像剤補給口
22h 現像剤排出口
22h1 排出開口部
22h2 排出搬送路
22k 上壁部(外壁部)
22m 磁石取り付け部
22n ガイド部
22p、22q 当接面
22r 転動面
22s、22t 側面
22u 凹部
42 撹拌部材
43 第1撹拌部材
43a 第1螺旋羽根
43b、44b 回転軸
44 第2撹拌部材
44a 第2螺旋羽根
52 逆螺旋羽根(規制部材)
53 排出羽根
66 支軸
71 磁石部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁性キャリアを含む現像剤を収容する現像容器と、回転軸の周りに軸方向に沿って延びる螺旋羽根を有し、現像剤を撹拌、搬送する撹拌部材と、現像剤を前記現像容器に補給する現像剤補給口と、前記現像容器内の余剰の現像剤を排出する現像剤排出口と、を備え、前記現像容器は、第1搬送路と、該第1搬送路と逆方向に現像剤が搬送される第2搬送路と、前記第1及び第2搬送路の両端部を連通する第1連通部及び第2連通部と、を有し、前記現像剤排出口は前記第2連通部の近傍にて前記第2搬送路の下流側端部に延設される現像装置であって、
前記現像容器の外壁部に配設され前記外壁部を介して前記第2連通部に対向する位置に、前記現像容器の長手方向の傾斜に応じて移動可能である磁石部材を備え、
前記現像剤排出口へ排出される現像剤量が減少する方向に前記現像容器が傾斜しているとき、前記磁石部材が前記第2連通部に対向する第1の位置に移動し、前記現像容器が水平状態であるとき、或いは前記現像剤排出口へ排出される現像剤量が増加する方向に前記現像容器が傾斜しているとき、前記第1の位置から退避するように構成されることを特徴とする現像装置。
【請求項2】
前記第2連通部は、前記第1及び第2搬送路を仕切る仕切り部と、前記現像容器の長手方向の端部側に設けられる側壁部とによって形成され、
前記磁石部材は、前記第1の位置と、前記側壁部に対向する第2の位置とに移動可能であり、前記現像容器が水平状態にあるとき、或いは前記現像剤排出口へ排出される現像剤量が増加する方向に前記現像容器が傾斜しているとき、前記第2の位置に移動するように構成されることを特徴とする請求項1に記載の現像装置。
【請求項3】
前記現像剤排出口は、前記第2搬送路に対向する排出開口部と、前記排出開口部に排出された現像剤を搬送する排出搬送路とを有し、
前記磁石部材は、前記第1の位置と、前記排出搬送路に対向する第3の位置とに移動可能であり、前記現像剤排出口へ排出される現像剤量が増加する方向に前記現像容器が傾斜しているとき、前記第3の位置に移動するように構成されることを特徴とする請求項1に記載の現像装置。
【請求項4】
前記磁石部材は、前記第1の位置と第3の位置との間に位置し前記第2連通部及び前記排出搬送路のいずれにも対向しない中間位置に移動可能であり、前記現像容器が水平状態にあるとき、前記中間位置に移動するように構成されることを特徴とする請求項3に記載の現像装置。
【請求項5】
前記外壁部には前記磁石部材を移動可能に案内するガイド部が形成され、前記磁石部材は、前記現像容器の傾斜に応じて前記ガイド部を自重によって転動するように円形状をなすことを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれかに記載の現像装置。
【請求項6】
前記磁石部材は、前記現像容器に揺動可能に支持され前記現像容器の傾斜に応じて自重によって移動可能であることを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれかに記載の現像装置。
【請求項7】
請求項1〜請求項7のいずれかに記載の現像装置を備えた画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−189654(P2012−189654A)
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−51043(P2011−51043)
【出願日】平成23年3月9日(2011.3.9)
【出願人】(000006150)京セラドキュメントソリューションズ株式会社 (13,173)
【Fターム(参考)】