説明

産業廃液を活用した複合材料、産業廃液の固液分離方法、並びに産業廃液の保存方法

【課題】改良された産業廃液の固液分離方法、新規な産業廃液の保存方法、及び産業廃液を活用した新規な複合材料の提供。
【解決手段】産業廃液にポリビニルアルコールを溶解させた後、該溶液に火山噴出物材料を混合攪拌する、産業廃液の固液分離方法。産業廃液にポリビニルアルコールを溶解してゲル状物とする、産業廃液の保存方法。火山噴出物材料、産業廃液及びポリビニルアルコールを含む混練物を乾燥、固化して得られた複合材料。火山噴出物材料としては、シラスバルーンが好適である。また、複合材料は土壌代替材として特に好ましく使用される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は産業廃液を有効利用する技術に関し、詳しくは、産業廃液を活用した新規な複合材料、産業廃液の固液分離方法及び保存方法、並びに、産業廃液からの家畜用飼料の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
焼酎を取り出した後の焼酎粕廃液の海洋投棄は海洋汚染を来たすことから全面的に禁止されている。従って、焼酎粕廃液は、固液分離をして、固体部分(有機固形分)は乾燥を行って家畜の餌や農作物の肥料に利用するか、又は、焼却処分し、液部分は嫌気性発酵してメタンガスを発生させた後に活性汚泥方式で処理して、排水基準値以下にして放流することが一般的に行われている。また、工場及び食肉処理場並びに牛、馬、豚の農場等から出る排水については、固液分離をして固体の部分は焼却や堆肥若しくは産業廃棄処理業者に依頼し、液部分はその殆どが活性汚泥方式で処理して排水基準値以下にして放流するのが一般的である。
【0003】
しかし、焼酎粕廃液における固体部分(有機固形分)は微粒子であるため、焼酎粕廃液の固液分離は簡単ではなく、設備が複雑で、工程数も多くなることから、ランニングコストが高いという問題がある。
【0004】
また、焼酎粕廃液の液部分や工場や食肉処理場等から出る排水の液部分の活性汚泥処理においては、活性汚泥菌の冬場のコントロールが難しく(活性汚泥の維持が難しく)、処理液は白濁し魚が腐ったような悪臭を発するなどの問題点がある。また、焼酎粕廃液は非常に腐りやすく、夏場では午前中の廃液が午後には腐敗する程であり、処理せず放置すること自体、悪臭の発生等の環境汚染の原因になり、焼酎粕廃液の腐敗を防止する技術の確立も重要視されている。例えば、芋焼酎の製造は薩摩芋の生産が集中する9月〜12月がピークであり、この間の多量に生じる焼酎粕廃液は一括して処理しきれず、自ずと放置期間を要してしまうため、焼酎粕廃液の腐敗防止技術を確立できれば、年間を通じて廃液処理を平均的に行うことができる。
【0005】
また、前記したように、焼酎粕廃液における固体部分(焼酎粕)は家畜の餌に利用されているが、該焼酎粕においても腐敗等による悪臭の問題があり、焼酎粕が多量に生じた場合には、悪臭の問題が顕在化する。従って、焼酎粕の家畜の餌や農作物の肥料以外の用途拡大が望まれており、例えば、下記特許文献1には、焼酎粕を焼成炉内のNOx発生抑制材として利用することが記載されている。
【特許文献1】特開2001−321754号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記事情に鑑み、本発明は、焼酎粕廃液等の酒類製造廃液や、工場及び食肉処理場並びに牛、馬、豚の農場等から出る排水等の有機性の固体部分を含む産業廃液を比較的簡単に固液分離できる、産業廃液の処理方法を提供することを目的とする。
また、本発明は、上記産業廃液を腐敗させることなく長期保存を可能にする産業廃液の保存方法を提供することを目的とする。
また、本発明は、上記産業廃液を固液分離せずに、または、固液分離した液部分を活用して得られ、それによって産業廃液の廃棄処理を不要にできる、新規な複合材料を提供することを目的とする。
また、本発明は、上記産業廃液を固液分離せずに活用できる、新規な家畜用飼料の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、前記の課題を解決すべく鋭意研究した結果、焼酎粕廃液等の有機分を含有する産業廃液にポリビニルアルコール(以下、「PVA」ともいう。)を溶解させ、さらにシラスバルーンを混合攪拌すると、産業廃液の固液分離がなされること、また、焼酎粕廃液等の産業廃液にポリビニルアルコールを溶解させた溶液(ゲル状物)は、ポリビニルアルコールが産業廃液を封じ込めて、これらの空気との接触を減じ得る作用があること、また、かかる産業廃液(またはその液部分)にポリビニルアルコールを溶解させた溶液(ゲル状物)と火山噴出物材料との混練物は十分な成形性を有し、その成形物を乾燥、固化させた固化物は、軽量かつ安定した強度を備え、吸水性、保水性、耐熱性等の種々の機能を有する高機能材料となることを見出し、さらに研究を重ねた結果、本発明を完成するに至った。
【0008】
即ち、本発明は以下の通りである。
(1)産業廃液にポリビニルアルコールを溶解させた後、該溶液に火山噴出物材料を混合攪拌することを特徴とする、産業廃液の固液分離方法。
(2)火山噴出物材料がシラスバルーンである、上記(1)記載の方法。
(3)産業廃液にポリビニルアルコールを溶解してゲル状物とすることを特徴とする、産業廃液の保存方法。
(4)火山噴出物材料、産業廃液及びポリビニルアルコールを含む混練物を乾燥、固化して得られた複合材料。
(5)混練物が産業廃棄物焼却灰及び/又は石炭焼却灰をさらに含む混練物であり、当該混練物を乾燥、固化して得られたものである、上記(4)記載の複合材料。
(6)混練物が炭及び/又は活性炭をさらに含む混練物であり、当該混練物を乾燥、固化して得られたものである、上記(4)記載の複合材料。
(7)混練物が有機肥料及び/又は合成肥料をさらに含む混練物であり、当該混練物を乾燥、固化して得られたものである、上記(4)記載の複合材料。
(8)混練物を粒状に成形後、乾燥、固化して得られた粒状の複合材料である、上記(4)〜(7)のいずれか一つに記載の複合材料。
(9)粒子表面に植物の種子を定着させた、上記(8)記載の複合材料。
(10)混練物をパネル状に成形後、乾燥、固化して得られたパネル状の複合材料であって、その少なくとも片側の表面層に植物の種子を保持してなる、上記(4)〜(7)のいずれか一つに記載の複合材料。
(11)緑化資材用である、上記(4)〜(10)のいずれか一つに記載の複合材料。
(12)産業廃液が酒類製造廃液である、上記(4)〜(11)のいずれか一つに記載の複合材料。
(13)火山噴出物材料がシラスバルーンである、上記(4)〜(12)のいずれか一つに記載の複合材料。
(14)上記(1)または(2)に記載の方法によって産業廃液から固液分離して得られた液体と、ポリビニルアルコールと、火山噴出物材料と、ポルトランドセメント又は/及びアルミナセメントとを含む混練物を乾燥、固化して得られた壁用断熱材。
(15)酒類製造廃液から家畜用飼料を製造する方法であって、酒類製造廃液にポリビニルアルコールを溶解させた溶液を乾燥、固化することを特徴とする家畜用飼料の製造方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明の産業廃液の固液分離方法によれば、例えば、焼酎粕廃液等の酒類製造廃液のような有機分(有機性固体)を比較的多量に含む産業廃液であっても、複雑な設備や、作業を要せず、簡便に固液分離を行うことができる。
【0010】
また、本発明の産業廃液の保存方法によれば、例えば、焼酎粕廃液等の酒類製造廃液のような有機分(有機性固体)を比較的多量に含む、腐敗しやすい産業廃液であっても、長期の保存が可能となる。従って、産業廃液が多量に発生し、それを一括して処理できない場合に、かかる方法で放置(保存)しておくことで、悪臭発生等の問題を防止できる。
【0011】
また、本発明の複合材料によれば、産業廃液を固液分離せずに活用できるから、従来のように産業廃液を活用するために産業廃液を固液分離する作業が不溶となり、しかも、該複合材料は産業廃液中の有機分(有機性固体)をその内部に保持し、吸水性、保水性及び通気性も良好であるので、特に緑化資材として好適に使用できる。さらに、種子を保持させたものとすることにより、それを所望の緑化をしたいスペースに敷設し、水を散水することで、植栽を行うことができる。
【0012】
また、本発明の壁用断熱材は、軽量で、断熱性及び調湿性に優れ、しかも、適度な弾性を有することから、高機能かつ高強度の壁用断熱材となる。
【0013】
また、本発明の家畜用飼料の製造方法によれば、産業廃液を固液分離せずに活用できるので、効率的であり、また、製造作業が極めて簡単である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明をより詳細に説明する。
本発明において、「産業廃液」とは、焼酎粕廃液等の酒類の製造により生じる廃液(種類製造廃液)、食肉処理場や牛、馬、豚の農場等から出る排水、及び工場から排出される有害物質を含まない汚泥水、並びに、これらを活性汚泥処理した汚泥液分(以下「活性汚泥液」ともいう)等の種々の産業分野で排出される、有機分(有機性固体)を溶解乃至分散状態で含有する廃棄目的の水系液状物を意味する。
【0015】
また、本発明において、「火山噴出物材料」とは、火山噴出物又は/及び火山噴出物発泡粒体を意味する。
【0016】
ここで、「火山噴出物」は、火山灰、火山礫、火山岩塊等の火山噴出物若しくは該火山噴出物の粉砕粒状物(必要に応じて分級を行ったものも含む)であり、具体例としては、シラス、軽石の粉砕粒状物、ボラ、黒曜石等である。また、「火山噴出物発泡粒体」とは、火山噴出物若しくはその粉砕物を原料として得られた公知の発泡粒体であり、例えば、火山噴出物若しくはその粉砕物を焼成発泡させた発泡粒体、加圧発泡させた発泡粒体等が挙げられる。具体例としては、例えば、シラスバルーン(シラスの焼成発泡粒体・軽石の発泡粒体)、パーライト(黒曜石の粉砕物の焼成発泡粒体)等である。本発明において、火山噴出物材料は1種又は2種以上を使用できる。
【0017】
火山噴出物材料は天然物(その加工品)であるため、人工の合成有機系素材に比べて安全性、環境負荷の点で有利であり、以下に詳述する本発明方法の実施においては、作業者及び環境への有害性が極めて少なく、また、PVAとともに火山噴出物材料を主要素材とする本発明の複合材料においては、PVAとともに火山噴出物材料が無害であることから、地球環境に極めて優しい材料となる。
【0018】
本発明に係る産業廃液の固液分離方法は、産業廃液にポリビニルアルコールを溶解させた後、該溶液に火山噴出物材料を混合攪拌することが特徴である。例えば、産業廃液のうちでも、焼酎粕廃液は、その固体部分(焼酎粕)が微粒子状で、該微粒子状の有機分が水系液媒体に分散した懸濁液であるが、このような懸濁液の産業廃液であっても、該懸濁液にポリビニルアルコールを溶解し、さらに火山噴出物材料を混合攪拌することで、微粒子状の固体部分が火山噴出物材料に吸着して沈降し、固液分離がなされる。すなわち、火山噴出物材料の表面(粒子外表面及び多数の空孔の内表面)にポリビニルアルコールによって封じ込められた状態で有機物(有機性固体)を含む廃液が吸着(付着)し、火山噴出物材料とともに有機物(有機性固体)が沈降して、固液分離がなされる。
【0019】
当該方法において、PVAの使用量は産業廃液の種類によっても異なるが、産業廃液1リットル当たり1〜10gが好ましく、特に好ましくは3〜5gである。PVAの使用量が1gよりも少ないと、産業廃液の有機物を封じ込めず、沈降しても分離が悪く、また、PVAの使用量が10gより多いと、産業廃液そのものがゲル状になり、火山噴出物が沈降しなくなり、好ましくない。
【0020】
PVAの溶解は産業廃液を加熱しながら行うのが好ましく、産業廃液の加熱温度は70〜90℃が好ましく、特に好ましくは80〜90℃である。産業廃液の温度が70℃未満の場合、産業廃液とPVAが溶解せず、産業廃液の温度が90℃を超える場合、PVAが焦げ付いてしまい、好ましくない。
【0021】
当該方法で使用する火山噴出物材料は、沈降を促進させる為に、カサ比重の重い火山噴出物が好ましく、シラスが特に好ましい。
【0022】
また、本方法においては、火山噴出物は沈降の速度を早める点から、粒径が10〜50μmの範囲にあるものを使用するのが特に好ましい。
【0023】
攪拌操作は、公知の攪拌装置で行うことができ、例えば、コンクリートミキサー等を挙げることができる。
【0024】
火山噴出物材料の使用量は産業廃液の種類によっても異なるが、産業廃液10リットル当たり50〜300gが好ましく、特に好ましくは150〜200gである。火山噴出物材料の使用量が50gよりも少ないと、産業廃液に火山噴出物が十分に広がらず有機物の沈降が悪くなり、また、火山噴出物材料の使用量が300gより多いと、全体の処理量が多くなり、好ましくない。
【0025】
攪拌操作により固液分離された後の液中の沈降物(火山噴出物材料にPVA及び固体部分(有機分)が吸着した複合物)は、沈降物1kgに対して火山噴出物発泡体を100〜300g程度混合攪拌し、例えば、熱風乾燥機等で500℃以下の温度、好ましくは100〜300℃(より好ましくは100〜200℃)で乾燥することにより、火山噴出物材料が集塊した固化物となる。該固化物は、有機分を多量に含み、また、火山噴出物材料は無害であるため、粉砕して粒状にすることで、植栽用肥料として有効利用できる。また、該固化物を発酵等し、粉砕することで土壌代替材として利用することができる。なお、前記の加熱処理は500℃を超える温度で行うと、PVAが炭化するために好ましくなく、100℃未満の温度では、乾燥に時間を多く要しコスト高になるため、好ましくない。
【0026】
一方、固液分離後の液部分は水で希釈して放流基準値にして放流する。固液分離後の液部分は有機成分が十分に低くなっており、概ね、3〜5倍程度に希釈することで、放流基準値にすることができる。なお、固液分離後の液部分にPVAを溶解し、該PVA溶液にさらに火山噴出物発泡体と、ポルトランドセメント及び/またはアルミナセメントとを混合することで吹き付け用断熱材に利用することができる。すなわち、上記のPVA溶液に火山噴出物発泡体とポルトランドセメント及び/またはアルミナセメントを混合したペースト状物とし、これを壁(素地)に塗工し、乾燥固化することで、微細空孔を多数有する火山噴出物発泡体が連鎖状に集合してなる多孔質層となり、壁用断熱材となる。ここで、PVAは液部分1リットル当たり5〜20g程度が好ましく、5〜10gが特に好ましい。火山噴出物発泡体の使用量はPVA溶液1kg当たり50〜200kgが好ましく、100〜150kgが特に好ましい。また、ポルトランドセメント及び/またはアルミナセメントの使用量はPVA溶液1kg当たり30〜150g程度が好ましく、50〜100gが特に好ましい。
【0027】
このようにして得られる本発明の壁用断熱材は、軽量で断熱性に優れ、適度な弾性を有するとともに、火山噴出物発泡体を内在することにより優れた調湿性を有する。また、石膏ボード、ベニヤ板等の木製板材、鋼板等との接着性に優れ、特に、建造物の壁材等に好適に使用することができる。従来のこの種の断熱材としては、例えば、珪藻土等が知られているが、かかる従来のものに比べて優れた断熱性が得られる。本断熱材を作製することで、産業廃液の固液分離した液体部分を放流せずに有効利用できる。
【0028】
本発明に係る産業廃液の保存方法は、産業廃液にポリビニルアルコールを溶解してゲル状物とすることが特徴である。すなわち、PVAを産業廃液に溶解してゲル状物とすることにより、産業廃液はPVA水溶液(ゲル)に密封されて、空気との接触が非常に少なくなり、その結果、長期間腐敗を起こさず、保存することができる。従って、産業廃液が多量でそれを一括して処理できない場合に、当該方法によって産業廃液をゲル化して放置(保存)することで、腐敗による悪臭の発生等の環境汚染を防止することができる。
【0029】
当該方法において、PVAの使用量は産業廃液の種類によっても異なるが、産業廃液1リットル当たり5〜300gが好ましく、特に好ましくは100〜200gである。PVAの使用量が5gよりも少ないと、ゲル化が不十分となって、腐敗防止効果が低下する傾向となり、また、PVAの使用量が300gより多いと、硬すぎて保存容器に移す作業が困難となり、好ましくない。
【0030】
PVAの溶解は産業廃液を加熱しながら行うのが好ましく、産業廃液の加熱温度は70〜90℃が好ましく、特に好ましくは80〜90℃である。産業廃液の温度が70℃未満の場合、PVAが溶解しにくくなり、産業廃液の温度が90℃を超える場合、PVAの溶解時に焦げ付いてしまうため、好ましくない。
【0031】
当該方法においては、PVAとともに、ホウ酸金属塩等を添加(溶解)してもよい。ホウ酸金属塩を添加(溶解)することにより、ホウ酸イオンがPVAを網状に結合するので、廃液の密封効果が向上し、廃液の腐敗防止効果をより高めることができ、好ましい。ホウ酸金属塩としては、特に限定されないが、水への溶解性等の点から、ホウ酸ナトリウム(四ホウ酸ナトリウム)が好ましい。
【0032】
当該方法では、廃液にPVAを添加後、該廃液をよく攪拌する必要がある。すなわち、攪拌によってPVAのポリマー鎖間への水分子の封じ込めが促進される。かかる攪拌は、公知の攪拌装置で行うことができ、例えば、ジャケット加湿溶解機等を挙げることができる。
【0033】
当該保存方法は、産業廃液の中でも、有機分濃度が特に濃厚である焼酎粕廃液に対しても十分な腐敗防止効果を得ることができる。
【0034】
本発明に係る第1の複合材料は、火山噴出物材料、産業廃液及びポリビニルアルコールを含む混練物を乾燥、固化した固化物よりなる。
【0035】
すなわち、当該複合材料は、産業廃液にPVAを溶解させたPVAの濃厚溶液と、火山噴出物材料とを混練し、得られた混練物を所望の形状に成形後、加熱、乾燥して作製されるものであり、混練物の段階では火山噴出物材料の粒子間はPVAによるゲル化物によって結合し、かつ、該ゲル化物が個々の粒子の表面及び内部の空孔に入り込んだ状態であり、加熱乾燥によって、火山噴出物材料の粒子間がPVAポリマー鎖で繋がれた塊状物となり、廃液中の水分は外部に揮散し、廃液中の有機分(有機性固体)はPVAとともに塊状物内に取り込まれることとなる。従って、該複合材材料を作製する過程で、産業廃液の処理がなされ、さらに産業廃液の有機分(有機性固体)が当該複合材料を構成する素材として利用されるので、産業廃液を有効利用できる。
【0036】
当該複合材料は、軽量で比較的高い強度を有する火山噴出物材料(粒状物)の粒子間がPVAによって連結された塊状物であり、軽量で強度的にも安定であるとともに、火山噴出物材料が有する多孔質性とPVAが有する吸水性及び保水性とによって、通気性、吸水性及び保水性のいずれもが良好な多孔質体となる。さらに、該複合材料は、PVAが生分解性を有し、火山噴出物材料はそれ自体無害であることから、地球環境に優しい材料となる。
【0037】
当該複合材料の形態は、その使用目的に応じて適宜決定されるが、パネル状、ブロック状、粒状、シート状などが挙げられる。
【0038】
当該複合材料の用途としては、土壌改良(改質)材、緑化資材、吹き付け材等が挙げられる。ここで、土壌改良(改質)材とは植栽することを特に意図していない土壌に混合して、または、土壌の代替材として使用する材料を意味し、緑化資材とは、植栽を目的とする土壌に混合して、または該土壌の代替材として使用する材料であり、吹き付け材とは植栽を意図する部位にそれを吹き付けることによって植栽面を形成し得る材料を意味する。近時、オフィスビルや家庭内での緑を強調した環境づくりが注目され、緑化運動が盛んであり(特に屋上緑化によって、輻射熱の軽減(ヒートアイランド現象の防止)効果を有するとの報告があり、冷房費の節約等にも大きく貢献するものとして期待されている。)、家屋や建造物(ビル)の屋内、屋上、ベランダ、テラスなどに天然植物を育成する試みが盛んに行われているが、このような家庭の庭やベランダ建造物の屋内や屋上等に土壌を敷き詰めることは、土の散らばりや、散水した水の飛散や流出等の問題を生じる。よって、土や水の飛散、水の流出等を起こさず、植物を支障なく育成できる緑化資材が求められている。本発明の複合材料は、無害で、通気性、吸水性及び保水性のいずれもが良好であることから、緑化資材に特に好適である。
【0039】
土壌改良(改質)材、緑化資材等に利用する場合、例えば、当該複合材料を粒状物にして所望のスペースに敷き詰めるか、あるいは、当該複合材料をパネル状に成形して、それを緑化したいスペースに敷設するのが好ましい。緑化資材として使用すると、散水した水は、当該材料の空孔及びPVAに吸収され、保水されるので、周囲に飛散せず、種子の発芽、植物の成長に有効利用される。また、多孔質であることから、通気も確保でき、植物の根への通気が不十分になることもなく、植物を良好に生育させることができる。また、複合材料中に存在する産業廃液の有機分(有機性固体)は、肥料となり、植物の成長が促進される。粒状物である場合、その粒径は0.5〜30mm程度が好ましく、かさ密度は3〜6g/cm程度が好ましい。
【0040】
当該複合材料は、産業廃液1リットル当たり、PVAを100〜300kg程度溶解したPVA濃厚溶液(ゲル)を調製し、該PVA濃厚溶液1重量部当たり0.7〜1.2重量部程度の火山噴出物材料を添加して混練することで可塑性の混練物を調製し、該可塑性混練物を所望の形状に成形し、加熱乾燥することで得ることができる。
【0041】
混練物の成形方法は特に限定されないが、所望の形状にした型枠に混練物を投入し、プレス成形するのが好ましく、該プレス成形におけるプレス圧は15〜40kg/cm程度とするのが好ましい。プレス圧が40kg/cmを超えると、火山噴出物材料(特に火山噴出物発泡粒体)の破壊が起り、複合材料の密度が高くなって、軽量化が損なわれるだけでなく、通気性、吸水性及び保水性にも支障をきたす場合がある。また、プレス圧が15kg/cm未満では、PVA溶液と火山噴出物発泡粒体の密着度及び強度が弱く、好ましくない。
【0042】
また、粒状に成形する場合は、例えば、セラミックの造粒等の分野で使用されている公知の造粒機を使用して造粒すればよい。なお、粒状に成形する工程の最終段階で植物の種子を成形物の表面にまぶすことで該表面に定着させれば、乾燥して得られる粒状の複合材料は、土壌代替材であって、しかも、種子も具備したたものとなり、それを所望のスペースに敷き詰め、散水するだけで植栽を行えるものとなる。
【0043】
上記PVA濃厚溶液の調製において、産業廃液1リットル当たりPVA濃厚溶液のPVAの使用量が上記範囲よりも少ないと、PVA溶液と火山噴出物発泡体との密着が悪く強度が出ず、また、多い場合はPVA溶液が硬くなり、火山噴出物発泡体との攪拌が均一に出来なくなってしまう。
【0044】
PVAの産業廃液への溶解は70〜90℃程度に産業廃液を加熱しながら行うのが好ましい。
【0045】
PVA濃厚溶液(ゲル)と火山噴出物材料との混練物の調製は、例えばコンクリートミキサーの攪拌機で行うことできる。また、PVA濃厚溶液と混練する火山噴出物材料のPVA濃厚溶液1重量部当たりの使用量が上記範囲よりも少ない場合、形成される複合材料の強度が上がらず、また、多い場合は、例えば、複合材料を粒状物に成形する場合に、造粒機にへばり付き、造粒できなくなるため、好ましくない。
【0046】
混練物の加熱乾燥温度は100〜500℃が好ましく、より好ましくは100〜200℃である。500℃を超える温度に加熱すると、PVAが炭化するために好ましくない。また、100℃未満の温度では、乾燥時間を要するため、生産性が上がらず、好ましくない。また、加熱乾燥は、PVAの炭化を防止する観点から、熱風乾燥機や熱風回転乾燥機等で行うのが好ましい。
【0047】
当該複合材料において、加熱乾燥後の最終製品における火山噴出物材料とPVAの組成(量比)は、複合材料の用途によっても異なるが、一般的には、その重量比(火山噴出物材料:PVA)が1:0.5〜0.7であるのが好ましい。
【0048】
当該複合材料においては、PVA濃厚溶液と火山噴出物材料とを混練する際に、さらに発電所等から出てくる石炭焼却灰や、産業破棄物処理から出てくる産業廃棄物焼却灰(ダイオキシン、鉛、カドミウム等の有害物質を含まないもの)を加えて混練することにより、産業廃液だけでなく、石炭焼却灰や産業廃棄物焼却灰等も有効活用できる。石炭焼却灰の成分はシリカとアルミナが占め、シラスと同様の組成であり、石炭焼却灰を混入することで、複合材料の強度を一層高めることができる。また、産業廃棄物焼却灰は、リンが多く含まれるため、複合材料を土壌代替材に使用する場合に、複合材料中の肥料分(栄養分)を高めることができる。石炭焼却灰及び/又は産業焼却灰の添加量は火山噴出物材料1重量部当たり0.3〜1.0重量部程度が好ましい。
【0049】
また、当該複合材料を緑化資材として使用する場合、PVA濃厚溶液と火山噴出物材料とを混練する際に、さらに有機肥料及び/又は合成肥料を加えて混練することにより、肥料分がより高められた土壌代替材(緑化用資材)を得ることができる。この場合、有機肥料及び/又は合成肥料の添加量は、火山噴出物材料1重量部当たり0.01〜0.03重量部程度が好ましい。
【0050】
また、PVA濃厚溶液と火山噴出物材料とを混練する際に、さらに炭(木炭、竹炭等)及び/又は活性炭を加えて混練することにより、炭及び/又は活性炭を含む複合材料を得ることができ、このような複合材料ではさらに脱臭性が付与される。この場合、炭及び/又は活性炭の添加量は、火山噴出物材料1重量部当たり0.1〜0.3重量部程度が好ましい。
【0051】
当該複合材料で使用する火山噴出物材料は、強度・保水性の点から、火山噴出物発泡粒体が好ましく、中でもシラスバルーンが特に好ましい。また、火山噴出物発泡粒体は、本複合材料おいては、粒径が50〜200μmの範囲にあるものを使用するのが特に好ましい。
【0052】
また、産業廃液は、有機分(有機栄養分)濃度が特に濃厚である酒類製造廃液が好ましく、なかでも焼酎粕廃液が特に好ましい。焼酎粕廃液を使用することによって、有機分(有機栄養分)を多く含む複合材料にでき、土壌代替材(緑化用資材)としてより好ましいものとなる。
【0053】
また、当該複合材料の好ましい態様として、種子入りパネルを挙げることができる。すなわち、該種子入りパネルとは、前記の火山噴出物材料、産業廃液及びポリビニルアルコールを少なくとも含む混練物をパネル状に成形後、乾燥、固化したものであり、パネル状に成形する際に混練物の一部に植物の種子を混入することで、パネルの少なくとも片側の表面層に植物の種子を保持させたものである。
【0054】
かかる種子入りパネルであれば、家庭の庭や、家屋やビル建造物のベランダ、屋上、屋内における緑化予定領域に敷設し、これに散水を行うだけで、植栽をすることができる。また、軽量であるため、その増設、撤去も容易に行うことができ、緑化領域の拡大、縮小を簡単に行うことができる。パネルの形状は、特に限定されないが、正方形、長方形等が好ましい。
【0055】
当該種子入りパネルは、次のようにして製造するのが好ましい。すなわち、産業廃液にPVAを溶解させたPVA濃厚溶液を調製し、該PVA濃厚溶液1重量部当たり0.7〜1.0重量部程度の火山噴出物材料を添加して混練することで可塑性の混練物を調製する。そして、この可塑性の混練物を2つに分け、一方の混練物をプレス成形してパネル(基材パネル)を得る一方、他方の混練物にはさらに所望の植物の種子を混練して種子入り混練物を調製し、該種子入り混練物を前記パネル(基材パネル)の少なくとも一方の表面に均一層となるように展開、成形し、この後、かかる積層体を熱風乾燥機等で加熱乾燥して、固化させる。
【0056】
パネルに成形時のプレス圧は前記と同じ理由から前記の数値範囲内で行うのが好ましい。また、加熱乾燥における温度も前記と同様の理由から前記の数値範囲内で行うのが好ましい。
【0057】
また、パネルの全体厚みは3〜10cm程度が好ましく、種子が保持された表面層の厚みは0.3〜1mm程度が好ましい。
【0058】
本発明で使用できる植物の種子としては、芝(西洋芝、高麗芝)、草花、野菜、米等の各種植物の種子であり、特に限定はされない。
【0059】
本発明に係る家畜用飼料は、酒類製造廃液にポリビニルアルコールを溶解させたPVA溶液を乾燥、固化して得られる固化物よりなる。すなわち、産業廃液の中でも酒類製造廃液は有機分(有機性固体)を高濃度に含有するものであり、かかる酒類製造廃液にPVAを溶解したPVA溶液を自然乾燥又は加熱乾燥して固化させることで、酒類製造廃液中の水分は揮散し、酒類製造廃液中の有機分(有機性固体)は固化物中に混在する。従って、酒類製造廃液を固液分離せずに活用して、栄養豊富な家畜用飼料を得ることができる。
【0060】
酒類製造廃液は制限されず、日本酒、ビール、焼酎、ぶどう酒等の製造によって生じる廃液であれば特に制限なく使用できるが、なかでも、焼酎廃液(焼酎粕廃液)が植物繊維が多く含まれている点で好ましい。
【0061】
また、本家畜用飼料において、PVAの溶解量は酒類製造廃液の濃度によっても異なるが、酒類製造廃液1リットル当たり概ね3〜10g程度であり、好ましくは3〜5gである。
【0062】
本明細書中の火山噴出物材料(粒状物)の粒径測定は以下の方法(ふるい分け法)で行った。
電磁式ふるい振とう器((株)井内盛栄営製)に標準ふるいを5〜10段装着し、試料をふるい振とうすることで分級し、各粒子区分の重量比で測定した。すなわち、標準ふるいを目開きの大きいものを上にして順次重ね、上段に試料20gを入れ15分間ふるい振とうさせ、各メッシュ毎の試料の重量を測定し、粒度分布を求めた。
【0063】
平均粒径は各メッシュ毎に篩い分けられた粒子の試料全体に対する割合(重量%)を算出し、各メッシュ毎の割合(重量%)を上段から足していき、50%超えになる前の数値を[d]、50%超えになる数値を[e]とし、50%超えにならないメッシュのアンダー値(μm)を[a]とする。そして、50%超えになるメッシュを特定し、そのメッシュのオーバー値(μm)を[b]、アンダー値を[c]として、下記式(I)より重量平均粒径を求めた。
平均粒径(μm)=a−〔(b−c)×{(50−d)/e}〕・・・(I)
【実施例】
【0064】
以下、実施例を示して本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下に示す実施例によって何ら限定されるものではない。
【0065】
実施例1
米焼酎粕廃液(明石酒造(株)製)10リットルにポリビニルアルコール(日本合成化学工業(株)製「ゴーセノールN300」)を3kg混合し、70〜80℃に攪拌しながら加熱して均一に溶解することにより、濃厚なポリビニルアルコール水溶液を得た。次に、このポリビニルアルコール水溶液5kgにシラスバルーン(豊和直(株)製「SKB−6000」、平均粒径180μm、かさ密度が1.8g/cm)を5kg添加し、攪拌機(光洋機械産業(株)製、モルタルミキサー)でよく混練することによって可塑性の混練物を得た。得られた混練物を30cm×30cm×5cmの型枠に2kg投入し、圧力20kgf/cmでプレス成形して、パネル状成形物を得た。そして、かかるパネル状成形物を型枠から取り出し、熱風乾燥炉において500℃で30分間加熱乾燥して固化させることにより、密度が2.5g/cmのパネル状の複合材料を得た。
【0066】
実施例2
実施例1で調製したポリビニルアルコール水溶液5kgに、シラスバルーン(豊和直(株)製「SKB−6000」)4kgと火力発電所から出る石炭焼却灰(トーガク提供)2kgとを混合した混合物を添加し、攪拌機でよく混練することによって可塑性の混練物を得た。そして、この混練物を実施例1と同様にして成形、乾燥して固化させることにより、密度が4.0g/cmのパネル状複合材料を作製した。
【0067】
実施例3
芋焼酎粕廃液(明石酒(株)製)10リットルにポリビニルアルコール(日本合成化学工業(株)製「ゴーセノールN300」)を3kg混合し、70〜80℃に攪拌しながら加熱して均一に溶解することにより、濃厚なポリビニルアルコール水溶液を得た。次にこのポリビニルアルコール水溶液5kgにシラスバルーン(豊和直(株)製「SKB−6000」)を5kg添加し、攪拌機で良く混練することによって可塑性の混練物を得た。得られた混練物を1.8kgと0.2kgに分け、1.8kgの混練物を30cm×30cm×5cmの型枠に2kg投入し、20kgf/cmのプレス成形し、0.2kgの混練物に西洋芝(タキイ種苗(株))の種子3gを均一に混ぜ込み、次いでプレス成形した前記成形物の表面に全ての種子混練物を均一層となるように展開し、再度20kg/cmのプレス圧でプレス成形した。この後、プレス成形したものを型枠から取り出し、熱風乾燥炉において100℃で2時間加熱乾燥して、固化させることにより、密度が2.8g/cmの種子入りのパネル状複合材料を得た。この種子入りのパネル状複合材料に水を3リットル散布したところ、散布後、25目に均一な発芽が得られた。
【0068】
実施例4
麦焼酎粕廃液(明石酒(株)製)10リットルにポリビニルアルコール(日本合成化学工業(株)製「ゴーセノールN300」)を3kg混合し、70〜80℃に攪拌しながら加熱して均一に溶解することにより、濃厚なポリビニルアルコール水溶液を得た。次にこのポリビニルアルコール水溶液5kgにシラスバルーン(豊和直(株)製「SKB−6000」)を4kgと、火力発電所から出る石炭焼却灰(トーガク提供)2kgを混合した混合物を添加し、攪拌機で良く混練することによって可塑性の混練物を得た。得られた混練物を1.8kgと0.2kgに分け、以降は実施例3と同様の条件で密度が3.8g/cmのパネル状複合材料を得た。
【0069】
実施例5
米焼酎粕廃液(明石酒(株)製)10リットルにポリビニルアルコール(日本合成化学工業(株)製「ゴーセノールN300」)を3kg混合し、70〜80℃に攪拌しながら加熱して均一に溶解することにより、濃厚なポリビニルアルコール水溶液を得た。次にこのポリビニルアルコール水溶液5kgにシラスバルーン(豊和直(株)製「SKB−6000」)を4kgと木炭焼却灰(豊新(株)提供)2kgとを混合した混合物を添加し、攪拌機で良く混練することによって可塑性の混練物を得た。得られた混練物から、実施例1と同様の条件で、成形、加熱乾燥を行って、密度が3.1g/cmのパネル状複合材料を得た。
【0070】
実施例6
米焼酎粕廃液(明石酒(株)製)10リットルにポリビニルアルコール(日本合成化学工業(株)製「ゴーセノールN300」)を3kg混合し、70〜80℃に攪拌しながら加熱して均一に溶解することにより、濃厚なポリビニルアルコール水溶液を得た。次にこのポリビニルアルコール水溶液5kgにシラスバルーン(豊和直(株)製「SKB−6000」)を4kgと木炭焼却灰(豊新(株)提供)2kgとを混合した混合物を添加し、攪拌機で良く混練することによって可塑性の混練物を得た。得られた混練物を1.8kgと0.2kgに分け、以降は実施例3と同様の条件で、成形、加熱乾燥を行い、密度が3.3g/cmのパネル状複合材料を得た。
【0071】
実施例7
麦焼酎粕廃液(明石酒(株)製)10リットルにポリビニルアルコール(日本合成化学工業(株)製「ゴーセノールN300」)を3kg混合し、70〜80℃に攪拌しながら加熱して均一に溶解することにより、濃厚なポリビニルアルコール水溶液を得た。次にこのポリビニルアルコール水溶液5kgにシラスバルーン(豊和直(株)製「SKB−6000」)を5kgと万能肥料((株)トップ提供)5gとを混合した混合物を添加し、攪拌機で良く混練することによって可塑性の混練物を得た。得られた混練物を1.8kgと0.2kgに分け、得られた混練物を1.8kgと0.2kgに分け、以降は実施例3と同様の条件で、成形、加熱乾燥を行い、密度が2.9g/cmのパネル状複合材料を得た。
【0072】
実施例8
活性汚泥液(児湯食鳥(株)製)10リットルにポリビニルアルコール(日本合成化学工業(株)製「ゴーセノールN300」)を3kg混入し、70〜80℃に攪拌しながら加熱して均一に溶解することにより、濃厚なポリビニルアルコール水溶液を得た。次にこのポリビニルアルコール水溶液5kgにシラスバルーン(豊和直(株)製「SKB−6000」)を5kg添加し、攪拌機で良く混練することによって可塑性の混練物を得た。得られた混練物を、実施例1と同様の条件で成形、加熱乾燥して、密度が2.9g/cmのパネル状複合材料を得た。
【0073】
実施例9
焼酎粕廃液の活性汚泥液(薩摩加工(株)製)10リットルにポリビニルアルコール(日本合成化学工業(株)製「ゴーセノールN300」)を3kg混入し、70〜80℃に攪拌しながら加熱して均一に溶解することにより、濃厚なポリビニルアルコール水溶液を得た。次にこのポリビニルアルコール水溶液5kgにシラスバルーン(豊和直(株)製「SKB−6000」)を5kg添加し、攪拌機で良く混練することによって可塑性の混練物を得た。得られた混練物を、実施例1と同様の条件で成形、加熱乾燥して、密度が3.0g/cmのパネル状複合材料を得た。
【0074】
実施例10
焼酎粕廃液の活性汚泥液(薩摩加工(株)製)10リットルにポリビニルアルコール(日本合成化学工業(株)製「ゴーセノールN300」)を3kg混入し、70〜80℃に攪拌しながら加熱して均一に溶解することにより、濃厚なポリビニルアルコール水溶液を得た。次にこのポリビニルアルコール水溶液5kgに、シラスバルーン(豊和直(株)製「SKB−6000」)を4kgと木炭焼却灰(豊新(株)提供)2kgとの混合物を添加し、攪拌機で良く混練することによって可塑性の混練物を得た。得られた混練物を1.8kgと0.2kgに分け、以降は実施例3と同様にして、密度が2.9g/cmの種子入りのパネル状複合材料を得た。
【0075】
実施例11
米焼酎粕廃液(明石酒(株)製)10リットルにポリビニルアルコール(日本合成化学工業(株)製「ゴーセノールN300」)を3kg混合し、70〜80℃に攪拌しながら加熱して均一に溶解することにより、濃厚なポリビニルアルコール水溶液を得た。次にこのポリビニルアルコール水溶液5kgに、シラスバルーン(豊和直(株)製「SKB−6000」)を4kgと石炭焼却灰(電脳技研(株)提供)2kgとを混合した混合物を添加し、攪拌機で良く混練することによって可塑性の混練物を得た。得られた混練物を造粒機(梅木製作所(有)製、同盤方式)で粒径範囲3〜15mmの粒状物に成形した。そして、回転熱風乾燥炉において該粒状物を500℃で30分間加熱、乾燥することにして、粒状の複合材料を作製した。この粒状の複合材料のかさ密度は2.7g/cmであった。
【0076】
なお、ここでのかさ密度(g/cm)は、所謂、タッピング密度であり、200ccのシリンダーに試料50gを入れ、電磁ふるい振とう器で5分間振とうさせた後、シリンダーの目盛りから試料の体積(cm)(=cc)を読み取り、試料重量を該体積で除して求めた。
【0077】
実施例12
米焼酎粕廃液(明石酒(株)製)10リットルにポリビニルアルコール(日本合成化学工業(株)製「ゴーセノールN300」)を3kg混合し、70〜80℃に攪拌しながら加熱して均一に溶解することにより、濃厚なポリビニルアルコール水溶液を得た。次にこのポリビニルアルコール水溶液5kgに、シラスバルーン(豊和直(株)製「SKB−6000」)を4kgと石炭焼却灰(トーガク提供)2kgを混合した混合物を添加し、攪拌機で良く混練することによって可塑性の混練物を得た。得られた混練物を造粒機で粒径範囲3〜10mmの粒状物に成形しながら最後に西洋芝(タキイ種苗(株))の種子600gを均一に振りかけて粒の表面に定着させた。この後、かかる粒状物を回転熱風乾燥炉において100℃で30分間加熱、乾燥することによって、かさ密度が3.0g/cmの種子入りの粒状複合材料を得た。
【0078】
実施例13
米焼酎粕廃液(明石酒(株)製)10リットルにポリビニルアルコール(日本合成化学工業(株)製「ゴーセノールN300」)を300g混入し、70〜80℃に攪拌しながら加熱して均一に溶解することにより、ポリビニルアルコール水溶液を得た。この水溶液にシラス原料(若松商店(有)製)1kgを均一に混合攪拌し、12時間静止することにより有機物が30%、水の部分が70%に分離された。沈降物は熱風乾燥機で500℃以下で乾燥して集塊体とし、分離した水は水道水で2.0倍に薄めて放流基準値にした。
【0079】
実施例14
実施例13で分離して得た液部分10リットルに対して、PVA500gを溶解させ、この溶液に、予めシラスバルーン(豊和直(株)製「SKB−6000」)1kgに対してポルトランドセメント(アサノセメント社製)700gを混合しておいた混合物を混合して攪拌し、かかる混合物を壁に厚さ3mmにコテ仕上げで塗工し、乾燥することで断熱壁材を作製した。
【0080】
実験例1
実施例11で作製した粒状複合材料を50cm×50cm×7cmの型枠に厚み5cm程度となるように敷き詰め、次いで、実施例12で得られた種子入り粒状複合材料を厚み1cm程度となるように敷いてから、水を5リットル散布したところ、散布後、2週間目に均一な発芽が得られた。
【0081】
実験例2
実施例10で作製した30cm×30cm×5cmのパネル状複合材料(1.2kg)を水中に30分間浸漬後、重量計測を行ったところ、4.3kgになり、吸水量は3.1kgであった。従って、1cm当たり0.69g水を吸収し、優れた吸水能力を確認できた。
【0082】
実験例3
上記実験例2で水を吸収させたパネル状複合材料を工場内(温度13〜18℃、湿度50〜70%)に、その略全面が開放した状態で40日間放置したところ、約0.8kgの水を保持していた。従って、PVAと火山噴出物材料の組み合わせにより、水分の蒸発速度が十分に遅く、優れた保水性を示すことを確認できた。
【0083】
実施例15
廃液(麦焼酎粕廃液)10リットルに対して、PVA1kgを入れ、80〜90℃で撹拌しながら溶解させ、PVAと廃液が十分に混合できたのを確認し(40分間)、その後保存容器(プラスチック製容器)に移した。この作業を3月1日に実施したが、その後、約1ヵ月後の4月5日迄、腐敗・臭気の発生は認められなかった。
【0084】
試験例1(曲げ強度試験)
実施例10で作製したパネル状複合材料を、図1に示すように、2点支持して(支点間距離30cm)、パネル状複合材料の中心位置に荷重を掛けて、下記式に基づいて曲げ強度(kg/cm)を算出したところ、30kg/cmであった。
【0085】
【数1】

【0086】
式中、wは荷重(kgf)、lは支点間距離(cm)、hは部材断面縦(cm)、b部材断面横(cm)である。
【0087】
従って、十分な曲げ強度を有しており、実装性及び取扱い性(輸送及び作業性)の点からも優れた複合材料であることが確認できた。
【図面の簡単な説明】
【0088】
【図1】パネル状複合材料の曲げ強度の測定方法を説明する図である。
【符号の説明】
【0089】
w 荷重
l 支点間距離
h 部材断面縦

【特許請求の範囲】
【請求項1】
産業廃液にポリビニルアルコールを溶解させた後、該溶液に火山噴出物材料を混合攪拌することを特徴とする、産業廃液の固液分離方法。
【請求項2】
火山噴出物材料がシラスバルーンである、請求項1記載の方法。
【請求項3】
産業廃液にポリビニルアルコールを溶解してゲル状物とすることを特徴とする、産業廃液の保存方法。
【請求項4】
火山噴出物材料、産業廃液及びポリビニルアルコールを含む混練物を乾燥、固化して得られた複合材料。
【請求項5】
混練物が産業廃棄物焼却灰及び/又は石炭焼却灰をさらに含む混練物であり、当該混練物を乾燥、固化して得られたものである、請求項4記載の複合材料。
【請求項6】
混練物が炭及び/又は活性炭をさらに含む混練物であり、当該混練物を乾燥、固化して得られたものである、請求項4記載の複合材料。
【請求項7】
混練物が有機肥料及び/又は合成肥料をさらに含む混練物であり、当該混練物を乾燥、固化して得られたものである、請求項4記載の複合材料。
【請求項8】
混練物を粒状に成形後、乾燥、固化して得られた粒状の複合材料である、請求項4〜7のいずれか一項に記載の複合材料。
【請求項9】
粒子表面に植物の種子を定着させた、請求項8記載の複合材料。
【請求項10】
混練物をパネル状に成形後、乾燥、固化して得られたパネル状の複合材料であって、その少なくとも片側の表面層に植物の種子を保持してなる、請求項4〜7のいずれか一項に記載の複合材料。
【請求項11】
緑化資材用である、請求項4〜10のいずれか一項に記載の複合材料。
【請求項12】
産業廃液が酒類製造廃液である、請求項4〜11のいずれか一項に記載の複合材料。
【請求項13】
火山噴出物材料がシラスバルーンである、請求項4〜12のいずれか一項に記載の複合材料。
【請求項14】
請求項1または2に記載の方法によって産業廃液から固液分離して得られた液体と、ポリビニルアルコールと、火山噴出物材料と、ポルトランドセメント又は/及びアルミナセメントとを含む混練物を乾燥、固化して得られた壁用断熱材。
【請求項15】
酒類製造廃液から家畜用飼料を製造する方法であって、酒類製造廃液にポリビニルアルコールを溶解させた溶液を乾燥、固化することを特徴とする家畜用飼料の製造方法。

【図1】
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【公開番号】特開2007−275848(P2007−275848A)
【公開日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−109122(P2006−109122)
【出願日】平成18年4月11日(2006.4.11)
【出願人】(597086863)豊和直 株式会社 (11)
【Fターム(参考)】