説明

現像装置及び画像形成装置

【課題】多段現像方式で現像剤担持体汚れを良好に抑制する。
【解決手段】感光体2の表面移動方向に沿って、1段目現像スリーブ51aと2段目現像スリーブ51bとを配置し、1段目現像スリーブ表面上の現像剤層厚を規制するドクターブレード52を設け、1段目現像スリーブ表面上から2段目現像スリーブ上に二成分現像剤を受け渡しながら現像おこなう。この現像装置で、1段目現像スリーブのドクターブレードよりも下流、且つ、1段目現像領域よりも上流の領域で、1段目現像スリーブ上の現像剤の磁気穂が接触し得る位置に、現像スリーブ表面とトナーとの間の付着力を低下させる低付着力化物質ブロック60を配設する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複写機、ファクシミリ、プリンタ等に用いられる二成分方式の現像装置、及び、この現像装置を用いた画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、電子写真方式の画像形成装置において、耐久性、画像特性に優れているなどの理由により、トナーと磁性キャリアとを含む現像剤を用いる二成分方式の現像装置が広く用いられている。二成分方式の現像装置としては、複数の磁極を有する磁界発生手段を内包する回転可能な現像スリーブからなる現像剤担持体を用い、磁力により現像スリーブ表面上に現像剤を担持して搬送するものが知られている。
【0003】
一方、近年、画像形成装置は、高画質化かつ高速化の方向に向かっている。高画質化のためには、小粒径トナーを用いて微細なドットを表現できるようにしている。また、高速化のためには、現像スリーブに対してトナーを安定供給するよう現像剤の攪拌・搬送を高速でおこなう構成を採用している。また、最近、画像形成装置の省エネルギー化が求められるようになり、特にエネルギ−消費量の大きいトナー定着過程での省エネルギー化の実現のために、低温定着をおこなうための融点やガラス転移温度の低いトナーを用いるようになってきている。しかし、融点やガラス転移温度の低いトナーは機械的なストレスに対する耐性が低下する傾向にあり、熱に対する耐性も低下することから、低い温度で軟化し易い傾向にある。
【0004】
このような背景で、現像スリーブの表面にトナーが固着して汚れる現象、所謂「スリーブ汚れ」がより重要な問題となりつつある。スリーブ汚れ自体は、以前から存在したが、耐ストレス性の弱い小粒径、かつ、低温定着トナーを、高速化に伴う高ストレスの条件で使いこなさなければならないため、より顕著になってきている。
【0005】
スリーブ汚れが発生すると、次の問題が生じる。トナーが固着した部分の現像スリーブの表面電位は、現像スリーブに印加されている現像バイアスに、固着したトナーの帯電量の影響を加えたものとなるため、トナーの固着がない部分の現像スリーブの表面電位である現像バイアスとの間に差を生じる。現像スリーブの表面にトナーが固着した後に現像が繰り返し行われることで、トナーの固着が増加すると共に、固着したトナーの帯電量がキャリアとの摩擦等により増加するため、固着したトナーがある部分とない部分とで、現像スリーブの表面電位の差が増加する。これに伴い、固着したトナーがある部分とない部分とで、現像スリーブ表面と画像部潜像との電位差で形成される現像電界や、現像スリーブ表面と地肌部潜像との電位差で形成される地肌部電界の差が増加する。固着したトナーがある部分とない部分とで現像電界の差が大きくなると、現像濃度ムラを発生させやすい。また、地肌部電界の差が大きくなると、部分的に地汚れを発生させやすい。このように、スリーブ汚れが生じると、現像濃度ムラや地汚れによる画像劣化を引き起こす虞がある。
【0006】
スリーブ汚れによる不具合を抑制する構成は従来から検討されている(例えば、特許文献1〜5等)が、種々の要因で発生するスリーブ汚れの抑制効果が不十分であった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、本発明者は、スリーブ汚れを抑制するために、特願2010−174023号にて、現像スリーブ表面とトナーとの間の付着力を低下させる低付着力化物質の固形体を、磁界発生手段の磁力により現像スリーブ表面上に形成される現像剤の磁気穂が接触し得る位置に配置する現像装置を提案している。この現像装置では、磁気穂が低付着力化物質を掻き取ることで低付着力化物質を現像剤に付着させ、低付着力化物質が付着した現像剤が現像スリーブ表面に接触することで、現像スリーブ表面に低付着力化物質を供給する。これにより、現像スリーブ表面とトナーとの間の付着力が低下し、現像スリーブ表面にトナーが固着し難くなり、スリーブ汚れを抑制する効果を良好に得ることができる。
【0008】
一方、二成分方式の現像装置において、潜像担持体の表面移動方向に沿って複数の現像スリーブを配置し、上流側現像スリーブ表面上から下流側現像スリーブ表面上に現像剤を受け渡しながら、潜像担持体上に形成された潜像に対して重複して段階的に現像を行う多段現像方式の現像装置が知られている。
【0009】
多段現像方式の現像装置の構成として、2本の現像スリーブを用いた2段現像方式の現像装置の一例を説明する。この現像装置は、2本の現像スリーブを潜像担持体の表面移動方向に沿って隣接して配置する。現像装置には現像により消費される分のトナーが適宜補給され、その補給トナーと撹拌・混合された現像剤が潜像担持体の移動方向に関して上流側現像スリーブ表面上に汲上げられる。上流側現像スリーブ表面上に担持された現像剤は、上流側現像スリーブの回転に伴って搬送され、上流側現像スリーブと現像剤層規制部材との間の規制ギャップを通過することで適量に規制される。その後、潜像担持体と対向する上流側現像領域へと搬送され、潜像担持体上の潜像を現像する。上流側現像領域を通過した上流側現像スリーブ表面上の現像剤は、下流側現像スリーブの内部に配置された磁界発生手段の受渡磁極と対向する位置まで搬送されると、その一部又は全部が下流側現像スリーブ表面上に受け渡され担持される。下流側現像スリーブ表面上に担持された現像剤は、潜像担持体と対向する下流側現像領域へと搬送され、再び潜像担持体上の潜像の現像に寄与する。その後、下流側現像領域を通過した下流側現像スリーブ表面上の現像剤は、下流側現像スリーブから離脱して現像装置内に戻る。このように、潜像担持体上に形成された潜像に対して重複して現像を行うことにより、主に上段側現像剤担持体で現像能力を稼ぎ、下段側現像剤担持体で上流側の現像を補うよう繊細な画質の向上をおこない、高画質化を図ることができる。
【0010】
このような多段現像装置においても、上述の低付着力化物質を用いて、複数の現像スリーブのスリーブ汚れを良好に抑制することが望まれる。
【0011】
本発明は以上の背景に鑑みなされたものであり、その目的は、多段現像方式で現像剤担持体汚れを良好に抑制することができる現像装置、及び、これを備える画像形成装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために、請求項1の発明は、磁界発生手段を内包し、トナーと磁性キャリアとを含む二成分現像剤を表面上に担持して表面移動することによって該現像剤を搬送する現像剤担持体を潜像担持体の表面移動方向に対して複数配置し、該複数の現像剤担持体のうち上流側現像剤担持体表面上の現像剤層厚を規制する現像剤層規制部材を設け、該上流側現像剤担持体表面上から下流側現像剤担持体表面上に現像剤を受け渡しながら現像おこなう現像装置において、上記上流側現像剤担持体の表面移動方向に関して上記現像剤層規制部材よりも下流、且つ、上記潜像担持体と対向する現像領域よりも上流の領域で、該上流側現像剤担持体表面上に上記磁界発生手段の磁力によって形成される現像剤の磁気穂が接触し得る位置に、該現像剤担持体の表面に供給されることで該現像剤担持体の表面と上記トナーとの間の付着力を低下させる低付着力化物質の固形体を配設することを特徴とするものである。
また、請求項2の発明は、請求項1の現像装置において、上記現像剤担持体を3つ以上備え、上記現像剤層規制部材を最上流側現像剤担持体表面上の現像剤層厚を規制するよう配置し、最上流側現像剤担持体の該現像剤層規制部材よりも下流、且つ、潜像担持体と対向する現像領域よりも上流の領域と、最上流側以外かつ最下流側以外の現像剤担持体における現像剤受け渡し領域よりも下流、且つ、潜像担持体と対向する現像領域よりも上流の領域とに、該低付着力化物質の固形体を配置したことを特徴とする現像装置。
また、請求項3の発明は、請求項1の現像装置において、上記現像剤担持体を3つ以上備え、上記現像剤層規制部材を最上流側現像剤担持体表面上の現像剤層厚を規制するよう配置し、最上流側現像剤担持体の該現像剤層規制部材よりも下流、且つ、潜像担持体と対向する現像領域よりも上流の領域のみに、該低付着力化物質の固形体を配置したことを特徴とする現像装置。
また、請求項4の発明は、請求項1、2または3の何れかの現像装置において、上記磁界発生手段によって形成される磁界の現像剤担持体表面上での法線磁束密度と接線磁束密度との値が等しくなる位置のうち、上記法線磁束密度の値がピーク値となる位置を挟んで隣り合う2つの位置に挟まれた領域に上記低付着力化物質の固形体を配置することを特徴とするものである。
また、請求項5の発明は、請求項4の現像装置において、上記磁界発生手段によって形成される磁界の現像剤担持体表面上での法線磁束密度の値がピーク値となる位置に対して該現像剤担持体の表面移動方向下流側に上記低付着力化物質の固形体を配置することを特徴とするものである。
また、請求項6の発明は、請求項4の現像装置において、上記磁界発生手段によって形成される磁界の現像剤担持体表面上での法線磁束密度の値がピーク値となる位置に対して該現像剤担持体の表面移動方向上流側に上記低付着力化物質の固形体を配置することを特徴とするものである。
また、請求項7の発明は、請求項1、2、3、4、5または6の何れかの現像装置において、上記低付着力化物質は、脂肪酸塩であることを特徴とするものである。
また、請求項8の発明は、請求項1、2、3、4、5または6の何れかの現像装置において、上記低付着力化物質の固形体は、シリカ粒子を固形状に固めたものであることを特徴とするものである。
また、請求項9の発明は、請求項1、2、3、4、5、6、7または8の何れかの現像装置において、上記低付着力化物質の固形体は、1[μm]以下の粒子を固形状に固めたものであることを特徴とするものである。
また、請求項10の発明は、潜像を担持する潜像担持体と、該潜像担持体上の潜像を現像する現像手段とを有する画像形成装置において、上記現像手段として、請求項1乃至9のいずれか1項に記載の現像装置を用いたことを特徴とするものである。
【0013】
本発明においては、上流側から下流側の現像剤担持体表面に現像剤を受け渡す多段現像装置で、上流側現像剤担持体表面上の現像剤の磁気穂が低付着力化物質の固形体に接触することにより、上流側現像剤担持体表面上の現像剤に低付着力化物質を付着させる。この現像剤により上流側現像剤担持体表面と下流側現像剤担持体表面とに低付着力化物質を良好に供給できるよう、低付着力化物質の固形体の配置を以下のように規定する。
上流側現像剤担持体上の現像領域で、現像剤の磁気穂が低付着力化物質の固形体に接触して低付着力化物質を掻き取ると、磁気穂が乱れたり、掻き取られた低付着力化物質が潜像担持体に付着したりして、現像に悪影響を及ぼすおそれがある。このため、上流側現像剤担持体上の現像領域に低付着力化物質の固形体を配置することは好ましくない。
上流側現像剤担持体の現像領域よりも下流、かつ、下流側現像剤担持体への受け渡し領域上流で、上流側現像剤担持体表面上の磁気穂が低付着力化物質を掻き取ると、低付着力化物質が付着した現像剤が直ぐに下流側現像剤担持体に受け渡されてしまうため、上流側現像剤担持体表面に低付着力化物質を良好に供給することは難しい。これに対して、下流側現像剤担持体への受け渡し領域より下流で、上流側現像剤担持体表面上の磁気穂が低付着力化物質を掻き取ると、上流側現像剤担持体表面と下流側現像剤担持体表面とに低付着力化物質を供給することはできる。
しかし、低付着力化物質を掻き取った上流側現像剤担持体表面上の現像剤が、受け渡し領域下流となる剤離れ部や、現像剤層規制部材での規制により、現像剤担持体表面から離脱して装置内に落下すると、掻き取った低付着力化物質の上流側および下流側現像剤担持体表面への供給効率が大きく低下する。本発明のように上流側現像剤担持体表面上の現像剤に付着させた低付着力化物質を、上流側だけでなく下流側の現像剤担持体表面にも供給する構成では、単数の現像剤担持体を用いる構成に較べて、掻き取った低付着力化物質をロス無く効率よく供給することが必要となる。
そこで、本発明では、低付着力化物質の固形体を、上流側の現像剤担持体の現像剤層規制部材よりも下流、且つ、現像領域よりも上流の領域に配置する。これにより、低付着力化物質が付着した現像剤が上流側現像剤担持体から離脱することなく上流側現像剤担持体表面に低付着力化物質を供給し、ついで下流側現像剤担持体に受け渡されて下流側現像剤担持体表面に低付着力化物質を供給する。よって、上流側現像剤担持体表面と下流側現像剤担持体表面とに良好に低付着力化物質を供給することができる。
なお、現像剤層規制部材通過後の上流側の現像領域に近い位置で、磁気穂が低付着力物質を掻き取る際に、磁気穂が乱れによる濃度ムラ等、画質への悪影響が懸念される。しかしながら、多段現像装置では、上流側現像剤担持体による現像で画像ムラ等が発生していても、下流側現像剤担持体に現像剤が受け渡された時に、掻き取り時の影響はリセットされる。そして、下流側現像剤担持体による現像で上流側現像を補うよう繊細な画質の向上を図ることができるので、上記画像上の問題を発生する虞がない。
これにより、上流側現像剤担持体表面及び下流側現像剤担持体表面とトナーとの間の付着力が低下して、上流側現像剤担持体汚れ及び下流側現像剤担持体汚れを良好に抑制することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、多段現像方式で現像剤担持体汚れを良好に抑制することができるという優れた効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本実施形態に係る現像装置の概略構成図。
【図2】同現像装置を適用可能なプリンタの一例の主要構成を示す模式図。
【図3】同現像装置を適用可能なプリンタの他の例の主要構成を示す模式図。
【図4】同現像装置を適用可能なプリンタのさらに他の例の主要構成を示す模式図。
【図5】同現像装置の現像スリーブ近傍の拡大図。
【図6】実施例1の現像装置の低付着力化物質を配置した磁極ピーク位置近傍の模式図。
【図7】実施例2の現像装置の低付着力化物質を配置した磁極ピーク位置近傍の模式図。
【図8】実施例3の現像装置の低付着力化物質を配置した磁極ピーク位置近傍の模式図。
【図9】実施例4の現像装置の低付着力化物質を配置した磁極ピーク位置近傍の模式図。
【図10】実施例5の現像装置の低付着力化物質を配置した磁極ピーク位置近傍の模式図。
【図11】実施例6の現像装置の低付着力化物質を配置した磁極ピーク位置近傍の模式図、(a)は、1段目現像スリーブの表面移動方向に対して直交する方向から見た模式図、(b)は、1段目現像スリーブの表面移動方向に平行な方向から見た模式図。
【図12】実施例7の3段現像装置の現像スリーブ近傍の拡大図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を画像形成装置としてのプリンタ(以下、プリンタ100という)に適用した実施形態について説明する。
図2は、本発明を適用したプリンタ100の一例における主要構成を示す模式図である。図2に示すプリンタ100においては、図示しない本体筐体内に、図2中時計方向に回転駆動される感光体2が収納されている。感光体2の周囲には、帯電手段としての帯電部3、静電潜像形成手段としての書込部4、現像手段としての現像装置5、転写手段としての転写ローラ6、クリーニング手段としてのクリーニング部7、除電手段としての感光体除電部8等が設けられている。
プリンタ100は、複数枚の記録材としての記録紙Pを収納する図示しない給紙カセットを備えている。給紙カセット内の記録紙Pは、図示しない給紙ローラにより1枚ずつレジストローラ対9に送られ、レジストローラ対9でタイミング調整された後、転写ローラ6と感光体2との間の転写領域に送り出される。
【0017】
図2に示すプリンタ100において画像形成を行う場合、まず、感光体2を図2中時計方向に回転駆動して感光体2の表面を帯電部3で一様に帯電する。その後、一様に帯電された感光体2の表面部分に対し、画像データで変調されたレーザを書込部4により照射して、感光体2の表面に静電潜像を形成する。感光体2の表面上の静電潜像には、現像装置5によりトナーが付着し、これによりトナー像が形成される。このトナー像は、感光体2と転写ローラ6との間の転写領域に搬送されてきた記録紙P上に転写される。トナー像が転写された記録紙Pは、定着部10に搬送される。定着部10は、内蔵ヒータにより所定の定着温度に加熱される定着ローラと、定着ローラに所定圧力で押圧される加圧ローラとを備え、転写領域から搬送されてきた記録紙Pを加熱及び加圧して、記録紙P上のトナー像を記録紙Pに定着させる。定着後の記録紙Pは、図示しない排紙トレー上に排出する。
一方、転写領域を通過後の感光体2の表面に残留した転写残トナーは、ファーブラシ13及びクリーニング部7のクリーニングブレードにより掻き取られて感光体2の表面から除去される。その後、感光体除電部8により感光体2の表面を除電し、次の画像形成工程に移行する。
【0018】
図3は、本発明を適用したプリンタ100の他の例における主要構成を示す模式図である。図3に示すプリンタ100は、いわゆるタンデム型のフルカラー画像形成装置である。このプリンタ100は、図示しない本体筐体内に、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)、黒(K)の各色に対応した潜像担持体としての4つの感光体2が収納されている。各感光体2の周囲には、それぞれ、帯電手段としての帯電部3、静電潜像形成手段としての書込部4、現像手段としての現像装置5、中間転写手段を構成する中間転写ベルト16、クリーニング手段としてのクリーニング部7等が設けられている。また、このプリンタ100は、複数枚の記録材としての記録紙Pを収納する図示しない給紙カセットを備えている。給紙カセット内の記録紙Pは、図示しない給紙ローラにより1枚ずつ図示しないレジストローラ対に送られ、このレジストローラ対でタイミング調整された後、二次転写ローラ18と中間転写ベルト16との間の二次転写領域に送り出される。
【0019】
図3に示すプリンタ100において画像形成を行う場合、まず、各感光体2を図3中時計方向に回転駆動するとともに中間転写ベルト16を図3中反時計方向に回転駆動する。そして、各感光体2の表面を帯電部3で一様に帯電した後、各感光体2の表面に対して画像データで変調されたレーザを書込部4により照射して、各感光体2の表面に各色の静電潜像を形成する。各感光体2の表面上の各色静電潜像には、現像装置5により各色トナーがそれぞれ付着し、これにより各色トナー像が形成される。この各色トナー像は、各感光体2と中間転写ベルト16との間の一次転写領域で中間転写ベルト16上に互いに重なり合うように一次転写される。中間転写ベルト16上の各色トナー像は、互いに重なり合った状態で、中間転写ベルト16と二次転写ローラ18との間の二次転写領域に搬送されてきた記録紙P上に転写される。このようにしてトナー像が転写された記録紙Pは、図示しない定着部に搬送される。この定着部も、図2に示したプリンタ100と同様のものであり、記録紙Pを加熱及び加圧して、記録紙P上のトナー像を記録紙Pに定着させる。定着後の記録紙Pは、図示しない排紙トレー上に排出する。一方、一次転写領域を通過後の感光体2の表面に残留した転写残トナーは、各クリーニング部7のクリーニングブレードにより掻き取られて感光体2の表面から除去される。その後、図示しない感光体除電部により感光体2の表面を除電し、次の画像形成工程に移行する。クリーニング部7は、クリーニングブレードで感光体2上の転写残トナーを掻き落とすものに限るものではなく、例えばファーブラシ13で感光体2上の転写残トナーを掻き落とすものであってもよい。
【0020】
図4は、本発明を適用したプリンタ100の他の例における主要構成を示す模式図である。図4に示すプリンタ100は、いわゆる1ドラム型のフルカラー画像形成装置である。このプリンタ100は、図示しない本体筐体内に、潜像担持体としての感光体2が収納されている。感光体2の周囲には、帯電手段としての帯電部3、静電潜像形成手段としての書込部4、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)、黒(K)の各色に対応した現像手段としての現像装置5C,5M,5Y,5K、中間転写手段を構成する中間転写ベルト16、クリーニング手段としてのクリーニング部7等が設けられている。また、このプリンタ100は、複数枚の記録材としての記録紙Pを収納する図示しない給紙カセットを備えている。給紙カセット内の記録紙Pは、図示しない給紙ローラにより1枚ずつ図示しないレジストローラ対に送られ、このレジストローラ対でタイミング調整された後、二次転写ローラ18と中間転写ベルト16との間の二次転写領域に送り出される。
【0021】
図4に示すプリンタ100において画像形成を行う場合、まず、感光体2を図4中時計方向に回転駆動するとともに中間転写ベルト16を図4中反時計方向に回転駆動する。そして、感光体2の表面を帯電部3で一様に帯電した後、感光体2の表面に対してC用画像データで変調されたレーザを書込部4により照射して、感光体2の表面にC用静電潜像を形成する。そして、このC用静電潜像をシアン用現像装置5CによりCトナーで現像を行う。これにより感光体2上に形成されたC用トナー像は、感光体2と中間転写ベルト16とによって形成されるC用の一次転写領域で中間転写ベルト16上に一次転写される。その後、感光体2の表面に残留した転写残トナーをクリーニング部7で除去した後、再び感光体2の表面を帯電部3で一様に帯電する。次に、感光体2の表面に対してM用画像データで変調されたレーザを書込部4により照射して、感光体2の表面にM用静電潜像を形成する。そして、このM用静電潜像をマゼンタ用現像装置5MによりMトナーで現像を行う。これにより感光体2上に形成されたM用トナー像は、中間転写ベルト16上に既に一次転写されているC用トナー像と重なり合うようにして、M用の一次転写領域で中間転写ベルト16上に一次転写される。以後、Y及びKについても、同様に中間転写ベルト16上に一次転写する。このようにして互いに重なり合った状態となった中間転写ベルト16上の各色トナー像は、中間転写ベルト16と二次転写ローラ18との間の二次転写領域に搬送されてきた記録紙P上に転写される。このようにしてトナー像が転写された記録紙Pは、図示しない定着部に搬送される。この定着部も、図2に示したプリンタ100と同様のものであり、記録紙Pを加熱及び加圧して、記録紙P上のトナー像を記録紙Pに定着させる。定着後の記録紙Pは、図示しない排紙トレー上に排出する。
【0022】
次に、図2〜4のプリンタ100に適用可能な本発明の特徴部を備えた現像装置5について説明する。
図1は、本実施形態に係る現像装置5の概略構成図である。図1の現像装置5は、2本の現像スリーブを用いた2段現像方式の現像装置である。現像装置5は、ケーシング56内に、感光体2の表面移動方向に関して上流側現像スリーブとなる1段目現像スリーブ51aと、下流側現像スリーブとなる2段目現像スリーブ51bという2本の現像スリーブを設けている。1段目現像スリーブ51a、2段目現像スリーブ51bは、磁界を形成するマグネットが固設したマグネットロール(不図示)をそれぞれ内包しており、トナー及び磁性キャリアを含む二成分現像剤を表面に担持する現像剤担持体である。
【0023】
1段目現像スリーブ51aと2段目現像スリーブ51bとは、それぞれ感光体2の表面に近接するように対向配置されていて、その対向位置が現像領域となる。さらに、現像装置5は、1段目現像スリーブ51a上の現像剤層厚を規制する現像剤層規制部材としてのドクターブレード52を備えている。また、1段目現像スリーブ51aに供給する現像剤を撹拌・搬送する撹拌搬送部材である供給スクリュウ53aと攪拌搬送路としての現像剤供給搬送路54aと、2段目現像スリーブ51bから回収した現像剤を撹拌・搬送する撹拌搬送部材である回収スクリュウ53bと攪拌搬送路としての現像剤回収搬送路54bと、2段目現像スリーブ51b上のキャリアを捕集するキャリア捕集ローラ55等を備えている。
【0024】
1段目現像スリーブ51a、2段目現像スリーブ51bは、アルミニウム、真鍮、ステンレス、導電性樹脂等の非磁性体を円筒形に形成してなり、不図示の回転駆動機構によって図1中時計方向に回転されるように構成されている。内包するマグネットから発せられる法線方向磁力線に沿うように、現像剤中の磁性キャリアが1段目現像スリーブ51aおよび2段目現像スリーブ51b上にチェーン状に穂立ちする。このチェーン状に穂立ちした磁性キャリアに帯電したトナーが付着されて、磁気穂が形成される。磁気穂は、1段目現像スリーブ51aと2段目現像スリーブ51bの回転によってスリーブと同方向(時計方向)に移送される。
【0025】
1段目現像スリーブ51a、2段目現像スリーブ51bに内包されるマグネットロールは材料としてSrフェライトないしBaフェライトの磁性粉に、6PAもしくは12PA等のPA(ポリアミド)系材料、EEA(エチレン・エチル共重合体)またはEVA(エチレン・ビニル共重合体)等のエチレン系化合物、CPE(塩素化ポリエチレン)等の塩素系材料、NBR等のゴム材料の高分子化合物を混合したプラスチックマグネットもしくはゴムマグネットを用いることが多い。また、マグネット成型体は、現像ローラ軸方向に延びる棒状のブロックであり、幅が狭く且つ高い磁気特性を得るために、Br>0.5T(テスラ)の材料を用いることが望ましく、多くはNe系(Ne・Fe・B等)又はSm系(Sm・Co、Sm・Fe・N等)の希土類マグネットもしくはこれらのマグネット粉を上記と同様の高分子化合物と混合したプラスチックマグネットもしくはゴムマグネットを用いることができる。
【0026】
ドクターブレード52は、1段目現像スリーブ51aによる1段目現像領域より上流で、1段目現像スリーブ51a表面と対向配置され、1段目現像スリーブ51a表面上に担持された現像剤が通過することにより1段目現像領域へ搬送される現像剤の量を規制するための規制ギャップを形成する。本実施形態におけるドクターブレード52は、SUS316やXM7等の非磁性金属材料(弱磁性金属材料も含むものとする。)で形成された板厚が2mm程度の板状部材である。
【0027】
図5は、現像装置5の現像スリーブ近傍の拡大図である。図5には、1段目現像スリーブ51a、2段目現像スリーブ51bの表面上における法線磁束密度(絶対値)の分布(図5中の二点鎖線A)と接線磁束密度(絶対値)の分布(図5中の破線B)を示している。1段目現像スリーブ51a表面には内包されるマグネットローラ(不図示)の各磁極H11〜H15により、2段目現像スリーブ51b表面上では内包されるマグネットローラ(不図示)の各磁極H21〜H25により、図5において二点鎖線Aで示すような法線磁束密度および破線Bで示すような接線磁束密度分布が得られる。
【0028】
1段目現像スリーブ51aのマグネットローラ(不図示)は、感光体2との対向位置に形成される主磁極H11、ドクターブレード52と対向するよう形成されるドクタ対向磁極H13、主磁極H11とドクタ対向磁極H13との間に形成される搬送極H12、供給スクリュウ53aとの対向位置に形成される汲上げ磁極H14、2段目現像スリーブ51bとの対向位置に形成される1段目受渡磁極H15を備えている。
2段目現像スリーブ51bのマグネットローラ(不図示)2は、感光体2との対向位置に形成される主磁極H21、1段目現像スリーブ51a(1段目受渡磁極H15)との対向位置に形成される2段目受渡磁極H22、搬送磁極H23、キャリア捕集ローラ55との対向位置に形成される搬送磁極H25、現像剤回収搬送路54bとの対向位置に形成される剤離れ磁極H24を備えている。
【0029】
トナーと磁性キャリアとを混合した現像剤供給搬送路54a内の現像剤は、供給スクリュウ53aによって撹拌されながら1段目現像スリーブ51aの表面上まで搬送される。このとき、現像剤は、供給スクリュウ53aにより、撹拌・搬送されながら、感光体2上の潜像を現像するのに必要な帯電量をもつ。汲上げ磁極H14がこのような現像剤の磁性キャリアに作用して、現像剤供給搬送路54aに収容されている現像剤が1段目現像スリーブ51a表面上に担持される。1段目現像スリーブ51a上に担持された現像剤は、ドクタ対向磁極H13による磁力が作用する規制ギャップを通過する際に、その一部がドクターブレード52によって規制され、現像剤供給搬送路54aに戻される。このドクターブレード52と1段目現像スリーブ51aの位置関係は、1段目現像領域に供給すべき現像剤量によって決定され、その距離は、0.1〜2mmの範囲内にある。より厳密には、感光体2、1段目現像スリーブ51aの線速、1段目現像スリーブ51aの径、現像剤中のトナー濃度によって決定される。
【0030】
一方、ドクターブレード52を通過した1段目現像スリーブ51a上の現像剤は、搬送極H12により担持された状態で主磁極H11が対向する1段目現像領域まで搬送され、1段目現像領域において主磁極H11の磁力の作用により穂立ちし、感光体2の表面を摺接する。1段目現像スリーブ51aには、図示しない現像剤担持体バイアス電源よりDC、もしくは、DC+ACバイアスが印加される。これにより、1段目現像領域では、感光体2の表面と1段目現像スリーブ51aの表面との間の電位差により、1段目現像スリーブ51a上の現像剤中のトナーが感光体2上の潜像に移動し、感光体2上の潜像が現像される。
【0031】
1段目現像領域を通過した現像剤は、1段目受渡磁極H15の位置(2段目現像スリーブ51bの2段目受渡磁極H22と対向する位置)である現像剤受渡領域まで搬送される。そして、この現像剤受渡領域において、1段目現像スリーブ51a表面上の現像剤の一部又は全部が、1段目現像スリーブ51aの1段目受渡磁極H15及び2段目現像スリーブ51bの2段目受渡磁極H22の磁力(受渡磁力)の作用により、2段目現像スリーブ51b表面上に受け渡される。
【0032】
2段目現像スリーブ51b表面上に受け渡された現像剤は、主磁極H21が対向する2段目現像領域において主磁極H21の磁力が作用して穂立ちし、感光体2の表面を摺接する。2段目現像スリーブ51bには、図示しない現像剤担持体バイアス電源よりDC、もしくは、DC+ACバイアスが印加される。これにより、2段目現像領域では、感光体2の表面と2段目現像スリーブ51bの表面との間の電位差により、2段目現像スリーブ51b上の現像剤中のトナーが感光体2上の潜像に移動し、感光体2上の潜像が現像される。
【0033】
2段目現像領域を通過した現像剤は、搬送磁極H25の磁力の作用により剤離れ磁極H24に向けて搬送される。このとき、搬送磁極H25の磁力の作用により、キャリア捕集ローラ55に捕集・担持されたキャリアを2段目現像スリーブ51b上に移行させながら、2段目現像スリーブ51b上の現像剤を搬送する。剤離れ磁極H24の位置に達した2段目現像スリーブ51b上に担持されている現像処理後の現像剤は、2段目現像スリーブ51bから脱離する。脱離後の現像剤は、現像剤回収搬送路54bに回収されて、回収スクリュウ53bによって搬送される。
【0034】
現像剤回収搬送路54b内の現像剤は、図示しない循環搬送手段により現像剤供給搬送路54a内に搬送される。このとき必要に応じて、トナー補給等を行い、トナー濃度を調整した現像剤を現像剤供給搬送路54aに搬送する。
【0035】
さらに、本実施形態の現像装置5では、現像スリーブ表面とトナーとの間の付着力を低下させる低付着力化物質を1段目現像スリーブ51a表面および2段目現像スリーブ51b表面に供給することで、現像スリーブの汚れを抑制する。詳しくは、1段目現像スリーブ51a表面上の現像剤に付着させ、現像剤に付着させた低付着力化物質を1段目現像スリーブ51a表面および2段目現像スリーブ51b表面に供給することで、現像スリーブの汚れを抑制する。
【0036】
図1、5に示すように、1段目現像スリーブ51aのドクターブレード52よりも下流、且つ、1段目現像領域よりも上流となる位置に低付着力化物質の固形体である低付着力化物質ブロック60を配置する。具体的には、ドクターブレード52を通過した現像剤を1段目現像領域まで搬送する搬送極H12が配置された1段目現像スリーブ51aの表面と対向する位置近傍のケーシング56に低付着力化物質ブロック60を付設する。この低付着力化物質ブロック60は、搬送極H12の法線方向磁力線に沿って1段目現像スリーブ51a表面上に形成される磁性キャリアの磁気穂が接触し得る位置に配置される。
【0037】
磁気穂が、低付着力化物質ブロック60に接触することで、低付着力化物質が磁気穂によって掻き取られ、磁気穂を形成する現像剤に付着する。低付着力化物質が付着した現像剤が1段目現像スリーブ51a表面に接触することで、1段目現像スリーブ51a表面に低付着力化物質が供給される。これにより、種々の要因に関係なく、1段目現像スリーブ51a表面とトナーとの間の付着力が低下して1段目現像スリーブ51a表面にトナーが固着し難くなり、1段目スリーブ汚れを抑制することができる。
【0038】
1段目側現像領域通過後、低付着力化物質が付着した現像剤が1段目現像スリーブ51a表面上から2段目現像スリーブ51b表面上に受け渡される。2段目現像スリーブ51b上に受け渡された低付着力化物質が付着した現像剤が、2段目現像スリーブ51b表面に接触することで、2段目現像スリーブ51b表面に低付着力化物質が供給される。これにより、種々の要因に関係なく、2段目現像スリーブ51b表面とトナーとの間の付着力が低下して2段目現像スリーブ51b表面にトナーが固着し難くなり、2段目スリーブ汚れを抑制することができる。
【0039】
ここで、1段目現像スリーブ51a表面と2段目現像スリーブ51b表面とに良好に低付着力化物質を供給するための、低付着力化物質ブロック60の配置について、詳しく説明する。
1段目現像領域では、掻き取る際に磁気穂が乱れたり、掻き取られた低付着力化物質が感光体2に付着したり、現像に悪影響を及ぼすおそれがあるため、低付着力化物質ブロック60を配置することはできない。
【0040】
1段目現像スリーブ51aによる1段目現像領域よりも下流、かつ、2段目現像スリーブ51bへの受け渡し領域上流で、1段目現像スリーブ51a表面上の磁気穂が低付着力化物質を掻き取ると、低付着力化物質が付着した現像剤が直ぐに2段目現像スリーブ51bに受け渡されてしまうため、1段目現像スリーブ51a表面に低付着力化物質を良好に供給することは難しい。2段目現像スリーブ51bへの受け渡し領域より下流で、1段目現像スリーブ51a表面上の磁気穂が低付着力化物質を掻き取ると、1段目現像スリーブ51a表面と2段目現像スリーブ51b表面とに低付着力化物質を供給することはできる。
【0041】
しかし、低付着力化物質を掻き取った1段目現像スリーブ51a表面上の現像剤が、汲上げ磁極H14より上流の剤離れ部や、ドクターブレード52での規制により、1段目現像スリーブ51a表面から離脱して装置内に落下すると、掻き取った低付着力化物質の1段目現像スリーブ51a表面および2段目現像スリーブ51b表面への供給効率が大きく低下する。本実施形態のように1段目現像スリーブ51a表面上の現像剤に付着させた低付着力化物質を、1段目現像スリーブ51a表面だけでなく2段目現像スリーブ51b表面にも供給する構成では、単数の現像スリーブを用いる構成に較べて、掻き取った低付着力化物質をロス無く効率よく供給することが必要となる。
【0042】
そこで、本実施形態では、上述のように低付着力化物質ブロック60を、1段目現像スリーブ51aのドクターブレード52よりも下流、且つ、1段目現像領域よりも上流に配置する。これにより、低付着力化物質が付着した現像剤が1段目現像スリーブ51aから離脱することなく1段目現像スリーブ51a表面に低付着力化物質を供給し、ついで、2段目現像スリーブ51bに受け渡されて2段目現像スリーブ51b表面に低付着力化物質を供給する。よって、1段目現像スリーブ51a表面と2段目現像スリーブ51b表面とに良好に低付着力化物質を供給することができる。
【0043】
なお、ドクターブレード52通過後の1段目現像領域に近い位置で、磁気穂が低付着力物質を掻き取る際に、磁気穂が乱れによる濃度ムラ等、画質への悪影響が懸念される。しかしながら、多段現像装置では、1段目現像スリーブ51aによる現像で画像ムラ等が発生していても、2段目現像スリーブ51bに現像剤が受け渡された時に、掻き取り時の影響はリセットされる。
【0044】
さらに、多段現像装置においては、2段目現像スリーブ51bによる現像で1段目現像スリーブ51aの現像を補うよう繊細な画質の向上を図ることができる。例えば、上述のように、二段現像において、両段に同一の現像バイアスを印加する場合、1段目の現像は2段目の現像と比較して現像量が多い。これは、1段目の現像後の時点で、ある程度、潜像が現像されたトナーで埋められるため、2段目の現像ポテンシャルが減少するためと考える。例えば、1段目の現像後の現像量を、2段目まで現像した場合の現像量を比較すると、1段目の現像後の時点で、2段目まで現像した場合の現像量の7〜8割は現像していることがわかっている。一方、2段目の現像では、1段目の現像で形成した感光体2上のトナー像を整える、もしくは、不要なトナーを回収することで、画質を改善する効果があると考えられている。一般的に、現像スリーブに内包されるマグネットローラは現像領域中の現像剤の動きを決定するため、画質に大きく影響すると考えられているが、1段目のマグネットローラよりも2段目のマグネットローラを変えたほうが、最終的な画質には及ぼす影響が大きいことがわかっている。
このように、本実施形態の現像装置5においては、1段目現像スリーブ51aによる現像が乱れても、2段目現像スリーブ51bによる現像で1段目の現像を補うよう繊細な画質の向上を図ることができるので、上記画像上の問題を発生する虞がない。
これにより、1段目現像スリーブ51a及び2段目現像スリーブ51b表面とトナーとの間の付着力が低下して、1段目現像スリーブ51a及び2段目現像スリーブ51bのスリーブ汚れを良好に抑制することができる。
【0045】
ここで、スリーブ汚れによる不具合と、これを抑制する従来の構成について詳しく説明する。
スリーブ汚れが発生すると、現像が繰り返し行われることで、現像スリーブ表面に固着したトナーの帯電量がキャリアとの摩擦等により増加する。これにより、トナーが固着した現像スリーブの表面部分における電位の絶対値は、その現像スリーブに印加されている現像バイアスより決まる電位の絶対値よりも高いものとなる。この結果、ネガ/ポジ現像方式では、トナーが固着した現像スリーブの表面部分では、トナーが固着していない表面部分に比べ、現像バイアスが高くなったのと同じ状態になる。また、ポジ/ポジ現像方式では現像バイアスが低くなったのと同じ状態になる。
したがって、スリーブ汚れが生じると、現像電界にムラが生じ、画質が劣化することになる。また、トナーが固着した現像スリーブの表面部分における電位の絶対値が大きくなる結果、逆現像電界が弱まり、これも画質に悪影響を及ぼす。
【0046】
具体的には、いわゆるネガ/ポジ現像方式を採用する場合には、トナーが固着した現像スリーブの表面部分では、感光体上の潜像が存在しない部分にもトナーが移動しやすくなり、地肌汚れが発生しやすくなる。また、いわゆるポジ/ポジ現像方式を採用する場合には、トナーが固着した現像スリーブの表面部分では、地肌汚れではなく低濃度画像となりやすくなる。
ここで、ネガ/ポジ現像方式とは、帯電したトナーと同極性に帯電された感光体上にネガ潜像を作像し、現像バイアスとしてトナーと同極性を印加してトナーを現像する方式である。
また、ポジ/ポジ現像方式とは、帯電したトナーと逆極性に帯電された感光体上にポジ潜像を作像し、現像バイアスとしてトナーと逆極性を印加してトナーを現像する方式である。
【0047】
スリーブ汚れによる不具合を抑制する構成は従来から検討されており、例えば、特許文献1〜5に記載のものがある。
特許文献1では、使用環境の湿度が低いときに現像剤の帯電量が高くなることによって、現像剤を現像スリーブ表面に引き付けるよう力が強まり、スリーブ汚れが発生し易くなることに着目している。そして、湿度が低く、現像剤の帯電量が高くなってスリーブ汚れを生じる恐れがある場合に、画像形成動作に入る前に現像スリーブを1回転させる画像形成装置が開示されている。これは、現像スリーブを1回転させることにより、現像スリーブに付着したトナーと現像装置の現像剤収容部内のトナーとの摺擦によりスリーブ汚れを形成するトナーが現像スリーブから除去される、というものである。しかし、スリーブ汚れは現像剤の帯電量の上昇だけでなく様々な要因で生じ得るものである。また、トナー材料によっては低湿環境下に限らずトナー帯電量が高くなることもある。よって、使用環境の湿度が低いときにのみスリーブ汚れを抑制する制御を実行する特許文献1に開示された画像形成装置では、スリーブ汚れを抑制する効果は少ないという不具合がある。また、湿度が低下するたびに現像スリーブを1回転させるのでは、近年の高速化の要求に応えることができないという不具合もある。
【0048】
これに対して、本実施形態の現像装置5では、磁気穂によって低付着力化物質を掻き取る構成であるため、低湿度以外の原因に起因するスリーブ汚れも抑制することができる。さらに、画像形成時等の1段目現像スリーブ51aおよび2段目現像スリーブ51bの回転動作によって1段目現像スリーブ51aおよび2段目現像スリーブ51b表面に低付着力化物質を供給し、スリーブ汚れを抑制できる。よって、スリーブ汚れを抑制するために画像形成前に1段目現像スリーブ51aおよび2段目現像スリーブ51bを1回転させる必要がなく、特許文献1に記載の構成のように、近年の高速化の要求を阻害することはない。
【0049】
特許文献2には、現像スリーブ表面を滑らかな凸凹状にサンドブラスト加工し、その表面に無電解メッキを施した画像形成装置が開示されている。この画像形成装置によれば、表面に無電解メッキを施すことでトナーの現像スリーブへの付着を抑制できるとしている。しかし、この画像形成装置を長期的に使用すると、現像スリーブ表面が磨耗して、その効果が減ってしまうという不具合がある。現像スリーブを製造するには製造コストが高くなるという不具合もある。
【0050】
特許文献3及び特許文献4には、現像位置における磁力分布を調節して、スリーブ汚れが起きにくいように2成分現像剤のキャリアを穂立ちさせる画像形成装置が開示されている。しかし、これらの特許文献に開示の磁力分布を実現するには磁極配置に制限が生じ、実用上多くの制限があるという不具合がある。
【0051】
特許文献5には、十分に大きな逆現像電界を形成するために非潜像形成領域である地肌部分と現像スリーブ表面との間の地肌ポテンシャルを大きくした画像形成装置が開示されている。この画像形成装置では、スリーブ汚れが発生しても画像の地肌部分に汚れが生じないようにしている。しかし、地肌ポテンシャルが大きいと、トナーに対して逆極性に帯電したキャリアが感光体上の地肌部分に付着するキャリア付着が生じ、そのキャリア付着により画質が劣化するという別の不具合が生じやすくなる。特に、小粒径のキャリアを使用した画像形成装置では、キャリア付着が顕著となり、実用レベルで使用することは困難であるという不具合もある。
【0052】
現像装置5のように、2成分方式の現像装置の場合、1段目現像スリーブ51a上を現像剤が磁気穂を形成した状態で移動する。この磁気穂の寝起きを利用することで、ブロック状の塊から低付着力化物質を掻き取り、1段目現像スリーブ51a及び2段目現像スリーブ51b表面に塗布できる。磁気穂によって低付着力化物質を掻きとって塗布する構成であれば、経時でも一定の効果を維持でき、また、キャリア付着等の不具合も起こらない。また、磁力分布等を調整する必要も無いので、元々の構成に単純に付加するだけで発明を適用できる。すなわち、本発明は、実用化している構成、または、実用化できる構成の磁気穂が接触し得る位置に低付着力化物質の固形体を配置すればよいため、高コスト化や実用が困難であるなど新たな不具合が生じることがない。また、磁気穂が接触し得る位置に低付着力化物質の固形体を配置する構成であるため、1段目現像スリーブ51a及び2段目現像スリーブ51b表面に特別な加工を施す必要がなく、上記特許文献2の現像スリーブの製造コストが高くなるという不具合を防止できる。
【0053】
低付着力化物質ブロック60としては、ステアリン酸亜鉛を始めとした高級脂肪酸金属塩や、シリカ等の数十から数百[nm]の大きさのナノ粒子を固形状にしたものを用いることができる。
ステアリン酸亜鉛は代表的なラメラ結晶紛体であるが、このような物質を低付着力化物質として使用することは好適である。ラメラ結晶は両親媒性分子が自己組織化した層状構造を有しており、せん断力が加わると層間にそって結晶が割れて滑りやすい。この作用が低摩擦係数化に効果があり、せん断力を受けて均一に被覆対象の表面を覆っていくラメラ結晶の特性は少量でも効果的に1段目現像スリーブ51a及び2段目現像スリーブ51b表面を覆うことが出来る。
また、ナノ粒子での低付着力化物質としては、具体的には、シリカ、酸化チタン、アルミナ、炭化ケイ素など各種の流動化剤が使用できるが、特に疎水化されたシリカが特に好ましい。このような流動化剤は表面処理を行って、疎水性を上げ、高湿度下においても流動特性や帯電特性の悪化を防止することができ、1段目現像スリーブ51a及び2段目現像スリーブ51b上の現像剤薄層が均一化する。例えばシランカップリング剤、シリル化剤、フッ化アルキル基を有するシランカップリング剤、有機チタネート系カップリング剤、アルミニウム系のカップリング剤、シリコーンオイル、変性シリコーンオイルなどが好ましい表面処理剤として挙げられる。
【0054】
1段目現像スリーブ51a及び2段目現像スリーブ51bが低付着力化できているか否かは、例えば、原子間力顕微鏡(AFM)を用いた付着力測定手法を用いることができる。以下に、原子間力顕微鏡とそれを用いた付着力測定方法の概要を述べる。ただし、トナー等の粉体1個体と現像スリーブなどの部材との付着力測定方法は、部材上の複数の位置で付着力測定が可能であればよく、原子間力顕微鏡を用いた方法には限らない。特開2001−183289号公報に記載されている方法を応用しても可能である。
【0055】
原子間力顕微鏡(AFM)の動作原理については多くの公知の文献(例えばAppl.Phys. Lett.56号1758頁(1990年))がある。窒化ケイ素や二酸化ケイ素などの物質表面を有する針(プローブチップ、以下、チップともいう。)を先端に有するカンチレバーを用いて、チップを測定試料表面に近付けて、試料表面間とプローブチップの間にはたらく力(表面間力)を、フォトダイオードの反射を用いてカンチレバーの反りあるいは撓みとして測定し、シグナルとしてフィードバック制御に結び付け、チップと試料表面との間の距離をピエゾ素子によって制御するというのが代表的な非接触型AFMの動作原理である。
【0056】
原子間力顕微鏡を用いて付着力を測定する際は、カンチレバーを装飾しなければならない。具体的には、エポキシ樹脂等の接着剤で、カンチレバー先端に対象の粉体を取り付ける。取り付ける作業は、特開2002−62253号公報に記載されているような専用機器を用いるか、もしくは、原子間力顕微鏡(AFM)によっても、取り付けることができる。
【0057】
また、原子間力顕微鏡で付着力を測定する方法は、主に二通りの方法がある。
一つは、フォースカーブ法、もしくは、フォースディスタンスカーブ法という方法である。具体的な測定行為としては、カンチレバー先端と試料表面の離間、接触、離間を連続しておこなう。カンチレバー先端と試料表面の離間の瞬間のカンチレバーのたわみ量から、カンチレバーと試料表面の付着力を測定する方法である(例えば、特開2002―62253号公報)。
【0058】
もう一つは、パルスフォースモード法という方法で、フォースカーブ法を応用したものである(例えばAppl.Phys. Lett.18号2632頁(1997年))。概念としては、フォースカーブ法がある一点でおこなう測定であるのに対して、パルスフォースモード法は、二次元領域内でフォースカーブ法を連続的におこなう測定である。具体的には、試料表面上を0.1[Hz]から10[Hz]程度でスキャンしながら、垂直方向に試料台を100[Hz]から1000[Hz]程度で振動させることで、カンチレバー先端と試料表面の接触、離間を連続的におこなう。
【0059】
試料の測定領域条件は500[nm]から10000[nm]の領域設定で評価をおこなうのが好適である。付着力分布評価時に、領域が小さすぎる場合、付着力の局所的な偏りの影響が大きくなり、付着力分布から判別を行うのに適した標準偏差が得られないため適正な判別が行えない。評価対象にも依存するが、具体的には500[nm]以上の領域に設定するのが良い。
【0060】
また、付着力測定装置として、原子間力顕微鏡を用いる場合、あまりに大きな領域設定は、設定できない。機種にもよるが、例えば、パルスフォースモード法での最大の設定領域は、数千[nm]から10000[nm]である。また、原子間力顕微鏡は、試料台の移動速度(もしくは、カンチレバーの移動速度)が最大で高々、数千[nm/s]である。故に、あまりに大きな領域設定になると、測定時間が長くなり過ぎるため、あまり好ましくない。
【0061】
付着力分布を構成する、データ数は7×7=49点以上とするのが好ましい。データ数が少なすぎるとデータに偏りが生じやすくなってしまう可能性が高くなる。付着力測定装置として、原子間力顕微鏡を用いる場合、あまりに大きなデータ数とするのは測定が困難であるので256×256=65536点以下とするのが好ましい。
【0062】
低付着力化物質ブロック60と1段目現像スリーブ51a表面との間の距離は、磁気穂Cが接触可能な値に設定しなければならない。具体的な値は、低付着力化物質ブロック60を配置した位置近傍の磁極(本実施形態ではH12極)の磁気力と磁性キャリアの透磁率とで決定されるが、およそ500[um]以下に設定する必要がある。
【0063】
また、低付着力化物質ブロック60は、図5中の1段目現像スリーブ51a表面上で、法線磁束密度の絶対値を示す二点鎖線Aと、接線磁束密度の絶対値の分布を示す破線Bとが交わる位置のうち、1段目現像スリーブ51aのドクターブレード52よりも下流、且つ、1段目現像領域よりも上流であるH12極の法線磁束密度値がピーク値となる位置A2を挟んで隣り合う2つの位置に挟まれた領域(図5中α)に配置されていることが望ましい。二点鎖線Aと破線Bとが交わる2点は、1段目現像スリーブ51aに内包されるマグネットロール(不図示)によって形成される磁界で、1段目現像スリーブ51a表面上での法線磁束密度と接線磁束密度との値が等しくなる位置のうち、H12極のピーク位置を挟んで隣り合う2つの位置となる。
【0064】
1段目現像スリーブ51a表面上での法線磁束密度と接線磁束密度との値が等しくなる位置よりもH12極のピーク位置から離れる位置(上記領域α外)では、法線磁束密度よりも接線磁束密度の方が大きくなる。接線磁束密度の方が大きくなると磁気穂が倒れた状態となり、低付着力化物質を掻き取る効率が悪くなる。これに対して、上記領域αでは、H12極の法線磁束密度値がピーク値近傍であり、接線磁束密度よりも法線磁束密度の方が大きくなり、磁気穂が起きた状態となるため、効率的に低付着力化物質を掻き取ることができる。
【0065】
〔実施例1〕
次に、1段目現像スリーブ51aのドクターブレード52よりも下流、且つ、1段目現像領域よりも上流であるH12極近傍に対向する位置に低付着力化物質ブロック60を配置する現像装置5の一つ目の実施例(実施例1)について説明する。
図6は、実施例1の現像装置5のH12極のピーク位置A2近傍の模式図である。図6に示すように実施例1の現像装置5は、低付着力化物質ブロック60をH12極の法線磁束密度値がピーク位置A2に対して1段目現像スリーブ51aの表面移動方向下流側に配置している。このように配置することにより、磁気穂Cによる低付着力化物質の掻き取り直後に、1段目現像スリーブ51a上に低付着力化物質を塗布できる。すなわち、掻き取り後のロスを小さくできる。
【0066】
〔実施例2〕
次に、H12極のピーク位置A2と対向する位置の近傍に低付着力化物質ブロック60を配置する現像装置5の二つ目の実施例(実施例2)について説明する。
図7は、実施例2の現像装置5のH12極のピーク位置A2近傍の模式図である。図7に示すように実施例2の現像装置5の低付着力化物質ブロック60は、対向する1段目現像スリーブ51a表面上の磁気穂Cの先端の位置に沿うように1段目現像スリーブ51a側の面を円弧状にしたものである。低付着力化物質ブロック60の磁気穂Cによって掻き取られる側の形状を円弧状にすることで、経時での磁気穂Cとの接触面積の変化が小さくなり、磁気穂Cの寝起きによる掻き取り量の経時変化を抑制できる。これにより、1段目現像スリーブ51a上への低付着力化物質の経時での供給量のバラツキを低減できる。
【0067】
〔実施例3〕
次に、H12極のピーク位置A2と対向する位置の近傍に低付着力化物質ブロック60を配置する現像装置5の三つ目の実施例(実施例3)について説明する。
図8は、実施例3の現像装置5のH12極のピーク位置A2近傍の模式図である。図8に示すように実施例3の現像装置5は、低付着力化物質ブロック60を円柱状に成型して、磁気穂Cとの摩擦で1段目現像スリーブ51aの表面移動方向に倣う方向で回転するようにしたものである。円柱状の低付着力化物質ブロック60が回転することで、低付着力化物質ブロック60の掻き取られる部分が一箇所に集中することを防止できる。よって、経時での磁気穂Cとの接触面積の変化が小さくなり、磁気穂Cの寝起きによる掻き取り量の経時変化を抑制できる。これにより、1段目現像スリーブ51a上への低付着力化物質の経時での供給量のバラツキを低減できる。
【0068】
〔実施例4〕
次に、H12極のピーク位置A2と対向する位置の近傍に低付着力化物質ブロック60を配置する現像装置5の四つ目の実施例(実施例4)について説明する。
図9は、実施例4の現像装置5のH12極のピーク位置A2近傍の模式図である。図9に示すように実施例4の現像装置5は、低付着力化物質ブロック60を円柱状に成型して、不図示の駆動源によって、1段目現像スリーブ51aの表面移動方向と反対方向に表面移動するように回転駆動するものである。磁気穂Cからの摩擦力を低付着力化物質ブロック60に効率良く作用させることができるため、磁気穂Cの寝起きによる掻き取り量を増やせる。よって、1段目現像スリーブ51aへの低付着力化物質の供給量を増やし、低付着力化の効果を増すことができる。
【0069】
〔実施例5〕
次に、H12極のピーク位置A2と対向する位置の近傍に低付着力化物質ブロック60を配置する現像装置5の五つ目の実施例(実施例5)について説明する。
図10は、実施例5の現像装置5のH12極のピーク位置A2近傍の模式図である。図10に示すように実施例5の現像装置5は、低付着力化物質ブロック60をピーク位置A2に対して1段目現像スリーブ51aの表面移動方向上流側に配置している。例えば、ケーシング56との位置関係等の問題で、ピーク位置A2に対して、1段目現像スリーブ51aの表面移動方向下流側に低付着力化物質ブロック60を設置できない場合は、実施例5のように、1段目現像スリーブ51aの表面移動方向上流側に設置してもよい。
【0070】
〔実施例6〕
次に、H12極のピーク位置A2と対向する位置の近傍に低付着力化物質ブロック60を配置する現像装置5の六つ目の実施例(実施例6)について説明する。
図11は、実施例6の現像装置5のH12極のピーク位置A2近傍の模式図である。図11(a)は、1段目現像スリーブ51aの表面移動方向に対して直交する方向から見た模式図であり、図10(b)は、1段目現像スリーブ51aの表面移動方向に平行な方向(図11(a)中の右方向)から見た模式図である。
図11に示すように、実施例6の現像装置5は、低付着力化物質ブロック60を櫛歯形状にしたものである。実施例6では、櫛の間の隙間も含めて、磁気穂Cと低付着力化物質ブロック60とが接触するため、磁気穂Cと低付着力化物質ブロック60との接触面積を増やすことができ、現像剤の寝起きによる低付着力化物質の掻き取り量を増やすことができる。これにより、1段目現像スリーブ51aおよび2段目現像スリーブ51b表面への低付着力化物質供給量を増やし、低付着力化の効果を増すことができる。
【0071】
〔実施例7〕
次に、現像スリーブを3本備えた3段現像装置の実施例について説明する。
図12は、3段現像装置の現像スリーブ近傍の拡大図である。この現像装置は、感光体2の表面移動方向に関して上流側から1段目現像スリーブ51a、2段目現像スリーブ51b、3段目現像スリーブ51cという3本の現像スリーブを設けている。また、1段目現像スリーブ51a上の現像剤層厚を規制するドクターブレード52を備えている。
【0072】
この3段現像装置では、供給スクリュウ53aにより攪拌搬送される現像剤供給搬送路54a内の現像剤は、1段目現像スリーブ51a表面上に担持され、層厚がドクターブレード52によって規制された後、1段目現像領域まで搬送され、感光体2上の潜像を現像する。その後、1段目現像スリーブ51a表面上から2段目現像スリーブ51b表面上に受け渡され、2段目現像領域において感光体2上の潜像を現像する。さらに、2段目現像スリーブ51b表面上から3段目現像スリーブ51c表面上に受け渡され、3段目現像領域において感光体2上の潜像を現像する。3段目現像領域を通過した現像剤は、回収スクリュウ53bとの対向部において2段目現像スリーブ51bから脱離し、現像剤回収搬送路54bに回収される。現像剤回収搬送路54b内の現像剤は、図示しない循環搬送手段により現像剤供給搬送路54a内に搬送される。このとき必要に応じて、トナー補給等を行い、トナー濃度を調整した現像剤を現像剤供給搬送路54aに搬送する。
【0073】
さらに、この3段現像装置では、1段目現像スリーブ51aのドクターブレード52よりも下流、且つ、1段目現像領域よりも上流の領域に低付着力化物質ブロック60aを、2段目現像スリーブ51bの現像剤受け渡し領域よりも下流、且つ、2段目現像領域よりも上流の領域に低付着力化物質ブロック60bをそれぞれ配置する。この低付着力化物質ブロック60aは1段目現像スリーブ51a表面上に形成される磁気穂が接触し得る位置に、低付着力化物質ブロック60bは2段目現像スリーブ51b表面上に形成される磁気穂が接触し得る位置に、それぞれ配置されている。
【0074】
1段目現像スリーブ51a表面上の磁気穂が、ドクターブレード52よりも下流、且つ、1段目現像領域よりも上流で、低付着力化物質ブロック60aを掻き取り、1段目現像スリーブ51a表面に低付着力化物質が供給する。1段目現像領域で感光体2上の潜像の現像を行った後、現像剤は1段目現像スリーブ51a表面上から2段目現像スリーブ51b表面上に受け渡される。2段目現像スリーブ51b表面上に受け渡された現像剤は、2段目現像スリーブ51b表面に低付着力化物質を供給すると共に、磁気穂により、現像剤受け渡し領域よりも下流、且つ、2段目現像領域よりも上流に配置された低付着力化物質ブロック60bを掻き取り、2段目現像スリーブ51b表面に低付着力化物質を供給する。2段目現像領域にて感光体2上の潜像の現像を行った後、現像剤は2段目現像スリーブ51b表面上から3段目現像スリーブ51c表面上に受け渡される。3段目現像スリーブ51c表面上に受け渡された現像剤は、3段目現像スリーブ51c表面に低付着力化物質を供給すると共に、2段目現像領域にて感光体2上の潜像の現像を行う。この3段現像装置では、1段目現像スリーブ51aおよび2段目現像スリーブ51b表面上に形成された磁気穂が2段階で低付着力化物質ブロック60a,60bを掻きとるよう配置している。このため、3段現像装置においても、1段目現像スリーブ51a表面、2段目現像スリーブ51b表面、および、3段目現像スリーブ51c表面にも十分な量の低付着力化物質を供給することができ、スリーブ汚れを良好に抑制することができる。
【0075】
〔実施例8〕
次に、現像スリーブを3本備えた3段現像装置の他の実施例について説明する。
上述の3段現像装置において、1段目現像スリーブ51aのドクターブレード52よりも下流、且つ、1段目現像領域よりも上流の領域のみに低付着力化物質ブロック60aを配置する構成とすることもできる。この構成では、2段目現像スリーブ51bに対向する低付着力化物質ブロック60bを設けず、1段目現像スリーブ51a表面上の磁気穂で掻き取った低付着力化物質を1段目現像スリーブ51a表面、2段目現像スリーブ51b表面、および、3段目現像スリーブ51c表面に供給するものである。この場合は、1段目現像スリーブ51a表面、2段目現像スリーブ51b表面、および、3段目現像スリーブ51c表面に供給される低付着力化物質の量は減少するが、低付着力化物質ブロック60を一つとすることで、低付着力化物質を用いてスリーブ汚れを抑制する構成におけるコストアップを抑制できる。このため、画像形成装置の構成、使用するトナーの特性によるスリーブ汚れの発生度合いに対応して、コストアップ抑制のため本構成を選択することもできる。
【0076】
以上、本実施形態の現像装置5は、潜像担持体である感光体2の表面移動方向に沿って、磁界発生手段であるマグネットローラ(不図示)を内包し、トナーと磁性キャリアとを含む二成分現像剤を表面上に担持して表面移動することによって現像剤を搬送する現像剤担持体としての1段目現像スリーブ51aと2段目現像スリーブ51bとを配置し、1段目現像スリーブ51a表面上の現像剤層厚を規制する現像剤層規制部材としてのドクターブレード52を設ける。この現像装置5は、1段目現像スリーブ51a表面上から2段目現像スリーブ51b上に現像剤を受け渡しながら現像おこなう多段現像装置である。この現像装置5で、図1に示すように、1段目現像スリーブ51aのドクターブレード52よりも下流、且つ、感光体2と対向する1段目現像領域よりも上流の領域で、1段目現像スリーブ51a上に形成される現像剤の磁気穂が接触し得る位置に、現像スリーブ表面とトナーとの間の付着力を低下させる低付着力化物質の固形体である低付着力化物質ブロック60を配設する。これにより、低付着力化物質が付着した現像剤が1段目現像スリーブ51aから離脱することなく1段目現像スリーブ51a表面に低付着力化物質を供給し、ついで2目現像スリーブ51bに受け渡されて2段目現像スリーブ51bに低付着力化物質を供給する。よって、1段目現像スリーブ51a表面と2段目現像スリーブ51b表面とに良好に低付着力化物質を供給することができる。なお、ドクターブレード52通過後の1段目現像領域に近い位置で、磁気穂が低付着力物質を掻き取る際に、磁気穂が乱れによる濃度ムラ等、画質への悪影響が懸念される。しかしながら、多段現像装置では、1段目現像スリーブ51aによる現像で画像ムラ等が発生していても、2段目現像スリーブ51bに現像剤が受け渡された時に、掻き取り時の影響はリセットされる。そして、2段目現像スリーブ51bによる現像で1段目現像を補うよう繊細な画質の向上を図ることができるので、上記画像上の問題を発生する虞がない。これにより、1段目現像スリーブ51a及び2段目現像スリーブ51b表面とトナーとの間の付着力が低下して、1段目現像スリーブ51a及び2段目現像スリーブ51bの汚れを良好に抑制することができる。
また、実施例7によれば、図12に示すように、3段現像装置において、1段目現像スリーブ51aのドクターブレード52よりも下流、且つ、1段目現像領域よりも上流の領域に低付着力化物質ブロック60aを配置し、2段目現像スリーブ51bの現像剤受け渡し領域よりも下流、且つ、2段目現像領域よりも上流の領域に低付着力化物質ブロック60bを配置する。この3段現像装置では、1段目現像スリーブ51aおよび2段目現像スリーブ51b表面上に形成された磁気穂が2段階で低付着力化物質ブロック60a,60bを掻きとるよう配置している。このため、1段目現像スリーブ51a表面、2段目現像スリーブ51b表面、および、3段目現像スリーブ51c表面に十分な量の低付着力化物質を供給することができ、3段現像装置においてもスリーブ汚れを良好に抑制することができる。
また、実施例8によれば、3段現像装置において、1段目現像スリーブ51aのドクターブレード52よりも下流、且つ、1段目現像領域よりも上流の領域のみに低付着力化物質ブロック60を配置する。この構成では、低付着力化物質ブロック60を一つとすることで、低付着力化物質を用いてスリーブ汚れを抑制する構成におけるコストアップを抑制できる。
また、本実施形態の現像装置5では、低付着力化物質ブロック60は、図5中の1段目現像スリーブ51a表面上で、法線磁束密度の絶対値を示す二点鎖線Aと、接線磁束密度の絶対値の分布を示す破線Bとが交わる位置のうち、H12極の法線磁束密度値がピーク値となる位置A2を挟んで隣り合う2つの位置に挟まれた領域αに配置する。領域αでは、H12極の法線磁束密度値がピーク値近傍であり、接線磁束密度よりも法線磁束密度の方が大きくなり、磁気穂が起きた状態となるため、効率的に低付着力化物質を掻き取ることができる。これにより、スリーブ汚れの発生を効率的に抑制することができる。
また、実施例1によれば、低付着力化物質ブロック60をH12極の法線磁束密度値のピーク位置A2に対して1段目現像スリーブ51aの表面移動方向下流側に配置する。このように配置することにより、磁気穂による低付着力化物質の掻き取り直後に、1段目現像スリーブ51a上に低付着力化物質を塗布できる。すなわち、掻き取り後のロスを小さくできる。
また、実施例5によれば、低付着力化物質ブロック60をH12極の法線磁束密度値のピーク位置A2に対して1段目現像スリーブ51aの表面移動方向上流側に配置する。ケーシング56との位置関係等の問題で、ピーク位置A2に対して、1段目現像スリーブ51aの表面移動方向下流側に低付着力化物質ブロック60を設置できない場合は、1段目現像スリーブ51aの表面移動方向上流側に設置してもよい。よって、低付着力化物質ブロック60の配置のレイアウトの自由度を広げることができる。
また、本実施形態の現像装置5が備える低付着力化物質として、脂肪酸塩を用いることができる。脂肪酸塩は、容易に固形状することが可能なため、装置内に配置しやすく、かつ、1段目現像スリーブ51a表面上および2段目現像スリーブ51b表面に供給されたときに各現像スリーブ表面とトナーとの間の付着力を低減する効果が大きく、本発明の低付着力化物質を実現することができる。
また、本実施形態の現像装置5が備える低付着力化物質ブロック60として、シリカ粒子を固形状に固めたものを用いることができる。シリカ粒子は、1段目現像スリーブ51a表面上および2段目現像スリーブ51b表面に供給されたときに各現像スリーブの表面とトナーとの間の付着力を低減する効果が大きく、本発明の低付着力化物質を実現することができる。
また、本実施形態の現像装置5が備える低付着力化物質ブロック60として、1[μm]以下の低付着力化物質の粒子を固形状に固めたものを用いることが望ましい。すなわち、マイクロオーダーの樹脂状のものが固まって固形化したものを低付着力化物質ブロック60として用いる。低付着力化物質としては、大きな固形状のままであると、付着力を低下させる作用はなくて、ある程度、粉砕されて、微粒子の状態になって初めて、離型性が働くと思われる材料がある。このような材料を低付着力化物として使用する場合、砕くという作用があって初めて離型性が向上する。そして、ある程度、細かいものを押し固めた状態の方が、摺擦力が作用したときに砕け易く、離型性が向上し易い。よって、1[μm]以下の低付着力化物質の粒子を固形状に固めた低付着力化物質ブロック60を用いることで、磁気穂の掻き取りの力で離型性(低付着力化)が得られる程度の粒子状とすることができる。
また、本実施形態のプリンタ100は、潜像を担持する潜像担持体である感光体2と、感光体2上の潜像を現像する現像手段とを有する画像形成装置で、現像手段として、多段現像方式の現像装置5を用いる。これにより、スリーブ汚れに起因する画質の劣化を抑制し、高品質の画像形成を行うことが出来る。
【符号の説明】
【0077】
2 感光体
3 帯電部
4 書込部
5 現像装置
6 転写ローラ
7 クリーニング部
8 感光体除電部
9 レジストローラ対
10 定着部
13 ファーブラシ
16 中間転写ベルト
18 二次転写ローラ
51a 1段目現像スリーブ
51b 2段目現像スリーブ
51c 3段目現像スリーブ
52 ドクターブレード
53a 供給スクリュウ
53b 回収スクリュウ
54a 現像剤供給搬送路
54b 現像剤回収搬送路
55 キャリア捕集ローラ
56 ケーシング
60 低付着力化物質ブロック
A2 ピーク位置(H12極の法線方向磁束密度)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0078】
【特許文献1】特開平08−54787号公報
【特許文献2】特開平11−194618号公報
【特許文献3】特開2001−242711号公報
【特許文献4】特開2001−242712号公報
【特許文献5】特開2001−312126号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁界発生手段を内包し、トナーと磁性キャリアとを含む二成分現像剤を表面上に担持して表面移動することによって該現像剤を搬送する現像剤担持体を潜像担持体の表面移動方向に対して複数配置し、該複数の現像剤担持体のうち上流側現像剤担持体表面上の現像剤層厚を規制する現像剤層規制部材を設け、該上流側現像剤担持体表面上から下流側現像剤担持体表面上に現像剤を受け渡しながら現像おこなう現像装置において、
上記上流側現像剤担持体の表面移動方向に関して上記現像剤層規制部材よりも下流、且つ、上記潜像担持体と対向する現像領域よりも上流の領域で、該上流側現像剤担持体表面上に上記磁界発生手段の磁力によって形成される現像剤の磁気穂が接触し得る位置に、該現像剤担持体の表面に供給されることで該現像剤担持体の表面と上記トナーとの間の付着力を低下させる低付着力化物質の固形体を配設することを特徴とする現像装置。
【請求項2】
請求項1の現像装置において、上記現像剤担持体を3つ以上備え、上記現像剤層規制部材を最上流側現像剤担持体表面上の現像剤層厚を規制するよう配置し、最上流側現像剤担持体の該現像剤層規制部材よりも下流、且つ、潜像担持体と対向する現像領域よりも上流の領域と、最上流側以外かつ最下流側以外の現像剤担持体における現像剤受け渡し領域よりも下流、且つ、潜像担持体と対向する現像領域よりも上流の領域とに、該低付着力化物質の固形体を配置したことを特徴とする現像装置。
【請求項3】
請求項1の現像装置において、上記現像剤担持体を3つ以上備え、上記現像剤層規制部材を最上流側現像剤担持体表面上の現像剤層厚を規制するよう配置し、最上流側現像剤担持体の該現像剤層規制部材よりも下流、且つ、潜像担持体と対向する現像領域よりも上流の領域のみに、該低付着力化物質の固形体を配置したことを特徴とする現像装置。
【請求項4】
請求項1、2または3の何れかの現像装置において、上記磁界発生手段によって形成される磁界の現像剤担持体表面上での法線磁束密度と接線磁束密度との値が等しくなる位置のうち、上記法線磁束密度の値がピーク値となる位置を挟んで隣り合う2つの位置に挟まれた領域に上記低付着力化物質の固形体を配置することを特徴とする現像装置。
【請求項5】
請求項4の現像装置において、上記磁界発生手段によって形成される磁界の現像剤担持体表面上での法線磁束密度の値がピーク値となる位置に対して該現像剤担持体の表面移動方向下流側に上記低付着力化物質の固形体を配置することを特徴とする現像装置。
【請求項6】
請求項4の現像装置において、上記磁界発生手段によって形成される磁界の現像剤担持体表面上での法線磁束密度の値がピーク値となる位置に対して該現像剤担持体の表面移動方向上流側に上記低付着力化物質の固形体を配置することを特徴とする現像装置。
【請求項7】
請求項1、2、3、4、5または6の何れかの現像装置において、上記低付着力化物質は、脂肪酸塩であることを特徴とする現像装置。
【請求項8】
請求項1、2、3、4、5または6の何れかの現像装置において、上記低付着力化物質の固形体は、シリカ粒子を固形状に固めたものであることを特徴とする現像装置。
【請求項9】
請求項1、2、3、4、5、6、7または8の何れかの現像装置において、上記低付着力化物質の固形体は、1[μm]以下の粒子を固形状に固めたものであることを特徴とする現像装置。
【請求項10】
潜像を担持する潜像担持体と、該潜像担持体上の潜像を現像する現像手段とを有する画像形成装置において、上記現像手段として、請求項1乃至9のいずれか1項に記載の現像装置を用いたことを特徴とする画像形成装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate


【公開番号】特開2012−185438(P2012−185438A)
【公開日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−50077(P2011−50077)
【出願日】平成23年3月8日(2011.3.8)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】