説明

画像処理装置、画像処理方法、及び画像処理プログラム

【課題】複数色の画像信号からなる画像に対しても、適切な補正処理を行なうこと。
【解決手段】 複数色の画像信号で構成される画像に補正処理を施す画像処理装置である。処理対象画素を含む画像領域を抽出し、画像領域に含まれる画素の複数色に対応する信号値から1つの代表信号値を生成する(S2501)。代表信号値に基づいて、画像領域に関する特徴量を算出し(S2503、2505、2511)、算出した特徴量に基づいて、複数色で共通の置換候補画素を画像領域内から選択する(S2512)。処理対象画素の信号値及び置換候補画素の信号値から算出した新規画素値で処理対象画素の信号値を置換する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像に補正処理を施す画像処理装置、画像処理方法、及び画像処理プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、画像に補正処理を加える画像処理装置が知られている。例えば、複写機のスキャナで光学的に読み取った画像のエッジは、原稿画像のエッジに比べてなだらかになり、このまま記録媒体上に印刷を施すとシャープ感が損なわれた画像になる。また、シャープ感を出す目的で読み取り後にエッジ強調処理としてエッジ強調フィルタを実施すると、オーバシュートやアンダシュートと呼ばれる、文字の縁が強調されすぎて不自然な画像になってしまう。また、読み取り時に発生したノイズが強調されてしまうという問題が生じる。また読み取り時に発生するモアレが強調されてしまうという問題が生じる。そこで、これらの問題を解決するために、周辺の画素で注目画素を置き換えるという技術が提案されてきた(特許文献1参照)。
【特許文献1】特許2620368号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記の従来技術では、複数色の画像信号がある場合に、適切な補正手段を提供できなかった。例えば、特許文献1に記載の技術では、複数色毎に独立して画像信号の分布形状による判別処理を行うと、カラー画像に適した画像強調信号を作成することができず、色ずれを起こしていた。
【0004】
さらに、画像信号の分布形状を調べる場合に、フィルタのサイズを大きくすると計算量が増加し、アンシャープ信号を作成するための処理が増加してしまうという課題があった。
【0005】
本発明は、上記従来技術の課題を解決するためになされたもので、その目的は、複数色の画像信号からなる画像に対しても、適切な補正処理を行なうことにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明に係る装置は、
複数色の画像信号で構成される画像に補正処理を施す画像処理装置において、
処理対象画素を含む画像領域を抽出する抽出手段と、
前記画像領域に含まれる画素の複数色に対応する信号値から1つの代表信号値を生成する生成手段と、
前記代表信号値に基づいて、前記処理対象画素に関する特徴量を算出する特徴量算出手段と、
算出した前記特徴量に基づいて、前記複数色で共通の置換候補画素を前記画像領域内から選択する手段と、
前記処理対象画素の信号値及び前記置換候補画素の信号値から算出した新規画素値で前記処理対象画素の信号値を置換する手段と、
を有することを特徴とする。
【0007】
上記目的を達成するため、本発明に係る他の装置は、
複数色の画像信号で構成される画像に補正処理を施す画像処理装置において、
処理対象画素を含む画像領域を抽出する抽出手段と、
前記画像領域内でエッジ方向を決定するエッジ方向決定手段と、
前記エッジ方向に含まれる画素群から、置換候補画素を選択する選択手段と、
前記処理対象画素の信号値及び前記置換候補画素の信号値から算出した新規画素値で前記処理対象画素の信号値を置換する手段と、
を有することを特徴とする。
【0008】
上記目的を達成するため、本発明に係るさらに他の装置は、
複数色の画像信号で構成される画像に補正処理を施す画像処理装置において、
処理対象画素を含む画像領域を抽出する抽出手段と、
前記画像領域に含まれる画素の複数色に対応する信号値から1つの代表信号値を生成する生成手段と、
前記代表信号値に基づいて、前記処理対象画素に関する特徴量を算出する特徴量算出手段と、
算出した前記特徴量に基づいて、前記複数色で共通の置換候補画素を前記画像領域内から選択する手段と、
前記画像領域内で前記代表信号値に基づいてエッジ方向を決定するエッジ方向決定手段と、
前記エッジ方向に含まれる画素群から、置換候補画素を選択する選択手段と、
前記処理対象画素の信号値及び前記置換候補画素の信号値から算出した新規画素値で前記処理対象画素の信号値を置換する手段と、
を有することを特徴とする。
【0009】
上記目的を達成するため、本発明に係る方法は、
複数色の画像信号で構成される画像に補正処理を施す画像処理方法において、
処理対象画素を含む画像領域を抽出する抽出工程と、
前記画像領域に含まれる画素の複数色に対応する信号値から1つの代表信号値を生成する生成工程と、
前記代表信号値に基づいて、前記処理対象画素に関する特徴量を算出する特徴量算出工程と、
算出した前記特徴量に基づいて、前記複数色で共通の置換候補画素を前記画像領域内から選択する工程と、
前記処理対象画素の信号値及び前記置換候補画素の信号値から算出した新規画素値で前記処理対象画素の信号値を置換する工程と、
を有することを特徴とする。
【0010】
上記目的を達成するため、本発明に係る他の方法は、
複数色の画像信号で構成される画像に補正処理を施す画像処理方法において、
処理対象画素を含む画像領域を抽出する抽出工程と、
前記画像領域に含まれる画素の複数色に対応する信号値から1つの代表信号値を生成する生成工程と、
前記代表信号値に基づいて、前記処理対象画素に関する特徴量を算出する特徴量算出工程と、
算出した前記特徴量に基づいて、前記複数色で共通の置換候補画素を前記画像領域内から選択する工程と、
前記画像領域内で前記代表信号値に基づいてエッジ方向を決定するエッジ方向決定工程と、
前記エッジ方向に含まれる画素群から、置換候補画素を選択する選択工程と、
前記処理対象画素の信号値及び前記置換候補画素の信号値から算出した新規画素値で前記処理対象画素の信号値を置換する工程と、
を有することを特徴とする。
【0011】
上記目的を達成するため、本発明に係るプログラムは、
複数色の画像信号で構成される画像に補正処理を施す画像処理プログラムであって、
コンピュータに、
処理対象画素を含む画像領域を抽出する抽出工程と、
前記画像領域に含まれる画素の複数色に対応する信号値から1つの代表信号値を生成する生成工程と、
前記代表信号値に基づいて、前記処理対象画素に関する特徴量を算出する特徴量算出工程と、
算出した前記特徴量に基づいて、前記複数色で共通の置換候補画素を前記画像領域内から選択する工程と、
前記処理対象画素の信号値及び前記置換候補画素の信号値から算出した新規画素値で前記処理対象画素の信号値を置換する工程と、
を実行させることを特徴とする。
【0012】
上記目的を達成するため、本発明に係る他のプログラムは、
複数色の画像信号で構成される画像に補正処理を施す画像処理プログラムであって、
コンピュータに、
処理対象画素を含む画像領域を抽出する抽出工程と、
前記画像領域に含まれる画素の複数色に対応する信号値から1つの代表信号値を生成する生成工程と、
前記代表信号値に基づいて、前記処理対象画素に関する特徴量を算出する特徴量算出工程と、
算出した前記特徴量に基づいて、前記複数色で共通の置換候補画素を前記画像領域内から選択する工程と、
前記画像領域内で前記代表信号値に基づいてエッジ方向を決定するエッジ方向決定工程と、
前記エッジ方向に含まれる画素群から、置換候補画素を選択する選択工程と、
前記処理対象画素の信号値及び前記置換候補画素の信号値から算出した新規画素値で前記処理対象画素の信号値を置換する工程と、
を実行させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、複数色の画像信号からなる画像に対しても、適切な補正処理を行なうことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下に、図面を参照して、この発明の好適な実施の形態を例示的に詳しく説明する。ただし、この実施の形態に記載されている構成要素はあくまで例示であり、この発明の範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。
【0015】
<MFPの構成>
図1は、本発明の実施の形態に係るマルチファンクションプリンタ(以下、MFP)1の概観斜視図である。図1(a)は、MFP1のADF(オートドキュメントフィーダ)31部分を閉じた状態であり、図1(b)は、開いた状態である。
【0016】
このMFP1は、基本的に、ホストコンピュータ(PC)からデータを受信してプリントするプリンタとしての機能及びスキャナとしての機能を有する。さらにMFP単体で動作する機能として、スキャナで読取った画像をプリンタで印刷するコピー機能、メモリカードなどの記憶媒体から画像データを読取って印刷する機能、或いはデジタルカメラからの画像データを受信して印刷する機能を備えている。
【0017】
図1において、MFP1はフラットベットスキャナなどのスキャニングユニット14、インクジェット式や電子写真式などによるプリントユニット13を備えている。また、表示パネル等のディスプレイユニット19や各種キースイッチ等を備えるオペレーションユニット15を備えている。更に、MFP1の背面にはPCと通信するためのUSBポート(不図示)が設けられ、PCとの通信が行われる。各種メモリカードからデータを読み出すためのカードスロットを含むカードインタフェイス22やデジタルカメラとデータ通信を行うためのカメラポートを含むカメラインタフェイス23が設けられている。MFP1は、他にも、自動で原稿を原稿台にセットするためのADF31などを備えている。
【0018】
図2は、MFP1の内部構成を示すブロック図である。図2において、CPU11は、MFP1が備える様々な機能を制御し、オペレーションユニット15の所定の操作に従い、ROM16に記憶された画像処理のプログラムを実行する。プログラムを実行することにより、CPU11が処理対象画素を選択したり、処理対象画素を含む予め定められた大きさの画像領域を抽出したりできる。また、CPU11は、画像領域内に含まれる画素の信号値から、処理対象画素に関する変動量や変動回数や変動加速度を算出することもできる。ROM16には、画像処理に用いられる様々なテーブルや数式が格納されており、変動量や変動回数や変動加速度と様々な補正強度との対応関係を設定する設定手段として機能する。CCDを備えるスキャニングユニット14は、原稿画像を読取り、赤(R)、緑(G)および青(B)色のアナログ輝度データを出力する。なお、スキャニングユニット14は、CCDの代わりに密着型イメージセンサ(CIS)を備えてもよい。また、ADF31を備えれば、連続でオーダーシートを読取ることができ更に簡便である。
【0019】
また、カードインターフェイス22は、例えばディジタルスチルカメラ(Digital Still Camere:以下DSC)で撮影され、メモリカードなどに記録された画像データを、オペレーションユニット15に対する操作に従い読み込む。なお、カードインターフェイス22を介して読み込まれた画像データの色空間は、必要ならば、画像処理部12により、DSCの色空間(例えばYCbCr)から標準的なRGB色空間(例えばNTSC−RGBやsRGB)に変換される。また、そのヘッダ情報に基づき、読み込まれた画像データは、有効な画素数への解像度変換など、アプリケーションに必要な様々な処理が必要に応じて施される。また、カメラインターフェイス23は、DSCに直接接続して画像データを読み込むためのものである。
【0020】
画像処理部12においては、読取り信号値の変換、画像の補正・加工処理、輝度信号(RGB)から濃度信号(CMYK)への変換、スケーリング、ガンマ変換、誤差拡散等の画像処理が行われる。画像処理部12が行なう補正処理としては、エッジ強調処理、平滑化処理、置換処理、及び無彩色化処理などが含まれ、補正手段として機能する。画像処理部12での画像処理によって得られるデータは、RAM17に格納される。RAM17に格納された補正データが所定量に達すると、プリントユニット13による記録動作が実行される。
【0021】
不揮発性RAM18としては、バッテリバックアップされたSRAMなどを用いることができ、MFP1に固有のデータなどを記憶する。オペレーションユニット15は、記憶媒体(メモリカード)に記憶された画像データを選択し、記録をスタートするためのフォトダイレクトプリントスタートキーを備え、オーダーシートをプリントさせるキー、オーダーシートを読み込ますキー等を備える。また、モノクロコピー時やカラーコピー時におけるコピースタートキー、コピー解像度や画質などのモードを指定するモードキー、コピー動作などを停止するためのストップキー、並びに、コピー数を入力するテンキーや登録キーなどを備えてもよい。CPU11は、これらキーの押下状態を検出し、その状態に応じて各部を制御する。
【0022】
ディスプレイユニット19は、ドットマトリクスタイプの液晶表示部(LCD)およびLCDドライバを備え、CPU11の制御に基づき各種表示を行う。また、記憶媒体に記録されていた画像データのサムネイルを表示する。プリントユニット13は、インクジェット方式のインクジェットヘッド、汎用ICなどによって構成され、CPU11の制御により、RAM17に格納されている記録データを読み出し、ハードコピーとしてプリント出力する。
【0023】
ドライブユニット21は、スキャニングユニット14およびプリントユニット13を動作させるため、給排紙ローラを駆動するステッピングモータ、ステッピングモータの駆動力を伝達するギヤ、および、ステッピングモータを制御するドライバ回路などを含む。
【0024】
センサユニット20は、記録紙幅センサ、記録紙有無センサ、原稿幅センサ、原稿有無センサおよび記録媒体検知センサなどを含む。CPU11は、このセンサユニット20から得られる情報に基づき、原稿および記録紙の状態を検知する。
【0025】
PCインターフェイス24はPCとのインターフェイスであり、MFP1はPCインターフェイス24を介してPCからのプリント、スキャンなどの動作を行う。コピー動作時は、スキャニングユニット14で読取った画像データをMFP内部でデータ処理し、プリントユニット13で印刷する。
【0026】
オペレーションユニット15により、コピー動作が指示されると、スキャニングユニット14は原稿台に置かれた原稿を読取る。読取られたデータは画像処理部12に送られ、画像処理が施された後、プリントユニット13に送られ印刷が行われる。
【0027】
<画像処理>
図3はコピー時に実行される画像処理のフローチャートである。以下、各ステップについて説明を記述する。スキャニングユニット14で読取られ、AD変換された画像データに対し、撮像素子のばらつきを補正するために、STEP301において、シェーディング補正が施される。
【0028】
その後、STEP302で、入力デバイス色変換が行われる。これによりデバイス固有であった信号データが標準的な色空間領域へと変換される。標準的な色空間領域としては、IEC(国際電気標準会議;International Electrotechnical Commission)により定められたsRGBがある。また、Adobe Systems社により提唱されているAdobeRGBでもよい。変換方法は、3x3や3x9のマトリクスによる演算方式や、変換規則を記載したテーブルに基づいて決定するルックアップテーブル方式などが挙げられる。
【0029】
変換されたデータは、STEP303において、補正・加工の処理が施される。処理内容としては、読取りによるボケを補正するエッジ強調処理や、文字の判読性を向上させる文字加工処理、光照射による読取りで発生した裏写りを除去する処理などが挙げられる。 STEP304では、拡大縮小処理が実行され、ユーザにより変倍指定がされている場合や、2枚の原稿を一枚の紙に割り当てる割付けコピーなどで、所望の倍率に変換される。変換方法は、バイキュービックやニアレストネイバーなどの方法が一般的である。
【0030】
STEP305では、標準色な色空間上のデータを、出力デバイスに固有の信号データへと変換する。本実施の形態に係るMFPは、インクジェット方式であり、シアン、マゼンタ、イエロー、ブラックなどのインク色データへの変換処理が実行される。この変換もSTEP302と同様の方式を用いればよい。
【0031】
さらに、STEP306において、記録可能なレベル数への変換が行われる。例えば、インクドットを打つ/打たないの2値で表現する場合あれば、誤差拡散などの量子化方法において、2値化すればよい。これによりプリンタが記録可能なデータ形式となり、それに基づいて記録動作が実行され、画像が形成される。
【0032】
<処理単位>
図4(a)は属性判定処理を実施する際の処理単位を説明する図である。図4(a)の○印の画素を注目画素(処理の対象となる画素)とすると、図4(a)の太線のように注目画素を含む7×7画素で構成される領域(7×7領域)を設定する。この設定した7×7領域内の画像信号を用いて注目画素に対する画像処理を実行する。注目画素の処理が実行された後は、例えば図4(b)の×印の画素のように注目画素に隣接する画素を次の注目画素と設定し、同様に7×7領域を設定して画像処理を実行する。以降、同様に順次注目画素を1画素ずつ移動し、その都度7×7領域を設定することによって対象の画素全てを補正する。
【0033】
次に処理単位が領域単位の場合を説明する。図4(a)の○印の画素に対して7×7領域を設定し、○印に対して設定する補正強度を7×7領域内の複数画素、例えば全画素に適用する。次の処理は図4(c)の△印の画素に対して7×7領域を設定することで○印に対する7×7領域と△印に対する7×7領域とが隣接するように処理単位を移動する。 ただし、処理単位を画素単位とした方がより高い精度で補正強度を設定できる為、本実施の形態は、処理単位を画素単位として説明する。
【0034】
図5は処理単位の移動フローを説明する図である。STEP501は処理対象設定である。START直後は、最初の処理対象を設定する。STEP505からSTEP501に戻った場合は、次の処理対象を設定する。
【0035】
STEP502は処理領域設定である。処理領域とは前記説明したように処理単位を含む複数画素(前記説明では7×7領域)で構成される領域である。
STEP503は補正強度設定である。処理単位に対する補正強度を設定する。
STEP504は補正実行である。STEP503で設定した補正強度を使って処理単位を補正する。
STEP505は最終補正対象判定である。処理単位が最後の処理単位であるか否かを判定する。最後の処理単位でなければ(NO)STEP501に戻る。最後の処理単位であれば(YES)ENDとなる。
【0036】
以下の実施の形態では処理領域を7×7領域として説明している。これはスキャニングユニット14で使っているCCDまたはCISの撮像素子1画素が読む原稿の画素範囲を6画素以内とするよう設計した為である。尚、6画素以内の設計と言っても、原稿台からの原稿の浮きや原稿の凹凸等によって、撮像素子に入射する原稿からの反射光は種々の影響を受ける。その為、実際には6画素を超える範囲を読み取る場合もある。以下の実施の形態において原稿を読み取った画像信号の説明図を複数示すが、これらの画像信号も必ずしも6画素以内の反射光とは限らない。
【0037】
図6は撮像素子1画素に入る原稿からの反射光範囲を簡易的に示している。本実施の形態で使用した撮像素子は、図6(a)に示すように撮像素子1画素に対して、原稿の7画素範囲から6画素以内の反射光が入射するよう設計している(前述したように場合によっては6画素を超える場合もある)。つまり、原稿の1画素の反射光は撮像素子7画素に影響している。これが背景技術で述べたエッジのボケを発生し、シャープ感を損なっている。
【0038】
以下の実施の形態はボケを低減することを目的の1つとしている。注目画素を置換候補画素で置換してエッジを強調する。よって、注目画素に対応する原稿画素の影響が少ない画素領域から置換候補を選択するとエッジ強調の効果は高い。そこで最低限、原稿画像の1画素の影響を受けている領域は処理領域として確保した。だから、7×7領域を処理領域と設定している。エッジ強調の効果をより高くする為、7×7を超える領域を参照領域とすることも有効である。また、図6(b)に示すように撮像素子1画素に対して、原稿の3画素範囲から反射光が入射する設計とした場合は、処理領域を3×3領域のように小さく設定してもよい。
【0039】
また、より高速な処理を行なう目的で処理データ量を削減するために、有効画素を間引く、または隣あう画素を加算一体化処理をするなどして、撮像素子の解像度より低い読み取り解像度で読み取る場合がある。このような場合には7x7よりも小さい領域を参照領域とすることも有効である。反対に、より高解像度で読み込む場合には、処理領域を7x7より大きく設定することが有効である。
【0040】
このように参照領域は原稿画像1画素が影響する撮像素子の画素数や、スポット径、ボケ画素数、Modulation Transfer Function(MTF)等の撮像素子の性能に応じて適宜設定すればよい。
【0041】
<言葉の定義>
以下に、本明細書中で用いられる言葉の定義について説明する。
変動量とは、処理対象画素を中心とする周辺画素群における、画素信号値の変動の大きさを表わす値である。本実施形態では、1画素の両側に隣接する2画素の輝度値の差分の絶対値(エッジ量)のうち、最大のものを変動量として説明するが、これに限定されるものではない。注目する画素の画像信号に関連する値の1次微分の絶対値等、変化の差分(大きさ)を表現する値、または注目する領域内の画像信号に関連する値の変化の差分(大きさ)を代表して表現する値であってもよい。
【0042】
変動回数とは、処理対象画素を中心とする周辺画素群における、画素信号値の変動の頻度を表わす値である。本実施形態では、画像領域内の1画素の両側に隣接する2画素の輝度値の差分の増減頻度(符号変化数(ゼロ交差点数))を変動回数として説明するが、これに限定されるものではない。画像領域内の画像信号に関連する値の1次微分の零交差点数や空間周波数、2値化後の黒白の変化数等、画像信号に関連する値の変化の頻度を表現する値であると定義する。
【0043】
変動加速度とは、処理対象画素を中心とする周辺画素群における、画素信号値の変動の加速度を表わす値である。以下の実施の形態では画像領域内の輝度の差分からさらに差をとった値として説明するが、これに限定されるものではない。注目する領域内の画像信号に関連する値の2次微分等、変化の加速度を表現する値であればよい。
【0044】
彩度とは、以下の実施の形態では注目する画素または領域における各色の画像信号差の内、最大絶対値として説明するが、これに限定されるものではない。度軸からの距離を表現する値であると定義する。
【0045】
適応的に補正強度を設定するとは、定義した変動回数、変動量、変動加速度、彩度の夫々取り得る値領域の内、夫々少なくとも一部の値領域において、夫々の値毎に異なる補正強度を設定することであると定義する。
【0046】
以下、本実施の形態の画像処理の詳細を説明する。尚、画像信号の取り得る範囲を0〜255を例に説明するが、画像信号の範囲はこれに限るものではなく、MFP、画像処理に適するよう設定すればよい。
【0047】
図14は本実施形態の補正強度設定のフローチャートである。フローチャートのステップに沿って補正強度設定を説明する。
【0048】
<補正強度設定STEP2501:処理領域設定>
RGBの多値の画像信号で構成される画像において、処理対象となる注目画素を中心とした横7画素、縦7画素で構成される7×7領域の処理領域を抽出する。処理領域の各画素値R、G、Bから式(1)に従って代表信号値としての輝度Lを算出し、Lの7×7領域の処理領域を生成する。
L = (R+2×G+B)/4 ・・・式(1)
尚、本実施の形態は式(1)で算出した輝度Lを用いているが、別の輝度を適用してもよい。例えば、明度と色差成分を含む画像信号を対象にしても良く、均等色空間L*a*b*のL*を輝度としてもいい。また、YCbCrのYを輝度としてもよいし、RGBのGのみを取り出してこれをLとしてもよい。このように特定の色を全体の代表とすると演算量が少なくてすむため、実現回路が簡単になる。
【0049】
図7(a1)は白背景中の黒縦線を横方向に読み取った際の輝度を示している。図7(a2)は白背景中の横方向に並んだ網点を横方向に読み取った際の輝度を示している。
【0050】
<補正強度設定STEP2502:4方向抽出>
STEP2501で生成したLの処理領域から図8に示すように横1方向、縦1方向、斜2方向の合計4方向の各7画素を抽出する。
【0051】
<補正強度設定STEP2503:L差分算出>
STEP2502で抽出した4方向のLから、特徴量として各方向5画素のLの差分Grdを図9と式(2)に示すように算出する。ここで、画素L(i)の前画素をL(i−1)と後画素をL(i+1)とする。
Grd(i) = L(i+1)−L(i−1) ・・・式(2)
式(2)はデジタル信号値の一次微分をあらわしている。尚、L差分の算出方法はこれに限らず、隣接同士の差分でもよく、前記説明した前後画素より更に離れた画素同士の差分でもよい。図7(b1)と図7(b2)は夫々図7(a1)と図7(a2)のLに対して式(2)を適用して求めたGrdを示している。
【0052】
<補正強度設定STEP2504:エッジ方向判定>
STEP2503で算出した4方向のGrdにおいて、注目画素の4方向のGrd絶対値を求める。4方向のGrd絶対値の内、最大のGrd絶対値である方向を注目画素のエッジ方向と判定する。
【0053】
<補正強度設定STEP2505:変動量算出>
STEP2504で判定したエッジ方向にならぶ7つの画素のうち、5画素についてSTEP2503でGrdを算出できる。その5画素のGrdを比較し、その最大絶対値を注目画素の変動量(エッジ量)として算出する。変動量が大きい程強いエッジであり、変動量が弱い程平坦に近いことを示す。
【0054】
<補正強度設定STEP2506:変動回数算出>
STEP2503で算出した4方向のGrdから4方向合計の変動回数を算出する。図10(a)に示すようにGrdの符号が+から−又は−から+に変化する回数、図10(b)に示すようにGrdの符号が+から0そして次の画素で−又は−から0そして次の画素で+に変化する回数を注目画素の変動回数(零交差点数)として算出する。
【0055】
尚、本実施形態では図10(c)に示すように複数画素の0を挟んで符号が変化する場合や図10(d)に示すように0にはなるが符号の変化がない場合には変動回数としてカウントしていない。複数画素の0を挟んだ場合や0にはなるが符合が変化しない場合は、太線の可能性があり、STEP2508とSTEP2703で述べるように太線に対しては図10(a)や図10(b)の細線とは別強度を設定できる利点があるからである。
【0056】
また、図7に示すように文字は網点に比べて変動回数が少ない傾向であるが、原稿の濃度均一性やシェーディング精度によっては、図11(a)に示すように文字の場合もGrdに振幅の小さい変化が多くなる場合がある。この場合、変動回数が網点のように多くなり、後述の補正強度設定を実施すると網点に近いエッジ強度が設定されてしまう弊害が起こる。そこで、STEP2505で算出した変動量が設定した閾値を超えるような比較的大きい場合は、小さいGrdを0に平滑化するとより精度の高いエッジ強度設定が可能である。具体的には、図11(b)に示すようにSTEP2505で算出した変動量を閾値(エッジ閾値)と比較し、変動量がエッジ閾値を超える場合は、平滑化閾値を設定する。平滑化閾値以下のGrd絶対値の場合は、図11(c)に示すようにGrdを0として変動回数をカウントする。これによって、文字の変動回数を少なく抑えることができてエッジ強度設定の精度を高くできる。
【0057】
<補正強度設定STEP2507:変動回数に基づくエッジ強度設定1>
STEP2506で算出した変動回数に応じて適応的にエッジ強度Fz1を設定する。図12(a)はSTEP2507におけるFz1設定を説明する図であり、横軸は変動回数、縦軸はFz1を示している。文字の可能性が高い第1閾値より小さい変動回数の場合は、エッジを強調する為にFz1を1に設定する。高線数でモアレ発生し易い網点の可能性が高い第2閾値より大きい変動回数の場合は、モアレを強調しない為にFz1を0に設定する。第1閾値以上且つ第2閾値以下の変動回数の場合は、変動回数=第1閾値のときFz1=1、変動回数=第2閾値のときFz1=0となるべく、変動回数に応じてFz1が漸次変化するように適応的に設定する。これにより、エッジ強調部分とそうでない部分との境界において処理の切り換えが目立ち難くなる。具体的には図12(a)の参照や以下の式(3)によって適応的に設定できる。
Fz1 = (第2閾値−変動回数)/(第2閾値−第1閾値) ・・・式(3)
【0058】
<補正強度設定STEP2508:変動回数に基づくエッジ強度設定2>
STEP2506で算出した変動回数に応じて適応的にフィルタ強度Fz2を設定する。図12(b)はSTEP2508におけるFz2設定を説明する図であり、横軸は変動回数、縦軸はFz2を示しており、図12(a)と組み合わせたときに図12(c)となることを目的としている。STEP2506で述べたように変動回数が0の場合は太線の可能性が高い。太線を後述するエッジ強調フィルタを用いてエッジ強調すると、太線の縁部が濃くなる縁取りが発生する。もし縁取りをなしにしたい場合は、図12(b)のように太線の可能性が高い第3閾値より小さい変動回数の場合は、エッジ強調を抑える為にFz2を0に設定する。細線の可能性が高い第4閾値より大きい変動回数の場合は、エッジ強調する為にFz2を1に設定する。第3閾値以上且つ第4閾値以下の変動回数の場合は、変動回数=第3閾値のときFz2=0、変動回数=第4閾値のときFz2=1となるべく、変動回数に応じてFz2が漸次変化するように適応的に設定する。これにより、フィルタによるエッジ強調部分とそうでない部分との境界において処理の切り換えが目立ち難くなる。具体的には図12(b)の参照や以下の式(4)によって適応的に設定できる。
Fz2 = (変動回数−第3閾値)/(第4閾値−第3閾値) ・・・式(4)
Fz1×Fz2によって図12(c)のエッジ強度を実現できる。縁取りをありにしたい場合は、変動回数に関係なくFz2=1を設定すればよい。
【0059】
<補正強度設定STEP2509:変動量に基づくエッジ強度設定>
STEP2505で算出した変動量に応じて適応的にエッジ強度Feを設定する。図12(d)はSTEP2509におけるFe設定を説明する図であり、横軸は変動量、縦軸はFeを示している。平坦の可能性が高い第5閾値より小さい変動量の場合は、小さい変動を強調して画像を荒らさない為にFe=0を設定する。エッジの可能性が高い第6閾値より大きい変動量の場合は、エッジ強調する為にFe=1を設定する。第5閾値以上且つ第6閾値以下の変動量の場合は、変動量=第5閾値のときFe=0、変動量=第6閾値のときFe=1となるべく、変動量が変化するに連れてFeが漸次変化するように適応的に設定する。これにより、エッジ強調部分とそうでない部分との境界において処理の切り換えが目立ち難くなる。具体的には図12(d)の参照や以下の式(5)によって適応的に設定できる。
Fe = (変動量−第5閾値)/(第6閾値−第5閾値) ・・・式(5)
【0060】
<補正強度設定STEP2510:最大最小輝度位置判定>
STEP2504で判定したエッジ方向について、STEP2502で抽出した4方向の内、エッジ方向のLの7画素から最大Lと最小Lの画素位置を判定する。
【0061】
<補正強度設定STEP2511:変動加速度算出>
STEP2504で判定したエッジ方向について、STEP2503で算出したエッジ方向のGrdから、抽出された画像領域に関する特徴量として、3画素の変動加速度Lapを算出する。変動加速度の算出方法は式(15)である。但し、画素Grd(i)の前画素をGrd(i−1)と後画素Grd(i+1)とする。図7(c1)と図7(c2)は夫々図7(b1)と図7(b2)のGrdに対して式(15)を適用して求めたLapを示している。
Lap(i) = Grd(i+1) − Grd(i−1) ・・・式(15)
なお、変動加速度の算出方法はこれに限らず、Grdの隣接同士の差分でもよい。また、式(15)はデジタル信号値の二次微分をあらわしている。
【0062】
<補正強度設定STEP2512:置換画素位置判定>
STEP2510で判定した最大Lと最小Lの画素位置と、STEP2511で算出した変動加速度Lapから置換画素位置を判定する。図7のようにLapの符号が+の場合は注目画素のLは最大Lよりも最小Lに値の大きさが近く、Lapの符号が−の場合は注目画素のLは最小Lよりも最大Lに値の大きさが近い傾向がある。そこで、表1に示すようにLapの符号に対して置換画素位置を判定し、置換すれば、図13(a)に示す画像信号値を図13(c)のように補正することができる。
【0063】
Lapが0の場合に常に最大値を選択すると、エッジは常に細くなり、常に最小値を選択するとエッジは常に太くなってしまうという問題がある。そこで前後の画素のLapを合計してその符号で置換候補画素を決定する。
【0064】
【表1】

【0065】
<補正強度設定STEP2513:変動加速度絶対値に基づく置換強度設定>
STEP2511で算出した変動加速度の絶対値に応じて適応的に置換強度Clを設定する。Clを変動加速度の絶対値によらず、Cl=1に設定することで、図13(c)を得ることができる。ただ、常にCl=1とするとジャギーが目立つ場合がある。そこで、ここではジャギーを抑えつつ、図13(b)よりもエッジを強調できる置換例を説明する。
【0066】
図15(a)はSTEP2513におけるCl設定を説明する図であり、横軸は変動加速度絶対値、縦軸はClを示している。エッジ中心付近である第9閾値より小さい変動加速度の場合は、置換しない為にClを0に設定する。エッジ中心付近を置換しないように設定するのはジャギー発生を目立たなくする目的である。エッジ中心から離れた第10閾値より大きい変動加速度絶対値の場合は、置換する為にClを1に設定する。第9閾値以上且つ第10閾値以下の変動加速度絶対値の場合は、処理の切り換えを目立ち難くする為に変動加速度絶対値=第9閾値のときCl=0、変動加速度絶対値=第10閾値のときCl=1となるように変動加速度絶対値毎に異なるClを適応的に設定する。具体的には図15(a)の参照や以下の式(16)によって適応的に設定できる。
Cl = (変動加速度絶対値−第9閾値)/(第10閾値−第9閾値)・・・式(16)
【0067】
<補正強度設定STEP2514:変動回数に基づく置換強度設定>
STEP2506で算出した変動回数に応じて適応的に置換強度Czを設定する。第11閾値と第12閾値を使い、STEP2507と同様に図15(b)の特性でCzを適応的に設定する。変動回数が第11閾値より小さい太線の場合はCz=1、第12閾値より大きい細線や網点の場合はCz=0、第11閾値以上且つ第12閾値以下の場合は式(17)によって適応的に設定できる。
Cz = (第12閾値−変動回数)/(第12閾値−第11閾値) ・・・式(17)
【0068】
<補正強度設定STEP2515:変動量に基づく置換強度設定>
STEP2505で算出した変動量に応じて適応的に置換強度Ceを設定する。第13閾値と第14閾値を使い、STEP2509と同様に図15(c)の特性でCeを適応的に設定する。変動量が第13閾値より小さいの場合はCe=0、第14閾値より大きい場合はCe=1、第13閾値以上且つ第14閾値以下の場合は式(18)によって適応的に設定できる。
Ce = (変動量−第13閾値)/(第14閾値−第13閾値) ・・・式(18)
図16は第1実施形態における補正処理のフローチャートを示しており、フローチャートのステップに沿って補正処理を説明する。
【0069】
<補正処理STEP2701:エッジ強調量算出>
STEP2501で設定したRGBの7×7領域に対して、エッジ強調フィルタを掛けた際の注目画素値と掛ける前の注目画素値との差分(エッジ強調量)を各色毎に算出する。本実施の形態では、注目画素を中心として5×5エッジ強調フィルタを掛ける例で説明をするが、STEP2501で設定した処理領域サイズ以下のフィルタサイズであればよく、フィルタ係数値も適宜設定すればよい。図21(a)は5×5エッジ強調フィルタのフィルタ係数の一例である。注目画素値をN0とし、図21(a)のフィルタを掛けた結果の注目画素値をN1とし、エッジ強調量をΔFとすると、ΔFは式(24)を使って算出できる。
ΔF = N1−N0 ・・・式(24)
また、注目画素のフィルタ係数を図21(b)のように、図21(a)の注目画素位置のフィルタ係数から図21(a)のフィルタ合計値を引いた値とすることで、図21(b)を適用するだけでΔFを算出することができる。
【0070】
<補正処理STEP2702:Fz1によるエッジ強調量補正>
STEP2701で算出したエッジ強調量ΔFをSTEP2507で設定したフィルタ強度Fz1で補正する。補正したエッジ強調量ΔFz1は式(25)を使って算出する。
ΔFz1 = Fz1×ΔF ・・・式(25)
STEP2702によって、変動回数が少ない文字に対しては比較的強くエッジ強調し、変動回数が多い網点に対しては比較的弱くエッジ強調を施すことが可能で、文字のシャープ感を増加することとモアレを強調しないことを両立することができる。
【0071】
<補正処理STEP2703:Fz2によるエッジ強調量補正>
STEP2702で算出したエッジ強調量ΔFz1をSTEP2508で設定したフィルタ強度Fz2で補正する。補正したエッジ強調量ΔFz2は式(26)を使って算出する。
ΔFz2 = Fz2×ΔFz1 ・・・式(26)
図12(b)のようにFz2を設定した場合、STEP2703によって、太線は縁取りがでないようエッジ強調が施され、細線は太線より強くエッジ強調してシャープ感の増加と黒文字の濃度増加を施すことができる。
【0072】
<補正処理STEP2704:Feによるエッジ強調量補正>
STEP2703で算出したエッジ強調量ΔFz2をSTEP2509で設定したフィルタ強度Feで補正する。補正したエッジ強調量ΔFeは式(27)を使って算出する。
ΔFe = Fe×ΔFz2 ・・・式(27)
STEP2704によって、文字のようなエッジ部は比較的強くエッジ強調し、背景や写真のような平坦部は比較的弱くエッジ強調を施すことができる。これにより文字のシャープ感増加とモアレを強調しないこと、写真を荒らさないことを両立できる。
【0073】
<補正処理STEP2705:エッジ強調フィルタ処理完了>
STEP2704で算出したエッジ強調量ΔFeを式(28)に示すように注目画素値N0に加算することによって、エッジ強調フィルタ処理画素値Neを算出する。
Ne = N0+ΔFe ・・・式(28)
尚、Neを所望のレンジにクリップする処理を入れてもよい。
【0074】
<補正処理STEP2706:置換量算出>
STEP2512で判定した置換画素位置の画素値を用いて置換量を算出する。STEP2501で設定したRGBの7×7領域からSTEP2512で判定した置換画素位置のRGB値を抽出する。注目画素値をN0とし、置換画素位置の画素値をC0とし、置換量をΔCとすると、ΔCは式(19)を使って算出できる。
ΔC = C0−N0 ・・・式(19)
【0075】
<補正処理STEP2707:Clによる置換量補正>
STEP2706で算出した置換量ΔCをSTEP2513で設定した置換強度Clで補正する。補正した置換量ΔClは式(20)を使って算出する。
ΔCl = Cl×ΔC ・・・式(20)
STEP2707によって、ジャギー発生を抑えた置換が施される。
【0076】
<補正処理STEP2708:Czによる置換量補正>
STEP2707で算出した置換量ΔClをSTEP2514で設定した置換強度Czで補正する。補正した置換量ΔCzは式(21)を使って算出する。
ΔCz = Cz×ΔCl ・・・式(21)
STEP2708によって、太線は置換を強くし、細線は置換を弱くしてジャギー発生を抑えた置換を施すことができる。
【0077】
<補正処理STEP2709:Ceによる置換量補正>
STEP2708で算出した置換量ΔCzをSTEP2515で設定した置換強度Ceで補正する。補正した置換量ΔCeは式(22)を使って算出する。
ΔCe = Ce×ΔCz ・・・式(22)
STEP2709によって、文字等のエッジ部は比較的強く置換することでシャープ感を向上し、平坦部は比較的弱く置換することで荒れを防止する。
【0078】
<補正処理STEP2710:置換処理完了>
STEP2709で算出した置換量ΔCeを式(23)に示すように注目画素のエッジ強調フィルタ値Neに加算することによって、本発明によるフィルタと置換によるエッジ強調した注目画素値Ncを算出する。
Nc = Ne+ΔCe ・・・式(23)
尚、Ncを所望のレンジにクリップする処理を入れてもよい。
【0079】
<実施の形態による効果>
本実施形態によれば、置換を用いて強調を行なうことで、エッジをたたせつつ、縁取りのない強調を実行できる。
【0080】
また、代表値の一次微分からエッジ方向を決めるため、常に正しいエッジ方向から置換候補画素を選択でき、エッジ強調が効果的に実行できる。また、二次微分の符号を使って置換画素位置を決定するため、周囲の輝度値Lに応じて適切な輝度の画素が選択でき、エッジ強調が効果的に実行できる。また、二次微分が0の場合に前後の画素の二次微分値を参照して置換候補画素位置を決定するため、エッジ強調が効果的に実行できる。また、4方向からエッジ方向を決定するため、4方向以外の画素を参照する必要がなく、処理が簡単になる。またこの効果は参照領域が大きいほど顕著に表れる。
【0081】
図20に表したように7x7では参照領域49画素に対して4方向に含まれる画素は25画素であるが、9x9では81画素に対して33画素、11x11では121画素に対して41画素である。つまり参照画素が(2n+1)x(2n+1)の場合、参照領域の画素数は(2n+1)x(2n+1)に対して、4方向に含まれる画素は(8n+1)であり、nが大きくなるほど4方向以外の画素を参照しないことによる処理の簡略化の効果が大きい。同じ光学系を使用して読み取りを行なう場合、解像度を高くするほどエッジのぼけ量が大きくなることが多いことから、参照領域を大きくする必要ある。よってこの効果は、高解像度を対象とする場合ほど効果が大きい。また、エッジ方向を決定してからエッジ方向のみの変動加速度を求めるため、エッジ方向以外の変動加速度を求める必要がなく、処理が簡単になる。
【0082】
また、次のような効果もある。図17は左側が青色、右側が黄色のグラデーションになっている画像を現している。一つ一つの四角は画素をあらわし、その中の3つの数字がそれぞれR,G,Bの信号値を表している。例えば0,0,240はR=0、G=0、B=240という意味であり、青色の画素を示している。左側の青色から右側の黄色までの中間部分が、青色から黄色の中間色になっており、これは光学系的読み取りによってぼけている状態を模式的にあらわしたものである。
【0083】
この画像に補正強度は常にCl=Cz=Ce=1として、本実施の形態を適用したものを図18に示す。左側が青色、右側が黄色になっており、中間色部分がなくなっている。これは、光学的読み取りによって生じたぼけが補正され、シャープ感が向上していることがわかる。
【0084】
次に補正強度は常にCl=Cz=Ce=1として、L信号を作成せずに、R信号、G信号、B信号にそれぞれ独立に置換画素位置の決定と置換を実行したものを図19に示す。左側が青色、右側が黄色になっているが、その中間部分にR=0,G=0,B=0、すなわち黒い部分が生じている。これはR,G,Bそれぞれに置換画素位置を決定したことによっておこる問題であって、本実施の形態のように輝度Lを算出してそれをもとに共通の置換画素位置を決定することによって解決できる。
【0085】
以上のように、本実施の形態においては、STEP2501においてRGB信号から輝度Lを作成し、輝度Lに基づいてSTEP2512において、置換画素位置を決定する。これによって、RGBの各信号値の信号分布形状によらず、常にRGB共通のただ一箇所の置換画素位置が決定できる。このことによって、RGB信号ごとに別々の置換画素位置を定めることによる、色ずれが生じるという問題を起こすことのない補正が可能になる。
【0086】
また本実施の形態のL信号を用いずに、G信号をL信号とした場合でも同様にRGB共通のただ一箇所の置換画素位置を決定できるのは明らかであり、色ずれが生じるという問題を起こすことのない補正が可能になる。
【0087】
また本実施形態には、カラー画像に対して、置換候補画素に対する置換強度を連続的に変化させることにより、自然画の階調を維持でき、また文字の強調量を強く、網点の強調量を弱くすることでモアレのない、より好適な結果を得ることができる。
【0088】
代表値信号を用いずに個別にエッジ方向を検出した場合、RGBそれぞれで別のエッジ方向が検出される場合がある。この場合、RGBそれぞれで別々の置換画素位置を選択することがあるだけでなく、Grd、LapもRGBごとに それぞれ計算する必要がある。本実施形態を用いることで、Grd,Lapは代表値信号に対して一度だけ求めればよくRGB別々に求めるよりも処理が簡単になる。
【0089】
以上のように、本実施の形態では代表値信号からエッジ方向を検出するため、かならず同じ方向のエッジが検出できる。またそれによって、計算量が少なくなり、処理が簡単になる。
【0090】
(他の実施形態)
以上、本発明の実施形態について詳述したが、本発明は、複数の機器から構成されるシステムに適用しても良いし、また、一つの機器からなる装置に適用しても良い。
【0091】
なお、本発明は、前述した実施形態の機能を実現するプログラムを、システム或いは装置に直接或いは遠隔から供給し、そのシステム或いは装置が、供給されたプログラムコードを読み出して実行することによっても達成される。従って、本発明の機能処理をコンピュータで実現するために、コンピュータにインストールされるプログラムコード自体も本発明の技術的範囲に含まれる。
【0092】
その場合、プログラムの機能を有していれば、オブジェクトコード、インタプリタにより実行されるプログラム、OSに供給するスクリプトデータ等、プログラムの形態を問わない。
【0093】
プログラムを供給するための記録媒体としては、例えば、フロッピー(登録商標)ディスク、ハードディスク、光ディスク、光磁気ディスクがある。また、MO、CD−ROM、CD−R、CD−RW、磁気テープ、不揮発性のメモリカード、ROM、DVD(DVD−ROM,DVD−R)などがある。
【0094】
その他、クライアントPCのブラウザを用いてインターネットサイトに接続し、本発明に係るプログラムそのもの、もしくは更に自動インストール機能を含むファイルをハードディスク等の記録媒体にダウンロードするという利用方法もある。また、本発明に係るプログラムを構成するプログラムコードを複数のファイルに分割し、それぞれのファイルを異なるホームページからダウンロードすることによっても実現可能である。つまり、本発明の機能処理をコンピュータで実現するためのプログラムを複数のユーザに対してダウンロードさせるWWWサーバも、本発明の範疇に含まれる。 また、本発明に係るプログラムを暗号化してCD−ROM等の記憶媒体に格納してユーザに配布してもよい。所定の条件をクリアしたユーザに対し、インターネットを介してホームページから暗号化を解く鍵情報をダウンロードさせ、その鍵情報を使用することにより暗号化されたプログラムを実行してコンピュータにインストールさせて実現することも可能である。
【0095】
また、プログラムの指示に基づき、コンピュータ上で稼動しているOSなどが、実際の処理の一部または全部を行ない、その処理によっても前述した実施形態の機能が実現され得る。
【0096】
さらに、PCの機能拡張ユニットに備わるメモリに本発明に係るプログラムが書き込まれ、そのプログラムに基づき、その機能拡張ユニットに備わるCPUなどが実際の処理の一部または全部を行なう場合も、本発明の範疇に含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0097】
【図1】MFPの説明図である。
【図2】MFPの制御説明図である。
【図3】MFPの画像処理のフローチャートである。
【図4】処理単位の説明図である。
【図5】処理単位の移動のフローチャートである。
【図6】撮像素子の読取範囲の説明図である。
【図7】輝度と1次微分と2次微分の説明図である。
【図8】4方向抽出の説明図である。
【図9】L差分の説明図である。
【図10】変動回数の説明図である。
【図11】変動回数補正の説明図である。
【図12】エッジ強度設定の説明図である。
【図13】エッジ強調の説明図である。
【図14】第3実施形態の補正強度設定のフローチャートである。
【図15】置換強度設定の説明図である。
【図16】実施の形態の補正処理のフローチャートである。
【図17】読み取りによってエッジのシャープ感が失われた画像の説明図である。
【図18】実施の形態の実行結果を示す図である。
【図19】代表値信号を用いないでエッジ強調を行なった例を示す図である。
【図20】参照領域を変えた場合の4方向の説明図である。
【図21】エッジ強調フィルタ計数の説明図である。
【符号の説明】
【0098】
1 MFP
31 オートドキュメントフィーダ
13 プリントユニット
14 スキャニングユニット
15 オペレーションパネル
19 ディスプレイパネル
42 カードスロット
43 カメラポート
11 CPU
12 画像処理部
16 ROM
17 RAM
18 不揮発性RAM
19 ディスプレイユニット
20 センサユニット
21 ドライブユニット
22 カードインターフェイス
23 カメラインターフェイス
24 PCインターフェイス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数色の画像信号で構成される画像に補正処理を施す画像処理装置において、
処理対象画素を含む画像領域を抽出する抽出手段と、
前記画像領域に含まれる画素の複数色に対応する信号値から1つの代表信号値を生成する生成手段と、
前記代表信号値に基づいて、前記処理対象画素に関する特徴量を算出する特徴量算出手段と、
算出した前記特徴量に基づいて、前記複数色で共通の置換候補画素を前記画像領域内から選択する手段と、
前記処理対象画素の信号値及び前記置換候補画素の信号値から算出した新規画素値で前記処理対象画素の信号値を置換する手段と、
を有することを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
前記特徴量算出手段は、前記特徴量として、前記代表信号値を一次微分した値と前記代表信号値を二次微分した値を算出することを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記複数色の画像信号とはRGB信号であることを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項4】
前記複数色の画像信号とは、明度と色差成分を含む信号であることを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項5】
前記生成手段は、前記代表信号値を、輝度をあらわす信号値から生成することを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項6】
前記生成手段は、前記代表信号値を、前記複数の画像信号のうちの一つから生成することを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項7】
複数色の画像信号で構成される画像に補正処理を施す画像処理装置において、
処理対象画素を含む画像領域を抽出する抽出手段と、
前記画像領域内でエッジ方向を決定するエッジ方向決定手段と、
前記エッジ方向に含まれる画素群から、置換候補画素を選択する選択手段と、
前記処理対象画素の信号値及び前記置換候補画素の信号値から算出した新規画素値で前記処理対象画素の信号値を置換する手段と、
を有することを特徴とする画像処理装置。
【請求項8】
複数色の画像信号で構成される画像に補正処理を施す画像処理装置において、
処理対象画素を含む画像領域を抽出する抽出手段と、
前記画像領域に含まれる画素の複数色に対応する信号値から1つの代表信号値を生成する生成手段と、
前記代表信号値に基づいて、前記処理対象画素に関する特徴量を算出する特徴量算出手段と、
算出した前記特徴量に基づいて、前記複数色で共通の置換候補画素を前記画像領域内から選択する手段と、
前記画像領域内で前記代表信号値に基づいてエッジ方向を決定するエッジ方向決定手段と、
前記エッジ方向に含まれる画素群から、置換候補画素を選択する選択手段と、
前記処理対象画素の信号値及び前記置換候補画素の信号値から算出した新規画素値で前記処理対象画素の信号値を置換する手段と、
を有することを特徴とする画像処理装置。
【請求項9】
前記画像領域に含まれる画素の複数色に対応する信号値から1つの代表信号値を生成する生成手段を更に備え、
前記エッジ方向決定手段は、前記代表信号値を一次微分した値を用いてエッジ方向を決定することを特徴とする請求項7または8に記載の画像処理装置。
【請求項10】
前記選択手段は、前記処理対象画素の信号値を二次微分した二次微分値が正なら、信号値が最小の画素を置換候補画素として選択し、前記二次微分値が負なら、信号値が最大の画素を置換候補画素として選択することを特徴とする請求項7または8に記載の画像処理装置。
【請求項11】
前記二次微分値が0の場合は、前記処理対象画素に隣接する画素の信号値を二次微分した値の符号を参照して、信号値が最小または最大の画素を選択することを特徴とする請求項10に記載の画像処理装置。
【請求項12】
前記エッジ方向決定手段は、前記画像領域内において処理対象画素を含む複数方向の画素列の信号値の一次微分値を比較し、該一次微分値が最大の方向を前記エッジ方向と決定することを特徴とする請求項7又は8に記載の画像処理装置。
【請求項13】
複数色の画像信号で構成される画像に補正処理を施す画像処理方法において、
処理対象画素を含む画像領域を抽出する抽出工程と、
前記画像領域に含まれる画素の複数色に対応する信号値から1つの代表信号値を生成する生成工程と、
前記代表信号値に基づいて、前記処理対象画素に関する特徴量を算出する特徴量算出工程と、
算出した前記特徴量に基づいて、前記複数色で共通の置換候補画素を前記画像領域内から選択する工程と、
前記処理対象画素の信号値及び前記置換候補画素の信号値から算出した新規画素値で前記処理対象画素の信号値を置換する工程と、
を有することを特徴とする画像処理方法。
【請求項14】
複数色の画像信号で構成される画像に補正処理を施す画像処理方法において、
処理対象画素を含む画像領域を抽出する抽出工程と、
前記画像領域に含まれる画素の複数色に対応する信号値から1つの代表信号値を生成する生成工程と、
前記代表信号値に基づいて、前記処理対象画素に関する特徴量を算出する特徴量算出工程と、
算出した前記特徴量に基づいて、前記複数色で共通の置換候補画素を前記画像領域内から選択する工程と、
前記画像領域内で前記代表信号値に基づいてエッジ方向を決定するエッジ方向決定工程と、
前記エッジ方向に含まれる画素群から、置換候補画素を選択する選択工程と、
前記処理対象画素の信号値及び前記置換候補画素の信号値から算出した新規画素値で前記処理対象画素の信号値を置換する工程と、
を有することを特徴とする画像処理方法。
【請求項15】
複数色の画像信号で構成される画像に補正処理を施す画像処理プログラムであって、
コンピュータに、
処理対象画素を含む画像領域を抽出する抽出工程と、
前記画像領域に含まれる画素の複数色に対応する信号値から1つの代表信号値を生成する生成工程と、
前記代表信号値に基づいて、前記処理対象画素に関する特徴量を算出する特徴量算出工程と、
算出した前記特徴量に基づいて、前記複数色で共通の置換候補画素を前記画像領域内から選択する工程と、
前記処理対象画素の信号値及び前記置換候補画素の信号値から算出した新規画素値で前記処理対象画素の信号値を置換する工程と、
を実行させることを特徴とする画像処理プログラム。
【請求項16】
複数色の画像信号で構成される画像に補正処理を施す画像処理プログラムであって、
コンピュータに、
処理対象画素を含む画像領域を抽出する抽出工程と、
前記画像領域に含まれる画素の複数色に対応する信号値から1つの代表信号値を生成する生成工程と、
前記代表信号値に基づいて、前記処理対象画素に関する特徴量を算出する特徴量算出工程と、
算出した前記特徴量に基づいて、前記複数色で共通の置換候補画素を前記画像領域内から選択する工程と、
前記画像領域内で前記代表信号値に基づいてエッジ方向を決定するエッジ方向決定工程と、
前記エッジ方向に含まれる画素群から、置換候補画素を選択する選択工程と、
前記処理対象画素の信号値及び前記置換候補画素の信号値から算出した新規画素値で前記処理対象画素の信号値を置換する工程と、
を実行させることを特徴とする画像処理プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【公開番号】特開2008−11269(P2008−11269A)
【公開日】平成20年1月17日(2008.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−180379(P2006−180379)
【出願日】平成18年6月29日(2006.6.29)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】