説明

生物再吸収性不貫通性層で被覆された保持織物

本発明は、織物について少なくとも第1および第2の対向する面(2a、2b)を規定するヤーンのアレンジメント(2)を含むプロステーシス織物(5)に関し、織物は、少なくとも第1の面に、第1の面に関して外側に突出する1つまたは1つ以上の鉤状突起(3)を具備し、織物は、第2の面において、生物再吸収性物質で作られた微小多孔層で少なくとも部分的に被覆されており、鉤状突起は、水溶性物質で作られた被覆剤で被覆されている。本発明はまた、そのような織物を得るための方法およびそのような織物から得られるプロステーシスに関する。

【発明の詳細な説明】
【発明の概要】
【0001】
本発明は、鉤状突起(barb)を備えるプロステーシス織物に関し、織物は、少なくとも部分的に、生物再吸収性微小多孔層で被覆されている。織物は、特に、腹腔観察(coelioscopy)により患者に導入することを意図する壁補強用のプロステーシスを製造するために使用できる。
【0002】
壁補強用プロステーシス、例えば、腹部壁を補強するためのプロステーシスは、外科的領域において広範に使用される。これらのプロステーシスは、組織欠損を一時的または恒久的に充填することによりヘルニアを治療することを目的とする。これらのプロステーシスは、通常、生体適合性プロステーシス織物から作られ、それが適合するべき解剖学的構造に依存して幾つかの形状、長方形、円形、長円形を有し得る。これらのプロステーシスの幾つかは、全体に生物再吸収性ヤーンから作られ、細胞定着が行われて、組織再建が引き継ぐまでの間、それらの補強の役割の実行された後に消失することが意図される。他のプロステーシスは、非生物再吸収性ヤーンを具備し、患者の身体において恒久的に残存ことが意図される。
【0003】
これらのプロステーシスの幾つかは、ヤーンの編み、織りまたはその他の不織アレンジメントから作られ、プロステーシスの1つの面から外向きに突出する鉤のある突起を含む;これらの鉤状突起は、あるプロステーシスまたはそれに属する、または属しない、もう1つのプロステーシス織物に対する、または直接に生物組織、例えば、腹部壁に対する固定能力のあるホックを構成する。あるプロステーシスはまた、それらの2つの面のそれぞれに鉤状突起を含んでもよい。
【0004】
更に、何れかの外科手術の後に外傷性傷害を最小化する目的のために、患者は、次第に頻繁に、実行される手術の種類がそれを許すときに、腹腔観察術による手術を受ける。腹腔観察術は、非常に小さな切開のみを必要とし、そこを通して外套針が通過され、その中をプロステーシスは移植部位に対して運ばれる。従って、開腹手術が回避され、患者は迅速に退院できる。腹腔観察術は、特に、腹部おいて行われる外科手術、例えば、ヘルニアの治療などにおいて評判がよい。
【0005】
しかしながら、腹腔観察術において使用される外套針は、通常、比較的小さな較正された直径を有し、可能なだけ大きく作られる切開のサイズを縮小するために、それは多様、例えば、5〜15mmであってよい。従って、プロステーシスは、縮小された直径のチャネル内を運ばれなくてはならず、そしてそれは、移植部位に対して展開されなくてはならない。
【0006】
この工程を実行するために、外套針のチャネル内にそれを滑り込ませる、または力により直接に導入するために、プロステーシスは、それ自体の周囲に巻回される。しかしながら、プロステーシスを形成するプロステーシス織物が1つの面に鉤状突起を含む場合、これらの鉤状突起が織物の本体に巻き込まれ、それに続く移植部位でのプロステーシスの展開を混乱する可能性がある。更に、保護されていない面のために、鉤状突起が、プロステーシスの展開の間に、または移植部位に対する外套針を通るその輸送の間に、損傷される可能性がある。
【0007】
このように、プロステーシス、例えば、腹部壁の補強のためのプロステーシスを製造するために使用でき、鉤状突起を損傷することなく外套針のようなチャネル内を運ばれることが可能であり、それが、一旦患者の身体内の移植部位に到達したならば、好ましくは簡単な様式で、完全に展開することが可能である、鉤のある突起を含むプロステーシス織物の必要性が依然としてある。
【0008】
本発明の目的は、そのような必要性を満たすことにある。
【0009】
本発明の第1の態様は、織物について少なくとも第1および第2の対向する面を規定されるヤーンのアレンジメントを含むプロステーシス織物に関し、織物は、少なくとも第1の面において、第1の面に関して外側に突出する1または1以上の鉤状突起を具備し、織物は、少なくとも部分的に第2の面において生物再吸収性物質で作られた層により被覆されており、層の外面は、鉤状突起により貫通されず、加えて、鉤状突起が水不溶性物質で作られたコーティング剤で被覆されていることを特徴とする。
【0010】
本発明のもう1つの態様は、織物について少なくとも第1および第2の対向する面を規定するヤーンのアレンジメントを含むプロステーシスに関し、織物は、少なくとも第1の面において、第1の面に関して外側に突出する1または1以上の鉤状突起を具備し、織物は、第2の面が生物再吸収性物質で作られた層により少なくとも部分的に被覆されており、層の外面は鉤状突起により貫通されず、不貫通性層は、少なくとも生物活性剤を含む。
【0011】
本出願において、層の外面が鉤状突起に対して不貫通性であるという事実により、層の外面は、非多孔性であるか、または鉤状突起が生物再吸収性物質の層内に貫通することが許されないように、鉤状突起のサイズよりも小さいサイズの微小多孔質が提供されることが理解される。言い換えれば、鉤状突起が、生物再吸収性物質の層の外面と接触するように提供されるとき、例えば、織物がそれ自体巻回されている場合、鉤状突起は、生物再吸収性物質の層の外面により阻止され、この層には進入しない。結果として、生物再吸収性物質の層が生物再吸収されていない間、鉤状突起は、織物がそれ自身巻回されていても、織物に絡まらない。
【0012】
本発明に従う不貫通性層は、微小多孔性層であってよい。
【0013】
本発明のもう1つの態様は、織物について少なくとも第1および第2の対向する面で規定されるヤーンのアレンジメントを含むプロステーシス織物に関し、織物は、少なくとも第1の面において、第1の面に関して外側に突出する1または1以上の鉤状突起を具備し、織物は、第2の面において、生物再吸収性物質で作られた微小多孔層で少なくとも部分的に被覆され、加えて、鉤状突起は水可溶性物質で作られる被覆剤で被覆されていることを特徴とする。
【0014】
本出願において、語句「微小多孔層」は、正確に300μmよりも大きなサイズを有する孔を含まない外面を有する層を意味すると理解され、言い換えれば、少なくとも1つの直径は、正確に300μmよりも大きな孔を含まない。従って、本発明に従う織物の微小多孔層の外面は、全く孔を含まなくてもよく、または平均サイズがほぼ1ナノメートル程度のものである孔を含んでもよく;或いは、本発明に従う織物の微小多孔層の外面は、その最大サイズが300μm未満または300μmである、例えば、150μm未満または150μmである孔を含む。
【0015】
本発明に従う織物の微小多孔層の外面が孔を含む場合において、これらの孔の平均サイズは、好ましくは10〜150μm、例えば、20〜150μmで変化してよく:そのような場合において、本発明に従う織物の微小多孔層はまた、その厚さの中でそのような孔が含まれてもよく;そのような微小多孔層が細胞定着を促進してもよい。
【0016】
本発明に従う織物の微小多孔層の外面が孔を含まない場合において、それは好ましくは実質的に平滑な外面を有し:そのような場合において、本発明に従う織物の微小多孔層が、高分子に対して、および細胞に対して一時的なバリアを形成してもよい。例えば、非孔層はフィルムを形成してもよい。
【0017】
本出願において、用語「生体適合性」は、この性質を有する物質が、動物の身体またはヒトの身体に移植できることを意味すると理解される。
【0018】
本出願において、用語「生物再吸収性」または「生物分解性」は、この性質を有する物質が、ある時間の後に、組織により吸収および/または分解される、または移植部位から洗い流される、およびインビボにおいて消失することを意味すると理解され、それは、例えば、物質の化学的性質に依存して、数時間から数ヶ月まで多様であってよい。
【0019】
特に、微小多孔層において、不貫通性の存在のために、本発明に従うプロステーシス織物は、織物の主体、即ち、織物の2つの対向する面の間の織物の部分が、巻回されるときに、鉤状突起を含まないそれ自身の周囲に巻き込まれてもよい。特に、外套針に挿入されるために、織物がそれ自身の周囲に巻回されるときに、不貫通性は、特に微小多孔層において、プロステーシス織物の鉤状突起が織物に対して絡まることを防ぐ。従って、本発明に従うプロステーシス織物がそれ自身の周囲に巻回されるときに、鉤状突起が、不貫通性層、特に微小多孔層、特に後者の外面と接触し、損害を受けない。更に、鉤状突起が織物に巻回き込まれないという事実のために、それが患者の身体における移植部位に達した時点で、本発明に従うプロステーシス織物は、完全に展開することが可能である。
【0020】
本出願において、不貫通性層、特に微小多孔層はまた、組織の周囲の組織増殖を遅延または阻害してもよく、従って、手術後の組織接着に対してバリアとして作用してもよく、望ましくない瘢痕組織の形成を防止してもよい。
【0021】
本発明の1つの実施形態において、不貫通性層、特に微小多孔層は、連続して、完全に第2の面を被覆する。
【0022】
本発明の1つの実施形態において、生物再吸収性物質は、少なくとも1つのコラーゲン化合物を含む。
【0023】
語句「コラーゲン化合物」は、本出願の趣旨において、加熱または他の何れか方法により、少なくとも部分的にそのヘテロ構造が失われているコラーゲンまたはセラチンを意味すると理解される。
【0024】
用語「ゼラチン」はここで、加熱により変性されたコラーゲンから作られた市販のゲラチン、およびそこにおいて鎖が少なくとも部分的に加水分解されたもの、それが約100kDa未満のモル質量を有するものを含む。
【0025】
本発明の1つの実施形態において、コラーゲン化合物は、酸化コラーゲンを含む。或いは、または組み合わせにおいて、コラーゲン化合物は、ゼラチンを含む。
【0026】
本発明の1つの実施形態において、生物再吸収性物質は、ポリアルキレングリコール、例えば、ポリエチレングリコールまたはポリプロピレングリコール、ポリサッカリド、例えば、デンプン、デキストランおよび/またはセルロースの誘導体、酸化ポリサッカリド、ムコポリサッカリド、およびその混合物から選択される親水性高分子添加物を含む。例えば、親水性高分子添加物は、4000ダルトンのモル質量を有するポリエチレングリコール(PEG4000)である。
【0027】
本発明の実施形態において、生物再吸収性物質は、少なくとも1つのポリビニルアルコールを含む。
【0028】
本発明の実施形態において、生物再吸収性物質は、少なくとも1つのグリセロールを含む。
【0029】
本発明の実施形態において、不貫通性層は、少なくとも1つの生物活性剤を含む。不貫通性層は、1または1以上の生物活性剤を放出するための媒体として作用してもよい。
【0030】
本発明の実施形態において、鉤状突起は、更に、水溶性生体適合性物質で作られる被覆剤で被覆される。
【0031】
語句「水溶性物質」は、本出願の趣旨において、水性組成物、例えば、水または生体液などに、例えば、周囲温度、約20〜25℃の温度、またはヒト体温よりも高い何れかの温度および特にヒトの体温の温度、言い換えれば、約37℃の温度で、溶解することが可能な物質を意味すると理解される。
【0032】
好ましくは、本発明に従う織物の水溶性物質は、それが水性組成物と接触していないときに、35℃未満または35℃に等しい温度で凝固または固体形態にある。
【0033】
一般に、鉤状突起を覆う物質は、その水溶性の性質のために、25℃未満または25℃に等しい温度で平滑な表面を有する;従って、水溶性物質で被覆された鉤状突起が、水溶性物質で被覆されたもう1つの鉤状突起と接触するときに、それらは、互いを超えて滑り合い、何れの妨害も示さない。
【0034】
従って、本発明の実施形態において、プロステーシス織物は、その第2の面において、不貫通性層、例えば、生物再吸収性物質で作られた微小多孔層で被覆され、その第1の面の鉤状突起は、水溶性物質で被覆される。そのような織物で作られたプロステーシスは、外套針に滑り込ませるためにそれ自身の周囲に巻回されるときに、鉤状突起は、二重に保護される:それらが不貫通性層、例えば、微小多孔層の外側表面を越えて滑るのみならず、それらは互いに引っ掛からない:それらは、互いに滑り合い、それらはプロステーシスが移植部位において外套針の壁から放出されるやいなや、それらは互いから容易に分離される:次に、プロステーシスは、鉤状突起を被覆する全ての水溶性物質が完全に溶解する前に、容易に展開される。
【0035】
本発明に従う織物が、特に、ヒト体温、少なくとも約37℃で移植部位での水または生体液との接触に持ち込まれるとき、鉤状突起を被覆する物質は、徐々に溶解し、従って、鉤状突起から離脱する。鉤状突起を被覆する水溶性物質の全てが溶解するために必要な時間と、不貫通性層、例えば、生物再吸収性物質で作られた微小多孔層との存在が、プロステーシスの容易な展開を可能にする。もはや鉤状突起が被覆されなくなるとすぐに、それらは再度、もう1つのプロステーシス織物に対して、または生物組織、例えば、腹部壁などに対して固定するというそれらの役割を演じることができる。
【0036】
更に、ほぼ数秒から数分程度のこの必要な可溶化時間はまた、外科医が、必要であればプロステーシスを動かして配置することを可能にし、これは、水溶性物質が、まだ完全に溶解していないために、鉤状突起は周囲の組織に対して滑り、まだプロステーシスは容易に固定化されないが、一旦、水溶性物質で作られたコーティング剤が完全になくなるとすぐに、それらは固定化するだろう。
【0037】
本発明の実施形態において、水溶性物質は生物分解性である。
【0038】
実施形態において、水溶性物質は、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリ酢酸ビニル(PVAc)、コラーゲン、ゼラチン、ポリグルクロン酸、ヒアルロン酸、カルボキシメチルセルロース、セルロースエーテル、キトサンおよびその混合物から選択される。
【0039】
例えば、水溶性物質は、40000Da未満または40000Daと等しいモル質量、好ましくは20000Da未満または20000Daと等しいモル質量を有するポリエチレングリコールである。例えば、モル質量は、1000〜20000Daで変更されてよい。そのようなモル質量を有するポリエチレングリコールは好ましくは生物分解性である。
【0040】
実施形態において、水溶性物質は、約1000Daのモル質量を有する少なくとも1つのポリエチレングリコールを含む。そのようなポリエチレングリコールは、可溶化の改善を可能にできる。
【0041】
実施形態において、水溶性物質は、少なくとも1つの生物活性剤を含む。
【0042】
不貫通性層および/または水溶性物質は、1または1以上の生物活性剤の放出のための媒体として作用してよい。
【0043】
実施形態において、不貫通性層および水溶性物質の両方が、各々生物活性剤を含む。不貫通性層および水溶性物質は同一であっても異なってもよい。実施形態において、プロステーシス織物の移植の後、水溶性物質は、不貫通性層の全体の生物再吸収の前に生体液に溶解されるだろう。その結果、そのような実施形態は、患者の身体に1つまたは幾つかの生物活性剤を逐次的様式で放出するために有用であってよい:例えば、水溶性物質に最初に存在する第1の生物活性剤が、特異的な生物活性効果のために、生体液での水溶性物質の溶解と共に迅速に放出され、且つ不貫通性層に最初に存在する第2の生物活性剤は、後に、第2の生物活性効果のための長い時間において、および場合により第2の生物活性効果のための長い時間の間に放出されるだろう。同じ生物活性剤が水溶性物質および不貫通性層の両方に存在する場合には、次に、第1の衝撃効果が水溶性物質の溶解で得られてもよく、次に、更なる持続効果が不貫通性層の進行性の生物再吸収の間に得られてもよい。
【0044】
本発明のもう1つの態様は、織物について第1および第2の面を規定するヤーンのアレンジメントを具備するプロステーシス織物を被覆するための方法に関し、織物は、少なくとも第1の面に亘り、第1の面に関して外側に突出する1つまたは1つ以上の鉤状突起を具備し、以下の工程を含むことを特徴とする:
−a)少なくとも1つの生物再吸収性物質を含む溶液を準備すること;
−b)溶液の層を不活性支持体に適用すること;および
−c)層が少なくとも部分的にゲル化したときに、織物の第2の面が層に対して適用されること;および
−i)少なくとも1つの水溶性生体適合性物質を液体状態で含む組成物を準備すること;および
−ii)組成物の層を鉤状突起に対して適用すること;
ここにおいて、工程i)およびii)は、工程a)〜c)に対して何れかの順番で実行される。
【0045】
本発明のもう1つの態様は、織物について第1および第2の面を規定するヤーンのアレンジメントを具備するプロステーシス織物を被覆する方法に関し、織物は、少なくとも第1の面に亘り、第1の面に関して外側に突出する1または1以上の鉤状突起を具備し、以下の工程を具備することを特徴とする:
−a)少なくとも1つの生物再吸収性物質および少なくとも1つの生物活性剤を含む溶液を準備すること;
−b)溶液の層を不活性支持体に対して適用すること;および
−c)層が少なくとも部分的にゲル化したときに、織物の第2の面を層に対して適用すること。
【0046】
実施形態において、工程c)の間に、織物の第2の面の適用の前に、溶液の第2の層が、部分的にゲル化した層に対して適用される。
【0047】
もう1つの実施形態において、工程c)の間に、織物の第2の面の適用の前に、生物再吸収性物質の第2の溶液の層が、部分的にゲル化された層に対して適用され、生物再吸収性物質の第2の溶液の組成物は、a)において得られる溶液とは異なる。例えば、第2の溶液は、a)において得られる溶液と同じ生物再吸収性物質を含んでもよいが、異なる割合にある。そのような実施形態は、良好な弾性特性を有するフィルムでその第2の面を被覆されたプロステーシス織物を得ることを可能にする。
【0048】
実施形態において、工程c)において得られるプロステーシス織物は、20〜60時間の範囲の期間に亘り凍結乾燥される。そのような実施形態は、例えば、20〜120μmの範囲のサイズを有する孔を有する微小多孔層でその第2の面を被覆されたプロステーシス織物を、例えば、得ることを可能にする。
【0049】
実施形態において、以下の2つの工程i)およびii)が追加され、工程i)およびii)は、上記の工程a)およびb)に対して何れかの順番で実行される:
−i)少なくとも1つの水溶性生体適合性物質を液体状態で含む組成物を準備すること;および
−ii)組成物の層を鉤状突起に対して適用すること。
【0050】
本発明に従う方法の1つの実施形態において、工程ii)は、ロールを使用して実行される。従って、組成物は、ロールの表面に均一に塗られ、次に表面にロールが適用されて鉤状突起に塗られる。
【0051】
本発明のもう1つの態様は、ヘルニアを治療するためのプロステーシスであって、上述の通りの織物から、または上述の方法により得られた織物から製造されることを特徴とするプロステーシスに関する。
【0052】
本発明は、更に、以下の記載および添付の図面の助けによって、より詳細に記載されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】図1は、従来技術からの鉤状突起を有するプロステーシス織物の概略断面図である。
【図2】図2は、本発明に従うプロステーシス織物の概略断面図である。
【図3】図3は、日立から提供されたTM−1000typeの走査型電子顕微鏡と、500倍レンズとにより撮影された本発明に従う1つの実施形態のプロステーシス織物の微小多孔層の写真である。
【図4】図4は、本発明に従うもう1つの実施形態のプロステーシス織物の断面図である。
【0054】
本発明に従うと、語句「プロステーシス織物」は、生体適合性ヤーン、ファイバー、フィラメントおよび/またはマルチフィラメントのアレンジメントまたはアッセンブリ、例えば、編み、織り、ブレイドまたは不織アレンジメントまたはアッセンブリなどにより得られる何れかの織物を意味すると理解される。本発明に従う織物のヤーンのアレンジメントは、少なくとも2つの対向する面、第1および第2の面を規定する。本発明に従うプロステーシス織物はまた、少なくともその第1の面から突出する鉤状突起を含む。これらの鉤状突起は、前記面の平面に対して実質的に垂直に、または代わりに前記面の平面に対して傾いた1または1以上の平面に沿って突出してよい。これらの鉤状突起は、もう1つのプロステーシス織物のヤーン、ファイバー、フィラメントおよび/またはマルチフィラメントの1または1以上のアレンジメントに絡ませることにより、または生物組織、例えば、腹部壁に対して固定することにより、固定手段として機能することを意図する。
【0055】
本発明に従うプロステーシス織物の鉤状突起は、ヤーン、例えば、織物を形成するヤーンのアレンジメントから直接に得られる熱溶解性のモノフィラメントヤーンから形成されてもよい。そのような織物および鉤状突起およびまたそれらの製造プロセスは、例えば、出願WO01/81667、DE198 32 634またはその他の特許US6,596,002、US5,254,133に記載される。
【0056】
そのような場合において、例えば、鉤状突起は、ポリ乳酸で作られたモノフィラメントヤーンから形成される。
【0057】
或いは、本発明に従うプロステーシス織物の鉤状突起は、織物を形成するヤーンのアレンジメントに対して付着した何れかの生体適合性物質から作られた何れかのフックであってよく、これらのフックは、ヤーンのアレンジメントの製造(ブレイド、編み、織りなど)の間に織物に対して組み込まれてよく、後に追加されてもよい。
【0058】
好ましくは、鉤状突起は、先端が上に載る棒材の形状を有する:鉤状突起の先端の平均サイズは、一般に300μm〜500μmで変動する。
【0059】
本発明に従う織物のヤーンのアレンジメントを形成するヤーン、またはファイバー若しくはフィラメントおよび/またはマルチフィラメントは、何れかの生物分解性または非生物分解性生体適合性物質から作られてもよい。従って、本発明の織物のヤーンに適している生物分解性物質は、ポリ乳酸(PLA)、ポリグリコール酸(PGA)、酸化セルロース、ポリカプロラクトン(PCL)、ポリジオキサノン(PDO)、トリメチレンカルボネート(TMC)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリヒドロキシアルカノエート(PHAs)、ポリアミド、ポリエーテル、これらの化合物のコポリマーおよびその混合物から選択されてよい。本発明の織物のヤーンに適している非生物分解性物質は、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリアミド、アラミド、膨張ポリテトラフルオロエチレン、ポリウレタン、ポリビニリデンジフルオライド(PVDF)、ポリブチルエステル、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)、ポリオレフィン(例えば、ポリエチレンまたはポリプロピレン)、銅合金、銀合金、白金、医療グレードのスチール、例えば、医療グレードステンレススチール、およびその組み合わせから選択されてよい。
【0060】
本発明に従う織物を製造するために、プロステーシス織物は、一般的に、織物についての少なくとも2つの面を規定するヤーンのアレンジメントを含んで提供され、織物は、その面の少なくとも1つに、前記面に関して外側に突出する1つまたは1つ以上の鉤状突起を具備する:織物は、例えば、WO01/81667に記載されるように製造されてよい。
【0061】
本発明のために適切な鉤状突起を具備する織物はまた、商品名Parietex登録商標Progripまたはその他のParietene(登録商標)Progripで会社Sofradim Productionから商業的に入手される。
【0062】
本発明に従うプロステーシス織物は、その第2の面、即ち、鉤状突起を含む面に対向する面が、不貫通性層、例えば、生物再吸収性物質で作られた微小多孔層で部分的に覆われる。本発明に従う不貫通、例えば、微小多孔層は、生物再吸収性物質を含む溶液から作られる。
【0063】
何れかの天然または合成の生体適合性および生物再吸収性物質は、不貫通性層、例えば、微小多孔層を製造するために使用されてよい。天然および合成の生体適合性および再吸収性の物質の何れかの組み合わせが使用されてよいと理解される。そのような物質から不貫通性層、例えば、微小多孔層を形成するための技術は、当業者に公知であり、例えば、これらに限定するものではないが、キャスティング、モールディングおよび同様の技術などである。
【0064】
本出願において、合成物質が、本発明に従う織物の不貫通性層、例えば、微小多孔層を製造するために使用されてよい。適切な合成物質の例は、これらに限定するものではないが、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリヒドロキシ酪酸、ポリエステル、ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール、ポリジオキサノン、ポリカプロラクトン、グリセロール、ポリアミノ酸、ポリトリメチレンカルボネート、これらの化合物のコポリマー、ブロックコポリマーおよび/またはホモポリマー、およびその混合物を含む。本発明のために適切な合成物質として、ポリビニルアルコール(PVA)のコポリマーおよびBASFによる商品名Kollicoat(登録商標)のポリエチレングリコール(PEG)のコポリマーが言及されてよい。
【0065】
本出願において、天然の生物ポリマーが、本発明に従う織物の不貫通性層、例えば、微小多孔層を形成するために使用されてもよい。適切な物質は、これらに限定するものではないが、コラーゲン、ゼラチン、フィブリン、フィブリノーゲン、エラスチン、ケラチン、アルブミン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロースおよびその混合物を含む。更に、天然の生物ポリマーが、本発明に従う織物の不貫通性層、例えば、微小多孔層を形成するために、上記の合成物質の1つまたは1つ以上と組み合わされてもよい。
【0066】
本発明の1つの実施形態に従うと、生物再吸収性物質は、コラーゲン化合物、親水性高分子化合物、ポリビニルアルコール、グリセロールおよびその混合物から選択される。
【0067】
本発明に従う織物の1つの実施形態に従うと、不貫通性層、例えば、微小多孔層の生物再吸収性物質は、少なくとも1つのコラーゲン化合物を含む。
【0068】
本発明のそのような実施形態において、コラーゲン化合物の水溶液は、本発明の不貫通性層、例えば、微小多孔層を形成するために使用される。語句「コラーゲン化合物」は、本出願の趣旨において、加熱により、または他の方法により、そのらせん構造が少なくとも一部分欠失したコラーゲンを意味すると理解される。用語「ゼラチン」はここで、加熱により変性されたコラーゲンから作られた市販のゼラチンを含み、ここで、鎖は、少なくとも部分的に加水分解されており、それは約100kDa未満の分子量を有する。使用されるコラーゲン化合物は、加水分解されたコラーゲンから形成されてよく、それはα鎖から構成され、約100kDa近くの分子量を有する。本発明の趣旨において、語句「α鎖」は、完全なままのα鎖または少数のアミノ酸の減少により作られたフラグメントを意味すると理解される。用語「未加水分解」は、コラーゲン鎖の10%未満が、約100kDa未満の分子量を有することを意味すると理解される。加熱がコラーゲンのらせん構造を変性するために使用される場合、加熱は、穏やかに、ゼラチンの加水分解性の切断による分解を避けるために準備された条件下で行われなくてはならず、それによりゼラチンが形成される。
【0069】
本出願の趣旨において、使用が意図されるコラーゲンは、ヒトまたは動物由来のもの、および/または2つの混合物、例えば、I型ブタまたはウシコラーゲン、I型またはIII型ヒトコーラゲン、および/または後者の混合物であってよい。天然のコラーゲンは、ペプシン消化によるテロペプチドの除外のために、酸性溶液において、または変換の後に使用されてよい。
【0070】
本発明の1つの実施形態において、コラーゲン化合物は、酸化コラーゲンを含む。そのような酸化コラーゲンを得るために、コラーゲンは、これらに限定するものではないが、US特許N4,931,546においてTardyらにより記載されるような過ヨウ素酸またはその塩の1つの使用を含む当業者に公知の何れかの技術を使用して酸化的な切断により修飾されてよく、その内容の全体が引用によりここに組み込まれる。この文書において記載される技術は、約5×10−3M〜約10−1Mの濃度で、約10℃〜25℃の範囲の温度で、約10分間〜約72時間に亘る、過ヨウ素酸またはその塩の1つを有する酸性溶液中でのコラーゲンの混合を含む。この方法は、ヒドロキシリジンおよびコラーゲンの糖の酸化を可能にし、従って、反応部位、アルデヒドを作り出し、従って、変換されたコラーゲンの架橋結合を伴わない。従って、記載されるコラーゲンの酸化は、適切な条件下でのコラーゲン物質における制御された穏やかな架橋結合を得ることを可能にする。本発明の他の実施形態において、酸化的な切断は、制御された穏やかな架橋結合を得るための他の手段により得られてもよく、例えば、これらに限定するものではないが、βまたはγ線照射により得られてもよい。本発明の他の実施形態において、酸化的な切断は、例えば、これらに限定するものではないが、適切な、低いおよび非毒性の用量で、化学反応体に対して制御された穏やかな架橋結合を許す他の反応体により提供されてもよい。
【0071】
本発明の他の実施形態において、記載されたような不貫通性層、例えば、微小多孔層の分解時間を調整するために、コラーゲンの架橋結合の程度は、当業者に公知の技術により増大されてよい。語句「穏やかな架橋結合」は、本出願の趣旨において、移植後の約1ヶ月の終点で、不貫通性層、例えば、微小多孔層が(残りの重量により測定されたときに)少なくとも90%分解されることを意味すると理解される。語句「高い架橋結合」は、本出願の趣旨において、移植後の約3ヶ月の終点で、不貫通性層、例えば、微小多孔層が(残りの重量により測定されたときに)少なくとも90%分解されることを意味すると理解される。語句「非常に高い架橋結合」は、本出願の趣旨において、移植後の約2年の終点で、不貫通性層、例えば、微小多孔層が(残りの重量により測定されたときに)少なくとも90%分解されることを意味すると理解される。
【0072】
本出願において、上記に定義されるように、酸化コラーゲンの溶液は、約5g/L〜約50g/L、好ましくは約10g/L〜約35g/Lの範囲のコラーゲン濃度を有する不貫通性層、例えば、微小多孔層を形成するために使用されてよい。
【0073】
本出願において、酸化コラーゲンの溶液は、例えば、約37℃よりも高い温度で、例えば、約40℃〜約50℃の範囲の温度で、少なくとも約1時間に亘り、コラーゲンのらせん構造を少なくとも部分的に変性するために加熱されてよい。コラーゲンを変性するための他の物理的または化学的技術は、例えば、これらに限定するものではないが、超音波処理またはカオトロピック剤の添加などを含む。
【0074】
本発明の1つの実施形態において、コラーゲン化合物は、ゼラチンを含む。そのような実施形態において、上記で定義されたようにゼラチン溶液は、約5g/L〜約50g/L、好ましくは約25g/L〜約35g/Lの範囲のゼラチン濃度を有する不貫通性層、例えば、微小多孔層を形成するために使用されてよい。
【0075】
本発明の1つの実施形態において、親水性高分子化合物は、ポリアルキレングリコール、例えば、ポリエチレングリコールまたはポリプロピレングリコール、ポリサッカリド、例えば、デンプン、デキストランおよび/またはセルロースの誘導体、酸化ポリサッカリド、ムコポリサッカリドおよびその混合物から選択される。例えば、親水性高分子添加物は、4000ダルトンのモル質量を有するポリエチレングリコールである。
【0076】
本発明の1つの実施形態において、コラーゲン化合物を有する化学的に不活性である1つまたは1つ以上の親水性高分子化合物は、不貫通性層、例えば、微小多孔層を形成するために溶液に対して添加されてもよい。
【0077】
高分子化合物は、約3000ダルトン、好ましくは約3000〜約20000ダルトンの範囲のモル質量を有してもよい。適切な親水性高分子化合物は、これらに限定するものではないが、ポリアルキレングリコール(例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール)、ポリサッカリド(例えば、デンプン、デキストランおよび/またはセルロースの誘導体)、酸化ポリサッカリド、ムコポリサッカリドおよびその混合物を含む。
【0078】
本出願において、ポリエチレングリコール4000(4000はモル質量に対応する)が親水性高分子化合物として添加されてもよい。親水性高分子化合物の濃度は、不貫通性層、例えば、微小多孔層を製造するための溶液中のコラーゲン化合物の濃度よりも約2〜10倍少なくてもよい。任意に、親水性高分子化合物は、数時間〜数日中に、不貫通性層、例えば、微小多孔層を経る拡散により取り除かれてもよい。
【0079】
本発明の1つの実施形態において、生物再吸収性物質は少なくとも1つのグリセロールを含む。例えば、生物再吸収性物質は、少なくとも1つのコラーゲン化合物および少なくとも1つのグリセロールを含む。例えば、生物再吸収性物質は、少なくとも1つのコラーゲン化合物、少なくとも1つのグリセロールおよび少なくとも1つの親水性高分子化合物、例えば、ポリエチレングリコール4000を含む。
【0080】
本出願において、グリセロールは、不貫通性層、例えば、微小多孔層を形成するためにコラーゲン化合物の溶液中に使用されてもよい。コラーゲン化合物の溶液中のグリセロール濃度は、コラーゲン化合物の濃度よりも約2〜約10倍少なく、好ましくは不貫通性層、例えば、微小多孔層を製造するための溶液中のコラーゲン化合物の濃度の約3分の1よりも少なくてよい。
【0081】
本出願において、用語「濃度」は、体積当たりの重量濃度を意味すると理解される。
【0082】
本出願において、コラーゲン化合物の、または親水性高分子化合物の、特に、ポリエチレングリコール4000の不貫通性層およびグリセロールの不貫通性層、例えば、微小多孔層を製造するための溶液における初期濃度は、コラーゲン化合物について約2%〜10%、親水性高分子化合物について約0.6%〜4%、およびグリセロールについて約0.3%〜約2.5%の範囲にそれぞれあってよい。
【0083】
不貫通性層、例えば、微小多孔層を形成するために使用される溶液は、コラーゲン化合物、親水性高分子化合物およびグリセロールを水に対して、または水/アルコール、例えば、エタノール、混合物に対して、約30℃〜約50℃の範囲の温度で添加することにより製造されてよい。溶液は、加熱によるコラーゲン化合物の加水分解を回避するために、および上述されたように混合物が酸化コラーゲンを含む場合、コラーゲン化合物の前架橋結合を可能にすると同時に生理学的なpHを有するフィルムを得るために、中性のpHにまで中和されてよい。
【0084】
本発明の1つの実施形態において、生物再吸収性物質は、少なくとも1つのポリビニルアルコールを含む。
【0085】
本出願において、ポリビニルアルコールの溶液は、不貫通性層、例えば、微小多孔層を形成するために使用されてよい。
【0086】
本出願のために適切なポリビニルアルコールは、例えば、それらを数日よりも短期間において、それらが生物再吸収性であることに可能にする特性を有する。
【0087】
本出願のために適切なポリビニルアルコールは、例えば、約80%〜約99%、好ましくは約90%〜約99%の加水分解の程度を有する。
【0088】
本出願のために適切なポリビニルアルコールは、例えば、約200000ダルトン未満、好ましくは約50000ダルトン未満のモル質量を有する。
【0089】
本出願のために適切なポリビニルアルコールは、異なる特徴を有するポリビニルアルコールの混合物であってよいが、それらは加水分解の程度およびモル質量に関して上述の優先傾向に対応する。
【0090】
本出願において、上記で定義されたようにポリビニルアルコールの溶液は、約20g/L〜約200g/L、好ましくは約50g/L〜約100g/Lの範囲のポリビニルアルコール濃度を有する不貫通性層、例えば、微小多孔層を形成するために使用されてよい。
【0091】
本発明の1つの実施形態において、生物再吸収性物質は、少なくとも1つのポリビニルアルコールおよび少なくとも1つのグリセロールを含む。
【0092】
本出願において、グリセロールは、不貫通性層、例えば、微小多孔層を形成するために、ポリビニルアルコール溶液中で使用されてよい。ポリビニルアルコール溶液中のグリセロール濃度は、ポリビニルアルコール濃度よりも約2〜約10倍低く、好ましくはポリビニルアルコール濃度よりも約3分の1よりも低くてよい。
【0093】
本出願において、ポリビニルアルコールから作られた不貫通性層、例えば、微小多孔層は、例えば、約数分間〜約数日間に亘り生物再吸収性である。
【0094】
本出願において、微小多孔層は、コラーゲン化合物の混合物およびポリビニルアルコールの混合物から得られる溶液から得られてよい。
【0095】
本発明の1つの実施形態において、生物再吸収性物質は、少なくとも1つのコラーゲン化合物および少なくとも1つのポリビニルアルコールを含む。
【0096】
本出願において、コラーゲン化合物およびポリビニルアルコールの混合物から得られる不貫通性層、例えば、微小多孔層の溶液中のポリビニルアルコール濃度は、コラーゲン化合物の質量に対して1〜65%、好ましくは20〜50%であってよい。
【0097】
本出願において、コラーゲン化合物およびポリビニルアルコールの混合物を有する化学的に不活性である1つまたは1つ以上の親水性高分子化合物が、不貫通性層、例えば、微小多孔層の形成のために溶液に対して添加されてもよい。
【0098】
高分子化合物は、約3000ダルトン、好ましくは約3000〜約20000ダルトンの範囲のモル質量を有してよい。適切な親水性高分子化合物は、これらに限定するものではないが、ポリアルキレングリコール(例えば、ポリエチレングリコール)、ポリサッカリド(例えば、デンプン、デキストランおよび/またはセルロース誘導体)、酸化ポリサッカリド、ムコポリサッカリドおよび後者の組み合わせを含む。
【0099】
本出願において、ポリエチレングリコール4000(4000はモル質量に対応する)が、親水性高分子化合物として添加されてもよい。親水性添加物の濃度は、コラーゲン化合物の総濃度およびポリビニルアルコールの総濃度よりも約2〜10倍低くてよい。任意に親水性高分子化合物は、数時間〜数日間において不貫通性層、例えば、微小多孔層を経て拡散により除去されてよい。
【0100】
従って、本発明の1つの実施形態において、生物再吸収性物質は、少なくとも1つのコラーゲン化合物、少なくとも1つのポリビニルアルコールおよび少なくとも1つの親水性高分子化合物、例えば、ポリエチレングリコール4000を含む。
【0101】
本出願において、グリセロールは、不貫通性層、例えば、微小多孔層を形成するために、コラーゲン化合物およびポリビニルアルコールの混合物の溶液中に使用されてもよい。コラーゲン化合物およびポリビニルアルコールの混合物の溶液中のグリセロール濃度は、コラーゲン化合物およびポリビニルアルコールの総濃度よりも約2〜約10倍低く、好ましくはコラーゲン成分およびポリビニルアルコールの総濃度の約3分の1よりも低くてよい。
【0102】
従って、本発明の1つの実施形態において、生物再吸収性物質は、少なくとも1つのコラーゲン化合物、少なくとも1つのポリビニルアルコールおよび少なくとも1つのグリセロールを含む。生物再吸収性物質はまた、BASFによりKollicoat(登録商標)IRの商品名により市販されているPVAおよびPEGのコポリマーを含んでもよい。
【0103】
不貫通性層、例えば、微小多孔層を形成するために使用される溶液は、コラーゲン化合物およびポリビニルアルコール、親水性高分子添加物(単数または複数)、例えば、PEG4000、Kollicoat(登録商標)IRおよびグリセロールを水、または水/アルコール、例えば、エタノール、混合物に対して、約30℃〜約50℃の範囲の温度で添加することにより製造されてよい。溶液は、加熱によるコラーゲン化合物の加水分解を回避するために、および上述のように、混合物が酸化コラーゲンを含む場合、コラーゲン化合物の前架橋結合を可能にすると同時に生理学的なpHを有するフィルムを得るために、中性のpHにまで中和されてもよい。
【0104】
本出願において、生物活性剤が、不貫通性層、例えば、微小多孔層に対して添加されてもよい。
【0105】
本出願において、本発明に従う織物の不貫通性層、例えば、微小多孔層が、生物活性剤の放出のための媒体として作用してもよい。
【0106】
本出願において、語句「生物活性剤」は、その最も広い意味において、臨床用途を有する何れかの物質または物質の混合物を含む生物活性剤を意味すると理解される。従って、生物活性剤は、それ自体、薬理学的活性であってもなくてもよく、例えば、これらに限定するものではないが、色素または着色料であってもなくてもよい。或いは、生物活性剤は、治療効果または予防効果を提供する何れかの薬剤、組織成長、細胞増殖、細胞分化において影響するまたは関与する化合物、接着阻害特性を示す化合物、生物作用、例えば、免疫応答を引き起こすことができる化合物、または1つまたは1つ以上の生物学的プロセスにおいて役割を演じることができる化合物であってよい。生物活性剤は、何れかの適切な形態、例えば、粉末、液体、ゲルおよび関連する形態で、不貫通性層、例えば、微小多孔層を形成する溶液に含まれてよいと考えられる。
【0107】
ここで使用される語句「生物活性剤」は、その最も広い意味において使用され、臨床用途を有する何れかの物質または物質の混合物を含む。その結果として、生物活性剤は、それ自身、薬理学的活性、例えば、色素を有してもよく、なくてもよい。或いは、生物活性剤は、予防効果または治療効果を有する何れかの薬剤、組織成長、細胞増殖および/または細胞分化において影響するまたは関与する化合物;生物作用、例えば、免疫応答などを引き起こすことが可能な化合物;または1つまたは1つ以上の生物学的プロセスにおいてもう1つの役割を演じることができる化合物であってよい。
【0108】
治療的有用性、例えば、敗血症の危険性を制限する組織修復または細胞増殖などを生み出すことができる何れかの薬剤が、本発明に従うプロステーシス織物の不貫通性層、例えば、微小多孔層に対して添加されてよい。そのような薬剤は、例えば、フカン(fucan)、デキストラン、デキストラン誘導体、カラギナン、アルギネート、ヒアルロン酸、ケラチンサルフェート、ケラタンサルフェート、デルマタンサルフェート、キチン、キトサン、これらの化合物の組み合わせおよびそれらの誘導体の組み合わせを含む。例えば、キトサンが、本発明に従うプロステーシス織物の不貫通性層、例えば、微小多孔層に対して添加されてよく、キトサンは生物分解性であり、良好な生物適合性を有し、立証された止血性および静菌性特性を有し、また、細胞増殖および組織再生において重要な役割を担う。
【0109】
本出願に従い使用されてよい生物活性剤の種類の例は、抗菌剤、鎮痛薬、接着阻害剤、解熱剤、麻酔剤、抗痙攣薬、抗ヒスタミン剤、抗炎症薬、心臓脈管薬、診断薬、交感神経様作用薬、コリン様作用薬、抗ムスカリン薬、鎮痙剤、ホルモン、成長因子、筋弛緩薬、アドレナリン拮抗薬、抗新生物薬、免疫原性剤、免疫抑制剤、消化薬、利尿薬、ステロイド、脂質、麻薬、リポポリサッカリド、ポリサッカリド、ポリペプチド、タンパク質、ホルモン、酵素およびその組み合わせを含む。
【0110】
本発明に適切な抗菌剤は、それぞれ、四級アミン(例えば、トリクロサン、これはまた名称2,4,4’−トリクロロ−2’−ヒドロキシジフェニルエーテルとしても公知、またはジアリルジメチルアンモニウムクロライド、これはまたDADMACとしても公知)、クロルヘキシジンおよびその塩(即ち、酢酸クロルヘキシジン、グルコン酸クロルヘキシジン、塩酸クロルヘキシジンおよび硫酸クロルヘキシジン)、銀およびその塩(即ち、酢酸銀、安息香酸銀、炭酸銀、クエン酸銀、ヨード酸銀、ヨウ化銀、乳酸銀、ラウリン酸銀、硝酸銀、酸化銀、パルミチン酸銀、銀タンパク質複合体およびスルファジアジン銀)、ポリミキシン、テトラサイクリン、アミノグリコシド、例えば、トブラマイシンおよびゲンタマイシン、リファンピシン、バシトラシン、ネオマイシン、クロラムフェニコール、ミコナゾール、キノロン、例えば、オキソリン酸、ノルフロキサシン、ナリジクス酸、ペフロキサイシン、エノキサシンおよびシプロフロキサイシン、ペニシリン、例えば、オキサシリンおよびピプラシル、ノノキシノール−9、フシジン酸、セファロスポリンおよびその組み合わせを含んでもよい。抗菌性タンパク質およびペプチド(即ち、ウシラクトフェリンおよびラクトフェリシンB)もまた本出願に従う生物活性剤として適切である。
【0111】
本発明のために適切な他の生物活性剤は、局所麻酔;非ステロイド剤;副交感神経作用薬;精神治療薬;トランキライザー;充血除去薬;催眠鎮静薬;ステロイド;サルファ剤;交感神経様作用薬;ワクチン;ビタミン;抗マラリア薬;抗偏頭痛薬;抗パーキンソン薬、例えば、L−ドパ;鎮痙剤;抗コリン剤(例えば、オキシブチニン);鎮咳薬;気管支拡張剤;心血管作動薬、例えば、冠拡張薬およびニトログリセリン;アルカロイド;鎮痛薬;麻薬、例えば、コデイン、ジヒドロコデイノン、メペリジン、モルヒネなど;非麻薬、例えば、サリチル酸塩、アスピリン、アセトアミノフェン、D−プロポキシフェンなど;オピオイド受容体拮抗薬、例えば、ナルトレキソンおよびナロキソン;抗癌剤;抗痙攣薬;制吐剤;抗ヒスタミン剤;抗炎症剤、例えば、ホルモン剤(即ち、ヒドロコルチゾン、プレドニゾロン、プレドニゾン)、非ホルモン剤(即ち、アロプリノール、インドメタシン、フェニルブタゾンなど;プロスタグランジンおよび細胞毒性薬;オストロゲン(ostrogen);抗菌剤;抗生物質;抗真菌剤;抗ウイルス剤;抗凝固剤;抗痙攣薬;抗鬱剤;抗ヒスタミン剤;および免疫学的薬剤から選択されてよい。
【0112】
本発明のために適切な生物学的生物活性剤の他の例は、ウイルスおよび細胞、ペプチド、ポリペプチドおよびタンパク質、これらの化合物の類似体、ムテインおよび/または活性フラグメント、例えば、免疫グロブリン、抗体、ベータ−グリカン、サイトカイン(例えば、リンホカイン、モノカイン、ケモカイン)、血液凝固因子、造血因子、インターロイキン(IL−2、IL−3、IL−4、IL−6)、インターフェロン([ベータ]−IFN、[アルファ]−IFNおよび[ガンマ]−IFN)、エリスロポエチン、ヌクレアーゼ、TNF(腫瘍壊死因子)、CSF(コロニー刺激因子)(例えば、GCSF、GM−CSF、MCSF)、インスリン、抗腫瘍剤および腫瘍抑制遺伝子、血液タンパク質、ゴナドトロピン(例えば、FSH、LH、CGなど)、ホルモンおよびホルモン類似物質(例えば、成長ホルモン)、ワクチン(例えば、腫瘍抗原、細菌およびウイルス抗原);ソマトスタチン;抗原;血液凝固因子;成長因子(例えば、神経成長因子、インスリン−様成長因子);タンパク質阻害剤、タンパク質拮抗剤およびタンパク質作用薬;核酸、例えば、アンチセンスDNAおよびRNA分子;オリゴヌクレオチド;およびリボザイムを含む。
【0113】
本出願において、不貫通性層、例えば、微小多孔層は、任意に親水性高分子化合物(単数または複数)およびグリセロールおよび生物活性剤を含む、生物再吸収性物質、例えば、コラーゲン化合物またはポリビニルアルコールの溶液を、層の形成の目的のために、適切で且つ実質的に平面な不活性支持体上に、均一に溶液を分布することにより、第1のキャスティングをすることにより製造されてよい。
【0114】
本出願において、支持体は、上述のような本発明に従う織物の不貫通性層、例えば、微小多孔層の製造のための生物再吸収性物質の溶液の化合物と反応しない場合、可能な架橋結合プロセスに関与しない場合、不活性であるという。本発明のために適切な不活性支持体は、疎水性物質、例えば、これらに限定するものではないが、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリスチレンまたは分離できる物質および僅かに接着性を維持する物質およびその外科的な使用のときに本発明に従う織物から容易に分離できる物質から作られてよい。
【0115】
本出願において、不活性支持体は、ポリ塩化ビニル(PVC)のフィルムからなってよく、そこに対して、不貫通性層、例えば、微小多孔層の溶液がキャストされ、PVCは、本発明に従う織物の不貫通性層、例えば、微小多孔層のために使用される生物再吸収性物質に関して不活性である。
【0116】
本出願において、不活性支持体上の溶液の液体で最初に堆積される薄層の密度は、1cmの当たり約0.1gの溶液〜1cmの当たり約0.3gの溶液であってよい。不貫通性層、例えば、微小多孔層の溶液は、約4℃〜約30℃、好ましくは約18℃〜約25℃の範囲の温度でキャストされてよい。
【0117】
一旦、不活性支持体に対して適用されると、不貫通性層、例えば、微小多孔層の溶液は、ゲルが形成されるまで、溶液がもはや流体ではなくなるまで、約5分間〜約60分間に亘り、層流下に放置される。ゲル化は、例えば、それがコラーゲンを含む場合に、不貫通性層、例えば、微小多孔層の溶液の冷却により得られる。
【0118】
第2の面、即ち、プロステーシス織物の鉤状突起を具備しない面は、次に、少なくとも部分的にゲル化された不貫通性層、例えば、微小多孔層の溶液に対して適用される。任意に、プロステーシス織物に対して小さい圧力を適用することも可能である。この圧力は、その全体の表面に亘る不貫通性層、例えば、微小多孔層の完全性および連続性を維持するように、好ましくはプロステーシス織物の第2の面の全体を覆うように、支持体と接触してゲル化された溶液の層の部分の有意な破壊を引き起こさないように十分に小さくなくてはならない。
【0119】
本出願において、プロステーシス織物を適用する前に、溶液の第2の層もまた、第1の層に注がれてもよい。本発明の1つの実施形態において、第2の層のために使用される溶液の成分は、プロセスの終点で1つの同じ不貫通性層、例えば、微小多孔層を得るために、第1の層のために使用されるものと全く同じである。第1の層において溶液の形態で堆積される第2の薄層の密度は、1cm当たり約0.1gの溶液〜1cm当たり約0.3gの溶液であってよい。第2の層の溶液は、約4℃〜約30℃、例えば、約18℃〜約25℃の範囲の温度でキャストされてよい。一旦、支持体に対して適用されると、第2の微小多孔層の溶液は、ゲルを形成するまで、溶液がもはや流体ではなくなるまで、約5分間〜約60分間に亘り層流下に放置される。液体の冷却により得られるゲル化は、それがコラーゲンを含む場合である。上述のように、単一の薄層のキャスティングの状況において、プロステーシス織物は、次に、ゲル化された溶液に対して適用される。
【0120】
本発明において、部分的にゲル化された不貫通性層、例えば、微小多孔層で覆われたプロステーシス織物は、不貫通性層、例えば、微小多孔層の完全なゲル化を行うために乾燥されてよい。不貫通性層、例えば、微小多孔層の溶液が酸化コラーゲンを含む場合、コラーゲンは、約4℃〜約35℃、好ましくは約18℃〜約30℃の温度での乾燥プロセルの間に架橋される。アッセンブリの全体が、無菌の気流下で乾燥される。
【0121】
乾燥の後、本発明に従い被覆されたプロステーシス織物は、プロステーシスを製造するために、不活性支持体から分離され、必要であれば、規定されたサイズに切断され、次に包装化され、従来の技術、例えば、これらに限定するものではないが、β線照射(電子照射)、γ線照射(放射性コバルトでの照射)または酸化エチレン処理などを用いて滅菌される。
【0122】
本発明の実施形態において、プロステーシス織物の鉤状突起は、生物再吸収性物質で作られた不貫通性層、例えば、微小多孔層での第2の面の被覆のためのプロセスの前、プロセスの間またはプロセス後に、水溶性物質で被覆されてよい。
【0123】
1つの実施形態において、水溶性物質は、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリ酢酸ビニル(PVAc)、ゼラチン、ポリグルクロン酸、ヒアルロン酸、カルボキシメチルセルロース、セルロースエーテル、キトサンおよびその混合物から選択される。
【0124】
例えば、水溶性物質は、40000Da未満または40000Daに等しい、好ましくは20000Da未満または20000Daに等しいモル質量を有するポリエチレングリコールである。例えば、モル質量は、1000〜20000Daで変更されてよい。そのようなモル質量を有するポリエチレングリコールは、特に生物分解性である。
【0125】
1つの実施形態において、水溶性物質は、約1000Daのモル質量を有する少なくとも1つのポリエチレングリコールを含む。そのようなポリエチレングリコールは、改善された可溶化を可能にする。
【0126】
実施形態において、水溶性物質は、少なくとも1つの生物活性剤を含む。水溶性物質において存在してよい生物活性剤は、不貫通性層のために上述された生物活性剤の中から選択されてよい。
【0127】
従って、本発明のプロセスの実施形態において、以下の2つの工程i)およびii)が追加され、工程i)およびii)は、上述の工程a)〜c)に対して何れかの順番で実施される:
−i)液体状態にある少なくとも1つの水溶性生体適合性物質を含む組成物を調製すること;および
−ii)鉤状突起に対して組成物の層を適用すること。
【0128】
液体状態にある水溶性生体適合性物質を含む組成物は、液体、粘性または他のペースト形態であってよい。例えば、組成物は、例えば、ブラシまたはその他のロールを使用して、それを鉤状突起の表面に展開することを可能にする、または鉤状突起をその中に浸すことを可能にする一貫性を有する。本発明に従うプロセスの1つの実施形態において、工程ii)は、ロールを使用して実行される。従って、組成物は、ロールの表面に均一に展開され、次にその表面にロールを適用して鉤状突起に展開される。
【0129】
本発明に従うプロセスの1つの実施形態において、組成物は、任意に水溶性物質の融点で組成物を加熱することにより、水中に水溶性物質を可溶化することにより得られる。
【0130】
そのような1つの実施形態において、一旦、組成物の層が鉤状突起に適用されると、組成物は、乾燥のために、任意に冷却され、鉤状突起を被覆する水溶性物質の層が硬化状態、即ち、固体状態になるまで放置される。
【0131】
本発明に従うプロセスのもう1つの実施形態において、組成物は、水溶性物質単独を、水溶性物質の融点よりも高い温度で加熱することにより得られる。そのような実施形態において、一旦、組成物の層が鉤状突起に適用されると、組成物は、鉤状突起を被覆する水溶性物質の層が硬化状態、即ち、固体状態になるまで、冷却されて放置される。
【0132】
本出願において、プロステーシス織物が、加水分解に対して感受性の物質、例えば、ポリグリコール酸またはポリ乳酸から得られる場合、その貯蔵の間の分解を防ぐために、水分が十分に低い条件下でそれは包装化される。
【0133】
本発明のプロステーシス織物は、周囲温度に安定である。不貫通性層、例えば、微小多孔層の厚さは、約150μm未満、好ましくは約30μm〜約100μmであってよい。本発明のプロステーシス織物は、所定のサイズで作られてもよく、または例えば、プロステーシスの製造に想定される適用のために適切なサイズのために切断することが可能であるように大きな面積で作られてもよい。
【0134】
そのようなプロステーシスは、開腹手術または腹腔鏡手術を使用して移植されてもよい。腹腔鏡手術により移植されるとき、プロステーシスは、外套針にそれを挿入する前に、それ自体の周りに巻かれなくてはならない。本発明に従うプロステーシス織物の不貫通性層、例えば、微小多孔層は、外套針を通してプロステーシスを輸送して、移植部位でそれを展開する間、鉤状突起がプロステーシスに対して絡まるのを防ぐ。
【0135】
従って、外科医が、本発明に従う織物から形成されたプロステーシスを移植することを望む場合、彼は、内側または外側に被覆された鉤状突起が提供された面を折り畳むことにより、それ自身の周りにこのプロステーシスを容易に巻回することができる。両方の場合において、この巻回の間に、鉤状突起は、不貫通性層、例えば、微小多孔層と、特にその外側のゲル化した表面に対して接触するようになり、それは実質的に平滑であってよく、それによりそれらは停止される:従って、鉤状突起は、織物の本体に貫通せず、それらは織物を構成するヤーンのアレンジメントと絡まることがない。更に、鉤状突起は、外套針の壁面に対する摩擦、または環境の何れか他の外部要素に対する摩擦から保護される。
【0136】
一旦、プロステーシスが外套針を介して移植部位に対して運ばれると、鉤状突起は、不貫通性層、例えば、微小多孔層の表面を滑り、プロステーシスの展開に対する何れの抵抗も示さないために、プロステーシスは、傷つかず、容易に展開することが可能である。
【0137】
プロステーシスは展開され、不貫通性層、例えば、微小多孔層は、徐々に周囲組織と接触するようになり、それは次第に生物再吸収される。プロステーシスは、鉤状突起を使用して、もう1つの織物に対して、または生物壁に対して固定されてもよく、後者は、外套針のチャネル内でのプロステーシスの輸送の間に何れの損傷も受けず、それらの結合特性を維持している。実施形態において、鉤状突起は、水溶性物質により被覆されており、一旦、水溶性物質が溶解すると、鉤状突起は、もう1つの織物に対して、または生物壁に対して、プロステーシス織物を固定するために使用されてよい。
【0138】
本出願のプロステーシスは、それが腹腔鏡手術において、外套針を経て輸送され、展開された後でさえも、鉤のあるプロステーシス織物の全ての特有且つ独創的な特性、例えば、柔らかい組織の補強および治療におけるその使用、および鉤状突起により補強されるべき組織に対するその付着性を保持してよい。
【0139】
以下の例は本発明を説明する。
【例】
【0140】
例1A:
WO01/81667に記述されるように15×10cmのサイズを有し、かつ鉤状突起を含むプロステーシス織物を準備する。鉤状突起をポリ乳酸 (PLA)から作られるモノフィラメントヤーンから製造する。
【0141】
そのような織物の断面の模式的描写は、図1に与えられる:織物1は2つの対向する面2a,2bを規定するヤーンのアレンジメント2から形成される。織物1は、第1の面2a上に、この面から突出する、鉤状突起3を含む。各鉤状突起3は、柄3aおよび先端3bを備えている。この図1に表されるように、鉤状突起の先端3aは、鉤状突起の結合および保持特性に寄与する凹凸4を有する。鉤状突起の先端3aは、例えば300〜500μmの範囲のサイズを有する。
【0142】
酸化コラーゲンを含むフィルムの形態にある微小多孔層は、面2b、鉤状突起を有する面と反対の面状に、次の手法でプロステーシス織物と組み合わされる:
1)微小多孔層を形成するための生物再吸収性物質の溶液の調製;
使用されるコラーゲンは、I型ブタコラーゲンであり、酸性pHでの可溶化またはペプシン消化によりブタ皮膚から抽出され、公知の技術に従って生理食塩水沈殿によって精製される。
【0143】
好ましくは、乾燥コラーゲン繊維はNaCl添加によるコラーゲンの酸溶液の沈殿によって得られ、次いで沈殿物の洗浄および乾燥が80%〜100%の増加したアセトン濃度を有するアセトン水溶液で実行される。
【0144】
文献US6,596,304の例4に従って、8mMの最終濃度、周囲温度で過ヨウ素酸によって酸化される3%w/vコラーゲン溶液を、これらのコラーゲン繊維から調製する。
【0145】
PEG4000(4000ダルトンのモル質量を有するポリエチレングリコール、例えばFlukaからのPEG4000の商品名で市販される)の滅菌濃溶液およびグリセロール(Flukaにより市販される)の滅菌濃溶液を3%w/vの濃度の酸化コラーゲン溶液に添加し、それにより1%w/vの最終濃度のPEG4000および0.6%w/vの最終濃度のグリセロールを含む混合物を得る。溶液のpHは、濃水酸化ナトリウム溶液を添加することによって、7.0に調整される。次いで、溶液の量は、それぞれ2.7%w/v、0.9%w/vおよび0.54%w/vの酸化コラーゲン、PEG4000およびグリセロールの最終濃度を得るように滅菌水を添加されて調整される。
【0146】
2)プロステーシス織物の面2bの被覆:
1)で得られた溶液の一部をPVCまたはポリスチレンから作られた平坦な疎水性不活性支持体上に0.095g/cmの密度を持つ第1の薄層を形成するように展開する。
【0147】
溶液をゲルにするために、第1の層の表面を、次いで周囲温度で、5〜60分間に亘って滅菌空気流に曝す。残りの溶液を滅菌水で2%w/vの濃度に希釈し、次いで無水エタノールで1.75%濃度に希釈する。この溶液を0.045g/cmの密度を持つ第2の薄層を形成するように展開し、第1の層に対して適用する。
【0148】
第2の層の表面を周囲温度で、5〜60分間に亘って滅菌空気流に再び曝す。プロステーシス織物を次いで上記の第1および第2の層から形成される1)において得られた溶液のゲル層に対してゆっくりと適用する。全体のアセンブリを周囲温度で、完全な蒸発が達成されるまで、約18時間の間、滅菌空気流に曝す。
【0149】
鉤のあるプロステーシス織物が得られ、それは、鉤状突起を含まないその面が、連続するフィルムの形態にある微小多孔層で被覆されている。微小多孔層は第2の面を連続的にかつ完全に被覆する。
【0150】
コラーゲン、PEG4000およびグリセロールの相対濃度は、乾燥後、微小多孔層中で3/1/0.6、w/w/wである。
【0151】
微小多孔層でその第2の面が被覆されたプロステーシス織物は、次いで不活性支持体から剥離される。この例において、微小多孔層を形成するフィルム(上記の第1および第2の層からそれ自身形成される)は実質的に孔がなく、その外表面は実質的に平滑である。
【0152】
例1B:
生物活性剤を例1A1)で調製される溶液に対して添加したことを除いて、被覆されたプロステーシス織物を、前記例1Aと同様な手法で製造する。
【0153】
本発明に係るそのような織物5の断面の模式的描写は、図2に与えられる:本発明に係るプロステーシス織物5はその第1の面2a上に鉤状突起3を含む。図2に示されるように、前述したように、その第2の面2bは平滑であり、フィルム6の形態にある微小多孔層で覆われている。したがって、得られたプロステーシス織物5はそれ自身の周りに巻回される場合、鉤状突起3は微小多孔層6の平滑表面と接触され、それらは織物の本体に絡まらず、従って織物のより容易な後の展開を可能にする。
【0154】
さらに、一旦プロステーシス織物が移植されると、本発明の被覆されたプロステーシス織物は、生物活性剤を放出するようになる。
【0155】
織物から矩形または丸形状または治療されるべき器官の生体構造に適した形状に切断することによって、本例で記述されるような微小多孔層で覆われた鉤のある織物によるヘルニアの治療のためのプロステーシスを製造することが可能である。
【0156】
本例で記述されるようなコラーゲン、PEG4000、グリセロールおよび生物活性剤に基づく微小多孔層で被覆された鉤のある織物は、腹腔観察技術を介したヘルニアの治療のためのプロステーシスの製造のために特に適する。実際に、そのようなプロステーシスは、内側および/または外側の鉤状突起を有するそれら自身の周りに巻回され、この手法において鉤状突起を損傷する危険性を伴わずに、外套針のチャネル内を移植部位に対して輸送されてもよい。さらに、微小多孔層の存在のために、鉤状突起、特にこれらの鉤状突起の先端は織物の本体に絡まらず、一旦、移植部位で外套針から放出されると、プロステーシスの展開を妨げない:一旦プロステーシスが展開されると、鉤状突起はそれらの結合特性のために外科医により望まれる様式でプロステーシスを固定するために使用される。
【0157】
前述したような被覆されたプロステーシス織物は、滅菌二重バックに包装することができる。好ましくは、25〜45kGyの範囲の線量でのγ線照射により滅菌される。滅菌の後、それはオーブン中、50℃で約48時間に亘り加熱される。次いで、それは使用するまで周囲温度で貯蔵される。
【0158】
例1C:
例1Aのプロステーシス織物の鉤状突起の水溶性物質での被覆:
例1Aで得られるようなプロステーシス織物を包装する前に準備する。織物の鉤状突起を水溶性物質から作られるコーティング剤で例えば次の方法に従って被覆する。
【0159】
4000のモル質量を有し、融点が53℃〜59℃であるポリエチレングリコール(FLUKAからのPEG4000)の5gを均質な液体を得るために60℃で加熱する。或いは、質量4000のポリエチレングリコールをそれぞれ1000、2000および4000のモル質量を有するポリエチレングリコールの混合物で置き換えることができる。
【0160】
プロステーシス織物の鉤状突起は、ブラシを用いて液体状態のPEG4000で被覆される、または鉤状突起を液体PEG4000組成物に浸漬することによって被覆される。
【0161】
例えば、ブラシを使用する場合、PEG4000組成物の粘性の作用のままで、コーティング剤は鉤状突起表面をブラシの何回かの連続する通過により実行される。
【0162】
したがって、被覆織物は次いで周囲温度(約20℃)に冷却のために放置される。PEG4000組成物は鉤状突起に配置且つ被覆され、それらを平滑な固体コーティングで覆う。
【0163】
本発明に係るそのような織物5の断面の模式的描画、生物再吸収性物質から作られる微小多孔層6(前記例1Aで記述される通り)で覆われている第2の面および水溶性物質で被覆されている鉤状突起を図4に示す;本発明に係るプロステーシス織物5は、示された例における固体層7の形態で水溶性物質により被覆された鉤状突起を含む。水溶性物質、すなわち本例において4000のモル重量を有するポリエチレングリコールの固体層7は、各鉤状突起3の先端3aを完全に被覆し、更に柄3aの一部分も被覆する。図4に明らかに示されるように、層7の表面は平滑である、幾つかの他の織物で利用される凹凸を鉤状突起3の先端3aはもはや有さない。
【0164】
従って、PEG4000での鉤状突起の被覆は、織物の結合を減少し、その取り扱いを容易にする。
【0165】
本例で記述されるように、織物から矩形または丸形状または治療されるべき器官の生体構造に適した形状に切断することによって、ポリエチレングリコールで覆われた鉤状突起を持つ織物によるヘルニアの治療ためのプロステーシスを製造することが可能である。
【0166】
本例で記述されるような織物は、腹腔観察を介するヘルニアの治療ためのプロステーシスの製造のために特に適切である。実際に、そのようなプロステーシスは、内側および/または外側に鉤状突起を有するそれら自身の周りに巻回され、それにより鉤状突起を損傷する危険なしに、外套針のチャネル内を移植部位に対して輸送されてもよい。さらに、織物の第2の面上の微小多孔層と、鉤状突起に水溶性物質から作られる被覆とが存在するという事実のために、一旦それが移植部位で外套針から放出されたなら、鉤状突起は、プロステーシスの展開を妨害しない。
【0167】
例1D:
例1Bのプロステーシス織物の鉤状突起の水溶性物質での被覆:
プロステーシスを包装する前に、例1Bのプロステーシス織物の鉤状突起を例1Cに記述されるのと同様な様式において水溶性物質で被覆する。
【0168】
例2:
上記の例1Aおよび図1に示されるものと同様な初期プロステーシス織物を準備する。
【0169】
1)微小多孔層を形成するための生物再吸収性物質溶液の調製:
PEG4000(4000ダルトンのモル質量を有するポリエチレングリコール、例えばFlukaからのPEG4000の商品名下で市販される)の滅菌濃溶液およびグリセロール(Flukaにより市販される)を3%w/vの濃度でゼラチン溶液(酸加水分解またはアルカリ加水分解により得られる、例えば、シグマから市販される)に添加し、それにより1%w/vの最終濃度のPEG4000および0.6%w/vの最終濃度のグリセロールを含む混合物を得る。溶液のpHを濃水酸化ナトリウム溶液の添加により7.0に調整する。次いで、溶液の量は、それぞれ2.7%w/v、0.9%w/vおよび0.54%w/vのゼラチン、PEG4000およびグリセロールの最終濃度を得るように滅菌水を添加して調節される。
【0170】
2)プロステーシス織物の面2bの被覆:
1)で得られた溶液を、PVCまたはポリスチレンから作られた平坦な疎水性不活性支持体上に0.133g/cmの密度を有する薄層を形成するように展開する。表面を次いで1)で得られた溶液をゲルにするために、周囲温度で、5〜60分間に亘って滅菌空気流に曝す。プロステーシス織物の第2の面2bを次いで前記溶液のゲル層に対してゆっくりと適用する。全体のアセンブリを周囲温度で、完全な蒸発が達成されるまで、約18時間、滅菌空気流に曝す。
【0171】
鉤のあるプロステーシス織物が得られ、それは、鉤状突起を含まないその面が、連続したフィルムの形態にある微小多孔層で被覆される。
【0172】
ゼラチン、PEGおよびグリセロールの相対濃度は乾燥後、孔を含まない層中で3/1/0.6、w/w/wである。
【0173】
前述したように被覆されたプロステーシス織物を次いで不活性支持体から剥離する。前述した例におけるように、微小多孔層を形成するフィルムは実質的に孔がなく、その外表面は本質的に平滑である。
【0174】
3)鉤状突起の水溶性物質での被覆:
鉤状突起は、例1Cに記述される方法と同様な方法を用いて水溶性物質で被覆される。
【0175】
このようにして得られた被覆されたプロステーシス織物は、滅菌二重バックに包装することができる。それは次に、好ましくは、25〜45kGyの範囲の線量でγ線照射により滅菌される。次いで、それは例えばプロステーシスを製造するために、それが使用されるまで周囲温度で貯蔵される。
【0176】
例3:
図1に記述される上記の例1Aのような初期プロステーシス織物を準備する。
【0177】
1)微小多孔層を形成するための生物再吸収性物質の溶液の調製;
ポリビニルアルコール(PVA)(87−89%加水分解型,Mw=31,000〜50,000、Sigma Aldrichから提供される)の溶液を磁気熱板スターラーを用いて90℃で加熱することによって溶液中に8%w/vで調製し、4%のグリセロールを添加し、次いで溶液を40℃に冷却する。
【0178】
2)プロステーシス織物の面2bの被覆:
1)で得られた30mLの溶液を12cm×17cmシリコン枠にキャストする。プロステーシス織物の第2の面2bを前記溶液上に配置する。層流フード下、約10時間に亘る乾燥の後、溶液の層を少なくとも部分的にゲル化し、このように被覆されたプロステーシス織物を枠から剥離する。本発明に係るプロステーシス織物が得られ、それは、鉤状突起を含まないその面がPVAフィルムの形態にある微小多孔層で被覆される。このPVAフィルムは周囲温度で溶解されないが、37℃で溶解される。得られたPVAフィルムは孔がない、特に厳密に300μmより大きいサイズを有する孔のない平滑な外面を有する。
【0179】
3)鉤状突起の水溶性物質での被覆:
鉤状突起を例1Cに記述されるものと同様な方法を用いて水溶性物質により被覆する。
【0180】
このように被覆されたプロステーシス織物は、密閉バックに包装され、βまたはγ線照射またはEtOにより滅菌される。エチレンオキサイドを用いる、またはベータまたはガンマ線照射による滅菌の後、被覆されたプロステーシス織物は、オーブン中、50℃で約50時間に亘り加熱される。
【0181】
このように被覆されて覆われたプロステーシス織物は、鉤状突起を含まない面上の微小多孔層と、鉤状突起上の水溶性物質との存在の効果により、外套針内に導入するためにそれ自身の周りに容易に巻回することができるプロステーシスを製造することを可能にし、後者はプロステーシスの巻上げの間、互いに絡むことがない。外套針を抜けたときのプロステーシスの展開および位置決めは、従って容易になる。
【0182】
例4:
図1に記述された上記例1Aに示されるものと同様な初期プロステーシス織物を準備する。
【0183】
1)微小多孔層を形成するための生物再吸収性物質の2つの溶液の調製:
a)3.4%w/vの酸化コラーゲンおよび1.4%w/vのグリセロールの溶液を例1に記述されるように準備する。
【0184】
b)ポリビニルアルコール(PVA)(87−89%加水分解型、Mw=31,000〜50,000、Sigma Aldrichから提供される)の溶液を磁気熱板攪拌機を用いて90℃で加熱することによって3.4%w/vで溶液を調製し、次いで溶液を冷却し、40℃に維持する。
【0185】
c)b)で得られた50%(w/w)のPVA溶液を第1のフィルムを得るために、a)で得られた50%(w/w)の酸化コラーゲン/グリセロール溶液と混合する。2つの化合物を混合した後、溶液を1Mの水酸化ナトリウム溶液を用いてpH7に中和する。
【0186】
d)酸化コラーゲン、PVAおよびグリセロールで構成される水溶液を次の重量で示される割合:2.7%の酸化コラーゲン、0.35%のPVAおよび0.35%のグリセロールで調製する。したがって、この溶液はc)で得られた溶液と同様な成分を含むが、異なる割合である。
【0187】
2)プロステーシス織物の面2bの被覆:
a)第1のフィルムを得ること:
1)で得られた30mLの溶液を12cm×17cmシリコン枠にキャストする。周囲温度で20〜30分間後にゲル化が生じる。第1のフィルムを得る。
【0188】
b)第2のフィルムを得ること:
a)においてキャスティングが行われた後の1時間、1d)で得られる溶液を第1のフィルム上にキャストする。20〜30分間後にこの新しい層のゲル化が生じる。乾燥を、周囲温度で、約10〜約14時間に亘り層流フード下で実行する。
【0189】
本発明に係るプロステーシス織物が得られ、それは、鉤状突起を含まない面が2層のフィルムの形態にある微小多孔層で覆われる。鉤状突起を含まない面の完全な被覆が、従って促進される。
【0190】
エチレンオキサイドを用いる、またはベータまたはガンマ線照射による滅菌の後、プロステーシス織物は、オーブン中、50℃で約48時間に亘り加熱される。
【0191】
湿潤形態において、本例に従って得られた2層フィルムは、水性媒体中で2つ重ね層の剥離を示さない。さらに、この2層フィルムは良好な弾性を示す。この2層フィルムの外面は平滑であり、孔がなく、特に厳密に300μmよりも大きいサイズを有する孔はない。
【0192】
3)鉤状突起の水溶性物質での被覆:
鉤状突起を例1Cに記述される方法と同様な方法を用いて水溶性物質で被覆する。
【0193】
例5:
図1に示された上述の例1Aと同様な初期プロステーシス織物を準備する。
【0194】
1)微小多孔層を形成するための生物再吸収性物質の溶液の調製:
8gのポークゼラチン(提供者:Sigma Aldrich)をグリセロールの5%w/v水溶液の92mLに溶解する。ゼラチン溶液を磁気撹拌にて45℃で溶解し、次いで50℃で10分間加熱する。得られた溶液の30mLを12cm×17cmボックスに熱キャストし、プロステーシス織物の面2bを溶液上に直接に配置する。周囲温度でのゼラチン溶液のゲル化の後、ボックスを20時間に亘り凍結乾燥する。ゼラチンの層で覆われるプロステーシス織物はボックスから容易に取り除かれる。ゼラチンの層またはメンブランは多孔質構造を有する:メンブランおよび例えばその外面は、20〜120μmで変化するサイズを持つ孔を有するが、300μmよりも大きなサイズの孔を有さない:走査型電子顕微鏡で撮影されたこのメンブランの写真を図3に示す:微小多孔層またはメンブランが300μmよりも大きなサイズの孔を含まないことが、この写真から明白に見える。したがって、このように得られたプロステーシス織物がそれ自身の周りに巻回される場合、鉤状突起は、微小多孔層の20〜120μmの範囲のサイズを有する孔内に貫通しない。鉤状突起は、微小多孔層の外面をすべり、互いに絡まない。
【0195】
外套針を抜け出たそのような織物から作られるプロステーシスの展開および位置決めは、従って容易になる。
【0196】
2)鉤状突起の水溶性物質での被覆:
鉤状突起を例1Cに記述される方法と同様な方法を用いて水溶性物質で被覆する。
【0197】
上記の例1〜5で記述されるような微小多孔層で覆われた鉤のある織物は、腹腔観察を介するヘルニアの治療のためのプロステーシスの製造のために特に適切である。実際に、そのようなプロステーシスは、内側および/または外側に鉤状突起を有するそれら自身の周りに巻回されてよく、従って、鉤状突起の絡み合いまたは損傷の危険性を伴わずに外套針のチャネル内を移植部位に対して輸送されてよい。さらに、微小多孔層と、任意の鉤状突起上の水溶性物質との存在のために、鉤状突起は織物の本体に絡むことがなく、一旦それが移植部位で外套針から放出されると、プロステーシスの展開を妨害しない:一旦プロステーシスが展開され、任意に水溶性物質が溶解した後には、鉤状突起は、それらの結合特性の効果によって、外科医により所望される様式でプロステーシスを固定するために用いられてよい。
【0198】
例6:
例1C,1Dおよび2−5で記述されるような被覆されたプロステーシス織物が製造され、ここで鉤状突起を覆うために用いられる水溶性物質はさらに生物活性剤をさらに含む。
【0199】
例1Dで記述されるような被覆されたプロステーシス織物は、その水溶性物質がさらに生物活性剤を含む被覆されたプロステーシス織物は、患者の身体内で1つまたは1つ以上の生物活性剤を逐次的な様式で放出するために使用されてよい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
織物について少なくとも第1および第2の対向する面(2a、2b)を規定するヤーンのアレンジメント(2)を具備するプロステーシス織物(5)であって、織物は、少なくとも第1の面において、第1の面に関して外側に突出する1つまたは1つ以上の鉤状突起(3)を具備し、織物は、第2の面において、生物再吸収性物質で作られた層で少なくとも部分的に被覆されており、層の外面は鉤状突起が不貫通性であり、更に、鉤状突起が水溶性物質で作られた被覆剤で被覆されていることを特徴とするプロステーシス織物(5)。
【請求項2】
請求項1に記載の織物(5)であって、不貫通性層が微小多孔層である織物。
【請求項3】
請求項1または2に記載の織物(5)であって、不貫通性層が連続的であり、第2の面を完全に被覆していることを特徴とする織物。
【請求項4】
請求項1〜3の何れか1項に記載の織物(5)であって、生物再吸収性物質が、コラーゲン化合物、親水性高分子化合物、ポリビニルアルコール、グリセロールおよびその混合物から選択されることを特徴とする織物。
【請求項5】
請求項4に記載の織物(5)であって、生物再吸収性物質が少なくとも1つのコラーゲン化合物を含むことを特徴とする織物。
【請求項6】
請求項1〜5の何れか1項に記載の織物(5)であって、コラーゲン化合物が酸化コラーゲンを含むことを特徴とする織物。
【請求項7】
請求項5または6に記載される織物(5)であって、コラーゲン化合物がゼラチンを含むことを特徴とする方法。
【請求項8】
請求項4に記載の織物(5)であって、親水性高分子化合物が、ポリアルキレングリコール、例えば、ポリエチレングリコールまたはポリプロピレングリコール、ポリサッカリド、例えば、デンプン、デキストランおよび/またはセルロースの誘導体、酸化ポリサッカリド、ムコポリサッカリドおよびその混合物から選択されることを特徴とする織物。
【請求項9】
請求項8に記載の織物(5)であって、親水性高分子化合物が4000ダルトンのモル質量を有するポリエチレングリコールであることを特徴とする織物。
【請求項10】
請求項1〜9の何れか1項に記載の織物(5)であって、生物再吸収性物質が少なくとも1つのグリセロールを含むことを特徴とする織物。
【請求項11】
請求項1〜4の何れか1項に記載の織物(5)であって、生物再吸収性物質が少なくともコラーゲン化合物および少なくとも1つのグリセロールを含むことを特徴とする織物。
【請求項12】
請求項1〜11の何れか1項に記載の織物であって、生物再吸収性物質が更に少なくとも1つの親水性高分子化合物を含むことを特徴とする織物。
【請求項13】
請求項1〜12の何れか1項に記載の織物(5)であって、生物再吸収性物質が少なくとも1つのポリビニルアルコールを含むことを特徴とする織物。
【請求項14】
請求項1〜4の何れか1項に記載の織物であって、生物再吸収性物質が少なくとも1つのポリビニルアルコールおよび少なくとも1つのグリセロールを含むことを特徴とする織物。
【請求項15】
請求項1〜4の何れか1項に記載の織物であって、生物再吸収性物質が、少なくとも1つのコラーゲン化合物および少なくとも1つのポリビニルアルコールを含むことを特徴とする織物。
【請求項16】
請求項1〜15の何れか1項に記載の織物であって、生物再吸収性物質が少なくとも1つの生物活性剤を含むことを特徴とする織物。
【請求項17】
請求項1〜16の何れか1項に記載の織物であって、水溶性物質が、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリ酢酸ビニル(PVAc)、ゼラチン、ポリグルクロン酸、ヒアルロン酸、カルボキシメチルセルロース、セルロースエーテル、キトサンおよびその混合物から選択されることを特徴とする織物。
【請求項18】
請求項1〜17の何れか1項に記載の織物であって、水溶性物質が少なくとも1つの生物活性剤を含むことを特徴とする織物。
【請求項19】
織物について第1および第2の面(2a、2b)を規定するヤーンのアレンジメント(2)を具備するプロステーシス織物(1)を被覆する方法であって、織物は、少なくとも第1の面に亘り、第1の面に関して外側に突出する1つまたは1つ以上の鉤状突起(3)を具備し、以下の工程を具備することを特徴とする方法:
−a)少なくとも1つの生物再吸収性物質を含む溶液を準備すること;
−b)溶液の層を不活性支持体に対して適用すること;および
−c)層が少なくとも部分的にゲル化したときに、織物の第2の面を層に対して適用すること;および
−i)少なくとも1つの水溶性生体適合性物質を液体状態で含む組成物を準備すること;および
−ii)組成物の層を鉤状突起に対して適用すること;
ここにおいて、工程i)およびii)は、工程a)〜c)に対して何れかの順番で実行される。
【請求項20】
請求項19に記載の方法であって、工程c)の間に、織物の第2の面の適用の前に、溶液の第2の層が部分的にゲル化された層に対して適用されることを特徴とする方法。
【請求項21】
請求項19に記載の方法であって、工程c)の間に、織物の第2の面の適用の前に、生物再吸収性物質の第2の溶液の層が部分的にゲル化された層に対して適用され、生物再吸収性物質の第2の溶液の組成物がa)において得られる溶液とは異なることを特徴とする方法。
【請求項22】
請求項19〜21の何れか1項に記載の方法であって、工程c)において得られるプロステーシス織物が20〜60時間の範囲の期間に亘り凍結乾燥されることを特徴とする方法。
【請求項23】
請求項19〜22の何れか1項に記載の方法であって、工程ii)がロールを使用して実行されることを特徴とする方法。
【請求項24】
ヘルニアの治療のためのプロステーシスであって、請求項1〜18の何れか1項に記載の織物(5)から、または請求項19〜23の何れか1項に記載の方法により得られた織物から製造されたことを特徴とするプロステーシス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2013−503673(P2013−503673A)
【公表日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−527350(P2012−527350)
【出願日】平成22年9月6日(2010.9.6)
【国際出願番号】PCT/EP2010/063062
【国際公開番号】WO2011/026987
【国際公開日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【出願人】(505453631)
【Fターム(参考)】