説明

画像処理装置、撮像装置、画像処理方法および画像処理プログラム

【課題】画像の補正精度を向上させる。
【解決手段】判定部11は、入力画像信号の値が、色分布において分割された複数の分割領域SP1〜SP3のいずれに含まれるかを判定する。これらの複数の分割領域はRGBの色成分ごとに定義されており、判定部11は、入力画像信号の値が複数の分割領域のいずれに含まれるかを色成分ごとに判定する。画像補正部12は、色成分ごとかつ分割領域ごとに補正係数が登録された補正係数記憶部13から、入力画像信号の値が含まれると判定された色成分ごとの分割領域にそれぞれ対応する補正係数を読み出し、出力画像信号におけるRGBの各出力値を、補正係数記憶部13から読み出した対応する色成分についての補正係数を用いて算出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像処理装置、撮像装置、画像処理方法および画像処理プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
可視領域だけでなく赤外領域に対しても感度を有する撮像素子の分光感度特性は、等色感度から大きく逸脱する。このため、このような撮像素子を用いて人間が見た印象に近いカラー画像を撮影するためには、一般的に、撮像素子への光路上に赤外カットフィルタを配置する。また、赤外カットフィルタを光路外に退避させる機構を設けることで、上記の撮像素子を、カラー撮影と、暗視撮影などの高感度撮影の両方の用途に使用することができる。
【0003】
一方、上記の撮像素子を使用してカラー画像を得るための他の方法として、撮像素子によって得られた画像信号に対して信号処理による色補正を施す方法もある。信号処理によって色補正する方法は、赤外カットフィルタを配置する方法と比較して、撮像装置を小型化できる点で有利であり、製造コストの面でも一般的に有利である。また、カラー撮影と高感度撮影との切り替えも容易になる。
【0004】
信号処理による色補正方法の一例として、マトリクス係数を用いた信号処理を行う方法がある。例えば、赤外カットフィルタを用いない撮影によって得られた画像における色(補正対象色)と、赤外カットフィルタを用いた撮影によって得られた画像における色(目標色)との関係から、最小二乗法によりマトリクス係数を算出し、算出したマトリクス係数を用いて色補正を行う技術が提案されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】豊田善隆,外3名、「カラー撮像可能な近赤外撮像装置の研究〜比視感度補正信号処理方式の開発〜」、映像情報メディア学会誌、2010年1月号、社団法人映像情報メディア学会、p.101−110
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、マトリクス係数を用いた信号処理による色補正では、補正の度合いが補正対象の色によって異なることが、カラー画像における色再現性の低下を招くという問題があった。
【0007】
また、赤外カットフィルタを使用せずに撮影して得られた画像信号に対する色補正に限らず、信号処理による画像補正の度合いが補正対象の色によって異なる場合には、画像の補正精度が低下してしまう。
【0008】
1つの側面では、本発明は、画像の補正精度を向上させた画像処理装置、撮像装置、画像処理方法および画像処理プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、判定部と画像補正部とを有する画像処理装置が提供される。判定部は、入力画像信号の値が、色分布において分割された複数の分割領域のいずれに含まれるかを判定する。また、これらの複数の分割領域が入力画像信号に含まれる色成分ごとに定義されており、判定部は、入力画像信号の値が複数の分割領域のいずれに含まれるかを色成分ごとに判定する。画像補正部は、色成分ごとかつ分割領域ごとに補正係数が登録された補正係数記憶部から、入力画像信号の値が含まれると判定された色成分ごとの分割領域にそれぞれ対応する補正係数を読み出し、入力画像信号を基に、出力画像信号における色成分ごとの出力値を、補正係数記憶部から読み出した対応する色成分についての補正係数を用いて算出する。
【0010】
また、上記目的を達成するために、上記の画像処理装置と同様の処理を実行する撮像装置および画像処理方法が提供される。
さらに、上記目的を達成するために、上記の画像処理装置と同様の処理をコンピュータに実行させる画像処理プログラムが提供される。
【発明の効果】
【0011】
1態様によれば、画像の補正精度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】第1の実施の形態に係る画像処理装置を説明するための図である。
【図2】第2の実施の形態に係る撮像装置の構成例を示す図である。
【図3】撮像素子の分光感度特性の例を示すグラフである。
【図4】マクベスカラーチェッカの各色についての分光反射率特性の例を示すグラフである。
【図5】撮像素子における色成分ごとの分光感度特性の例を示す。
【図6】撮影対象とする青色系カラーサンプルの分光反射率特性の例を示す。
【図7】色成分ごとの入出力の関係を示すグラフである。
【図8】R成分についての入出力の関係を示すグラフである。
【図9】G成分についての入出力の関係を示すグラフである。
【図10】B成分についての入出力の関係を示すグラフである。
【図11】グループ分けおよび補正係数の設定を含む初期設定手順の例を示すフローチャートである。
【図12】各カラーサンプルについての補正前の値を、a*成分およびb*成分による色度分布の座標系にプロットした様子を示すグラフの例(その1)である。
【図13】各カラーサンプルについての補正前の値を、a*成分およびb*成分による色度分布の座標系にプロットした様子を示すグラフの例(その2)である。
【図14】各カラーサンプルについての補正前の値を、a*成分およびb*成分による色度分布の座標系にプロットした様子を示すグラフの例(その3)である。
【図15】境界直線テーブルの一例を示す図である。
【図16】補正係数テーブルの一例を示す図である。
【図17】色補正部の内部構成例を示すブロック図である。
【図18】色補正部における色補正処理手順の例を示すフローチャートである。
【図19】第3の実施の形態に係る画像処理装置のハードウェア構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
〔第1の実施の形態〕
図1は、第1の実施の形態に係る画像処理装置を説明するための図である。
【0014】
図1に示す画像処理装置1は、判定部11、画像補正部12および補正係数記憶部13を備える。判定部11および画像補正部12の処理は、例えば、画像処理装置1が備えるCPU(Central Processing Unit)が所定のプログラムを実行することで実現される。補正係数記憶部13は、例えば、HDD(Hard Disk Drive)などの不揮発性記憶装置として実現される。なお、補正係数記憶部13は、例えば、画像処理装置1の外部に設けられていてもよい。
【0015】
判定部11は、画像処理装置1に入力される入力画像信号の値が、色分布において分割された複数の分割領域のいずれに含まれるかを判定する。ここで、複数の分割領域は、入力画像信号に含まれる色成分ごとに定義されている。判定部11は、入力画像信号の値が複数の分割領域のいずれに含まれるかを、色成分ごとに判定する。
【0016】
例えば、入力画像信号がR(Red)成分、G(Green)成分およびB(Blue)成分を含むものとすると、上記の複数の分割領域は、RGBの各成分について個別に定義される。図1の例では、RGBの各成分について3つずつの分割領域SP1〜SP3が定義されている。
【0017】
また、分割領域は、例えば、所定の表色系における色分布の座標系を分割することで定義される。分割領域が定義される色分布の座標系は、入力画像信号と同じ表色系における座標系であってもよいし、入力画像信号とは異なる表色系における座標系であってもよい。また、分割領域が定義される色分布の座標系は、例えば、色度分布の座標系であってもよい。
【0018】
図1では例として、L*a*b*表色系におけるa*成分とb*成分による座標系20を分割することで、分割領域が定義されている。ここで、座標系20は、入力画像信号に基づくa*成分およびb*成分の各値がとり得る範囲を示す。この例のように、分割領域が定義される色分布の座標系20が、入力画像信号とは異なる表色系における座標系である場合、判定部11は、入力画像信号を、分割領域が定義される色分布の座標系20と同じ表色系の値に変換する。そして、判定部11は、変換後の値がどの分割領域に含まれるかを、入力画像信号に含まれる色成分ごとに判定する。図1の例では、判定部11は、RGB表色系の信号である入力画像信号を、L*a*b*表色系の信号に変換する。そして、判定部11は、変換後の信号成分のうちa*成分およびb*成分の各値がどの分割領域に含まれるかを、RGBの各成分について判定する。
【0019】
図1に示すように、R成分、G成分およびB成分のそれぞれについて、分割領域SP1〜SP3を任意に設定することが可能である。例えば、R成分についての分割領域SP1と、G成分についての分割領域SP1とを、座標系20における異なる領域に設定することができる。
【0020】
なお、図1の例では、RGBの各成分について分割領域が3つずつ定義されたが、各成分に定義される分割領域の数は2以上の任意の数とすることができる。また、RGBの各成分に定義される分割領域の数は同一でなくてもよい。
【0021】
ここで、分割領域をどのような色分布の座標系に定義するかは、例えば、分割領域の設定のしやすさ(例えば、分割領域同士の境界の設定のしやすさ)や、判定部11での判定処理手順の簡単さなどを加味して決定されればよい。例えば、分割領域を入力画像信号とは異なる表色系における座標系に定義することで、判定部11での処理手順を簡易化できる、判定部11での判定処理のために必要な情報量を小さくできる、といった効果が得られる可能性がある。
【0022】
画像補正部12は、入力画像信号に対して補正演算を行い、補正された画像信号を出力する。画像補正部12は、出力画像信号における色成分ごとの出力値を、色成分ごとに個別の補正係数を用いて算出する。また、画像補正部12は、色成分ごとの補正演算に用いる補正係数を、補正係数記憶部13から読み出す。補正係数記憶部13には、色成分ごとかつ分割領域ごとに、補正係数が登録されている。
【0023】
ここで、例として、画像補正部12は演算部12a〜12cを備えるものとする。また、補正係数記憶部13には、RGBの各成分についての補正係数が個別に登録された補正係数テーブル13a〜13cが記録されているものとする。演算部12aは、補正係数テーブル13aから読み出した補正係数を用いて、出力画像信号におけるR成分の値を算出する。演算部12bは、補正係数テーブル13bから読み出した補正係数を用いて、出力画像信号におけるG成分の値を算出する。演算部12cは、補正係数テーブル13cから読み出した補正係数を用いて、出力画像信号におけるB成分の値を算出する。
【0024】
また、補正係数テーブル13aには、R成分について定義された分割領域SP1,SP2,SP3のそれぞれに対応付けて、補正係数C1,C2,C3が登録されている。図示しないが、同様に、補正係数テーブル13bには、G成分について定義された分割領域SP1,SP2,SP3のそれぞれに対応付けて、補正係数C1,C2,C3が登録されている。また、補正係数テーブル13cには、B成分について定義された分割領域SP1,SP2,SP3のそれぞれに対応付けて、補正係数C1,C2,C3が登録されている。
【0025】
補正係数テーブル13a〜13cのそれぞれに対しては、補正係数C1〜C3を任意に設定可能である。また、補正係数テーブル13a〜13cのそれぞれにおいては、複数の分割領域に同一の補正係数が登録されてもよい。換言すれば、RGBの各成分について、1つの補正係数が複数の分割領域(すなわち、座標系20における連続していない領域)に対応付けられてもよい。
【0026】
画像補正部12は、補正係数記憶部13から、判定部11によって入力画像信号の値が含まれると判定された色成分ごとの分割領域にそれぞれ対応する補正係数を読み出す。そして、画像補正部12は、入力画像信号を基に、出力画像信号における色成分ごとの出力値を、補正係数記憶部13から読み出した対応する色成分についての補正係数を用いて算出する。
【0027】
例えば、図1において、判定部11が、R成分について、入力画像信号に基づくa*成分およびb*成分の各値が分割領域SP1に含まれると判定したとする。この場合、画像補正部12の演算部12aは、補正係数テーブル13aから、分割領域SP1に対応付けられた補正係数C1を読み出し、読み出した補正係数C1を用いてR成分の出力値を算出する。また、例えば、判定部11が、G成分について、入力画像信号に基づくa*成分およびb*成分の各値が分割領域SP2に含まれると判定したとする。この場合、画像補正部12の演算部12bは、補正係数テーブル13bから、分割領域SP2に対応付けられた補正係数C2を読み出し、読み出した補正係数C2を用いてG成分の出力値を算出する。
【0028】
以上説明した画像処理装置1によれば、入力画像信号の値に応じた適切な補正係数を用いて、画質を補正できるようになる。このため、補正係数を用いた補正演算による画質補正効果の度合いが、入力画像信号の値によって異なるような場合でも、補正後の画像の画質が向上する確率を高くすることができる。特に、補正演算による画質補正効果の度合い(補正演算によって信号の値がどの程度適正化されるかの度合い)が色成分ごとに異なる場合に、入力画像信号の値に応じて、色成分ごとの効果の度合いが考慮された適切な補正係数を選択できる。このため、補正精度が向上する。
【0029】
例えば、補正演算による画質補正効果の度合いが入力画像信号の値に応じて異なる場合には、入力画像信号の値に応じて異なる補正係数を用いて補正演算を行うことで、補正精度を高めることができる。しかしながら、入力画像信号の値が、色成分間で共通に定義された複数の分割領域のいずれに含まれるかを判定する方法では、補正演算による画質補正効果の度合いが色成分ごとに異なる場合に、高い補正精度を得られない。補正精度をより向上させるためには、分割領域の数を増やし、対応する補正係数の数を増やす必要がある。
【0030】
これに対して、本実施の形態のように、入力画像信号の値が、色成分ごとに定義された複数の分割領域のいずれに含まれるかを判定する方法では、補正演算による画質補正効果の度合いが色成分ごとに異なる場合でも、少ない補正係数を用いて補正精度を高めることができる。例えば、上記のように色成分間で共通の分割領域を定義する方法で、9通りの補正係数を用意した場合と、本実施の形態で、RGBの各成分について3通りずつの補正係数を用意した場合とを比較すると、本実施の形態では、画像補正部12において27通りの補正処理を実行することが可能になる。従って、少ない補正係数を用いて精度の高い補正を行うことができる。
【0031】
〔第2の実施の形態〕
次に、上記の画像処理装置1の処理を、可視領域および赤外領域に感度を有する撮像素子によって得られた画像の色補正に対して用いた撮像装置の例について説明する。
【0032】
図2は、第2の実施の形態に係る撮像装置の構成例を示す図である。
図2に示す撮像装置100は、光学ブロック101、撮像素子102、A/D(Analog/Digital)変換部103、画素補間部104、WB(White Balance)調整部105、色補正部106、γ補正部107、他の画質補正部108、表示/保存処理部109、ディスプレイ110、記録媒体111、切り替え制御部112および入力部113を備える。なお、この撮像装置100は、例えば、一般的な民生用のデジタルスチルカメラとして使用できる他、監視カメラなどの業務用カメラとして使用することもできる。
【0033】
光学ブロック101は、被写体からの光を撮像素子102に集光するためのレンズなどを備える。撮像素子102は、例えば、CCD(Charge Coupled Device)型、CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)型などの固体撮像素子であり、被写体から光学ブロック101を通じて入射した光を電気信号に変換する。この撮像素子102は、可視領域および赤外領域に対して感度を有する。また、光学ブロック101は、撮像素子102に対する赤外光の照射を阻止するための赤外カットフィルタを備えていない。
【0034】
A/D変換部103は、撮像素子102から出力されたアナログ画像信号をデジタル画像信号に変換する。画素補間部104は、A/D変換部103から出力された画像信号を基に画素補間処理を行うことで、各画素についてのRGB各成分の信号を出力する。WB調整部105は、画素補間部104から出力されたRGB各成分の信号に対してゲインをかけることで、ホワイトバランスを調整する。
【0035】
色補正部106は、カラー画像の撮影時に、WB調整部105から出力された画像信号に対して色補正処理を施す。前述のように、光学ブロック101は赤外カットフィルタを備えないので、撮像素子102から得られる画像の色は、人間が見た被写体の印象とは異なるものとなる。色補正部106は、撮像素子102から得られる画像の色が、人間が見た被写体の印象に近づくように、色再現性を改善するものである。
【0036】
本実施の形態では、色補正部106は、マトリクス演算によって色補正処理を行う。WB調整部105から色補正部106に入力される入力画像信号のRGB各成分の値をRin,Gin,Binとし、色補正部106からγ補正部107に出力される出力画像信号のRGB各成分の値をRout,Gout,Boutとすると、色補正部106は、次の式(1)に従ってマトリクス演算を行う。
【0037】
【数1】

【0038】
なお、色補正部106での色補正処理は、切り替え制御部112からの要求に応じてオフにすることができる。色補正処理がオフのとき、色補正部106は、WB調整部105からの入力画像信号をそのままγ補正部107に出力する。
【0039】
γ補正部107は、色補正部106から出力された画像信号に対してγ補正を施す。他の画質補正部108は、γ補正部107から出力された画像信号に対して、例えば彩度の補正などの他の種類の画質補正処理を施す。
【0040】
表示/保存処理部109は、他の画質補正部108から出力された画像信号を表示用信号に変換し、ディスプレイ110に出力する。ディスプレイ110は、例えば、LCD(Liquid Crystal Display)、有機EL(Electroluminescence)ディスプレイなどの表示デバイスであり、表示/保存処理部109から出力された表示用信号を基に画像を表示する。
【0041】
また、表示/保存処理部109は、他の画質補正部108から出力された画像信号を、JPEG(Joint Photographic Experts Group)方式などの所定の圧縮方式によって圧縮符号化し、符号化された画像データを記録媒体111に記録する。記録媒体111は、例えば、フラッシュメモリ、HDDなどの不揮発性記録媒体である。なお、表示/保存処理部109は、例えば、他の画質補正部108から出力された画像信号を、非圧縮のRAWデータとして記録媒体111に記録してもよい。
【0042】
切り替え制御部112は、入力部113から出力される選択信号に応じて、色補正部106における色補正処理のオン/オフを切り替える。切り替え制御部112は、カラー画像の撮影時には、色補正部106での色補正処理をオンにし、暗視撮影などの高感度撮影時には、色補正部106での色補正処理をオフにする。入力部113は、ユーザの入力操作に応じた選択信号を切り替え制御部112に供給する。
【0043】
なお、実際には、入力部113によって高感度撮影を行うように設定された場合、撮像装置100の内部では、例えば、他の画質補正部108などの処理によって、撮像によって得られた画像を白黒画像などの任意の2色の画像に変換する処理が行われる。
【0044】
次に、色補正部106の処理について説明する。まず、色補正部106での処理手順を説明する前に、他の色補正方法(第1,第2の色補正方法)の手順とその問題点について述べる。
【0045】
<第1,第2の色補正方法>
図3は、撮像素子の分光感度特性の例を示すグラフである。
本実施の形態で使用される撮像素子102は、図3の例のように、可視領域および赤外領域に対する感度を有する。人間が視認できない赤外領域に対しても感度を有することから、撮像素子102の分光感度特性は、人間の錐体感度特性とは大きく異なる。このため、このような撮像素子102を用いてカラー画像を撮影する場合には、撮像によって得られた画像の分光反射率特性が人間の錐体感度特性に近づくようにする仕組みが必要となる。一般的に、このような仕組みとしては、撮像素子の光路上に赤外カットフィルタを配置する方法と、赤外カットフィルタを用いずに、撮像素子によって得られた画像信号に対して信号処理を施す方法とがある。本実施の形態の色補正部106は、後者の方法により色補正を行うものである。
【0046】
信号処理による色補正方法の例としては、マトリクス係数を用いた信号処理を行う方法(以下、「第1の色補正方法」と呼ぶ)がある。前述の「非特許文献1」にも、この第1の色補正方法の一例が記載されている。この第1の色補正方法は、入力画像信号に関係なく、単一のマトリクス係数を用いて色補正を行うものである。しかしながら、この第1の色補正方法には、「非特許文献1」にも記載があるように、撮影対象の色によって色補正による効果の度合いが異なり、色によっては画質が悪化してしまう場合もあるという問題がある。
【0047】
図4は、マクベスカラーチェッカの各色についての分光反射率特性の例を示すグラフである。
図3のように赤外領域に感度を有する撮像素子102は、撮影対象の色についての可視領域の反射率に対する赤外領域の反射率が高くなるほど、多くの赤外領域のスペクトルを検知する。赤外領域のスペクトルが高くなるほど、得られる画像の信号におけるRGBの各成分の強度差が小さくなるので、得られる画像は無彩色に近い画像となる。また、撮影対象の色によって分光反射率特性が異なることから、各撮影対象色を赤外カットフィルタを用いずに撮像素子102で撮影したとき、得られる画像の色はどの撮影対象色についても無彩色に近づくことにはなるが、その近づき方は色によって異なる。
【0048】
例として、マクベスカラーチェッカにおける24色のカラーサンプルを、赤外カットフィルタを用いずに撮影した場合、得られる画像の色の無彩色への近づき方はカラーサンプルごとに異なる。この理由は、図4に示すように、カラーサンプルごとに赤外領域での分光反射率特性が異なるからである。
【0049】
上記の第1の色補正方法では、このような色ごとの赤外領域の反射率特性の違いが一因となって、撮影対象の色によって色補正の効果の度合いが異なってしまう。その結果、総合的に高い色補正精度を得ることができない。
【0050】
このような問題点を解決する方法の一例として、撮影対象の色ごとに異なるマトリクス係数を用いて色補正を行う方法(以下、「第2の色補正方法」と呼ぶ)が考えられる。この第2の色補正方法によれば、撮影対象の色を細かく分類するほど、高い色補正精度を期待できる。逆に言うと、色補正精度を高くするためには、撮影対象の色を細かく分類する必要があるため、処理効率が低くなる、色の分類のために撮像装置に記録しておくべき情報量が多くなるといった問題がある。
【0051】
さらに、図4の分光反射率特性によれば、可視領域での分光反射率特性が似ているカラーサンプル同士でも、赤外領域での分光反射率特性が大きく異なる場合がある。例えば、ブルー、シアン、パープルなどの青色系のカラーサンプルは、可視領域での分光反射率特性が類似しているとともに、可視領域での分光反射率と比較して、赤外領域での分光反射率が大きい。このため、これらの青色系カラーサンプルについての赤外領域での分光反射率の違いが、赤外カットフィルタを用いない撮影によって得られた画像の色に与える影響が大きくなり、その結果、無彩色への近づき方がカラーサンプルごとに大きく異なってしまう。
【0052】
このことは、第2の色補正方法において、人間が見た色味の近い色に同じマトリクス係数を適用した場合、色再現性の向上効果には限度があることを意味する。また、高い色再現性効果を得ようとすると、青系などの同じ系統の色についてもさらに細かく分類し、分類した色ごとに個別のマトリクス係数を適用する必要が生じる。
【0053】
<本実施の形態での補正対象色のグループ分け方法>
第2の色補正方法における上記問題点を解決するために、撮影対象の色の分類をRGBの色成分ごとに変える方法を考える。一例として、以下の図5〜図7を用いて、青色系のカラーサンプルを撮影した場合の解析結果について説明する。
【0054】
図5は、撮像素子における色成分ごとの分光感度特性の例を示す。
図5の左図は、入射光路上に赤外カットフィルタを配置しない場合の撮像素子102の分光感度特性の例を示す。図5の左図に示すように、入射光路上に赤外カットフィルタを配置しない場合、撮像素子102は、RGBの各成分ともに、赤外領域にも感度を有する。一方、図5の右図は、入射光路上に赤外カットフィルタを配置した場合の撮像素子102の分光感度特性の例を示す。図5の右図によれば、入射光路上に赤外カットフィルタを配置することで、RGBの各成分ともに、赤外領域における感度がほぼ0に低下することがわかる。
【0055】
図6は、撮影対象とする青色系カラーサンプルの分光反射率特性の例を示す。
図6に示すように、撮影対象とする青色系カラーサンプルは、緑色系や赤色系に属する波長領域と比較して、青色系に属する波長領域および赤外領域における反射率が大きい。この図6のような特性を有するカラーサンプルを、図5のような特性を有する撮像素子102で撮影したときに得られる画像信号のRGB値は、図5の分光感度と図6の分光反射率とを色成分ごとに掛け合わせて積分することによって得られる。
【0056】
赤外カットフィルタを使用せずに撮影したときに得られる画像信号のRGB値(「第1のRGB値」と呼ぶ)は、R=0.75,G=0.75,B=1となる。なお、この第1のRGB値は、赤外カットフィルタを使用せずに撮像素子102で白色を撮影した場合の値によって規格化したものである。一方、赤外カットフィルタを使用して撮影したときに得られる画像信号のRGB値(「第2のRGB値」と呼ぶ)は、R=0.5,G=0.5,B=1となる。なお、この第2のRGB値は、赤外カットフィルタを使用して撮像素子102で白色を撮影した場合の値によって規格化したものである。
【0057】
図7は、色成分ごとの入出力の関係を示すグラフである。
上記の第1のRGB値は、色補正部106に対する入力画像信号(すなわち、補正前の画像信号)のRGB値に対応すると考えることができる。一方、第2のRGB値は、色補正部106からの出力画像信号の目標値(補正後の目標値)と考えることができる。そこで、図7は、第1のRGB値を入力、第2のRGB値を出力としたときの入出力の関係を、色成分ごとにグラフ化したものである。
【0058】
図7の右図に示すように、B成分の値は補正前の値と目標値とで変化しない。これに対して、図7の左図および中央図に示すように、R成分、G成分の各値は、補正前の値より目標値の方がともに小さい。
【0059】
ここで、撮影対象とするカラーサンプルを、補正前の値と目標値との関係から、色成分ごとに分類することを考える。ここでは例として、図7に示すように、RGBの各色成分について3通りに分類する。R成分についてはグループR1〜R3を定義し、G成分についてはグループG1〜G3を定義し、B成分についてはグループB1〜B3を定義する。
【0060】
グループR1〜R3は、例えば、R成分の入出力関係を示すグラフ上の直線によって区分けされる。グループR1には、R成分についての補正前の値と目標値とがほぼ等しくなるようなカラーサンプルが分類される。一方、グループR3には、R成分についての補正前の値と比較して目標値が極端に小さくなるようなカラーサンプルが分類される。グループR2には、グループR1に分類されるカラーサンプルと、グループR3に分類されるカラーサンプルとの中間的な特性を有するカラーサンプルが分類される。
【0061】
G成分についてのグループG1〜G3の関係は、グループR1〜R3の関係とほぼ同様である。グループG1〜G3は、例えば、G成分の入出力関係を示すグラフ上の直線によって区分けされる。B成分についてのグループB1〜B3の関係も、グループR1〜R3の関係とほぼ同様である。グループB1〜B3は、例えば、B成分の入出力関係を示すグラフ上の直線によって区分けされる。
【0062】
図6のような特性を有する青色系カラーサンプルは、図7に示すように、R成分についてはグループR2に分類され、G成分についてはグループG2に分類され、B成分についてはグループB1に分類される。ここで、同じグループに分類されるカラーサンプルについては、同じ補正係数を用いて補正演算を行うことで、補正精度が向上すると考えられる。
【0063】
図6のような特性を有するカラーサンプルを撮影した場合には、R成分の出力値の算出には、グループR2に対応するR成分用の補正係数(式(1)のマトリクス係数の第1行目成分に対応)を使用し、G成分の出力値の算出には、グループG2に対応するG成分用の補正係数(式(1)のマトリクス係数の第2行目成分に対応)を使用し、B成分の出力値の算出には、グループB1に対応するB成分用の補正係数(式(1)のマトリクス係数の第3行目成分に対応)を使用することで、良好な補正効果が得られると考えられる。
【0064】
ここで、入出力の関係が類似するグループに属するR成分およびG成分の補正係数は、互いに近い値になると考えられる。これに対して、入出力の関係がR成分およびG成分と異なるB成分用の補正係数は、R成分用およびG成分用の補正係数とは大きく異なる値になると考えられる。
【0065】
以上の解析結果に鑑みて、マクベスカラーチェッカの24色について、上記と同様に補正前の値と目標値との値の関係を色成分別にグラフ化した結果を示す。図8は、R成分についての入出力の関係を示すグラフである。図9は、G成分についての入出力の関係を示すグラフである。図10は、B成分についての入出力の関係を示すグラフである。
【0066】
図8〜図10では、例として、24色のカラーサンプルを、色成分ごとに2本の境界直線によって3グループに分類する。図8では、グループR1,R2の境界は直線Lr1によって区切られ,グループR2,R3の境界は直線Lr2によって区切られている。図9では、グループG1,G2の境界は直線Lg1によって区切られ,グループG2,G3の境界は直線Lg2によって区切られている。図10では、グループB1,B2の境界は直線Lb1によって区切られ,グループB2,B3の境界は直線Lb2によって区切られている。
【0067】
図8〜図10によれば、青色系のカラーサンプルは、R成分についてはグループR3に近い側に、G成分についてはグループG3に近い側に、B成分についてはグループB1に近い側に、概ね分類されることがわかる。一方、赤色系のカラーサンプルについては、R成分についてはグループR1に近い側に、G成分についてはグループG3に近い側に、B成分についてはグループB3に近い側に、概ね分類されることがわかる。また、緑色系のカラーサンプルについても赤色系と同様に、R成分についてはグループR1に近い側に、G成分についてはグループG3に近い側に、B成分についてはグループB3に近い側に、概ね分類されることがわかる。
【0068】
このように、青色系のカラーサンプルと、赤色系および緑色系のカラーサンプルとは、補正前の値と目標値との関係が色成分ごとに異なる。このことから、前述の第2の色補正方法のように色ごとに異なるマトリクス係数を用いる方法と比較して、色成分ごとに定義されたグループに応じた補正係数(マトリクス係数の行成分)を用いて補正演算を行う方法の方が、補正精度を向上させることができる。
【0069】
本実施の形態では、各色成分についての入出力関係のグラフから、2つの境界直線(例えば、R成分についての直線Lr1,Lr2)を用いてカラーサンプルを3つのグループに分類する。この分類処理においては、グループごとに個別の補正係数を用いて補正演算を行ったときに、同一グループに属する各カラーサンプルについての補正後の色成分ごとの出力値と、それらの各カラーサンプルに対応する目標色における色成分ごとの出力値との差分が一定範囲に収まるように、各カラーサンプルを色成分ごとにグループ化する。
【0070】
例えば、R成分については、グループR1に属する各カラーサンプルについてグループR1用の補正係数を用いて補正演算を行ったときに、これらの各カラーサンプルについての補正後のR成分の値と、これらの各カラーサンプルに対応するR成分の目標値との差分が一定範囲に収まるように、グループR1,R2との境界である直線Lr1を設定する。なお、この場合のグループR1用の補正係数は、例えば、グループR1に属する各カラーサンプルについての補正前のRGB各成分の値と、これらの各カラーサンプルについてのR成分の目標値とから、最小二乗法によって計算される。
【0071】
ところで、図8〜図10によれば、赤色系、緑色系、青色系のように、同種の色味のカラーサンプル同士で、色成分ごとに属するグループが3種類のうちの同じグループになるとは、必ずしも言えない。ここで、図8〜図10には例として、青色系の5つのカラーサンプル(Blue Sky,Purple Blue,Purple,Blue,Cyan)についてのグラフ上の位置を、丸印によって示している。
【0072】
例えば、図8に示すR成分については、これら5つのカラーサンプルは2つのグループR2,R3に跨って分布し、図9に示すG成分についても、これら5つのカラーサンプルは2つのグループG2,G3に跨って分布する。また、図10に示すB成分に至っては、これら5つのカラーサンプルは3つのグループB1〜B3に跨って分布する。このような状況では、例えば、青色系の5つのカラーサンプルを同じグループに分類して、色成分ごとに同じ補正係数を用いて補正演算を行った場合、カラーサンプルごとに補正後の値と目標値との誤差が大きく異なってしまい、高い補正精度が得られない。
【0073】
この例のように、赤色系、緑色系、青色系など、人間が見た色味によってカラーサンプルを分類してしまうと、十分な補正精度を得ることができない。前述した第2の色補正方法のように、補正対象の色ごとに個別のマトリクス係数を用いて色補正を行った場合に、高い色補正精度が得られない理由も、上記のように補正対象の色と補正後の目標値との関係が複雑であることが一因と考えられる。
【0074】
これに対して、本実施の形態では、人間が見た色味に関係なく、補正後の値が目標値に近くなるようなカラーサンプルを同じグループに分類するようにすることで、補正精度を向上させることができる。
【0075】
また、色成分ごとにグループの分類が行われて、それらのグループごとに補正係数が設定されるので、最終的に色補正に使用されるマトリクス係数のパターン数は、各色成分のグループ数を掛け合わせた数になる。例えば、RGBの各成分について3つのグループを定義した場合、色補正の演算には27通りのマトリクス係数を使用可能になる。このため、上記のように補正対象の色と補正後の目標値との関係が複雑であるにもかかわらず、あらかじめ用意しておく補正係数の数を少なくすることができる。
【0076】
図11は、グループ分けおよび補正係数の設定を含む初期設定手順の例を示すフローチャートである。この図11の処理は、撮像装置100の開発工程または製造工程において実行される。なお、ここでは例として、図11に示す処理は図示しないコンピュータによって実行されるものとする。
【0077】
[ステップS11]コンピュータを操作する操作者は、複数のカラーサンプル(例えば、前述したマクベスカラーチェッカの24色)のそれぞれについて、補正前のRGBの各値と、補正後のRGBの各目標値とを、コンピュータに設定する。ここで、補正前のRGBの値は、撮像装置100の撮像素子102と同様の仕様を有する撮像素子を用いて、各カラーサンプルを赤外カットフィルタを用いずに撮影することで得られる。一方、補正後のRGBの目標値は、同じ撮像素子を用いて、各カラーサンプルを赤外カットフィルタを用いて撮影することで得られる。
【0078】
[ステップS12]コンピュータは、ステップS13〜S17の処理をR成分、G成分およびB成分のそれぞれについて実行する。
[ステップS13]コンピュータは、処理対象の色成分についての入力(補正前の値)と出力(補正後の目標値)との関係を示すグラフ上に、2つの境界直線を設定する。これら2つの境界直線は、ともに正の傾きを有するとともに、入出力平面上で互いに交差しないように設定される。コンピュータは、設定した2つの境界直線によって、複数のカラーサンプルを3つのグループに分類する。例えば、処理対象がR成分の場合、コンピュータは、図8に示した直線Lr1,Lr2を任意に設定し、直線Lr1,Lr2を境界として、24色のカラーサンプルをグループR1〜R3のいずれかに分類する。
【0079】
[ステップS14]コンピュータは、ステップS13で設定したグループごとにそれぞれ補正係数を計算する。
ここで、1つのグループにn個(ただし、nは1以上の整数)のカラーサンプルが属するものとし、マトリクス係数は次の式(2)を基に求められる。
【0080】
【数2】

【0081】
式(2)において、Rin_1,Rin_2,・・・,Rin_nは、各カラーサンプルの補正前のR成分の値を示し、Gin_1,Gin_2,・・・,Gin_nは、各カラーサンプルの補正前のG成分の値を示し、Bin_1,Bin_2,・・・,Bin_nは、各カラーサンプルの補正前のB成分の値を示す。また、Rout_1,Rout_2,・・・,Rout_nは、各カラーサンプルの補正後のR成分の目標値を示し、Gout_1,Gout_2,・・・,Gout_nは、各カラーサンプルの補正後のG成分の目標値を示し、Bout_1,Bout_2,・・・,Bout_nは、各カラーサンプルの補正後のB成分の目標値を示す。
【0082】
ステップS14では、コンピュータは、グループごとに、グループに属するカラーサンプルについての補正前の値と補正後の目標値とを式(2)に代入し、グループごとのマトリクス係数を最小二乗法によって計算する。R成分が処理対象である場合、R成分の各グループの補正係数は、算出されたマトリクス係数における第1行目成分(αr,αg,αb)となる。また、G成分が処理対象である場合、G成分の各グループの補正係数は、算出されたマトリクス係数における第2行目成分(βr,βg,βb)となる。また、B成分が処理対象である場合、B成分の各グループの補正係数は、算出されたマトリクス係数における第3行目成分(γr,γg,γb)となる。
【0083】
[ステップS15]コンピュータは、ステップS14で算出した補正係数をグループごとに式(2)に適用することにより、各カラーサンプルについての補正後の色成分の値を算出する。
【0084】
[ステップS16]コンピュータは、カラーサンプルごとに、ステップS15で算出された補正後の色成分の値と、補正後の目標値との差分を計算する。コンピュータは、すべてのカラーサンプルについての差分があらかじめ決められたしきい値以内であるかを判定する。すべての差分がしきい値以内の場合、処理対象の色成分についてのループ内の処理が終了する。一方、差分がしきい値を超えるカラーサンプルが存在する場合、ステップS17の処理が実行される。
【0085】
[ステップS17]コンピュータは、処理対象の色成分についての2つの境界直線のうち少なくとも一方を変更して、カラーサンプルのグループ分けを再度実行する。この後、ステップS14の処理が実行される。すなわち、1つの色成分についてのループ内の処理では、3つのグループのそれぞれについての補正係数を用いて補正演算を行ったときに、すべてのカラーサンプルについて補正後の値と目標値との差分が一定値以内に収まるようになるまで、境界直線の設定およびグループ分けが繰り返し実行される。
【0086】
なお、以上の処理では、境界直線を用いてカラーサンプルのグループ分けを行うことで、グループ分けの処理を単純化した。しかしながら、グループの境界は必ずしも直線でなくてもよく、例えば曲線によってグループを区分してもよい。グループの境界を直線以外のものにすることで、すべてのカラーサンプルについての補正後の値と目標値との差分を、より小さくできる可能性がある。
【0087】
[ステップS18]コンピュータは、色成分ごとのグループ分けを示す情報と、グループごとの補正係数とを、撮像装置100に設定する情報として生成する。
ここで、グループ分けを示す情報とは、撮像装置100の色補正部106が入力画像信号を基に所属グループの判定を行う際に必要になる情報である。ステップS18では、例えば、ステップS11〜S17で利用した各カラーサンプルを、所属グループの判定に利用する色分布の座標系(以下、「判定用座標系」と呼ぶ)にプロットする。そして、判定用座標系におけるあるカラーサンプルの位置を含む領域を、分割領域としてそのカラーサンプルと同じグループに対応付ける。これにより、色補正部106に対する入力画像信号の値を上記の判定用座標系に投影した際に、その入力画像信号がどのグループに属するかを判定できるようになる。
【0088】
判定用座標系としては、例えば、RGB空間におけるR成分、G成分およびB成分の分布などを示す3次元以上の座標系や、L*a*b*空間あるいはYUV空間における色度分布などを示す2次元座標系が考えられる。ここで、判定用座標系としてRGB3次元空間を使用した場合、色補正部106は、入力画像信号の色空間(表色系)の変換を行わずにグループ判定を行うことができる。
【0089】
一方、判定用座標系として2次元座標系を使用した場合には、判定用座標系における分割領域の境界の設定が簡単になる。例えば、色成分ごとに設定される分割領域の境界を、直線、曲線、円などの簡単な数式で表される境界線によって設定できるようになる。また、以下で説明するように、判定用座標系としてL*a*b*空間におけるa*成分とb*成分による座標系を使用することで、色成分ごとに設定される分割領域の数(すなわち、同じ補正係数に対応付けられる分割領域の数)を少なくすることができる。この場合、所属グループ判定のために撮像装置100に設定しておくべき情報の量を少なくすることができるとともに、判定処理手順を簡略化できる。
【0090】
図12〜図14は、各カラーサンプルについての補正前の値を、a*成分およびb*成分による色度分布の座標系にプロットした様子を示すグラフの例である。
なお、図12は、図8のようにカラーサンプルが分類された場合を示し、図13は、図9のようにカラーサンプルが分類された場合を示し、図14は、図10のようにカラーサンプルが分類された場合を示す。図12〜図14では、座標系における各カラーサンプルの位置は同じであるが、各カラーサンプルがどのグループに属しているかが異なる。すなわち、図12〜図14では、グループを分類するための境界直線の配置のされ方が異なっている。
【0091】
図12によれば、R成分に関し、座標系上の直線Lr1’,Lr2’を境界として、各カラーサンプルを概ね図8のように分類することが可能となる。また、図13によれば、G成分に関し、座標系上の直線Lg1’,Lg2’を境界として、各カラーサンプルを概ね図9のように分類することが可能となる。また、図14によれば、B成分に関し、座標系上の直線Lb1’,Lb2’を境界として、各カラーサンプルを概ね図10のように分類することが可能となる。
【0092】
このようにL*a*b*空間に変換する方法を採用した場合、撮像装置100は、例えば次の図15,図16に示すような情報を保持すればよい。
図15は、境界直線テーブルの一例を示す図である。
【0093】
撮像装置100は、グループ分けを示す情報として、例えば図15のような、色度分布の座標系における境界直線を示す情報を保持すればよい。図15の境界直線テーブル200では、RGBの各成分について、グループ1とグループ2との境界をなす境界直線1の数式と、グループ2とグループ3との境界をなす境界直線2の数式とが登録される。例えば、R成分については、グループR1,R2の境界をなす図12の直線Lr1’の数式と、グループR2,R3の境界をなす図12の直線Lr2’の数式とが登録される。
【0094】
図11のステップS18では、コンピュータは例えば、各カラーサンプルについての補正前の値についての、色度分布の座標系上の位置から、色成分ごとの境界直線を設定し、設定した境界直線の数式を登録した境界直線テーブル200を生成する。
【0095】
なお、図15の例では、同一色成分についての境界直線1,2では傾きの値を共通にすることで、色補正部106でのグループ判定処理が簡略化されるようにした。しかしながら、同一色成分についての境界直線1,2の傾きは、座標系上で各直線が交差しない範囲で任意に設定されてもよい。
【0096】
また、撮像装置100が保持するグループ分けを示す情報の他の例としては、上記各境界直線によって区分される座標系上の座標の値が、グループごとに対応付けられたテーブルなどが考えられる。
【0097】
図16は、補正係数テーブルの一例を示す図である。なお、この補正係数テーブル211〜213は、色補正部106がどのような色空間上でグループ判定を行う場合でも、共通に使用されるものである。
【0098】
補正係数テーブル211には、R成分のグループ分け処理の結果、グループごとに算出された補正係数が登録される。これらの補正係数は、図11でのR成分のグループ分け処理において、ステップS16で条件が満たされたときにステップS14で算出されていた、各グループについてのマトリクス係数の第1行目成分(αr,αg,αb)である。
【0099】
補正係数テーブル212には、G成分のグループ分け処理の結果、グループごとに算出された補正係数が登録される。これらの補正係数は、図11でのG成分のグループ分け処理において、ステップS16で条件が満たされたときにステップS14で算出されていた、各グループについてのマトリクス係数の第2行目成分(βr,βg,βb)である。
【0100】
補正係数テーブル213には、B成分のグループ分け処理の結果、グループごとに算出された補正係数が登録される。これらの補正係数は、図11でのB成分のグループ分け処理において、ステップS16で条件が満たされたときにステップS14で算出されていた、各グループについてのマトリクス係数の第3行目成分(γr,γg,γb)である。
【0101】
図11のステップS18では、コンピュータは例えば、色成分ごとのグループ分け処理によってグループごとに算出された補正係数を、補正係数テーブル211〜213に登録する。
【0102】
なお、以上の図12〜図16の説明では、色度分布の座標系における分割領域の境界線を直線としたが、例えば、境界線を曲線や円としてもよい。境界線を円にする場合には、例えば、色度分布の座標系の所定位置を中心とする、互いに半径が異なる複数の境界円を設定する。例えば2つの境界円を設定したものとすると、内側の境界円の内部を第1のグループに対応付け、内側の境界円と外側の境界円との間の領域を第2のグループに対応付け、外側の境界円の外部を第3のグループに対応付ける。
【0103】
<実施の形態での色補正処理>
次に、撮像装置100が実行する色補正処理について説明する。図17は、色補正部の内部構成例を示すブロック図である。
【0104】
色補正部106は、色空間変換部121、グループ判定部122、信号遅延部123およびマトリクス演算部124を備える。また、撮像装置100は不揮発性メモリ130を備え、不揮発性メモリ130には、前述した境界直線テーブル200および補正係数テーブル211〜213が記憶されている。色補正部106は、不揮発性メモリ130内の各テーブルを参照する。
【0105】
色空間変換部121は、WB調整部105から色補正部106に入力された入力画像信号におけるRGB各成分の値(Rin,Gin,Bin)を、L*a*b*空間の値に変換する。色空間変換部121は、変換によって得られたa*成分およびb*成分の各値をグループ判定部122に出力する。
【0106】
グループ判定部122は、境界直線テーブル200を参照して、色空間変換部121から出力されたa*成分およびb*成分の各値を基に、入力画像信号が属するグループを色成分ごとに判定する。グループ判定部122は、境界直線テーブル200においてR成分に対応付けられた2つの数式を基に、R成分についてのグループを判定する。また、グループ判定部122は、境界直線テーブル200においてG成分に対応付けられた2つの数式を基に、G成分についてのグループを判定する。また、グループ判定部122は、境界直線テーブル200においてB成分に対応付けられた2つの数式を基に、B成分についてのグループを判定する。
【0107】
グループ判定部122は、R成分について判定されたグループに対応付けられた補正係数を、補正係数テーブル211からマトリクス演算部124に出力させる。また、グループ判定部122は、G成分について判定されたグループに対応付けられた補正係数を、補正係数テーブル212からマトリクス演算部124に出力させる。また、グループ判定部122は、B成分について判定されたグループに対応付けられた補正係数を、補正係数テーブル213からマトリクス演算部124に出力させる。
【0108】
信号遅延部123は、色補正部106に入力された入力画像信号を、色空間変換部121およびグループ判定部122での処理時間の分だけ遅延させて、マトリクス演算部124に出力する。これにより、グループ判定部122の処理によって補正係数テーブル211〜213からマトリクス演算部124に出力される補正係数と、それらの補正係数を適用すべき画素とが一致する。
【0109】
マトリクス演算部124は、信号遅延部123から出力された画像信号におけるRGB各成分の値を基に、前述した式(1)に従ってマトリクス演算を実行する。マトリクス演算部124は、マトリクス演算の際に、補正係数テーブル211,212,213から出力された補正係数をそれぞれ第1行目成分、第2行目成分、第3行目成分として設定したマトリクス係数を使用する。
【0110】
マトリクス演算部124は、例えば、R成分演算部124a、G成分演算部124bおよびB成分演算部124cを備える。R成分演算部124aは、補正係数テーブル211から出力された補正係数(αr,αg,αb)を用いて、Rout=αr・Rin+αg・Gin+αb・Binの演算を行う。G成分演算部124bは、補正係数テーブル212から出力された補正係数(βr,βg,βb)を用いて、Gout=βr・Rin+βg・Gin+βb・Binの演算を行う。B成分演算部124cは、補正係数テーブル213から出力された補正係数(γr,γg,γb)を用いて、Bout=γr・Rin+γg・Gin+γb・Binの演算を行う。
【0111】
図18は、色補正部における色補正処理手順の例を示すフローチャートである。この図18は、色補正部106に入力される1画素分の入力された入力画像信号についての処理を示す。
【0112】
[ステップS21]色空間変換部121は、入力画像信号におけるRGB各成分の値(Rin,Gin,Bin)を、L*a*b*空間の値に変換する。
[ステップS22]グループ判定部122は、境界直線テーブル200に登録された境界直線と、色空間変換部121から出力されたa*成分およびb*成分の各値とを基に、入力画像信号が属するグループを色成分ごとに判定する。
【0113】
グループ判定部122は、境界直線テーブル200においてR成分に対応付けられた2つの数式を基に、R成分についてのグループを例えば次の手順で判定する。
グループ判定部122は、色空間変換部121から出力されたa*成分の値を、R成分についての境界直線1のxに代入して、yの値を算出する。グループ判定部122は、色空間変換部121から出力されたb*成分の値が、算出されたyの値より大きい場合、入力画像信号はグループR1に属すると判定する。
【0114】
一方、グループ判定部122は、b*成分の値がyの値以下である場合、a*成分の値を、R成分についての境界直線2のxに代入して、yの値を算出する。グループ判定部122は、b*成分の値が、算出されたyの値より大きい場合、入力画像信号はグループR2に属すると判定する。一方、グループ判定部122は、b*成分の値がyの値以下である場合、入力画像信号はグループR3に属すると判定する。
【0115】
また、グループ判定部122は、境界直線テーブル200においてG成分に対応付けられた2つの数式を基に、R成分の場合と同様の手順でG成分についてのグループを判定する。また、グループ判定部122は、境界直線テーブル200においてB成分に対応付けられた2つの数式を基に、R成分の場合と同様の手順でB成分についてのグループを判定する。
【0116】
[ステップS23]グループ判定部122の制御により、R成分について判定されたグループに対応付けられた補正係数が、補正係数テーブル211からマトリクス演算部124に読み出される。また、グループ判定部122の制御により、G成分について判定されたグループに対応付けられた補正係数が、補正係数テーブル212からマトリクス演算部124に読み出される。また、グループ判定部122の制御により、B成分について判定されたグループに対応付けられた補正係数が、補正係数テーブル213からマトリクス演算部124に読み出される。
【0117】
[ステップS24]マトリクス演算部124のR成分演算部124a、G成分演算部124bおよびB成分演算部124cは、ステップS21で変換対象とした入力画像信号のRGB各成分の値(Rin,Gin,Bin)を基に、補正係数テーブル211,212,213からそれぞれ出力された補正係数を用いて、R成分の出力値Rout、G成分の出力値GoutおよびB成分の出力値Boutを演算する。これにより、マトリクス演算部124から、補正後の画像信号が出力される。
【0118】
以上説明した第2の実施の形態では、赤外カットフィルタを使用せずに撮影された画像信号を基に、色再現性の高いカラー画像を生成することができる。また、色補正に使用される補正係数が色成分ごとに複数用意されることで、色成分ごとに用意された補正係数の数を色成分の数だけ掛け合わせたパターン数のマトリクス係数が生成される。これにより、撮像装置100内の不揮発性メモリ130にあらかじめ記憶しておく補正係数のデータ量を少なくすることができ、撮像装置100の製造コストや回路規模を抑制することができる。
【0119】
〔第3の実施の形態〕
第2の実施の形態における色補正部106の処理は、撮像装置の外部に存在する画像処理装置において実現することもできる。また、この画像処理装置の処理は、1つまたは複数の半導体装置によって実現することもできる。
【0120】
ここでは、第3の実施の形態として、色補正部106の処理を実行する画像処理装置の一例について説明する。図19は、第3の実施の形態に係る画像処理装置のハードウェア構成を示す図である。第3の実施の形態に係る画像処理装置300は、図19に示すようなコンピュータとして実現可能である。
【0121】
画像処理装置300は、CPU301によって装置全体が制御されている。CPU301には、バス308を介して、RAM(Random Access Memory)302と複数の周辺機器が接続されている。
【0122】
RAM302は、画像処理装置300の主記憶装置として使用される。RAM302には、CPU301に実行させるOS(Operating System)プログラムやアプリケーションプログラムの少なくとも一部が一時的に格納される。また、RAM302には、CPU301による処理に必要な各種データが格納される。
【0123】
バス308に接続されている周辺機器としては、HDD(Hard Disk Drive)303、グラフィック処理装置304、入力インタフェース(I/F)305、光学ドライブ装置306および通信インタフェース307がある。
【0124】
HDD303は、内蔵した磁気ディスクに対して、磁気的にデータの書き込みおよび読み出しを行う。HDD303は、画像処理装置300の二次記憶装置として使用される。HDD303には、OSプログラム、アプリケーションプログラム、および各種データが格納される。なお、二次記憶装置としては、フラッシュメモリなどの半導体記憶装置を使用することもできる。
【0125】
グラフィック処理装置304には、モニタ304aが接続されている。グラフィック処理装置304は、CPU301からの命令に従って、画像をモニタ304aに表示させる。なお、モニタ304aは、例えば、液晶ディスプレイである。
【0126】
入力インタフェース305には、例えば、キーボード305aおよびマウス305bが接続されている。入力インタフェース305は、キーボード305aやマウス305bからの出力信号をCPU301に送信する。なお、マウス305bは、ポインティングデバイスの一例であり、他のポインティングデバイスを使用することもできる。他のポインティングデバイスとしては、タッチパネル、タブレット、タッチパッド、トラックボールなどがある。
【0127】
光学ドライブ装置306は、レーザ光などを利用して、光ディスク306aに記録されたデータの読み取りを行う。光ディスク306aは、光の反射によって読み取り可能なようにデータが記録された可搬型の記録媒体である。光ディスク306aには、DVD(Digital Versatile Disc)、DVD−RAM、CD−ROM(Compact Disc Read Only Memory)、CD−R(Recordable)/RW(Rewritable)などがある。
【0128】
通信インタフェース307は、ネットワーク310に接続されている。通信インタフェース307は、ネットワーク310を通じて他の機器との間で通信する。
ここで、第2の実施の形態の色補正部106の処理は、例えば、CPU301が所定のプログラムを実行することによって実現される。また、色補正部106の処理の少なくとも一部が、グラフィック処理装置304内の回路などの専用の回路によって実現されてもよい。
【0129】
以上の画像処理装置300によれば、赤外カットフィルタを使用せずに撮影されて得られた画像信号を、光ディスク306aなどの可搬型記録媒体やネットワーク310などを通じて受信する。そして、受信した画像信号に対して色補正部106と同様の処理を実行することで、色再現性の高いカラー画像を生成することができる。
【0130】
なお、上記の各実施の形態に示した装置の処理機能は、コンピュータによって実現することができる。その場合、上記各装置が有すべき機能の処理内容を記述したプログラムが提供され、そのプログラムをコンピュータで実行することにより、上記処理機能がコンピュータ上で実現される。処理内容を記述したプログラムは、コンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録しておくことができる。コンピュータで読み取り可能な記録媒体としては、磁気記憶装置、光ディスク、光磁気記録媒体、半導体メモリなどがある。磁気記憶装置には、ハードディスク装置(HDD)、フレキシブルディスク(FD)、磁気テープなどがある。光ディスクには、DVD、DVD−RAM、CD−ROM、CD−R/RWなどがある。光磁気記録媒体には、MO(Magneto-Optical disk)などがある。
【0131】
プログラムを流通させる場合には、例えば、そのプログラムが記録されたDVD、CD−ROMなどの可搬型記録媒体が販売される。また、プログラムをサーバコンピュータの記憶装置に格納しておき、ネットワークを介して、サーバコンピュータから他のコンピュータにそのプログラムを転送することもできる。
【0132】
プログラムを実行するコンピュータは、例えば、可搬型記録媒体に記録されたプログラムまたはサーバコンピュータから転送されたプログラムを、自己の記憶装置に格納する。そして、コンピュータは、自己の記憶装置からプログラムを読み取り、プログラムに従った処理を実行する。なお、コンピュータは、可搬型記録媒体から直接プログラムを読み取り、そのプログラムに従った処理を実行することもできる。また、コンピュータは、ネットワークを介して接続されたサーバコンピュータからプログラムが転送されるごとに、逐次、受け取ったプログラムに従った処理を実行することもできる。
【0133】
以上の各実施の形態に関し、さらに以下の付記を開示する。
(付記1) 入力画像信号の値が、色分布において分割された複数の分割領域のいずれに含まれるかを判定する判定部であって、前記複数の分割領域が前記入力画像信号に含まれる色成分ごとに定義されており、前記入力画像信号の値が前記複数の分割領域のいずれに含まれるかを色成分ごとに判定する判定部と、
色成分ごとかつ分割領域ごとに補正係数が登録された補正係数記憶部から、前記入力画像信号の値が含まれると判定された色成分ごとの分割領域にそれぞれ対応する補正係数を読み出し、前記入力画像信号を基に、出力画像信号における色成分ごとの出力値を、前記補正係数記憶部から読み出した対応する色成分についての補正係数を用いて算出する画像補正部と、
を有することを特徴とする画像処理装置。
【0134】
(付記2) 複数の補正対象色を、色成分ごとに、前記複数の分割領域のそれぞれに対応する複数のグループのいずれかに分類して、前記複数の補正対象色のそれぞれについての補正後の色成分ごとの出力値を色成分ごとかつグループごとに個別の補正係数を用いて算出したときに、前記各補正対象色のそれぞれについての補正後の色成分ごとの出力値と、前記各補正対象色に対応する目標色における色成分ごとの値との差分が一定範囲に収まるように、前記補正対象色が色成分ごとに前記複数のグループのいずれかに分類され、
前記各グループに対応する分割領域が、前記各グループに分類された前記補正対象色を含むように設定される、
ことを特徴とする付記1記載の画像処理装置。
【0135】
(付記3) 前記目標色は、入射光路上に赤外カットフィルタが配置された固体撮像素子によって所定のカラーサンプルを撮像することで得られた画像信号の値であり、当該目標色に対応する前記補正対象色は、入射光路上に赤外カットフィルタが配置されていない固体撮像素子によって前記所定のカラーサンプルを撮像することで得られた画像信号の値であることを特徴とする付記2記載の画像処理装置。
【0136】
(付記4) 前記複数の分割領域のそれぞれは、色度分布において分割された領域であり、
前記判定部は、前記入力画像信号の色差成分を基に、前記入力画像信号が含まれる分割領域を、前記入力画像信号の表色系における色成分ごとに判定する、
ことを特徴とする付記1記載の画像処理装置。
【0137】
(付記5) 前記複数の分割領域のそれぞれは、L*a*b*表色系におけるa*成分およびb*成分によるa*b*座標系が分割された領域であり、
前記判定部は、前記入力画像信号をL*a*b*表色系の値に変換し、変換によって得られたa*成分およびb*成分の各値が含まれる分割領域を、前記入力画像信号の表色系における色成分ごとに判定する、
ことを特徴とする付記4記載の画像処理装置。
【0138】
(付記6) 前記複数の分割領域は、前記a*b*座標系が直線、曲線、円のいずれかである境界線によって分割された領域であり、
前記判定部は、前記入力画像信号の表色系における色成分ごとに設定された、前記a*b*座標系における前記境界線に基づいて、前記変換によって得られたa*成分およびb*成分の各値が含まれる分割領域を判定する、
ことを特徴とする付記5記載の画像処理装置。
【0139】
(付記7) 複数の補正対象色を、前記入力画像信号の表色系における色成分ごとに、前記複数の分割領域のそれぞれに対応する複数のグループのいずれかに分類して、前記複数の補正対象色のそれぞれについての補正後の色成分ごとの出力値を色成分ごとかつグループごとに個別の補正係数を用いて算出したときに、前記各補正対象色のそれぞれについての補正後の色成分ごとの出力値と、前記各補正対象色に対応する目標色における色成分ごとの値との差分が一定範囲に収まるように、前記補正対象色が色成分ごとに前記複数のグループのいずれかに分類され、
前記境界線は、同一のグループに分類された前記補正対象色の前記a*b*座標系における座標が前記境界線によって分割された同一の分割領域に含まれるように、前記入力画像信号の表色系における色成分ごとに設定される、
ことを特徴とする付記6記載の画像処理装置。
【0140】
(付記8) 前記目標色は、入射光路上に赤外カットフィルタが配置された固体撮像素子によって所定のカラーサンプルを撮像することで得られた画像信号の値であり、当該目標色に対応する前記補正対象色は、入射光路上に赤外カットフィルタが配置されていない固体撮像素子によって前記カラーサンプルを撮像することで得られた画像信号の値であることを特徴とする付記7記載の画像処理装置。
【0141】
(付記9) 前記画像補正部は、前記出力画像信号における色成分ごとの出力値を、マトリクス演算によって算出し、
前記補正係数は、マトリクス係数における行成分である、
ことを特徴とする付記1〜8のいずれか1つに記載の画像処理装置。
【0142】
(付記10) 固体撮像素子と、
前記固体撮像素子によって得られた入力画像信号の値が、色分布において分割された複数の分割領域のいずれに含まれるかを判定する判定部であって、前記複数の分割領域が前記入力画像信号に含まれる色成分ごとに定義されており、前記入力画像信号の値が前記複数の分割領域のいずれに含まれるかを色成分ごとに判定する判定部と、
色成分ごとかつ分割領域ごとに補正係数が登録された補正係数記憶部から、前記入力画像信号の値が含まれると判定された色成分ごとの分割領域にそれぞれ対応する補正係数を読み出し、前記入力画像信号を基に、出力画像信号における色成分ごとの出力値を、前記補正係数記憶部から読み出した対応する色成分についての補正係数を用いて算出する画像補正部と、
を有することを特徴とする撮像装置。
【0143】
(付記11) 入力画像信号の値が、色分布において分割された複数の分割領域のいずれに含まれるかを判定する処理であって、前記複数の分割領域が前記入力画像信号に含まれる色成分ごとに定義されており、前記入力画像信号の値が前記複数の分割領域のいずれに含まれるかを色成分ごとに判定する処理を実行し、
色成分ごとかつ分割領域ごとに補正係数が登録された補正係数記憶部から、前記入力画像信号の値が含まれると判定された色成分ごとの分割領域にそれぞれ対応する補正係数を読み出し、
前記入力画像信号を基に、出力画像信号における色成分ごとの出力値を、前記補正係数記憶部から読み出した対応する色成分についての補正係数を用いて算出する、
ことを特徴とする画像処理方法。
【0144】
(付記12) 複数の補正対象色を、色成分ごとに、前記複数の分割領域のそれぞれに対応する複数のグループのいずれかに分類して、前記複数の補正対象色のそれぞれについての補正後の色成分ごとの出力値を色成分ごとかつグループごとに個別の補正係数を用いて算出したときに、前記各補正対象色のそれぞれについての補正後の色成分ごとの出力値と、前記各補正対象色に対応する目標色における色成分ごとの値との差分が一定範囲に収まるように、前記補正対象色が色成分ごとに前記複数のグループのいずれかに分類され、
前記各グループに対応する分割領域が、前記各グループに分類された前記補正対象色を含むように設定される、
ことを特徴とする付記11記載の画像処理方法。
【0145】
(付記13) 前記目標色は、入射光路上に赤外カットフィルタが配置された固体撮像素子によって所定のカラーサンプルを撮像することで得られた画像信号の値であり、当該目標色に対応する前記補正対象色は、入射光路上に赤外カットフィルタが配置されていない固体撮像素子によって前記所定のカラーサンプルを撮像することで得られた画像信号の値であることを特徴とする付記12記載の画像処理方法。
【0146】
(付記14) 前記複数の分割領域のそれぞれは、色度分布において分割された領域であり、
前記入力画像信号の値が前記複数の分割領域のいずれに含まれるかを判定する処理では、前記入力画像信号の色差成分を基に、前記入力画像信号が含まれる分割領域を、前記入力画像信号の表色系における色成分ごとに判定する、
ことを特徴とする付記11記載の画像処理方法。
【0147】
(付記15) 前記複数の分割領域のそれぞれは、L*a*b*表色系におけるa*成分およびb*成分によるa*b*座標系が分割された領域であり、
前記入力画像信号の値が前記複数の分割領域のいずれに含まれるかを判定する処理では、前記入力画像信号をL*a*b*表色系の値に変換し、変換によって得られたa*成分およびb*成分の各値が含まれる分割領域を、前記入力画像信号の表色系における色成分ごとに判定する、
ことを特徴とする付記14記載の画像処理方法。
【0148】
(付記16) 前記複数の分割領域は、前記a*b*座標系が直線、曲線、円のいずれかである境界線によって分割された領域であり、
前記入力画像信号の値が前記複数の分割領域のいずれに含まれるかを判定する処理では、前記入力画像信号の表色系における色成分ごとに設定された、前記a*b*座標系における前記境界線に基づいて、前記変換によって得られたa*成分およびb*成分の各値が含まれる分割領域を判定する、
ことを特徴とする付記15記載の画像処理方法。
【0149】
(付記17) 複数の補正対象色を、前記入力画像信号の表色系における色成分ごとに、前記複数の分割領域のそれぞれに対応する複数のグループのいずれかに分類して、前記複数の補正対象色のそれぞれについての補正後の色成分ごとの出力値を色成分ごとかつグループごとに個別の補正係数を用いて算出したときに、前記各補正対象色のそれぞれについての補正後の色成分ごとの出力値と、前記各補正対象色に対応する目標色における色成分ごとの値との差分が一定範囲に収まるように、前記補正対象色が色成分ごとに前記複数のグループのいずれかに分類され、
前記境界線は、同一のグループに分類された前記補正対象色の前記a*b*座標系における座標が前記境界線によって分割された同一の分割領域に含まれるように、前記入力画像信号の表色系における色成分ごとに設定される、
ことを特徴とする付記16記載の画像処理方法。
【0150】
(付記18) 前記目標色は、入射光路上に赤外カットフィルタが配置された固体撮像素子によって所定のカラーサンプルを撮像することで得られた画像信号の値であり、当該目標色に対応する前記補正対象色は、入射光路上に赤外カットフィルタが配置されていない固体撮像素子によって前記カラーサンプルを撮像することで得られた画像信号の値であることを特徴とする付記17記載の画像処理方法。
【0151】
(付記19) 前記出力画像信号における色成分ごとの出力値を補正係数を用いて算出する処理では、前記出力画像信号における色成分ごとの出力値を、マトリクス演算によって算出し、
前記補正係数は、マトリクス係数における行成分である、
ことを特徴とする付記11〜18のいずれか1つに記載の画像処理方法。
【0152】
(付記20) 入力画像信号の値が、色分布において分割された複数の分割領域のいずれに含まれるかを判定する処理であって、前記複数の分割領域が前記入力画像信号に含まれる色成分ごとに定義されており、前記入力画像信号の値が前記複数の分割領域のいずれに含まれるかを色成分ごとに判定する処理を実行し、
色成分ごとかつ分割領域ごとに補正係数が登録された補正係数記憶部から、前記入力画像信号の値が含まれると判定された色成分ごとの分割領域にそれぞれ対応する補正係数を読み出し、
前記入力画像信号を基に、出力画像信号における色成分ごとの出力値を、前記補正係数記憶部から読み出した対応する色成分についての補正係数を用いて算出する、
処理をコンピュータに実行させることを特徴とする画像処理プログラム。
【符号の説明】
【0153】
1 画像処理装置
11 判定部
12 画像補正部
12a,12b,12c 演算部
13 補正係数記憶部
13a,13b,13c 補正係数テーブル
20 座標系
SP1〜SP3 分割領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力画像信号の値が、色分布において分割された複数の分割領域のいずれに含まれるかを判定する判定部であって、前記複数の分割領域が前記入力画像信号に含まれる色成分ごとに定義されており、前記入力画像信号の値が前記複数の分割領域のいずれに含まれるかを色成分ごとに判定する判定部と、
色成分ごとかつ分割領域ごとに補正係数が登録された補正係数記憶部から、前記入力画像信号の値が含まれると判定された色成分ごとの分割領域にそれぞれ対応する補正係数を読み出し、前記入力画像信号を基に、出力画像信号における色成分ごとの出力値を、前記補正係数記憶部から読み出した対応する色成分についての補正係数を用いて算出する画像補正部と、
を有することを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
複数の補正対象色を、色成分ごとに、前記複数の分割領域のそれぞれに対応する複数のグループのいずれかに分類して、前記複数の補正対象色のそれぞれについての補正後の色成分ごとの出力値を色成分ごとかつグループごとに個別の補正係数を用いて算出したときに、前記各補正対象色のそれぞれについての補正後の色成分ごとの出力値と、前記各補正対象色に対応する目標色における色成分ごとの値との差分が一定範囲に収まるように、前記補正対象色が色成分ごとに前記複数のグループのいずれかに分類され、
前記各グループに対応する分割領域が、前記各グループに分類された前記補正対象色を含むように設定される、
ことを特徴とする請求項1記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記目標色は、入射光路上に赤外カットフィルタが配置された固体撮像素子によって所定のカラーサンプルを撮像することで得られた画像信号の値であり、当該目標色に対応する前記補正対象色は、入射光路上に赤外カットフィルタが配置されていない固体撮像素子によって前記所定のカラーサンプルを撮像することで得られた画像信号の値であることを特徴とする請求項2記載の画像処理装置。
【請求項4】
前記複数の分割領域のそれぞれは、色度分布において分割された領域であり、
前記判定部は、前記入力画像信号の色差成分を基に、前記入力画像信号が含まれる分割領域を、前記入力画像信号の表色系における色成分ごとに判定する、
ことを特徴とする請求項1記載の画像処理装置。
【請求項5】
前記複数の分割領域のそれぞれは、L*a*b*表色系におけるa*成分およびb*成分によるa*b*座標系が分割された領域であり、
前記判定部は、前記入力画像信号をL*a*b*表色系の値に変換し、変換によって得られたa*成分およびb*成分の各値が含まれる分割領域を、前記入力画像信号の表色系における色成分ごとに判定する、
ことを特徴とする請求項4記載の画像処理装置。
【請求項6】
前記複数の分割領域は、前記a*b*座標系が直線、曲線、円のいずれかである境界線によって分割された領域であり、
前記判定部は、前記入力画像信号の表色系における色成分ごとに設定された、前記a*b*座標系における前記境界線に基づいて、前記変換によって得られたa*成分およびb*成分の各値が含まれる分割領域を判定する、
ことを特徴とする請求項5記載の画像処理装置。
【請求項7】
複数の補正対象色を、前記入力画像信号の表色系における色成分ごとに、前記複数の分割領域のそれぞれに対応する複数のグループのいずれかに分類して、前記複数の補正対象色のそれぞれについての補正後の色成分ごとの出力値を色成分ごとかつグループごとに個別の補正係数を用いて算出したときに、前記各補正対象色のそれぞれについての補正後の色成分ごとの出力値と、前記各補正対象色に対応する目標色における色成分ごとの値との差分が一定範囲に収まるように、前記補正対象色が色成分ごとに前記複数のグループのいずれかに分類され、
前記境界線は、同一のグループに分類された前記補正対象色の前記a*b*座標系における座標が前記境界線によって分割された同一の分割領域に含まれるように、前記入力画像信号の表色系における色成分ごとに設定される、
ことを特徴とする請求項6記載の画像処理装置。
【請求項8】
前記目標色は、入射光路上に赤外カットフィルタが配置された固体撮像素子によって所定のカラーサンプルを撮像することで得られた画像信号の値であり、当該目標色に対応する前記補正対象色は、入射光路上に赤外カットフィルタが配置されていない固体撮像素子によって前記カラーサンプルを撮像することで得られた画像信号の値であることを特徴とする請求項7記載の画像処理装置。
【請求項9】
固体撮像素子と、
前記固体撮像素子によって得られた入力画像信号の値が、色分布において分割された複数の分割領域のいずれに含まれるかを判定する判定部であって、前記複数の分割領域が前記入力画像信号に含まれる色成分ごとに定義されており、前記入力画像信号の値が前記複数の分割領域のいずれに含まれるかを色成分ごとに判定する判定部と、
色成分ごとかつ分割領域ごとに補正係数が登録された補正係数記憶部から、前記入力画像信号の値が含まれると判定された色成分ごとの分割領域にそれぞれ対応する補正係数を読み出し、前記入力画像信号を基に、出力画像信号における色成分ごとの出力値を、前記補正係数記憶部から読み出した対応する色成分についての補正係数を用いて算出する画像補正部と、
を有することを特徴とする撮像装置。
【請求項10】
入力画像信号の値が、色分布において分割された複数の分割領域のいずれに含まれるかを判定する処理であって、前記複数の分割領域が前記入力画像信号に含まれる色成分ごとに定義されており、前記入力画像信号の値が前記複数の分割領域のいずれに含まれるかを色成分ごとに判定する処理を実行し、
色成分ごとかつ分割領域ごとに補正係数が登録された補正係数記憶部から、前記入力画像信号の値が含まれると判定された色成分ごとの分割領域にそれぞれ対応する補正係数を読み出し、
前記入力画像信号を基に、出力画像信号における色成分ごとの出力値を、前記補正係数記憶部から読み出した対応する色成分についての補正係数を用いて算出する、
ことを特徴とする画像処理方法。
【請求項11】
入力画像信号の値が、色分布において分割された複数の分割領域のいずれに含まれるかを判定する処理であって、前記複数の分割領域が前記入力画像信号に含まれる色成分ごとに定義されており、前記入力画像信号の値が前記複数の分割領域のいずれに含まれるかを色成分ごとに判定する処理を実行し、
色成分ごとかつ分割領域ごとに補正係数が登録された補正係数記憶部から、前記入力画像信号の値が含まれると判定された色成分ごとの分割領域にそれぞれ対応する補正係数を読み出し、
前記入力画像信号を基に、出力画像信号における色成分ごとの出力値を、前記補正係数記憶部から読み出した対応する色成分についての補正係数を用いて算出する、
処理をコンピュータに実行させることを特徴とする画像処理プログラム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate


【公開番号】特開2013−85074(P2013−85074A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−222882(P2011−222882)
【出願日】平成23年10月7日(2011.10.7)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】