説明

画像処理装置、画像処理方法、および画像処理プログラム

【課題】対象画像から対象物の輪郭エッジを精度良く検出すること。
【解決手段】本発明のある実施の形態の画像処理装置1は、粘膜構造を撮像した管腔内画像の画素値をもとに、各画素の勾配強度を算出する勾配強度算出部16と、各画素の勾配強度をもとに輪郭候補エッジ位置を検出する候補エッジ検出部17と、各画素の勾配強度をもとに、輪郭候補エッジ位置の中から輪郭エッジ位置を選択する際に参照する参照範囲を設定する参照範囲設定部18と、参照範囲内の輪郭候補エッジ位置の中から1つを選択し、輪郭エッジ位置とする輪郭エッジ選択部19とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、対象画像から対象物の輪郭エッジを検出する画像処理装置、画像処理方法、および画像処理プログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、画像内のエッジの検出は、勾配の変化が大きい位置を検出することで行われ、基本的には、画像の輝度値の勾配から勾配強度を算出し、この勾配強度に対して閾値処理を行うことで検出されている。具体的な手法は各種考案されており、その1つとして、例えば、ケニーのエッジ検出アルゴリズムが知られている(Canny edge detector/非特許文献1を参照)。また、特許文献1には、ノイズエッジを抑制しながらエッジを検出する方法が示されている。この特許文献1では、まず、4方向の輝度勾配値を算出し、この4方向の輝度勾配値の大きさをもとに、エッジ方向に対応する第1の勾配値と、エッジに直交する方向に対応する第2の勾配値とを推定する。そして、第2の勾配値に対する第1の勾配値の相対強度をエッジ強度とすることで、対象物の構造によるエッジとノイズによるエッジとを判別している。また、特許文献2には、対象物の輪郭エッジを検出する処理が示されている。この特許文献2では、輪郭を抽出する対象物に対して幅のある粗輪郭線を入力し、この幅を持つ粗輪郭線の内部において、勾配強度が最大の画素位置を開始点とした最大勾配強度の追跡を繰り返すことで輪郭エッジを抽出している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−140684号公報
【特許文献2】特開平7−225847号公報
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】J.Canny.A Computational Approach to Edge Detection, IEEE Trans. on Pattern Analysis and Machine Intelligence,8(6),pp.679-698,1986
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、対象物を撮像した対象画像において、対象物の輪郭部分での勾配強度は、勾配強度の最大位置をピークとする山の分布を示す。しかしながら、全体として1つの勾配の途中に緩やかな勾配が存在するような輪郭部分では、勾配強度の分布のピーク位置が2つ以上に分かれてしまうため、上記した非特許文献1や特許文献1のような従来のエッジ検出処理では、輪郭付近で複数のエッジ線が検出されるという問題があった。また、特許文献2の技術では、輪郭エッジの検出結果が粗輪郭線の設定の仕方に左右されるため、対象物の輪郭エッジを適切に検出できない場合があった。
【0006】
本発明は、上記に鑑み為されたものであって、対象画像から対象物の輪郭エッジを精度良く検出することができる画像処理装置、画像処理方法、および画像処理プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記した課題を解決し、目的を達成するための、本発明のある態様にかかる画像処理装置は、所定の対象物を撮像した対象画像の画素値をもとに、各画素の勾配強度を算出する勾配強度算出手段と、前記各画素の勾配強度をもとに輪郭候補エッジ位置を検出する候補エッジ検出手段と、前記各画素の勾配強度をもとに、前記輪郭候補エッジ位置の中から輪郭エッジ位置を選択する際に参照する参照範囲を設定する参照範囲設定手段と、前記参照範囲内の輪郭候補エッジ位置の中から1つを選択し、前記輪郭エッジ位置とする輪郭エッジ選択手段と、を備えることを特徴とする。
【0008】
上記態様の画像処理装置によれば、対象物を撮像した対象画像の各画素の勾配強度をもとに輪郭候補エッジを検出するとともに、各画素の勾配強度をもとに輪郭候補エッジ位置の中から輪郭エッジ位置を選択する際に参照する参照範囲を設定することができる。そして、前述のように勾配強度をもとに設定した参照範囲内の輪郭候補エッジ位置のうちの1つを輪郭エッジ位置として選択することができる。したがって、全体として1つの勾配の途中に緩やかな勾配が存在するような輪郭部分であっても、対象物の輪郭エッジを精度良く検出することができる。
【0009】
また、本発明の別の態様にかかる画像処理方法は、所定の対象物を撮像した対象画像の画素値をもとに、各画素の勾配強度を算出する勾配強度算出工程と、前記各画素の勾配強度をもとに輪郭候補エッジ位置を検出する候補エッジ検出工程と、前記各画素の勾配強度をもとに、前記輪郭候補エッジ位置の中から輪郭エッジ位置を選択する際に参照する参照範囲を設定する参照範囲設定工程と、前記参照範囲内の輪郭候補エッジ位置の中から1つを選択し、前記輪郭エッジ位置とする輪郭エッジ選択工程と、を含むことを特徴とする。
【0010】
また、本発明の別の態様にかかる画像処理方法は、所定の対象物を撮像した対象画像の画素値をもとに、各画素の勾配強度を算出する勾配強度算出工程と、前記各画素の勾配強度をもとに、前記輪郭候補エッジ位置の中から輪郭エッジ位置を選択する際に参照する参照範囲を設定する参照範囲設定工程と、前記参照範囲内の画素の前記勾配強度をもとに、前記参照範囲内の輪郭候補エッジ位置を検出する候補エッジ検出工程と、前記参照範囲内の輪郭候補エッジ位置の中から1つを選択し、前記輪郭エッジ位置とする輪郭エッジ選択工程と、を含むことを特徴とする。
【0011】
また、本発明の別の態様にかかる画像処理プログラムは、コンピュータに、所定の対象物を撮像した対象画像の画素値をもとに、各画素の勾配強度を算出する勾配強度算出手順と、前記各画素の勾配強度をもとに輪郭候補エッジ位置を検出する候補エッジ検出手順と、前記各画素の勾配強度をもとに、前記輪郭候補エッジ位置の中から輪郭エッジ位置を選択する際に参照する参照範囲を設定する参照範囲設定手順と、前記参照範囲内の輪郭候補エッジ位置の中から1つを選択し、前記輪郭エッジ位置とする輪郭エッジ選択手順と、を実行させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、対象画像から対象物の輪郭エッジを精度良く検出することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1は、実施の形態1の画像処理装置の機能構成例を説明するブロック図である。
【図2】図2は、勾配強度算出部の構成例を説明するブロック図である。
【図3】図3は、実施の形態1の候補エッジ検出部の構成例を説明するブロック図である。
【図4】図4は、実施の形態1の参照範囲設定部の構成例を説明するブロック図である。
【図5】図5は、実施の形態1の輪郭エッジ選択部の構成例を説明するブロック図である。
【図6】図6は、実施の形態1の画像処理装置が行う処理手順を示す全体フローチャートである。
【図7】図7は、管腔内画像の一例を示す図である。
【図8】図8は、勾配と勾配強度との関係を説明する図である。
【図9−1】図9−1は、横方向のソーベルフィルタを示す図である。
【図9−2】図9−2は、縦方向のソーベルフィルタを示す図である。
【図10】図10は、横方向成分勾配強度画像の一例を示す図である。
【図11】図11は、縦方向成分勾配強度画像の一例を示す図である。
【図12】図12は、勾配強度画像の一例を示す図である。
【図13】図13は、勾配の最大変化方向の正接から勾配変化方向への変換を説明する図である。
【図14】図14は、勾配変化方向の一例を示す図である。
【図15−1】凸位置の検出原理を説明する図である。
【図15−2】凸位置の検出原理を説明する他の図である。
【図15−3】凸位置の検出原理を説明する他の図である。
【図16−1】図16−1は、注目画素の勾配変化方向が方向=0の場合に勾配強度を比較する画素を説明する図である。
【図16−2】図16−2は、注目画素の勾配変化方向が方向=1の場合に勾配強度を比較する画素を説明する図である。
【図16−3】図16−3は、注目画素の勾配変化方向が方向=2の場合に勾配強度を比較する画素を説明する図である。
【図16−4】図16−4は、注目画素の勾配変化方向が方向=3の場合に勾配強度を比較する画素を説明する図である。
【図17】図17は、輪郭候補エッジ画像の一例を示す図である。
【図18】図18は、横方向の参照範囲区画画像の一例を示す図である。
【図19】図19は、縦方向の参照範囲区画画像の一例を示す図である。
【図20】図20は、エッジ特性の取得原理を説明する図である。
【図21】図21は、エッジ特性画像の一例を示す図である。
【図22】図22は、輪郭エッジ位置の選択原理を説明する図である。
【図23】図23は、横方向成分輪郭エッジ位置の選択原理を説明する図である。
【図24】図24は、横方向成分輪郭エッジ画像の一例を示す図である。
【図25】図25は、縦方向成分輪郭エッジ画像の一例を示す図である。
【図26】図26は、輪郭エッジ画像の一例を示す図である。
【図27】図27は、実施の形態2の画像処理装置の機能構成例を説明するブロック図である。
【図28】図28は、実施の形態2の候補エッジ検出部の構成例を説明するブロック図である。
【図29】図29は、実施の形態2の参照範囲設定部の構成例を説明するブロック図である。
【図30】図30は、実施の形態2の輪郭エッジ選択部の構成例を説明するブロック図である。
【図31】図31は、実施の形態2の画像処理装置が行う処理手順を示す全体フローチャートである。
【図32】図32は、輪郭候補エッジ位置の検出原理を説明する図である。
【図33】図33は、実施の形態2における参照範囲の設定原理を説明する図である。
【図34】図34は、実施の形態2における輪郭エッジ位置の選択原理を説明する図である。
【図35】図35は、実施の形態3の画像処理装置の機能構成例を説明するブロック図である。
【図36】図36は、実施の形態3の画像処理装置が行う処理手順を示す全体フローチャートである。
【図37】図37は、本発明を適用したコンピューターシステムの構成を示すシステム構成図である。
【図38】図38は、図37のコンピューターシステムを構成する本体部の構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照し、本発明の好適な実施の形態について説明する。なお、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。また、各図面の記載において、同一部分には同一の符号を付して示している。
【0015】
本実施の形態の画像処理装置は、例えば内視鏡やカプセル内視鏡等の医用観察装置が被検者の体内の消化管等の管腔内を撮像した画像(管腔内画像)を対象画像として処理するものであり、具体的には、管腔内画像から輪郭エッジを検出する処理を行うものである。ここで、本実施の形態の画像処理装置が扱う管腔内画像は、例えば、画素毎にR(赤),G(緑),B(青)の各波長成分に対する画素値を持つカラー画像である。この管腔内画像には、対象物として生体組織の粘膜構造が映る。以下では、管腔内画像から粘膜構造の輪郭エッジを検出する場合を例にとって説明する。なお、対象画像は、本実施の形態で例示する管腔内画像に限定されるものではない。また、対象物についても粘膜構造に限定されるものではなく、本発明は、所定の対象物を撮像した対象画像から対象物の輪郭エッジを検出する場合に広く適用できる。
【0016】
(実施の形態1)
先ず、実施の形態1の画像処理装置について説明する。図1は、実施の形態1の画像処理装置1の機能構成例を説明するブロック図である。また、図2は、演算部15を構成する実施の形態1の勾配強度算出部16の構成例を説明するブロック図であり、図3は、実施の形態1の候補エッジ検出部17の構成例を説明するブロック図であり、図4は、実施の形態1の参照範囲設定部18の構成例を説明するブロック図であり、図5は、実施の形態1の輪郭エッジ選択部19の構成例を説明するブロック図である。なお、図1〜図5の各図において、画像処理装置1の各部間を接続して画像信号等のデータ信号を伝送するデータ信号線を実線で示し、制御信号を伝送する制御信号線を破線で示している。
【0017】
図1に示すように、実施の形態1の画像処理装置1は、外部インターフェース(I/F)部11と、操作部12と、表示部13と、記録部14と、演算部15と、画像処理装置1全体の動作を制御する制御部20とを備える。
【0018】
外部I/F部11は、医用観察装置によって撮像された管腔内画像の画像データを取得するためのものであり、この外部I/F部11によって取得された画像データは記録部14に記録され、演算部15によって処理された後、必要に応じて適宜表示部13に表示される。外部I/F部11は、例えば医用観察装置との間の画像データの受け渡しに可搬型の記録媒体が使用される場合であれば、この記録媒体を着脱自在に装着して保存された管腔内画像の画像データを読み出すリーダ装置で構成される。また、医用観察装置によって撮像された管腔内画像の画像データを保存しておくサーバを適所に設置し、このサーバから取得する構成の場合には、外部I/F部11を、サーバと接続するための通信装置等で構成する。そして、この外部I/F部11を介してサーバとデータ通信を行い、管腔内画像の画像データを取得する。また、ケーブルを介して医用観察装置から画像データを取得する構成の場合には、画像データを入力するインターフェース装置等で構成される。
【0019】
操作部12は、例えばキーボードやマウス、タッチパネル、各種スイッチ等によって実現されるものであり、操作信号を制御部20に出力する。表示部13は、LCDやELディスプレイ等の表示装置によって実現されるものであり、制御部20の制御のもと、カプセル内視鏡3で撮像された画像の表示画面を含む各種画面を表示する。
【0020】
記録部14は、更新記録可能なフラッシュメモリ等のROMやRAMといった各種ICメモリ、内蔵或いはデータ通信端子で接続されたハードディスク、CD−ROM等の情報記録媒体およびその読取装置等によって実現されるものであり、画像処理装置1を動作させ、この画像処理装置1が備える種々の機能を実現するためのプログラムや、このプログラムの実行中に使用されるデータ等が記録される。例えば、記録部14には、外部I/F部11によって取得された管腔内画像の画像データが記録される。また、記録部14には、実施の形態1の処理を実現して管腔内画像から輪郭エッジ(詳細には粘膜構造の輪郭エッジ)を検出するための画像処理プログラム141が記録される。
【0021】
演算部15は、CPU等のハードウェアによって実現され、管腔内画像を処理して輪郭エッジを検出するための種々の演算処理を行う。この演算部15は、勾配強度算出手段としての勾配強度算出部16と、候補エッジ検出手段としての候補エッジ検出部17と、参照範囲設定手段としての参照範囲設定部18と、輪郭エッジ選択手段としての輪郭エッジ選択部19とを含む。ここで、勾配強度算出部16、候補エッジ検出部17および輪郭エッジ選択部19はこの順に接続され、勾配強度算出部16は参照範囲設定部18に接続され、参照範囲設定部18は輪郭エッジ選択部19に接続されている。また、勾配強度算出部16には、外部I/F部11を介して取得され、記録部14に記録された管腔内画像の画像信号が入力される。そして、輪郭エッジ選択部19からは、演算部15の各部が管腔内画像を処理することで検出した輪郭エッジの情報(輪郭エッジ画像)が出力され、例えば記録部14に記録される。
【0022】
勾配強度算出部16は、管腔内画像の画素値をもとに、各画素の勾配強度を算出する。この勾配強度算出部16は、図2に示すように、ノイズ除去手段としてのノイズ除去部161と、構造情報取得手段としての構造情報取得部162と、微分処理手段としての微分処理部163とを備える。ここで、ノイズ除去部161、構造情報取得部162および微分処理部163は、この順に接続されている。
【0023】
ノイズ除去部161は、記録部14から入力される管腔内画像の画像データをもとに、管腔内画像からノイズを除去する。ノイズ除去後の管腔内画像の画像データは、構造情報取得部162に出力される。構造情報取得部162は、入力されるノイズ除去後の管腔内画像の画像データをもとに、管腔内画像に映る粘膜構造表面の形状変化情報(例えば後述するR成分画像の画像データ)を取得する。取得した粘膜構造表面の形状変化情報(R成分画像の画像データ)は、微分処理部163に出力される。微分処理部163は、入力される粘膜構造表面の形状変化情報(R成分画像の画像データ)に対して微分フィルタ処理を行うことで、各画素の勾配強度を算出する。より詳細には、横方向(水平方向)の微分フィルタを用いて各画素における勾配強度の横方向成分を算出するとともに、縦方向(垂直方向)の微分フィルタを用いて各画素における勾配強度の縦方向成分を参照することで横方向および縦方向の2方向について符号付きの勾配強度を算出する。以上のように構成される勾配強度算出部16は、算出した各画素の勾配強度を候補エッジ検出部17および参照範囲設定部18に出力する。
【0024】
候補エッジ検出部17は、各画素の勾配強度をもとに、輪郭候補エッジ位置を検出する。この候補エッジ検出部17は、図3に示すように、勾配変化方向検出手段としての勾配変化方向検出部171と、凸位置検出手段としての凸位置検出部172とを備える。ここで、勾配変化方向検出部171は、凸位置検出部172に接続されている。
【0025】
勾配変化方向検出部171は、勾配強度算出部16から入力される各画素の勾配強度をもとに、各画素における勾配変化方向を検出する。検出した各画素の勾配変化方向は、凸位置検出部172に出力される。凸位置検出部172は、入力される各画素の勾配変化方向をもとに、勾配の方向に連接する画素の勾配強度と比して勾配強度が大きい位置、すなわち凸である位置(凸位置)を検出する。以上のように構成される候補エッジ検出部17は、凸位置検出部172が検出した凸位置を輪郭候補エッジ位置として輪郭エッジ選択部19に出力する。
【0026】
参照範囲設定部18は、輪郭エッジ選択部19が輪郭候補エッジ位置の中から輪郭エッジ位置を選択する際に参照する参照範囲を設定する。この参照範囲設定部18は、図4に示すように、参照方向指定手段としての参照方向指定部181と、参照範囲取得手段としての参照範囲取得部182とを備える。ここで、参照方向指定部181は、参照範囲取得部182に接続されている。
【0027】
参照方向指定部181は、参照範囲を設定する方向(参照方向)を指定する。指定した参照方向は、勾配強度算出部16から入力される各画素の勾配強度とともに参照範囲取得部182に出力される。参照範囲取得部182は、入力される各画素の勾配強度をもとに、入力される参照方向毎に参照範囲を取得する。この参照範囲取得部182は、勾配強度閾値手段としての勾配強度閾値処理部183を備える。勾配強度閾値処理部183は、参照方向毎に対応する勾配強度の方向成分を閾値処理する。以上のように構成される参照範囲設定部18は、参照方向毎の参照範囲を輪郭エッジ選択部19に出力する。
【0028】
輪郭エッジ選択部19は、輪郭候補エッジ位置の中から輪郭エッジ位置を選択する。この輪郭エッジ選択部19は、図5に示すように、エッジ特性取得手段としてのエッジ特性取得部191と、エッジ特性比較手段としてのエッジ特性比較部192とを備える。ここで、エッジ特性取得部191は、エッジ特性比較部192に接続されている。
【0029】
エッジ特性取得部191は、候補エッジ検出部17から入力される輪郭候補エッジ位置をもとに、途切れずに連続する輪郭候補エッジ線毎に最も大きい勾配強度の値を該当する輪郭候補エッジ線上の輪郭候補エッジ位置のエッジ特性として取得する。取得した各輪郭候補エッジ位置のエッジ特性は、参照範囲設定部18から入力される参照方向毎の参照範囲とともにエッジ特性比較部192に出力される。
【0030】
エッジ特性比較部192は、入力される参照方向毎の参照範囲および各輪郭候補エッジ位置のエッジ特性をもとに、各輪郭候補エッジ位置のエッジ特性を参照範囲毎に比較することで、各参照範囲における輪郭エッジ位置を選択する。このエッジ特性比較部192は、方向成分輪郭エッジ選択手段としての方向成分輪郭エッジ選択部193と、方向成分輪郭エッジ統合手段としての方向成分輪郭エッジ統合部194とを備える。方向成分輪郭エッジ選択部193は、参照方向毎に各参照範囲における輪郭エッジ位置を選択する。選択した参照方向毎の各参照範囲における輪郭エッジ位置は、方向成分輪郭エッジ統合部194に出力される。方向成分輪郭エッジ統合部194は、入力される参照方向毎の各参照範囲における輪郭エッジ位置を統合し、最終的な輪郭エッジ位置を得る。以上のように構成される輪郭エッジ選択部19は、輪郭エッジ位置を設定した輪郭エッジ画像を例えば記録部14に出力して保存する。
【0031】
制御部20は、CPU等のハードウェアによって実現される。この制御部20は、外部I/F部11を介して取得される画像データや操作部12から入力される操作信号、記録部14に記録されるプログラムやデータ等をもとに画像処理装置1を構成する各部への指示やデータの転送等を行い、画像処理装置1全体の動作を統括的に制御する。
【0032】
図6は、実施の形態1の画像処理装置1が行う処理手順を示す全体フローチャートである。なお、ここで説明する処理は、記録部14に記録された画像処理プログラム141に従って画像処理装置1の各部が動作することによって実現される。
【0033】
図6に示すように、先ず、制御部20が画像取得処理を実行し、処理対象の管腔内画像を取得する(ステップa1)。ここでの処理により、管腔内画像の画像データが外部I/F部11を介して取得され、記録部14に記録される。このようにして取得された後は、この管腔内画像の画像データは、演算部15によって読み込み可能な状態となる。図7は、管腔内画像の一例を示す図である。以下では、この管腔内画像の左上を基準にして横方向の画素の座標をxとし、縦方向の画素の座標をyとする。
【0034】
続いて、演算部15において、勾配強度算出部16のノイズ除去部161が、ノイズ除去処理を実行し、管腔内画像からノイズを除去する(ステップa3)。このノイズ除去処理は、例えば、ステップa1で取得した管腔内画像の画像データに対してエッジを保存した平滑化処理を行うことで実現できる。ここでは、例えば、スパイクノイズに強いメディアン(Median)フィルタを適用して平滑化処理を行う。これは、管腔内画像中には、スパイクノイズに相当するノイズ領域として照明光による正面反射が発生した領域(正面反射領域)が含まれ得るためである。フィルタサイズとしては、例えば11×11のものを用いる。管腔内画像には、粘膜構造の輪郭エッジ以外にも、例えば、粘膜表面の柔毛(絨毛)等による凹凸や照明光による正面反射領域等によって生じるエッジ(ノイズエッジ)が含まれる。ステップa3のノイズ除去処理によれば、前述のようなノイズエッジを抑制することができ、輪郭エッジの誤検出を低減することができる。なお、メディアンフィルタに限らず、例えば、k最近隣平均化フィルタやバイラテラル(Bilateral)フィルタ等のその他のエッジ保存型のフィルタを適用した平滑化処理を行うこととしてもよい。
【0035】
続いて、構造情報取得部162が構造情報取得処理を実行し、ステップa3でのノイズ除去処理後の管腔内画像の画像データをもとに粘膜構造表面の形状変化情報を取得する(ステップa5)。管腔内画像に映る血管や出血部位等の構成成分であるヘモグロビンは、短波長帯の光を多く吸光する特性を持つ。このヘモグロビンの短波長帯での吸光特性により、波長成分の多くが短波長帯で構成されるG(緑)成分やB(青)成分は、ヘモグロビンの吸光によって輝度値が下がる。このため、管腔内画像には、血管や出血部位等もノイズエッジとして含まれ得る。一方で、波長成分の多くが長波長帯で構成されるR(赤)成分は、吸光が少なく、ほとんどの光を反射するため、このR(赤)成分からは、粘膜構造を最も反映した情報を得ることができる。そこで、実施の形態1では、後段の処理において粘膜構造の輪郭エッジを精度良く検出するために、R(赤)の波長成分(R成分)の画像(R成分画像:各画素の画素値をR(赤)成分の値とした画像)の画像データを粘膜構造表面の形状変化情報として取得する。ステップa5の構造情報取得処理によれば、粘膜表面の色変化によって生じるノイズエッジを輪郭エッジとして誤検出する事態を低減できる。
【0036】
続いて、微分処理部163が、勾配強度算出処理を実行し、各画素の勾配強度(符号付き)を算出する(ステップa7)。図8は、勾配と勾配強度との関係を説明する図であり、図8では、横軸を例えば管腔内画像の横方向(x方向)に沿った画素位置(座標)として、縦軸を該当する各画素の勾配とした勾配の変化曲線を実線で示すとともに、縦軸を該当する各画素の勾配強度とした勾配強度の変化曲線を一点鎖線で示している。図8に示すように、勾配強度は、画素値の勾配が急な箇所で大きい値として得られ、緩やかな箇所で小さい値として得られる。ステップa7の勾配強度算出処理では、ステップa5で取得した粘膜構造表面の形状変化情報(R成分画像の画像データ)をもとに勾配強度の値を算出する。そして、ステップa9以降の処理では、この勾配強度の値をもとに、輪郭エッジ位置を検出する。ステップa9以降の処理に先立って勾配強度算出処理を行うことによれば、後段の処理で勾配強度の演算を繰り返し行う必要がない。
【0037】
例えば、微分処理部163は、ステップa5で取得した粘膜構造表面の形状変化情報(R成分画像の画像データ)に対して1次微分フィルタを用いた微分フィルタ処理を行うことで実現できる。ここでは、例えば、ソーベル(sobel)フィルタを適用し、勾配強度画像(各画素の画素値を勾配強度の値とした画像)とともに、横方向成分勾配強度画像(各画素の画素値を勾配強度の横方向成分の値とした画像)と、縦方向成分勾配強度画像(各画素の画素値を勾配強度の縦方向成分の値とした画像)とを得る。
【0038】
具体的には、図9−1に示す3×3の横方向(x方向)のソーベルフィルタおよび図9−2に示す3×3の縦方向(y方向)のソーベルフィルタを適用し、3×3の近傍領域を用いたフィルタリングを行う。そして、図9−1の横方向のソーベルフィルタを適用した微分フィルタ処理の出力を各画素における勾配強度の横方向成分として得る。一方、図9−2の縦方向のソーベルフィルタを適用した微分フィルタ処理の出力を各画素における勾配強度の縦方向成分として得る。その後、これら勾配強度の横方向成分と縦方向成分とを合成して各画素の勾配強度を得る。図10は、図7の管腔内画像を処理することで得た横方向成分勾配強度画像を示す図であり、図11は、図7の管腔内画像を処理することで得た縦方向成分勾配強度画像を示す図であり、図12は、図10の横方向成分勾配強度画像と図11の縦方向成分勾配強度画像を合成して得た勾配強度画像を示す図である。なお、ソーベルフィルタに限らず、その他の微分フィルタを適用して微分フィルタ処理を行うこととしてもよい。
【0039】
以上のようにして勾配強度算出処理を実行したならば、図6に示すように、候補エッジ検出部17が、輪郭候補エッジ検出処理を実行する(ステップa9)。また、このステップa9の輪郭候補エッジ検出処理と並行して、参照範囲設定部18が、参照範囲設定処理を実行する(ステップa11)。輪郭候補エッジ検出処理と参照範囲設定処理を並行して行うことで、処理時間の短縮が図れる。なお、輪郭候補エッジ検出処理と参照範囲設定処理とは必ずしも並行して行う必要はなく、輪郭候補エッジ検出処理の後に参照範囲設定処理を行うこととしてもよい。また、参照範囲設定処理を先に行うこととしてもよい。参照範囲設定処理を先に行う構成については、実施の形態3で後述する。
【0040】
先ず、ステップa9の輪郭候補エッジ検出処理について説明する。この輪郭候補エッジ検出処理では、候補エッジ検出部17は、ステップa7で算出した各画素の勾配強度をもとに、輪郭エッジ位置の候補となる輪郭候補エッジ位置を検出する。実施の形態1では、候補エッジ検出部17は、凸位置の画素(尾根)で構成される画素群の位置を輪郭候補エッジ位置として検出する。
【0041】
処理手順としては、先ず、勾配変化方向検出部171が、横方向成分勾配強度画像および縦方向成分勾配強度画像をもとに、次式(1)に従って各画素における勾配の最大変化方向を算出する。ただし、次式(1)において、f´xは横方向成分勾配強度画像を表し、f´yは縦方向成分勾配強度画像を表す。また、(x,y)は、横方向成分勾配強度画像および縦方向成分勾配強度画像における各画素の座標を表す。また、θは、画像の横方向からの角度を表す。
【数1】

【0042】
次に、勾配変化方向検出部171は、算出した最大変化方向をもとに、各画素の勾配変化方向を検出する。画像データは、格子状に配列された画素(座標)にデータ(画素値)が設定されたものであるため、ここでは、上記式(1)で算出した勾配の最大変化方向を、4方向に分類することで各画素の勾配変化方向を検出する。図13は、勾配の最大変化方向の正接(tanθ)から勾配変化方向への変換を説明する図である。また、図14は、分類する4方向の勾配変化方向を示す図である。図13に示すように、tanθの値を「−2.4142」「−0.4142」「0.4142」「2.4142」の各値で区切り、上記式(1)で勾配の最大変化方向として算出したtanθの値がどの範囲に属するのかによって各画素の勾配変化方向を図14に示す方向=0,1,2,3のいずれかに分類する。
【0043】
その後、凸位置検出部172が、各画素の勾配変化方向をもとに、勾配強度の凸位置を検出する。図15−1は、前段の処理で検出した各画素の勾配変化方向の一例を示す図である。なお、図15−1では、各画素の勾配変化方向を矢印によって示している。また、図15−2は、図15−1に示す画素P11〜画素P13の勾配の変化を示す図である。そして、図15−3は、図15−1の画素P11〜画素P13の勾配強度の変化を示す図である。
【0044】
凸位置の検出は、注目画素が、この注目画素と勾配変化方向上で連接する画素に比べて勾配強度の値が最大か否かを判定することで行う。例えば、画素P11〜画素P13は、図15−1に示すように、注目画素位置P12の勾配変化方向(方向=3)に沿って連接している。ここで、これら画素P11〜画素P13の勾配の変化が、例えば図15−2に示すように、画素P12において最も急峻である場合、勾配強度の値は、図15−3に示すように画素P12が最も大きく、その変化が画素P12で凸となる。この場合には、画素P12を凸位置として検出する。
【0045】
実際の処理では、各画素を順次注目画素(x,y)とし、注目画素(x,y)の勾配変化方向上で連接する両側の画素との間で勾配強度の値を比較する。そして、注目画素(x,y)の勾配強度が最大の場合に、注目画素(x,y)を凸位置として検出する。
【0046】
図16−1は、中央の注目画素の勾配変化方向が方向=0の場合に勾配強度を比較する画素を説明する図であり、図16−2は、中央の注目画素の勾配変化方向が方向=1の場合に勾配強度を比較する画素を説明する図であり、図16−3は、中央の注目画素の勾配変化方向が方向=2の場合に勾配強度を比較する画素を説明する図であり、図16−4は、中央の注目画素の勾配変化方向が方向=3の場合に勾配強度を比較する画素を説明する図である。ここで、注目画素および勾配強度を比較する両側の画素を識別するため、各図中において該当する各マス目に示すように、注目画素をb、両側の画素をそれぞれa,cとする。
【0047】
例えば、注目画素(x,y)である画素bの勾配変化方向が方向=0の場合には、図16−1に示すように、方向=0である水平方向において隣接する両側の画素a,cとの勾配強度の比較を行う。図16−2,図16−3,図16−4に示す方向=1,2,3の場合も同様である。詳細には、次式(2),(3)に従い、注目画素(x,y)である画素bの勾配強度が画素a,cよりも大きく最大の場合には、注目画素(x,y)を凸位置とし、Line(x,y)の値を勾配強度の値f´(x,y)とする。一方、画素bの勾配強度が最大でなければ、Line(x,y)の値を「0」とする。
【数2】

【0048】
以上の処理を全ての画素について行い、各画素の画素値をLine(x,y)の値、すなわち、凸位置の画素値をその勾配強度の値とし、凸位置以外の画素の画素値を「0」とした輪郭候補エッジ画像を得る。図17は、図10の横方向成分勾配強度画像、図11の縦方向成分勾配強度画像、および図12の勾配強度画像を処理することで得た輪郭候補エッジ画像を示す図である。
【0049】
次に、図6のステップa11の参照範囲設定処理について説明する。この参照範囲設定処理では、参照範囲設定部18は、ステップa7で算出した各画素の勾配強度をもとに、輪郭エッジ位置を選択する範囲(参照範囲)を設定する。
【0050】
処理手順としては、先ず、参照方向指定部181が、参照方向を指定する。実施の形態1では、勾配強度の方向成分を算出した横方向および縦方向の2方向を参照方向として指定する。
【0051】
続いて、参照範囲取得部182が、参照方向毎に各画素を上り勾配の領域または下り勾配の領域を含む1以上の領域にセグメンテーション(区画)することで、参照方向のそれぞれについての参照範囲を取得する。実施の形態1では、参照方向である横方向および縦方向のそれぞれについて各画素を1以上の参照範囲に区画する。具体的には、先ず、参照範囲取得部182の勾配強度閾値処理部183が、次式(4),(5),(6)に従って横方向成分勾配強度画像を閾値処理することで、横方向成分勾配強度画像を、上り勾配の領域、下り勾配の領域、および平坦領域の3つの領域に区画する。
【数3】

【0052】
続いて、参照範囲取得部182が、参照範囲に多少のマージンを与えるために、区画した上り勾配の領域および下り勾配の領域のそれぞれに対して公知のモルフォロジクロージング処理とオープニング処理とを行う。これにより、上り勾配および下り勾配の各領域を拡張し、横方向の参照範囲とする。図18は、図10の横方向成分勾配強度画像を処理することで得た横方向の参照範囲区画画像を示す図である。
【0053】
また、参照範囲取得部182は、縦方向成分勾配強度画像をもとに、横方向の場合と同様の手順で各画素を1以上の参照範囲に区画する。すなわち、勾配強度閾値処理部183が、次式(7),(8),(9)に従って縦方向成分勾配強度画像を閾値処理することで、縦方向成分勾配強度画像を、上り勾配の領域、下り勾配の領域、および平坦領域の3つの領域に区画する。
【数4】

【0054】
その後、参照範囲取得部182が、区画した上り勾配の領域および下り勾配の領域のそれぞれに対してモルフォロジクロージング処理とオープニング処理とを行い、上り勾配および下り勾配の各領域を拡張して縦方向の参照範囲とする。図19は、図11の縦方向成分勾配強度画像を処理することで得た縦方向の参照範囲区画画像を示す図である。
【0055】
以上のようにして参照範囲設定処理を行うことで、後段の処理において1つの輪郭エッジ位置を選択する範囲(参照範囲)を各画素の勾配強度に応じて適応的に設定することができる。したがって、後段の処理において、勾配毎(上り勾配および下り勾配の各領域毎)に輪郭候補エッジ位置の中から過不足なく1つの輪郭エッジ位置を選択することができるので、輪郭エッジ位置の検出精度が向上する。
【0056】
続いて、図6に示すように、輪郭エッジ選択部19のエッジ特性取得部191がエッジ特性取得処理を実行し、ステップa9で検出した各輪郭候補エッジ位置についてエッジ特性を取得する(ステップa13)。図20(a)は、輪郭候補エッジ画像の一例を示す模式図であり、図20(a)中において3本の輪郭候補エッジ線EL21,EL22,EL23を示している。また、図20(b)は、横軸を図20(a)中の輪郭候補エッジ線EL22上の座標(x,y)とし、縦軸を該当する各画素の勾配強度の値として図20(a)中の輪郭候補エッジ線EL22上の勾配強度の変化曲線を示したものである。図20(b)に示すように、輪郭候補エッジ線EL22上では、図20(a)中の輪郭候補エッジ位置P2の勾配強度の値が最も大きい。実施の形態1では、この勾配強度の最大値を輪郭候補エッジ線EL22についてのエッジ特性とし、図20(a)中に一点鎖線の矢印で示すように、輪郭候補エッジ位置P2の勾配強度の値で輪郭候補エッジ線EL22上の全ての輪郭候補エッジ位置の勾配強度の値を置換する。なお、ここでは、輪郭候補エッジ線EL22に着目して説明したが、輪郭候補エッジ線EL21,EL23についても同様にエッジ特性を取得する。
【0057】
以上の処理を全ての輪郭候補エッジ線について行い、各輪郭候補エッジ位置の画素値をその輪郭候補エッジ位置を含む輪郭候補エッジ線について取得したエッジ特性の値(その輪郭候補エッジ線上の輪郭候補エッジ位置における勾配強度の最大値)とする。そして、輪郭候補エッジ線上の輪郭候補エッジ位置における勾配強度の最大値が所定の閾値以上である場合には、その輪郭候補エッジ線上の全ての輪郭候補エッジ位置の勾配強度の値をその最大値に置換する。一方、所定の閾値以下となる場合には、その輪郭候補エッジ線上の全ての輪郭候補エッジ位置の勾配強度の値を0に置換し、輪郭候補エッジから除外する。これにより、エッジ特性画像を得る。図21は、図12の勾配強度画像を処理することで得たエッジ特性画像を示す図である。
【0058】
後段の方向成分輪郭エッジ選択処理(ステップa15)では、参照範囲毎に輪郭候補エッジ位置の中から輪郭エッジ位置を選択する。このとき、各参照範囲内の輪郭候補エッジ位置のうち、その輪郭候補エッジ位置を含む輪郭候補エッジ線上の輪郭候補エッジ位置における勾配強度の最大値(すなわちエッジ特性)が最も大きい輪郭候補エッジ位置を輪郭エッジ位置として選択する。この方向成分輪郭エッジ選択処理に先立ってエッジ特性取得処理を行い、各輪郭候補エッジ位置にエッジ特性として与えておけば、方向成分輪郭エッジ選択処理において参照範囲が変わる度にエッジ特性の取得を繰り返し行う必要がなく、処理時間の短縮が図れる。
【0059】
なお、ここでは、輪郭候補エッジ線上の輪郭候補エッジ位置における勾配強度の最大値をエッジ特性とすることとしたが、これに限定されるものではない。例えば、輪郭候補エッジ線上の輪郭候補エッジ位置における勾配強度の平均値をエッジ特性としてもよい。上記のように勾配強度の最大値をエッジ特性とする場合、輪郭候補エッジ線全体として勾配強度が大きいもののエッジ特性よりも、ノイズ等に起因して輪郭候補エッジ線上のいくつかの輪郭候補エッジ位置の勾配強度の値が大きくなっているもののエッジ特性の方が大きくなる事態が生じ得る。これに対し、勾配強度の平均値をエッジ特性とすれば、輪郭候補エッジ線上の輪郭候補エッジ位置の平均的な勾配強度をエッジ特性とすることができるので、ノイズの影響を低減でき、エッジ特性をより適切な値とすることができる。この他、輪郭候補エッジ線の長さや、輪郭候補エッジ線の滑らかさ等の値をエッジ特性として取得するようにしてもよい。
【0060】
続いて、図6に示すように、エッジ特性比較部192の方向成分輪郭エッジ選択部193が、方向成分輪郭エッジ選択処理を実行する(ステップa15)。この輪郭エッジ選択処理では、ステップa11で設定した参照範囲毎に輪郭候補エッジ位置の中から輪郭エッジ位置を選択する処理を参照方向毎に行う。図22は、輪郭エッジ位置の選択原理を説明する図である。ここで、図22において、一点鎖線で囲った領域が区画された1つの参照範囲E3(上り勾配の領域または下り勾配の領域)であったとする。この参照範囲E3には、4本の輪郭候補エッジ線EL31〜EL34を構成する輪郭候補エッジ位置の一部または全域が含まれている。ここで、これら4本の輪郭候補エッジ線EL31〜EL34のうち、輪郭候補エッジ線EL32についてのエッジ特性が最も大きかったとする。この場合には、参照範囲E3内に含まれる輪郭候補エッジ線EL32上の輪郭候補エッジ位置を参照範囲E3における輪郭エッジ位置として選択する。
【0061】
処理手順としては、先ず、参照方向の1つである横方向の参照範囲区画画像をもとに、エッジ特性画像から横方向成分輪郭エッジ位置を選択する。具体的には、エッジ特性画像を横方向の参照範囲毎に参照し、各参照範囲から輪郭候補エッジ位置を1つ選択する処理を横方向(y方向)のライン毎に行うことで横方向成分輪郭エッジ位置を得る。
【0062】
図23は、横方向成分輪郭エッジ位置の選択原理を説明する図であり、y行目の各画素のエッジ特性の値を示している。エッジ特性画像のy行目に着目した場合、先ず、図23中に破線で区切って示したy行目における参照範囲の区画位置に従って、上り勾配の参照範囲内の輪郭候補エッジ位置および下り勾配の参照範囲内の輪郭候補エッジ位置に対してフラグ番号を付与する。このとき、隣接する輪郭候補エッジ位置は1つの輪郭候補エッジ位置とみなし、図23中のフラグ番号「4」のように1つのフラグ番号を付与する。なお、ここでの処理は、管腔内画像の輪郭エッジを検出するための処理であり、平坦の領域に対応する参照範囲については処理しない。
【0063】
続いて、1つの勾配(参照範囲)から検出されるエッジ位置は勾配による輝度変化(勾配強度)が最も大きい位置であるとして、エッジ特性の最大値を持つ輪郭候補エッジ位置を選択する。すなわち、先ず、上り勾配の参照範囲および下り勾配の参照範囲を順次選択対象とし、選択対象の参照範囲内においてフラグ番号毎にエッジ特性を比較する。そして、エッジ特性の値が最大であるフラグ番号の輪郭候補エッジ位置を選択対象の参照範囲における横方向成分輪郭エッジ位置として選択する。例えば、下り勾配の参照範囲E41では、フラグ番号「1」が付与された輪郭候補エッジ位置を横方向成分輪郭エッジ位置として選択する。また、このとき、選択対象の参照範囲内にエッジ特性の値が最大のものが複数含まれる場合には、その参照範囲が上り勾配の参照範囲なのか下り勾配の参照範囲なのかに応じていずれか一方を選択する。具体的には、1つの参照範囲内にエッジ特性の最大値が複数ある場合は、勾配によって輝度値が立ち上がる位置とみなし、エッジ特性が最大値である複数の輪郭候補エッジ位置のうち、右方向に向かって上り勾配の参照範囲では一番左側の輪郭候補エッジ位置を、下りの勾配では一番右側の輪郭候補エッジ位置を選択する。例えば、上り勾配の参照範囲E42では前者(図23に向かって左側のフラグ番号「5」が付与された輪郭候補エッジ位置)を選択し、下り勾配の参照範囲E43では後者(図23に向かって右側のフラグ番号「9」が付与された輪郭候補エッジ位置)を選択する。なお、1つの参照範囲内にエッジ特性の最大値が複数ある場合にいずれを選択するのかは前述の手法に限定されるものではない。例えば、輪郭候補エッジが長いほどその輪郭候補エッジの輪郭エッジとしての信頼度が高いとし、輪郭候補エッジのエッジ長が長い方の輪郭エッジ候補位置を選択するようにしてもよい。
【0064】
以上の処理をy方向の全てのラインについて行い、横方向成分輪郭エッジ位置とした画素の画素値を例えば「1」、それ以外の画素の画素値を「0」とした横方向成分輪郭エッジ画像を得る。図24は、図18の横方向の参照範囲区画画像を参照しながら図21のエッジ特性画像を処理することで得た横方向成分輪郭エッジ画像を示す図である。
【0065】
続いて、縦方向の参照範囲区画画像をもとに、エッジ特性画像から縦方向成分輪郭エッジ位置を選択する。具体的には、横方向の場合と同様に、エッジ特性画像を縦方向の参照範囲毎に参照し、各参照範囲から輪郭候補エッジ位置を1つ選択する処理を縦方向(x方向)のライン毎に行うことで縦方向成分輪郭エッジ位置を得る。そして、縦方向成分輪郭エッジ位置とした画素の画素値を「1」、それ以外の画素の画素値を「0」とした縦方向成分輪郭エッジ画像を得る。図25は、図19の縦方向の参照範囲区画画像を参照しながら図21のエッジ特性画像を処理することで得た縦方向成分輪郭エッジ画像を示す図である。
【0066】
なお、ここでは、参照範囲内でエッジ特性が最も大きい輪郭候補エッジ位置を輪郭エッジ位置として選択することとした。これに対し、参照範囲内に含まれる輪郭候補エッジ線のうち、その参照範囲内での長さが最も長い輪郭候補エッジ線上の輪郭候補エッジ位置を輪郭エッジ位置として選択することとしてもよい。具体的には、選択対象の参照範囲内に含まれる各輪郭候補エッジ線上の画素数(輪郭候補エッジ位置の数)をそれぞれ計数し、計数した画素数が最も多い輪郭候補エッジ線上の輪郭候補エッジ位置を選択対象の参照範囲における輪郭エッジ位置として選択するようにしてもよい。例えば、図22の例では、参照範囲E3内において輪郭候補エッジ線EL32が最長であり、参照範囲E3内に含まれる輪郭候補エッジ線EL32上の輪郭候補エッジ位置を参照範囲E3における輪郭エッジ位置として選択する。
【0067】
あるいは、参照範囲内に含まれる輪郭候補エッジ線のうち、最も滑らかな輪郭候補エッジ線上の輪郭候補エッジ位置を輪郭エッジ位置として選択することとしてもよい。具体的には、輪郭候補エッジ線上に所定数の点を端から等間隔に設定する。続いて、設定した各点それぞれについて、左右に隣接する点へと向かうベクトルの外積の絶対値を算出する。そして、各点について算出した外積の絶対値の分散値を算出する。以上の処理を、参照範囲内に含まれる各輪郭候補エッジ線について行い、得られた分散値を比較する。そして、分散が最も小さい輪郭候補エッジ線を最も滑らかな輪郭候補エッジ線とし、この最も滑らかな輪郭候補エッジ線上の輪郭候補エッジ位置を輪郭エッジ位置として選択する。
【0068】
続いて、図6に示すように、方向成分輪郭エッジ統合部194が、方向成分輪郭エッジ統合処理を実行する(ステップa17)。この方向成分輪郭エッジ統合処理では、方向成分輪郭エッジ統合部194は、横方向成分輪郭エッジ位置および縦方向成分輪郭エッジ位置から信頼性の高いものを選んで統合し、輪郭エッジ画像を得る。
【0069】
処理手順としては、方向成分輪郭エッジ統合部194は、横方向成分輪郭エッジ画像および縦方向成分輪郭エッジ画像を画素毎に参照し、双方の画像において「1」が設定されている画素(横方向成分輪郭エッジ位置として選択されており、且つ縦方向成分輪郭エッジ位置として選択されている画素)は信頼性が高いため、輪郭エッジ位置として選択する。実際の処理では、次式(10),(11)に従い、横方向成分輪郭エッジ画像の画素値edgeA(x,y)および縦方向成分輪郭エッジ画像の画素値edgeB(x,y)の双方が「1」である画素について、輪郭エッジ画像の該当する画素の画素値Edge(x,y)を「1」とする。一方、いずれか一方が「1」の画素または双方が「0」の画素については、該当する画素の画素値Edge(x,y)を「0」とする。
【数5】

【0070】
また、上記したように、実施の形態1では、輪郭エッジ位置を得るために、峰続きの輝度値形状を横切る方向を参照方向として設定し、この参照方向において勾配強度が最大となる輪郭候補エッジ位置として検出している。ここで、勾配強度は峰続きの輝度値形状をとり、輪郭エッジ位置は峰続きの尾根位置にあたる。峰続きの輝度値形状を横切る方向は、尾根の方向に対してほとんどが垂直であるが、尾根方向に対して平行に近い場合、尾根が蛇行すると参照範囲に同じ輪郭候補エッジが複数回入るため、エッジの一部を消す可能性が生じる。このため、参照方向が横方向で、輪郭エッジが横方向の場合、信頼性が低いと考えられる。参照方向が縦方向で、輪郭エッジが縦方向の場合も同様に、信頼性が低いと考えられる。
【0071】
すなわち、横方向成分輪郭エッジ画像中の縦成分エッジについては信頼性があると考えられる。そこで、方向成分輪郭エッジ統合部194は、横方向成分輪郭エッジ画像の各画素の画素値edgeA(x,y)を順次参照し、次式(12),(13)に従い縦成分エッジの位置を輪郭エッジ位置として、その輪郭エッジ画像における画素値Edge(x,y)を「1」とする。
【数6】

【0072】
同様に、縦方向成分輪郭エッジ画像中の横方向エッジについても、信頼性があると考えられる。そこで、方向成分輪郭エッジ統合部194は、縦方向成分輪郭エッジ画像の各画素の画素値edgeB(x,y)を順次参照し、次式(14),(15)に従い横方向エッジの位置を輪郭エッジ位置として、その輪郭エッジ画像における画素値Edge(x,y)を「1」とする。
【数7】

【0073】
そして、演算部15は、輪郭エッジ画像出力処理を実行し、ステップa17の方向成分輪郭エッジ統合処理の結果得られた輪郭エッジ画像を例えば記録部14に出力して保存する(ステップa19)。図26は、図6のステップa17で図24の横方向成分輪郭エッジ画像および図25の縦方向成分輪郭エッジ画像を処理し、図6のステップa19で出力される輪郭エッジ画像を示す図である。
【0074】
管腔内画像に映る粘膜構造のような弾性体の輪郭部分には、全体として1つの勾配の途中に緩やかな勾配が存在するような箇所が存在する。このような箇所では、勾配強度の分布のピーク位置が2つ以上に分かれるため、単に勾配強度の分布のピーク位置(凸位置検出部172が検出する勾配強度の凸位置)をエッジ位置として検出する従来の手法では、輪郭付近で複数のエッジ線が検出されてしまう。これに対し、実施の形態1では、管腔内画像の各画素の勾配強度をもとに、輪郭候補エッジ位置を検出することとした。また、勾配強度をもとに各画素を上り勾配の領域および下り勾配の領域を含む複数の領域に区画して参照範囲を設定し、これら上り勾配および下り勾配の参照範囲毎に輪郭候補エッジ位置を選択して輪郭エッジ位置とすることとした。これによれば、輪郭部分において勾配強度のピーク位置が2つ以上存在する場合であっても、これらの中からエッジ特性の大きい方(勾配強度の最大値が大きい方)を粘膜構造の輪郭エッジとして検出することができる。したがって、管腔内画像から粘膜構造の輪郭エッジを精度良く検出することができる。
【0075】
(実施の形態2)
先ず、実施の形態2の画像処理装置の構成について説明する。図27は、実施の形態2の画像処理装置1aの機能構成例を説明するブロック図である。また、図28は、演算部15aを構成する候補エッジ検出部17aの構成例を説明するブロック図であり、図29は、参照範囲設定部18aの構成例を説明するブロック図であり、図30は、輪郭エッジ選択部19aの構成例を説明するブロック図である。なお、実施の形態1で説明した構成と同一の構成については、同一の符号を付する。図27に示すように、実施の形態2の画像処理装置1aは、外部I/F部11と、操作部12と、表示部13と、記録部14aと、演算部15aと、画像処理装置1a全体の動作を制御する制御部20とを備える。
【0076】
記録部14aには、実施の形態2の処理を実現して管腔内画像から輪郭エッジ(粘膜構造の輪郭エッジ)を検出するための画像処理プログラム141aが記録される。
【0077】
また、演算部15aは、勾配強度算出部16と、候補エッジ検出部17aと、参照範囲設定部18aと、輪郭エッジ選択部19aとを含む。ここで、勾配強度算出部16、候補エッジ検出部17aおよび輪郭エッジ選択部19aはこの順に接続され、勾配強度算出部16は参照範囲設定部18aに接続され、候補エッジ検出部17aは参照範囲設定部18aに接続され、参照範囲設定部18aは輪郭エッジ選択部19aに接続されている。
【0078】
候補エッジ検出部17aは、各画素の勾配強度をもとに、輪郭候補エッジ位置を検出する。この候補エッジ検出部17aは、図28に示すように、候補エッジ線検出手段としての候補エッジ線検出部173aと、閾値処理手段としての閾値処理部175aとを備える。ここで、候補エッジ線検出部173aは、閾値処理部175aに接続されている。
【0079】
候補エッジ線検出部173aは、勾配強度算出部16から入力される各画素の勾配強度をもとに、エッジ線を検出する。この候補エッジ線検出部173aは、細線化手段としての細線化部174aを備える。実施の形態2では、この細線化部174aが、各画素の勾配強度をもとに、細線化したエッジ線を検出する。ここで、細線化したエッジ線とは、幅が1画素のエッジ線のことをいう。検出したエッジ線(細線化したエッジ線)は、閾値処理部175aに出力される。閾値処理部175aは、入力されるエッジ線上の画素の勾配強度を閾値処理し、勾配強度の値が予め設定される閾値以上であるエッジ線上の画素を検出する。例えば、閾値処理部175aは、公知のヒステリシス(hysteresis)閾値処理を行う。以上のように構成される候補エッジ検出部17aは、閾値処理部175aが検出した勾配強度の大きいエッジ線上の画素を輪郭候補エッジ位置とし、参照範囲設定部18aおよび輪郭エッジ選択部19aに出力する。
【0080】
参照範囲設定部18aは、輪郭エッジ選択部19aが輪郭候補エッジ位置の中から輪郭エッジ位置を選択する際に参照する参照範囲を設定する。この参照範囲設定部18aは、図29に示すように、参照方向指定部181aと、参照範囲取得部182aとを備える。ここで、参照方向指定部181aは、参照範囲取得部182aに接続されている。
【0081】
参照方向指定部181aは、参照範囲を設定する方向(参照方向)を指定する。この参照方向指定部181aは、参照方向算出手段としての参照方向算出部184aを備える。参照方向算出部184aは、勾配強度算出部16から入力される各画素の勾配強度、および候補エッジ検出部17aから入力される輪郭候補エッジ位置をもとに、輪郭候補エッジ位置毎にその輪郭候補エッジ線の法線方向を算出し、該当する輪郭候補エッジ位置における参照方向とする。算出した各輪郭候補エッジ位置の参照方向は、参照範囲取得部182aに出力される。
【0082】
参照範囲取得部182aは、勾配強度閾値処理部183aを備え、参照範囲取得部182a入力される各輪郭候補エッジ位置の参照方向および候補エッジ検出部17aから入力される各画素の勾配強度をもとに、各輪郭候補エッジ位置についてその参照方向に沿った参照範囲を取得する。以上のように構成される参照範囲設定部18aは、各輪郭候補エッジ位置の参照範囲を輪郭エッジ選択部19aに出力する。
【0083】
輪郭エッジ選択部19aは、輪郭候補エッジ位置の中から輪郭エッジ位置を選択する。この輪郭エッジ選択部19aは、図30に示すように、エッジ特性取得部191と、エッジ特性比較部192aとを備える。ここで、エッジ特性取得部191は、エッジ特性比較部192aに接続されている。
【0084】
エッジ特性比較部192aは、参照範囲設定部18aから入力される各輪郭候補エッジ位置の参照範囲と、候補エッジ検出部17aから入力される輪郭候補エッジ位置をもとにエッジ特性取得部191が取得した各輪郭候補エッジ位置のエッジ特性とをもとに、各輪郭候補エッジ位置の参照範囲のそれぞれから輪郭エッジ位置を選択する。
【0085】
図31は、実施の形態2の画像処理装置1aが行う処理手順を示す全体フローチャートである。なお、ここで説明する処理は、記録部14aに記録された画像処理プログラム141aに従って画像処理装置1aの各部が動作することによって実現される。なお、図31において、実施の形態1と同一の処理工程には、同一の符号を付する。
【0086】
図31に示すように、実施の形態2では、ステップa7において勾配強度算出部16の微分処理部163(図2を参照)が勾配強度算出処理を実行し、各画素の符号付きの勾配強度を算出した後、候補エッジ検出部17aが、輪郭候補エッジ検出処理を実行する(ステップb9)。
【0087】
この輪郭候補エッジ検出処理では、先ず、候補エッジ線検出部173aの細線化部174aが、実施の形態1と同様の手順で、各画素の勾配強度をもとに、輪郭エッジ位置の候補となる輪郭候補エッジ位置を検出する。具体的には、各画素における勾配の最大変化方向を算出し、算出した最大変化方向をもとに、各画素の勾配変化方向を検出する。その後、各画素の勾配変化方向をもとに勾配強度の凸位置を検出することで、細線化したエッジ線(幅が1画素分のエッジ線)を得る。
【0088】
その後、検出したエッジ線上の画素の中から勾配強度の値が小さい画素を除外することで、輪郭候補エッジ位置を絞り込む。具体的には、閾値処理部175aが、ヒステリシス閾値処理を行って勾配強度の値が予め設定される閾値以上であるエッジ線上の画素を検出し、最終的な輪郭候補エッジ位置を得る。
【0089】
図32(a)は、前段の処理で検出したエッジ線の一例を示す模式図であり、3本のエッジ線EL51,EL52,EL53を示している。また、図32(b)および図32(c)は、横軸を図32(a)中のエッジ線EL52上の座標(x,y)とし、縦軸を該当する各画素の勾配強度の値として図32(a)中のエッジ線EL52上の勾配強度の変化曲線を示したものである。閾値処理部175aは、先ず、図32(b)中に示す第1の閾値を用いてエッジ線EL52上の勾配強度を閾値処理することで、勾配強度が閾値以上である範囲、具体的には、図32(a)に示すエッジ線EL52上の画素P53〜画素P54の範囲を輪郭候補エッジ位置として検出する。続いて、閾値処理部175aは、図32(c)中に示す第1の閾値よりも値の小さい第2の閾値を用いてエッジ線EL52上の勾配強度を閾値処理し、勾配強度が第2の閾値以上である画素のうち、第1の閾値を用いた閾値処理で検出した範囲の端点である画素P53,P54と途切れずに連続しているエッジ線EL52上の画素、具体的には画素P51〜画素P53および画素P54〜画素P55の範囲を輪郭候補エッジ位置としてさらに検出する。エッジ線EL52上の画素P55〜画素P51の範囲については、輪郭候補エッジ位置として検出しない。また、輪郭候補エッジ線EL51,EL53についても同様に、輪郭候補エッジ位置を絞り込む。
【0090】
なお、実施の形態2において、図31に示すステップa3〜ステップb9の処理を具体的に実現するアルゴリズムとしては、既に公知のケニーのエッジ検出アルゴリズム(参考:非特許文献1またはCG−ARTS協会,ディジタル画像処理,209P−輪郭線検出)を用いることができる。
【0091】
続いて、参照範囲設定部18aが参照範囲設定処理を実行し、ステップa7で算出した各画素の勾配強度をもとに、輪郭候補エッジ位置毎に参照範囲を設定する(ステップb11)。図33は、実施の形態2における参照範囲の設定原理を説明する図であり、2本の輪郭候補エッジ線EL61,EL62を示している。ここで、例えば、輪郭候補エッジ線EL61上の輪郭候補エッジ位置P6に着目すると、輪郭候補エッジ線EL61の輪郭候補エッジ位置P6における図33中に破線で示す法線方向上に存在する画素のうち、勾配の方向が輪郭候補エッジ位置P6と同じである画素の範囲(例えば画素P61〜画素P62の範囲)を輪郭候補エッジ位置P6の参照範囲とする。
【0092】
実際の処理手順としては、先ず、参照方向指定部181aの参照方向算出部184aが、各輪郭候補エッジ位置を順次処理対象とし、処理対象の輪郭候補エッジ位置が属する輪郭候補エッジ線の処理対象の輪郭候補エッジ位置における法線方向を参照方向として算出する。法線方向の算出方法は特に限定されるものではないが、例えば、実施の形態1において勾配変化方向検出部171が行う処理として説明した手順と同様にその勾配の最大変化方向を算出し、勾配変化方向を検出することで実現できる。なお、この場合には、前段のステップb9で輪郭候補エッジ位置を検出する際に検出した各画素の勾配変化方向を記録部14aに保存しておき、処理対象の輪郭候補エッジ位置における勾配変化方向を読み出すようにしてもよい。
【0093】
その後、参照範囲取得部182aが、輪郭候補エッジ位置を順次処理対象とし、その参照方向上に存在する各画素を実施の形態1と同様の要領でセグメンテーション(区画)する。具体的には、参照範囲取得部182aにおいて勾配強度閾値処理部183aが、処理対象とする輪郭候補エッジ位置の参照方向上に存在する各画素の勾配強度を閾値処理することで、参照方向上の各画素を上り勾配の範囲、下り勾配の範囲、および平坦領域の3つの範囲に区画する。そして、区画した各範囲のうち、処理対象の輪郭候補エッジ位置を含む範囲をその参照範囲とする。
【0094】
以上のようにして参照範囲設定処理を行い、各輪郭候補エッジ位置について参照方向を算出し、参照範囲を設定することで、輪郭候補エッジ位置の勾配変化方向に沿った参照方向上で輪郭候補エッジ位置を含む上り勾配または下り勾配の範囲を参照範囲として設定することができる。これによれば、後段の処理において、輪郭候補エッジ位置を含む勾配毎に1つの輪郭エッジ位置を選択することができるので、輪郭エッジの検出精度が向上する。
【0095】
続いて、図31に示すように、輪郭エッジ選択部19aのエッジ特性取得部191がエッジ特性取得処理を実行し、ステップb9で検出した各輪郭候補エッジ位置についてエッジ特性を取得する(ステップb13)。このエッジ特性取得処理は、実施の形態1で説明した図6のステップa13と同様の手順で行う。
【0096】
続いて、エッジ特性比較部192aが輪郭エッジ選択処理を実行し、ステップb11で輪郭候補エッジ位置毎に設定した各参照範囲から輪郭エッジ位置を1つずつ選択する(ステップb15)。
【0097】
図34は、実施の形態2における輪郭エッジ位置の選択原理を1つの輪郭候補エッジ位置に着目して説明する図であり、横軸を着目する輪郭候補エッジ位置の参照方向上の座標とし、縦軸を着目する輪郭候補エッジ位置の参照範囲内のエッジ特性として参照範囲内の各画素のエッジ特性の値を示している。実施の形態2では、図34に示すように、この参照範囲内の輪郭候補エッジ位置に対してフラグ番号を付与する。そして、フラグ番号毎にエッジ特性を比較し、エッジ特性の値が最大であるフラグ番号(例えば図34の例ではフラグ番号「2」)の輪郭候補エッジ位置を、処理対象の輪郭候補エッジ位置について設定した参照範囲における輪郭エッジ位置として選択する。このとき、参照範囲内にエッジ特性の値が最大のものが複数含まれる場合には、実施の形態1と同様に、上り勾配の参照範囲では前者(図34に向かって左側)、下り勾配の参照範囲では後者(図34に向かって右側)を選択する。
【0098】
以上の処理を全ての輪郭候補エッジ位置について行い、輪郭エッジ位置とした画素の画素値を例えば「1」、それ以外の画素の画素値を「0」とした輪郭エッジ画像を得る。その後、演算部15aは、実施の形態1と同様に輪郭エッジ画像出力処理を実行し、ステップb15の輪郭エッジ選択処理の結果得られた輪郭エッジ画像を例えば記録部14aに出力して保存する(ステップb19)。
【0099】
以上説明したように、実施の形態2では、輪郭候補エッジ位置毎に各輪郭候補エッジ位置における輪郭候補エッジ線の法線方向を参照方向として算出し、算出した参照方向上の輪郭候補エッジ位置を含む勾配の範囲を参照範囲として設定することとした。そして、輪郭候補エッジ毎の参照範囲のそれぞれから1つの輪郭候補エッジ位置を選択して輪郭エッジ位置とした。これによれば、輪郭候補エッジ位置毎に設定した参照範囲、すなわち、該当する輪郭候補エッジ位置における輪郭候補エッジ線の法線方向である参照方向に沿った勾配の範囲であって、該当する輪郭候補エッジ位置を含む勾配の範囲から1つの輪郭エッジ位置を選択することができる。したがって、実施の形態1と同様の効果を奏することができ、管腔内画像から粘膜構造の輪郭エッジを精度良く検出することができる。
【0100】
(実施の形態3)
先ず、実施の形態3の画像処理装置の構成について説明する。図35は、実施の形態3の画像処理装置1bの機能構成例を説明するブロック図である。なお、実施の形態1で説明した構成と同一の構成については、同一の符号を付する。図35に示すように、実施の形態3の画像処理装置1bは、外部I/F部11と、操作部12と、表示部13と、記録部14bと、演算部15bと、画像処理装置1b全体の動作を制御する制御部20とを備える。
【0101】
記録部14bには、実施の形態3の処理を実現して管腔内画像から輪郭エッジ(粘膜構造の輪郭エッジ)を検出するための画像処理プログラム141bが記録される。
【0102】
また、演算部15bは、実施の形態1で説明した勾配強度算出部16と、候補エッジ検出部17と、参照範囲設定部18と、輪郭エッジ選択部19とを含む。そして、これらの各部は、勾配強度算出部16、参照範囲設定部18、候補エッジ検出部17、輪郭エッジ選択部19の順に接続される。すなわち、実施の形態3は、勾配強度算出部16が参照範囲設定部18に接続され、参照範囲設定部18が候補エッジ検出部17に接続される点が実施の形態1と異なる。そして、勾配強度算出部16は、管腔内画像を処理して各画素の勾配強度を算出し、参照範囲設定部18に出力する。参照範囲設定部18は、参照方向毎の参照範囲を設定して候補エッジ検出部17に出力する。候補エッジ検出部17は、輪郭候補エッジ位置を検出して輪郭エッジ選択部19に出力する。輪郭エッジ選択部19は、輪郭候補エッジ位置から輪郭エッジ位置を選択し、例えば記録部14に出力して保存する。
【0103】
図36は、実施の形態3の画像処理装置1bが行う処理手順を示す全体フローチャートである。なお、ここで説明する処理は、記録部14bに記録された画像処理プログラム141bに従って画像処理装置1bの各部が動作することによって実現される。なお、図36において、実施の形態1と同一の処理工程には、同一の符号を付する。
【0104】
図36に示すように、実施の形態3では、ステップa7において勾配強度算出部16の微分処理部163(図2を参照)が勾配強度算出処理を実行し、各画素の符号付きの勾配強度を算出した後、参照範囲設定部18が参照範囲設定処理を実行する(ステップc9)。この参照範囲設定処理は、実施の形態1で説明した図6のステップa11と同様の手順で行う。
【0105】
続いて、候補エッジ検出部17が輪郭候補エッジ検出処理を実行し、ステップa7で算出した各画素の勾配強度をもとに輪郭候補エッジ位置を検出する(ステップc11)。処理の手順自体は、実施の形態1で説明した図6のステップa9と同様である。ただし、実施の形態3では、ステップc9で参照範囲設定部18が区画した上り勾配の領域に対応する各参照範囲および下り勾配の領域に対応する各参照範囲から輪郭候補エッジ位置を検出し、平坦領域については輪郭候補エッジ位置の検出を行わない。平坦領域からは輪郭エッジ位置を検出する必要がないためである。具体的には、候補エッジ検出部17は、横方向の参照範囲区画画像および縦方向の参照範囲区画画像を参照しながら、横方向成分勾配強度画像の上り勾配および下り勾配の領域に対応する各参照範囲内の画素、および縦方向成分勾配強度画像の上り勾配および下り勾配の領域に対応する各参照範囲内の画素の勾配強度をもとに、輪郭候補エッジ位置を検出する。その後、ステップa13に移行する。
【0106】
以上説明したように、実施の形態3によれば、実施の形態1と同様の効果を奏することができるとともに、平坦領域は対象とせずに、上り勾配の領域および下り勾配の領域のみを対象として輪郭候補エッジ位置を検出することができるので、実施の形態1のように全ての画素を対象として輪郭候補エッジ位置を検出する場合と比較して処理時間の短縮が図れる。
【0107】
なお、上記した実施の形態1の画像処理装置1、実施の形態2の画像処理装置1a、実施の形態3の画像処理装置1bは、予め用意されたプログラムをパソコンやワークステーション等のコンピュータシステムで実行することによって実現することができる。以下、各実施の形態1〜3で説明した画像処理装置1,1a,1bと同様の機能を有し、画像処理プログラム141,141a,141bを実行するコンピュータシステムについて説明する。
【0108】
図37は、本変形例におけるコンピューターシステム400の構成を示すシステム構成図であり、図38は、このコンピューターシステム400を構成する本体部410の構成を示すブロック図である。図37に示すように、コンピューターシステム400は、本体部410と、本体部410からの指示によって表示画面421に画像等の情報を表示するためのディスプレイ420と、このコンピューターシステム400に種々の情報を入力するためのキーボード430と、ディスプレイ420の表示画面421上の任意の位置を指定するためのマウス440とを備える。
【0109】
また、このコンピューターシステム400における本体部410は、図37および図38に示すように、CPU411と、RAM412と、ROM413と、ハードディスクドライブ(HDD)414と、CD−ROM460を受け入れるCD−ROMドライブ415と、USBメモリ470を着脱可能に接続するUSBポート416と、ディスプレイ420、キーボード430およびマウス440を接続するI/Oインターフェース417と、ローカルエリアネットワークまたは広域エリアネットワーク(LAN/WAN)N1に接続するためのLANインターフェース418とを備える。
【0110】
さらに、このコンピューターシステム400には、インターネット等の公衆回線N3に接続するためのモデム450が接続されるとともに、LANインターフェース418およびローカルエリアネットワークまたは広域エリアネットワークN1を介して、他のコンピューターシステムであるパソコン(PC)481、サーバ482、プリンタ483等が接続される。
【0111】
そして、このコンピューターシステム400は、記録媒体に記録された画像処理プログラム(例えば実施の形態1の画像処理プログラム141や実施の形態2の画像処理プログラム141a、実施の形態3の画像処理プログラム141b)を読み出して実行することで画像処理装置(例えば実施の形態1の画像処理装置1や実施の形態2の画像処理装置1a、実施の形態3の画像処理装置1b)を実現する。ここで、記録媒体とは、CD−ROM460やUSBメモリ470の他、MOディスクやDVDディスク、フレキシブルディスク(FD)、光磁気ディスク、ICカード等を含む「可搬用の物理媒体」、コンピューターシステム400の内外に備えられるHDD414やRAM412、ROM413等の「固定用の物理媒体」、モデム450を介して接続される公衆回線N3や、他のコンピューターシステムであるPC481やサーバ482が接続されるローカルエリアネットワークまたは広域エリアネットワークN1等のように、プログラムの送信に際して短期にプログラムを記憶する「通信媒体」等、コンピューターシステム400によって読み取り可能な画像処理プログラムを記録するあらゆる記録媒体を含む。
【0112】
すなわち、画像処理プログラムは、「可搬用の物理媒体」「固定用の物理媒体」「通信媒体」等の記録媒体にコンピューター読み取り可能に記録されるものであり、コンピューターシステム400は、このような記録媒体から画像処理プログラムを読み出して実行することで画像処理装置を実現する。なお、画像処理プログラムは、コンピューターシステム400によって実行されることに限定されるものではなく、他のコンピューターシステムであるPC481やサーバ482が画像処理プログラムを実行する場合や、これらが協働して画像処理プログラムを実行するような場合にも、本発明を同様に適用することができる。
【0113】
また、本発明は、上記した各実施の形態1〜3およびその変形例そのままに限定されるものではなく、各実施の形態や変形例に開示されている複数の構成要素を適宜組み合わせることによって、種々の発明を形成できる。例えば、各実施の形態や変形例に示される全構成要素からいくつかの構成要素を除外して形成してもよい。あるいは、異なる実施の形態や変形例に示した構成要素を適宜組み合わせて形成してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0114】
以上のように、本発明の画像処理装置、画像処理方法、および画像処理プログラムは、対象画像から対象物の輪郭エッジを精度良く検出するのに適している。
【符号の説明】
【0115】
1,1a,1b 画像処理装置
11 外部I/F部
12 操作部
13 表示部
14,14a,14b 記録部
141,141a,141b 画像処理プログラム
15,15a,15b 演算部
16 勾配強度算出部
161 ノイズ除去部
162 構造情報取得部
163 微分処理部
17,17a 候補エッジ検出部
171 勾配変化方向検出部
172 凸位置検出部
173a 候補エッジ線検出部
174a 細線化部
175a 閾値処理部
18,18a 参照範囲設定部
181,181a 参照方向指定部
184a 参照方向算出部
182 参照範囲取得部
183 勾配強度閾値処理部
19,19a 輪郭エッジ選択部
191 エッジ特性取得部
192,192a エッジ特性比較部
193 方向成分輪郭エッジ選択部
194 方向成分輪郭エッジ統合部
20 制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の対象物を撮像した対象画像の画素値をもとに、各画素の勾配強度を算出する勾配強度算出手段と、
前記各画素の勾配強度をもとに輪郭候補エッジ位置を検出する候補エッジ検出手段と、
前記各画素の勾配強度をもとに、前記輪郭候補エッジ位置の中から輪郭エッジ位置を選択する際に参照する参照範囲を設定する参照範囲設定手段と、
前記参照範囲内の輪郭候補エッジ位置の中から1つを選択し、前記輪郭エッジ位置とする輪郭エッジ選択手段と、
を備えることを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
前記対象画像からノイズを除去するノイズ除去手段を備えることを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記対象画像の画素値をもとに、前記対象物表面の形状変化情報を取得する構造情報取得手段を備えることを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項4】
前記対象画像に対して微分フィルタ処理を行い、前記各画素の勾配強度を算出する微分処理手段を備えることを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項5】
前記候補エッジ検出手段は、
前記各画素の勾配強度をもとに、前記各画素における勾配変化方向を検出する勾配変化方向検出手段と、
前記各画素の勾配変化方向をもとに、勾配の方向が同じ領域内において勾配強度の変化が凸となる画素を凸位置として検出する凸位置検出手段と、
を備え、前記凸位置を前記輪郭候補エッジ位置とすることを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項6】
前記候補エッジ検出手段は、
前記各画素の勾配強度をもとにエッジ線を検出する候補エッジ線検出手段と、
前記エッジ線上の画素の前記勾配強度を閾値処理し、前記勾配強度の値が所定の閾値以上である前記エッジ線上の画素を検出する閾値処理手段と、
を備え、前記勾配強度の値が前記所定の閾値以上である前記エッジ線上の画素を前記輪郭候補エッジ位置とすることを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項7】
前記候補エッジ線検出手段は、前記各画素の勾配強度をもとに、細線化したエッジ線を検出する細線化手段を備えることを特徴とする請求項6に記載の画像処理装置。
【請求項8】
前記閾値処理手段は、ヒステリシス閾値処理を行って前記勾配強度の値が前記所定の閾値以上である前記エッジ線上の画素を検出することを特徴とする請求項6に記載の画像処理装置。
【請求項9】
前記参照範囲設定手段は、
前記参照範囲を設定する参照方向を指定する参照方向指定手段と、
前記輪郭候補エッジ位置を含み、前記参照方向に沿って連続する上り勾配の範囲または下り勾配の範囲を前記参照範囲として取得する参照範囲取得手段と、
を備えることを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項10】
前記参照方向指定手段は、複数の参照方向を指定し、
前記参照範囲取得手段は、前記参照方向毎に前記参照範囲を取得することを特徴とする請求項9に記載の画像処理装置。
【請求項11】
前記複数の参照方向は、前記対象画像の横方向および縦方向を含む2つ以上の方向であることを特徴とする請求項10に記載の画像処理装置。
【請求項12】
前記参照方向指定手段は、前記輪郭候補エッジ位置の法線方向を前記参照方向として算出する参照方向算出手段を備えることを特徴とする請求項9に記載の画像処理装置。
【請求項13】
前記参照範囲取得手段は、前記参照方向上の画素の前記勾配強度の値を閾値処理し、前記参照方向に沿った前記上り勾配の範囲または前記下り勾配の範囲を取得する勾配強度閾値手段を備えることを特徴とする請求項9に記載の画像処理装置。
【請求項14】
前記候補エッジ検出手段は、前記参照範囲設定手段によって設定された前記参照範囲内において前記輪郭候補エッジ位置を検出することを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項15】
前記輪郭エッジ選択手段は、
前記輪郭候補エッジ位置が途切れずに連続している輪郭候補エッジ線毎に前記輪郭候補エッジ位置の前記勾配強度の最大値を取得し、該勾配強度の最大値を該当する輪郭候補エッジ線上の前記輪郭候補エッジ位置のエッジ特性として取得するエッジ特性取得手段と、
前記参照範囲内に含まれる前記輪郭候補エッジ位置のエッジ特性を比較し、該比較結果をもとに前記輪郭エッジ位置を選択するエッジ特性比較手段と、
を備えることを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項16】
前記勾配強度算出手段は、前記各画素の勾配強度の複数の方向の方向成分を算出し、
前記候補エッジ検出手段は、前記各画素の勾配強度の前記複数の方向の方向成分をもとに前記輪郭候補エッジ位置を検出し、
前記参照範囲設定手段は、前記複数の方向を参照方向として該参照方向毎に前記参照範囲を設定し、
前記エッジ特性比較手段は、
前記参照方向毎に、対応する前記参照範囲から方向成分輪郭エッジ位置を選択する方向成分輪郭エッジ選択手段と、
前記参照方向毎の前記方向成分輪郭エッジ位置のうち、信頼度の高い方向成分輪郭エッジ位置を統合して前記輪郭エッジとする方向成分輪郭エッジ統合手段と、
を備えることを特徴とする請求項15に記載の画像処理装置。
【請求項17】
所定の対象物を撮像した対象画像の画素値をもとに、各画素の勾配強度を算出する勾配強度算出工程と、
前記各画素の勾配強度をもとに輪郭候補エッジ位置を検出する候補エッジ検出工程と、
前記各画素の勾配強度をもとに、前記輪郭候補エッジ位置の中から輪郭エッジ位置を選択する際に参照する参照範囲を設定する参照範囲設定工程と、
前記参照範囲内の輪郭候補エッジ位置の中から1つを選択し、前記輪郭エッジ位置とする輪郭エッジ選択工程と、
を含むことを特徴とする画像処理方法。
【請求項18】
所定の対象物を撮像した対象画像の画素値をもとに、各画素の勾配強度を算出する勾配強度算出工程と、
前記各画素の勾配強度をもとに、前記輪郭候補エッジ位置の中から輪郭エッジ位置を選択する際に参照する参照範囲を設定する参照範囲設定工程と、
前記参照範囲内の画素の前記勾配強度をもとに、前記参照範囲内の輪郭候補エッジ位置を検出する候補エッジ検出工程と、
前記参照範囲内の輪郭候補エッジ位置の中から1つを選択し、前記輪郭エッジ位置とする輪郭エッジ選択工程と、
を含むことを特徴とする画像処理方法。
【請求項19】
コンピュータに、
所定の対象物を撮像した対象画像の画素値をもとに、各画素の勾配強度を算出する勾配強度算出手順と、
前記各画素の勾配強度をもとに輪郭候補エッジ位置を検出する候補エッジ検出手順と、
前記各画素の勾配強度をもとに、前記輪郭候補エッジ位置の中から輪郭エッジ位置を選択する際に参照する参照範囲を設定する参照範囲設定手順と、
前記参照範囲内の輪郭候補エッジ位置の中から1つを選択し、前記輪郭エッジ位置とする輪郭エッジ選択手順と、
を実行させることを特徴とする画像処理プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9−1】
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【図9−2】
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【図13】
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【図14】
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【図15−1】
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【図15−2】
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【図15−3】
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【図16−1】
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【図16−2】
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【図16−3】
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【図16−4】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【図37】
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【図38】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−73953(P2012−73953A)
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−219901(P2010−219901)
【出願日】平成22年9月29日(2010.9.29)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】