説明

現像装置及びそれを備えた画像形成装置

【課題】現像剤担持体上の現像剤の搬送量が安定し、規制部材による現像剤へのストレスを低減させる現像装置及びそれを備えた画像形成装置を提供する。
【解決手段】現像装置2は、磁性部材21cを内蔵し現像剤を表面に担持して回転する磁気ローラ21と、磁気ローラ21の表面に対向し磁気ローラ21上の現像剤の層厚を規制する規制端面24aを有する磁性体からなる規制部材24と、磁気ローラ21の回転方向に対して規制部材24の上流側に対向して取り付けられる磁性体からなる補強部材51とを備える。補強部材51は、磁気ローラ21の回転方向上流側に向かって磁気ローラ21の表面から離間していく傾斜面51aが形成されており、磁気ローラ21の表面に最も近接する面が曲面51bで形成され、且つ、曲面51bは磁気ローラ21の表面に対して規制端面24aよりも離間している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真方式を利用した複写機、プリンタ、ファクシミリ、それらの複合機等の画像形成装置に用いる現像装置及びそれを備えた画像形成装置に関し、特に、現像剤担持体上に所定の層厚の現像剤を担持する現像装置及びそれを備えた画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、電子写真方式を用いた画像形成装置において、現像装置は磁性トナーを用いた磁性一成分現像方式、また、磁性キャリアと非磁性トナーからなる現像剤を用いた現像方式があり、これらの方式はともに磁性部材を内蔵する現像剤担持体を備えている。現像剤担持体は、内蔵する磁性部材により現像剤担持体の表面に現像剤を担持し搬送するとともに規制部材により一定の層厚になるように規制している。規制部材は現像剤担持体の表面との間に一定の隙間を形成し、一定の層厚となるように現像剤がその隙間を通過する。現像剤の層厚を一定に保持するときに、規制部材にて圧縮や擦れ等のストレスが現像剤に与えられ、現像剤を劣化されることになる。
【0003】
そこで、特許文献1では、規制部材は、現像剤担持体に内蔵された磁性部材の磁極に対向し、現像剤担持体の表面と所定の隙間を介して配置されるとともに非磁性体で形成される。規制部材に対して現像剤搬送方向の上流側及び下流側の位置で規制部材に対向して、磁性部材が夫々配設される。このように規制部材の規制端面が非磁性体であり、その上流側及び下流側に磁性体を配置することにより、規制部材の規制端面における磁気力が弱まり、現像剤に対するストレスが軽減されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−3076号公報(段落[0027]、[0028]、第3図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した先行技術では、規制部材に非磁性体を用いているので、現像剤担持体の表面に担持搬送される現像剤の搬送量は、対向する磁性部材の磁力と、現像剤担持体の表面と規制部材の規制端面との隙間の大きさとで決まることになり、磁性部材の位置ずれによる磁力の変動や温湿度等の環境変化があると、現像剤の搬送量が安定せずに、画像濃度の低下等の画像不具合が発生するという問題があった。
【0006】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、現像剤担持体上の現像剤の搬送量が安定し、規制部材による現像剤へのストレスを低減させる現像装置及びそれを備えた画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために第1の発明の現像装置は、磁性部材を内蔵し現像剤を表面に担持して回転する現像剤担持体と、前記現像剤担持体の表面に対向し前記現像剤担持体上の現像剤の層厚を規制する規制端面を有する磁性体からなる規制部材と、前記現像剤担持体の回転方向に対して前記規制部材の上流側に対向して取り付けられる磁性体からなる補強部材とを備え、前記補強部材は、前記現像剤担持体の回転方向上流側に向かって現像剤担持体の表面から離間していく傾斜面が形成されており、前記現像剤担持体の表面に最も近接する面が曲面で形成され、且つ、前記曲面は前記現像剤担持体の表面に対して前記規制端面よりも離間していることを特徴としている。
【0008】
また、第2の発明では、上記の現像装置において、前記曲面の曲率半径をR、前記現像剤担持体の周面の曲率半径をTで表すと、0.05≦R/Tであることを特徴としている。
【0009】
また、第3の発明では、上記の現像装置において、0.1≦R/T≦0.5であることを特徴としている。
【0010】
また、第4の発明では、上記の現像装置において、前記補強部材は、板材を折り曲げることにより前記傾斜面と、前記傾斜面から鋭角に延在して前記規制部材に当接する取り付け面とが形成され、前記傾斜面と前記取り付け面とが交差する部分に前記曲面が形成されることを特徴としている。
【0011】
また、第5の発明では、上記の構成の現像装置を備えた画像形成装置である。
【発明の効果】
【0012】
第1の発明によれば、撹拌部から供給される現像剤が規制部材に近づくと、現像剤の供給領域が補強部材の傾斜面によって狭くなり現像剤の密度が徐々に大きくなる。温湿度等の環境変化があっても、現像剤の密度が大きくなることで規制部材近傍での現像剤搬送量が安定する。また、補強部材の、現像剤担持体の表面に最も近接する面が曲面で形成されるので、補強部材の曲面と補強部材に対向する規制部材の対向面との間に現像剤を溜める空隙(現像剤溜まり)が形成される。規制部材に規制される直前の現像剤がこの空隙に溜まることで、現像剤のストレスが開放される。従って、画像濃度が低下することなく良好な画像が得られ、また耐刷後の現像剤の劣化が抑えられる。
【0013】
また、第2に記載の発明によれば、補強部材に形成される曲面の曲率半径Rが、0.05≦R/Tであると、規制部材に規制される直前の現像剤のストレスが現像剤溜まりにて開放されるために、耐刷後の現像剤の劣化が抑えられる。
【0014】
また、第3に記載の発明によれば、補強部材に形成される曲面の曲率半径Rが、0.1≦R/T≦0.5であると、規制部材に規制される直前の現像剤のストレスが現像剤溜まりにて開放されるために、耐刷後の現像剤の劣化が抑えられる。更に、規制部材と補強部材とで形成される磁界が現像剤担持体の表面に広がり、現像剤の搬送量が一層安定する。
【0015】
また、第4に記載の発明によれば、補強部材が板材にて形成されるので補強部材の曲面を簡単に形成することができる。
【0016】
また、第5に記載の発明によれば、現像剤担持体上の現像剤の搬送量が安定し、規制部材による現像剤へのストレスを低減させる現像装置を備える画像形成装置にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施形態に係る現像装置が搭載された画像形成装置を概略的に示す図
【図2】実施形態に係る現像装置を概略的に示す断面図
【図3】実施形態に係る現像装置の補強部材を概略的に示す断面図
【図4】比較例の補強部材を概略的に示す断面図
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に本発明の実施形態について図面を参照して説明するが、本発明は、この実施形態に限定されない。また発明の用途やここで示す用語等はこれに限定されるものではない。
【0019】
図1は、本発明の実施形態に係る現像装置が搭載された画像形成装置の構成を概略的に示す図である。画像形成装置1はタンデム型のカラープリンタであり、回転自在である感光体11a〜11dは、感光層を形成する感光材料として、有機感光体(OPC感光体)が用いられ、マゼンタ、シアン、イエロー、及びブラックの各色に対応させて配設される。各感光体11a〜11dの周囲に、現像装置2a〜2d、露光ユニット12、帯電器13a〜13d及びクリーニング装置14a〜14dが配設される。
【0020】
現像装置2a〜2dは、感光体11a〜11dの右方に夫々対向して配置され、感光体11a〜11dにトナーを供給する。帯電器13a〜13dは、感光体11a〜11dの回転方向に対し現像装置2a〜2dの上流側であって感光体11a〜11dの表面に対向して配置され、感光体11a〜11d表面を一様に帯電させる。
【0021】
露光ユニット12は、パーソナルコンピュータ等から画像入力部(図略)に入力された文字や絵柄などの画像データに基づいて、各感光体11a〜11dを走査露光するためのものであり、現像装置2a〜2dの下方に設けられる。露光ユニット12には、レーザ光源、ポリゴンミラーが設けられ、各感光体11a〜11dに対応して反射ミラー及びレンズが設けられる。レーザ光源から出射されたレーザ光が、ポリゴンミラー、反射ミラー及びレンズを介して、帯電器13a〜13dの感光体回転方向下流側から、各感光体11a〜11dの表面に照射される。照射されたレーザ光により、各感光体11a〜11d表面には静電潜像が形成され、この静電潜像が各現像装置2a〜2dによりトナー像に現像される。
【0022】
無端状の中間転写ベルト17は、テンションローラ6、駆動ローラ25及び従動ローラ27に張架されている。駆動ローラ25は図示しないモータによって回転駆動され、中間転写ベルト17は駆動ローラ25の回転によって循環駆動させられる。
【0023】
この中間転写ベルト17に接触するように各感光体11a〜11dが中間転写ベルト17の下方で搬送方向(図1の矢印方向)に沿って隣り合うように配列されている。各1次転写ローラ26a〜26dは、中間転写ベルト17を挟んで各感光体11a〜11dと対向し、中間転写ベルト17に圧接して1次転写部を形成する。この1次転写部において、中間転写ベルト17の回転とともに所定のタイミングで各感光体11a〜11dのトナー像が中間転写ベルト17に順次転写される。これにより、中間転写ベルト17表面にはマゼンタ、シアン、イエロー、及びブラックの4色のトナー像が重ね合わされたトナー像が形成される。
【0024】
2次転写ローラ34は、中間転写ベルト17を挟んで駆動ローラ25と対向し、中間転写ベルト17に圧接して2次転写部を形成する。この2次転写部において、中間転写ベルト17表面のトナー像が用紙Pに転写される。転写後に、ベルトクリーニング装置31が中間転写ベルト17に残存するトナーを清掃する。
【0025】
画像形成装置1内の下方には、用紙Pを収納する給紙カセット32が配設され、給紙カセット32の右方には、手差しの用紙を供給するスタックトレイ35が配設される。給紙カセット32の左方には、給紙カセット32から繰り出された用紙Pを中間転写ベルト17の2次転写部に搬送する第1用紙搬送路33が配設される。また、スタックトレイ35の左方には、スタックトレイ35から繰り出された用紙を2次転写部に搬送する第2用紙搬送路36が配設される。更に、画像形成装置1の左上方には、画像が形成された用紙Pに対して定着処理を行う定着部18と、定着処理の行われた用紙を用紙排出部37に搬送する第3用紙搬送路39とが配設される。
【0026】
給紙カセット32は、装置の外部(図1の紙面の表面側)に引き出すことにより用紙の補充を可能にしたもので、収納されている用紙Pがピックアップローラ33b及び捌きローラ33aにより1枚ずつ第1用紙搬送路33側に繰り出される。
【0027】
第1用紙搬送路33と第2用紙搬送路36とはレジストローラ33cの手前で合流しており、レジストローラ33cにより、中間転写ベルト17における画像形成動作と給紙動作とのタイミングを取って、用紙Pが2次転写部に搬送される。2次転写部に搬送された用紙Pは、バイアス電位が印加された2次転写ローラ34によって、中間転写ベルト17上のトナー像を2次転写され、定着部18に搬送される。
【0028】
定着部18は、ヒータにより加熱される定着ベルトと、定着ベルトに内接する定着ローラと、定着ベルトを挟んで定着ローラに圧接して配設された加圧ローラ等とを備え、トナー像が転写された用紙Pを加熱及び加圧することにより定着処理を行う。用紙Pは、トナー像が定着部18で定着された後、必要に応じて第4用紙搬送路40で反転されて用紙の裏面にも2次転写ローラ34でトナー像が2次転写され、定着部18で定着される。トナー像が定着された用紙は第3用紙搬送路39を通って、排出ローラ19aにより用紙排出部37に排出される。
【0029】
図2は、上述の画像形成装置1に用いられる現像装置の構成を示す断面図である。なお、以下の説明では、図1に示す感光体11aに対応する現像装置2aの構成及び動作について説明するが、現像装置2b〜2dの構成及び動作については現像装置2aと同様であり、説明を省略し、また各色の現像装置及び感光体を示すa〜dの符号を省略する。
【0030】
図2に示すように、現像装置2は、現像ローラ20と、現像剤担持体である磁気ローラ21と、撹拌部42、規制部材24と、補強部材51、及び現像容器22等により構成されている。
【0031】
現像容器22は、現像装置2の外郭を構成し、その下部で仕切り部材22bによって第1搬送路22dと第2搬送路22cに仕切られている。第1搬送路22d及び第2搬送路22cには、磁性キャリアとトナーからなる現像剤が収容される。また、現像容器22は、撹拌部42と磁気ローラ21及び現像ローラ20を回転可能に保持している。更に、現像容器22には、現像ローラ20を感光体11に向けて露出させる開口22aが形成されている。
【0032】
撹拌部42は、現像容器22の底部に設けられ、第1撹拌部材44と第2撹拌部材43との2本で構成される。第1撹拌部材44が第1搬送路22d内に設けられ、第2撹拌部材43が第1撹拌部材44の右方に隣接して、第2搬送路22c内に設けられる。
【0033】
第1及び第2撹拌部材44、43は現像剤を撹拌して現像剤中のトナーを所定のレベルに帯電させる。これによりトナーは磁性キャリアに保持される。また、第1搬送路22dと第2搬送路22cを仕切る仕切り部材22bの長手方向(図2の紙面の表裏方向)の両端部側には、連通部(図略)が設けられており、第2撹拌部材43が回転すると、帯電した現像剤が仕切り部材22bに設けた一方の連通部から第1搬送路22d内に搬送され、第1搬送路22d内と第2搬送路22c内とを循環する。そして、第1撹拌部材44から磁気ローラ21に現像剤が供給される。
【0034】
磁気ローラ21は、第1撹拌部材44の上方に対向して配設され、第1撹拌部材44から供給された現像剤を担持、搬送し、トナーのみを現像ローラ20に供給する。磁気ローラ21の周面に対向して規制部材24が配設される。
【0035】
規制部材24は、ステンレス鋼等の磁性材料で板状に形成され、磁気ローラ21の左斜め下方にて現像容器22に固定保持されている。規制部材24の先端部は、所定の間隔を有して磁気ローラ21の表面に対向し、磁気ローラ21の表面に担持される現像剤の層厚を規制する。
【0036】
また、磁気ローラ21は、非磁性材からなる回転スリーブ21bと、磁極部材21c、及びローラ軸21aとを備える。
【0037】
磁極部材21cは、外周部の極性の異なる複数の磁石からなり、規制部材24に対向する位置にN極からなる規制極21dを有する。また、磁極部材21cはローラ軸21aに接着等により固着され、ローラ軸21aは現像容器22に回転不能に支持される。回転スリーブ21bは磁極部材21cと所定の間隔を有し現像容器22に回転自在に支持される。また、回転スリーブ21bは、図示しないモータと歯車からなる駆動機構により矢印C方向に回転し、また、直流電圧56aに交流電圧56bを重畳したバイアス56を印加される。回転スリーブ21b表面において、帯電した現像剤は磁極部材21cの磁力によって磁気ブラシを形成して担持され、磁気ブラシは規制部材24と規制極21dとによって所定の高さに調節される。回転スリーブ21bがさらに回転し、この磁気ブラシは現像ローラ20側に搬送される。
【0038】
現像ローラ20は、磁気ローラ21の左斜め上方にて一定の間隔を設けて磁気ローラ21に対向し、現像スリーブ20cと、磁極部材20b、及び固定軸20a等を備えて構成されている。
【0039】
現像スリーブ20cは非磁性材料で円筒状に形成され現像容器22に回転自在に支持される。磁極部材20bは現像スリーブ20cと所定の間隔を有して、磁気ローラ21と対向する位置で固定軸20aに接着等により固着される。固定軸20aは現像容器22に回転不能に支持される。また、現像スリーブ20cは、感光体11に対向し、一定の間隔を設けて感光体11の右方に配設され、感光体11に接近した対向位置において、感光体11にトナーを供給する現像領域Dを形成している。現像スリーブ20cは、図示しないモータと歯車からなる駆動機構により矢印B方向に回転させられる。また、現像スリーブ20cには、直流電圧55aに交流電圧55bを重畳した現像バイアス55が印加される。
【0040】
従って、磁気ローラ21上に担持された磁気ブラシは、現像ローラ20の磁極部材20bに対向する位置で立ち上がり現像ローラ20に接触すると、磁気ブラシのトナーのみが、磁気ローラ21に印加されたバイアス56に応じて、現像スリーブ20cに供給される。そして、現像領域Dにおいて現像バイアス55が印加されると、現像バイアス電位と感光体11の露光部位の電位との電位差により、現像スリーブ20c上に担持されたトナーが感光体11に飛翔する。飛翔したトナーは矢印A方向に回転する感光体11上の露光部位に順次付着し、感光体11上の静電潜像が現像される。
【0041】
本実施形態では、規制部材24に補強部材51が配設されている。
【0042】
補強部材51は、規制部材24側へ現像剤を集めて、現像剤搬送量を安定させるとともに、現像剤に生じるストレスを開放するためのものであり、鋼板等の磁性材料でV字型に折り曲げて形成され、磁気ローラ21の回転方向(矢印C方向)に対して規制部材24の上流側に配置され、規制部材24の対向する面にビス等で取り付けられる。
【0043】
図3を用いて補強部材51について詳しく説明する。図3は補強部材を概略的に示す断面図である。
【0044】
補強部材51は、規制部材24の対向面24bに取り付けられるための取り付け面51cと、取り付け面51cに対して鋭角で傾斜する傾斜面51aと、取り付け面51cと傾斜面51aと交差する部分に形成される曲面51bとを形成してなる。
【0045】
傾斜面51aは、磁気ローラ21の回転方向(矢印C方向)の上流側に向かって磁気ローラ21の表面から離間していくように傾斜し、取り付け面51cに対して40〜60°の範囲で傾斜している。従って、傾斜面51aは、回転スリーブ21b表面とともに、撹拌部42(図2参照)から供給される現像剤を規制部材24の規制端面24aと回転スリーブ21bの表面との間に寄せ集める。このように現像剤が寄せ集められ規制部材24に向かうと現像剤の密度が徐々に大きくなり、規制部材24の近傍で現像剤の搬送量が安定する。
【0046】
曲面51bは曲率半径Rで形成され、回転スリーブ21bに対向し、更に、回転スリーブ21bを介して規制極21dに対向している。規制部材24の規制端面24aは回転スリーブ21bの表面と所定の隙間Hを形成しているが、曲面51bは、回転スリーブ21b表面に対して規制端面24aよりも離間した位置に配置される。曲面51bと規制部材24の対向面24bとの間に空隙Gが形成される。傾斜面51aにて隙間Hに向けて寄せ集められた現像剤がこの空隙G(現像剤溜まり)に溜まり、寄せ集められる現像剤にかかるストレスを開放することになる。
【0047】
ここで、回転スリーブ21bの曲率半径をTとすると、曲面51bの曲率半径Rは、下記の式(1)の範囲にあると、規制部材24に規制される直前の現像剤のストレスがこの現像剤溜まりGにて開放されるために、耐刷後の現像剤の劣化が抑えられる。R/Tの値が式(1)の下限を下回ると、回転スリーブ21bの曲率半径Tに対して曲面51bの曲率半径Rが小さくなりすぎ、現像剤溜まりGに十分な現像剤を溜めることが難しくなり、現像剤のストレスを開放しづらくなる。
0.05≦R/T ・・・(1)
【0048】
さらに、望ましくは、曲面51bの曲率半径Rは、下記の式(1A)の範囲にあると、前述のように現像剤のストレスを開放し、更に、規制部材24と補強部材51とによる磁界が回転スリーブ21bの表面に広がり、現像剤の搬送量が一層安定する。R/Tの値が式(1A)の下限を下回ると、回転スリーブ21bの曲率半径Tに対して曲面51bの曲率半径Rが小さくなりすぎ、規制極21dとともに形成する磁界の範囲が狭くなるために、現像剤の搬送量が安定しない。一方、式(1A)の上限を上回ると、回転スリーブ21bの曲率半径Tに対して曲面51bの曲率半径Rが大きくなりすぎ、回転スリーブ21bに近接する面が回転スリーブ21の周方向に広がり現像剤の劣化が進行する。
0.1≦R/T≦0.5 ・・・(1A)
【0049】
上記実施形態によれば、現像装置2は、磁性部材21cを内蔵し現像剤を表面に担持して回転する磁気ローラ21と、磁気ローラ21の表面に対向し磁気ローラ21上の現像剤の層厚を規制する規制端面24aを有する磁性体からなる規制部材24と、磁気ローラ21の回転方向に対して規制部材24の上流側に対向して取り付けられる磁性体からなる補強部材51とを備える。補強部材51は、磁気ローラ21の回転方向上流側に向かって磁気ローラ21の表面から離間していく傾斜面51aが形成されており、磁気ローラ21の表面に最も近接する面が曲面51bで形成され、且つ、曲面51bは磁気ローラ21の表面に対して規制端面24aよりも離間している。
【0050】
この構成によると、撹拌部42から供給される現像剤が規制部材24に近づくと、現像剤の供給領域が補強部材51の傾斜面51aによって狭くなり現像剤の密度が徐々に大きくなる。温湿度等の環境変化があっても、現像剤の密度が大きくなることで規制部材24近傍での現像剤搬送量が安定する。また、補強部材51の、磁気ローラ21の表面に最も近接する面が曲面51bで形成されているので、この曲面51bと規制部材24の対向面24bとの間に現像剤を溜める空隙G(現像剤溜まり)が形成される。規制部材24に規制される直前の現像剤がこの空隙Gに溜まることで、現像剤のストレスが開放される。従って、画像濃度が低下することなく良好な画像が得られ、また耐刷後の現像剤の劣化が抑えられる。
【0051】
尚、上記実施形態では、現像剤担持体として磁気ローラ21に適用した例を示したが、本発明はこれに限らず、現像ローラ上に現像剤を担持し、担持した現像剤を規制部材にて所定の層厚に規制し、現像ローラ上に担持されている現像剤からトナーのみを感光体に向けて供給する現像装置において、現像ローラに適用してもよい。
【実施例】
【0052】
以下、本発明の実施形態をさらに具体化した実施例1、2と、比較例3、4について説明する。尚、本発明は以下の実施例のみに限定されるものではない。
【0053】
実施例1、2及び比較例3、4に用いる磁気ローラ21は、外径が16mm(曲率半径T;8mm)であり、磁気ローラ21内の規制極21dは磁束密度60mTであり、水平方向から下側29°の位置に配設される。規制部材24の材質はSUS403、規制部材24の規制端面24aと回転スリーブ21b表面との間隔は0.3mmである。現像剤は、正帯電特性のトナーで、その粒径が6.8μm、比重が1.2であり、キャリアの粒径が35μm、比重が4.5であるものを用いた。
【0054】
実施例1、2における補強部材51は、材質がSECC(電気亜鉛めっき鋼板)で厚さ1mmからなりものを用い、実施例1では曲面51bの曲率半径Rは0.4mm(R/T=0.05)、実施例2では曲面51bの曲率半径Rは1mm(R/T=0.125)とした。一方、比較例3は補強部材51を設けておらず、比較例4は図4に示す補強部材51を配設した。図4に示すように比較例4では、補強部材51を規制部材24に対して実施例1、2と同じ位置に配置し、磁気ローラ21に対向する補強部材51は曲面51bを有さずに鋭角に折り曲げられた形をなしている。
【0055】
以上のように構成した実施例1、2及び比較例3、4について、環境変化に対する画像濃度、耐刷後の画像かぶり、規制極21dのズレに対する現像剤の搬送特性を評価した。評価結果を表1に示す。
【表1】

【0056】
(a)環境変化に対する画像濃度
温度が10℃で湿度が15%の低温低湿環境と、温度が25℃で湿度が30%の常温常湿環境と、温度が32℃で湿度が85%の高温高湿環境の各環境下において、印刷したベタ画像の反射濃度の変化を評価した。表1における◎印は、画像濃度(ID;イメージデンシティ)の最大値と最小値との差が0以上で0.2以下のもの、×印は、画像濃度の最大値と最小値との差が0.2より大きいものである。
【0057】
この結果によると、比較例3に比べて実施例1、2及び比較例4は画像濃度が環境変化に対して安定している。このことは、現像剤が規制部材24に近づくにつれて現像剤の供給路が補強部材51の傾斜面51aによって制限され、現像剤の密度が徐々に上昇し、現像剤の搬送量が安定していることを示している。
【0058】
(b)耐刷後の画像かぶり
印字率5%のチャートを用いて5万枚印刷後における画像のかぶりを目視にて検査した。表1における◎印は、画像かぶりが認められないもの、○印は、画像かぶりが認められるが許容範囲であるもの、また、×印は、画像かぶりが明らかに認められ許容できないものである。
【0059】
この結果によると、比較例3、4に比べて実施例1、2が良好であり、更に、実施例2が実施例1より良好であった。これは、実施例1、2では補強部材51の曲面51bにて現像剤溜まりGが形成されている。現像剤溜まりGが形成されることで、規制部材24にて規制される直前の現像剤がストレスから開放され、耐刷後の現像剤の劣化が抑えられる。更に、補強部材51の曲面51bの曲率半径Rが式(1)、式(2)の範囲で大きくなるほど、その効果が大きくなっている。
【0060】
(c)規制極21dのズレに対する現像剤の搬送特性
規制部材24及び補強部材51に対向する規制極21dが±5°所定位置から外れた場合における、現像剤の搬送量の所定値から変動量を評価した。表1における◎印は、搬送量の変動量が2mg/cm以下のもの、○印は、搬送量の変動量が2mg/cmより大きく5mg/cm以下のもの、また、×印は、搬送量の変動量が5mg/cmより大きいものである。
【0061】
この結果によると、比較例3、4に比べて実施例1、2が良好であり、更に、実施例2が実施例1より良好であった。これは、実施例1、2では補強部材51の曲面51bによって補強部材51と規制極21dとで磁界が形成されるが、この磁界が回転スリーブ21b上で広がり、規制極21dの位置ズレを補い、現像剤の搬送量が安定している。更に、補強部材51の曲面51bの曲率半径Rが式(1)、式(2)の範囲で大きくなるほど、その効果が大きくなっている。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明は、電子写真方式を利用した複写機、プリンタ、ファクシミリ、それらの複合機等の画像形成装置に用いる現像装置及びそれを備えた画像形成装置に利用することができ、特に、現像剤担持体上に所定の層厚の現像剤を担持する現像装置及びそれを備えた画像形成装置に利用することができる。
【符号の説明】
【0063】
1 画像形成装置
2a〜2d、2 現像装置
11a〜11d、11 感光体
20 現像ローラ
20b 磁極部材
20c 現像スリーブ
21 磁気ローラ(現像剤担持体)
21b 回転スリーブ
21c 磁極部材
21d 規制極
22 現像容器
24 規制部材
24a 規制端面
24b 対向面
51 補強部材
51a 傾斜面
51b 曲面
51c 取り付け面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁性部材を内蔵し現像剤を表面に担持して回転する現像剤担持体と、
前記現像剤担持体の表面に対向し前記現像剤担持体上の現像剤の層厚を規制する規制端面を有する磁性体からなる規制部材と、
前記現像剤担持体の回転方向に対して前記規制部材の上流側に対向して取り付けられる磁性体からなる補強部材とを備え、
前記補強部材は、前記現像剤担持体の回転方向上流側に向かって現像剤担持体の表面から離間していく傾斜面が形成されており、前記現像剤担持体の表面に最も近接する面が曲面で形成され、且つ、前記曲面は前記現像剤担持体の表面に対して前記規制端面よりも離間していることを特徴とする現像装置。
【請求項2】
前記曲面の曲率半径をR、前記現像剤担持体の周面の曲率半径をTで表すと、
0.05≦R/T
であることを特徴とする請求項1に記載の現像装置。
【請求項3】
0.1≦R/T≦0.5
であることを特徴とする請求項2に記載の現像装置。
【請求項4】
前記補強部材は、板材を折り曲げることにより前記傾斜面と、前記傾斜面から鋭角に延在して前記規制部材に当接する取り付け面とが形成され、前記傾斜面と前記取り付け面とが交差する部分に前記曲面が形成されることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれかに記載の現像装置
【請求項5】
請求項1〜請求項4のいずれかに記載の現像装置を備えた画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−47984(P2012−47984A)
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−190126(P2010−190126)
【出願日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【出願人】(000006150)京セラミタ株式会社 (13,173)
【Fターム(参考)】