説明

生体物質の分析

画像形成装置を使用して、複数の生体物質を分析する方法。この方法は、複数の生体物質にマーカーを付与する段階であって、マーカーが、画像形成装置を用いて検出する際に複数の生体物質中の対象を同定できるものであり、マーカーの付与方法が、マーカーが第1の期間中に対象を同定することが可能であるように、且つマーカーが第2の期間中に対象をそれほど同定することができないよう構成される段階と、第1の期間中、対象の空間定義をマーカーから特定することが可能なマークアップ画像を、記録する段階と、第2の期間中、複数の生体物質の第1の画像を記録する段階と、マークアップ画像から得られたデータを使用して、第1の画像内に、対象に関する空間定義を作成する段階とを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体物質を分析する方法に関し、詳細には生体細胞であるが、これに限定するものではない生体物質を分析する方法に関する。本発明はさらに、コンピュータソフトウェアと、そのような方法を実施するよう適合された装置とに関する。
【背景技術】
【0002】
現在、薬物の発見及び開発では、また一般的な生物学的研究では、細胞ベースのアッセイを正確に実施するための方法及び装置を使用する。細胞ベースのアッセイは、化合物の生物活性を評価するのに有利に用いられる。
【0003】
化合物の生体活性を評価する際、多数の化合物を迅速に且つ安価にスクリーニングする必要がある。この必要性は、様々な生化学標的、例えば受容体、酵素及び核酸に対して化合物の活性を試験することが必要な、医薬品業界で生じている。これらの化合物は、大きいライブラリーに収集され、場合によっては百万個を超える別個の化合物のライブラリーになる。化合物という用語の使用は、本明細書では、単純な有機及び無機分子、タンパク質、ペプチド、核酸及びオリゴヌクレオチド、炭水化物、脂質、又は生物学的に関心が持たれる任意の化学構造を含むがこれに限定することのないよう、広く解釈されるものとする。
【0004】
化合物のスクリーニングの分野では、細胞ベースのアッセイを、細胞集団に関して行う。
【0005】
国際公開第99/47963号は、トランスロケーションアッセイについて記述しており、この場合、2つ以上の細胞種、例えば生体細胞核及び生体細胞転写因子タンパク質を蛍光標識する。このアッセイでは、核と転写因子種の両方を含む画像を取得する。画像は、細胞内での転写因子の移動を分析するために、これら2つの種の共存が決定できるように処理される。トランスロケーションアッセイの経過中、細胞核は核染色剤で蛍光標識される。
【0006】
国際公開第03/031612号は、細胞の細胞核の核酸、例えばDNAを経時的に分析することによって、生体細胞周期の段階を決定する方法について記述する。細胞の画像を、アッセイの過程全体を通して記録し、これらの画像を使用して細胞核を分析するために、核を、核染色剤を使用して染色する。
【0007】
細胞核酸、例えばDNAの、Hoechst(ヨウ化プロピジウム)やDRAQ5などの核染色剤による染色を用いて、細胞核の空間定義を特定し、そこから核マスクを形成する。細胞の性質は、核マスク領域内外での細胞の特性を測定することによって、決定することができる。しかし核染色剤は、核酸の構造を破壊する性質があり、したがって細胞の多数のサンプルは、生体活性の進行状況を経時的に調査する必要がある。何百ものサンプルを分析する場合、この核酸の劣化は、律速的になる可能性がある。
【0008】
そのような核染色剤の構成分子は、核酸の塩基対間に挿入されることによって、核酸分子の分子に結合する。しかし、長時間にわたる実験の過程全体を通したこの挿入は、核酸に有毒であることがわかっている。この毒性により、核酸の構造が損傷を受け、遺伝暗号に変異をもたらす。これらの変異は、細胞の正しい機能を妨げ、生体細胞系に対する化合物の影響に関してその化合物をスクリーニングする場合、収集される結果データに望ましくない誤差が導入される。
【特許文献1】国際公開第99/47963号パンフレット
【特許文献2】国際公開第03/031612号パンフレット
【特許文献3】米国特許第5452125号
【特許文献4】国際公開第0157237号パンフレット
【特許文献5】米国特許出願第5741657号
【特許文献6】米国特許出願第6306600号
【非特許文献1】Haugland R.P.Handbook of Fluorescent Probes and Research Chemicals、第6版、1996、Molecular Probes,Inc.、Eugene、Oregon
【非特許文献2】Applied Optics 23 565−570(1984)
【非特許文献3】SPIE 200 73−78(1979)
【非特許文献4】Brakenhoff及びVisscher、J.Microscopy 171 17−26(1993)
【非特許文献5】Naylor L.H.(1999)Biochemical Pharmacology 58,749−757
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、核染色剤などのマーカーの使用に関する従来技術の問題に、対処することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の第1の態様によれば、画像形成装置を使用して、複数の生体物質を分析する方法が提供され、その方法は、
a)複数の生体物質にマーカーを付与する段階であって、マーカーが、画像形成装置を用いて検出する際に複数の生体物質中の対象を同定できるものであり、マーカーの付与方法が、マーカーが第1の期間では対象を同定することができるが第2の期間では対象の同定能力が落ちるようになされる段階と、
b)第1の期間中、対象の空間定義をマーカーから特定することが可能なマークアップ画像を、記録する段階と、
c)第2の期間中、複数の生体物質の第1の画像を記録する段階と、
d)マークアップ画像から得られたデータを使用して、第1の画像内に、対象に関する空間定義を作成する段階と
を含む。
【0011】
第1の期間は、第2の期間の前にあることが好ましく、又は第1の期間は、第2の期間の後に続くことが好ましい。
【0012】
生体物質は、生体細胞であることが好ましい。
【0013】
対象は、生体細胞核を含むことが好ましい。
【0014】
この方法は、作成された空間定義を使用して第1の画像を分析することにより、複数の生体物質の特性を分析する段階を、さらに含むことが好ましい。
【0015】
マークアップ画像内で細胞核の空間定義を特定することが可能な、複数の生体細胞に付与されたマーカーによって、マーカーが細胞核を同定しにくい第1の画像内の細胞核に関しても、空間定義を作成することができる。したがって、マークアップ画像が記録される第1の期間の前又は後に続く、第2の期間中に記録される第1の画像により、第1の期間以外のいかなる期間中にも、生体細胞内にマーカーを存在させる必要がなくなる。その結果、複数の細胞の特性を分析し、例えば長時間にわたる化合物のスクリーニング分析に関してより正確で信頼性ある結果データを得ることが可能になる。
【0016】
本発明の第2の態様では、画像形成装置を使用して生成された画像から、複数の生体物質を分析するための、画像分析方法が提供され、この方法は、
a)複数の生体物質からマークアップ画像を得る段階であって、マークアップ画像は、複数の生体物質に付与されたマーカーが、複数の生体物質中の対象を同定することが可能な第1の期間中に記録されたものである段階と、
b)複数の生体物質の第1の画像を得る段階であって、第1の画像は、マーカーが対象をそれほど同定することのできない第2の期間中に記録されたものである段階と、
c)マークアップ画像から得られたデータを使用して、第1の画像に関して対象の空間定義を作成する段階と
を含む。
【0017】
本発明のこの態様は、特に、画像を記録する方法とは異なる時間及び/又は部位で実施することのできる、画像分析の方法に関する。
【0018】
本発明のさらなる特徴及び利点は、添付図面を参照して単なる例示として挙げる以下の本発明の好ましい実施形態についての説明から、明らかにされよう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明は、疾患治療用の薬理学的物質を同定するのに有用である。本発明は、1以上の発光マーカーを用いて生体応答を測定する、広範な種類の生物学的アッセイを実施するための、処理量の高い方法を提供する。そのようなアッセイは、化合物又は生物学的に問題となっている任意の分子、即ちコンビナトリアルライブラリーに見出されるような薬物候補を含むがこれに限定することのないものに関して実施することができ、したがって、そのような化合物を高処理量でスクリーニングすることが可能になる。
【0020】
本発明の技法は、統計上有意な細胞集団のサンプルを構成するのに十分な数の細胞に関し、そのようなデータの取得が可能になるように、細胞又は細胞下レベルで十分迅速に、複数の生体物質、例えば個々の生体細胞に関するデータを取得するアッセイで、使用することができる。
【0021】
これらのアッセイは、フルオレセイン、ローダミン、Texas Red、Amersham Corp.染色剤Cy3、Cy5、Cy5.5及びCy7、Hoechst核染色剤及びCoumarin染色剤を含むがこれらに限定することのない既知の蛍光体又は蛍光標識を含め、様々に異なるマーカーを利用することができる(Haugland R.P.Handbook of Fluorescent Probes and Research Chemicals、第6版、1996、Molecular Probes,Inc.、Eugene、Oregon参照)。
【0022】
光学的配置
図1は、本発明の実施形態の、線走査共焦点顕微鏡を含む画像形成装置を示す。この顕微鏡は、例えば光の範囲が350〜750nmの電磁放射線源100又は110、円柱レンズ120、第1のスリットマスク130、第1のリレーレンズ140、2色性ミラー150、対物レンズ170、サンプルウェル182の2次元アレイを含むマイクロタイタープレート180、チューブレンズ190、フィルタ200、第2のスリットマスク210及び検出器220を含む。これらの要素は、図1の平面に垂直に延び且つマスク130、210内のスリットアパーチャ132、212を備える光軸OAに沿って、配置されている。レンズ140、170及び190の焦点距離と、これらレンズ同士の間隔、並びにマスク130とレンズ140との間隔、対物レンズ170とマイクロタイタープレート180との間隔、レンズ190とマスク210との間隔は、共焦点顕微鏡が得られるようなものである。この実施形態で、ランプ100又はレーザ110からの電磁放射線は、円柱レンズ120を使用することにより線状に集束される。この線の形状は、第1のスリットマスク130によって最適化される。スリットマスク130は、光学システムの像平面、即ち対象平面に共役な平面に示される。スリットマスク130のアパーチャ132によって形成された照明ストライプは、レンズ140、2色性ミラー150及び対物レンズ170によって、サンプルウェル182の2次元アレイを含むマイクロタイタープレート180上へと中継される。図示する便宜上、図1の光学要素を断面で示し、ウェルプレートを斜視図で示す。ウェルプレート180上への照明ラインの投影を、線184で示し、これもやはり図1の平面に垂直であると理解される。矢印A及びBで示すように、ウェルプレート180は、図示しない手段によって、アレイの次元に平行な2次元(X,Y)内で移動させることができる。
【0023】
代替の実施形態では、スリットマスク130が、光学システムのフーリエ平面内に在り、即ち対物レンズの後側焦平面(BFP)160に共役な平面内に在る。この場合、アパーチャ132は、図の平面内に在り、レンズ140が、アパーチャ132によって形成された照明ストライプを、対物レンズ170の後側焦平面160上へと中継し、図1の平面に垂直な対象平面で、線184へと変換する。
【0024】
追加の代替の実施形態では、スリットマスク130の全体を取り除く。この実施形態によれば、照明源はレーザ110であり、そこからの光は、対物レンズ170の後側焦平面160内に集束される。これは、図1に示すように、円柱レンズ120と球面レンズ140との組合せによって実現することができ、又は照明を、円柱レンズ120によって平面160内に直接集束させることができる。
【0025】
サンプル領域の画像、例えばサンプルウェル182内の、複数の生体細胞のサンプルの画像は、照明ラインをサンプル内の平面上に投影し、そこからの蛍光放出を検出器220上で画像形成し、プレート180を、照明ラインに垂直な方向に且つ検出器220の読み取りと同期して移動させることによって得られる。図1に示す実施形態では、蛍光放出を対物レンズ170により収集し、2色性ビームスプリッタ150を通して投影し、無限補正対物レンズ170を有する共焦点画像形成システムに適切であるように、フィルタ200及び第2のスリットマスク210を通してレンズ190により検出器220上で画像形成する。2色性ビームスプリッタ150及びフィルタ200は、照明波長の光を優先的に阻止する。例示される検出器220は、カメラであり、1次元又は2次元のどちらでもよい。1次元検出器を使用する場合、スリットマスク210は不要である。照明、検出及び並進手順は、定められた領域の画像形成がなされるまで、継続する。機械的な動きは、サンプルが連続した速度で並進する場合、単純化される。連続的な動きは、カメラの読み取り時間が露光時間に比べて短い場合、最も有用である。好ましい実施形態では、カメラを連続的に読み取る。露光時間と読み取り時間とを組合せた期間中の、サンプルの変位dは、照明ラインWの幅より大きくても小さくてもよく、例えば0.5W≦d≦5Wである。マルチウェルプレートの全てのウェルは、同様の手法で画像形成することができる。
【0026】
或いは顕微鏡は、主に光学システムの視野によって限定される、いくつかの隣接するウェル全体を横断する照明ラインが集束されるように、構成することができる。最後に、複数の顕微鏡を同時に使用することができる。
【0027】
照明ストライプ184のサイズ及び形状は、対物レンズの後側焦平面160内の、フーリエ変換ストライプの幅及び長さによって決定される。例えば、線184の長さは、160内の線の幅によって決定され、逆に184の幅は、160の長さによって決定される。回折限界性能により、160での照明ストライプの長さは、対物レンズの背面アパーチャがアンダーフィルされるよう選択される。照明ストライプ184のサイズ及び形状は、円柱レンズ120の焦点距離と120でのビームサイズとの組合せによって、即ち対物レンズの収差及び対物レンズの視野によって課された制約内での、各次元での有効開口数によって制御できることが、当業者に明らかである。
【0028】
照明ライン184の次元は、信号対雑音比を最適にするよう選択される。その結果、この次元はサンプルに依存的になる。アッセイに応じて、分解能は、回折制限された、即ち0.5μm未満と、約5μmとの間で様々にすることができる。ビーム長は、対物レンズの視野によって決定することが好ましく、例えば0.5〜1.5mmである。例えばNikon ELWD、0.6NA、10×対物レンズは、約0.75mmの視野を有する。この対物レンズによる、633nm放射線に関する回折限界分解能は、約0.6μmであり、又は約1100分解能要素である。
【0029】
有効深さ分解能は、スリットマスク210のアパーチャ212の幅、又は1次元検出器の幅と、対物レンズ170及びレンズ190の組合せによって生成された画像倍率によって、主に決定される。共焦点顕微鏡の最良の深さ分解能は、1μmに近付く。本願では、5〜10μmの深さ分解能が十分であり、又は有利でもあると考えられる。
【0030】
例えば、生細胞などの問題となっているサンプルが、十分短い画像取得時間内で適切な信号対雑音比の画像を得るには不十分な回折限界体積で蛍光体を含有する場合、その回折限界体積を超える量を照明し、そこからの放出を収集することが有利である。同様の状況が、イオンチャネル開口などの一過性の事象に関するビデオ速度論研究の場合にも、大半を占める。実際にこれは、対物レンズの背面アパーチャをアンダーフィルすることによって実現され、即ち照明アパーチャの直径の増大に等しいものである。照明の有効開口数(「NA」)は、対物レンズのNAより小さい。しかし蛍光放出は、対物レンズの完全NAで収集される。アパーチャ212の幅は、より大きい照明容積からの放出が検出されるよう、増大させなければならない。アパーチャの幅が、回折限界よりも2〜3倍大きい場合、幾何光学によって、検出容積要素のサイズに関する適切な近似式が与えられる。
【0031】
横方向の幅:a=d/M、
軸方向の幅:z=√2a√tanα
但し、Mは倍率であり、dはアパーチャ212の幅であり、αは、対物レンズ170によって範囲が定められた半角である。照明アパーチャ132、又はアパーチャを持たない実施形態でそれと均等なもの及び検出アパーチャ212は、独立に制御可能であることが、本発明の重要な部分である。
【0032】
多波長構成
多波長蛍光画像形成が可能な画像形成装置を使用する、別の実施形態は、ある特定のタイプのアッセイに好ましい。この方法では、同時に複数の異なるカラーチャネルで画像形成された、同じ領域に関して、画像データを作成することができる。
【0033】
独立した波長又はカラーチャネルの数は、実施される特定のアッセイに応じて様々になる。一実施形態では、3つの照明波長を使用する。図2A及び2Bは、3色線走査共焦点画像形成システムの光線経路を、上面図及び側面図でそれぞれ示している。一般に、このシステムは、いくつかの電磁放射線源S、コリメートレンズL及びミラーMであって、第1の空間フィルタSFで、円柱レンズCLにより細長いビームに集束されたコリメートビームを生成するためのもの、第1の空間フィルタSFと第2の空間フィルタSFとの間の共焦点顕微鏡、画像形成レンズIL、ビームスプリッタDM及びDM及びサンプルからの蛍光放射線の種々の波長成分を分離し検出するための検出器Dを含む。空間フィルタSF及びSF及びSFは、スリットマスクであることが好ましい。
【0034】
特に、図2Aは、カラーチャネルλ、λ及びλ用の線源S、S及びSと、それぞれの線源からの光をコリメートするレンズL、L及びLを示す。レンズL、L及びLは、システム内のその他のレンズの色度が全て補償されるよう調節することが好ましい。ミラーM、M及びMは、線源Sからの照明カラーチャネルを合わせるのに使用する。ミラーM及びMは、部分的に透過性があり、部分的に反射性があり、大部分が2色性である。例えばMは、優先的にλを透過させ、優先的にλを反射すべきである。したがってλは、λよりも大きいことが好ましい。
【0035】
共焦点モードでの顕微鏡の操作では、線源Sからの合わせた励起ビームを、対象平面OP内で、「線」又は高度な偏心楕円状に集束させる必要がある。図1に関して既に論じたように、これを実現するには様々な構成を使用することができる。図2に示す実施形態では、合わせた照明ビームを、円柱レンズCLによって、空間フィルタSFのスリットに一致した細長い楕円に集束させる。図2A及び2Bに示すように、スリットマスクSFは、システムの像平面内に在るが、これは、照明の光の伝播に対して垂直に位置合わせされ、その長軸は図2Aのページの平面内に在るものである。レンズTL及びOLは、SFを含む平面から対象平面OPへと、照明ラインを中継する。反射鏡、TMは、便宜上のものである。別の実施形態では、DMがTLとOLの間にあり、CLが、照明の光をBFPに直接集束させる。その他の実施形態は、当業者に明らかにされよう。
【0036】
図2Bを参照すると、サンプルによって放出され且つ対物レンズOLによって収集された光は、チューブレンズTLによって、空間フィルタSF上で画像形成される。SFは、ページの平面に対して垂直に延びるように並べられた、スリットであることが好ましい。したがって、フィルタSFを通過する光は、実質的に照明のラインである。SFは、像主平面又はそれに共役な任意の平面内に、配置することができる。DMは、部分的に反射性があり、部分的に透過性があり、好ましくは「多色性」である。ある特定の波長帯を優先的に反射し、且つその他の波長帯を優先的に透過させる、多波長「2色性」ミラー又は「多色性」ミラーを得ることができる。
【0037】
この場合、δλは、λによって励起された蛍光放出となるよう定められる。これは一般に、λよりも若干長い波長の分布になる。δλ及びδλは、同様に定められる。DMはλを優先的に反射し、δλ、n=1、2、3を優先的に透過させる。SFを透過した光は、像主平面に共役な平面内に在る検出器上で、画像形成される。図2Aでは、空間フィルタSFの画像が、レンズILによって、3つの全ての検出器D上に生成される。この実施形態は、それぞれの検出器によって作成された画像同士をほぼ完全に位置合わせすることが必要な用途において、好ましい。別の実施形態では、個々のレンズILが検出器に関連付けられており、レンズの対IL及びILが、空間フィルタSFの画像をそれぞれの検出器D上へと中継するように働く。光は、ミラーDM及びDMによって、複数の検出器に分割される。ミラーは、部分的に透過性があり、部分的に反射性があり、好ましくは2色性である。DMは、δλを優先的に反射し、δλ及びδλを優先的に透過させる。ブロックフィルタ、BFは、δλを優先的に透過させて、存在するその他全ての波長を効果的に阻止する。DMは、δλを優先的に反射し、δλを優先的に透過させる。ブロックフィルタ、BF及びBFは、それぞれδλ及びδλを優先的に透過させ、存在するその他全ての波長を効果的に阻止する。
【0038】
走査ミラー構成
本発明のいくつかの実施形態では、ビデオ速度で画像をフレーム処理することによって、迅速なデータ取得が行われる。ビデオ速度画像形成によって、1秒当たり最高30フレーム又は60フレームも得ることは可能になる。本発明の使用では、30Hz程度の大きさのフレーム速度を意味するものとする。好ましい実施形態で、ビデオ速度画像形成は、サンプル平面の1次元方向に照明し、それに垂直な方向で照明ビームを走査して、照明とサンプルとの相対的な並進が行われるようにすることにより、実現される。走査ステージは、一般に重量のあるものである。その結果、十分迅速に動かすことができない。
【0039】
図3は、走査ミラーSMを利用する、本発明の実施形態を示す。このミラーは、対物レンズの後側焦平面(BFP)に共役な平面内に配置することが有利であり:BFP(又はそれに共役な平面)内での回転によって、対象平面(OP)及びその結合平面内での並進が行われる。SMの完全走査範囲は、レンズRL及びRLの焦点距離の典型的な値に対して、2〜3度しか必要としない。図3に示すように、このレンズ対は、倍率1でSM上にBFPの画像形成を行うが、様々な倍率を使用できることが有利である。画像取得速度に対する制限因子は、カメラ読み取り速度及びシグナル長である。上述の画像形成モードでは、カメラ読み取り速度、例えば1MHzで、データを連続的に取得することができる。走査ミラーによって、データを一方向で取得することが好ましい。データを連続的に取得することが可能な、理想化された走査運動は、鋸歯状である。実際に、転回及び復帰の走査時間を合わせたものは、走査時間の約1/3〜2/3を構成することになる。不感時間50%、ミラーの振動周波数50Hz及び画素取得測度1MHzと仮定すると、1秒当たり50フレームで、1フレーム当たり約10000個の画素が取得されることになるが、これは、フレームごとに、細胞などの個々の対象を特定し追跡するのに十分なものである。しかし、1画像当たり10個の画素は、上記にて一般に考えられる値の10分の1である。用途に応じて、高分解能で相対的に小さい画像を取得することが有利であり、例えば画素化0.5μm×0.5μmで50μm×50μmであり、又はより低い分解能で相対的に大きい画像を取得することが有利であり、例えば画素化2μmで200μm×200μmである。
【0040】
オートフォーカス
本発明の好ましい実施形態で、サンプルは、画像形成システムの対象平面内に在る。したがって、そのシステムの対象平面内で、画像形成システムの視野内にサンプル部分を維持する、オートフォーカス機構が使用される。平面度の精度は、このシステムの被写界深度によって決定される。好ましい実施形態で、被写界深度は約10μmであり、視野は約1mmである。
【0041】
オートフォーカスシステムは、ごくわずかな遅延により動作し、即ち応答時間は、画像取得時間に比べて短く、例えば0.01〜0.1秒である。さらに、オートフォーカス光源は、照明光源及びサンプル特性とは無関係である。他の利点の中でも、とりわけこの構成は、画像形成システムの光軸に沿ってサンプルキャリアを位置決めすることが可能であり、その結果、対象平面の位置決めとは無関係に決定されるようになる。
【0042】
単一ビームオートフォーカスの実施形態を、図2C及び3Cに示すが、これらの図には、波長λの別個の光源S及び検出器Dが示されている。波長λは、サンプルの蛍光とは異なることが必要であり、好ましくは、サンプル中に認められるほどの蛍光を励起できない波長である。したがって波長λは、好ましくは近赤外領域内にあり、例えば800〜1000nmである。部分的に透過性があり、部分的に反射性のあるミラーDMは、好ましくは2色性であり、λを反射し、λ及びδλ、n=1、2、3を透過させる。本願に適切な、光学をベースにしたオートフォーカス機構は、知られている。例えば、サーボ制御に適切な、位置誤差シグナルを生成するための、アスチグマチックレンズをベースにしたシステムが、Applied Optics 23 565−570(1984)に開示されている。「スキュービーム」を利用した焦点誤差検出システムは、SPIE 200 73−78(1979)に開示されている。後者の手法は、図2C及び3Cに従って容易に実施されるが、この場合、Dはスプリット検出器である。
【0043】
しかし、ウェル底部に存在するサンプルを持ったマイクロタイタープレートと共に使用するには、ウェル間を移動するように、サーボループを破壊しなければならない。この結果、照明を別のウェルに移動させるたびに、焦点を定め直す必要があるので、かなりの時間遅延が生ずる可能性がある。
【0044】
サンプル平面及び対象平面の相対的な位置の、連続閉ループ制御が、図4に示す本発明の好ましい実施形態で提供される。このシステムは、電磁放射線の、2つの独立したビームを利用する。その一方は、Sから生ずるものであり、連続面、例えばマイクロタイタープレートの底面上で集束する。もう1つは、Sから生ずるものであり、不連続面、例えばマイクロタイタープレートのウェル底面上で集束する。一実施形態で、S及びSから生ずるビームは、それぞれ波長λ及びλを有する。λは、Lでコリメートされ、虹彩絞りIで絞られ、対物レンズOLによって不連続面上に集束される。λは、Lでコリメートされ、虹彩絞りIで絞られ、対物レンズOLと共役なレンズCFLによって、連続面上に集束される。反射光は、レンズIL及びILによって、それぞれ検出器D及びD上に集束する。部分的に透過性であり、部分的に反射性のあるミラーDMは、好ましくは2色性であり、λ及びλを反射し、λ及びδλ、n=1、2、3を透過させる。ミラーM、M及びMは、部分的に透過性があり、部分的に反射性がある。λ及びλが全く異なる場合、Mは、好ましくは2色性である。
【0045】
サンプルがマイクロタイタープレート内に在る実施形態によれば、λは、ウェル底面に集束する。対象平面は、様々な距離だけ、ウェル底面からずらすことができる。これは、Lを調節することによって実現され、或いはサーボ制御ループ内でのオフセット調節によって、実現される。記述する便宜上、λは、対象平面に集束すると仮定する。
【0046】
オートフォーカスシステムの動作は、以下の通りである。サンプルウェルの底面が、対物レンズOLの焦平面内にない場合、検出器Dは誤差シグナルを生成し、これを、スイッチSWを通してZ制御器に供給する。Z制御器は、マイクロタイタープレートを対物レンズに向けて、又は対物レンズから離れた方向に移動させるため、モータ(図示せず)を制御する。或いはZ制御器は、対物レンズを動かすことができる。マイクロタイタープレートの底面PBが、レンズCFLと対物レンズOLとを組合せた焦平面にない場合、検出器Dは誤差シグナルを生成し、これを、スイッチSWを通してZ制御器に加える。XY制御器は、レンズOLの対象平面OP内でマイクロタイタープレートを動かすために、モータ(図示せず)を制御する。
【0047】
示されるように、走査の全体は、コンピュータの制御下にある。例示的な走査は、以下の通りである:特定のウェルの画像が完成すると、コンピュータはSWを操作して、サーボ機構の制御を、Dにより生成された誤差シグナルからDにより生成された誤差シグナルへと切り換え;次いでコンピュータは、プレートが次のウェルに移動するように、XY制御器の方向を定め、その後、サーボを元のDに切り換える。
【0048】
プレート底面からのシグナルを利用する「粗動」集束機構を使用して、プレート底面の厚さのウェルごとの変動以内に、サンプル平面の位置を維持し、それによって、「精密」機構で探索する必要のある範囲が最小限になるようにする。例えば虹彩絞りIの直径が2mmであり、ILが100mmである場合、検出器上の画像サイズは約100μmになる。同様に、虹彩絞りIの直径が0.5mmであり、ILが100mmである場合、検出器上の画像サイズは約400μmになる。後者は、「粗動」焦点として機能するように、それほど感度が高くならないよう選択する。
【0049】
上述の単一ビームの実施形態と同様に、波長λ及びλは、サンプルの蛍光とは全く異なる必要があり、サンプル内に認められる蛍光を励起することができない波長であることが好ましい。したがってλ及びλは、好ましくは800〜1000nmなどの近赤外領域内にある。さらに、2つの波長は異なることが好ましく、例えばλ=830nm、λ=980nmである。
【0050】
2ビームオートフォーカスの代替の実施形態では、λ=λ及び2つのビームは、同じ線源から生ずるものでよい。好ましくは、2つのビームが互いに垂直に偏光し、Mは、偏光ビームスプリッタである。
【0051】
擬似閉ループ制御は、以下の通りに動作する単一ビームオートフォーカスの、好ましい実施形態で提供される。走査終了時、コンピュータでSWを作動させて、サンプルアンドホールド機器に制御を切り換え、そこでZ制御器の出力を一定レベルに維持しつつ、プレートを次のウェル上に移動させ、その後、SWを元のDへと切り換える。
【0052】
検出器
対象平面に共役な平面内に、マニホールド、独立した検出要素を有する検出器を、使用する。上記論じたように、迅速な画像形成を必要とする用途では、主に線照明が有利である。しかし点照明に対して、線照明の平行性に固有の潜在的な速度の増大は、画像形成システムが、照明ラインに沿ってサンプルの各ポイントから放出された光を同時に検出可能な場合にしか実現されない。
【0053】
上記従来技術の画像形成システムの出力で、電荷結合素子(CCD)、又はその他のカメラを配置することが可能である(White他の米国特許第5452125号、Brakenhoff及びVisscher、J.Microscopy 171 17−26(1993))。得られた装置には、本発明に比べて3つの大きな欠点がある。1つは、2次元検出器上で画像を再走査する必要があることであり、これは、不必要な複雑さを装置にもたらすことになる。別の欠点は、典型的な場合にカメラを構成する1000画素×1000画素アレイの全体にわたり、十分な品質を有する完全2次元検出器を必要とすることである。第3の欠点は、2次元機器から全画像を読み取るのに、追加の時間が必要であることである。
【0054】
これらの欠点を回避して、高感度及び低ノイズ検出の制約内で画像形成速度を最適化するだけではなく、処理量も最適化するには、連続読み取りラインカメラを使用し、好ましい実施形態では、長方形のCCDをラインカメラとして使用する。どちらの実施形態でも、画像内の線同士、又は画像同士の間に不感時間はない。追加の利点は、以下に論じるステージ走査の実施形態で、より大きい有効視野が実現可能であることである。
【0055】
検出器に必要とされる性質は、以下の好ましい実施形態を考慮することによって、さらに明らかにすることができる。対物レンズの分解能限界は<1μmであり、典型的な場合は約0.5μmであり、検出器は、約1000個の独立した要素のアレイを含む。分解能、視野(FOV)及び画像取得測度は、独立した変数ではなく、これらの性能パラメータ同士で妥協する必要がある。一般に、光学システムの倍率は、分解能を犠牲にすることなくできる限り大きなFOVで画像形成されるよう、設定する。例えば、約1mmの視野は、1μmの画素化で、1000要素アレイ上に画像形成することができる。検出要素が20μm平方の場合、システムの倍率は、20×に設定されることになる。これは、1μmの分解能をもたらすものではないことに留意されたい。画素化は、分解能と均等ではない。例えば、対物レンズの固有の分解能限界が0.5μmであり、対象平面内の各0.5μm×0.5μm領域を画素上にマッピングする場合、得られるデジタル画像の真の分解能は、0.5μmではない。真の0.5μm分解能を実現するには、画素化を、対象平面内の約0.2μm×0.2μmの領域に対応させる必要があると考えられる。1つの好ましい実施形態では、画像形成システムの倍率を、光学部品の真の分解能が実現されるように設定する。
【0056】
現在、本発明の用途に十分な読み出し速度を有して、検出効率が最高でありノイズ検出が最低である機器は、CCDカメラである。図5には、m×nアレイの検出器要素を有し、但しmがmよりもかなり小さい長方形CCDカメラが示されている。蛍光放出の画像は、好ましくは読み取りレジスタに近接している1行をカバーする。これは、移動時間を最小限に抑え、照明された行と読み取りレジスタとの間の行からのシグナルに、擬似カウントが蓄積されないようにする。
【0057】
原則として、図5に示すように、CCDカメラ上のスリットSFの画像の高さが1つの画素になるように、光学システムの倍率を設定することができる。実際に、照明ラインとカメラの行方向の軸との完全な位置合わせを維持することは困難であり、図2及び3で例示した多波長実施形態で、3つのカメラと照明との位置合わせを維持することは、さらに困難である。カメラの各列において、いくつかの検出器要素、例えば2〜5個の検出器要素を一緒にまとめることによって、読み取りノイズ又は読み取り時間の不利益を最小限に抑えながら、位置合わせの条件を緩和することができる。
【0058】
図2及び3の可変幅検出空間フィルタSF及び図1の210と併せて、1以上の長方形CCDカメラを検出器として有するものであって、それぞれが対象平面に共役な平面内に配置されたものである、好ましい実施形態の追加の利点は、以下の記述により明らかにされる。上記論じたように、本発明の一実施形態では、検出空間フィルタを省略し、ラインカメラを、検出空間フィルタと検出器とを組み合わせたものとして使用する。しかし、やはり上記論じたように、可変幅検出空間フィルタによって、検出容積の最適化が可能になり、その結果、サンプル依存性の信号対騒音比が最適化されるようになる。以下の好ましい実施形態は、ラインカメラの利点を維持し、即ち速度及び様々な検出容積の柔軟性を維持する。倍率は、カメラの1つの行の上に、高さhの回折限界ラインが画像形成されるように、設定する。検出空間フィルタdの幅は、好ましくはh≦d≦10hの間で可変である。カメラの照明された列における検出器は、読み取りの前にまとめられるが、これは、露光及び読み取り時間に比べて無視できるような時間しか必要としない操作である。
【0059】
1つの好ましい実施形態で、カメラはPrinceton Instruments NTE/CCD−1340/100−EMDである。好ましい実施形態での読み取り速度は、読み取りノイズが2〜3個の電子のときに、1MHzである。画素フォーマットは1340×100であり、カメラは、問題となっている領域から大部分の行(80%)が離れてシフトするように、ワイヤで留められ、それによってカメラを効率的に1340×20にすることができる。
【0060】
連続読み取りカメラの上記利点の他に、即ち順次行われる取得と取得との間に不感時間がないことの他、追加の利点とは、サンプルの程度によってのみ制限される長さを持った長方形画像の取得が、可能になることである。その長さは、カメラの幅の小さい方と、線照明の程度とによって決定される。好ましい実施形態では、サンプルを、96ウェルマイクロタイタープレートのウェルであって、その直径が7mmである底面に置く。ストリップ1μm×1mmを照射し、照射された領域から放出された放射線を、検出器上に画像形成する。一連の光学部品は、視野が約1mmになるよう設計される。本発明によれば、ウェル底面の画像は、1×7mmの視野全体にわたって1μmの画素化で生成することができる。
【0061】
環境制御
本発明の実施形態では、アッセイを生細胞で実施する。生細胞のアッセイは、適正に実施するために、生理条件に適切に近い状態をしばしば必要とする。重要なパラメータの中には、温度がある。特にサンプル温度を37℃に維持するため、温度を上下させる手段を組み込むことが望ましい。別の実施形態では、生細胞の生存可能性を維持するために、相対湿度及び/又はCO及び/又はOを制御することが必要である。さらに、蒸発が最小限に抑えられるよう湿度を制御することは、サンプルの体積が小さい場合に重要である。
【0062】
LCIシステムに適合した、高温の、好ましくは37℃のマイクロタイタープレートを提供する3つの実施形態は、次の通りである。
【0063】
画像形成システムは、耐光性エンクロージャ内に在ることが好ましい。第1の実施形態では、エンクロージャの内部全体を所望の温度に維持することによって、サンプルプレートが所望の温度に維持される。しかし37℃では、高い湿度が目的を持って維持されない限り、蒸発冷却によってサンプル体積が減少し、アッセイの継続時間を制限することになる。
【0064】
第2の実施形態は、マイクロウェルプレート用に、加熱されたカバーを提供し、それによって、このプレートを静止カバーの下で動かすことが可能になる。このカバーは、顕微鏡の光軸に一致した単一の開口を、ウェル上方に有する。この開口によって、アクティブなウェルに定量吐出しつつ、加熱を維持することが可能になり、またプレートの残りの部分に限定された循環を維持することが可能になる。加熱されたカバープレートとマイクロウェルプレートとの間の、約0.5mmのスペースによって、マイクロウェルプレートを自由に動かすことが可能になり、蒸発が最小限に抑えられる。照会されるウェルの内容物は、ディスペンサ開口を経て多くても2〜3秒間だけ周囲条件に曝されるので、内容物は、測定中に著しい温度変化を被らない。
【0065】
第3の実施形態では、薄く、加熱されたサファイヤの窓を、プレート底面のエンクロージャとして使用する。ウェルセパレータに沿った抵抗加熱器のパターンは、窓の温度を所望のレベルに維持する。
【0066】
追加の実施形態では、3つの開示された方法を、様々に組み合わせることができる。
【0067】
自動スクリーニングアッセイで用いられる、本発明の、追加の好ましい実施形態では、画像形成システムを、Zymark Twisterなどのプレート取扱いロボットと一体化する。
【0068】
データ処理システム
図6は、本発明により構成されたシステムの、データ処理構成要素の概略図を示す。このシステムは、Amersham Biosciences IN Cell Analyzer(商標)システムをベースとしたもので、検出器D、D、D、D、D、スイッチSW、制御ユニット401、画像データ記憶装置402及び入力/出力(I/O)デバイス404を含む、上述の共焦点顕微鏡400を含む。関連するコンピュータターミナル405は、中央演算処理装置(CPU)408、メモリ410、ハードディスクドライブ412などのデータ記憶装置及びI/Oデバイス406であって、コンピュータとMDPUとの相互接続、さらにスクリーンI/Oデバイス430を介したコンピュータとスクリーン428の表示素子432との相互接続をそれぞれ容易にするものを含む。オペレーティングシステムプログラム414は、ハードディスクドライブ412に記憶され、コンピュータターミナル405の低レベルのオペレーションを、既知の手法で制御する。プログラムファイル及びデータ420も、ハードディスクドライブ412に記憶され、既知の方法で、関連するデバイスを介してオペレータへの出力を制御し、ハードディスクドライブに記憶させたデータを出力する。関連するデバイスには、スクリーン428の要素としてのディスプレイ432、ポインティングデバイス(図示せず)及びキーボード(図示せず)が含まれ、これらは、別のI/Oデバイス(図示せず)を介してオペレータから入力を受信し、またオペレータに情報を出力するものである。ハードドライブ412に記憶されたプログラムファイル420には、画像処置及び分析アプリケーション416と、アッセイ制御アプリケーション418と、顕微鏡400から受信された画像データ及びデータ処理中に生成された出力ファイルを記憶するためのデータベース422とが含まれる。画像処理及び分析アプリケーション416は、Media Cybernetics製のImage−Pro(商標)など、既知の画像処理及び分析ソフトウェアパッケージを、注文に合わせて作成したものでよい。
【0069】
共焦点顕微鏡400を使用するアッセイの性能は、制御アプリケーション418を使用して制御され、画像データが取得される。少なくとも1つの検出器、D、D、Dによって、マイクロタイタープレートの少なくとも1つのウェルに関する画像データを取得し終えた後、その画像データをコンピュータ405に転送し、コンピュータターミナルのハードドライブ412のデータベース422に記憶させ、その時点で、画像からのデータを、画像処理及び分析アプリケーション416を使用して分析することができる。
【0070】
画像の記録及び分析
図7は、複数の生体物質の画像と、複数の生体物質中の対象の、何組かの空間定義との、概略図を示す。
【0071】
本発明のこの第1の実施形態で、複数の生体物質は、第1の細胞500と、第2の異なる細胞501とを含む、複数の生体細胞である。各細胞内には、細胞核である対象が在る。第1の核502は、第1の細胞500内に含有され、第2の異なる核503は、第2の細胞501内に含有される。複数の細胞にマーカーを与える前に、例えば核マーカーを付与する前に、1つのサンプルウェル182内の複数の細胞サンプルの、先行する一連の画像を、既に述べた多波長構成の線走査共焦点画像形成システムを使用して、記録する。この実施形態では、2つの独立した組の波長が、共焦点画像形成システムで使用され、したがって、2つの波長λ、λで動作する2つの線源S、S;2個のレンズL、L;2個のミラーM、M;2個のブロックフィルタBF、BF;及び2個の検出器D、Dだけを使用する。先行する画像は、第1の線源S、第1のレンズL、第1のミラーM、第1のブロックフィルタBF及び第1の検出器Dを使用して記録する。蛍光タンパク質励起が生ずる波長λ及び得られた第1の蛍光放出が生ずる波長δλを含む、第1のカラーチャネルは、生体活性データを生成するために、このチャネルを使用して記録された画像を分析することになるので、さらに生体活性カラーチャネルと呼ばれる。
【0072】
第1のブロックフィルタBFは、第1の蛍光放出の波長δλを選択的に通す、第1のバンドパスフィルタである。この実施形態では、生体活性カラーチャネルが緑色カラーチャネルであり、蛍光タンパク質励起放射線によって励起されたときに、緑色蛍光タンパク質(GFP)によって放出される蛍光放射線を検出する。第1のフィルタは、約488nmの第1の放出波長δλで、最大の透過率を有する。さらに第1のフィルタは、約50nmの半値全幅透過率(FWHM)を有するが、これは約740〜590nmの間の波長を選択したことに対応する(即ち約565nm±25nm)。
【0073】
マーカーを添加する前に記録された、一連の先行画像は、第4の先行期間tN−3中に記録された、第3の先行画像504と、第3の異なる期間tN−2中に、第3の先行画像の後に記録された、第2の異なる先行画像506と、第2の異なる期間tN−1中に、第2の先行画像の後に記録された、第1の異なる先行画像508とを含む。
【0074】
複数の生体細胞に関する別の画像は、生体活性カラーチャネルを使用して記録する。この別の画像は、マーカーを添加した後の期間t中に記録された、後続画像510である。
【0075】
第1の期間t中に、マークアップ画像512を、第2の線源S、第2のレンズL、第2のミラーM、第1のブロックフィルタBF及び第2の検出器Dを使用して記録する。蛍光マーカー励起が生ずる波長λ及び得られた第2の蛍光放出が生ずる波長δλを含む、第2のカラーチャネルは、画像中で核マーカーが検出される部位に関連した空間定義を生成するために、このチャネルを使用して記録された画像を分析することになるので、さらに核マーカーカラーチャネルと呼ばれる。
【0076】
核染色剤がHoechstタイプのものであるとき、核マーカー励起放射線は、約364nmの波長を有する。Hoechst核染色剤の場合、第2のブロックフィルタBFは、第2の蛍光放出の波長δλを選択的に通す、バンドパスフィルタである。第2のフィルタは、約450nmの第1の放出波長δλで、最大の透過率を有する。さらにフィルタは、約25nmの半値全幅透過率(FWHM)を有し、これは約437.5〜462.5nmの間の波長を選択したことに対応する(即ち約450nm±12.5nm)。
【0077】
核染色剤がDRAQ5タイプのものであるとき、核マーカー励起チャネルは、約633nmの波長を有する。DRAQ5核染色剤の場合、第2のブロックフィルタBFは、第2の蛍光放出の波長δλを選択するための、バンドパスフィルタである。第2の放出波長δλの最大透過率で、第2のバンドパスフィルタは、約695nmの波長を選択する。さらにフィルタは、約55nmの半値全幅透過率(FWHM)を有し、これは約667.5〜722.5nmの間の波長を選択したことに対応する(即ち約695nm±27.5nm)。
【0078】
マークアップ画像512から、データ処理システムは、閾値を超える強度を有することを利用して核マーカーが存在する画素を特定する閾値処理を使用して、第1及び第2の核502、503を含む細胞核を同定することが可能である。次に核は、上述のような、所与のサイズの閾値処理済み画素の群の形で同定される。細胞核のこの同定によって、核の複数の空間定義は、第1の核502の第1の空間定義514と、第2の核503の第2の異なる空間定義516とを含むマークアップ画像512から検出される。空間定義は、例えば画素マップの形をとる空間の広さと、例えば核の重心点の画像画素アドレスの形をとる位置データとの両方を含む。
【0079】
マークアップ画像512の空間定義の実質的に全てを含み、且つ第1及び第2の空間定義514、516を含む、後続組の空間定義518は、第1の期間t中に構成される。マークアップ画像512は、第1の期間t中に記録されるが、これは、マークアップ画像512からの空間定義が、後続画像510中の第1の核502及び第2の核503を含む複数の細胞核を空間的に画定するものと想定することができるように、構成される。
【0080】
作成空間定義の、第1の先行の組524は、第2の期間tN−1中に構成され、また核マーカーが細胞核をそれほど同定することのできない第1の先行画像508内の核に関して作成された複数の空間定義を含み、これには、第1の核502に対応する、第1の作成空間定義520と、第2の核503に対応する、第2の異なる作成空間定義522とが含まれる。同様に、作成空間定義の、第2の先行する組526及び第3の先行する組528が、それぞれ期間tN−2及び期間tN−3中に構成される。
【0081】
図8は、複数の生体細胞の核を取り囲む空間を、概略的に示す。
【0082】
この実施形態で、それぞれの核を取り囲む空間は、ボロノイ領域である。第1のボロノイ重心点632の周りの第1のボロノイ領域630は、少なくとも1つの、別の異なる近接したボロノイ領域に隣接して存在し、例えば、第2の異なるボロノイ重心点634の周りの、第2の異なる近接したボロノイ領域633に隣接して存在する。第1のボロノイ領域630は、第2のボロノイ領域633を含めた少なくとも1つの、別の異なる近接ボロノイ領域から、境界635によって隔てられている。境界635は、第1のボロノイ重心点632と、少なくとも1つの別の、異なる近接ボロノイ重心点との間で、実質的に等しい距離だけ離れて存在する。ボロノイ領域は、細胞核の種々のボロノイ重心点それぞれに関して決定され、得られた複数のボロノイ領域が、ボロノイダイアグラム636を形成する。種々のボロノイ重心点のそれぞれは、1つの別々の細胞核の重心点である。図8は、後続画像510内の複数の核に関するボロノイダイアグラムを直接表すのではなく、上述の第1の重心点及び第2の重心点がそれぞれ第1及び第2のボロノイ重心点632、634であることを説明する目的で示したものと解釈すべきである。
【0083】
図9は、本発明によって、細胞核に関する空間定義を作成するために、複数の生体細胞を分析する方法の一実施形態を、流れ図として示す。
【0084】
第1の段階738では、第1の先行画像508を含む、生体細胞の一連の先行画像を、逐次記録する。この後、核マーカーを複数の細胞に添加し(740)、その後、共焦点画像形成システムの第1のカラーチャネルλを使用して、複数の細胞の別の画像を記録する(742)。共焦点画像形成システムの核マーカーチャネルλを使用して、実質的に第1の期間t中、マークアップ画像512を記録する(744)。
【0085】
後続組の空間定義518は、後続画像510からデータを得るのに使用する。得られたデータは、細胞核のそれぞれに関連した組iの、1以上の特性の少なくとも1つの値を含む。この実施形態で、各値は、組iでK特性を有するベクトルZである。第1の核ベクトルZは、第1の空間定義514を後続画像510に与え、第1の核502に関する後続画像510内の空間定義によって特定された領域に加えられる特性を計算することにより、後続画像510から得られる(746)。この実施形態で、組iの特性の数値Kは2であり、この特性は、平均強度及び標準偏差である。次いで第1の核502の組iに関し、計算された特性を使用して、第1の核ベクトルZを構成する。
【0086】
同様の手法で、第2の空間定義516を後続画像510に加え、それによって、第2の核503に関する後続画像510の領域の、組iで計算された特性を使用して、第2の核ベクトルZが得られるようにする(746)。
【0087】
同様に、後続画像510内の複数の細胞核の核を空間的に画定する、空間定義518の組の各空間定義ごとの核ベクトルZが、得られる。それぞれの核ベクトルZは、複数の核の1つに対応した後続画像510の領域の組i内の特性を使用して、得られる。
【0088】
次に、図8に示すように、細胞核の各重心点に関するボロノイ領域を、段階748で決定する。各ボロノイ領域を決定するために(748)、ボロノイアルゴリズムを使用する。ボロノイアルゴリズムは、各ボロノイ重心点の周りの境界を画定する。第1及び第2のボロノイ重心点632、634の場合、ボロノイアルゴリズムは、第1及び第2のボロノイ重心点632、634の間で実質的に等しい距離のところに存在するように、境界635の一部を画定する。
【0089】
次いで第1の核502に関する、第1の試験空間定義(図示せず)を、段階750で、第1のボロノイ領域630内に画定する。第1の核502に関する第1の試験空間定義は、試験空間範囲及び試験部位データを有し、これは、第1の空間定義514の空間範囲及び部位データと同じである。第1の試験空間定義を使用して、第1の先行画像508内の第1の核502に関する領域の、組iでの1以上の特性の値を計算する。この実施形態で、値は、第1の先行画像508内の、第1の核502に関する、第1の試験ベクトルZN−11aである。第1の核502に関する第1の試験ベクトルZN−11aは、平均強度及び標準偏差である、組iにおける整数Kの特性を有する。
【0090】
第1の核502に関する第1の試験ベクトルZN−11aを、コスト関数を計算することによって第1の核ベクトルZと比較するが、この実施形態では、下記の関係式を使用して、第1の核502に関する第1のユークリッド距離EN−11aを計算する(752)。
【0091】
【数1】

第1の核502に関する第1のユークリッド距離EN−11aを、段階752で計算したら、第1の先行画像508内の第1の核502に関して、第2の異なる試験空間定義(図示せず)を決定する。第2の試験空間定義は、第1の試験空間定義の、試験空間範囲の周辺画素を選択的に取り除き、その画素を、第1の試験空間定義の試験空間範囲の周辺画素の、異なる場所に添加することによって決定する。
【0092】
次いで第1の核502に関する、第2の異なる試験ベクトルZN−11bを、第2の試験空間定義を使用して計算する。第1の核502に関する第1の試験ベクトルZN−11aと同様に、第1の核502に関する第2の試験ベクトルZN−11bは、第1の先行画像508の領域の、組i内での特性を含む。
【0093】
上記関係式(1)を使用して、第1の核502に関する第2の異なるユークリッド距離EN−11bを計算することにより、第1の核502に関する第2の試験ベクトルZN−11bと第1の核ベクトルZとを比較する(752)。
【0094】
第3の異なる試験空間定義(図示せず)を含む、複数の、別の異なる試験空間定義(図示せず)は、第1の核502の試験空間範囲の周辺画素を取り除き、且つ別に添加することによって、第1の先行画像508内の第1の核502に関して決定する。第1の先行画像508内の、第1の核502に関する別の試験空間定義を決定する場合、別の試験空間定義は、既に決定され且つ実質的に最小の、計算されたユークリッド距離EN−11yに対応した、第1の核502に関する異なる試験空間定義から決定する。例えば、第1の核502に関する第1のユークリッド距離EN−11aは、第1の核502に関する第2のユークリッド距離EN−11b未満であることが可能である。したがって、第3の試験空間定義は、第1の核502の第2の試験空間定義ではなく、第1の核502の第1の試験空間定義から決定する。しかし、第1の核502に関する第1のユークリッド距離EN−11aが、第1の核502に関する第2のユークリッド距離EN−11bよりも大きい場合、第3の空間定義は、代わりに、第1の核502の第2の試験空間定義から決定することになる。
【0095】
第1の核502に関する別の試験空間定義の決定は、第1の核502に関する別の試験ベクトルZN−11yと第1の核ベクトルZとの間の、計算されたユークリッド距離EN−11yが、実質的に最小限になるまで(756)繰り返し継続される(754)。第1の核502に関する、実質的に最小限のユークリッド距離EN−11yに対応した試験空間定義を選択し、これを使用して、第1の先行画像508内の第1の核502の、第1の作成空間定義520を作成する(758)。
【0096】
実質的に最小限のユークリッド距離EN−11yは、作成空間定義、即ちこの場合は、第1の核502の第1の作成空間定義520が、第1の核502に正確に対応するという信頼性のレベルを示す「核確信度」として働く。例えば、ほぼ0である最小限のユークリッド距離EN−11yは、約100%の信頼性レベルに対応する。
【0097】
第1の先行画像508内の第1の核について、第1の作成空間定義520を作成した後(758)、第1の作成空間定義520の作成に関して述べたものと同様の手法で、第2の核503に関する第1の試験空間定義(図示せず)を、第2のボロノイ領域633内に画定する。第2の核503に関する第1の先行画像508の領域の組iでの特性を有する、第2の核503に関する第1の試験ベクトルZN−12aを、計算する。第2の核503に関する第1のユークリッド距離EN−12aを計算することによって、第2の核503に関する第1の試験ベクトルZN−12aを、第2の核ベクトルZと比較する。次に、第2の異なる試験空間定義(図示せず)を、第1の先行画像508内の第2の核503に関して決定する。第2の試験空間定義は、前述のように、第1の試験空間定義の周辺画素を選択的に取り除き、添加する方法によって、決定する。第2の核503に関する、第2の異なる試験ベクトルZN−12bを、第2の試験空間定義を使用して計算し、第2の核503に関する第2のユークリッド距離EN−12bを計算することによって、第2の核ベクトルZと比較する。
【0098】
第1の先行画像508内の、第1の核503に関して既に同様に述べたように、第1の先行画像508で既に決定された、第2の核503の異なる試験空間定義の周辺画素を、選択的に取り除き添加することによって、複数の、別の異なる試験空間定義を、第2の核503に関して繰り返し決定する。第1の先行画像508内の、第2の核503に関する試験空間定義を選択するが、これは、第2のベクトルZと、選択された試験空間定義との間の、実質的に最小限のユークリッド距離EN−12bに対応する。この選択された試験空間定義を使用して、第2の核503に対応した第2の異なる、作成空間定義522を作成する(758)。同様に、実質的に最小限のユークリッド距離は、第2の核に関する「核確信度」として働く。
【0099】
第1の作成空間定義520及び第2の作成空間定義522の作成と同様に、別の異なる、作成空間定義を、第1の先行画像508のそれぞれの核に関して作成し(758)、これを逐次実施する(760)。
【0100】
第1及び第2の作成空間定義520、522のそれぞれを含む、第1の先行画像508の、それぞれの核ごとに作成された空間定義を使用して、作成空間定義の、第1の先行の組524を構成する(762)。第1の先行の組524は、実質的に第2の期間tN−1の間に構成する(762)。第1の先行の組524は、品質基準に従ってフィルタリングされた、第1の先行画像508の作成空間定義の一部を含む。この実施形態で、品質基準は、作成空間定義それぞれに対応する実質的に最小限のユークリッド距離EN−1xyに関する閾値である。閾値は、作成空間定義に関する「核確信度」の許容可能な値であり、第1の先行画像508に関する空間定義の作成前に、決定する。それぞれの作成空間定義では、作成空間定義に対応する実質的に最小限のユークリッド距離EN−1xyが、決定された閾値よりも大きい値を有する場合、作成空間定義は、「核確信度」の許容できない値を有し、これは、空間定義の、構成された第1の先行の組(524)には含まれない。しかし、実質的に最小限のユークリッド距離EN−1xyが、決定された閾値よりも小さい値を有する場合、作成空間定義は、「核確信度」の許容可能な値を有し、第1の先行組524に含まれる。
【0101】
第1の先行組524を含めた先行するそれぞれの組ごとに、「画像確信度」をさらに計算して、それぞれの核ごとに作成された空間定義が、複数の細胞のそれぞれの核に正確に対応するという信頼性のレベルを示すようにする。第1の先行組524に関する「画像確信度」は、第1の先行組524のそれぞれの核に関する最小限のユークリッド距離EN−11yの合計を、第1の先行組524内の細胞核の総数で割ることによって、計算する。
【0102】
後続組518及び後続画像510を使用して、第1の先行画像508に関する作成空間定義で述べたものと同様の方法で、第1の先行組524及び第1の先行画像508を使用して作成された作成空間定義を使用して、第2の先行画像506内の複数の核に関する、第2の異なる先行組の空間定義526を構成する。
【0103】
第2の先行組の作成空間定義526の、第1の核502に関する第1の作成空間定義は、第1の先行組524の、第1の作成空間定義が作成される方法と同様の方法で、作成する。第1の核502に関する、第1の作成空間定義の作成では、第2の先行画像506内の第1の核502の重心点に関してボロノイ領域を決定する。第1の核502に関する複数の試験空間定義は、第2の先行画像506内で決定し、各試験空間定義ごとに、第2の先行画像506内の第1の核502の領域に関する試験ベクトルZN−21yを計算し、その後、第1の核502に関するユークリッド距離EN−21yを計算する。第1の核502に関するユークリッド距離EN−21yの、実質的に最小限の値に基づいて、第2の先行画像506内の第1の核502に関する試験空間定義を選択し、これを使用して、第2の先行画像506内の、第1の核502に関する第1の作成空間定義を作成する。直前に述べたものと同様の方法に従い、第2の先行画像506に関する複数の作成空間定義を、作成する。「核確信度」と「画像確信度」との両方は、第1の先行組524で使用したものと同様の手法で計算することができる。
【0104】
第2の先行組の空間定義526の構成方法を、同様に繰り返すことによって、作成空間定義の、第3の異なった先行組528を含んだ複数の先行組を、構成する。先行組のそれぞれは、生体細胞の先行画像内に、核に関する複数の作成空間定義を含む。
【0105】
図10は、一連の先行画像を分析する経時的方向を、概略的に示す。第1の実施形態では、種々の図を使用して既に述べた先行画像の要素に対し、800からの、同じ参照番号を付す。これらの要素の、対応する特徴及び記述は、この場合にも当てはまると解釈すべきである。
【0106】
図10は、第1の期間t中に記録された後続画像810と、第1、第2及び第3の先行画像808、806、804のそれぞれを含んだ先行画像とを示す。時間軸864は、互いに対し、先行画像を記録する期間tN−xと、後続画像810を記録する第1の期間tとを示す。逆方向分析の矢印866は、時間軸864に対して逆方向であることを示し、先行画像に関する空間定義の、先行組を作成する。逆方向分析の矢印866は、時間軸864に沿って記録される順序とは逆の方向で行った先行画像の分析を示す。
【0107】
複数の組の作成空間定義を構成したら、各先行画像内の細胞の生体活性に関する特性を、これに対応する細胞の先行作成空間定義を使用して、分析することができる。1つの考えられる例では、アッセイの経過時間全体を通して、例えばHoechstなどの核染色剤で細胞核を染色する必要のない、国際公開第03/031612号に記載されるような、即ちその内容が参照により本明細書に援用されるものに記載されるような、生体細胞周期の段階を決定する方法を実施することを含む。
【0108】
例えば、第2の先行画像506は、期間tN−3、tN−2及びtN−1のそれぞれの間に生体細胞の細胞周期のデータが決定されるように、第2の組の作成空間定義526を使用して、分析することができる。先行組の作成空間定義を使用して、複数の先行画像を分析することにより、細胞の先行画像が記録される一連の期間中に、細胞の細胞周期のデータを決定することができる。さらに、およそ期間t中に細胞周期データが決定されるよう、後続組の空間定義を、細胞の後続画像と共に使用することができる。
【0109】
図11は、本発明の第2の実施形態による、一連の画像の分析の経時的方向を、概略的に示す。第2の実施形態は、第1の期間t中にマークアップ画像が記録され、複数の生体細胞の一連の画像が記録される点で、第1の実施形態と同様である。しかし、一連の画像は、第1の期間t後に記録される。一連の後続画像には、第2の期間tN+1中に記録される第1の後続画像970、第3の期間tN+2中に記録される第2の後続画像972及び第4の期間tN+3中に記録される第3の後続画像974が含まれる。さらに、複数の生体細胞の別の画像975が、第1の期間t中に記録される。前述の実施形態と同様に、時間軸964は、互いに対する期間tN+xを示し、その間に後続画像が記録される。順方向分析の矢印976は、第1の実施形態と同様に、後続画像に関する空間定義の組が、作成される方向を示す。この実施形態で、順方向分析の矢印976は、時間軸964に沿って一連の後続画像が記録される順序に対応した、後続画像の順方向で行われる分析を示す。
【0110】
この実施形態で、マーカーは、細胞に与えられている細胞マーカーであり、且つ比較的長い時間にわたって細胞が保持しにくく、したがって細胞核を同定しにくい細胞マーカーである。この比較的長い時間にわたり、マーカーは、広がっていく可能性があり、又は細胞から外に、活発に送り出される可能性がある。或いはマーカーは、光退色プロセスが原因で消失する可能性があり、又はマーカーは、高強度の紫外線を使用した励起を必要とするが、その間に、細胞が比較的長い時間にわたって高強度の紫外線に繰り返し曝される場合は、細胞に対する損傷が生ずることになる。
【0111】
図12は、本発明の第3の実施形態による、一連の画像の分析の経時的方向を、概略的に示す。第3の実施形態は、第1の期間t中に第1のマークアップ画像が記録され、また複数の生体細胞の一連の画像が記録される点で、前述の実施形態と同様である。さらに第2のマークアップ画像が、第1の期間t中に適宜記録される。一連の画像の一部は、第1の期間tの前に記録され、一連の画像の一部は、第1の期間tの後に記録される。先行画像には、第1、第2及び第3の先行期間tN−1、tN−2、tN−3中にそれぞれ記録された、第1、第2及び第3の先行画像1078、1080、1082が含まれ、後続画像には、第1、第2及び第3の後続期間tN+1、tN+2、tN+3中にそれぞれ記録された、第1、第2及び第3の後続画像1084、1086及び1088が含まれる。第1の期間t中、第1及び第2のマークアップ画像にそれぞれ対応する第1の画像及び適宜に第2又はそれ以上の更なる画像1090、1092が、複数の細胞に関して記録される。時間軸1064は、その間に先行画像及び後続画像が記録される、互いに対する時間を示す。逆方向の第1の分析矢印1094によって示されるように、先行画像が記録される順序で逆方向及び適宜に順方向に、先行画像内で前述の実施形態と同様にして、細胞核に関する空間定義が作成されるよう、第1の別の画像1090を使用する。後続画像が記録される順序に対応した、順方向の第2の分析矢印1096によって示される順方向で、後続画像内で細胞核に関する空間定義が作成されるよう、第2の別の画像を使用する。
【0112】
この実施形態では、一時的な修飾にかけられる細胞内の生物学的プロセスが原因で、マーカーを一時的に細胞に付与する。この実施例で、マーカーは、第1の期間t中に発現する各細胞のレポーター遺伝子からの、経時的に変化するシグナルである。レポーター遺伝子は、検出可能なタンパク質を発現することが可能な、遺伝構成系である。本明細書の参考文献であるNaylor L.H.(1999)Biochemical Pharmacology 58,749-757は、哺乳動物細胞内の様々なレポーター遺伝子を使用した周知の方法について記述している。レポーター遺伝子は、他の細胞タンパク質の存在下で、遺伝子の産物を測定可能にし、宿主細胞内での遺伝子発現の変化に応答する選択された調節配列の制御下で、細胞に付与される。そのような調節配列は、例えば、ホルモン、第2のメッセンジャー、又はその他の細胞制御及びシグナル伝達因子に応答する。調節配列は、レポーター遺伝子を使用して、例えば添加された細胞作用因子又は選択された調節配列を含む細胞プロセスの影響に関してアッセイを行うことができるように、適切に選択される。この実施例で、レポーター遺伝子は、活性化されたとき、細胞透過性基質の活性化によって、蛍光放出シグナルの増大をもたらす。レポーター遺伝子は、例えば、ニトロレダクターゼ(国際公開第0157237号に記載)、βラクタマーゼ(米国特許出願第5741657号に記載)及び緑色蛍光タンパク質(GFP)(米国特許出願6306600号)の1つである。
【0113】
或いはこの第3の実施形態では、マーカーが、例えば、細胞核に関する青色蛍光タンパク質である。このマーカーの画像形成を首尾良く行うために、紫外線を使用して、マーカーを蛍光励起する必要がある。比較的長い時間にわたり、複数の細胞を紫外線で累積的に露光することは、細胞に有毒であり、したがってマーカーは、第1の期間t中にこのような方法でしか励起されない。
【0114】
図13は、本発明の第4の実施形態による、一連の画像の分析の経時的方向を、概略的に示す。前述の実施形態の場合と同様に、複数の細胞に関する一連の画像が記録される。この複数の細胞は、複数の下位系列に分けられる。図13は、第1の下位系列1194を示し、この系列には、第1の下位系列の第1の期間t中に記録された、第1の下位系列の別の画像1196が含まれ、さらに、第1の下位系列の第2、第3及び第4の期間tN−1、tN−2、tN−3、中の、第1の期間tの前に記録された、第1の下位系列の第1、第2及び第3の先行画像1198、1200、1202のそれぞれが含まれる。さらに、第1の下位系列のマークアップ画像を、第1の下位系列の第1の期間t中に記録する。時間軸1164は、第1の下位系列1194画像を含めた一連の画像がその間に記録された、互いに対する時間を示す。逆方向の、第1の下位系列の分析矢印1214は、第1の下位系列1194画像を記録する時間での方向とは逆の方向であって、前述の実施形態と同様に、第1の下位系列の別の画像1196を使用して、第1の下位系列の先行画像内に細胞核に関する空間定義を作成する方向を示す。
【0115】
第2の下位系列1204は、第2の下位系列の第1の期間t中に記録された、第2の下位系列の別の画像1206を含み、さらに、第2の下位系列の第2、第3及び第4の期間tN−1、tN−2、tN−3中の、第1の期間tの前にそれぞれ記録された、第1、第2及び第3の先行画像1208、1210、1212を含めた第2の下位系列の先行画像を含む。
【0116】
逆方向の第2の下位系列分析の矢印1216は、第2の下位系列の先行画像内に細胞核の空間定義を作成する、第2の下位系列画像を記録する順序とは逆の方向を示す。各下位系列は、図13に示すように、別の画像と、3つの先行画像とを含むが、下位系列は、より多くの先行画像、例えば10個の先行画像を含むと考えられる。さらに代替として、先行画像は、代わりに下位系列の第1の期間の後に記録され、且つ後続画像を読み取る順序に対応した順方向で分析される、後続画像であってもよい。或いはさらに、画像は、先行画像と後続画像の両方を含むことができ、その空間定義は、別の画像を使用して、逆方向と順方向の両方で作成されるものである。
【0117】
述べてきた本発明の実施形態全てにおいて、マーカーは、細胞核を同定することが可能である。さらに、生体細胞の対象は、代替として他の細胞対象でよく、例えば、生体細胞ミトコンドリア、生体細胞細胞質、生体細胞リソソーム、又は結合抗体でよく、またマーカーは、細胞ミトコンドリア、細胞質、リソソーム、又は抗体を同定することが可能であると考えられる。本発明の一実施形態の、記録された画像から同定される対象は、1つのタイプに限定されず、例えば細胞核、細胞ミトコンドリア、細胞の細胞質、細胞リソソーム、又は結合抗体を含めた少なくとも2つの細胞対象を含むことができることが、理解されよう。さらに、Hoechst又はDRAQ5タイプに代わる核マーカーを使用することができ、その結果、これら代替のマーカーを、適切な波長の核マーカー励起チャネルで励起できることが、理解されよう。例えば、共焦点顕微鏡の、線源S、レンズL、ミラーM、ブロックフィルタBF及び検出器Dを含めた要素は、選択された核マーカー励起チャネル及び対応する核マーカーチャネルに、適切に適合される。細胞対象に結合抗体が含まれるとき、適切なマーカー、例えばヨウ化プロピジウムを細胞に付与し、マークアップ画像を記録する前に、生体細胞を固定することが考えられる。
【0118】
さらに、第1の期間中に、細胞対象、例えば細胞核を同定することが可能であり、且つ第2の期間中に細胞対象をそれほど同定することができないマーカー(一次)を使用することの他、少なくとも第1の期間及び第2の期間中に細胞対象を同定することが可能な第2のマーカーを使用することが、考えられる。この第2のマーカーは、複数の細胞の二次マークアップ画像を記録するために、適切なカラーチャネルを使用して検出される。これらの二次マークアップ画像から得られたデータは、細胞画像内の細胞対象に関する空間定義を、より正確に作成することができるように、一次マーカーを使用して記録された一次マークアップ画像から得られたデータと一緒に使用する。そのような二次マーカーは、蛍光ミトコンドリア染色剤、例えばMito Tracker(Molecular Probes)、蛍光リソソーム染色剤、例えばLysoTracker(Molecular Probes)、又は蛍光非特異的細胞染色剤、例えばCell Tracker(Molecular Probes)でよい。
【0119】
さらに、多波長構成の線走査共焦点顕微鏡は、3組以上の独立した波長と共に使用できることが考えられる。例えば、異なるタイプの対象、例えば細胞核及び細胞ミトコンドリアを含む、生体物質の画像を記録することが可能である。したがって、3つ以上のカラーチャネルを使用して、生体物質の種々の画像を記録し、それによって、異なる細胞対象を別々に同定することが可能である。異なるカラーチャネルに関して、3個以上の線源S、レンズL、ミラーM、ブロックフィルタBF及び検出器Dを有する線走査共焦点画像形成システムを、使用することができる。
【0120】
記述された本発明の実施形態による空間定義は、重心点の回りの空間範囲と、重心点の画素アドレスとの両方を含む。さらに、空間定義は、複数の生体物質中の対象を空間的に画定する代替のパラメータを使用して、与えることも考えられる。
【0121】
上述の品質基準は、これらの実施形態では閾値であり、ユーザによって設定されることが考えられ、また試行錯誤技法を使用して変えられるものである。或いは自動アルゴリズムによって、種々の先行画像に関する空間定義の作成過程中に、閾値の値を適応可能に変化させることができると考えられる。さらに代替として、品質基準は、対象の空間定義を選択することができるよう、閾値とは異なる形のものであると考えられる。
【0122】
例えば、空間定義の空間範囲の周辺画素を、選択的に取り除き且つ添加することによって、例えば記述される実施形態における核など、対象の領域の形状の変化を、吸収することが可能である。さらに、一連の時間にわたっての、例えば核などの対象の空間定義のばらつきは、代替の制御されたモーフィング技法を使用して実現されると考えられる。
【0123】
記述される本発明の実施形態は、一連の期間中に、複数の生体細胞の一連の画像を記録することを含む。逐次連続する期間、例えばtN−1及びtのそれぞれは、均等な時間だけ互いに離れていることが好ましい。例えば、その均等な時間は、約2分〜約20分の間であると考えられる。しかし均等な時間は、これより短くても長くてもよいことが考えられる。さらに、例えば一連の画像は、約60画像までを含むが(N≦60)、やはり、より大きい数の一連の画像を記録できることが考えられる。或いは、逐次連続する種々の期間が、種々の不均等な時間だけ互いに離れていることが考えられる。
【0124】
記述した実施形態では、ボロノイダイアグラムを作成するが、これはそれぞれの核重心点ごとにボロノイ領域を決定し、且つ引き続き試験空間定義を画定するときに使用されるものである。生体細胞の先行画像内の核に関する、空間定義の作成に使用する目的で、核の周囲空間、又は核の重心点を決定するために、ボロノイアルゴリズム以外の代替のアルゴリズムを使用できることが考えられる。
【0125】
上述の実施形態では、組iの特性が、記録された生体細胞画像内の核の、平均強度及び標準偏差の形をとる。しかし代替の又は追加の特性は、対象に関する空間定義の作成に使用するために、計算することができる。これらには、分散、尖度、自動相関関数、空間相関測度、テキスト相関測度、自動相関関数、フラクタル次元、面積、周辺、主軸の長さ、主軸の幅、コンパクト度及びオリエンテーションの、少なくとも1つが含まれる。
【0126】
試験空間定義の1つを選択するとき、ユークリッド距離Eを計算して、生体細胞画像内の核に関するベクトル及び同じ核の試験ベクトルと比較する。試験空間定義の選択中に、以下の関数の少なくとも1つ、即ちシティブロック関数、チェビシェフ距離、ミンコフスキーのm次関数、2次関数、Q正定関数、キャンベラ距離、非近距離関数、又は角分離の少なくとも1つを、代わりに計算することができると考えられる。さらに、試験空間定義は、これら関数の少なくとも2つの組合せを使用して、選択できると予測される。
【0127】
さらに、「核確信度」及び「画像確信度」は、別々に計算することができ、「核確信度」は、細胞核とは異なる細胞対象に対応させることができると考えられる。
【0128】
本発明の別の実施形態では、試験空間定義を繰り返し画定すること及び試験ベクトルを核ベクトルと比較することの代わりとして、作成空間定義が、細胞の1つの先行画像内の組iの核の特性と、細胞の別の先行画像の組iの特性とを比較することによって作成されると考えられる。
【0129】
本発明の別の実施形態では、模擬アニーリングアルゴリズムなどの最適化アルゴリズムを、少なくともいくつかの作成空間定義に適用することができる。この模擬アニーリングアルゴリズムを使用することにより、見掛けの実質的に最小限のユークリッド距離Eではなく、実質的に最小限のユークリッド距離Eを使用して、選択された試験空間定義を確実に選択することができる。
【0130】
上記実施形態では、時間中に生体細胞の細胞周期のデータを決定するために、空間定義の対応する組を使用して、生体細胞の画像を分析する。或いは、本発明の方法を使用して、生体細胞のその他のパラメータ、例えば細胞内の蛍光の突起や粒などを検出することができると考えられる。
【0131】
いずれか1つの実施形態に関する任意の特徴を、単独で、又はその他の記述された特徴と組み合わせて使用することができ、さらに、任意のその他の実施形態、或いは任意のその他の実施形態の任意の組合せの、1以上の特徴と組み合わせて使用できることが、理解されよう。さらに、上記に記述されない均等物及び変形例も、添付の特許請求の範囲で定義される本発明の範囲から逸脱することなく、用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0132】
【図1】複数の生体物質の画像形成に使用される、線走査共焦点顕微鏡の概略図である。
【図2a】本発明の実施形態による、複数の生体物質の画像形成に使用される、多波長線走査共焦点顕微鏡の、上面図及び側面図をそれぞれ概略的に示す図である。
【図2b】本発明の実施形態による、複数の生体物質の画像形成に使用される、多波長線走査共焦点顕微鏡の、上面図及び側面図をそれぞれ概略的に示す図である。
【図2c】本発明の実施形態による、単一ビームオートフォーカスシステムの光線経路を概略的に示す、上面図である。
【図3a】本発明の実施形態による、走査ミラーを備えた多波長線走査共焦点顕微鏡の光線経路をそれぞれ示す、上面図及び側面図である。
【図3b】本発明の実施形態による、走査ミラーを備えた多波長線走査共焦点顕微鏡の光線経路をそれぞれ示す、上面図及び側面図である。
【図3c】本発明の実施形態による、単一ビームオートフォーカスシステムの光線経路を示す、概略上面図である。
【図4】本発明の実施形態による、2ビームオートフォーカスシステムを概略的に示す、側面図である。
【図5a】本発明の実施形態による、長方形CCDカメラ及び読み出しレジスタを、概略的に示す図である。
【図5b】本発明の実施形態による、長方形CCDカメラ及び読み出しレジスタを、概略的に示す図である。
【図5c】本発明の実施形態による、長方形CCDカメラ及び読み出しレジスタを、概略的に示す図である。
【図6】本発明の実施形態による、画像形成データ処理システムのデータ処理構成要素を、概略的に示す図である。
【図7】本発明の実施形態による、複数の生体物質中の対象の、画像及び関連した空間定義を示す、概略図である。
【図8】本発明の実施形態による、複数の生体物質の対象の周囲空間を示す、概略図である。
【図9a】本発明の実施形態による、複数の生体物質を分析する方法を示す、流れ図である。
【図9b】本発明の実施形態による、複数の生体物質を分析する方法を示す、流れ図である。
【図10】本発明の種々の実施形態による、生体物質の画像分析の経時的方向を、概略的に示す図である。
【図11】本発明の種々の実施形態による、生体物質の画像分析の経時的方向を、概略的に示す図である。
【図12】本発明の種々の実施形態による、生体物質の画像分析の経時的方向を、概略的に示す図である。
【図13】本発明の種々の実施形態による、生体物質の画像分析の経時的方向を、概略的に示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像形成装置を使用して、複数の生体物質を分析する方法であって、
a)複数の生体物質にマーカーを付与する段階であって、マーカーが、画像形成装置を用いて検出する際に複数の生体物質中の対象を同定できるものであり、マーカーの付与方法が、マーカーが第1の期間では対象を同定することができるが第2の期間では対象の同定能力が落ちるようになされる段階と、
b)第1の期間中、対象の空間定義をマーカーから特定することが可能なマークアップ画像を、記録する段階と、
c)第2の期間中、複数の生体物質の第1の画像を記録する段階と、
d)マークアップ画像から得られたデータを使用して、第1の画像内に、対象に関する空間定義を作成する段階と
を含む方法。
【請求項2】
第1の期間が、第2の期間の前である、請求項1記載の方法。
【請求項3】
第1の期間が、第2の期間の後である、請求項1記載の方法。
【請求項4】
第1の画像を記録した後に、マーカーを複数の生体物質に添加することを含む、請求項3記載の方法。
【請求項5】
マーカーが、経時的に変化するシグナルを有する、請求項2又は請求項3記載の方法。
【請求項6】
マーカーを、遺伝構成系によって付与する、請求項5記載の方法。
【請求項7】
作成空間定義が、対象の空間範囲及び位置データの少なくとも1つを含む、請求項1乃至請求項6のいずれか1項記載の方法。
【請求項8】
作成空間定義を、マークアップ画像から検出された対象の空間定義を使用して作成する、請求項1乃至請求項7のいずれか1項記載の方法。
【請求項9】
e)第1の期間中、複数の生体物質の別の画像を記録する段階と、
f)別の画像からデータを得る段階と
を含み、段階d)では、別の画像から得られたデータを使用して、第1の画像を分析する、請求項1乃至請求項8のいずれか1項記載の方法。
【請求項10】
別の画像を、第1のカラーチャネルに記録し、マークアップ画像を、第2の異なるカラーチャネルに記録する、請求項9記載の方法。
【請求項11】
第1の画像を、第1のカラーチャネルに記録する、請求項10記載の方法。
【請求項12】
段階f)では、マークアップ画像から得られたデータを使用して、別の画像からデータを得ることを含む、請求項9、請求項10又は請求項11記載の方法。
【請求項13】
段階f)で得られたデータが、対象に関連した1以上の特性の、1以上の値を含む、請求項9乃至請求項12のいずれか1項記載の方法。
【請求項14】
1以上の特性が、平均強度、標準偏差、分散、尖度、自動相関関数、空間相関測度、テキスト相関測度、自動相関関数、フラクタル次元、面積、周辺、主軸の長さ、主軸の幅、コンパクト度及びオリエンテーションの少なくとも1つを含む、請求項13記載の方法。
【請求項15】
段階d)が、
i)複数の試験空間定義の1つを定義する段階と、
ii)試験空間定義を使用して、第1の画像の1以上の特性の値を計算する段階と、
iii)複数の試験空間定義の別の1つに関して、段階i)〜ii)を繰り返す段階と、
iv)段階ii)で計算した1以上の値に従って、複数の試験空間定義の1つを選択する段階と
を含む、請求項1乃至請求項14のいずれか1項記載の方法。
【請求項16】
段階iv)が、段階ii)で計算した値を、段階f)における別の画像から得られた値と比較する段階を含む、請求項15及び請求項9乃至請求項14のいずれか1項記載の方法。
【請求項17】
比較する段階が、ユークリッド距離Eを計算する段階を含み、ユークリッド距離が、下記の関係式によって計算されるものであり、段階ii)で計算した値と、段階f)において別の画像から得られた値との両方が、整数Kの特性iに関係したベクトル、即ちそれぞれZN−1及びZである、請求項16記載の方法。
【数1】

【請求項18】
段階iv)が、ユークリッド距離Eの実質的に最小限の値を選択する段階を含む、請求項17記載の方法。
【請求項19】
比較する段階が、シティブロック関数、チェビシェフ距離、ミンコフスキーのm次関数、2次関数、Q正定関数、キャンベラ距離、非近距離関数、又は角分離の少なくとも1つを計算する段階を含む、請求項16記載の方法。
【請求項20】
第1の画像内の複数の対象に関し、複数の空間定義を作成するために、段階d)を繰り返すことを含む、請求項1乃至請求項19のいずれか1項記載の方法。
【請求項21】
複数の作成空間定義を、品質基準に従ってフィルタリングする、請求項20記載の方法。
【請求項22】
段階d)が、マークアップ画像から検出された対象の周囲空間を決定する段階であって、周囲空間が、該周囲空間を、近接した別の対象の少なくとも1つの別の周囲空間から切り離す境界を有するものである段階と、対象の決定された周囲空間内に作成空間定義があるように構成する段階とを含む、請求項20又は21記載の方法。
【請求項23】
ボロノイアルゴリズムを使用して、対象の周囲空間を決定する段階を含む、請求項22記載の方法。
【請求項24】
第3の期間中に、複数の生体物質の第2の画像を記録し、第2の画像内に、対象に関する空間定義を作成する段階を含む、請求項1乃至請求項23のいずれか1項記載の方法。
【請求項25】
生体物質が生体細胞である、請求項1乃至請求項24のいずれか1項記載の方法。
【請求項26】
対象が生体細胞核を含む、請求項25記載の方法。
【請求項27】
対象が、生体細胞ミトコンドリア、生体細胞の細胞質、生体細胞リソソーム、又は結合抗体を含む、請求項25記載の方法。
【請求項28】
対象が、生体細胞核、生体細胞ミトコンドリア、生体細胞リソソーム、生体細胞の細胞質及び結合抗体の少なくとも2つを含む、請求項25記載の方法。
【請求項29】
対象が結合抗体を含み、生体細胞を、マーカーを付与する段階の前に固定する、請求項28記載の方法。
【請求項30】
方法が、第2の別のマーカーを複数の生体物質に付与する段階をさらに含み、第1の画像内の対象に関する空間定義を作成するのに、第2のマーカーをさらに使用する、請求項1乃至請求項29のいずれか1項記載の方法。
【請求項31】
第2のマーカーが、生体細胞染色剤、生体細胞ミトコンドリア染色剤、生体細胞リソソーム染色剤、又は生体細胞の細胞質染色剤の1つである、請求項30記載の方法。
【請求項32】
作成空間定義を使用して、第1の画像を分析することにより、複数の生体物質の特性を分析する段階をさらに含む、請求項1乃至請求項31のいずれか1項記載の方法。
【請求項33】
画像形成装置を使用して生成された画像から、複数の生体物質を分析するための、画像分析方法であって、
a)複数の生体物質のマークアップ画像を得る段階であって、マークアップ画像は、複数の生体物質に付与されたマーカーが複数の物質内の対象を同定することが可能な第1の期間中に、記録されるものである段階と、
b)複数の生体物質の第1の画像を得る段階であって、第1の画像は、マーカーが対象をそれほど同定することのできない第2の期間中に記録されるものである段階と、
c)マークアップ画像から得られたデータを使用して、第1の画像に関する対象の空間定義を作成する段階と
を含む方法。
【請求項34】
請求項1乃至請求項33のいずれか1項記載の方法を実施するために構成された、コンピュータソフトウェア。
【請求項35】
請求項34記載のコンピュータソフトウェアを格納するデータキャリア。
【請求項36】
請求項1乃至請求項33のいずれか1項の方法を実施するために構成された装置。

【図1】
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【図2a】
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【図2b】
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【図2c】
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【図3a】
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【図3b】
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【図3c】
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【図4】
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【図5a】
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【図5b】
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【図5c】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9a】
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【図9b】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公表番号】特表2007−500344(P2007−500344A)
【公表日】平成19年1月11日(2007.1.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−521657(P2006−521657)
【出願日】平成16年7月28日(2004.7.28)
【国際出願番号】PCT/GB2004/003247
【国際公開番号】WO2005/012880
【国際公開日】平成17年2月10日(2005.2.10)
【出願人】(398048914)ジーイー・ヘルスケア・ユーケイ・リミテッド (30)
【Fターム(参考)】