説明

生体認証システム

【課題】生体認証の照合時間を短縮し、多数の生体情報を一時に盗難される危険性を大幅に低減し、製造コストや設置コストの低廉化を図る生体認証システムを提供すること。
【解決手段】生体認証システム1は共用扉施錠部2と複数の戸別認証部3と制御部4とを有し、戸別認証部3のROM35に記憶されている生体情報と生体情報取得装置42により取得された利用者の生体情報を戸別認証部3の制御装置32が照合する。また制御部4はテンキー部43の操作によって選択された一の戸別認証部3へ利用者の生体情報を送信する。戸別認証部3の制御装置32による照合結果は選択された戸別認証部3から共用扉施錠部2へ直接送信され、共用扉施錠部2は照合結果に応じて共用扉21の開錠及び施錠を管理する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、集合住宅やホテル等において生体認証を用いて個人認証を行う生体認証システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、指紋、網膜、静脈等の生体情報を用いて個人認証を行う生体認証システムは、個人毎の生体情報を予めデータベース化しておき、このデータベースに蓄積されている多数の生体情報と生体情報読取装置から取得された生体情報とをコンピュータによって照合し個人認証を行っている。
【0003】
この生体認証システムを集合住宅に設けられている共用玄関の共用扉の開錠及び施錠管理に用いる場合、予め集合住宅の住民の生体情報を予めデータベース化しておく。そして、共用扉の近傍に設けた生体情報読取装置から利用者の生体情報を取得し、データベースに蓄積されている多数の生体情報とこの利用者の生体情報とをコンピュータによって照合し、照合結果に基づいて共用扉の開錠及び施錠を管理することになる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような生体認証システムにおいて、住民が共用扉を開錠するためには、生体情報読取装置により取得されたこの住民の生体情報と、データベースに予め格納されている多数の生体情報とをコンピュータが照合しなければならない。このコンピュータによる照合作業は、生体情報読取装置により取得された利用者の生体情報がデータベースに予め格納されている一の生体情報と一致するか、又は全ての生体情報と一致しないことが確認できるまで行われる。このためデータベースに格納されている生体認証データの数が多くなるとコンピュータの照合時間が長時間になってしまうという問題点がある。
【0005】
さらに、集合住宅の全住人の生体情報をデータベース化してしまうと、このデータベースが盗難された場合、集合住宅の全住人の生体情報がまとめて盗難されてしまうことになる。生体情報は暗証番号と異なり容易に変更することができないため生体情報をデータベース化する場合にはそのデータベースの管理を厳重に行わなければならないという問題点がある。
【0006】
本発明は、上記問題点に鑑み、生体認証を行う際の照合時間を短縮し、また、多数の生体情報を一時に盗難される危険性を大幅に低減することができる生体認証システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る生体認証システムは、共用扉の開錠及び施錠を行う共用扉施錠部と、戸別毎に設置されている複数の戸別認証部と、前記戸別認証部を選択する制御部とを有し、利用者が前記制御部を操作することにより前記複数の戸別認証部から一の戸別認証部を選択し、当該利用者の生体情報が前記一の戸別認証部に記憶されている生体情報と照合され、当該照合結果により前記共用扉施錠部が前記共用扉の開錠及び施錠を行うことを特徴とする。
【0008】
さらに、本発明に係る生体認証システムは、共用扉の開錠及び施錠を行う共用扉施錠部と、戸別毎に設置されていると共に前記共用扉施錠部と接続されている複数の戸別認証部と、前記戸別認証部と接続されている制御部とを有し、前記制御部は、複数の前記戸別認証部の中から一の戸別認証部を選択する選択手段と、利用者の生体情報を取得する生体情報取得手段とを有し、前記各戸別認証部は、利用者の生体情報を予め記憶するための記憶手段と前記生体情報取得手段により取得された利用者の生体情報を前記記憶手段に記憶されている生体情報と照合する照合手段とを有し、前記制御部は前記選択手段の操作によって選択された前記一の戸別認証部へ前記生体情報取得手段により取得された利用者の生体情報を送信し、前記戸別認証部の前記照合手段は送信された利用者の生体情報と前記記憶手段に予め記憶されている利用者の生体情報とを照合すると共に照合結果を前記共用扉施錠部に送信し、前記共用扉施錠部は前記照合結果に応じて共用扉の開錠及び施錠を管理することを特徴とする。
【0009】
さらに、本発明に係る生体認証システムは、共用扉の開錠及び施錠を行う共用扉施錠部と、戸別毎に設置されている複数の戸別認証部と、前記共用扉施錠部と前記戸別認証部とに接続されている制御部とを有し、前記制御部は、複数の前記戸別認証部の中から一の戸別認証部を選択する選択手段と、利用者の生体情報を取得する生体情報取得手段とを有し、前記各戸別認証部は、利用者の生体情報を予め記憶するための記憶手段と前記生体情報取得手段により取得された利用者の生体情報を前記記憶手段に記憶されている生体情報と照合する照合手段とを有し、前記制御部は前記選択手段の操作によって選択された前記一の戸別認証部へ前記生体情報取得手段により取得された利用者の生体情報を送信し、前記戸別認証部の前記照合手段は送信された利用者の生体情報と前記記憶手段に予め記憶されている利用者の生体情報とを照合すると共に照合結果を前記制御部に送信し、前記制御部は前記照合結果に応じて共用扉施錠部に共用扉の開錠及び施錠の管理信号を送信し、前記共用扉施錠部は前記制御部からの管理信号に応じて共用扉の開錠及び施錠を管理することを特徴とする。
【0010】
さらに、本発明に係る生体認証システムは、前記戸別認証部が、さらに利用者の生体情報を取得する戸別生体情報取得手段を有し、前記照合手段により、前記戸別生体情報取得手段により取得された利用者の生体情報と前記記憶手段に記憶されている利用者の生体情報とを照合し、戸別の扉の開錠及び施錠を管理することが好ましい。
【0011】
さらに、本発明に係る生体認証システムは、前記戸別認証部の前記記憶手段が、前記制御部の前記生体情報取得手段により取得された利用者の生体情報との照合を行うための第1記憶手段と、前記戸別生体情報取得手段により取得された利用者の生体情報との照合を行うための第2記憶手段とを有していることが好ましい。
【0012】
さらに、本発明に係る生体認証システムは、戸別に設置されると共に戸別扉の開錠及び施錠を行う複数の戸別認証部と、前記戸別認証部を選択する登録部とを有し、利用者が前記登録部を操作することにより前記複数の戸別認証部から一の戸別認証部を選択し、利用者の生体情報が前記一の戸別認証部において登録され、当該生体情報を基に利用者の認証判定を行うことにより前記戸別認証部が前記戸別扉の開錠及び施錠を行うことを特徴とする。
【0013】
さらに、本発明に係る生体認証システムは、戸別に設置されると共に戸別扉の開錠及び施錠を管理する複数の戸別認証部と、前記各戸別認証部と接続されている登録部とを有し、前記各戸別認証部は、利用者の生体情報を予め記憶するための記憶手段と、利用者の生体情報を取得する戸別生体情報取得手段と、前記戸別生体情報取得手段により取得された利用者の生体情報を前記記憶手段に記憶されている生体情報と照合する照合手段とを有し、前記制御部は、複数の前記戸別認証部の中から一の戸別認証部を選択する選択手段と、利用者の生体情報を取得する生体情報取得手段とを有し、前記制御部は前記登録部の前記選択手段の操作によって選択された前記一の戸別認証部へ前記生体情報取得手段により取得された利用者の生体情報を送信し、前記選択された一の戸別認証部が前記制御部から送信された利用者の生体情報を前記記憶手段に記憶し、前記戸別生体情報取得手段により取得された利用者の生体情報と前記データベースに記憶されている利用者の生体情報とを前記戸別認証部の前記照合手段により照合し、戸別の扉の開錠及び施錠を管理することを特徴とする。
【0014】
さらに、本発明に係る生体認証システムは、各扉毎に設けられると共に扉の開錠及び施錠を管理する複数の扉施錠部と、前記複数の扉施錠部と接続されている認証部とを有し、前記複数の扉施錠部の内、一の前記扉施錠部により取得された利用者の生体情報が前記認証部において認証判定され、当該認証判定の結果により前記扉施錠部が前記扉の開錠及び施錠を行うことを特徴とする。
【0015】
さらに、本発明に係る生体認証システムは、各扉毎に設けられると共に扉の開錠及び施錠を管理する複数の扉施錠部と、前記複数の扉施錠部と接続されている認証部とを有し、前記扉施錠部は利用者の生体情報を取得する生体情報取得手段とを有し、前記認証部は、利用者の生体情報を予め記憶するための記憶手段と前記生体情報取得手段により取得された利用者の生体情報を前記記憶手段に記憶されている生体情報と照合する照合手段とを有し、前記一の扉施錠部が前記生体情報取得手段により取得された利用者の生体情報を前記認証部へ送信し、前記認証部の前記照合手段が送信された利用者の生体情報と前記データベースに予め記憶されている利用者の生体情報とを照合し、前記認証部の照合結果が前記認証部から前記一の扉施錠部へ送信され、前記一の扉施錠部が前記認証部の照合結果に応じて扉の開錠及び施錠を管理することを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
請求項1記載の本発明に係る生体認証システムは、共用扉の開錠及び施錠を行うための生体認証を制御部により選択された一の戸別認証部が行う。このため、利用者の生体情報を一元的に管理する必要がないため、コンピュータ等による大規模なデータベースを必要としない。また、制御部により選択された一の戸別認証部により生体認証が行われるため、一の戸別認証部に記憶されている生体情報のみを照合の対象とする。このため共用扉の利用者全ての生体情報と照合する必要がなく、生体認証に必要な照合時間の大幅な短縮を達成することができる。さらに、コンピュータ等による大規模なデータベースではなく、戸別毎の戸別認証部に生体情報が記憶されているだけなので、集合住宅等の全利用者のデータベースを一度に盗難される可能性が極めて低い。
【0017】
請求項2記載の本発明に係る生体認証システムは、戸別認証部の照合結果が共用扉施錠部へ直接送信されるため、生体認証システム全体を非常に簡素に構成することができ、システム全体の製造費用や設置費用の低減化を図ることができる。また、共用扉施錠部の制御を比較的低廉なメンテナンス費用しか必要としない各戸別認証部が直接行っているため、システム全体のメンテナンス費用の低減化を図ることができる。
【0018】
請求項3記載の本発明に係る生体認証システムは、生体情報取得装置により取得された生体情報は制御部を通じて戸別認証部に送信され、その認証結果による信号は制御部を通じて共用扉施錠部へ送信される。このため、一の生体情報の送信に対して共用扉施錠部が開錠を行ったのか否かということを制御部に他の機器を接続することによって容易に監視することができる。
【0019】
請求項4記載の本発明に係る生体認証システムは、戸別認証部が戸別生体情報取得手段を有しているため、この戸別生体情報取得手段に生体情報を取得させることにより、上記共用扉だけではなく戸別扉の開錠及び施錠管理も行うことができる。
【0020】
請求項5記載の本発明に係る生体認証システムは、戸別認証部が第1記憶手段と第2記憶手段を有しているため、共用扉の開錠及び施錠と戸別扉の開錠及び施錠について異なる生体情報を用いることができる。
【0021】
請求項6記載の本発明に係る生体認証システムは、複数の戸別認証部から一の戸別認証部を選択する登録部を有しているため、各戸別認証部への生体情報の登録を登録部の操作によって行うことができる。
【0022】
請求項7記載の本発明に係る生体認証システムは、登録部が有する生体情報取得手段によって取得された生体情報が、一の戸別認証部の記憶手段に記憶される。このためホテル等の宿泊施設において従来使用されてきたカードキー等の代わりに生体情報により戸別扉の開錠を管理することができる。
【0023】
請求項8記載の本発明に係る生体認証システムは、複数の扉施錠部とこの複数の扉施錠部と接続されている認証部を有しているため、単一の認証部により複数の扉施錠部の認証判定を行うことができる。
【0024】
請求項9記載の本発明に係る生体認証システムは、複数の扉施錠部が有する生体情報取得手段によって取得された生体情報が、予め認証部の記憶手段に記憶されている生体情報と照合されるため、扉施錠部に生体情報の認証判定を行うための記憶手段を必要としない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、図1ないし図3を参照しつつ本発明に係る第1実施形態の生体認証システム1について詳細に説明する。この生体認証システム1は主に集合住宅やビル等に使用される生体認証システムである。
【0026】
図1に示すように本実施形態の生体認証システム1は、共用扉21の開錠及び施錠を管理する共用扉施錠部2と、戸別毎に設置されていると共に共用扉施錠部2と接続されている複数の戸別認証部3と、戸別認証部3と接続されている制御部4とを有している。制御部4は複数の戸別認証部3の中から一の戸別認証部3を選択する選択手段であるスイッチャ41及びテンキー部43と、利用者の生体情報を取得する生体情報取得手段である生体情報取得装置42とを有している。
【0027】
図2に示すように、各戸別認証部3は利用者の生体情報を予め記憶するための記憶手段であるROM35と生体情報取得装置42により取得された利用者の生体情報をROM35に記憶されている生体情報と照合する照合手段である制御装置32とを有している。そして、制御部4は選択手段であるテンキー部43の操作によって選択された一の戸別認証部3へ生体情報取得装置42により取得された利用者の生体情報を送信し、戸別認証部3の照合手段である制御装置32は送信された利用者の生体情報とROM35に予め記憶されている利用者の生体情報とを照合すると共に照合結果を共用扉施錠部2に送信し、共用扉施錠部2は照合結果に応じて共用扉の開錠及び施錠を管理する。
【0028】
共用扉21は共用玄関(エントランス)に設けられている。
共用扉施錠部2は共用扉21に取付けられている電子ロック装置であり、戸別認証部3からの送信信号により共用扉21の施錠及び開錠を行う。なお、共用扉施錠部2は開錠後一定時間経過すると自動的に共用扉21を施錠する。
【0029】
戸別扉31は各戸の玄関に設けられている。この戸別扉31は本実施形態において集合住宅の各戸の扉である。
【0030】
戸別認証部3は戸別扉31に設置されている。この戸別認証部3は、共用扉施錠部2及び後述するスイッチャ41と接続されている制御装置32と、制御装置32へ生体情報を提供する戸別生体情報取得装置33と、制御装置32の生体情報の照合に用いるために生体情報を予め記憶するためのROM35と、制御装置32からの制御信号により戸別の扉31の施錠及び開錠を行う戸別扉施錠部34とを有している。
【0031】
制御装置32は戸別生体情報取得装置33や後述する制御部4の生体情報取得装置42により取得された生体情報をROM35内に記憶されている生体情報と照合する。また制御装置32は戸別生体情報取得装置33により取得された生体情報をROM35内へ記憶させる。さらに、制御装置32は共用扉施錠部2に対して生体情報の認証結果の送信を行う。
【0032】
戸別生体情報取得装置33は赤外線カメラを用いて利用者の指の静脈情報を取得する装置である。図2において、符号33aにより示されるのは利用者の指の挿入口である。
【0033】
戸別施錠部34は戸別扉31に設けられている電子ロック装置であり、制御装置32の生体情報の認証結果に基づき開錠及び施錠が行われる。なお、戸別施錠部34は開錠後一定時間経過すると自動的に戸別扉31を施錠する。
【0034】
ROM35は、第1記憶手段である第1記憶エリア36と、第2記憶手段である第2記憶エリア37とを有している。第1記憶エリア36は戸別施錠部34の開錠を行うための利用者の生体情報を記憶するための記憶エリアであり、第2記憶エリアは共用扉施錠部2の開錠を行うための利用者の生体情報を記憶するための記憶エリアである。
【0035】
制御部4は共用扉21が設置されている共用玄関に設置されている。制御部4は、選択手段であるスイッチャ41と、スイッチャ41の操作部を構成するテンキー43と、生体情報を取得するための生体情報取得装置42とを有している。
【0036】
スイッチャ41は信号の送受信先を切換える装置である。このスイッチャ41は、テンキー43より特定の部屋番号を入力することにより、当該部屋番号の部屋の扉31に取付けられている戸別認証部3を選択する。そして、このスイッチャ41により選択された一の戸別認証部3へ生体情報取得装置42により取得された生体情報が送信される。
【0037】
生体情報取得装置42は生体情報取得装置33と同様の装置であり、赤外線カメラを用いて利用者の指の静脈情報を取得する装置である。図1において、符号42aにより示されるのは利用者の指の挿入口である。
【0038】
以下、本実施形態の作用効果を説明する。
最初に、この生体認証システム1の利用者(各戸の住民)の生体情報の登録作業について説明する。この登録作業は、利用者である各戸の住民が自己の部屋に設けられている戸別認証部3により行う。即ち、利用者は自己の住居部の戸別扉31に設置されている戸別生体情報取得装置32の挿入口32aに指を挿入し生体情報を取得させ、制御装置32によってROM35に記憶させる。なお、ROM35への生体情報の記憶は、第1記憶エリア36又は第2記憶エリア37のいずれかを戸別認証部3に設けられている操作ボタン(図示せず)を利用者が操作することにより選択することができる。利用者は自己の両手の指の中から1本の指を選んでその指を挿入口32aに挿入し第1記憶エリア36に記憶させる。次に他の1本の指を選んでその指を挿入口32aに挿入し第2記憶エリア37に記憶させる。このように、第1記憶エリア36と第2記憶エリア37に記憶させる指を変えることにより、万一戸別認証部3と制御部4とを接続している通信回線から生体情報が流出した場合でも、第三者が当該生体情報を用いて戸別扉31を開錠することを防止することができる。以下、第1記憶エリア36に親指の生体情報を記憶させ、第2記憶エリア37に中指の生体情報を記憶させたことを前提として説明する。
【0039】
次に、利用者が共用玄関から集合住宅に入ろうとする場合について説明する。最初に、利用者は共用玄関の共用扉21の近傍に設置されている制御部4のテンキー43を用いて自己の部屋番号を入力する。テンキー43により部屋番号が入力されると、スイッチャ41は生体情報取得装置42からの生体情報の送信先をその部屋番号に対応する一の戸別認証部3へと切換える。次に、利用者が挿入口42aに中指を挿入すると、生体情報取得装置42は当該中指の静脈による生体情報をスイッチャ41が選択した一の戸別認証部3へ送信する。
【0040】
この利用者の部屋の戸別扉31に設けられている戸別認証部3へ送信された中指の生体情報は、戸別認証部において照合がなされる。即ち、戸別認証部3の制御装置32は、生体情報取得装置42から生体情報が送信されてきた場合には、ROM35内の第2記憶エリア37に記憶されている複数の生体情報と生体情報取得装置42から送信されてきた生体情報とを照合する。この中指の生体情報は、上述した登録作業によりROM35の第2記憶エリア37に記憶されているため、この照合により本人の指と確認される。照合結果は開錠信号となり共用扉施錠部2へ直接送信され共用扉21が開錠される。なお、ROM35内の第2記憶エリア37に記憶されていない利用者が挿入口42aに指を挿入した場合には、戸別認証部3の制御装置32は開錠信号を共用扉施錠部2に送信せず、共用扉21は開錠されない。
【0041】
次に、利用者が自己の部屋に入ろうとする場合について説明する。利用者は戸別扉31に設置されている戸別認証部3の戸別生体情報取得装置32の挿入口32aに親指を挿入する。この親指の生体情報は、上述した登録作業によりROM35の第1記憶エリア36に記憶されているため、この照合により本人の指と確認される。照合結果は開錠信号となり戸別扉施錠部34へ送信され戸別扉31が開錠される。なお、ROM35内の第1記憶エリア36に記憶されていない利用者が挿入口32aに指を挿入した場合には、戸別認証部3の制御装置32は開錠信号を戸別扉施錠部24に送信せず、戸別扉31は開錠されない。
【0042】
以上のように、本実施形態の生体認証システム1においては、共用扉21の開錠及び施錠を行うための生体認証を制御部4により選択された一の戸別認証部3が行う。このため、利用者の生体情報を一元的に管理する必要がないため、コンピュータ等による大規模なデータベースを必要としない。また、制御部4により選択された一の戸別認証部3により生体認証が行われるため、一の戸別認証部3に記憶されている生体情報のみを照合の対象とする。このため共用扉21の利用者全ての生体情報と照合する必要がなく、生体認証に必要な照合時間の大幅な短縮を達成することができる。さらに、コンピュータ等による大規模なデータベースではなく、戸別毎の戸別認証部3に生体情報が記憶されているだけなので、集合住宅等の全利用者のデータベースを一度に盗難される可能性が極めて低い。
【0043】
さらに、本実施形態の生体認証システム1は、戸別認証部3の照合結果による開錠信号が共用扉施錠部2へ直接送信されるため、生体認証システム1全体を非常に簡素に構成することができ、システム全体の製造費用や設置費用の低減化を図ることができる。また、共用扉施錠部2の制御を比較的低廉なメンテナンス費用しか必要としない各戸別認証部3が直接行っているため、システム全体のメンテナンス費用の低減化を図ることができる。
【0044】
上記第1実施形態の場合には、戸別認証部3の照合結果による開錠信号が共用扉施錠部2へ直接送信されるように構成されているが、図3に示すように、各戸別認証部3の照合結果による信号を、制御部4を経由して共用扉施錠部2へ管理信号として送信するように構成することもできる。この場合、生体情報取得装置42により取得された生体情報は制御部4のスイッチャ41を通じて戸別認証部3に送信され、その認証結果による信号は制御部4のスイッチャ41を通じて管理信号として共用扉施錠部2へ送信される。このため、一の生体情報の送信に対して管理信号が送信されたのか否かということがスイッチャ41のみを監視することにより判断できる。例えば、このスイッチャ41への信号送受信の履歴を記憶する記憶装置をスイッチャ41に取付けておけば、生体情報が送信されたにもかかわらず管理信号が送られなかったという異常な状態を記録に残すことができる。また、このような異常な状態を監視するために、所定回数の異常状態を検知すると警報を発する警報装置をスイッチャ41に接続したり、警備会社に異常状態を通報する通信装置をスイッチャ41に接続したりすることが可能になる。
【0045】
次に、本発明に係る第2実施形態の生体認証システム1aを説明する。この生体認証システム1aはホテル等の宿泊施設に使用される。図4に示すように、この生体認証システム1aは、複数の戸別認証部3aと、これら複数の戸別認証部と接続されている一つの登録部5とから構成されている。
【0046】
戸別認証部3aはホテルの各戸別扉31に設けられており、戸別扉31の施錠及び開錠を行う。この戸別認証部3aは上記第1実施形態における戸別認証部3と略同様の構成を有しているが、戸別認証部3aの生体情報取得装置(図示せず)からは利用者の生体情報を戸別認証部3aの生体情報の記憶手段であるROM(図示せず)に記憶させることはできない点が異なる。このROMに利用者(宿泊者)の生体情報を記憶させるためには、後述する登録部5を通じて行わなければならない。
【0047】
登録部5はホテル等の宿泊受付用のカウンタに設置されており、ホテル等の従業員によって操作される。この登録部5は、複数の戸別認証部3aから一の戸別認証部3aを選択するためのスイッチャ51と、生体情報取得装置52と、スイッチャ51を操作するためのテンキー53とを有する。テンキー53により部屋番号が入力されると、スイッチャ51は、生体情報取得装置5からの生体情報の送信先をその部屋番号に対応する一の戸別認証部3aに切換える。
【0048】
以下、本実施形態の生体認証システム1aの作用効果を説明する。
利用者(宿泊者)がホテル等へ宿泊する場合、ホテル等の従業員は、この利用者が宿泊する部屋番号をテンキー53によって入力する。スイッチャ51が生体情報取得装置52からの生体情報の送信先をその部屋番号に対応する一の戸別認証部3aに切換える。次に、利用者(宿泊者)の特定の指を挿入口52aに挿入すると生体情報取得装置52は当該指の静脈による生体情報をスイッチャ51が選択した一の戸別認証部3aへ送信する。そして、この一の戸別認証部3aのROMに当該部屋の宿泊者の生体情報が記憶される。なお、このROM内に記憶されている生体情報は、スイッチャ51により一の戸別認証部3aが選択された後、所定時間内に生体情報取得装置52から生体情報が送信されない場合には戸別認証部3aの制御部(図示せず)により消去される。
【0049】
本実施形態によれば、ホテル等において宿泊受付用カウンタからすべての部屋の戸別認証部3aに各部屋の宿泊者の生体情報を記憶(登録)させ、あるいは消去(抹消)させることができる。このため従来のように利用者(宿泊者)がカードキー等を使用する必要がない。また、宿泊者の生体情報はROMに一時的に記憶されるだけであり、コンピュータ等によるデータベースとして残らないため、多数の宿泊者の生体情報が一度に盗難されるおそれがない。
【0050】
次に、本発明に係る第3実施形態の生体認証システム1bを説明する。この生体認証システム1bは一般的な家屋の複数の扉に使用される。図5に示すように、この生体認証システム1aは、複数の扉61にそれぞれ設けられている扉施錠部6と、一の扉31(例えば玄関扉)に設けられている認証部3bとを有している。複数の戸扉施錠部6は、それぞれ認証部3bと接続されている。なお、認証部3bは上記第1実施形態において説明した戸別認証部3と略同様の構成を有する。
【0051】
各扉施錠部6は生体情報取得装置(図示せず)を有しており、この生体情報取得装置で取得された生体情報は認証部3bの制御装置32に送信される。そして、送信された生体情報は認証部3bのROM35に予め記憶されている生体情報と照合される。
【0052】
生体認証システム1bは、利用者が一の扉61を開錠しようとしてその扉に設けられている扉施錠部6の生体情報取得装置に指を入れると、その指の生体情報が認証部3bに送信され制御装置32により照合される。そして認証部3bからの照合結果が開錠信号としてこの一の扉施錠部6へ送信され、扉61が開錠されることになる。
【0053】
本実施形態においては、一つの認証部3が全ての扉施錠部6における生体情報の照合を行うため、システム全体の製造コストの低廉化を図ることができる。また、利用者は一つの認証部3bに対して生体情報の登録作業を行うことにより、全ての扉施錠部6の開錠ができるため利便性が高いという利点がある。
【0054】
なお、上記各実施形態において、制御部、認証部、登録部、施錠部等の各装置間の接続は集合住宅やホテル等に設置されている既存のインターホンの音声用回線や外来者を写すカメラモニター用回線等を共用することにより、さらに設置費用の低減化を図ることができる。また、このような各装置間の接続は有線接続だけではなく無線装置を用いた無線による接続も含み、この場合には配線設置費用を不要とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明に係る第1実施形態の生体認証システム1の構成を示す概念図である。
【図2】図1に示す生体認証システム1の戸別認証部3の構成を示す概念図である。
【図3】図1に示す生体認証システム1の他の接続構成を示す概念図である。
【図4】本発明に係る第2実施形態の生体認証システム1aの構成を示す概念図である。
【図5】本発明に係る第3実施形態の生体認証システム1bの構成を示す概念図である。
【符号の説明】
【0056】
1、1a、1b 生体認証システム
2 共用扉施錠部
21 共用扉
3、3a、3b 戸別認証部
31 戸別扉
32 制御装置
33 戸別生体情報取得装置
33a 挿入口
34、6 戸別扉施錠部
35 ROM
36 第1記憶エリア
37 第2記憶エリア
4 制御部
41 スイッチャ
42 生体情報取得装置
42a 挿入口
43 テンキー部
5 登録部
51 スイッチャ
52 生体情報取得装置
52a 挿入口
53 テンキー部
61 扉

【特許請求の範囲】
【請求項1】
共用扉の開錠及び施錠を行う共用扉施錠部と、戸別毎に設置されている複数の戸別認証部と、前記戸別認証部を選択する制御部とを有し、
利用者が前記制御部を操作することにより前記複数の戸別認証部から一の戸別認証部を選択し、当該利用者の生体情報が前記一の戸別認証部に記憶されている生体情報と照合され、当該照合結果により前記共用扉施錠部が前記共用扉の開錠及び施錠を行う生体認証システム。
【請求項2】
共用扉の開錠及び施錠を行う共用扉施錠部と、戸別毎に設置されていると共に前記共用扉施錠部と接続されている複数の戸別認証部と、前記戸別認証部と接続されている制御部とを有し、
前記制御部は、複数の前記戸別認証部の中から一の戸別認証部を選択する選択手段と、利用者の生体情報を取得する生体情報取得手段とを有し、
前記各戸別認証部は、利用者の生体情報を予め記憶するための記憶手段と前記生体情報取得手段により取得された利用者の生体情報を前記記憶手段に記憶されている生体情報と照合する照合手段とを有し、
前記制御部は前記選択手段の操作によって選択された前記一の戸別認証部へ前記生体情報取得手段により取得された利用者の生体情報を送信し、前記戸別認証部の前記照合手段は送信された利用者の生体情報と前記記憶手段に予め記憶されている利用者の生体情報とを照合すると共に照合結果を前記共用扉施錠部に送信し、前記共用扉施錠部は前記照合結果に応じて共用扉の開錠及び施錠を管理することを特徴とする生体認証システム。
【請求項3】
共用扉の開錠及び施錠を行う共用扉施錠部と、戸別毎に設置されている複数の戸別認証部と、前記共用扉施錠部と前記戸別認証部とに接続されている制御部とを有し、
前記制御部は、複数の前記戸別認証部の中から一の戸別認証部を選択する選択手段と、利用者の生体情報を取得する生体情報取得手段とを有し、
前記各戸別認証部は、利用者の生体情報を予め記憶するための記憶手段と前記生体情報取得手段により取得された利用者の生体情報を前記記憶手段に記憶されている生体情報と照合する照合手段とを有し、
前記制御部は前記選択手段の操作によって選択された前記一の戸別認証部へ前記生体情報取得手段により取得された利用者の生体情報を送信し、前記戸別認証部の前記照合手段は送信された利用者の生体情報と前記記憶手段に予め記憶されている利用者の生体情報とを照合すると共に照合結果を前記制御部に送信し、前記制御部は前記照合結果に応じて共用扉施錠部に共用扉の開錠及び施錠の管理信号を送信し、前記共用扉施錠部は前記制御部からの管理信号に応じて共用扉の開錠及び施錠を管理することを特徴とする生体認証システム。
【請求項4】
前記戸別認証部は、さらに、利用者の生体情報を取得する戸別生体情報取得手段を有し、前記照合手段により、前記戸別生体情報取得手段により取得された利用者の生体情報と前記記憶手段に記憶されている利用者の生体情報とを照合し、戸別の扉の開錠及び施錠を管理することを特徴とする請求項2又は請求項3記載の生体認証システム。
【請求項5】
前記戸別認証部の前記記憶手段は、前記制御部の前記生体情報取得手段により取得された利用者の生体情報との照合を行うための第1記憶手段と、前記戸別生体情報取得手段により取得された利用者の生体情報との照合を行うための第2記憶手段とを有している請求項4記載の生体認証システム。
【請求項6】
戸別に設置されると共に戸別扉の開錠及び施錠を行う複数の戸別認証部と、前記戸別認証部を選択する登録部とを有し、
利用者が前記登録部を操作することにより前記複数の戸別認証部から一の戸別認証部を選択し、利用者の生体情報が前記一の戸別認証部において登録され、当該生体情報を基に利用者の認証判定を行うことにより前記戸別認証部が前記戸別扉の開錠及び施錠を行う生体認証システム。
【請求項7】
戸別に設置されると共に戸別扉の開錠及び施錠を管理する複数の戸別認証部と、前記各戸別認証部と接続されている登録部とを有し、
前記各戸別認証部は、利用者の生体情報を予め記憶するための記憶手段と、利用者の生体情報を取得する戸別生体情報取得手段と、前記戸別生体情報取得手段により取得された利用者の生体情報を前記記憶手段に記憶されている生体情報と照合する照合手段とを有し、
前記登録部は、複数の前記戸別認証部の中から一の戸別認証部を選択する選択手段と、利用者の生体情報を取得する生体情報取得手段とを有し、
前記登録部は前記選択手段の操作によって選択された前記一の戸別認証部へ前記生体情報取得手段により取得された利用者の生体情報を送信し、前記選択された一の戸別認証部が前記登録部から送信された利用者の生体情報を前記記憶手段に記憶し、前記戸別生体情報取得手段により取得された利用者の生体情報と前記記憶手段に記憶されている利用者の生体情報とを前記戸別認証部の前記照合手段により照合し、戸別の扉の開錠及び施錠を管理することを特徴とする生体認証システム。
【請求項8】
各扉毎に設けられると共に扉の開錠及び施錠を管理する複数の扉施錠部と、前記複数の扉施錠部と接続されている認証部とを有し、
前記複数の扉施錠部の内、一の前記扉施錠部により取得された利用者の生体情報が前記認証部において認証判定され、当該認証判定の結果により前記扉施錠部が前記扉の開錠及び施錠を行う生体認証システム。
【請求項9】
各扉毎に設けられると共に扉の開錠及び施錠を管理する複数の扉施錠部と、前記複数の扉施錠部と接続されている認証部とを有し、
前記扉施錠部は利用者の生体情報を取得する生体情報取得手段とを有し、
前記認証部は、利用者の生体情報を予め記憶するための記憶手段と前記生体情報取得手段により取得された利用者の生体情報を前記記憶手段に記憶されている生体情報と照合する照合手段とを有し、
前記一の扉施錠部が前記生体情報取得手段により取得された利用者の生体情報を前記認証部へ送信し、前記認証部の前記照合手段が送信された利用者の生体情報と前記データベースに予め記憶されている利用者の生体情報とを照合し、前記認証部の照合結果が前記認証部から前記一の扉施錠部へ送信され、前記一の扉施錠部が前記認証部の照合結果に応じて扉の開錠及び施錠を管理することを特徴とする生体認証システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−241967(P2007−241967A)
【公開日】平成19年9月20日(2007.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−104631(P2006−104631)
【出願日】平成18年3月9日(2006.3.9)
【出願人】(592040826)住友不動産株式会社 (94)
【Fターム(参考)】