説明

生体認証装置、生体認証装置を制御する制御プログラム、生体認証装置を制御する制御方法及び生体認証システムの制御方法

【課題】本技術の開示での課題は、本人認証を効率的に行うことができる生体認証装置を提供することである。
【解決手段】課題を解決するために、生体認証装置は、複数の参照生体データを記憶する記憶部と、取得した生体データとの類似判断の係数が、第一の閾値以上である参照生体データを抽出する識別制御部と、前記識別制御部により抽出された参照生体データが複数であった場合、抽出された前記複数の参照生体データ間で所定領域単位の類似判断の係数を求め、前記類似判断の係数が第二の閾値以上の類似領域を抽出する類似領域抽出部と、前記抽出された類似領域との類似判断の係数よりも非類似領域との類似判断の係数に重みを付けて、前記生体データと、抽出された前記複数の参照生体データとの類似度の判定を行う判定部とを有する

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体認証装置、生体認証装置を制御する制御プログラム、生体認証装置を制御する制御方法及び生体認証システムの制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
生体認証の方式の1つとして、1対N認証方式がある。1対N認証方式とは、認証者であるユーザのID等、ユーザを特定する情報がなくとも、ユーザの生体データと、予め保存されている複数のユーザの参照生体データとの比較を行うことにより本人認証を行う方式である。
【0003】
1対N認証方式では、データベースに保存されるユーザの参照生体データの数が増えると、入力された生体データが他のユーザの参照生体データと類似してしまう可能性が高くなる。ゆえに、認証時の他人受入率が高くなり、本人を他のユーザとして誤認証してしまうリスクが高まってしまう。
【0004】
例えば、予め高い類似度を持つ生体情報登録データのリストを作成し、認証実行時にリストアップした登録データと類似した場合のみ、本人判定閾値を厳しく変更して認証を行う技術がある(特許文献1)。
【0005】
また、例えば、登録データ単位で本人判定閾値を設け、利用者から入力された生体情報との類似度が閾値を上回る登録データが複数あった場合に、それらの登録データに対応する本人判定閾値を厳しく設定し直す技術がある(特許文献2)。
【0006】
しかしながら、上述した技術では、本人判定閾値を厳しく設定し直すことを行っており、他人受入率を低くすることはできるものの、本人拒否率が高くなり、認証成功率は低くなってしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2005−182184号公報
【特許文献2】特開2008−243054号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本技術の開示での課題は、本人認証を効率的に行うことができる生体認証装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、生体認証装置は、複数の参照生体データを記憶する記憶部と、取得した生体データとの類似判断の係数が、第一の閾値以上である参照生体データを抽出する識別制御部と、前記識別制御部により抽出された参照生体データが複数であった場合、抽出された前記複数の参照生体データ間で所定領域単位の類似判断の係数を求め、前記類似判断の係数が第二の閾値以上の類似領域を抽出する類似領域抽出部と、前記抽出された類似領域との類似判断の係数よりも非類似領域との類似判断の係数に重みを付けて、前記生体データと、抽出された前記複数の参照生体データとの類似度の判定を行う判定部とを有する。
【発明の効果】
【0010】
本開示の技術の一側面によれば、本人認証を効率的に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】生体認証装置のハードウェア構成の一実施例を簡略的に示すブロック図である。
【図2】認証処理の一実施例を簡略的に示す機能ブロック図である。
【図3】参照生体データの一実施例を示す図(その1)である。
【図4】参照生体データの一実施例を示す図(その2)である。
【図5】参照生体データの一実施例を示す図(その3)である。
【図6】類似情報データの一実施例を示す図(その1)である。
【図7】類似情報データの一実施例を示す図(その2)である。
【図8】生体認証装置の処理の一実施例を示すフローチャートである。
【図9】類似領域の抽出処理の一実施例を示すフローチャートである。
【図10】生体データと参照生体データとの特徴点の一致数を示す図(その1)である。
【図11】生体データと参照生体データとの特徴点の一致数を示す図(その2)である。
【図12】生体認証システムの一実施例を示す図である。
【図13】サーバ認証装置のハードウェア構成の一実施例を簡略的に示すブロック図である。
【図14】サーバ認証装置の処理の一実施例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本実施形態における生体認証装置及び生体認証システムについて説明する。
【0013】
<実施の形態1>
図1は、本実施形態における生体認証装置100のハードウェア構成の一例を簡略的に示すブロック図である。生体認証装置100は、Central Processing Unit(CPU、中央処理装置)102、操作部104、表示部106、ROM108、RAM110、入力装置112、外部記憶装置114及びネットワークインタフェース装置118を有する。バス116は、CPU102、操作部104、表示部106、ROM108、RAM110、入力装置112、外部記憶装置114及びネットワークインタフェース装置118を相互に接続する。
【0014】
CPU102は、各種演算処理を実行する。操作部104は、認証者であるユーザからのデータの入力を受け付ける。表示部106は、各種情報を表示する。ROM108は、Operating Sytem(OS、オペレーティングシステム)等の各種プログラムを格納する。RAM110は、プログラムの実行やデータの記憶を行う。入力装置112は、ユーザの生体情報を画像として読み取る。外部記憶装置114は、生体認証プログラムや複数の登録者の参照生体データ等を格納する。ネットワークインタフェース装置118は、ネットワークを介して他装置との間でデータの送受信を行う。なお、生体認証プログラムは、例えば、CD−ROMやDVDディスク、USBメモリ等の可搬型記録媒体、フラッシュメモリ等の半導体メモリなどのコンピュータ読取可能な記録媒体に格納されても良い。
【0015】
ユーザが操作部104を利用して生体認証を行いたい旨の命令を行うと、CPU102は、ユーザに入力装置112を用いて生体情報の入力を促すメッセージを表示部106に表示する。入力装置112はユーザの生体情報を画像として取得する。そして、CPU102は生体認証プログラムを外部記憶装置114から読み出してRAM110に展開することにより、生体認証プログラムを実行する。生体認証プログラムが実行されることにより、CPU102は、入力装置112が読み込んだ生体情報の画像から生体データを生成し、当該生体データと外部記憶装置114に格納された複数のユーザの参照生体データとを比較して生体認証を行う。なお、本実施形態においては、生体情報として指紋を用いており、ユーザは入力装置112である指紋センサに対して指をスイープさせることにより、生体情報の入力を行う。また、例えば、生体情報として手のひら静脈を用いて場合は、入力装置112として手のひら静脈センサを用い、ユーザは手のひら静脈センサに手のひらをかざせば良い。
【0016】
図2は、RAM110に展開された生体認証プログラムと、入力装置112、外部記憶装置114及び表示部106との関係の一例を簡略的に示す機能ブロック図である。CPU102が生体認証プログラムを実行することにより、特徴抽出部122、識別制御部124、本人判定部126、類似領域抽出部128、更新実施判定部130及びデータ更新部132として機能するようになる。
【0017】
特徴抽出部122は、入力装置112が取得したユーザの生体情報の画像から特徴情報を抽出し、ユーザの生体データを生成する。本実施形態において、生体情報として指紋を用いる場合には、隆線が途切れる点である端点、隆線が2本に分岐する分岐点、指紋紋様の中心である中心点、隆線の三方向からの集まりである三角州などの特徴点を特徴情報としている。また、端点、分岐点、中心点及び三角州等の位置情報を特徴情報としても良い。
【0018】
外部記憶装置114は、参照生体データ、類似領域データ等を記憶する。なお、類似領域データについては後述する。
【0019】
識別制御部124は、特徴抽出部122が生成した生体データの特徴情報と、外部記憶装置114に記憶されている参照生体データの特徴情報との一致数を第一の閾値を用いて比較する。ここで、一致数とは、特徴抽出部122が生成した生体データの特徴情報と、外部記憶装置114に記憶されている参照生体データの特徴情報との一致した数である。具体的には、識別制御部124は、生体データの特徴情報と各ユーザの参照生体データの特徴情報との位置座標等を比較し、特徴情報の位置座標の一致数が第一の閾値以上か否かを判定する。第一の閾値は、ユーザが一意に決まるような値が望ましい。本実施形態では、一致数を類似判断の係数として用いる。
【0020】
また、識別制御部124は、比較の際に参照生体データに対応する類似領域データを参照して、参照生体データにおいて類似領域であると判定された領域に重みをつけて一致数を算出する。例えば、指紋の特徴点を特徴情報として用いる場合、識別制御部124は、類似領域データにより類似領域と判定されている参照生体データの領域に存在する特徴点に対し、負の重み付けを与える。識別制御部124は、参照生体データにおいて類似領域と判定されている領域に存在する特徴点に対し、負の重み付けを与えることで、他ユーザとの識別性が高い特徴情報を重視して、一致数の比較を行うことができる。なお、識別制御部124の重み付け処理については後述する。
【0021】
類似領域抽出部128は、識別制御部124が抽出した複数の本人候補の参照生体データ間で類似する領域を第二の閾値に基づき決定する。具体的には、まず、類似領域抽出部128は、ユーザの生体データとの一致数が第一の閾値以上の参照生体データを取得する。次に、類似領域抽出部128は、取得した各参照生体データを所定数の領域にブロックとして分割する。そして、類似領域抽出部128は、各参照生体データ間で特徴情報を比較し、一致点の個数が第二の閾値以上の領域を類似領域と判定する。そして、類似領域抽出部128は、識別制御部124が抽出した複数の本人候補の参照生体データ間で類似する領域に関する情報を参照生体データ毎に類似領域データとして作成し、外部記憶装置114に保存する。
【0022】
続いて、類似領域抽出部128の詳細な処理について図3、図4及び図5を用いて説明する。本実施形態では、ユーザの生体データとの一致数が第一の閾値以上の参照生体データが、図3に示した参照生体データ510、図4に示した参照生体データ520及び図5に示した参照生体データ530の3つ存在する場合について説明する。本実施形態では、各参照生体データを縦5×横4の20ブロックに分割する例について説明するが、分割するブロック数はこの例に限られない。
【0023】
まず、類似領域抽出部128が参照生体データ510において類似領域を決定する処理について説明する。類似領域抽出部128は、参照生体データ510と参照生体データ520とを比較した結果、参照生体データ510のブロック11、12、14及び15と、参照生体データ520のブロック21、22、24及び25とがそれぞれ類似領域であると判定したとする。次に、類似領域抽出部128は、参照生体データ510と参照生体データ530とを比較した結果、参照生体データ510のブロック11、12、13及び14と、参照生体データ530のブロック31、32、33及び34とがそれぞれ類似領域であると判定したとする。この場合、類似領域抽出部128は、参照生体データ520及び参照生体データ530との類似領域の論理和をとったブロック11、12、13、14及び15を負の重み付けを行う領域と決定する。
【0024】
次に、類似領域抽出部128が参照生体データ520において類似領域を決定する処理について説明する。類似領域抽出部128は、参照生体データ520と参照生体データ510とを比較した結果、参照生体データ520のブロック21、22、24及び25と、参照生体データ510のブロック11、12、14及び15とがそれぞれ類似領域であると判定したとする。また、類似領域抽出部128は、参照生体データ520と参照生体データ530とを比較した結果、参照生体データ520のブロック21、22及び24と、参照生体データ530のブロック31、32及び34とがそれぞれ類似領域であると判定したとする。この場合、類似領域抽出部128は、参照生体データ510及び参照生体データ530との類似領域の論理和をとったブロック21、22、24及び25を負の重み付けを行う領域と決定する。
【0025】
最後に、類似領域抽出部128が参照生体データ530において類似領域を決定する処理について説明する。類似領域抽出部128は、参照生体データ530と参照生体データ510とを比較した結果、参照生体データ530のブロック31、32、33及び34と、参照生体データ510のブロック11、12、13及び14とがそれぞれ類似領域であると判定したとする。また、類似領域抽出部128は、参照生体データ530と参照生体データ520とを比較した結果、参照生体データ530のブロック31、32及び34と、参照生体データ520のブロック21、22及び24とがそれぞれ類似領域であると判定したとする。この場合、類似領域抽出部128は、参照生体データ510及び参照生体データ520との類似領域の論理和をとったブロック31、32、33及び34を負の重み付けを行う領域と決定する。
【0026】
類似領域抽出部128は、参照生体データ510、参照生体データ520及び参照生体データ530の類似領域に関する類似領域データを生成し、外部記憶装置114に保存する。なお、第二の閾値は、第一の閾値を分割するブロック数で割った数である。
【0027】
図6に、参照生体データ510に対応する類似領域データ610を示す。図3に示した参照生体データ510において、類似領域抽出部128によって類似領域と決定された領域に対応するブロック61、62、63、64及び65に「−1」が対応付けられている。その他のブロックには「0」が対応付けられている。「−1」が対応付けられているブロックに対応する参照生体データの領域に対して、識別制御部124は負の重み付けを与える。同様に、参照生体データ520及び参照生体データ530に関する類似領域データも類似領域抽出部128によって生成される。
【0028】
本人判定部126は、識別制御部124における一致数の比較結果に基づき、本人判定を行う。具体的には、本人判定部126は、識別制御部124における一致数の比較結果に基づき、入力された生体データと一致する参照生体データが1つであれば、ユーザ本人であると判定する。一方、本人判定部126は、識別制御部124における一致数の比較結果に基づき、入力された生体データと一致する参照生体データが1つでなければ、ユーザ本人でないと判定する。
【0029】
更新実施判定部130は、本人と判定された参照生体データに対応する類似領域データを参照して、当該参照生体データを更新するか否かの判定を行う。具体的には、更新実施判定部130は、本人と判定された参照生体データに対応する類似領域データの各領域に付けられた重みが「0」以上であるか否かを判定する。そして、更新実施判定部130は、当該類似領域データの各領域に付けられた重みが「0」以上である場合、当該参照生体データの更新は必要がないと判定する。類似領域データの各領域に付けられた重みが「0」以上であるということは、他の参照生体データと類似する領域がなく、他人との識別性が高い参照生体データであるからである。なお、更新実施判定部130は、特定された利用者の参照生体データの各領域の類似情報を合計した値が所定値以上である場合には、当該参照生体データを更新対象と判定しても良い。
【0030】
データ更新部132は、本人と判定された参照生体データに対応する類似領域データを参照して、入力された生体データの情報を付加することにより、参照生体データの更新を行う。具体的には、データ更新部132は、当該類似領域データを参照して、参照生体データの非類似領域を更新対象領域として抽出する。データ更新部132は、入力された生体データから当該更新対象領域に対応する領域を用いて、更新対象の参照生体データを置き換えて更新する。そして、データ更新部132は、参照生体データの更新を行った領域に対して正の重み付けを行う。これによれば、ユーザの最新の生体データを用いて、参照生体データを更新することができ、ユーザの生体情報の経時変化に対応した参照生体データを生成することができる。
【0031】
図7に、参照生体データ510に対応する類似領域データ710を示す。図3に示した参照生体データ510において、類似領域と決定された領域に対応するブロック71、72、73、74及び75に「−1」が対応付けられている。また、図3に示した参照生体データ510において、データ更新部132が更新した領域に対応するブロックに「+1」が対応付けられている。
【0032】
以下に図8を用いて、本実施形態における生体認証装置100の処理について説明する。
【0033】
ステップS101において、ユーザは、入力装置112を用いて生体情報の入力を行う。入力装置112は、ユーザの生体情報を画像として取得する。処理はステップS102へ移行する。
【0034】
ステップS102において、特徴抽出部122は、ユーザによって入力装置112から入力された生体情報の画像から特徴情報を抽出し、認証の際に使用するユーザの生体データを生成する。処理はステップS103へ移行する。
【0035】
ステップS103において、識別制御部124は、特徴抽出部122が生成したユーザの生体データと、外部記憶装置114に予め記憶された複数のユーザの参照生体データとを比較し、一致数が第一の閾値以上か否かを判定する。処理はステップS104へ移行する。
【0036】
ステップS104において、本人判定部126は、ユーザの生体データとの一致数が第一の閾値以上の参照生体データが少なくとも1つ存在するか否かを判定する。ユーザの生体データとの一致数が第一の閾値以上の参照生体データが少なくとも1つ存在する場合、処理はステップS106へ移行する。一方、ユーザの生体データとの一致数が第一の閾値以上の参照生体データが存在しない場合、処理はステップS105へ移行する。
【0037】
ステップS105において、本人判定部126は、表示部106に認証失敗の旨を表示し、ユーザに認証失敗したことを通知する。処理は終了する。
【0038】
続いて、ステップS104において、本人判定部126が、ユーザの生体データとの一致数が第一の閾値以上の参照生体データが少なくとも1つ存在すると判定した場合について説明する。
【0039】
ステップS106において、本人判定部126は、ユーザの生体データとの一致数が第一の閾値以上の参照生体データが1つ存在するか否かを判定する。ユーザの生体データとの一致数が第一の閾値以上の参照生体データが1つ存在する場合、処理はステップS112へ移行する。一方、ユーザの生体データとの一致数が第一の閾値以上の参照生体データが2つ以上存在する場合、処理はステップS107へ移行する。
【0040】
ステップS107において、類似領域抽出部128は、識別制御部124が検出した複数の本人候補の参照生体データ間で類似する領域を第二の閾値に基づき抽出する。
【0041】
ここで、図9を用いてステップS107における処理を詳細に説明する。
【0042】
ステップS1071において、類似領域抽出部128は、まず、比較を行う参照生体データを所定数の領域に分割する。処理はステップS1072へ移行する。
【0043】
ステップS1072において、類似領域抽出部128は、ある領域での特徴点を比較する。なお、特徴点の比較を行う領域は、例えば、左上の領域から始めれば良い。処理はステップS1073へ移行する。
【0044】
ステップS1073において、類似領域抽出部128は、ある領域での特徴点の一致数が第二の閾値以上であるか否かを判定する。ある領域での特徴点の一致数が第二の閾値以上である場合、処理はステップS1074へ移行する。一方、ある領域での特徴点の一致数が第二の閾値未満である場合、処理はステップS1075へ移行する。
【0045】
ステップS1074において、類似領域抽出部128は、特徴点の一致数が第二の閾値以上である領域を類似領域と判定する。処理はステップS1075へ移行する。
【0046】
ステップS1075において、類似領域抽出部128は、参照生体データの全ての領域において、比較が完了したか否かを判定する。参照生体データの全ての領域において、比較が完了した場合、処理はステップS1076へ移行する。一方、参照生体データの全ての領域において、比較が完了していない場合、処理はステップS1072に戻る。
【0047】
ステップS1076において、類似領域抽出部128は、ステップS104において抽出された全ての参照生体データ間での特徴点の比較が完了したか否かを判定する。全ての参照生体データ間での特徴点の比較が完了した場合、処理はステップS1077へ移行する。一方、全ての参照生体データ間での特徴点の比較が完了していない場合、処理はステップS1071に戻る。
【0048】
ステップS1076において、類似領域抽出部128は、ステップS1074において抽出された類似領域の論理和をとり局所的類似情報関連データを生成する。処理はステップS108へ移行する。
【0049】
ステップS108において、類似領域抽出部128は、各参照生体データに対応付けて、類似領域データを生成し、外部記憶装置114に保存する。処理はステップS109へ移行する。
【0050】
ステップS109において、識別制御部124は、ステップS104において判定されたユーザの生体データとの一致数が第一の閾値以上の各参照生体データに対して、ステップS108において生成した類似領域データを参照して、重み付けを行う。
【0051】
ここで、本実施形態における重み付け処理について説明する。図10に示すように、生体データと参照生体データ510、参照生体データ520及び参照生体データ530との特徴点の一致数がそれぞれ「20」、「17」、「12」であるとする。図3において、生体データと参照生体データ510との特徴点の一致数を黒丸で示している。同様に、図4において、生体データと参照生体データ520との特徴点の一致数を黒丸で、図5においても、生体データと参照生体データ530との特徴点の一致数を黒丸で示している。この場合、一致数の閾値を「10」と設定すると、参照生体データ510、参照生体データ520及び参照生体データ530の3つが、閾値「10」を超えるため、本人候補であると判定されてしまう。
【0052】
次に、生体データと参照生体データ510、参照生体データ520及び参照生体データ530との特徴点の一致数の内訳について見る。参照生体データ510は、参照生体データ間における類似領域での特徴点の一致数が「10」、参照生体データ間における非類似領域での特徴点の一致数が「10」である。参照生体データ520は、参照生体データ間における類似領域での特徴点の一致数が「15」、参照生体データ間における非類似領域での特徴点の一致数が「2」である。参照生体データ530は、参照生体データ間における類似領域での特徴点の一致数が「9」、参照生体データ間における非類似領域での特徴点の一致数が「3」である。
【0053】
本実施形態においては、参照生体データ間における類似領域での特徴点の一致数に対して、例えば、「0.4」をかけることで、重み付けを行う。これによれば、本人判定部126は、他の参照生体データと類似する類似領域を軽視し、非類似領域を重視した認証を行うことができ、本人を認証できる確率を高めることができる。なお、重み付けに用いる係数は任意の値で良く、例えば、「0」であっても良い。処理はステップS110へ移行する。
【0054】
ステップS110において、識別制御部124は、特徴抽出部122が生成したユーザの生体データと、ステップS110において重み付けを行った登録データとを比較し、一致数が第一の閾値以上か否かを判定する。
【0055】
ここで、本実施形態における重み付け処理を行った後の認証処理について説明する。図11に、ステップS109において説明した重みづけ処理を行った後の生体データと参照生体データ510、参照生体データ520及び参照生体データ530との特徴点の一致数の内訳について示す。参照生体データ510は、参照生体データ間における類似領域での特徴点の一致数が「10」に「0.4」をかけた「4」となる。参照生体データ520は、参照生体データ間における類似領域での特徴点の一致数が「15」に「0.4」をかけた「6」となる。参照生体データ530は、参照生体データ間における類似領域での特徴点の一致数が「9」に「0.4」をかけた「3.6」となる。
【0056】
重み付け処理を行った後の生体データとの特徴点の一致数は、参照生体データ510が「14」、参照生体データ520が「8」、そして参照生体データ530が「6.6」となる。重みづけ処理を行った後は、参照生体データAのみが閾値「10」を超えるため、本人を一意に特定することができる。処理はステップS111へ移行する。なお、本実施形態においては、本人の生体データは本人の参照生体データと全体的に類似しており、他人の参照生体データとは局所的に類似していることに着目して、本人を一意に特定している。
【0057】
ステップS111において、本人判定部126は、ユーザの生体データとの一致数が第一の閾値以上の参照生体データが1つ存在するか否かを判定する。ユーザの生体データとの一致数が第一の閾値以上の参照生体データが1つ存在する場合、処理はステップS112へ移行する。一方、ユーザの生体データとの一致数が第一の閾値以上の参照生体データが存在しない場合、処理はステップS105へ移行する。ステップS105における処理は上述した処理と同様なので、その説明を省略する。なお、ステップS111において、第一の閾値を使用したが、第一の閾値と異なる値の第三の閾値を使用しても良い。
【0058】
ステップS112において、本人判定部126は、表示部106に認証成功の旨を表示し、ユーザに認証成功したことを通知する。処理はステップS113へ移行する。
【0059】
ステップS113において、更新実施判定部130は、本人と判定された参照生体データに対応する類似領域データに基づいて、参照生体データを更新するか否かの判定を行う。参照生体データを更新する場合、処理はステップS114へ移行する。一方、参照生体データを更新しない場合、処理は終了する。
【0060】
ステップS114において、データ更新部132は、本人と判定された参照生体データに対応する類似領域データを参照して、参照生体データに対して入力された生体データの情報を付加して更新を行う。処理はステップS115へ移行する。
【0061】
ステップS115において、データ更新部132は、ステップS114において更新した参照生体データを外部記憶装置114に保存する。処理は終了する。
【0062】
以上、実施の形態1によれば、生体認証装置は、他の参照生体データと類似する領域に重み付けを行って認証を行う。そのため、ユーザの生体データが他のユーザの参照生体データと類似してしまっても、非類似領域を重視して生体認証を行うことができる。ゆえに、実施の形態1によれば、1:N認証方式において、認証成功率を高く維持することができる生体認証装置を提供することができる。
【0063】
なお、ステップS108において説明した処理は、例えば、ユーザが参照生体データを生体認証装置100に登録する際に行っても良い。
【0064】
<実施の形態2>
図12に本実施形態における生体認証システム300を示す。生体認証システム300に関する実施形態では、生体認証装置100が生成したユーザの生体データを用いて、サーバ認証装置200において生体認証を行うことについて説明する。生体認証システム300は、クライアントである複数の生体認証装置100、サーバ認証装置200及びネットワーク120を有する。
【0065】
図13に本実施形態におけるサーバ認証装置200を示す。サーバ認証装置200は、CPU202、ROM208、RAM210、外部記憶装置214及びネットワークインタフェース装置218を有する。バス216は、CPU202、ROM208、RAM210、外部記憶装置214及びネットワークインタフェース装置218を相互に接続する。
【0066】
CPU202は、各種演算処理を実行する。ROM208は、OS等の各種プログラムを格納する。RAM210は、プログラムの実行やデータの記憶を行う。外部記憶装置214は、生体認証プログラムやユーザの基準となる参照生体データ等を格納する。ネットワークインタフェース装置218は、ネットワーク120を介して複数の生体認証装置100との間でデータの送受信を行う。
【0067】
以下に図14を用いて、本実施形態におけるサーバ認証装置200の処理について説明する。
【0068】
ステップS201において、CPU202は、ネットワークインタフェース装置218を介して、生体認証装置100において生成されたユーザの生体データを受信する。処理はステップS202へ移行する。
【0069】
ステップS202において、CPU202は、受信したユーザの生体データと、外部記憶装置214に予め記憶された複数のユーザの参照生体データとを比較し、一致数が第一の閾値以上か否かを判定する。処理はステップS203へ移行する。
【0070】
ステップS203において、CPU202は、ユーザの生体データとの一致数が第一の閾値以上の参照生体データが少なくとも1つあるか否かを判定する。ユーザの生体データとの一致数が第一の閾値以上の参照生体データが少なくとも1つ存在する場合、処理はステップS205へ移行する。一方、ユーザの生体データとの一致数が第一の閾値以上の参照生体データが存在しない場合、処理はステップS204へ移行する。
【0071】
ステップS204において、CPU202は、認証失敗の旨をネットワークインタフェース装置218を介して、生体認証装置100に送信し、ユーザに認証失敗したことを通知する。処理は終了する。
【0072】
続いて、ステップS205において、CPU202が、ユーザの生体データとの一致数が第一の閾値以上の参照生体データが少なくとも1つ存在すると判定した場合について説明する。
【0073】
ステップS205において、CPU202は、ユーザの生体データとの一致数が第一の閾値以上の参照生体データが1つ存在するか否かを判定する。ユーザの生体データとの一致数が第一の閾値以上の参照生体データが1つ存在する場合、処理はステップS211へ移行する。一方、ユーザの生体データとの一致数が第一の閾値以上の参照生体データが2つ以上存在する場合、処理はステップS206へ移行する。
【0074】
ステップS206において、CPU202は、複数の本人候補の参照生体データ間で類似する領域を第二の閾値に基づき抽出する。処理はステップS207へ移行する。
【0075】
ステップS207において、CPU202は、各参照生体データに対応付けて、他の参照生体データと類似する領域を示す類似領域データを生成し、外部記憶装置214に保存する。処理はステップS208へ移行する。
【0076】
ステップS208において、識別制御部124は、ステップS203において判定されたユーザの生体データとの一致数が第一の閾値以上の各参照生体データに対して、ステップS207において生成した類似領域データを参照して、重み付けを行う。
【0077】
ステップS209において、識別制御部124は、特徴抽出部122が生成したユーザの生体データと、ステップS208において重み付けを行った登録データとを比較し、一致数が第一の閾値以上か否かを判定する。
【0078】
ステップS210において、本人判定部126は、ユーザの生体データとの一致数が第一の閾値以上の参照生体データが1つ存在するか否かを判定する。ユーザの生体データとの一致数が第一の閾値以上の参照生体データが1つ存在する場合、処理はステップS211へ移行する。一方、ユーザの生体データとの一致数が第一の閾値以上の参照生体データが存在しない場合、処理はステップS204へ移行する。ステップS204における処理は上述した処理と同様なので、その説明を省略する。
【0079】
ステップS211において、CPU202は、ネットワークインタフェース装置214を介して、生体認証装置100に認証成功の旨を送信し、ユーザに認証成功したことを通知する。処理はステップS212へ移行する。
【0080】
ステップS212において、CPU202は、本人と判定された参照生体データに対応する類似領域データを参照して、参照生体データを更新するか否かの判定を行う。参照生体データを更新する場合、処理はステップS213へ移行する。一方、参照生体データを更新しない場合、処理は終了する。
【0081】
ステップS213において、CPU202は、本人と判定された参照生体データに対応する類似領域データに基づいて、参照生体データに対して入力された生体データの情報を付加して更新を行う。処理はステップS214へ移行する。
【0082】
ステップS214において、CPU202は、ステップS213において更新した参照生体データを外部記憶装置214に保存する。処理は終了する。
【0083】
以上、実施の形態2によれば、生体認証システムのサーバ認証装置は、他の参照生体データと類似する領域に重み付けを行って認証を行う。そのため、ユーザの生体データが他のユーザの参照生体データと類似してしまっても、非類似領域を重視して生体認証を行うことができる。ゆえに、実施の形態2によれば、1:N認証方式において、認証成功率を高く維持することができる生体認証システムを提供することができる。
【0084】
以上、本発明の例示的な実施の形態の生体認証装置及び生体認証システムについて説明したが、本発明は、具体的に開示された実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲から逸脱することなく、種々の変形や変更が可能である。
【符号の説明】
【0085】
11、12、13、14、15、21、22、24、25、31、32、33、34、61、62、63、64、65、71、72、73、74、75 ブロック
100 生体認証装置
102、202 CPU
104 操作部
106 表示部
108、208 ROM
110、210 RAM
112 入力装置
114、214 外部記憶装置
116、216 バス
118、218 ネットワークインタフェース装置
120 ネットワーク
122 特徴抽出部
124 識別制御部
126 本人判定部
128 類似領域抽出部
130 更新実施判定部
132 データ更新部
200 サーバ認証装置
300 生体認証システム
510、520、530 参照生体データ
610、710 類似領域データ


【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の参照生体データを記憶する記憶部と、
取得した生体データとの類似判断の係数が、第一の閾値以上である参照生体データを抽出する識別制御部と、
前記識別制御部により抽出された参照生体データが複数であった場合、抽出された前記複数の参照生体データ間で所定領域単位の類似判断の係数を求め、前記類似判断の係数が第二の閾値以上の類似領域を抽出する類似領域抽出部と、
前記抽出された類似領域との類似判断の係数よりも非類似領域との類似判断の係数に重みを付けて、前記生体データと、抽出された前記複数の参照生体データとの類似度の判定を行う判定部と、
を有することを特徴とする生体認証装置。
【請求項2】
前記判定部は、抽出された前記複数の参照生体データに対し、前記非類似領域における前記生体データの特徴点と、前記抽出された類似領域における前記生体データの特徴点に、1未満の値をかけた値とを合計した値を算出し、該算出した値を元に、判定を行うことを特徴とする請求項1記載の生体認証装置。
【請求項3】
前記参照生体データを更新するデータ更新部をさらに有し、前記データ更新部は、前記参照生体データに前記類似領域が存在する場合、前記参照生体データを更新することを特徴とする請求項2記載の生体認証装置。
【請求項4】
前記データ更新部は、前記算出した値が前記第一の閾値を超えた場合、前記第一の閾値を超えた参照生体データの前記非類似領域を、前記生体データの前記非類似領域に対応する領域で置き換えて更新することを特徴とする請求項3記載の生体認証装置。
【請求項5】
生体認証装置を制御する制御プログラムであって、
前記生体認証装置に、
取得した生体データとの類似判断の係数が、第一の閾値以上である参照生体データを抽出し、
抽出された参照生体データが複数であった場合、抽出された前記複数の参照生体データ間で所定領域単位の類似判断の係数を求め、前記類似度が第二の閾値以上の類似領域を抽出し、
前記抽出された類似領域との類似判断の係数よりも非類似領域との類似判断の係数に重みを付けて、前記生体データと、抽出された前記複数の参照生体データとの類似度の判定を行う、
処理を実行させることを特徴とする生体認証装置を制御する制御プログラム。
【請求項6】
生体認証装置を制御する制御方法であって、
前記生体認証装置が、
取得した生体データとの類似判断の係数が、第一の閾値以上である参照生体データを抽出し、
抽出された参照生体データが複数であった場合、抽出された前記複数の参照生体データ間で所定領域単位の類似判断の係数を求め、前記類似判断の係数が第二の閾値以上の類似領域を抽出し、
前記抽出された類似領域との類似判断の係数よりも非類似領域との類似判断の係数に重みを付けて、前記生体データと、抽出された前記複数の参照生体データとの類似度の判定を行う、
ことを特徴とする生体認証装置を制御する制御方法。
【請求項7】
クライアント装置とサーバ認証装置とを有する生体認証システムの制御方法において、
前記クライアント装置は、
生体データを取得し、
前記取得した生体データを前記サーバ認証装置に送信し、
前記サーバ認証装置は、
前記クライアント装置から送信された前記生体データを受信し、
前記受信した生体データとの類似判断の係数が、第一の閾値以上である参照生体データを抽出し、
前記識別制御部により抽出された参照生体データが複数であった場合、抽出された前記複数の参照生体データ間で所定領域単位の類似判断の係数を求め、前記類似判断の係数が第二の閾値以上の類似領域を抽出し、
前記抽出された類似領域との類似判断の係数よりも非類似領域との類似判断の係数に重みを付けて、前記生体データと、抽出された前記複数の参照生体データとの類似度の判定を行う、
ことを特徴とする生体認証システムの制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2012−152355(P2012−152355A)
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−13436(P2011−13436)
【出願日】平成23年1月25日(2011.1.25)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】