説明

生体認証システム

【課題】
生体認証システムにおける生体認証の登録について、その正当性を担保しつつ、登録作業の効率化を図ることを目的とする。
【解決手段】
入力装置13からの生体情報の登録のための入力の際に、その登録作業を識別する信号パターンIDを生成し、これに応じて発光部53から発光パターンを出力し、カメラ15でその発光パターンを撮影して、撮影内容から抽出した信号パターンIDと生成された信号パターンIDを比較して、登録者の正当性を判断する。また、これらに並行して、監視端末4でカメラ15で撮影された内容を管理者がディスプレイ41を通じて監視する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体認証システムで、生体認証に利用する生体情報の登録を行うための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、情報システムなどの利用者を認証する技術として、いわゆる生体認証技術が提案されている。この生体認証における大きな課題の一つが生体情報の確実で効率的な登録方法の確立である。一般に生体情報の登録は確実に本人が登録したことを担保するために管理者立会いのもと行われるが、登録の対象者数が多かったり、また登録ユーザが何拠点にも存在したりする場合、管理者にとって大きな負担・工数となる。生体認証システムの更に普及されるためには登録作業の効率化が必要であり、そのためには管理者の立会いを不要としつつ、登録ユーザ本人が登録していることを担保、または証跡として記録できる方法の確立が求められる。
【0003】
特許文献1では、生体認証システムが複数存在する場合、それぞれに対する生体情報の登録の手間を省くことを目的の1つとしている。このために、特許文献1では、複数のシステムで共通する共通IDを生体情報に対応付けて登録させることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−161461号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
生体情報(テンプレート)の登録の運用では、登録ユーザが本人であること、また不正を行っていないことをきちんと確認する必要があり、登録操作は一般に管理者などの立会いのもと行われる。生体認証の導入において、この登録作業にかかる人手・工数が課題となることが多い。また、管理者の立会いを不要とするため、カメラなどで監視・確認することも可能であるが、映像のすり替えやカメラの前に生体認証装置を置き換え、あたかも本人が登録しているように偽装したりするなどの不正が行われる危険性が残る。
【0006】
本発明では、生体認証を運用していく上で必須となる生体情報の登録作業に関する効率化手法として、管理者の立会いがなくても、登録端末の前で確実に本人が自身の生体を登録したことを担保(証跡として記録)する技術を確立する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明では、上述の課題を解決し、登録作業の効率化を図りつつ、不正な登録を防止・抑止することを目的とする。本発明では、生体認証管理サーバに登録される生体情報(テンプレート)が本人の登録操作により登録されたものであることを担保するため、カメラで登録ユーザおよび生体認証装置、すなわち、登録の状況を撮影する。また、映像の真正性を確保するため(カメラで撮影した映像が摩り替えられていないこと、または生体認証装置が不正に置き換えられていないこと)、生体認証サーバから受け取った信号に合わせて生体認証装置の上部の付けられている発光体(LEDなど)を点滅させ、カメラでその点滅パターンを撮影・識別することにより、正当な生体認証装置に対して登録者本人が登録していることを確認可能とすることを最も主要な特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明により、生体情報の登録に際して撮影したカメラの映像の真正性を確保し、管理者の立会いがない状況においても安全に登録作業を行うことが可能となり、生体認証導入に際する登録作業の効率化を図ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の一実施形態における生体情報登録システム全体を示した説明図である。
【図2】本発明の実施形態である生体情報登録に関する流れを示すフローチャートである。
【図3】本発明の実施形態である登録ステータスの変更に関する流れを示すフローチャートである。
【図4】生体情報の登録オペレーションの映像データを保存するテーブル情報を示す。
【図5】生体認証システムのユーザ情報を記録するテーブル情報を示す。
【図6】生体情報(テンプレート)を保存するテーブル情報を示す。
【図7】生体認証装置の発行部を点滅されるパターン情報を記録するテーブル情報を示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の一実施形態におけるシステム構成図を図1に示す。図1において、の生体情報登録システムは、生体情報の登録操作を行う生体情報登録端末1、生体情報およびカメラで撮影した映像を管理する生体情報管理サーバ2と映像管理サーバ3から構成される。登録端末11には生体認証装置12およびカメラ15を接続し、カメラ15は生体認証装置12と登録ユーザの顔を撮影できる位置に設置する。また、生体認証装置12の上面にはLEDなどの発光体を装着し、登録操作に合わせた発光体の表示制御を行う機能を有する。この表示には、登録作業中に点滅することが含まれる。また、点滅の他、表示色の変更、明るさ、光の強さを変更することやこれらの組み合わせ(含むサブコンビネーション)も、表示制御に含まれる。表示制御の他、音声の大きさ、高低、音質およびその内容やこれらの組み合わせ(含むサブコンビネーション)を用いることも含まれる。このように、本実施形態では、音声などの他の出力信号を用いてもよく、カメラ15の代わりにマイクなどの他の情報収集装置を用いてもよい。
【0011】
登録端末11は、登録管理機能50、映像解析機能51、信号パターンテーブル52を有し、ディスプレイ14、カメラ15、生体認証装置12、入力装置(キーボードなど)13が接続される。また、生体認証装置12は生体撮影部54と発行部(LED)53から構成される。
【0012】
図2は、生体情報登録装置1から生体情報管理サーバ3と映像管理サーバ2に生体情報(テンプレート)およびカメラで撮影した映像を登録する動作を示すフローチャートである。生体情報登録装置1は各拠点などに設置され、生体情報管理サーバ3と映像管理サーバ2は本部などのデータセンタなどに設置されることが想定される。これにより、ネットワークを介した各拠点からの生体情報(テンプレート)の登録が可能となる。また、その際、特に管理者等の立会いは不要である。
【0013】
登録ユーザは、拠点に設置された生体情報登録装置1において、当該装置に接続された入力装置13から「ユーザID」を入力、登録開始ボタンを押下する(S1)。「ユーザID」は、登録開始要求として、生体認証管理サーバ3へ送信され(S2)、生体認証管理サーバ3では当該「ユーザID」がユーザ情報記憶部31のユーザテーブル32内に存在するIDか確認する(S3)。当該テービスに存在しない場合は、想定していないユーザからの登録開始要求として登録処理を終了するか、または生体認証登録装置1へ再度の「ユーザID」の入力を促すメッセージを表示し、S1の処理に戻る。
【0014】
登録ユーザにより入力された「ユーザID」がユーザテーブル32に存在した場合、ユーザ情報記録部31の信号パターンテーブル33から「信号パターンID」をランダムに選択し、登録開始応答として生体情報登録装置1へ送信する(S5)。
【0015】
生体認証管理サーバ3から登録開始応答を受け取った生体情報登録端末1では、当該端末に接続されているカメラ15で生体認証装置12と登録ユーザの撮影を開始する。また、登録端末11の登録管理機能50は、信号パターンテーブルを参照し、「信号パターンID」から生体認証装置12の発行部54を点滅させるパターン情報を抽出する(S7)。点滅パターンとしては、表4に示す通り、色、点滅時間、点滅間隔の組み合わせなどが想定される。点滅の時間および間隔に関しては、カメラ15の性能を考慮し、設置されたカメラ15の性能でも十分識別できる秒数を設定する必要があるが、色のパターンを組み合わせることにより、点滅パターンを増やしつつ、識別の精度を上がることが可能である。
【0016】
点滅のパターン情報は生体認証装置12へ送信され、発行部(LED)53を点滅のパターン情報に合わせて点滅させる。その際、カメラ15で撮影した生体認証装置12の発行部53の点滅映像を映像解析機能51で解析し、点滅のパターン情報を抽出する(S9)。点滅のパターン情報は登録管理機能50へ転送され、登録管理機能50では信号パターンテーブル52を参照して、抽出した点滅パターンの情報から「信号パターンID」を特定し、S5で生体認証管理サーバ3から送られてきた「信号パターンID」と一致しているか確認する(S10)。なお、本実施形態では、信号パターンIDを比較したが、信号パターンそのもの同士を比較してもよい。
【0017】
カメラ15で撮影した映像から抽出した「信号パターンID」と生体認証管理サーバ3 から送られてきている「信号パターンID」 が一致しない場合、撮影した映像のすり替え、またはカメラ15の前の生体認証装置12を置き換え、あたかも本人が登録しているような偽装を行っていることも考えられるため、登録操作を終了する。
【0018】
「信号パターンID」が一致した場合は、映像解析機能51において、カメラ15で撮影している映像に人の顔が認識できるか確認する(S12)。映像から人の顔が認識できない場合は、記録した映像から後日登録ユーザ本人が登録操作を行っているか確認することができないため、顔が認識できるまで本処理を繰り返す(S13)。
【0019】
カメラ15の映像で人の顔を認識したタイミングで、生体認証装置12の生体撮影部54で生体認証に利用する生体部位を撮影し、生体画像を登録管理機能50に転送する。登録管理機能50では、撮影した生体画像から生体の特徴情報(テンプレート)を抽出する(S14)。なお、生体画像から生体情報(テンプレート)を抽出する処理は、登録端末11上の登録管理機能50でなく、生体認証装置12内部で行ってもよい。
【0020】
生体情報(テンプレート)の取得が終わったタイミングでカメラでの撮影を終了する(S15)。なお、カメラで撮影した映像データは、当該生体認証登録オペレーションの証跡として、登録開始応答を受け取ってカメラでの撮影を開始してから、生体情報(テンプレート)の取得が完了するまでの映像を管理する。
【0021】
生体情報登録端末1で取得した「生体情報(テンプレート)」を生体認証管理サーバ3へ送付する(S16)。なお、生体認証管理サーバ3へは、「生体情報(テンプレート)」の他、「ユーザID」、「信号パターンID」、登録端末の情報(ID)などの情報も合わせて送付する。生体認証管理サーバ3では、受け取った情報を生体情報記録部31の生体情報テーブル34に保存し(S17)、登録完了後、登録完了応答を生体情報登録端末1へ送信する(S18)。
【0022】
カメラ15で撮影した映像データは、映像管理サーバ2へ送付する(S19)。なお、映像管理サーバへは、カメラ15で撮影した映像データの他、「ユーザID」、「信号パターンID」、登録端末の情報(ID)などの情報も合わせて送信する。映像管理サーバ2では、受け取った映像データ他を映像記録部21の映像テーブル22に保存し(S20)、登録完了後、登録完了応答を生体情報登録端末1へ送付する(S21)。
【0023】
上記処理で生体情報(テンプレート)の登録が完了する。ここまでの処理を持って、正式な登録と見なすことも可能であるが、確実に本人が登録操作を行っていたことを管理者が映像管理サーバの映像で確認してから、正式な登録と見なした方がよいケースも多いと考えられる。そのため、上記処理を仮登録と位置付け、表3の生体情報テーブルの登録ステータスを「仮登録」として記録しておく。なお、上記処理を正式な登録と位置づけた場合、映像は問題が発生した場合の事後的な確認のためなどに利用されることとなる。
【0024】
図3は、S1からS21までの処理を仮登録と位置づけ、後日管理者により映像を確認して、登録ステータスを変更するまでの流れを示すフローチャートである。
【0025】
まず、管理者(またはそれ相応の権限者)は映像管理サーバ2の映像記録部21に保存された映像データを確認する(T1)。確認に当たっては、映像の中で登録オペレーションを行っているユーザが、「ユーザID」で示される登録ユーザ本人であること、また登録オペレーション中に不正な操作をしていないことなどを確認する。
【0026】
管理者が記録した映像から登録オペレーションに問題あると判断した場合は、生体認証管理サーバ3に登録された「生体情報(テンプレート)」自体が無効なものと位置付けられる。そのため、管理者は、生体情報管理サーバ3の生体情報テーブルの当該レコードを削除、または無効化する操作を行う必要がある(T3)。
【0027】
管理者が映像を確認した結果、問題ないと判断した場合は、S1からS21の処理で登録した生体情報(テンプレート)を正式な情報として、生体認証管理サーバ3にある生体情報テーブル34の「登録ステータス」を「仮登録」から「正式登録」に変更する(T3)。登録にステータスが「正式登録」に変更になった以降は、当該ユーザは登録済みユーザとして、生体認証が可能となる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体認証を用いて、利用者の認証を行う生体認証システムにおいて、
前記利用者から生体情報の入力を受け付ける手段と、
前記生体情報の入力に関する信号を生成する手段と、
生成された前記信号に対応する出力信号を、前記生体情報の入力の際に出力する手段と、
出力された前記出力信号から、前記信号を抽出し、抽出された信号と生成された前記信号を比較する手段と、
前記比較の結果に基づいて、入力された前記生体情報の登録の可否を判断する手段とを有することを特徴する生体認証システム。
【請求項2】
請求項1に記載の生体認証システムにおいて、
前記信号を生成する手段は、予め信号パターンテーブルに格納された信号パターンから所定のものを抽出することで、当該生成を実行することを特徴とする生体認証システム。
【請求項3】
請求項2に記載の生体認証システムにおいて、
前記信号パターンテーブルには、信号を識別する信号パターンID毎に、信号の内容を格納しておき、
前記生成する手段は、前記信号パターンIDを抽出することで、前記信号パターンを抽出し、
前記比較する手段は、前記信号パターンテーブルを用いて、前記出力信号に対応する信号パターンIDを特定し、特定された当該信号パターンIDと抽出された前記信号パターンIDを比較することを特徴とする生体認証システム。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかに記載の生体認証システムにおいて、
前記出力する手段は、前記出力信号として、発光もしくは音声のうち少なくとも一方を出力することを特徴とする生体認証システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−133924(P2011−133924A)
【公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−289966(P2009−289966)
【出願日】平成21年12月22日(2009.12.22)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】