説明

画像処理によるトロリ線摩耗測定装置

【課題】ラインセンサ画像中のトロリ線とトロリ線以外の物体とを切り分け、トロリ線摩耗面の誤検出を低減することを可能とした画像処理によるトロリ線摩耗測定装置を提供する。
【解決手段】車両の内部に設置された処理用コンピュータが、車両の屋根上に設置されてトロリ線を撮影するラインセンサカメラ2から入力される画像信号を時系列的に並べてなるラインセンサ画像を作成するラインセンサ画像作成部4aと、入力された画像に対してGSTH処理を行ってGSTH画像を作成するGSTH処理部4bと、入力された画像に対して二値化処理を行って二値化画像を作成する二値化処理部4cと、入力された画像に対してトロリ線の摩耗部分の両側のエッジを検出するトロリ線摩耗部エッジ検出部4dと、摩耗部分の両側のエッジの位置からトロリ線の摩耗量を検出するトロリ線摩耗部幅計算部4eとを備える構成とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像処理によるトロリ線摩耗測定装置に関し、特に昼間の様々な背景下においてもロバストに摩耗計測を行う画像処理によるトロリ線摩耗測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の画像処理によるトロリ線摩耗測定装置には、ラインセンサから取得した画像に対して二値化処理を行い、トロリ線の太さパラメータより大きい白領域を空の部分として黒領域に反転することによりトロリ線摩耗面のみを抽出しトロリ線摩耗測定を行うものがある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、特許文献1に記載された方法に対し、空の部分を除去した残存画像に対してさらに二値化処理を行うことにより、トロリ線の側面と摩耗面とを分離し、トロリ線摩耗面が比較的暗く映っている場合でもトロリ線摩耗面のみを抽出しトロリ線摩耗測定を行うものもある(例えば、特許文献2参照)。
【0004】
また、あらかじめ設定しておいた濃淡閾値により背景部分を処理しないようなマスクを設定するようにしたものもある(例えば、特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−271445号公報
【特許文献2】特開2008−089524号公報
【特許文献3】特開2006−250775号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1および特許文献2に記載のものは、二値化処理を行った場合に背景部分の大半が白領域となることを利用してトロリ線と背景とを切り分けているが、背景にトロリ線以外の写り込み物(屋根上や架線構造物等。以下、単に「写り込み物」という)や明るさの斑(例えば、天候の変化や雲等による陰影。以下、単に「明るさの斑」という)が存在する場合、二値化したときに背景部分にも黒画素が発生してしまい、二値化処理を行うことではトロリ線と背景とを切り分けられないおそれがあった。
【0007】
また、特許文献3に記載された発明では、背景をある一定の濃淡閾値でマスクすることにより背景にマスクをかけるが、背景に写り込み物や明るさの斑が存在する場合、一定の濃淡閾値では正しく背景領域にマスクできず、トロリ線と背景を切り分けられないおそれがあった。
【0008】
このように、従来の方法では、背景にトロリ線以外の写り込み物や明るさの斑が存在する場合、画像を二値化してトロリ線と背景を正確に切り分けることができなかった。
【0009】
このようなことから本発明は、ラインセンサカメラから取得した画像の背景に写ったトロリ線以外の写り込み物や明るさの斑の影響を除去することによりトロリ線とトロリ線以外の物体とを切り分け、トロリ線摩耗面の誤検出を低減することを可能とした画像処理によるトロリ線摩耗測定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決するための第1の発明に係る画像処理によるトロリ線摩耗測定装置は、車両の屋根上にその走査線方向を車両の進行方向に対して垂直且つ水平に設置されてトロリ線を撮影するラインセンサカメラと、同じく前記車両の屋根上に設置されて前記トロリ線を照らす照明手段と、前記車両の内部に設置された画像処理手段とを備えた画像処理によるトロリ線摩耗測定装置において、前記画像処理手段が、前記ラインセンサカメラから入力される画像信号を時系列的に並べてなるラインセンサ画像を作成するラインセンサ画像作成手段と、入力された画像に対して前記トロリ線と背景との切り分けを行う背景切り分け処理手段と、入力された画像に対して二値化処理を行って二値化画像を作成する二値化処理手段と、入力された画像に対して前記トロリ線の摩耗部分の両側のエッジを検出するトロリ線摩耗部エッジ検出手段と、前記摩耗部分の両側のエッジの位置から前記トロリ線の摩耗量を検出するトロリ線摩耗部幅計算手段とを備えることを特徴とする。
【0011】
上記の課題を解決するための第2の発明に係る画像処理によるトロリ線摩耗測定装置は、第1の発明に係る画像処理によるトロリ線摩耗測定において、前記背景切り分け処理手段が、入力された画像に対してGSTH処理を行って前記画像中の前記トロリ線の摩耗部分を強調したGSTH画像を作成するGSTH処理手段であることを特徴とする。
【0012】
上記の課題を解決するための第3の発明に係る画像処理によるトロリ線摩耗測定装置は、第2の発明に係る画像処理によるトロリ線摩耗測定装置において、前記GSTH処理手段が前記ラインセンサ画像に対してGSTH処理を行って前記ラインセンサ画像中の前記トロリ線の摩耗部分を強調した前記GSTH画像を作成し、前記二値化処理手段が前記GSTH画像に対して二値化処理を行って前記二値化画像を作成し、前記トロリ線摩耗部エッジ検出手段が前記二値化画像に対して前記エッジを検出することを特徴とする。
【0013】
上記の課題を解決するための第4の発明に係る画像処理によるトロリ線摩耗測定装置は、第1の発明に係るトロリ線摩耗測定において、前記背景切り分け処理手段が、入力された画像を任意の区間に分割し、各前記区間ごとに標準偏差背景除去処理を行って各前記区間ごとに該区間に対象物が写っているか否かを判断し、該区間に対象物が写っている場合であって隣接する区間に前記対象物が写っていない場合は前記隣接する区間から前記対象物までの領域を背景とみなし、また、該区間に対象物が写っていない場合であって隣接する区間に前記対象物が写っている場合は前記隣接する区間の対象物から該区間までの領域および該区間を背景とみなす標準偏差背景除去処理を行って背景除去画像を作成する標準偏差背景除去処理手段であることを特徴とする。
【0014】
上記の課題を解決するための第5の発明に係る画像処理によるトロリ線摩耗測定装置は、第4の発明に係るトロリ線摩耗測定装置において、前記標準偏差背景除去処理手段が、前記標準偏差背景除去処理を行った前記区間において背景とみなされていない領域が存在する場合に、該区間を細分化して再度各前記細分化した区間ごとに標準偏差背景除去処理を行って各前記細分化した区間ごとに該区間に前記対象物が写っているか否かを判断し、該区間に前記対象物が写っている場合であって隣接する区間に前記対象物が写っていない場合は前記隣接する区間から前記対象物までの領域を背景とみなし、また、該区間に前記対象物が写っていない場合であって隣接する区間に前記対象物が写っている場合は前記隣接する区間の対象物から該区間までの領域および該区間を背景とみなす標準偏差背景除去処理を行って背景除去画像を作成することを特徴とする。
【0015】
上記の課題を解決するための第6の発明に係る画像処理によるトロリ線摩耗測定装置は、第4の発明に係る画像処理によるトロリ線摩耗測定装置において、前記任意の区間の大きさが、前記対象物が存在する区間が連続しない大きさであることを特徴とする。
【0016】
上記の課題を解決するための第7の発明に係る画像処理によるトロリ線摩耗測定装置は、第4乃至第6のいずれか一つの発明に係る画像処理によるトロリ線摩耗測定装置において、前記標準偏差背景除去処理手段が前記ラインセンサ画像に対して標準偏差背景除去処理を行って前記ラインセンサ画像中の前記トロリ線を抽出した前記背景除去画像を作成し、前記二値化処理手段が前記背景除去画像に対して二値化処理を行って前記二値化画像を作成し、前記トロリ線摩耗部エッジ検出手段が前記二値化画像に対して前記エッジを検出することを特徴とする。
【0017】
上記の課題を解決するための第8の発明に係る画像処理によるトロリ線摩耗測定装置は、第2又は第3の発明に係る画像処理によるトロリ線摩耗測定装置において、前記画像処理手段が前記背景切り分け処理手段としてさらに、入力された画像を任意の区間に分割し、各前記区間ごとに標準偏差背景除去処理を行って各前記区間ごとに該区間に対象物が写っているか否かを判断し、該区間に対象物が写っている場合であって隣接する区間に前記対象物が写っていない場合は前記隣接する区間から前記対象物までの領域を背景とみなし、また、該区間に対象物が写っていない場合であって隣接する区間に前記対象物が写っている場合は前記隣接する区間の対象物から該区間までの領域および該区間を背景とみなす標準偏差背景除去処理を行って背景除去画像を作成する標準偏差背景除去処理手段を備えることを特徴とする。
【0018】
上記の課題を解決するための第9の発明に係る画像処理によるトロリ線摩耗測定装置は、第8の発明に係るトロリ線摩耗測定装置において、前記標準偏差背景除去処理手段が、前記標準偏差背景除去処理を行った前記区間において背景とみなされていない領域が存在する場合に、該区間を細分化して再度各前記細分化した区間ごとに標準偏差背景除去処理を行って各前記細分化した区間ごとに該区間に前記対象物が写っているか否かを判断し、該区間に前記対象物が写っている場合であって隣接する区間に前記対象物が写っていない場合は前記隣接する区間から前記対象物までの領域を背景とみなし、また、該区間に前記対象物が写っていない場合であって隣接する区間に前記対象物が写っている場合は前記隣接する区間の対象物から該区間までの領域および該区間を背景とみなす標準偏差背景除去処理を行って背景除去画像を作成することを特徴とする。
【0019】
上記の課題を解決するための第10の発明に係る画像処理によるトロリ線摩耗測定装置は、第8の発明に係る画像処理によるトロリ線摩耗測定装置において、前記任意の区間の大きさが、前記対象物が存在する区間が連続しない大きさであることを特徴とする。
【0020】
上記の課題を解決するための第11の発明に係る画像処理によるトロリ線摩耗測定装置は、第8乃至第10のいずれか一つの発明に係る画像処理によるトロリ線摩耗測定装置において、前記GSTH処理手段が前記ラインセンサ画像に対してGSTH処理を行って前記ラインセンサ画像中の前記トロリ線の摩耗部分を強調した前記GSTH画像を作成し、前記標準偏差背景除去処理手段が前記GSTH画像に対して標準偏差背景除去処理を行って前記GSTH画像中の前記トロリ線を抽出した前記背景除去画像を作成し、前記二値化処理手段が前記背景除去画像に対して二値化処理を行って前記二値化画像を作成し、前記トロリ線摩耗部エッジ検出手段が前記二値化画像に対して前記エッジを検出することを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
上述した第1の発明に係る画像処理によるトロリ線摩耗測定装置によれば、車両の屋根上にその走査線方向を車両の進行方向に対して垂直且つ水平に設置されてトロリ線を撮影するラインセンサカメラと、同じく車両の屋根上に設置されてトロリ線を照らす照明手段と、車両の内部に設置された画像処理手段とを備えた画像処理によるトロリ線摩耗測定装置において、画像処理手段が、ラインセンサカメラから入力される画像信号を時系列的に並べてなるラインセンサ画像を作成するラインセンサ画像作成手段と、入力された画像に対してトロリ線と背景との切り分けを行う背景切り分け処理手段と、入力された画像に対して二値化処理を行って二値化画像を作成する二値化処理手段と、入力された画像に対してトロリ線の摩耗部分の両側のエッジを検出するトロリ線摩耗部エッジ検出手段と、摩耗部分の両側のエッジの位置からトロリ線の摩耗量を検出するトロリ線摩耗部幅計算手段とを備えるので、トロリ線摩耗面と背景とを切り分けることができ、トロリ線摩耗面の誤検出を低減することができる。
【0022】
上述した第2の発明に係る画像処理によるトロリ線摩耗測定装置によれば、背景切り分け処理手段が、入力された画像に対してGSTH処理を行って画像中のトロリ線の摩耗部分を強調したGSTH画像を作成するGSTH処理手段であるので、入力画像に対してGSTH処理を行うことにより入力画像中のトロリ線摩耗面を強調する一方、背景に写りこんだ物体を除去することができ、トロリ線摩耗面の誤検出を低減することができる。
【0023】
また、第3の発明に係る画像処理によるトロリ線摩耗測定装置によれば、GSTH処理手段がラインセンサ画像に対してGSTH処理を行ってラインセンサ画像中のトロリ線の摩耗部分を強調したGSTH画像を作成し、二値化処理手段がGSTH画像に対して二値化処理を行って二値化画像を作成し、トロリ線摩耗部エッジ検出手段が二値化画像に対してエッジを検出するので、二値化処理を行う前にGSTH処理を行うことにより入力画像中にトロリ線摩耗面が暗く写っていてもトロリ線摩耗面を強調して背景と切り分けることができる。
【0024】
第4の発明に係る画像処理によるトロリ線摩耗測定装置によれば、背景切り分け処理手段が、入力された画像を任意の区間に分割し、各区間ごとに標準偏差背景除去処理を行って各区間ごとに該区間に対象物が写っているか否かを判断し、該区間に対象物が写っている場合であって隣接する区間に対象物が写っていない場合は隣接する区間から対象物までの領域を背景とみなし、また、該区間に対象物が写っていない場合であって隣接する区間に対象物が写っている場合は隣接する区間の対象物から該区間までの領域および該区間を背景とみなす標準偏差背景除去処理を行って背景除去画像を作成する標準偏差背景除去処理手段であるので、入力画像に対して標準偏差背景除去処理を行うことにより入力画像中の背景に明るさの斑が存在する場合であってもトロリ線を判別することができ、トロリ線摩耗面の誤検出を低減することができる。
【0025】
第5の発明に係る画像処理によるトロリ線摩耗測定装置によれば、標準偏差背景除去処理手段が、標準偏差背景除去処理を行った区間において背景とみなされていない領域が存在する場合に、該区間を細分化して再度各細分化した区間ごとに標準偏差背景除去処理を行って各細分化した区間ごとに該区間に対象物が写っているか否かを判断し、該区間に対象物が写っている場合であって隣接する区間に対象物が写っていない場合は隣接する区間から対象物までの領域を背景とみなし、また、該区間に対象物が写っていない場合であって隣接する区間に対象物が写っている場合は隣接する区間の対象物から該区間までの領域および該区間を背景とみなす標準偏差背景除去処理を行って背景除去画像を作成するので、確実に対象物と背景との切り分けを行うことができる。
【0026】
第6の発明に係る画像処理によるトロリ線摩耗測定装置によれば、任意の区間の大きさが、対象物が存在する区間が連続しない大きさであるので、一度の処理で対象物と背景とを切り分けることができる。
【0027】
第7の発明に係る画像処理によるトロリ線摩耗測定装置によれば、標準偏差背景除去処理手段がラインセンサ画像に対して標準偏差背景除去処理を行ってラインセンサ画像中のトロリ線を抽出した背景除去画像を作成し、二値化処理手段が背景除去画像に対して二値化処理を行って二値化画像を作成し、トロリ線摩耗部エッジ検出手段が二値化画像に対してエッジを検出するので、二値化処理を行う前に標準偏差背景除去処理を行うことにより入力画像中の背景に明るさの斑が存在する場合であってもトロリ線を明確に判別することができる。
【0028】
第8の発明に係る画像処理によるトロリ線摩耗測定装置によれば、画像処理手段が背景切り分け処理手段としてさらに、入力された画像を任意の区間に分割し、各区間ごとに標準偏差背景除去処理を行って各区間ごとに該区間に対象物が写っているか否かを判断し、該区間に対象物が写っている場合であって隣接する区間に対象物が写っていない場合は隣接する区間から対象物までの領域を背景とみなし、また、該区間に対象物が写っていない場合であって隣接する区間に対象物が写っている場合は隣接する区間の対象物から該区間までの領域および該区間を背景とみなす標準偏差背景除去処理を行って背景除去画像を作成する標準偏差背景除去処理手段を備えるので、GSTH処理と標準偏差背景除去処理とを併用することにより、トロリ線摩耗面の誤検出をより低減することができる。
【0029】
第9の発明に係る画像処理によるトロリ線摩耗測定装置によれば、標準偏差背景除去処理手段が、標準偏差背景除去処理を行った区間において背景とみなされていない領域が存在する場合に、該区間を細分化して再度各細分化した区間ごとに標準偏差背景除去処理を行って各細分化した区間ごとに該区間に対象物が写っているか否かを判断し、該区間に対象物が写っている場合であって隣接する区間に対象物が写っていない場合は隣接する区間から対象物までの領域を背景とみなし、また、該区間に対象物が写っていない場合であって隣接する区間に対象物が写っている場合は隣接する区間の対象物から該区間までの領域および該区間を背景とみなす標準偏差背景除去処理を行って背景除去画像を作成するので、確実に対象物と背景との切り分けを行うことができる。
【0030】
第10の発明に係る画像処理によるトロリ線摩耗測定装置によれば、任意の区間の大きさが、対象物が存在する区間が連続しない大きさであるので、一度の処理で対象物と背景とを切り分けることができる。
【0031】
第11の発明に係る画像処理によるトロリ線摩耗測定装置によれば、GSTH処理手段がラインセンサ画像に対してGSTH処理を行ってラインセンサ画像中のトロリ線の摩耗部分を強調したGSTH画像を作成し、標準偏差背景除去処理手段がGSTH画像に対して標準偏差背景除去処理を行ってGSTH画像中のトロリ線を抽出した背景除去画像を作成し、二値化処理手段が背景除去画像に対して二値化処理を行って二値化画像を作成し、トロリ線摩耗部エッジ検出手段が二値化画像に対してエッジを検出するので、ラインセンサ画像に対してGSTH処理を行った後、標準偏差背景除去処理を行うことにより、トロリ線摩耗測定の精度をより向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の実施例1に係る画像処理によるトロリ線摩耗測定装置の設置例を示す概略図である。
【図2】本発明の実施例1に係る画像処理によるトロリ線摩耗測定装置の計測用コンピュータの概略構成を示すブロック図である。
【図3】本発明の実施例1における収縮処理の一例を示す説明図である。
【図4】本発明の実施例1における膨張処理の一例を示す説明図である。
【図5】本発明の実施例1におけるGSTH画像の一例を示す説明図である。
【図6】本発明の実施例1に係るトロリ線摩耗測定処理の流れを示すフローチャートである。
【図7】本発明の実施例1に係るラインセンサ画像の一例を示す説明図である。
【図8】本発明の実施例1に係る収縮処理画像の一例を示す説明図である。
【図9】本発明の実施例1に係るオープニング画像の一例を示す説明図である。
【図10】本発明の実施例1に係るGSTH画像の一例を示す説明図である。
【図11】本発明の実施例1に係る二値化画像の一例を示す説明図である。
【図12】本発明の実施例1に係るエッジ抽出例を示す説明図である。
【図13】本発明の実施例2に係る画像処理によるトロリ線摩耗測定装置の計測用コンピュータの概略構成を示すブロック図である。
【図14】本発明の実施例2に係る標準偏差背景除去処理の一例を示す説明図である。
【図15】本発明の実施例2に係る標準偏差背景除去処理の他の例を示す説明図である。
【図16】本発明の実施例2に係るトロリ線摩耗測定処理の流れを示すフローチャートである。
【図17】本発明の実施例3に係る画像処理によるトロリ線摩耗測定装置の計測用コンピュータの概略構成を示すブロック図である。
【図18】本発明の実施例3に係るトロリ線摩耗測定処理の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、図面を参照しつつ本発明に係る画像処理によるトロリ線摩耗測定装置の詳細について説明する。
【実施例1】
【0034】
(GSTH処理)
図1ないし図12を用いて本発明に係る画像処理によるトロリ線摩耗測定装置の第1の実施例を説明する。本実施例はグレイスケール−トップハット処理(Gray Scale-Top Hat処理。以下、「GSTH処理」という)を行うことで、背景上のトロリ線以外の写り込み物を除去するものである。
【0035】
図1に示すように、本実施例において車両1の屋根上にはラインセンサカメラ2および照明3が設置されている。また、車両1の車内には計測用コンピュータ4および記録装置5が配設されている。
【0036】
ラインセンサカメラ2は鉛直上方を撮影するように、且つその走査線方向がレール6の枕木方向、換言すると車両1の進行方向に直行する方向となるようにその向きを設定されている。これにより、ラインセンサカメラ2の走査線がトロリ線7を横切るようになっている。
照明3はラインセンサカメラ2によって撮影するトロリ線7の摩耗部(すなわちパンタグラフ8と接触する面)を照らすように設置される。
【0037】
また、図2に示すように、計測用コンピュータ4はラインセンサ画像作成手段としてのラインセンサ画像作成部4a、背景切り分け処理手段としてのGSTH処理部4b、二値化処理手段としての二値化処理部4c、トロリ線摩耗部エッジ検出手段としてのトロリ線摩耗部エッジ検出部4d、およびトロリ線摩耗部幅計算手段としてのトロリ線摩耗部幅計算部4eを備えて構成されている。
【0038】
ラインセンサ画像作成部4aはラインセンサから入力される画像信号(走査線の輝度信号)を時系列的に並べてラインセンサ画像(平面の画像)を作成する。作成されたラインセンサ画像はメモリM1,M2を経てGSTH処理部4bへ入力される。
【0039】
GSTH処理部4bは入力されたラインセンサ画像に対してGSTH処理を行う。
GSTH処理部4bにおいてGSTH処理が施されたラインセンサ画像(以下、GSTH画像という)はメモリM2を経て二値化処理部4cへ入力される。
ここで、GSTH処理とはその名の通り、グレイスケール画像に対してTop Hat処理をかけるものである。Top Hat処理とは原画像に対してオープニング(同じ回数分収縮→膨張処理)した画像を差し引く処理のことである。
【0040】
以下に、図3ないし図5を用いてGSTH処理部4bによるGSTH処理について詳細に説明する。GSTH処理部4bにおいては、以下の流れで処理を行う。
(1)図3(b)に示すように、図3(a)に示す原画像11に対してN画素(図3では三画素)の範囲(以下、索敵範囲という)SD−1で最も暗い画素の輝度値を別バッファ(以下、収縮処理バッファという)12−1に書き込む。
(2)索敵範囲をずらし(図3では索敵範囲SD−2〜SD−M)、それぞれの索敵範囲SD−2〜SD−Mにおいて該索敵範囲SD−2〜SD−M内の最も暗い画素の輝度値を収縮処理バッファ12−2〜12−Mに書き込む。
(3)これにより、図4(a)に示す収縮処理画像12を作成する。
(4)続いて、図4(b)に示すように、収縮画像12に対してN画素(本実施例では三画素)の範囲(以下、索敵範囲)SL−1で最も明るい画素の輝度値を別バッファ(以下、膨張処理バッファという)13−1に書き込む。
(5)索敵範囲をずらし(図4では索敵範囲13−2〜13−M)、それぞれの索敵範囲SL−2〜SL−Mにおいて該索敵範囲SL−2〜SL−M内の最も明るい画素の輝度値を膨張処理バッファ13−2〜13−Mに書き込む。
(6)これにより、オープニング画像13を作成する。
(7)続いて、原画像11から(6)で作成したオープニング画像13を差し引く。
以上の処理を行うことで、図5に示すように画像内の暗い部分に囲まれた明るい画素を強調したGSTH画像14が得られる。
【0041】
二値化処理部4cでは入力されたGSTH画像14に対して二値化処理を施し、二値化画像を作成する。作成された二値化画像はメモリM2を経てトロリ線摩耗部エッジ検出部4dに入力される。
【0042】
トロリ線摩耗部エッジ検出部4dは、入力された二値化画像に対し、あるラインについて例えば左から探索した場合に、黒から白へ変化する点を左側のエッジ点として検出し、続いて白から黒へ変化する点を右側のエッジ点として検出する処理を行う。この処理を画像の上から下へライン毎に行う。検出したエッジ点の情報(以下、エッジデータという)はメモリM2を経てトロリ線摩耗部幅計算部4eに入力される。
【0043】
トロリ線摩耗部分幅計算部4eは、入力されたエッジデータに基づいてラインセンサ画像上における左右のエッジ点間の幅を算出し、これを実際のトロリ線7の摩耗量に換算する。算出されたトロリ線7の摩耗量はトロリ線摩耗幅データとしてメモリM2を経て記録装置5に入力される。
【0044】
記録装置5には上述したトロリ線摩耗幅データのほか、メモリM1,M2を経てラインセンサ画像、GSTH画像、二値化画像、エッジデータ等が記録される。
【0045】
図6ないし図12を用いて本実施例に係る画像処理によるトロリ線摩耗測定装置の計測用コンピュータ4における画像処理の流れを説明する。
【0046】
図6に示すように、本実施例において計測用コンピュータ4は、まず、ラインセンサ画像作成部4aにおいて、ラインセンサカメラ2から入力される画像信号を時系列的に並べることにより図7に示すようなラインセンサ画像21を作成する処理を行う(ステップP1)。
このとき、図7に示すように、ラインセンサ画像作成部4aにおいて作成されたラインセンサ画像21にはトロリ線7のほかにトロリ線7以外の屋根上、架線構造物等の物体9が写りこむ場合がある。
【0047】
ステップP1に続いては、GSTH処理部4bにおいて、ラインセンサ画像21に対して上述したGSTH処理を行う(ステップP2)。具体的には、ラインセンサ画像21に対して上述した(1)および(2)の処理を行って図8に示すような収縮処理画像22を取得し、続いて収縮処理画像22に対して上述した(4)および(5)の処理を行って図9に示すようなオープニング画像23を取得し、ラインセンサ画像21からオープニング画像23を差し引く処理を行う。これにより図10に示すようなGSTH画像24が得られる。図10から、GSTH画像24においては、ラインセンサ画像21に比べてトロリ線7の摩耗部(以下、トロリ線摩耗部という)7aのみが強調され、背景に写りこんだトロリ線7以外の物体9が除去されていることが分かる。
【0048】
ステップP2に続いては、二値化処理部4cにおいて、GSTH画像24に対して二値化処理を行う(ステップP3)。これにより、図11に示すようにトロリ線摩耗面7aのみが抽出された二値化画像25を得ることができる。
【0049】
ステップP3に続いては、トロリ線摩耗部エッジ検出部4dにおいて、二値化画像25の背景を示す黒色とトロリ線摩耗面7aを示す白色との境界を図12に示すように左右のエッジ点10L,10Rとして抽出する処理を行う(ステップP4)。これによりエッジデータを得ることができる。
【0050】
ステップP4に続いては、トロリ線摩耗部幅計算部4eにおいて、左右のエッジ点10L,10R間の距離をトロリ線摩耗面7aの画像上の幅として算出し、これを実際のトロリ線7の摩耗量に換算する処理を行う(ステップP5)。
上述した処理を行うことにより、本実施例に係る計測用コンピュータ4によってトロリ線7の摩耗量を測定することができる。
【0051】
トロリ線摩耗面7aは照明を強く反射するため明るく写り、トロリ線7の側面(以下、トロリ線側面という)7bは錆、ススなどにより黒く写る。すなわち、トロリ線摩耗面7aは暗い部分に囲まれた明るい画素であるという特徴があるためGSTH処理によって強調される。一方で、背景部分に写りこんだ物体9はラインセンサ画像21上において黒く映り、暗い部分に囲まれた明るい画素とならないためGSH処理によって目立たなくなる。
【0052】
また、二値化処理を行う前にGSTH処理を行うため、グレイスケール画像に対して収縮処理および膨張処理を行うこととなり、トロリ線摩耗面7aが比較的暗い画像においてもトロリ線摩耗面7aと背景とを切り分けることができる。これに対し、トロリ線摩耗面7aが比較的暗い画像でそのまま二値化処理を行うと、トロリ線摩耗面7aが黒色と処理され背景化してしまうおそれがある。
【0053】
上述した本実施例に係る画像処理によるトロリ線摩耗測定装置によれば、背景上に写りこんだトロリ線7以外の物体9が存在する場合でも、トロリ線摩耗面7aと背景を切り分けることができるため、トロリ線摩耗面7aの誤検出を低減できる。
また、二値化処理を施した画像ではなくグレイスケール画像に対して収縮処理および膨張処理を行うので、トロリ線摩耗面7aが比較的暗い画像においてもトロリ線摩耗面7aと背景を切り分けることができる。
【実施例2】
【0054】
(標準偏差背景除去)
図13ないし図16を用いて本発明に係る画像処理によるトロリ線摩耗測定装置の第2の実施例を説明する。本実施例は標準偏差を用いて輝度が一様な領域を判定することで、背景上の明るさの斑を除去するものである。
【0055】
本実施例は、上述した第1の実施例のGSTH処理部4bに変えて図13に示す標準偏差背景除去処理部4fを用いるものである。その他の構成は図1および図2に示し上述した構成とおおむね同様であり、以下、類似する部材には同一の符合を付して重複する説明は省略し、異なる点を中心に説明する。
【0056】
図13に示すように、計測用コンピュータ4はラインセンサ画像作成部4a、背景切り分け処理手段としての標準偏差背景除去処理部4f、二値化処理部4c、トロリ線摩耗部エッジ検出部4d、およびトロリ線摩耗部幅計算部4eを備えて構成されている。
【0057】
標準偏差背景除去処理部4fは入力されたラインセンサ画像に対して標準偏差背景除去処理を行う。標準偏差背景除去処理部4fによって作成された画像(以下、背景除去画像という)はメモリM2を経て二値化処理部4cへ入力される。
【0058】
二値化処理部4cでは入力された背景除去画像に対して二値化処理を施し、二値化画像を作成する。作成された二値化画像はメモリM2を経てトロリ線摩耗部エッジ検出部4dに入力される。
【0059】
以下に、図14を用いて標準偏差背景除去処理部4fにおける処理について詳細に説明する。本実施例に係る画像処理によるトロリ線摩耗測定装置において、標準偏差背景除去処理部4fは、図14(a)に示すように、ラインセンサ画像31を任意の区間(本実施例では第一区間S1、第二区間S2、第三区間S3)に分割し、それぞれの区間ごとに標準偏差背景除去処理を行う。
【0060】
まず、第一区間S1に対して標準偏差背景除去処理を施す。図14(a)に示す例においては第一区間S1には対象物としてのトロリ線7が写っていないため、標準偏差値が低くなり第一区間S1全体が背景であると判断される。このように背景であると判断された第一区間S1はその後の処理に影響を及ぼさないように、塗りつぶし区間として黒く塗りつぶされる(図14(b))。
【0061】
続いて、第二区間S2に対して標準偏差背景除去処理を施す。図14(a)に示す例においては第二区間S2にはトロリ線7が写っているため、標準偏差値が高くなり第二区間S2に何らかの構造物(ここでは、トロリ線7。以下、写り込み物という)が写っていると判断される。このように写り込み物が写っていると判断された場合、隣接する区間であって標準偏差背景除去処理が終了した区間(ここでは第一区間S1)が塗りつぶし区間であるか否かを判断し、塗りつぶし区間である場合は写り込み物までの領域を背景部分であるとして黒く塗りつぶす処理を行う(図14(c))。一方、隣接する区間であって標準偏差背景除去処理が終了した区間(ここでは第一区間S1)が塗りつぶし区間でない場合は塗りつぶし処理は行わない。
【0062】
次に、第三区間S3に対して標準偏差背景除去処理を施す。図14(a)に示す例においては第三区間S3にはトロリ線7が写っていないため、標準偏差値が低くなり第三区間S3全体が背景であると判断され、第一区間S1と同様、塗りつぶし区間として黒く塗りつぶされる。さらに、第一区間S1以外の区間において背景であると判断された区間は、隣接する区間であって標準偏差除去処理が終了した区間(ここでは第二区間S2)が塗りつぶし区間であるか否かを判断し、塗りつぶし区間でない場合はその隣接する区間の写り込み物から第三区間S3までの領域を背景部分であるとみなして黒く塗りつぶす処理を行う(図14(d))。一方、隣接する区間であって標準偏差除去処理が終了した区間(ここでは第二区間S2)が塗りつぶし区間である場合は第三区間S3のみを黒く塗りつぶす処理を行う。
【0063】
ここで、図15(a)に示すように例えば二つのトロリ線7−1,7−2が撮像されているなど、隣接する区間にいずれも写り込み物が存在する、又は一つの区間に二つの写り込み物が存在することにより、ラインセンサ画像31に写り込み物が二つ以上存在する場合にあっては、上述した処理を行った結果、図15(b)に示すように二つのトロリ線7−1,7−2間が塗りつぶされない状態となる場合がある。このような場合には塗りつぶしを行わなかった領域について、図15(c)に示すように区間を細分化してこの細分化した区間に対して再度同様の処理を行い、二つの写り込み物間の背景を塗りつぶす処理を行うことにより図15(d)に示すように写り込み物と背景とを切り分けるものとする。
【0064】
なお、ラインセンサ画像31に二つ以上の写り込み物が撮像された場合の写り込み物間の距離をあらかじめ予測可能な場合は、ラインセンサ画像を任意の区間に分割する際に一つの区間又は隣接する区間に二つ以上写り込み物が存在することのないように区間の大きさを設定するようにすれば、一度の処理で写り込み物と背景とを切り分けることができ、好適である。具体的には、区間の分割サイズをB、写り込み物間の最小距離をLとしたときに、以下の(1)式を満たすように区間を分割すればよい。
B<L/2 ・・・ (1)
【0065】
以上の処理により、背景上の明るさの斑を除去した背景除去画像32が得られる。
【0066】
二値化処理部4cでは入力された背景除去画像32に対して二値化処理を施し、二値化画像を作成する。作成された二値化画像はメモリM2を経てトロリ線摩耗部エッジ検出部4dに入力される。
【0067】
図16を用いて本実施例に係る画像処理によるトロリ線摩耗測定装置の計測用コンピュータ4における画像処理の流れを説明する。
【0068】
図16に示すように、本実施例において計測用コンピュータ4は、まず、ラインセンサ画像作成部4aにおいて、ラインセンサ2から入力される画像信号を時系列的に並べることによりラインセンサ画像31を作成する処理を行う(ステップP11)。
【0069】
続いて、標準偏差背景除去処理部4fにおいてラインセンサ画像31に対して上述した標準偏差背景除去処理を行い(ステップP12)、その後、二値化処理部4cにおいてステップP12で得られた背景除去画像32に対して二値化処理を行う(ステップP13)。これにより二値化画像が得られる。
【0070】
ステップP13に続いては、トロリ線摩耗部エッジ検出部4dにおいて、二値化画像の背景を示す黒色とトロリ線摩耗面7aを示す白色との境界を左右のエッジ点として抽出する処理を行う(ステップP14)。これによりエッジデータを得ることができる。
【0071】
ステップP14に続いては、トロリ線摩耗部幅計算部4eにおいて、左右のエッジ点間の距離をトロリ線摩耗面7aの画像上の幅として算出し、これを実際のトロリ線7の摩耗量に換算する処理を行う(ステップP15)。
上述した処理を行うことにより、本実施例に係る計測用コンピュータ4によってトロリ線7の摩耗量を測定することができる。
【0072】
ラインセンサ画像において、背景となる空は雲や青空が写る場合ぼやっとしたメリハリのない空間になるのに対し、測定対象であるトロリ線7はピントが合っていることもありはっきりと明暗が出る。本実施例では、このことを利用して、画像を任意の区間に区切ってその区間内の標準偏差をとり、輝度のばらつき具合を確認する。このとき、区間内の輝度のばらつきが大きい場合はトロリ線が写っていると判断し、輝度のばらつきが小さい場合は背景であると判断する。そして、背景と判断された区間については、その後の処理に影響を及ぼさないように黒く塗りつぶす処理を行ってこの区間が背景であることを明確にすることでトロリ線の誤検出を低減する。
【0073】
さらに、塗りつぶしをしない区間において、その隣の区間に対して塗りつぶし処理を行っている場合、その隣の区間から当該区間内の写り込み物までの領域に対しても塗りつぶし処理を行う。このようにすることで、塗りつぶし区間から塗りつぶさない区間の写り込み物までの間にできる空白領域(背景であるが塗りつぶしていない画素)を埋めることができ、より誤検出を低減できる。なお、本実施例では塗りつぶし区間の平均輝度値に比較して輝度差が一定値以上あるピクセルを写り込み物箇所として検出するものとする。
【0074】
上述した本実施例に係る画像処理によるトロリ線摩耗測定装置によれば、背景上に明るさの斑が存在する場合でも、トロリ線摩耗面7aと背景とを切り分けることができるため、トロリ線摩耗面7aの誤検出を低減することができる。
また、塗りつぶしをしない区間であっても隣接する区間が塗りつぶし区間であった場合は写り込み物まで塗りつぶすようにしたため、確実にトロリ線摩耗面と背景の切り分けが行える。
【0075】
なお、本実施例では標準偏差背景除去処理部4fにおいて背景とみなした領域を黒く塗りつぶす例を示したが、背景とみなした領域は黒く塗りつぶすことに限定されるものではなく、例えば、背景とみなした領域をマスク画素としてメモリ空間に記憶しておき、このマスク画素を以後の処理を行わない画素とするなど、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能であることは言うまでもない。
【実施例3】
【0076】
(昼間摩耗測定)
図17および図18を用いて本発明に係る画像処理によるトロリ線摩耗測定装置の第3の実施例を説明する。本実施例は、図2に示し上述した第1の実施例の計測用コンピュータ4に、図13に示し上述した第2の実施例の標準偏差背景除去処理部4fを追加した例である。その他の構成は上述した第1の実施例の構成とおおむね同様であり、以下、類似する部材には同一の符号を付して重複する説明は省略し、異なる点を中心に説明する。
【0077】
図17に示すように、本実施例において計測用コンピュータ4はラインセンサ画像作成部4a、GSTH処理部4b、標準偏差背景処理部4f、二値化処理部4c、トロリ線摩耗部エッジ検出部4d、およびトロリ線摩耗部幅計算部4eを備えて構成されている。
【0078】
本実施例において、GSTH処理部4bは入力されたラインセンサ画像に対してGSTH処理を行う。これにより作成されたGSTH画像はメモリM2を経て標準偏差背景除去処理部4fに入力される。
【0079】
標準偏差背景除去処理部fは入力されたGSTH画像に対して標準偏差背景除去処理を行う。これにより作成された背景除去画像はメモリM2を経て二値化処理部4cに入力される。
二値化処理部4cは入力された背景除去画像に対して二値化処理を施し、二値化画像を作成する。作成された二値化画像はメモリM2を経てトロリ線摩耗部エッジ検出部4dに入力される。
【0080】
図18を用いて本実施例に係る画像処理によるトロリ線摩耗測定装置の計測用コンピュータ4における画像処理の流れを説明する。
【0081】
図18に示すように、本実施例において計測用コンピュータ4は、まず、ラインセンサ画像作成部4aにおいて、ラインセンサ2から入力される画像信号を時系列的に並べることによりラインセンサ画像31を作成する処理を行う(ステップP21)。
【0082】
続いて、GSTH処理部4bにおいてラインセンサ画像に対してGSTH処理を行う(ステップP22)。これによりGSTH画像が得られる。その後、標準偏差背景除去処理部4fにおいてGSTH画像に対して標準偏差背景除去処理を行う(ステップP23)。これにより背景除去画像が得られる。
【0083】
続いて、二値化処理部4cにおいてステップP23で得られた背景除去画像に対して二値化処理を行う(ステップP24)。これにより二値化画像が得られる。
【0084】
ステップP24に続いては、トロリ線摩耗部エッジ検出部4dにおいて、二値化画像の背景を示す黒色とトロリ線摩耗面7aを示す白色との境界を左右のエッジ点として抽出する処理を行う(ステップP25)。これによりエッジデータを得ることができる。
【0085】
ステップP25に続いては、トロリ線摩耗部幅計算部4eにおいて、左右のエッジ点間の距離をトロリ線摩耗面7aの画像上の幅として算出し、これを実際のトロリ線7の摩耗量に換算する処理を行う(ステップP26)。
上述した処理を行うことにより、本実施例に係る計測用コンピュータ4によってトロリ線7の摩耗量を測定することができる。
【0086】
本実施例に係る画像処理によるトロリ線摩耗測定装置によれば、第1の実施例、第2の実施例に比較してトロリ線以外の写り込み物と明るさの斑の両方を除去できるためより精度を向上させることができる。
また、まずGSTH処理を行ってトロリ線7以外の写り込み物を除去し、その後、標準偏差背景除去処理を行うことにより、より高精度にトロリ線の摩耗測定を行うことができる。
【0087】
なお、本実施例においては、撮影環境や撮影条件に応じて作業者がGSTH処理、標準偏差背景除去処理の要否を選択する(例えば、設定ファイルにて処理のON/OFFを設定する)ことができるようにするなどとしてもよく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能であることは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0088】
本発明は、画像処理によるトロリ線摩耗測定装置に適用して好適なものである。
【符号の説明】
【0089】
1 車両
2 ラインセンサカメラ
3 照明装置
4 計測用コンピュータ
4a ラインセンサ画像作成部
4b GSTH処理部
4c 二値化処理部
4d トロリ線摩耗部エッジ検出部
4e トロリ線摩耗部幅計算部
5 記録装置
7 トロリ線
7a トロリ線摩耗部
7b トロリ線側面
8 パンタグラフ
10L,10R エッジ点
21,31 ラインセンサ画像
22 収縮処理画像
23 オープニング画像
24 GSTH画像
25 二値化画像
32 背景除去画像
M1,M2 メモリ
S1 第一区間
S2 第二区間
S3 第三区間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の屋根上にその走査線方向を車両の進行方向に対して垂直且つ水平に設置されてトロリ線を撮影するラインセンサカメラと、同じく前記車両の屋根上に設置されて前記トロリ線を照らす照明手段と、前記車両の内部に設置された画像処理手段とを備えた画像処理によるトロリ線摩耗測定装置において、
前記画像処理手段が、
前記ラインセンサカメラから入力される画像信号を時系列的に並べてなるラインセンサ画像を作成するラインセンサ画像作成手段と、
入力された画像に対して前記トロリ線と背景との切り分けを行う背景切り分け処理手段と、
入力された画像に対して二値化処理を行って二値化画像を作成する二値化処理手段と、
入力された画像に対して前記トロリ線の摩耗部分の両側のエッジを検出するトロリ線摩耗部エッジ検出手段と、
前記摩耗部分の両側のエッジの位置から前記トロリ線の摩耗量を検出するトロリ線摩耗部幅計算手段と
を備えることを特徴とする画像処理によるトロリ線摩耗測定装置。
【請求項2】
前記背景切り分け処理手段が、入力された画像に対してGSTH処理を行って前記画像中の前記トロリ線の摩耗部分を強調したGSTH画像を作成するGSTH処理手段である
ことを特徴とする請求項1記載の画像処理によるトロリ線摩耗測定装置。
【請求項3】
前記GSTH処理手段が前記ラインセンサ画像に対してGSTH処理を行って前記ラインセンサ画像中の前記トロリ線の摩耗部分を強調した前記GSTH画像を作成し、
前記二値化処理手段が前記GSTH画像に対して二値化処理を行って前記二値化画像を作成し、
前記トロリ線摩耗部エッジ検出手段が前記二値化画像に対して前記エッジを検出する
ことを特徴とする請求項2記載の画像処理によるトロリ線摩耗測定装置。
【請求項4】
前記背景切り分け処理手段が、入力された画像を任意の区間に分割し、各前記区間ごとに標準偏差背景除去処理を行って各前記区間ごとに該区間に対象物が写っているか否かを判断し、該区間に対象物が写っている場合であって隣接する区間に前記対象物が写っていない場合は前記隣接する区間から前記対象物までの領域を背景とみなし、また、該区間に対象物が写っていない場合であって隣接する区間に前記対象物が写っている場合は前記隣接する区間の対象物から該区間までの領域および該区間を背景とみなす標準偏差背景除去処理を行って背景除去画像を作成する標準偏差背景除去処理手段である
ことを特徴とする請求項1記載の画像処理によるトロリ線摩耗測定装置。
【請求項5】
前記標準偏差背景除去処理手段が、前記標準偏差背景除去処理を行った前記区間において背景とみなされていない領域が存在する場合に、該区間を細分化して再度各前記細分化した区間ごとに標準偏差背景除去処理を行って各前記細分化した区間ごとに該区間に前記対象物が写っているか否かを判断し、該区間に前記対象物が写っている場合であって隣接する区間に前記対象物が写っていない場合は前記隣接する区間から前記対象物までの領域を背景とみなし、また、該区間に前記対象物が写っていない場合であって隣接する区間に前記対象物が写っている場合は前記隣接する区間の対象物から該区間までの領域および該区間を背景とみなす標準偏差背景除去処理を行って背景除去画像を作成する
ことを特徴とする請求項4記載の画像処理によるトロリ線摩耗測定装置。
【請求項6】
前記任意の区間の大きさが、前記対象物が存在する区間が連続しない大きさである
ことを特徴とする請求項4記載の画像処理によるトロリ線摩耗測定装置。
【請求項7】
前記標準偏差背景除去処理手段が前記ラインセンサ画像に対して標準偏差背景除去処理を行って前記ラインセンサ画像中の前記トロリ線を抽出した前記背景除去画像を作成し、
前記二値化処理手段が前記背景除去画像に対して二値化処理を行って前記二値化画像を作成し、
前記トロリ線摩耗部エッジ検出手段が前記二値化画像に対して前記エッジを検出する
ことを特徴とする請求項4ないし請求項6のいずれか1項に記載の画像処理によるトロリ線摩耗測定装置。
【請求項8】
前記画像処理手段が前記背景切り分け処理手段としてさらに、入力された画像を任意の区間に分割し、各前記区間ごとに標準偏差背景除去処理を行って各前記区間ごとに該区間に対象物が写っているか否かを判断し、該区間に対象物が写っている場合であって隣接する区間に前記対象物が写っていない場合は前記隣接する区間から前記対象物までの領域を背景とみなし、また、該区間に対象物が写っていない場合であって隣接する区間に前記対象物が写っている場合は前記隣接する区間の対象物から該区間までの領域および該区間を背景とみなす標準偏差背景除去処理を行って背景除去画像を作成する標準偏差背景除去処理手段を備える
ことを特徴とする請求項2又は請求項3記載の画像処理によるトロリ線摩耗測定装置。
【請求項9】
前記標準偏差背景除去処理手段が、前記標準偏差背景除去処理を行った前記区間において背景とみなされていない領域が存在する場合に、該区間を細分化して再度各前記細分化した区間ごとに標準偏差背景除去処理を行って各前記細分化した区間ごとに該区間に前記対象物が写っているか否かを判断し、該区間に前記対象物が写っている場合であって隣接する区間に前記対象物が写っていない場合は前記隣接する区間から前記対象物までの領域を背景とみなし、また、該区間に前記対象物が写っていない場合であって隣接する区間に前記対象物が写っている場合は前記隣接する区間の対象物から該区間までの領域および該区間を背景とみなす標準偏差背景除去処理を行って背景除去画像を作成する
ことを特徴とする請求項8記載の画像処理によるトロリ線摩耗測定装置。
【請求項10】
前記任意の区間の大きさが、前記対象物が存在する区間が連続しない大きさである
ことを特徴とする請求項8記載の画像処理によるトロリ線摩耗測定装置。
【請求項11】
前記GSTH処理手段が前記ラインセンサ画像に対してGSTH処理を行って前記ラインセンサ画像中の前記トロリ線の摩耗部分を強調した前記GSTH画像を作成し、
前記標準偏差背景除去処理手段が前記GSTH画像に対して標準偏差背景除去処理を行って前記GSTH画像中の前記トロリ線を抽出した前記背景除去画像を作成し、
前記二値化処理手段が前記背景除去画像に対して二値化処理を行って前記二値化画像を作成し、
前記トロリ線摩耗部エッジ検出手段が前記二値化画像に対して前記エッジを検出する
ことを特徴とする請求項8ないし請求項10のいずれか1項に記載の画像処理によるトロリ線摩耗測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図6】
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【図13】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2013−15336(P2013−15336A)
【公開日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−146710(P2011−146710)
【出願日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【出願人】(000006105)株式会社明電舎 (1,739)
【Fターム(参考)】