説明

現像装置及び該現像装置を用いた画像形成装置

【課題】高速印刷においても安定した現像能力を実現する。
【解決手段】回転する潜像担持体に現像剤を搬送する回転可能に設置された複数の現像剤担持体のうち、少なくとも一対の現像剤担持体が前記潜像担持体の回転方向と逆方向及び同方向に回転し、前記現像剤の搬送量が規制部材により所定量に規制されるように前記一対の現像剤担持体が設置された現像装置において、前記一対の現像剤担持体のうち、前記逆方向に回転する前記潜像担持体の回転方向上流側に設けられた第1現像剤担持体のスリーブの表面粗さを20μm以上、100μm以下とし、前記同方向に回転する前記潜像担持体の回転方向下流側に設けられた第2現像剤担持体のスリーブの表面粗さを5μm以上、20μm以下とし、前記現像剤に含まれるキャリア粒径の範囲を30μm以上、65μm以下とすることにより、上記課題を解決する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、現像装置及び該現像装置を用いた画像形成装置に係り、特に、高速印刷においても安定した現像能力を実現するための現像装置及び該現像装置を用いた画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電子写真方式のプリンタ、複写機等の画像形成装置では、一方向に回転する感光体と呼ばれる潜像担持体上に形成された静電潜像に、現像装置からトナーと呼ばれる像可視化剤を供給することで、上述の静電潜像を可視像化し、そのトナー像を印刷用紙等の記録媒体上に付着させることで印刷を行っている。
【0003】
また、上述の電子写真方式に適用される現像装置は、例えばトナーやキャリアと呼ばれる磁性粉体からなる二成分現像剤を用いた現像装置が多用されている。この二成分現像剤は、現像装置内の現像剤収容部で攪拌することにより、現像剤中のトナーとキャリアが摩擦しあい、それぞれが所定量に帯電させて用いられている。
【0004】
また、通常、所定の帯電量に帯電された現像剤は、現像剤を収容する現像剤収容部から、現像スリーブや現像スリーブの内部に固設された複数の磁極からなる現像ロ−ル等の現像剤担持体に導かれる。この現像ロールの表面に供給された現像剤は、磁気ブラシ状態で保持されると共に、現像ロールの回転によって搬送され、現像ロールの外周に近接配置されたドクターブレードと呼ばれる規制部材を通過した後、感光体との対向部である現像領域に搬送される。
【0005】
このような、二成分現像剤を用いる現像装置においては、様々な構成が提案されているが、特にプロセス速度300mm/sec以上の高速印刷プロセスにおいては、静電潜像の現像能力が不足する。そのため、現像能力を増加させる方法として、ハイブリッド方式の現像装置が広く用いられる。ハイブリッド現像方式の現像装置は、通常回転方向が異なる複数の現像ロールを現像領域に対向させて設けた構成をしている。
【0006】
ここで、本明細書においては、ハイブリッド方式の現像装置を以下に説明するにあたり、便宜上、「順回転現像ロール」及び「逆回転現像ロール」という表現を用いる。「順回転現像ロール」とは、潜像担持体が時計方向に回転するとした場合に反時計方向に回転する現像ロールを意味する。すなわち、現像領域で見た場合に両者の移動方向が同方向となるのが順方向現像ロールである。これに対し、「逆回転現像ロール」とは、潜像担持体が時計方向に回転するとした場合に同じ時計方向に回転する現像ロールを意味する。すなわち、現像領域で見た場合に両者の移動方向が逆方向となるのが逆回転現像ロールである。
【0007】
例えば、順回転現像ロールと逆回転現像ロールを組み合わせた構成においては、潜像担持体の回転方向の上流側に逆回転現像ロール、下流側に順回転現像ロールが隣接して設置され、更に逆回転現像ロールと順回転現像ロールとの間に両刃のドクターブレードを配置している。このような構成の現像装置は、通常噴水型現像装置と呼ばれている。
【0008】
この噴水型現像装置は、上述したように現像能力が高く、且つ、現像ロールの回転方向に起因して生じる画像の後端欠け、先端欠け等が発生しにくく、また、ドクターブレードが両刃のものを一つ有していれば良いため、現像機本体をコンパクトにできるという利点がある。したがって、例えば高速カラー印刷装置の場合には、複数印写を用いたタンデム印刷方式が用いられる場合が多く、更に現像機のコンパクト化が必要となるため上述の噴水型現像装置が有利となる。
【0009】
なお、ドクターブレードは、現像ロールの表面上に保持された現像剤の磁気ブラシを穂切りし、現像領域に搬送される現像剤を適正量に規制する目的で設置されている。したがって、ドクターブレードにて所定量に規制された現像剤は、現像ロールの回転によって搬送され、感光体に対向する位置(現像領域)に運ばれ、現像領域において現像ロール上の現像剤を感光体に接触させながら静電潜像を現像する。このとき、現像ロールには、静電潜像を構成する非画像部と画像形成部のうち、画像形成部にトナーのみを導入し供給するためのバイアス電圧が印加されており、これにより感光体の画像形成部にトナー像が形成される。
【0010】
なお、上述の噴水型現像装置は、従来では1本の現像ロールで対応できない高速印刷プロセスに採用されている(例えば、特許文献1参照。)。高速印刷プロセスで用いられる現像ロールには、部品の耐久性と現像剤の高速搬送性とが要求される。そのため、現像ロールのスリーブは、一般的に耐磨耗性に優れるSUS材を用い、且つ、現像剤の保持性を向上させるためスリーブ表面にはSUS溶射等により適当な粗面化仕上げがなされている。
【特許文献1】特開昭53−17741号公報(第1−3頁、図2)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
ところで、近年の高画質化、カラー化のニーズに伴い、より高精細画像が得られ易い薄層均一現像が望まれ、現像剤の搬送規制量の低減と均一化が要求されている。その実現策として潜像担持体と現像剤担持体との隙間(以下、「現像ギャップ」という)の狭化及び高精度化が進められており、これは現像ギャップを狭小化することで、潜像担持体表面と現像剤担持体表面との間の最も近接した位置である現像ニップ部の現像電界の潜像エッジ部への集中を防止し、現像を均一化することを目的としている。
【0012】
しかしながら、上述したSUS溶射仕上げのように表面粗さを大きく設定した現像ロールで現像ギャップの狭小化を実施した場合、現像剤の保持性は確保でき、高速印刷プロセス下においても良好な現像性が確保することができる反面、そのギャップ精度が得られず、現像ギャップの狭小化(例えば、ギャップ0.3mm以下)の実現は困難であった。
【0013】
また、例えば、現像ロールのスリーブ表面粗さをV溝加工や微小粒子を用いたブラスト処理によりギャップ精度が確保し易い10μm以下にした場合、その表面の現像剤保持能力が低下してしまい、特に潜像担持体である感光ドラムと逆回転方向に回転するため、大きな負荷がかかる第1現像剤担持体では現像剤のスリップが生じ、現像部への現像剤搬送斑が生じ易くなる。また、この状態で現像ギャップの狭小化を図った場合、現像剤搬送斑のため現像ギャップ部での現像剤詰まり等の不具合を生じさせることになる。
【0014】
本発明は、上述した問題点に鑑みなされたものであり、高速印刷においても安定した現像能力を実現するための現像装置及び該現像装置を用いた画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記課題を解決するために、本件発明は、以下の特徴を有する課題を解決するための手段を採用している。
【0016】
請求項1に記載された発明は、回転する潜像担持体に現像剤を搬送する回転可能に支持された複数の現像剤担持体のうち、少なくとも一対の現像剤担持体が前記潜像担持体の回転方向と逆方向及び同方向に回転し、前記現像剤の搬送量が規制部材により所定量に規制されるように前記一対の現像剤担持体が設置された現像装置において、前記一対の現像剤担持体のうち、前記逆方向に回転する前記潜像担持体の回転方向上流側に設けられた第1現像剤担持体のスリーブの表面粗さを20μm以上、100μm以下とし、前記同方向に回転する前記潜像担持体の回転方向下流側に設けられた第2現像剤担持体のスリーブの表面粗さを5μm以上、20μm以下とし、前記現像剤に含まれるキャリア粒径の範囲を30μm以上、65μm以下とすることを特徴とする。
【0017】
請求項1記載の発明によれば、高速印刷プロセスにおいても現像剤の搬送能力を低下させず、且つ、均一現像を実現することができる。
【0018】
請求項2に記載された発明は、前記第1現像剤担持体と前記潜像担持体との現像ギャップを0.6mm以上、1.2mm以下とし、前記第2現像剤担持体と潜像担持体との現像ギャップを0.2mm以上、0.6mm以下とすることを特徴とする。
【0019】
請求項2記載の発明によれば、ギャップを適切な値に調整することで高い現像性を確保しつつ均一で高精細な現像を実現することができる。
【0020】
請求項3に記載された発明は、前記第1現像剤担持体と前記潜像担持体との現像ニップ部の磁力を600G以上、1200G以下とし、前記第2現像剤担持体と前記潜像担持体との現像ニップ部の磁力を800G以上、1500G以下とすることを特徴とする。
【0021】
請求項3記載の発明によれば、例えば、均一現像が実現し難いプロセス速度300mm/sec以上の高速印刷においても安定した現像能力を確保することができる。
【0022】
請求項4に記載された発明は、前記第1現像剤担持体表面には、SUS溶射によるメテコロイ処理が施され、前記第2現像剤担持体の表面には、前記第2現像剤担持体の長さ方向に溝が形成されていることを特徴とする。
【0023】
請求項4記載の発明によれば、第1現像剤担持体表面にSUS溶射によるメテコロイ処理が施すことにより、耐久性に優れ、高速印刷を実現することができる。更に、第2現像剤担持体の表面に現像ロール長さ方向の溝を形成することにより、例えばプロセス速度300mm/sec以上の高速印刷においても安定した現像能力を確保することができる。
【0024】
請求項5に記載された発明は、前記請求項1乃至4の何れか1項に記載の現像装置を具備する画像形成装置である。
【0025】
請求項5記載の発明によれば、前記請求項1乃至5の何れか1項に記載の現像装置を具備することで、安定した現像能力を確保しながら高速印刷を実現することができる。
【0026】
請求項6に記載された発明は、前記現像装置の印刷動作時のプロセス速度を300mm/sec以上とすることを特徴とする。
【0027】
請求項6記載の発明によれば、高速印刷においても安定した現像能力を確保することができる。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、高速印刷においても安定した現像能力を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下に、本発明における現像装置及び該現像装置を用いた画像形成装置を好適に実施した形態について、図を用いて説明する。なお、以下の実施例では、一例として、例えば噴水型現像装置に設置された逆回転現像ロール(第1現像剤担持体)と順回転現像ロール(第2現像剤担持体)のスリーブ表面状態と、その現像ロールと潜像担持体である感光ドラムとの現像ギャップを対象とするが、本発明においてはこれに限定されるものではない。
【0030】
<実施例1>
図1は、本発明における現像装置の一構成例を示す図である。図1に示す現像装置10は、逆回転現像ロール(第1現像剤担持体)11と、順回転現像ロール(第2現像剤担持体)12と、ドクターブレード(規制部材)13と、搬送部材14と、混合攪拌部材15,16と、ブレード17とを有するよう構成されている。なお、現像剤収容部は、搬送部材14及び混合攪拌部材15,16等により現像剤が攪拌させる領域を示す。
【0031】
ここで、図1では、本発明の実施例の一形態として、逆回転現像ロール11及び順回転現像ロール12により一対の現像剤担持体とした構成とするが、本発明においてはこの限りではなく更に複数の現像剤担持体を有する構成にしてもよい。
【0032】
図1に示す現像装置10において、逆回転現像ロール11及び順回転現像ロール12は、回転する潜像担持体である感光ドラム101に対向して回転可能に設置されている。
逆回転現像ロール11は、図1に示す矢印A方向で回転する感光ドラム101の回転に対して逆方向(矢印B方向)に回転する。また、順回転現像ロール12は、感光ドラム101の回転に対して順方向(矢印C方向)に回転するように設置されている。
【0033】
なお、本実施形態では、潜像担持体としてドラム状の感光体を用いているが、本発明においてはこれに限定されるものではなく、例えば特定の軌道上を周回する感光体ベルトのような構成であってもよい。
【0034】
なお、逆回転現像ロール11及び順回転現像ロール12の内部には、後述するように複数個の磁極を備えている。つまり、図1では、逆回転現像ロール11及び順回転現像ロール12の磁極により帯電された現像剤を保持し、更に保持した現像剤を回転により搬送して、感光体101上に形成された静電潜像を可視像化する噴水型の現像装置10の概略例を示している。また、逆回転現像ロール11及び順回転現像ロール12の外周部には、それぞれ回転可能な現像スリーブを具備している。
【0035】
また、ドクターブレード13は、逆回転現像ロール11と順回転現像ロール12との間を通過する現像剤21を適正量に規制するための規制部材として配置されている。また、搬送部材14は、図1に示す矢印D方向に回転して混合攪拌部材15,16により撹拌されたトナー及びキャリアからなる現像剤21を逆回転現像ロール11及び順回転現像ロール12側に搬送する。
【0036】
また、混合攪拌部材15,16は、現像剤収容部に供給された現像剤21を混合攪拌する。また、混合攪拌部材15,16は、例えば螺旋状のスクリュー形態となっており、それぞれが図1に示す矢印E,F方向に回転することによって現像剤21を攪拌混合する。
【0037】
また、ブレード17は、感光ドラム101に現像されずに逆回転現像ロール11に残った現像剤21をかき取って再び現像剤収容部内に戻し、混合攪拌部材15,16や搬送部材14によって攪拌させる。
【0038】
ここで、現像剤21について説明する。像可視化剤としての現像剤21には、例えば、プラス帯電性の磁性キャリアと、マイナス帯電性の非磁性トナーと呼ばれる感光ドラム101上に可視像を形成する粉体とにより構成されている。また、現像剤21は、全重量の2〜10%の重量比でトナーが混合されているが、印刷動作により現像剤21中のトナーのみが消費されるため、現像剤収容部内にある現像剤21中のトナー重量比が低減する。このため、現像装置10には、トナー貯留供給装置22に貯留されているトナー23が現像剤収容部に供給される。
【0039】
また、現像剤21中のトナーは、混合攪拌部材15,16で搬送攪拌されることによって、現像在中のキャリアと摩擦帯電し、所定の値に帯電する。ここで、本実施形態で用いられる現像剤21は、例えば、粒径65μmのMgFeキャリアと、粒径6.8μmのポリエステル系トナーとし、トナー濃度は4.5%としている。また、このトナーの帯電量は−20μC/g〜−30μC/gである。
【0040】
このように、所定の帯電量に帯電したトナーを含有した現像剤21は、更に搬送部材14が矢印D方向に回転することによって、搬送部材14の上側を通過して図1に示す感光ドラム101側に搬送され、順回転現像ロール12の近傍に導かれる。
【0041】
ここで、逆回転現像ロール11及び順回転現像ロール12には、上述したように内部に複数個の磁極が固定して設置されており、また外周部にはそれぞれ回転可能な現像スリーブを具備している。このため、順回転現像ロール12の近傍にある現像剤21は、マグネットの磁力と現像スリーブの回転によりドクターブレード13まで搬送される。
【0042】
その後、現像剤21は、ドクターブレード13の端部で分流し、一部は順回転現像ロール12に、その他は上方に隣接した逆回転現像ロール11へと搬送された後、逆回転現像ロール11及び順回転現像ロール12とドクターブレード13とで形成されるドクターギャップ24を通過する。このとき、現像剤21は、ドクターブレード13での通過量規制によって所定量に規制され、それぞれの現像ロールの表面と感光ドラム101表面との間の最も近接した位置である現像ニップ部に導かれる。
【0043】
現像ニップ部へ導かれた現像剤21は、感光ドラム101の表面を摺擦し、帯電、露光工程により感光ドラム101の表面上に形成された静電潜像に対応したトナー像を形成する。その後、感光ドラム101上の可視トナー画像は、転写工程により用紙等の記録媒体に印刷された後、定着工程により用紙上に固着される。
【0044】
ここで、上述したような現像装置10における一連の印刷動作において、現像装置10が所定の現像性能を得るためには、現像ニップ部において、特に逆回転現像ロール11及び順回転現像ロール12における現像剤21の安定した搬送、及び現像能力の確保、更に現像電界の集中によるエッジ効果の低減を行う必要がある。
【0045】
ここで、図2は、現像装置における感光ドラムと各現像ロールとで構成される現像ニップ部の一例を示す拡大図である。
【0046】
ここで、本実施例において、逆回転現像ロール11の現像スリーブ31には、その表面がSUS溶射によるメテコロイ処理が施されている。これにより、耐久性に優れ、高速印刷を実現することができる。また、現像スリーブ31の表面粗さは十点平均粗さRa(1)で約70μmとし、現像ニップ部(主極)の磁力は1200Gに設定し、感光ドラム101と現像スリーブ31との現像ギャップG1は1.0mmに設定されている。
【0047】
また、順回転現像ロール12の現像スリーブ32は、ロール表面を粒径5μmのガラスビーズによるショットブラスト処理が施されている。また、現像スリーブ32の表面粗さは十点平均粗さRa(2)で約6μmとし、現像ニップ部(主極)の磁力は1500Gに設定し、感光ドラム101と該現像スリーブ32との現像ギャップG2は0.5mmに設定されている。
【0048】
また、逆回転現像ロール11及び順回転現像ロール12には、図2に示すようにそれぞれの内部にN極とS極を交互に着磁したマグネット(磁極)が固定して設置されている。このマグネットの磁力と現像スリーブの回転により現像剤21が効率的に搬送される。
【0049】
ここで、上述した条件で現像スリーブ31と備えた逆回転現像ロール11と,現像スリーブ32を備えた順回転現像ロール12を有する現像装置10を、画像形成装置としての高速印刷装置(プロセス速度:500mm/sec等)に搭載し、高印刷密度の印刷パターンにて連続印刷実験を行い、その現像特性について検討した結果について、以下に説明する。なお、印刷実験時の各設定条件は以下の通りである。
【0050】
<設定条件>
・感光ドラム101:OPCドラム(外径:φ100mm)、周速500mm/sec
・現像スリーブ31,32:外径φ40mm、周速600mm/sec
・現像ギャップG1:1.0mm
・現像ギャップG2:0.5mm
・現像剤21:キャリア平均粒径65μm、トナー平均粒径6.8μm、トナー濃度4.5wt%(黒トナー)
・印刷パターン:1インチ角ベタパッチ(印刷密度:100%)
上述の印刷条件にて、3000頁の連続印刷実験を行い、そのときの1インチベタ印刷(印刷密度100%)の画像エッジ部からの距離(約3mm)の画像濃度分布測定結果について図を用いて説明する。
【0051】
図3は、実施例1における画像濃度分布測定結果の一例を示す図である。また、参考として、図4は、従来の画像濃度分布測定結果の一例を示す図である。なお、図3及び図4において、横軸はエッジからの距離(Position)を示し、縦軸は画像密度(I.D.:Image Density)を示している。
【0052】
なお、上述した測定結果において、濃度測定は、UNION OPTICAL社のマイクロ−フォトメータ(MPM−No.209)を用い、測定条件は受光スリット幅:50μmとした。また、本発明との比較として用いられる従来技術の条件は、逆回転現像ロール11及び順回転現像ロール12のスリーブは共に上述したメテコロイ処理を行い、両現像ロールの現像ギャップG1,G2は共に0.8mmとし、その他の印刷条件は、上述した実施例と同一とした。
【0053】
図3に示すように、本実施例で用いたスリーブ条件では、ベタ画像の画像濃度はベタ画像で平均I.D.が1.2以上確保されつつ、図4に現れるような画像端部での濃度上昇が認められなかった。また、濃度バラツキΔI.D.は、0.06以下で均一濃度の画像が形成できていることが確認できた。
【0054】
また、上述した印刷条件による3000頁の連続印刷においても、この均一現像性は確保でき、逆回転現像ロール11及び順回転現像ロール12における現像ニップ部での現像剤21の目詰まりも生じず、安定した現像性を確保することができる。
【0055】
なお、本実施例において、上述した印刷実験の他に例えば順回転現像ロール12の磁力を1500Gとし、逆回転現像ロール11の現像ニップ部(主極)の磁力を500G、600G、800G、1200G、1300Gと変えて、横線パターン(印刷密度30%)の20頁印刷実験を行い、その画質評価を行った。
【0056】
その結果、逆回転現像ロール11の現像ニップ部(主極)の磁力が600G〜1200Gでは画質不良がなく、良好な印刷品質が得られたが、500Gの場合は印刷サンプル上にキャリア飛散に起因する画質欠陥(白抜け)が多数発生(30個/20頁)した。また、逆回転現像ロール11の現像ニップ部(主極)の磁力が1300Gの場合は現像ロール回転方向(印刷した線画と直行方向)に筋状濃度ムラが発生した。これは現像ブラシ筋の影響と考えられる。
【0057】
更に、逆回転現像ロール11の磁力を1200Gとし、順回転現像ロール12の現像ニップ部(主極)の磁力を700G、800G、1000G、1200G、1400G、1500G、1600Gと変えて、同様の画質評価試験を実施した結果、順回転現像ロール12の現像ニップ部(主極)の磁力が800G〜1500Gでは画質不良がなく、良好な印刷品質が得られたが、700Gの場合は印刷サンプル上にキャリア飛散に起因する画質欠陥(白抜け)が多数発生(約30個/20頁)した。また、逆回転現像ロール11の現像ニップ部(主極)の磁力が1600Gの場合は、現像ロール回転方向(印刷した線画と直行方向)に筋状濃度ムラが発生した。
【0058】
<実施例2>
次に、本発明を適用した上述した実施例とは異なる他の実施例(実施例2)について説明する。なお、実施例2における現像装置の装置構成は、上述した実施例1と略同様であるため、上述した図1及び図2を適用するものとし、ここでの説明は省略する。
【0059】
実施例2において、実施例1と同様に逆回転現像ロール11の現像スリーブ31には、その表面にSUS溶射によるメテコロイ処理が施されたSUS現像ロールとなっている。また、現像スリーブ31の表面粗さは十点平均粗さRa(1)で約100μmとし、現像ニップ部(主極)の磁力は600Gに設定され、感光ドラム101との現像スリーブ31との現像ギャップG1は1.2mmに設定されている。
【0060】
また、順回転現像ロール12の現像スリーブ32は、例えばSUS現像ロール表面の回転軸に平行な方向に深さ0.1mm、幅0.2mm、溝ピッチ0.5mmのV溝仕上げ構造となっている。また、現像スリーブ32の表面粗さは十点平均粗さRa(2)で約5μmとし、現像ニップ部(主極)の磁力は800Gに設定され、感光ドラム101との現像スリーブ32との現像ギャップG2は0.6mmに設定されている。
【0061】
次に、上述した条件を設定した現像装置10を実施例1と同様の高速印刷装置に搭載し(但し、プロセス速度は、750mm/secに設定する)、上述した実施例1と同様の印刷条件で連続印刷の実験を行った。ここで、1インチベタ印刷(印刷密度100%)のエッジ部からの距離における画像濃度分布測定結果について図を用いて説明する。
【0062】
図5は、実施例2における画像濃度分布測定結果の一例を示す図である。なお、図5において、横軸はエッジからの距離(Position)を示し、縦軸は画像密度(I.D.:Image Density)を示している。
【0063】
図5に示すように、実施例2における画像濃度は、ベタ画像で平均I.D.が1.2以上となった。また、エッジ部から中央部の画像濃度バラツキΔI.D.は、0.13以下となり良好な結果が得られた。また、上述した印刷条件による3000頁の連続印刷においても、現像剤21の目詰まりもなく、安定した現像剤の搬送が得られていることが確認できた。
【0064】
<実施例3>
次に、本発明を適用した上述した実施例とは異なる他の実施例(実施例3)について説明する。なお、実施例3における現像装置の装置構成は、上述した実施例1、2と略同様であるため、上述した図1及び図2を適用するものとし、ここでの説明は省略する。
【0065】
実施例3において、逆回転現像ロール11の現像スリーブ31には、SUS現像ロール表面に粒径25μmのガラスビーズによるショットブラスト処理が施されている。また、現像スリーブ31の表面粗さは十点平均粗さRa(2)で約20μmとし、現像ニップ部(主極)の磁力は1000Gに設定され、感光ドラム101との現像スリーブ31との現像ギャップG1は0.6mmに設定されている。
【0066】
また、順回転現像ロール12の現像スリーブ32は、SUS現像ロール表面に粒径8μmのガラスビーズによるショットブラスト処理が施されている。また、現像スリーブ32の表面粗さは十点平均粗さRa(2)で約10μmとし、現像ニップ部(主極)の磁力は1000Gに設定され、感光ドラム101との現像スリーブ32との現像ギャップG2は0.2mmに設定されている。
【0067】
次に、上述した条件に設定した現像装置10を実施例1と同様の高速印刷装置に搭載し(但し、プロセス速度は300mm/secに設定する)、実施例1と同様の印刷条件で連続印刷実験を行った。ここで、1インチベタ印刷(印刷密度100%)のエッジ部からの距離における画像濃度分布測定結果について図を用いて説明する。
【0068】
図6は、実施例3における画像濃度分布測定結果の一例を示す図である。なお、図6において、横軸はエッジからの距離(Position)を示し、縦軸は画像密度(I.D.:Image Density)を示している。
【0069】
図6に示すように、実施例3における画像濃度は、ベタ画像で平均I.D.が1.2以上となった。また、エッジ部から中央部の画像濃度バラツキΔI.D.は、0.11以下となり良好な結果が得られた。また、上述した印刷条件による3000頁の連続印刷においても現像剤21の目詰まりもなく、安定した現像剤の搬送が得られていることが確認できた。
【0070】
<範囲の設定>
上述した実施例によれば、逆回転現像ロール11及び順回転現像ロール12、並びに両方の現像ロールの間に近接配置され、現像剤21の搬送量を規制するドクターブレード13を備えた二成分現像剤方式の噴水型の現像装置10において、逆回転現像ロール11の現像スリーブ31の表面粗さは、十点平均粗さRa(1)で20μm以上、100μm以下に設定することが好ましい。
【0071】
また、その下流に配設される順回転現像ロール12の現像スリーブ32の表面粗さは、十点平均粗さRa(2)で5μm以上、20μm以下に設定することが好ましい。更に、本発明に用いられる現像剤のキャリア粒径は、30μm以上、65μm以下にし、且つ、逆回転現像ロール11と感光ドラム101との現像ギャップG1は、0.6mm以上、1.2mm以下とし、順回転現像ロール12と感光ドラム101の現像ギャップG2は、0.2mm以上、0.6mm以下にすることが好ましい。これにより、高速印刷プロセスにおいても現像剤の搬送能力を低下させず、且つ、均一現像を実現することができる。
【0072】
また、上述した印刷条件を具現化するに最も適当な現像ロールの表面処理条件は、逆回転現像ロール11の現像ニップ部の磁力を600G以上、1200G以下、順回転現像ロール12の現像ニップ部の磁力を800G以上、1500G以下に設定することが好ましい。更に、逆回転現像ロール11の表面には、SUS溶射によるメテコロイ処理がなされ、順回転現像ロール12の表面には、順回転現像ロール12の長さ方向に例えばV字等の溝が複数形成されていることが好ましい。
【0073】
これにより、現像スリーブ31上での現像剤21の保持性を確保でき、感光ドラム101との周速比が大きく、現像ストレスが大きい現像条件下でも安定した現像剤の搬送が実現でき、高い現像能力が確保することができる。また、順回転現像ロール12での追加現像時には、狭い現像ギャップ時での現像が実現でき、エッジ効果が少ない均一現像を実現することができる。また、現像スリーブ32の表面が小さいため、感光ドラム101との現像ギャップG2が高精度で確保することができる。
【0074】
また、感光ドラム101との現像ギャップG2部分においては、感光ドラム101と順回転現像ロール12とが同じ方向(上から下)に回転するため、現像剤21を少ないストレスで狭い現像ギャップ間に搬送させることができる。したがって、プロセス速度300mm/sec以上の高速印刷においても安定した現像能力を確保することができる。
【0075】
ここで、上述した現像ギャップG1が0.6mmより小さい場合、又は現像ギャップG2が0.2mmより小さい場合には、現像ギャップ部に現像剤21が溜まり易くなり、目詰まり不良を生じる恐れがある。また、現像ギャップG1が1.2mmより大きい場合には、現像能力の低下が生じ易い。更に、現像ギャップG2が0.6mmより大きい場合には、現像電界集中によるエッジ効果の影響を受け易く、現像均一性が失われ易くなる。
【0076】
更に、現像スリーブ31の表面粗さRa(1)が10μmより小さい場合には、現像剤21の保持性が低下し、該現像スリーブ31上での現像剤スリップが生じ易くなる。また、表面粗さRa(1)が100μmより大きい場合には、スリーブ表面の凹凸が現像斑として現れる恐れがある。
【0077】
また、現像スリーブ32の表面粗さRa(2)が20μmより大きい場合には、上述したように現像ギャップG2を高精度で設定することが難しくなると共に、スリーブ表面の凹凸が現像斑として現れる恐れがある。また、表面粗さRa(2)が5μmより小さい場合には、現像ニップ部でのストレスが逆回転現像ロール11よりも小さい順回転現像ロール12においても、現像剤21の保持性が低下し、現像スリーブ31上での現像剤スリップが生じ易くなる。
【0078】
また、逆回転現像ロール11及び順回転現像ロール12における各現像ニップ部位置の磁力が低すぎる場合には、キャリアの磁気吸着力が低下し、キャリア飛散の問題が生じる。また、各現像ニップ部位置の磁力が高すぎる場合には、現像磁気ブラシが固くなり過ぎ、その過剰摺擦により現像筋等の画質低下を生じ易くなる。つまり、この現像ロールの磁力設定は、表面粗さRa(1)が大きい逆回転現像ロール11では現像剤保持能力が高いことと、逆回転であるため低ロール回転数でも感光体との周速比を確保することができることから上述したような比較的低めの磁力設定とすることが好ましい。
【0079】
一方、順回転現像ロール12は、順方向回転のため感光体との逆回転現像ロール11並みの周速比を確保するには、逆回転現像ロール11よりも高速で回転させる必要があり、更に回転によるキャリア飛散を防止するために上述したような大きな磁力設定が必要となる。
【0080】
このような設定を適用することにより、例えば均一現像が難しいプロセス速度300mm/sec以上の高速印刷においても安定した現像能力を確保することができる。
【0081】
<画像形成装置>
次に、本発明における現像装置を具備する画像形成装置の構成例について図を用いて説明する。図7は、本発明の現像装置を適用した画像形成装置の一構成例を示す図である。図7に示す画像形成装置100は、感光ドラム101と、帯電装置102と、光走査装置103と、現像装置10と、搬送装置104と、転写装置105と、清掃装置106と、定着装置107とを有するよう構成されている。また、図7に示す画像形成装置100は、記録媒体としての印刷用紙108に所定の画像を形成するものである。
【0082】
図7に示す画像形成装置100は、トナー像を形成するための潜像担持体であるドラム形状の感光ドラム101を所定の方向に回転駆動させる。この感光ドラム101は、帯電装置102で特定の極性に均一に帯電された後、光走査装置103からの光線により露光され、静電潜像が形成される。
【0083】
また、感光ドラム101における光走査装置103に対する回転下流側には、上述した本発明における現像装置10が配置されている。現像装置10は、感光ドラム101上に所定のトナー像を現像する。ここで、印刷用紙108は、搬送装置104により搬送される。転写装置105は、印刷用紙108の背面にトナーと逆極性の帯電を行い、感光ドラム101上のトナー像を印刷用紙108上に転写する。また、転写処理後、転写されなかったトナーは、清掃装置106で除去される。
【0084】
感光ドラム101からトナー像を転写した印刷用紙108は、定着装置107へ搬送される。定着装置107は、具体的には一定温度に加熱制御したヒートローラ107−1とヒートローラ107−1に圧接する加圧ローラ107−2とから構成されている。ここを通過するとき、印刷用紙108上に保持されたトナー像は、加圧溶融され印刷用紙108上に定着される。この定着処理後、印刷用紙108は、画像形成装置100の外部に排出され印刷が完了する。
【0085】
ここで、画像形成装置100に本発明の現像装置10を具備することにより、高速印刷プロセスにおいても現像剤の搬送能力を低下させず、且つ、均一現像を実現することができる。
【0086】
上述したように、本発明によれば、高速印刷においても安定した現像能力を実現することができる。具体的には、例えば、高速印刷プロセスでの現像性が確保し易い噴水型現像装置を用いても、カラー印刷に要求される薄層均一現像を実現することができる。したがって、高速印刷プロセスにおいても現像剤の搬送能力を低下させず、且つ、均一現像による高精細画像を実現することができる。
【0087】
なお、本発明は、デジタル複写機やレーザプリンタ等の画像形成装置全般に広く適用することができる。
【0088】
以上本発明の好ましい実施形態について詳述したが、本発明は係る特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形、変更が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0089】
【図1】本発明における現像装置の一構成例を示す図である。
【図2】現像装置における感光ドラムと各現像ロールとで構成される現像ニップ部の一例を示す拡大図である。
【図3】実施例1における画像濃度分布測定結果の一例を示す図である。
【図4】従来の画像濃度分布測定結果の一例を示す図である。
【図5】実施例2における画像濃度分布測定結果の一例を示す図である。
【図6】実施例3における画像濃度分布測定結果の一例を示す図である。
【図7】本発明の現像装置を適用した画像形成装置の一構成例を示す図である。
【符号の説明】
【0090】
10 現像装置
11 逆回転現像ロール
12 順回転現像ロール
13 ドクターブレード
14 搬送部材
15,16 混合攪拌部材
17 ブレード
21 現像剤
22 トナー貯留供給装置
23 トナー
100 画像形成装置
101 感光ドラム
102 帯電装置
103 光走査装置
104 搬送装置
105 転写装置
106 清掃装置
107 定着装置
108 印刷用紙

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転する潜像担持体に現像剤を搬送する回転可能に設置された複数の現像剤担持体のうち、少なくとも一対の現像剤担持体が前記潜像担持体の回転方向と逆方向及び同方向に回転し、前記現像剤の搬送量が規制部材により所定量に規制されるように前記一対の現像剤担持体が設置された現像装置において、
前記一対の現像剤担持体のうち、前記逆方向に回転する前記潜像担持体の回転方向上流側に設けられた第1現像剤担持体のスリーブの表面粗さを20μm以上、100μm以下とし、前記同方向に回転する前記潜像担持体の回転方向下流側に設けられた第2現像剤担持体のスリーブの表面粗さを5μm以上、20μm以下とし、前記現像剤に含まれるキャリア粒径の範囲を30μm以上、65μm以下とすることを特徴とする現像装置。
【請求項2】
前記第1現像剤担持体と前記潜像担持体との現像ギャップを0.6mm以上、1.2mm以下とし、前記第2現像剤担持体と潜像担持体との現像ギャップを0.2mm以上、0.6mm以下とすることを特徴とする請求項1に記載の現像装置。
【請求項3】
前記第1現像剤担持体と前記潜像担持体との現像ニップ部の磁力を600G以上、1200G以下とし、前記第2現像剤担持体と前記潜像担持体との現像ニップ部の磁力を800G以上、1500G以下とすることを特徴とする請求項1又は2に記載の現像装置。
【請求項4】
前記第1現像剤担持体表面には、SUS溶射によるメテコロイ処理が施され、前記第2現像剤担持体の表面には、前記第2現像剤担持体の長さ方向に溝が形成されていることを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載の現像装置。
【請求項5】
前記請求項1乃至4の何れか1項に記載の現像装置を具備する画像形成装置。
【請求項6】
前記現像装置の印刷動作時のプロセス速度を300mm/sec以上とすることを特徴とする請求項5に記載の画像形成装置

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−145774(P2008−145774A)
【公開日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−333573(P2006−333573)
【出願日】平成18年12月11日(2006.12.11)
【出願人】(302057199)リコープリンティングシステムズ株式会社 (1,130)
【Fターム(参考)】