説明

画像処理方法,画像処理装置およびそれを搭載した水中検査装置

【課題】本発明の目的は、画像情報のみを用いて、画像の振れを修正し、画像を安定化でき、水中検査装置の操作性が向上する画像処理方法,画像処理装置およびそれを搭載した水中検査装置を提供することにある。
【解決手段】本発明は、表示する時刻の取得画像と直前の時刻の取得画像の画像相関演算により算出した画像振れ量を算出し、予め設定した時間分の画像振れ量の移動平均を算出し、直前の時刻の取得画像を画像振れ量の移動平均に相当する画素分だけ移動させて補正画像を算出し、補正画像を表示することを特徴とする。
【効果】本発明によれば、画像情報のみを用いて、画像の振れを修正し、画像を安定化でき、水中検査装置の操作性が向上するものとなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像処理方法,画像処理装置およびそれを搭載した水中検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の移動体に搭載したカメラの撮影画像処理に関し、第1に、人間が頭部に装着するカメラの視認性を安定させる技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、第2に、撮影画像から動きベクトルを検出し、撮影画像のみを用いて画像の振れを抑止する技術が知られている(例えば、特許文献2参照)。
【0004】
一方、水中検査装置に動き検出センサを搭載し、任意の方向に操舵する技術が知られている(例えば、特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−97637号公報
【特許文献2】特開平5−219420号公報
【特許文献3】特開2006−224863号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1は、人間が頭部に装着するカメラの視認性を安定させる装置に関して、搭載したジャイロセンサを用いて、動きを検出する技術である。また、特許文献2の技術は、画像の相関処理により、動きを検出している。このように、特許文献1及び特許文献2は、画像の安定化を図るために、画像の振れを検出し、振れの分だけ補正する技術である。
【0007】
しかしながら、本発明で対象としている水中検査装置は、装置が振れるだけでなく、装置の姿勢を故意に変換させる場合もあるため、正対する向きに画像を追従させる必要がある。従って、特許文献1,特許文献2記載の技術では、水中検査装置には適用できないものである。
【0008】
また、特許文献3は、ジャイロ等の内界センサを用いて姿勢を検出し、フィードバック制御することで、水中検査装置の姿勢を制御する装置であり、画像のみを安定化させる技術ではない。
【0009】
本発明の目的は、画像情報のみを用いて、画像の振れを修正し、画像を安定化でき、水中検査装置の操作性が向上する画像処理方法,画像処理装置およびそれを搭載した水中検査装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、表示する時刻の取得画像と直前の時刻の取得画像の画像相関演算により算出した画像振れ量を算出し、予め設定した時間分の画像振れ量の移動平均を算出し、直前の時刻の取得画像を画像振れ量の移動平均に相当する画素分だけ移動させて補正画像を算出し、補正画像を表示することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、画像情報のみを用いて、画像の振れを修正し、画像を安定化でき、水中検査装置の操作性が向上するものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】実施例1による水中検査作業中における水中検査装置の機器配置を示す図である。
【図2】実施例1における検査用ビークルの構成を示す図である。
【図3】実施例1における画像振れ量の定義を示す図である。
【図4】実施例1における画像振れ量の算出イメージを示す図である。
【図5】実施例1における表示画像範囲のイメージを示す図である。
【図6】実施例1における画像処理の流れを示す図である。
【図7】実施例2における水中カメラの構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明は、水中移動体に搭載した撮影装置で撮影した画像を処理する画像処理方法,画像処理装置およびそれを搭載した水中検査装置に係り、特に、原子炉内を検査する水中検査装置,原子炉内のシュラウドや圧力容器の他、ジェットポンプ等の炉内機器を目視点検する遊泳型の水中検査装置に好適な画像処理方法,画像処理装置およびそれを搭載した水中検査装置に関する。
【実施例1】
【0014】
図1〜図6を用いて、本実施例の水中検査装置の構成及び動作について説明する。本実施例の水中検査装置は、原子炉内の欠陥検査、特に構造物を目視検査する際に用いられる装置である。
【0015】
最初に、本実施例による水中検査装置を用いた、水中検査作業時の機器配置を図1で説明する。
図1は、本実施例の水中検査装置を用いた水中検査作業時の機器配置図である。原子炉1内には、シュラウド2,上部格子板3,炉心支持板4,シュラウドサポート5等の構造物がある。また、原子炉1の上部には、作業スペースであるオペレーションフロア6があり、また同じく上方には、燃料交換装置7がある。
【0016】
原子炉1内に進入させた検査用ビークル8は、ビークル用ケーブル9を介して制御装置10に接続される。制御装置10は、検査用ビークル8を水中で泳動させて航行させるための電力を供給するとともに、検査対象箇所において目視検査を実施するために映像の通信を行う。また、制御装置10には表示装置11が接続され、検査用ビークル8に搭載した撮像手段が撮像する画像を表示する。さらに、制御装置10にはコントローラ12を接続し、ビークル操作員13aが操作する。なお、燃料交換装置7の上では、操作補助員13bがビークル用ケーブル9を捌く。
【0017】
制御装置10の内部には、検査用ビークル8の位置移動を制御する位置制御手段と、検査用ビークル9に搭載された撮像手段により撮像された画像を表示装置11に表示するために表示画像を生成する画像表示処理手段とを備えている。
【0018】
次に、図2を用いて、本実施例の水中検査装置に用いる検査用ビークル8の構成について説明する。図2は、水中検査装置に用いる検査用ビークル8の構成を示す鳥瞰図である。
【0019】
検査用ビークル8には、前部に撮像手段としてカメラユニット20を搭載している。なお、カメラユニット20内部には、カメラおよび照明が収納されている。図1に示したビークル操作員13aは、カメラユニット20からの映像を確認しながら、検査用ビークル8の移動等を操作できる構成となっている。
【0020】
また、検査用ビークル8は、水中を移動するための駆動機構を搭載している。この駆動機構は、上下に移動するための昇降用スラスタ21と、前後に進行するための推進用スラスタ22と、左右に移動及び旋回するための並進旋回用スラスタ23a,23bを搭載している。ここで、並進旋回用スラスタ23a,23bは、左右に移動させる場合には同一方向に回転させ、旋回させる場合には逆方向に回転させる。
【0021】
次に、図3から図5を用いて、本実施例の水中検査装置による画像処理方法の概念を説明する。
図3は、画像振れ量の定義を示したものである。図3は、カメラユニット20で撮影した画像を制御装置10に取り込んだイメージである。取り込み画像30において、時刻Ti-1における特徴点31が、次の時刻Tiにおける特徴点32の位置に移動したとする。この時の移動量(a,b)を画像振れ量33として定義する。この画像振れ量33は、後述する画像相関処理により算出するものであり、(a,b)は、画像のX方向,Y方向の振れ量を示している。図3は、2つの画像間における特徴点の変化を説明したものである。そして、連続する複数の画像の集合である映像で画像振れ量を考えると、特徴点は連続した振れとなる。この特徴点の振れの要因は、操作員が意図した方向変化と、意図しない振れに分けられる。このうち、操作員が意図した方向変化は周波数が低く、意図しない振れは周波数が高いと考えられる。
【0022】
図4は、画像の振れの高周波成分のみを除去し、操作員が意図した方向変化のみを画像の表示に反映させる方式のイメージを示したものである。図4において、画像振れ量の変化40は実線で示したように振動(振れ幅)が大きい。ここで、予め設定した時間、例えば3サンプルの画像振れ量の移動平均41を算出する。この処理の結果、高周波成分は除去され、操作員が意図した変化のみが残ることになる。移動平均を実施しない場合の時刻Ti-1からTiへの変化量42と比べ、移動平均を実施した場合の変化量は小さくなる。この量を、時刻Tiにおける画像補正量43として用いる。なお、画像補正量43は、図3のa,bすなわち、X方向,Y方向で独立に算出し、その値をA,Bとする。
【0023】
図5は、表示画像範囲のイメージを示す図である。時刻Ti-1における表示画像50に対し、時刻Tiにおける表示画像51は、X方向の画像シフト量52,Y方向の画像シフト量53の分だけ、ずらして表示する。なお、時刻Ti-1,時刻Tiいずれの場合でも、表示サイズの変化は無い。そのため、表示画像をシフトさせた分だけ、画像情報が無い部分が生じる。そこで、時刻Tiにおいて、ブランク領域54を挿入する。
【0024】
次に、図6を用いて、本実施例の水中検査装置による画像表示方法の処理内容について説明する。これらの処理は、図1に示した制御装置10の画像表示処理手段により実行され、図3から図5までの方法を具現化するフローチャートである。
【0025】
ステップS00で処理開始後、ステップS01において時定数Nを入力する。この時定数は、図4で示した移動平均の幅を示すもので、具体的には移動平均サンプル数である。次に、ステップS02において、時刻T0における初期画像処理を行う。ステップS03で初期撮影画像を読み込み、ステップS04でカメラのレンズによる歪みを補正し、ステップS05で初期画像を保存する。次に、ステップS06で、時定数Nにより定められる範囲の初期画像相関を算出する。具体的には、ステップS07からステップS08の画像振れ量算出のサブルーチンを呼び出し、繰返し演算をする。ステップS08では、まず、ステップS09で現時刻Tiの画像を取得する。詳細には、ステップS10で現時刻の画像を取り込み、ステップS11で歪みを補正し、ステップS12で現画像として保存する。次に、ステップS13で前時刻Ti-1の画像を読み込み、ステップS14で画像相関演算をする。その結果、ステップS15において、図3で示した画像振れ量(a,b)を決定する。ステップS16は画像振れ量(a,b)を保存する。
【0026】
次に、ステップS17で時刻をインクリメントし、ステップS18で画像補正処理を行う。ここで、ステップS18の画像補正処理を説明する。まず、現時刻の画像振れ量を算出するために、ステップ19はサブルーチンステップS08を呼び出し、ステップS09からステップS16の処理を実施する。次に、ステップS20において、ステップS16で保存した過去の画像振れ量を読み込む。ここで読み込むのは、現時刻iに対し、i−Nからi−1までの時間の結果である。例えば、時定数N=3の場合、ステップS20は、i−3からi−1までの時間の結果を読み込む。但し、現時刻がT1、又はT2のとき、過去の取得画像数は時定数(N=3)に満たない。そのため、現時刻がT1、又はT2の場合、ステップS20はスキップされる。
【0027】
ステップS21は、ステップS20の結果を用いて画像振れ量の移動平均(A,B)を算出し、ステップS22は前時刻Ti-1の画像を(A,B)の画素数だけシフトさせる。このステップは、図5で示した方式による。ステップS23は、その結果を補正画像として表示する。この時、図5で示した通り、ブランク領域を画面の端に挿入して表示する。最後に、次のステップS24においてループ判定を行う。ステップS25において、操作員から終了の入力が無ければ、ステップS26から、ステップS27にジャンプし、ステップS17からステップS23までの処理を繰り返す。操作員から終了の入力があれば、ステップS28において終了処理を行う。
【0028】
このように、本実施例では、表示する時刻の取得画像と直前の時刻の取得画像の画像相関演算(S14)により算出した画像振れ量を算出し、予め設定した時間分の画像振れ量の移動平均(S21)を算出し、直前の時刻の取得画像を画像振れ量の移動平均に相当する画素分だけ移動させて補正画像を算出(S22)し、補正画像を表示する(S23)。画像振れ量の移動平均(S21)を用いることにより、画像振れ量の高周波成分は除去され、操作員が意図した変化のみを画像表示に反映させることが可能である。そのため、画像情報のみを用いて、画像の振れを修正し、なおかつ、意図した姿勢の変化にも追従することが可能になる。その結果、移動体に搭載した撮影画像を安定化させることが可能になり、移動時における操作性を向上する。
【0029】
また、水中検査装置に搭載したカメラの画像を安定化させることが可能になり、目視点検における検査効率を向上できる。
【実施例2】
【0030】
次に、図7を用いて、本実施例の水中検査装置の構成及び動作について説明する。本実施例による水中検査装置を用いた水中検査作業時の機器配置は、図1と比較して、検査用ビークル8の代わりに水中カメラ70を用いる点、及びビークル用ケーブルの代わりにケーブルを内包した保持治具71を用いている点が異なる。なお、他の構成,画像処理方法,表示方法は、図1と同一である。水中カメラ70は、カメラユニット72とランプユニット73a,73bを搭載している。制御装置10は、カメラユニット72で撮影した映像の画像処理を行い、表示装置11にて表示する。
【0031】
本実施例は、実施例1と同一目的を達成しようとするものである。但し、カメラを搭載する機器が、泳動型である検査用ビークル8と異なり、上下方法の振れの少ない保持治具を用いている。そのため、操作員が所望しない振れは、主に水平方向の振れとなる。この場合、画像振れ量(図4)を算出する時に、画像の水平方向すなわちX方向のみについて補正を行って同様の効果が得られるため、画像処理に掛かる演算時間を短縮し応答性を向上することも可能になる。
【0032】
以上説明したように、本実施例によれば、画像情報のみを用いて、画像の振れを修正し、なおかつ、意図した姿勢の変化にも追従することが可能になる。その結果、移動体に搭載した撮影画像を安定化させることが可能になり、移動時における操作性を向上する。
【0033】
また、水中検査装置に搭載したカメラの画像をより安定化させることが可能になり、目視点検における検査効率を向上できる。
【符号の説明】
【0034】
1 原子炉
2 シュラウド
3 上部格子板
4 炉心支持板
5 シュラウドサポート
6 オペレーションフロア
7 燃料交換装置
8 検査用ビークル
9 ビークル用ケーブル
10 制御装置
11 表示装置
12 コントローラ
20 カメラユニット
21 昇降用スラスタ
22 推進用スラスタ
23a,23b 並進旋回用スラスタ
30 取り込み画像
31 時刻Ti-1における特徴点
32 時刻Tiにおける特徴点
33 画像振れ量
40 画像振れ量の変化
41 画像振れ量の移動平均
42 時刻Ti-1からTiへの変化量
43 時刻Tiにおける画像補正量
50 時刻Ti-1における表示画像
51 時刻Tiにおける表示画像
52 X方向の画像のシフト量
53 Y方向の画像のシフト量
54 時刻Tiにおけるブランク領域
70 水中カメラ
71 保持治具
72 カメラ
73a,73b ランプユニット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動体に搭載した撮像手段により撮影された取得画像を用いて補正画像を表示する画像処理方法であって、
表示する時刻の取得画像と直前の時刻の取得画像の画像相関演算により算出した画像振れ量を算出し、
予め設定した時間分の前記画像振れ量の移動平均を算出し、
前記直前の時刻の取得画像を前記画像振れ量の移動平均に相当する画素分だけ移動させて補正画像を算出し、前記補正画像を表示することを特徴とする画像処理方法。
【請求項2】
請求項1記載の画像処理方法において、
前記移動平均を計算する時間は、時定数だけ遡った時間であることを特徴とする画像処理方法。
【請求項3】
請求項1記載の画像処理方法において、
前記補正画像は、前記直前の時刻の取得画像を移動させたことにより生じる、前記画像振れ量の移動平均分のデータ空白領域にブランク領域を挿入することを特徴とする画像処理方法。
【請求項4】
移動体に搭載した撮影手段により撮影された取得画像を用いて補正画像を表示する画像処理装置であって、
表示する時刻の取得画像と直前の時刻の取得画像の画像相関処理により算出した画像振れ量を算出する手段と、
予め設定した時間分の前記画像振れ量の移動平均を算出する手段と、
前記直前の時刻の取得画像を前記画像振れ量の移動平均に相当する画素分だけ移動させて補正画像を算出する手段と、
前記補正画像を表示する手段を有することを特徴とする画像処理装置。
【請求項5】
三次元に泳動可能な駆動機構と水中において構造物を視認できる撮影手段を有する検査用ビークルと、前記撮影手段での撮影画像から予め設定した画像表示サイズの画像を切出し、振れを補正した画像を表示する画像表示処理手段とを有する水中検査装置であって、
前記画像表示処理手段は、表示する時刻の取得画像と直前の時刻の取得画像の画像相関処理により算出した画像振れ量を算出する手段と、
予め設定した時間分の前記画像振れ量の移動平均を算出する手段と、
前記直前の時刻の取得画像を前記画像振れ量の移動平均に相当する画素分だけ移動させて補正画像を算出する手段と、
前記補正画像を表示する手段を有することを特徴とする水中検査装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−181984(P2011−181984A)
【公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−41248(P2010−41248)
【出願日】平成22年2月26日(2010.2.26)
【出願人】(507250427)日立GEニュークリア・エナジー株式会社 (858)
【Fターム(参考)】