説明

現像装置及び画像形成装置

【課題】 現像剤を搬送する現像剤搬送供給路の壁面にトナーが固着するのを防止し、凝集トナーの発生による画像の白抜けなどを防止する。
【解決手段】 現像装置15は、トナーカートリッジ44からハウジング50内に現像剤を供給する現像剤供給搬送路66を備える。現像剤供給搬送路66の壁面には、無機材料と有機材料とが分子間結合してなる離型剤68が塗布されている。離型剤は、Ti系の金属アルコシドとポリジメチルシロキサンを用いて、ゾル−ゲル法により反応させた有機−無機複合化材料を用いており、機械的強度と離型性に優れている。これにより、現像剤供給搬送路66の壁面にトナーが固着するのを抑制できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、現像剤カートリッジなどの現像剤貯留部から現像剤を供給する現像剤供給搬送路を備えた現像装置、及びこの現像装置を備えた複写機、プリンタ、ファクシミリ装置などの画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
複写機、プリンタ等の画像形成装置では、画像形成部で感光体などの像担持体を帯電し、レーザ光を照射して像担持体の表面に静電潜像を形成し、この静電潜像を現像装置で可視化して粉体トナーからなるトナー像を形成する。そして、画像形成部へ用紙を一定のタイミングで搬送し、像担持体上のトナー像を用紙の表面に転写した後、用紙の表面のトナー像を定着装置で定着することによって画像を形成する。
【0003】
上記現像装置には、現像剤を貯留する現像剤カートリッジを備えており、現像剤カートリッジから現像剤を供給する現像剤供給搬送路が設けられている。そして、現像剤供給搬送路から現像剤が現像剤収容部内に供給され、現像剤搬送部材で現像剤を攪拌しながら搬送することにより現像ロールに供給する。そして、現像ロール上の現像剤をトリマーで規制して現像剤層を形成し、像担持体と対向する位置に搬送するように構成している。
【0004】
近年では、プリンタなどの小型化、高性能化に伴い、一定の容積を占める現像剤カートリッジからの現像剤供給搬送路の径は小径になる傾向がある。このため、現像剤を供給する際に現像剤供給搬送路の壁面にトナーが固着するという問題がある。
【0005】
また、トナーの固着を防止するために、現像剤搬送部材の表面に微小な凹凸部を形成したものが開示されている(例えば特許文献1を参照)。しかし、適用トナーが比較的柔らかいトナーの場合、微小な凹凸部を形成しても現像剤搬送部材の表面にトナーが固着しやすくなる。さらに、現像剤供給搬送路の壁面にトナーが固着してトナーの流動性を悪化させ、画像濃度低下(Low TC)などの二次障害を起こさせる。
【0006】
さらに、現像剤搬送部材は、帯電性能や攪拌性能を上げるため、支持軸の周囲から突出する突起部の形状が複雑化する傾向にある。このため、支持軸の周囲にさまざまな突起形状の突起部を備えた現像剤搬送部材が提案されている(例えば特許文献2を参照)。しかし、このような現像剤搬送部材を用いると、現像装置の内部の現像剤搬送経路が狭くなる傾向にある。このような現像剤搬送経路では、柔らかいトナーなどは流動性が悪化しやすい傾向があるため、トナーが壁面に固着しやすくなる。
【0007】
このように壁面などに固着したトナーが脱落して再度現像剤とともに像担持体上へ現像されると、凝集したトナーの転写性が低下するためにその部分が白抜けなどの画質欠陥を引き起こしてしまう。これらの現象は、トナー自体の硬度が柔らかくなるに従って顕著になる。
【特許文献1】特開平5―45929号公報
【特許文献2】特開平7―13420号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、現像剤供給搬送路の壁面にトナーが固着するのを低減し、画像濃度の低下や白抜けを防止することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記問題点を解決するために、請求項1に記載の発明に係る現像装置は、現像剤が収容されるハウジング内で現像剤搬送部材により現像剤を攪拌しながら搬送し、像担持体上に形成された静電潜像を現像剤によって可視化する現像装置であって、現像剤を貯留する現像剤貯留部から現像剤を前記ハウジング内に供給する現像剤供給搬送路を備え、前記現像剤供給搬送路の壁面に離型剤が塗布されていることを特徴としている。
【0010】
請求項1に記載の発明によれば、現像剤を貯留する現像剤貯留部から現像剤が現像剤供給搬送路を通ってハウジング内に供給される。現像剤供給搬送路の壁面に離型剤が塗布されているので、現像剤供給搬送路の内径を小さくしても、壁面にトナーが固着することが抑制される。従って、固着したトナーがハウジング内で脱落することによる凝集トナー(グリッツ)が発生しにくい。このため、トナーの流動性の悪化による画像濃度の低下や、凝集トナーによる転写白抜けなどが抑制され、安定して高品質な画像が得られる。
【0011】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の現像装置において、前記離型剤は、有機材料と無機材料とが分子間結合してなる有機−無機複合化材料で構成されていることを特徴としている。
【0012】
請求項2に記載の発明によれば、離型剤は、有機材料と無機材料とが分子間結合してなる有機−無機複合化材料で構成されているので、有機材料と無機材料の利点(例えば機械的強度と離型性など)を併せもつ離型剤が適用可能である。このため、現像剤供給搬送路の壁面にトナーやブリード性の物質などが付着することが防止されると共に、機械的強度を高めることにより離型剤の剥がれや削れなどが防止される。
【0013】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の現像装置において、前記離型剤は、ゾル−ゲル法により金属系の有機化合物と無機化合物との混合溶液から、ゾル及びゲルの状態を経て有機−無機複合化材料としたことを特徴としている。
【0014】
請求項3に記載の発明によれば、離型剤は、ゾル−ゲル法により金属系の無機化合物と有機化合物との混合溶液から、ゾル及びゲルの状態を経て有機−無機複合化材料としたので、有機化合物と無機化合物の利点を併せもつ離型剤が適用可能である。また、有機化合物と無機化合物の混合比を変更することで、有機−無機複合化材料の特性を調整可能である。
【0015】
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の現像装置において、前記離型剤は、金属アルコキシドとポリジメチルシロキサンを使用し、ゾル−ゲル法により反応させた反応生成物を使用することを特徴としている。
【0016】
請求項4に記載の発明によれば、離型剤は、金属アルコキシドとポリジメチルシロキサンを使用し、ゾル−ゲル法により反応させた反応生成物を使用しており、離型性と機械的強度を併せ持つ離型剤を適用可能である。
【0017】
請求項5に記載の発明に係る画像形成装置は、請求項1から請求項4までのいずれか1項に記載の現像装置を備えることを特徴としている。
【0018】
請求項5に記載の発明によれば、請求項1から請求項4までのいずれか1項に記載の現像装置を備えているので、現像剤供給搬送路の壁面にトナーが固着しにくくなる。従って、固着したトナーがハウジング内で脱落することによる凝集トナー(グリッツ)が発生しにくい。このため、トナーの流動性の悪化による画像濃度の低下や、凝集トナーによる転写白抜けなどが抑制され、安定して高品質な画像が得られる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、現像剤供給搬送路の壁面にトナーが固着することを抑制できる。このため、トナーの流動性の悪化による画像濃度の低下を抑制できると共に、固着した現像剤が脱落して現像されることによる画像の白抜けなどの画質欠陥の発生を抑制できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0021】
図1には本発明の第1実施形態に係る画像形成装置1が示されている。
【0022】
この画像形成装置1は、図示しないパーソナルコンピュータ等の画像データ入力装置から送られてくるカラー画像情報に基づいて画像処理を行い、電子写真方式によって記録用紙Pにカラー画像を形成するものである。
【0023】
画像形成装置1には、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の各色のトナー像を形成する画像形成ユニット10Y,10M,10C,10Kを備えている。なお、以降、YMCKを区別する必要がある場合は、符号の後にY、M、C、Kの何れかを付して説明し、YMCKを区別する必要が無い場合は、Y、M、C、Kを省略する。
【0024】
画像形成ユニット10Y,10M,10C,10Kは、バックアップロール34と複数の張架ロール32によって張架された無端状の中間転写ベルト30の進行方向(矢印方向)に対して、画像形成ユニット10Y,10M,10C,10Kの順番で直列に配列されている。また、中間転写ベルト30は、各画像形成ユニット10Y,10M,10C,10Kの感光体ドラム12Y,12M,12C,12Kと、それぞれ対向して配設される一次転写ロール16Y、16M,16C,16Kとの間を挿通している。
【0025】
つぎに、各画像形成ユニット10Y,10M,10C,10Kの構成と画像形成の動作とを、イエロートナー画像を形成する画像形成ユニット10Yを代表して説明する。
【0026】
感光体ドラム12Yは、矢印方向に回転駆動され、接触帯電器13Yにより表面が一様に帯電される。つぎに、露光装置14Yによりイエロー画像に対応する像露光がなされ、感光体ドラム12Yの表面にイエロー画像に対応する静電潜像が形成される。イエロー画像に対応する静電潜像は、現像装置15Yの現像バイアスが印加された現像ロール52Yに担持されたトナーによって現像され、イエロートナー画像となる。この現像装置15Yについては後述する。
【0027】
さらに、感光体ドラム12Y上に形成されたイエロートナー画像は、一次転写ロール16Yの圧接力と、一次転写ロール16Yに印加された転写バイアスによる静電吸引力と、によって、中間転写ベルト30上に一次転写される。この一次転写では、イエロートナー画像は全て中間転写ベルト30に転写されず、一部のイエロートナーが感光体ドラム12Yに残留する。一次転写後の感光体ドラム12Yは、クリーニング装置17Yとの接触位置を通過し、感光体ドラム12Yの表面の転写残留イエロートナーがクリーニングブレード19によって除去される。その後、感光体ドラム12Yの表面は、つぎの画像形成サイクルの為、接触帯電器13Yで再び帯電される。
【0028】
図1に示すように、画像形成装置1では、各画像形成ユニット10Y,10M,10C,10Kの相対的な位置の違いを考慮したタイミングで、上記と同様の画像形成工程が各画像形成ユニット10Y,10M,10C,10Kにおいて行われ、中間転写ベルト30上に、順次、Y,M,C,Kの各色トナー像が重ねられ、フルカラートナー像が形成される。
【0029】
そして、所定のタイミングで二次転写位置Aへと搬送されてきた記録用紙Pに、転写バイアスが印加された二次転写ロール36の静電吸引力によって、中間転写ベルト30からフルカラートナー像が一括して、記録用紙Pに転写される。フルカラートナー像が転写された記録用紙Pは、中間転写ベルト30から分離された後、定着装置31へと搬送され、熱と圧力とによりフルカラートナー像が記録用紙Pに定着される。
【0030】
なお、記録用紙Pに転写されなかった中間転写ベルト30上の転写残留トナーは、中間転写ベルト用クリーナー33で回収される。
【0031】
次に、現像装置15について説明する。
【0032】
4つの現像装置15Y、15M、15C、15Kは、各色の非磁性トナーと磁性キャリアからなる二成分現像剤Gを使用して現像を行う二成分現像方式の現像装置である。図2及び図3に示すように、各現像装置15は、ハウジング50の内部に、感光体ドラム12側に配設された現像ロール52と、この現像ロール52の後方下方側に二成分現像剤Gを攪拌しながら搬送する2つのオーガー54、56が配設されている。ハウジング50の上部の現像ロール52と対向する位置には、現像ロール52に磁気ブラシを形成した状態で搬送される二成分現像剤Gの層厚を規制するトリマー58が配設されている。
【0033】
現像ロール52は、非磁性導電材料からなる円筒状のスリーブ52Aと、そのスリーブ52Aの中空内に配置されるマグネットロール52Bとで構成されている。マグネットロール52Bは固定支持され、スリーブ52Aは図示しない駆動源により一定方向(矢印B方向)に回転駆動される構成となっている。また、スリーブ52Aには、現像バイアス電源60から所定の現像バイアス(本実施形態では直流に交流を重畳した電圧)が印加されるようになっている。なお、感光体ドラム12は接地されている。
【0034】
また、図3に示すように、ハウジング50内のオーガー54とオーガー56の間には、仕切り板62がその両端部に通路62A、62Bを形成するような状態で設けられている。図2に示すように、オーガー56の一端部(通路62Aの付近)の上方部には、トナーカートリッジ44から現像剤供給搬送路66を通して供給されるトナー及びキャリアが一旦搬入される搬入部64が配設されている。この搬入部64の底面には、開口64Aが設けられており、オーガー56の一端部にトナー及びキャリアが適量ずつ補給されるようになっている。
【0035】
図5に示すように、オーガー54、56は、シャフト70の外周面に、軸方向と直交する方向に螺旋状に突出した螺旋状突起部72を備えている。また、隣り合う螺旋状突起部72の間に、シャフト70の軸方向と直交する方向に突出した板片状の凸状部74を備えている。凸状部74は、螺旋状突起部72の1ピッチの間でシャフト70の周方向の0度と180度の位置に形成されている。複数の凸状部74は、板片の方向がシャフト70の軸方向に向くように形成されている。これらの螺旋状突起部72と複数の凸状部74は、現像剤との接触時に表面が変形可能な弾性部材で構成されている。本実施形態では、弾性部材として、EPDM(エチレン−プロピレン−ジエンゴム)などの耐ブリード性の良い材料が選択されている。ここで、ブリードとは、ゴム中の低分子成分がゴム表面ににじみ出てゴム同士がブロッキングしたり、白濁したりする現象をいう。なお、弾性部材としては、CR(クロロプレン)などを用いても良い。また、弾性部材の剛性を上げるために、金属フィラー(例えば、SnO2,ZnO2,Al系粒子など)を30wt%以上添加している。金属フィラーを添加することで、螺旋状突起部72と凸状部74の剛性が大きくなり、二成分現像剤Gの搬送時に螺旋状突起部72と凸状部74の表面が弾性により変形する。
【0036】
図3に示すように、オーガー54とオーガー56は、二成分現像剤Gをそれぞれ逆方向に搬送するように螺旋状突起部72の搬送方向が逆向きとなるように配設されている。
【0037】
図1に示すように、画像形成ユニット10の上方部には、補給用の各色トナーとキャリアとが収容されている現像剤貯留部としての着脱交換式のトナーカートリッジ44Y、44M、44C、44Kが配設されている。図2及び図4に示すように、トナーカートリッジ44Y、44M、44C、44Kには、それぞれ現像装置15Y、15M、15C、15Kと接続される現像剤供給搬送路66が設けられており、現像剤供給搬送路66を通じてトナー及びキャリアが適量ずつ補給されるようになっている。
【0038】
図4(B)に示すように、現像剤供給搬送路66の内壁はほぼフラットな面に形成されており、この内壁には離型剤68が塗布されている。離型剤68は、有機材料と無機材料とが分子間結合してなる有機−無機複合化材料(有機−無機ハイブリッド材料)からなり、有機材料の特性と無機材料の特性の両方の利点を併せもっている。なお、現像剤供給搬送路66には、現像剤搬送用のオーガーなどは設けられておらず、現像剤供給搬送路66の内径は狭く設定されている(例えば、内径:10mm)。
【0039】
本実施形態では、化1に示すような化学式の材料を用いて離型剤68を作製した。
【0040】
【化1】

化1に示すように、有機材料としてポリジメチルシロキサンを使用した。また、Ti系の金属アルコシドを出発物質としてゾル・ゲル法により反応させた。なお、金属アルコキシドはM(OR)xで表される化合物である。ここでMは金属、Rはアルキル基である。また、ゾル・ゲル法は、金属アルコキシドからなるゾルを加水分解・重縮合反応により、流動性を失ったゲルとし、このゲルを加熱して酸化物を得る方法である。
【0041】
本実施形態では、ポリジメチルシロキサンを金属アルコキシドとしてTi系の金属粒子分散水溶液に混合し加水分解した後、縮合重合反応させることでゲルとし、有機材料と無機材料とが酸素結合した離型剤68を作製した。その際、Ti系無機材料のポリジメチルシロキサンに対する重量比を50%として反応させた。なお、混合比はこれに限定するものではなく、フレキシブル性を持たせた配合としている。なお、無機材料として、Ti系に代えて、Al系の金属粒子分散水溶液などを用いても良い。
【0042】
次に、現像装置15の作用について説明する。
【0043】
図2及び図3に示すように、この現像装置15では、トナーカートリッジ44からトナー及びキャリアが現像剤供給搬送路66を通じて搬入部64に少量ずつ供給される。そして、搬入部64の開口64Aからハウジング50内に供給される。ハウジング50内の二成分現像剤Gは、オーガー54、56の回転駆動により攪拌されつつ両端部の通路62A,62Bを通過しながら循環搬送される。その際、二成分現像剤Gのトナーがキャリアと混合攪拌されることにより所定の極性に摩擦帯電される。さらに、オーガー54で攪拌されつつ搬送される二成分現像剤Gは、隣に配置された現像ロール52側に供給され、現像ロール52の表面に二成分現像剤Gの磁気ブラシを形成した状態で担持される。
【0044】
この二成分現像剤Gの磁気ブラシはスリーブ52Aの回転により矢印B方向に搬送される。その際、現像ロール52の表面の二成分現像剤Gの層厚がトリマー58との間を通過することにより所定の厚さに規制される。層厚規制後の二成分現像剤Gは、感光体ドラム12と対向する現像領域に搬送されると、スリーブ52Aに印加されている現像バイアスにて形成される現像電界により、二成分現像剤G中のトナーのみが感光体ドラム12の潜像部分に静電的に付着して現像が行われる。
【0045】
この現像装置15では、現像剤供給搬送路66の壁面に塗布された離型剤68として、有機材料と無機材料とが分子間結合してなる有機−無機複合化材料が使用されている。このため、有機材料と無機材料の特性として機械的強度と離型性を併せ持つ離型剤68を実現でき、キャリアなどで表面が摺擦される現像剤供給搬送路66の壁面に使用しても離型剤68の剥がれや削れなどを防止できる。また、有機材料と無機材料の混合比を変更することで、塗布する部位に応じて、機械的強度を強くしたり、離型性を向上させたりすることができる。さらに、無機材料と有機材料とを分子間結合するため未架橋成分がなく、ブリード性の弊害も回避される。このため、現像剤供給搬送路66の壁面にトナーが固着することが防止され、現像剤の流動性の悪化による濃度低下などの二次障害が防止される。また、固着したトナーが剥がれることによる凝集トナー(グリッツ)の発生が低減され、転写時の白抜けなどによる画質劣化も防止される。
【0046】
次に、現像剤供給搬送路66の壁面へのトナーの固着によるトナー凝集(グリッツ)の発生状況や画像濃度低下(Low TC)の発生状況を評価した結果について説明する。
【0047】
評価は、A3サイズの記録用紙を5万枚(50KPV)までプリントし、所定のプリント枚数ごとに目視にて評価した。
【0048】
実施例1では、図2に示す現像剤供給搬送路66の壁面に、無機材料としてTi系、有機材料としてポリジメチルシロキサンを用いて合成した離型剤を塗布した。Ti系の無機材料のポリジメチルシロキサンに対する質量比を50%とし、離型性能に加えて機械的強度を持たせた構成とした。
【0049】
実施例2では、図2に示す現像剤供給搬送路66よりも狭く(内径:9mm)した現像剤供給搬送路の壁面に、無機材料としてAl系、有機材料としてポリジメチルシロキサンを用いて合成した離型剤を塗布した。Al系の無機材料のポリジメチルシロキサンに対する質量比を20%とし、機械的強度よりも離型性に重点をおいた構成とした。
【0050】
また、比較例1として、図6に示すように、トナーTが付着しにくいように現像剤供給搬送路102の壁面に微小な凹凸部104を形成したものを用いた。凹凸部104の表面粗さ(10点平均粗さRz)は20μmに設定した。なお、凹凸部104の表面には離型剤は塗布されていない。
【0051】
比較例2として、現像剤供給搬送路の壁面にフッ素系又はシリカ系の樹脂コート材料を塗布したものを用いた。なお、現像剤供給搬送路の壁面には凹凸部は形成されていない。
【0052】
表1に、トナーの固着による凝集トナー(グリッツ)の有無及び画像の白抜けを評価した結果を示す。
【0053】
凝集トナー(グリッツ)の有無及び画像の白抜けは、目視により評価した。
【0054】
表1の評価では、○は、グリッツが発生せず、画像の白抜けがほとんど発生しない状態、△は、グリッツ及び画像の白抜けがわずかに発生するが、画質上許容できるレベルである状態、×は、グリッツ及び画像の白抜けが発生し、画質上満足できない状態を示している。
【0055】
【表1】

また、図7は、実施例1と比較例2において、A3用紙に0〜20KPV(20000枚)プリントしたときの画像濃度との関係を示すグラフである。ここで、画像濃度は、X−Riteカラー反射濃度計(Color reflection- densitometer X−RITE 404A)により測定した。
【0056】
実施例1では、表1に示すように、柔らかい重合系のトナーを用いても、現像剤供給搬送路66の壁面へのトナーの固着が認められず、グリッツはほとんど発生せず、画像上白抜けの発生がないことが確認された。また、キャリアによって離型剤68が剥がれることもなかった。また、図7に示すように、2万枚プリントしても画像濃度の低下は認められなかった。
【0057】
実施例2では、表1に示すように、狭い径の現像剤供給搬送路に流動性の悪いトナーを搬送しても、トナーの流動性の悪化は認められなかった。このため、現像剤供給搬送路の内径を大きくせずにトナーの流動性を高めることができた。また、トナーの供給不足が原因で起こる画像濃度低下も認められなかった。
【0058】
一方、比較例1では、表1に示すように、現像剤供給搬送路102の壁面に微小な凹凸部104を形成しても、プリント枚数が1万枚を超えると、柔らかいトナーの固着が認められ、グリッツ及び画像の白抜けが発生した。
【0059】
また、比較例2では、表1に示すように、プリント枚数が1万枚を超えると、柔らかいトナーの固着が認められ、グリッツ及び画像の白抜けが発生した。また、樹脂コート材料の剥がれが認められた。また、図7に示すように、2万枚プリントする過程で画像濃度が著しく低下することが確認された。
【0060】
以上より、本発明では、現像剤供給搬送路の壁面へのトナーの固着を防止でき、凝集トナー(グリッツ)の発生が防止される、このため、トナーの流動性の悪化による画像濃度低下や転写時の画像の白抜けなどが発生しなくなり、安定して高品質な画像が得られる。また、狭い径の現像剤供給搬送路にすることができ、省スペース化及び小型化を実現できる。
【0061】
なお、図2に示す実施形態では、現像剤供給搬送路66の壁面に離型剤68を塗布したが、さらに、現像装置15内のオーガー54、56が配置された現像剤搬送経路の壁面に離型剤を塗布しても良い。これにより、現像剤搬送経路の壁面へのトナーの固着を防止できる。
【0062】
なお、図2に示す実施形態では、現像剤供給搬送路66の内部にオーガーなどの搬送部材は設けられていないが、搬送部材を設ける構成としても良い。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】本発明の第1実施形態に係る現像装置を備えた画像形成装置を示す概略構成図である。
【図2】図1に示す画像形成装置で用いられる現像装置を示す構成図である。
【図3】図1に示す画像形成装置で用いられる現像装置を示す断面図である。
【図4】(A)は現像装置及びトナーカートリッジの構成を示す斜視図、及び(B)は現像剤供給搬送路の断面図である。
【図5】現像装置内に配置されるオーガーを示す斜視図である。
【図6】比較例1の現像剤供給搬送路を示す部分拡大図である。
【図7】実施例1と比較例1のプリント枚数に対する画像濃度の関係を示すグラフである。
【符号の説明】
【0064】
1 画像形成装置
10Y,10M,10C,10K 画像形成ユニット
15 現像装置
44 トナーカートリッジ(現像剤貯留部)
50 ハウジング
52A スリーブ
52B マグネットロール
52 現像ロール
54 オーガー
56 オーガー
58 トリマー
60 現像バイアス電源
66 現像剤供給搬送路
68 離型剤
70 シャフト
72 螺旋状突起部
74 凸状部
G 二成分現像剤

【特許請求の範囲】
【請求項1】
現像剤が収容されるハウジング内で現像剤搬送部材により現像剤を攪拌しながら搬送し、像担持体上に形成された静電潜像を現像剤によって可視化する現像装置であって、
現像剤を貯留する現像剤貯留部から現像剤を前記ハウジング内に供給する現像剤供給搬送路を備え、
前記現像剤供給搬送路の壁面に離型剤が塗布されていることを特徴とする現像装置。
【請求項2】
前記離型剤は、有機材料と無機材料とが分子間結合してなる有機−無機複合化材料で構成されていることを特徴とする請求項1に記載の現像装置。
【請求項3】
前記離型剤は、ゾル−ゲル法により金属系の有機化合物と無機化合物との混合溶液から、ゾル及びゲルの状態を経て有機−無機複合化材料としたことを特徴とする請求項2に記載の現像装置。
【請求項4】
前記離型剤は、金属アルコキシドとポリジメチルシロキサンを使用し、ゾル−ゲル法により反応させた反応生成物を使用することを特徴とする請求項3に記載の現像装置。
【請求項5】
請求項1から請求項4までのいずれか1項に記載の現像装置を備えることを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−101927(P2007−101927A)
【公開日】平成19年4月19日(2007.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−292179(P2005−292179)
【出願日】平成17年10月5日(2005.10.5)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】