生物医学的用途およびバイオフォトニック用途のための絹フィブロイン構造体のナノインプリンティングの方法
本発明は、フォトニックナノインプリントされた絹フィブロインベースの材料、ならびに、絹フィブロインベースのフィルムをナノメータースケールのフォトニックパターンによってエンボス加工する工程を含む、当該材料を製造する方法を提供する。さらに、本発明は、局所的に当該絹フィルムのガラス転移温度を低下させることによって、室温での絹フィブロインベースのフィルムのナノインプリントを可能にするプロセスを提供する。そのようなナノインプリントプロセスは、ハイスループット性を高め、生物医学的デバイスまたは他のオプティカルデバイスへの絹ベースのフォトニクスの組み込みに対する可能性を向上させる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
政府支援
本発明は、米国陸軍研究所および米国陸軍研究事務所により付与された契約番号第W911NF-07-1-0618号に基づき政府の支援を受けて達成された。米国政府は、本発明に対してある一定の権利を有する。
【0002】
関連出願
本出願は、米国特許法第119条e項の下、2009年2月12日に出願された米国特許出願第61/151,866号の優先権の恩典を主張するものである。
【0003】
発明の分野
本発明は、絹フィブロインベースの生体高分子構造体上にナノメータースケールのフォトニックパターンを形成するためのナノインプリント法を対象とする。より具体的には、本発明は、金属コーティングを備えていてもいなくてもよい、フォトニックナノパターン形成された絹フィブロインベースの生体高分子フィルム、ならびにそれらによって作製されたオプティカルデバイス、例えば、バイオフォトニックセンサー、オプトフルイディックデバイス、薬物送達デバイス、および絹機能化光ファイバーなどを提供する。
【背景技術】
【0004】
発明の背景
絹フィブロインベースの生体高分子フィルムは、絹フィブロインを平坦なフォトニック格子上にキャストするソフトリソグラフィー技術を使用してマイクロスケールおよびナノスケールにおいてパターン形成することができる。しかしながら、このキャスティングプロセスは、12〜36時間を要し、複数のデバイスの迅速な製造には不都合な場合がある。さらに、ソフトリソグラフィーのキャスティング技術は効果的であるが、フィルムにいくつかの人為的影響、例えば、機械的な取り外しに由来する不均一な端部または乾燥プロセスに由来する、再現された特徴における過剰な深さなどを与える場合がある。
【0005】
ナノインプリンティングは、マイクロスケール、サブマイクロスケール、およびナノメータースケールのパターンを製作するための、代替的なハイスループットなリソグラフィー技術である。この方法では、ガラス転移温度以上に加熱された熱可塑性材料に型を押し付け、軟化した材料が印加された圧力によって当該型に一致する。細胞、酵素、または他の非耐熱性物質を組み入れる生物医学的用途およびオプティカルデバイス用途における使用のために、特に生理的温度および室温において、改善された解像度およびハイスループットの、ナノパターン形成された生体高分子フィルムを製作する技術が依然として求められている。
【発明の概要】
【0006】
包括的に熱エンボス加工技術または周囲温度におけるエンボス加工技術を用いる、本発明の絹フォトニックナノインプリント法は、迅速で、安価であり、絹フィブロインベースの生体高分子フィルムに、光学的に妥当なミリスケール、マイクロスケール、サブマイクロスケール、およびナノスケールの特徴を作製するためのハイスループットな方法を可能にする。当該ナノインプリント法は、絹フィブロインベースのフィルムの好ましい光学特性、例えば、可視領域での高透明性、高い機械的安定性、および全て水性の処理であることなどと組み合わせされて新規の材料プラットフォームとして容易に機能化および利用することができる、妥当なミリスケール、マイクロスケール、サブマイクロスケール、およびナノスケールでの全て有機的なバイオフォトニック要素の製造に道を開くものである。このアプローチは、ナノフォトニクス、生体高分子材料、および生体適合性材料をシームレスに組み合わせ、生物医学的オプティカルデバイスに新たな側面を加えるものである。
【0007】
本発明の態様は、様々な条件下において、絹フィブロインベースの生体高分子フィルム上にフォトニックナノパターンをインプリントするための、ハイスループットのリソグラフィー法を提供する。より具体的には、絹フィブロインベースの生体高分子フィルムのナノインプリントは、包括的に高温(例えば、約100℃)または室温において、異なるレベルの含水によって絹フィブロインフィルムのガラス転移温度を局所的に調節することによって実施され得る。当該絹フィブロインベースの生体高分子フィルムは、同じかまたは異なるマスターパターンを使用してインプリントプロセスを繰り返すことによって、複数のフォトニックパターンでナノインプリントすることも可能である。さらに、当該絹フィブロインベースの生体高分子フィルムは、インプリントプロセスの前または後に、薄い金属層でコーティングしてもよい。当該絹フィルムは、光ファイバーの端部に配置される前または後にナノパターン形成してもよく、それによって当該光ファイバーを機能化または生体機能化することができる。本発明の利点は、フォトニックパターン形成された絹ベースの材料中に、生体活性剤、例えば、細胞および酵素などを包含させることを可能にする。
【0008】
本発明の一態様は、絹フィブロインベースの生体高分子フィルム上にフォトニックナノパターンを形成するためのインプリント法に関する。当該方法は、絹フィブロインベースの生体高分子フィルムを得る工程と、当該生体高分子フィルム上にフォトニックナノパターンを形成するために、フォトニックナノパターン形成された基材(すなわち、マスターナノパターン)を、当該生体高分子フィルムのガラス転移温度を超えた温度において当該生体高分子フィルムに押し付ける工程と、任意で、当該ナノパターンとナノパターン形成された生体高分子フィルムとを分離する工程とを含む。
【0009】
本発明の別の態様は、絹フィブロインベースの生体高分子フィルム上に複数のナノパターンを形成するためのインプリント法を提供する。当該方法は、以下の工程:(a)絹フィブロインベースの生体高分子フィルムを得る工程、当該生体高分子フィルム上にフォトニックナノパターンを形成するために、当該生体高分子フィルムのガラス転移温度を超えた温度において、第一のフォトニックナノパターンを当該生体高分子フィルムに押し付ける工程、および当該第一のナノパターンとナノパターン形成された生体高分子フィルムとを分離する工程、(b)第二のフォトニックナノパターンを、当該生体高分子フィルムのガラス転移温度を超えた温度において、工程(a)により形成されたナノパターン形成された生体高分子フィルムに押し付け、それによって当該生体高分子フィルム上に第二のフォトニックナノパターンを形成する工程、および当該第二のナノパターンとナノパターン形成された生体高分子フィルムとを分離する工程、を含む。当該方法は、工程(b)を繰り返す工程をさらに含んでいてもよく、したがって、当該生体高分子フィルム上において所望の複数のナノパターンが達成されるまで、同じ絹フィブロインベースの生体高分子フィルムにインプリントする。
【0010】
いくつかの態様において、本発明のナノインプリント法において使用された当該絹フィブロインベースの生体高分子フィルムは、インプリントプロセスの前または後に金属層でコーティングされ得る。当該フォトニックナノインプリントプロセスは、絹フィブロインタンパク質の二次構造を一次ランダムコイルから一次β−シート構造へと変えて当該絹フィブロインのガラス温度および/または水溶解性を増加させるインプリント後工程をさらに含んでいてもよい。
【0011】
本発明の別の態様は、例えば、生物医学的用途のための、光ファイバーの端部に一体化することができる生体適合性で生体内吸収性の絹フィブロインベースの光学要素を製造するために、本発明のナノインプリント法を採用する。したがって、本発明のある局面は、光ファイバーを機能化または生体機能化する方法を提供する。当該方法は、光ファイバーの端面上に絹フィブロインベースの生体高分子マトリックスを堆積させる工程と、当該生体高分子マトリックス上にフォトニックナノパターンを形成するために、当該生体高分子マトリックスのガラス転移温度を超えた温度において、フォトニックマスターナノパターンを当該光ファイバーの端部の生体高分子マトリックスに押し付ける工程と、当該ナノパターン形成された生体高分子マトリックスと当該マスターナノパターンとを分離する工程とを含み、したがって、当該光ファイバーの端面上に、フォトニックナノパターン形成された絹フィブロインベースの生体高分子マトリックスを製造する。
【0012】
本発明の他の態様は、様々な用途、例えば、とりわけ、医薬、食品、または包装物へのナノインプリントされた絹フィブロインベースのフォトニックフィルムの取り付け、監視デバイス、柔軟なロボットデバイス、または医療用デバイスなどのデバイスへの当該フォトニック絹フィルムの組み込み、培養組織へのナノインプリントされた絹フォトニック構造体の組み込み、およびナノインプリンティングによる電気活性な絹フィブロインフィルムを使用した電子オプティカルデバイスの製作などにおけるナノインプリントされた絹フィブロインベースのフォトニックフィルムの使用に関する。
【0013】
本発明のナノインプリント法の特定の利点は、局所的にガラス転移温度を低下させることにより、室温で絹フィルムにナノインプリントできるこということである。これは、絹が、温度感応性ドーパントまたは生物製剤、例えば、細胞、タンパク質、および酵素などを含有し得るような、あるいは絹が、再生医療のためのナノ構造化された支持体として使用され得るようなデバイスおよび用途に対して有用である。
【0014】
本発明は、本明細書において説明されたナノインプリント法を使用して製作された、その上にナノパターンを有する絹フィブロインベースの生体高分子フィルムも提供する。いくつかの態様において、本発明は、そのようなナノパターン形成された絹フィブロインベースの生体高分子フィルムを含むオプティカルデバイスに関する。これらのフォトニックナノパターン形成された絹ベースのフィルムおよびデバイスは、さらに、少なくとも1種類のドーパント、活性物質、または生物製剤を含み得る。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】熱エンボス加工の条件でのナノインプリントプロセスの例示的態様の概略図(図1A)および室温エンボス加工の条件でのナノプリンティングプロセスの例示的態様の概略図(図1B)である。
【図2】周期的および非周期的にインプリントされたナノホールを示すデータを表す。(図2A)20nm間隔で直径200nmのホールが絹にインプリントされたRudin−Shapiroパターンの原子間力顕微鏡(AFM)画像を示す。(図2B)400nm間隔で直径200nmのホールが絹にインプリントされた周期的パターンのAFM画像である。(図2C)ホールの深さが30nmであることを示す(2B)の断面を表す。
【図3】室温エンボス加工技術によって製造された、ナノインプリントされた絹フィルムに関するデータを表す。(図3A)3,600溝/mm格子を再現する、インプリントされた絹フィルムのAFM画像である。(図3B)(3A)の断面寸法を表す。(図3C)3,600溝/mm格子を有する、使用されたマスターパターンのAFM画像である。(図3D)(3C)の断面寸法を表す。
【図4】熱エンボス加工技術によって製造された、ナノインプリントされた絹フィルムに関するデータを表す。(図4A)700nm間隔で直径200nmのホールが絹にインプリントされた周期的格子パターンのAFM画像である。(図4B)(4A)に図示された線に沿って測定された(4A)の断面を表す。(図4C)250nm間隔で直径200nmのホールが絹フィルムにインプリントされた周期的パターンの走査型電子顕微鏡(SEM)画像である。
【図5】絹フィブロインフィルムにインプリントされた3次元回折光学パターンのAFM画像である。
【図6】図6Aは、絹フィブロインフィルムにインプリントされた3次元回折光学パターンのAFM画像である。図6Bは、図6Aに表された絹光学フィルムを通したHe:Neレーザーの伝播による投影である。本明細書において提示されたいくつかの図のカラー画像は、Amsden et al., 17 Opt.Exp. 21271-79 (2009)またはAmsden et al., 22 Adv.Mater.1-4 (2010)において見出すことができる。
【図7】図7Aは、90°相対する方向において絹フィルム上に2回インプリントされた3600溝/mm格子のAFM画像である。図7Bは、図7Aに示された2つの直交する方向に沿った断面寸法である。
【図8】90°相対する方向において1200g/mmおよび3600g/mmでインプリントされた、絹フィルム上の厚さ50nmの金フィルムのAFM画像である。
【図9】ナノインプリントされた絹フィルムの、白色光照射での構造色を示す。(図9A)絹フィルムにおける周期的ナノホールのSEM画像を示す。当該ナノホールは、直径200nm、深さ30nm、間隔300nmである。(図9B)図9Aの拡大図を示す。(図9C)暗視野集光器から光を照射された、周期的ナノホールによってパターン形成された絹フィルムの構造色を示す。格子定数は、左から右へ順に700、600、500、および400nmである。着色された正方形の列の間の距離は、200μmである。
【図10】水への浸漬での、ナノインプリントされた絹フィルムの構造色の変化を示す。(図10A)幾何学構造を表す。(図10B)スーパーコンティニューム光を照射された、周期的にインプリントされた直径200nmおよび深さ30nmのナノホールを示す。ホールの間隔は、図において右から左へ順に600nm、500nm、400nm、および350nmと変わっている。上側のパネルにおいて、ホールの上方の媒体は空気である。下側のパネルにおいて、ホールの上方の媒体は水である。(図10C)400nm(10C(a))および600nm(10C(b))の周期における絹格子の最初の4つの回折次数に対する回折角と波長の関係を示す(n2=1.54、θinc=80°)。暗色の領域は、実験において観察可能なパラメータ範囲(可視スペクトル周波数帯域内かつ集光円錐部内)を示している。
【図11】溶解赤血球(ヘモグロビン)(HbO)でドーピングされているナノインプリントされた絹フィルムのスペクトル反応(吸収対波長)を示すグラフ。
【図12】ファイバーチップ上に絹フィブロインベースのマトリックスを形成し、次いで当該絹フィブロインマトリックスにナノインプリントすることによる光ファイバー端部の機能化を表す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の詳細な説明
本発明は、本明細書において説明される特定の方法、プロトコール、および試薬等に限定されることなく、したがって、変動し得ることは理解されるべきである。本明細書において使用される専門用語は、特定の態様を説明するためのものであって、本発明の範囲を限定することは意図しておらず、本発明の範囲は添付の特許請求の範囲によってのみ定義される。
【0017】
本明細書およびクレームにおいて使用される場合、そうでないことが文脈において明確に示されていない限り、単数形はその複数形を含み、逆も同様である。実施例以外において、またはそうでないことが示されている場合を除き、本明細書において使用される成分の量または反応条件を表すすべての数字は、すべての場合において「約」という用語で修飾されているものとして理解されるべきである。
【0018】
特定されたすべての特許および他の刊行物は、例えばそのような刊行物に記載されている本発明と関連して使用され得る方法を記載および開示する目的のために、参照により本明細書に明示的に組み入れられる。これらの刊行物は、本出願の出願日以前におけるそれらの開示を単に提供するものである。これに関するいかなる点においても、先行発明または他の任意の理由によって本発明者らがそのような開示に先行する権利のないことへの承認として解釈されるべきではない。日付に関するすべての言及、またはこれらの文書の内容に関する説明は、出願者らが入手可能な情報に基づいており、これらの文書の日付または内容の正確さに関していかなる承認も構成しない。
【0019】
そうでないことが明記されない限り、本明細書において使用されるすべての専門用語および科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者に共通して理解される意味と同じ意味を有する。本発明の実施または試験において、任意の公知の方法、デバイス、および材料を用いることができるが、その意味においての方法、装置、および材料を本明細書に記載する。
【0020】
「ナノパターン」または「ナノパターン形成された」という用語は、本明細書において使用される場合、絹フィブロインベースのフィルムまたは絹フィブロインベースのフィルムを含むオプティカルデバイスに提供される微細なフォトニックナノパターン形成を意味し、ナノメータースケール(すなわち、10-9メーター)において適切に測定され得るサイズの構造的特徴を有するパターン形成は、例えば、境界値を含めて1ナノメーター〜ミリメーターの範囲の大きさを有する。
【0021】
絹フィブロインベースの生体高分子の優れた機能的特性と加工性に鑑みて、本発明のナノパターン形成されたフィルムおよびナノパターン形成されたオプティカルデバイスのいくつかの態様が、絹フィブロインベースの生体高分子を用いて本明細書において実施される。マイクロパターン形成およびナノパターン形成された柔軟な材料が、様々なマイクロ流体デバイス、オプティカルデバイス、機械的デバイス、および電子デバイスに対して益々有用となる中、生体高分子ベースの材料基材に対するこのパラダイムの拡張は、そのようなデバイスに新しい選択肢を提供する。
【0022】
絹フィブロイン、コラーゲン、およびキトサンなどの生体高分子は、生物医学的オプティカルデバイスへの組み込みに対して将来有望な材料である。絹フィブロインは、その光学特性(Lawrence et al., 9 Biomacromolecules 1214-20 (2008))、機械特性(Altman et al., 24 Biomat. 401-16 (2003);Jiang et al., 17 Adv. Funct. Mater. 2229-37 (2007))、全て水性の処理であること(Sofia et al., 54 J. Biomed. Mater. Res. 139-48 (2001); Perry et al., 20 Adv. Mater. 3070-72 (2008))、比較的容易な機能化(Murphy et al., 29 Biomat. 2829-38 (2008))、および生体適合性(Santin et al., 46 J. Biomed. Mater. Res. 382-9 (1999))故に、そのような装置の形成において特に魅力的な生体高分子の候補である。例えば、絹フィブロインは、優れた表面品質と光透過性とを備えた、薄く機械的に丈夫なフィルムに加工することができる。
【0023】
本明細書において使用される場合、「絹フィブロイン」という用語は、カイコのフィブロインならびに他の昆虫またはクモの絹タンパク質を含む(Lucas et al., 13 Adv. Protein Chem. 107-242 (1958))。絹フィブロインは、溶解したカイコ絹またはクモ絹を含有する溶液から得ることができる。カイコ絹フィブロインは、例えば、Bombyx moriの繭から得られ、クモ絹フィブロインは、例えば、Nephila clavipesから得られる。代替手段において、本発明における使用に好適な絹フィブロインは、細菌、酵母、哺乳動物細胞、トランスジェニック動物、またはトランスジェニック植物から回収された遺伝子操作された絹を含有する溶液から得ることができる。例えば、国際公開第97/08315号および米国特許第5,245、012号を参照のこと。
【0024】
絹フィブロインフィルムは、絹フィブロイン溶液をパターン上にキャストして乾燥させるソフトリソグラフィーキャスティング技術を使用することにより、マイクロスケールおよびナノスケールにおいてパターン形成することができる。Perry et ah, 2008を参照のこと。しかしながら、このキャスティングプロセスは、12〜36時間を要し得、複数のデバイスを迅速に製造するための都合の良い方法としては機能し得ない。さらに、結果として当該ソフトリソグラフィーキャスティング技術から得られる絹構造体は、乾燥プロセスおよび離型プロセスに起因する人為的影響を含む場合がある。
【0025】
ナノインプリンティングは、マイクロメータースケール、サブマイクロメータースケール、およびナノメータースケールのパターンを製作するための、ハイスループットのリソグラフィー技術である。この技術では、ガラス転移温度以上に加熱された熱可塑性材料に型が押し付けられ、印加された圧力により、当該軟化された材料が当該型に一致する。Quake & Scherer, 290 Science 1536-40 (2000); Nie & Kumacheva, 7 Nat. Mater. 277 (2008); Guo, 19 Adv. Mater. 495-513 (2007)を参照のこと。ナノインプリントリソグラフィーによる100nmより小さい構造は、最初に、ポリメチルメタクリレート(PMMA)において実証され(Chou et al., 67 Appl. Phys. Lett. 3114 (1995); Chou et al., 272 Science 85-87 (1996)を参照のこと)、現在では、10nm程度の小さい構造がPMMAにおいて達成可能である。Guo, 2007; Chou & Krauss, 35 Microelectron. Eng. 237-40 (1997)を参照のこと。理想的なナノインプリントレジストは、迅速なインプリント時間と、低温および低圧、ならびに型からの分離を助ける低表面エネルギーとを兼ね備える。そのため、当該型は、多くの場合、低表面エネルギー界面活性剤でコーティングされる。Beck et al., 61-62 Microelectron. Eng. 441-8 (2002)を参照のこと。これらの進歩にもかかわらず、生体高分子におけるナノインプリンティングは、使用可能な温度および圧力の範囲を限定する制限されたパラメータ空間のゆえに、さらなる問題を提示する。
【0026】
しかしながら、本発明の態様は、絹フィブロインベースのフォトニック生体高分子フィルムが理想的なナノインプリントレジストの多くの特徴を示すことを実証するものであり、絹フィブロインベースのフォトニック生体高分子フィルムは、光学特性および生体適合性を兼ね備えることから、これらの特徴により、ナノフォトニクス、生体高分子材料、および生体適合性材料をシームレスに組み合わせる新規の技術プラットフォームとなり得る。
【0027】
本発明の態様は、型の表面処理を行わずに、低圧(50psi)で、絹フィブロインベースのフィルムに、数秒から数分でナノ構造、例えばフォトニック格子などを容易にかつ迅速にナノパターン形成することができるナノインプリントプロセスを提供する。当該ナノインプリント技術は、様々なレベルの含水によって、当該絹フィブロインベースのフィルムのガラス転移温度を調節することにより、包括的に高温(約100℃)または室温(周囲温度)において実施することができ、結果として得られる構造は、50nm以下までの特徴を再現することができる。当該ナノインプリント技術は、他のリソグラフィー技術、例えば、ソフトリソグラフィーキャスティング技術などによって達成されるものと比較して、品質およびスループットを著しく向上させる。Perry et al., 2008を参照のこと。さらに、絹フィブロインベースのフィルムにおける本発明の絹ナノインプリント法の高速性および高忠実度、ならびに機械的特性および光学特性は、他の生体高分子および生体適合性高分子、例えば、キトサンおよびポリ(乳酸)などよりも優れている。Park et al., 90 Appl. Phys. Letts. 093902-3 (2007); Christopher et al., 76A J. Biomed. Mater. Res. 781-7 (2006)を参照のこと。したがって、本発明の絹フォトニックナノインプリント技術は、ナノフォトニクスと生体高分子材料および生体適合性材料とを容易に組み合わせることができる可能性を秘めている。
【0028】
「マスターナノパターン」という用語は、本明細書において使用される場合、絹フィブロインフィルムにインプリントされる所望のナノパターンを有する型またはテンプレートを意味する。マスターナノパターンは、絹フィブロインフィルムに所望される幾何学的特徴に応じて、または絹フィブロインフィルムを含むオプティカルデバイスに所望される光学的特徴に応じて、ミリパターン、マイクロパターン、またはナノパターン形成された表面であり得、および/またはオプティカルデバイス、例えば、ナノパターン形成された光学格子、レンズ、マイクロレンズアレイ、ビームリシェーパー、パターン発生器などであり得る。
【0029】
本発明の一局面は、絹フィブロインベースの生体高分子フィルム上にフォトニックナノパターンを形成するためのインプリント法に関する。当該方法は、絹フィブロインベースの生体高分子フィルムを得る工程と、当該生体高分子フィルム上にナノパターンを形成するために、当該生体高分子フィルムのガラス転移温度を超えた温度において、マスターナノパターンを当該生体高分子フィルムに押し付ける工程と、任意で、当該マスターナノパターンと当該ナノパターン形成された生体高分子フィルムとを分離する工程とを含む。
【0030】
本発明の別の局面は、絹フィブロインベースの生体高分子フィルム上に複数のナノパターンを形成するためのインプリント法に関する。当該方法は、(a)絹フィブロインベースの生体高分子フィルムを得る工程、当該生体高分子フィルム上にフォトニックナノパターンを形成するために、当該生体高分子フィルムのガラス転移温度を超えた温度において、マスターナノパターンを当該生体高分子フィルムに押し付ける工程、および当該マスターナノパターンと当該ナノパターン形成された生体高分子フィルムとを分離する工程、(b)当該生体高分子フィルムのガラス転移温度を超えた温度において、第二のマスターナノパターンを、工程(a)により形成された、ナノパターン形成された生体高分子フィルムに押し付け、それによって当該生体高分子フィルム上に第二のナノパターンを形成する工程、および任意で、当該第二マスターナノパターンと当該ナノパターン形成された生体高分子フィルムとを分離する工程、を含む。当該方法は、工程(b)を繰り返す工程をさらに含み得、したがって、所望の複数のナノパターンが当該生体高分子フィルム上に達成されるまで、同じ絹フィブロインベースの生体高分子フィルムにインプリントする工程を含み得る。工程(a)および(b)は、本明細書において「インプリントプロセス」または「ナノインプリントプロセス」とも呼ばれ得る。
【0031】
インプリント法の工程(a)および(b)において使用されるマスターナノパターンは、所望されるパターンに応じて、同じであってもまたは異なっていてもよい。当該インプリント法の工程(b)は、所望の複数のナノパターンを生成するために、さらに繰り返してもよい。前の工程において絹フィブロインフィルム上にインプリントされたナノパターンに対する、工程(b)におけるマスターナノパターンの配置は、平行または直角であり得、あるいは、包括的に0°〜360°の範囲の方位角によって特徴付けられ得る。いくつかの態様において、絹フィルム上への複数のパターンのナノインプリンティングは、同じマスターパターンまたは2つの異なるマスターパターンを使用して、同じ絹フィブロインフィルム上にインプリントプロセスを2回繰り返すことによって達成される。一実施例において、使用されるマスターパターンの方向は、お互いに対して90°である。このプロセスならびに結果として得られるナノパターン形成された絹フィブロインフィルムの原子間力顕微鏡(AFM)による特性評価は、以下の実施例において示される。
【0032】
絹フィブロインベースの生体高分子フィルムは、インプリントされたレジストとして得られる。当該絹フィブロインフィルムは、絹フィブロイン含有水溶液を支持基材上に堆積させて、当該絹フィブロイン溶液をフィルムへと乾燥させることによって調製することができる。この点に関して、絹フィブロインベースの溶液でコーティングされた基材は、例えば12時間などの一定の時間、空気に晒され得る。絹フィブロイン溶液の堆積は、例えば、スピンコーティング法を使用することによって、または絹フィブロイン溶液を基材の上に単に注ぐことによって実施することができ、スピンコーティング法では、絹フィブロイン溶液を基材上にスピンコーティングすることにより、高さが均一でない薄膜の製作が可能である。
【0033】
当該絹フィブロインフィルムの特性、例えば、厚さおよび他の成分の含有量など、ならびに光学的特徴は、基材に適用される絹フィブロイン溶液の濃度および/または量に基づいて変わり得る。例えば、絹フィルムの厚さは、溶液中の絹フィブロインの濃度を変えることによって、または所望の量の絹フィブロイン溶液を使用することによって制御することができ、結果として、およそ2nm〜1mm厚の範囲の厚さを有する絹フィブロインフィルムが得られる。一態様において、様々な濃度の絹フィブロインおよび様々なスピンスピードを用いて当該絹フィブロインを基材上にスピンコートすることにより、約2nm〜約100μmの厚さを有するフィルムを作製することができる。本明細書において形成される絹フィブロインフィルムは、優れた表面品質および光透過性を有する。
【0034】
絹フィブロイン溶液の調製は、全て水性で有機的な様式において実施され得る。米国特許第11/020,650号;国際公開第2005/012606号を参照のこと。本明細書では、精密ろ過工程が使用され得る。例えば、調製された絹フィブロイン溶液は、基材上に堆積させる前に、遠心分離およびシリンジベースの精密ろ過によってさらに処理してもよい。このプロセスにより、優れた品質および安定性の、8%〜10%w/vの絹フィブロイン溶液の作製が可能となる。当該精密ろ過工程は、多くの場合、透明性が最大化され、その結果として散乱が最小化された高品質光学フィルムの生成のために望ましい。さらに、絹フィブロインベースの生体高分子を形成するために、他の生体適合性および生体分解性高分子を絹フィブロイン溶液に混合してもよい。例えば、望ましい機械的特性を示すさらなる生体高分子、例えば、キトサンなどを水中において処理し、絹フィブロインと混合することにより、光学的用途のための概して透明なフィルムを形成することができる。他の生体高分子、例えば、キトサン、コラーゲン、ゼラチン、アガロース、キチン、ポリヒドロキシアルカノエート、プラン(pullan)、デンプン(アミロースアミロペクチン)、セルロース、アルギン酸塩、フィブロネクチン、ケラチン、ヒアルロン酸、ペクチン、ポリアスパラギン酸、ポリリシン、ペクチン、デキストラン、および関連する生体高分子、あるいはそれらの組み合わせなどは、特定の用途において利用することができ、ならびに合成生分解性高分子、例えば、ポリエチレンオキシド、ポリエチレングリコール、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリカプロラクトン、ポリオルトエステル、ポリカプロラクトン、ポリフマレート、ポリ無水物、および関連する共重合体なども選択的に使用することができる。絹フィブロインベースの生体高分子に混合するために本明細書において選択される高分子は、絹フィブロインベースの生体高分子の水分を変えることによる、絹フィブロインベースの生体高分子のガラス転移温度の制御に対し、悪影響を及ぼしてはならない。
【0035】
本発明のナノインプリント法において使用される絹フィブロインベースの生体高分子フィルムは、金属層をコーティングしてもよいし、または金属層上にコーティングしてもよい。例えば、金属層は、インプリントプロセスの前に、絹フィブロインベースの生体高分子フィルム上にコーティングしてもよい。あるいは、当該金属層は、フォトニックナノパターンによって既にインプリントされている絹フィブロインベースの生体高分子にコーティングしてもよい。当該ナノインプリント法において使用される絹フィブロインベースの生体高分子フィルム上に金属層をコーティングする場合、コーティング工程およびインプリント工程の実際の順序は、処理条件および予想される用途に応じて選択することができる。例えば、絹フィブロインベースの生体高分子フィルムが、周囲温度でインプリントされる場合、金属層は、絹フィルムがインプリントされた後にコーティングすることができる。インプリント圧力は、特に当該金属層の厚さが1μm未満の場合、金属の堆積によって影響を受けない。絹フィルムのガラス転移温度は、金属の堆積によって影響を受けず、したがって、インプリント温度も金属の堆積によって影響を受けない。それに続いて、金属層でコーティングされた絹フィブロインベースの生体高分子フィルム上に、当該フィルム上にナノパターンが既に存在するか否かにかかわらず、本明細書において説明されるようなインプリント工程を繰り返す工程を適用することも可能である。
【0036】
本明細書において使用される好適な金属としては、金、銀、アルミニウム、チタン、クロム、白金、銅、スズ、インジウム、カドミウム、鉛、タングステン、鉄、ニッケル、セレン、ケイ素、ストロンチウム、パラジウム、バナジウム、亜鉛、ジルコニウム、並びにそれらの合金および酸化物が挙げられるが、これらに限定されるわけではない。金属は、境界値を含めて約2nm〜約10μmの範囲の薄層として絹フィルム上にコーティングすることができる。例えば、絹フィルムは、50nmの金の層をスピンコーティングし、それに続いてマスターパターンでインプリントしてもよい。一態様において、複数のパターンのナノインプリンティングは、金属でコーティングされた同じ絹フィブロインフィルム上に、お互いに対して約90°(または所望の方向)に配置された同じマスターパターンまたは2種の異なるマスターパターンを使用してインプリントプロセスを繰り返すことにより達成される。このプロセスならびに結果として得られるフォトニックナノパターン形成された金属コーティング絹フィブロインフィルムのAFMによる特性評価は、本発明において、実施例により示される。
【0037】
本発明において使用されるマスターナノパターンは、周期的フォトニック格子、非周期的フォトニック格子、またはそれらの組み合わせに基づく、フォトニック格子構造を有し得る。バイオフォトニック構造は、ナノテクスチャのサブ波長のバイオフォトニック構造であり得る。例えば、好適なパターンは、周期的格子、フィボナッチの準周期的格子、Thue-Morse(TM)の非周期的格子、Rudin-Shapiro(RS)の非周期的格子、ランダム格子、並びに数論的配列に基づいた他の決定論的非周期的格子を含み得る。フィボナッチの準周期的格子、TMの非周期的格子、およびRSの非周期的格子における格子は、複雑さの程度が順次増加する決定論的な非周期的格子の主な例である。特に、R-S格子は、空間周波数の平坦なスペクトル(白色フーリエスペクトル)を有し、ならびに、単に「フォトニックアモルファスまたは流体構造」の類似体として考えられ得る。本発明において使用されるマスターパターンの格子間隔は、インプリントされた絹フィルムに所望される光学機能性に応じて、幅広い範囲を有し得る。例えば、20nm〜700nmの範囲の格子間隔の非周期的ナノ粒子の配列を、マスターナノパターンとして使用することができる。
【0038】
本発明のナノインプリントプロセスは、絹フィブロインベースの生体高分子フィルムのガラス転移温度を超える温度において実施することができる。絹フィブロインフィルムは、吸収された水分に著しく依存するガラス転移温度を有する。Hoagland et al., 63 J. Applied Polymer Sci. 401 (1997)を参照のこと。例えば、周囲湿度(約35%)で調製された当該絹フィブロインフィルムは、約100℃のガラス転移温度を有する。したがって、当該絹フィブロインフィルムが、約35%より高い湿度において調製された場合、インプリントプロセスは、絹フィブロインフィルムを加熱されたマスターナノパターンに押し付けることにより、境界値を含めて約20℃〜約100℃の範囲の高温において行うことができる。別の例として、絹フィブロインフィルムが水で飽和している場合、絹フィブロインのガラス転移温度は、室温(周囲温度)となり得る。これに関して、室温での絹フィブロインフィルムのナノインプリンティングは、マスターナノパターンを当該絹フィブロインフィルムに押し付ける前に、当該絹フィブロインフィルムを少なくとも局所的に飽和させることを必要とし得る。例えば、フィルムを水で飽和させるために、当該フィルム上に水の小滴を位置させてもよい。絹フィブロインの様々なガラス転移温度は、周囲温度でのナノインプリンティングを可能にする点において好都合である。室温は、絹が、温度感応性の生物学的ドーパント、例えば、細胞、タンパク質、および酵素などを含有するような、あるいは絹が、再生医療のためのナノ構造化された支持体として使用されるようなデバイスおよび用途に対して特に有用である。
【0039】
インプリントプロセスの際に必要な圧力は比較的低く、例えば、境界値を含めて約5psi〜約50psiである。本発明のナノインプリントプロセスは、短時間での複数のデバイスのハイスループット製造を可能にする迅速なプロセスである。当該インプリントプロセスの加圧成形工程は、包括的に数秒または数分を必要とする。例えば、1秒程度の短い時間において、あるいは5秒未満、1分未満、または約5分未満において、絹フィブロインフィルム上にナノパターンを形成することができる。加圧成形時間は、加圧成形温度が高い場合よりも低い場合の方が長くなり得る。
【0040】
インプリンティング後、マスターナノパターンは、結果として得られるナノパターン形成された絹フィブロインフィルムから、例えば、薄いブレードを用い、てこによって当該マスターパターンから当該絹フィルムを外すことによって、容易に取り外すことができる。
【0041】
フォトニックナノインプリントプロセスは、後処理工程をさらに含み得る。当該後処理工程は、絹フィブロインタンパク質の二次構造を一次ランダムコイルから一次β−シートへと変えて、絹フィブロインのガラス転移温度を高める。Hu et al., 39 Macromolecules 6161 (2006)を参照のこと。後処理の後、当該インプリントされたフィルムは安定であり、それが数年持続する。当該後処理工程は、水アニール処理(water annealing)およびメタノール処理を含み得る。例えば、当該ナノインプリントされた絹フィルムは、水溶性を減少させるために、水蒸気環境などの湿潤環境においてアニール処理され得るか、またはメタノールに晒され得る。Xu et al., C27 Mats. Sci. Engin. 579 (2007); Lv et al., 96 J. Appl. Polym. Sci. 2168-73 (2005); Jin et al., 15 Adv. Funct. Mater. 1241-47 (2005)を参照のこと。アニール処理時間は、所望される材料特性に応じて変わり得る。典型的な期間は、包括的に数秒から数日の範囲であり得る。
【0042】
本発明のナノインプリント法の特定の利点は、局所的にガラス転移温度を低下させることにより、室温(周囲温度)において絹フィルムにナノインプリントすることができるということである。この能力は、当該絹フィルム中のドーパントの生物学的活性を維持する絹フィブロインフィルムの能力を補完するものであり、さらに、生体活性なナノスケールデバイスの容易な製造を可能にする。
【0043】
したがって、いくつかの態様において、当該絹フィブロインベースの生体高分子フィルムは、少なくとも1種類の活性物質を含み得る。当該物質は、フィルム中に包埋されてもよいし、またはフィルム上に固定されてもよい。本発明の絹フィブロインベースの生体高分子と共に使用することができる様々な活性物質は、膨大である。例えば、当該活性物質は、治療剤または生物学的物質、例えば、細胞、タンパク質、ペプチド、核酸類似物、ヌクレオチド、オリゴヌクレオチド、核酸(DNA、RNA、siRNA)、ペプチド核酸、アプタマー、抗体またはそれらの断片もしくは一部、ホルモン、ホルモン拮抗薬、成長因子もしくは組換え成長因子およびそれらの断片および変種、サイトカイン、酵素、抗生物質もしくは抗菌性化合物、消炎剤、抗真菌剤、抗ウイルス剤、毒素、プロドラッグ、化学療法剤、小分子、薬物(例えば、薬物、染料、アミノ酸、ビタミン、酸化防止剤)、ならびにそれらの組み合わせであり得る。
【0044】
本発明のフォトニックフィルム中への封入に好適な例示的抗生物質としては、アミノグリコシド(例えば、ネオマイシン)、アンサマイシン、カルバセフェム、カルバペネム、セファロスポリン(例えば、セファゾリン、セファクロル、セフジトレン、セフジトレン、セフトビプロール)、糖ペプチド(例えば、バンコマイシン)、マクロライド(例えば、エリスロマイシン、アジスロマイシン)、モノバクタム、ペニシリン(例えば、アモキシシリン、アンピシリン、クロキサシリン、ジクロキサシリン、フルクロキサシリン)、ポリペプチド(例えば、バシトラシン、ポリミキシンB)、キノロン(例えば、シプロフロキサシン、エノキサシン、ガチフロキサシン、オフロキサシンなど)、スルホンアミド(例えば、スルファサラジン、トリメトプリム、トリメトプリンサルファメトキサゾール(コトリモキサゾール))、テトラサイクリン(例えば、ドキシサイクリン、ミノサイクリン、テトラサイクリンなど)、クロラムフェニコール、リンコマイシン、クリンダマイシン、エタムブトール、ムピロシン、メトロニダソール、ピラジンアミド、チアムフェニコール、リファンピシン、チアンフェニコール、ダプソン、クロファジミン、キヌプリスチン、メトロニダソール、リネゾリド、イソナイアジド、ホスホマイシン、あるいはフシジン酸が挙げられるが、これらに限定されるわけではない。
【0045】
本明細書における使用に好適な例示的細胞は、始原細胞もしくは幹細胞、平滑筋細胞、骨格筋細胞、心筋細胞、上皮系細胞、内皮細胞、尿路上皮細胞、線維芽細胞、筋芽細胞、軟骨細胞、軟骨芽細胞、造骨細胞、溶骨細胞、角質細胞、肝細胞、胆管細胞、膵島細胞、甲状腺、副甲状腺、副腎、視床下部、脳下垂体、卵巣、精巣、唾液腺細胞、脂肪細胞、および前駆細胞を含み得るが、これらに限定されるわけではない。
【0046】
例示的抗体としては、アブシキシマブ、アダリムマブ、アレムツズマブ、バシリキシマブ、ベバシズマブ、セツキシマブ、セルトリズマブペゴル、ダクリズマブ、エクリズマブ、エファリズマブ、ゲムツズマブ、イブリツモマブチウキセタン、インフリキシマブ、ムロモナブ-CD3、ナタリズマブ、オファツムマブ、オマリズマブ、パリビズマブ、パニツムマブ、ラニビズマブ、リツキシマブ、トシツモマブ、トラスツズマブ、アルツモマブペンテテート、アルシツモマブ、アトリズマブ、ベクツモマブ、ベリムマブ、ベシレソマブ、ビシロマブ、カナキヌマブ、カプロマブペンデチド、カツマキソマブ、デノスマブ、エドレコロマブ、エフングマブ、エルツマキソマブ、エタラシズマブ、ファノレソマブ、フォントリズマブ、ゲンツズマブオゾガミシン、ゴリムマブ、イゴボマブ、インシロマブ、ラベツズマブ、メポリズマブ、モタビズマブ、ニモツズマブ、ノフェツモマブメルペンタン、オレゴボマブ、ペンツモマブ、ペルツズマブ、ロベリズマブ、ルプリズマブ、スレソマブ、タカツズマブテトラキセタン、テフィバズマブ、トシリズマブ、ウステキヌマブ、ビシリズマブ、ボツムマブ、ザルツムマブ、およびザノリムマブが挙げられるが、これらに限定されるわけではない。
【0047】
本明細書における使用に好適な例示的酵素としては、ペルオキシダーゼ、リパーゼ、アミロース、有機リンデヒドロゲナーゼ、リガーゼ、制限エンドヌクレアーゼ、リボヌクレアーゼ、DNAポリメラーゼ、グルコースオキシダーゼ、ラッカーゼなどが挙げられるが、これらに限定されるわけではない。
【0048】
本明細書において使用されるさらなる活性物質としては、細胞増殖培地、例えば、ダルベッコ変法イーグル培地、ウシ胎仔血清、非必須アミノ酸、および抗生物質など;成長因子および形態形成因子、例えば、繊維芽細胞生長因子、形質転換成長因子、血管内皮成長因子、表皮成長因子、血小板由来増殖因子、インシュリン様成長因子)、骨形成成長因子、骨形成様タンパク質、形質転換成長因子、神経成長因子、および関連タンパク質など(成長因子は、当技術分野において公知であり、例えば、Rosen & Thies, Cellular & Molecular Basis Bone Formation & Repair (R.G. Landes Co.)を参照のこと;抗血管新生タンパク質、例えば、エンドスタチン、および他の天然由来タンパク質または遺伝子組み換えタンパク質;多糖、糖タンパク質、またはリポタンパク質;抗感染症薬、例えば、抗生物質および抗ウイルス剤、化学療法剤(すなわち、抗癌剤)、抗拒絶剤、鎮痛剤、ならびに鎮痛併用剤、抗炎症剤、およびステロイドなどが挙げられる。
【0049】
いくつかの態様において、当該活性物質は、生物体、例えば、細菌、菌、植物、または動物、あるいはウイルスであり得る。さらに、当該活性物質は、神経伝達物質、ホルモン、細胞内情報伝達物質、薬学的に活性な物質、毒性剤、農薬、有毒化学物質、生物毒素、微生物、および動物細胞、例えば、ニューロン、腎臓細胞、および免疫細胞などを含み得る。当該活性物質は、治療化合物、例えば、薬理学的物質、ビタミン、鎮静剤、催眠剤、プロスタグランジン、および放射性医薬なども含み得る。
【0050】
したがって、本発明は、本明細書において説明されたナノインプリント法を使用して製作された、その上にフォトニックナノパターンを有する絹フィブロインベースの生体高分子フィルムを提供する。いくつかの態様において、本発明は、そのようなナノパターン形成された絹フィブロインベースの生体高分子フィルムを含むオプティカルデバイスに関する。
【0051】
本発明のフォトニックナノインプリントされた絹フィルムは、50nmより小さい寸法において、微細な特徴を再現し得る。一態様において、当該絹フィルム上のナノパターンは、約20nm以下の最小寸法を有する少なくとも1つの特徴を有する。例えば、直径200nmのクロムナノ粒子(格子定数、250nm)の周期的パターンでナノインプリントされた絹フィルムの特性評価は、絹フィルム上にインプリントされた最小の横方向の特徴が50nm以下であり得ることを示している。別の例において、Rudin-Shapiroパターンに配置されたナノ粒子の配列を、絹フィブロインフィルム上にナノインプリントした。AFMによる当該絹フィブロインフィルムのこの非周期的Rudin-Shapiroパターンの特性評価によって、再現された最小の特徴として、インプリントされた孔の間の横方向の距離が20nmであることが示され、ならびに断面分析では、インプリントされた孔の深さが約30nmであることが示された。
【0052】
絹フィブロインベースの生体高分子フィルムは、特に、50nmより小さい寸法で微細な特徴を再現する場合、他の生体高分子に比べて、インプリントされたオプティクスに対して好ましいインプリントレジストを提供する。例えば、同様の温度(例えば、90℃および5psi〜25psi)において類似のプロセスを使用する場合、キトサンベースの生体高分子は150nmの特徴を再現するが、これは、絹フィブロインベースの生体高分子が再現することのできる微細な特徴(50nm〜20nm以下)よりかなり大きい。その上、キトサンは、絹フィブロインの高い光学的透明度を有しておらず、かつナノインプリントプロセスは、かなり長い時間を必要とする(キトサンが30分であるのに対し、絹フィブロインは数秒である)。Park et al., 2007を参照のこと。さらに、絹は、優れた機械的特性を提供し、かつ酸性条件下において可溶化を受けない。別の例として、光学的に透明な生体適合性ポリマーであるポリ(乳酸)(PLA)のナノインプリンティングは、数百ナノメートルまでの特徴を再現するが、これは、本明細書において作製される絹フィブロインベースの生体高分子が再現することができる微細な特徴よりも依然として大きい。その上、PLAは、その調製において溶媒を必要とし、かつ固着を防ぐためにマスターパターン(型)の表面処理を必要とするが、絹はそのどちらも必要としない。Christopher et al., 2006を参照のこと。他の室温ナノインプリント法およびレジストも存在するが、本絹フィルムの室温ナノインプリンティングよりも桁違いに大きい圧力を必要とする。Boriskina et al., 16 Opt.Express 12511-22 (2008); Khang et al., 13 Adv. Mater. 749-52 (2001)を参照のこと。
【0053】
本発明のナノインプリント法は、以前に説明された絹ソフトリソグラフィーキャスティングプロセスに有利に匹敵する(Perry et al., 2008)。当該キャスティングプロセスは、同様の電子ビームで製作されたマスターパターンを使用するが、それは有効ではあるものの、処理の際に人為的影響を導入し得る。対照的に、本発明のナノインプリント法の利点の1つは、微細な特徴の再現における高忠実度、および再現されたナノパターンの解像度の向上である。例えば、本発明において説明されたナノインプリントプロセスは、20nmの横方向の特徴を再現し得、特徴の深さの再現においてまたは型から取り外す際の人為的影響が無い。一態様において、当該ナノインプリントプロセスは、マスターパターンの特徴の±1nm、±5nm、または±10nm以内の標準偏差において、微細な特徴を再現し得る。例えば、室温ナノインプリント法による、絹フィルムにおける深さ75nmの特徴による3600溝/mm格子の再現において、絹において再現された特徴の深さは、マスターパターンの特徴の深さの±5nm以内の精度を有する。その上、本発明のナノインプリント法が必要とする時間は、キャスティングプロセスと比較した場合に桁違いに小さく、これは、ナノパターン形成された絹デバイスの製造において大幅に高い収量を可能にすると考えられる。
【0054】
本発明のナノインプリント法は、絹フィブロインベースの生体高分子フィルムにおける3次元構造の生成も可能にする。例えば、様々な3次元回折マイクロパターンを表示するポリカーボネートの回折オプティクスカードは、絹フィルムにおける3次元構造のナノインプリンティングにおけるマスターパターンとして使用することができる。これらのマスターパターンの表面は、微細で高品質な投影画像を生成するために、多重位相レベルをエンコードするようにエッチングされている。インプリントされた絹オプティクスを通してのレーザーの伝播の結果として得られる遠視野での画像投影による、絹フィルム上にインプリントされた3次元パターンの特性評価は、本発明のナノインプリント法を使用した、3次元ナノパターン形成された絹オプティカルデバイスを作製する能力および実現可能性を実証する。
【0055】
例えば、オプティカルデバイス、例えば、レンズ、マイクロレンズアレイ、ビームリシェーパー、パターン発生器、光学格子などのオプティカルデバイス中へ光を結合させる、またはオプティカルデバイスから外へ光を結合させる洗練された光学インタフェースが、適切に選択されたマスターナノパターンを用いた本発明のナノインプリント法を使用することにより、当該絹フィブロインベースの生体高分子フィルムにおいて実現することができる。
【0056】
このようなオプティカルデバイスの一例は、本発明のナノインプリントされた絹オプティクスを含むバイオフォトニックセンサーである。例えば、国際公開第2009/061823号に記載されている比色分析バイオフォトニックセンサー(ソフトリソグラフィーキャスティングプロセスを使用して作製)は、本発明のナノインプリント法を用いて製造することができる。さらに、室温および低温において絹フィルムにナノインプリントする能力は、当該センサーの多用性を広げ、それによって、抗体、ペプチド、酵素、細胞などの生理活性物質の形態において、不安定な生物学的「受容体」をセンサーへ直接的に組み込むことおよび安定化することにより、生体活性絹バイオフォトニックセンサーの容易な製造を可能にする。例えば、本発明のバイオフォトニックセンサーにおける生物学的「受容体」は、環境特性、例えば、ある特定の活性物質または化学物質、活性物質または化学物質における変化、とりわけ、pH、含水レベル、酸化還元状態、金属、光、応力レベル、抗原結合性、プリオンなどを感知するために使用され得る。
【0057】
本発明のバイオフォトニックデバイスは、環境において、ならびに生体適合性および生体分解性が最も重要である生命科学において、容易に使用することができる。例えば、上記において説明されたようなバイオフォトニックセンサーは、例えば人体などにおいて自然環境をモニターするために、目立たないように使用することが可能であり、かつ後で当該デバイスを回収する必要なく、インビボにおいて移植することができる。本発明のバイオフォトニックデバイスの分解寿命は、製造プロセスの際に、例えば、絹フィブロイン溶液の濃度、体積、および絹フィブロイン溶液中の様々な成分の比率を制御することによって制御することができる。その上、本発明のバイオフォトニックデバイスは、後で回収する必要なしに、環境中に分散させることが可能であり、したがって、検知および検出のための新規で有用なデバイスを提供する。
【0058】
当該オプティカルデバイスの別の例は、本発明のナノインプリントされた絹オプティクスを含むオプトフルイディックデバイスである。オプトフルイディクスは、様々な生物学的な検知および検出などの新たな用途を見出している。オプトフルイディックデバイスは、当初、コンパクトで新規の光変調技術を可能にするために、マイクロフルイディクスとフォトニクスとの融合として開発された。しかしながら、光と流体の閉じ込め構造の統合から、オプトフルイディックデバイスは検知の問題へ適用されるようになり(Domachuk et al., J. Opt. A-Pure Appl. Op. S129 (2007); Xiao & Mortensen, J. Opt. A-Pure Appl. Op. S463 (2007); Gersborg-Hansen & Kristensen, 15 Opt. Express 137 (2007))、特に、高い並列性と、高感度で少量の検体を用いる用途に目が向けられた。Mandal et al., 6645 Nanoengin. Fabrication, Props., Optics & Devices IV J6451 (2007)を参照のこと。通常、オプトフルイディックデバイスは、フォトニクスまたはマイクロフルイディクスにおいて一般的に見出される材料、例えば、シリカ、ケイ素、ポリジメチルシロキサン、またはポリメタクリルメタクリレート、ならびに他の高分子から製作される。これらの材料は、好適かつよく特徴付けられた光学特性および材料特性を有するが、本来、化学的に感度が高いわけでも、特異的なわけでもない。これらの材料は、その表面を化学試薬で機能化することが可能である。Erickson et al., 4 Microfluid. Nanofluid. 33 (2008)を参照のこと。とは言え、タンパク質または酵素を増感剤として使用した場合、非常に幅広い範囲の感度および特殊性が達成され得る。しかしながら、従来のオプトフルイディクスにおけるタンパク質の使用は、それ自体問題を抱えている。無機表面または合成高分子表面へのタンパク質(または、それを受容可能な化学物質)の結合は、煩雑である。Ksendzov & Lin, 30 Opt. Lett. 3344 (2005); D. Erickson & Li, 507 Anal. Chim. Acta 11(2004)を参照のこと。
【0059】
本発明のいくつかの態様は、オプトフルイディックパラダイムの開発に関するものであり、それらにおいて、絹フィブロインベースのオプトフルイディックデバイスは、化学的に感応性であるようにかつそれを通って流れる種に対して特異的であるように「活性化」され得る。優れた光学品質および機械的品質を有する絹フィブロインなどの材料は、様々なオプトフルイディック幾何学的構造に成形することができ、かつ活性なオプトフルイディックデバイスを実現するために必要である、包埋されたタンパク質の活性を維持する。
【0060】
一態様において、溶解赤血球によってドーピングされているインプリントされた絹をベースとする自己検知性ナノスケールオプトフルイディックデバイスを、本発明のナノインプリント法を用いて製作した。これに関して、ヘモグロビンによってドーピングされているインプリントされた絹格子を備えるフローセルを、酸素でバブリングし、スペクトル分析のために、インプリントされた絹格子を通して光源からの光を向けた。そのようなオプトフルイディックデバイスは、単一のオプトフルイディック要素が、絹にインプリントされた成分の活性化によって化学分析およびスペクトル分析の両方を提供する点において、「自己分析性」として見なすことができる。絹オプトフルイディックデバイスの操作全体は、絹フィルムの有利な長寿命および当該絹に包埋されたタンパク質の活性化によって可能となる。
【0061】
別の態様において、本発明のナノインプリント法は、光ファイバーの端部に統合することができる生体適合性の生体内吸収性光学要素を提供する。したがって、本発明の局面は、光ファイバーを機能化する方法ならびに機能化された光ファイバーを提供する。当該方法は、光ファイバーの端面上に絹フィブロインベースの生体高分子マトリックスを堆積させる工程と、当該生体高分子マトリックス上にフォトニックナノパターンを形成するために、当該生体高分子マトリックスのガラス転移温度を超えた温度において、マスターナノパターンを当該光ファイバーの生体高分子マトリックス端部に押し付ける工程と、当該ナノパターン形成された生体高分子マトリックスを当該マスターナノパターンから分離する工程とを含み、したがって、当該光ファイバーの端面上に、ナノパターン形成された絹フィブロインベースの生体高分子マトリックスを生成する。
【0062】
例えば、一定分量の絹フィブロイン溶液をファイバーチップ上に堆積させ、当該絹フィブロインを乾燥させるかまたは乾燥可能にする。適切なマスターナノパターンを使用して、当該ファイバーの絹フィブロイン端部上に光学要素をインプリントすることができる。当該インプリントプロセスは、室温で、または本明細書において説明された方法を用いて当該ファイバーの端部を加熱することにより、実施することができる。任意で、本明細書において説明されたようなナノインプリント法を使用するインプリントプロセスの前または後に、当該絹フィブロインベースの生体高分子マトリックス上に薄い金属層をコーティングしてもよい。さらに、本明細書において説明されたようなナノインプリント法を使用して、当該ファイバー端部に堆積された絹フィブロインベースの生体高分子マトリックス上に、望ましい複数のナノパターンをインプリントしてもよい。本明細書において説明されたように、活性物質または他のドーパントを、これらの態様に組み入れてもよい。
【0063】
当該ファイバー端部上に統合されているナノインプリントされた絹フィブロインベースの光学要素は、照射、集光、光分割、光再焦点化、あるいはマクロパターン形成またはナノパターン形成された表面によって決定される任意の他の様式のための機能および光処理も加え得る。
【0064】
一態様において、光ファイバーの端面上への絹回折光学要素の統合は、光導波路を後処理する方法として使用することができ、生物医学的ファイバーオプティクスにおいて、またはファイバーチップの迅速なプロトタイプ製造が必要とされる任意の他の用途において、光学要素の使用における多用性の向上を可能にする。例えば、現在の光学要素のいくつかでは、ファイバーチップ上に小さなレンズを接着させる必要があり、結果として、カテーテルまたは内視鏡での照明装置などのインビボでの適用の際に当該ファイバーが故障した場合、困難に陥る。ファイバーのチップにおける絹光学要素の使用は、生体適合性および生体分解性を伴う高い光学的品質、洗練された光学機能を提供する。例えば、ファイバーチップ上の絹光学要素が、インビボでの使用の際に当該ファイバーから剥離した場合でも、絹の生体分解性により、当該装置を除去する必要はないであろう。
【0065】
その上、ドーピングされた絹光学要素を光学ファイバー導波路に統合することは、固定された試料容量への励起源を送達するためのコンパクトな方法を提供し、これは、好都合なことに、ファイバー伝播モードと重なる。したがって、本発明のファイバーチップオプティクスは、当該ファイバー中を伝播する光によって、生体分子を取り込み分析することができる。ドーピングされた絹による当該ファイバーチップの機能化は、さらに、ファイバーベースのアッセイとして使用することができる。
【0066】
さらに、生体活性剤をドーピングされた絹オプティクスによって機能化されたファイバーチップは、薬物送達への新しい道を切り開くものである。例えば、インビボにおいて、カテーテルを使用して、1種類以上の治療剤を、通常の投与された医薬では容易には達することができない所定の部位へ直接送達することができる。ファイバーチップ上の絹オプティクスにドーピングされた治療剤は、光活性シェル、例えば、光開裂性ビオチンなどの光開裂性物質の中に封入してもよく、ファイバーを通してファイバーチップ上の絹オプティクスに光を向けることによって放出され得る。この態様によって送達され得る治療剤は、本明細書において説明されている。
【0067】
当該ナノインプリントされた絹フィブロインベースのフォトニックフィルムは、様々な他の用途において使用することができる。一態様において、当該フォトニック絹フィルムは、医薬、食品もしくは任意の変更可能な商品、または任意の包装に取り付けることができる。例えば、当該ナノインプリントされた絹フィルムは、例えば、ラベル表示されたアイテムの識別などを提供するためのホログラフィックラベルとして使用することができる。同様に、当該ラベル自体が、医薬などの活性物質(例えば、抗生物質)を含有することもできる。例えば、国際公開第2009/155397号を参照のこと。当該ナノインプリントされたフィルムは、他の絹ベースの薬物送達構築物、例えば、微小球体、パッド、多孔質構造体、またはフィルムなどと組み合わせてもよい。例えば、国際出願PCT/US09/44117号を参照のこと。
【0068】
別の態様において、当該フォトニック絹フィルムは、監視デバイス、柔軟なロボットデバイス、または医療用デバイスなどの他のデバイスに組み込んでもよい。例えば、国際出願PCT/US09/58534号を参照のこと。
【0069】
当該ナノインプリントされた絹フィブロインベースの光学要素は、再生医療においても使用することができる。例えば、ナノインプリントされた絹フォトニック構造体は、培養組織に取り付けることができ、または当該絹ベースの細胞培養構築物は、ナノインプリンティングのレジストとして使用することができる。そのような技術は、培養組織に、移植のモニタリングなどの機能、またはインビボでの当該培養組織の任意の活性をさらに付与するであろう。
【0070】
当該ナノインプリントされた絹フィブロインベースのフィルムは、ドーパントの有無にかかわらず、電子オプティカルデバイス、例えば、電子光学集光器、太陽光集光器、光学読み出しを有する機械的アクチュエーター、および軽量で分解性の電気活性デバイスが所望される他の適用などを製作するためにも使用され得る。これに関して、絹フィブロインフィルムは、ナノインプリンティングの前に改質してもよい。例えば、絹フィルムと当該フィルムを支持する基材との間において酵素触媒重合を行うことにより、導電性高分子を生成させることができ、これによって電気活性な絹マトリックスを作製することができる。例えば、国際公開第2008/140562号を参照のこと。そのような電気活性な絹マトリックスをフォトニクスパターンによってナノインプリントすることにより、有用な電子オプティカルデバイスを得ることができる。
【実施例】
【0071】
実施例1.絹フィブロインフィルムの形成
絹フィブロイン溶液の作製は、以前に記載されている。Perry et al., 2008;McCarthy et al., 54 J. Biomed.Mats.Res.139 (2001)を参照のこと。簡潔に言えば、Bombyx moriの繭を0.02MのNaCO3水溶液中で60分間煮沸することにより、原料フィブロインフィラメントに結合した水溶性糖タンパク質であるセリシンを絹糸から分離した。その後、残留した絹フィブロインの塊を、精製水中で十分に洗浄し、一晩乾燥させた。次いで、乾燥したフィブロインの塊を、9.3MのLiBr水溶液中において60℃で4時間溶解させた。その後、Slide-A-Lyzer(登録商標) 3.5K MWCO透析カセット(Pierce,Rockford,IL)を使用する水ベースの透析プロセスにより、LiBr塩を当該溶液から3日間かけて抽出した。残留している微粒子はすべて、遠心分離およびシリンジベースの精密ろ過(孔径5μm、Millipore Inc.,Bedford,MA)により除去した。このプロセスでは、光学用途のための、不純物が最少でかつ散乱が減じられた8%〜10%(w/v)の絹フィブロイン溶液を得ることができる。その上、当該絹フィブロイン溶液は、例えば、約30%(w/v)まで濃縮することができる。例えば、国際公開第2005/012606号を参照のこと。簡潔に言えば、低濃度の絹フィブロイン溶液を、所望の濃度を得るのに十分な期間において、吸湿性高分子、例えば、PEG、アミロース、またはセリシンなどにより透析してもよい。
【0072】
さらに、絹フィブロイン溶液は、本明細書において説明されたように、1種類以上の生体適合性高分子、例えば、ポリエチレンオキシド、ポリエチレングリコール、コラーゲン、フィブロネクチン、ケラチン、ポリアスパラギン酸、ポリリシン、アルギン酸塩、キトサン、キチン、ヒアルロン酸など;あるいは1種類以上の活性物質、例えば、細胞、酵素、タンパク質、核酸、抗体などと組み合わせることができる。例えば、国際公開第2004/062697号および同第2005/012606号を参照のこと。絹フィブロインは、絹タンパク質の物理的性質および機能性を変えるために、例えば、ジアゾニウムまたはカルボジイミドカップリング反応、アビジン−ビオチン相互作用、または遺伝子組み換えなどにより、当該溶液中において活性物質によって化学的に改質することも可能である。例えば、国際出願PCT/US09/64673号;米国特許出願第61/227,254号;同第61/224,618号;同第12/192,588号を参照のこと。
【0073】
絹フィブロイン溶液を調製した後、1mLの当該溶液をガラス製顕微鏡スライド(1インチ×1.5インチ)上にキャストし、空気中で一晩かけて結晶化させた。結果として得られたフィルムは、ガラススライドに付着し、厚さは、使用した絹フィブロインの濃度に応じて、およそ20μm〜25μmあった。Lawrence et al., 2008を参照のこと。基材上にキャストされた絹フィブロイン溶液の濃度および/または量を調節することにより、2nm〜1mm圧の絹フィルムを生成することができる。あるいは、当該絹フィブロイン溶液を、様々な濃度および回転速度を用いて、基材上にスピンコーティングすることにより、2nm〜100μmのフィルムを生成させることができる。インプリンティングのために、当該絹フィルムを疎水性表面にキャストすることによって、自立型のフィルムを作製することもできる。Jiang et al., 2007; Lawrence et al., 2008を参照のこと。これらの絹フィブロインフィルムは、優れた表面品質および光透過性を有している。
【0074】
さらに、当該絹フィルムは、例えば、ポリエチレングリコールによって活性化することができ(例えば、国際出願PCT/US09/64673号を参照のこと)、および/または一様な様式または勾配のある様式において、活性物質を添加し、生物体を培養することができる。例えば、国際公開第2004/0000915号;同第2005/123114号;米国特許出願公開第2007/0212730号を参照のこと。当該絹フィルムの特徴、例えば、モルフォロジー、安定性、融通性などを変えるために、他の添加剤、例えば、ポリエチレングリコール、PEO、またはグリセロールなども、当該絹フィルム中に添加することができる。例えば、国際出願PCT/US09/060135号を参照のこと。例えば、酵素触媒重合により、さらなる機能性を当該絹フィルムに付与することができ、絹フィルムと当該フィルムを支持している基材との間において導電性高分子を生成させて電気活性な絹マトリックスを作製することが可能であり、これらは、ナノインプリンティングの後の電子オプティカルデバイスの可能性を提供するものである。例えば、国際公開第2008/140562号を参照のこと。
【0075】
実施例2.絹フィブロインフィルムのナノインプリンティング
本明細書において提示される絹ナノインプリント法は、絹フィブロインにより吸収された水分に応じて変わる、絹フィブロインフィルムのガラス転移温度を調節する能力を利用する。Hoagland et al., 63 J. Appl. Polymer Sci.401 (1997)を参照のこと。周囲湿度(約35%)で調製された場合、当該絹フィブロインフィルムのガラス転移温度は約100℃である。絹フィブロインフィルムが水で飽和している場合、絹フィブロインのガラス転移温度は、室温(周囲温度)まで下がり得る。
【0076】
周囲湿度において絹フィルムにナノインプリントするために、加熱された(100℃)マスターパターンに絹フィルムを5秒間押し付ける(約50psi)熱エンボス加工プロセスを用いた(図1A)。インプリントの後、当該マスターパターンは絹フィルムに接着した。次いで、わずかに冷却した後(60秒)、カミソリの刃を用いて、てこにより容易にマスターパターンを分離した。型表面処理(例えば、付着防止処理)は必要なかった。熱エンボス加工技術でインプリントされたフィルムの実施例は、図2、3、4、および6を参照のこと。
【0077】
水で飽和した絹フィルムの場合、ガラス転移温度は周囲温度である。室温での絹フィルムのナノインプリンティングは、マスターパターンを押し付ける前に、ガラス転移温度を局所的に減じるために少量の水(<1μL、例えば、0.5μLの精製H2Oの小滴)を当該フィルム上に堆積させることによって達成した(図1B)。当該マスターパターンは、フィルムを周囲湿度に戻して余分な水を蒸発させた後(約10分間)、容易に取り外した。
【0078】
インプリント後、フォトニックフィルムは、湿潤環境において数日間アニール処理するか、またはメタノールに晒すことにより、それらの水溶解性を減じることができる。これらの後処理法は、絹フィブロインタンパク質の二次構造を一次ランダムコイルから一次β−シートへと変えて、絹フィブロインのガラス転移温度を高める。インプリンティングの後処理の後、当該光学フィルムは、極めて安定であり、それが数年続く。
【0079】
さらに、当該ナノインプリントされた絹フィルムは、例えば、ポリエチレングリコールによる表面改質によって活性化してもよく(例えば、国際出願PCT/US09/64673号)、および/または一様な様式または勾配のある様式において、活性物質を添加するか、または生物体を培養してもよい。例えば、国際公開第2004/0000915号;同第2005/123114号;米国特許第2007/0212730号を参照のこと。
【0080】
実施例3.ナノインプリントされた絹フィルムの特性評価
多種多様なナノパターン形成されたフォトニック絹フィルムを製造するための、本発明のナノインプリント技術の適用性を実証するために、絹フィルムインプリンティングに対していくつかの異なるマスターパターンを使用した。本明細書において使用したマスターパターンとしては、3600溝/mmホログラフィック回折格子(Edmund Optics, Inc.,,Barrington,NJ)、ならびに、周期的にまたはRudin-Shapiro(R-S)幾何学状に配置され、電子ビームリソグラフィーによってシリコン基板上に製作された700nm〜250nmの間で格子定数が変わるクロムまたはチタンのナノ粒子(直径200nmおよび高さ35nm)の配列が挙げられる。Dallapiccola et al., 16 Opt.Express 5544-55 (2008);Gopinath et al., 8 Nano Lett.2423-31 (2008)を参照のこと。マスクの領域は、0.5cm2〜1cm2の範囲である。
【0081】
ナノインプリントされた絹フィルムは、走査型電子顕微鏡(SEM)、原子間力顕微鏡(AFM)、および光学顕微鏡によって特性評価した。絹フィルム上にナノインプリントされた非周期的R-Sパターンを図2Aに示す。この画像から、再現された最小の特徴は、2つの孔の間の横方向の距離である。これは、20nmであることが測定された。図2Bは、ナノインプリントされた周期的構造を示している。図2Cに表示された断面分析は、当該特徴の深さがおよそ30nmであることを示している。
【0082】
図3Aは、キャストされた絹フィルム上に室温でインプリントされた3600溝/mm格子のAFM画像を示している。図3Bは、277nmの格子周期および75nmの特徴深さを示す断面を示している。図3Cおよび3Dは、対応するAFM画像およびマスター格子の断面を示している。図3A〜3Bと図3C〜3Dの比較は、本発明のナノインプリント技術の使用による、インプリントされた絹フィルムにおける再現の正確さを示している。
【0083】
図4Aは、700nm間隔の直径200nmのクロムナノ粒子の周期的パターンにより、100℃でナノインプリントされた絹フィルムのAFM画像である。図4Bは、図4Aの画像の断面を示している。図4Cに示されているのはまた、格子定数が250nmのみであること以外は同様の、直径200nmのクロムナノ粒子の周期的パターンでナノインプリントされた絹フィルムのSEM画像である。この画像は、絹フィルムにインプリントされた横方向の特徴が50nmより小さくあり得ることを示している。
【0084】
実施例4.絹フィブロインフィルムにおける3次元構造のナノインプリンティング
3次元構造のナノインプリンティングは、異なる3次元回折マイクロパターンを表示する様々なポリカーボネート回折オプティクスカード(Digital Optics Corp., Charlotte, NC; Tessera Technologies, Inc., San Jose, CA)を使用して実証した。これらの表面は、微細で高品質に投影された画像を生成するために、多重位相レベル(例えば、64の位相レベル)によってエンコードされたポリカーボネートカード上にエッチングした。図5および図6Aは、絹フィブロインフィルムにおけるインプリントされた3次元回折表面のAFM画像を示す。図6Bは、図6Aに示されているインプリントされた絹光学フィルムを通しての、He:Neレーザーの伝播による遠視野での投影画像を示している。これらの画像は、本発明において説明されたナノインプリント技術の3次元パターン形成能力を実証するものであり、絹ベースのオプティカルデバイスを実現している。
【0085】
実施例5.絹フィブロインフィルムにおける複数のナノパターンによるナノインプリンティング
複数のパターンによるナノインプリンティングは、連続するナノインプリンティングを使用して実証した。マスターナノパターンとして、3600溝/mm回折格子を使用した。お互いに対して90°回転させた2方向に配置したマスターパターンにより、同じ絹フィブロインフィルム上において、インプリントプロセスを2回繰り返した。結果として得られた複数のナノパターンが形成された絹フィルムのAFM画像および断面寸法は、図7に示されており、単一のフィルム上に複数のパターンをインプリントする能力を実証している。複数のパターンによってフィルムにナノインプリントする能力は、本明細書において説明されるナノインプリントプロセスの大きな利点である。
【0086】
実施例6.金属コーティングされた絹フィブロインフィルムにおけるナノパターン
金属コーティングされた絹フィブロインフィルムのナノインプリンティングは、例えば、実施例1と同様に調製された絹フィルムに適用することができる。このフィルムを、金などの金属の薄層によってコーティングする。それに続いて、本明細書において説明されたのと同じ技術によって、ナノインプリンティングを達成する。
【0087】
マスターパターンとして1200溝/mm格子構造および3600溝/mm格子構造を使用して、金コーティングされたフォトニック絹フィルムを作製した。図8は、50nmの金でコーティングされ、お互いに対して90°の方向に配置したこれら2つのマスターパターンによってインプリントされた、複数のナノパターンが形成された絹フィルムのAFM画像を示している。
【0088】
実施例7.比色分析センサーとしてのナノインプリントされた絹オプティクス
白色光照射において、図4に示されているナノインプリントされた周期的構造は、高品質の2次元回折格子として振る舞い、明確な格子次数内において効率的に光を散乱させる。インプリントされた構造の格子定数(孔の間隔)は、異なる周波数の散乱効率を決定し、したがって表示される構造色を決定する。Gopinath et al., 2008を参照のこと。
【0089】
図9および10における顕微鏡画像およびスペクトルは、Olympus IX71顕微鏡(Olympus America Inc.,Center Valley,PA)に取り付けたNuance FXカメラ(CRi,Woburn,MA)により撮影した。使用した対物レンズは、4×0.13NA Olympus UPLAN FLN対物レンズであった。照明は、Olympus U−DCD 0.8−0.92 NA暗視野集光器からの照射か、またはフォトニック結晶ファイバー(19セル 1550nmのバンドギャップの中空コア)におけるSpectra-Physics Tsunami(登録商標) Ti:Sapphire発振器(Newport Corp., Irvine,CA)からの100fs 80MHzのレーザーパルスの非線形変換により作り出した。発生させた白色光は、マルチモード光ファイバー(GIF625,Thorlabs,Inc.,Newton,NJ)を通して伝送させ、Eppendorf TransferMan(登録商標) NK2マイクロマニピュレータ(Eppendorf,Hamburg,Germany)のマイクロピペットチップを通して供給した。マイクロマニピュレータを使用する場合、ファイバーは、インプリントされた絹の表面から100μmの表面法線から80°の角度に位置させた。
【0090】
純粋な絹フィブロインフィルムにおけるそのような構造の第一の実施は、図9に示されており、これらの図は、周期的な、平坦なフォトニック結晶格子(図9Aおよび9B)および非周期的なR-S幾何学構造(図9Cおよび9D)、ならびに白色光照明下でのそれらのナノパターン形成された幾何学構造によって定義される関連色を示している。
【0091】
図10Bは、フォトニック結晶ファイバーにおいて発生したスーパーコンティニューム光によって照らされた、インプリントされた構造の4×顕微鏡画像を示している。当該構造の格子定数は、図中の左から右へ、600nm、500nm、400nm、および350nmである。インプリントされた構造およびファイバーの水中への浸漬の際の、顕微鏡の対物レンズによって収集された構造色におけるシフト(図10B)が示されており、これは、水(nwater=1.333)と空気(nair=1.000)との間の回折率における違いに起因する。透明な絹基材にインプリントされた、周期的に配置されたエアホールにおいて構造色が変化するメカニズムは、周期的格子の古典的な回折理論の範囲で定性的に理解することができる。この式は、所定の入射角に対する、単一格子における特定の散乱角を予測するものである(式1)。Loewen et al., Diffraction gratings and applications, (Marcel Dekker, Inc., New York, 1997)を参照のこと。
Λは格子定数であり、λは入射光の波長であり、θincおよびθdifは、入射角および回折角(格子表面の法線に対して測定)であり、mは回折次数であり、ならびにn1およびn2は、それぞれ、絹と周囲媒質の屈折率である。図10Aは、格子および角度の定義の概略図を示している。透過光は、−7.5°≦θdif≦7.5°(NA=0.13)での実験において使用された開口数によって定義される小さな円錐の角度内において集光されるので、次数の一部のみを収集した。周囲媒体の屈折率における変化は、すべての格子次数の回折角をシフトさせ、絹構造体の構造色応答を決定する。この効果は、図10Cにおいて確認することができ、図10Cには、最初の4つの回折次数に対応する算出された散乱波長、回折角、および最大集光円錐限界が示されている。格子周期および屈折率の変化の値に応じて、2つの状況が可能であり、同じ格子次数mでは、波長の段階的な赤方シフトが観察され(図10C(a))、または連続する格子次数m+1では、結果として構造色の青方シフトが観察される(図10C(b))。屈折率における変化に起因する、散乱色において観察されるシフトは、ナノインプリントされた絹構造が、異なる屈折率の溶液に対して、構造色および比色分析センサーを設計するために好適な候補であることを示している。Boriskina et al., 2008を参照のこと。
【0092】
実施例8.オプトフルイディックデバイスとしてのナノインプリントされた絹オプティクス
バイオフォトニックセンシングにおける使用における絹ナノインプリンティングの有用性は、自己検知性オプトフルイディックデバイスを製作することによって実証した。そのようなデバイスを作製するために、絹フィブロイン溶液を溶解赤血球(すなわち、ヘモグロビン)でドーピングし、ガラススライド上にキャストしてフィルムを形成した。本明細書において説明された室温ナノインプリント法を使用して、ヘモグロビンでドーピングした絹フィルムに、600溝/mm格子をインプリントした。結果として得られる絹オプティクスは、インプリントされた格子を保持するために、ならびに水溶解性を排除するために、メタノールによってアニール処理した。次いで、ドーピングされインプリントされた絹格子により、マイクロ流体フローセルの片面を形成した。当該フローセルのもう一方の面は、脱イオン水で満たされたガラスカバースリップに面したポリジメチルシロキサン(PDMS)で構成した。当該フローセルの上部は、水を容易に追加できるように、開放したままにした。当該フローセルの底部に小さな開口部を作製して、セル中へのガス交換を可能にした。タングステン光源を、10×顕微鏡の対物レンズにより視準を合わせ、インプリントされた絹格子を通して、スペクトル分析のためにスペクトルノッチフィルタで較正されたLC1 CCDラインカメラ(Thorlabs, Inc.)に向けた。溶解血球を用いないで同様に調製された絹格子を、参照として使用した。
【0093】
図11は、酸素または窒素のいずれかの存在下での、ヘモグロビンでドーピングされているインプリントされた絹格子の吸収スペクトルを示している。最初に、窒素をフローセルを通してバブリングさせて、ヘモグロビンを完全に脱酸素化した。酸素フローにおいて、ピークが540nmおよび575nmに見られ、ヘモグロビンへの酸素の結合を示した。当該プロセスは、酸素ガスを窒素ガスに交換することによって、逆転させることができる。当該プロセスは、インプリントされた絹フィルムを数ヶ月保存した後でも繰り返し可能であった。この結果は、製作プロセス、実験室での貯蔵、および繰り返しの実験にもかかわらず、フォトニック絹マトリックス内でのヘモグロビンタンパク質の持続的活性化を実証する。絹オプトフルイディックデバイスの全体的な操作は、絹フィルムの有利な長寿命および当該絹に包埋されたタンパク質の活性化によって可能となる。
【技術分野】
【0001】
政府支援
本発明は、米国陸軍研究所および米国陸軍研究事務所により付与された契約番号第W911NF-07-1-0618号に基づき政府の支援を受けて達成された。米国政府は、本発明に対してある一定の権利を有する。
【0002】
関連出願
本出願は、米国特許法第119条e項の下、2009年2月12日に出願された米国特許出願第61/151,866号の優先権の恩典を主張するものである。
【0003】
発明の分野
本発明は、絹フィブロインベースの生体高分子構造体上にナノメータースケールのフォトニックパターンを形成するためのナノインプリント法を対象とする。より具体的には、本発明は、金属コーティングを備えていてもいなくてもよい、フォトニックナノパターン形成された絹フィブロインベースの生体高分子フィルム、ならびにそれらによって作製されたオプティカルデバイス、例えば、バイオフォトニックセンサー、オプトフルイディックデバイス、薬物送達デバイス、および絹機能化光ファイバーなどを提供する。
【背景技術】
【0004】
発明の背景
絹フィブロインベースの生体高分子フィルムは、絹フィブロインを平坦なフォトニック格子上にキャストするソフトリソグラフィー技術を使用してマイクロスケールおよびナノスケールにおいてパターン形成することができる。しかしながら、このキャスティングプロセスは、12〜36時間を要し、複数のデバイスの迅速な製造には不都合な場合がある。さらに、ソフトリソグラフィーのキャスティング技術は効果的であるが、フィルムにいくつかの人為的影響、例えば、機械的な取り外しに由来する不均一な端部または乾燥プロセスに由来する、再現された特徴における過剰な深さなどを与える場合がある。
【0005】
ナノインプリンティングは、マイクロスケール、サブマイクロスケール、およびナノメータースケールのパターンを製作するための、代替的なハイスループットなリソグラフィー技術である。この方法では、ガラス転移温度以上に加熱された熱可塑性材料に型を押し付け、軟化した材料が印加された圧力によって当該型に一致する。細胞、酵素、または他の非耐熱性物質を組み入れる生物医学的用途およびオプティカルデバイス用途における使用のために、特に生理的温度および室温において、改善された解像度およびハイスループットの、ナノパターン形成された生体高分子フィルムを製作する技術が依然として求められている。
【発明の概要】
【0006】
包括的に熱エンボス加工技術または周囲温度におけるエンボス加工技術を用いる、本発明の絹フォトニックナノインプリント法は、迅速で、安価であり、絹フィブロインベースの生体高分子フィルムに、光学的に妥当なミリスケール、マイクロスケール、サブマイクロスケール、およびナノスケールの特徴を作製するためのハイスループットな方法を可能にする。当該ナノインプリント法は、絹フィブロインベースのフィルムの好ましい光学特性、例えば、可視領域での高透明性、高い機械的安定性、および全て水性の処理であることなどと組み合わせされて新規の材料プラットフォームとして容易に機能化および利用することができる、妥当なミリスケール、マイクロスケール、サブマイクロスケール、およびナノスケールでの全て有機的なバイオフォトニック要素の製造に道を開くものである。このアプローチは、ナノフォトニクス、生体高分子材料、および生体適合性材料をシームレスに組み合わせ、生物医学的オプティカルデバイスに新たな側面を加えるものである。
【0007】
本発明の態様は、様々な条件下において、絹フィブロインベースの生体高分子フィルム上にフォトニックナノパターンをインプリントするための、ハイスループットのリソグラフィー法を提供する。より具体的には、絹フィブロインベースの生体高分子フィルムのナノインプリントは、包括的に高温(例えば、約100℃)または室温において、異なるレベルの含水によって絹フィブロインフィルムのガラス転移温度を局所的に調節することによって実施され得る。当該絹フィブロインベースの生体高分子フィルムは、同じかまたは異なるマスターパターンを使用してインプリントプロセスを繰り返すことによって、複数のフォトニックパターンでナノインプリントすることも可能である。さらに、当該絹フィブロインベースの生体高分子フィルムは、インプリントプロセスの前または後に、薄い金属層でコーティングしてもよい。当該絹フィルムは、光ファイバーの端部に配置される前または後にナノパターン形成してもよく、それによって当該光ファイバーを機能化または生体機能化することができる。本発明の利点は、フォトニックパターン形成された絹ベースの材料中に、生体活性剤、例えば、細胞および酵素などを包含させることを可能にする。
【0008】
本発明の一態様は、絹フィブロインベースの生体高分子フィルム上にフォトニックナノパターンを形成するためのインプリント法に関する。当該方法は、絹フィブロインベースの生体高分子フィルムを得る工程と、当該生体高分子フィルム上にフォトニックナノパターンを形成するために、フォトニックナノパターン形成された基材(すなわち、マスターナノパターン)を、当該生体高分子フィルムのガラス転移温度を超えた温度において当該生体高分子フィルムに押し付ける工程と、任意で、当該ナノパターンとナノパターン形成された生体高分子フィルムとを分離する工程とを含む。
【0009】
本発明の別の態様は、絹フィブロインベースの生体高分子フィルム上に複数のナノパターンを形成するためのインプリント法を提供する。当該方法は、以下の工程:(a)絹フィブロインベースの生体高分子フィルムを得る工程、当該生体高分子フィルム上にフォトニックナノパターンを形成するために、当該生体高分子フィルムのガラス転移温度を超えた温度において、第一のフォトニックナノパターンを当該生体高分子フィルムに押し付ける工程、および当該第一のナノパターンとナノパターン形成された生体高分子フィルムとを分離する工程、(b)第二のフォトニックナノパターンを、当該生体高分子フィルムのガラス転移温度を超えた温度において、工程(a)により形成されたナノパターン形成された生体高分子フィルムに押し付け、それによって当該生体高分子フィルム上に第二のフォトニックナノパターンを形成する工程、および当該第二のナノパターンとナノパターン形成された生体高分子フィルムとを分離する工程、を含む。当該方法は、工程(b)を繰り返す工程をさらに含んでいてもよく、したがって、当該生体高分子フィルム上において所望の複数のナノパターンが達成されるまで、同じ絹フィブロインベースの生体高分子フィルムにインプリントする。
【0010】
いくつかの態様において、本発明のナノインプリント法において使用された当該絹フィブロインベースの生体高分子フィルムは、インプリントプロセスの前または後に金属層でコーティングされ得る。当該フォトニックナノインプリントプロセスは、絹フィブロインタンパク質の二次構造を一次ランダムコイルから一次β−シート構造へと変えて当該絹フィブロインのガラス温度および/または水溶解性を増加させるインプリント後工程をさらに含んでいてもよい。
【0011】
本発明の別の態様は、例えば、生物医学的用途のための、光ファイバーの端部に一体化することができる生体適合性で生体内吸収性の絹フィブロインベースの光学要素を製造するために、本発明のナノインプリント法を採用する。したがって、本発明のある局面は、光ファイバーを機能化または生体機能化する方法を提供する。当該方法は、光ファイバーの端面上に絹フィブロインベースの生体高分子マトリックスを堆積させる工程と、当該生体高分子マトリックス上にフォトニックナノパターンを形成するために、当該生体高分子マトリックスのガラス転移温度を超えた温度において、フォトニックマスターナノパターンを当該光ファイバーの端部の生体高分子マトリックスに押し付ける工程と、当該ナノパターン形成された生体高分子マトリックスと当該マスターナノパターンとを分離する工程とを含み、したがって、当該光ファイバーの端面上に、フォトニックナノパターン形成された絹フィブロインベースの生体高分子マトリックスを製造する。
【0012】
本発明の他の態様は、様々な用途、例えば、とりわけ、医薬、食品、または包装物へのナノインプリントされた絹フィブロインベースのフォトニックフィルムの取り付け、監視デバイス、柔軟なロボットデバイス、または医療用デバイスなどのデバイスへの当該フォトニック絹フィルムの組み込み、培養組織へのナノインプリントされた絹フォトニック構造体の組み込み、およびナノインプリンティングによる電気活性な絹フィブロインフィルムを使用した電子オプティカルデバイスの製作などにおけるナノインプリントされた絹フィブロインベースのフォトニックフィルムの使用に関する。
【0013】
本発明のナノインプリント法の特定の利点は、局所的にガラス転移温度を低下させることにより、室温で絹フィルムにナノインプリントできるこということである。これは、絹が、温度感応性ドーパントまたは生物製剤、例えば、細胞、タンパク質、および酵素などを含有し得るような、あるいは絹が、再生医療のためのナノ構造化された支持体として使用され得るようなデバイスおよび用途に対して有用である。
【0014】
本発明は、本明細書において説明されたナノインプリント法を使用して製作された、その上にナノパターンを有する絹フィブロインベースの生体高分子フィルムも提供する。いくつかの態様において、本発明は、そのようなナノパターン形成された絹フィブロインベースの生体高分子フィルムを含むオプティカルデバイスに関する。これらのフォトニックナノパターン形成された絹ベースのフィルムおよびデバイスは、さらに、少なくとも1種類のドーパント、活性物質、または生物製剤を含み得る。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】熱エンボス加工の条件でのナノインプリントプロセスの例示的態様の概略図(図1A)および室温エンボス加工の条件でのナノプリンティングプロセスの例示的態様の概略図(図1B)である。
【図2】周期的および非周期的にインプリントされたナノホールを示すデータを表す。(図2A)20nm間隔で直径200nmのホールが絹にインプリントされたRudin−Shapiroパターンの原子間力顕微鏡(AFM)画像を示す。(図2B)400nm間隔で直径200nmのホールが絹にインプリントされた周期的パターンのAFM画像である。(図2C)ホールの深さが30nmであることを示す(2B)の断面を表す。
【図3】室温エンボス加工技術によって製造された、ナノインプリントされた絹フィルムに関するデータを表す。(図3A)3,600溝/mm格子を再現する、インプリントされた絹フィルムのAFM画像である。(図3B)(3A)の断面寸法を表す。(図3C)3,600溝/mm格子を有する、使用されたマスターパターンのAFM画像である。(図3D)(3C)の断面寸法を表す。
【図4】熱エンボス加工技術によって製造された、ナノインプリントされた絹フィルムに関するデータを表す。(図4A)700nm間隔で直径200nmのホールが絹にインプリントされた周期的格子パターンのAFM画像である。(図4B)(4A)に図示された線に沿って測定された(4A)の断面を表す。(図4C)250nm間隔で直径200nmのホールが絹フィルムにインプリントされた周期的パターンの走査型電子顕微鏡(SEM)画像である。
【図5】絹フィブロインフィルムにインプリントされた3次元回折光学パターンのAFM画像である。
【図6】図6Aは、絹フィブロインフィルムにインプリントされた3次元回折光学パターンのAFM画像である。図6Bは、図6Aに表された絹光学フィルムを通したHe:Neレーザーの伝播による投影である。本明細書において提示されたいくつかの図のカラー画像は、Amsden et al., 17 Opt.Exp. 21271-79 (2009)またはAmsden et al., 22 Adv.Mater.1-4 (2010)において見出すことができる。
【図7】図7Aは、90°相対する方向において絹フィルム上に2回インプリントされた3600溝/mm格子のAFM画像である。図7Bは、図7Aに示された2つの直交する方向に沿った断面寸法である。
【図8】90°相対する方向において1200g/mmおよび3600g/mmでインプリントされた、絹フィルム上の厚さ50nmの金フィルムのAFM画像である。
【図9】ナノインプリントされた絹フィルムの、白色光照射での構造色を示す。(図9A)絹フィルムにおける周期的ナノホールのSEM画像を示す。当該ナノホールは、直径200nm、深さ30nm、間隔300nmである。(図9B)図9Aの拡大図を示す。(図9C)暗視野集光器から光を照射された、周期的ナノホールによってパターン形成された絹フィルムの構造色を示す。格子定数は、左から右へ順に700、600、500、および400nmである。着色された正方形の列の間の距離は、200μmである。
【図10】水への浸漬での、ナノインプリントされた絹フィルムの構造色の変化を示す。(図10A)幾何学構造を表す。(図10B)スーパーコンティニューム光を照射された、周期的にインプリントされた直径200nmおよび深さ30nmのナノホールを示す。ホールの間隔は、図において右から左へ順に600nm、500nm、400nm、および350nmと変わっている。上側のパネルにおいて、ホールの上方の媒体は空気である。下側のパネルにおいて、ホールの上方の媒体は水である。(図10C)400nm(10C(a))および600nm(10C(b))の周期における絹格子の最初の4つの回折次数に対する回折角と波長の関係を示す(n2=1.54、θinc=80°)。暗色の領域は、実験において観察可能なパラメータ範囲(可視スペクトル周波数帯域内かつ集光円錐部内)を示している。
【図11】溶解赤血球(ヘモグロビン)(HbO)でドーピングされているナノインプリントされた絹フィルムのスペクトル反応(吸収対波長)を示すグラフ。
【図12】ファイバーチップ上に絹フィブロインベースのマトリックスを形成し、次いで当該絹フィブロインマトリックスにナノインプリントすることによる光ファイバー端部の機能化を表す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の詳細な説明
本発明は、本明細書において説明される特定の方法、プロトコール、および試薬等に限定されることなく、したがって、変動し得ることは理解されるべきである。本明細書において使用される専門用語は、特定の態様を説明するためのものであって、本発明の範囲を限定することは意図しておらず、本発明の範囲は添付の特許請求の範囲によってのみ定義される。
【0017】
本明細書およびクレームにおいて使用される場合、そうでないことが文脈において明確に示されていない限り、単数形はその複数形を含み、逆も同様である。実施例以外において、またはそうでないことが示されている場合を除き、本明細書において使用される成分の量または反応条件を表すすべての数字は、すべての場合において「約」という用語で修飾されているものとして理解されるべきである。
【0018】
特定されたすべての特許および他の刊行物は、例えばそのような刊行物に記載されている本発明と関連して使用され得る方法を記載および開示する目的のために、参照により本明細書に明示的に組み入れられる。これらの刊行物は、本出願の出願日以前におけるそれらの開示を単に提供するものである。これに関するいかなる点においても、先行発明または他の任意の理由によって本発明者らがそのような開示に先行する権利のないことへの承認として解釈されるべきではない。日付に関するすべての言及、またはこれらの文書の内容に関する説明は、出願者らが入手可能な情報に基づいており、これらの文書の日付または内容の正確さに関していかなる承認も構成しない。
【0019】
そうでないことが明記されない限り、本明細書において使用されるすべての専門用語および科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者に共通して理解される意味と同じ意味を有する。本発明の実施または試験において、任意の公知の方法、デバイス、および材料を用いることができるが、その意味においての方法、装置、および材料を本明細書に記載する。
【0020】
「ナノパターン」または「ナノパターン形成された」という用語は、本明細書において使用される場合、絹フィブロインベースのフィルムまたは絹フィブロインベースのフィルムを含むオプティカルデバイスに提供される微細なフォトニックナノパターン形成を意味し、ナノメータースケール(すなわち、10-9メーター)において適切に測定され得るサイズの構造的特徴を有するパターン形成は、例えば、境界値を含めて1ナノメーター〜ミリメーターの範囲の大きさを有する。
【0021】
絹フィブロインベースの生体高分子の優れた機能的特性と加工性に鑑みて、本発明のナノパターン形成されたフィルムおよびナノパターン形成されたオプティカルデバイスのいくつかの態様が、絹フィブロインベースの生体高分子を用いて本明細書において実施される。マイクロパターン形成およびナノパターン形成された柔軟な材料が、様々なマイクロ流体デバイス、オプティカルデバイス、機械的デバイス、および電子デバイスに対して益々有用となる中、生体高分子ベースの材料基材に対するこのパラダイムの拡張は、そのようなデバイスに新しい選択肢を提供する。
【0022】
絹フィブロイン、コラーゲン、およびキトサンなどの生体高分子は、生物医学的オプティカルデバイスへの組み込みに対して将来有望な材料である。絹フィブロインは、その光学特性(Lawrence et al., 9 Biomacromolecules 1214-20 (2008))、機械特性(Altman et al., 24 Biomat. 401-16 (2003);Jiang et al., 17 Adv. Funct. Mater. 2229-37 (2007))、全て水性の処理であること(Sofia et al., 54 J. Biomed. Mater. Res. 139-48 (2001); Perry et al., 20 Adv. Mater. 3070-72 (2008))、比較的容易な機能化(Murphy et al., 29 Biomat. 2829-38 (2008))、および生体適合性(Santin et al., 46 J. Biomed. Mater. Res. 382-9 (1999))故に、そのような装置の形成において特に魅力的な生体高分子の候補である。例えば、絹フィブロインは、優れた表面品質と光透過性とを備えた、薄く機械的に丈夫なフィルムに加工することができる。
【0023】
本明細書において使用される場合、「絹フィブロイン」という用語は、カイコのフィブロインならびに他の昆虫またはクモの絹タンパク質を含む(Lucas et al., 13 Adv. Protein Chem. 107-242 (1958))。絹フィブロインは、溶解したカイコ絹またはクモ絹を含有する溶液から得ることができる。カイコ絹フィブロインは、例えば、Bombyx moriの繭から得られ、クモ絹フィブロインは、例えば、Nephila clavipesから得られる。代替手段において、本発明における使用に好適な絹フィブロインは、細菌、酵母、哺乳動物細胞、トランスジェニック動物、またはトランスジェニック植物から回収された遺伝子操作された絹を含有する溶液から得ることができる。例えば、国際公開第97/08315号および米国特許第5,245、012号を参照のこと。
【0024】
絹フィブロインフィルムは、絹フィブロイン溶液をパターン上にキャストして乾燥させるソフトリソグラフィーキャスティング技術を使用することにより、マイクロスケールおよびナノスケールにおいてパターン形成することができる。Perry et ah, 2008を参照のこと。しかしながら、このキャスティングプロセスは、12〜36時間を要し得、複数のデバイスを迅速に製造するための都合の良い方法としては機能し得ない。さらに、結果として当該ソフトリソグラフィーキャスティング技術から得られる絹構造体は、乾燥プロセスおよび離型プロセスに起因する人為的影響を含む場合がある。
【0025】
ナノインプリンティングは、マイクロメータースケール、サブマイクロメータースケール、およびナノメータースケールのパターンを製作するための、ハイスループットのリソグラフィー技術である。この技術では、ガラス転移温度以上に加熱された熱可塑性材料に型が押し付けられ、印加された圧力により、当該軟化された材料が当該型に一致する。Quake & Scherer, 290 Science 1536-40 (2000); Nie & Kumacheva, 7 Nat. Mater. 277 (2008); Guo, 19 Adv. Mater. 495-513 (2007)を参照のこと。ナノインプリントリソグラフィーによる100nmより小さい構造は、最初に、ポリメチルメタクリレート(PMMA)において実証され(Chou et al., 67 Appl. Phys. Lett. 3114 (1995); Chou et al., 272 Science 85-87 (1996)を参照のこと)、現在では、10nm程度の小さい構造がPMMAにおいて達成可能である。Guo, 2007; Chou & Krauss, 35 Microelectron. Eng. 237-40 (1997)を参照のこと。理想的なナノインプリントレジストは、迅速なインプリント時間と、低温および低圧、ならびに型からの分離を助ける低表面エネルギーとを兼ね備える。そのため、当該型は、多くの場合、低表面エネルギー界面活性剤でコーティングされる。Beck et al., 61-62 Microelectron. Eng. 441-8 (2002)を参照のこと。これらの進歩にもかかわらず、生体高分子におけるナノインプリンティングは、使用可能な温度および圧力の範囲を限定する制限されたパラメータ空間のゆえに、さらなる問題を提示する。
【0026】
しかしながら、本発明の態様は、絹フィブロインベースのフォトニック生体高分子フィルムが理想的なナノインプリントレジストの多くの特徴を示すことを実証するものであり、絹フィブロインベースのフォトニック生体高分子フィルムは、光学特性および生体適合性を兼ね備えることから、これらの特徴により、ナノフォトニクス、生体高分子材料、および生体適合性材料をシームレスに組み合わせる新規の技術プラットフォームとなり得る。
【0027】
本発明の態様は、型の表面処理を行わずに、低圧(50psi)で、絹フィブロインベースのフィルムに、数秒から数分でナノ構造、例えばフォトニック格子などを容易にかつ迅速にナノパターン形成することができるナノインプリントプロセスを提供する。当該ナノインプリント技術は、様々なレベルの含水によって、当該絹フィブロインベースのフィルムのガラス転移温度を調節することにより、包括的に高温(約100℃)または室温(周囲温度)において実施することができ、結果として得られる構造は、50nm以下までの特徴を再現することができる。当該ナノインプリント技術は、他のリソグラフィー技術、例えば、ソフトリソグラフィーキャスティング技術などによって達成されるものと比較して、品質およびスループットを著しく向上させる。Perry et al., 2008を参照のこと。さらに、絹フィブロインベースのフィルムにおける本発明の絹ナノインプリント法の高速性および高忠実度、ならびに機械的特性および光学特性は、他の生体高分子および生体適合性高分子、例えば、キトサンおよびポリ(乳酸)などよりも優れている。Park et al., 90 Appl. Phys. Letts. 093902-3 (2007); Christopher et al., 76A J. Biomed. Mater. Res. 781-7 (2006)を参照のこと。したがって、本発明の絹フォトニックナノインプリント技術は、ナノフォトニクスと生体高分子材料および生体適合性材料とを容易に組み合わせることができる可能性を秘めている。
【0028】
「マスターナノパターン」という用語は、本明細書において使用される場合、絹フィブロインフィルムにインプリントされる所望のナノパターンを有する型またはテンプレートを意味する。マスターナノパターンは、絹フィブロインフィルムに所望される幾何学的特徴に応じて、または絹フィブロインフィルムを含むオプティカルデバイスに所望される光学的特徴に応じて、ミリパターン、マイクロパターン、またはナノパターン形成された表面であり得、および/またはオプティカルデバイス、例えば、ナノパターン形成された光学格子、レンズ、マイクロレンズアレイ、ビームリシェーパー、パターン発生器などであり得る。
【0029】
本発明の一局面は、絹フィブロインベースの生体高分子フィルム上にフォトニックナノパターンを形成するためのインプリント法に関する。当該方法は、絹フィブロインベースの生体高分子フィルムを得る工程と、当該生体高分子フィルム上にナノパターンを形成するために、当該生体高分子フィルムのガラス転移温度を超えた温度において、マスターナノパターンを当該生体高分子フィルムに押し付ける工程と、任意で、当該マスターナノパターンと当該ナノパターン形成された生体高分子フィルムとを分離する工程とを含む。
【0030】
本発明の別の局面は、絹フィブロインベースの生体高分子フィルム上に複数のナノパターンを形成するためのインプリント法に関する。当該方法は、(a)絹フィブロインベースの生体高分子フィルムを得る工程、当該生体高分子フィルム上にフォトニックナノパターンを形成するために、当該生体高分子フィルムのガラス転移温度を超えた温度において、マスターナノパターンを当該生体高分子フィルムに押し付ける工程、および当該マスターナノパターンと当該ナノパターン形成された生体高分子フィルムとを分離する工程、(b)当該生体高分子フィルムのガラス転移温度を超えた温度において、第二のマスターナノパターンを、工程(a)により形成された、ナノパターン形成された生体高分子フィルムに押し付け、それによって当該生体高分子フィルム上に第二のナノパターンを形成する工程、および任意で、当該第二マスターナノパターンと当該ナノパターン形成された生体高分子フィルムとを分離する工程、を含む。当該方法は、工程(b)を繰り返す工程をさらに含み得、したがって、所望の複数のナノパターンが当該生体高分子フィルム上に達成されるまで、同じ絹フィブロインベースの生体高分子フィルムにインプリントする工程を含み得る。工程(a)および(b)は、本明細書において「インプリントプロセス」または「ナノインプリントプロセス」とも呼ばれ得る。
【0031】
インプリント法の工程(a)および(b)において使用されるマスターナノパターンは、所望されるパターンに応じて、同じであってもまたは異なっていてもよい。当該インプリント法の工程(b)は、所望の複数のナノパターンを生成するために、さらに繰り返してもよい。前の工程において絹フィブロインフィルム上にインプリントされたナノパターンに対する、工程(b)におけるマスターナノパターンの配置は、平行または直角であり得、あるいは、包括的に0°〜360°の範囲の方位角によって特徴付けられ得る。いくつかの態様において、絹フィルム上への複数のパターンのナノインプリンティングは、同じマスターパターンまたは2つの異なるマスターパターンを使用して、同じ絹フィブロインフィルム上にインプリントプロセスを2回繰り返すことによって達成される。一実施例において、使用されるマスターパターンの方向は、お互いに対して90°である。このプロセスならびに結果として得られるナノパターン形成された絹フィブロインフィルムの原子間力顕微鏡(AFM)による特性評価は、以下の実施例において示される。
【0032】
絹フィブロインベースの生体高分子フィルムは、インプリントされたレジストとして得られる。当該絹フィブロインフィルムは、絹フィブロイン含有水溶液を支持基材上に堆積させて、当該絹フィブロイン溶液をフィルムへと乾燥させることによって調製することができる。この点に関して、絹フィブロインベースの溶液でコーティングされた基材は、例えば12時間などの一定の時間、空気に晒され得る。絹フィブロイン溶液の堆積は、例えば、スピンコーティング法を使用することによって、または絹フィブロイン溶液を基材の上に単に注ぐことによって実施することができ、スピンコーティング法では、絹フィブロイン溶液を基材上にスピンコーティングすることにより、高さが均一でない薄膜の製作が可能である。
【0033】
当該絹フィブロインフィルムの特性、例えば、厚さおよび他の成分の含有量など、ならびに光学的特徴は、基材に適用される絹フィブロイン溶液の濃度および/または量に基づいて変わり得る。例えば、絹フィルムの厚さは、溶液中の絹フィブロインの濃度を変えることによって、または所望の量の絹フィブロイン溶液を使用することによって制御することができ、結果として、およそ2nm〜1mm厚の範囲の厚さを有する絹フィブロインフィルムが得られる。一態様において、様々な濃度の絹フィブロインおよび様々なスピンスピードを用いて当該絹フィブロインを基材上にスピンコートすることにより、約2nm〜約100μmの厚さを有するフィルムを作製することができる。本明細書において形成される絹フィブロインフィルムは、優れた表面品質および光透過性を有する。
【0034】
絹フィブロイン溶液の調製は、全て水性で有機的な様式において実施され得る。米国特許第11/020,650号;国際公開第2005/012606号を参照のこと。本明細書では、精密ろ過工程が使用され得る。例えば、調製された絹フィブロイン溶液は、基材上に堆積させる前に、遠心分離およびシリンジベースの精密ろ過によってさらに処理してもよい。このプロセスにより、優れた品質および安定性の、8%〜10%w/vの絹フィブロイン溶液の作製が可能となる。当該精密ろ過工程は、多くの場合、透明性が最大化され、その結果として散乱が最小化された高品質光学フィルムの生成のために望ましい。さらに、絹フィブロインベースの生体高分子を形成するために、他の生体適合性および生体分解性高分子を絹フィブロイン溶液に混合してもよい。例えば、望ましい機械的特性を示すさらなる生体高分子、例えば、キトサンなどを水中において処理し、絹フィブロインと混合することにより、光学的用途のための概して透明なフィルムを形成することができる。他の生体高分子、例えば、キトサン、コラーゲン、ゼラチン、アガロース、キチン、ポリヒドロキシアルカノエート、プラン(pullan)、デンプン(アミロースアミロペクチン)、セルロース、アルギン酸塩、フィブロネクチン、ケラチン、ヒアルロン酸、ペクチン、ポリアスパラギン酸、ポリリシン、ペクチン、デキストラン、および関連する生体高分子、あるいはそれらの組み合わせなどは、特定の用途において利用することができ、ならびに合成生分解性高分子、例えば、ポリエチレンオキシド、ポリエチレングリコール、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリカプロラクトン、ポリオルトエステル、ポリカプロラクトン、ポリフマレート、ポリ無水物、および関連する共重合体なども選択的に使用することができる。絹フィブロインベースの生体高分子に混合するために本明細書において選択される高分子は、絹フィブロインベースの生体高分子の水分を変えることによる、絹フィブロインベースの生体高分子のガラス転移温度の制御に対し、悪影響を及ぼしてはならない。
【0035】
本発明のナノインプリント法において使用される絹フィブロインベースの生体高分子フィルムは、金属層をコーティングしてもよいし、または金属層上にコーティングしてもよい。例えば、金属層は、インプリントプロセスの前に、絹フィブロインベースの生体高分子フィルム上にコーティングしてもよい。あるいは、当該金属層は、フォトニックナノパターンによって既にインプリントされている絹フィブロインベースの生体高分子にコーティングしてもよい。当該ナノインプリント法において使用される絹フィブロインベースの生体高分子フィルム上に金属層をコーティングする場合、コーティング工程およびインプリント工程の実際の順序は、処理条件および予想される用途に応じて選択することができる。例えば、絹フィブロインベースの生体高分子フィルムが、周囲温度でインプリントされる場合、金属層は、絹フィルムがインプリントされた後にコーティングすることができる。インプリント圧力は、特に当該金属層の厚さが1μm未満の場合、金属の堆積によって影響を受けない。絹フィルムのガラス転移温度は、金属の堆積によって影響を受けず、したがって、インプリント温度も金属の堆積によって影響を受けない。それに続いて、金属層でコーティングされた絹フィブロインベースの生体高分子フィルム上に、当該フィルム上にナノパターンが既に存在するか否かにかかわらず、本明細書において説明されるようなインプリント工程を繰り返す工程を適用することも可能である。
【0036】
本明細書において使用される好適な金属としては、金、銀、アルミニウム、チタン、クロム、白金、銅、スズ、インジウム、カドミウム、鉛、タングステン、鉄、ニッケル、セレン、ケイ素、ストロンチウム、パラジウム、バナジウム、亜鉛、ジルコニウム、並びにそれらの合金および酸化物が挙げられるが、これらに限定されるわけではない。金属は、境界値を含めて約2nm〜約10μmの範囲の薄層として絹フィルム上にコーティングすることができる。例えば、絹フィルムは、50nmの金の層をスピンコーティングし、それに続いてマスターパターンでインプリントしてもよい。一態様において、複数のパターンのナノインプリンティングは、金属でコーティングされた同じ絹フィブロインフィルム上に、お互いに対して約90°(または所望の方向)に配置された同じマスターパターンまたは2種の異なるマスターパターンを使用してインプリントプロセスを繰り返すことにより達成される。このプロセスならびに結果として得られるフォトニックナノパターン形成された金属コーティング絹フィブロインフィルムのAFMによる特性評価は、本発明において、実施例により示される。
【0037】
本発明において使用されるマスターナノパターンは、周期的フォトニック格子、非周期的フォトニック格子、またはそれらの組み合わせに基づく、フォトニック格子構造を有し得る。バイオフォトニック構造は、ナノテクスチャのサブ波長のバイオフォトニック構造であり得る。例えば、好適なパターンは、周期的格子、フィボナッチの準周期的格子、Thue-Morse(TM)の非周期的格子、Rudin-Shapiro(RS)の非周期的格子、ランダム格子、並びに数論的配列に基づいた他の決定論的非周期的格子を含み得る。フィボナッチの準周期的格子、TMの非周期的格子、およびRSの非周期的格子における格子は、複雑さの程度が順次増加する決定論的な非周期的格子の主な例である。特に、R-S格子は、空間周波数の平坦なスペクトル(白色フーリエスペクトル)を有し、ならびに、単に「フォトニックアモルファスまたは流体構造」の類似体として考えられ得る。本発明において使用されるマスターパターンの格子間隔は、インプリントされた絹フィルムに所望される光学機能性に応じて、幅広い範囲を有し得る。例えば、20nm〜700nmの範囲の格子間隔の非周期的ナノ粒子の配列を、マスターナノパターンとして使用することができる。
【0038】
本発明のナノインプリントプロセスは、絹フィブロインベースの生体高分子フィルムのガラス転移温度を超える温度において実施することができる。絹フィブロインフィルムは、吸収された水分に著しく依存するガラス転移温度を有する。Hoagland et al., 63 J. Applied Polymer Sci. 401 (1997)を参照のこと。例えば、周囲湿度(約35%)で調製された当該絹フィブロインフィルムは、約100℃のガラス転移温度を有する。したがって、当該絹フィブロインフィルムが、約35%より高い湿度において調製された場合、インプリントプロセスは、絹フィブロインフィルムを加熱されたマスターナノパターンに押し付けることにより、境界値を含めて約20℃〜約100℃の範囲の高温において行うことができる。別の例として、絹フィブロインフィルムが水で飽和している場合、絹フィブロインのガラス転移温度は、室温(周囲温度)となり得る。これに関して、室温での絹フィブロインフィルムのナノインプリンティングは、マスターナノパターンを当該絹フィブロインフィルムに押し付ける前に、当該絹フィブロインフィルムを少なくとも局所的に飽和させることを必要とし得る。例えば、フィルムを水で飽和させるために、当該フィルム上に水の小滴を位置させてもよい。絹フィブロインの様々なガラス転移温度は、周囲温度でのナノインプリンティングを可能にする点において好都合である。室温は、絹が、温度感応性の生物学的ドーパント、例えば、細胞、タンパク質、および酵素などを含有するような、あるいは絹が、再生医療のためのナノ構造化された支持体として使用されるようなデバイスおよび用途に対して特に有用である。
【0039】
インプリントプロセスの際に必要な圧力は比較的低く、例えば、境界値を含めて約5psi〜約50psiである。本発明のナノインプリントプロセスは、短時間での複数のデバイスのハイスループット製造を可能にする迅速なプロセスである。当該インプリントプロセスの加圧成形工程は、包括的に数秒または数分を必要とする。例えば、1秒程度の短い時間において、あるいは5秒未満、1分未満、または約5分未満において、絹フィブロインフィルム上にナノパターンを形成することができる。加圧成形時間は、加圧成形温度が高い場合よりも低い場合の方が長くなり得る。
【0040】
インプリンティング後、マスターナノパターンは、結果として得られるナノパターン形成された絹フィブロインフィルムから、例えば、薄いブレードを用い、てこによって当該マスターパターンから当該絹フィルムを外すことによって、容易に取り外すことができる。
【0041】
フォトニックナノインプリントプロセスは、後処理工程をさらに含み得る。当該後処理工程は、絹フィブロインタンパク質の二次構造を一次ランダムコイルから一次β−シートへと変えて、絹フィブロインのガラス転移温度を高める。Hu et al., 39 Macromolecules 6161 (2006)を参照のこと。後処理の後、当該インプリントされたフィルムは安定であり、それが数年持続する。当該後処理工程は、水アニール処理(water annealing)およびメタノール処理を含み得る。例えば、当該ナノインプリントされた絹フィルムは、水溶性を減少させるために、水蒸気環境などの湿潤環境においてアニール処理され得るか、またはメタノールに晒され得る。Xu et al., C27 Mats. Sci. Engin. 579 (2007); Lv et al., 96 J. Appl. Polym. Sci. 2168-73 (2005); Jin et al., 15 Adv. Funct. Mater. 1241-47 (2005)を参照のこと。アニール処理時間は、所望される材料特性に応じて変わり得る。典型的な期間は、包括的に数秒から数日の範囲であり得る。
【0042】
本発明のナノインプリント法の特定の利点は、局所的にガラス転移温度を低下させることにより、室温(周囲温度)において絹フィルムにナノインプリントすることができるということである。この能力は、当該絹フィルム中のドーパントの生物学的活性を維持する絹フィブロインフィルムの能力を補完するものであり、さらに、生体活性なナノスケールデバイスの容易な製造を可能にする。
【0043】
したがって、いくつかの態様において、当該絹フィブロインベースの生体高分子フィルムは、少なくとも1種類の活性物質を含み得る。当該物質は、フィルム中に包埋されてもよいし、またはフィルム上に固定されてもよい。本発明の絹フィブロインベースの生体高分子と共に使用することができる様々な活性物質は、膨大である。例えば、当該活性物質は、治療剤または生物学的物質、例えば、細胞、タンパク質、ペプチド、核酸類似物、ヌクレオチド、オリゴヌクレオチド、核酸(DNA、RNA、siRNA)、ペプチド核酸、アプタマー、抗体またはそれらの断片もしくは一部、ホルモン、ホルモン拮抗薬、成長因子もしくは組換え成長因子およびそれらの断片および変種、サイトカイン、酵素、抗生物質もしくは抗菌性化合物、消炎剤、抗真菌剤、抗ウイルス剤、毒素、プロドラッグ、化学療法剤、小分子、薬物(例えば、薬物、染料、アミノ酸、ビタミン、酸化防止剤)、ならびにそれらの組み合わせであり得る。
【0044】
本発明のフォトニックフィルム中への封入に好適な例示的抗生物質としては、アミノグリコシド(例えば、ネオマイシン)、アンサマイシン、カルバセフェム、カルバペネム、セファロスポリン(例えば、セファゾリン、セファクロル、セフジトレン、セフジトレン、セフトビプロール)、糖ペプチド(例えば、バンコマイシン)、マクロライド(例えば、エリスロマイシン、アジスロマイシン)、モノバクタム、ペニシリン(例えば、アモキシシリン、アンピシリン、クロキサシリン、ジクロキサシリン、フルクロキサシリン)、ポリペプチド(例えば、バシトラシン、ポリミキシンB)、キノロン(例えば、シプロフロキサシン、エノキサシン、ガチフロキサシン、オフロキサシンなど)、スルホンアミド(例えば、スルファサラジン、トリメトプリム、トリメトプリンサルファメトキサゾール(コトリモキサゾール))、テトラサイクリン(例えば、ドキシサイクリン、ミノサイクリン、テトラサイクリンなど)、クロラムフェニコール、リンコマイシン、クリンダマイシン、エタムブトール、ムピロシン、メトロニダソール、ピラジンアミド、チアムフェニコール、リファンピシン、チアンフェニコール、ダプソン、クロファジミン、キヌプリスチン、メトロニダソール、リネゾリド、イソナイアジド、ホスホマイシン、あるいはフシジン酸が挙げられるが、これらに限定されるわけではない。
【0045】
本明細書における使用に好適な例示的細胞は、始原細胞もしくは幹細胞、平滑筋細胞、骨格筋細胞、心筋細胞、上皮系細胞、内皮細胞、尿路上皮細胞、線維芽細胞、筋芽細胞、軟骨細胞、軟骨芽細胞、造骨細胞、溶骨細胞、角質細胞、肝細胞、胆管細胞、膵島細胞、甲状腺、副甲状腺、副腎、視床下部、脳下垂体、卵巣、精巣、唾液腺細胞、脂肪細胞、および前駆細胞を含み得るが、これらに限定されるわけではない。
【0046】
例示的抗体としては、アブシキシマブ、アダリムマブ、アレムツズマブ、バシリキシマブ、ベバシズマブ、セツキシマブ、セルトリズマブペゴル、ダクリズマブ、エクリズマブ、エファリズマブ、ゲムツズマブ、イブリツモマブチウキセタン、インフリキシマブ、ムロモナブ-CD3、ナタリズマブ、オファツムマブ、オマリズマブ、パリビズマブ、パニツムマブ、ラニビズマブ、リツキシマブ、トシツモマブ、トラスツズマブ、アルツモマブペンテテート、アルシツモマブ、アトリズマブ、ベクツモマブ、ベリムマブ、ベシレソマブ、ビシロマブ、カナキヌマブ、カプロマブペンデチド、カツマキソマブ、デノスマブ、エドレコロマブ、エフングマブ、エルツマキソマブ、エタラシズマブ、ファノレソマブ、フォントリズマブ、ゲンツズマブオゾガミシン、ゴリムマブ、イゴボマブ、インシロマブ、ラベツズマブ、メポリズマブ、モタビズマブ、ニモツズマブ、ノフェツモマブメルペンタン、オレゴボマブ、ペンツモマブ、ペルツズマブ、ロベリズマブ、ルプリズマブ、スレソマブ、タカツズマブテトラキセタン、テフィバズマブ、トシリズマブ、ウステキヌマブ、ビシリズマブ、ボツムマブ、ザルツムマブ、およびザノリムマブが挙げられるが、これらに限定されるわけではない。
【0047】
本明細書における使用に好適な例示的酵素としては、ペルオキシダーゼ、リパーゼ、アミロース、有機リンデヒドロゲナーゼ、リガーゼ、制限エンドヌクレアーゼ、リボヌクレアーゼ、DNAポリメラーゼ、グルコースオキシダーゼ、ラッカーゼなどが挙げられるが、これらに限定されるわけではない。
【0048】
本明細書において使用されるさらなる活性物質としては、細胞増殖培地、例えば、ダルベッコ変法イーグル培地、ウシ胎仔血清、非必須アミノ酸、および抗生物質など;成長因子および形態形成因子、例えば、繊維芽細胞生長因子、形質転換成長因子、血管内皮成長因子、表皮成長因子、血小板由来増殖因子、インシュリン様成長因子)、骨形成成長因子、骨形成様タンパク質、形質転換成長因子、神経成長因子、および関連タンパク質など(成長因子は、当技術分野において公知であり、例えば、Rosen & Thies, Cellular & Molecular Basis Bone Formation & Repair (R.G. Landes Co.)を参照のこと;抗血管新生タンパク質、例えば、エンドスタチン、および他の天然由来タンパク質または遺伝子組み換えタンパク質;多糖、糖タンパク質、またはリポタンパク質;抗感染症薬、例えば、抗生物質および抗ウイルス剤、化学療法剤(すなわち、抗癌剤)、抗拒絶剤、鎮痛剤、ならびに鎮痛併用剤、抗炎症剤、およびステロイドなどが挙げられる。
【0049】
いくつかの態様において、当該活性物質は、生物体、例えば、細菌、菌、植物、または動物、あるいはウイルスであり得る。さらに、当該活性物質は、神経伝達物質、ホルモン、細胞内情報伝達物質、薬学的に活性な物質、毒性剤、農薬、有毒化学物質、生物毒素、微生物、および動物細胞、例えば、ニューロン、腎臓細胞、および免疫細胞などを含み得る。当該活性物質は、治療化合物、例えば、薬理学的物質、ビタミン、鎮静剤、催眠剤、プロスタグランジン、および放射性医薬なども含み得る。
【0050】
したがって、本発明は、本明細書において説明されたナノインプリント法を使用して製作された、その上にフォトニックナノパターンを有する絹フィブロインベースの生体高分子フィルムを提供する。いくつかの態様において、本発明は、そのようなナノパターン形成された絹フィブロインベースの生体高分子フィルムを含むオプティカルデバイスに関する。
【0051】
本発明のフォトニックナノインプリントされた絹フィルムは、50nmより小さい寸法において、微細な特徴を再現し得る。一態様において、当該絹フィルム上のナノパターンは、約20nm以下の最小寸法を有する少なくとも1つの特徴を有する。例えば、直径200nmのクロムナノ粒子(格子定数、250nm)の周期的パターンでナノインプリントされた絹フィルムの特性評価は、絹フィルム上にインプリントされた最小の横方向の特徴が50nm以下であり得ることを示している。別の例において、Rudin-Shapiroパターンに配置されたナノ粒子の配列を、絹フィブロインフィルム上にナノインプリントした。AFMによる当該絹フィブロインフィルムのこの非周期的Rudin-Shapiroパターンの特性評価によって、再現された最小の特徴として、インプリントされた孔の間の横方向の距離が20nmであることが示され、ならびに断面分析では、インプリントされた孔の深さが約30nmであることが示された。
【0052】
絹フィブロインベースの生体高分子フィルムは、特に、50nmより小さい寸法で微細な特徴を再現する場合、他の生体高分子に比べて、インプリントされたオプティクスに対して好ましいインプリントレジストを提供する。例えば、同様の温度(例えば、90℃および5psi〜25psi)において類似のプロセスを使用する場合、キトサンベースの生体高分子は150nmの特徴を再現するが、これは、絹フィブロインベースの生体高分子が再現することのできる微細な特徴(50nm〜20nm以下)よりかなり大きい。その上、キトサンは、絹フィブロインの高い光学的透明度を有しておらず、かつナノインプリントプロセスは、かなり長い時間を必要とする(キトサンが30分であるのに対し、絹フィブロインは数秒である)。Park et al., 2007を参照のこと。さらに、絹は、優れた機械的特性を提供し、かつ酸性条件下において可溶化を受けない。別の例として、光学的に透明な生体適合性ポリマーであるポリ(乳酸)(PLA)のナノインプリンティングは、数百ナノメートルまでの特徴を再現するが、これは、本明細書において作製される絹フィブロインベースの生体高分子が再現することができる微細な特徴よりも依然として大きい。その上、PLAは、その調製において溶媒を必要とし、かつ固着を防ぐためにマスターパターン(型)の表面処理を必要とするが、絹はそのどちらも必要としない。Christopher et al., 2006を参照のこと。他の室温ナノインプリント法およびレジストも存在するが、本絹フィルムの室温ナノインプリンティングよりも桁違いに大きい圧力を必要とする。Boriskina et al., 16 Opt.Express 12511-22 (2008); Khang et al., 13 Adv. Mater. 749-52 (2001)を参照のこと。
【0053】
本発明のナノインプリント法は、以前に説明された絹ソフトリソグラフィーキャスティングプロセスに有利に匹敵する(Perry et al., 2008)。当該キャスティングプロセスは、同様の電子ビームで製作されたマスターパターンを使用するが、それは有効ではあるものの、処理の際に人為的影響を導入し得る。対照的に、本発明のナノインプリント法の利点の1つは、微細な特徴の再現における高忠実度、および再現されたナノパターンの解像度の向上である。例えば、本発明において説明されたナノインプリントプロセスは、20nmの横方向の特徴を再現し得、特徴の深さの再現においてまたは型から取り外す際の人為的影響が無い。一態様において、当該ナノインプリントプロセスは、マスターパターンの特徴の±1nm、±5nm、または±10nm以内の標準偏差において、微細な特徴を再現し得る。例えば、室温ナノインプリント法による、絹フィルムにおける深さ75nmの特徴による3600溝/mm格子の再現において、絹において再現された特徴の深さは、マスターパターンの特徴の深さの±5nm以内の精度を有する。その上、本発明のナノインプリント法が必要とする時間は、キャスティングプロセスと比較した場合に桁違いに小さく、これは、ナノパターン形成された絹デバイスの製造において大幅に高い収量を可能にすると考えられる。
【0054】
本発明のナノインプリント法は、絹フィブロインベースの生体高分子フィルムにおける3次元構造の生成も可能にする。例えば、様々な3次元回折マイクロパターンを表示するポリカーボネートの回折オプティクスカードは、絹フィルムにおける3次元構造のナノインプリンティングにおけるマスターパターンとして使用することができる。これらのマスターパターンの表面は、微細で高品質な投影画像を生成するために、多重位相レベルをエンコードするようにエッチングされている。インプリントされた絹オプティクスを通してのレーザーの伝播の結果として得られる遠視野での画像投影による、絹フィルム上にインプリントされた3次元パターンの特性評価は、本発明のナノインプリント法を使用した、3次元ナノパターン形成された絹オプティカルデバイスを作製する能力および実現可能性を実証する。
【0055】
例えば、オプティカルデバイス、例えば、レンズ、マイクロレンズアレイ、ビームリシェーパー、パターン発生器、光学格子などのオプティカルデバイス中へ光を結合させる、またはオプティカルデバイスから外へ光を結合させる洗練された光学インタフェースが、適切に選択されたマスターナノパターンを用いた本発明のナノインプリント法を使用することにより、当該絹フィブロインベースの生体高分子フィルムにおいて実現することができる。
【0056】
このようなオプティカルデバイスの一例は、本発明のナノインプリントされた絹オプティクスを含むバイオフォトニックセンサーである。例えば、国際公開第2009/061823号に記載されている比色分析バイオフォトニックセンサー(ソフトリソグラフィーキャスティングプロセスを使用して作製)は、本発明のナノインプリント法を用いて製造することができる。さらに、室温および低温において絹フィルムにナノインプリントする能力は、当該センサーの多用性を広げ、それによって、抗体、ペプチド、酵素、細胞などの生理活性物質の形態において、不安定な生物学的「受容体」をセンサーへ直接的に組み込むことおよび安定化することにより、生体活性絹バイオフォトニックセンサーの容易な製造を可能にする。例えば、本発明のバイオフォトニックセンサーにおける生物学的「受容体」は、環境特性、例えば、ある特定の活性物質または化学物質、活性物質または化学物質における変化、とりわけ、pH、含水レベル、酸化還元状態、金属、光、応力レベル、抗原結合性、プリオンなどを感知するために使用され得る。
【0057】
本発明のバイオフォトニックデバイスは、環境において、ならびに生体適合性および生体分解性が最も重要である生命科学において、容易に使用することができる。例えば、上記において説明されたようなバイオフォトニックセンサーは、例えば人体などにおいて自然環境をモニターするために、目立たないように使用することが可能であり、かつ後で当該デバイスを回収する必要なく、インビボにおいて移植することができる。本発明のバイオフォトニックデバイスの分解寿命は、製造プロセスの際に、例えば、絹フィブロイン溶液の濃度、体積、および絹フィブロイン溶液中の様々な成分の比率を制御することによって制御することができる。その上、本発明のバイオフォトニックデバイスは、後で回収する必要なしに、環境中に分散させることが可能であり、したがって、検知および検出のための新規で有用なデバイスを提供する。
【0058】
当該オプティカルデバイスの別の例は、本発明のナノインプリントされた絹オプティクスを含むオプトフルイディックデバイスである。オプトフルイディクスは、様々な生物学的な検知および検出などの新たな用途を見出している。オプトフルイディックデバイスは、当初、コンパクトで新規の光変調技術を可能にするために、マイクロフルイディクスとフォトニクスとの融合として開発された。しかしながら、光と流体の閉じ込め構造の統合から、オプトフルイディックデバイスは検知の問題へ適用されるようになり(Domachuk et al., J. Opt. A-Pure Appl. Op. S129 (2007); Xiao & Mortensen, J. Opt. A-Pure Appl. Op. S463 (2007); Gersborg-Hansen & Kristensen, 15 Opt. Express 137 (2007))、特に、高い並列性と、高感度で少量の検体を用いる用途に目が向けられた。Mandal et al., 6645 Nanoengin. Fabrication, Props., Optics & Devices IV J6451 (2007)を参照のこと。通常、オプトフルイディックデバイスは、フォトニクスまたはマイクロフルイディクスにおいて一般的に見出される材料、例えば、シリカ、ケイ素、ポリジメチルシロキサン、またはポリメタクリルメタクリレート、ならびに他の高分子から製作される。これらの材料は、好適かつよく特徴付けられた光学特性および材料特性を有するが、本来、化学的に感度が高いわけでも、特異的なわけでもない。これらの材料は、その表面を化学試薬で機能化することが可能である。Erickson et al., 4 Microfluid. Nanofluid. 33 (2008)を参照のこと。とは言え、タンパク質または酵素を増感剤として使用した場合、非常に幅広い範囲の感度および特殊性が達成され得る。しかしながら、従来のオプトフルイディクスにおけるタンパク質の使用は、それ自体問題を抱えている。無機表面または合成高分子表面へのタンパク質(または、それを受容可能な化学物質)の結合は、煩雑である。Ksendzov & Lin, 30 Opt. Lett. 3344 (2005); D. Erickson & Li, 507 Anal. Chim. Acta 11(2004)を参照のこと。
【0059】
本発明のいくつかの態様は、オプトフルイディックパラダイムの開発に関するものであり、それらにおいて、絹フィブロインベースのオプトフルイディックデバイスは、化学的に感応性であるようにかつそれを通って流れる種に対して特異的であるように「活性化」され得る。優れた光学品質および機械的品質を有する絹フィブロインなどの材料は、様々なオプトフルイディック幾何学的構造に成形することができ、かつ活性なオプトフルイディックデバイスを実現するために必要である、包埋されたタンパク質の活性を維持する。
【0060】
一態様において、溶解赤血球によってドーピングされているインプリントされた絹をベースとする自己検知性ナノスケールオプトフルイディックデバイスを、本発明のナノインプリント法を用いて製作した。これに関して、ヘモグロビンによってドーピングされているインプリントされた絹格子を備えるフローセルを、酸素でバブリングし、スペクトル分析のために、インプリントされた絹格子を通して光源からの光を向けた。そのようなオプトフルイディックデバイスは、単一のオプトフルイディック要素が、絹にインプリントされた成分の活性化によって化学分析およびスペクトル分析の両方を提供する点において、「自己分析性」として見なすことができる。絹オプトフルイディックデバイスの操作全体は、絹フィルムの有利な長寿命および当該絹に包埋されたタンパク質の活性化によって可能となる。
【0061】
別の態様において、本発明のナノインプリント法は、光ファイバーの端部に統合することができる生体適合性の生体内吸収性光学要素を提供する。したがって、本発明の局面は、光ファイバーを機能化する方法ならびに機能化された光ファイバーを提供する。当該方法は、光ファイバーの端面上に絹フィブロインベースの生体高分子マトリックスを堆積させる工程と、当該生体高分子マトリックス上にフォトニックナノパターンを形成するために、当該生体高分子マトリックスのガラス転移温度を超えた温度において、マスターナノパターンを当該光ファイバーの生体高分子マトリックス端部に押し付ける工程と、当該ナノパターン形成された生体高分子マトリックスを当該マスターナノパターンから分離する工程とを含み、したがって、当該光ファイバーの端面上に、ナノパターン形成された絹フィブロインベースの生体高分子マトリックスを生成する。
【0062】
例えば、一定分量の絹フィブロイン溶液をファイバーチップ上に堆積させ、当該絹フィブロインを乾燥させるかまたは乾燥可能にする。適切なマスターナノパターンを使用して、当該ファイバーの絹フィブロイン端部上に光学要素をインプリントすることができる。当該インプリントプロセスは、室温で、または本明細書において説明された方法を用いて当該ファイバーの端部を加熱することにより、実施することができる。任意で、本明細書において説明されたようなナノインプリント法を使用するインプリントプロセスの前または後に、当該絹フィブロインベースの生体高分子マトリックス上に薄い金属層をコーティングしてもよい。さらに、本明細書において説明されたようなナノインプリント法を使用して、当該ファイバー端部に堆積された絹フィブロインベースの生体高分子マトリックス上に、望ましい複数のナノパターンをインプリントしてもよい。本明細書において説明されたように、活性物質または他のドーパントを、これらの態様に組み入れてもよい。
【0063】
当該ファイバー端部上に統合されているナノインプリントされた絹フィブロインベースの光学要素は、照射、集光、光分割、光再焦点化、あるいはマクロパターン形成またはナノパターン形成された表面によって決定される任意の他の様式のための機能および光処理も加え得る。
【0064】
一態様において、光ファイバーの端面上への絹回折光学要素の統合は、光導波路を後処理する方法として使用することができ、生物医学的ファイバーオプティクスにおいて、またはファイバーチップの迅速なプロトタイプ製造が必要とされる任意の他の用途において、光学要素の使用における多用性の向上を可能にする。例えば、現在の光学要素のいくつかでは、ファイバーチップ上に小さなレンズを接着させる必要があり、結果として、カテーテルまたは内視鏡での照明装置などのインビボでの適用の際に当該ファイバーが故障した場合、困難に陥る。ファイバーのチップにおける絹光学要素の使用は、生体適合性および生体分解性を伴う高い光学的品質、洗練された光学機能を提供する。例えば、ファイバーチップ上の絹光学要素が、インビボでの使用の際に当該ファイバーから剥離した場合でも、絹の生体分解性により、当該装置を除去する必要はないであろう。
【0065】
その上、ドーピングされた絹光学要素を光学ファイバー導波路に統合することは、固定された試料容量への励起源を送達するためのコンパクトな方法を提供し、これは、好都合なことに、ファイバー伝播モードと重なる。したがって、本発明のファイバーチップオプティクスは、当該ファイバー中を伝播する光によって、生体分子を取り込み分析することができる。ドーピングされた絹による当該ファイバーチップの機能化は、さらに、ファイバーベースのアッセイとして使用することができる。
【0066】
さらに、生体活性剤をドーピングされた絹オプティクスによって機能化されたファイバーチップは、薬物送達への新しい道を切り開くものである。例えば、インビボにおいて、カテーテルを使用して、1種類以上の治療剤を、通常の投与された医薬では容易には達することができない所定の部位へ直接送達することができる。ファイバーチップ上の絹オプティクスにドーピングされた治療剤は、光活性シェル、例えば、光開裂性ビオチンなどの光開裂性物質の中に封入してもよく、ファイバーを通してファイバーチップ上の絹オプティクスに光を向けることによって放出され得る。この態様によって送達され得る治療剤は、本明細書において説明されている。
【0067】
当該ナノインプリントされた絹フィブロインベースのフォトニックフィルムは、様々な他の用途において使用することができる。一態様において、当該フォトニック絹フィルムは、医薬、食品もしくは任意の変更可能な商品、または任意の包装に取り付けることができる。例えば、当該ナノインプリントされた絹フィルムは、例えば、ラベル表示されたアイテムの識別などを提供するためのホログラフィックラベルとして使用することができる。同様に、当該ラベル自体が、医薬などの活性物質(例えば、抗生物質)を含有することもできる。例えば、国際公開第2009/155397号を参照のこと。当該ナノインプリントされたフィルムは、他の絹ベースの薬物送達構築物、例えば、微小球体、パッド、多孔質構造体、またはフィルムなどと組み合わせてもよい。例えば、国際出願PCT/US09/44117号を参照のこと。
【0068】
別の態様において、当該フォトニック絹フィルムは、監視デバイス、柔軟なロボットデバイス、または医療用デバイスなどの他のデバイスに組み込んでもよい。例えば、国際出願PCT/US09/58534号を参照のこと。
【0069】
当該ナノインプリントされた絹フィブロインベースの光学要素は、再生医療においても使用することができる。例えば、ナノインプリントされた絹フォトニック構造体は、培養組織に取り付けることができ、または当該絹ベースの細胞培養構築物は、ナノインプリンティングのレジストとして使用することができる。そのような技術は、培養組織に、移植のモニタリングなどの機能、またはインビボでの当該培養組織の任意の活性をさらに付与するであろう。
【0070】
当該ナノインプリントされた絹フィブロインベースのフィルムは、ドーパントの有無にかかわらず、電子オプティカルデバイス、例えば、電子光学集光器、太陽光集光器、光学読み出しを有する機械的アクチュエーター、および軽量で分解性の電気活性デバイスが所望される他の適用などを製作するためにも使用され得る。これに関して、絹フィブロインフィルムは、ナノインプリンティングの前に改質してもよい。例えば、絹フィルムと当該フィルムを支持する基材との間において酵素触媒重合を行うことにより、導電性高分子を生成させることができ、これによって電気活性な絹マトリックスを作製することができる。例えば、国際公開第2008/140562号を参照のこと。そのような電気活性な絹マトリックスをフォトニクスパターンによってナノインプリントすることにより、有用な電子オプティカルデバイスを得ることができる。
【実施例】
【0071】
実施例1.絹フィブロインフィルムの形成
絹フィブロイン溶液の作製は、以前に記載されている。Perry et al., 2008;McCarthy et al., 54 J. Biomed.Mats.Res.139 (2001)を参照のこと。簡潔に言えば、Bombyx moriの繭を0.02MのNaCO3水溶液中で60分間煮沸することにより、原料フィブロインフィラメントに結合した水溶性糖タンパク質であるセリシンを絹糸から分離した。その後、残留した絹フィブロインの塊を、精製水中で十分に洗浄し、一晩乾燥させた。次いで、乾燥したフィブロインの塊を、9.3MのLiBr水溶液中において60℃で4時間溶解させた。その後、Slide-A-Lyzer(登録商標) 3.5K MWCO透析カセット(Pierce,Rockford,IL)を使用する水ベースの透析プロセスにより、LiBr塩を当該溶液から3日間かけて抽出した。残留している微粒子はすべて、遠心分離およびシリンジベースの精密ろ過(孔径5μm、Millipore Inc.,Bedford,MA)により除去した。このプロセスでは、光学用途のための、不純物が最少でかつ散乱が減じられた8%〜10%(w/v)の絹フィブロイン溶液を得ることができる。その上、当該絹フィブロイン溶液は、例えば、約30%(w/v)まで濃縮することができる。例えば、国際公開第2005/012606号を参照のこと。簡潔に言えば、低濃度の絹フィブロイン溶液を、所望の濃度を得るのに十分な期間において、吸湿性高分子、例えば、PEG、アミロース、またはセリシンなどにより透析してもよい。
【0072】
さらに、絹フィブロイン溶液は、本明細書において説明されたように、1種類以上の生体適合性高分子、例えば、ポリエチレンオキシド、ポリエチレングリコール、コラーゲン、フィブロネクチン、ケラチン、ポリアスパラギン酸、ポリリシン、アルギン酸塩、キトサン、キチン、ヒアルロン酸など;あるいは1種類以上の活性物質、例えば、細胞、酵素、タンパク質、核酸、抗体などと組み合わせることができる。例えば、国際公開第2004/062697号および同第2005/012606号を参照のこと。絹フィブロインは、絹タンパク質の物理的性質および機能性を変えるために、例えば、ジアゾニウムまたはカルボジイミドカップリング反応、アビジン−ビオチン相互作用、または遺伝子組み換えなどにより、当該溶液中において活性物質によって化学的に改質することも可能である。例えば、国際出願PCT/US09/64673号;米国特許出願第61/227,254号;同第61/224,618号;同第12/192,588号を参照のこと。
【0073】
絹フィブロイン溶液を調製した後、1mLの当該溶液をガラス製顕微鏡スライド(1インチ×1.5インチ)上にキャストし、空気中で一晩かけて結晶化させた。結果として得られたフィルムは、ガラススライドに付着し、厚さは、使用した絹フィブロインの濃度に応じて、およそ20μm〜25μmあった。Lawrence et al., 2008を参照のこと。基材上にキャストされた絹フィブロイン溶液の濃度および/または量を調節することにより、2nm〜1mm圧の絹フィルムを生成することができる。あるいは、当該絹フィブロイン溶液を、様々な濃度および回転速度を用いて、基材上にスピンコーティングすることにより、2nm〜100μmのフィルムを生成させることができる。インプリンティングのために、当該絹フィルムを疎水性表面にキャストすることによって、自立型のフィルムを作製することもできる。Jiang et al., 2007; Lawrence et al., 2008を参照のこと。これらの絹フィブロインフィルムは、優れた表面品質および光透過性を有している。
【0074】
さらに、当該絹フィルムは、例えば、ポリエチレングリコールによって活性化することができ(例えば、国際出願PCT/US09/64673号を参照のこと)、および/または一様な様式または勾配のある様式において、活性物質を添加し、生物体を培養することができる。例えば、国際公開第2004/0000915号;同第2005/123114号;米国特許出願公開第2007/0212730号を参照のこと。当該絹フィルムの特徴、例えば、モルフォロジー、安定性、融通性などを変えるために、他の添加剤、例えば、ポリエチレングリコール、PEO、またはグリセロールなども、当該絹フィルム中に添加することができる。例えば、国際出願PCT/US09/060135号を参照のこと。例えば、酵素触媒重合により、さらなる機能性を当該絹フィルムに付与することができ、絹フィルムと当該フィルムを支持している基材との間において導電性高分子を生成させて電気活性な絹マトリックスを作製することが可能であり、これらは、ナノインプリンティングの後の電子オプティカルデバイスの可能性を提供するものである。例えば、国際公開第2008/140562号を参照のこと。
【0075】
実施例2.絹フィブロインフィルムのナノインプリンティング
本明細書において提示される絹ナノインプリント法は、絹フィブロインにより吸収された水分に応じて変わる、絹フィブロインフィルムのガラス転移温度を調節する能力を利用する。Hoagland et al., 63 J. Appl. Polymer Sci.401 (1997)を参照のこと。周囲湿度(約35%)で調製された場合、当該絹フィブロインフィルムのガラス転移温度は約100℃である。絹フィブロインフィルムが水で飽和している場合、絹フィブロインのガラス転移温度は、室温(周囲温度)まで下がり得る。
【0076】
周囲湿度において絹フィルムにナノインプリントするために、加熱された(100℃)マスターパターンに絹フィルムを5秒間押し付ける(約50psi)熱エンボス加工プロセスを用いた(図1A)。インプリントの後、当該マスターパターンは絹フィルムに接着した。次いで、わずかに冷却した後(60秒)、カミソリの刃を用いて、てこにより容易にマスターパターンを分離した。型表面処理(例えば、付着防止処理)は必要なかった。熱エンボス加工技術でインプリントされたフィルムの実施例は、図2、3、4、および6を参照のこと。
【0077】
水で飽和した絹フィルムの場合、ガラス転移温度は周囲温度である。室温での絹フィルムのナノインプリンティングは、マスターパターンを押し付ける前に、ガラス転移温度を局所的に減じるために少量の水(<1μL、例えば、0.5μLの精製H2Oの小滴)を当該フィルム上に堆積させることによって達成した(図1B)。当該マスターパターンは、フィルムを周囲湿度に戻して余分な水を蒸発させた後(約10分間)、容易に取り外した。
【0078】
インプリント後、フォトニックフィルムは、湿潤環境において数日間アニール処理するか、またはメタノールに晒すことにより、それらの水溶解性を減じることができる。これらの後処理法は、絹フィブロインタンパク質の二次構造を一次ランダムコイルから一次β−シートへと変えて、絹フィブロインのガラス転移温度を高める。インプリンティングの後処理の後、当該光学フィルムは、極めて安定であり、それが数年続く。
【0079】
さらに、当該ナノインプリントされた絹フィルムは、例えば、ポリエチレングリコールによる表面改質によって活性化してもよく(例えば、国際出願PCT/US09/64673号)、および/または一様な様式または勾配のある様式において、活性物質を添加するか、または生物体を培養してもよい。例えば、国際公開第2004/0000915号;同第2005/123114号;米国特許第2007/0212730号を参照のこと。
【0080】
実施例3.ナノインプリントされた絹フィルムの特性評価
多種多様なナノパターン形成されたフォトニック絹フィルムを製造するための、本発明のナノインプリント技術の適用性を実証するために、絹フィルムインプリンティングに対していくつかの異なるマスターパターンを使用した。本明細書において使用したマスターパターンとしては、3600溝/mmホログラフィック回折格子(Edmund Optics, Inc.,,Barrington,NJ)、ならびに、周期的にまたはRudin-Shapiro(R-S)幾何学状に配置され、電子ビームリソグラフィーによってシリコン基板上に製作された700nm〜250nmの間で格子定数が変わるクロムまたはチタンのナノ粒子(直径200nmおよび高さ35nm)の配列が挙げられる。Dallapiccola et al., 16 Opt.Express 5544-55 (2008);Gopinath et al., 8 Nano Lett.2423-31 (2008)を参照のこと。マスクの領域は、0.5cm2〜1cm2の範囲である。
【0081】
ナノインプリントされた絹フィルムは、走査型電子顕微鏡(SEM)、原子間力顕微鏡(AFM)、および光学顕微鏡によって特性評価した。絹フィルム上にナノインプリントされた非周期的R-Sパターンを図2Aに示す。この画像から、再現された最小の特徴は、2つの孔の間の横方向の距離である。これは、20nmであることが測定された。図2Bは、ナノインプリントされた周期的構造を示している。図2Cに表示された断面分析は、当該特徴の深さがおよそ30nmであることを示している。
【0082】
図3Aは、キャストされた絹フィルム上に室温でインプリントされた3600溝/mm格子のAFM画像を示している。図3Bは、277nmの格子周期および75nmの特徴深さを示す断面を示している。図3Cおよび3Dは、対応するAFM画像およびマスター格子の断面を示している。図3A〜3Bと図3C〜3Dの比較は、本発明のナノインプリント技術の使用による、インプリントされた絹フィルムにおける再現の正確さを示している。
【0083】
図4Aは、700nm間隔の直径200nmのクロムナノ粒子の周期的パターンにより、100℃でナノインプリントされた絹フィルムのAFM画像である。図4Bは、図4Aの画像の断面を示している。図4Cに示されているのはまた、格子定数が250nmのみであること以外は同様の、直径200nmのクロムナノ粒子の周期的パターンでナノインプリントされた絹フィルムのSEM画像である。この画像は、絹フィルムにインプリントされた横方向の特徴が50nmより小さくあり得ることを示している。
【0084】
実施例4.絹フィブロインフィルムにおける3次元構造のナノインプリンティング
3次元構造のナノインプリンティングは、異なる3次元回折マイクロパターンを表示する様々なポリカーボネート回折オプティクスカード(Digital Optics Corp., Charlotte, NC; Tessera Technologies, Inc., San Jose, CA)を使用して実証した。これらの表面は、微細で高品質に投影された画像を生成するために、多重位相レベル(例えば、64の位相レベル)によってエンコードされたポリカーボネートカード上にエッチングした。図5および図6Aは、絹フィブロインフィルムにおけるインプリントされた3次元回折表面のAFM画像を示す。図6Bは、図6Aに示されているインプリントされた絹光学フィルムを通しての、He:Neレーザーの伝播による遠視野での投影画像を示している。これらの画像は、本発明において説明されたナノインプリント技術の3次元パターン形成能力を実証するものであり、絹ベースのオプティカルデバイスを実現している。
【0085】
実施例5.絹フィブロインフィルムにおける複数のナノパターンによるナノインプリンティング
複数のパターンによるナノインプリンティングは、連続するナノインプリンティングを使用して実証した。マスターナノパターンとして、3600溝/mm回折格子を使用した。お互いに対して90°回転させた2方向に配置したマスターパターンにより、同じ絹フィブロインフィルム上において、インプリントプロセスを2回繰り返した。結果として得られた複数のナノパターンが形成された絹フィルムのAFM画像および断面寸法は、図7に示されており、単一のフィルム上に複数のパターンをインプリントする能力を実証している。複数のパターンによってフィルムにナノインプリントする能力は、本明細書において説明されるナノインプリントプロセスの大きな利点である。
【0086】
実施例6.金属コーティングされた絹フィブロインフィルムにおけるナノパターン
金属コーティングされた絹フィブロインフィルムのナノインプリンティングは、例えば、実施例1と同様に調製された絹フィルムに適用することができる。このフィルムを、金などの金属の薄層によってコーティングする。それに続いて、本明細書において説明されたのと同じ技術によって、ナノインプリンティングを達成する。
【0087】
マスターパターンとして1200溝/mm格子構造および3600溝/mm格子構造を使用して、金コーティングされたフォトニック絹フィルムを作製した。図8は、50nmの金でコーティングされ、お互いに対して90°の方向に配置したこれら2つのマスターパターンによってインプリントされた、複数のナノパターンが形成された絹フィルムのAFM画像を示している。
【0088】
実施例7.比色分析センサーとしてのナノインプリントされた絹オプティクス
白色光照射において、図4に示されているナノインプリントされた周期的構造は、高品質の2次元回折格子として振る舞い、明確な格子次数内において効率的に光を散乱させる。インプリントされた構造の格子定数(孔の間隔)は、異なる周波数の散乱効率を決定し、したがって表示される構造色を決定する。Gopinath et al., 2008を参照のこと。
【0089】
図9および10における顕微鏡画像およびスペクトルは、Olympus IX71顕微鏡(Olympus America Inc.,Center Valley,PA)に取り付けたNuance FXカメラ(CRi,Woburn,MA)により撮影した。使用した対物レンズは、4×0.13NA Olympus UPLAN FLN対物レンズであった。照明は、Olympus U−DCD 0.8−0.92 NA暗視野集光器からの照射か、またはフォトニック結晶ファイバー(19セル 1550nmのバンドギャップの中空コア)におけるSpectra-Physics Tsunami(登録商標) Ti:Sapphire発振器(Newport Corp., Irvine,CA)からの100fs 80MHzのレーザーパルスの非線形変換により作り出した。発生させた白色光は、マルチモード光ファイバー(GIF625,Thorlabs,Inc.,Newton,NJ)を通して伝送させ、Eppendorf TransferMan(登録商標) NK2マイクロマニピュレータ(Eppendorf,Hamburg,Germany)のマイクロピペットチップを通して供給した。マイクロマニピュレータを使用する場合、ファイバーは、インプリントされた絹の表面から100μmの表面法線から80°の角度に位置させた。
【0090】
純粋な絹フィブロインフィルムにおけるそのような構造の第一の実施は、図9に示されており、これらの図は、周期的な、平坦なフォトニック結晶格子(図9Aおよび9B)および非周期的なR-S幾何学構造(図9Cおよび9D)、ならびに白色光照明下でのそれらのナノパターン形成された幾何学構造によって定義される関連色を示している。
【0091】
図10Bは、フォトニック結晶ファイバーにおいて発生したスーパーコンティニューム光によって照らされた、インプリントされた構造の4×顕微鏡画像を示している。当該構造の格子定数は、図中の左から右へ、600nm、500nm、400nm、および350nmである。インプリントされた構造およびファイバーの水中への浸漬の際の、顕微鏡の対物レンズによって収集された構造色におけるシフト(図10B)が示されており、これは、水(nwater=1.333)と空気(nair=1.000)との間の回折率における違いに起因する。透明な絹基材にインプリントされた、周期的に配置されたエアホールにおいて構造色が変化するメカニズムは、周期的格子の古典的な回折理論の範囲で定性的に理解することができる。この式は、所定の入射角に対する、単一格子における特定の散乱角を予測するものである(式1)。Loewen et al., Diffraction gratings and applications, (Marcel Dekker, Inc., New York, 1997)を参照のこと。
Λは格子定数であり、λは入射光の波長であり、θincおよびθdifは、入射角および回折角(格子表面の法線に対して測定)であり、mは回折次数であり、ならびにn1およびn2は、それぞれ、絹と周囲媒質の屈折率である。図10Aは、格子および角度の定義の概略図を示している。透過光は、−7.5°≦θdif≦7.5°(NA=0.13)での実験において使用された開口数によって定義される小さな円錐の角度内において集光されるので、次数の一部のみを収集した。周囲媒体の屈折率における変化は、すべての格子次数の回折角をシフトさせ、絹構造体の構造色応答を決定する。この効果は、図10Cにおいて確認することができ、図10Cには、最初の4つの回折次数に対応する算出された散乱波長、回折角、および最大集光円錐限界が示されている。格子周期および屈折率の変化の値に応じて、2つの状況が可能であり、同じ格子次数mでは、波長の段階的な赤方シフトが観察され(図10C(a))、または連続する格子次数m+1では、結果として構造色の青方シフトが観察される(図10C(b))。屈折率における変化に起因する、散乱色において観察されるシフトは、ナノインプリントされた絹構造が、異なる屈折率の溶液に対して、構造色および比色分析センサーを設計するために好適な候補であることを示している。Boriskina et al., 2008を参照のこと。
【0092】
実施例8.オプトフルイディックデバイスとしてのナノインプリントされた絹オプティクス
バイオフォトニックセンシングにおける使用における絹ナノインプリンティングの有用性は、自己検知性オプトフルイディックデバイスを製作することによって実証した。そのようなデバイスを作製するために、絹フィブロイン溶液を溶解赤血球(すなわち、ヘモグロビン)でドーピングし、ガラススライド上にキャストしてフィルムを形成した。本明細書において説明された室温ナノインプリント法を使用して、ヘモグロビンでドーピングした絹フィルムに、600溝/mm格子をインプリントした。結果として得られる絹オプティクスは、インプリントされた格子を保持するために、ならびに水溶解性を排除するために、メタノールによってアニール処理した。次いで、ドーピングされインプリントされた絹格子により、マイクロ流体フローセルの片面を形成した。当該フローセルのもう一方の面は、脱イオン水で満たされたガラスカバースリップに面したポリジメチルシロキサン(PDMS)で構成した。当該フローセルの上部は、水を容易に追加できるように、開放したままにした。当該フローセルの底部に小さな開口部を作製して、セル中へのガス交換を可能にした。タングステン光源を、10×顕微鏡の対物レンズにより視準を合わせ、インプリントされた絹格子を通して、スペクトル分析のためにスペクトルノッチフィルタで較正されたLC1 CCDラインカメラ(Thorlabs, Inc.)に向けた。溶解血球を用いないで同様に調製された絹格子を、参照として使用した。
【0093】
図11は、酸素または窒素のいずれかの存在下での、ヘモグロビンでドーピングされているインプリントされた絹格子の吸収スペクトルを示している。最初に、窒素をフローセルを通してバブリングさせて、ヘモグロビンを完全に脱酸素化した。酸素フローにおいて、ピークが540nmおよび575nmに見られ、ヘモグロビンへの酸素の結合を示した。当該プロセスは、酸素ガスを窒素ガスに交換することによって、逆転させることができる。当該プロセスは、インプリントされた絹フィルムを数ヶ月保存した後でも繰り返し可能であった。この結果は、製作プロセス、実験室での貯蔵、および繰り返しの実験にもかかわらず、フォトニック絹マトリックス内でのヘモグロビンタンパク質の持続的活性化を実証する。絹オプトフルイディックデバイスの全体的な操作は、絹フィルムの有利な長寿命および当該絹に包埋されたタンパク質の活性化によって可能となる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
絹フィブロインベースの生体高分子フィルムを得る工程と、
該生体高分子フィルム上にフォトニックナノパターンを形成するために、該生体高分子フィルムのガラス転移温度より高い温度において、マスターフォトニックナノパターンを該生体高分子フィルムに押し付ける工程と、
任意で、該マスターフォトニックナノパターンと該ナノパターン形成された生体高分子フィルムとを分離する工程と
を含む、絹フィブロインベースの生体高分子フィルム上にフォトニックナノパターンを形成するための方法。
【請求項2】
(a)絹フィブロインベースの生体高分子フィルムを得る工程、
該生体高分子フィルム上に第一のナノパターンを形成するために、該生体高分子フィルムのガラス転移温度より高い温度において、第一のマスターナノパターンを該生体高分子フィルムに押し付ける工程、
該第一のマスターナノパターンと該第一のナノパターン形成された生体高分子フィルムとを分離する工程
(b)該生体高分子フィルムのガラス転移温度より高い温度において、第二のマスターナノパターンを、工程(a)により形成された、前記ナノパターン形成された生体高分子フィルムに押し付け、それによって該生体高分子フィルム上に第二のナノパターンを形成する工程、
該第二のマスターナノパターンと該ナノパターン形成された生体高分子フィルムとを分離する工程、ならびに
(c)任意で、複数のナノパターンが形成された望ましい生体高分子フィルムが達成されるまで工程(b)を繰り返す工程
を含む、複数のナノパターンを含むフォトニック絹フィブロインベースの生体高分子フィルムを形成するための方法。
【請求項3】
絹フィブロインベースの生体高分子フィルムを金属層でコーティングする工程をさらに含む、請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
工程(a)および(b)における第一および第二のマスターナノパターンが、同じであり、かつ異なる方向において適用される、請求項2記載の方法。
【請求項5】
工程(a)および(b)における第一のマスターナノパターンおよび第二のマスターナノパターンが異なる、請求項2記載の方法。
【請求項6】
マスターナノパターンが、周期的フォトニック格子、非周期的フォトニック格子、またはそれらの組み合わせを含む、請求項1または2記載の方法。
【請求項7】
マスターフォトニックナノパターンが、レンズ、マイクロレンズアレイ、および光学格子、パターン発生器、ビームリシェーパー、ならびにそれらの組み合わせからなる群より選択される少なくとも1つのためのテンプレートである、請求項1または2記載の方法。
【請求項8】
絹フィブロインベースの生体高分子フィルムの水分が約35%より高く、そのため、ガラス転移温度が、境界値を含めて約20℃〜約100℃の範囲の温度に達する、請求項1または2記載の方法。
【請求項9】
絹フィブロインベースの生体高分子フィルムが水で飽和しており、それによって、前記押し付ける工程を約20℃において実施することができる、請求項8記載の方法。
【請求項10】
押し付ける圧力が、約50psi以下である、請求項1または2記載の方法。
【請求項11】
前記押し付ける工程が、境界値を含めて1秒間〜5秒間適用される、請求項1または2記載の方法。
【請求項12】
水アニール処理(water annealing)およびメタノール処理からなる群より選択される後処理工程をさらに含む、請求項1または2記載の方法。
【請求項13】
その上にフォトニックナノパターンを有する、請求項1または2の方法により製作された絹フィブロインベースの生体高分子フィルム。
【請求項14】
フォトニックナノパターンが、約50nm以下の最小寸法を備える少なくとも1つの特徴を有する、請求項13記載の絹フィブロインベースの生体高分子フィルム。
【請求項15】
フォトニックナノパターンが、約20nm以下の最小寸法を備える少なくとも1つの特徴を有する、請求項13記載の絹フィブロインベースの生体高分子フィルム。
【請求項16】
フォトニックナノパターンが、3次元である、請求項13記載の絹フィブロインベースの生体高分子フィルム。
【請求項17】
マスターナノパターンが、レンズ、マイクロレンズアレイ、および光学格子、パターン発生器、ビームリシェーパー、ならびにそれらの組み合わせからなる群より選択される少なくとも1つのためのテンプレートである、請求項13記載の絹フィブロインベースの生体高分子フィルム。
【請求項18】
1種類以上の活性物質が、絹フィブロインベースの生体高分子フィルム中に包埋されているか、絹フィブロインベースの生体高分子フィルム上に固定されている、請求項13記載の絹フィブロインベースの生体高分子フィルム。
【請求項19】
活性物質が、細胞、タンパク質、核酸、抗生物質、抗体、酵素、またはそれらの組み合わせである、請求項13記載の絹フィブロインベースの生体高分子フィルム。
【請求項20】
請求項13〜19のいずれか1項に記載のフォトニックナノパターン形成された絹フィブロインベースの生体高分子フィルムを含むオプティカルデバイス。
【請求項21】
バイオフォトニックセンサーである、請求項20記載のオプティカルデバイス。
【請求項22】
オプトフルイディックデバイスである、請求項20記載のオプティカルデバイス。
【請求項23】
光ファイバーの端面上に絹フィブロインベースの生体高分子マトリックスを堆積させる工程と、
該生体高分子マトリックス上にフォトニックナノパターンを形成するために、該生体高分子マトリックスのガラス転移温度より高い温度において、フォトニックマスターナノパターンを該光ファイバーの生体高分子マトリックス端部に押し付ける工程と、
ナノパターン形成された該生体高分子マトリックスと該マスターナノパターンとを分離する工程であって、それによって、該光ファイバーの端面上に、ナノパターン形成された絹フィブロインベースの生体高分子マトリックスを形成する、工程と
を含む、光ファイバーを機能化する方法。
【請求項24】
生体高分子マトリックスを金属層でコーティングする工程をさらに含む、請求項23記載の方法。
【請求項25】
生体高分子マトリックスのガラス転移温度より高い温度において、第二のマスターナノパターンを前記ナノパターン形成された生体高分子マトリックスに押し付け、それによって、該生体高分子マトリックス上に第二のナノパターンを形成する工程と
該ナノパターン形成された生体高分子フィルムと該第二のマスターナノパターンとを分離する工程と、
任意で、複数のナノパターンが形成された生体高分子マトリックスが達成されるまで、第二のマスターナノパターンまたは異なるマスターナノパターンを押し付ける工程および分離する工程を繰り返す工程と
をさらに含む、請求項23または24記載の方法。
【請求項26】
マスターナノパターンが、レンズ、マイクロレンズアレイ、および光学格子、パターン発生器、ビームリシェーパー、またはそれらの組み合わせのためのテンプレートである、請求項23〜24のいずれか1項に記載の方法。
【請求項27】
1種類以上の活性物質が、絹フィブロインベースの生体高分子マトリックス中に包埋されるか、絹フィブロインベースの生体高分子マトリックス上に固定される、請求項23〜26のいずれか1項に記載の方法。
【請求項28】
請求項27記載の方法により製作された、機能化された光ファイバーを含む、薬物送達デバイス。
【請求項29】
活性物質が、光活性剤によってコーティングされており、光を光ファイバーの端部に向けることによって該光活性剤を活性化させ、それにより該活性物質が放出される、請求項28記載の薬物送達デバイス。
【請求項30】
インビボでの活性物質の送達のための、請求項28または29記載の薬物送達デバイス。
【請求項31】
活性物質が、細胞、タンパク質、核酸、抗生物質、抗体、または酵素のうちの少なくとも1つである、請求項30記載の薬物送達デバイス。
【請求項1】
絹フィブロインベースの生体高分子フィルムを得る工程と、
該生体高分子フィルム上にフォトニックナノパターンを形成するために、該生体高分子フィルムのガラス転移温度より高い温度において、マスターフォトニックナノパターンを該生体高分子フィルムに押し付ける工程と、
任意で、該マスターフォトニックナノパターンと該ナノパターン形成された生体高分子フィルムとを分離する工程と
を含む、絹フィブロインベースの生体高分子フィルム上にフォトニックナノパターンを形成するための方法。
【請求項2】
(a)絹フィブロインベースの生体高分子フィルムを得る工程、
該生体高分子フィルム上に第一のナノパターンを形成するために、該生体高分子フィルムのガラス転移温度より高い温度において、第一のマスターナノパターンを該生体高分子フィルムに押し付ける工程、
該第一のマスターナノパターンと該第一のナノパターン形成された生体高分子フィルムとを分離する工程
(b)該生体高分子フィルムのガラス転移温度より高い温度において、第二のマスターナノパターンを、工程(a)により形成された、前記ナノパターン形成された生体高分子フィルムに押し付け、それによって該生体高分子フィルム上に第二のナノパターンを形成する工程、
該第二のマスターナノパターンと該ナノパターン形成された生体高分子フィルムとを分離する工程、ならびに
(c)任意で、複数のナノパターンが形成された望ましい生体高分子フィルムが達成されるまで工程(b)を繰り返す工程
を含む、複数のナノパターンを含むフォトニック絹フィブロインベースの生体高分子フィルムを形成するための方法。
【請求項3】
絹フィブロインベースの生体高分子フィルムを金属層でコーティングする工程をさらに含む、請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
工程(a)および(b)における第一および第二のマスターナノパターンが、同じであり、かつ異なる方向において適用される、請求項2記載の方法。
【請求項5】
工程(a)および(b)における第一のマスターナノパターンおよび第二のマスターナノパターンが異なる、請求項2記載の方法。
【請求項6】
マスターナノパターンが、周期的フォトニック格子、非周期的フォトニック格子、またはそれらの組み合わせを含む、請求項1または2記載の方法。
【請求項7】
マスターフォトニックナノパターンが、レンズ、マイクロレンズアレイ、および光学格子、パターン発生器、ビームリシェーパー、ならびにそれらの組み合わせからなる群より選択される少なくとも1つのためのテンプレートである、請求項1または2記載の方法。
【請求項8】
絹フィブロインベースの生体高分子フィルムの水分が約35%より高く、そのため、ガラス転移温度が、境界値を含めて約20℃〜約100℃の範囲の温度に達する、請求項1または2記載の方法。
【請求項9】
絹フィブロインベースの生体高分子フィルムが水で飽和しており、それによって、前記押し付ける工程を約20℃において実施することができる、請求項8記載の方法。
【請求項10】
押し付ける圧力が、約50psi以下である、請求項1または2記載の方法。
【請求項11】
前記押し付ける工程が、境界値を含めて1秒間〜5秒間適用される、請求項1または2記載の方法。
【請求項12】
水アニール処理(water annealing)およびメタノール処理からなる群より選択される後処理工程をさらに含む、請求項1または2記載の方法。
【請求項13】
その上にフォトニックナノパターンを有する、請求項1または2の方法により製作された絹フィブロインベースの生体高分子フィルム。
【請求項14】
フォトニックナノパターンが、約50nm以下の最小寸法を備える少なくとも1つの特徴を有する、請求項13記載の絹フィブロインベースの生体高分子フィルム。
【請求項15】
フォトニックナノパターンが、約20nm以下の最小寸法を備える少なくとも1つの特徴を有する、請求項13記載の絹フィブロインベースの生体高分子フィルム。
【請求項16】
フォトニックナノパターンが、3次元である、請求項13記載の絹フィブロインベースの生体高分子フィルム。
【請求項17】
マスターナノパターンが、レンズ、マイクロレンズアレイ、および光学格子、パターン発生器、ビームリシェーパー、ならびにそれらの組み合わせからなる群より選択される少なくとも1つのためのテンプレートである、請求項13記載の絹フィブロインベースの生体高分子フィルム。
【請求項18】
1種類以上の活性物質が、絹フィブロインベースの生体高分子フィルム中に包埋されているか、絹フィブロインベースの生体高分子フィルム上に固定されている、請求項13記載の絹フィブロインベースの生体高分子フィルム。
【請求項19】
活性物質が、細胞、タンパク質、核酸、抗生物質、抗体、酵素、またはそれらの組み合わせである、請求項13記載の絹フィブロインベースの生体高分子フィルム。
【請求項20】
請求項13〜19のいずれか1項に記載のフォトニックナノパターン形成された絹フィブロインベースの生体高分子フィルムを含むオプティカルデバイス。
【請求項21】
バイオフォトニックセンサーである、請求項20記載のオプティカルデバイス。
【請求項22】
オプトフルイディックデバイスである、請求項20記載のオプティカルデバイス。
【請求項23】
光ファイバーの端面上に絹フィブロインベースの生体高分子マトリックスを堆積させる工程と、
該生体高分子マトリックス上にフォトニックナノパターンを形成するために、該生体高分子マトリックスのガラス転移温度より高い温度において、フォトニックマスターナノパターンを該光ファイバーの生体高分子マトリックス端部に押し付ける工程と、
ナノパターン形成された該生体高分子マトリックスと該マスターナノパターンとを分離する工程であって、それによって、該光ファイバーの端面上に、ナノパターン形成された絹フィブロインベースの生体高分子マトリックスを形成する、工程と
を含む、光ファイバーを機能化する方法。
【請求項24】
生体高分子マトリックスを金属層でコーティングする工程をさらに含む、請求項23記載の方法。
【請求項25】
生体高分子マトリックスのガラス転移温度より高い温度において、第二のマスターナノパターンを前記ナノパターン形成された生体高分子マトリックスに押し付け、それによって、該生体高分子マトリックス上に第二のナノパターンを形成する工程と
該ナノパターン形成された生体高分子フィルムと該第二のマスターナノパターンとを分離する工程と、
任意で、複数のナノパターンが形成された生体高分子マトリックスが達成されるまで、第二のマスターナノパターンまたは異なるマスターナノパターンを押し付ける工程および分離する工程を繰り返す工程と
をさらに含む、請求項23または24記載の方法。
【請求項26】
マスターナノパターンが、レンズ、マイクロレンズアレイ、および光学格子、パターン発生器、ビームリシェーパー、またはそれらの組み合わせのためのテンプレートである、請求項23〜24のいずれか1項に記載の方法。
【請求項27】
1種類以上の活性物質が、絹フィブロインベースの生体高分子マトリックス中に包埋されるか、絹フィブロインベースの生体高分子マトリックス上に固定される、請求項23〜26のいずれか1項に記載の方法。
【請求項28】
請求項27記載の方法により製作された、機能化された光ファイバーを含む、薬物送達デバイス。
【請求項29】
活性物質が、光活性剤によってコーティングされており、光を光ファイバーの端部に向けることによって該光活性剤を活性化させ、それにより該活性物質が放出される、請求項28記載の薬物送達デバイス。
【請求項30】
インビボでの活性物質の送達のための、請求項28または29記載の薬物送達デバイス。
【請求項31】
活性物質が、細胞、タンパク質、核酸、抗生物質、抗体、または酵素のうちの少なくとも1つである、請求項30記載の薬物送達デバイス。
【図1】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図3D】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9A】
【図9B】
【図9C】
【図10−1】
【図10−2】
【図11】
【図12】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図3D】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9A】
【図9B】
【図9C】
【図10−1】
【図10−2】
【図11】
【図12】
【公表番号】特表2012−517370(P2012−517370A)
【公表日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−550248(P2011−550248)
【出願日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【国際出願番号】PCT/US2010/024004
【国際公開番号】WO2010/126640
【国際公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【出願人】(510300430)トラスティーズ オブ タフツ カレッジ (12)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【国際出願番号】PCT/US2010/024004
【国際公開番号】WO2010/126640
【国際公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【出願人】(510300430)トラスティーズ オブ タフツ カレッジ (12)
【Fターム(参考)】
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