説明

画像処理装置、画像処理方法および画像処理プログラム

【課題】モノクロフィルムの色調を再現することができなかった。
【解決手段】RGB色成分で色を表現したRGB画像データを取得し、前記RGB色成分
によって特定される色を撮影した所定の分光特性のモノクロ写真における輝度を再現する
ための演算によって前記RGB色成分から輝度値を特定してモノクロ画像データを取得す
る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カラー画像データからモノクロ画像データを生成する画像処理装置、方法お
よびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、カラー画像データをモノクロ画像データに変換する際にカラー画像データの色成
分を所定の混合比で混合して輝度成分を取得する技術が知られている(例えば、特許文献
1、2)。
【特許文献1】特開2000−105820号公報
【特許文献2】特開2005−260504号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従来の技術においては、モノクロフィルムの色調を再現することができなかった。
すなわち、モノクロ画像の階調値はカラー画像の輝度成分によって特定することができ
、通常は規格(例えば、テレビジョンで利用される規格(特許文献1、0048段落等)
)によって規定された混合比でRGB色成分(R:レッド成分、G:グリーン成分、B:
ブルー成分)を混合する。この規格においては、人間の目がG成分に敏感である(図4A
参照)ことに鑑みてG成分の混合比を他の色成分より大きくしている。この結果、人間の
目に自然な階調となっている輝度成分を取得することができる。
【0004】
一方、モノクロ写真(本明細書においてモノクロ写真とは、モノクロフィルム上の写真
や印画紙上に現像した写真を含むものとする)における分光感度は一般にG成分を含む波
長域で極小を持つため、G成分が色調に与える影響は他の色成分よりも相対的に小さくな
る(図4B参照)。従って、上述の規格に規定された混合比に基づいて輝度成分を取得し
てもモノクロ写真における色調を再現することはできない。特に、人間の目は輝度成分に
敏感であるため、僅かな色調の差異が画像の印象に大きな影響を与える。
【0005】
また、特許文献2にはカメラのレンズに対してグリーン、イエロー、オレンジ、レッド
などのフィルタを装着したときの効果を仮想的に再現するための技術が開示されている。
しかし、カラーフィルタによる補正効果を再現したとしても、やはりモノクロ写真におけ
る色調を再現することはできない。
本発明は、上記課題にかんがみてなされたもので、モノクロフィルムの色調を再現する
ことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するため、本発明においては、RGB色成分によって特定される色(
例えば、当該色のパッチ)を所定の分光特性のモノクロ写真にて撮影したときの輝度を再
現するための演算によってRGB色成分から輝度値を特定してモノクロ画像データを取得
する。この結果、画像変換手段において、特定の分光特性のモノクロフィルムにおける色
調を再現したモノクロ画像を取得することができる。従って、特定の分光特性のモノクロ
写真の色調を好む利用者の要望に応えることが可能である。
【0007】
ここで、画像変換手段は、演算によってRGB色成分から輝度値を特定してモノクロ画
像データを取得することができればよい。例えば、RGB色成分の混合比に対応する係数
をRGB色成分のそれぞれに乗じて足し合わせることによって輝度値を取得する構成を採
用可能である。なお、輝度成分以外の色成分について階調値を規定する場合にはその色成
分に無彩色を示す一定の値を割り当てればよい。なお、ここでモノクロ写真の分光特性や
モノクロ写真の輝度は予め特定することができれば良く、例えば、実際に市販されている
特定のモノクロフィルムや印画紙を想定すればよい。すなわち、分光特性を特定するので
あれば、市販のモノクロフィルムの分光分布を測定すればよいし、モノクロフィルムで撮
影を行ったときの輝度を特定するのであれば、市販のモノクロフィルムにて撮影を行った
ときの輝度を測定する構成等を採用可能である。むろん、市販の印画紙に現像したモノク
ロ写真の輝度を測定する構成等を採用しても良い。
【0008】
さらに、前記演算の特性をモノクロ写真の分光特性に基づいて決定するための具体例と
して、RGB画像データにおける色成分の値が判明している基準色を利用する構成を採用
可能である。例えば、基準色を撮影したモノクロ写真を測色して基準輝度を取得し、基準
色を示すRGB色成分のそれぞれを混合して得られる仮輝度を取得する。そして、当該混
合における混合比の値を調整し、当該仮輝度と基準輝度とのずれを極小化するように当該
混合比の値を決定する(例えば、最小二乗法やニュートン法,準ニュートン法など)。そ
して、当該決定された混合比を上述の演算にてRGB色成分を混合する際の混合比とする
。この構成によれば、基準色を撮影したモノクロ写真の測色に基づいて得られる基準輝度
と、基準色を示すRGB色成分のそれぞれを混合して得られる輝度と、のずれが極小化さ
れる混合比でRGB色成分を混合する演算を行うことが可能になる。従って、基準色をモ
ノクロフィルムで撮影したときの色調や印画紙に現像したモノクロ写真の色調を正確に再
現するように演算を行うことができる。
【0009】
なお、ここで、基準色は複数であることが好ましい。基準色が複数であるときには、各
基準輝度と仮輝度とのずれが複数の基準色に関して全体として極小化されれば良く、例え
ば、各基準輝度と仮輝度との差分の累積値が最小になるように混合比を決定すれば、複数
の基準色についてモノクロ写真の色調を正確に再現することが可能になる。このとき、基
準色は複数であれば良いがその数が多いほど正確な再現が可能になる。
【0010】
また、色空間の全域において基準色の存在密度が略一定になるように基準色を選定すれ
ば、色空間の全域に渡る色においてモノクロ写真の色調を正確に再現することが可能であ
る。なお、カラーチャートによってこのような複数の基準色を選定すると容易に複数の基
準色を選定することができる。なお、基準色を示す色成分は既知の値(例えば、カラーチ
ャートの各パッチに対して予め対応付けられた色成分の値)を利用しても良いし、測色を
行っても良い。
【0011】
さらに、基準色を選定する際に、特に正確にモノクロ写真の色調を再現したい色につい
て、色空間においてその色を含む特定の領域で基準色の存在密度が多くなるように当該基
準色を選定してもよい。例えば、モノクロ写真における分光分布が極小となる色を含む所
定の領域や、人間の目においては最も感度の高い色を含む所定の領域、あるいは、これら
双方に共通の領域において基準色が多くなるように当該基準色を選定する。この構成によ
れば、これらの領域において正確にモノクロ写真の色調を再現することが可能である。
【0012】
さらに、上述の演算において、G成分の混合比をR成分より小さくする構成を採用して
も良い。この構成によれば、人間の目の感度が高く、モノクロ写真の分光分布が小さいG
成分の階調値がモノクロ画像の輝度値に寄与する比率をR成分よりも相対的に小さくする
ことができ、モノクロ写真の色調に近い色成分を容易に取得することが可能になる。なお
、ここでは、G成分の混合比がR成分よりも小さくなるように構成していればよく、B成
分の混合比はG成分の混合比より小さくしても良いし、大きくしても良い。なお、各色成
分の混合比は正の値になるようにすることが好ましい。
【0013】
さらに、複数のモノクロ写真に対応した複数の演算からいずれかの演算を選択してモノ
クロ画像の輝度値を取得するように構成してもよい。この構成によれば、各モノクロ写真
の色調を正確に再現したモノクロ画像を生成することができる。
【0014】
さらに、本発明のように、所定の分光特性のモノクロ写真による撮影結果を再現するよ
うに演算を行ってRGB色成分から輝度値を特定する手法は、プログラムや方法としても
適用可能である。また、以上のような画像処理装置、プログラム、方法は、単独の画像処
理装置として実現される場合もあれば、複数の装置を組み合わせることによって実現され
る場合もあり、各種の態様を含むものである。また、一部がソフトウェアであり一部がハ
ードウェアであったりするなど、適宜、変更可能である。さらに、画像処理装置を制御す
るプログラムの記録媒体としても発明は成立する。むろん、そのソフトウェアの記録媒体
は、磁気記録媒体であってもよいし光磁気記録媒体であってもよいし、今後開発されるい
かなる記録媒体においても全く同様に考えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
ここでは、下記の順序に従って本発明の実施の形態について説明する。
(1)画像処理装置の構成:
(2)モノクロ画像生成処理:
(2−1)モノクロ画像用の混合比の決定処理:
(3)他の実施形態:
【0016】
(1)画像処理装置の構成:
図1は、本発明にかかる画像処理装置を含むデジタルカメラ1の構成を示すブロック図
である。また、図2は、デジタルカメラ1にて撮影した画像を示すデータを記録する処理
を示すフローチャートである。
【0017】
図1に示す制御部20は、CPU20a、フラッシュメモリ20b、RAM20cを備
える。CPU20aはフラッシュメモリ20bに記憶されているプログラムを実行するこ
とでデジタルカメラ1の全体を制御する。表示部18は、LCD(Liquid Crystal Displ
ay)や当該LCDを制御するディスプレイコントローラなどを備える。表示部18は制御
部20によって制御され、各種の設定や撮影画像を表示する。操作部19は、シャッタボ
タン、露光条件やその他各種の撮影条件を設定するためのダイヤルスイッチ、表示される
各種のメニューを操作するための複数の押しボタンスイッチ、ジョグダイヤルなどを備え
る。本実施形態においては、制御部20の制御によって表示部18および操作部19がユ
ーザインタフェースとして機能し、その一機能として、画像保存時の色の設定を行うこと
ができる。すなわち、画像をリムーバブルメモリ17に記録する際の記録態様をカラー画
像データあるいはモノクロ画像データのいずれかに設定することができる。
【0018】
光学系11は、図示しないレンズ群や絞りなどで構成され、光学系11はイメージセン
サ12の受光面に光を入射させる。イメージセンサ12は、2次元空間に離散的に配置さ
れた光電変換素子とCCD(Charge Coupled Device)などの電荷転送素子とを備えた撮
像素子であり、所謂CCDイメージセンサ、CMOSイメージセンサなどである。イメー
ジセンサ12は光学系11により入射される光を光電変換し、RGBの各色フィルタに対
応したセンサにおける光量に対応した電気信号を出力する。
【0019】
アナログフロントエンド(AFE)部13は、イメージセンサ12から出力される電気
信号をAD変換器でデジタル信号に量子化して出力する。画像処理部14は、AFE部1
3から出力されたデジタル信号に対し、画素補間処理、ホワイトバランス補正、ガンマ補
正、RGB画像データ形成処理等の画像処理を行う。すなわち、操作部19によって画像
の撮影が行われると、制御部20が光学系11,イメージセンサ12,AFE部13,画
像処理部14を制御し、RGB画像データを生成する(ステップS100)。なお、RG
B画像データは、RGB表色系によって色を規定した画像データである。
【0020】
本実施形態において、画像処理部14は画像変換部21を備えており、画像変換部21
は、制御部20の画像変換指示に基づいて上述のRGB画像データの色空間を変換する画
像変換処理を行う。当該画像変換処理はRGB色成分をYCC色成分に変換するカラー画
像データ生成処理およびRGB色成分をモノクロのYCC色成分(Yに輝度値が記録され
て、各CC成分は無彩色を示す一定の値を持つデータ)に変換するモノクロ画像データ生
成処理である。
【0021】
画像変換部21は、当該画像変換処理を行うため、上述の操作部19によって設定され
た画像の記録態様がカラー画像データあるいはモノクロ画像データのいずれであるのかを
判別する(ステップS110)。そして、ステップS110にて、変換画像がカラー画像
であると判別されると、Exif規格(あるいはDCF規格、ITU−R.B.T.60
1規格、BTA S−001B規格等)にて規定された規格混合比にてRGB色成分を混
合して輝度値を特定したカラー画像データを生成する(ステップS120)。
【0022】
一方、ステップS110にて、変換先の画像がモノクロ画像データであると判別される
と、上述の規格混合比と異なる混合比(RGB色成分によって特定される色を所定の分光
特性のモノクロフィルムで撮影したときの輝度を再現するための混合比:以下、モノクロ
画像用の混合比と呼ぶ)にてRGB色成分を混合して輝度値を特定したモノクロ画像デー
タを生成する(ステップS130)。従って、規格混合比によって得られる輝度と異なる
色調のモノクロ画像を生成することができ、規格通りのモノクロ変換では満足できない利
用者の要望に応えることができる。また、RGB画像データをカラー画像データに変換す
る際に所定の規格に基づく演算を行う構成としているため、当該カラー画像データが示す
画像においては、人間の目に自然な輝度変化であるという印象を与えることが可能である
。また、当該カラー画像データへの変換を行う場合には、カラー画像データとRGB画像
データとの相互変換を容易に実施することができる。すなわち、規格に基づく演算におい
ては一般に逆変換も規定されているため、RGB画像データを一旦カラー画像データに変
換したとしても、容易に当該カラー画像データをRGB画像データに変換することが可能
である。なお、本実施形態においては、当該モノクロ画像用の混合比に基づく輝度値の特
定がモノクロ画像データを取得するための演算に相当する。また、以上の画像変換処理に
ついては後に詳述する。さらに、画像処理部14で実施する上記各種の処理は、制御部2
0で実行するコンピュータプログラムによる処理に置き換えてもよい。
【0023】
画像処理部14は、カラー画像データあるいはモノクロ画像データを生成するとその画
像データを圧縮部15に出力する(ステップS140)。圧縮部15は、制御部20から
出力されたデジタル画像をJPEG形式にて圧縮し、Exif形式(Exchangeable Image
File Format)のファイルを生成する(ステップS150)。外部記憶部16は、不揮発
性の脱着可能な記憶媒体であるリムーバブルメモリ17を接続するためのカードスロット
、メモリコントローラなどを備える。外部記憶部16は制御部20によって制御され、圧
縮部15で圧縮されたExif形式のファイルをリムーバブルメモリ17へ書き込む処理
を行う(ステップS160)。
【0024】
(2)モノクロ画像生成処理:
次に、画像変換部21におけるモノクロ画像生成処理について説明する。本実施形態に
おいては上述のようにExif形式でJPEG圧縮した画像を記録することとしており、
当該Exif形式の規格においては3×3の行列によってRGB色成分をYCC色成分に
変換するように規定されている。当該規格に規定された3×3の行列において、輝度値Y
を求める式は以下の式(1)である。
Y=0.30R+0.59G+0.11B ・・・(1)
なお、フルスケールでのYCCへの変換は
Y=0.299R+0.587G+0.114B
Cb=−0.169R−0.331G+0.500B
Cr=0.500R−0.419G−0.081B
という式で与えられるが、ここでは便宜的に式(1)としておく。
【0025】
当該式(1)においてRGB色成分のそれぞれに乗じられる係数は、各色成分を混合し
て輝度値を取得するための混合比に相当し、これらの係数にて特定される混合比を規格混
合比と呼ぶ。上述のステップS120においては、当該規格混合比によってRGB色成分
を混合しているため、カラー画像データを生成する際には規格通りの混合比によってYC
C色成分を生成していることになる。なお、本実施形態においては、フラッシュメモリ2
0b(あるいは図示しないメモリ)に3×3の行列を示す情報が記録されており、制御部
20は、画像変換の際に当該情報を読み出して画像変換部21に受け渡し、画像変換処理
を行わせる。
【0026】
一方、フラッシュメモリ20b(あるいは図示しないメモリ)には、モノクロ画像を取
得するための3×3の行列も記録されており、この行列においてはYCCにおける色差成
分に無彩色を示す一定の値を対応付け、輝度値のみを変動させ得る行列成分が定義されて
いる。さらに、当該輝度値Yを求める式は以下の式(2)である。
Y=0.41R+0.33G+0.26B ・・・(2)
【0027】
当該式(2)においてRGB色成分のそれぞれに乗じられる係数は、モノクロ画像用の
混合比に相当する。なお、本実施形態において、当該モノクロ画像用の混合比は、RGB
画像データのRGB色成分によって特定される色を所定の分光特性のモノクロフィルム(
例えば、市販のモノクロフィルム)で撮影したときの輝度を想定し、RGB色成分の混合
によって当該輝度を再現するための混合比として予め定義された比である。このような、
モノクロ写真の色調の再現を可能にするため、本実施形態においては以下の処理にてモノ
クロ画像用の混合比を決定している。
【0028】
(2−1)モノクロ画像用の混合比の決定処理:
図3は、当該モノクロ画像用の混合比を決定するための処理を示すフローチャートであ
る。本実施形態においては、基準色を撮影したモノクロフィルムを測色して得られる基準
輝度に基づいてモノクロ画像用の混合比を決定することとしており、所定のカラーチャー
ト(各色パッチにおける機器非依存色空間での色成分が判明しているチャート)上のパッ
チを当該基準色としている。このため、図3に示すフローチャートにおいては、モノクロ
フィルムを装填したフィルムカメラによってカラーチャートを撮影する(ステップS20
0)。
【0029】
次に、現像済のモノクロフィルムを測色機にて測色し、各パッチの輝度値を取得する(
ステップS210)(むろん、ここでは、印画紙に現像済のモノクロ写真を測色機にて測
色しても良い)。なお、当該輝度値を基準輝度Y0nと呼ぶ。ここで、nはパッチを特定す
るための符号である。また、基準輝度Y0nを取得するための機器は測色機に限られず、ス
キャナであっても良い。いずれにしても、正確な基準輝度Y0n(好ましくは機器非依存色
)を特定することができればよい。次に、カラーチャートのパッチnについて予め判明し
ている色成分Rn,Gn,Bnを取得する(ステップS220)。なお、当該色成分Rn
,Gn,Bnはデジタルカメラ1にて扱うRGB画像データにて利用されるRGB色成分
と同じ表色系であり、必要に応じて変換処理がなされる(例えば、パッチnの色がXYZ
表色系で特定されているときに当該XYZ表色系をRGB表色系に変換する)。
【0030】
次に、当該色成分Rn,Gn,Bnを利用してパッチの輝度値を以下の式(3)によっ
て定義する(ステップS230)。
1n=Cr・Rn+Cg・Gn+Cb・Bn ・・・(3)
なお、ここで、Cr,Cg,Cbは、それぞれ色成分Rn,Gn,Bnの係数を決定する
ために仮設定された変数であり、変数の値が特定されるまで輝度値が仮の値になるため式
(3)に示す輝度値を仮輝度Y1nと呼ぶ。
【0031】
次に、パッチnに関する基準輝度Y0nと仮輝度Y1nとの差分の絶対値を取得し、すべて
のパッチについての和を取得し、当該和を最小化する係数Cr,Cg,Cbの値を取得す
る(ステップS240)。そして、当該和を最小化する係数Cr,Cg,Cbの値をモノ
クロ画像用の混合比として特定する(ステップS250)。なお、上述の和を最小化する
ための処理としては、最小二乗法やニュートン法,準ニュートン法等を採用可能である。
上述の式(2)は、市販のモノクロフィルムについて以上の処理を行って特定されたモノ
クロ画像用の混合比を係数として輝度値を取得するための式である。
【0032】
以上のようにモノクロ画像用の混合比は、混合によって得られる輝度値と基準輝度Y1n
との差分が最小になるように決定されている。従って、式(2)に基づいてRGB画像デ
ータのRGB色成分を混合することにより、混合にて得られた輝度を、当該RGB色成分
が示す色の物体をモノクロフィルムによって撮影した場合の輝度に対して極めて近い値に
することができる。
【0033】
なお、本実施形態において、式(2)に示すモノクロ画像用の混合比(係数)はすべて
正の値であり、R成分の混合比>G成分の混合比>B成分の混合比である。すなわち、規
格混合比においては式(1)に示すようにG成分の混合比がR成分の混合比より大きいが
、モノクロ画像用の混合比においては式(2)に示すようにR成分の混合比がG成分の混
合比より大きくなっている。このように、R成分の混合比とG成分の混合比の大小関係が
規格混合比とモノクロ画像用の混合比とで逆転している点は、モノクロ画像用の混合比に
よる混合によってモノクロフィルムの色調を再現することに大きく寄与している。
【0034】
すなわち、人間の目の分光感度は図4Aに示すように波長540nm〜580nm付近
にピークを持つ分布となっている。このため、式(1)に示す規格混合比においては波長
540nm付近の光の色に相当するG成分の混合比をR成分やB成分よりも大きくして、
人間の目に自然に見えるような輝度値を取得する変換式を定義している。
【0035】
一方、モノクロフィルムの分光特性は図4Bに示すように波長500nm〜560nm
付近に極小値を持つこと多い。従って、モノクロフィルムにおいてG成分が輝度値の階調
変化に与える影響は、他の成分(R成分)と比較して相対的に小さい。このため、G成分
の混合比がR成分の混合比よりも大きい式(1)にて輝度値を取得する場合と比較して、
G成分の混合比がR成分の混合比よりも小さい式(2)にて輝度値を取得する場合の方が
、よりモノクロフィルムの色調に近い輝度値とすることが可能である。
【0036】
(3)他の実施形態:
以上の実施形態は本発明を実施するための一例であり、所定の分光特性のモノクロフィ
ルムによる撮影結果を再現するようにRGB色成分を混合する限りにおいて、他にも種々
の実施形態を採用可能である。例えば、上述のRGB画像データは、ホワイトバランス補
正やガンマ補正を行った後の画像データであるが、むろん、ホワイトバランス補正等を行
う以前の任意の状態における画像データ(例えば、RGB表色系のRawデータ)を対象
にしてモノクロ画像用の混合比を特定することが可能である。なお、モノクロ画像用の混
合比を決定する際には、ホワイトバランス補正やガンマ補正等の各種画像変換による影響
を排除するため、適宜各画像変換の正/逆変換を行った状態のデータを利用することが好
ましい。
【0037】
さらに、上述のデジタルカメラ1においては、画像変換部21によってRGB画像デー
タをカラーのYCC画像データあるいはモノクロのYCC画像データに変換する構成とし
ていたが、モノクロ画像を生成する際に、2以上の変換式に基づいて変換処理を実施でき
るように構成してもよい。例えば、上述の式(2)に基づいて第1のモノクロ画像を生成
する処理の他、上述の式(1)に基づいて輝度値を特定するとともに色差成分に無彩色を
示す一定値を与える第2のモノクロ画像を生成する処理を実行可能に構成してよい。この
場合、操作部19によって第1のモノクロ画像あるいは第2のモノクロ画像のいずれに変
換するのかを予め設定する構成とする。
【0038】
さらに、上述の実施形態においては、ある特定のモノクロフィルムの分光特性に対応し
た1種類のモノクロ画像用の混合比を利用可能に構成したが、むろん、複数のモノクロフ
ィルムの分光特性のそれぞれに対応した複数のモノクロ画像用の混合比を利用可能に構成
してもよい。この場合、操作部19によって、予め色調を再現する対象のモノクロフィル
ムを選択する構成とする。なお、各モノクロフィルムは、例えば、市販される際の商品名
によって選択する構成としてもよいし、分光特性を表示部18に表示して選択する構成と
してもよく、種々の構成を採用可能である。なお、上述のデジタルカメラ1はデジタルス
チルカメラであったが、むろん、ムービーカメラに本発明を適用しても良い。
【0039】
さらに、本発明の適用対象は、デジタルカメラに限定されない。例えば、画像データを
表示するフォトビューワに本発明を適用することも可能である。図5は、フォトビューワ
101の構成を説明するブロック図である。同図5に示すように、フォトビューワ101
はCPU201a,ROM201b,RAM201c,HDD201dを備えており、電
源スイッチ201eによって電源オンとされているときに、CPU201aはROM20
1bやHDD201dに記録されたプログラムを実行することができる。
【0040】
また、CPU201aは、メモリI/F(インタフェース)161を介してリムーバブ
ルメモリ171に記録されたデータを取得することができる。なお、本実施形態において
は、リムーバブルメモリ171に画像変換対象となるRGB画像データ171aが記録さ
れた状態を示している。
【0041】
さらに、CPU201aはLCD181に対して制御信号を出力して任意の画像を表示
することが可能であり、CPU201aは操作部191(フォトビューワ101が備える
ボタン等)による操作内容を取得することができる。すなわち、CPU201aは、所定
の操作画面をLCD181に表示して操作部191における各種操作指示を受け付けるこ
とができる。また、LCD181に対してリムーバブルメモリ171に記録された画像デ
ータまたはHDD201dに記録された画像データに基づく画像を表示することができる

【0042】
本実施形態においては、操作部191によりLCD181に表示させる画像をカラー画
像あるいはモノクロ画像から選択することができ、また、リムーバブルメモリ171に記
録するデータをカラー画像データあるいはモノクロ画像データから選択することができる
。CPU201aは、上述のプログラムの一つとして本発明にかかる画像変換プログラム
211を実行することが可能である。当該画像変換プログラム211においては、RGB
画像データ171aを取得して、上述の操作部191による設定に従ってExif形式の
カラー画像データあるいはモノクロ画像データを生成する。
【0043】
すなわち、カラー画像データを生成するように設定されている場合、CPU201aは
、上述の式(1)に示す規格混合比による混合を含む3×3の行列によってRGB画像デ
ータ171aの各色成分をYCC色成分に変換する。そして、CPU201aは、LCD
181に変換後のカラー画像データに基づく画像を表示させ、操作部191によって指示
がなされたときには当該カラー画像データをHDD201dあるいはリムーバブルメモリ
171に記録する。
【0044】
一方、モノクロ画像データを生成するように設定されている場合、CPU201aは、
上述の式(2)に示すモノクロ画像用の混合比による混合にて輝度値を生成し、色差成分
に無彩色を示す一定値を与える3×3の行列によってRGB画像データ171aの各色成
分をYCC色成分に変換する。そして、CPU201aは、LCD181に変換後のモノ
クロ画像データに基づく画像を表示させ、操作部191によって指示がなされたときには
当該モノクロ画像データをHDD201dあるいはリムーバブルメモリ171に記録する
。従って、以上の処理によってLCD181に表示された画像あるいはモノクロ画像デー
タが示す画像は、モノクロフィルムの色調を再現した画像となる。
【0045】
さらに、本発明をパーソナルコンピュータなどの他の種類のコンピュータにおける画像
処理に適用することも可能である。図6は、パーソナルコンピュータ102aの構成を説
明するブロック図である。同図6に示すように、パーソナルコンピュータ102aはCP
U202a,ROM202b,RAM202c,HDD202dを備えており、CPU2
02aはROM202bやHDD202dに記録されたプログラムを実行することができ
る。また、本実施形態においては、予め複数のモノクロフィルムの分光特性のそれぞれに
対応した複数のモノクロ画像用の混合比を特定しておき、モノクロフィルムの種類とその
モノクロフィルム用の混合比とが対応付けられた状態でHDD202dに記録されている

【0046】
また、CPU202aは、USBI/F172を介してマウスや図示しないキーボード
,プリンタ102bと接続されており、マウスやキーボードによる操作入力を受け付け、
また、HDD202dに記録されたRGB画像データ202d1が示す画像をプリンタ1
02bに印刷させることができる。また、CPU202aはディスプレイI/F182を
介してディスプレイに制御指示を出力して任意の画像を表示することが可能である。
【0047】
本実施形態おいて、CPU202aは画像変換プログラム212の処理により、ディス
プレイ上に所定の画面を表示した状態でマウスやキーボード等の操作入力機器による操作
内容を受け付けることが可能である。図7は、当該画面の例を示す図である。同図7に例
示する画面182aにおいては、その左側に画像を表示し、右側に画像処理の内容を示す
操作部が表示されている。
【0048】
すなわち、画面182aの右側には、モード選択部182a1が形成されており、当該
モード選択部182a1においては、画像変換後の画像データがカラー画像データあるい
はモノクロ画像データであることをラジオボタンによって指定することができる。当該モ
ード選択部182a1においてカラー画像データが指定されているとき、CPU202a
は、RGB画像データ202d1を取得して上述の式(1)による混合を含む3×3の行
列によって変換を行ってカラー画像データを生成する。そして、CPU202aは、画面
182aに当該カラー画像データが示すカラー画像を表示する。
【0049】
一方、モード選択部182a1においてモノクロ画像データが指定されているとき、C
PU202aは、指定されたモノクロフィルムに対応したモノクロ画像用の混合比を取得
して画像変換を行う。すなわち、画面182aにおいては、その右下に画像処理のパラメ
ータを指定するためのUIとなるパラメータ入力部182a2が表示される。当該パラメ
ータ入力部182a2においては、色温度調整や色合い調整など、各種の画像処理のパラ
メータを入力することが可能である。すなわち、本実施形態においてCPU202aは、
当該入力されたパラメータに基づいて画面182aに表示された画像に対して画像処理を
実行することが可能である。
【0050】
本実施形態においては、当該パラメータ入力部182a2における入力パラメータの一
つとして、モノクロフィルムの種類を選択する選択部182a3が設けられている。当該
選択部182a3においては、プルダウンメニューによってモノクロフィルムの種類を選
択肢として表示するようになっている。マウスやキーボード等によってモノクロフィルム
の種類が選択されるとCPU202aは、当該モノクロフィルムの種類に対応付けられた
混合比を取得する。
【0051】
モノクロフィルムの種類が特定されると、CPU202aは、RGB画像データ202
d1を取得し、当該取得した混合比による混合にて輝度値を生成するとともに色差成分に
無彩色を示す一定値を与える3×3の行列によって変換を行ってモノクロ画像データを生
成する。そして、CPU202aは、画面182aに当該モノクロ画像データが示すモノ
クロ画像を表示する。従って、以上の処理によって画面182aの左側に表示される画像
は、選択部182a3にて選択されたモノクロフィルムの色調を再現した画像となる。
【0052】
むろん、本発明は、上述の実施形態以外にも各種の機器に適用することが可能であり、
例えば、プリンタに適用することが可能である。すなわち、CPU等を備えることによっ
て各種の画像処理を実行可能に構成されたプリンタにおいて、本発明にかかるモノクロ画
像データの生成処理を実行可能に構成し、変換後の画像を印刷するように構成してもよい
。なお、プリンタは家庭用に限られず、業務用プリンタであっても良い。また、ネットワ
ークを介して画像を取得し、画像変換を行った後に印刷するサービスを提供する際に、当
該画像変換の一つとして本発明にかかる画像変換を行う構成としても良い。さらに、上述
のモノクロ画像データは、無彩色であることを想定していたが、むろん、有彩色成分を含
むセピア調やクール調のモノクロ画像データについて本発明を適用し、モノクロ画像用の
混合比にて輝度値を取得する構成であっても良い。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】画像処理装置の構成を示すブロック図である。
【図2】撮影画像を記録する際のフローチャートである。
【図3】モノクロ画像用の混合比を決定するための処理を示すフローチャートである。
【図4】(4A)は人間の目の分光感度、(4B)はモノクロフィルムの分光感度を示す図である。
【図5】フォトビューワの構成を説明するブロック図である。
【図6】コンピュータの構成を説明するブロック図である。
【図7】画面の例を示す図である。
【符号の説明】
【0054】
1…デジタルカメラ、11…光学系、12…イメージセンサ、13…AFE部、14…
画像処理部、15…圧縮部、16…外部記憶部、17…リムーバブルメモリ、18…表示
部、19…操作部、20…制御部、20a…CPU、20b…フラッシュメモリ、20c
…RAM、21…画像変換部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
RGB色成分で色を表現したRGB画像データを取得するRGB画像データ取得手段と

前記RGB色成分によって特定される色を撮影した所定の分光特性のモノクロ写真にお
ける輝度を再現するための演算によって前記RGB色成分から輝度値を特定してモノクロ
画像データを取得する画像変換手段と、
を備える画像処理装置。
【請求項2】
前記演算は、基準色を撮影したモノクロ写真の測色に基づいて得られる基準輝度と、前
記基準色を示す前記RGB色成分のそれぞれを混合して得られる輝度と、のずれが極小化
される混合比で前記RGB色成分を混合する演算を含む、
請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記演算において、G成分の混合比をR成分より小さい混合比として前記RGB色成分
を混合する演算を行う、
請求項1または請求項2のいずれかに記載の画像処理装置。
【請求項4】
前記画像変換手段は、複数のモノクロ写真に対応した複数の演算から選択したいずれか
の演算によって前記輝度値を取得する、
請求項1〜請求項3のいずれかに記載の画像処理装置。
【請求項5】
RGB色成分で色を表現したRGB画像データを取得するRGB画像データ取得工程と

前記RGB色成分によって特定される色を撮影した所定の分光特性のモノクロ写真にお
ける輝度を再現するための演算によって前記RGB色成分から輝度値を特定してモノクロ
画像データを取得する画像変換工程と、
を含む画像処理方法。
【請求項6】
RGB色成分で色を表現したRGB画像データを取得するRGB画像データ取得機能と

前記RGB色成分によって特定される色を撮影した所定の分光特性のモノクロ写真にお
ける輝度を再現するための演算によって前記RGB色成分から輝度値を特定してモノクロ
画像データを取得する画像変換機能と、
をコンピュータに実現させる画像処理プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−232343(P2009−232343A)
【公開日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−77460(P2008−77460)
【出願日】平成20年3月25日(2008.3.25)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】