説明

画像処理プログラム、画像処理方法、及び画像処理装置

【課題】原画像とは別の画像データを予め用意することなく原画像の一部の画像を他の画像に置換する。
【解決手段】領域抽出部101は、画像メモリ110から1枚の原画像を読み出し、原画像から金又は銀等の歯を覆う金属の領域(金歯領域)を抽出すると共に、金属が覆われていない歯である白歯の領域(白歯領域)を抽出する。置換部102は、領域抽出部101により抽出された金歯領域から1つの金歯領域を特定し、特定した金歯領域に対して形状が最も近い白歯領域を、領域抽出部101により抽出された白歯領域の中から特定し、特定した白歯領域の形状が、特定した金歯領域の形状となるように変形し、変形した白歯領域で、特定した金歯領域を置換する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンピュータグラフィックスに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、予め用意された素材データを、原画像中に予め設定されたはめ込み領域の形状に合わせて変形して変形素材データを生成し、上記はめ込み領域を変形素材データで更新する画像シミュレーション装置が知られている(特許文献1)。
【0003】
また、従来、撮影された人物の顔のヘアースタイルを、予め用意されたヘアースタイルの中から人物によって選択されたヘアースタイルに置換し、置換したヘアースタイルを撮影された人物の動きに追従させる表示装置が開示されている(特許文献2)。
【0004】
また、従来、撮像部で撮像したユーザ画像データと、予め保存されているヘアースタイル及びヘアーカラー等の装着部材画像データとを合成して表示し、実際にヘアーカットやヘアーセットを行う前に、そのヘアースタイルがユーザに似合っているかどうかを的確に判断することができる表示装置が知られている(特許文献3)。
【0005】
また、従来、被写体を撮影した撮影画像が記録されたAPSフィルム等に含まれる撮影地点を示す撮影情報から、地図データベースを参照して、シミュレーション画像を作成し、作成したシミュレーション画像を用いて撮影画像の欠陥部分を補正する写真処理システムが知られている(特許文献4)。
【特許文献1】特開平8−287225号公報
【特許文献2】特表2001−522108号公報
【特許文献3】特開2005−10356号公報
【特許文献4】特開2005−286395号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1〜3の技術は、いずれも原画像とは別の画像データを用いて原画像の一部の画像が置き換えられているため、別の画像データを予め用意しておかなければならないという問題があった。また、特許文献4の技術は、撮影フィルムに撮影地点を示す撮影情報を記録させる必要があると共に、地図データベースを予め記憶しなければならないという問題があった。
【0007】
本発明の目的は、原画像とは別の画像データを予め用意することなく原画像の一部の画像を他の画像に置換することができる画像処理プログラム、画像処理装置、及び画像処理方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明による画像処理プログラムは、原画像から置換対象となる第1の物体を示す第1の領域を抽出すると共に、前記原画像から前記第1の領域を置換するために使用される第2の物体を示す第2の領域を抽出する領域像抽出手段と、前記第2の領域の形状を前記第1の領域の形状に変形し、変形した第2の領域で、前記1の領域を置換する置換手段としてコンピュータを機能させることを特徴とする。
【0009】
また、本発明による画像処理装置は、原画像から置換対象となる第1の物体を示す第1の領域を抽出すると共に、前記原画像から前記第1の領域を置換するために使用される第2の物体を示す第2の領域を抽出する領域像抽出手段と、前記第2の領域の形状を前記第1の領域の形状に変形し、変形した第2の領域で前記1の領域を置換する置換手段とを備えることを特徴とする。
【0010】
また、本発明による画像処理方法は、コンピュータが、原画像から置換対象となる第1の物体を示す第1の領域を抽出すると共に、前記原画像から前記第1の領域を置換するために使用される第2の物体を示す第2の領域を抽出し、コンピュータが、前記第2の領域の形状を前記第1の領域の形状に変形し、変形した第2の領域で、前記1の領域を置換することを特徴とする。
【0011】
これらの構成によれば、原画像から置換対象となる物体を示す第1の領域が抽出され、原画像から第1の領域を置換するために使用される第2の物体を示す第2の領域が抽出され、抽出された第2の領域の形状が第1の領域の形状に変形され、第1の領域が置換される。そのため、置換に使用される画像データを予め用意することなく、原画像中に含まれる第1の物体を他の物体の画像で置換することができる。
【0012】
また、前記領域抽出手段は、原画像を複数の分割領域に分割し、各分割領域の色の代表色と前記第1の物体の色の基準値との色空間上での距離が所定の値以下である分割領域を前記第1の領域として抽出すると共に、各分割領域の色の代表色と前記第2の物体の色の基準値との色空間上での距離が所定の値以下である分割領域を前記第2の領域として抽出することが好ましい。
【0013】
この構成によれば、原画像が複数の分割領域に分割され、各分割領域の色の代表色と第1の物体の色の基準値との色空間上での距離が算出され、算出された距離が所定の値以下である分割領域が第1の領域として抽出される。また、各分割領域の色の代表色と第2の物体の色の基準値との色空間上での距離が算出され、算出された距離が所定の値以下である分割領域が第2の領域として抽出される。そのため、第1の領域は抽出対象となる第1の物体を精度良く示すと共に、第2の領域は置換に使用される第2の物体を精度よく示すことになる。
【0014】
また、前記領域抽出手段は、階調数を少なくする減色処理を前記原画像に実行し、減色処理が実行された原画像において、類似する画素値からなる連続する領域を1つの分割領域とすることが好ましい。
【0015】
この構成によれば、原画像において類似する画素値を有する1塊の領域が1つの分割領域とされるため、各分割領域は、1つの物体を表す可能性が高くなる結果、第1及び第2の物体をより精度良く抽出することができる。
【0016】
また、前記置換手段は、前記領域抽出手段により複数の第1領域が抽出されると共に、複数の第2の領域が抽出された場合、複数の第1の領域の中から1つの第1の領域を注目する第1の領域として順次特定し、特定した注目する第1の領域に対して形状が最も近い第2の領域を複数の第2の領域の中から特定し、特定した第2の領域で前記注目する第1の領域を置換することが好ましい。
【0017】
この構成によれば、第1の領域と第2の領域とが複数抽出された場合、各第1の領域に対して形状が最も近い第2の領域を用いて第1の領域が置換されるため、全ての第1の領域を自動的に第2の領域で置換することができ、かつ、第1の領域を第2の領域で置換した際の違和感をより少なくすることができる。
【0018】
また、前記置換手段は、前記注目する第1の領域に外接する多角形を設定すると共に、各第2の領域に外接する多角形を設定し、第1の領域に対して設定した多角形に、大きさが最も近い多角形が設定された第2の領域を、前記注目する第1の領域に対して形状が最も近い第2の領域として特定することが好ましい。
【0019】
この構成によれば、比較的簡便な処理でありながら精度良く各第1の領域に形状が最も近い第2の領域を特定することができる。
【0020】
また、前記領域抽出手段は、前記第1及び第2の領域の各々から特徴的な領域を示す特徴領域を抽出し、前記領域抽出手段により抽出された第1の特徴領域の大きさを、近傍に位置する第2の特徴領域の大きさを基に変更し、変更した第1の特徴領域を、前記置換手段により第2の領域で置換された第1の領域に設定する領域設定手段としてコンピュータを更に機能させることが好ましい。
【0021】
この構成によれば、置換される前の第1の領域に含まれていた特徴的な領域の大きさが、近傍に位置する第2の特徴領域の大きさを加味して、第2の領域で置換された後の第1の領域に設定されるため、第1の領域にもともと含まれていた特徴的な領域を、周囲の第2の特徴領域に対して違和感なく表示することができる。
【0022】
また、前記領域抽出手段は、前記第1及び第2の領域からハイライトの基準色に対する色空間上での距離が所定の値以下の領域を前記第1及び第2の特徴領域として抽出し、前記領域設定手段は、前記第1の特徴領域の大きさを前記第2の特徴領域の大きさに近づくように変更することが好ましい。
【0023】
この構成によれば、第2の領域で置換された第1の領域に違和感なくハイライト領域を設定することができる。
【0024】
また、前記第1の物体は歯を覆う金属であり、前記第2の物体は前記金属に覆われていない歯であることが好ましい。
【0025】
この構成によれば、第1の領域として歯を覆う金属を示す画像が抽出され、第2の領域として歯を示す画像が抽出されるため、歯を覆う金属を白い歯で置換することができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、原画像から置換対象となる第1の物体を示す第1の領域が抽出され、原画像から第1の領域を置換するために使用される第2の物体を示す第2の領域が抽出され、抽出された第2の領域の形状が第1の領域の形状に変形され、第1の領域が置換される。そのため、置換に使用される画像データを予め用意することなく、原画像中に含まれる第1の物体を他の物体の画像で置換することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施の形態について説明する。図1は、本発明の実施の形態による画像処理装置のハードウェア構成を示すブロック図である。画像処理装置は、通常のコンピュータ等から構成され、入力装置1、ROM(リードオンリメモリ)2、CPU(中央演算処理装置)3、RAM(ランダムアクセスメモリ)4、外部記憶装置5、表示装置6、記録媒体駆動装置7、入出力インターフェイス部(I/F)9、及び撮影装置10を備える。各ブロックは内部のバスに接続され、このバスを介して種々のデータ等が入出され、CPU3の制御の下、種々の処理が実行される。
【0028】
入力装置1は、キーボード、マウス等から構成され、ユーザが種々のデータを入力するために使用される。ROM2には、BIOS(Basic Input/Output System)等のシステムプログラムが記憶される。外部記憶装置5は、ハードディスクドライブ等から構成され、所定のOS(Operating System)及び本発明による画像処理プログラム等が記憶される。CPU3は、外部記憶装置5から画像処理プログラム等を読み出し、各ブロックの動作を制御する。RAM4は、CPU3の作業領域等として用いられる。
【0029】
表示装置6は、液晶表示装置等から構成され、CPU3の制御の下に種々の画像を表示する。記録媒体駆動装置7は、CD−ROMドライブ、フレキシブルディスクドライブ等から構成される。
【0030】
なお、画像処理プログラムは、CD−ROM等のコンピュータ読み取り可能な記録媒体8に格納されて市場に流通される。ユーザはこの記録媒体8を記録媒体駆動装置7に読み込ませることで、画像処理プログラムをコンピュータにインストールする。また、画像処理プログラムをインターネット上のサーバに格納し、このサーバからダウンロードすることで、画像処理プログラムをコンピュータにインストールしてもよい。
【0031】
I/F9は、撮影装置10により撮影された原画像を取り込むと共に、撮影装置10に対して種々のデータを出力する。撮影装置10は、静止画像を撮影するデジタルカメラから構成される。
【0032】
図2は、図1に示す画像処理装置の機能ブロック図を示している。図2に示すように画像処理装置は、制御部100、画像メモリ110、入力部120、撮影部130、及び表示部140を備えている。
【0033】
制御部100は、CPU3等から構成され、領域抽出部101、置換部102、及びハイライト処理部103を備えている。領域抽出部101は、画像メモリ110から1枚の原画像を読み出し、原画像から歯を覆う金又は銀等の金属を示す領域(金歯領域)を抽出する。また、領域抽出部101は、原画像から金属が覆われていない白い歯(白歯)を示す領域(白歯領域)を抽出する。ここで、原画像中に複数本の白歯が含まれている場合、領域抽出部101は、1本の白歯を1つの白歯領域として抽出する。また、原画像中に複数個の歯を覆う金属が含まれている場合、領域抽出部101は、1個の金属を1つの金歯領域として抽出する。
【0034】
更に、1本の歯の一部が金属で覆われている場合、領域抽出部101は、1本の歯のうちの金属の領域を1つの金歯領域として抽出し、金属が覆われていない白歯の領域を1つの白歯領域として抽出する。更に、領域抽出部101は、原画像から抽出した白歯領域と金歯領域とからハイライト領域を抽出する。
【0035】
置換部102は、領域抽出部101により抽出された金歯領域から1つの金歯領域を特定し、特定した金歯領域に対して形状が最も近い白歯領域を、領域抽出部101により抽出された白歯領域の中から特定し、特定した白歯領域の形状が、特定した金歯領域の形状となるように変形し、変形した白歯領域で、特定した金歯領域を置換する。なお、置換部102は、全ての金歯領域に対して、白歯領域で置換する処理を実行する。
【0036】
ハイライト処理部103は、領域抽出部101により抽出された金歯領域のハイライト領域の大きさを、その金歯領域の近傍に位置する白歯領域のハイライト領域の大きさに近づくように変更し、白歯領域で置換された金歯領域にハイライトを設定する。
【0037】
画像メモリ110は、外部記憶装置5等から構成され、撮影装置10により撮影された原画像を記憶する。ここで、原画像には、歯が表れた人間の顔の画像が含まれる。入力部120は、入力装置1から構成され、ユーザから種々の操作指令を受け付ける。撮影部130は、撮影装置10から構成され、歯が表れた人間の顔の画像を撮影する。表示部140は、表示装置6から構成され、金歯領域が白歯領域で置換された画像を表示する。
【0038】
図3は、画像処理装置のメインルーチンを示すフローチャートである。まず、領域抽出部101は、画像メモリ110から1枚の原画像を読み出し、領域抽出処理を実行し、原画像に含まれる金歯領域と白歯領域とを抽出する(ステップS1)。なお、領域抽出処理の詳細については後述する。次に、置換部102は、ステップS1で抽出された金歯領域のうち、1つの金歯領域を特定する(ステップS2)。ここで、置換部102は、複数の金歯領域が存在する場合は、例えば重心が左上に位置する金歯領域から順番に金歯領域を特定する。
【0039】
次に、置換部102は、置換処理を実行し、ステップS2で特定された金歯領域を白歯領域で置換する(ステップS3)。なお、置換処理の詳細については後述する。次に、ハイライト処理部103は、ハイライト処理を実行し、ステップS3で白歯領域に置換された金歯領域にハイライトを描画する(ステップS4)。なお、ハイライト処理の詳細については後述する。
【0040】
次に、置換部102は、ステップS1で抽出された全ての金歯領域に対する処理が終了した場合(ステップS5でYES)、処理を終了し、未処理の金歯領域が残っている場合は(ステップS5でNO)、処理をステップS2に戻し、次の金歯領域を特定する。
【0041】
図4は、図3のステップS1に示す領域抽出処理のフローチャートである。まず、領域抽出部101は、画像メモリ110から読み出した1枚の原画像に対し、原画像を構成する各画素の階調数を少なくする減色処理を実行する。ここで、原画像は、所定行×所定列でマトリックス状に配列された画素から構成され、各画素の画素値は、R,G,Bの3つの色成分を有し、R,G,Bの色成分は、各々、例えば0〜255の数値で表される。なお、原画像を構成する各画素の画素値のことをRGB値と呼ぶ。
【0042】
詳細には、領域抽出部101は、画像データを構成するR,G,Bの3つの色成分を座標軸とする、R,G,Bの3軸からなる3次元色空間を設定し、R軸,G軸,B軸をそれぞれ、所定の量子化ステップ数Sで量子化し、3次元色空間を、一辺をSとする立方体から構成される複数のセル領域に区分する。
【0043】
次に、領域抽出部101は、原画像を構成する各画素のRGB値を量子化ステップ数Sで除して、各画素を量子化し、(R/S,G/S,B/S)を求める。次に、領域抽出部101は、量子化された画素(R/S,G/S,B/S)が3次元色空間のどのセルに属するかを判定する。例えば、R/S,G/S,B/Sとして、(1,2,3)が算出された場合、この画素は、R軸が1〜2、G軸が2〜3、B軸が3〜4に位置するセルに属すると判定される。そして、領域抽出部101は、全ての画素が、3次元色空間中のどのセルに属するかを判定する。ここで、領域抽出部101は、R/S,G/S,B/Sの値として小数を含む値が得られた場合は、小数点以下の数値を切り捨てる又は四捨五入等することで、R/S,G/S,B/Sを整数化する。
【0044】
次に、領域抽出部101は、各セルに属する画素のRGB値の平均値を各セルの代表色として求め、求めた代表色を各セルに属する画素の画素値とする。ここで、減色処理がされた画素の画素値のことを減色画素値と呼び、RGB値と区別する。以上の減色処理により、各画素は階調数が少なくされる。なお、各セルの重心のRGB値を、各セルの代表色として求め、求めた代表色を各セルに属する画素の画素値としてもよい。
【0045】
ステップS12において、領域抽出部101は、ステップS11で減色処理が施された原画像をラベリングして複数の分割領域に分割する。詳細には、領域抽出部101は、減色処理が施された原画像において、同一の減色画素値からなる連続する領域に同一のラベルを付し、原画像を複数の分割領域に分割する。ここで、各分割領域のうち、周囲がある一つの分割領域に取り囲まれた領域であって、面積が所定値以下である分割領域は、ハイライト等を表すものとして、その分割領域に対し、その分割領域を取り囲む分割領域のラベルと同一のラベルを付する。また、領域抽出部101は、減色処理が施された原画像において、一定の範囲内の減色画素値からなる連続する領域に同一のラベルを付し、原画像を複数の分割領域に分割してもよい。
【0046】
次に、領域抽出部101は、ステップS12で求めた各分割領域を構成する画素のRGB値の代表値(代表色)を算出する(ステップS13)。ここで、代表値としては、各分割領域の画素のRGB値の平均値、最大頻度を有する色、又は中央値等を採用することができる。
【0047】
次に、領域抽出部101は、各分割領域の色の代表値と、予め定められた白歯の色の基準値とのRGB色空間上での距離を算出し、算出した距離が、白歯と認識される所定の範囲内にある領域を、白歯領域として抽出する(ステップS14)。ここで、各分割領域の色の代表値をR1,G1,B1とし、白歯の色の基準値をR2,G2,B2とすると、領域抽出部101は、例えば((R1−R2)+(G1−G2)+(B1−B2)1/2により、各分割領域の色の代表値と白歯の色の基準値との距離を算出する。なお、白歯の色の基準値としては、人間の歯の標準的な色を表すRGB値を採用することができる。
【0048】
図7は、原画像の一例を示す図である。この場合、図7に示すように、原画像から7個の白歯領域WT1〜WT7が抽出される。なお、白歯領域を総称するときは、白歯領域にWTの符号を付す。また、各歯に含まれる白抜きの領域はハイライトを示し、濃い網点は金歯を示し、薄い網点は歯茎を示している(図8〜図9も同様)。
【0049】
次に、領域抽出部101は、ステップS13で求めた各分割領域の色の代表値と、予め定められた歯を覆う金属の色の基準値とのRGB色空間上での距離を白歯の場合と同様にして算出し、算出した距離が歯を覆う金属と認識される所定の範囲内にある分割領域を、金歯領域として抽出する(ステップS15)。この場合、図7に示すように、原画像から3個の金歯領域GT1〜GT3が抽出される。なお、金歯領域を総称するときは、金歯領域にGTの符号を付す。なお、歯を覆う金属の色の基準値としては、歯を覆う金の標準的な色のRGB値、又は歯を覆う銀の標準的な色のRGB値を採用することができる。
【0050】
次に、領域抽出部101は、ステップS14及びS15で抽出された白歯領域WT及び金歯領域GTの各領域を整形する(ステップS16)。詳細には、領域抽出部101は、白歯領域WT1〜WT7及び金歯領域GT1〜GT3に対し、スムージング処理を実行し、白歯領域WT1〜GT7及び金歯領域GT1〜GT3の輪郭を滑らかな線で結ぶ。
【0051】
次に、領域抽出部101は、白歯領域WT1〜WT7及び金歯領域GT1〜GT3からハイライト領域を抽出する(ステップS17)。詳細には、領域抽出部101は、予め定められた低彩度かつ高輝度のハイライトの基準色に対し、ハイライトと認識される所定範囲内のRGB値を有する画素を、白歯領域WT1〜WT7及び金歯領域GT1〜GT3から抽出し、抽出した画素からなる領域をハイライト領域として抽出する。
【0052】
図5は、図3に示す置換処理のフローチャートである。以下、金歯領域GT1に対する処理を例に挙げて説明する。まず、置換部102は、白歯領域WT1〜WT7のうち、金歯領域GT1と形状が最も近い白歯領域WTを選択する(ステップS31)。詳細には、置換部102は、金歯領域GT1に外接する多角形(例えば矩形)を設定すると共に、白歯領域WT1〜WT7の各々に外接する多角形(例えば矩形)を設定し、金歯領域GT1に設定した多角形に対して、大きさが最も近い多角形が設定された白歯領域WTを、形状が最も近い白歯領域WTとして抽出する。この場合、図7に示す白歯領域WT2が、金歯領域GT1に対して、形状が最も近い歯として抽出される。
【0053】
次に、置換部102は、図4のステップS17で抽出された白歯領域WT2からハイライト領域を除去する(ステップS32)。次に、置換部102は、白歯領域WT2に対してモーフィング処理を施し、白歯領域WT2の形状を金歯領域GT1の形状に変形させる(ステップS33)。
【0054】
詳細には、置換部102は、白歯領域WT2の輪郭線上に所定の間隔で複数個の特徴点(x,y)を設定する。ここで、(x,y)は、i番目の特徴点の座標を表している。次に、置換部102は、金歯領域GT1の輪郭線上に、白歯領域WT2に設定した特徴点に対応する複数個の特徴点(x´,y´)を設定する。なお、x´,y´の添え字はiは、特徴点(x,y)に対応付けられた特徴点を表している。ここで、例えば白歯領域WT2よりも金歯領域GT1の方が大きい場合は、1つの特徴点(x,y)に対して複数の特徴点(x´,y´)を対応付け、白歯領域WT2よりも金歯領域GT1の方が小さい場合は、複数個の特徴点(x,y)に対して1つの特徴点(x´,y´)を対応付けてもよく、特徴点(x,y)と(x´,y´)とは1対1に対応づけなくともよい。
【0055】
次に、置換部102は、白歯領域WTの重心(x,y)を求める。次に、置換部102は、(x,y)、(xi+1,yi+1)、(x,y)からなる微小な三角形を求める。次に、置換部102は、重心(x,y)を原点としたときの、(x,y)と(x´,y´)との関係、及び(xi+1,yi+1)と(x´i+1,y´i+1)との関係から2行2列の変換行列Sを求める。
【0056】
次に、置換部102は、微小な三角形内の全ての画素の座標を、変換行列Sを用いて変換する。このようにして、置換部102は、全ての微小な三角形内の画素の座標を、変換行列Sを用いて変換する。次に、置換部102は、白歯領域WT2のある画素(x,y)が、変換行列Sにより(x´,y´)に変換されたとすると、変換後の画素(x´,y´)の画素値を変換前の画素(x,y)の画素値とする。ここで、複数の画素(x,y)が変換行列Sにより1つの画素(x´,y´)に変換された場合は、画素(x´,y´)の画素値を変換前の複数の画素(x,y)の平均値とする。以上により、白歯領域WT2の形状が、金歯領域GT1の形状に変形される。
【0057】
次に、置換部102は、形状が変形された白歯領域WT2で、金歯領域GT1を上書きし、金歯領域GT1を白歯領域WT2で置換する(ステップS34)。置換部102は、以上の置換処理を全ての金歯領域GTに対して実行し、全ての金歯領域GTを、白歯領域WTで置換する。
【0058】
図8は、白歯領域WTで置換された金歯領域GTを示した図である。図8に示すように、図7に示す金歯領域GT1〜GT3が白歯領域WTで上書きされ、歯を覆う金属が白歯で置換されていることが分かる。
【0059】
図6は、図3に示すハイライト処理のフローチャートである。以下の説明では金歯領域GT1に対してハイライト処理を施す場合を例に挙げて説明する。まず、ハイライト処理部103は、金歯領域GT1に隣接する白歯領域WTを特定し、金歯領域GT1の大きさが、特定した白歯領域WTのハイライト領域の大きさとなるように、金歯領域GT1のハイライト領域の大きさを変更する(ステップS41)。
【0060】
詳細には、ハイライト処理部103は、白歯領域WT1〜WT7の各重心と、金歯領域GT1の重心との距離を求め、求めた距離が最短となる白歯領域WTを金歯領域GT1に隣接する白歯領域WTとして特定する。ここでは、図7に示す白歯領域WT1が金歯領域GT1に隣接する白歯領域WTとして抽出される。
【0061】
次に、ハイライト処理部103は、図7に示す金歯領域GT1のハイライト領域HG1に外接矩形を設定すると共に、白歯領域WT1のハイライト領域HT1に外接矩形を設定する。ここで、ハイライト領域HG1に設定された外接矩形の横方向の一辺の長さをWg、縦方向の一辺の長さをHgとおく。また、ハイライト領域HT1に設定された外接矩形の横方向の一辺の長さをWt、縦方向の一辺の長さをHtとおく。
【0062】
次に、ハイライト処理部103は、ハイライト領域HG1の外接矩形の横方向の一辺の長さWgが、ハイライト領域HT1の一辺の長さWtとなり、かつ、ハイライト領域HG1の外接矩形の縦方向の一辺の長さHgがハイライト領域HT1の一辺の長さHtとなるように、ハイライト領域HG1を拡大又は縮小する。すなわち、ハイライト領域HG1は、縦の拡大率又は縮尺率がHt/Hg、横の拡大率又は縮尺率がWt/Wgで、拡大又は縮小される。図9は、白歯領域WT2で置換された金歯領域GT1に設定されたハイライト領域HG1´を示した図である。
【0063】
ステップS42において、ハイライト処理部103は、図7に示す金歯領域GT1のハイライト領域HG1の重心に、ステップS41で大きさが変更された図9に示すハイライト領域HG1´の重心が位置するように、白歯領域WT2で置換された金歯領域GT1にハイライト領域を描画する。
【0064】
この場合、図9に示すように、白歯領域WT2で置換される前の金歯領域GT1のハイライト領域HG1の重心C1に、ステップS41で大きさが変更されたハイライト領域HG1´の重心が位置するように、ハイライト領域HG1´が描画されていることが分かる。
【0065】
なお、ハイライト処理部103は、残りの金歯領域GT2,GT3に対しても、金歯領域GT1と同様のハイライト処理を施す。
【0066】
以上説明したように、本画像処理装置によれば、原画像から金歯領域GTと白歯領域WTが抽出され、抽出された白歯領域WTを用いて金歯領域GTが置換されているため、予め白歯を示す画像を用意しなくとも、白歯領域WTを金歯領域GTに置換することができる。
【0067】
また、原画像に減色処理を施し、減色処理後の画素値に基づいて原画像を分割し、分割した各分割領域の色の代表値を求め、各分割領域の色の代表値と歯を覆う金属の色の基準値とを基に、金歯領域GTが抽出されているため、原画像から歯を覆う金属を精度よく抽出することができる。更に、分割された各分割領域の色の代表値と白歯の色の基準値とを基に、白歯領域WTが抽出されているため、原画像から白歯を精度良く抽出することができる。
【0068】
更に、金歯領域GTの近傍に位置する白歯領域WTに含まれるハイライト領域の大きさに近づくように、金歯領域GTのハイライト領域の大きさが変更されて、白歯領域WTで置換された金歯領域GTにハイライトが設定されるため、白歯領域WTで置換された金歯領域GTにハイライトを違和感なく描画することができる。
【0069】
なお、上記実施の形態では、金歯領域GTと白歯領域WTで置き換える態様を示したが、本発明はこれに限定されず、例えば、人間の手の甲の画像から、マニキュアが施された爪の領域とマニキュアが施されていない爪の領域とを抽出し、マニキュアが施された爪の領域をマニキュアが施されていない爪の領域で置換してもよい。
【0070】
また、上記図4のステップS14,S15において、各分割領域の色の代表値と、白歯の基準色及び金歯の基準色との距離をRGB表色系で求めているが、この距離をHSV(H:色相、S:彩度、V:明度)表色系を用いて求めても良い。この場合、白歯の色の基準値として、白歯の標準的な色のHSV値を採用すると共に、金歯の標準的な色のHSV値を採用し、各分割領域をRGB表色系からHSV表色系に変換し、各分割領域の色の代表値を求め、各分割領域の色の代表値と、白歯の標準的な色のHSV値及び金歯の標準的な色のHSV値とのHSV色空間上での距離を求めればよい。更に、HSV表色系以外の表色系、例えばマンセル表色系、L*a*b*表色系、XYZ表色系、又はCIE表色系等を用いて色空間上の距離を求めてもよい。
【0071】
また、上記実施の形態では、静止画像に対する処理を示したが、これに限定されず、動画像に対して上記実施の形態の処理を適用してもよい。この場合、動画像を構成するフィールドを原画像として上記実施の形態の処理を適用すればよい。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】本発明の実施の形態による画像処理装置のハードウェア構成を示すブロック図である。
【図2】図1に示す画像処理装置の機能ブロック図を示している。
【図3】画像処理装置のメインルーチンを示すフローチャートである。
【図4】図3に示す領域抽出処理のフローチャートである。
【図5】図3に示す置換処理のフローチャートである。
【図6】図3に示すハイライト処理のフローチャートである。
【図7】原画像の一例を示す図である。
【図8】図7に示す原画像から抽出された金歯領域を示した図である。
【図9】白歯領域で置換された金歯領域に設定されたハイライト領域を示した図である。
【符号の説明】
【0073】
100 制御部
101 領域抽出部
102 置換部
103 ハイライト処理部
110 画像メモリ
120 入力部
130 撮影部
140 表示部
C1 重心
GT,GT1〜GT3 金歯領域
HG1 ハイライト領域
HT1 ハイライト領域
S 量子化ステップ数
WT,WT1〜WT7 白歯領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原画像から置換対象となる第1の物体を示す第1の領域を抽出すると共に、前記原画像から前記第1の領域を置換するために使用される第2の物体を示す第2の領域を抽出する領域像抽出手段と、
前記第2の領域の形状を前記第1の領域の形状に変形し、変形した第2の領域で、前記1の領域を置換する置換手段としてコンピュータを機能させることを特徴とする画像処理プログラム。
【請求項2】
前記領域抽出手段は、原画像を複数の分割領域に分割し、各分割領域の色の代表色と前記第1の物体の色の基準値との色空間上での距離が所定の値以下である分割領域を前記第1の領域として抽出すると共に、各分割領域の色の代表色と前記第2の物体の色の基準値との色空間上での距離が所定の値以下である分割領域を前記第2の領域として抽出することを特徴とする請求項1記載の画像処理プログラム。
【請求項3】
前記領域抽出手段は、階調数を少なくする減色処理を前記原画像に実行し、減色処理が実行された原画像において、類似する画素値からなる連続した領域を1つの分割領域とすることを特徴とする請求項2記載の画像処理プログラム。
【請求項4】
前記置換手段は、前記領域抽出手段により複数の第1領域が抽出されると共に、複数の第2の領域が抽出された場合、複数の第1の領域の中から1つの第1の領域を注目する第1の領域として順次特定し、特定した注目する第1の領域に対して形状が最も近い第2の領域を複数の第2の領域の中から特定し、特定した第2の領域で前記注目する第1の領域を置換することを特徴とする請求項2又は3記載の画像処理プログラム。
【請求項5】
前記置換手段は、前記注目する第1の領域に外接する多角形を設定すると共に、各第2の領域に外接する多角形を設定し、第1の領域に対して設定した多角形に、大きさが最も近い多角形が設定された第2の領域を、前記注目する第1の領域に対して形状が最も近い第2の領域として特定することを特徴とする請求項4記載の画像処理プログラム。
【請求項6】
前記領域抽出手段は、前記第1及び第2の領域の各々から特徴的な領域を示す特徴領域を抽出し、
前記領域抽出手段により抽出された第1の特徴領域の大きさを、近傍に位置する第2の特徴領域の大きさを基に変更し、変更した第1の特徴領域を、前記置換手段により第2の領域で置換された第1の領域に設定する領域設定手段としてコンピュータを更に機能させることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の画像処理プログラム。
【請求項7】
前記領域抽出手段は、前記第1及び第2の領域からハイライトの基準色に対する色空間上での距離が所定の値以下の領域を前記第1及び第2の特徴領域として抽出し、
前記領域設定手段は、前記第1の特徴領域の大きさを前記第2の特徴領域の大きさに近づくように変更することを特徴とする請求項6記載の画像処理プログラム。
【請求項8】
前記第1の物体は歯を覆う金属であり、前記第2の物体は前記金属に覆われていない歯であることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の画像処理プログラム。
【請求項9】
原画像から置換対象となる第1の物体を示す第1の領域を抽出すると共に、前記原画像から前記第1の領域を置換するために使用される第2の物体を示す第2の領域を抽出する領域像抽出手段と、
前記第2の領域の形状を前記第1の領域の形状に変形し、変形した第2の領域で前記1の領域を置換する置換手段とを備えることを特徴とする画像処理装置。
【請求項10】
コンピュータが、原画像から置換対象となる第1の物体を示す第1の領域を抽出すると共に、前記原画像から前記第1の領域を置換するために使用される第2の物体を示す第2の領域を抽出し、
コンピュータが、前記第2の領域の形状を前記第1の領域の形状に変形し、変形した第2の領域で、前記1の領域を置換することを特徴とする画像処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−21224(P2008−21224A)
【公開日】平成20年1月31日(2008.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−194104(P2006−194104)
【出願日】平成18年7月14日(2006.7.14)
【出願人】(501260510)デジタルファッション株式会社 (13)
【Fターム(参考)】