説明

画像処理方法

【課題】画素エッチングを容易に実現すること。
【解決手段】処理対象の画像にエッジフィルタを適用したフィルタ適用後画像を求めることと、前記フィルタ適用後画像について二値化処理を行ってエッジ画素を求めることと、前記エッジ画素に対応する前記処理対象の画像の画素を無色とした画像を求めることと、を含む画像処理方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
画像処理では、画像における異なる色同士の境界を識別し、その境界の画素の色を無色に設定する画素エッチングが行われることがある。例えば、インクを吐出して画像を形成するインクジェットプリンタにおいて、異なる色同士の境界の画素の色を無色に設定することとで、異なる色同士の画素の境界にはインク滴を吐出しないようにする。そして、異なる色同士が重なり合うことを防止し、異なる色同士が滲む(ブリーディング)ということが生じないようにすることができる。
【0003】
特許文献1には、複数パスによって画像を形成することが示されている。特許文献2には、異なる色同士が滲まないようにするために画素エッチングを行うことが示されている。
【特許文献1】特開2000−158681号公報
【特許文献2】特開平10−100453号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このようなことから、画像処理において画素エッチングが行われることがあるが、簡便な方法で画素エッチングを行うことができれば便利である。
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、画素エッチングを容易に実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するための主たる発明は、
処理対象の画像にエッジフィルタを適用したフィルタ適用後画像を求めることと、
前記フィルタ適用後画像について二値化処理を行ってエッジ画素を求めることと、
前記エッジ画素に対応する前記処理対象の画像の画素を無色とした画像を求めることと、
を含む画像処理方法である。
本発明の他の特徴については、本明細書及び添付図面の記載により明らかにする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
本明細書及び添付図面の記載により、少なくとも、以下の事項が明らかとなる。
【0007】
処理対象の画像にエッジフィルタを適用したフィルタ適用後画像を求めることと、
前記フィルタ適用後画像について二値化処理を行ってエッジ画素を求めることと、
前記エッジ画素に対応する前記処理対象の画像の画素を無色とした画像を求めることと、
を含む画像処理方法。
このようにすることで、画素エッチングを容易に実現することができる。
【0008】
かかる画像処理方法であって、前記処理対象の画像にエッジフィルタを適用したフィルタ適用後画像を求める前に、前記処理対象の画像の解像度変換を行い、前記解像度変換後の画像を前記処理対象の画像として扱うことが望ましい。また、前記解像度変換は、解像度を下げる第1の解像度変換と解像度を上げる第2の解像度変換とを含むことが望ましい。また、前記第1の解像度変換と前記第2の解像度変換における変換の倍率は、前記エッジフィルタの行列数に応じた値に設定されることが望ましい。また、前記第2の解像度変換は補間を用いない手法により行われることが望ましい。
【0009】
また、前記エッジ画素を求めた後、前記二値化処理後の画像の解像度が前記処理対象の画像の解像度と同じになるように変換されることが望ましい。また、前記処理対象の画像においてYMCK色空間が採用され、前記二値化処理において前記エッジ画素には前記YMCK色空間における階調値の最小値が設定されることが望ましい。また、前記エッジ画素に対応する前記処理対象の画像の画素を無色とした画像を求めることは、前記処理対象の画像と前記二値化処理後の画像とにおいて同じ位置の画素に設定された値が比較され、より小さい値が当該画素の階調値として設定されることによって行われることが望ましい。
このようにすることで、画素エッチングを容易に実現することができる。
【0010】
===実施形態===
図1は、印刷システムの全体構成のブロック図である。この印刷システム100は、プリンタ1、コンピュータ110、表示装置120、及び入力装置130を備えている。第1実施形態において、プリンタ1は、紙、布、フィルム等の媒体に画像を印刷するインク吐出型のラインプリンタである。
【0011】
コンピュータ110は、CPU113、メモリ114、インタフェース112、及び記録再生装置140を備えている。CPU113は、プリンタドライバなどの様々なプログラムを実行し、例えば後述するプリンタ1に印刷させる画像について画像処理を行う。メモリ114は、プリンタドライバなどのプログラムやデータを記憶する。インタフェース112は、USBやパラレルインタフェースなどのプリンタ1に接続するためのインタフェースである。記録再生装置140は、CD−ROMドライブやハードディスクドライブであって、プログラムやデータを記憶するための装置である。
【0012】
コンピュータ110は、インタフェース112を介してプリンタ1と通信可能に接続されており、プリンタ1に画像を印刷させるため、印刷させる画像に応じた印刷データをプリンタ1に出力する。
【0013】
コンピュータ110には、プリンタドライバがインストールされている。プリンタドライバは、表示装置120にユーザインタフェースを表示させ、アプリケーションプログラムから出力された画像データを印刷データに変換させるためのプログラムである。
【0014】
<プリンタの構成について>
図2Aは、プリンタ1の断面図である。また、図2Bは、プリンタ1の用紙Sの搬送処理を説明するための斜視図である。以下に、図1も参照しつつ、ラインプリンタの基本的な構成について説明する。
【0015】
プリンタ1は、用紙搬送機構20、ヘッドユニット40、検出器群50、ASIC60、及び駆動信号生成回路70を有する。プリンタ1は、コンピュータ110から印刷データを受信する。そして、受信したデータに基づいてプリンタ1のASIC60がプリンタ1の各部(用紙搬送機構20、ヘッドユニット40、駆動信号生成回路70)を制御し、用紙Sに画像を印刷する。
【0016】
プリンタ1内の状況は検出器群50によって監視されている。検出器群50は、検出結果をASIC60に出力する。そして、ASIC60は、この検出結果に基づいて、各部を制御する。
【0017】
用紙搬送機構20は、媒体(例えば、用紙Sなど)を所定の方向(以下、搬送方向という)に搬送させるためのものである。この用紙搬送機構20は、給紙ローラ21と、搬送モータ(不図示)と、上流側の搬送ローラ23A及び下流側の搬送ローラ23Bと、ベルト24とを有する。給紙ローラ21は、用紙挿入口に挿入された用紙Sをプリンタ内に給紙するためのローラである。下流側の搬送ローラ23Bには不図示の搬送モータが接続されている。搬送モータが回転すると、下流側の搬送ローラ23Bが回転する。そうすると、ベルト24がこれにあわせて回転し、また上流側の搬送ローラ23Aも回転する。不図示の搬送モータの回転はASIC60により制御される。上流側の搬送ローラ23Aには、ばね29が取り付けられている。そして、上流側の搬送ローラ23Aは水平方向に微小変位を可能とし、ベルト24のたわみが生じないようにしている。
【0018】
給紙ローラ21によって給紙された用紙Sは、ベルト24によって、印刷可能な領域(ヘッドと対向する領域)まで搬送される。ベルト24が用紙Sを搬送することによって、用紙Sがヘッドユニット40に対して搬送方向に移動する。印刷可能な領域を通過した用紙Sは、ベルト24によって外部へ排紙される。尚、搬送中の用紙Sは、ベルト24に静電吸着又はバキューム吸着されている。
【0019】
ヘッドユニット40は、用紙Sにインク滴を吐出するためのものである。ヘッドユニット40は、搬送中の用紙Sに対してインク滴を吐出することによって、用紙Sにドットを形成し、画像を用紙Sに印刷する。このプリンタ1はラインプリンタであり、ヘッドユニット40において紙幅方向にノズルが並ぶ構成となっている。そして、これらのノズルからインクを吐出することによって、用紙全体に画像を形成することができるようになっている。尚、本実施形態におけるヘッドユニット40は、イエローインクY、マゼンタインクM、シアンインクC、及び、ブラックインクKを吐出する。そして、720dpiの解像度で印刷することができるようになっている。
【0020】
検出器群50には、ロータリー式エンコーダ(不図示)等が含まれる。ロータリー式エンコーダは、上流側搬送ローラ23Aや下流側搬送ローラ23Bの回転量を検出する。ロータリー式エンコーダの検出結果に基づいて、ASIC60は、用紙Sの搬送量を検出することができる。そして、用紙Sの所定量の搬送を制御することができるようになっている。
【0021】
ASIC60は、プリンタ1の制御を行うための制御ユニットである。ASIC60は、プリンタ1内のインタフェース部61に接続され、コンピュータ110と通信可能になっている。ASIC60は、プリンタ全体の制御を行うための演算処理を行う機能を有する。また、プログラム及びデータを記憶するメモリを含んでいる。そして、メモリに格納されているプログラムに従って、各機構を制御する。
【0022】
駆動信号生成回路70は、インク滴をノズルから吐出させるために、ヘッドユニット40内のピエゾ素子417に印加される駆動信号を生成する回路である。駆動信号生成回路70は、ASIC60から出力された波形データに基づいて、駆動信号をヘッドユニット40に出力する。駆動信号とは、所定の周期Tの間に複数の駆動パルスを含む信号である。駆動パルスは、選択的にピエゾ素子417に印加されインク滴を吐出させるためのパルスである。駆動信号は駆動信号生成回路70から繰り返し生成され出力される。
【0023】
図3は、ブリーディングを生ずるときの媒体におけるインクを示す図である。図には、マゼンタインクMのインク滴とシアンインクCのインク滴が示されている。ここでは、説明の容易のために単色のインク色のインク滴が示されている。図に示すように、ドットサイズが大きい場合であってもドットサイズが小さい場合であっても、単位面積あたりの総インク量が多い場合には用紙Sに着弾したインクが用紙上で重なり合うことになる。つまり、両者は用紙上で混ざり合い、ブリーディングを生ずることとなる。
【0024】
また、図に示されている1つのインク滴が複数色のインク色からなる合成色であった場合であっても、異なる合成色同士が用紙上で混ざり合うことになればブリーディングを生じ、本来の色とは異なった色が形成されてしまうことになる。
【0025】
図4は、ブリーディングを生じないときの媒体におけるインクを示す図である。図に示すようにドットサイズが小さい場合は勿論のこと、ドットサイズが大きい場合であっても両者のインク同士が離れているため、両者が混ざり合ってブリーディングを生ずることはない。ここでも、説明を簡単にするために単色のインク色のインク滴を示して説明しているが、図に示されている1つのインク滴が複数色のインク色からなる合成色であった場合であっても、インク滴同士が離れていればブリーディングを生じないということは同様である。また、図に示すとおり、インク滴が用紙Sにしみこんだ場合であっても、用紙Sの内部でインク同士は離れているため、両者が混ざり合うことはない。
【0026】
合成色が所望のインク色同士の合成によって形成される場合には、それによって形成される画像も所望のものとなる。しかしながら、本来予定しないインク同士が混ざり合ってブリーディングを生ずることとなると、画質が悪化する。また、ブリーディングのうち、徐々に色が変化するようなグラデーションにおいて生ずるブリーディングであれば視覚的に大きな影響を与えないと考えられる。一方、色が急激に変化する箇所において異なる色同士のブリーディングが生ずることとなると画像のエッジ部分が明瞭でなくなり、画質の悪化が目立つことになる。
【0027】
よって、本実施形態では、これを改善するために色が急激に変化するエッジ画素について意図的に無色を設定(以下、画素エッチングという)することとする。そして、その後のインクの吐出においてエッジ画素に対応する場所にはインクを吐出しないこととする。このようにすることで、エッジ画素において急激に変化する色同士が混ざり合うブリーディングを防止して良好な画像を得ることができる。この画素エッチングは、次に説明する印刷データを生成するための処理において利用され、これにより良好な印刷を行うこととしている。
【0028】
<印刷データ生成処理について>
図5は、印刷データ生成処理を説明するためのフローチャートである。図に示すように、印刷データ生成処理では、サイズ変換処理(S102)、色変換処理(S104)、画素エッチング処理(S106)、ハーフトーン処理(S108)、及び、ラスタライズ処理(S110)が行われる。
【0029】
サイズ変換処理(S102)からラスタライズ処理(S110)までの処理は、コンピュータ110のプリンタドライバにおいて行われる。そして、ラスタライズ処理後の印刷データがプリンタに送られることになる。
サイズ変換処理(S102)は、画像データを用紙Sに画像を印刷する際の解像度に変換する処理である。ここでは、後述する画素エッチング処理において行われる解像度変換処理と区別するためにサイズ変換処理と呼ぶことにしている。
【0030】
色変換処理(S104)は、RGB画像データの各RGB画素データを、YMCK色空間により表される多段階の階調値を有するデータに変換する処理である。この色変換処理は、RGBの階調値とYMCKの階調値とを対応づけたテーブル(色変換ルックアップテーブル)を参照することによって行われる。
色変換処理が完了すると、次に、画素エッチング処理(S106)が行われる。画素エッチング処理については、後に詳述する。
【0031】
画素エッチング処理が完了すると、ハーフトーン処理(S108)が行われる。ハーフトーン処理は、多段階の階調値を有するYMCK画素データから、プリンタで表現可能な少段階の階調データに変換する処理である。このハーフトーン処理により、例えば、256段階の階調値を示すYMCK画素データから、4段階の階調値を示す2ビットのドット形成データが得られる。本実施形態におけるハーフトーン処理は、例えばディザ処理などが用いられる。一方、本実施形態におけるハーフトーン処理では、誤差拡散法など本来ドットの存在しない位置にドットを生じさせてしまうような手法は用いられない。これは、後述する画素エッチングによってエッジ画素を無色に設定したにもかかわらず、誤差拡散法を用いることでエッジ画素に対応する位置にドットを形成するようなことになれば画素エッチング処理が無駄となってしまうためである。
【0032】
ラスタライズ処理(S110)は、ハーブトーン処理で得られたドット形成データを、プリンタに転送すべきデータ順に変更する処理である。ラスタライズ処理されたドット形成データは、コマンドデータなどとともに、印刷データとしてプリンタ1に送られる。プリンタ1は、受信した印刷データに基づいて印刷を行う。
【0033】
<画素エッチング処理について>
図6は、画素エッチング処理を説明するためのフローチャートである。ここでは、色の境界において1画素分の画素エッチングを行う方法について説明を行う。また、画像のデータがYMCK色空間における各画素の階調値として与えられるものとして説明する。
まず、画素エッチング処理を行う対象となる画像が入力される(S202)。ここで入力される画素エッチング処理の対象となる画像を説明の便宜上「オリジナル画像P」と呼ぶ。
【0034】
図7は、オリジナル画像Pにおける各画素を説明するための図である。図には、オリジナル画像Pにおける一部の画素が示されている。そして、各画素の階調値pが配列として示されている。
オリジナル画像Pが入力されると、第1解像度変換処理(S204)が行われる。第1解像度変換処理は、後の処理において画像の解像度を整数倍に変換することになるため、これを考慮して予め画像の解像度を下げて画像のサイズを下げるための処理である。
【0035】
本実施形態では、バイキュービック法によりオリジナル画像Pの解像度を1/3の解像度に下げる。例えば、オリジナル画像Pの解像度が720dpiであった場合、240dpiへと解像度を下げる。第1解像度変換処理が行われた後の画像を説明の便宜上、「第1解像度変換後画像P’」と呼ぶ。このような処理は、YMCKプレーンの各プレーンについて行われる。
【0036】
図8は、第1解像度変換後画像P’における各画素を説明するための図である。図には、第1解像度変換後画像P’における一部の画素が示されている。そして、第1解像度変換後画像P’の各画素の階調値p’が配列として示されている。
ここでは解像度が1/3になるように解像度の変換が行われた。よって、図7において太線で囲われた複数の画素が図8において1つの画素に対応するように変換される。例えば、p(1,1)〜p(3,3)を含む太線で囲われた領域の画素が、図8における画素p’(1,1)に対応するように変換される。
【0037】
次に、第2解像度変換処理が行われる(S206)。第2解像度変換処理では、後に適用されるエッジ検出フィルタ(エッジフィルタ)の行列数以上の値の倍率で第1解像度変換後画像P’の解像度が変換される。本実施形態では、エッジ検出フィルタの行列数は3であるため、第2解像度変換処理における解像度変換の倍率として3以上(3,4,5,・・・)の値を用いることができるが、ここでは、第1解像度変換後画像P’の解像度を6倍するように画像の変換が行われる。ここで、第1解像度変換後画像P’の解像度を変換した後の画像を説明の便宜上、「第2解像度変換後画像P’’」と呼ぶ。
このようにすると、第2解像度変換後画像P’’の解像度は1440dpiとなる。すなわち、オリジナル画像Pと比較して、解像度変換後画像P’’の解像度は2倍となっていることによる。
【0038】
第2解像度変換処理で用いられる変換方法は、ニアレストネイバー法(最近傍法)などの補間が入らない手法にて行われる。ここで補間が入らない手法が適用されるのは、オリジナル画像Pには存在しないグラデーションが解像度変換後画像P’’に発生してしまうことを回避するためである。
【0039】
また、第2解像度変換処理において、エッジ検出フィルタのマトリックスのサイズに応じた値(例えば、3×3のエッジ検出フィルタであれば3以上の整数)となるように画像の変換が行われるのは、3×3のエッジ検出フィルタを適用した場合に少なくともエッジ画素を得るためには、同じ色の画素が少なくとも連続して3画素並ぶようにしておく必要があるためである。
【0040】
図9は、第2解像度変換後画像P’’における各画素を説明するための図である。図には、第2解像度変換後画像P’’における一部の画素が示されている。そして、変換後の各画素の階調値p’’が配列として示されている。
【0041】
ここでは、解像度が6倍になるように画像の変換処理が行われた。よって、図8において太線で囲われた1つの画素が、図9において太線で囲われた6×6の画素に対応するように変換される。例えば、図8におけるp’(1,1)の画素が、図9における画素p’’(1,1)〜p’’(6,6)に対応するように変換される。このような処理は、YMCKプレーンの各プレーンについて行われる。
【0042】
次に、エッジ検出処理が行われる(S208)。エッジ検出処理では、エッジ検出フィルタが第2解像度変換後画像P’’に適用される。
図10は、本実施形態において適用されるエッジ検出フィルタである。本実施形態では、図に示す通り3×3のエッジ検出フィルタを用いる。エッジフィルタを画像に適用すると、エッジが強い画素において大きな値が得られる。一方、エッジが強くない画素において小さな値が得られる。すなわち、色の変化が大きい場合には大きな値が設定され、色の変化が少ない場合には小さな値が設定されることとなる。尚、ここで適用されるエッジ検出フィルタは、図10に示すものに限られない。
エッジ検出フィルタの適用は、YMCKの各プレーンについて行われる。そして、各プレーンについてエッジ検出フィルタが適用されたフィルタ適用後画像Fが得られる。
【0043】
次に、各プレーンのフィルタ適用後画像を合成する処理が行われる(S210)。
図11は、各プレーンのフィルタ適用後画像Fの合成について説明するための図である。各プレーンのフィルタ適用後画像の合成は、各プレーンにおけるフィルタ適用後画像Fの同じ位置の画素に設定された値の平均値を求めることにより行われる。すなわち、各プレーンにおけるフィルタ適用後画像Fの同じ配列番号の画素に設定された値の平均値を求めることにより行われる。図には、各プレーンのフィルタ適用後画像が示されている(各プレーンを示すものとして、フィルタ適用後画像Fの添え字にYMCKのいずれかの文字が付されている)。このようにして、4枚のフィルタ適用後画像のプレーンは1つの合成後フィルタ適用後画像Fに変換される。
【0044】
次に、エッジ二値化処理(S212)が行われる。エッジ二値化処理では、合成後フィルタ適用後画像の各画素の値について、所定の閾値を基準として2つの数値のうちのいずれかの値に変換する。本実施形態において、所定の閾値は128であり、2つの数値は0又は255である。そして、合成後フィルタ適用後画像において、閾値である128以上の値を有する画素に0を設定する。すなわち、エッジが強い画素には値0が設定されることになる。一方、128未満の値を有する画素に255を設定する。すなわち、エッジが弱い画素には値255が設定されることになる。このようにして得られた画像を、説明の便宜上、二値化適用後画像Eとする。
【0045】
図12は、二値化適用後画像Eにおける各画素を説明するための図である。図には、二値化適用後画像Eにおける一部の画素が示されている。そして、各画素の値eが配列として示されている。
【0046】
この時点では、二値化適用後画像Eの解像度は、1440dpiになっているが、ここでは、再度、解像度を下げる処理を行う。本実施形態では、二値化適用後画像Eの解像度をニアレストネイバー法を用いて1/2の解像度である720dpiに変換する。そして、解像度変換後の二値化適用後画像Eを新たな二値化適用後画像E’とする。
【0047】
図13は、二値化適用後画像E’の各画素を説明するための図である。図には、二値化適用後画像E’における一部の画素が示されている。そして、各画素の値e’が配列として示されている。前述のように、ここでは、解像度を1/2とするような変換処理が行われた。よって、図12において太線で囲われた2×2の画素が図13における1つの画素に対応するように変換されることとなる。例えば、図12において太線で囲われたe(1,1)〜e(2,2)の画素は、図13におけるe’(1,1)の画素に対応するように変換される。
【0048】
次に、二値化画像重ね合わせ処理(S214)が行われる。二値化画像重ね合わせ処理では、同じ位置における画素について、二値化適用後画像E’の画素の値とオリジナル画像Pの画素の階調値との値とを比較して、小さい方の数値をその画素の階調値として採用し、画素エッチング処理後画像Cを得る。
【0049】
図14は、画素エッチング処理後画像Cにおける各画素を説明するための図である。図には、画素エッチング処理後画像Cにおける一部の画素が示されている。そして、各画素の値cが配列として示されている。関数minを、いずれか小さい方の値を選択する関数とすると、オリジナル画像Pの画素p(x、y)と二値化適用後画像E’の画素e’を用いて、画素エッチング処理後画像Cの各画素c(x、y)の階調値は、
c(x,y)=min(p(x,y),e’(x,y))
となる。尚、この処理は、オリジナル画像PのYMCKプレーンの各プレーンについて適用される。
【0050】
二値化適用後画像E’の各画素には、0か255の値が設定されている。そして、エッジが強い画素には0が設定され、エッジが弱い画素には255が設定されている。また、オリジナル画像Pの各画素には階調値として0〜255のいずれかの値が設定されている。ここでは、YMCK色空間を用いており、YMCK色空間では減法混色を採用するため、階調値が0に近いほど明るい色となり、階調値が255に近いほど暗い色となる。上述の式に従って、いずれか小さい方の値を選択した場合、二値化適用後画像E’において0が設定されている画素については、階調値として0が設定されることになる。一方、二値化適用後画像E’において255が設定されている画素については、階調値としてオリジナル画像Pの画素における階調値が設定されることとなる。
【0051】
このようにすることで、画素エッチング処理後画像Cには、オリジナル画像Pのエッジが強い画素については白色となるような階調値に設定されることとなる。後に、このように階調値が設定された画素のデータに基づいて印刷を行う場合、白色の画素についてはインクを吐出しないこととなる。すなわち、エッジが強く色の変化が激しい箇所にはインクを吐出しない設定とすることができるようになる。このようにすることで、その箇所におけるインクのブリーディングを防止することができる画像を得ることができるようになる。
【0052】
図15は、画素エッチング前の画素を説明するための図である。図には、2種類の異なる色が各画素に設定されている様子が示されている。ここでは、説明の容易のために色は2種類のみとして示されている。尚、ここでは説明の便宜上、斜線で塗りつぶした円を第1色とし、白色で塗りつぶした円を第2色とする。
【0053】
図16は、画素エッチング処理後画像の画素を説明するための図である。図には、画素エッチング処理後画像において、第1色の画素と第2色の画素とが隣り合う位置にある画素のうちのいずれかの1画素分の色が無色に設定されている様子が示されている。
【0054】
上述の画素エッチングを施すことにより、図に示すように、異なる2つの色の境界の画素の色を容易に無色に設定することができる。そして、その後、このように設定された階調値を有する画素のデータに基づいてインク滴を吐出するための印刷データを生成する。そして、この印刷データに基づいて印刷を行った場合、無色の画素にはインク滴を吐出しないこととなるため、異なる色の境界にインク滴が吐出されることはない。このようにして、異なる色の境界にインク滴を吐出しない領域が設定されるため、異なる色同士によるブリーディングを防止することができる。
【0055】
ところで、本実施形態では、複数回の解像度変換処理が行われている。これは、本実施形態において、異なる色同士の境界において1画素分の画素のみを無色に設定するために解像度が複数回調整されたのである。ここでは、各解像度変換処理の意味について説明する。
【0056】
ステップS212のエッジ二値化処理において、二値化適用後画像Eの解像度を1/2にする処理を行っていた。これは、前述のような3×3のエッジフィルタを画像に適用すると、エッジの強い箇所において少なくとも2画素分の色が白色に設定されるためである。しかしながら、本実施形態では1画素分の画素を白色に設定すれば十分であるため、エッジ検出フィルタ適用後の画像の解像度が1/2となるように変換されているのである。
【0057】
ステップS206の第2解像度変換処理では、解像度を6倍にする変換を行っている。これは、今回採用したエッジ検出フィルタの窓サイズが3×3であることに起因する。3×3の窓サイズのエッジ検出フィルタを画像に適用する場合、幅が1画素からなるラインがエッジ検出フィルタによって検出されるためには、3つの連続する同じ色の画素が必要となる。よって、ここでは、幅が1画素であるラインがエッジ検出フィルタに検出されるように、少なくとも解像度を3倍にしておく必要があるのである。また、前述のステップS212において解像度が1/2にされているため、これに対応できるように解像度を2倍しておく必要がある。このため、第2解像度変換処理では、解像度を6倍(3倍×2倍)にする変換を行っているのである。
【0058】
第2解像度変換処理において解像度を6倍にし、エッジ検出後に解像度を1/2にすると、オリジナル画像Pの解像度に対する解像度が3倍となってしまう。よって、オリジナル画像Pの解像度に合致させるために、第1解像度変換処理において解像度を1/3に減ずる処理を行ったのである。
【0059】
上述のような条件で複数回の解像度変換を行うことによって、異なる色の境界において1画素分の色を無色に設定することができるようになる。
【0060】
尚、第1解像度変換処理(S204)における縮小率を大きくすると欠落する情報量が増加してしまうことが考えられる。よって、上述のようにエッジフィルタの行列数が3の場合において、第1解像度変換処理(S204)では解像度を1/2倍にする変換を行い、第2解像度変換処理(S206)では解像度を4倍にする変換を行い、エッジ2値化処理では解像度を1/2倍にする変換を行うこととしてもよい。このようにすることで、オリジナル画像からの情報の欠落量をできるだけ少なくなるようにして、画素エッチング処理を行うことができる。
【0061】
上述の実施形態以外のときにおける各解像度変換時の倍率の設定は、次のようにして一般化された方法に基づいて行うこともできる。例えば、エッジフィルタの行列数をiとしたとき、第2解像度変換処理(S206)における解像度変換の倍率jはi以上(例えば、i=3のとき、j=3,4,5,・・・)とすることができる。これにあわせて、エッジ2値化処理(S212)における解像度変換時の倍率を(1/(j−1))倍とすることができる。そして、最終的に得られる画像の解像度がオリジナル画像Pの解像度と同じになるようにするために、第1解像度変換処理(S204)における解像度変換の倍率を((j−1)/j)倍となるように設定することができる。
【0062】
ところで、ステップS212におけるエッジ2値化処理において基準となる閾値は128でなくてもよい。例えば、色の差が大きくはないのに境界の色が無色に設定されていると感じられる場合には、閾値をより小さい値とすることで、その不具合を解消することができると考えられる。一方、色の差が大きいのに境界の色が無色に設定されていないと感じられる場合には、閾値をより大きい値とすることで、その不具合を解消することができると考えられる。
【0063】
また、本実施形態では、YMCK色空間における画素エッチング処理について説明を行ったが、RGB色空間においてもほぼ同様にして画素エッチング処理を行うことができる。但し、RGB色空間では、YMCK色空間と異なり加法混色が採用されている。よって、図6のステップS212のエッジ二値化処理において、合成後フィルタ適用後画像において、閾値である128以上の値を有する画素に255を設定する。一方、128未満の値を有する画素に0を設定する。そして、二値化画像重ね合わせ処理(S214)において、二値化適用後画像の画素の値と、オリジナル画像Pの画素の階調値との値とを比較して、大きい方の数値をその画素の輝度値として採用する。このようにすることによって、RGB色空間において、異なる色の境界の画素の輝度値を0とするようにした画素エッチング処理を行うことができる。
【0064】
また、本実施形態では、コンピュータ110におけるプリンタドライバにおいて画素エッチング処理を行うこととしたが、プリンタ1内において行うこととしてもよい。
【0065】
<2画素分を無色化する場合>
上述の画素エッチング処理では、色の境界において1画素分の色を無色に設定する処理を行った。色の境界においていくつの画素を無色に設定するかは、複数回の解像度変換におけるそれぞれの倍率による。上述の処理では、1画素分の色を無色に設定するような倍率で複数回の解像度変換処理が行われていた。
【0066】
例えば、色の境界において2画素分の色を無色に設定する場合には、次のような倍率で解像度変換を行う。前述の第1解像度変換処理(S204)において、オリジナル画像の解像度を1/3の解像度にする変換を行い、さらに、第2解像度変換処理(S206)において、解像度を3倍にする変換を行う。このようにすることで、画素エッチング処理において、異なる色の画素の境界において2画素分の色を無色に設定するようにすることができる。尚、このようにした場合、二値化適用後画像Eは、オリジナル画像の解像度と同じ解像度を有するので、前述のS212において行っていた解像度を1/2に変換する処理は行う必要はない。
【0067】
図17は、2画素分の色を無色に設定したときの画素エッチング処理後画像を説明する図である。このように、各解像度変換処理において適宜倍率を調整することによって、色の境界においてより幅広い領域を無色に設定するようにして、ブリーディングが確実に発生しないようにすることもできる。
【0068】
===その他の実施の形態===
上述の実施形態では、画素エッチングを行う画像処理方法によって生成された印刷データを使用するものとしてプリンタ1が説明されていたが、これに限られるものではなくインク以外の他の流体(液体や、機能材料の粒子が分散されている液状体、ジェルのような流状体)を噴射したり吐出したりする液体吐出装置に具現化することもできる。例えば、カラーフィルタ製造装置、染色装置、微細加工装置、半導体製造装置、表面加工装置、三次元造形機、気体気化装置、有機EL製造装置(特に高分子EL製造装置)、ディスプレイ製造装置、成膜装置、DNAチップ製造装置などのインクジェット技術を応用した各種の装置に、上述の実施形態と同様の技術を適用してもよい。また、これらの方法や製造方法も応用範囲の範疇である。
【0069】
上記の実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれることは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】印刷システムの全体構成のブロック図である。
【図2】図2Aは、プリンタ1の断面図であり、図2Bは、プリンタ1の用紙Sの搬送処理を説明するための斜視図である。
【図3】ブリーディングを生ずるときの媒体におけるインクを示す図である。
【図4】ブリーディングを生じないときの媒体におけるインクを示す図である。
【図5】印刷データ生成処理を説明するためのフローチャートである。
【図6】画素エッチング処理を説明するためのフローチャートである。
【図7】オリジナル画像Pにおける各画素を説明するための図である。
【図8】第1解像度変換後画像P’における各画素を説明するための図である。
【図9】第2解像度変換後画像P’’における各画素を説明するための図である。
【図10】本実施形態において適用されるエッジフィルタである。
【図11】各プレーンのフィルタ適用後画像Fの合成について説明するための図である。
【図12】二値化適用後画像Eにおける各画素を説明するための図である。
【図13】二値化適用後画像E’の各画素を説明するための図である。
【図14】画素エッチング処理後画像Cにおける各画素を説明するための図である。
【図15】画素エッチング前の画素を説明するための図である。
【図16】画素エッチング処理後画像の画素を説明するための図である。
【図17】2画素分の色を無色に設定したときの画素エッチング処理後画像を説明する図である。
【符号の説明】
【0071】
1 プリンタ、20 用紙搬送機構、
21 給紙ローラ、23A 上流側の搬送ローラ、23B 下流側の搬送ローラ、
24 ベルト、29 ばね、40 ヘッドユニット、50 検出器群、
60 ASIC、61 インタフェース、70 駆動信号生成回路、
100 コンピュータ、112 インタフェース、113 CPU、114 メモリ、
120 表示装置、130 入力装置、140 記録再生装置、
417 ピエゾ素子、HC ヘッド制御部、S 用紙

【特許請求の範囲】
【請求項1】
処理対象の画像にエッジフィルタを適用したフィルタ適用後画像を求めることと、
前記フィルタ適用後画像について二値化処理を行ってエッジ画素を求めることと、
前記エッジ画素に対応する前記処理対象の画像の画素を無色とした画像を求めることと、
を含む画像処理方法。
【請求項2】
前記処理対象の画像にエッジフィルタを適用したフィルタ適用後画像を求める前に、前記処理対象の画像の解像度変換を行い、前記解像度変換後の画像を前記処理対象の画像として扱う、請求項1に記載の画像処理方法。
【請求項3】
前記解像度変換は、解像度を下げる第1の解像度変換と解像度を上げる第2の解像度変換とを含む、請求項2に記載の画像処理方法。
【請求項4】
前記第1の解像度変換と前記第2の解像度変換における変換の倍率は、前記エッジフィルタの行列数に応じた値に設定される、請求項3に記載の画像処理方法。
【請求項5】
前記第2の解像度変換は補間を用いない手法により行われる、請求項4に記載の画像処理方法。
【請求項6】
前記エッジ画素を求めた後、前記二値化処理後の画像の解像度が前記処理対象の画像の解像度と同じになるように変換される、請求項1〜5のいずれかに記載の画像処理方法。
【請求項7】
前記処理対象の画像においてYMCK色空間が採用され、前記二値化処理において前記エッジ画素には前記YMCK色空間における階調値の最小値が設定される、請求項1〜6のいずれかに記載の画像処理方法。
【請求項8】
前記エッジ画素に対応する前記処理対象の画像の画素を無色とした画像を求めることは、
前記処理対象の画像と前記二値化処理後の画像とにおいて同じ位置の画素に設定された値が比較され、より小さい値が当該画素の階調値として設定されることによって行われる、請求項7に記載の画像処理方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate


【公開番号】特開2010−115846(P2010−115846A)
【公開日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−290171(P2008−290171)
【出願日】平成20年11月12日(2008.11.12)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】