説明

産業機械のデータ転送装置

【課題】 センサからの検出情報を精度高くかつ、遅れることなく得ることができる伝送装置を得る。
【解決手段】 ロードセル22で測定した圧力をアナログインタフェース21に設けられたA/Dコンバータでディジタル信号に変換し、ディジタルフィルタで処理する。このディジタルフィルタで処理されたセンサ信号を光ファイバ23によって伝送周期毎産業機械の制御装置10に転送する。A/Dコンバータによるディジタルサンプリング周期を転送周期より短く設定する。これにより、精度が高くかつ、ディジタルフィルタ処理出力の遅れは短くなり、制御装置は遅れが少なく、精度の高いディジタル信号によるセンサ測定信号を得ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種産業機械において、センサにより検出した測定データを転送する転送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
各種産業機械において、該産業機械に取り付けられたセンサで各種物理量を検出してその検出信号を該産業機械の制御装置に転送する場合、センサで検出したアナログ信号をそのまま、または増幅器等を介して制御装置に転送し、制御装置内に設けられたA/Dコンバータでディジタル信号に変換して制御装置では、このセンサからの信号を利用している。
【0003】
例えば、射出成形機において、加熱シリンダ内の樹脂圧力を検出するために射出スクリュに加わる圧力をロードセル等のセンサで検出し、該検出信号を、射出成形機を制御する制御装置に転送し、制御装置内に設けたA/Dコンバータでアナログ信号からディジタル信号に変換して、この変換された圧力情報を射出制御に利用している(特許文献1参照)。
【0004】
また、センサで測定した測定アナログ信号をA/Dコンバータでディジタルサンプリングしディジタル信号に変換し、この変換されたディジタル信号を制御装置にシリアル転送し、制御装置は受信したセンサからのディジタル信号をノイズ除去のためにディジタルフィルタによりフィルタ処理して、このセンサ信号を利用している。
【0005】
【特許文献1】特開平9−76318号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
センサ出力のアナログ信号をアナログ信号の状態で制御装置に伝送する場合、アナログ信号を伝送することから、センサ信号にノイズが載りやすいという問題がある。
また、センサ側において、センサ信号をA/Dコンバータでディジタルサンプリングしディジタル信号に変換して制御装置にシリアル転送し、制御装置側でフィルタ処理してノイズを除去し、センサ信号を利用する場合、制御装置が受信するセンサ信号は転送周期毎の信号となる。結局、センサで検出された信号をA/Dコンバータでディジタルサンプリングする周期は転送周期に制限されてしまう。転送周期よりも短いサンプリング周期でA/D変換しても意味がないことになり、制御装置が把握できるセンサ信号の精度も転送周期によって決まることになる。
【0007】
さらに、制御装置側で、ノイズ除去のためにディジタルフィルタによりフィルタ処理が行われるため、シリアル転送が所定回数以上の行われた後にしかフィルタ処理が実現できない。そのため、センサで物理量を検出してから、このセンサ出力信号を制御装置が利用するまでには、時間がかかってしまい遅れが生じるという問題がある。
そこで、本発明は、この問題を解決することを発明の目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願請求項1に係る発明は、産業機械に取り付けられたセンサからの信号を、該産業機械を制御する制御装置へ転送する産業機械のデータ転送装置において、前記産業機械は前記センサからのアナログ信号をディジタル信号に変換するA/Dコンバータおよび前記ディジタル信号のノイズを除去するディジタルフィルタを含むアナログインタフェースを有し、前記ノイズが除去されたディジタル信号をシリアル通信で前記制御装置へ転送する
ことを特徴とするものである。また、請求項2に係る発明は、前記A/Dコンバータによるアナログ信号のサンプリング周期を前記シリアル通信による転送周期よりも短いものとしている。さらに、請求項3に係る発明は、前記ディジタルフィルタをハードウェアによる論理回路で構成した。
【発明の効果】
【0009】
センサから制御装置に測定信号を送信する転送周期に制限されず、センサで検出したアナログ信号をディジタル信号に変換できることから、精度の高い測定ディジタル信号を転送することができる。また、ディジタルフィルタ処理がA/D変換のディジタルサンプリング周期毎得られた信号に基づいて実施されるから、ディジタルフィルタの出力の遅れは、短くなり、制御装置は、精度の高い遅れが少ないセンサ信号を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
図1は、本発明の一実施形態の要部ブロック図である。この実施形態では、産業機械として射出成形機に適用した例を示している。
図1において、符号10は、射出成形機を制御する制御装置であり、数値制御装置(CNC)で構成されている。該制御装置10に設けられたCNC内部バス16には、数値制御を行うプロセッサ(CPU)11およびDSP(Digital Signal Processor)制御部12が接続されている。さらに、DSP制御部12には、DSPバス17を介して圧力制御用のDSP13、射出成形機の射出軸や型締め軸、エジェクト軸等の各可動部を駆動するサーボモータを制御する軸制御用のDSP14が接続されている。さらに、光通信制御部15がDSP制御部12に接続されている。
なお、制御装置10は、ROM,RAM等のメモリや入出力回路、表示器、データ入出力のためのキーボード等を備えているが、図1では本発明と直接関係していないことから、図示していない。
【0011】
射出成形機に設けられたセンサとして、この図1に示す実施形態には樹脂圧力を検出するロードセル22の例を示しており、該ロードセル22の出力は、アナログインタフェース21に入力されている。該アナログインタフェース21の出力は光ファイバ23により光によるシリアル通信により制御装置10に転送され、アンプ20を介して制御装置10内の光通信制御部15に入力されている。
アナログインタフェース21は、A/Dコンバータとハードウェアによる論理回路で構成されたディジタルフィルタを備えている。
【0012】
ロードセル22は、射出スクリュにかかる樹脂圧力を検出し、アナログインタフェース21に出力する。アナログインタフェース21は、このロードセル22からの検出アナログ信号をA/Dコンバータによってディジタル信号に変換し、さらに、ディジタルフィルタによって、ディジタルフィルタ処理してノイズを除去する。
【0013】
一方、制御装置10に設けられた光通信制御部15は、所定転送周期毎、アンプ20を介して、アナログインタフェース21の出力であるディジタル信号に変換され、ディジタルフィルタ処理されたロードセル22で検出された樹脂圧力を読み出す。圧力制御用のDSP13は、この読み出した樹脂圧力により、射出圧力制御等に利用する。
【0014】
アナログインタフェース21におけるA/Dコンバータが行うアナログ信号をディジタル信号に変換する変換処理のディジタルサンプリング周期は、光ファイバ23によるシリアル通信周期よりも短い周期に設定され、この周期で変換されたディジタル信号をディジタルフィルタによりフィルタ処理がなされる。そして、フィルタ処理後のディジタル信号が制御装置10に、転送周期毎、転送されることになる。そのため、A/Dコンバータのディジタルサンプリング周期が転送周期によって制限されることはない。また、転送周期より短いディジタルサンプリング周期でディジタル信号化され、この信号をディジタルフィルタ処理されるものであるから、センサからの測定信号を精度高くディジタル信号化でき、ディジタルフィルタ処理の出力も遅れが少なくなるので、制御装置10が所定転送周期毎得るロードセル22からの信号は、精度の高い遅れが少ない信号となる。
【0015】
なお、上述した実施形態では、産業機械として射出成形機の例を示し、またセンサの例として樹脂圧力を検出するロードセルの例を示したが、射出成形機以外の各種産業機械における、圧力、力、速度、温度、流量等の各種物理量を計測するセンサから産業機械の制御装置への検出信号を転送する転送装置としても利用できるものである。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の一実施形態の要部ブロック図である。
【符号の説明】
【0017】
10 制御装置
11 プロセッサ(CPU)
16 CNC内部バス
17 DSPバス
23 光ファイバ
21 アナログインタフェース

【特許請求の範囲】
【請求項1】
産業機械に取り付けられたセンサからの信号を、該産業機械を制御する制御装置へ転送する産業機械のデータ転送装置において、
前記産業機械は前記センサからのアナログ信号をディジタル信号に変換するA/Dコンバータおよび前記ディジタル信号のノイズを除去するディジタルフィルタを含むアナログインタフェースを有し、
前記ノイズが除去されたディジタル信号をシリアル通信で前記制御装置へ転送する
ことを特徴とする産業機械のデータ転送装置。
【請求項2】
前記A/Dコンバータによるアナログ信号のサンプリング周期は前記シリアル通信による転送周期よりも短いことを特徴とする請求項1記載の産業機械のデータ転送装置。
【請求項3】
前記ディジタルフィルタはハードウェアによる論理回路で構成されることを特徴とする前記請求項1または請求項2記載の産業機械のデータ転送装置。

【図1】
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【公開番号】特開2006−163601(P2006−163601A)
【公開日】平成18年6月22日(2006.6.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−351523(P2004−351523)
【出願日】平成16年12月3日(2004.12.3)
【出願人】(390008235)ファナック株式会社 (1,110)
【Fターム(参考)】