説明

現像装置及び画像形成装置

【課題】トナーの消費及び画像濃度の低下を抑制できる現像装置を提供する。
【解決手段】現像剤担持体130から供給されるトナーによりトナー層を形成するトナー担持体150と、現像剤担持体130に第1バイアス電圧V1を印加する第1電圧印加部261と、トナー担持体150に第2バイアス電圧V2を印加する第2電圧印加部262と、トナー担持体150に所定厚さのトナー層が形成される電圧差とするように、第1電圧印加部261及び第2電圧印加部262を制御する印加電圧制御部271と、温度・湿度計測部252と、温度・湿度計測部252により計測された環境温度及び湿度、並びに予め設定された印字率に基づいてトナー担持体150に形成されるトナー層のトナー径を算出するトナー径算出部272と、トナー径算出部272により算出されたトナー径に基づいて電圧差を調整するように印加電圧制御部271に指示する電圧差調整部273と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真方式により形成された静電潜像を現像するための現像装置、及び該現像装置を備える画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、少なくともキャリア及びトナーを含む2成分現像剤を磁力により保持させて現像剤担持体の表面に、2成分現像剤に含まれるキャリアによる磁気ブラシを形成し、磁気ブラシからトナー担持体に供給されるトナーにより、トナー担持体の表面にトナー層を形成し、トナー層から像担持体にトナーを飛翔させることにより、像担持体の表面の静電潜像をトナー画像として現像する、いわゆる、タッチダウン方式(ハイブリッド方式とも言われる。)の現像装置が注目されている。
【0003】
ところで、大径トナーは、帯電性が高く、トナー担持体への付着力が小さいため、現像性が良い。そのため、タッチダウン方式の現像装置においては、大径トナーが選択的に像担持体に現像される選択現像が起きやすい。そのため、連続印刷(印字)を行なうと、小径トナーがトナー担持体に蓄積(残留)して、画像の濃度の低下が生じる。
【0004】
上記のような選択現像による画像の濃度の低下を抑制するために、現像剤担持体に印加されるバイアス電圧とトナー担持体に印加されるバイアス電圧との差(電圧差)を、一定の周期で制御することにより、画像の濃度を補正して維持する処理、いわゆる、キャリブレーションが実行されている。しかし、キャリブレーションの実行周期は、現像効率(生産性)の低下を抑えるために、数百枚の印刷毎に1回程度行なわれるのが一般的であり、キャリブレーション間において、選択現像による画像の濃度の低下は避けられない。
【0005】
そこで、非印字時に、トナー担持体及び現像剤担持体にそれぞれ印加するバイアス電圧の関係を、トナー担持体に付着して残留している小径トナーが現像剤担持体側に引き剥がされて装置内に回収される電圧差とするように制御することにより、トナー担持体の表面に形成されるトナー層を安定に保って、選択現像による濃度の低下や濃度ムラを抑制するようにした現像装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0006】
また、非印字時に、トナー担持体及び現像剤担持体に印加するバイアス電圧を制御して両担持体間に特定の電位差を生じさせることによって、現像性の悪い小径トナーを含む特定のトナー層をトナー担持体の表面に蓄積させ、その後、トナー担持体を停止させて、トナー担持体の表面のトナーを引き剥がして像担持体側に吐き出して廃棄させることにより、小径トナーの蓄積による画像の濃度の低下を抑制するようにした現像装置も提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2005−55840号公報
【特許文献2】特開2005−99663号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、特許文献1に記載される現像装置においては、現像剤担持体側に引き剥がされた小径トナーが装置内に回収されるため、装置内における2成分現像剤中の小径トナーの割合が次第に増える。特に、装置内に新たなトナー補給が行なわれる直前においては、小径トナーの割合が非常に大きくなり、その間の濃度の低下が大きい。
【0009】
また、特許文献2に記載される現像装置においては、トナー担持体の表面から引き剥がされた小径トナーを含むトナーが像担持体側に吐き出されて廃棄されるため、その分だけトナーの無駄な消費が増えると共に、その無駄に消費される量のトナーを補給しなければならず、その結果、ランニングコストが上昇することになる。
【0010】
本発明は、トナーの無駄な消費によるランニングコストの上昇を抑えつつ、小径トナーが蓄積する選択現像による画像の濃度の低下を抑制することができる現像装置を提供することを目的とする。
また、本発明は、前記現像装置を備える画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、少なくともキャリア及びトナーを含む2成分現像剤を磁力により保持させて、2成分現像剤に含まれるキャリアによる磁気ブラシを表面に形成する現像剤担持体と、前記現像剤担持体に対向配置され、前記現像剤担持体から供給されるトナーにより表面にトナー層を形成するトナー担持体と、前記現像剤担持体に第1バイアス電圧を印加する第1電圧印加部と、前記トナー担持体に第2バイアス電圧を印加する第2電圧印加部と、前記第1電圧印加部により印加される第1バイアス電圧と前記第2電圧印加部により印加される第2バイアス電圧との関係を、前記トナー担持体の表面に所定厚さのトナー層が形成される電圧差とするように、前記第1電圧印加部及び第2電圧印加部を制御する印加電圧制御部と、環境温度及び湿度を計測する温度・湿度計測部と、所定回数の現像が終了した非現像時において、前記温度・湿度計測部により計測された環境温度及び湿度、並びに予め設定された印字率に基づいて前記トナー担持体の表面に形成されるトナー層のトナー径を算出するトナー径算出部と、前記トナー径算出部により算出されたトナー径に基づいて、前記電圧差を調整するように前記印加電圧制御部に指示する電圧差調整部と、を備える現像装置に関する。
【0012】
また、前記電圧差調整部による前記電圧差の調整値は、所定の係数×(標準トナー径−前記トナー径算出部により算出されたトナー径)なる式で求められることが好ましい。
【0013】
また、前記現像装置による現像濃度を検出する現像濃度検出部を更に備え、前記電圧差調整部は、所定回数の現像が終了した非現像時において、前記トナー径に基づく前記電圧差の調整前に、前記現像濃度検出部により検出された現像濃度に基づいて、前記電圧差を所定の現像濃度に帰還補正するように前記印加電圧制御部に指示することが好ましい。
【0014】
また、前記電圧差調整部は、前記現像濃度検出部により検出された現像濃度に基づいて帰還補正された電圧差で現像が開始され、現像回数が所定回数超えたときに、前記トナー径に基づく電圧差の調整を実行することが好ましい。
【0015】
また、本発明は、前記現像装置と、表面に静電潜像が形成されると共に、前記現像装置の前記トナー層からトナーの供給を受けて静電潜像にトナー画像が形成される1又は複数の像担持体と、前記像担持体に形成されたトナー画像を直接的又は間接的にシート状の被転写材に転写する転写部と、転写されたトナー画像をシート状の被転写材に定着する定着部と、を備える画像形成装置に関する。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、トナーの無駄な消費によるランニングコストの上昇を抑えつつ、小径トナーが蓄積する選択現像による画像の濃度の低下を抑制することができる現像装置を提供することができる。
また、本発明によれば、前記現像装置を備える画像形成装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の一実施形態のコピー機1の各構成要素の配置を説明するための図である。
【図2】本実施形態のコピー機における現像装置16aの構成及び感光体ドラム2aを説明するための断面図である。
【図3】現像ローラ150の表面に所定厚さのトナー層193が形成される様子を示す部分拡大図である。
【図4】現像ローラ150の表面に所定厚さのトナー層193が形成された状態を示す部分拡大図である。
【図5】本実施形態の現像装置16aの動作を示すフローチャートである。
【図6】実験に用いた各粒径のトナーにおいて、印加電圧(調整値)Vsに対する付着量の関係を示すグラフである。
【図7】実験に用いた各径のトナーにおいて、印加電圧(調整値)Vsと濃度IDとの関係を示すグラフである。
【図8】実験に用いた各径のトナーの付着量と濃度IDとの関係を示すグラフである。
【図9】連続現像時による濃度IDの変化を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照して本発明の画像形成装置の実施形態を説明する。
図1により、本実施形態における画像形成装置としてのコピー機1における全体構造を説明する。図1は、コピー機1の各構成要素の配置を説明するための図である。
【0019】
図1に示すように、画像形成装置としてのコピー機1は、コピー機1における上下方向Zの上方側に配置される画像読取装置300と、コピー機1における上下方向Zの下方側に配置され画像読取装置300により読み取られた画像情報に基づいてシート状の被画像形成材としての用紙Tにトナー画像を形成する装置本体Mと、を備える。
なお、コピー機1の説明において、副走査方向Xをコピー機1の「左右方向」ともいい、主走査方向Y(図1を貫く方向)をコピー機1の「前後方向」ともいう。コピー機1の上下方向Zは、副走査方向X及び主走査方向Yと直交する。
【0020】
まず、画像読取装置300について説明する。
図1に示すように、画像読取装置300は、蓋部材70と、原稿Gの画像を読み取る読取部301と、を備える。
蓋部材70は、読取部301に対して不図示の連結部により開閉可能に連結されている。蓋部材70は、後述する読取面302Aを保護する機能を有する。
【0021】
読取部301は、筐体306と、筐体306の上方側に配置される読取面302Aと、を備える。また、読取部301は、筐体306の内部空間304に、光源を含む照明部340と、複数のミラー321、322及び323と、副走査方向Xに移動する第1枠体311及び第2枠体312と、結像レンズ357と、読取装置としてのCCD358と、CCD358により読み取られた画像情報に対して所定の処理をすると共に該画像情報を装置本体M側に出力させるCCD基板361と、を備える。照明部340及び第1ミラー321は、第1枠体311に収容される。第2ミラー322及び第3ミラー323は、第2枠体312に収容される。
【0022】
読取面302Aは、副走査方向X及び主走査方向Yと直交する方向に拡がり、読取部301における副走査方向Xの大部分に亘っている。原稿Gは、読取面302Aに載置される。第1枠体311及び第2枠体312それぞれは、後述する光路Hの長さ(光路長)を一定に保持しながら副走査方向Xに移動する。これにより、読取面302Aに載置された原稿Gの画像が読み取られる。
【0023】
筐体306の内部空間304において、複数のミラー321、322及び323は、原稿Gからの光を結像レンズ357に入光させるための光路Hを形成する。また、第1枠体311が副走査方向Xに一定速度Aで移動すると共に、第2枠体312が副走査方向Xに一定速度A/2で移動するため、画像読み取り動作時においても、光路Hの長さは一定に維持される。これにより、読取面302Aに載置された原稿Gの画像が読取面302Aに読み取られる。
【0024】
次に、装置本体Mについて説明する。
装置本体Mは、所定の画像情報に基づいて用紙Tに所定のトナー画像を形成する画像形成部GKと、用紙Tを画像形成部GKに給紙すると共にトナー画像が形成された用紙Tを排紙する給排紙部KHとを有する。
装置本体Mにおける外形は、筐体部としてのケース体BDにより構成される。
【0025】
図1に示すように、画像形成部GKは、像担持体(感光体)としての感光体ドラム2a、2b、2c、2dと、帯電部10a、10b、10c、10dと、露光ユニットとしてのレーザスキャナユニット4a、4b、4c、4dと、現像装置16a、16b、16c、16dと、トナーカートリッジ5a、5b、5c、5dと、トナー供給部6a、6b、6c、6dと、ドラムクリーニング部11a、11b、11c、11dと、除電器12a、12b、12c、12dと、中間転写ベルト7と、1次転写ローラ37a、37b、37c、37dと、2次転写ローラ8と、対向ローラ18と、定着部9と、を備える。
【0026】
図1に示すように、給排紙部KHは、給紙カセット52と、手差し給紙部64と、用紙Tの搬送路Lと、レジストローラ対80と、第1排紙部50aと、第2排紙部50bとを備える。なお、搬送路Lは、後述するように、第1搬送路L1と、第2搬送路L2と、第3搬送路L3と、手差し搬送路Laと、戻り搬送路Lbと、後処理搬送路Lcとの集合体である。
【0027】
以下、画像形成部GK及び給排紙部KHの各構成について詳細に説明する。
まず、画像形成部GKについて説明する。
画像形成部GKにおいては、感光体ドラム2a、2b、2c、2dそれぞれの表面に沿って上流側から下流側に順に、帯電部10a、10b、10c、10dによる帯電、レーザスキャナユニット4a、4b、4c、4dによる露光、現像装置16a、16b、16c、16dによる現像、中間転写ベルト7及び1次転写ローラ37a、37b、37c、37dによる1次転写、除電器12a、12b、12c、12dによる除電、及びドラムクリーニング部11a、11b、11c、11dによるクリーニングが行われる。
また、画像形成部GKにおいては、中間転写ベルト7、2次転写ローラ8及び対向ローラ18による2次転写、並びに定着部9による定着が行われる。
【0028】
感光体ドラム2a、2b、2c、2dそれぞれは、円筒形状の部材からなり、感光体又は像担持体として機能する。感光体ドラム2a、2b、2c、2dそれぞれは、中間転写ベルト7の進行方向に対して直交する方向に延びる機軸を中心に矢印の方向に回転可能に配置される。感光体ドラム2a、2b、2c、2dそれぞれにおける表面には、静電潜像が形成され得る。
【0029】
帯電部10a、10b、10c、10dそれぞれは、感光体ドラム2a、2b、2c、2dそれぞれの表面に対向して配置される。帯電部10a、10b、10c、10dそれぞれは、感光体ドラム2a、2b、2c、2dそれぞれの表面を一様に負(マイナス極性)又は正(プラス極性)に帯電させる。
【0030】
レーザスキャナユニット4a、4b、4c、4dは、露光ユニットとして機能するものであり、感光体ドラム2a、2b、2c、2dそれぞれの表面から離間して配置される。レーザスキャナユニット4a、4b、4c、4dそれぞれは、不図示のレーザ光源、ポリゴンミラー、ポリゴンミラー駆動用モータ等を有して構成される。
【0031】
レーザスキャナユニット4a、4b、4c、4dそれぞれは、読取部301により読み込まれた画像に関する画像情報に基づいて感光体ドラム2a、2b、2c、2dそれぞれの表面を走査露光する。レーザスキャナユニット4a、4b、4c、4dそれぞれにより走査露光されることで、感光体ドラム2a、2b、2c、2dそれぞれの表面の露光された部分の電荷が除去される。これにより、感光体ドラム2a、2b、2c、2dそれぞれの表面に静電潜像が形成される。
【0032】
現像装置16a、16b、16c、16dそれぞれは、感光体ドラム2a、2b、2c、2dにそれぞれ対応して設けられ、感光体ドラム2a、2b、2c、2dの表面に対向して配置される。現像装置16a、16b、16c、16dそれぞれは、感光体ドラム2a、2b、2c、2dそれぞれの表面に形成された静電潜像に各色のトナーを付着させて、カラーのトナー画像を感光体ドラム2a、2b、2c、2dそれぞれの表面に形成する。現像装置16a、16b、16c、16dそれぞれは、イエロー、シアン、マゼンタ、ブラックの4つの色に対応する。現像装置16a、16b、16c、16dそれぞれの詳細については後述する。
【0033】
トナーカートリッジ5a、5b、5c、5dそれぞれは、現像装置16a、16b、16c、16dそれぞれに対応して設けられており、現像装置16a、16b、16c、16dそれぞれに対して供給される各色のトナーを収容する。トナーカートリッジ5a、5b、5c、5dそれぞれは、イエローのトナー、シアンのトナー、マゼンタのトナー、ブラックのトナーを収容する。
【0034】
トナー供給部6a、6b、6c、6dそれぞれは、トナーカートリッジ5a、5b、5c、5d及び現像装置16a、16b、16c、16dにそれぞれ対応して設けられており、トナーカートリッジ5a、5b、5c、5dそれぞれに収容された各色のトナーを、現像装置16a、16b、16c、16dそれぞれに対して供給する。トナー供給部6a、6b、6c、6dそれぞれと現像装置16a、16b、16c、16dそれぞれとは、不図示のトナー供給路により結ばれている。
【0035】
中間転写ベルト7には、感光体ドラム2a、2b、2c、2dに形成された各色のトナー画像が順次1次転写される。中間転写ベルト7は、従動ローラ35、駆動ローラからなる対向ローラ18、テンションローラ36等に掛け渡される。テンションローラ36が中間転写ベルト7を内側から外側に付勢するため、中間転写ベルト7には所定の張力が与えられる。
【0036】
中間転写ベルト7を挟んで感光体ドラム2a、2b、2c、2dと反対の側には、1次転写ローラ37a、37b、37c、37dそれぞれが対向して配置される。
【0037】
中間転写ベルト7における所定部分は、1次転写ローラ37a、37b、37c、37dそれぞれと、感光体ドラム2a、2b、2c、2dそれぞれとにより挟み込まれる。この挟み込まれた所定部分は、感光体ドラム2a、2b、2c、2dそれぞれにおける表面に押し当てられる。感光体ドラム2a、2b、2c、2dそれぞれと1次転写ローラ37a、37b、37c、37dそれぞれとの間で、それぞれ1次転写ニップN1a、N1b、N1c、N1dが形成される。1次転写ニップN1a、N1b、N1c、N1dそれぞれにおいて、感光体ドラム2a、2b、2c、2dそれぞれに現像された各色のトナー画像が中間転写ベルト7に順次1次転写される。これにより、中間転写ベルト7には、フルカラーのトナー画像が形成される。
【0038】
1次転写ローラ37a、37b、37c、37dそれぞれには、不図示の1次転写バイアス印加部により、感光体ドラム2a、2b、2c、2dそれぞれに形成された各色のトナー画像を中間転写ベルト7に転写させるための1次転写バイアスが印加される。
【0039】
除電器12a、12b、12c、12dそれぞれは、感光体ドラム2a、2b、2c、2dそれぞれの表面に対向して配置される。除電器12a、12b、12c、12dそれぞれは、感光体ドラム2a、2b、2c、2dそれぞれの表面に光を照射することにより、1次転写が行われた後の感光体ドラム2a、2b、2c、2dそれぞれの表面を除電する(電荷を除去する)。
【0040】
ドラムクリーニング部11a、11b、11c、11dそれぞれは、感光体ドラム2a、2b、2c、2dそれぞれの表面に対向して配置される。ドラムクリーニング部11a、11b、11c、11dそれぞれは、感光体ドラム2a、2b、2c、2dそれぞれの表面に残存したトナーや付着物を除去すると共に、除去されたトナー等を所定の回収機構へ搬送して、回収させる。
【0041】
2次転写ローラ8は、中間転写ベルト7に1次転写されたフルカラーのトナー画像を用紙Tに2次転写させる。2次転写ローラ8には、不図示の2次転写バイアス印加部により、中間転写ベルト7に形成されたフルカラーのトナー画像を用紙Tに転写させるための2次転写バイアスが印加される。
【0042】
2次転写ローラ8は、中間転写ベルト7に対して当接したり離間したりする。具体的には、2次転写ローラ8は、中間転写ベルト7に当接される当接位置と中間転写ベルト7から離間する離間位置とに移動可能に構成される。詳細には、2次転写ローラ8は、中間転写ベルト7の表面に1次転写されたフルカラ−のトナー画像を用紙Tに2次転写させる場合には当接位置に配置され、他の場合には離間位置に配置される。
【0043】
中間転写ベルト7における2次転写ローラ8とは反対側には、対向ローラ18が配置される。中間転写ベルト7における所定部分は、2次転写ローラ8と対向ローラ18とによって挟み込まれる。そして、用紙Tは中間転写ベルト7の外面(トナー画像が1次転写された面)に押し当てられる。中間転写ベルト7と2次転写ローラ8との間で2次転写ニップN2が形成される。2次転写ニップN2において、中間転写ベルト7に1次転写されたフルカラーのトナー画像が用紙Tに2次転写される。
【0044】
定着部9は、用紙Tに2次転写されたトナー画像を構成する各色のトナーを溶融及び加熱して、用紙Tに定着させる。定着部9は、ヒータにより加熱される加熱回転体9aと、加熱回転体9aに圧接される加圧回転体9bと、を備える。加熱回転体9aと加圧回転体9bとは、トナー画像が2次転写された用紙Tを挟み込んで加圧すると共に、搬送する。加熱回転体9aと加圧回転体9bとの間に挟まれた状態で用紙Tが搬送されることによって、用紙Tに転写されたトナーは、溶融及び加圧されることで、用紙Tに定着される。
【0045】
次に、給排紙部KHについて説明する。
図1に示すように、装置本体Mの下部には、用紙Tを収容する2個の給紙カセット52が上下に配列されて配置される。給紙カセット52は、装置本体Mの筐体から水平方向に引き出し可能に構成される。給紙カセット52には、用紙Tが載置される載置板60が配置される。給紙カセット52には、用紙Tが載置板60の上に積層された状態で収容される。載置板60に載置された用紙Tは、給紙カセット52における用紙送り出し側の端部(図1において左側の端部)に配置されるカセット給紙部51により搬送路Lに送り出される。カセット給紙部51は、載置板60上の用紙Tを取り出すための前送りコロ61と、用紙Tを1枚ずつ搬送路Lに送り出すための給紙ローラ対63とからなる重送防止機構を備える。
【0046】
装置本体Mの右側面(図1において右側)には、手差し給紙部64が設けられる。手差し給紙部64は、給紙カセット52にセットされる用紙Tとは異なる大きさや種類の用紙Tを装置本体Mに供給することを主目的として設けられる。手差し給紙部64は、閉状態において装置本体Mの右側面の一部を構成する手差しトレイ65と、給送ローラとしての給紙コロ66とを備える。手差しトレイ65は、開状態において1又は複数の用紙Tを載置可能な載置部として機能し、その下端が給紙コロ66の近傍に回動自在(開閉自在)に取り付けられる。給紙コロ66は、開状態の手差しトレイ65に載置された用紙Tを筐体306の内部の手差し搬送路Laに向けて送り出す(給紙する)。
【0047】
装置本体Mにおける上方側には、第1排紙部50a及び第2排紙部50bが設けられる。第1排紙部50a及び第2排紙部50bは、用紙Tを装置本体Mの外部に排紙する。第1排紙部50a及び第2排紙部50bの詳細については後述する。
【0048】
用紙Tを搬送する搬送路Lは、カセット給紙部51から2次転写ニップN2までの第1搬送路L1と、2次転写ニップN2から定着部9までの第2搬送路L2と、定着部9から第1排紙部50aまでの第3搬送路L3と、手差し給紙部64から供給される用紙を第1搬送路L1に合流させる手差し搬送路Laと、第3搬送路L3を上流側から下流側へ搬送する用紙を表裏反転させて第1搬送路L1に戻す戻り搬送路Lbと、第3搬送路L3を上流側から下流側へ搬送する用紙を第2排紙部50bに接続された後処理装置(図示せず)に搬送する後処理搬送路Lcと、を備える。
【0049】
また、第1搬送路L1の途中には、第1合流部P1及び第2合流部P2が設けられている。第3搬送路L3の途中には、第1分岐部Q1が設けられている。
第1合流部P1は、手差し搬送路Laが第1搬送路L1に合流する合流部である。第2合流部P2は、戻り搬送路Lbが第1搬送路L1に合流する合流部である。
第1分岐部Q1は、後処理搬送路Lcが第3搬送路L3から分岐する分岐部である。第1分岐部Q1には、整流部材58が設けられている。整流部材58は、定着部9から搬出された用紙Tの搬送方向を、第1排紙部50aに向かう第3搬送路L3又は第2排紙部50bに向かう後処理搬送路Lcに整流させる(切り換える)。
【0050】
第1搬送路L1の途中(詳細には、第2合流部P2と2次転写ローラ8との間)には、用紙Tを検出するためのセンサと、用紙Tのスキュー(斜め給紙)補正や画像形成部GKにおけるトナー画像の形成とタイミングを合わせるためのレジストローラ対80とが配置される。センサは、用紙Tの搬送方向におけるレジストローラ対80の直前(搬送方向における上流側)に配置される。レジストローラ対80は、センサからの検出信号情報に基づいて上述の補正やタイミング調整をして用紙Tを搬送する。
【0051】
戻し搬送路Lbは、用紙Tに両面印刷を行う際に、既に印刷されている面とは反対面(未印刷面)を中間転写ベルト7に対向させるために設けられる搬送路である。戻し搬送路Lbによれば、第1分岐部Q1から第1排紙部50a側に搬送された用紙Tを表裏反転させて第1搬送路L1に戻して、2次転写ローラ8の上流側に配置されたレジストローラ対80の上流側に搬送させることができる。戻し搬送路Lbにより表裏反転された用紙Tには、2次転写ニップN2において未印刷面に対して所定のトナー画像が転写される。
【0052】
第3搬送路L3における端部には、第1排紙部50aが形成される。第1排紙部50aは、装置本体Mにおける上方側に配置される。第1排紙部50aは、装置本体Mの右側面側(図1において右側、手差し給紙部64側)に向けて開口している。第1排紙部50aは、第3搬送路L3を搬送される用紙Tを装置本体Mの外部に排紙する。
【0053】
第1排紙部50aにおける開口側には、排紙集積部M1が形成される。排紙集積部M1は、装置本体Mにおける上面(外面)に形成される。排紙集積部M1は、装置本体Mにおける上面が下方に窪んで形成された部分である。排紙集積部M1の底面は、装置本体Mにおける上面の一部を構成する。排紙集積部M1には、所定のトナー画像が形成され第1排紙部50aから排紙された用紙Tが積層して集積される。
【0054】
後処理搬送路Lcにおける端部には、第2排紙部50bが形成される。第2排紙部50bは、装置本体Mにおける上方側に配置される。第2排紙部50bは、装置本体Mの左側面側(図1において左側、後処理装置が連結される側)に向けて開口している。第2排紙部50bは、後処理搬送路Lcを搬送される用紙Tを装置本体Mの外部に排紙する。
第2排紙部50bにおける開口側には、後処理装置(図示せず)が連結される。後処理装置は、画像形成装置(コピー機1)から排出される用紙の後処理(ステープル、パンチ等)を行うものである。
なお、各搬送路の所定位置には用紙検出用のセンサが配置される。
【0055】
次に、主搬送路L1からL3(第1搬送路L1、第2搬送路L2及び第3搬送路L3を合わせて以下「主搬送路」ともいう)及び戻り搬送路Lbにおける紙詰まり(JAM)を解消するための構造について簡単に説明する。
図1に示すように、装置本体Mの左側面側(図1において左側)には、主搬送路L1からL3及び戻り搬送路Lbが主に上下方向に延びるように並列している。装置本体Mの左側面側(図1において左側)には、装置本体Mの側面の一部を形成するように、カバー体40が設けられている。カバー体40は、その下端部において、支点軸43を介して装置本体Mに連結されている。支点軸43は、その軸方向が主搬送路L1からL3及び戻り搬送路Lbを横断する方向に沿って配設されている。カバー体40は、支点軸43を中心として閉位置(図1に示す位置)と開位置(図示せず)との間を回動自在に構成されている。
【0056】
カバー体40は、支点軸43によって装置本体Mに回動自在に連結された第1のカバー部41と、同じ支点軸43によって装置本体Mに回動自在に連結された第2のカバー部42とから構成されている。第1のカバー部41は、第2のカバー部42よりも装置本体Mの外側(側面側)に位置する。なお、図1において、左下がりの破線でハッチングされた部分が第1のカバー部41であり、右下がりの破線でハッチングされた部分が第2のカバー部42である。
【0057】
カバー体40が閉位置に位置する状態において、第1のカバー部41は、その外面側が装置本体Mの外面(側面)の一部を形成している。
また、カバー体40が閉位置に位置する状態において、第2のカバー部42は、その内面側(装置本体M側)が主搬送路L1からL3の一部を形成している。
更に、カバー体40が閉位置に位置する状態において、第1のカバー部41の内面側と第2のカバー部42の外面側とが、戻り搬送路Lbの少なくとも一部を形成している。つまり、戻り搬送路Lbは、第1のカバー部41と第2のカバー部42との間に形成されている。
【0058】
本実施形態のコピー機1は、このような構成のカバー体40を備えることにより、主搬送路L1からL3で紙詰まり(JAM)が発生した際には、カバー体40を図1に示す閉位置から、開位置(図示せず)に回動して主搬送路L1からL3を開放することにより、主搬送路L1からL3に詰まった用紙を処理することができる。一方、戻り搬送路Lbで紙詰まりが発生した際には、カバー体40を開位置に回動した後、支点軸43を中心に第2のカバー部42を装置本体M側(図1において右側)に回動させて戻り搬送路Lbを開放することにより、戻り搬送路Lbに詰まった用紙を処理することができる。
【0059】
次に、図2から図4を参照して、本実施形態のコピー機1の特徴部分である現像装置16a,16b,16c,16dに係る構成について説明する。前述の通り、コピー機1は、4個の現像装置16a,16b,16c,16dを備えているが、それぞれ同様の構成を有しているため、ここでは現像装置16aを代表して用いて説明する。
【0060】
図2は、本実施形態のコピー機における現像装置16aの構成及び感光体ドラム2aを説明するための断面図である。図3は、現像ローラ150の表面に所定厚さのトナー層193が形成される様子を示す部分拡大図である。図4は、現像ローラ150の表面に所定厚さのトナー層193が形成された状態を示す部分拡大図である。
【0061】
図2及び図3に示すように、本実施形態の現像装置16aは、少なくとも磁性キャリア及びトナーを含む2成分現像剤を収容する現像容器110と、現像容器110の内部に配置される攪拌ローラ120a、120bと、一方の攪拌ローラ120aの垂直方向における上方に配置される現像剤担持体としての磁気ローラ130と、磁気ローラ130の側方(図2において左側)に磁気ローラ130に近接して配置される層厚規制ブレード140と、層厚規制ブレード140の垂直方向における上方に配置されるトナー飛散防止カバー部材141と、磁気ローラ130に対向して配置されるトナー担持体としての現像ローラ150と、回転検知部251と、現像濃度検出部291と、第1電圧印加部261と、第2電圧印加部262と、環境温度及び湿度を計測する温度・湿度計測部252と、制御部270と、記憶部280と、を備える。
【0062】
現像容器110には、トナーカートリッジ5a(図1参照)からトナー供給部6a(図1参照)を介してトナー192が供給される。
攪拌ローラ120a、120bは、現像容器110に収容された2成分現像剤190を攪拌する。攪拌された2成分現像剤190には、摩擦により静電気が発生し、磁性キャリア191はマイナスに帯電し、トナー192はプラスに帯電する。また、静電気力により、トナー192は、磁性キャリア191に付着する。
【0063】
磁気ローラ130は、所定方向に回転可能で且つ磁気ローラ130の表面を構成する磁気スリーブ131と、磁気スリーブ131の内部に配置された複数の磁気ローラ磁極部材132から137と、を備える。
磁気スリーブ131は、円筒形状を有し、非磁性部材により構成される。磁気スリーブ131は、図2及び図3に示す矢印Bの方向に回転駆動される。磁気スリーブ131には、後述の第1電圧印加部261により、所定の第1バイアス電圧V1が印加される。
【0064】
図2及び図3に示すように、複数の磁気ローラ磁極部材132から137は、磁気スリーブ131の内部において、周方向に並んで所定間隔あけて固定される。
磁気ローラ磁極部材132は、磁気ローラ130における後述する現像スリーブ151に最も近接する部分に対応して配置される。磁気ローラ磁極部材132は、外側(磁気スリーブ131の周面側)にN極が位置するように配置される。
【0065】
図3に示すように、磁気ローラ磁極部材132から137の磁力によって、現像容器110に収容された2成分現像剤190の一部は、磁気スリーブ131の表面に保持される。また、磁気ローラ130の表面に保持された一部の2成分現像剤190は、現像剤層(磁気ブラシ)194を形成する。
【0066】
層厚規制ブレード140は、磁気ローラ130の表面に形成される現像剤層194の層厚を規制する。つまり、層厚規制ブレード140は、磁気ローラ130に保持された2成分現像剤190により形成された現像剤層194の層厚(高さ)を規制して、この層厚規制ブレード140を通過した現像剤層194の層厚を一定に保つ。層厚規制ブレード140は、板状の部材からなり、先端部142側が磁気スリーブ131の表面に対向し且つ近接するよう配置される。層厚規制ブレード140の先端部142と磁気スリーブ131の表面との間には、所定の隙間(ギャップ)が形成される。
【0067】
トナー飛散防止カバー部材141は、現像装置16aのケース体の一部を構成する部材である。トナー飛散防止カバー部材141は、層厚規制ブレード140の垂直方向における上方であって、磁気ローラ130の側方(図2における左側)に配置される。トナー飛散防止カバー部材141は、トナー192が現像装置16aの外部へ飛散することを抑制する。
【0068】
現像ローラ150は、磁気ローラ130に対向して配置される。現像ローラ150の表面には、磁気ローラ130から移動したトナー192により、トナー層193が形成される。具体的には、現像ローラ150の表面には、層厚規制ブレード140により層厚が規制された現像剤層(磁気ブラシ)194からトナー192が移動されて、トナー層193が形成される。現像ローラ150は、現像ローラ150の表面を構成する現像スリーブ151と、現像スリーブ151の内部に配置された現像ローラ磁極部材152と、を備える。
【0069】
現像スリーブ151は、円筒形状を有し、非磁性部材により構成される。現像スリーブ151の表面は、抵抗調整剤を含有する樹脂層(不図示)により被覆されている。現像スリーブ151は、磁気スリーブ131の対向する位置において、現像スリーブ151の移動方向が磁気スリーブ131の移動方向とは反対方向(図2及び図3に示す矢印Cの方向)となるように、回転駆動される。ここで、現像スリーブ151には、後述の第2電圧印加部262により、所定の第2バイアス電圧V2が印加される。
【0070】
現像ローラ磁極部材152は、現像スリーブ151の内部において、第1磁気ローラ磁極部材132と対向して配置される。現像ローラ磁極部材152は、現像ローラ150における磁気スリーブ131に最も近接する部分に対応して配置される。言い換えると、現像ローラ磁極部材152と第1磁気ローラ磁極部材132とは、現像スリーブ151と磁気スリーブ131とが最も近接する領域を挟んで、互いに対向して配置される。
【0071】
現像ローラ磁極部材152は、第1磁気ローラ磁極部材132と向かい合う側の端部において、第1磁気ローラ磁極部材132における外側の極性とは異なる極性を有する。つまり、現像ローラ磁極部材152は、外側(現像スリーブ151の周面側)にS極が位置するように配置される。そして、磁気ローラ130の内部に配置された第1磁気ローラ磁極部材132と、現像ローラ150の内部に配置された現像ローラ磁極部材152との間には、磁界171が形成される。磁気ローラ130と現像ローラ150との間における磁界171が形成された領域においては、現像剤層194は、磁界171の影響を受けて磁気ローラ130の表面から立ち上がり、磁気ブラシを形成して、現像ローラ150に接触する。
【0072】
次に、本実施形態の現像装置16aにおける制御に係る構成について詳述する。
図2に示すように、第1電圧印加部261は、後述の印加電圧制御部271から出力される制御信号を受けて、磁気ローラ130に第1バイアス電圧V1を印加する。
第2電圧印加部262は、後述の印加電圧制御部271から出力される制御信号を受けて、現像ローラ150に第2バイアス電圧V2を印加する。
磁気ローラ130に印加された第1バイアス電圧V1と現像ローラ150に印加された第2バイアス電圧V2との電圧差(バイアス電圧差VB)によって、磁気ローラ130と現像ローラ150との間には、トナー192を移動させる電界が生じる。バイアス電圧差VBとは、第1バイアス電圧V1を基準した場合における第1バイアス電圧V1と第2バイアス電圧V2との電圧差である。
【0073】
図2に示すように、回転検知部251は、現像ローラ150の回転を検知する。回転検知部251は、現像ローラ150が回転開始したことを検知して、検知信号を制御部270に出力する。
【0074】
図2に示すように、温度・湿度計測部252は、現像装置16aにおける環境温度及び湿度を計測し、計測信号をトナー径算出部272に出力する。
【0075】
図2に示すように、現像濃度検出部291は、感光体ドラム2aの表面に貼り付けられたパッチ292の濃度を検出して、濃度検出信号を制御部270に出力する。
【0076】
図2に示すように、制御部270は、印加電圧制御部271と、トナー径算出部272と、電圧差調整部273と、カウンタ274と、連続現像(印刷)判定部275と、通常モード制御部276と、を有する。
【0077】
カウンタ274は、回転検知部251による検知信号を受けて、現像回数(印刷枚数)をカウントし、カウント信号を連続現像(印刷)判定部275に出力する。
【0078】
連続現像(印刷)判定部275は、コピー機1に連続する現像(印刷)の指示があるか否かを判定する。
【0079】
通常モード制御部276は、通常の現像モードにおいて、バイアス電圧差VBを第1電圧差VB1とするように、制御信号を印加電圧制御部271に出力して、印加電圧制御部271に指示する。
【0080】
トナー径算出部272は、所定回数の現像(所定枚数の印字)が終了した非現像時(非印字時)において、温度・湿度計測部252により計測された環境温度及び湿度、並びに予め設定されて記憶部280に記憶されている印字率(現像率)に基づいて、現像ローラ150の表面に形成されるトナー層193におけるトナー径を算出して、算出信号を電圧差調整部273に出力する。
【0081】
電圧差調整部273は、所定回数の現像(所定枚数の印字)が終了した非現像時(非印字時)において、トナー径に基づく電圧差の調整前に、現像濃度検出部291により検出された現像濃度に基づいて、電圧差を所定の現像濃度に帰還補正するように印加電圧制御部271に指示する。詳細には、電圧差調整部273は、非現像時(非印字時)において、トナー径に基づく電圧差の調整前に、現像濃度検出部291による濃度検出信号を受けて、バイアス電圧差VBを第2電圧差VB2とするように、制御信号を印加電圧制御部271に出力して、印加電圧制御部271に指示する。
また、電圧差調整部273は、トナー径算出部272から出力される算出信号を受けて(トナー径算出部272により算出されたトナー径に基づいて)、バイアス電圧差VBを第3電圧差VB3に調整するように、制御信号を印加電圧制御部271に出力して、印加電圧制御部271に指示する。
【0082】
また、電圧差調整部273は、現像濃度検出部291により検出された現像濃度に基づいて帰還補正された第2電圧差VB2で現像が開始され、現像回数(印字枚数)が所定回数(所定印刷枚数)を超えたときに、トナー径算出部272により算出されたトナー径に基づいて、第3電圧差VB3とするための電圧差の調整を実行する。所定回数の現像回数(印刷枚数)は、例えば10から15回(10から15枚)程度が適当である。
【0083】
電圧差調整部273における第3電圧差VB3とするための電圧差の調整値Vsは、以下の式(1)により求められる。
Vs=K×(標準トナー径−トナー径算出部272により算出されたトナー径)…(1)
なお、Kは所定の係数であり、Kについては、後述する実施例において詳細に説明する。
【0084】
印加電圧制御部271は、通常モード制御部276から出力される制御信号及び電圧差調整部273から出力される制御信号を受けて、第1電圧印加部261及び第2電圧印加部262に制御信号を出力する。
【0085】
バイアス電圧差VBを第1電圧差VB1とした場合には、磁気ローラ130と現像ローラ150との間に、磁気ローラ130から現像ローラ150へ向けて所定の量のトナー192を移動させる電界が生じる。
バイアス電圧差VBを第2電圧差VB2に調整した場合には、磁気ローラ130と現像ローラ150との間に、磁気ローラ130から現像ローラ150へ向けて第1電圧差VB1の場合よりも多くの量のトナー192を移動させる電界が生じて、現像濃度(印字濃度)を所定の濃度にするようにフィードバック(帰還)補正を行う。
バイアス電圧差VBを第3電圧差VB3に調整した場合には、所定回数の現像終了後以降の現像時における濃度変化の推移を予測して、フィードバック補正された現像濃度が一定以下に低下しないように、フィードフォワード(シーケンス)補正を行う。
【0086】
図4に示すように、バイアス電圧差VBを第1電圧差VB1とした所定時間の経過後には、トナー192の移動は、磁気ローラ130と現像ローラ150との間で移動しない平衡状態となる。つまり、トナー192の移動の平衡状態とは、磁気ローラ130から現像ローラ150へ向かう方向へのトナー192の移動と、現像ローラ150から磁気ローラ130へ向かう方向へのトナー192の移動とが釣り合っている状態である。
【0087】
この平衡状態からバイアス電圧差VBの変化があった場合には、トナー192は、磁気ローラ130から現像ローラ150に、又は現像ローラ150から磁気ローラ130に移動可能である。例えば、第1電圧差VB1における平衡状態から第1電圧差VB1よりも大きいバイアス電圧差VBに変更された場合には、プラス帯電したトナー192は、現像ローラ150から磁気ローラ130に移動される。また、第1電圧差VB1における平衡状態から第1電圧差VB1よりも小さいバイアス電圧差VBに変更された場合には、プラス帯電したトナー192は、磁気ローラ130から現像ローラ150に移動される。
【0088】
図2に示すように、記憶部280は、バイアス電圧差記憶部281と、現像率(印字率)記憶部282とを有する。
バイアス電圧差記憶部281には、バイアス電圧差VBを第1電圧差VB1、第2電圧差VB2又は第3電圧差VB3にするための第1バイアス電圧V1及び第2バイアス電圧V2に関する電圧情報が記憶されている。
現像率(印字率)記憶部282は、現像開始(画像形成開始)に先立ってユーザにより設定される現像率(印字率)が記憶されている。
【0089】
次に、本実施形態の現像装置16aの具体的な動作につき、図2から図5を参照しながら説明する。図5は、本実施形態の現像装置16aの動作を示すフローチャートである。
【0090】
まず、図5に示すように、ステップST1において、ユーザによりコピー機1の電源がオンにされると、処理は、ステップST2に進む。
【0091】
次に、ステップST2において、通常モード制御部276は、磁気ローラ130と現像ローラ150との間のバイアス電圧差VBを第1電圧差VB1とするように、印加電圧制御部271に制御信号を出力して指示する。
【0092】
ステップST2において、図2及び図3に示すように、2成分現像剤190は、まず、攪拌ローラ120a,120bにより攪拌される。これにより、攪拌された2成分現像剤190には、摩擦による静電気が発生する。そして、磁性キャリア191はマイナスに帯電し、トナー192はプラスに帯電する。また、静電気力により磁性キャリア191に、トナー192が付着する。
【0093】
図3に示すように、2成分現像剤190は、磁気スリーブ131の内部に配置された磁気ローラ磁極部材132から137の磁力により、回転方向Bに回転する磁気ローラ130の表面に保持される。複数の磁気ローラ磁極部材134から137の磁力により、磁気ローラ130の表面には、現像剤層(磁気キャリア)194が形成される。
磁気ローラ130の表面に形成された現像剤層194は、磁気スリーブ131の回転に伴って回転移動し、層厚規制ブレード140に接触して所定の層厚に規制される。
【0094】
層厚規制ブレード140により所定の層厚に規制された現像剤層194は、磁気ローラ130と現像ローラ150との対向位置の近傍に移動して、磁界171が形成された領域に位置する。この領域において、現像剤層194は、磁界171の影響を受けて立ち上がり、磁気ブラシを形成して、現像ローラ150に接触する。
【0095】
これにより、図2から図4に示すように、磁気ローラ130の表面に保持された2成分現像剤190のうち、プラスに帯電しているトナー192の多くは、第1電圧差VB1による電界の影響を受けて、現像ローラ150側に移送される。これにより、現像ローラ150の表面に、トナー層193が形成される。その後、処理はステップST3に進む。
【0096】
ステップST3において、ユーザによりコピー機1へ用紙Tに画像を形成(印刷)させる指示が行われる。ステップST3における用紙Tに画像を印刷させる指示により、コピー機1による用紙Tに画像を印刷させる動作が開始される。これにより、処理はステップST4に進む。
【0097】
図4及び図5に示すように、ステップST4において、現像装置16aは、現像ローラに形成されたトナー層193により、感光体ドラム2aに形成された静電潜像を現像する。具体的には、トナー層193が形成された現像ローラ150の表面は、感光体ドラム2aの表面と対向する。そして、現像ローラ150と感光体ドラム2aとの電位差によって、静電潜像が現像される。つまり、感光体ドラム2aにおいては、その表面に静電潜像が形成されると共に、現像装置16aのトナー層193からトナーの供給を受けて静電潜像に、トナー画像が形成される。
【0098】
そして、図1に示すように、感光体ドラム2aに現像されたトナー画像は、中間転写ベルト7に順次1次転写される。中間転写ベルト7に1次転写されたトナー画像は、2次転写ローラ8により用紙Tに2次転写される。用紙Tに2次転写されたトナー画像は、定着部9に搬送されて、定着部9により用紙Tに定着される。
その後、用紙Tは、第3搬送路L3により第1排紙部50aに搬送され、第1排紙部50aから排紙集積部M1に排出される。このようにして、コピー機1による用紙Tの印刷が完了する。
【0099】
次に、図5に示すように、ステップST5において、カウンタ274によりカウントされたカウント値により、連続現像(印刷)判定部275は、所定回数の現像(所定枚数の印刷)が終了したか否かを判定する。そして、所定回数の現像(所定枚数の印刷)が終了したと連続現像(印刷)判定部275が判定した場合(ST5:YES)には、現像濃度検出部291は、感光体ドラム2aの表面に貼り付けられたパッチ292の濃度検出信号を制御部270に出力する。これにより、処理はステップST6に進む。
一方、ステップST5において、所定回数の現像(所定枚数の印刷)が終了していないと連続現像(印刷)判定部275が判定した場合(ST5:NO)には、処理はステップST2に戻る。
【0100】
ステップST6において、制御部270の電圧差調整部273は、現像濃度検出部291による濃度検出信号に基づいて、磁気ローラ130と現像ローラ150との間のバイアス電圧差VBを、記憶部280のバイアス電圧差記憶部281に記憶されている第2電圧差VB2とするように、印加電圧制御部271に指示する。この指示により、現像濃度は、予め設定されている所定の濃度にフィードバック補正される。その後、処理はステップST7に進む。
【0101】
ステップST7において、現像濃度がフィードバック補正された第2電圧差VB2の状態で、現像装置16aによる現像が開始される。その後、処理はステップST8に進む。
【0102】
ステップST8において、温度・湿度計測部252により計測される環境温度及び湿度、並びに記憶部280の現像率(印字率)記憶部282に記憶されている現像率(印字率)は、トナー径算出部272に読み込まれる。
【0103】
トナー径算出部272は、読み込んだ環境温度及び湿度並びに現像率(印字率)に基づいて、現像ローラ150の表面に形成されるトナー層193のトナー径を算出して、算出信号を電圧差調整部273に出力する。
【0104】
次に、図5に示すように、ステップST9において、連続現像(印刷)判定部275は、第2電圧差VB2での現像回数(印刷枚数)が所定回数(所定枚数)を超えたか否かを判定する。現像回数(印刷枚数)が所定回数(所定枚数)を超えたと連続現像(印刷)判定部275が判定した場合(ST9:YES)には、処理はステップST10に進む。一方、現像回数(印刷枚数)が所定回数(所定枚数)を超えていないと連続現像(印刷)判定部275が判定した場合(ST9:NO)には、処理はステップST7に戻る。
【0105】
そして、ステップST10において、電圧差調整部273は、トナー径算出部272により算出されたトナー径に基づいて、バイアス電圧差VBを第3電圧差VB3とするための電圧差の調整を実行する。電圧差調整部273による第3電圧差VB3とするための電圧差の調整値Vsは、前述の式(1)により求められる。
これにより、所定回数の現像終了(所定枚数の印刷終了)後以降の現像時における濃度変化の推移を予測して、現像濃度が一定以下に低下しないように、現像濃度はフィードフォワード調整(補正)されることになる。
【0106】
その後、ステップST11において、連続現像(印刷)判定部275は、コピー機1に所定回数(所定枚数)以上に連続する現像(印刷)の指示があるか否かを判定する。連続現像(印刷)判定部275が、所定回数(所定枚数)以上に連続する現像(印刷)の指示があると判定した場合(ST11:YES)には、処理はステップST7に戻る。コピー機1に所定回数(所定枚数)以上に連続する現像(印刷)の指示がないと連続現像(印刷)判定部275が判定した場合(ST11:NO)には、現像装置16aによる感光体ドラム2aへのトナー画像の形成が連続して行われておらず、処理はステップST12に進む。
【0107】
図5に示すように、ステップST12において、通常の現像モードは終了して、処理はステップST2に戻る。
【0108】
このように、本実施形態によれば、所定回数の現像(所定枚数の印刷)が終了したときに、感光体ドラム2aの表面に貼り付けられたパッチ292の濃度検出信号に基づいて、磁気ローラ130と現像ローラ150との間のバイアス電圧差VBを、第2電圧差VB2とする。これにより、本実施形態によれば、それ以前の現像(印刷)に伴って低下した現像濃度を、予め設定されている所定の濃度にフィードバック補正することができる。
【0109】
また、現像濃度がフィードバック補正された後において、環境温度及び湿度並びに印字率に基づいて、現像ローラ150の表面に形成されるトナー層193のトナー径を算出し、その算出されたトナー径に基づいて、バイアス電圧差VBを第3電圧差VB3とするための電圧差の調整を実行することにより、所定回数の現像終了(所定枚数の印刷終了)後以降の現像時における濃度変化の推移を予測して、所定回数の現像終了(所定枚数の印刷終了)後においても、フィードバック補正された現像濃度が一定以下に低下しないように、フィードフォワード調整(補正)を行うことができる。
【0110】
これによって、付着力の強い小径トナーが蓄積する選択現像による現像濃度の低下を抑制し、連続現像時においても、安定した現像濃度を維持することができる。
【0111】
本実施形態のコピー機1における現像装置16aによれば、例えば、次のような効果が奏される。
本実施形態においては、磁気ローラ130に印加される第1バイアス電圧V1と現像ローラ150に印加される第2バイアス電圧V2との関係を、現像ローラ150の表面に所定厚さのトナー層193が形成される電圧差とするように、第1電圧印加部261及び第2電圧印加部262を制御する印加電圧制御部271と、環境温度及び湿度を計測する温度・湿度計測部252と、所定回数の現像が終了した非現像時において、温度・湿度計測部252により計測された環境温度及び湿度、並びに予め設定された印字率に基づいて現像ローラ150の表面に形成されるトナー層193のトナー径を算出するトナー径算出部272と、トナー径算出部272により算出されたトナー径に基づいて、電圧差を調整するように印加電圧制御部271に指示する電圧差調整部273と、を備える。
【0112】
そのため、本実施形態によれば、環境温度及び湿度、並びに印字率に基づき算出されたトナー径に基づいて、バイアス電圧差を調整することにより、所定回数の現像終了(所定枚数の印刷終了)後以降の現像時における濃度変化の推移を予測して、所定回数の現像終了(所定枚数の印刷終了)後の現像においても、現像濃度が一定以下に低下しないように、フィードフォワード調整(補正)を行うことができる。
これにより、トナーの無駄な消費によるランニングコストの上昇を抑えつつ、付着力の強い小径トナーが蓄積する選択現像による現像濃度の低下を抑制し、安定した現像濃度を維持することができる。
【0113】
また、本実施形態においては、トナー径に基づく電圧差の調整前に、現像濃度検出部291により検出された現像濃度に基づいて、電圧差調整部273が電圧差を所定の現像濃度にフィードバック補正するように、印加電圧制御部271に指示する。
そのため、本実施形態においては、所定回数の現像終了(所定枚数の印刷終了)後に、それまでの現像に伴って低下した濃度を所定の現像濃度にフィードバック補正(1次補正)することができる。また、本実施形態においては、その後に上述したフィードフォワード調整(2次補正)を行なうことにより、所定回数の現像終了(所定枚数の印刷終了)後以降の現像時における濃度変化の推移予測を、一層正確に行なうことができる。これにより、長時間に亘る連続現像時においても、濃度の変化を最小限に抑制することができる。
【0114】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は、上述した実施形態に限定されることなく、種々の形態で実施することができる。
例えば、前述の実施形態においては、トナー192がプラスに帯電した場合について説明しているが、これに制限されない。トナー192は、マイナスに帯電していてもよい。具体的には、前述の実施形態においては、プラスに帯電したトナー192を使用する場合について説明している。このように、プラスに帯電したトナー192を使用する場合には、第1電圧差VB1は、第2電圧差VB2よりも大きいバイアス電圧差VBである。
【0115】
これに対し、マイナスに帯電したトナー192を使用する場合には、第1電圧差VB1を第2電圧差VB2よりも小さいバイアス電圧差VBとする。これにより、マイナスに帯電したトナー192を使用する場合においても、前述の実施形態と同様の効果を奏することができる。
この点以外に関し、マイナスに帯電したトナー192を使用する場合における構成、作用及び効果は、プラスに帯電したトナー192を使用する場合と同様である。
【0116】
また、前述の実施形態においては、中間転写ベルト7を用いて複数色のトナー画像を用紙Tに転写するカラーの間接転写方式の画像形成装置であるが、これに制限されない。画像形成装置の種類は、これに制限されず、中間転写ベルトを用いない直接転写方式の画像形成装置や、モノクロ印刷用の画像形成装置であってもよい。
【0117】
本発明の画像形成装置の種類は、特に限定がなく、カラーコピー機、プリンタ、ファクシミリ、又はこれらの複合機などであってもよい。
シート状の被転写材としては、用紙Tに制限されず、例えば、フィルムシートであってもよい。
【実施例】
【0118】
次に、図6から図9により、本発明の実施例及び比較例を、実験に基づいて説明する。ただし、本発明は、以下の実施例のみに限定されるものでない。
図6は、実験に用いた各粒径のトナーにおいて、印加電圧(調整値)Vsに対する付着量の関係を示すグラフである。図7は、実験に用いた各径のトナーにおいて、印加電圧(調整値)Vsと濃度IDとの関係を示すグラフである。図8は、実験に用いた各径のトナーの付着量と濃度IDとの関係を示すグラフである。図9は、連続現像時による濃度IDの変化を示すグラフである。
【0119】
[実験の方法及び目的]
トナー径の違いによる現像性、及び温度・湿度が異なる環境下において現像率(印字率)を変化させた場合において、現像ローラの表面に形成されるトナー層のトナーの平均径を調べた。ここで、印刷枚数は各10枚に設定した。
また、上述の1次補正及び2次補正を行った場合とこれらを行なわなかった場合とにおける濃度の変化を検討した。
【0120】
[実験に供した条件]
現像ローラの直径:25mm
現像ローラの回転速度:400mm/sec
磁気ローラの直径:25mm
磁気ローラの回転速度:600mm/sec
層厚規制ブレードと磁気ローラとの間のギャップ:0.50mm
印加電圧:100から300V
ピーク電圧:1000V
トナー径:4、5、6、7、8μmφ
【0121】
[実験の結果と考察]
図6から図8に示すグラフから明らかなように、トナー径が小さいほど付着量が少なく、高い濃度を示している。この結果から、例えば7μmφのトナーを使用して、目標濃度:1.4とするためには、200Vの印加電圧が必要であるのに対して、4μmφのトナーを使用して、目標濃度:1.4とするためには、290Vの印加電圧が必要である。これらの傾向から、トナー径が1μmφ変化すると、印加電圧に約30Vの差が生じることがわかる。
また、現像ローラに小径トナーが蓄積すると、チャージアップして、トナー層が薄くなり、その状態のまま現像すると、濃度の低下が懸念される。しかし、図8に示すように、トナーが小径になる程、トナーは少ない付着量で高い濃度を呈するので、小径トナーの蓄積による濃度の低下は問題とならないことが確認できた。
【0122】
また、温度・湿度が異なる環境下において現像率(印字率)を変化させた場合において、現像ローラの表面に形成されるトナー層におけるトナーの平均径を調べたところ、表1から表3に示すような結果が得られた。なお、ここでは、7μmφのトナーを使用した。
【0123】
【表1】

【0124】
【表2】

【0125】
【表3】

【0126】
表1から表3から明らかなように、外気温度及び湿度が低温・低湿になればなる程、現像ローラの表面に形成されるトナー層のトナー径が小さくなること、並びに、現像率(印字率)が低くなればなる程、現像ローラの表面に形成されるトナー層のトナー径が小さくなることがわかる。
【0127】
以上のように、図7に示す通り、トナー径が1μmφ変化すると、印加電圧に約30Vの差が生じることを鑑みると、電圧差調整部273による2次補正のための電圧差の調整値Vsを求める式(1)における係数Kは、例えば、「30」とすればよいことになる。したがって、2次補正のための電圧差の調整値Vsは、
調整値Vs=30×(標準トナー径−トナー径算出部により算出されたトナー径)…(1)となる。
【0128】
また、例えば、トナー径が7μmφ、現像率(印字率)が5%、外気温度が37℃、湿度が40%、1次補正のための印加電圧が200Vの場合においては、
調整値Vs=30×{7−(6.5)}=15Vとなる。
よって、1次補正のための電圧差の調整値 + 2次補正のための電圧差の調整値 = 200V+15V=215V
となる。
【0129】
また、2次補正のための電圧差の調整値15Vを加えて耐刷(耐久連続現像)を行なった場合と、電圧差の調整値を加えないで耐刷(耐久連続現像)を行なった場合とにおいて、濃度の変化を調べたところ、図9に示すような結果が得られた。
図9に示すグラフからも明らかなように、電圧差の調整値として15Vを加えた場合には、耐刷枚数(現像回数)が100枚(100回)を超えても、濃度の低下はほとんどみられず、安定した濃度の印刷(現像)を維持できることが確認された。
【符号の説明】
【0130】
1……コピー機(画像形成装置)、2a、2b、2c、2d……感光体ドラム(像担持体)、16a、16b、16c、16d……現像装置、130……磁気ローラ(現像剤担持体)、150……現像ローラ(トナー担持体)、190……2成分現像剤、191……磁性キャリア、192……トナー、193……トナー層、194……現像剤層(磁気ブラシ)、261……第1電圧印加部、262……第2電圧印加部、271……印加電圧制御部、272……トナー径算出部、273……電圧差調整部、291……現像濃度検出部、300……温度・湿度計測部、T……用紙(被転写材)、V1……第1バイアス電圧、V2……第2バイアス電圧、Vs……電圧差の調整値

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくともキャリア及びトナーを含む2成分現像剤を磁力により保持させて、2成分現像剤に含まれるキャリアによる磁気ブラシを表面に形成する現像剤担持体と、
前記現像剤担持体に対向配置され、前記現像剤担持体から供給されるトナーにより表面にトナー層を形成するトナー担持体と、
前記現像剤担持体に第1バイアス電圧を印加する第1電圧印加部と、
前記トナー担持体に第2バイアス電圧を印加する第2電圧印加部と、
前記第1電圧印加部により印加される第1バイアス電圧と前記第2電圧印加部により印加される第2バイアス電圧との関係を、前記トナー担持体の表面に所定厚さのトナー層が形成される電圧差とするように、前記第1電圧印加部及び第2電圧印加部を制御する印加電圧制御部と、
環境温度及び湿度を計測する温度・湿度計測部と、
所定回数の現像が終了した非現像時において、前記温度・湿度計測部により計測された環境温度及び湿度、並びに予め設定された印字率に基づいて前記トナー担持体の表面に形成されるトナー層のトナー径を算出するトナー径算出部と、
前記トナー径算出部により算出されたトナー径に基づいて、前記電圧差を調整するように前記印加電圧制御部に指示する電圧差調整部と、を備える
現像装置。
【請求項2】
前記電圧差調整部による前記電圧差の調整値は、
所定の係数×(標準トナー径−前記トナー径算出部により算出されたトナー径)なる式で求められる
請求項1に記載の現像装置。
【請求項3】
前記現像装置による現像濃度を検出する現像濃度検出部を更に備え、
前記電圧差調整部は、所定回数の現像が終了した非現像時において、前記トナー径に基づく前記電圧差の調整前に、前記現像濃度検出部により検出された現像濃度に基づいて、前記電圧差を所定の現像濃度に帰還補正するように前記印加電圧制御部に指示する
請求項1又は2に記載の現像装置。
【請求項4】
前記電圧差調整部は、前記現像濃度検出部により検出された現像濃度に基づいて帰還補正された電圧差で現像が開始され、現像回数が所定回数超えたときに、前記トナー径に基づく電圧差の調整を実行する
請求項3に記載の現像装置。
【請求項5】
請求項1から4のいずれかに記載の現像装置と、
表面に静電潜像が形成されると共に、前記現像装置の前記トナー層からトナーの供給を受けて静電潜像にトナー画像が形成される1又は複数の像担持体と、
前記像担持体に形成されたトナー画像を直接的又は間接的にシート状の被転写材に転写する転写部と、
転写されたトナー画像をシート状の被転写材に定着する定着部と、を備える
画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−173340(P2012−173340A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−32315(P2011−32315)
【出願日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【出願人】(000006150)京セラドキュメントソリューションズ株式会社 (13,173)
【Fターム(参考)】