現像装置及び画像形成装置
【課題】供給部材の発泡体の平均発泡セル径をトナーの凝縮度に応じて定めることにより、像担持体の非画像部に付着するトナーの量を減少させることができ、濃度ムラやカブリが生じることのないようにする。
【解決手段】静電潜像を担持する像担持体にトナーを供給することによって現像を行うトナー担持体と、該トナー担持体に当接して回転することによってトナーを前記トナー担持体に供給する発泡体を備える供給部材とを有する現像装置であって、前記トナーの凝集度をa〔%〕、供給部材の発泡体の平均発泡セル径をb〔μm〕としたとき、10≦a≦50、かつ、2×a≦b≦3×aの関係を満たす。
【解決手段】静電潜像を担持する像担持体にトナーを供給することによって現像を行うトナー担持体と、該トナー担持体に当接して回転することによってトナーを前記トナー担持体に供給する発泡体を備える供給部材とを有する現像装置であって、前記トナーの凝集度をa〔%〕、供給部材の発泡体の平均発泡セル径をb〔μm〕としたとき、10≦a≦50、かつ、2×a≦b≦3×aの関係を満たす。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、現像装置及び画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、電子写真方式のプリンタ等の画像形成装置においては、帯電、露光、現像、転写、定着及びクリーニングの各プロセスによって画像を形成することがよく知られている。これらのプロセスのうちの現像プロセスでは、静電潜像担持体としての感光体ドラムにトナー担持体である現像ローラを接触させ、該現像ローラに電圧を印加することによって、前記感光体ドラム上の静電潜像を現像する、非磁性1成分トナーを用いた接触型の現像装置が、小型化及び低価格化の利点から、よく使われている。
【0003】
このような現像装置には、現像ローラに圧接させて、該現像ローラ上に現像剤としてのトナーの薄層を形成するためのトナー規制ブレードと、前記現像ローラにトナーを供給するための発泡体製の供給ローラとが設置されている。トナーは、まず、供給ローラに供給され、次に、現像ローラから感光体ドラムに供給される。この場合、トナーは、供給ローラの外周面に形成されている発泡体の気泡に積載され、供給ローラの回転に従って現像ローラへ送られる。このとき、供給ローラの表面と現像ローラの表面とがトナーを介して擦られることによってトナーが摩擦帯電され、帯電したトナーは現像ローラに引き付けられて付着する。
【0004】
このような現像装置において、現像ローラへのトナーの搬送能力を均一にするために、供給ローラの発泡体のセル径をトナー平均粒子径の1/2より大きく、10倍以下とする技術が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開平10−48940号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前記従来の現像装置においては、流動性の高いトナーを用いると、濃度ムラや、非画像部のカブリが生じる場合があった。近年、例えば、1200〔dpi〕以上の高解像度化の要求が強く、このような要求に対応するために、トナーの流動性の向上が必要とされている。流動性の高いトナーは、粒子同士の凝集が少ないため、現像プロセスにおいて、細線の再現や孤立ドットの再現に有利である。流動性の高いトナーは、感光体ドラム表面との物理的吸着力も小さく、転写プロセスにおいても、白抜けなどが発生し難くなっている。しかし、流動性の高いトナーを用いると、濃度ムラが生じたり、非画像部にカブリが生じたりしやすくなる。
【0006】
本発明は、前記従来の現像装置の問題点を解決して、供給部材の発泡体の平均発泡セル径をトナーの凝縮度に応じて定めることにより、像担持体の非画像部に付着するトナーの量を減少させることができ、濃度ムラやカブリが生じることのない現像装置及び画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
そのために、本発明の現像装置においては、静電潜像を担持する像担持体にトナーを供給することによって現像を行うトナー担持体と、該トナー担持体に当接して回転することによってトナーを前記トナー担持体に供給する発泡体を備える供給部材とを有する現像装置であって、前記トナーの凝集度をa〔%〕、供給部材の発泡体の平均発泡セル径をb〔μm〕としたとき、10≦a≦50、かつ、2×a≦b≦3×aの関係を満たす。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、現像装置は、供給部材の発泡体の平均発泡セル径をトナーの凝縮度に応じて定める。これにより、像担持体の非画像部に付着するトナーの量を減少させることができ、濃度ムラやカブリが生じることを防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0010】
図2は本発明の第1の実施の形態における画像形成装置の概略構成図である。
【0011】
図において、10は画像形成装置であり、画像形成ユニットとしての画像形成部20及び定着装置30を有する。ここで、前記画像形成装置10は、例えば、プリンタ、ファクシミリ機、複写機等であり、電子写真方式によって、印刷用紙、封筒、OHP(Over Head Projector)シート等の記録媒体上にモノクロやカラーの画像を形成するようになっている。そして、前記定着装置30はトナー像を記録用紙26に定着させる。なお、前記画像形成装置10は、モノクロ画像を形成するものであってもよく、カラー画像を形成するものであってもよいが、本実施の形態において、カラー画像を形成するカラープリンタであるものとして説明する。
【0012】
この場合、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)及びブラック(K)の各色に対応する4つの画像形成部20が記録用紙26の搬送路に沿って、搬送方向(図における左方向)に順次並ぶように配設される。なお、4つの画像形成部20の各々は、基本的に同一の構造を有するので、ここでは、そのうちの1つについて説明する。
【0013】
前記画像形成部20は、ドラム状に形成され、表面に有機感光体を用いた像担持体としての感光体ドラム11、並びに、該感光体ドラム11の周囲に配設された帯電ローラ12、露光装置13、現像装置14及び転写装置15を有する。なお、前記帯電ローラ12、現像装置14及び転写装置15は、感光体ドラム11の表面に接触又は圧接するように配設されている。また、クリーニングブレード16が、感光体ドラム11の表面に残留しているトナーを掻(か)き取って処理するために、感光体ドラム11の表面に接触して設けられている。
【0014】
そして、前記露光装置13は、例えば、LED(Light Emitting Diode)ヘッドを備え、画像信号に対応した光を感光体ドラム11の表面に照射し、該表面に静電潜像を形成する。
【0015】
また、前記現像装置14は、印刷時に感光体ドラム11に接触するトナー担持体としての現像ローラ21と、トナーカートリッジ22から補充されたトナーを帯電させ、現像ローラ21に供給する供給部材としてのトナー供給ローラ24と、現像ローラ21の表面に接触してトナー供給ローラ24から供給されたトナーを薄層化する層規制部材としての層規制ブレード25とを有する。なお、図において23は、トナーカートリッジ22内に充填(てん)されたトナーを示している。
【0016】
さらに、前記転写装置15は、感光体ドラム11に接触し、記録用紙26にトナー像を転写する転写ベルト31と、該転写ベルト31に電圧を印加する転写ローラ32と、転写ベルト31の最下流に配設され、転写ベルト31をクリーニングするためのクリーニングブレード34とを有する。
【0017】
なお、記録用紙26の搬送路における4つの画像形成部20の下流側には、定着装置30が配設されている。
【0018】
また、前記感光体ドラム11、帯電ローラ12、露光装置13、現像ローラ21、トナー供給ローラ24、転写ローラ32、駆動ローラ33a、33b及び定着装置30の動作は、図示されない制御部によって制御される。該制御部は、あらかじめ決められたタイミングで、図示されない電源から直流の高電圧を帯電ローラ12、転写ローラ32、現像ローラ21及びトナー供給ローラ24に印加する。また、前記感光体ドラム11、帯電ローラ12、駆動ローラ33a、33b、現像ローラ21及びトナー供給ローラ24は図示されない駆動モータによって回転駆動する。
【0019】
次に、本実施の形態におけるトナーについて説明する。
【0020】
本発明の発明者は、研究を重ねた結果、トナーの流動性とトナー供給ローラの発泡体セル径がカブリに影響を与えていることを見出した。以下にトナー流動性とトナー供給ローラの発泡体セル径との関係について詳細に調べた結果を説明する。
【0021】
本実施の形態におけるトナーは、結着樹脂としてポリエステル、着色剤としてカーボンブラック、銅フタロシアニン顔料(C.I.Pigment Blue 15)、キナクリドン系顔料(C.I.Pigment Red 122)、C.I.Pigment Yellow 185等を用いた粉砕トナーである。また、トナーの堆積平均粒子径は5.8〔μm〕とし、流動化剤及び帯電性をコントロールする目的で添加剤を外添している。
【0022】
添加剤としては、例えば、酸化チタン、アルミナ、シリカ等があり、さらに、該シリカはシリコーンオイル処理やジシラザン処理等を施したものがある。添加剤の一次粒子径としては、7〔nm〕、12〔nm〕、14〔nm〕、21〔nm〕、40〔nm〕等のものがある。これらの添加剤を組み合わせ、ターブラミキサーやヘンシェルミキサーによってトナーと混合し、外添する。これらの添加剤の組み合わせ条件や混合条件によって、所望の流動性を持ったトナーを得ることができる。例えば、小粒径の添加剤量を多くすると、トナーの流動性を上げることができる。
【0023】
本実施の形態において、トナーの流動性の指標となる凝集度は、MULTI TESTER MT−1001(株式会社セイシン企業製)を用いて、以下(1)〜(4)の方法によって測定した。なお、測定環境は、23〔℃〕、50〔%〕とし、測定するトナーはこの環境下に24時間以上放置した。
(1) トナーを精密秤によって2.0〔g〕量り取る。
(2) 測定器に、上から、100メッシュ(開き目150〔μm〕)、200メッシュ(開き目75〔μm〕)、400メッシュ(開き目38〔μm〕)の篩(ふるい)を重ねてセットする。
(3) 2.0〔g〕のトナーを静かに100メッシュの篩の上に載せ、振幅1.0〔mm〕で90秒間振動させる。
(4) 各篩の上に残ったトナー量を精密秤によって静かに測定する。
【0024】
トナーの凝集度aは、以下の式(1)によって求めることができる。
a=x+y+z〔%〕 ・・・式(1)
ここで、
x=(100メッシュ上に残ったトナー量)〔g〕/2.0×100
y=0.6×(200メッシュ上に残ったトナー量)〔g〕/2.0×100
z=0.2×(400メッシュ上に残ったトナー量)〔g〕/2.0×100
である。
【0025】
なお、トナーの凝集度aが小さいほどトナー流動性が高く、トナー同士の凝集力や壁面への付着力が小さい。
【0026】
本実施の形態においては、凝集度が10〔%〕以上で50〔%〕以下のトナーを用いた。トナーの凝集度が10〔%〕より小さい場合、非常に流動性が高く、さらさらとしたトナーとなるので、現像装置14内からトナーが漏れ出さないようにシールすることが困難である。また、トナーの凝集度が50〔%〕より大きい場合、細線や孤立ドットの再現が難しく、本来の課題である流動性の高いトナーでの画質改善という目的から外れてしまう。
【0027】
次に、本実施の形態における現像装置14について詳細に説明する。
【0028】
図3は本発明の第1の実施の形態における現像装置の現像ローラ及びトナー供給ローラを示す図である。
【0029】
層規制ブレード25は、ばね性を備える厚さ0.08〔mm〕のSUS304の金属板を図に示されるようにL字型に成形した部材であり、そのエッジ部が現像ローラ21の表面に圧接するように設置されている。
【0030】
また、現像ローラ21は、金属製のシャフト35及び該シャフト35の外周に取り付けられた弾性体36を有する。本実施の形態では、直径12〔mm〕の金属製のシャフト35の外周に、弾性体36として肉厚4〔mm〕、ゴム硬度70度(アスカーC)の半導電性のウレタンゴムを取り付け、弾性体36の表面層には摩擦係数、粗さ、帯電特性等を調整する目的で、所定の処理が施されている。
【0031】
さらに、トナー供給ローラ24は、金属製のシャフト37及び該シャフト37の外周に取り付けられた発泡体38を有する。本実施の形態では、直径6〔mm〕の金属製のシャフト37の外周に、発泡体38として、肉厚5〔mm〕、硬度50度(アスカーF)のウレタン発泡体が取り付けられている。また、トナー供給ローラ24は、現像ローラ10に対して圧接するように配設され、その圧力は0.6〔N/cm〕とされている。
【0032】
そして、本実施の形態においては、平均発泡セル径が20〜200〔μm〕の発泡体38を有するトナー供給ローラ24を用意して評価を行った。発泡体38の発泡セル径は、発泡剤の量や種類の変更、加硫時間や温度をコントロールする等の方法によって、所望の値を得ることができる。例えば、発泡セル径を大きくするには、発泡剤の量を増やす、加硫時間を長くする、加硫温度を高くする等の方法がある。
【0033】
次に、本実施の形態における平均発泡セル径の測定方法について説明する。
【0034】
図4は本発明の第1の実施の形態におけるトナー供給ローラの平均発泡セル径の測定方法を示す図である。
【0035】
まず、デジタルマイクロスコープVHX−200(キーエンス社製)を用いてトナー供給ローラ24の表面の画像を撮影し、無作為に50個の孔(あな)を取り出して各孔の面積を測定する。なお、図4(a)における41は、トナー供給ローラ24の表面の微小部分を示し、図4(b)は該微小部分41を拡大した状態を示している。図4(b)において、1、2、3・・・の数字が付された部分は孔である。各孔の面積を測定には付属の画像処理ソフトを使用した。この際、画像にすべての姿が写っている孔のみを測定の対象とした。
【0036】
このようにして測定した50個の孔の面積から、円相当径(その面積に相当する円の直径)を求め、その平均値を平均発泡セル径とした。なお、図4(c)における42は、測定の対象となった孔であり、S1は孔42の面積である。また、43は孔42と等しい面積S1を備える円であり、44は円43の直径、すなわち、孔42の円相当径である。
【0037】
次に、前記構成の画像形成装置10の動作について説明する。
【0038】
画像形成装置10の制御部は、図示されない上位装置、例えば、パーソナルコンピュータ等からの印刷命令が入力されると、感光体ドラム11を駆動モータによって、図2において矢印で示される方向に一定の周速度で回転させる。そして、感光体ドラム11の表面に接触又は圧接するように配設されている帯電ローラ12に直流電圧を印加して、感光体ドラム11の表面を一様かつ均一に帯電させる。本実施の形態では、帯電ローラ12に−1150〔V〕の直流電圧を印加した。このときの感光体ドラム11の表面の帯電電位は約−650〔V〕であった。
【0039】
次に、露光プロセスでは、露光装置13によって画像信号に対応した光が感光体ドラム11の表面に照射され、該表面に静電潜像が形成される。
【0040】
トナーカートリッジ22から補充されたトナーは、図示されないトナー供給ローラ用高圧電源によって電圧が印加されたトナー供給ローラ24の回転により、現像ローラ21に供給される。本実施の形態においては、トナー供給ローラ24に−330〔V〕の直流電圧が印加される。現像ローラ21とトナー供給ローラ24とは同じ方向に回転しており、トナー供給ローラ24の周速は現像ローラ21の周速の0.6倍となっている。現像ローラ21は、トナーを吸着して、矢印で示される方向に搬送する。すると、回転方向の下流側で現像ローラ21に圧接し、図示されない高圧電源によって−330〔V〕の直流電圧が印加された層規制ブレード25によって、現像ローラ21の表面にトナー層の薄層が形成される。本実施の形態では、層規制ブレード25と現像ローラ21との接触圧力は約0.8〔N/cm〕に設定されている。
【0041】
層規制ブレード25を通過したトナーは、さらに、現像ローラ21の矢印で示される方向への回転運動によって搬送され、感光体ドラム11上に形成された静電潜像を現像する。本実施の形態においては、反転現像であるものとし、感光体ドラム11の図示されない導電性支持体と現像ローラ21との間には、図示されない高圧電源によってバイアス電圧が印加されている。この場合、現像ローラ21には、−200〔V〕の直流電圧が印加されている。そして、現像ローラ21と感光体ドラム11との間には、感光体ドラム11に形成された静電潜像に伴う電気力線が発生する。このため、現像ローラ21上の帯電したトナーは、静電気力によって感光体ドラム11上に付着し、前記静電潜像がトナーにより現像され、トナー像が形成される。
【0042】
一方、駆動ローラ33a及び33bの回転によって転写ベルト31が矢印で示される方向に回転し、図示されない給紙カセットから供給された記録用紙26は、転写ベルト31によって転写部へと送られる。感光体ドラム11に対向して設けられた転写ローラ32に図示されない高圧電源によって電圧が印加され、記録用紙26に感光体ドラム11上に形成されたトナー像が転写される。
【0043】
その後、記録用紙26は、更に転写ベルト31によって定着装置30へ搬送され、熱及び圧力を受けてトナーが溶融し、溶融したトナーが記録用紙26の繊維間に浸透し、記録用紙26への定着が行われる。トナー像が定着された記録用紙26は、画像形成装置10の外部へ送出される。
【0044】
一方、転写後の感光体ドラム11の表面には若干のトナーが残留する場合があるが、この残留トナーは、クリーニングブレード16によって除去される。こうして、感光体ドラム11は繰り返し利用される。
【0045】
次に、本実施の形態におけるトナーの凝集度とトナー供給ローラ24の発泡体38の平均発泡セル径との関係について説明する。
【0046】
図1は本発明の第1の実施の形態におけるトナーの凝集度とトナー供給ローラの発泡体の平均発泡セル径との関係についての実験結果を示す図である。
【0047】
本実施の形態では、凝集度が10〜50〔%〕のトナーと、発泡体38の平均発泡セル径が20〜200〔μm〕のトナー供給ローラ24を用い、0〔%〕濃度印刷時にカブリの発生が小さく、100〔%〕濃度印刷時にマクベス濃度が1.2以上となる良好な印刷結果が得られる範囲を実験によって確認した。
【0048】
カブリの評価においては、0〔%〕濃度印刷時の途中で画像形成装置10を停止させ、現像後転写前の感光体ドラム11上にあるトナーを粘着テープ(住友スリーエム社製スコッチメンディングテープ)に付着させた。そして、トナーの付着した粘着テープを記録用紙26に貼(は)り付け、粘着テープだけを記録用紙26に貼り付けたものとの色差ΔEを、分光測色計(コニカミノルタ製CM2600d)によって測定した。色差ΔEの値が小さいことは、カブリが少ないことを示している。なお、米国標準局によって色差ΔEの評価基準は、以下のように設定されている。
ΔE 0〜0.5 trace (微かに感じられる。)
ΔE 0.5〜1.5 slight (わずかに感じられる。)
ΔE 1.5〜3.0 noticeable (かなり感じられる。)
ΔE 3.0〜6.0 appreceable(目立って感じられる。)
ΔE 6.0〜12 much (大きく感じられる。)
ΔE 12〜 very much (非常に大きく感じられる。)
つまり、ΔEの値が0.5以下であれば同色とし、0.5〜1.5の範囲であれば、わずかな違いはあるが、異色と見なすほどではないものとする。本発明の発明者は、感光体ドラム11上のトナーを粘着テープによって採取し、色差の評価を行ったが、感光体ドラム11上のトナーはすべて記録用紙26に転写されるわけではない。該記録用紙26の種類によってもトナーの転写率は変化する。しかし、前述のような評価の方法によっても、ΔEの値が1.0以下であれば、印刷後の記録用紙26媒体上でもΔEの値が必ず1.0以下となり、印刷品質上問題のないレベルと判断する。
【0049】
また、印刷濃度が1.2以上になると、階調(面積階調)印刷を行った場合の画像品位を向上させることができる。すなわち、ベタ印刷時の印刷濃度が1.2未満で階調印刷を行うと各画素の再現性が著しく低下し、適正な階調濃度の表現を行うことができない状態となり、掠(かす)れが発生してしまう。そこで、前記印刷濃度を1.2以上にすると、階調印刷を行っても画像品位を向上させることができ、人間の目の識別範囲とされる150階調の精度を表現することができる。
【0050】
本実施の形態におけるトナーの凝集度とトナー供給ローラ24の発泡体38の平均発泡セル径との関係についての実験の結果は、図1に示されるようになった。
【0051】
図から、トナーの凝集度aが小さい場合には、トナー供給ローラ24の発泡体38の平均発泡セル径bが小さくても濃度を確保することができるが、トナーの凝集度aが大きい場合には、平均発泡セル径bを大きくしないと濃度を確保することができないことが分かる。これは、凝集度aの大きなトナーは、セル壁面への付着力やトナー粒子間の凝集力が強くなるので、セル内にトナーが存在しても、表層に近く、セル壁面に直接接触していない一部のトナーしか現像ローラ21に供給されないためである。そのため、セル径が小さく、セル壁面とトナーとの接触面積が大きくなると、トナーの供給量不足となり、濃度の低下や掠れが発生する。
【0052】
図に示される実験の結果から、トナーの凝集度a〔%〕と、トナー供給ローラ24の発泡体38の平均発泡セル径b〔μm〕との関係を以下の式(2)のように設定することによって、100〔%〕濃度印刷時の濃度を1.2以上に確保することができることが分かる。
2×a≦b ・・・式(2)
しかし、トナー供給ローラ24の発泡体38の平均発泡セル径bが大きければよいわけではない。該平均発泡セル径bが大きくなると、それに従ってセルの深さも大きくなる。そのため、セル内に積載されるトナー量が多くなり、現像ローラ21とトナー供給ローラ24とが接触してトナーに摩擦帯電を与える領域において、トナーに十分な帯電を与えることができなくなってしまう。すると、帯電が不十分なトナーや、トナー同士の摩擦によって逆極性に帯電したトナーがカブリとなって現れる。
【0053】
そこで、トナーの凝集度a〔%〕と、トナー供給ローラ24の発泡体38の平均発泡セル径b〔μm〕との関係を以下の式(3)のように設定することによって、感光体ドラム11上の非画像部に付着するカブリトナーを少なくすることができ、印刷画像上のカブリを改善することが可能となる。
b≦3×a ・・・式(3)
なお、本実施の形態においては、印刷の解像度を1200〔dpi〕とした場合について説明したが、印刷の解像度を1200〔dpi〕を超える値、例えば、1400〔dpi〕とした場合でも、ほぼ同様の結果を得ることができた。
【0054】
このように、本実施の形態においては、トナーの凝集度a〔%〕と、トナー供給ローラ24の発泡体38の平均発泡セル径b〔μm〕との関係を前記式(2)のように設定することによって、1200〔dpi〕以上の高解像度の印刷においても、100〔%〕濃度印刷時の濃度を1.2以上確保することができる。
【0055】
また、前記トナーの凝集度a〔%〕と平均発泡セル径b〔μm〕との関係を前記式(3)のように設定することによって、感光体ドラム11上の非画像部に付着するカブリトナーを少なくすることができ、印刷画像上のカブリを改善することが可能となる。
【0056】
次に、本発明の第2の実施の形態について説明する。なお、第1の実施の形態と同じ構造を有するものについては、同じ符号を付与することによって、その説明を省略する。また、前記第1の実施の形態と同じ動作及び効果についても、その説明を省略する。
【0057】
トナーの凝集度a〔%〕と、トナー供給ローラ24の発泡体38の平均発泡セル径b〔μm〕との関係を前記第1の実施の形態において説明したように設定しても、連続印刷を行った場合に印刷枚数が多くなってくると、カブリが起きることがある。本発明の発明者は、研究を重ねた結果、現像ローラ21とトナー供給ローラ24とを圧接するように配置している場合における喰い込み距離が影響を与えていることを見出した。そこで、本実施の形態においては、現像ローラ21とトナー供給ローラ24と喰い込み距離の影響について詳細に調べた結果を説明する。
【0058】
本実施の形態においては、凝集度が30〔%〕のトナーを使用した。なお、本実施の形態における画像形成装置10の構成については、前記第1の実施の形態と同様であるので、その説明を省略する。
【0059】
次に、本実施の形態における現像装置14について説明する。
【0060】
図5は本発明の第2の実施の形態における現像装置の現像ローラ及びトナー供給ローラを示す図である。
【0061】
本実施の形態においては、平均発泡セル径が70〔μm〕の発泡体38を有するトナー供給ローラ24を用意して評価を行った。発泡体38の発泡セル径は、発泡剤の量や種類の変更、加硫時間や温度をコントロールする等の方法によって、所望の値を得ることができる。例えば、発泡セル径を大きくするには、発泡剤の量を増やす、加硫時間を長くする、加硫温度を高くする等の方法がある。
【0062】
図において、cは現像ローラ21とトナー供給ローラ24との喰い込み距離である。本実施の形態においては、喰い込み距離cの値を、0.2〔mm〕、0.5〔mm〕、1.0〔mm〕、1.5〔mm〕、2.0〔mm〕、2.5〔mm〕及び3.0〔mm〕とした。なお、喰い込み距離cは、現像ローラ21の半径をr1 、トナー供給ローラ24の半径をr2 、現像ローラ21とトナー供給ローラの軸間距離をeとすると、以下の式(4)によって求めることができる。
c=(r1 +r2 )−e ・・・式(4)
なお、本実施の形態における現像装置14のその他の点の構成及び平均セル径の測定方法については、前記第1の実施の形態と同様であるので、その説明を省略する。
【0063】
次に、本実施の形態におけるカブリと喰い込み距離cとの関係について説明する。
【0064】
図6は本発明の第2の実施の形態におけるカブリと喰い込み距離との関係についての実験結果を示す図、図7は本発明の第2の実施の形態における発泡体厚さ、喰い込み距離及び応力との関係についての実験結果を示す第1の図、図8は本発明の第2の実施の形態における発泡体厚さ、喰い込み距離及び応力との関係についての実験結果を示す第2の図である。
【0065】
本実施の形態においては、凝集度が30〔%〕のトナーと、発泡体38の平均発泡セル径が70〔μm〕のトナー供給ローラ24を用い、該トナー供給ローラ24と現像ローラ21との喰い込み距離cの値を0.2〔mm〕、0.5〔mm〕、1.0〔mm〕、1.5〔mm〕、2.0〔mm〕、2.5〔mm〕及び3.0〔mm〕と変化させ、A4縦方向の記録用紙26を30k枚印刷後の現像装置14でカブリを評価した。なお、該カブリの評価の方法については、前記第1の実施の形態と同様であるので、その説明を省略する。
【0066】
本実施の形態におけるカブリを示す色差ΔEの値と、喰い込み距離cとの関係についての実験の結果は、図6に示されるようになった。
【0067】
図6から、喰い込み距離cの値が小さい場合には、連続印刷時にカブリが大きくなって印刷品質が低下していることが分かる。本実施の形態においては、現像ローラ21とトナー供給ローラ24とが圧接されて配設され、両者の周速度に差がありながら回転しているので、印刷枚数が多くなると摩耗によってトナー供給ローラ24の径が小さくなる。そのため、30k枚印刷後の状態では、現像ローラ21とトナー供給ローラ24との喰い込み距離cが初期に比べて小さくなっており、現像ローラ21とトナー供給ローラ24との接触領域が小さくなり、十分な摩擦帯電が行われなくなったことが原因である。したがって、摩耗しても十分にトナー23に摩擦帯電を与えられる接触領域を確保することができるように、喰い込み距離cの値を設定する必要がある。
【0068】
そこで、現像ローラ21とトナー供給ローラ24との喰い込み距離c〔mm〕の値を、以下の式(5)のように設定することによって、30k枚連続印刷後でも、カブリの発生しない良好な印刷画像を得ることができる。
1.0〔mm〕≦c ・・・式(5)
しかし、喰い込み距離cの値をあまり大きくすると、現像ローラ21とトナー供給ローラ24との摩擦力によって、現像装置14を駆動するためのトルクが大きくなってしまう。図5に示されるようなトナー供給ローラ24の発泡体38の厚さ、すなわち、発泡体層厚さdに対して、喰い込み距離cが小さい場合には、現像ローラ21とトナー供給ローラ24との間に働く力は喰い込み距離cにほぼ比例して増加する。しかし、喰い込み距離cが発泡体層厚さdの半分を超えると、発泡体セルが十分に圧縮されてしまっているので、喰い込み距離cを大きくするためには非常に大きな応力が掛かることになる。
【0069】
本実施の形態におけるトナー供給ローラ24の発泡体層厚さdを変化させて応力の値を測定した結果は、図7に示されるようになった。また、発泡体層厚さdと喰い込み距離cとの比に対する応力の変化は、図8に示されるようになった。
【0070】
図7及び8に示される実験の結果から、喰い込み距離cが発泡体層厚さeの半分を超えると、応力が急激に高くなることが分かる。そこで、現像ローラ21とトナー供給ローラ24との喰い込み距離c〔mm〕の値とトナー供給ローラ24の発泡体層厚さd〔mm〕との関係を以下の式(6)のように設定することによって、現像装置14を駆動するためのトルクの極端な上昇を防止することができる。
c≦0.5×d ・・・式(6)
このように、本実施の形態においては、現像ローラ21とトナー供給ローラ24の喰い込み距離c〔mm〕を前記式(5)のように設定することによって、30k枚連続印刷後でも、カブリの発生しない良好な印刷画像を得ることが可能となる。
【0071】
また、現像ローラ21とトナー供給ローラ24との喰い込み距離c〔mm〕の値とトナー供給ローラ24の発泡体層厚さd〔mm〕との関係を前記式(6)のように設定することによって、現像装置14を駆動するためのトルクの極端な上昇を防止することができる。
【0072】
次に、本発明の第3の実施の形態について説明する。なお、第1及び第2の実施の形態と同じ構造を有するものについては、同じ符号を付与することによって、その説明を省略する。また、前記第1及び第2の実施の形態と同じ動作及び効果についても、その説明を省略する。
【0073】
トナーの凝集度a〔%〕とトナー供給ローラ24の発泡体38の平均発泡セル径b〔μm〕との関係を前記第1の実施の形態において説明したように設定し、さらに、現像ローラ21とトナー供給ローラ24の喰い込み距離c〔mm〕を前記第2の実施の形態において説明したように設定しても、連続印刷を行った場合に印刷枚数が多くなってくると、高濃度印刷において濃度低下が起こることがある。
【0074】
本発明の発明者は、研究を重ねた結果、トナーの凝集度が印刷枚数を重ねることで大きくなる場合があることを見出した。それは、特に現像ローラ21又はトナー供給ローラ24にシリコーン材料を用いた場合に発生している。トナーの凝集度が大きくなったトナーを分析することによって、シリコーンゴムの低分子成分であるオリゴマーが現像ローラ21又はトナー供給ローラ24より沁(し)み出し、現像装置14内のトナーに混入することが原因であると分かった。
【0075】
そこで、本実施の形態においては、連続印刷によってトナーの凝集度が変化しても濃度低下が発生することのないトナー供給ローラ24について説明する。なお、本実施の形態においては、初期のトナーの凝集度が20〔%〕のトナーを使用した。また、本実施の形態における画像形成装置10の構成については、前記第1及び第2の実施の形態と同様であるので、その説明を省略する。
【0076】
次に、本実施の形態におけるトナー供給ローラ24について説明する。
【0077】
図9は本発明の第3の実施の形態におけるトナー供給ローラの発泡セルを示す図である。
【0078】
本実施の形態においては、トナー供給ローラ24として、発泡体38の平均発泡セル径が50〔μm〕であるものと、発泡体38表面の平均発泡セル径が50〔μm〕であって、表面よりも内側の平均発泡セル径が100〔μm〕であるものとを使用した。なお、図9(a)における45は、トナー供給ローラ24の発泡体38表面の微小部分を示し、図9(b)は該微小部分45を拡大した状態を示している。
【0079】
発泡体38の発泡セル径は、発泡剤の量や種類、加硫時間や温度、成形方法などによってコントロールすることができる。図に示されるような発泡体38のように、表層と内部で発泡セル径が異なるようにするためには、例えば、発泡体38を発泡させる際に型の中で発泡させる型成形の方法を使う。その場合、型の表面状態によって発泡体38の表面状態をコントロールすることができる。
【0080】
また、発泡体38の外周面で発泡セル径を小さくするためには、型成形において加硫の際に、外側の温度を低く、内側であるシャフト35を加熱して温度を高くすることで内側の発泡セル径を大きくし、外側の発泡セル径を小さくすることが可能である。
【0081】
なお、本実施の形態においては、現像ローラ21とトナー供給ローラ24との喰い込み距離cの値は1.5〔mm〕であるものとした。なお、平均発泡セル径の測定方法については、前記第1の実施の形態と同様であるので、説明を省略する。
【0082】
次に、本実施の形態における印刷枚数と画像濃度との関係について説明する。
【0083】
図10は本発明の第3の実施の形態における印刷枚数、画像濃度及びトナーの凝集度の関係についての実験結果を示す第1の図、図11は本発明の第3の実施の形態における印刷枚数、画像濃度及びトナーの凝集度の関係についての実験結果を示す第2の図、図12は本発明の第3の実施の形態における平均発泡セル径と摩耗量との関係についての実験結果を示す図、図13は本発明の第3の実施の形態における平均発泡セル径と印刷枚数との関係についての実験結果を示す図である。
【0084】
本実施の形態においては、凝集度が20〔%〕のトナーと、発泡体38の平均発泡セル径が50〔μm〕のトナー供給ローラ24を用いて連続評価を行った。初期、並びに、A4縦方向の記録用紙26を10k枚印刷後、20k枚印刷後及び30k枚印刷後の時点で、それぞれ、100〔%〕印刷における画像濃度の測定とトナーの凝集度の測定とを行った。その結果は、図10に示されるようになった。
【0085】
図10から、連続印刷を行う間にトナーの凝集度aが大きくなり、それに伴い、画像濃度が低下していることが分かる。つまり、印刷枚数が増加することによってトナーの凝集度aが増加したために、初期の凝集度aに合わせて設定した平均発泡セル径を備えるトナー供給ローラ24ではトナーの搬送能力が不足し、画像濃度が低下したと考えられる。また、30k枚印刷後に、トナー供給ローラ24の発泡体38の厚さを測定すると、初期で5〔mm〕あったものが4.5〔mm〕となっており、現像ローラ21との摩擦によって、発泡体38が0.5〔mm〕摩耗していることが分かった。
【0086】
このような結果を踏まえて、発泡体38の表面の平均発泡セル径が50〔μm〕であり、表面よりも内側における平均発泡セル径が100〔μm〕であるトナー供給ローラ24を準備して連続評価を試みた。そして、初期、並びに、A4縦方向の記録用紙26を10k枚印刷後、20k枚印刷後及び30k枚印刷後の時点で、それぞれ、100〔%〕印刷における画像濃度の測定とトナーの凝集度の測定とを行った。その結果は、図11に示されるようになった。
【0087】
図11から、連続印刷を行う間にトナーの凝集度aが大きくなっているが、画像濃度は低下していないことが分かる。また、30k枚印刷後のトナー供給ローラ24の発泡体38の厚さを測定すると、初期で5〔mm〕あったものが4.5〔mm〕となっており、現像ローラ21との摩擦によって、発泡体38が0.5〔mm〕摩耗していることが確認された。該発泡体38の平均発泡セル径を測定すると、現像ローラ21との摩耗により表面から0.5〔mm〕が削られたため、内側の発泡セルが露見しており、平均発泡セル径の値は、初期における50〔μm〕から、100〔μm〕へと変化していた。このことから、トナーの凝集度aが低下しても、発泡セル径が大きくなることによって、100〔%〕印刷においても十分な画像濃度を確保することができたことが分かる。
【0088】
前述のように、供給ローラ10の発泡体38は、現像ローラ21との摩耗によって、印刷枚数を重ねる中で削られていく。本実施の形態において、発泡体38の摩耗量と平均発泡セル径との関係を測定した結果は、図12に示されるようになった。
【0089】
図12から、平均発泡セル径の値は、摩耗量が0.2〔mm〕程度までの範囲では50〔μm〕から100〔μm〕へと徐々に変化し、それ以降の範囲では100〔μm〕で一定となることが分かる。供給ローラ24の発泡体38の発泡セルは、そのセル径や深さに分布を持っており、深さが浅い部分の発泡セルは、小さな摩耗量、例えば、100〔mm〕で、露見する。また、深い部分の発泡セルは、摩耗量がその値に達するまで露見しない。そのため、発泡体38の表面層の発泡セルが完全に削れてしまうまでは、平均発泡セル径が徐々に変化し、その後は、深い部分の発泡セルの平均発泡セル径に一致した値となって安定する。
【0090】
本実施の形態においては、A4縦方向の記録用紙26を30k枚印刷後に、供給ローラ24の発泡体38は、0.5〔mm〕だけ摩耗していた。印刷枚数と摩耗量とが比例関係にあると考えて、印刷枚数と平均発泡セル径との関係を測定した結果は、図13に示されるようになった。なお、図13における斜線で示される領域は、印刷枚数とトナーの凝集度の変化による発泡セル径が良好な範囲を示している。
【0091】
図13から、印刷枚数を重ねてトナーの凝集度が変化しても、発泡セル径が良好な範囲にあることが分かる。これにより、画像濃度の低下が発生せず、良好な印刷品質を保つことが可能となる。
【0092】
以上の結果により、例えば、シリコーン製ローラのオリゴマー等の影響によって、経時でトナーの凝集度が大きくなることが予想される現像装置14では、トナー供給ローラ24の発泡体38の摩耗を考慮し、トナー供給ローラ24の発泡体38の表面層のセル径を小さくし、表面よりも内側の平均発泡セル径を大きくすることによって、トナーの凝集度が変化しても画像濃度が低下せず、良好な印刷品質を保つことができる。
【0093】
つまり、トナー供給ローラ24の発泡体38の平均発泡セル径は、発泡体38の表面においてはトナーの初期凝集度に合わせた大きさとし、表面より内側においてはトナー凝集度の経時変化を考慮した大きさとするのがよい。
【0094】
このように、本実施の形態においては、表面の平均発泡セル径よりも内側の平均発泡セル径が大きいトナー供給ローラ24を使用することによって、長期間に亘(わた)って、印刷濃度の低下のない良好な印刷画像を得ることが可能となる。
【0095】
なお、前記第1〜第3の実施の形態においては、本発明を電子写真方式のカラープリンタに適応した例について説明したが、本発明は、モノクロプリンタ、複写機等の電子写真方式を用いた現像装置及び画像形成装置にも用いることができる。
【0096】
また、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨に基づいて種々変形させることが可能であり、それらを本発明の範囲から排除するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0097】
【図1】本発明の第1の実施の形態におけるトナーの凝集度とトナー供給ローラの発泡体の平均発泡セル径との関係についての実験結果を示す図である。
【図2】本発明の第1の実施の形態における画像形成装置の概略構成図である。
【図3】本発明の第1の実施の形態における現像装置の現像ローラ及びトナー供給ローラを示す図である。
【図4】本発明の第1の実施の形態におけるトナー供給ローラの平均発泡セル径の測定方法を示す図である。
【図5】本発明の第2の実施の形態における現像装置の現像ローラ及びトナー供給ローラを示す図である。
【図6】本発明の第2の実施の形態におけるカブリと喰い込み距離との関係についての実験結果を示す図である。
【図7】本発明の第2の実施の形態における発泡体厚さ、喰い込み距離及び応力との関係についての実験結果を示す第1の図である。
【図8】本発明の第2の実施の形態における発泡体厚さ、喰い込み距離及び応力との関係についての実験結果を示す第2の図である。
【図9】本発明の第3の実施の形態におけるトナー供給ローラの発泡セルを示す図である。
【図10】本発明の第3の実施の形態における印刷枚数、画像濃度及びトナーの凝集度の関係についての実験結果を示す第1の図である。
【図11】本発明の第3の実施の形態における印刷枚数、画像濃度及びトナーの凝集度の関係についての実験結果を示す第2の図である。
【図12】本発明の第3の実施の形態における平均発泡セル径と摩耗量との関係についての実験結果を示す図である。
【図13】本発明の第3の実施の形態における平均発泡セル径と印刷枚数との関係についての実験結果を示す図である。
【符号の説明】
【0098】
10 画像形成装置
11 感光体ドラム
14 現像装置
21 現像ローラ
23 トナー
24 トナー供給ローラ
38 発泡体
【技術分野】
【0001】
本発明は、現像装置及び画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、電子写真方式のプリンタ等の画像形成装置においては、帯電、露光、現像、転写、定着及びクリーニングの各プロセスによって画像を形成することがよく知られている。これらのプロセスのうちの現像プロセスでは、静電潜像担持体としての感光体ドラムにトナー担持体である現像ローラを接触させ、該現像ローラに電圧を印加することによって、前記感光体ドラム上の静電潜像を現像する、非磁性1成分トナーを用いた接触型の現像装置が、小型化及び低価格化の利点から、よく使われている。
【0003】
このような現像装置には、現像ローラに圧接させて、該現像ローラ上に現像剤としてのトナーの薄層を形成するためのトナー規制ブレードと、前記現像ローラにトナーを供給するための発泡体製の供給ローラとが設置されている。トナーは、まず、供給ローラに供給され、次に、現像ローラから感光体ドラムに供給される。この場合、トナーは、供給ローラの外周面に形成されている発泡体の気泡に積載され、供給ローラの回転に従って現像ローラへ送られる。このとき、供給ローラの表面と現像ローラの表面とがトナーを介して擦られることによってトナーが摩擦帯電され、帯電したトナーは現像ローラに引き付けられて付着する。
【0004】
このような現像装置において、現像ローラへのトナーの搬送能力を均一にするために、供給ローラの発泡体のセル径をトナー平均粒子径の1/2より大きく、10倍以下とする技術が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開平10−48940号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前記従来の現像装置においては、流動性の高いトナーを用いると、濃度ムラや、非画像部のカブリが生じる場合があった。近年、例えば、1200〔dpi〕以上の高解像度化の要求が強く、このような要求に対応するために、トナーの流動性の向上が必要とされている。流動性の高いトナーは、粒子同士の凝集が少ないため、現像プロセスにおいて、細線の再現や孤立ドットの再現に有利である。流動性の高いトナーは、感光体ドラム表面との物理的吸着力も小さく、転写プロセスにおいても、白抜けなどが発生し難くなっている。しかし、流動性の高いトナーを用いると、濃度ムラが生じたり、非画像部にカブリが生じたりしやすくなる。
【0006】
本発明は、前記従来の現像装置の問題点を解決して、供給部材の発泡体の平均発泡セル径をトナーの凝縮度に応じて定めることにより、像担持体の非画像部に付着するトナーの量を減少させることができ、濃度ムラやカブリが生じることのない現像装置及び画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
そのために、本発明の現像装置においては、静電潜像を担持する像担持体にトナーを供給することによって現像を行うトナー担持体と、該トナー担持体に当接して回転することによってトナーを前記トナー担持体に供給する発泡体を備える供給部材とを有する現像装置であって、前記トナーの凝集度をa〔%〕、供給部材の発泡体の平均発泡セル径をb〔μm〕としたとき、10≦a≦50、かつ、2×a≦b≦3×aの関係を満たす。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、現像装置は、供給部材の発泡体の平均発泡セル径をトナーの凝縮度に応じて定める。これにより、像担持体の非画像部に付着するトナーの量を減少させることができ、濃度ムラやカブリが生じることを防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0010】
図2は本発明の第1の実施の形態における画像形成装置の概略構成図である。
【0011】
図において、10は画像形成装置であり、画像形成ユニットとしての画像形成部20及び定着装置30を有する。ここで、前記画像形成装置10は、例えば、プリンタ、ファクシミリ機、複写機等であり、電子写真方式によって、印刷用紙、封筒、OHP(Over Head Projector)シート等の記録媒体上にモノクロやカラーの画像を形成するようになっている。そして、前記定着装置30はトナー像を記録用紙26に定着させる。なお、前記画像形成装置10は、モノクロ画像を形成するものであってもよく、カラー画像を形成するものであってもよいが、本実施の形態において、カラー画像を形成するカラープリンタであるものとして説明する。
【0012】
この場合、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)及びブラック(K)の各色に対応する4つの画像形成部20が記録用紙26の搬送路に沿って、搬送方向(図における左方向)に順次並ぶように配設される。なお、4つの画像形成部20の各々は、基本的に同一の構造を有するので、ここでは、そのうちの1つについて説明する。
【0013】
前記画像形成部20は、ドラム状に形成され、表面に有機感光体を用いた像担持体としての感光体ドラム11、並びに、該感光体ドラム11の周囲に配設された帯電ローラ12、露光装置13、現像装置14及び転写装置15を有する。なお、前記帯電ローラ12、現像装置14及び転写装置15は、感光体ドラム11の表面に接触又は圧接するように配設されている。また、クリーニングブレード16が、感光体ドラム11の表面に残留しているトナーを掻(か)き取って処理するために、感光体ドラム11の表面に接触して設けられている。
【0014】
そして、前記露光装置13は、例えば、LED(Light Emitting Diode)ヘッドを備え、画像信号に対応した光を感光体ドラム11の表面に照射し、該表面に静電潜像を形成する。
【0015】
また、前記現像装置14は、印刷時に感光体ドラム11に接触するトナー担持体としての現像ローラ21と、トナーカートリッジ22から補充されたトナーを帯電させ、現像ローラ21に供給する供給部材としてのトナー供給ローラ24と、現像ローラ21の表面に接触してトナー供給ローラ24から供給されたトナーを薄層化する層規制部材としての層規制ブレード25とを有する。なお、図において23は、トナーカートリッジ22内に充填(てん)されたトナーを示している。
【0016】
さらに、前記転写装置15は、感光体ドラム11に接触し、記録用紙26にトナー像を転写する転写ベルト31と、該転写ベルト31に電圧を印加する転写ローラ32と、転写ベルト31の最下流に配設され、転写ベルト31をクリーニングするためのクリーニングブレード34とを有する。
【0017】
なお、記録用紙26の搬送路における4つの画像形成部20の下流側には、定着装置30が配設されている。
【0018】
また、前記感光体ドラム11、帯電ローラ12、露光装置13、現像ローラ21、トナー供給ローラ24、転写ローラ32、駆動ローラ33a、33b及び定着装置30の動作は、図示されない制御部によって制御される。該制御部は、あらかじめ決められたタイミングで、図示されない電源から直流の高電圧を帯電ローラ12、転写ローラ32、現像ローラ21及びトナー供給ローラ24に印加する。また、前記感光体ドラム11、帯電ローラ12、駆動ローラ33a、33b、現像ローラ21及びトナー供給ローラ24は図示されない駆動モータによって回転駆動する。
【0019】
次に、本実施の形態におけるトナーについて説明する。
【0020】
本発明の発明者は、研究を重ねた結果、トナーの流動性とトナー供給ローラの発泡体セル径がカブリに影響を与えていることを見出した。以下にトナー流動性とトナー供給ローラの発泡体セル径との関係について詳細に調べた結果を説明する。
【0021】
本実施の形態におけるトナーは、結着樹脂としてポリエステル、着色剤としてカーボンブラック、銅フタロシアニン顔料(C.I.Pigment Blue 15)、キナクリドン系顔料(C.I.Pigment Red 122)、C.I.Pigment Yellow 185等を用いた粉砕トナーである。また、トナーの堆積平均粒子径は5.8〔μm〕とし、流動化剤及び帯電性をコントロールする目的で添加剤を外添している。
【0022】
添加剤としては、例えば、酸化チタン、アルミナ、シリカ等があり、さらに、該シリカはシリコーンオイル処理やジシラザン処理等を施したものがある。添加剤の一次粒子径としては、7〔nm〕、12〔nm〕、14〔nm〕、21〔nm〕、40〔nm〕等のものがある。これらの添加剤を組み合わせ、ターブラミキサーやヘンシェルミキサーによってトナーと混合し、外添する。これらの添加剤の組み合わせ条件や混合条件によって、所望の流動性を持ったトナーを得ることができる。例えば、小粒径の添加剤量を多くすると、トナーの流動性を上げることができる。
【0023】
本実施の形態において、トナーの流動性の指標となる凝集度は、MULTI TESTER MT−1001(株式会社セイシン企業製)を用いて、以下(1)〜(4)の方法によって測定した。なお、測定環境は、23〔℃〕、50〔%〕とし、測定するトナーはこの環境下に24時間以上放置した。
(1) トナーを精密秤によって2.0〔g〕量り取る。
(2) 測定器に、上から、100メッシュ(開き目150〔μm〕)、200メッシュ(開き目75〔μm〕)、400メッシュ(開き目38〔μm〕)の篩(ふるい)を重ねてセットする。
(3) 2.0〔g〕のトナーを静かに100メッシュの篩の上に載せ、振幅1.0〔mm〕で90秒間振動させる。
(4) 各篩の上に残ったトナー量を精密秤によって静かに測定する。
【0024】
トナーの凝集度aは、以下の式(1)によって求めることができる。
a=x+y+z〔%〕 ・・・式(1)
ここで、
x=(100メッシュ上に残ったトナー量)〔g〕/2.0×100
y=0.6×(200メッシュ上に残ったトナー量)〔g〕/2.0×100
z=0.2×(400メッシュ上に残ったトナー量)〔g〕/2.0×100
である。
【0025】
なお、トナーの凝集度aが小さいほどトナー流動性が高く、トナー同士の凝集力や壁面への付着力が小さい。
【0026】
本実施の形態においては、凝集度が10〔%〕以上で50〔%〕以下のトナーを用いた。トナーの凝集度が10〔%〕より小さい場合、非常に流動性が高く、さらさらとしたトナーとなるので、現像装置14内からトナーが漏れ出さないようにシールすることが困難である。また、トナーの凝集度が50〔%〕より大きい場合、細線や孤立ドットの再現が難しく、本来の課題である流動性の高いトナーでの画質改善という目的から外れてしまう。
【0027】
次に、本実施の形態における現像装置14について詳細に説明する。
【0028】
図3は本発明の第1の実施の形態における現像装置の現像ローラ及びトナー供給ローラを示す図である。
【0029】
層規制ブレード25は、ばね性を備える厚さ0.08〔mm〕のSUS304の金属板を図に示されるようにL字型に成形した部材であり、そのエッジ部が現像ローラ21の表面に圧接するように設置されている。
【0030】
また、現像ローラ21は、金属製のシャフト35及び該シャフト35の外周に取り付けられた弾性体36を有する。本実施の形態では、直径12〔mm〕の金属製のシャフト35の外周に、弾性体36として肉厚4〔mm〕、ゴム硬度70度(アスカーC)の半導電性のウレタンゴムを取り付け、弾性体36の表面層には摩擦係数、粗さ、帯電特性等を調整する目的で、所定の処理が施されている。
【0031】
さらに、トナー供給ローラ24は、金属製のシャフト37及び該シャフト37の外周に取り付けられた発泡体38を有する。本実施の形態では、直径6〔mm〕の金属製のシャフト37の外周に、発泡体38として、肉厚5〔mm〕、硬度50度(アスカーF)のウレタン発泡体が取り付けられている。また、トナー供給ローラ24は、現像ローラ10に対して圧接するように配設され、その圧力は0.6〔N/cm〕とされている。
【0032】
そして、本実施の形態においては、平均発泡セル径が20〜200〔μm〕の発泡体38を有するトナー供給ローラ24を用意して評価を行った。発泡体38の発泡セル径は、発泡剤の量や種類の変更、加硫時間や温度をコントロールする等の方法によって、所望の値を得ることができる。例えば、発泡セル径を大きくするには、発泡剤の量を増やす、加硫時間を長くする、加硫温度を高くする等の方法がある。
【0033】
次に、本実施の形態における平均発泡セル径の測定方法について説明する。
【0034】
図4は本発明の第1の実施の形態におけるトナー供給ローラの平均発泡セル径の測定方法を示す図である。
【0035】
まず、デジタルマイクロスコープVHX−200(キーエンス社製)を用いてトナー供給ローラ24の表面の画像を撮影し、無作為に50個の孔(あな)を取り出して各孔の面積を測定する。なお、図4(a)における41は、トナー供給ローラ24の表面の微小部分を示し、図4(b)は該微小部分41を拡大した状態を示している。図4(b)において、1、2、3・・・の数字が付された部分は孔である。各孔の面積を測定には付属の画像処理ソフトを使用した。この際、画像にすべての姿が写っている孔のみを測定の対象とした。
【0036】
このようにして測定した50個の孔の面積から、円相当径(その面積に相当する円の直径)を求め、その平均値を平均発泡セル径とした。なお、図4(c)における42は、測定の対象となった孔であり、S1は孔42の面積である。また、43は孔42と等しい面積S1を備える円であり、44は円43の直径、すなわち、孔42の円相当径である。
【0037】
次に、前記構成の画像形成装置10の動作について説明する。
【0038】
画像形成装置10の制御部は、図示されない上位装置、例えば、パーソナルコンピュータ等からの印刷命令が入力されると、感光体ドラム11を駆動モータによって、図2において矢印で示される方向に一定の周速度で回転させる。そして、感光体ドラム11の表面に接触又は圧接するように配設されている帯電ローラ12に直流電圧を印加して、感光体ドラム11の表面を一様かつ均一に帯電させる。本実施の形態では、帯電ローラ12に−1150〔V〕の直流電圧を印加した。このときの感光体ドラム11の表面の帯電電位は約−650〔V〕であった。
【0039】
次に、露光プロセスでは、露光装置13によって画像信号に対応した光が感光体ドラム11の表面に照射され、該表面に静電潜像が形成される。
【0040】
トナーカートリッジ22から補充されたトナーは、図示されないトナー供給ローラ用高圧電源によって電圧が印加されたトナー供給ローラ24の回転により、現像ローラ21に供給される。本実施の形態においては、トナー供給ローラ24に−330〔V〕の直流電圧が印加される。現像ローラ21とトナー供給ローラ24とは同じ方向に回転しており、トナー供給ローラ24の周速は現像ローラ21の周速の0.6倍となっている。現像ローラ21は、トナーを吸着して、矢印で示される方向に搬送する。すると、回転方向の下流側で現像ローラ21に圧接し、図示されない高圧電源によって−330〔V〕の直流電圧が印加された層規制ブレード25によって、現像ローラ21の表面にトナー層の薄層が形成される。本実施の形態では、層規制ブレード25と現像ローラ21との接触圧力は約0.8〔N/cm〕に設定されている。
【0041】
層規制ブレード25を通過したトナーは、さらに、現像ローラ21の矢印で示される方向への回転運動によって搬送され、感光体ドラム11上に形成された静電潜像を現像する。本実施の形態においては、反転現像であるものとし、感光体ドラム11の図示されない導電性支持体と現像ローラ21との間には、図示されない高圧電源によってバイアス電圧が印加されている。この場合、現像ローラ21には、−200〔V〕の直流電圧が印加されている。そして、現像ローラ21と感光体ドラム11との間には、感光体ドラム11に形成された静電潜像に伴う電気力線が発生する。このため、現像ローラ21上の帯電したトナーは、静電気力によって感光体ドラム11上に付着し、前記静電潜像がトナーにより現像され、トナー像が形成される。
【0042】
一方、駆動ローラ33a及び33bの回転によって転写ベルト31が矢印で示される方向に回転し、図示されない給紙カセットから供給された記録用紙26は、転写ベルト31によって転写部へと送られる。感光体ドラム11に対向して設けられた転写ローラ32に図示されない高圧電源によって電圧が印加され、記録用紙26に感光体ドラム11上に形成されたトナー像が転写される。
【0043】
その後、記録用紙26は、更に転写ベルト31によって定着装置30へ搬送され、熱及び圧力を受けてトナーが溶融し、溶融したトナーが記録用紙26の繊維間に浸透し、記録用紙26への定着が行われる。トナー像が定着された記録用紙26は、画像形成装置10の外部へ送出される。
【0044】
一方、転写後の感光体ドラム11の表面には若干のトナーが残留する場合があるが、この残留トナーは、クリーニングブレード16によって除去される。こうして、感光体ドラム11は繰り返し利用される。
【0045】
次に、本実施の形態におけるトナーの凝集度とトナー供給ローラ24の発泡体38の平均発泡セル径との関係について説明する。
【0046】
図1は本発明の第1の実施の形態におけるトナーの凝集度とトナー供給ローラの発泡体の平均発泡セル径との関係についての実験結果を示す図である。
【0047】
本実施の形態では、凝集度が10〜50〔%〕のトナーと、発泡体38の平均発泡セル径が20〜200〔μm〕のトナー供給ローラ24を用い、0〔%〕濃度印刷時にカブリの発生が小さく、100〔%〕濃度印刷時にマクベス濃度が1.2以上となる良好な印刷結果が得られる範囲を実験によって確認した。
【0048】
カブリの評価においては、0〔%〕濃度印刷時の途中で画像形成装置10を停止させ、現像後転写前の感光体ドラム11上にあるトナーを粘着テープ(住友スリーエム社製スコッチメンディングテープ)に付着させた。そして、トナーの付着した粘着テープを記録用紙26に貼(は)り付け、粘着テープだけを記録用紙26に貼り付けたものとの色差ΔEを、分光測色計(コニカミノルタ製CM2600d)によって測定した。色差ΔEの値が小さいことは、カブリが少ないことを示している。なお、米国標準局によって色差ΔEの評価基準は、以下のように設定されている。
ΔE 0〜0.5 trace (微かに感じられる。)
ΔE 0.5〜1.5 slight (わずかに感じられる。)
ΔE 1.5〜3.0 noticeable (かなり感じられる。)
ΔE 3.0〜6.0 appreceable(目立って感じられる。)
ΔE 6.0〜12 much (大きく感じられる。)
ΔE 12〜 very much (非常に大きく感じられる。)
つまり、ΔEの値が0.5以下であれば同色とし、0.5〜1.5の範囲であれば、わずかな違いはあるが、異色と見なすほどではないものとする。本発明の発明者は、感光体ドラム11上のトナーを粘着テープによって採取し、色差の評価を行ったが、感光体ドラム11上のトナーはすべて記録用紙26に転写されるわけではない。該記録用紙26の種類によってもトナーの転写率は変化する。しかし、前述のような評価の方法によっても、ΔEの値が1.0以下であれば、印刷後の記録用紙26媒体上でもΔEの値が必ず1.0以下となり、印刷品質上問題のないレベルと判断する。
【0049】
また、印刷濃度が1.2以上になると、階調(面積階調)印刷を行った場合の画像品位を向上させることができる。すなわち、ベタ印刷時の印刷濃度が1.2未満で階調印刷を行うと各画素の再現性が著しく低下し、適正な階調濃度の表現を行うことができない状態となり、掠(かす)れが発生してしまう。そこで、前記印刷濃度を1.2以上にすると、階調印刷を行っても画像品位を向上させることができ、人間の目の識別範囲とされる150階調の精度を表現することができる。
【0050】
本実施の形態におけるトナーの凝集度とトナー供給ローラ24の発泡体38の平均発泡セル径との関係についての実験の結果は、図1に示されるようになった。
【0051】
図から、トナーの凝集度aが小さい場合には、トナー供給ローラ24の発泡体38の平均発泡セル径bが小さくても濃度を確保することができるが、トナーの凝集度aが大きい場合には、平均発泡セル径bを大きくしないと濃度を確保することができないことが分かる。これは、凝集度aの大きなトナーは、セル壁面への付着力やトナー粒子間の凝集力が強くなるので、セル内にトナーが存在しても、表層に近く、セル壁面に直接接触していない一部のトナーしか現像ローラ21に供給されないためである。そのため、セル径が小さく、セル壁面とトナーとの接触面積が大きくなると、トナーの供給量不足となり、濃度の低下や掠れが発生する。
【0052】
図に示される実験の結果から、トナーの凝集度a〔%〕と、トナー供給ローラ24の発泡体38の平均発泡セル径b〔μm〕との関係を以下の式(2)のように設定することによって、100〔%〕濃度印刷時の濃度を1.2以上に確保することができることが分かる。
2×a≦b ・・・式(2)
しかし、トナー供給ローラ24の発泡体38の平均発泡セル径bが大きければよいわけではない。該平均発泡セル径bが大きくなると、それに従ってセルの深さも大きくなる。そのため、セル内に積載されるトナー量が多くなり、現像ローラ21とトナー供給ローラ24とが接触してトナーに摩擦帯電を与える領域において、トナーに十分な帯電を与えることができなくなってしまう。すると、帯電が不十分なトナーや、トナー同士の摩擦によって逆極性に帯電したトナーがカブリとなって現れる。
【0053】
そこで、トナーの凝集度a〔%〕と、トナー供給ローラ24の発泡体38の平均発泡セル径b〔μm〕との関係を以下の式(3)のように設定することによって、感光体ドラム11上の非画像部に付着するカブリトナーを少なくすることができ、印刷画像上のカブリを改善することが可能となる。
b≦3×a ・・・式(3)
なお、本実施の形態においては、印刷の解像度を1200〔dpi〕とした場合について説明したが、印刷の解像度を1200〔dpi〕を超える値、例えば、1400〔dpi〕とした場合でも、ほぼ同様の結果を得ることができた。
【0054】
このように、本実施の形態においては、トナーの凝集度a〔%〕と、トナー供給ローラ24の発泡体38の平均発泡セル径b〔μm〕との関係を前記式(2)のように設定することによって、1200〔dpi〕以上の高解像度の印刷においても、100〔%〕濃度印刷時の濃度を1.2以上確保することができる。
【0055】
また、前記トナーの凝集度a〔%〕と平均発泡セル径b〔μm〕との関係を前記式(3)のように設定することによって、感光体ドラム11上の非画像部に付着するカブリトナーを少なくすることができ、印刷画像上のカブリを改善することが可能となる。
【0056】
次に、本発明の第2の実施の形態について説明する。なお、第1の実施の形態と同じ構造を有するものについては、同じ符号を付与することによって、その説明を省略する。また、前記第1の実施の形態と同じ動作及び効果についても、その説明を省略する。
【0057】
トナーの凝集度a〔%〕と、トナー供給ローラ24の発泡体38の平均発泡セル径b〔μm〕との関係を前記第1の実施の形態において説明したように設定しても、連続印刷を行った場合に印刷枚数が多くなってくると、カブリが起きることがある。本発明の発明者は、研究を重ねた結果、現像ローラ21とトナー供給ローラ24とを圧接するように配置している場合における喰い込み距離が影響を与えていることを見出した。そこで、本実施の形態においては、現像ローラ21とトナー供給ローラ24と喰い込み距離の影響について詳細に調べた結果を説明する。
【0058】
本実施の形態においては、凝集度が30〔%〕のトナーを使用した。なお、本実施の形態における画像形成装置10の構成については、前記第1の実施の形態と同様であるので、その説明を省略する。
【0059】
次に、本実施の形態における現像装置14について説明する。
【0060】
図5は本発明の第2の実施の形態における現像装置の現像ローラ及びトナー供給ローラを示す図である。
【0061】
本実施の形態においては、平均発泡セル径が70〔μm〕の発泡体38を有するトナー供給ローラ24を用意して評価を行った。発泡体38の発泡セル径は、発泡剤の量や種類の変更、加硫時間や温度をコントロールする等の方法によって、所望の値を得ることができる。例えば、発泡セル径を大きくするには、発泡剤の量を増やす、加硫時間を長くする、加硫温度を高くする等の方法がある。
【0062】
図において、cは現像ローラ21とトナー供給ローラ24との喰い込み距離である。本実施の形態においては、喰い込み距離cの値を、0.2〔mm〕、0.5〔mm〕、1.0〔mm〕、1.5〔mm〕、2.0〔mm〕、2.5〔mm〕及び3.0〔mm〕とした。なお、喰い込み距離cは、現像ローラ21の半径をr1 、トナー供給ローラ24の半径をr2 、現像ローラ21とトナー供給ローラの軸間距離をeとすると、以下の式(4)によって求めることができる。
c=(r1 +r2 )−e ・・・式(4)
なお、本実施の形態における現像装置14のその他の点の構成及び平均セル径の測定方法については、前記第1の実施の形態と同様であるので、その説明を省略する。
【0063】
次に、本実施の形態におけるカブリと喰い込み距離cとの関係について説明する。
【0064】
図6は本発明の第2の実施の形態におけるカブリと喰い込み距離との関係についての実験結果を示す図、図7は本発明の第2の実施の形態における発泡体厚さ、喰い込み距離及び応力との関係についての実験結果を示す第1の図、図8は本発明の第2の実施の形態における発泡体厚さ、喰い込み距離及び応力との関係についての実験結果を示す第2の図である。
【0065】
本実施の形態においては、凝集度が30〔%〕のトナーと、発泡体38の平均発泡セル径が70〔μm〕のトナー供給ローラ24を用い、該トナー供給ローラ24と現像ローラ21との喰い込み距離cの値を0.2〔mm〕、0.5〔mm〕、1.0〔mm〕、1.5〔mm〕、2.0〔mm〕、2.5〔mm〕及び3.0〔mm〕と変化させ、A4縦方向の記録用紙26を30k枚印刷後の現像装置14でカブリを評価した。なお、該カブリの評価の方法については、前記第1の実施の形態と同様であるので、その説明を省略する。
【0066】
本実施の形態におけるカブリを示す色差ΔEの値と、喰い込み距離cとの関係についての実験の結果は、図6に示されるようになった。
【0067】
図6から、喰い込み距離cの値が小さい場合には、連続印刷時にカブリが大きくなって印刷品質が低下していることが分かる。本実施の形態においては、現像ローラ21とトナー供給ローラ24とが圧接されて配設され、両者の周速度に差がありながら回転しているので、印刷枚数が多くなると摩耗によってトナー供給ローラ24の径が小さくなる。そのため、30k枚印刷後の状態では、現像ローラ21とトナー供給ローラ24との喰い込み距離cが初期に比べて小さくなっており、現像ローラ21とトナー供給ローラ24との接触領域が小さくなり、十分な摩擦帯電が行われなくなったことが原因である。したがって、摩耗しても十分にトナー23に摩擦帯電を与えられる接触領域を確保することができるように、喰い込み距離cの値を設定する必要がある。
【0068】
そこで、現像ローラ21とトナー供給ローラ24との喰い込み距離c〔mm〕の値を、以下の式(5)のように設定することによって、30k枚連続印刷後でも、カブリの発生しない良好な印刷画像を得ることができる。
1.0〔mm〕≦c ・・・式(5)
しかし、喰い込み距離cの値をあまり大きくすると、現像ローラ21とトナー供給ローラ24との摩擦力によって、現像装置14を駆動するためのトルクが大きくなってしまう。図5に示されるようなトナー供給ローラ24の発泡体38の厚さ、すなわち、発泡体層厚さdに対して、喰い込み距離cが小さい場合には、現像ローラ21とトナー供給ローラ24との間に働く力は喰い込み距離cにほぼ比例して増加する。しかし、喰い込み距離cが発泡体層厚さdの半分を超えると、発泡体セルが十分に圧縮されてしまっているので、喰い込み距離cを大きくするためには非常に大きな応力が掛かることになる。
【0069】
本実施の形態におけるトナー供給ローラ24の発泡体層厚さdを変化させて応力の値を測定した結果は、図7に示されるようになった。また、発泡体層厚さdと喰い込み距離cとの比に対する応力の変化は、図8に示されるようになった。
【0070】
図7及び8に示される実験の結果から、喰い込み距離cが発泡体層厚さeの半分を超えると、応力が急激に高くなることが分かる。そこで、現像ローラ21とトナー供給ローラ24との喰い込み距離c〔mm〕の値とトナー供給ローラ24の発泡体層厚さd〔mm〕との関係を以下の式(6)のように設定することによって、現像装置14を駆動するためのトルクの極端な上昇を防止することができる。
c≦0.5×d ・・・式(6)
このように、本実施の形態においては、現像ローラ21とトナー供給ローラ24の喰い込み距離c〔mm〕を前記式(5)のように設定することによって、30k枚連続印刷後でも、カブリの発生しない良好な印刷画像を得ることが可能となる。
【0071】
また、現像ローラ21とトナー供給ローラ24との喰い込み距離c〔mm〕の値とトナー供給ローラ24の発泡体層厚さd〔mm〕との関係を前記式(6)のように設定することによって、現像装置14を駆動するためのトルクの極端な上昇を防止することができる。
【0072】
次に、本発明の第3の実施の形態について説明する。なお、第1及び第2の実施の形態と同じ構造を有するものについては、同じ符号を付与することによって、その説明を省略する。また、前記第1及び第2の実施の形態と同じ動作及び効果についても、その説明を省略する。
【0073】
トナーの凝集度a〔%〕とトナー供給ローラ24の発泡体38の平均発泡セル径b〔μm〕との関係を前記第1の実施の形態において説明したように設定し、さらに、現像ローラ21とトナー供給ローラ24の喰い込み距離c〔mm〕を前記第2の実施の形態において説明したように設定しても、連続印刷を行った場合に印刷枚数が多くなってくると、高濃度印刷において濃度低下が起こることがある。
【0074】
本発明の発明者は、研究を重ねた結果、トナーの凝集度が印刷枚数を重ねることで大きくなる場合があることを見出した。それは、特に現像ローラ21又はトナー供給ローラ24にシリコーン材料を用いた場合に発生している。トナーの凝集度が大きくなったトナーを分析することによって、シリコーンゴムの低分子成分であるオリゴマーが現像ローラ21又はトナー供給ローラ24より沁(し)み出し、現像装置14内のトナーに混入することが原因であると分かった。
【0075】
そこで、本実施の形態においては、連続印刷によってトナーの凝集度が変化しても濃度低下が発生することのないトナー供給ローラ24について説明する。なお、本実施の形態においては、初期のトナーの凝集度が20〔%〕のトナーを使用した。また、本実施の形態における画像形成装置10の構成については、前記第1及び第2の実施の形態と同様であるので、その説明を省略する。
【0076】
次に、本実施の形態におけるトナー供給ローラ24について説明する。
【0077】
図9は本発明の第3の実施の形態におけるトナー供給ローラの発泡セルを示す図である。
【0078】
本実施の形態においては、トナー供給ローラ24として、発泡体38の平均発泡セル径が50〔μm〕であるものと、発泡体38表面の平均発泡セル径が50〔μm〕であって、表面よりも内側の平均発泡セル径が100〔μm〕であるものとを使用した。なお、図9(a)における45は、トナー供給ローラ24の発泡体38表面の微小部分を示し、図9(b)は該微小部分45を拡大した状態を示している。
【0079】
発泡体38の発泡セル径は、発泡剤の量や種類、加硫時間や温度、成形方法などによってコントロールすることができる。図に示されるような発泡体38のように、表層と内部で発泡セル径が異なるようにするためには、例えば、発泡体38を発泡させる際に型の中で発泡させる型成形の方法を使う。その場合、型の表面状態によって発泡体38の表面状態をコントロールすることができる。
【0080】
また、発泡体38の外周面で発泡セル径を小さくするためには、型成形において加硫の際に、外側の温度を低く、内側であるシャフト35を加熱して温度を高くすることで内側の発泡セル径を大きくし、外側の発泡セル径を小さくすることが可能である。
【0081】
なお、本実施の形態においては、現像ローラ21とトナー供給ローラ24との喰い込み距離cの値は1.5〔mm〕であるものとした。なお、平均発泡セル径の測定方法については、前記第1の実施の形態と同様であるので、説明を省略する。
【0082】
次に、本実施の形態における印刷枚数と画像濃度との関係について説明する。
【0083】
図10は本発明の第3の実施の形態における印刷枚数、画像濃度及びトナーの凝集度の関係についての実験結果を示す第1の図、図11は本発明の第3の実施の形態における印刷枚数、画像濃度及びトナーの凝集度の関係についての実験結果を示す第2の図、図12は本発明の第3の実施の形態における平均発泡セル径と摩耗量との関係についての実験結果を示す図、図13は本発明の第3の実施の形態における平均発泡セル径と印刷枚数との関係についての実験結果を示す図である。
【0084】
本実施の形態においては、凝集度が20〔%〕のトナーと、発泡体38の平均発泡セル径が50〔μm〕のトナー供給ローラ24を用いて連続評価を行った。初期、並びに、A4縦方向の記録用紙26を10k枚印刷後、20k枚印刷後及び30k枚印刷後の時点で、それぞれ、100〔%〕印刷における画像濃度の測定とトナーの凝集度の測定とを行った。その結果は、図10に示されるようになった。
【0085】
図10から、連続印刷を行う間にトナーの凝集度aが大きくなり、それに伴い、画像濃度が低下していることが分かる。つまり、印刷枚数が増加することによってトナーの凝集度aが増加したために、初期の凝集度aに合わせて設定した平均発泡セル径を備えるトナー供給ローラ24ではトナーの搬送能力が不足し、画像濃度が低下したと考えられる。また、30k枚印刷後に、トナー供給ローラ24の発泡体38の厚さを測定すると、初期で5〔mm〕あったものが4.5〔mm〕となっており、現像ローラ21との摩擦によって、発泡体38が0.5〔mm〕摩耗していることが分かった。
【0086】
このような結果を踏まえて、発泡体38の表面の平均発泡セル径が50〔μm〕であり、表面よりも内側における平均発泡セル径が100〔μm〕であるトナー供給ローラ24を準備して連続評価を試みた。そして、初期、並びに、A4縦方向の記録用紙26を10k枚印刷後、20k枚印刷後及び30k枚印刷後の時点で、それぞれ、100〔%〕印刷における画像濃度の測定とトナーの凝集度の測定とを行った。その結果は、図11に示されるようになった。
【0087】
図11から、連続印刷を行う間にトナーの凝集度aが大きくなっているが、画像濃度は低下していないことが分かる。また、30k枚印刷後のトナー供給ローラ24の発泡体38の厚さを測定すると、初期で5〔mm〕あったものが4.5〔mm〕となっており、現像ローラ21との摩擦によって、発泡体38が0.5〔mm〕摩耗していることが確認された。該発泡体38の平均発泡セル径を測定すると、現像ローラ21との摩耗により表面から0.5〔mm〕が削られたため、内側の発泡セルが露見しており、平均発泡セル径の値は、初期における50〔μm〕から、100〔μm〕へと変化していた。このことから、トナーの凝集度aが低下しても、発泡セル径が大きくなることによって、100〔%〕印刷においても十分な画像濃度を確保することができたことが分かる。
【0088】
前述のように、供給ローラ10の発泡体38は、現像ローラ21との摩耗によって、印刷枚数を重ねる中で削られていく。本実施の形態において、発泡体38の摩耗量と平均発泡セル径との関係を測定した結果は、図12に示されるようになった。
【0089】
図12から、平均発泡セル径の値は、摩耗量が0.2〔mm〕程度までの範囲では50〔μm〕から100〔μm〕へと徐々に変化し、それ以降の範囲では100〔μm〕で一定となることが分かる。供給ローラ24の発泡体38の発泡セルは、そのセル径や深さに分布を持っており、深さが浅い部分の発泡セルは、小さな摩耗量、例えば、100〔mm〕で、露見する。また、深い部分の発泡セルは、摩耗量がその値に達するまで露見しない。そのため、発泡体38の表面層の発泡セルが完全に削れてしまうまでは、平均発泡セル径が徐々に変化し、その後は、深い部分の発泡セルの平均発泡セル径に一致した値となって安定する。
【0090】
本実施の形態においては、A4縦方向の記録用紙26を30k枚印刷後に、供給ローラ24の発泡体38は、0.5〔mm〕だけ摩耗していた。印刷枚数と摩耗量とが比例関係にあると考えて、印刷枚数と平均発泡セル径との関係を測定した結果は、図13に示されるようになった。なお、図13における斜線で示される領域は、印刷枚数とトナーの凝集度の変化による発泡セル径が良好な範囲を示している。
【0091】
図13から、印刷枚数を重ねてトナーの凝集度が変化しても、発泡セル径が良好な範囲にあることが分かる。これにより、画像濃度の低下が発生せず、良好な印刷品質を保つことが可能となる。
【0092】
以上の結果により、例えば、シリコーン製ローラのオリゴマー等の影響によって、経時でトナーの凝集度が大きくなることが予想される現像装置14では、トナー供給ローラ24の発泡体38の摩耗を考慮し、トナー供給ローラ24の発泡体38の表面層のセル径を小さくし、表面よりも内側の平均発泡セル径を大きくすることによって、トナーの凝集度が変化しても画像濃度が低下せず、良好な印刷品質を保つことができる。
【0093】
つまり、トナー供給ローラ24の発泡体38の平均発泡セル径は、発泡体38の表面においてはトナーの初期凝集度に合わせた大きさとし、表面より内側においてはトナー凝集度の経時変化を考慮した大きさとするのがよい。
【0094】
このように、本実施の形態においては、表面の平均発泡セル径よりも内側の平均発泡セル径が大きいトナー供給ローラ24を使用することによって、長期間に亘(わた)って、印刷濃度の低下のない良好な印刷画像を得ることが可能となる。
【0095】
なお、前記第1〜第3の実施の形態においては、本発明を電子写真方式のカラープリンタに適応した例について説明したが、本発明は、モノクロプリンタ、複写機等の電子写真方式を用いた現像装置及び画像形成装置にも用いることができる。
【0096】
また、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨に基づいて種々変形させることが可能であり、それらを本発明の範囲から排除するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0097】
【図1】本発明の第1の実施の形態におけるトナーの凝集度とトナー供給ローラの発泡体の平均発泡セル径との関係についての実験結果を示す図である。
【図2】本発明の第1の実施の形態における画像形成装置の概略構成図である。
【図3】本発明の第1の実施の形態における現像装置の現像ローラ及びトナー供給ローラを示す図である。
【図4】本発明の第1の実施の形態におけるトナー供給ローラの平均発泡セル径の測定方法を示す図である。
【図5】本発明の第2の実施の形態における現像装置の現像ローラ及びトナー供給ローラを示す図である。
【図6】本発明の第2の実施の形態におけるカブリと喰い込み距離との関係についての実験結果を示す図である。
【図7】本発明の第2の実施の形態における発泡体厚さ、喰い込み距離及び応力との関係についての実験結果を示す第1の図である。
【図8】本発明の第2の実施の形態における発泡体厚さ、喰い込み距離及び応力との関係についての実験結果を示す第2の図である。
【図9】本発明の第3の実施の形態におけるトナー供給ローラの発泡セルを示す図である。
【図10】本発明の第3の実施の形態における印刷枚数、画像濃度及びトナーの凝集度の関係についての実験結果を示す第1の図である。
【図11】本発明の第3の実施の形態における印刷枚数、画像濃度及びトナーの凝集度の関係についての実験結果を示す第2の図である。
【図12】本発明の第3の実施の形態における平均発泡セル径と摩耗量との関係についての実験結果を示す図である。
【図13】本発明の第3の実施の形態における平均発泡セル径と印刷枚数との関係についての実験結果を示す図である。
【符号の説明】
【0098】
10 画像形成装置
11 感光体ドラム
14 現像装置
21 現像ローラ
23 トナー
24 トナー供給ローラ
38 発泡体
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)静電潜像を担持する像担持体にトナーを供給することによって現像を行うトナー担持体と、
(b)該トナー担持体に当接して回転することによってトナーを前記トナー担持体に供給する発泡体を備える供給部材とを有する現像装置であって、
(c)前記トナーの凝集度をa〔%〕、供給部材の発泡体の平均発泡セル径をb〔μm〕としたとき、
10≦a≦50、かつ、
2×a≦b≦3×a
の関係を満たすことを特徴とする現像装置。
【請求項2】
前記トナー担持体と供給部材とは圧接し、
前記トナー担持体と供給部材との食い込み距離をc〔mm〕、前記供給部材の発泡体の厚さをd〔mm〕とすると、
1.0≦c≦0.5×d (ただし、2.0≦d)
の関係を満たす請求項1に記載の現像装置。
【請求項3】
前記供給部材の発泡体は、表面における発泡セル径が内部における発泡セル径よりも小さい請求項1及び2に記載の現像装置。
【請求項4】
前記トナーは1成分トナーである請求項1〜3のいずれか1項に記載の現像装置。
【請求項5】
前記トナー担持体は像担持体に接触する請求項1〜4のいずれか1項に記載の現像装置。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の現像装置を有する画像形成装置。
【請求項1】
(a)静電潜像を担持する像担持体にトナーを供給することによって現像を行うトナー担持体と、
(b)該トナー担持体に当接して回転することによってトナーを前記トナー担持体に供給する発泡体を備える供給部材とを有する現像装置であって、
(c)前記トナーの凝集度をa〔%〕、供給部材の発泡体の平均発泡セル径をb〔μm〕としたとき、
10≦a≦50、かつ、
2×a≦b≦3×a
の関係を満たすことを特徴とする現像装置。
【請求項2】
前記トナー担持体と供給部材とは圧接し、
前記トナー担持体と供給部材との食い込み距離をc〔mm〕、前記供給部材の発泡体の厚さをd〔mm〕とすると、
1.0≦c≦0.5×d (ただし、2.0≦d)
の関係を満たす請求項1に記載の現像装置。
【請求項3】
前記供給部材の発泡体は、表面における発泡セル径が内部における発泡セル径よりも小さい請求項1及び2に記載の現像装置。
【請求項4】
前記トナーは1成分トナーである請求項1〜3のいずれか1項に記載の現像装置。
【請求項5】
前記トナー担持体は像担持体に接触する請求項1〜4のいずれか1項に記載の現像装置。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の現像装置を有する画像形成装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2008−76456(P2008−76456A)
【公開日】平成20年4月3日(2008.4.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−252359(P2006−252359)
【出願日】平成18年9月19日(2006.9.19)
【出願人】(591044164)株式会社沖データ (2,444)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年4月3日(2008.4.3)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年9月19日(2006.9.19)
【出願人】(591044164)株式会社沖データ (2,444)
【Fターム(参考)】
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